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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】第1のプライを含む製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20230707BHJP
   D21H 23/48 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H23/48
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020542799
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 IB2019051484
(87)【国際公開番号】W WO2019166929
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】1850222-9
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】サウッコネン、エサ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-510890(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175062(WO,A1)
【文献】特表2018-504529(JP,A)
【文献】特表2018-527476(JP,A)
【文献】特開昭49-006207(JP,A)
【文献】特開平09-268497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/18
D21H 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプライを含む製品の製造方法であって、
- 繊維を含む繊維懸濁液を提供するステップ;
- 前記繊維懸濁液を多孔質媒体に提供して、繊維を含む基材を形成するステップ;
- 第1の強化剤を含む第1の添加剤懸濁液を提供するステップであって、この第1の強化剤はミクロフィブリル化セルロースであるステップ;
- 少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤を含む第2の添加剤懸濁液を提供するステップ;
- 前記多孔質媒体上で前記基材を脱水するステップ;
- 前記多孔質媒体上での前記基材の前記脱水中に前記基材への添加剤付加を行うステップであって、この添加剤付加は、基材が20重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは7重量%未満の乾燥含有量を有するときに行われ、かつ、添加剤付加は、多層カーテンコーティングにより、前記基材に、少なくとも前記第1の添加剤懸濁液の層および前記第2の添加剤懸濁液の層を付加することを含むステップ;ならびに
- 前記多孔質媒体上での前記脱水の後に、前記基材をさらに脱水および乾燥し、それによって前記第1のプライを提供するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
多層カーテンコーティングによって基材に付加される複数の層が同時に付加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多層カーテンコーティングによって基材に付加される複数の層が非同時に付加される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の添加剤懸濁液が、保持剤、排水剤、フィラー、剥離剤、脱泡剤、着色剤、光学剤、内部サイジング剤、固定剤および強化剤の群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の添加剤懸濁液が、デンプン粒子、顆粒もしくは溶解デンプンなどのデンプン、ラテックスなどの合成バインダー、変性デンプン、プロテインなどの変性バイオポリマー、および、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヘミセルロースなどの他の天然多糖類、またはリグニンの群から選択される少なくとも1つの第2の強化剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の添加剤懸濁液が、強化剤、フィラー、剥離剤、脱泡剤、着色剤、光学剤、内部サイジング剤および固定剤の群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2添加剤懸濁液が、ミクロフィブリル化セルロース、デンプン粒子、顆粒もしくは溶解デンプンなどのデンプン、ラテックスなどの合成バインダー、変性デンプン、プロテインなどの変性バイオポリマー、および、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヘミセルロースなどの他の天然多糖類、またはリグニンの群から選択される少なくとも1つの強化剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記添加剤付加により前記基材に付加されたミクロフィブリル化セルロースの総量が、前記の提供された第1のプライ1トン当たり乾燥基準で0.1~30kgである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記添加剤付加によって前記基材に付加される保持剤(単一種もしくは複数種)および/または排水剤(単一種もしくは複数種)の総量が、前記の提供された第1のプライ1トン当たり乾燥基準で10g~5kgである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の添加剤懸濁液の少なくとも1つの保持剤が、ナノ粒子またはミクロ粒子を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の添加剤懸濁液が少なくとも2つの保持剤を含み、前記少なくとも2つの保持剤の1つがミクロ粒子またはナノ粒子を含み、前記少なくとも2つの保持剤の1つがカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーまたは両性ポリマーを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