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  • 特許-インクジェット印刷用のインク組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用のインク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20230707BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230707BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
C09D11/36
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 112
B41J2/01 501
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020552349
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019057873
(87)【国際公開番号】W WO2019185804
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】1804959.3
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521404071
【氏名又は名称】ドミノ・プリンティング・サイエンシズ・ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エマヌエラ・モーガン・ベルトラーメ
(72)【発明者】
【氏名】マリー・トムソン
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105818(JP,A)
【文献】特開昭57-090068(JP,A)
【文献】特開2008-297446(JP,A)
【文献】特開昭55-115478(JP,A)
【文献】国際公開第2000/022055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体担体、着色剤、シロキサン界面活性剤、及び金属導電性塩を含むインク組成物であって、シロキサン界面活性剤が、インク組成物の0.1質量%超の量で存在し、
前記着色剤が、カーボンブラックを含み、
前記金属導電性塩の非存在下におけるインク組成物が、500μS/cm未満の導電性を有する、インク組成物。
【請求項2】
前記液体担体が、少なくとも1つの有機溶媒を含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの有機溶媒が、メチルエチルケトン、アセトン、及びエタノールの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの有機溶媒が、エタノールと酢酸エチルとの混合物、またはエタノールとメチルエチルケトンとの混合物、またはアセトン、酢酸メチル、及び酢酸エチルの混合物を含む、請求項2または3に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記着色剤が、カーボンブラックの分散物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記シロキサン界面活性剤が、ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記シロキサン界面活性剤が、インク組成物の少なくとも0.3質量%の量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記金属導電性塩が、第1族の金属の塩を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記金属導電性塩が、硝酸リチウム、トリフル酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、またはヨウ化カリウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項8に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記金属導電性塩が、ヘキサフルオロリン酸カリウム及びヨウ化カリウムの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記金属導電性塩が、インク組成物の0.3から4.0質量%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のインク組成物を含むインクカートリッジ。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載のインク組成物を基材上に付着させる工程、及び液体担体の少なくとも一成分を少なくとも部分的に蒸発させる工程を含む、印刷方法。
【請求項14】
前記のインク組成物を基材上に付着させる工程が、インクジェット印刷ヘッドから前記インク組成物の液滴を前記基材上に射出する工程を含む、請求項13に記載の印刷方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の方法を使用して印刷付着物でマーク付けされた物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、特に連続インクジェット印刷における使用のためのインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願第1879969号は、食品及び医薬品への直接の連続インクジェット印刷における使用のための、摂取可能なインク組成物に関する。これらのインク組成物は、液体担体、着色剤、シロキサン界面活性剤、及び、これらの成分が連続インクジェット印刷のために十分な導電性を提供しない場合は、金属導電性塩を含む。
【0003】
シロキサン界面活性剤は、欧州特許出願第1879969号のインク組成物の0.1質量%の量で存在し、インク組成物の表面張力を修正し、調節する目的用であると記載されている。
【0004】
欧州特許出願第1879969号は、摂取可能なインク組成物を、表面エネルギーの低い基材、例えば、ポリプロピレン(PP)、並びに高密度及び低密度のポリエチレン(HDPE及びLDPE)に印刷するために使用することについては言及していないが、これらのインク組成物のシロキサン界面活性剤及び導電性塩の含有量に鑑みれば、インク製造の分野の当業者であれば、これらのインク組成物が、こうした表面エネルギーの低い基材への接着性に乏しいことを予測するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願第1879969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表面エネルギーの低い基材に対して優れた接着性を有する連続インクジェット印刷のためのインク組成物を提供することである。
【0007】
本発明の代替的または追加の目的は、既知のインク組成物の、商業的に有用な代替品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インク組成物、特に、シロキサン界面活性剤及び金属導電性塩を有する、連続インクジェット印刷における使用のためのインク組成物を提供するものであり、このインク組成物は、表面エネルギーの低い基材、特に、低エネルギー基材、例えば、ポリプロピレン、LDPE、及びHDPEへの優れた接着性を有する印刷画像の生成に好適である。
【0009】
従って、第一の態様では、本発明は、液体担体、着色剤、シロキサン界面活性剤、及び金属導電性塩を含むインク組成物であって、シロキサン界面活性剤が、インク組成物の0.1質量%超の量で存在するインク組成物を提供する。
【0010】
