(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】リーク試験条件設計方法、リーク試験条件設計装置、リーク試験方法及びリーク試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/00 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
G01M3/00 K
(21)【出願番号】P 2022521027
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2021048421
(87)【国際公開番号】W WO2022138971
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2020218039
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390019035
【氏名又は名称】株式会社フクダ
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】平田 真央
(72)【発明者】
【氏名】田辺 明満
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-157899(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103207050(CN,A)
【文献】特開2007-278914(JP,A)
【文献】特開平10-232179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313207(US,A1)
【文献】特開2002-206982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象のワークの密閉内部空間の容積を求める過程と、
差圧式エアリーク試験において前記ワークを格納するワーク密閉容器の、前記ワークを格納したときの残容積を求める過程と、
差圧式エアリーク試験において前記ワークを格納した前記ワーク密閉容器とマスターを格納したマスター密閉容器とに印加するテスト空気圧を決定する過程と、
ヘリウムリーク試験において前記ワークを格納する充填チャンバにヘリウムガスを充填するボンビングの条件を決定する過程と、
前記ワークの密閉内部空間の容積、前記ワーク密閉容器の残容積及び前記テスト空気圧に基づいて、
差圧式エアリーク試験において前記ワーク密閉容器に接続するワーク側閉回路部分と前記マスター密閉容器に接続するマスター側閉回路部分とに前記テスト空気圧を印加したときに前記ワーク側閉回路部分と前記マスター側閉回路部分との間に生じ得る差圧値を
シミュレーションし、それにより得られた差圧値を等価標準リーク率に換算して差圧換算値を求める過程と、
前記ボンビングの条件に基づいて、前記ワークのヘリウムリーク率を求めるヘリウムリーク試験のシミュレーションを行い、得られたヘリウムリーク率を等価標準リーク率に換算してヘリウムリーク率換算値を求める過程とを含み、
前記差圧換算値及び前記ヘリウムリーク率換算値は、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示されるように生成される、
ことを特徴とするリーク試験条件設計方法。
【請求項2】
前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とを、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示する過程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のリーク試験条件設計方法。
【請求項3】
等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示された前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とが、等価標準リーク率に関して部分的に重複する領域を有するか否かを判定する過程を更に含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリーク試験条件設計方法。
【請求項4】
等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示されるように生成された前記差圧換算値及び前記ヘリウムリーク率換算値が、等価標準リーク率に関して重複する領域を有するか否かによって、決定された前記テスト空気圧及び/または決定された前記ボンビングの条件の適否を判定することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のリーク試験条件設計方法。
【請求項5】