ミクロ粒子またはナノ粒子が中性、酸性またはアルカリ性のpHでカチオン性またはアニオン性である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記ミクロ粒子またはナノ粒子が、コロイドシリカ、ミクロシリカもしくはゾルゲルシリカなどのシリカ、またはミクロベントナイトもしくはナノベントナイトなどのベントナイト、または粘土粒子を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維懸濁液の前記繊維が、セルロース繊維、好ましくは化学パルプ、化学熱機械パルプ(CTMP)、熱機械パルプ(TMP)、機械パルプ、ナノパルプもしくはリサイクルパルプ、またはそれらの混合物からのセルロース繊維を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記セルロース繊維が、12~50°、好ましくは15~30°のショッパー・リーグラー値を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
懸濁液中の繊維が、再生セルロースおよび/またはポリマー繊維などの合成繊維から形成された繊維である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維懸濁液が、ミクロフィブリル化セルロースをさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記製品が複数プライの紙または板紙製品であり、前記方法が、前記の提供された第1のプライを少なくとも第2のプライに取り付けるステップをさらに含む、請求項1~15または17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のプライ(ply:層)の少なくとも強度特性を改善するための添加剤としてミクロフィブリル化セルロース(MFC)が利用される、第1のプライを含む製品の製造方法に関する。さらに、本発明は、この方法により得られる紙、板紙または不織製品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙および板紙製品の製造における添加剤として種々の化学物質もしくは薬剤を利用し、紙および板紙製品に所望の特性、機能性を提供すること、または、製造およびプロセスの実行可能性を改善することが知られている。近年最も注目を集めている添加剤の1つは、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)である。
【0003】
例えば、バリア特性を改善するため、印刷適性を改善するため、または紙もしくは板紙製品の異なる層の間の結合を改善するために、表面サイジング剤または表面コーティング剤としてMFCを使用することが以前に説明されている。MFCの特徴的な粒子の形状とサイズの分布は、MFCが表面上または表面近くに留まる傾向を強くする。しかし、MFCは高い水結合能力、ゲル化挙動を有するため、またプライ(層)の表面での固定化に因り、表面に配置されたMFCは表面の緻密化または詰まり効果を有し、それにより脱水に悪影響を及ぼす。
【0004】
紙および板紙製品の製造において、性能向上剤またはプロセス化学物質として作用する目的で、ウェットエンド添加剤としてMFCを使用することも以前に説明されている。例えば強度特性を提供し、曲げ剛性を提供し、耐クリープ性を提供し、製造中に使用される材料および化学物質の保持を提供し、ならびに、形成された紙または板紙製品の多孔性を低下させるために、紙および板紙製品の製造にて製造原液(stock:ストック)にMFCを追加することが説明されている。
【0005】
とりわけ強度特性を提供するためのウェットエンド添加剤としてMFCを使用することの独特の特性は、MFCが高い表面積を有し(すなわち、好ましくは、湿った、圧密されていない、または角質化されていない状態にあり)、例えば、繊維、微粒子、フィラー(充填剤)、プラスチック、またはデンプンなどの水溶性ポリマー等の材料間の水素結合を促進する利用可能なサイトの量が多いという事実に基づいている。
【0006】
しかし、MFCは自己会合または再組織化する傾向があり、それにより、MFCをウェットエンド添加剤として製造原液に投入する場合、効率的な混合デバイスが必要である。さらに、MFCを含む製造原液を脱水用の多孔質媒体に提供した後のMFC自体の保持力は、多くの製造原液組成物では不十分または限定されていることが示されている。すなわち、これは、製造原液に含まれる添加剤としてのMFCの使用によって提供される特性の望ましい改善、例えば、強度特性の改善は不十分であるか限定されていることを示している。さらに、MFCの保持が不十分または制限されると、化学物質の保持および/または材料の保持の変化などの悪影響がある。
【0007】
AU2016203734は、製紙機(抄紙機)のヘッドボックスへの紙パルプスラリー供給物にMFCを含み得るナノ粒子を添加し、これによりナノ粒子がヘッドボックスのプライ層全体に分布することによって、または、MFCを含み得るナノ粒子を製紙機のウェットエンドにてワイヤー上の1つ以上のプライ層の面上にスプレーし、その上に別のプライ層を適用することによって、または、(例えばサンジングプレスにおいてもしくはメータープレスロールにより)各プライ層を一緒に結合した後にプライにMFCを含み得るナノ粒子を添加することによって、紙シートにMFCを含み得るナノ粒子を取り込むことができることを説明している。
【0008】
しかしながら、製品、例えば、第1のプライを含む紙、板紙または不織製品の製造方法であって、少なくとも第1のプライの強度特性、したがって提供された製品の強度特性を改善するための添加剤としてのMFCの使用を含む方法には、改善する余地はまだある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
製品、例えば、第1のプライ(層)を含む紙、板紙または不織製品の製造方法であって、少なくとも第1のプライの強度特性、したがって提供された製品の強度特性を改善するための添加剤としてのMFCの使用を含み、従来技術の方法の少なくともいくつかの不都合を排除または軽減する改善された方法を提供することが、本開示の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様として以下が提供される。
第1のプライ(層)を含む製品の製造方法であって、
