(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】ICAM-1に特異的に結合する抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230707BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230707BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230707BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230707BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230707BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230707BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230707BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230707BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230707BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230707BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230707BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230707BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230707BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230707BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230707BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230707BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230707BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230707BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230707BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230707BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20230707BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230707BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230707BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20230707BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P37/06
A61P11/06
A61P3/04
A61P3/10
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/00
A61P17/06
A61P1/04
A61P21/04
A61P5/14
A61P17/14
A61P37/08
G01N33/531 A
G01N33/53 D
(21)【出願番号】P 2021538358
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(86)【国際出願番号】 KR2019018822
(87)【国際公開番号】W WO2020141869
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0173725
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522387607
【氏名又は名称】クンホ、エイチティー、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kumho HT, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ジ、ギリョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、サンスン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンシク
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/007648(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/091719(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/060919(WO,A1)
【文献】特表2009-524434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
C12P
A61K
A61P
G01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の相補性決定部位(complementarity determining region;CDRs)を含む、抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片:
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【請求項2】
フレームワークとして次を含む、請求項1に記載の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片:
配列番号97または98のアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク1;
配列番号99または100のアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク2;
配列番号101または102のアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク3;
配列番号81のアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク4;
配列番号103または104のアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク1;
配列番号105のアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク2;
配列番号106のアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク3;および
配列番号107のアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク4。
【請求項3】
フレームワークとして次を含む、請求項1に記載の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片:
配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、および48より選ばれたアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク1;
配列番号49、50、51、52、53、54、および55より選ばれたアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク2;
配列番号56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、および80より選ばれたアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク3;
配列番号81のアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク4;
配列番号82、83、および84より選ばれたアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク1;
配列番号85、86、87、88、および89より選ばれたアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク2;
配列番号90、91、および92より選ばれたアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク3;および
配列番号93または94のアミノ酸配列を含む軽鎖フレームワーク4。
【請求項4】
配列番号7および11~34からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
配列番号8および35~38からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
抗ICAM-1抗体は、動物抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗原結合断片は、前記抗ICAM-1抗体のscFv、(scFv)
2、Fab、Fab’、またはF(ab’)
2である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を含む、免疫細胞媒介性疾患の予防または治療のための医薬組成物。
【請求項8】
前記免疫細胞媒介性疾患は、移植拒絶、移植片対宿主疾患、喘息、肥満、第2型糖尿病、免疫細胞媒介炎症、または自己免疫疾患である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記自己免疫疾患は、脳脊髄炎、リウマチ関節炎、全身紅斑性狼瘡、アトピー皮膚炎、多発性硬化症、1型糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、ベーチェット病、シェーグレン症候群、重症筋無力症、硬皮症、結節性多発動脈炎、菊池病、膠原病、橋本甲状腺炎、乾癬、白斑症、甲状腺機能亢進症、線維筋痛、円形脱毛、またはアレルギーである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸分子。
【請求項11】
配列番号7および11~34より選ばれたアミノ酸配列;および
配列番号8および35~38より選ばれたアミノ酸配列
をコードする、核酸分子。
【請求項12】
請求項10または11に記載の核酸分子を含む、組換えベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の組換えベクターを含む、組換え細胞。
【請求項14】
請求項1の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸分子を含む組換えベクターを含む組換え細胞を培養する工程を含む、抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の製造方法。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を含む、ICAM-1検出用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ICAM-1に特異的に結合する抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片、およびその用途に関し、具体的には、抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片、および前記抗体または抗原結合断片を有効成分として含む樹状細胞の分化および/または機能調節用医薬組成物および免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹状細胞(Dendritic cell,DC)は多様な免疫反応を統合させる高度の特性化した抗原提示細胞であり、免疫の開始および免疫寛容に関連する抗原提示細胞の異種ファミリーを含む。現在まで、未成熟樹状細胞はT細胞を免疫性欠如(anergy)状態に誘導し、リポ多糖類(lipopolysaccharide;LPS)のような活性刺激剤によって成熟樹状細胞に形質転換された樹状細胞は、T細胞一次応答を誘導する。また、独特のサイトカイン生産プロファイルを有する準成熟された樹状細胞は免疫寛容性機能を付与することができる。
【0003】
ICAM-1(Intercellular Adhesion Molecule 1)は、ドメイン1ないしドメイン5と命名され、N末端からC末端方向に番号が振られた5個の細胞外免疫グロブリンスーパーファミリードメイン、細胞膜透過領域、および細胞内領域で構成された、90kDaのタイプI細胞表面糖タンパク質である。
【0004】