前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とが等価標準リーク率に関して部分的に重複する領域を有しないと判定された場合、前記残容積を求める過程以降の過程を繰り返し実行する、ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のリーク試験条件設計方法。
【請求項6】
前記差圧換算値を求める過程において、差圧式エアリーク試験
の前記シミュレーションで得られる
前記ワーク側閉回路部分と前記マスター側閉回路部分との差圧値を、
大気圧で除算して前記テスト空気圧に対するエアリーク量に変換し、得られた前記エアリーク量を前記ワークの漏れ孔の寸法に換算し、得られた前記漏れ孔の寸法に基づいて前記差圧値を等価標準リーク率に換算することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のリーク試験条件設計方法。
【請求項7】
前記漏れ孔の寸法は、前記漏れ孔の直径とガス流れ方向長さとであることを特徴とする請求項6に記載のリーク試験条件設計方法。
【請求項8】
前記ヘリウムリーク率換算値を求める過程において、ヘリウムリーク試験で得られる前記ワークのヘリウムリーク率を、JIS C60068-2-17:2001の附属書Dに準拠したヘリウムリーク率と等価標準リーク率との関係式に従って等価標準リーク率に換算することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載のリーク試験条件設計方法。
【請求項9】
検査対象のワークの密閉内部空間の容積を求め、差圧式エアリーク試験において前記ワークを格納するワーク密閉容器の、前記ワークを格納したときの残容積を求める演算部と、
差圧式エアリーク試験において前記ワークを格納した前記ワーク密閉容器とマスターを格納したマスター密閉容器とに印加するテスト空気圧を決定する第1試験条件設定部と、
ヘリウムリーク試験において前記ワークを格納する充填チャンバにヘリウムガスを充填するボンビングの条件を決定する第2試験条件設定部と、
前記ワークの密閉内部空間の容積、前記ワーク密閉容器の残容積及び前記テスト空気圧に基づいて、
差圧式エアリーク試験において前記ワーク密閉容器に接続するワーク側閉回路部分と前記マスター密閉容器に接続するマスター側閉回路部分とに前記テスト空気圧を印加したときに前記ワーク側閉回路部分と前記マスター側閉回路部分との間に生じ得る差圧値を
シミュレーションし、それにより得られた前記差圧値を等価標準リーク率に換算して差圧換算値を求める第1シミュレーション処理部と、
前記ボンビングの条件に基づいて、前記ワークのヘリウムリーク率を求めるヘリウムリーク試験のシミュレーションを行い、得られた前記ヘリウムリーク率を等価標準リーク率に換算してヘリウムリーク率換算値を求める第2シミュレーション処理部と、
前記第1及び第2シミュレーション処理部からそれぞれ得られた前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とを、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示する表示部と、を備えることを特徴とするリーク試験条件設計装置。
【請求項10】
前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とが、同一グラフ上に表示されたときに等価標準リーク率に関して部分的に重複する領域を有するか否かを判定する判定部を更に備えることを特徴とする請求項9に記載のリーク試験条件設計装置。
【請求項11】
前記判定部によって、前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とが、同一グラフ上に表示されたときに等価標準リーク率に関して部分的に重複する領域を有しないと判定されたとき、前記演算部が前記ワーク密閉容器の残容積を求め、前記第1試験条件設定部が前記テスト空気圧を決定し、前記第2試験条件設定部が前記ボンビングの条件を決定し、前記第1シミュレーション処理部が前記差圧換算値を求め、前記第2シミュレーション処理部が前記ヘリウムリーク率換算値を求め、前記表示部が前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とを前記同一グラフ上に表示する一連の動作が繰り返し実行されるように、前記演算部、前記第1試験条件設定部、前記第2試験条件設定部、前記第1シミュレーション処理部、前記第2シミュレーション処理部、及び前記表示部を制御する制御部を更に備えることを特徴とす
る請求項10に記載のリーク試験条件設計装置。
【請求項12】
前記第1シミュレーション処理部は、差圧式エアリーク試験
の前記シミュレーションで得られる
前記ワーク側閉回路部分と前記マスター側閉回路部分との差圧値を
大気圧で除算して前記テスト空気圧に対するエアリーク量に変換し、得られた前記エアリーク量を前記ワークの漏れ孔の寸法に換算し、得られた前記漏れ孔の寸法に基づいて前記差圧値を等価標準リーク率に換算して、前記差圧換算値を求めることを特徴とする請求項9から請求項11の何れか一項に記載のリーク試験条件設計装置。