- 繊維を含む繊維懸濁液を提供するステップ;
- 前記繊維懸濁液を多孔質媒体に提供して、繊維を含む基材を形成するステップ;
- 第1の強化剤を含む第1の添加剤懸濁液を提供するステップであって、この第1の強化剤はミクロフィブリル化セルロースであるステップ;
- 少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤を含む第2の添加剤懸濁液を提供するステップ;
- 前記多孔質媒体上で前記基材を脱水するステップ;
- 前記多孔質媒体上での前記基材の前記脱水中に前記基材への添加剤付加を行うステップであって、この添加剤付加は、基材が20重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは7重量%未満の乾燥含有量を有するときに行われ、かつ、添加剤付加は、多層カーテンコーティングにより、前記基材に、少なくとも前記第1の添加剤懸濁液の層および前記第2の添加剤懸濁液の層を付加することを含むステップ;ならびに
- 前記多孔質媒体上での前記脱水の後に、前記基材をさらに脱水および乾燥し、それによって前記第1のプライを提供するステップ
を含む、上記方法。
【0011】
驚くべきことに、第1の態様の方法による第1のプライの製造における多孔質媒体上での脱水中に、湿潤基材が低い乾燥含有量、すなわち、20重量%未満の乾燥含有量を有する位置でMFCを湿潤基材に付加することによって、製造原液への添加剤としてのMFCの付加と比較すると、湿潤基材におけるMFCの保持が改善される。湿潤基材中のMFCの保持が改善されるので、MFCの強度増強効果が改善されることが分かった。したがって、第1の態様の方法による湿潤基材へのMFCの付加は、MFCの強度増強効果にとって有利である。
【0012】
さらに、第1の態様の方法による第1のプライの製造における多孔質媒体上での脱水中に、湿潤基材が低い乾燥含有量、すなわち、20重量%未満の乾燥含有量を有する位置で、少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤(drainage agent)を湿潤基材にさらに付加することによって、湿潤基材におけるMFCの保持がさらに改善される。
【0013】
上述のように、MFCは高い水結合能力を有する。しかしながら、少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤のさらなる付加は、脱水が改善されることも意味する。
【0014】
加えて、第1の態様の方法による第1のプライの製造における多孔質媒体上での脱水中に、湿潤基材が低い乾燥含有量を有する位置でMFCを湿潤基材に付加することによって、湿潤基材が高い乾燥含有量、例えば20重量より高い乾燥含有量を有する位置での保持剤/排水剤(単一種または複数種)の付加と比べて、MFCおよび保持剤/排水剤(単一種または複数種)の湿潤基材中への浸透/浸入が改善される。
【0015】
湿潤基材中へのMFCおよび保持剤/排水剤(単一種または複数種)の改善された浸透/浸入は、湿潤基材のz方向におけるMFCおよび保持剤/排水剤(単一種または複数種)の分布(分配)が改善されることを意味する。湿潤基材のz方向におけるMFCおよび保持剤/排水剤(単一種または複数種)の良好な分布は、MFCの強度増強効果に有利である。
【0016】
また、基材が高い乾燥含有量、例えば20重量%より高い乾燥含有量を有するときに基材へのMFCの付加を適用すれば、MFCの高い水結合能力、すなわちMFCの高密度化または目詰まり効果により、脱水特性に悪影響が生じることがある。
【0017】
また、驚くべきことに、第1の態様の方法による多層カーテンコーティングの技術を用い、湿潤基材が低い乾燥含有量を有する位置で、MFC(すなわち、MFCを含む第1の添加剤懸濁液)を1層として湿潤基材に付加し、かつ、少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤(すなわち、少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤を第2の添加剤懸濁液)を別の層として湿潤基材に付加することによって、MFCの強度増強効果がさらに改善されることも分かった。第1の態様の方法に従って、湿潤基材が低い乾燥含有量を有する位置で第1および第2の添加剤懸濁液の層を付加するために多層カーテンコーティングを用いることによって、MFCおよび保持剤/排水剤(単一種または複数種)の湿潤基材中への浸透/浸入が促進/改善される。これは、多層カーテンコーティングが、好ましくは低コンシステンシーを有するウェブ上へのカーテンコーティングによって、2つ以上の化学物質層の同時付与または非同時付与を可能にするという事実に因るものである。低いコンシステンシーおよびカーテンコーティングの適用は、特に脱水が発生してワイヤー(湿潤セクション)で脱水が継続するならば、浸透をさらに改善する。
【0018】
また、第1の態様の方法は、それが脱水特性に影響を与え/これを制御/調整する可能性に関連するという点で有利である。これは、多層カーテンコーティングによる1つの層でのMFCの付加、ならびに1つの層での少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤の付加が、湿潤基材に付加されるMFCの量ならびに保持剤/排水剤(単一種または複数種)の量および種類に影響を与え/これを制御/調整し、それによって脱水特性に影響を与え/これを制御/調整することが可能になることを意味する。すなわちこれは、MFCの強度増強効果に影響を与え/これを制御/調整することが可能になることを意味する。その結果、第1の態様の方法を用いて、曲げ剛性、弾性モジュール、カーリングなどの寸法安定性、成形性、折り目特性、製品の圧縮強度を最適化するために改善または調整された構造を有する製品、例えば、紙、板紙、または不織製品を製造することが可能である。
【0019】
さらに、第1の態様の方法は、MFCが添加剤として製造原液中に投入されるときに必要とされる可能性がある、効率的な混合装置の必要性が低減または排除され得るという点で有利である。
【0020】
第1の態様の方法は、第1のプライを含む紙、板紙または不織製品の製造方法であってよい。
【0021】