ICAM-1はT細胞と抗原提示細胞間の相互作用のような白血球/白血球相互作用を媒介する。また、炎症過程の間組織への白血球流出を媒介する。インビトロ研究によって、ICAM-1/白血球機能関連抗原-1(leukocyte function antigen-1,LFA-1)の相互作用を妨げる抗体がT細胞の内皮細胞への付着を妨げ、これらの抗体によってT細胞活性化も混合リンパ球内で有意に減少し得ることが提示された(Proc Natl Acad Sci USA.1988,85:3095-3099)。ヒトICAM-1のドメインに結合する単一クローン抗体であるR6-5-D6(enlimomab)を使用した猿研究では、腎臓同種移植片生残率が増加し、移植片内へのT細胞浸透が対照群と比較して減少した(J Immunol.1990,144:4604-4612)。また、エンリモマブ(enlimomab)はリウマチ性関節炎患者で疾患活性を抑制させる効果があることが立証された(Arthritis Rheum.1994,37:992-999;J Rheumatol.1996,23:1338-1344)。しかし、腎臓移植後のエンリモマブ誘導治療は急性拒絶反応の比率または移植片機能遅延の危険減少に大きな効果はない。また、エンリモマブはT細胞だけでなく好中球の血管内皮細胞への付着を遮断する機能をし、したがって好中球の移動を妨げるのは潜在的に感染に対する感受性を増加させると報告された(J Immunol.1999,162:2352-2357)。
【0005】
ICAM-1に特異的に結合して樹状細胞の分化および機能を調節してより効果的に免疫反応を調節できる物質の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一例はICAM-1を特異的に認識する抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0007】
前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1(GYTFTDYA)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、配列番号2(ISTYSGNT)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、および配列番号3(ARSLYFGSSGFDY)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)を含む重鎖相補性決定部位(Complementarity Determining Regions;CDRs)または前記重鎖相補性決定部位を含む重鎖可変領域;および
配列番号4(QTLVYRNGNTY)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、配列番号5(KVS)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および配列番号6(SQNTHFPYT)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)を含む軽鎖相補性決定部位または前記軽鎖相補性決定部位を含む軽鎖可変領域を含むものであり得る。
【0008】
一具体例で、前記重鎖可変領域は配列番号7および11~34からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号8および35~38からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含み得る。
【0009】
他の例は抗ICAM-1抗体の重鎖相補性決定部位、重鎖可変領域または重鎖をコードする核酸分子を提供する。
【0010】
他の例は抗ICAM-1抗体の軽鎖相補性決定部位、軽鎖可変領域または軽鎖をコードする核酸分子を提供する。
【0011】
他の例は前記抗ICAM-1抗体の重鎖相補性決定部位、重鎖可変領域または重鎖をコードする核酸分子および抗ICAM-1抗体の軽鎖相補性決定部位、軽鎖可変領域または軽鎖をコードする核酸分子を一つのベクターに共に含むかそれぞれ別のベクターに含む組換えベクターを提供する。
【0012】
他の例は前記組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0013】
他の例は前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む疾病の予防および/または治療のための医薬組成物を提供する。前記疾病は免疫細胞媒介性疾患であり得る。他の例は前記ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療を必要とする対象に投与する工程を含む、免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療方法を提供する。前記方法は、前記投与する工程以前に、免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療を必要とする対象を確認する工程をさらに含み得る。他の例は前記ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療、または免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療のための医薬組成物の製造に使用するための用途を提供する。前記医薬組成物、方法および用途において、免疫細胞媒介性疾患は移植拒絶、移植片対宿主疾患、喘息、自己免疫疾患などより選ばれたものであり得る。
【0014】
他の例は前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む樹状細胞の分化および/または機能を調節するための医薬組成物を提供する。他の例は抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を樹状細胞の分化および機能の調節を必要とする対象に投与する工程を含む樹状細胞の分化および/または機能を調節する方法を提供する。他の例は抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の樹状細胞の分化および/または機能の調節または樹状細胞の分化および/または機能を調節するための医薬組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書ではICAM-1を特異的に認識する抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片およびこれらの用途が提供される。
【0016】
前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片はICAM-1のドメインのうちドメイン2を特異的に認識および/または結合することを特徴とする。前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片はICAM-1に対して抑制活性を有する拮抗剤(antagonist)であり得る。しかし、前記抗体は抗原であるICAM-1のリガンドであるLFA-1との結合部位であるICAM-1のドメイン1ではなくドメイン2に結合することによって、ICAM-1/LFA-1結合自体は阻害しない。これは前記抗体がT細胞のtransmigrationを阻害しないことにより確認することができる。前記抗体は、寛容樹状細胞に分化を誘導して機能的に免疫抑制を誘導する点と樹状細胞とT細胞との共培養でT細胞の免疫活性を抑制する点でT細胞活性伝達のための免疫シナプスの空間的機能活性化および関連タンパク質間の結合および再編成に潜在的に影響を及ぼし得る。このような点で前記抗体はレセプター-リガンド結合を物理的に抑制するより機能的にICAM-1活性を抑制する拮抗剤であり得る。また、前記抗体は前記した活性によって結果的にリガンドを含むT細胞の免疫活性を抑制する結果を誘導するものであり得る。言い換えれば、本明細書で提供される抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片はICAM-1(例えば、ヒトICAM-1)のドメイン2に結合し、抗原特異的T-細胞耐性を誘導することによって、樹状細胞の分化および/または機能を抑制し、免疫細胞-媒介疾患に対する予防および/または治療効果を有するものであり得る。
【0017】
ICAM-1(Intercellular Adhesion Molecule 1)はCD54(Cluster of Differentiation 54)とも呼ばれ、内皮細胞または免疫系細胞上に発現する細胞表面糖タンパク質である。
【0018】
本明細書で提供される抗体の抗原として作用するICAM-1は哺乳類由来のものであり得、例えばヒトICAM-1(例えば、NCBI accession numbers NP_000192.2など)、サルICAM-1(例えば、NCBI accession numbers NP_001266532など)であり得る。一例で、前記抗体はヒトICAM-1とサルICAM-1に交差反応性を示すものであり得る。
【0019】
本明細書で「抗体」とは、免疫系内で抗原の刺激によって作られる物質または特定抗原に特異的に結合するタンパク質を総称するものであり、前記物質またはタンパク質に基づいて組換え的または合成的に生産されたタンパク質も含む概念として使用される。前記抗体は非自然的に生成されたもの、例えば、組換え的または合成的に生成されたものであり得る。前記抗体は動物抗体(例えば、マウス抗体など)、キメラ抗体(例えば、マウス-ヒトキメラ抗体)、ヒト化抗体、またはヒト抗体であり得る。前記抗体は単クローン抗体または多クローン抗体であり得る。
【0020】
また、本明細書で抗体は、特に言及しない限り、抗原結合能を保有する抗体のすべての断片を含むものと理解され得る。本明細書で「相補性決定部位(Complementarity-determining regions,CDR)」とは、抗体の可変部位のうちの抗原との結合特異性を付与する部位を意味する。先立って説明した抗体の抗原結合断片は前記相補性決定部位を一つ以上含む抗体断片であり得る。
【0021】
一例はICAM-1を特異的に認識またはICAM-1に特異的に結合する抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0022】
前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1(GYTFTDYA)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、配列番号2(ISTYSGNT)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、および配列番号3(ARSLYFGSSGFDY)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)を含む重鎖相補性決定部位(Complementarity Determining Regions;CDRs)または前記重鎖相補性決定部位を含む重鎖可変領域;および
配列番号4(QTLVYRNGNTY)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、配列番号5(KVS)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および配列番号6(SQNTHFPYT)のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)を含む軽鎖相補性決定部位または前記軽鎖相補性決定部位を含む軽鎖可変領域を含むものあり得る。
【0023】
前記重鎖可変領域で、
重鎖フレームワーク1(VH-FR1;CDRH1のN-末端隣接部位)は、配列番号97(QVQLX1QSGAEX2X3X4PGX5SVKX6SCKX7S;X1はQまたはV、X2はLまたはV、X3はVまたはK、X4はRまたはK、X5はVまたはA、X6はIまたはV、X7はGまたはA)または配列番号98(QVQLX8QSGAEVX9KPGASVKX10SCKX11S;X8はVまたはQ、X9はKまたはV、X10はIまたはV、X11はGまたはA)のアミノ酸配列、例えば、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、および48より選ばれたアミノ酸配列を含むものであり得、
重鎖フレームワーク2(VH-FR2;CDRH1のC-末端とCDRH2のN-末端の間の部位)は、配列番号99(LHWVX12QX13X14X15X16X17LEWX18GV;X12はKまたはR、X13はSまたはA、X14はHまたはP、X15はAまたはG、X16はKまたはQ、X17はSまたはR、X18はIまたはM)または配列番号100(LHWVX19QAPGQX20LEWX21GV;X19はRまたはK、X20はRまたはS、X21はIまたはM)のアミノ酸配列、例えば、配列番号49、50、51、52、53、54、および55より選ばれたアミノ酸配列を含むものであり得、
重鎖フレームワーク3(VH-FR3;CDRH2のC-末端とCDRH3のN-末端の間の部位)は、配列番号101(X22YX23QKFX24GX25X26TX27TX28DX29SX30X31TAYX32ELX33X34LX35SEDX36AX37X38YC;X22はDまたはK、X23はNまたはS、X24はRまたはQ、X25はKまたはR、X26はAまたはV、X27はMまたはI、X28はVまたはR、X29はKまたはT、X30はSまたはA、X31はTまたはS、X32はLまたはM、X33はAまたはS、X34はRまたはS、X35はTまたはR、X36はSまたはT、X37はIまたはV、X38はHまたはY)または配列番号102(X39YX40QKFX41GX42X43TX44TX45RX46SAX47TAYX48ELSSLRSEDTAX49X50YC;X39はDまたはK、X40はNまたはS、X41はRまたはQ、X42はRまたはK、X43はAまたはV、X44はIまたはM、X45はRまたはV、X46はTまたはK、X47はSまたはT、X48はMまたはL、X49はVまたはI、X50はYまたはH)のアミノ酸配列、例えば、配列番号56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、および80より選ばれたアミノ酸配列を含むものであり得、および/または
重鎖フレームワーク4(VH-FR4;CDRH3のC-末端と隣接する部位)は、配列番号81のアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0024】
前記軽鎖可変領域で、
