(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】防食塗料組成物、防食塗膜および防食塗膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20230707BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20230707BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230707BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230707BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/08
C09D7/63
B05D7/24 302U
B05D3/02 Z
(21)【出願番号】P 2022212119
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 柊也
(72)【発明者】
【氏名】矢野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】仲井 健悟
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌満
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-163955(JP,A)
【文献】特開平02-202911(JP,A)
【文献】国際公開第2022/059411(WO,A1)
【文献】特開平07-292069(JP,A)
【文献】特許第7040685(JP,B1)
【文献】特表2009-523879(JP,A)
【文献】特開平8-3282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 163/00
C09D 5/08
C09D 7/63
B05D 7/24
B05D 3/02
C08G 59/00
C09D 129/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、
アミン硬化剤(B)と、
アルキルアミン(C)と
を含有
し、
前記アルキルアミン(C)が、R-NH
2
[Rは炭素数8~10のアルキル基である。]で表される1級アミンであり、下記式(1)で表される化合物以外の化合物である、
防食塗料組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1
はヒドロキシ基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、R
2
NHCH
2
-(R
2
は炭素数1~6のアルキル基を示す)、又は下記式(1A)で表される基を示し、pは0~2の数である。]
【化2】
[式(1A)中、R
3
は水素原子又はNH
2
-を示す。]
【請求項2】
前記アルキルアミン(C)が常温で液状である、請求項1に記載の防食塗料組成物。
【請求項3】
前記アミン硬化剤(B)が環状構造を有するアミン硬化剤を含む、請求項1に記載の防食塗料組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(A)が、エポキシ当量が200以下であり、かつ、常温で液状である、請求項1に記載の防食塗料組成物。
【請求項5】
前記アミン硬化剤(B)が常温で液状である、請求項1に記載の防食塗料組成物。
【請求項6】
不揮発分の含有量が90質量%以上である、請求項1に記載の防食塗料組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の防食塗料組成物より形成された防食塗膜。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の防食塗料組成物を、10℃以下の温度で乾燥させて防食塗膜を形成する工程を含む、防食塗膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食塗料組成物、防食塗膜および防食塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶のWBT(ウォーターバラストタンク)、COT(カーゴオイルタンク)、ケミカルタンク等のタンクの内面には、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性に優れるタンクを得ることを目的として、エポキシ樹脂系の防食塗料組成物が塗装されている。
このような防食塗料組成物としては、近年、特に外国を中心にVOC(揮発性有機化合物)規制が厳しくなっており、よりハイソリッド型の防食塗料組成物が求められている。
【0003】
また、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性などの性能だけでなく、タンク内面に塗装する性質上、低温下での造膜性(以下「低温造膜性」ともいう。)が良好な防食塗料組成物が塗装作業性の面で優れるため、このような低温造膜性に優れる防食塗料組成物が望まれている。
【0004】
以上のような防食塗料組成物としては、例えば、特許文献1および2に記載の防食塗料組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/022218号
【文献】特開2022-40066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1および2などに記載の従来の防食塗料組成物によれば、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性などの性能と、低温造膜性とにバランスよく優れてはいたものの、より低温(例:10℃以下)で防食塗膜を形成し、かつ高い耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性などの性能が求められる場合に、従来の防食塗料組成物を使用して防食塗膜を形成した場合、形成された塗膜にしわが発生しやすく、低温造膜性の点で改良の余地があった。つまり、従来の防食塗料組成物には、高い耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性と、優れた低温造膜性とを両立させることが容易ではないことが分かった。
【0007】
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、低温造膜性に優れながらも、高い耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性を有する防食塗膜を形成することができる防食塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0009】
[1] エポキシ化合物(A)と、アミン硬化剤(B)と、アルキルアミン(C)とを含有する、防食塗料組成物。
【0010】
[2] 前記アルキルアミン(C)が常温で液状である、[1]に記載の防食塗料組成物。
[3] 前記アルキルアミン(C)が、R-NH2[Rは炭素数1~20のアルキル基である。]で表される1級アミンである、[1]または[2]に記載の防食塗料組成物。
【0011】
[4] 前記アミン硬化剤(B)が環状構造を有するアミン硬化剤を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の防食塗料組成物。
【0012】
[5] 前記エポキシ化合物(A)が、エポキシ当量が200以下であり、かつ、常温で液状である、[1]~[4]のいずれかに記載の防食塗料組成物。