インク組成物中の、インク組成物の0.1質量%超の量で存在するシロキサン界面活性剤と金属導電性塩との組み合わせは、驚くべきことに、表面エネルギーの低い基材上に印刷された画像が生成されることを可能にし、この画像はこうした基材への優れた接着性を示す。これは、シロキサン界面活性剤及び導電性塩を含むインク組成物が、表面エネルギーが低い基材への接着性に乏しいであろうとの予測に反する。
【0011】
別の態様において、本発明は、本発明のインク組成物を用いて形成された印刷付着物を提供する。印刷付着物は、着色剤、シロキサン界面活性剤、及び金属導電性塩を含む。
【0012】
このようにして、本発明は、印刷された付着物を製造するためのインク組成物及び印刷された付着物を提供し、この印刷付着物は、表面エネルギーの低い基材に対して優れた接着性を有する。
【0013】
このインク組成物は、インクジェットプリンタ、特に連続インクジェットプリンタの構成要素に適合する。インク組成物は、耐久性のある印刷画像を達成するために、製品及び/または製品包装への直接適用に好適である。
【0014】
本発明のこれらの態様及び他の態様並びに実施態様は、以下にさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、試験画像の4組のデジタル顕微鏡写真のセットである。・1-NSは、シロキサン界面活性剤を使用しなかったこと以外は本発明に従うインクを使用して印刷され;・1は、本発明に従うインクを用いて印刷された。これは、本例の場合はインクがシロキサン界面活性剤を有するということ以外は1-NSと同様のインクであり;・C1-NSは、金属導電性塩の代わりに非金属導電性塩を使用し、且つシロキサン界面活性剤を含まない比較インクを使用して印刷され;さらに・C1は、シロキサン系界面活性剤を含む比較インクを用いて印刷された。これは、本例の場合はインクがシロキサン界面活性剤を含むこと以外は、C1-NSと同様のインクである。 各組の左側の写真(A)は、HDPEにおけるテープ剥離接着性試験より前に撮られ、右側の(B)は後に撮られたものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、液体担体、着色剤、シロキサン界面活性剤、及び金属導電性塩を含むインク組成物を提供し、ここで、前記シロキサン界面活性剤は、インク組成物の0.1質量%超の量で存在する。液体担体は、有機溶媒の形態であってよい。
【0017】
金属導電性塩の存在により、導電性の低い着色剤、例えば、非イオン性染料及び顔料分散物を、本発明のインク組成物中に使用することが可能になる。
【0018】
本明細書中における低導電性とは、着色剤のみでは連続インクジェット印刷に必要な電気伝導性を提供できないことを意味する。すなわち、本発明のインク組成物の着色剤が低導電性の着色剤である場合、金属導電性塩の非存在下では、本発明のインク組成物は、連続インクジェット印刷における使用のための十分な電気伝導性を備えていないことになる。
【0019】
好ましくは、本明細書に記載のインク組成物は、25℃において約0.5から8mPa.s、より好ましくは約1から6.5mPa.s、さらにより好ましくは2から5.5mPa.sの粘度を有する。好ましくは、本明細書に記載のインク組成物は、25℃における粘度が7mPa.s未満、より好ましくは5.5mPa.s未満である。好ましくは、本明細書に記載のインク組成物は、25℃において0.5mPa.s超、より好ましくは1mPa.s超、さらにより好ましくは3mPa.s超の粘度を有する。インク組成物の粘度は、上述の量から選択される上限及び下限の範囲であってよい。インク組成物の粘度は、粘度計、例えば、Brookfield DV-II+粘度計を用いて測定してよい。
【0020】
好ましくは、本明細書に記載されるインク組成物は、25℃における静的表面張力が20から50mN/m、より好ましくは20から40mN/mであり、最も好ましくは20から30mN/mである。前記組成物の静的表面張力は、du Nouy リング張力計などの装置を用いて、または、KSV Cam 200光学張力計でペンダントドロップ法を用いて、測定してよい。インク組成物の静的表面張力は、代わりに、泡圧張力計、例えばSITA pro line t15を使用して測定してよい。
【0021】
<着色剤>
インク組成物及び印刷付着物は、着色剤を含む。着色剤は特に限定されず、当技術分野において既知のあらゆる任意の好適な着色剤を使用してよい。
【0022】
いくつかの実施態様では、着色剤は低導電性着色剤であってよい。着色剤が低導電性着色剤、例えば、非イオン性染料または顔料分散物である場合、金属導電性塩の非存在下におけるインク組成物の電気伝導率は、25℃で300μS/cm未満、好ましくは200μS/cm未満である。
【0023】
金属導電性塩の非存在下におけるインク組成物の電気伝導率は、EDTシリーズ3 BA380導電率計を用い、EDT E8070ポリマー導電性セルプローブを使用して、25℃の温度の水浴で温めた試料で測定してよい。
【0024】
着色剤が低導電性着色剤であって、金属導電性塩が存在しない場合、インク組成物は、低導電性着色剤が非導電性であることから非導電性となりうる。例えば、低導電性着色剤は、非イオン性(すなわち、完全に未帯電)であってよい。
【0025】
いくつかの実施態様では、着色剤は、非イオン性着色剤、例えば、非イオン性染料または顔料である。これは完全に未帯電の染料、例えば、Solvent Blue 104であってよい。 好ましくは、着色剤は顔料である。顔料は、組成物中で分散物の形態であってよい。顔料は、無機顔料であっても、有機顔料であってもよい。
【0026】
本明細書中で使用される用語「非イオン性」は、イオンではなく、溶液中でイオンに解離しない物質を指す。すなわち、「非イオン性」なる語は、塩ではなく、また、形式電荷を含まない物質を指す。
【0027】
着色剤が低導電性着色剤であり、金属導電性塩が存在しない場合、インク組成物は、低導電性着色剤が液体担体中で解離性の低いイオン結合型錯体であることから、低レベルの導電性を有する場合がある。本明細書中における低解離性とは、金属導電性塩の非存在下におけるインク組成物の電気伝導度が、25℃で300μS/cm未満、好ましくは200μS/cm未満であることを意味する。
【0028】
いくつかの実施態様では、着色剤は、液体担体中での解離性が低いかまたは皆無であるイオン結合型錯体の形態の顔料である。例えば、これはPigment Blue 15:2であってよく、これはほとんどの液体担体中で低解離性または非解離性であるイオン結合型錯体である。
【0029】
他の実施態様では、着色剤は、液体担体中で優れた解離性を有するイオン性染料であるが、着色剤は、金属導電性塩の非存在下においてインク組成物の電気伝導性が400μS/cm未満、好ましくは300μS/cm未満、さらに好ましくは200μS/cm未満であるような、十分な低濃度で存在する。
【0030】
導電性顔料、例えばカーボンブラックの分散物が、分散物の一部を形成する分散剤及び/または溶媒が顔料の粒子間の電気的接触を阻害するならば、低導電性着色剤を構成し得ることが理解されるであろう。
【0031】
好ましくは、低導電性着色剤を含むインク組成物は、金属導電性塩の非存在下で、いかなる濃度においても400μS/cm未満の導電性を有する。より好ましくは、こうしたインク組成物は、金属導電性塩の非存在下で、300μS/cm未満、例えば、200μS/cm未満、さらに最も好ましくは100μS/cm未満の導電性を有する。
【0032】
場合により、着色剤は、インク組成物中に、インク組成物の全質量に基づいて1から25質量%、より好ましくは1.3から15質量%、最も好ましくは2から7質量%で存在する。
【0033】
着色剤が低導電性着色剤であり、且つ金属導電性塩を含まないインク組成物は、着色剤がこれらの量で存在する場合は400μS/cm未満の導電性を有する。より好ましくは、金属導電性塩を含まないインク組成物は、300μS/cm未満、例えば200μS/cm未満、最も好ましくは100μS/cm未満の導電性を有する。
【0034】
好ましくは、着色剤が低導電性着色剤であり、且つ金属導電性塩を含まないインク組成物は、インク組成物中に、着色剤がインク組成物中にインク組成物の全質量に基づいて約3質量%で存在する場合、400μS/cm未満の導電性を有する。 より好ましくは、金属導電性塩を含まないインク組成物は、300μS/cm未満、例えば200μS/cm未満、最も好ましくは100μS/cm未満の導電性を有する。