軽鎖フレームワーク1(VL-FR1;CDRL1のN-末端隣接部位)は、配列番号103(DVVLTQX51PLSX52PVX53LGX54X55ASISCRSS;X51はTまたはS、X52はLまたはS、X53はNまたはT、X54はDまたはQ、X55はQまたはP)または配列番号104 DVVLTQX56PLSX57PVTLGQPASISCRSS;X56はSまたはT、X57はLまたはS)のアミノ酸配列、例えば、配列番号82、83、および84より選ばれたアミノ酸配列を含むものであり得、
軽鎖フレームワーク2(VL-FR2;CDRL1のC-末端とCDRL2のN-末端の間の部位)は、配列番号105(LHWYX58QX59X60GQX61PX62LLIX63;X58はLまたはQ、X59はKまたはR、X60はAまたはP、X61はSまたはP、X62はKまたはR、X63はYまたは存在しない)のアミノ酸配列、例えば、配列番号85、86、87、88、および89より選ばれたアミノ酸配列を含むものであり得、
軽鎖フレームワーク3(VL-FR3;CDRL2のC-末端とCDRL3のN-末端の間の部位)は、配列番号106(NRFSGVPDRFSGSGX64GTDFTLKISRVEAEDX65GVYFC;X64はSまたはA、X65はLまたはV)のアミノ酸配列、例えば、配列番号90、91、および92より選ばれたアミノ酸配列を含むものであり得、および/または
軽鎖フレームワーク4(VL-FR4;CDRL3のC-末端と隣接する部位)は、配列番号107(FGGGTKX66X67X68X69X70;X66はIまたはL、X67はKまたはE、X68はRまたはI、X69はQまたはK、X70はRまたは存在しない)のアミノ酸配列、例えば、配列番号93または94のアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0025】
前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片において、
前記重鎖可変領域は配列番号97または98(例えば、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48)のアミノ酸配列を含むVH-FR1、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号99または100(例えば、配列番号49、50、51、52、53、54、または55)のアミノ酸配列を含むVH-FR2、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、配列番号101または102(例えば、配列番号56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80)のアミノ酸配列を含むVH-FR3、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、および配列番号81のアミノ酸配列を含むVH-FR4を含み;
前記軽鎖可変領域は配列番号103または104(例えば、配列番号82、83、または84)のアミノ酸配列を含むVL-FR1、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号105(例えば、配列番号85、86、87、88、または89)のアミノ酸配列を含むVL-FR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、配列番号106(例えば、配列番号90、91、または93)のアミノ酸配列を含むVL-FR3、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3、および配列番号107(例えば、配列番号93または94)のアミノ酸配列を含むVL-FR4を含むものであり得る。
【0026】
一具体例で、前記重鎖可変領域は配列番号7および11~34からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号8および35~38からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含み得る。
【0027】
所望する抗原を被免疫動物に免疫させて生産する動物由来の抗体は一般的に治療目的でヒトに投与時免疫拒絶反応が起き得、このような免疫拒絶反応を抑制するためにキメラ抗体(chimeric antibody)が開発された。キメラ抗体は遺伝工学的方法を用いて抗-アイソタイプ(anti-isotype)反応の原因になる動物由来の抗体の不変領域をヒト抗体の不変領域に置き換えたものである。キメラ抗体は動物由来の抗体に比べて抗-アイソタイプ反応において相当部分改善されたが、依然として動物由来のアミノ酸が可変領域に存在しており潜在的な抗-イディオタイプ(anti-idiotypic)反応に対する副作用を内包している。このような副作用を改善するために開発されたのがヒト化抗体(humanized antibody)である。これはキメラ抗体の可変領域中の抗原の結合に重要な役割をするCDR(complementaritiy determining regions)部位をヒト抗体骨格(framework)に移植して製作される。
【0028】
ヒト化抗体を製作するためのCDR移植(grafting)技術において最も重要なのは動物由来の抗体のCDR部位を最もよく受け入れることができる最適化されたヒト抗体を選定することであり、そのために抗体データベースの活用、結晶構造(crystal structure)の分析、分子モデリング技術などを活用することができる。
【0029】
一具体例によれば、前記抗体は動物抗体(例えば、マウス抗体)、キメラ抗体(例えば、マウス-ヒトキメラ抗体)またはヒト化抗体であり得る。
【0030】
前記抗体または抗原結合断片において、配列番号1~3の重鎖CDRを除いた重鎖フレームワークおよび/または重鎖不変領域は免疫グロブリン(IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4など)、IgM、IgA、IgD、またはIgE)、例えば、ヒト免疫グロブリン(IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4など)、IgM、IgA、IgD、またはIgE)から由来した重鎖フレームワークおよび/または重鎖不変領域であり得、配列番号4~6の軽鎖CDRを除いた軽鎖フレームワークおよび/または軽鎖不変領域はカッパ(κ)またはラムダ(λ)タイプの軽鎖フレームワークおよび/または軽鎖不変領域であり得る。
【0031】
完全な抗体は2個の全長(full length)軽鎖および2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖と二硫化結合に連結されている。抗体の不変領域は重鎖不変領域と軽鎖不変領域に分けられ、重鎖不変領域はガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)およびイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域はカッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを有する。
【0032】
用語の「重鎖(heavy chain)」は、抗原に特異性を付与するために十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVHおよび3個の不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3とヒンジ(hinge)を含む全長重鎖およびその断片をすべて含む意味と解釈される。また、用語の「軽鎖(light chain)」は抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVLおよび不変領域ドメインCLを含む全長軽鎖およびその断片をすべて含む意味と解釈される。
【0033】
用語の「CDR(complementarity determining region)」は免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する。重鎖および軽鎖はそれぞれ3個のCDRを含み得る(CDRH1、CDRH2、CDRH3およびCDRL1、CDRL2、CDRL3)。前記CDRは抗体が抗原またはエピトープに結合するにあたって主要な接触残基を提供することができる。一方、本明細書において、用語の「特異的に結合」または「特異的に認識」は当業者に通常公知されている意味と同じものであって、抗原および抗体が特異的に相互作用して免疫学的反応をすることを意味する。
【0034】
用語の「抗原結合断片」は免疫グロブリン全体構造に対するその断片として、抗原が結合できる部分、例えば、CDRを含む抗体の一部を意味する。例えば、抗体の抗原結合断片はscFv、(scFv)2、Fab、Fab’またはF(ab’)2であり得る。
【0035】
Fabは軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域および重鎖の最初の不変領域(CH1)を有する構造であり1個の抗原結合部位を有する。Fab’は重鎖CH1ドメインのC-末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有する点でFabと差がある。F(ab’)2抗体はFab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは重鎖可変部位および軽鎖可変部位のみを有する最小の抗体フラグメントでFv断片を生成する組換え技術は当業界に広く公知されている。二本鎖Fv(two-chain Fv)は非共有結合により重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、単一鎖Fv(single-chain Fv;scFv)は一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と単鎖の可変領域が共有結合により連結されるかまたはC-末端ですぐに連結されており、二重鎖Fvのようにダイマーのような構造をなすことができる。前記抗原結合断片はタンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全体抗体をパパインで制限切断するとFabを得ることができ、ペプシンで切断するとF(ab’)2断片を得ることができる)、遺伝子組換え技術により製作することができる。
【0036】
用語の「ヒンジ領域(hinge region)」は抗体の重鎖に含まれている領域であって、CH1およびCH2領域の間に存在し、抗体内抗原結合部位の柔軟性(flexibility)を提供する機能をする領域を意味する。
【0037】
前記抗ICAM-1抗体は単クローン抗体であり得る。単クローン抗体は当業界に広く知られた方法のとおりに製造することができる。例えば、phage display技法を用いて製造することができる。または抗ICAM-1抗体を用いて通常の方法によって動物(例えば、マウス)由来の単クローン抗体に製造することができる。
【0038】
一方、典型的なELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)フォーマットを用いてICAM-1との結合能に基づいて個別単クローン抗体をスクリーニングし得る。結合体に対して分子的相互作用を検定するための競争的ELISA(Competitive ELISA)のような機能性分析または細胞-基盤分析(cell-based assay)のような機能性分析により阻害活性に対して検定し得る。その次に、強い阻害活性に基づいて選択された単クローン抗体メンバーに対してICAM-1に対するそれぞれの親和度(Kd values)を検定し得る。
【0039】
また他の例は前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む疾病の予防および/または治療のための医薬組成物を提供する。前記疾病は免疫細胞媒介性疾患であり得る。他の例は前記ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療を必要とする対象に投与する工程を含む、免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療方法を提供する。前記方法は、前記投与する工程以前に、免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療を必要とする対象を確認する工程を追加で含み得る。他の例は前記ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療、または免疫細胞媒介性疾患の予防および/または治療のための医薬組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【0040】
前記医薬組成物、方法および用途において、免疫細胞媒介性疾患は免疫細胞と関連するすべての疾病の中から選択され得る。前記免疫細胞はT細胞、B細胞、樹状細胞(dendritic cell)、大食細胞(macrophage)、単核球(monocyte)などからなる群より選ばれた一つ以上であり得る。一例で、前記免疫細胞媒介性疾患は移植拒絶(例えば、同種細胞移植、同種臓器移植、異種細胞移植、異種臓器移植の際に発生する拒絶反応)、移植片対宿主疾患(例えば、同種骨髓移植の際に発生する移植片対宿主疾患など)、喘息、肥満、第2型糖尿病、自己免疫疾患(例えば、脳脊髄炎(例えば、アレルギー性脳脊髄炎)、リウマチ関節炎、全身紅斑性狼瘡(ループス)、アトピー皮膚炎、多発性硬化症、1型糖尿病、慢性炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎))、ベーチェット病、シェーグレン症候群、重症筋無力症、硬皮症、結節性多発動脈炎、菊池病、膠原病、橋本甲状腺炎、乾癬、白斑症、甲状腺機能亢進症、線維筋痛、円形脱毛、アレルギーなど)、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、樹状細胞、大食細胞、単核球など)媒介炎症(例えば、大食細胞媒介炎症など)、前記免疫細胞媒介炎症によって誘発される炎症性疾病などより選ばれたものであり得る。