【0013】
[6] 前記アミン硬化剤(B)が常温で液状である、[1]~[5]のいずれかに記載の防食塗料組成物。
【0014】
[7] 不揮発分の含有量が90質量%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の防食塗料組成物。
【0015】
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の防食塗料組成物より形成された防食塗膜。
【0016】
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の防食塗料組成物を、10℃以下の温度で乾燥させて防食塗膜を形成する工程を含む、防食塗膜の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低温造膜性に優れながらも、高い耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性を有する防食塗膜を形成することができる防食塗料組成物を提供することができる。
本発明によれば、前記優れた各種性能を有する防食塗膜を形成することができるため、各種の基材、特に、化学物質等を輸送または貯蔵するために使用されるタンクの内面の塗装用途に好適に用いることができる。
また、本発明によれば、ハイソリッド型でありながら塗装作業性、特にスプレー塗装作業性に優れる塗料組成物も得ることができる。このため、大面積の基材にも、環境や人体への影響が少なく、容易に防食塗膜を形成することができる。
【0018】
ここで、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性に優れるとは、具体的には、重油、ガソリン、ナフサ、パーム油等の油類、メタノール、エタノール、キシレン、ベンゼン、メチルイソブチルケトン、1,2-ジクロロエタン、酢酸エチル等の溶剤、水酸化ナトリウム、硫酸等の薬品への耐性に優れることをいう。
これらの油類、溶剤および薬品は、塗膜への影響が大きいため、これら油類、溶剤および薬品に耐性を有する塗膜は、一般的な油、溶剤および薬品に対しても、耐性を有すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例の防食性試験で用いた、切り込みを入れた試験板の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪防食塗料組成物≫
本発明に係る防食塗料組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、エポキシ化合物(A)と、アミン硬化剤(B)と、アルキルアミン(C)とを含有する。
【0021】
本組成物中の不揮発分の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
不揮発分の含有量が前記範囲にある本組成物は、従来よりもハイソリッドな防食塗料組成物であるといえる。
【0022】
本組成物中の不揮発分の含有量は、本組成物(例:主剤成分と硬化剤成分とを混合した直後の組成物)1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、23℃で24時間放置後、110℃で1時間乾燥させ、加熱残分(「不揮発分」ともいう。)および針金の質量を量ることで算出される質量百分率の値である。
【0023】
なお、本明細書では、主剤成分または硬化剤成分を構成する原材料(例:エポキシ化合物(A))、主剤成分、硬化剤成分それぞれについては、これら各成分に含まれる有機溶剤および分散媒以外の成分を「固形分」という。
【0024】
本組成物は、有機溶剤などのVOCをほとんど含まないことが好ましく、具体的には、塗装に適した粘度に調整した際の本組成物中のVOC含量は、好ましくは200g/L以下、より好ましくは150g/L以下、さらに好ましくは100g/L以下である。
なお、本発明において、「有機溶剤」は、1気圧での沸点が200℃未満の有機化合物のことをいう。
【0025】
本組成物のVOC含量は、下記塗料比重(g/cm3)および前記本組成物中の不揮発分の含有量(質量%)の値を用い、下記式(1)から算出することができる。
VOC含量(g/L)=塗料比重×1000×(100-本組成物中の不揮発分の含有量)/100 ・・・(1)
【0026】
塗料比重(g/cm3):23℃の温度条件下で、本組成物(例:主剤成分と硬化剤成分とを混合した直後の組成物)を内容積100mlの比重カップに充満し、該組成物の質量を計量することで算出される値
【0027】
本組成物は、1成分型の組成物であってもよいが、通常、エポキシ化合物(A)を含有する主剤成分と、アミン硬化剤(B)およびアルキルアミン(C)を含有する硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である。また、必要により、本組成物は、3成分以上型の組成物であってもよい。
これら主剤成分および硬化剤成分は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に一緒に混合して用いられる。
【0028】
<エポキシ化合物(A)>
エポキシ化合物(A)としては、例えば、2個以上のエポキシ基を含むポリマーまたはオリゴマー、および、そのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。
エポキシ化合物(A)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
前記エポキシ化合物(A)のエポキシ当量は、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等に優れる防食塗膜を形成できることから、好ましくは200以下であり、より好ましくは100~200、さらに好ましくは100~190である。なお、エポキシ当量は、JIS K 7236:2001に基づいて算出される。
エポキシ当量が200を超えるエポキシ化合物は、分子量が過度に大きいため、このようなエポキシ化合物を用いると、塗装適正粘度に調整するために有機溶剤が必要となる場合が多く、ハイソリッド型の防食塗料組成物を容易に得ることができない場合がある。
【0030】
エポキシ化合物(A)としては、常温で液状のエポキシ化合物が好ましく、具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂が挙げられる。
なお、本明細書における「常温」は、25℃のことをいう。
【0031】
エポキシ化合物(A)は、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である「E-028」(大竹明新化学(株)製、エポキシ当量180~190、固形分100%)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である「jER 807」(三菱化学(株)製、エポキシ当量160~175、固形分100%)が挙げられる。
【0032】
エポキシ化合物(A)のE型粘度計(TOKIMEC社製、FMD型)で測定した25℃における粘度は、好ましくは1,500mPa・s以上、より好ましくは3,000mPa・s以上であり、好ましくは120,000mPa・s以下、より好ましくは30,000mPa・s以下である。
【0033】
本組成物中のエポキシ化合物(A)の含有量は、基材との密着性、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0034】
<アミン硬化剤(B)>