【0035】
好ましくは、着色剤は、低導電性顔料である。低導電性顔料は、組成物中で分散物の形態であってもよい。低導電性顔料は、無機顔料または有機顔料であってよい。
【0036】
好ましくは、着色剤はカーボンブラックである。カーボンブラックは、固体(例えば、粉末またはビーズ)または分散剤形(例えば、溶媒中の分散物)として提供しうる。
【0037】
このようにして、本発明は、例えば一般的な食品包装材料のコード化及びマーク付けの応用において使用可能な、優れた接着特性を有するカーボンブラックインクを提供する。
【0038】
カーボンブラックは、重質石油製品、例えば、FCCタール、コールタール、エチレン分解タールの不完全燃焼によって、または有機材料、例えば、木材や骨の炭化によって生成させ得る。カーボンブラックは、体積に対する表面積の割合が大きい準結晶炭素の形態であってよい。カーボンブラックは、炭素の表面に吸着された(absorbed)酸素錯体(例えば、カルボン酸基、キノリン基、ラクトン基、フェノール基等)を含んでよい。場合により、カーボンブラックを、製造工程中に酸を炭素に噴霧することによって酸性酸化させて、本来の表面化学を変化させてよい。カーボンブラックの表面領域に化学結合した酸素の量を増加させて性能特性を向上させることができる。
【0039】
カーボンブラック製品の多くは、導電性があるとされる。実際、カーボンブラックは、乾燥材料としては導電性である。それにもかかわらず、カーボンブラックが連続インクジェット印刷のためのインク組成物に十分な導電性を提供しない場合は、カーボンブラックは本明細書中で言及されるように低導電性着色剤を構成し得る。
【0040】
乾燥材料としてのカーボンブラック中の電子は、カーボンブラックの粒子間を自由に移動して導電性を提供するが、カーボンブラックが液体担体中に懸濁している場合には粒子間を自由に移動しないとの説が提案されている。
【0041】
本発明のインク組成物に好適なカーボンブラックには、三菱ケミカル株式会社製のカーボンブラック、例えば、No. 2300、No. 900、MCF 88、No. 33、No. 40、No. 45、No. 52、MA 7、MA 8、MA 100、及びNo. 2200 B;Columbian Carbon Co., Ltd.製のカーボンブラック、例えば、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、及びRaven 700;Cabot Corporation製のカーボンブラック、例えば、Regal 250R、Regal 400 R、Regal 330 R、Regal 660 R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、 及びMonarch 1400;Orion製のカーボンブラック、例えば、Printex 45、Printex 35、Printex nature、Special Black 350、Special Black 535、Printex 3、Printex 30、Special Black 275;Degussa製のカーボンブラック、例えば、Color Black FW 1、Color Black FW 2、Color Black FW 2 V、Color Black FW 18、Color Black FW 200、Color Black S 150、Color Black S 160、Color Black S 170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140 U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、及びSpecial Black 4.が含まれる。
【0042】
本発明の黄色インク組成物における使用に好適な顔料には、C.I. Pigment Yellow 1、C.I. Pigment Yellow 2、C.I. Pigment Yellow 3、C.I. Pigment Yellow 12、C.I. Pigment Yellow 13、C.I. Pigment Yellow 14、C.I. Pigment Yellow 16、C.I. Pigment Yellow 17、C.I. Pigment Yellow 73、C.I. Pigment Yellow 74、C.I. Pigment Yellow 75、C.I. Pigment Yellow 83、C.I. Pigment Yellow 93、C.I. Pigment Yellow 95、C.I. Pigment Yellow 97、C.I. Pigment Yellow 98、C.I. Pigment Yellow 109、C.I. Pigment Yellow 110、C.I. Pigment Yellow 114、C.I. Pigment Yellow 128、C.I. Pigment Yellow 129、C.I. Pigment Yellow 138、C.I. Pigment Yellow 150、C.I. Pigment Yellow 151、C.I. Pigment Yellow 154、C.I. Pigment Yellow 155、C.I. Pigment Yellow 180、C.I. Pigment Yellow 185、及びC.I. Pigment Yellow 139が含まれる。
【0043】
本発明のマゼンタインク組成物における使用に好適な顔料には、C.I. Pigment Red 5、C.I. Pigment Red 7、C.I. Pigment Red 12、C.I. Pigment Red 48 (Ca)、C.I. Pigment Red 48 8 (Mn)、C.I. Pigment Red 57 (Ca)、C.I. Pigment Red 57:1、C.I. Pigment Red 112、C.I. Pigment Red 122、C.I. Pigment Red 123、C.I. Pigment Red 168、C.I. Pigment Red 184、C.I. Pigment Red 202、C.I. Pigment Red 176、C.I. Pigment Red 254、C.I. Pigment Red 255、C.I. Pigment Red 272、C.I. Pigment Red 254、C.I. Pigment Orange 64、及びC.I. Pigment Orange 73が含まれる。
【0044】
本発明のシアンインク組成物における使用に好適な顔料には、C.I. Pigment Blue 1、C.I. Pigment Blue 2、C.I. Pigment Blue 3、C.I. Pigment Blue 15:3、C.I. Pigment Blue 15:34、C.I. Pigment Blue 16、C.I. Pigment Blue 22、C.I. Pigment Blue 60、C.I. Vat Blue 4、C.I. Vat Blue 60、C.I. Pigment Blue 15:2、C.I. Pigment Blue 15:4、C.I. Pigment Green 3、C.I. Pigment Violet 23、及びC.I. Pigment Violet 37が含まれる。
【0045】
好ましくは、前記顔料は、C.I. Pigment Red 176、C.I. Pigment Red 254、C.I. Pigment Red 255、C.I. Pigment Red 272、C.I. Pigment Red 254、C.I. Pigment Orange 64、C.I. Pigment Orange 73、C.I. Pigment Yellow 83、C.I. Pigment Yellow 138、C.I. Pigment Yellow 139、C.I. Pigment Yellow 151、C.I. Pigment Yellow 154、C.I. Pigment Blue 15:2、C.I. Pigment Blue 15:3、C.I. Pigment Blue 15:4、C.I. Pigment Green 3、C.I. Pigment Violet 23、及びC.I. Pigment Violet 37から選択される有機顔料である。