【0041】
他の例は前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む樹状細胞の分化および/または機能を調節するための医薬組成物を提供する。他の例は抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を樹状細胞の分化および機能の調節を必要とする対象に投与する工程を含む樹状細胞の分化および/または機能を調節する方法を提供する。他の例は抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の樹状細胞の分化および/または機能の調節または樹状細胞の分化および/または機能を調節するための医薬組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【0042】
前記医薬組成物は薬学的に許容可能な担体をさらに含み得る。前記薬学的に許容可能な担体は薬物の製剤化に通常用いられるものとして、ラクトース、デキストロース、スクロース、トレハロース、アルギニン、ヒスチジン、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群より選ばれた1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。前記医薬組成物はまた、医薬組成物の製造に通常使用される希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などからなる群より選ばれた1種以上をさらに含み得る。
【0043】
前記医薬組成物、または前記抗体またはその抗原結合断片の有効量は経口または非経口で投与し得る。非経口投与である場合は静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与、または病変部位局所投与などで投与し得る。経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるため経口用組成物は活性薬剤をコートするか胃での分解から保護されるように剤形化することができる。また、前記組成物は活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与され得る。
【0044】
本明細書に記載された「薬学的有効量」は所望する薬理的効果を示すことができる有効成分(すなわち、抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片)の含有量または投与量を意味し、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、食べ物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に定まる。
【0045】
前記医薬組成物内の抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の含有量または抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の投与量は製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、食べ物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に処方し得る。例えば、前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片の1日投与量は、0.001~1000mg/kg、具体的には0.01~100mg/kg、より具体的には0.1~50mg/kg、さらに具体的には0.1~20mg/kg範囲であり得るが、これに制限されるものではない。前記1日投与量は単位容量形態で一つの製剤に製剤化するか、適切に分量して製剤化するか、多用量容器内に入れ込んで製造することができる。
【0046】
前記医薬組成物は他の抗癌剤のような他の薬物と併用投与が可能であり、その投与量、投与方法および他の薬物の種類は患者の状態によって適宜処方することができる。
【0047】
前記医薬組成物はオイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤または乳化液形態であるかエキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤などの形態に剤形化し得、剤形化のために分散剤または安定化剤をさらに含み得る。
【0048】
前記医薬組成物の投与対象患者はヒト、サルなどを含む霊長類などを含む哺乳類であり得る。
【0049】
一方、前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片はICAM-1に特異的に結合するので、これを用いてICAM-1を検出または確認することができる。したがって、本発明のまた他の例は前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を含むICAM-1の検出用組成物を提供する。また、他の例は生物試料に前記抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片を処理する工程;および抗原-抗体反応の有無を確認する工程を含むICAM-1の検出方法を提供する。前記検出方法で、抗原-抗体反応が探知される場合、前記生物試料にICAM-1が存在すると決定(判断)することができる。したがって、前記検出方法は、前記抗原-抗体反応の有無を確認する工程の後に、抗原-抗体反応が探知される場合、前記生物試料にICAM-1が存在すると決定する工程をさらに含み得る。前記生物試料は哺乳類、例えばヒト(例えば、移植予定患者または移植を受けた患者、自己免疫疾患患者など)から得た(分離した)細胞、組織、体液、これらの培養物などからなる群より選ばれたものであり得る。
【0050】
前記抗原-抗体反応の有無を確認する工程は当業界に公知された多様な方法により行うことができる。例えば、通常の酵素反応、蛍光、発光および/または放射線検出により測定され得、具体的には、免疫クロマトグラフィー(Immunochromatography)、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry)、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Fluorescence immunoassay:FIA)、発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)、ウエスタンブロット(Western blotting)、マイクロアレイなどからなる群より選ばれた方法によって測定されるが、これに制限されるものではない。
【0051】
他の例で、先立って説明した抗ICAM-1抗体の重鎖相補性決定部位、軽鎖相補性決定部位、またはこれらの組み合わせ;または重鎖可変領域、軽鎖可変領域、またはこれらの組み合わせを含むポリペプチド分子が提供される。前記ポリペプチド分子は抗体の前駆体として抗体製作に使用されることができるだけでなく、抗体と類似の構造を有するタンパク質骨格体(protein scaffold;例えばペプチボディ)、二重特異抗体、または多重特異抗体の構成成分として含まれ得る。
【0052】
他の例は抗ICAM-1抗体の重鎖相補性決定部位、重鎖可変領域または重鎖をコードする核酸分子を提供する。
【0053】
他の例は抗ICAM-1抗体の軽鎖相補性決定部位、軽鎖可変領域または軽鎖をコードする核酸分子を提供する。
【0054】
他の例は前記抗ICAM-1抗体の重鎖相補性決定部位、重鎖可変領域または重鎖をコードする核酸分子および抗ICAM-1抗体の軽鎖相補性決定部位、軽鎖可変領域または軽鎖をコードする核酸分子を一つのベクターに共に含むかそれぞれ別のベクターに含む組換えベクターを提供する。
【0055】
用語の「ベクター(vector)」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。例えば、プラスミドベクター、コスミドベクターおよびバクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウィルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターを含む。前記組換えベクターとして使用できるベクターは当業界でしばしば使用されるプラスミド(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pQKX1、pQKX2、pGEXシリーズ、pETシリーズおよびpUC19など)、ファージ(例えば、λgt4λB、λ-Charon、λΔz1およびM13など)またはウイルス(例えば、SV40など)を操作して製作することができる。
【0056】
前記組換えベクターで前記核酸分子はプロモータに作動的に連結され得る。用語の「作動可能に連結された(operatively linked)」は、ヌクレオチド発現調節配列(例えば、プロモータ配列)と他のヌクレオチド配列の間の機能的な結合を意味する。前記調節配列は「作動可能に連結(operatively linked)」されることにより他のヌクレオチド配列の転写および/または解読を調節することができる。
【0057】
前記組換えベクターは、典型的にクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築することができる。前記発現用ベクターは、当業界で植物、動物または微生物で外来のタンパク質を発現するのに使用される通常のものを使用することができる。前記組換えベクターは、当業界に公知化された多様な方法により構築することができる。
【0058】
前記組換えベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主として構築することができる。例えば、使用されるベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させる強力なプロモータ(例えば、pLλプロモータ、CMVプロモータ、trpプロモータ、lacプロモータ、tacプロモータ、T7プロモータなど)、解読の開始のためのリボゾーム結合部および転写/解読終結配列を含むことが一般的である。真核細胞を宿主とする場合には、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製起点は、f1複製起点、SV40複製起点、pMB1複製起点、アデノ複製起点、AAV複製起点およびBBV複製起点などを含むが、これに限定されるものではない。また、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモータ(例えば、メタロチオネインプロモータ)または哺乳動物ウィルスから由来したプロモータ(例えば、アデノウイルス後期プロモータ、ワクチニアウイルス7.5Kプロモータ、SV40プロモータ、サイトメガロウィルスプロモータおよびHSVのtkプロモータ)が用いられ、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0059】
他の例は前記組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0060】
前記組換え細胞は前記組換えベクターを適切な宿主細胞に導入させることによって得られたものであり得る。前記宿主細胞は前記組換えベクターを安定してかつ連続的にクローニングまたは発現させる細胞として当業界に公知されたいかなる宿主細胞でも用いることができ、原核細胞としては、例えば、E. coli JM109、E. coli BL21、E. coli RR1、E. coli LE392、E. coli B、E. coli X 1776、E. coli W3110,バチルスサブティリス、バチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、そしてサルモネラチフィリウム、セラチアマルセッセンスおよび多様なシュードモナス種のような腸内菌と菌株などがあり、真核細胞に形質転換させる場合には宿主細胞として、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、植物細胞および動物細胞、例えば、Sp2/0、CHO(Chinese hamster ovary) K1、CHO DG44、CHO-S、PER.C6、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、Huh7、3T3、RIN、MDCK、HEK293細胞株などが用いられるが、これに制限されるものではない。
【0061】
前記核酸分子またはそれを含む組換えベクターの宿主細胞内への運搬(導入)は、当業界に広く知られた運搬方法を用いることができる。前記運搬方法は、例えば、宿主細胞が原核細胞である場合、CaCl2方法または電気穿孔方法などを用いることができ、宿主細胞が真核細胞である場合には、微細注入法、カルシウムホスフェート沈殿法、電気穿孔法、リポソーム-媒介形質感染法および遺伝子ボンバードメントなどを用いることができるが、これに限定されない。
【0062】
前記形質転換された宿主細胞を選別する方法は選択標識によって発現する表現型を用いて、当業界に広く知られた方法により容易に実施することができる。例えば、前記選択標識が特定抗生剤耐性遺伝子である場合には、前記抗生剤が含有された培地で形質転換体を培養することによって形質転換体を容易に選別することができる。
【0063】
他の例は前記核酸分子またはそれを含む組換えベクターを宿主細胞で発現させる工程を含む抗ICAM-1抗体の製造方法を提供する。前記製造方法は前記組換えベクターを含む組換え細胞を培養する工程を含み得、任意に培地から抗体を分離および/または精製する工程をさらに含み得る。
【発明の効果】
【0064】