第1の態様の方法は、製紙機(抄紙機)で実施されてもよい。第1の態様の方法で使用することができる製紙機は、紙、板紙、ティッシュ、不織製品または類似の製品の製造に使用される当業者に知られている任意の従来型の機械であってよいが、添加剤の付加を実行する装置(すなわち、多層カーテンコーティングを実行するための手段を含む装置)を備えた機械であってよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「板紙」(“board”:ボード、板)という用語は、板紙だけでなく、それぞれボール紙(cardboard:厚紙)、カートン用板紙(cartonboard)および板紙(paperboard)も指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「プライ」(“ply”:層)という用語は、マルチプライ(多層)構造のトッププライ(頂部層)、ミッドプライ(中間層)、もしくはバックプライ(背面層)のいずれか、または、それらのいずれでもよく、あるいはそれらのすべてのプライを意味する。したがって、このプライは、単一または複数プライ(多層)の基材であり得る。本明細書に開示されている発明は、1つまたはいくつかのプライに使用することができる。
【0024】
上記のさまざまな最終基材に加えて、これらのプライは、段ボール、液体パッケージボード(LPB)、折りたたみボックスボード(FBB)、フレキシブルペーパー製品などの多層紙、多層グリースプルーフペーパー、固体無漂白ボード(SUB)、固体漂白ボード(SBB)、白裏打ち合板(WCB)などの一部であることが好ましい。
【0025】
提供される繊維懸濁液は、セルロース繊維を含んでもよく、このセルロース繊維は、好ましくは、12~50°、好ましくは15~30°のショッパー・リーグラー値を有する。したがって、繊維懸濁液は、多孔質紙または板紙のプライを製造するのに好適なセルロース繊維を含む。ショッパー・リーグラー値は、EN ISO 5267-1で定義された標準的な方法によって測定され得る。
【0026】
繊維懸濁液は、1つの種類のセルロース繊維を含み得る。しかしながら、あるいは、繊維懸濁液は、異なる種類のセルロース繊維の混合物を含んでもよい。例えば、繊維懸濁液のセルロース繊維は、未漂白パルプおよび/または漂白パルプからの繊維を含み得る。未漂白パルプおよび漂白パルプは、クラフト、ソーダ、硫酸塩もしくは亜硫酸パルプなどの化学パルプ、機械パルプ、化学熱機械パルプ(CTMP)、熱機械パルプ(TMP)、ナノパルプもしくはリサイクルパルプ、またはそれらの混合物であり得る。この原材料は、針葉樹(軟材)、広葉樹(硬材)、再生繊維、または紙や板紙の製造に好適な非木材系のパルプをベースにしている。
【0027】
繊維懸濁液は、繊維に加えて、1つ以上の他のプロセス添加剤または機能性添加剤、例えば、フィラー、顔料、湿潤および乾燥強度向上剤、保持剤、架橋剤、軟化剤もしくは可塑剤、接着プライマー、固定剤、剥離剤、湿潤剤、光学染料/光学剤、蛍光増白剤、消泡剤(脱泡剤)、ならびにADK、ASA、ワックス、樹脂などの疎水化剤の群から選択される添加剤を含み得る。
【0028】
繊維懸濁液は、再生セルロース、例えばビスコースもしくはリヨセル繊維および/またはポリマー繊維などの合成繊維から形成された繊維を含んでよい。ポリマー繊維は、好ましくは、ポリオレフィンまたはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからの繊維である。
【0029】
一実施形態では、繊維懸濁液は、ミクロフィブリル化セルロースをさらに含む。
【0030】
繊維懸濁液が提供される多孔質媒体は、例えば、ワイヤーまたは膜であってよい。
【0031】
「繊維を含む基材」とは、本明細書では、セルロースまたは合成繊維などの繊維を含むベースのウェブまたはシートを意味する。
【0032】
本明細書で使用される「脱水」という用語は、例えば、蒸発、加圧下での脱水、または放射線、超音波、真空もしくは吸引ボックスを使用した脱水などを含む、あらゆる形態の脱水を包含する。脱水は、1つ以上のステップで実施されてもよく、1つの形態の脱水またはいくつかの形態の脱水の組み合わせを含んでもよい。
【0033】
多孔質ワイヤーの使用を含む実施形態では、多孔質ワイヤー上での脱水は、単一もしくは2つセットのワイヤーシステム、摩擦が低減された脱水、膜支援脱水、または真空もしくは超音波支援脱水などの既知の技術を使用して行うことができる。さらに、ワイヤセクションの後、基材は、これらの実施形態では、例えば機械的脱水、熱風、放射線乾燥、対流乾燥などによって、さらに脱水および乾燥される。「機械的脱水」とは、機械的な力によって、例えばシュープレスを含む機械的プレスによって行われる脱水を意味する。
【0034】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、本開示の文脈において、少なくとも1つの寸法が100nm未満のナノスケールのセルロース粒子繊維またはフィブリルを意味するものとする。MFCは、部分的または全体的にフィブリル化されたセルロース繊維またはリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルの直径は100nm未満であるが、実際のフィブリルの直径または粒子サイズの分布および/またはアスペクト比(長さ/幅)は、その供給源および製造方法に依存する。
【0035】
最小のフィブリルは基本フィブリルと呼ばれ、約2~4nmの直径を有する(例えば、以下を参照のこと:Chinga-Carrasco, G., Cellulose fibres, nanofibrils and microfibrils,: The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view, Nanoscale research letters 2011, 6:417)一方、一般的に、ミクロフィブリルとしても定義される基本フィブリルの凝集形態(Fengel,D., Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides, Tappi J., March 1970,Vol 53,No.3.参照)は、例えば拡張精製プロセスまたは圧力降下崩壊プロセスを使用することによりMFCを製造するときに得られる主生成物である。供給源と製造プロセスに依存して、フィブリルの長さは約1マイクロメートルから10マイクロメートル超まで変化し得る。粗いMFCグレードには、大部分のフィブリル化繊維、つまり仮道管(tracheid)から突出したフィブリル(セルロース繊維)、および仮道管から遊離した一定量のフィブリル(セルロース繊維)が含まれる可能性がある。