【0046】
低導電性有機顔料は、カーボンブラック、多環式顔料(例えば、フタロシアニン、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、キナクリドン、ジオキサジン、チオインジゴ、イソインドリノン、及びキノフタロン顔料)及びアゾ顔料から選択されてもよい。
【0047】
好適な染料には、Oil Black 860(C.I. Solvent Black 3)、Solvaperm Blue 2B、または別のSolvent Blue 104染料、Orasol Blue 855、Orasol Blue 825(C.I. Solvent Blue 67)、Neptune Blue 722(C.I. Solvent Blue 4)、Oil Blue 613(C.I. Solvent Blue 5)、Savinyl Blue GLS(C.I. Solvent Blue 44)、Valifast Blue 2606(C.I. Solvent Blue 70)、Valifast Blue 2620(C.I. Solvent Blue 44)、Millijet Black J10、C.I. Solvent Black 7、27、28、29、35、48、49、C.I. Solvent Blue 35、38、44、45、79、98、100、129、C.I. Solvent Red 8、49、68、89、124、160、164、C.I. Solvent Yellow 83:1、126、146、162、C.I. Solvent Green 5、C.I. Solvent Orange 97、C.I. Solvent Brown 20、52、及びC.I. Solvent Violet 9が含まれ、中でもSolvaperm Blue 2B及びOrasol Blue 855が好ましい低導電性染料であり、C.I. Solvent Black 27及び29が通常の有機溶媒中における優れた解離性を有する好ましいイオン性染料である。
【0048】
好ましくは、着色剤は、インク組成物の総質量に基づいて1から25質量%、より好ましくは1.3から15質量%、最も好ましくは2から7質量%で存在する。
【0049】
好ましくは、着色剤は、インク組成物の総質量に基づいて25質量%未満、より好ましくは15質量%未満、より好ましくは6質量%未満、さらにより好ましくは4質量%未満で存在する。好ましくは、着色剤は、インク組成物の総質量に基づいて1質量%超、好ましくは1.3質量%超、さらにより好ましくは2質量%超で存在する。着色剤は、上述の量から選択される上限と下限との範囲内にある量で存在してもよい。
このようにして、インク組成物は、所望の不透明度と色を有し得る。
【0050】
<金属導電性塩>
インク組成物及び印刷付着物は、金属導電性塩を含む。
インク組成物の0.1重量%超の量で存在する、金属導電性塩とシロキサン界面活性剤との組み合わせは、驚くべきことに、シロキサン界面活性剤及び金属導電性塩を含むインク組成物を用いて製造された印刷画像の、低表面エネルギー基材への、一般的には劣悪な接着性を改善する結果をもたらす。すなわち、この組み合わせは、低表面エネルギー基材に対する接着性の改善を提供する。この、シロキサン界面活性剤及び金属導電性塩の存在の有害な効果が接着性に対しては逆転することは、特に非金属導電性塩がインク組成物中に使用される場合には逆転が観察されないことに鑑みれば、驚くべきである。
【0051】
塩は、製品が電気的に中性である(正味の電荷を持たない)ように、相関する数のカチオン(正に帯電したイオン)及びアニオン(負に帯電したイオン)から構成される。金属導電性塩とは、カチオンが金属カチオンである塩である。
【0052】
カチオンは、第1族の金属イオン(アルカリ金属イオン)、例えば、カリウム、リチウム、またはナトリウムのカチオンから選択されるカチオンであってよい。好ましくは、カチオンは、カリウムカチオンである。
【0053】
アニオンは、任意の適切な陰イオンであってよく、例えばこれは、有機または無機のアニオンであってよく、単原子または多原子のアニオンであってもよい。アニオンは、PF6 -、CN-、Cl-、F-、I-、Br-、SCN-、C6H7O2 -、CF3SO3 -、またはNO3 -から選択されてよい。好ましくは、アニオンは、PF6 -またはI-である。
【0054】
好ましくは、金属導電性塩は、硝酸リチウム、トリフル酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、またはヨウ化カリウムから選択される。より好ましくは、金属導電性塩は、ヘキサフルオロリン酸カリウム及び/またはヨウ化カリウムである。
【0055】
好ましくは、金属導電性塩は、インク組成物の全質量に基づいて4.0質量%未満、より好ましくは2.0質量%未満、さらにより好ましくは1.5質量%未満で存在する。好ましくは、金属導電性塩は、インク組成物の総質量に基づいて0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらにより好ましくは0.8質量%以上で存在する。前記金属導電性塩は、上記の量から選択される上限及び下限の範囲内の量で存在してよい。例えば、金属導電性塩は、インク組成物の全質量に基づいて0.3から4.0質量で存在する。
【0056】
好ましくは、金属導電性塩は、インク組成物に、2200μS/cm未満、より好ましくは1900μS/cm未満、さらにより好ましくは1500μS/cm未満の導電性を持たせる量で存在する。好ましくは、金属導電性塩は、インク組成物に200μS/cm超、好ましくは500μS/cm超、好ましくは800μS/cm超、さらにより好ましくは1200μS/cm超の導電性を提供する量で存在する。金属導電性塩は、上記の量から選択される上限及び下限の範囲内の導電性をもたらす量で存在してよい。例えば、インク組成物は、500から2200μS/cmの導電性を有する。
【0057】
導電性は、EDTシリーズ3 BA380導電率計を用い、EDT E8070ポリマー導電性セルプローブを使用して、25℃の温度の水浴で温めた試料で測定してよい。
【0058】
<シロキサン界面活性剤>
インク組成物は、インク組成物の0.1質量%超の量で存在するシロキサン界面活性剤を更に含む。
シロキサン界面活性剤は、シロキサン官能基(すなわち、Si-O-Si連結基)を有する界面活性剤である。
好ましくは、シロキサン界面活性剤は、ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤である。
【0059】
好ましくは、シロキサン界面活性剤は、インク組成物の総質量に基づいて4.0質量%未満、より好ましくは3.0質量%未満、さらにより好ましくは2.5質量%未満で存在する。シロキサン界面活性剤は、インク組成物の総質量に基づいて0.1質量%超、好ましくは0.2質量%超、好ましくは0.3質量%超、好ましくは0.5質量%超、好ましくは0.7質量%超、さらにより好ましくは0.9質量%超で存在する。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、インク組成物の全質量に基づいて約1.0質量%で存在する。シロキサン界面活性剤は、上記の量から選択される上限及び下限を有する範囲内の量で存在してよい。
【0060】
好ましくは、シロキサン界面活性剤は、25℃において約100から3000mPa・s、より好ましくは約500から2500mPa・s、より好ましくは約1000から2500mPa・s、さらにより好ましくは約1500から2500mPa・sの粘度を有する。好ましくは、シロキサン界面活性剤は、25℃において3000mPa・s未満、より好ましくは2000mPa・s未満である。
【0061】
好ましくは、シロキサン界面活性剤は、25℃において100mPa・s超、より好ましくは500mPa・s超、より好ましくは1000mPa・s超、より好ましくは1500mPa・s超、さらにより好ましくは1700mPa・s超の粘度を有する。シロキサン界面活性剤の粘度は、上記の量から選択される上限及び下限を有する範囲内であってよい。シロキサン界面活性剤の粘度は、粘度計、例えば、Brookfield DV-II+粘度計を用いて測定してよい。