本明細書で提供される抗ICAM-1抗体またはその抗原結合断片は、ヒトICAM-1のドメイン2に結合し、抗原特異的T-細胞耐性を誘導する特性を有し、これによって、樹状細胞の分化および/または機能の調節および/または免疫細胞媒介性疾患に対する予防および/または治療に有用に使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】一実施例で製造したキメラ抗体SI9がICAM-1発現細胞株Du145細胞に結合する現象をフローサイトメトリーで確認した結果である。
【
図2a】一実施例で280nmでOD(optical density)を測定して精製された抗体を定量した結果を示すグラフである。
【
図2b】一実施例で280nmでOD(optical density)を測定して精製された抗体を定量した結果を示すグラフである。
【
図2c】一実施例で280nmでOD(optical density)を測定して精製された抗体を定量した結果を示すグラフである。
【
図2d】一実施例で280nmでOD(optical density)を測定して精製された抗体を定量した結果を示すグラフである。
【
図3a】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体に対してsize exclusion HPLC(以下SE-HPLC)分析を実施してpeak symmetry factorを測定した結果を示すグラフである。
【
図3b】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体に対してsize exclusion HPLC(以下SE-HPLC)分析を実施してpeak symmetry factorを測定した結果を示すグラフである。
【
図3c】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体に対してsize exclusion HPLC(以下SE-HPLC)分析を実施してpeak symmetry factorを測定した結果を示すグラフである。
【
図3d】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体に対してsize exclusion HPLC(以下SE-HPLC)分析を実施してpeak symmetry factorを測定した結果を示すグラフである。
【
図4a】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体を61℃で1時間の間放置してANS試薬による蛍光変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図4b】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体を61℃で1時間の間放置してANS試薬による蛍光変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図4c】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体を61℃で1時間の間放置してANS試薬による蛍光変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図4d】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体を61℃で1時間の間放置してANS試薬による蛍光変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図5】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体を67℃で1時間放置してANS反応性を測定した結果を示すグラフである。
【
図6】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体のICAM-1抗原に対する結合力をELISA試験により比較したグラフである(y軸:450nmOD値;x軸:抗体濃度(ng/ml))。
【
図7a】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体のmelting pointを示すグラフである(7a:キメラ抗体、7b:H17L1、7c:H17L4)。
【
図7b】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体のmelting pointを示すグラフである(7a:キメラ抗体、7b:H17L1、7c:H17L4)。
【
図7c】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体のmelting pointを示すグラフである(7a:キメラ抗体、7b:H17L1、7c:H17L4)。
【
図8】一実施例により得られた抗ICAM-1抗体の結合定数(Kon)と解離定数(Koff)を測定して親和度(KD)を示すグラフである。
【
図9】多様な末梢血液条件で一実施例により得られたヒト化抗体投与による遺伝子発現プロファイルに対する変化を示すheat mapグラフである。
【
図10】多様な末梢血液条件で一実施例により得られたヒト化抗体DNP007投与による遺伝子発現プロファイルに対する変化をKEGG pathwayについて分析して示すグラフである(-10log(adjusted p-value))。
【
図11】多様な末梢血液条件で一実施例により得られたヒト化抗体DNP007投与による遺伝子発現プロファイルに対する変化をGO Biological processについて分析して示すグラフである(-10log(adjusted p-value))。
【
図12a】多様な末梢血液条件で一実施例により得られたヒト化抗体DNP007投与による遺伝子発現プロファイルに対する変化をサイトカイン遺伝子に対する増加、減少を分析して示すグラフである。
【
図12b】多様な末梢血液条件で一実施例により得られたヒト化抗体DNP007投与による遺伝子発現プロファイルに対する変化をサイトカイン遺伝子に対する増加、減少を分析して示すグラフである。
【
図13】多様な末梢血液条件で一実施例により得られたヒト化抗体DNP007投与によるサイトカインの変化をタンパク質レベルで変化した増加、減少を分析して示すグラフである。
【
図14】樹状細胞と自身のT細胞共培養条件で一実施例により得られたヒト化抗体DNP007投与によるサイトカインの変化をタンパク質レベルで変化した増加、減少を分析して示すグラフである。
【
図15】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞の成熟補助因子の発現程度を示すグラフである。
【
図16】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞の炎症性サイトカイン分泌程度を示すグラフである。
【
図17】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞の細胞自滅程度を示すグラフである。
【
図18a】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞表面因子の発現程度を示すグラフとして、免疫寛容樹状細胞誘導の有無を示す。
【
図18b】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞表面因子の発現程度を示すグラフとして、免疫寛容樹状細胞誘導の有無を示す。
【
図19a】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞のIDO(Indoleamine 2,3-Dioxygenase)発現程度を示すグラフとして、Canonical pathway結果を示す。
【
図19b】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞のIDO(Indoleamine 2,3-Dioxygenase)発現程度を示すグラフとして、Non-canonical pathway結果を示す。
【
図20】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞とともに培養されたT細胞の増殖程度および炎症性サイトカインであるインターフェロンガンマ(IFN-r)の生成程度を示すグラフである。
【
図21】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007処理された樹状細胞とともに培養されたT細胞の炎症性サイトカインであるインターフェロンガンマ(IFN-r)の生成程度およびT細胞増殖程度を多様な樹状細胞成熟経路(LPS刺激、TNF-a刺激、およびCD40L刺激)によって示すグラフである。
【
図22a】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007のリウマチ関節炎治療効果をリウマチ関節炎動物モデルで確認した結果として、抗体投与前後の関節炎点数を示す。
【
図22b】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007のリウマチ関節炎治療効果をリウマチ関節炎動物モデルで確認した結果として、抗体投与前後の関節炎点数を示す。
【
図22c】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007のリウマチ関節炎治療効果をリウマチ関節炎動物モデルで確認した結果として、抗-コラーゲン抗体水準(22c)をそれぞれ示す。
【
図23a】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007の移植片対宿主疾患抑制効果を移植片対宿主疾患動物モデルで確認した結果として、生存率を示す。
【
図23b】一実施例により得られたヒト化抗体DNP007の移植片対宿主疾患抑制効果を移植片対宿主疾患動物モデルで確認した結果として、T細胞再構成程度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下では実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限ためのものではない。
【実施例】
【0067】
<実施例1>マウス抗ICAM-1単クローン抗体の製作
ICAM-1に特異的な抗体を開発するために次のような実験を行った。
【0068】
1-1:マウス免疫
組換えヒトICAM-1タンパク質(0.5mg/ml;NCBI accession number NP_000192.2)を同一体積のadjuvant(Invivogen,#vac-adx-10)と混合して免疫物質を製造した。6週齢Balb/c雌マウス腹腔(IP;intraperitoneal cavity)に前記製造された免疫物質200uLを3週間隔で3回注入した。
【0069】
1-2:マウス抗ICAM-1単クローン抗体の製造
前記のように免疫化されたマウスの脾臓を切除して単一細胞浮遊液を収得してRPMI(GIBCO,#21875034)で2回洗浄した後、0.4%(w/v) trypan blue(sigma)を1:1(v/v)で混ぜた後トリパンブルー(Sigma-aldrich,#T8154)染色法で細胞数を計数した。X63 mouse myeloma細胞株(ATCC CRL-1580)を洗浄して計数して細胞融合partnerとして使用した。
【0070】
前記骨髄(myeloma)細胞と脾臓細胞は1:5の割合で混合して遠心分離後、上澄液を除去した。あらかじめ37℃に予熱した50%(w/v)PEG(polyethylene glycol)1500 1mlを1分にわたって徐々に添加した。約1分程度停滞させてからRPMI培地を徐々に追加して段階的に希釈した。遠心分離した後、1xHAT(hypoxanthine,aminopterin,thymidine)が含まれたRPMI(20% FBS,hypoxanthine-aminopterin-thymidine;Gibco)に浮游させ、96-ウェルプレートに150uL/ウェルで分注した後37℃、5%CO2培養器で培養した。前記融合後、一定期間HAT feedingを行い、群落を形成したウェルが観察されるとHT培地(hypoxanthine,thymidine)150uLを添加して37℃、5%CO2培養器で48時間培養した。
【0071】
ハイブリドーマ培養96-ウェルプレートで培養液100uLを取ってICAM-1反応性の有無を確認した。ICAM-1(R&D system,#ADP4-050)を1.0ug(microgram)/ml濃度でPBSに希釈した後、100uL/ウェルでNunc-immunoplate(Thermo,#439454)に分注して37℃培養器に1時間保管してコートした。コート液を完全に除去した後、1X casein blocking solution(sigma-aldrich,#B6429)を200uL/ウェルで分注して37℃培養器に1時間保管してブロッキングした。Blocking solutionを完全に除去した後、ハイブリドーマ培養液を100uL/ウェルで分注して37℃培養器に1時間保管して抗原/抗体反応を誘導した。培養液を完全に除去した後、洗浄液(0.02% Tween 20 in PBS)で3回洗浄して2次抗体Goat anti-mouse IgG-HRP(Jackson,#)をblocking solutionに1:10,000(v/v)割合で希釈して100uL/ウェルで分注して37℃培養器に30分保管して2次抗体反応を誘導した。3回洗浄してTMB(Thermo,#)を80uL/ウェルで分注して発色を誘導した後、1.0N硫酸(H2SO4)を添加して反応を終結した。前記得られた抗-ICAM-1抗体が細胞表面に発現したICAM-1を認知することを確認するために、フローサイトメトリーを追加的に実施した。ICAM-1を発現する前立腺癌細胞株Du145(ATCC,#HTB-81)1X106 cellに培養液100uLを添加して、常温で15分間放置して抗体結合を誘導した。PBSを添加して洗浄して、2次抗体Goat anti-Mouse IgG-FITC(Jackson,#)を1:100(v/v)割合でPBSに希釈して、100ul添加した後常温で10分反応した。洗浄を実施して未反応2次抗体を除去した後、フローサイトメトリーで反応性を確認した。