アミン硬化剤(B)は特に制限されないが、ハイソリッド型の本組成物を容易に得ることができる等の点から、常温で液状であることが好ましい。アミン硬化剤(B)は、アルキルアミン(C)とは異なる化合物であり、1分子中に1級または2級のアミノ基を2つ以上有するポリアミンであることが好ましい。
アミン硬化剤(B)としては、具体的には、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、複素環系などのアミン化合物が好ましい。なお、これらアミン化合物は、アミノ基が結合している炭素の種類により区別され、例えば、脂肪族系アミン硬化剤とは、脂肪族炭素に結合したアミノ基を少なくとも1つ有する化合物のことをいう。
アミン硬化剤(B)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
なお、アミン硬化剤(B)が「常温で液状」であるとは、25℃におけるE型粘度計で測定した粘度が1,000Pa・s以下であることをいう。
このようなアミン硬化剤(B)を用いることで、塗装適正粘度に調整するための有機溶剤を低減することができ、ハイソリッド型でありながら、塗装作業性に優れる本組成物を容易に得ることができる。
【0036】
前記脂肪族アミン硬化剤としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミンが挙げられる。
【0037】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-R1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0038】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(CmH2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、ジエチレントリアミン(DETA)、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン(TETA)、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミンが挙げられる。
【0039】
前記アルキルアミノアルキルアミンとしては、例えば、式:「R2
2N-(CH2)p-NH2」(R2は独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり(但し、少なくとも1つのR2は炭素数1~8のアルキル基である。)、pは1~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミンが挙げられる。
【0040】
これら以外の脂肪族アミン硬化剤としては、例えば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2’-アミノエチルアミノ)プロパン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(特に、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン(IPDA)、メンセンジアミン(MDA)、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-(2’-アミノエチルピペラジン)、1-[2’-(2’’-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジンが挙げられる。
【0041】
前記脂環族アミン硬化剤の具体例としては、シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)[PACM])、4,4’-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン(NBDA)、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリンが挙げられる。
【0042】
前記芳香族アミン硬化剤としては、例えば、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物が挙げられる。
この芳香族アミン硬化剤の具体例としては、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,4’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニルが挙げられる。
【0043】
前記複素環アミン硬化剤の具体例としては、1,4-ジアザシクロヘプタン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサンが挙げられる。
【0044】
アミン硬化剤(B)としては、さらに、前述したアミン硬化剤の変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物(例:フェナルカミン、フェナルカマイド)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンが挙げられる。
【0045】
アミン硬化剤(B)としては、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性により優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、環状構造を有するアミン硬化剤を含むことが好ましく、メチレン架橋ポリ(シクロヘキシル-芳香族)アミン(MPCA)、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(PACM)、および、メタキシリレンジアミン(MXDA)のマンニッヒ変性物から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。より高い耐油性を有する防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、MPCAを含むことが特に好ましい。
【0046】
このように、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性により優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、MPCA、PACMおよびMXDAのマンニッヒ変性物から選択される少なくとも1種を用いることが好ましいが、これらのアミン硬化剤を用いたハイソリッド型(無溶剤型)の従来の防食塗料組成物を使用して低温(例:10℃以下)で防食塗膜を形成した場合、形成された防食塗膜に特にしわが発生しやすく、低温造膜性の点で改良の余地があることが分かった。これは、塗装された防食塗料組成物において、MPCA、PACMおよびMXDAのマンニッヒ変性物等のアミン硬化剤中に含まれる低分子のアミン化合物が塗膜表面に浮き出てくることにより、該低分子のアミン化合物が塗膜表面に偏在し、その後の低温での乾燥・硬化(硬化収縮)によりしわ(造膜性不良)が発生することによると推測される。
また、ベンジルアルコールフリーのMPCAおよびPACMを用いた場合、前記しわ(造膜性不良)が発生しやすいことが分かった。これは、ベンジルアルコールフリーのMPCAおよびPACMには、前記低分子のアミン化合物の含有量が多いことによると考えられる。
一方で、本組成物によれば、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性により優れる防食塗膜を容易に形成することを目的として、MPCA、PACMおよびMXDAのマンニッヒ変性物から選択される少なくとも1種を用いた場合であっても、さらには、ベンジルアルコールフリーのこれらのアミン硬化剤を用いた場合であっても、低温での乾燥・硬化(硬化収縮)によりしわ(造膜性不良)が発生し難い。