【0036】
MFCには、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル凝集体、セルロースミクロフィブリル凝集体など、さまざまな頭字語がある。MFCは、大きな表面積や、水に分散したときに低固形分(1~5重量%)でゲル状物質を形成する能力など、さまざまな物理的または物理化学的特性によっても特徴付けられる。セルロース繊維は、BET法で凍結乾燥した材料を測定した場合、好ましくは、形成されたMFCの最終比表面積が約1~約300m/g、例えば、約1~約200m/g、またはより好ましくは50~200m/gである程度にフィブリル化される。
【0037】
MFCを作成するためのさまざまな方法が存在する。例えば、1回もしくは複数回の精製、予備加水分解に続く精製または高せん断崩壊またはフィブリルの遊離などである。MFC製造をエネルギー効率的かつ持続可能なものとするために、通常1つまたは複数の前処理ステップが必要である。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、例えばヘミセルロースもしくはリグニンの量を減少させるため、酵素的または化学的に前処理されてよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に変性されていてよく、ここでセルロース分子は、元のセルロースに見られる以外の(またはそれより多くの)官能基を含む。そのような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CM)、アルデヒドおよび/もしくはカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化により得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、または四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が含まれる。上記の方法の1つで変性または酸化された後、繊維をMFCまたはナノフィブリルサイズのフィブリルにまで分解するのがより容易である。
【0038】
ナノフィブリルセルロースには、幾分かのヘミセルロースが含まれている場合がある。その量は植物源およびパルプの加熱処理(cooking)プロセスに依存している。前処理された繊維、例えば加水分解された、事前膨潤された、または酸化されたセルロース原料の機械的分解は、精製機、グラインダー、ホモジナイザー、コロイド化機、摩擦グラインダー、超音波ソニケーター、ミクロ流動化機、マクロ流動化機、または流動化機型ホモジナイザー等の流動化装置などの適切な装置で実行される。MFCの製造方法に応じて、製品には、微粉、もしくはナノ結晶セルロース、または、例えば木質繊維もしくは製紙(抄紙)プロセスに存在するその他の化学物質が含まれている可能性もある。製品には、効率的にフィブリル化されなかったさまざまな量のミクロンサイズの繊維粒子が含まれている場合もある。
【0039】
MFCは、広葉樹繊維(硬材繊維)または針葉樹繊維(軟材繊維)の両方の木材セルロース繊維から製造される。また、MFCは、微生物源、麦わらパルプなどの農業用繊維、竹、バガス、または他の非木材繊維源から作ることもできる。好ましくは、MFCは、バージン繊維からのパルプを含むパルプ、例えば、機械パルプ、化学パルプ、および/または熱機械パルプから作られる。また、MFCは、廃棄品(broke:ブローク)や再生紙から作ることもできる。
【0040】
上記のMFCの定義には、これに限定されるわけではないが、セルロースナノフィブリル(CMF)に関して新しく提案されたTAPPI標準W13021が含まれており、これは、結晶領域とアモルファス領域の両方を持つ複数の基本フィブリルを含むセルロースナノ繊維材料を定義する。
【0041】
上述のように、第1の添加剤懸濁液はMFCを含む。しかしながら、第1の態様の方法の実施形態では、第1の添加剤懸濁液は、MFCに加えて、保持剤、排水剤、フィラー、剥離剤、消泡剤、着色剤、光学剤、内部サイジング剤、固定剤および強化剤の群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む。
【0042】
第1の態様の方法の実施形態では、第1の添加剤懸濁液は、MFCに加えて、デンプン粒子、顆粒もしくは溶解デンプンなどのデンプン、ラテックスなどの合成バインダー、変性デンプン、プロテインなどの変性バイオポリマー、および、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヘミセルロースなどの他の天然多糖類、またはリグニンの群から選択される少なくとも1つの第2の強化剤を含む。次に、第2の強化剤は、第1の強化剤(すなわち、ミクロフィブリル化セルロース)と共に共強化剤として作用することができる。第1の態様の方法の実施形態では、第1の添加剤懸濁液は、MFCに加えて、デンプン、例えば、デンプン粒子、顆粒または溶解デンプンを含む。
【0043】
上述のとおり、第2の添加剤懸濁液は、少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤を含む。この少なくとも1つの保持剤は、例えば、ナノシリカまたはコロイド状アニオン性もしくはカチオン性シリカ、ベントナイト、ナノクレイ、ナノセルロースなどのナノ粒子またはミクロ粒子(マイクロ粒子)、および/またはポリマー、好ましくはPAM、CPAM、APAM、PDADMAC、PVAm、カチオン性もしくはアニオン性デンプン、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリアミンアミド、ポリエチレンオキシド、フェノール樹脂などの群から選択されてよい。保持剤は、2成分保持系などの2つまたは3つの異なる成分を含むことがしばしば好ましい。保持系はまた、1つまたはいくつかの微粒子および1つまたは2つの保持ポリマーを含むことができる。少なくとも1つの排水剤は、例えば、ポリエチレンイミン、PAC、ミョウバン、および他の低分子量荷電ポリマーの群から選択されてよい。当業者に知られているように、排水(drainage)は、様々な微粒子およびポリマーを使用することによって最適化することができるが、その性能は、多くの場合、パルプの種類(単一種または複数種)、機械の速度、導電率、脱水セクション、pH、電荷、および/またはカチオン必要量、白水のコンシステンシー、温度、ならびに、その他の化学物質もしくは添加物に依存する。