【0062】
場合によっては、シロキサン界面活性剤は、溶媒中に予め希釈して得られる。シロキサン界面活性剤の粘度とは、予め希釈された溶液の粘度か、あるいは希釈前のシロキサン界面活性剤の粘度を意味し得る。好ましくは、粘度とは、希釈前のシロキサン界面活性剤を指し、すなわち、粘度とは、シロキサン界面活性剤自体の粘度である。
【0063】
<溶媒>
インク組成物の液体担体は、有機溶媒または有機溶媒の混合物を含んでよい。着色剤を溶解することのできる任意の有機溶媒または混合物が好適である。溶媒は、ケトン、アルコール、エステル、グリコール、グリコールエーテル、カーボネート、またはこれらの混合物から選択してよい。
【0064】
例えば、有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、及び1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジメチルカーボネート、またはこれらの混合物から選択されてよい。
【0065】
好ましくは、有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、エタノール、酢酸メチル、及び酢酸エチル、またはこれらの混合物から選択され得る。特に、メチルエチルケトンとエタノール、エタノールと酢酸エチル及び/または酢酸メチル、エタノールと1-メトキシ-2-プロパノール、あるいはアセトンと酢酸メチルの組み合わせを使用してよい。
【0066】
好ましくは、有機溶媒または有機溶媒の混合物は、インク組成物の総質量に基づいて、この組成物中に10から95質量%、より好ましくは40から90質量%、最も好ましくは70から90質量%の範囲で存在する。
【0067】
好ましくは、有機溶媒または有機溶媒の混合物は、インク組成物の総質量に基づいて95質量%未満、より好ましくは90質量%未満、さらにより好ましくは85質量%未満で存在する。好ましくは、溶媒は、インク組成物の総質量に基づいて10質量%超、好ましくは40質量%超、さらにより好ましくは70質量%超で存在する。溶媒は、上記の量から選択される上限及び下限を有する範囲内の量で存在してよい。
【0068】
使用に好ましい有機溶媒は、ケトン、例えば、メチルエチルケトンである。好ましくは、ケトン、例えばメチルエチルケトンは、インク組成物の総質量に基づいて10から90質量%、より好ましくは60から87質量%、最も好ましくは75から85質量%で存在する。
【0069】
好ましくは、ケトン、例えばメチルエチルケトンは、インク組成物の全質量に基づいて90質量%未満、より好ましくは87質量%未満、さらにより好ましくは85質量%未満で存在する。好ましくは、ケトン、例えばメチルエチルケトンは、インク組成物の全質量に基づいて10質量%超、好ましくは60質量%超、さらにより好ましくは75質量%超で存在する。ケトンは、上記の量から選択される上限及び下限を有する範囲内の量で存在してよい。
【0070】
有機溶媒が混合物である場合、混合物は、好ましくは、ケトンとアルコール、例えばC1-6アルキルアルコール、またはエステルとケトン、またはケトンとエステルを含む。アルコールは、C1-6アルキルアルコール、例えばイソプロパノールまたはエタノール、好ましくはエタノールであってよい。エステルは、C1-6アルキルC1-6アルカノエート、例えば酢酸エチルまたは酢酸メチルである。ケトンは、C1-6アルキルC1-6アルキルケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)であってよい。
【0071】
好ましい混合物は、メチルエチルケトンと、エタノールもしくはイソプロパノール、例えばエタノールとを含む。この場合、好ましくは、メチルエチルケトンは、インク組成物の総質量に基づいて90質量%未満、より好ましくは80質量%未満、さらにより好ましくは70質量%未満で存在する。好ましくは、メチルエチルケトンは、インク組成物の総質量に基づいて10質量%超、好ましくは45質量%超、さらにより好ましくは55質量%超で存在する。この場合、好ましくは、アルコールは、インク組成物の全質量に基づいて5から20質量%、より好ましくは10から15質量%で存在する。好ましくは、アルコールは、インク組成物の総質量に基づいて20質量%未満、より好ましくは15質量%未満で存在する。好ましくは、アルコールは、インク組成物の総質量に基づいて5質量%超、好ましくは10質量%超の量で存在する。メチルエチルケトン及びアルコールは、上記の量から選択される上限及び下限を有する範囲内で存在してよい。
【0072】
好ましい混合物は、アセトンと、酢酸メチル及び/もしくは酢酸エチル、例えば酢酸メチル及び酢酸エチルとを含む。この場合、好ましくは、アセトンは、インク組成物の総質量に基づいて80質量%未満、より好ましくは60質量%未満、さらにより好ましくは50質量%未満で存在する。好ましくは、アセトンは、インク組成物の総質量に基づいて10質量%超、好ましくは30質量%超、さらにより好ましくは40質量%超存在する。この場合、好ましくは、エステルは、インク組成物の全質量に基づいて5から40質量%、より好ましくは10から30質量%で存在する。好ましくは、エステルは、インク組成物の総質量に基づいて30質量%未満、より好ましくは25質量%未満で存在する。好ましくは、エステルは、インク組成物の総質量に基づいて5質量%超、好ましくは15質量%超で存在する。アセトン及びエステルは、上記の量から選択される上限及び下限の範囲内の量で存在してよい。
【0073】
好ましい混合物は、アルコール、例えばエタノールと、酢酸メチルまたは酢酸エチル、例えば酢酸エチルとを含む。この場合、好ましくは、アルコール、例えばエタノールは、インク組成物の総質量に基づいて70質量%未満、より好ましくは50質量%未満、さらにより好ましくは40質量%未満で存在する。好ましくは、アルコール、例えばエタノールは、インク組成物の総質量に基づいて10質量%超、好ましくは20質量%超、さらにより好ましくは30質量%超で存在する。この場合、好ましくは、エステルは、インク組成物の全質量に基づいて10から70質量%、より好ましくは20から50質量%で存在する。好ましくは、エステルは、インク組成物の総質量に基づいて60質量%未満、より好ましくは40質量%未満で存在する。好ましくは、エステルは、インク組成物の総質量に基づいて20質量%超、好ましくは30質量%超で存在する。アルコール及びエステルは、上記の量から選択される上限及び下限を有する範囲内の量で存在してよい。
【0074】
好ましい混合物は、アセトンとアルコール、例えばエタノールとを含む。この場合、好ましくは、アセトンは、インク組成物の総質量に基づいて80質量%未満、より好ましくは60質量%未満、さらにより好ましくは50質量%未満で存在する。好ましくは、アセトンは、インク組成物の総質量に基づいて10質量%超、好ましくは30質量%超、さらにより好ましくは40質量%超で存在する。この場合、好ましくは、アルコールは、インク組成物の全質量に基づいて5から40質量%、より好ましくは10から30質量%で存在する。好ましくは、アルコールは、インク組成物の総質量に基づいて30質量%未満、より好ましくは25質量%未満で存在する。好ましくは、アルコールは、インク組成物の総質量に基づいて5質量%超、好ましくは15質量%超で存在する。アセトン及びアルコールは、上記の量から選択される上限及び下限を有する範囲内の量で存在してよい。
【0075】
インク組成物は、好ましくは非水性組成物である。
インク組成物は、また、水を含んでもよい。例えば、存在する場合、水は、インク組成物の全質量に基づいて10質量%以下で存在してよく、好ましくは、水は5質量%以下で存在する。
印刷付着物においては、液体担体または液体担体の少なくとも一部成分は、少なくとも部分的に蒸発しているであろう。この場合、印刷付着物中に液体担体が存在しないか、または液体担体が微量しか存在しないということになりうる。
【0076】
<バインダー>