【0047】
また、アミン硬化剤(B)としては、柔軟性および防食性に優れ、上塗り塗装適合性(例:本組成物から形成された防食塗膜上に形成され得る上塗り塗膜との密着性に優れる)に優れる防食塗膜を容易に形成することができ、本組成物のポットライフを長くすることができる傾向にある等の点から、脂肪族アミン硬化剤(但し、環状構造を有さない。例:「Ancamine 2738」、「Ancamide 506」、共にエボニック・ジャパン(株)製)を用いることが好ましく、柔軟性、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、防食性および上塗り塗装適合性にバランスよく優れる防食塗膜を容易に形成することができ、本組成物のポットライフを長くすることができる等の点から、該脂肪族アミン硬化剤(但し、環状構造を有さない)と、MPCA、PACMおよびMXDAのマンニッヒ変性物から選択される少なくとも1種とを併用することがより好ましい。
【0048】
前記メチレン架橋ポリ(シクロヘキシル-芳香族)アミン(MPCA)は、例えば、米国特許第5,280,091号明細書に記載されており、具体例としては、アニリンとホルムアルデヒドとの縮合から得られるオリゴマーを水素化することにより製造される多官能ポリアミンが挙げられる。
【0049】
前記MXDAのマンニッヒ変性物としては、具体的には、1種または2種以上のフェノール類と、1種または2種以上のアルデヒド類と、m-キシリレンジアミンとをマンニッヒ縮合することで得られるマンニッヒ変性アミンが挙げられる。
【0050】
アミン硬化剤(B)は、従来公知の方法で得てもよく、市販品を用いてもよい。市販品を用いる場合、本発明の効果がより発揮される等の点から、ベンジルアルコールフリーの液状アミン硬化剤を用いることが好ましい。
前記ベンジルアルコールフリーの液状アミン硬化剤の市販品としては、例えば、「Ancamine 2738」、「Ancamine 2264」、「Ancamine 2167」、「Ancamine 2422」、「Ancamine 2089K」、「Ancamide 506」(以上、エボニック・ジャパン(株)製)、「NX-5567」(カードライトジャパン(株)製)が挙げられる。
【0051】
本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である場合、アミン硬化剤(B)は硬化剤成分に含まれる。この硬化剤成分のE型粘度計で測定した25℃における粘度は、取扱い性、塗装作業性により優れる組成物となる等の点から、好ましくは100,000mPa・s以下であり、より好ましくは10,000mPa・s以下であり、より好ましくは50mPa・s以上である。
【0052】
アミン硬化剤(B)の活性水素当量は、防食性により優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは20以上、より好ましくは40以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下である。
【0053】
本組成物中のアミン硬化剤(B)の含有量は、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0054】
本組成物がMPCA、PACMおよびMXDAのマンニッヒ変性物から選択される少なくとも1種を含有する場合、該MPCA、PACMおよびMXDAのマンニッヒ変性物の含有量は、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0055】
本組成物が脂肪族アミン硬化剤(但し、環状構造を有さない)を含有する場合、該脂肪族アミン硬化剤(但し、環状構造を有さない)の含有量は、柔軟性、防食性および上塗り塗装適合性に優れる防食塗膜を容易に形成することができ、本組成物のポットライフを長くすることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。
【0056】
防食性、塗膜強度および乾燥性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、アミン硬化剤(B)は、下記式(2)で算出される反応比が、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上となるような量、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下となるような量で用いることが望ましい。
【0057】
反応比={(アミン硬化剤(B)の配合量/アミン硬化剤(B)の活性水素当量)+(エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分の配合量/エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分の官能基当量)}/{(エポキシ化合物(A)の配合量/エポキシ化合物(A)のエポキシ当量)+(アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分の配合量/アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分の官能基当量)} ・・・(2)
【0058】
ここで、前記式(2)における「アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、下記その他の成分中のアミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分が挙げられ、また、「エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、アルキルアミン(C)、下記その他の成分中のエポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分が挙げられる。前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分1molの質量からその中に含まれる官能基のmol数を除して得られた1mol官能基あたりの質量(g)を意味する。
【0059】
<アルキルアミン(C)>
アルキルアミン(C)は、MPCA、PACMおよびMXDAのマンニッヒ変性物から選択される少なくとも1種を用いた場合であっても、低温造膜性に優れる本組成物を容易に得ることができる等の点から、1級のアルキルアミンであることが好ましく、1級のアルキルモノアミンであることが好ましい。
アルキルアミン(C)は、ハイソリッド型の本組成物を容易に得ることができる等の点から、常温で液状であることが好ましい。
アルキルアミン(C)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0060】
アルキルアミン(C)の具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサドデシルアミン、オクタデシルアミン、ココアミン、タロウアミン、水素化タロウアミン、オレイルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン等の1級アルキルアミン;ジココアミン、ジ水素化タロウアミン、ジステアリルアミン等の2級アルキルアミン;ドデシルジメチルアミン、ジドデシルモノメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミン、ココジメチルアミン、ドデシルテトラデシルジメチルアミン、トリオクチルアミン等の3級アルキルアミン;が挙げられる。