【0072】
前記記述した試験方法のようにICAM-1抗原に結合する陽性抗体を一次的に選別し、Du145細胞株に蛍光染色が可能な単クローン抗体を追加的に選別した。このように選別した単クローン抗体(SI9と命名)はICAM-1タンパク質抗原に高い反応性を示し、Du145細胞株表面にも効果的に結合する特性を示した。
【0073】
<実施例2>キメラ抗-ICAM-1単クローン抗体の製作
2-1.抗-ICAM-1抗体遺伝子配列クローニング
実施例1で選別したマウス単クローン抗体SI9の遺伝子をMouse Ig-Primer Set(Millipore,Cat.#:69831)を用いてクローニングした。実施例1で開発した単クローン抗体SI9生産ハイブリドーマを培養し、融合細胞株からtotal RNAを抽出した。Mouse Ig-Primer Setを使用して抽出したRNAを鋳型としてPCRを行い、これをpGem-Tベクター(Promega,Cat.#:A3600)に挿入した後、シーケンシングによりDNA塩基配列を確認し、IMGT site(www.imgt.org)を介してマウス抗体遺伝子を確認した。分析したSI9抗体の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列およびコーディング核酸配列を表1に整理した:
【0074】
【0075】
2-2.キメラ抗体の製造
前記製作された抗-ICAM-1マウス抗体SI9のアミノ酸配列に基づいて抗-ICAM-1キメラ抗体を製作した。
【0076】
2-2-1.プラスミドの製作
抗-ICAM-1キメラ抗体の発現のために、重鎖発現用プラスミドと軽鎖発現用プラスミドをそれぞれ製作した。軽鎖発現用プラスミドはpOptiVEC(Invitrogen社)ベクターを使用し、重鎖発現用プラスミドはpcDNA3.3(Invitrogen社)ベクターを使用して製作した。
【0077】
追加的なアミノ酸を挿入せず、抗体それぞれの可変領域コーディングcDNAと不変領域コーディングcDNAを連続的なアミノ酸配列として発現するようにするために、前記クローニングした可変領域のコーディング核酸配列(表1を参照)と知られているhuman IgG4不変領域(重鎖;GenBank_AIC59040.1)のコーディング核酸配列またはkappa不変領域(軽鎖;GenBank_ AAA58989.1)のコーディング核酸配列を連結した遺伝子それぞれを合成(Bioneer社)した。軽鎖不変領域のmiddle hinge部位の「CPSCP」配列をIgG1 isotypeのように「CPPCP」に追加変形してantibody shufflingを防止できるようにした。このように合成した重鎖および軽鎖発現遺伝子は制限酵素Xho IとSal Iで切断した後、軽鎖発現遺伝子はpOptiVecベクターに、重鎖発現遺伝子はpcDNA3.3ベクターにそれぞれligationし、完全な抗体発現用プラスミドを製作した(pcDNA3.3-anti-ICAM-1重鎖発現プラスミドおよびpOptiVEC-anti-ICAM-1軽鎖発現プラスミド)。
【0078】
2-2-2.形質転換
前記製作されたpcDNA3.3-anti-ICAM-1重鎖発現プラスミドとpOptiVEC-anti-ICAM-1軽鎖発現プラスミドをCHO細胞由来であるDG44細胞(Invitrogen)にtransfectionさせて形質転換過程を行った。
【0079】
まずtransfection3日前に浮游状態のDG44細胞を5%FBSが含まれたMEMa培地に培養して付着状態細胞に誘導した。形質転換はViaFect transfection regent(Promega,Cat.#:E4981)を使用して6well plateで行った。形質転換一日前、1X10
5 cells/wellの濃度で継代培養して付着状態に適応したDG44細胞を準備し、形質転換に使用されたDNAの量はpcDNA3.3-anti-ICAM-1重鎖発現プラスミドとpOptiVEC-anti-ICAM-1軽鎖発現プラスミドそれぞれ1.0μg、および2.0μgずつ1:2比率の組み合わせで使用した。形質転換は48時間の間行った。フローサイトメトリー(flow cytometer)を用いて形質転換細胞群を分析してその結果を
図1に示した。
図1に示すように、マウスSI9抗体の可変領域コーディング遺伝子をヒト抗体の不変領域コーディング遺伝子に挿入して得られたキメラ抗体のICAM-1発現細胞株結合現象を確認することができる。
【0080】
<実施例3>ヒト化抗-ICAM-1抗体の製作
3.1.In silico Humanizationによる組換え抗体配列の選定
キメラICAM-1抗体(SI9)の重鎖、軽鎖それぞれのCDR部位のアミノ酸配列(CDRH1:GYTFTDYA(配列番号:1)、CDRH2:ISTYSGNT(配列番号:2)、CDRH3:ARSLYFGSSGFDY(配列番号:3)、CDRL1:QTLVYRNGNTY(配列番号:4)、CDRL2:KVS(配列番号:5)、CDRL3:SQNTHFPYT(配列番号:6))を維持しながらヒト抗体遺伝子をコーディングしているgermline framework regionを組換えたヒト化抗体配列をin silico方法で選別した。
【0081】
その結果、ヒト化DNP007抗体配列として、重鎖可変領域24種、軽鎖可変領域4種をそれぞれ選別した。前記選別したヒト化抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域、CDR、およびフレームワークのアミノ酸配列を下記表2、3、4および5に示した。下記表2および表3で太い下線を引いて表示した部分はCDRのアミノ酸配列(順にCDR1、CDR2、およびCDR3)である。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
3.2.ヒト化組換え抗体の発現および分析
選別した抗体配列はそれぞれのヒトIgG4重鎖不変領域とkappa軽鎖不変領域と連結してヒトIgG4形態にHEK293細胞(ATCC CRL-1573)で発現させた。
【0087】
【0088】
Transfection7日後に、KanCap A resin(Kaneca社)を用いて培養液からヒト化組換え抗体を精製した。
【0089】
280nmでのOD(optical density)を測定して精製された抗体を定量してその結果を
図2a~2dに示した。
図2a~2dに示すように、組み合わせられる重鎖および軽鎖の種類とは関係なく、製造された多くの抗体が比較的高い生産性を示した。
【0090】
精製された抗体の純度分析のために、Sepax Zenix-C SEC-300 size exclusion column(Sepax technologies社)を用いてsize exclusion HPLC(以下SE-HPLC)分析を実施してpeak symmetry factorを測定した。前記得られた結果を
図3a~3dに示した。高純度抗体をSE-HPLCで分析すると一つのsymmetric peakで観察されるが、高分子/低分子などの異種体が含まれた場合、2個以上のpeakが観察されるかsymmetric peak factorが低く観察される。
図3a~3dに示すように、多くの場合、抗ICAM-1ヒト化抗体は相対的に高いsymmetric peak factorを示した。
【0091】
3-3.物理化学的/生物学的特性によるヒト化抗体の選別
3-3-1.高安定性ヒト化抗体の選別
3-3-1-1.高安定性ヒト化抗体の1次選別
安定性が高い抗体を優先的に選別するために、高温の苛酷条件に抗体を放置して、物理的な性質変化を観察して、熱変性に抵抗性を示すヒト化抗体を選別した。
【0092】
熱変性測定は8-anilino-1-naphthalenesulfonic acid(以下ANS;Sigma社)を用いた結合実験によって確認した。ANSはタンパク質変性時露出する疎水性部位に結合して470nm波長の光を放出するのでタンパク質変性有無を確認できる化合物である。
【0093】
実施例2-1で準備したヒト化組換え抗体96種をPBS(phosphate buffered saline)を用いて0.2mg/ml濃度で一定に希釈し、高温(61℃)に適当時間(1時間)放置した。抗体試料200uLに0.2mg/ml ANS溶液20uLを入れて混合して15分反応した後、360nm excitation、460nm emission条件で分析した。ANS反応によって放出された460nm波長をfluorometer(BioTek,SynergyHT)で測定して、H1L1抗体(100%)を基準として相対評価して
図4a~4dに示した。重鎖VH7およびVH22の場合、組み合わせられる軽鎖とは関係なくANSによる470nm蛍光放出が急激に増加することが示され、熱によって多少変性されることが確認されたが、その他抗体は比較的熱について安定性を示した。
【0094】
3-3-1-2.高安定性ヒト化抗体の2次選別
図2a-2d、3a-3d、および4a-4dで比較的高い抗体生産性、比較的高いpeak symmetry factorおよび/または高温(61℃)条件での比較的高い熱安全性を示す合計47種のヒト化抗体を一次的に選定した(
図5参照)。
【0095】
より厳格な安定性評価のために、前記47種のヒト化抗体を0.2mg/ml濃度で一定に希釈した後、67℃高温で1時間放置してANS反応性を測定し、H1L1抗体を基準として相対的な反応性を
図5に示した。61℃条件でのANS反応性(4a~4d)と比較し、67℃でのANS反応性が多少高まる傾向が示されたが、H17L1、H4L3、H5L3、H11L3、H17L3、およびH17L4の組み合わせの6種ヒト化抗体(表7を参照)は相対的に低いANS反応性を示し、熱変性について高い抵抗性を有する抗体と評価された。
【0096】
【0097】
3-3-2.抗原結合分析
安定性試験評価で表7のように先導抗体6種のヒト化抗体を選定し、H11L3除いた抗体5種の結合力を親抗体(キメラ抗体;実施例1.3参照)と比較評価した。
【0098】
抗原ICAM-1(ICAM-1;R&D system社)を96well plateにウェル当たり100ngずつコートした後、blockingした。一次抗体量は80ng/mlから2倍ずつ系列希釈して、37℃温度で1時間結合させ、二次抗体としてgoat anti-Human Ig-HRP接合体(Jackson ImmunoResearch社)を1:10000で希釈して、37℃温度で30分間結合させた。各工程の間は3回ずつ水洗過程を経てTMB(3,3’,5,5’-Tetramethylbenzidine)反応した。1N H2SO4溶液でTMB溶液と同量(100ul)処理して反応中止した後、450nmでOD値を測定した。
【0099】
前記のように得られた親抗体および5種のヒト化組換え抗体のICAM-1抗原に対する結合力を
図6および表8に示した。
【0100】
【0101】
評価したヒト化抗体5種すべては概してキメラ親抗体より高い反応性を示し、その中でH17L4組み合わせの抗体が最も高い反応性を示した。
【0102】
3-3-3.Melting temperature分析
特に安定した物理的特性を示すヒト化抗体H17L1とH17L4のmelting temperatureを親抗体(キメラ抗体;実施例1.3参照)と比較して安定性を評価した。
【0103】
抗体試料にProtein thermal shift dye(Lifetechnologies,#4466038)を添加して反応試料を製造し、25℃から95℃まで連続して温度をあげて抗体試料の変性を誘導した。抗体変性は反応液に580nm波長を照射してprotein thermal shift dyeから放出する623nm波長を測定して確認し、ViiA(商標) 7 softwareでmelting temperatureを分析した。前記得られた結果を下記の表9および
図7a(キメラ親抗体)、7b(H17L1)および7c(H17L4)に示した:
【0104】
【0105】
表9および
図7a~7cに示すように、それぞれの抗体試料で2個のmelting temperatureが確認された。Melting temperature 1はキメラ親抗体を含む3種の抗体すべてが67℃程度で類似に測定されたが、melting temperature 2はキメラ親抗体と比較して2種のヒト化抗体で10℃以上さらに高く測定された。これはヒト化抗体2種がキメラ親抗体に比べて熱変性に強い抵抗性があることを意味する。
【0106】
3-3-4.Affinity測定
H17L1およびH17L4ヒト化抗体の抗原に対する親和度を親抗体と比較するためにOctet system(ForteBio)を使用した。Amine reactive Bio-sensor AR2G(ForteBio)に抗体3種をそれぞれ付着して五つの濃度のICAM-1抗原溶液を添加して抗原/抗体反応が発生するように誘導した。前記抗原/抗体反応結果を用いて結合定数(Kon)と解離定数(Koff)を測定して親和度(KD)を計算してその結果を表10および
図8に示した:
【0107】
【0108】
表10および
図8に示すように、キメラ親抗体の親和度(KD)は1.03X10
-8Mと測定され、H17L1、H17L4ヒト化抗体はそれぞれ3.43X10
-9および3.62x10
-9Mと測定され、ヒト化抗体で改善された親和度を確認することができた。
【0109】
<実施例4>末梢血液での免疫調節効能試験(in vitro)
4-1.末梢血液単核球分離およびIFNg変化測定
本明細書で提供された抗体の免疫調節効能を確認するために、末梢血液単核球に前記実施例3で製造されたDNP007抗体(H17L4抗体)を処理して代表的な前炎症性(pro-inflammatory)サイトカインIFN-gamma分泌量を測定した。
【0110】
正常支援者から採血を実施して、Ficoll-Paque Plus(GE healthcare,#17144002)で末梢血液単核球を分離した。10%FBS添加RPMI培地に分離した末梢血液単核球を懸濁して、GM-CSF(Creagene)とIL-4(Creagene)をそれぞれ100ng/ml濃度で添加して、monocyteから樹状細胞が分化できるようにした。DNP007抗体は10.0ug/ml濃度で末梢血液単核球に共に添加した。