バインダー、例えばバインダー樹脂が、インクジェット組成物中に存在してよい。
バインダーは、1種以上のポリマーを含む。バインダーは任意の適当なバインダーから選択してよく、例えば、適当なバインダーは、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ロジンエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂、ビニル樹脂、ポリスチレン/ポリアクリレートコポリマー、セルロースエーテル、硝酸セルロース樹脂、ポリマレイン酸無水物、アセタールポリマー、ポリスチレン/ポリブタジエンコポリマー、ポリスチレン/ポリメタクリレートコポリマー、スルホン化ポリエステル、アルデヒド樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、及びポリケトン樹脂、並びにこれらの2種以上の混合物を含む。
【0077】
好ましくは、バインダーは、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル(例えば、ポリビニルブチラール(PVB))、及びポリウレタンから選択される。より好ましくは、バインダーはセルロース樹脂である。さらにより好ましくは、セルロース樹脂は、酢酸酪酸セルロースである。
【0078】
好ましくは、バインダーは、分子量、例えば、500から50,000、より好ましくは1,500から50,000、より好ましくは10,000から50,000、さらにより好ましくは15,000から50,000の重量平均分子量(Mw)を有する。好ましくは、バインダーは、分子量、例えば、少なくとも500、より好ましくは少なくとも1,500、より好ましくは少なくとも10,000、さらにより好ましくは少なくとも15,000の重量平均分子量(Mw)を有する。好ましくは、バインダーは、分子量、例えば、50,000未満の重量平均分子量(Mw)を有する。バインダーは、分子量、例えば、上記の量から選択される上限及び下限の範囲内である重量平均分子量(Mw)を有する。
【0079】
以下に記載のインク組成物においては、セルロースバインダー樹脂CAB-551-0.1が使用される。以下の記載においては、CAB-551-0.1はCAB551と略記される。以下に記載のインク組成物においては、バインダーForalyn 110が使用される。Foralyn 110は、以下の記載においては「Foralyn」とも呼称される。
【0080】
<添加剤>
インク組成物及び印刷付着物は、当技術分野で一般的に使用されるもの等の付加的成分を含んでよい。
【0081】
例えば、インク組成物及び印刷付着物は、1種以上の防腐剤、湿潤剤、付加的界面活性剤、可塑剤、湿潤剤、接着促進剤、殺生物剤、及びこれらの2種以上の混合物をさらに含んでよい。
【0082】
<湿潤剤>
好ましくは、インク組成物及び印刷付着物は、湿潤剤をさらに含む。
適切な湿潤剤は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、ソルビトール、2-ピロリドン、2-プロパンジオール、ブチロールアセトン、テトラヒドロフルフリルアルコール、及び1,2,4-ブタントリオール、及びこれらの2つ以上の混合物を含む。好ましくは、湿潤剤は、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの2種以上の混合物からなる群より選択される。
【0083】
<防腐剤>
好ましくは、インク組成物及び印刷付着物は、防腐剤をさらに含む。
好適な防腐剤は、安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、メチルパラベン、及びこれらの2種以上を含む。好ましい防腐剤は安息香酸ナトリウムである。
【0084】
インク組成物は、組成物の全質量に基づいて、最高で2質量%までの防腐剤を含んでよい。より好ましくは、インク組成物は、組成物の総質量に基づいて最高で1質量%までの防腐剤を含む。
【0085】
<粘着剤>
好ましくは、インクジェットインク組成物及び印刷付着物は、粘着剤を更に含む。
場合によっては、粘着剤はバインダーであってよく、好ましくは、粘着剤がバインダーである場合には、これはコバインダーと組み合わせて使用される。場合によっては、粘着剤は、非成膜性ポリマーである。場合により、粘着剤は、所望の特性を生成するために他のポリマーと組み合わせて使用してもよい。
【0086】
好適な粘着剤は、樹脂、例えば、ロジン類、テルペン類、及び変性テルペン類、脂肪族、脂環族、及び芳香族の樹脂、テルペンフェノール樹脂、及びシリコーンまたは鉱物の油を含む。好ましくは、粘着剤は、テルペンフェノール樹脂及び/または水添ロジンのエステルである。最も好ましくは、粘着剤はテルペンフェノール樹脂である。
【0087】
インク組成物は、組成物の全質量に基づいて、0.3から10質量%の粘着剤を含んでよい。より好ましくは、インク組成物は、組成物の全質量に基づいて、1から5質量%の粘着剤を含む。
【0088】
<接着促進剤>
好ましくは、インクジェットインク組成物及び印刷付着物は、接着促進剤をさらに含む。
【0089】
接着促進剤は、インク組成物の基材への接着を促進するように作用する物質である。
【0090】
好適な接着促進剤は、リン酸チタン錯体、チタンアセチルアセトネート、トリエタノールアミンジルコネート、ジルコニウムシトレート、ジルコニウムプロパノエート、有機ケイ素、ポリケトンバインダー、ポリエステルバインダー、またはケトン縮合樹脂である。
【0091】
好ましくは、接着促進剤は、リン酸チタン錯体またはケトン縮合樹脂である。より好ましくは、接着促進剤はケトン縮合樹脂である。
【0092】
<分散剤>
好ましくは、インク組成物及び印刷付着物は、顔料分散物をさらに含む。好適な分散剤は、イオン性及び非イオン性の分散剤を含む。好ましくは、分散剤はアクリルブロックコポリマーである。
【0093】
<包装の種類>
本発明は、さらに、本発明のインク組成物の実施態様のいずれかの液滴の流れを基板上に導き、インク液滴を乾燥させ、これによって基材上に画像を印刷することを含む、基板上に画像を印刷する方法を提供する。好ましくは、本発明の方法では、インクジェットプリンタ、例えば、連続インクジェットプリンタが使用される。
【0094】
本発明のインク組成物は、非多孔性基材、特に、例えば、典型的には食品包装に使用されるような非多孔性低表面エネルギー基材への印刷に特に好適である。
【0095】
こうした食品包装の例には、アルミニウムまたはスチール缶、及び低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、PET、ナイロン、またはPVdC製の、ポット、レトルトパウチ、及びフレキシブルフィルムが含まれる。好ましくは、基材は、LDPE、HDPE、またはPP基材である。
【0096】
<方法と使用>
インク組成物は、当該技術分野で既知の方法を用いて成分を組み合わせることによって処方される。
【0097】
インク組成物の成分は、成分を互いに添加し、機械的撹拌を用いて撹拌することによって混合してもよい。場合により、前記成分は、以下:溶媒、バインダー、界面活性剤、付加的添加剤、着色剤、分散物、及び導電性塩の順に添加してよい。
【0098】
本明細書は、インク組成物の実施態様のいずれかの液滴の流れを基材に導き、インク液滴を乾燥させ、それによって基材上に画像を印刷することを含む、連続インクジェットプリンタにおいて基材上に画像を印刷する方法をさらに提供する。本発明によれば、あらゆる適当な基材に印刷し得る。
【0099】
好適な基材の例には、多孔質基材、例えば非塗工紙、準多孔質基材、例えば水性塗工紙、クレーコート紙、シリカコート紙、UVオーバーコート紙、ポリマーオーバーコート紙、及びワニスオーバーコート紙、並びに非多孔質基材、例えば硬質プラスチック、ポリマーフィルム、ポリマー積層体、金属、金属箔積層体、ガラス、及びセラミックが含まれる。紙基材は、薄紙、ロール紙、またはボール紙であってよい。プラスチック、積層体、金属、ガラス、及びセラミックの基材は、任意の適切な形態、例えば、瓶もしくは容器、板状、棒状、円筒状などであってよい。
【0100】