【0061】
アルキルアミン(C)は、高い耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性を有する防食塗膜を形成することができながらも、低温造膜性に優れるハイソリッド型の本組成物を容易に得ることができる等の点から、R-NH2[Rは炭素数1~20のアルキル基である]で表される1級アミンであることが好ましい。
【0062】
前記Rの炭素数は、常温で液状のアルキルアミンになりやすく、より低温造膜性に優れる本組成物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは8以上であり、好ましくは18以下、より好ましくは12以下、特に好ましくは10以下である。
前記Rにおけるアルキル基は、分岐鎖を有してもよく、シクロアルキル基のように環状であってもよいが、直鎖アルキル基が好ましい。
【0063】
本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である場合、アルキルアミン(C)は硬化剤成分に含まれる。
【0064】
アルキルアミン(C)は、従来公知の方法で得てもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、「ファーミン08D」(花王(株)製、主成分:炭素数8の1級アルキルアミン)、「ファーミンCS」(花王(株)製、主成分:炭素数12の1級アルキルアミン)、「ファーミン20D」(花王(株)製、主成分:炭素数12の1級アルキルアミン)、「ファーミンO-V」(花王(株)製、主成分:炭素数18の1級アルキルアミン)、「ファーミンDM0898」(花王(株)製、主成分:炭素数8の3級アルキルアミン)、「ファーミンDM1098」(花王(株)製、主成分:炭素数10の3級アルキルアミン)、「ファーミンDM2098」(花王(株)製、主成分:炭素数12の3級アルキルアミン)、「ファーミンDM2463」(花王(株)製、主成分:炭素数12、14の3級アルキルアミン)、「ファーミンDM4098」(花王(株)製、主成分:炭素数14の3級アルキルアミン)、「ファーミンDM6098」(花王(株)製、主成分:炭素数16の3級アルキルアミン)が挙げられる。
【0065】
本組成物中のアルキルアミン(C)の含有量は、低温造膜性に優れる本組成物を容易に得ることができることと、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等に優れる防食塗膜を容易に形成することができることとに、バランスよく優れる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、特に好ましくは4質量%以下である。
【0066】
また、アルキルアミン(C)の含有量は、低温造膜性に優れる本組成物を容易に得ることができることと、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等に優れる防食塗膜を容易に形成することができることとに、バランスよく優れる等の点から、アミン硬化剤(B)の含有量1質量部に対し、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、特に好ましくは0.02質量部以上であり、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、特に好ましくは0.2質量部以下である。
【0067】
<その他の成分>
本組成物は、前記(A)~(C)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、反応性希釈剤、シランカップリング剤、顔料、タレ止め剤(沈降防止剤)、可塑剤、分散剤、レベリング剤、表面調整剤、ジオキソラン誘導体、有機溶剤、エポキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物、アミン硬化剤(B)以外の硬化剤などの、塗料組成物に用いられてきた従来公知のその他の成分を含有していてもよい。
これらその他の成分はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよく、主剤成分に配合してもよく、硬化剤成分に配合してもよい。
【0068】
本組成物には、ベンジルアルコールが含まれていても、含まれていなくてもよいが、本組成物は、実質的にベンジルアルコールを含まないことが好ましい。
【0069】
ベンジルアルコールは、前記(A)~(C)などの反応性成分と混合可能であり、希釈作用、粘度の低下作用等の点から、主剤成分に配合したり、市販のアミン硬化剤に予め配合されている。
一方で、ベンジルアルコールは、低揮発性で一般的に他の有機溶剤と比較して有害性が低い化学物質とされているものの、GHS分類によると、急性毒性(経口):区分4、急性毒性(経皮):区分4、急性毒性(吸入:蒸気):区分3に分類されており、健康に対する有害性が指摘されている。
また、ベンジルアルコールは高沸点溶媒であるため、多量に用いた場合(例:組成物中に3質量%以上)は、乾燥塗膜中に残留することがあり、この影響で塗膜性能、特に防食性、耐油性の低下を引き起こす場合がある。
【0070】
従って、環境や人体への影響および良好な塗膜性能等の点から、ベンジルアルコールを含まない本組成物が求められる。しかしながら、前述のように、特に高い耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性を有する防食塗膜を形成することを目的とする場合、環状構造を有するアミン硬化剤を用いることが好ましいが、このような環状構造を有するアミン硬化剤を用いる従来の防食塗料組成物において、ベンジルアルコールを含まないアミン硬化剤を用いると、特に低温造膜性の点で問題があることが分かった。
一方で、本組成物によれば、ベンジルアルコールを含まない環状構造を有するアミン硬化剤を用いても、低温造膜性に優れることが分かった。つまり、本組成物によれば、ベンジルアルコールを実質的に含まないにもかかわらず、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性に優れる防食塗膜を形成することができながらも、低温造膜性に優れる防食塗料組成物を容易に得ることができる。
【0071】
本発明において、「ベンジルアルコールを実質的に含まない」とは、本組成物に意識的にベンジルアルコールを配合しないこと、および、ベンジルアルコールを意識的に含む原料を用いないことをいい、具体的には、本組成物中のベンジルアルコールの含有量が0.5質量%以下であることをいう。
【0072】
[反応性希釈剤]
本組成物は、反応性希釈剤を含有していてもよく、反応性希釈剤を含有していることが好ましい。該反応性希釈剤としては、エポキシ基含有反応性希釈剤が好ましい。
反応性希釈剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0073】
前記エポキシ基含有反応性希釈剤としては、E型粘度計(TOKIMEC社製、FMD型)で測定した25℃における粘度が500mPa・s以下のエポキシ化合物であれば特に制限されず、単官能型であっても、多官能型であってもよい。
【0074】