【請求項13】
前記ワークの漏れ孔の寸法は、前記漏れ孔の直径とガス流れ方向長さとであることを特徴とする請求項12に記載のリーク試験条件設計装置。
【請求項14】
前記第2シミュレーション処理部は、ヘリウムリーク試験で得られる前記ワークのヘリウムリーク率を、JIS C60068-2-17:2001の附属書Dに準拠したヘリウムリーク率と等価標準リーク率との関係式に従って等価標準リーク率に換算して、前記ヘリウムリーク率換算値を求めることを特徴とする請求項9から請求項13の何れか一項に記載のリーク試験条件設計装置。
【請求項15】
検査対象のワークに対して請求項1から請求項8の何れか一項に記載のリーク試験条件設計方法を実施する過程と、
前記ワークに対して差圧式エアリーク試験を実施する過程と、
前記ワークに対してヘリウムのボンビング法によるヘリウムリーク試験を実施する過程と、を含み、
前記差圧式エアリーク試験及び/またはヘリウムリーク試験は、
前記リーク試験条件設計方法において、前記差圧換算値及び前記ヘリウムリーク率換算値が、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示されるとき、等価標準リーク率に関して重複する領域を有するように決定された前記テスト空気圧及び/または決定された前記ボンビングの条件に基づいて行う、ことを特徴とするリーク試験方法。
【請求項16】
請求項9から請求項14の何れか一項に記載のリーク試験条件設計装置と、
検査対象のワークについて、前記リーク試験条件設計装置の第1試験条件設定部により決定されたテスト空気圧に基づいて差圧式エアリーク試験を実行するエアリーク試験部と、
検査対象のワークについて、前記リーク試験条件設計装置の第2試験条件設定部により決定されたボンビングの条件に基づいてヘリウムのボンビング法によるヘリウムリーク試験を実行するヘリウムリーク試験部と、を備えることを特徴とするリーク試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の試験体(ワーク)の気密性を検査するリーク試験技術に関し、特にリーク試験の実施前にその試験条件を評価しかつ/又は決定するための設計方法及び設計装置に関する。更に本発明は、かかる設計方法の実施を含むリーク試験方法及び設計装置を備えたリーク試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の小型電子デバイス、医薬包装、食品包装等の広範な分野で、内部に密閉空間を有するワークの気密性を検査するために、様々なリーク試験が行われている。JIS(日本産業規格)では、等価標準リーク率が1Pa・cm3/s以上のリークを大リークと、等価標準リーク率が1Pa・cm3/s未満のリークを微小リークと定義している。JIS及びMIL規格には、大リーク(以下、グロスリークという)を検出するグロスリーク試験及び微小リーク(以下、ファインリークという)を検出するファインリーク試験の具体的な試験方法が記載されている。多くの場合、ワークのリーク試験は、グロスリーク試験とファインリーク試験が併用して行われる(例えば、特許文献1~3を参照)。
【0003】
グロスリーク試験として、例えばJIS Z2332:2012(圧力変化による漏れ試験方法)に準拠した差圧式エアリーク試験が広く採用されている。差圧式エアリーク試験では、検査対象のワークを入れたワークカプセルと、漏れの無いワークであるマスターを入れたマスターカプセルとに所定のテスト空気圧を供給し、これらカプセルの内圧の差圧を差圧センサーで検出する。ワークの気密性の良否は、差圧検出の有無又は検出した差圧値と事前設定された判別値との比較によって判定する。
【0004】
ファインリーク試験として、例えばJIS Z2331:2006に記載されるヘリウム漏れ試験方法がよく知られており、その附属書7に準拠した浸漬法(ボンビング法)が広く採用されている。浸漬法によるヘリウムリーク試験では、充填チャンバに多数(例えば、数百個)のワークを収容し、試験用ガスとして加圧したヘリウムガスを充填して所定のボンビング時間(例えば、1~2時間)維持するボンビングを行う。この後、ワークに微小リーク(漏れ孔)があれば、ボンビングによってワークの内部空間に侵入したヘリウムガスが徐々に漏れ出るので、これをヘリウムリークディテクターで検出する。
【0005】
等価標準リーク率は、JIS C60068-2-17:2001に、試験用ガスに空気を用いたときの試験体の標準リーク率(温度25℃,圧力差100kPaの標準条件でのリーク率(Pa・cm3/s))と定義されている。更に、JIS C60068-2-17:2001の附属書D、JIS Z2331:2006の附属書7、及びMIL-STD-883 METHOD 1014.15の2.1.2.3には、ヘリウムガスリーク率と等価標準リーク率との関係を表した式が記載されている。これらの関係式から、ヘリウムリーク試験で検出したヘリウムリーク量は、等価標準リーク率に換算することができる。
【0006】