好ましくは、本明細書に記載されるインク組成物は、コード化及びマーク付け、特に食品包装のコード化及びマーク付けに好適である。特に好ましくは、インク組成物は、食品または飲料製品のプラスチックまたは紙の包装材への印刷、例えばこうした包装への賞味期限の印刷に有用である。
有利には、本明細書に記載の組成物及び方法の使用により、上述の問題の少なくともいくつかが克服及び/または緩和され、改善された品質の印刷が提供される。
【0101】
本発明はさらに、本発明のインク組成物を使用して印刷付着物がその表面に形成された物品を含む、印刷物品をさらに提供する。
【0102】
<定義>
本明細書で使用されるように、印刷付着物なる語は、適切な基材上に印刷し、少なくとも部分的に乾燥させた後のインク組成物を指す。すなわち、本発明のインク組成物であって、その液体担体の少なくとも一部が蒸発したものである。
【0103】
インク組成物は、インクジェット印刷における使用に好適なインクジェットインク組成物であってよい。インク組成物は、典型的には液体の形態であり、典型的には溶液の形態である。
【0104】
用語C1-6アルキルアルコールは、少なくとも1つのヒドロキシル官能基(-OH)を有し、且つ1から6の炭素原子を有する任意の溶媒を指す。
【0105】
ポリマーとは、繰り返し単位を有する任意の物質であり、多糖類及びその誘導体、例えばセルロース及びその誘導体;付加ポリマー、例えばアクリル樹脂またはポリビニル樹脂;縮合ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアミド、及びポリエステル;ならびにコポリマーであって、その繰り返し単位が2種以上の異なる化合物、例えばスチレン及び無水マレイン酸から形成されるコポリマーを含む。
【0106】
<開示の範囲>
上述の実施態様の個々の適合する組み合わせは、本明細書中に明確に開示されており、個々の組み合わせが個別に且つ明確に詳説されたかの如くである。
【0107】
本発明の様々なさらなる態様及び実施態様は、本明細書の開示に照らして、当業者には明らかであろう。
【0108】
本明細書で使用される「及び/または」は、特定された2つの特徴または構成要素のいずれか一方の、他方との、または他方を伴わない、具体的な開示と解される。例えば、「A及び/またはB」とは、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びBのそれぞれが、個別に本明細書中に記載されている具体的な開示であるとして解されるべきである。
【0109】
文脈に矛盾しない限り、上記の特徴の説明及び定義は、本発明の任意の特定の態様または実施態様に限定されるものではなく、記載されている全ての態様及び実施態様に等しく適用される。
【0110】
本発明の所定の態様及び実施態様は、例示のために、上述の図を参照して、詳説される。
【実施例
【0111】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに詳説する。
粘度は、ULアダプターを取り付けたBrookfield DV-E粘度計を用いて測定した。粘度は、温度25℃の水浴に浸した試料を用い、1.013kPaの圧力及び70%の湿度の室内で測定した。
導電率は、EDTシリーズ3 BA380導電率計を用い、EDT E8070ポリマー導電率セルプローブを用いて測定した。導電率は、温度25℃の水浴で温めた試料を用いて測定した。
【0112】
<印刷インク特性>
印刷前に、インクを1μmのろ紙で濾過した。
印刷試料を、60μmのノズルを取り付けたDomino Axシリーズ印刷試料リグ(rig)を使用して作成した。インクの接着性を、HDPE、LDPE、及びPPの基材に印刷された液滴の9*9配列の形態の印刷画像を使用して評価した。HDPE、LDPE、及びPPの基材は以下の通りであった。
【0113】
【表1】
【0114】
60μmのノズルには、使用前にその都度、主なインク溶媒を流した。基材は、印刷前に、エタノール(DEB 100)で湿らせたペーパータオルで清浄化した。
【0115】
<テープ剥離接着性試験>
テープ剥離接着性試験を、Elcometer粘着テープから供給されているISO 2409 Adhesive TapeとScotchグレード810(幅19.05mm)との両方を使用して実施した。以下の説明では、スコッチグレード810(幅19.05mm)を「810」テープと呼称し、ISO 2409を「ISO」テープと呼称する。
【0116】
試験は、印刷の24時間後に行った。テープ剥離接着性試験は、20から25℃にて相対湿度25から45%で行った。
【0117】
試験しようとするテープの約10cmをリールから切り取った。このテープを、テープを剥離できるように尾部は接着させないまま、印刷画像を完全に覆うように印刷画像に貼り付けた。テープは、皺が生じたり気泡を含むことのないように貼り付けた。消しゴムを用い、テープがたしかに基材と均一に接触するように、テープの中心線に消しゴムを押し付け、テープの接着部分の長さに亘り各端部に向かって外側に押し出した。
【0118】
その後、基材をしっかりと所定の位置に保持しつつ、テープの未接着の尾部を持ち上げ且つ引っ張るという双方を組み合わせた素早い動きで引っ張ることにより、テープ剥離した。各試験は3回実施した。
【0119】
接着性能は、テープ貼付前とテープ剥離後に撮った印刷画像のデジタル顕微鏡写真のペアを、Matlabソフトウェアを使用して比較することでスコア化した。こうした各試験を3回実施した。
【0120】
Matlabソフトウェアは以下のように使用する。
1.印刷画像のデジタル写真を、Celestron Model 44302-b手持ち式デジタル顕微鏡を使用して撮影される。
2.デジタル写真を、Matlabソフトウェアを実行しているPCに転送する。
3.Matlabソフトウェアが、Otsu法を用いて、二値化されたデジタル写真の閾値を求める(すなわち、レベル=graythresh(I))。
4.Matlabソフトウェアは、デジタル写真を白黒のみに変換、すなわち、閾値を用いてデジタル写真を二値化し、10ピクセル未満のアーチファクトをフィルタリングする。
5.Matlabソフトウェアは、regionprops関数を使用して、フィルタリングされた2値化デジタル写真の残りの特徴の面積の合計を計算する。
【0121】
この処理は、テープが貼られる前と、テープが剥離された後の印刷画像について行われる。テープが剥離された後の残りの特徴の面積の合計が、テープが貼られる前の残りの特徴の面積の合計から差し引かれる。
【0122】
剥離されたインクの割合は、次のように計算される。
剥離されたインクの割合=[(テープを貼る前の面積の合計-テープを剥離した後の面積の合計)÷テープを貼る前の面積の合計]×100。
【0123】
<インク組成物>
着色剤として使用するために、2つのカーボンブラック顔料分散物を調製した。
以下に顔料分散物01と呼称する第1の分散物を以下のように調製した。34質量%のMEKを36質量%のBASF EFKA PX 4320分散物と、機械的撹拌を用いて混合した。均一になったところで、30質量%のCabot Regal 250Rカーボンブラック顔料を添加し、Dispermat AE 01-M1-EX 高シアミキサーを用いて均一になるまで混合し、予備分散物を作成した。この予備分散物を、0.8mmのセラミックビーズを85%装填したEiger Torrance社製、ラボスケールのビーズ摩砕機を用いて粉砕した。
【0124】
顔料分散物02と呼称する第2の分散物を以下のように調製した。40質量%の酢酸エチルを、30質量%のBASF EFKA PX 4320分散物と、Dispermat AE 01-M1-EX 高シアミキサーを用いて混合した。均一になったところで、30質量%のCabot Regal 250Rカーボンブラック顔料を添加し、同一の高シアミキサーを用いて均一になるまで混合し、予備分散物を作成した。この予備分散物を、0.8mmのセラミックビーズを85%装填したEiger Torrance社製のビーズ摩砕機を用いて粉砕した。
【0125】
インクを、磁気撹拌しながら、溶媒、バインダー、界面活性剤、着色剤、及び導電性塩の順に成分を添加することによって調製した。
完成したインクを、使用前にラボシェーカー上で30分間振盪した。