単官能型エポキシ基含有反応性希釈剤としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1~13)、フェニルグリシジルエーテル、o-クレシルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1~20、好ましくは1~5、例:メチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル)、フェノールグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、フェノール(EO)nグリシジルエーテル(繰り返し数n=3~20、EO:-C2H4O-)が挙げられる。
【0075】
多官能型エポキシ基含有反応性希釈剤としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、モノまたはポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(アルキレン基の炭素数1~5、例:エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0076】
本組成物が反応性希釈剤を含有する場合、該反応性希釈剤の含有量は、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等に優れる防食塗膜を容易に形成することができ、本組成物の粘度の低下、ポットライフの延長に寄与できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0077】
[シランカップリング剤]
本組成物は、シランカップリング剤を含有していてもよく、シランカップリング剤を含有していることが好ましい。
シランカップリング剤としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの官能基を有し、基材への密着性の向上、本組成物の粘度の低下等に寄与できる化合物であることが好ましく、例えば、式:「X-SiMenY3-n」[nは0または1、Xは有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、炭化水素基の一部がこれらの基で置換された基、または炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がこれらの基で置換された基。)であり、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)である。]で表される化合物であることがより好ましい。
シランカップリング剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0078】
シランカップリング剤としては、基材への密着性に優れ、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等により優れる防食塗膜を容易に形成できる等の点から、エポキシ基とアルコキシ基を有する化合物が好ましく、1分子中に1個のエポキシ基を有するアルコキシ基含有シランカップリング剤がより好ましい。
【0079】
シランカップリング剤としては市販品を用いてもよく、該市販品の具体例としては、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、「KBM 303」等)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、「KBM 403」等)、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、「AY43-026」等)、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製、「KBE 402」等)が挙げられる。
【0080】
本組成物がシランカップリング剤を含有する場合、該シランカップリング剤の含有量は、基材への密着性により優れ、耐溶剤性、耐薬品性および防食性により優れる防食塗膜を容易に形成でき、本組成物の粘度の低下、ポットライフの延長に寄与できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0081】
[顔料]
本組成物は、顔料を含有していてもよく、顔料を含有していることが好ましい。
該顔料としては、例えば、体質顔料、着色顔料、防錆顔料が挙げられ、有機系、無機系のいずれであってもよい。
顔料は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0082】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、マイカ、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石、カオリン、アルミナホワイト、ベントナイト、ウォラストナイト、クレー、ガラスフレーク、アルミフレーク、鱗片状酸化鉄、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、シリカが挙げられる。特に、タルク、マイカ、シリカ、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石が好ましい。
これらの中でも、硬化塗膜の内部応力を緩和させ、基材との密着性を向上させる等の点からは、マイカを用いることが好ましい。
【0083】
本組成物が体質顔料を含有する場合、該体質顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0084】
前記着色顔料としては、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。特に、チタン白、カーボンブラック、弁柄が好ましい。
【0085】
本組成物が着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~30質量%、より好ましくは1~15質量%である。
【0086】
前記防錆顔料としては、例えば、亜鉛粉末、亜鉛合金粉末、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、モリブデン酸塩系化合物、シアナミド亜鉛系化合物、ホウ酸塩化合物、ニトロ化合物、複合酸化物が挙げられる。
【0087】
本組成物が顔料を含有する場合、本組成物中の顔料体積濃度(PVC)は、塗装作業性に優れる組成物を容易に得ることができ、応力緩和による基材との密着性および耐水性に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは10~70%、より好ましくは10~50%である。
【0088】
前記PVCは、本組成物中の不揮発分の体積に対する、顔料の合計の体積濃度のことをいう。PVCは、具体的には下記式より求めることができる。
PVC[%]=本組成物中の全ての顔料の体積合計×100/本組成物中の不揮発分の体積
【0089】
前記本組成物中の不揮発分の体積は、本組成物の不揮発分の質量および真密度から算出することができる。前記不揮発分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
前記顔料の体積は、用いた顔料の質量および真密度から算出することができる。前記顔料の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。例えば、本組成物の不揮発分より顔料と他の成分とを分離し、分離された顔料の質量および真密度を測定することで算出することができる。
【0090】
[タレ止め剤(沈降防止剤)]