【0044】
第1の態様の方法の実施形態では、前記第2の添加剤懸濁液の少なくとも1つの保持剤は、ナノ粒子またはミクロ粒子を含む。
【0045】
第1の態様の方法の実施形態では、第2の添加剤懸濁液は少なくとも2つの保持剤を含み、ここで、前記少なくとも2つの保持剤の1つはミクロ粒子またはナノ粒子を含み、前記少なくとも2つの保持剤の1つはカチオン性、アニオン性または両性ポリマーを含む。
【0046】
第2の添加剤懸濁液のミクロ粒子またはナノ粒子は、中性、酸性またはアルカリ性のpHでカチオン性またはアニオン性であり得る。
【0047】
第2の添加剤懸濁液のミクロ粒子またはナノ粒子は、コロイド状シリカ、ミクロシリカもしくはゾルゲルシリカなどのシリカ、または、ミクロもしくはナノベントナイトなどのベントナイト、または、粘土粒子を含んでいてよい。
【0048】
第1の態様の方法の実施形態では、第2の添加剤懸濁液は、少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤に加えて、強化剤、フィラー、剥離剤、消泡剤、着色剤、光学剤、内部サイジング剤および固定剤の群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む。
【0049】
第1の態様の方法の実施形態では、第2の添加剤懸濁液は、少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤に加えて、ミクロフィブリル化セルロース、デンプン粒子、顆粒もしくは溶解デンプンなどのデンプン、ラテックスなどの合成バインダー、変性デンプン、プロテイン(タンパク質)などの変性バイオポリマー、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヘミセルロースなどの他の天然多糖類、またはリグニンの群から選択される少なくとも1つの強化剤を含む。
【0050】
「多層カーテンコーティング」(“multilayer curtain coating”)という用語は、本明細書では、スロットダイ、スライドダイ、落下ダイ、または、1つもしくはいくつかのスロットをベースにした類似の投与システムなどの任意の好適なカーテンコーティング装置/機器(単一種または複数種)を用いて、基材に2つ以上のコーティング層を付加することを意味する。
【0051】
第1の態様の方法の実施形態では、多層カーテンコーティングによって基材に付加される複数の層が同時に付加される、すなわち、多層カーテンコーティングによって付加される2つ以上のコーティング層が、1つのカーテンコーティングステーションの内部で、任意の好適なカーテンコーティング装置/機器(例えば、多層カーテンコーター)を用いて、基材の同じ乾燥含有量にて、または本質的に同じ乾燥含有量にて、基材に同時に付加される。したがって、多層カーテンコーティングによって基材に同時に付加される複数のコーティング層は、基材へ付加される位置で互いの上に付加されてもよい。
【0052】
第1の態様の方法の実施形態では、多層カーテンコーティングによって基材に付加される複数の層は、非同時に(同時にではなく)付加される、すなわち、多層カーテンコーティングによって付加される2つ以上のコーティング層が、任意の好適なカーテンコーティング装置/機器(各層について1つの別個のカーテンコーティングステーション内に位置してよい)を用いて、基材に非同時的に付加される。
【0053】
基材に付加される複数の層の位置は異なる場合がある。第1の添加剤懸濁液は、好ましくは、第1の層を形成し、第2の添加剤懸濁液は、好ましくは、基材上に第2の層を形成する。第1の層は、基材と第2の層との間に配置されてもよい。第2の層が基材と第1の層との間に配置されることもあり得る。
【0054】
第1の態様の方法の実施形態では、多層カーテンコーティングによって3つ以上の層が基材に付加され、これらの層は同時の付加および非同時の付加の所定の組み合わせによって付加される。
【0055】
例えば、2つ以上の層が多層カーテンコーティングによって基材に同時に付加されてもよく、そして1つ以上のさらなる層が多層カーテンコーティングによって前述の2つ以上の層と非同時に基材に付加されてもよい。次に、2つ以上の同時に付加される層が1つのカーテンコーティングステーション内で付加されてよく、そして1つ以上のさらなる層が各層について1つの別個のカーテンコーティングステーション内で付加されてよい。
【0056】
別の例として、第1群の層である2つ以上の層が多層カーテンコーティングによって基材に同時に付加されてよく、そして第2群の層である2つ以上の層が同時に(ただし、第1群の層とは非同時に)多層カーテンコーティングによって基材に付加されてよい。
【0057】
多層カーテンコーティングによって非同時に基材に付加される複数の層は、任意の好適な順序で付加されてよい。例えば、第1の添加剤懸濁液の1つの層は、それが第1の乾燥含有量を有するときに基材に付加されてよく、そして第2の添加剤懸濁液の1つの層は、それが第2の乾燥含有量を有するときに基材に付加されてよい(第1の乾燥含有量は第2の乾燥含有量よりも低いか、あるいは逆に第2の乾燥含有量は第1の乾燥含有量よりも低い)。
【0058】
多層カーテンコーティングによって付加された複数の層のうちの任意の2つの層の幅を比較するとき、比較された2つの層の幅は同じでも異なっていてもよい。
【0059】
上述のとおり、多層カーテンコーティングは、多孔質媒体上での基材の脱水工程中に行われ、ここで、基材は、多層コーティング装置でのコーティング(すなわち、添加剤の付加)の際、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは7重量%未満の乾燥含有量を有する。したがって、多層カーテンコーティングによって付加されるすべての層は、多孔質媒体上での脱水中に基材がこのような特定の乾燥含有量を有するときに付加される。
【0060】
したがって、多層カーテンコーティングにより2つ以上のコーティング層が同時に基材に付加される実施形態では、カーテンコーティング装置は、多孔質媒体上での脱水中に基材が特定の乾燥含有量を有する位置で、これらの2つ以上のコーティング層が同時に基材に加えられるように配置される。多層カーテンコーティングによって複数のコーティング層が非同時に基材に付加される実施形態では、カーテンコーティング装置は、多孔質媒体上での脱水中に基材が特定の乾燥含有量を有する位置で、これらの2つ以上のコーティング層の各々が基材に加えられるように配置される。