例えば、特許文献4には、JIS C60068-2-17の附属書Dに記載の式に従って作成されたヘリウムリーク量と等価標準リーク率との関係が、
図14にグラフ表示されており、これからヘリウムリーク試験で判定可能な漏れ領域を知ることができる。更に、異なる試験条件下で行われたヘリウムリーク試験の結果も、等価標準リーク率という同じ座標軸上で比較、評価することが可能である。
【0007】
また、被試験容器からの気体の漏れを測定する漏れ試験装置において、基準容器と被試験容器との間に生じる差圧と被試験容器の容積とに基づいて、被試験容器から漏れる気体の量を算出できることが知られている(例えば、特許文献5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-278914号公報
【文献】特開2002-206982号公報
【文献】特開2010-169515号公報
【文献】再表2015/056661号公報
【文献】特開平08-043242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4によれば、等価標準リーク率でグラフ表示される検出可能な漏れ領域よりも大きい大リークは、ボンビング後に充填チャンバから取り出したワークから、ヘリウムがヘリウムリークディテクターで検出する前に漏出してしまうため、測定できないという問題が生じる。グロスリークの検査のために、別途エアリーク試験を行う場合、エアリーク試験で検出可能な漏れ領域と、ヘリウムリーク試験で検出可能な漏れ領域とは、部分的に重複していることが好ましい。しかしながら、差圧式エアリーク試験とヘリウムリーク試験とがそれぞれ検出可能な漏れ領域の間には、いずれのリーク試験でも検出不能な漏れ領域(本明細書中、不感帯という)が生じる虞がある。
【0010】
しかも、上述したJISやMIL規格に記載されるグロスリーク試験は、いずれも定性的な手法であり、それらの試験結果からグロスリーク領域のリーク率を具体的な数値で提示することは困難であった。そのため、エアリーク試験によるグロスリーク領域の試験結果とヘリウムリーク試験によるファインリークの試験結果とを、同一の基準で判定、評価することはできなかった。更に、上述した不感帯の存在有無を明確に判定することも、同様に困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、第一に、検査対象のワークに対して行う差圧式エアリーク試験の試験結果とヘリウムリーク試験の試験結果とを同一の基準、尺度で均等に判定、評価することができ、それにより、事前に両リーク試験の試験条件をそれぞれ適切に決定し得るリーク試験条件設計方法、及びその方法を実施するためのリーク試験条件設計装置を提供することにある。
【0012】
更に本発明の目的は、差圧式エアリーク試験及びヘリウムリーク試験でそれぞれ検出可能な漏れ領域の間に不感帯が生じないように、両リーク試験の試験条件を適切に決定し得るリーク試験条件設計方法及び装置を提供することにある。
【0013】
更に本発明の目的は、本発明のリーク試験条件設計装置を備えたリーク試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のリーク試験条件設計方法は、
検査対象のワークの密閉内部空間の容積を求める過程と、
差圧式エアリーク試験において前記ワークを格納するワーク密閉容器の、前記ワークを格納したときの残容積を求める過程と、
差圧式エアリーク試験において前記ワークを格納した前記ワーク密閉容器とマスターを格納したマスター密閉容器とに印加するテスト空気圧を決定する過程と、
ヘリウムリーク試験において前記ワークを格納する充填チャンバにヘリウムガスを充填するボンビングの条件を決定する過程と、
前記ワークの密閉内部空間の容積、前記ワーク密閉容器の残容積及び前記テスト空気圧に基づいて、前記ワークと前記マスターとの差圧値を求める差圧式エアリーク試験のシミュレーションを行い、得られた差圧値を等価標準リーク率に換算して差圧換算値を求める過程と、
前記ボンビングの条件に基づいて、前記ワークのヘリウムリーク率を求めるヘリウムリーク試験のシミュレーションを行い、得られたヘリウムリーク率を等価標準リーク率に換算してヘリウムリーク率換算値を求める過程とを含み、
前記差圧換算値及び前記ヘリウムリーク率換算値は、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示されるように生成される、ことを特徴とする。
【0015】
或る実施形態では、前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とを、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示する過程を更に含んでいる。
【0016】
別の実施形態では、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示された前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とが、等価標準リーク率に関して部分的に重複する領域を有するか否かを判定する過程を更に含んでいる。