【0111】
樹状細胞前駆細胞であるmonocyteに及ぼすDNP007抗体効能を確認するために、分離した末梢血液単核球を培養皿で2時間培養して培養皿に付着を誘導した後、付着細胞と浮游細胞に分けてそれぞれGM-CSFとIL-4を100ng/ml濃度でそれぞれ添加し、DNP007抗体(10.0ug/ml)を共に添加した。
【0112】
培養6日目に末梢血液単核球、付着細胞および浮游細胞をそれぞれ洗浄してLipopolysaccharides(LPS,Sigma-Aldrich,#L2630)を5.0ug/mlで添加して培養した。翌日培養液を取ってHuman IFN gamma Uncoated ELISAキット(Invitrogen,#88-7316-77)で分泌されたIFN-gamma濃度を測定した。
【0113】
末梢血液単核球、付着細胞および浮游細胞のすべての条件でDNP007抗体を処理した試料群ではINF-gamma分泌量が顕著に減少した(表11)。このような結果はLPSによる免疫細胞活性化メカニズムをDNP007抗体が抑制して現れる現象であると理解された。
【0114】
【0115】
4-2.DNP007抗体の末梢血液単核球に対する影響分析-遺伝子発現プロファイル分析(RNA sequencingによるTranscriptome分析)
DNP007の免疫反応調節が単に樹状細胞によるものであるか、樹状細胞とT細胞をはじめとする免疫細胞の接触によるものであるかを調べるために、下記のようにヒト末梢血液単核細胞を分離後、5種類の末梢血液集団に分けて100ng/ml GM-CSFおよび100ng/ml IL-4を添加し、10ug/mlのDNP007抗体添加有無の条件下で6日間培養して細胞を収得し、成熟した樹状細胞への誘導のために培養6日目に前記細胞を洗浄して5ug/ml LPS(Sigma-Aldrich)で一日の間処理して、各集団別の細胞を収得して。total RNAを分離して遺伝子発現プロファイルを分析した。
【0116】
(1)Whole PBMC:ヒト末梢血液単核細胞は健康な支援者の血液をFicoll-Paque(GE Healthcare)で濃度こう配遠心分離を行って分離した。
(2)CD14+monocyte由来の樹状細胞:健康な支援者の血液をFicoll-Paque(GE Healthcare)で濃度こう配遠心分離を行って分離したヒト末梢血液単核細胞からCD14+単核球を磁気分離法(magnetic beads利用)を用いて分離した。
(3)CD14 deplete PBMC:(2)のCD14+単核球を磁気分離法(magnetic beads利用)で分離して残った末梢血液集団を使用した。
(4)Attached PBMC:健康な支援者の血液をFicoll-Paque(GE Healthcare)で濃度こう配遠心分離を行って、分離したヒト末梢血液単核細胞を10%FBSが添加されたRPMI培地に2時間の間37℃、5%CO2インキュベーターで細胞を付着させた後、上層液(浮游細胞を含む)を掬い取り、付着した細胞のみ分離した。
(5)(4)の実験で掬い取った上層の浮游細胞を使用した。
【0117】
結果を
図9に示した。
図9に示すように、CD14+単核球から分化させた樹状細胞単独(A)およびCD14+単核球が含まれていない末梢血液集団(B)はDNP007を処理していない対照群と類似の遺伝子発現プロファイルを示した。これに対し、CD14+由来の樹状細胞単独で存在する条件でない、他の様々な免疫細胞が共に存在する条件(C、D、E)では、DNP007の添加時、添加していない対照群とは顕著に異なる遺伝子発現プロファイル様相を示した。
【0118】
また、これら総遺伝子発現プロファイルでDNP007を処理していない対照群に比べて、2倍以上上向および下向する遺伝子を類似の機能を有する遺伝子グループに分けたKEGG pathway & GO Biological process分析した結果、DNP007によって変化する遺伝子発現プロファイルはほとんどの炎症反応をはじめとする免疫反応を調節するのに関与する遺伝子であった(
図10および
図11)。変化様相が明らかな遺伝子のうちのサイトカインに対する部分を図式化すると
図12aおよび12bのとおりである。末梢血液の中で付着した細胞を除いた上層の浮游細胞と全末梢血液細胞(whole PBMC)サンプルの遺伝子発現の分析結果、
図12aおよび12bのようにIL6、IL17、IL23、IL36など代表的な自己免疫疾患のターゲットになるサイトカインの遺伝子発現をDNP007抗体処理によって抑制することが示された。
【0119】
これら結果により、本明細書で提案されたICAM-1抗体DNP007は単に樹状細胞にのみ限定して影響を及ぼすのではなく、樹状細胞と他の免疫細胞の接触法や細胞間交差反応に作用し、これにより多様な免疫反応遺伝子発現を調節して結果的に免疫抑制反応を招くことがわかる。
【0120】
4-3.DNP007抗体の末梢血液単核球に対する影響分析-サイトカインの分析
上記4-2実験セットの準備の際、遺伝子発現変化が実際のタンパク質発現変化と相関関係を示すかどうかを確認するために、4-2実験時に上層液を分離して実際のサイトカインを定量分析した。IFNgamma、IL1 beta、IL-6、IL-10、IL-12(p70)、IL-17、IL-27はHuman Luminex Screening assay(LXSAH,R&D)キットを用いて、TGF-betaはTGF-beta premixed assayキット(TGTBMAG-64K-03;Merck Millipore)を用いて分析した。
【0121】
図13のように分析したサイトカインのすべてはDNP007抗体投与によって40~80%水準の実際のタンパク質発現の減少を示した。これは実施例4-2の遺伝子発現プロファイル結果と一致する結果としてDNP007抗体による免疫抑制反応を再確認したものといえる。
【0122】
また、正常な人の末梢血液に分離して樹状細胞に分化させた後、同一人のT細胞と共培養条件で、LPS処理で免疫活性化を誘導したときも、DNP007抗体の投与したサンプルは
図14のように顕著な免疫サイトカインのタンパク質レベルでの発現抑制を確認した。
【0123】
実施例5.抗体の樹状細胞に対する効果試験
5-1.末梢血液単核球での準成熟樹状細胞(Semi-matured Dendritic Cells)の誘導活性試験
本実施例では本明細書で提供された抗体が樹状細胞の分化および成熟に及ぼす効果を確認した。より具体的には、正常支援者から採血を実施して準備した末梢血液に、CD14 microbead(Miltenyi Biotec、130-050-201)を付着した後、セルハーベスター(Miltenyi Biotec.Cat.000403)を用いてヒト末梢血液単核球を分離した。ここにGM-CSF(Creagene)とIL-4(Creagene)をそれぞれ100ng/ml濃度で処理した10%FBS containing RPMI培養液を入れ、5日間未成熟樹状細胞(immature DC)に分化を誘導した。培養5日目にLPS Lipopolysaccharides,Sigma-Aldrich,#L2630)5ug/mlを添加して、24時間の間樹状細胞(mature DC)を刺激して成熟樹状細胞に分化させた。本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)および対照抗体(hIgG)は、樹状細胞分化誘導過程0、3日目に5.0ug/mL濃度で添加した。分化6日目に樹状細胞の成熟表面因子であるCD80(Invitrogen,Catalog# 11-0809-42)、CD86(BD,Catalog# 555657)、CD40(BD,Catalog# 555588)、CD54(BD,Catalog# 347977)およびHLA-DR(BioLegend,Catalog# 307616)(以上、括弧内は該当因子に対する抗体である)の発現量をフローサイトメトリーを用いて確認および比較した。
【0124】
前記得られた各因子の発現量(Mean of Fluorescent Intensity,MFI)をLPSのみを処理した群に対する相対値に換算して
図15に示した。
図15で確認されるように、対照抗体(hIgG)を処理した樹状細胞の場合、LPS刺激でCD80、CD54、CD40、およびHLA-DRなどの補助因子の発現がいずれも増加したが、試験抗体DNP007とLPSを共に処理した群ではこのような補助因子の発現が顕著に減少することを確認した。このような結果は前記本明細書で提供された抗体が抗原刺激による樹状細胞の成熟を制限し、免疫抑制環境を誘導することを示す。
【0125】
5-2.樹状細胞での炎症性サイトカイン分泌量試験
本明細書で提供された抗体が樹状細胞の分化および成熟段階に影響を与えるかどうかを確認するために、末梢血液から分離したヒト末梢血液単核球をGM-CSFとIL-4とともに5日間培養して樹状細胞に分化させ、LPSのような刺激因子を入れて24時間培養して成熟を誘導させた後、樹状細胞の成熟度を測定するために培養液内の炎症性サイトカイン(Proinflammatory cytokine)の量を分析した。
【0126】
より具体的には、ヒト末梢血液にCD14 microbead(Miltenyi Biotec、130-050-201)を付着した後、セルハーベスター(Miltenyi Biotec。Cat。000403)を用いてヒト末梢血液単核球を分離した。ここにGM-CSFとIL-4をそれぞれ100ng/ml濃度で処理した10%FBS containing RPMI培養液を入れて、5日間未成熟樹状細胞(immature DC)に分化を誘導した。培養5日目にLPS 5ug/mlを添加して24時間の間樹状細胞(mature DC)を刺激して、成熟樹状細胞に分化を誘導した。本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)および対照抗体(hIgG)は、樹状細胞分化誘導過程0、3日目にそれぞれ0.1~10.0ug/mL濃度で添加した。分化6日目に培養液内の炎症性サイトカイン(Proinflammatory cytokine;IL-6およびTNF-a)の量をELISA技法を用いて分析した。
【0127】
前記得られた結果を
図16に示した。
図16に示すように、対照抗体を処理した成熟した樹状細胞ではLPS刺激により代表的炎症性サイトカインであるIL-6およびTNF-αの分泌量が大きく増加することに対し、試験抗体DNP007を処理した樹状細胞では炎症性サイトカインの分泌能が大きく減少した。樹状細胞の成熟は樹状細胞が抗原提示細胞として能力を取得する過程を意味し、成熟した樹状細胞は抗原特異的T細胞の活性を誘導する機能をする。本明細書で提供された抗体の処理によって、樹状細胞成熟度の重要な尺度である炎症性サイトカインIL-6およびTNF-αの分泌が大きく抑制され、これにより本明細書で提供された抗体が樹状細胞の成熟を抑制する機能を有していることを確認した。
【0128】
5-3.樹状細胞の細胞自滅(Apoptosis)試験
樹状細胞の分化段階で本明細書で提供された抗体が細胞死滅に影響を与えるかどうかを確認するために、前記抗体処理による6日間の分化および成熟させた樹状細胞の死滅程度を測定した。細胞死滅程度は7AAD染色後フローサイトメトリーにより確認した。
【0129】
より具体的には、ヒト末梢血液にCD14 microbead(Miltenyi Biotec,130-050-201)を付着した後、セルハーベスター(Miltenyi Biotec.Cat.000403)を用いてヒト末梢血液単核球を分離した。GM-CSFとIL-4をそれぞれ100ng/ml濃度で処理した10%FBS containing RPMI培養液を入れて5日間未成熟樹状細胞(immature DC)に分化を誘導した。培養5日目にLPS 5ug/mlを添加して24時間の間樹状細胞(mature DC)を刺激して、成熟樹状細胞を分化させた。本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)および対照抗体(hIgG)は樹状細胞分化誘導過程0、3日目に5.0ug/mL濃度で2回添加した。分化誘導後6日目なる日、成熟樹状細胞(mature DC)を7AAD(7-Amino-Actinomycin D、BD、51-68981E 5ul/test)を染色してフローサイトメトリーを用いて分析した。
【0130】
前記得られた結果を
図17に示した。
図17に示すように、分化および成熟を経た樹状細胞の細胞死滅程度を確認した結果、対照抗体処理群は2.33%の細胞死滅を示すことに比べて、試験抗体DNP007を処理した樹状細胞の細胞死滅率は36.3%で、対照群より高い細胞死滅効果を示した。
【0131】
前記試験抗体による樹状細胞の細胞死滅効果は細胞自滅(apoptosis)によるものと評価することができる。
【0132】
5-4.免疫寛容樹状細胞(Tolerogenic DC)の誘導試験
本明細書で提供された抗体が免疫寛容樹状細胞を誘導するかどうかを確認するために、6日間の分化および成熟過程を経た準成熟樹状細胞で、フローサイトメトリーで免疫寛容樹状細胞の標識因子の発現を確認した。
【0133】
より具体的には、実施例5-2または5-3と同一にヒト末梢血液単核球から6日間の分化および成熟過程を経た準成熟樹状細胞に、本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)および対照抗体(hIgG)を樹状細胞分化誘導過程0、3日目に5.0ug/mL濃度で2回添加し、分化誘導後6日目なる日、フローサイトメトリーで免疫寛容樹状細胞標識因子の発現を確認した。
【0134】
細胞表面発現因子PDL1(Invitrogen,Catalog# 17-5983-42)、PDL2(Miltenyi biotec,Catalog# 130-098-528)、およびAdenosin Receptor A2b(Novus,Catalog# NBP2-41312PE)(以上、括弧内は該当因子に対する抗体である)は、該当抗体を適正濃度で処理した後、冷蔵で20分間反応して染色した。フローサイトメトリーバッファ(0.5%BSA、0.01%NaN3 in 1XPBS)2mlを添加して2200rpmに3分遠心分離し、上層液を除去して洗浄して分析した。