【0061】
一実施形態では、添加剤の付加が行われるとき(すなわち、多層コーティング装置でのコーティング時に)、基材は、20重量%未満の乾燥含有量、例えば、0.5重量%超、1.0重量%超、1.5重量%超または2重量%超であるが、20重量%未満である乾燥含有量を有する。一実施形態では、多層コーティング装置でのコーティング時に、基材は、10重量%未満の乾燥含有量、例えば、0.5重量%超、1.0重量%超、1.5重量%超または2重量%超であるが、10重量%未満である乾燥含有量を有する。一実施形態では、多層コーティング装置でのコーティング時に、基材は、7重量%未満の乾燥含有量、例えば、0.5重量%超、1.0重量%超、1.5重量%超または2重量%超であるが、7重量%未満である乾燥含有量を有する。一実施形態では、多層コーティング装置でのコーティング時に、基材は、5重量%未満の乾燥含有量、例えば、0.5重量%超、1.0重量%超、1.5重量%超または2重量%超であるが、5重量%未満である乾燥含有量を有する。
【0062】
「乾燥含有量」とは、スラリー、懸濁液または溶液中の乾燥物質の含有量を意味する。すなわち、例えば、50%の乾燥含有量は、溶液、懸濁液またはスラリーの総重量に基づいて、乾燥物質の重量が50%であることを意味する。類似的に、「乾燥重量」とは乾燥物質の重量を意味する。
【0063】
上述のとおり、第1の態様の方法は、多層カーテンコーティングを用いて、第1の添加剤懸濁液の1つの層および第2の添加剤懸濁液の1つの層を付加することを含み得る。しかし、代替として、第1の態様の方法は、第1の添加剤懸濁液の2つ以上の層および/または第2の添加剤懸濁液の2つ以上の層を付加することを含み得る。
【0064】
第1の態様の方法の実施形態では、この方法は、前記多層カーテンコーティングによって、1つ以上のさらなる添加剤懸濁液の1つ以上の層を(すなわち、第1の添加剤懸濁液の1つまたは複数の層および第2の添加剤懸濁液の1つまたは複数の層に加えて)前記基材に付加することをさらに含む。この1つ以上のさらなる添加剤懸濁液は、強化剤、保持剤、排水剤、フィラー、剥離剤、消泡剤、着色剤、光学剤、内部サイジング剤および固定剤の群から選択される少なくとも1つの成分を含み得る。したがって、1つ以上の強化剤を、前記の1つ以上のさらなる添加剤懸濁液に含めることができる。さらなる添加剤懸濁液(単一種または複数種)の1つ以上の強化剤は、ミクロフィブリル化セルロース、デンプン粒子、顆粒もしくは溶解デンプンなどのデンプン、ラテックスなどの合成バインダー、変性デンプン、プロテインなどの変性バイオポリマー、および、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヘミセルロースなどの他の天然多糖類、またはリグニンの群から選択されてよい。
【0065】
第1の態様の方法の実施形態では、添加剤の付加によって基材に添加されるミクロフィブリル化セルロースの総量は、前記提供された第1のプライ1トンあたり乾燥基準で0.1~30kgである。
【0066】
第1の態様の方法の実施形態では、添加剤の添加によって基材に添加される保持剤(単一種もしくは複数種)および/または排水剤(単一種もしくは複数種)の総量は、前記提供された第1のプライ1トンあたり乾燥基準で10g~5kgである。
【0067】
上述されたように、多孔質媒体上での脱水後、基材はさらに脱水および乾燥され、それによって前記第1のプライを提供する。このさらなる脱水および乾燥は、任意の好適な手段によって、上述のとおりワイヤセクションであってよい多孔質媒体セクションの後に行われる。
【0068】
本開示の方法によって製造された製品は、単一プライ(単一層)の紙もしくは板紙製品、または複数プライ(多層)の紙もしくは板紙製品であってよい紙または板紙製品であり得る。
【0069】
本開示の方法によって製造された紙または板紙製品は、20~600g/m、またはより好ましくは30~500g/mの坪量を有し得る。第1のプライは、20~200g/m、またはより好ましくは30~150g/mの坪量を有し得る。
【0070】
第1の態様の方法の実施形態では、製造された製品は、複数プライの紙または板紙製品であり、当該方法はさらに、前記提供された第1のプライ(層)を少なくとも1つのさらなるプライ(層)に取り付けるステップを含む。さらなるプライのそれぞれは、第1のプライと同じ方法ステップによって提供されてもよい。すなわち、さらなるプライのそれぞれは、第1のプライと同様であってもよく、または異なっていてもよい。
【0071】
本開示はまた、本開示の方法に従って得られる紙または板紙製品に関する。
【0072】
本開示はまた、本開示の方法に従って得られる不織製品(不織布製品)に関する。
【0073】
本発明の上記の詳細な説明に鑑みれば、他の修正および変更が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の本質および範囲から逸脱することなく、そのような他の修正および変更を行うことができることは明らかなはずである。
本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
第1のプライを含む製品の製造方法であって、
- 繊維を含む繊維懸濁液を提供するステップ;
- 前記繊維懸濁液を多孔質媒体に提供して、繊維を含む基材を形成するステップ;
- 第1の強化剤を含む第1の添加剤懸濁液を提供するステップであって、この第1の強化剤はミクロフィブリル化セルロースであるステップ;
- 少なくとも1つの保持剤および/または少なくとも1つの排水剤を含む第2の添加剤懸濁液を提供するステップ;
- 前記多孔質媒体上で前記基材を脱水するステップ;
- 前記多孔質媒体上での前記基材の前記脱水中に前記基材への添加剤付加を行うステップであって、この添加剤付加は、基材が20重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは7重量%未満の乾燥含有量を有するときに行われ、かつ、添加剤付加は、多層カーテンコーティングにより、前記基材に、少なくとも前記第1の添加剤懸濁液の層および前記第2の添加剤懸濁液の層を付加することを含むステップ;ならびに
- 前記多孔質媒体上での前記脱水の後に、前記基材をさらに脱水および乾燥し、それによって前記第1のプライを提供するステップ
を含む、上記方法。
[2].