【0017】
また、別の実施形態では、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示されるように生成された前記差圧換算値及び前記ヘリウムリーク率換算値が、等価標準リーク率に関して重複する領域を有するか否かによって、決定された前記テスト空気圧及び/または決定された前記ボンビングの条件の適否を判定する。
【0018】
更に別の実施形態において、前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とが等価標準リーク率に関して部分的に重複する領域を有しないと判定された場合、前記残容積を求める過程以降の過程を繰り返し実行する。
【0019】
或る実施形態では、前記差圧換算値を求める過程において、差圧式エアリーク試験で得られる前記ワークと前記マスターとの差圧値を、前記テスト空気圧に対するエアリーク量に変換し、得られた前記エアリーク量を前記ワークの漏れ孔の寸法に換算し、得られた前記漏れ孔の寸法に基づいて前記差圧値を等価標準リーク率に換算する。
【0020】
別の実施形態において、前記漏れ孔の寸法は、前記漏れ孔の直径とガス流れ方向長さとである。
【0021】
また、或る実施形態では、前記ヘリウムリーク率換算値を求める過程において、ヘリウムリーク試験で得られる前記ワークのヘリウムリーク率を、JIS C60068-2-17:2001の附属書Dに準拠したヘリウムリーク率と等価標準リーク率との関係式に従って等価標準リーク率に換算する。
【0022】
本発明のリーク試験条件設計装置は、
検査対象のワークの密閉内部空間の容積を求め、差圧式エアリーク試験において前記ワークを格納するワーク密閉容器の、前記ワークを格納したときの残容積を求める演算部と、
差圧式エアリーク試験において前記ワークを格納した前記ワーク密閉容器とマスターを格納したマスター密閉容器とに印加するテスト空気圧を決定する第1試験条件設定部と、
ヘリウムリーク試験において前記ワークを格納する充填チャンバにヘリウムガスを充填するボンビングの条件を決定する第2試験条件設定部と、
前記ワークの密閉内部空間の容積、前記ワーク密閉容器の残容積及び前記テスト空気圧に基づいて、前記ワークと前記マスターとの差圧値を求める差圧式エアリーク試験のシミュレーションを行い、得られた前記差圧値を等価標準リーク率に換算して差圧換算値を求める第1シミュレーション処理部と、
前記ボンビングの条件に基づいて、前記ワークのヘリウムリーク率を求めるヘリウムリーク試験のシミュレーションを行い、得られた前記ヘリウムリーク率を等価標準リーク率に換算してヘリウムリーク率換算値を求める第2シミュレーション処理部と、
前記第1及び第2シミュレーション処理部からそれぞれ得られた前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とを、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【0023】
或る実施形態では、前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とが、同一グラフ上に表示されたときに等価標準リーク率に関して部分的に重複する領域を有するか否かを判定する判定部を更に備える。
【0024】
別の実施形態では、前記判定部によって、前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とが、同一グラフ上に表示されたときに等価標準リーク率に関して部分的に重複する領域を有しないと判定されたとき、前記演算部が前記ワーク密閉容器の残容積を求め、前記第1試験条件設定部が前記テスト空気圧を決定し、前記第2試験条件設定部が前記ボンビングの条件を決定し、前記第1シミュレーション処理部が前記差圧換算値を求め、前記第2シミュレーション処理部が前記ヘリウムリーク率換算値を求め、前記表示部が前記差圧換算値と前記ヘリウムリーク率換算値とを前記同一グラフ上に表示する一連の動作が繰り返し実行されるように、前記演算部、前記第1試験条件設定部、前記第2試験条件設定部、前記第1シミュレーション処理部、前記第2シミュレーション処理部、及び前記表示部を制御する制御部を更に備える。
【0025】
また、或る実施形態において、前記第1シミュレーション処理部は、差圧式エアリーク試験で得られる前記ワークと前記マスターとの差圧値を前記テスト空気圧に対するエアリーク量に変換し、得られた前記エアリーク量を前記ワークの漏れ孔の寸法に換算し、得られた前記漏れ孔の寸法に基づいて前記差圧値を等価標準リーク率に換算して、前記差圧換算値を求める。
【0026】
別の実施形態では、前記ワークの漏れ孔の寸法は、前記漏れ孔の直径とガス流れ方向長さとである。
【0027】