【0126】
本発明のインク組成物及び比較用インク組成物は、以下の表1に示される処方で調製した。成分の量は、インク組成物の全重量に基づく質量%で提供される。溶媒が、それぞれの場合のインク組成物の残量を構成するために使用される。
【0127】
下記表1の本発明のインク組成物及び比較用インク組成物のそれぞれについて、対応する、シロキサン界面活性剤を含まない対応するインク(「NS」と表示)もまた存在する。 例えば、「インク1」は、シロキサン界面活性剤Tego Glide 410の存在以外は、「インク1-NS」と同一である。
【0128】
【表2】
【0129】
CAB 551-0.01は、Eastmanから市販の低ヒドロキシル含量(1.5%)の酢酸酪酸セルロース製品である。
Tego Glide 410は、Evonik社から市販のポリエーテル変性ポリシロキサン界面活性剤である。
Foralynは、Eastmanから市販の水添ロジンのエステルであり、具体的にはForalyn 110である。
使用した塩及び溶媒は、Sigma Aldrich及びAlfa Aesarから入手した。
【0130】
図1は、1-NS、1、C1-NS、及びC1と表示された列に、HDPE基材上にシロキサン界面活性剤を含まない本発明のインク1、シロキサン界面活性剤を含む本発明のインク1、シロキサン界面活性剤を含まない比較用インク1、及びシロキサン界面活性剤を含む比較用インク1をそれぞれ用いて印刷された画像のペアを示す。左側の欄(Aと表示)には、810テープ貼付前の各印刷画像が示され、右欄(Bと表示)は810テープ剥離後の各印刷画像が示される。
【0131】
画像1-NS Bと1 Bとの比較では、本発明のインク1中のシロキサン界面活性剤の存在により、印刷画像の基材への接着が著しく改善されたことが示される。
一方、画像C1-NS BとC1 Bの比較では、比較用インク1中のシロキサン界面活性剤の存在により、印刷画像の基材への接着が著しく低下したことが示される。
【0132】
画像1-NS Aと1AとC1-NS AとC1 Aとの比較では、本発明のインク及び比較用インク中のシロキサン界面活性剤の存在により、HDPE基材上で印刷画像を構成する液滴の広がりが減少したことが注目されるであろう。この効果は、接着性に対するいかなる効果とも無関係のようである。
【0133】
<テープ剥離接着性試験結果>
上述のテープ剥離接着性試験を、上記表1に示される本発明のインク及び比較用インクのそれぞれについて、各種の基材(HDPE、LDPE、及びPP)にそれぞれのインクを用いて印刷画像を印刷することによって行った。次いで、印刷した基材のそれぞれについてテープ剥離接着性試験を3重に行い、すなわち、各インクについて各種の基材上で3つの印刷画像を試験し、その結果の平均を各インクについて算出した。結果を以下の表2に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
テープ剥離接着性試験の結果は、金属塩としてヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、チオシアン酸カリウム(KSCN)、及びチオシアン酸ナトリウム(NaSCN)をそれぞれ含む本発明によるインク1から4について、シロキサン系界面活性剤が存在する場合には、接着性に著しい改善を示す。逆に、非金属塩である六フルオロリン酸テトラブチルアンモニウム(TBAPF6)、臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)、及び硝酸テトラブチルアンモニウム(TBANO3)をそれぞれ含む比較用インク1から3については、シロキサン界面活性剤が存在する場合には、接着性の著しい悪化が見られる。
【0136】
<金属導電性塩濃度>
金属導電性塩の濃度の影響を研究した。
上述の操作を用いて様々な量の金属導電性塩を含む多様なインクを調製した。インクの処方を以下の表3に示す。
【0137】
【表4】
【0138】
上述のテープ剥離接着性試験を、各インクについて実施した。これらの試験の結果を以下の表4に示す。
【0139】
【表5】
【0140】
KPF6またはNaIを含む本発明のインクでは、一般に優れた接着性が見られ、KPF6シリーズについては本発明のインク1で最も優れた接着性が見られ、NaIシリーズについては本発明のインク2で最も優れた接着性が見られる。
KSCNシリーズでは、本発明のインク11で最も優れた接着性が見られる。
【0141】
<界面活性剤量>
界面活性剤の量の効果を研究した。
上述の操作を用いて様々な量のシロキサン界面活性剤を含む多様なインクを調製した。インクの処方を以下の表5に示す。
【0142】
【表6】
【0143】
上述のテープ剥離接着性試験を、ISOテープをLDPE基材のみに用いて各インクについて実施した。これら試験の結果を以下の表6に示す。
【0144】
【表7】
【0145】
優れた接着が、本発明のインク16、17、1、及び18について見られ、最も優れた接着結果は、本発明のインク1及び18で見られる。本発明のインク16及び17は、810テープを用いて試験した場合に、本発明のインク1と同様の接着結果をもたらすことが観察される。
【0146】
<界面活性剤の種類>
様々な界面活性剤の効果を研究した。
上述の操作を用いて様々な種類の界面活性剤を含む多様なインクを調製した。インクの処方を以下の表7に示す。
【0147】
【表8】
【0148】
BYK 333は、BYKから入手可能なポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン界面活性剤である。
Tego Wet 500は、Evonikから入手可能な非イオン性有機界面活性剤である。Tego Wet 500は、シリコーンを含まない。
上述のテープ剥離接着性試験を、各インクについて実施した。これら試験の結果を以下の表8に示す。
【0149】
【表9】
【0150】
本発明のインク20及び1では優れた接着が、特にHDPE及びLDPE基材に対して見られる。シロキサン界面活性剤ではない界面活性剤を含むインク19の接着性は不十分なものである。
【0151】
<様々な着色剤>
様々な着色剤の効果を研究した。
上述の操作を用いて様々な着色剤を含む多様なインクを調製した。インクの処方を以下の表9に示す。
【0152】
【表10】
【0153】
Solvaperm Blue 2Bは、Clariant社から市販のソルベントブルー104染料である。
Orasol 855は、BASF SEから市販のソルベントブルー70染料である。
テープ剥離接着性試験を各インクについて行ったが、前後の写真を比較するためにMatlabソフトウェアを使用する代わりに簡単な目視検査を行い、接着性を以下の表10に示した基準に従って評価した。その結果得られた評価を以下の表11に示す。
【0154】
【表11】
【0155】
【表12】
【0156】
テープ剥離接着性試験は、溶媒染料の形態で着色剤を使用する本発明のインク21及び22について、一般的に少なくとも良好な接着性を示す。同一の着色剤を使用するが非金属導電性塩を使用する比較用インクの接着性の悪さは顕著である。
【0157】
<様々な溶媒>
様々な溶媒、金属導電性塩、及び顔料分散物の効果を研究した。
上述の操作を用い、様々な溶媒、金属導電性塩、及び顔料分散物で多様なインクを調製した。接着促進剤であるTego Variplus CA及びTytan AP 100もまた使用した。インクの処方は、以下の表12に示される通りである。
【0158】
【表13】
【0159】
Tego Variplus CAは、Evonik社から入手可能なケトン縮合樹脂である。
Tytan AP 100は、Borica Company Ltd製のリン酸チタン錯体である。
上述のテープ剥離接着性試験を、各インクについて、Matlabソフトウェアを用いて実施した。これら試験の結果を以下の表13に示す。
【0160】
【表14】
【0161】
いずれもが、有機溶剤であるエタノールと酢酸エチルとの混合物の形態の液体担体を使用し、且つヨウ化カリウム及び硝酸リチウムの形態の金属導電性塩をそれぞれ使用する、本発明のインク23及び24については、良好な接着性が見られる。
図1