前記タレ止め剤(沈降防止剤)としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、水添ヒマシ油ワックスおよびアマイドワックスの混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等、従来公知のものを使用できるが、中でも、アマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスおよび有機粘土系ワックスが好ましい。
タレ止め剤(沈降防止剤)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0091】
このようなタレ止め剤(沈降防止剤)としては、楠本化成(株)製の「Disparlon 305」、「Disparlon 4200-20」、「Disparlon 6650」;伊藤精油(株)製の「A-S-A T-250F」;共栄社化学(株)製の「フローノンRCM-300」;ElementisSpecialties, Inc製の「ベントンSD-2」等の商品が挙げられる。
【0092】
本組成物がタレ止め剤(沈降防止剤)を含有する場合、該タレ止め剤(沈降防止剤)の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5~4質量%である。
【0093】
[可塑剤]
前記可塑剤としては、例えば、石油樹脂、キシレン樹脂、テルペンフェノール樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。本組成物が可塑剤を含有することで、得られる防食塗膜の防食性、柔軟性、上塗り塗装適合性などを向上させることができる。
可塑剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0094】
前記石油樹脂は、石油精製で副生される留分を主原料とする水酸基を含有する重合体であることが好ましく、軟化点が150℃以下、好ましくは100℃以下である水酸基含有石油樹脂であることが好ましい。石油樹脂の軟化点が150℃を超えると、得られる組成物の粘度が高くなり作業性が低下したり、塗膜物性が低下する場合がある。
このような石油樹脂として、具体的には、「ネシレスEPX-L」(NevcinPolymers co.製、インデン・スチレン系)、「HILENOL PL-1000S」(Kolon Industries,Inc.製、C9留分石油樹脂)などが挙げられる。
【0095】
前記キシレン樹脂は、メタキシレンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法で合成される樹脂であることが好ましい。また、前記キシレン樹脂としては、フェノール類(例:フェノール、パラ-t-ブチルフェノール等の2官能性フェノール)によって、変成したキシレン樹脂も使用することができる。
このようなキシレン樹脂として、具体的には、「ニカノールY-51」、「ニカノールY-100」(いずれもフドー(株)製、キシレンホルムアルデヒド樹脂)などが挙げられる。
【0096】
本組成物が可塑剤を含有する場合、該可塑剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5~5質量%である。
【0097】
<本組成物の製造方法>
本組成物は、予めそれぞれ個別に調製しておいた主剤成分と硬化剤成分とを、使用時に混合することで製造することが好ましい。
【0098】
主剤成分は、それを構成する各成分を配合して撹拌、混合することにより調製できる。その際には、例えば、SGミルまたはハイスピードディスパー等を使用し、ミルベースの温度を55~60℃として30分程度保持しつつ、配合成分をできるだけ均一に分散させることが好ましい。
一方、硬化剤成分は、配合する成分にもよるが、それを構成する各成分を、攪拌機等で均一に混合すればよい。
【0099】
<本組成物の用途>
本組成物によれば、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性等の各種の性能を有する防食塗膜(層)を形成することができる。該防食には、隙間腐食、異種金属接触腐食、応力腐食等も含まれる。
本組成物は、これらの優れた性能の防食塗膜を形成できることから、化学物質を陸上輸送または海上輸送等で輸送するための貨物タンク(例:プロダクトキャリアやケミカルタンカー)や、同様に化学品を貯蔵するための陸上タンクの内面に用いることが好ましく、WBT、COT、FWT(FreshWater Tank)、DWT(Drinking Water Tank)等のタンクの内面や、船舶等の内外面に用いることが好ましく、また、これらの用途以外にも、海水淡水化装置、海洋構造物等のメンテナンスが困難な箇所、ダムや水門のゲート周り、海水・河川水や工業用水を冷却水として使用するプラントなどの配管、貯水槽、貯水タンク、使用済み核燃料貯蔵用プール等への使用に適している。
特に、本組成物は、化学物質等を輸送または貯蔵するために使用されるタンク(例:プロダクトキャリア、ケミカルタンカー)、WBT、COT、パイプライン等の内面、船舶用等のユニバーサルプライマーとして用いることが好ましい。
【0100】
また、本組成物は、腐食が生じた防食塗膜付き基材の表面を補修塗装するために使用することもできる。
また、本組成物は、ステンレスなどの基材の溶接部や隙間がある箇所に本組成物を塗布して、基材の局部腐食を防止するとともに、さらにその塗膜表面にステンレス板を接着させるための接着剤としても作用させることにより、局部腐食を長期間安定して抑制できる。
このように、基材を補修する際には、例えば、溶接部(溶接線)や隙間がある基材表面に本組成物を塗布し、未硬化の塗膜表面に別の基材を接着させる等の方法で行うことができ、さらに、該別の基材上に本組成物を塗布してもよい。
【0101】
≪防食塗膜および防食塗膜の製造方法≫
本発明に係る防食塗膜(以下「本塗膜」ともいう。)は、前記本組成物を用いて形成され、具体的には、本組成物を、乾燥(硬化)させることで形成することができ、通常、基材上に形成され、防食塗膜付き基材として使用される。
【0102】
前記基材の材質としては特に制限されず、鉄鋼(例:鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼)、非鉄金属(例:亜鉛、アルミニウム)、ステンレスなどが挙げられ、基材の表面がショッププライマー等で被覆されていてもよい。
また、前記基材として、例えば、マイルドスチール(SS400等)を用いる場合、必要により、グリットブラスト等で表面を研磨するなど、素地調整(例:算術平均粗さ(Ra)が30~75μm程度になるよう調整)しておくことが望ましい。
【0103】
本塗膜の乾燥膜厚は、特に限定されないが、十分な防食性等を有する防食塗膜を得る等の点から、通常は50μm以上、好ましくは200μm以上であり、通常は500μm以下、好ましくは400μm以下である。
本塗膜の形成方法としては、1回の塗装(1回塗り)で所望の膜厚を形成してもよいし、2回以上の塗装(2回以上塗り)で所望の膜厚の防食塗膜を形成してもよい。膜厚管理の観点、および、防食塗膜中の残留有機溶剤を考慮すると、2回以上の塗装で所望の乾燥膜厚となるように防食塗膜を形成することが好ましい。
【0104】
本発明に係る防食塗膜の製造方法は、本組成物を乾燥させて防食塗膜を形成する工程を含む。具体的には、下記工程[1]および[2]を含む。下記工程[1]および[2]を含む防食塗膜の製造方法は、防食塗膜付き基材の製造方法であるともいえる。
工程[1]:本組成物を基材に塗装する工程
工程[2]:塗装された本組成物を乾燥させて防食塗膜を形成する工程
【0105】
<工程[1]>
前記工程[1]における塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、刷毛塗り、ローラー塗りなどの常法に従って、基材表面に塗装すればよいが、タンク等の大型構造物に塗装する場合には、大面積の基材を容易に塗装できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