また、別の実施形態において、前記第2シミュレーション処理部は、ヘリウムリーク試験で得られる前記ワークのヘリウムリーク率を、JIS C60068-2-17:2001の附属書Dに準拠したヘリウムリーク率と等価標準リーク率との関係式に従って等価標準リーク率に換算して、前記ヘリウムリーク率換算値を求める。
【0028】
本発明のリーク試験方法は、
検査対象のワークに対して、上述した本発明のリーク試験条件設計方法を実施する過程と、前記ワークに対して差圧式エアリーク試験を実施する過程と、前記ワークに対してヘリウムのボンビング法によるヘリウムリーク試験を実施する過程と、を含み、
前記差圧式エアリーク試験及び/またはヘリウムリーク試験は、前記リーク試験条件設計方法において、前記差圧換算値及び前記ヘリウムリーク率換算値が、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示されるとき、等価標準リーク率に関して重複する領域を有するように決定された前記テスト空気圧及び/または決定された前記ボンビングの条件に基づいて行う、ことを特徴とする。
【0029】
本発明のリーク試験装置は、
上述した本発明のリーク試験条件設計装置と、
検査対象のワークについて、前記リーク試験条件設計装置の第1試験条件設定部により決定されたテスト空気圧に基づいて差圧式エアリーク試験を実行するエアリーク試験部と、
検査対象のワークについて、前記リーク試験条件設計装置の第2試験条件設定部により決定されたボンビングの条件に基づいてヘリウムのボンビング法によるヘリウムリーク試験を実行するヘリウムリーク試験部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明のリーク試験条件設計方法及び装置によれば、実際に差圧式エアリーク試験とヘリウムリーク試験とを併用する前に、事前に決定したテスト空気圧を差圧式エアリーク試験で印加したときに得られるであろうワークとマスターとの差圧値と、事前に決定したボンビングの条件でヘリウムリーク試験を行ったときに得られるであろうワークのヘリウムリーク率とを、それぞれ等価標準リーク率で換算し、等価標準リーク率を横軸または縦軸とする同一グラフ上に表示することができる。それによって、元々単位の異なる差圧とヘリウムリーク率とを同じ座標軸上で同じ尺度で比較し、差圧式エアリーク試験とヘリウムリーク試験でそれぞれ検出可能な漏れ領域の間に不感帯が生じないことを簡単に検証し、不感帯を生じない試験条件を簡単に決定することができる。更に、ワークの良否を判定する閾値を、等価標準リーク率をベースにして差圧式エアリーク試験とヘリウムリーク試験を対比しながら決定し、実際の試験では、それぞれ差圧及びヘリウムリーク率に戻して判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明によるリーク試験条件設計方法の実施形態にかかるリーク試験装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1のヘリウムリーク試験部の回路構成図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のリーク試験条件設計方法のフロー図である。
【
図5】
図5は、ワークWを収容したワークカプセルを模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、内容積1mm
3のワークにおけるヘリウムリーク量の時間変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、内容積0.1mm
3のワークにおけるヘリウムリーク量の時間変化を示すグラフである。
【
図8】
図8は、エアリーク試験のシミュレーションにより得られた差圧値と等価標準リーク率との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、ヘリウムリーク試験のシミュレーションにより得られたヘリウムリーク量と等価標準リーク率との関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本実施形態のリーク試験方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図1は、本発明によるリーク試験条件設計方法の実施形態にかかるリーク試験装置の構成を概略的に示している。リーク試験装置100は、検査装置本体1と、制御装置2と、表示部3と、検査装置本体1に検査対象のワークを供給するためのワークローダー4とを備える。更に、検査装置本体1には、パーソナルコンピューター等の外部装置や、外部出力手段としてのプリンターを接続することができる。
【0033】
検査装置本体1は、エアリーク試験部11と、ヘリウムリーク試験部12とを備える。更に検査装置本体1は、エアリーク試験部11及びヘリウムリーク試験部12の試験結果を出力するための出力部13を備える。出力部13は、前記試験結果を表示部3、及び図示しない外部の装置やシステムに出力する。ここで、外部の装置及びシステムには、有線及び/または無線の様々な通信手段を介して出力部13に接続される外部のパーソナルコンピューター、プリンター、記憶装置、サーバー等、あらゆる装置及びシステムが含まれる。