【0135】
細胞液物質であるIDO(Indoleamine 2,3-Dioxygenase;Invitrogen,Catalog# 12-9477-42)、TGF-β(R&D systems,Catalog# IC240P)、IL-10(Miltenyi biotec,Catalog# 130-112-729)(以上、括弧内は該当因子に対する抗体である)は、細胞内抗原染色方法キット製造会社のマニュアルに従い染色した。細胞pelletに100ulのIC Fixation buffer(Invitrogen,Catalog# 00-8222-49)を入れて常温で光を遮断させた後、30分間反応して細胞を固定した。1x Permeabilization buffer(Invitrogen,Catalog# 00-8333-56)を2mL添加して、600g 5分遠心分離して上層液を除去した。適切な濃度の各抗体を1x Permeabilization buffer 100ulに添加して、残りの細胞pelletで処理し、常温で光を遮断させた後、30分間反応させた。1x Permeabilization buffer 2mLを追加し、600g 5分条件で遠心分離し、洗浄し、フローサイトメトリーbuffer 2mlずつ添加し、遠心分離して、追加洗浄を実施した。1%パラホルムアルデヒドを添加して細胞を固定し、フローサイトメトリーを用いて各抗原の発現量を分析した。
【0136】
前記得られた結果を
図18aおよび18bに示した。
図18aおよび18bに示すように、試験抗体DNP007が処理された樹状細胞は免疫寛容の代表因子であるIDOの発現が対照抗体処理された樹状細胞(対照群)に比べて相当な増加を示し、その他免疫抑制因子として知られているPDL1、PDL2およびadenosine R A2bの発現量も対照群に比べて増加した。このように、本明細書で提供された抗体を処理した樹状細胞の分析によりIDOおよび免疫寛容に関連する一部因子の発現が増加することを確認した。特に樹状細胞に発現するIDOは、T細胞の増殖を抑制して免疫寛容に重要な役割をすると知られている。したがって、本明細書で提供された抗体によるIDO発現増加は、免疫寛容が誘導される高い可能性を示唆する。
【0137】
5-5.樹状細胞でのIDO発現試験
本明細書で提供された抗体による樹状細胞成熟抑制が、知られている二つの成熟経路のうちどの経路によるものかを確認するために、LPSとCD40Lを用いて樹状細胞の成熟を誘導した。6日間の分化および成熟過程を経た準成熟樹状細胞で、フローサイトメトリーで免疫寛容樹状細胞標識因子であるIDOの発現を確認した。
【0138】
より具体的には、Canonical pathwayとして知られているLPSによる刺激は、実施例5-2または5-3と同じ条件で行い、6日間の分化および成熟過程を経た準成熟樹状細胞を準備してテストした。
【0139】
Non-canonical pathwayとして知られているCD40Lによる刺激試験では、GM-CSFとIL-4をそれぞれ100ng/ml濃度で処理した10%FBS containing RPMI培養液を入れて5日間分化した未成熟樹状細胞を使用した。培養してから5日目なる日、GM-CSF、IL-4 100ng/mlの濃度で処理された10%FBS containing RPMIにCD40L(Enzo,ALX-522-110) 1ug/mlを共に添加して、48時間刺激を与えて成熟樹状細胞(mature DC)を誘導した。本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)および対照抗体(hIgG)は樹状細胞分化誘導過程0、3日目に5.0ug/mL濃度で2回処理し、5日目にCD40Lを5.0ug/mLの量で処理した。分化誘導7日になる日、成熟樹状細胞(Mature DC)に上で言及した細胞内抗原染色方法(Staining intracellular Antigens)で染色した後、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【0140】
前記得られた結果を
図19a(Canonical pathway)および19b(Non-canonical pathway)に示した。
図19aおよび19bに示すように、試験抗体DNP007はCD40Lによる樹状細胞の成熟進行過程で細胞内IDOの発現減少を誘導することに対し、LPSによる樹状細胞の成熟は個体間IDO発現が大きい差を示した。樹状細胞の成熟経路にはLPSおよびTNF-a刺激によって誘導される古典的経路とCD40Lによって誘導される非古典的経路がある。前記結果は本明細書で提供された抗体が二つの樹状細胞成熟経路に影響を与え、特にCD40Lによる成熟を制限して免疫寛容樹状細胞に分化を誘導することを示す。
【0141】
5-6.水溶性物質によるT細胞免疫抑制試験
本明細書で提供された抗体の処理により成熟が抑制された樹状細胞がT細胞に影響を与える要因が細胞間の接合によるものであるか、あるいは細胞から分泌された媒介因子によるものであるかを確認するために、樹状細胞とT細胞を分離した条件で培養してT細胞の活性抑制能を確認した。
【0142】
より具体的には、ヒト末梢血液にCD3 microbead(Miltenyi、130-050-201)を付着した後、セルハーベスターを用いて分離したヒトT細胞と前記実施例5-1ないし5-5と同じ条件で得た成熟樹状細胞(Mature DC)を分離した条件で培養してT細胞の活性抑制能を確認した。培養液に通過できるように製作されたプレートの下のチャンバに、抗-CD3抗体(BD、557052)1ug/mlと抗-CD28抗体(BD、555725)1ug/mlをコートして末梢血液から分離した自己T細胞を入れた。この際、自己T細胞は増殖を確認するための条件としてCFSE Labelingをした。上のチャンバには本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)を処理して分化させた樹状細胞を入れた。そして二つの細胞は各チャンバで培養液を共有したまま4日間培養した。樹状細胞と自己T細胞の個数は1:10の割合で処理した。
【0143】
前記得られた結果を
図20に示した。
図20に示すように、二つの細胞の直接的な接触がない条件でもT細胞は、試験抗体処理樹状細胞によって増殖が抑制され、炎症性サイトカインであるインターフェロンガンマ(IFN-r)の生成が減少した。前記結果は本明細書で提供される抗体処理樹状細胞がT細胞との物質交換によりT細胞の活性および増殖を抑制できることを示し、樹状細胞から分泌された物質はT細胞の活性を抑制する媒介因子として作用し、免疫寛容を誘導することを意味する。
【0144】
5-7.抗体処理された樹状細胞によるT細胞免疫抑制試験
本明細書で提供された抗体の処理で成熟が抑制された樹状細胞のT細胞活性抑制能を評価するために、樹状細胞とT細胞を共に培養した条件でT細胞の活性および増殖を確認した。先に樹状細胞の成熟は知られている二つの成熟経路への刺激因子であるLPS、TNF-aおよびCD40Lを用いて誘導し、T細胞の増殖と細胞内炎症性サイトカインの発現量を測定した。
【0145】
より具体的には、樹状細胞の成熟は知られている二つの成熟経路(Canonical pathway:LPS,TNF-alpha/Non-canonical pathway:CD40L)を用いてそれぞれ誘導した。LPSとCD40Lによる刺激は実施例5-5と同様の方法で行われ、TNF-alphaによる刺激は、未成熟樹状細胞に誘導された状態で5日目にGM-CSFおよびIL-4をそれぞれ100ng/ml濃度で処理した10% FBS containing RPMIにTNF-a 13ng/ml、IL-1β10ng/ml、PGE2 350ng/mlを処理して48時間刺激を与えて成熟樹状細胞(mature DC)に分化させて行った。本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)および対照抗体(hIgG)は樹状細胞分化誘導過程中の0、3日目に5.0ug/ml濃度で2回処理した。
【0146】
T細胞の活性を誘導するために抗-CD3抗体1ug/mlをコートしたプレートに上記のような方法で分化した成熟樹状細胞と自己T細胞を1:10の割合で入れて、3日後にT細胞の増殖と細胞内炎症性サイトカインの発現量を測定した。この時、同様にT細胞の増殖を確認するためにCFSE Labelingを行った。
【0147】
前記結果を
図21に示した。
図21に示すように、対照抗体を処理した樹状細胞とともに培養したT細胞は活発な細胞増殖を示し、炎症性サイトカインに代表されるIFN-γおよびIL-10を高く発現した。これと対照的に、試験抗体DNP007を処理して成熟が制限された樹状細胞とともに培養したT細胞は抗CD3抗体による刺激にもかかわらず、増殖が抑制され、炎症性サイトカイン分泌が顕著に減少した。
【0148】
このような結果は本明細書で提供される抗体が二つの樹状細胞の成熟経路(LPSおよびTNF-a刺激によって誘導される古典的経路とCD40Lによって誘導される非古典的経路)すべてに影響を与え、成熟が抑制された樹状細胞によって減作されたT細胞は増殖と炎症性サイトカインの発現を制限することを示す。すなわち、本明細書で提供される抗体によって誘導された準成熟樹状細胞はT細胞の活性および増殖を抑制する。
【0149】
実施例6.抗体の免疫関連疾患の治療効果(in vivo)
6-1.リウマチ関節炎の治療効果試験
本明細書で提供された抗体がリウマチ関節炎に効果があるかどうかを確認するために、mild and moderateリウマチ関節炎モデルを次のように準備した:最初の日にType II Bovine collagen(Chodrex inc,Cat.#:20021) 4mgをCFA(Sigma Cat.#:F5881)とともに1:1体積の割合で0.5ml+0.5mlの量で準備して、0.1mlずつ10ヶ所に分けて霊長類動物(Cynomolgus Macaques(macaca fascicularis)、性別:female、年齢:2.5~5years、体重:2~6kg、入手元:PrimGen)などの表皮(Intradermal)に注入した。21日目の日と45日目の日にも同様の方法で注入し、ただし二回目と三回目の注入はCFAの代わりにIFA(Sigma,Cat.#:F5506)に交替して注入した。対照群はPBSを同じ方式で注入した。関節炎誘発の有無を測定するRA scoreは動物の各関節の腫れや赤い色変化の程度を半定量的に点数化した(
図22a)。本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)は初めてcollagen処理後、70日目から週2回、8mg/kgで投与しながら評価基準によって64関節の関節炎点数(Arthritis score)を測定した。また、投与動物の血漿からBovine collagen特異抗体を検査した。これはChondrex社の)ELISAキット(Cat.#:2052T)を用いてBovine collagen特異抗体の変化を測定した。
【0150】
前記得られた結果を
図22bおよび22cに示した。その結果、試験抗体DNP007を投与したグループ(n=3)は、投与していないグループ(n=2)に比べてArthritics scoreが減少し(
図22b)、疾患の直接的な免疫学的因子であるanti-collagen抗体も顕著に減少した(
図22c)。このような結果は本明細書に提供された抗体がリウマチ関節炎の治療に効果的であることを示す。
【0151】
6-2.移植片対宿主疾患の治療効果試験
移植片対宿主疾患(Graft-versus-host disease,GVHD)は、同種臓器(例えば、骨髄)移植時移植を受けた患者(授与者)から現れる副作用の一つであり、供与者のT細胞やNK細胞が授与者の臓器を攻撃して現れる現象である。本明細書で提供された抗体が同種骨髓移植時移植片対宿主疾患の抑制に効果があるかどうかを確認するために、NOD-SCIDハツカネズミにヒトの末梢血液単核球(PBMC)を入れてT細胞の再構成(Reconstitution)と生残率を対照群と比較した。
【0152】
より具体的には、移植片対宿主疾患(Graft-versus-host disease,GVHD)モデルはNSG(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)雌マウスを1.6Gyで放射線照射した後、ヒトのPBMCを注入することによって確立した。ヒトのPBMCはLeucosep(商標) tube(Greiner bio-one、227290)にFicoll(GE Healthcare、17544202)を使用して遠心分離して中間白色層を分離して確保した。分離したヒトのPBMCはマウス一匹当たり1x107 cells/200μLで腹腔投与した。
【0153】
本明細書で提供された抗体DNP007(H17L4抗体)を10mg/kg容量で週2回ずつ6週間、合計12回投与して試験群を準備し、CTLA-4-Ig(Bio X cell,BE0099)を10mg/kg容量で週2回ずつ6週間、合計12回投与して陽性対照群を準備した。G1(n=3)はPBMCも投与していない陰性対照群であり、G2(n=7)はvehicleとしてGVHDを誘発させてPBSを投与した陰性対照群である。また、G3(n=7)はCTLA-4-Igを投与した陽性対照群であり、G4(n=7)は試験抗体DNP007を投与した試験群である。GVHD誘発および治療効果の測定は五つの臨床的基準(体重減少、行動、活性度、脱毛、皮膚;weight loss,posture,activity,fur,skin)を点数化して記録した。
【0154】
前記得られた結果を
図23aおよび23bに示した。その結果、本明細書に提供された抗体が投与された試験群(G4)は陰性対照群であるG2より生残率が大きく向上し(
図23a)、ヒトT細胞の再構成が正常にうまく行われていることを確認した(
図23b)。このような結果は、本明細書で提供された抗体が同種骨髓移植時に発生する移植片対宿主疾患を防止して正常な供与者T細胞の再構成を可能にする効果があることを示す。
【配列表】