多層カーテンコーティングによって基材に付加される複数の層が同時に付加される、上記項目1に記載の方法。
[3].
多層カーテンコーティングによって基材に付加される複数の層が非同時に付加される、上記項目1に記載の方法。
[4].
前記第1の添加剤懸濁液が、保持剤、排水剤、フィラー、剥離剤、脱泡剤、着色剤、光学剤、内部サイジング剤、固定剤および強化剤の群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む、上記項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
[5].
前記第1の添加剤懸濁液が、デンプン粒子、顆粒もしくは溶解デンプンなどのデンプン、ラテックスなどの合成バインダー、変性デンプン、プロテインなどの変性バイオポリマー、および、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヘミセルロースなどの他の天然多糖類、またはリグニンの群から選択される少なくとも1つの第2の強化剤を含む、上記項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
[6].
前記第2の添加剤懸濁液が、強化剤、フィラー、剥離剤、脱泡剤、着色剤、光学剤、内部サイジング剤および固定剤の群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む、上記項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
[7].
前記第2添加剤懸濁液が、ミクロフィブリル化セルロース、デンプン粒子、顆粒もしくは溶解デンプンなどのデンプン、ラテックスなどの合成バインダー、変性デンプン、プロテインなどの変性バイオポリマー、および、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヘミセルロースなどの他の天然多糖類、またはリグニンの群から選択される少なくとも1つの強化剤を含む、上記項目6に記載の方法。
[8].
前記添加剤付加により前記基材に付加されたミクロフィブリル化セルロースの総量が、前記の提供された第1のプライ1トン当たり乾燥基準で0.1~30kgである、上記項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
[9].
前記添加剤付加によって前記基材に付加される保持剤(単一種もしくは複数種)および/または排水剤(単一種もしくは複数種)の総量が、前記の提供された第1のプライ1トン当たり乾燥基準で10g~5kgである、上記項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
[10].
前記第2の添加剤懸濁液の少なくとも1つの保持剤が、ナノ粒子またはミクロ粒子を含む、上記項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
[11].
前記第2の添加剤懸濁液が少なくとも2つの保持剤を含み、前記少なくとも2つの保持剤の1つがミクロ粒子またはナノ粒子を含み、前記少なくとも2つの保持剤の1つがカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーまたは両性ポリマーを含む、上記項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
[12].
前記ミクロ粒子またはナノ粒子が中性、酸性またはアルカリ性のpHでカチオン性またはアニオン性である、上記項目10または11に記載の方法。
[13].
前記ミクロ粒子またはナノ粒子が、コロイドシリカ、ミクロシリカもしくはゾルゲルシリカなどのシリカ、またはミクロベントナイトもしくはナノベントナイトなどのベントナイト、または粘土粒子を含む、上記項目10~12のいずれか1項に記載の方法。
[14].
前記繊維懸濁液の前記繊維が、セルロース繊維、好ましくは化学パルプ、化学熱機械パルプ(CTMP)、熱機械パルプ(TMP)、機械パルプ、ナノパルプもしくはリサイクルパルプ、またはそれらの混合物からのセルロース繊維を含む、上記項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
[15].
前記セルロース繊維が、12~50°、好ましくは15~30°のショッパー・リーグラー値を有する、上記項目14に記載の方法。
[16].
懸濁液中の繊維が、再生セルロースおよび/またはポリマー繊維などの合成繊維から形成された繊維である、上記項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
[17].
前記繊維懸濁液が、ミクロフィブリル化セルロースをさらに含む、上記項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
[18].
前記製品が複数プライの紙または板紙製品であり、前記方法が、前記の提供された第1のプライを少なくとも第2のプライに取り付けるステップをさらに含む、上記項目1~15または17のいずれか1項に記載の方法。
[19].
上記項目1~15、17~18のいずれか1項に記載の方法に従って得られる製品であって、紙製品または板紙製品である製品。
[20].
上記項目1~17のいずれか1項に記載の方法に従って得られる製品であって、不織製品である製品。