なお、塗装作業の際には、本組成物をシンナー(有機溶剤)等で適宜希釈して用いてもよい。但し、このように希釈した場合であっても、希釈後の組成物中のVOC含量は、200g/L以下であることが好ましい。
【0106】
前記スプレー塗装の条件は、形成したい乾燥膜厚に応じて適宜調整すればよいが、例えば、エアレススプレーの場合、1次(空気)圧:0.4~0.8MPa程度、2次(塗料)圧:15~36MPa程度、ガン移動速度50~120cm/秒程度が好ましい。
また、得られる防食塗膜の乾燥膜厚が前記範囲となるように塗装すればよい。
【0107】
スプレー塗装に適した本組成物の粘度は、E型粘度計(TOKIMEC社製、FMD型)を用いた、23℃の測定条件下での粘度が、好ましくは1,500~7,000mPa・s、より好ましくは1,500~4,000mPa・sである。
【0108】
<工程[2]>
前記工程[2]における乾燥条件としては、特に制限されず、防食塗膜の形成方法、基材の種類、用途、塗装環境等に応じて、適宜設定すればよいが、例えば、0~35℃で、12~250時間の条件が挙げられる。また、所望により加熱、送風により強制乾燥し、硬化させてもよいが、通常は自然条件下で乾燥、硬化される。
【0109】
本組成物は、低温造膜性に優れることから、10℃以下、さらには10℃未満、特に5℃以下の温度で乾燥させることができ、従来の組成物と比べ本発明の効果がより発揮される等の点からこれらの温度で乾燥させることが好ましい。
本組成物は、このような温度下でも乾燥させることができるため、加熱することができないまたは容易ではない基材を塗装する際に好適に用いられ、このような基材に対し、冬季等の低温下で塗装しても、所望の防食塗膜を形成することができる。
【0110】
なお、前記2回以上塗り、特に2回塗りで防食塗膜を形成する場合、工程[1]および[2]を行なった後、得られた塗膜上に、工程[1]および[2]の一連の工程を繰り返すことで防食塗膜を形成する。また、3回塗りで防食塗膜を形成する場合、2回塗りした塗膜に対し、さらに工程[1]および[2]の一連の工程を繰り返すことで防食塗膜を形成する。
【実施例】
【0111】
以下、実施例に基づいて本発明の好適な態様をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0112】
[実施例1~20および比較例1~6]
容器に、表1~2の主剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値(質量部)で配合し、ハイスピードディスパーを用いて室温(23℃)で均一になるまで撹拌し、その後56~60℃で30分程度分散させた。その後、30℃以下まで冷却することで、防食塗料組成物の主剤成分を調製した。
また、容器に、表1~2の硬化剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値(質量部)で配合し、ハイスピードディスパーを用い、常温、常圧下でこれらの成分を混合することで、硬化剤成分を調製した。
これらの主剤成分と硬化剤成分とを、塗装前に混合することで防食塗料組成物を調製した。
なお、表1~2に記載の各成分の説明を表3に示す。
【0113】
<不揮発分>
調製した防食塗料成物(主剤成分と硬化剤成分とを混合した直後の組成物)1gを平底皿に量り採り、質量既知(xg)の針金を使って均一に広げ、23℃で24時間放置後、110℃で1時間乾燥した。その後、加熱残分および針金の質量(yg)を量った。
防食塗料成物の不揮発分(質量%)は、下記式から算出した。
防食塗料成物の不揮発分=(y-x)×100
【0114】
<低温造膜性>
寸法が150mm×70mm×2.3mm(厚)のSS400のサンドブラスト鋼板(算術平均粗さ(Ra):30~75μm)を用意した。この鋼板の表面に、前述のようにして調製した各防食塗料組成物を、エアレススプレーを用いて、それぞれ乾燥膜厚が300μmになるよう塗装した。その後、5℃、50%RHで1日乾燥した後の防食塗膜の状態を、以下の基準で評価した。低温造膜性の評価が2以上の場合、実用上問題ないといえる。
【0115】
(評価基準)
5:防食塗膜にしわが全く発生していない
4:防食塗膜全面のうち、しわの発生面積が1%未満である
3:防食塗膜全面のうち、しわの発生面積が1%以上5%未満である
2:防食塗膜全面のうち、しわの発生面積が5%以上10%未満である
1:防食塗膜全面のうち、しわの発生面積が10%以上である
【0116】
[試験板の作製]
前記低温造膜性と同様にして各塗料組成物を塗装し、その後、23℃、50%RHで10日間乾燥させることで、防食塗膜付き鋼板(試験板)を作製した。作製した各試験板を、後述の各試験に供した。結果を表1~2に示す。
【0117】
<防食性>
JIS K 5600-6-1:2016(耐液体性の試験方法)に準拠して、得られた防食塗膜の防食性を試験した。
各試験板の
図1に示す位置に、防食塗膜側から鋼板に達する切り込み2を入れた。切り込み2を入れた試験板1を、切り込み2側が下になるように(
図1に示す向きで)、3%塩水中に40℃で90日間浸漬した。浸漬後、前記切り込み2を5mm間隔で等分するように、該切り込み2の左端から順に上方にカット3を11箇所入れ、各カット3の間の10箇所の測定部4において、鋼板と防食塗膜との剥離長さ(切り込み2からの長さ)を測定した。測定した剥離長さの10点の平均値を以下の基準で評価した。防食性の評価が2以上の場合、実用上問題ないといえる。
【0118】
(評価基準)
4:剥離長さが5mm未満
3:剥離長さが5mm以上10mm未満
2:剥離長さが10mm以上15mm未満
1:剥離長さが15mm以上
【0119】
<耐油性>
JIS K 5600-6-1:2016(耐液体性の試験方法)に準拠して、得られた防食塗膜の耐油性を試験した。
作製した各試験板を、ナフサに常温で180日間浸漬した。浸漬後の試験板を以下の基準で評価した。なお、鉛筆硬度は、JIS K 5600-5-4:1999に基づいて測定した。耐油性の評価が3以上の場合、実用上問題ないといえる。
【0120】
(評価基準)
6:鋼板に錆の発生がなく、塗膜にフクレの発生がなく、塗膜の鉛筆硬度がH以上(H、2H、3H・・・)であった
5:鋼板に錆の発生がなく、塗膜にフクレの発生がなく、塗膜の鉛筆硬度がHB~Fであった
4:鋼板に錆の発生がなく、塗膜にフクレの発生がなく、塗膜の鉛筆硬度がB~4Bであった
3:鋼板に錆の発生がなく、塗膜にフクレの発生がなく、塗膜の鉛筆硬度が5B以下(5B、6B、7B・・・)であった
2:鋼板に僅かな錆が発生しており、塗膜にフクレが発生していた
1:鋼板に錆が発生しており、塗膜にフクレが発生していた
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
前記実施例で得られた防食塗料組成物は、ハイソリッド型の防食塗料組成物であり、耐油性および防食性に優れる防食塗膜を形成できながらも、低温造膜性に優れる。また、前記実施例の防食塗料組成物から得られた防食塗膜は、耐溶剤性および耐薬品性にも優れると考えられる。
【符号の説明】
【0125】
1:試験板
2:切り込み
3:カット
4:測定部
【要約】
【課題】低温造膜性に優れながらも、高い耐油性、耐溶剤性、耐薬品性および防食性を有する防食塗膜を形成することができる防食塗料組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ化合物(A)と、アミン硬化剤(B)と、アルキルアミン(C)とを含有する、防食塗料組成物。
【選択図】なし