【0034】
制御装置2は、検査装置本体1のエアリーク試験部11及びヘリウムリーク試験部12によるエアリーク試験及びヘリウムリーク試験の実行を制御するリーク試験制御部21を備える。更に制御装置2は、本実施形態のリーク試験条件設計方法を実行するために、シミュレーション処理部22及び試験条件決定部23を備える。制御装置2には、出力部24が設けられており、後述するシミュレーション処理部22によるシミュレーション処理の結果、及び試験条件決定部23による試験条件決定の結果を表示部3に出力することができる。更に、前記シミュレーション処理の結果及び前記試験条件決定の結果は、出力部24を介して外部のパーソナルコンピューターやプリンター、その他の外部の装置及び/またはシステムに出力することができる。
【0035】
制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置等を有する。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら、リーク試験制御部21、シミュレーション処理部22及び試験条件決定部23の制御を行う。前記記憶装置には、シミュレーション処理部22によるシミュレーション処理及び試験条件決定部23による試験条件決定処理に必要なデータが格納されており、CPUは、前記プログラム等に基づいて前記記憶装置に格納されているデータを参照して、前記シミュレーション処理及び試験条件決定処理を制御する。
【0036】
表示部3は、試験結果表示部31と、等価標準リーク率(L)換算結果表示部32とを備える。試験結果表示部31には、検査装置本体1からエアリーク試験部11及びヘリウムリーク試験部12の試験結果が直接または制御装置2を介して出力され、表示される。L換算結果表示部32には、制御装置2から前記シミュレーション処理の結果及び前記試験条件決定の結果が出力され、表示される。表示部3は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)からなる単数または複数の表示画面を備える。例えば、試験結果表示部31及びL換算結果表示部32にそれぞれ各1つの表示画面を設け、または試験結果表示部31及びL換算結果表示部32に共通の1つの表示画面を設けることができる。
【0037】
エアリーク試験部11は、公知の差圧式エアリーク試験装置からなり、
図2には、その好適な回路構成が例示されている。
図2の差圧式エアリーク試験装置は、正圧または負圧のテスト空気圧を供給するためのテスト圧供給源41と、エア通路42とを有する。エア通路42には、上流側からレギュレーター46,47と、圧力計48と、電磁三方弁49とが設けられている。エア通路42は、電磁三方弁49の下流側でワーク側分岐通路45aとマスター側分岐通路45bとに分岐されている。
【0038】
ワーク側分岐通路45aには、常開の第1開閉弁51aが設けられ、その下流端には、ワークを密閉状態で収容するワークカプセル52が接続されている。マスター側分岐通路45bには、常開の第1開閉弁51bが設けられ、その下流端には、漏れの無い良品ワークであるマスターを密閉状態で収容するマスターカプセル53が接続されている。
【0039】
ワーク側分岐通路45aとマスター側分岐通路45bとの間には、ワーク側の第1開閉弁51a及びマスター側の第1開閉弁51bの下流側にそれぞれ接続された導入通路57a,57bを介して差圧センサー58が設けられている。差圧センサー58は、該差圧センサーが検出する差圧を出力可能に制御装置2のリーク試験制御部21に接続され、かつ該差圧を表示可能に圧力表示部59に接続されている。
【0040】
ワーク側分岐通路45aは、第1開閉弁51aとワークカプセル52との間に補助通路54aが接続され、その途中には常開の第2開閉弁55aが設けられ、下流端にはワーク側分圧タンク56aが接続されている。マスター側分岐通路45bは、第1開閉弁51bとマスターカプセル53との間に補助通路54bが接続され、その途中には常開の第2開閉弁55bが設けられ、下流端にはマスター側分圧タンク56bが接続されている。
【0041】
制御用分圧タンク56a,56bは、グロスリーク試験によって測定される漏れのグロスリーク領域の範囲内で、リーク量の大きい「大漏れ」とリーク量の小さい「小漏れ」とを判別して検出するために使用される。エアリーク試験部11により差圧式エアリーク試験を実施する際、第2開閉弁55a,55bを閉じた状態でテスト圧供給源41からテスト空気圧を印加した後、第1開閉弁51a,51bを閉じて、ワーク側分岐通路45a及びマスター側分岐通路45bの第1開閉弁51a,51bより下流側をそれぞれ閉回路にする。ワーク側分岐通路45aの閉回路部分では、テスト空気圧が正圧の場合、ワークカプセル52内のワークの欠陥が小漏れであれば、圧縮空気がワーク内にゆっくりと侵入する。それによりワーク側分岐通路45aの閉回路部分に発生する微小な圧力変動が、マスター側分岐通路45bの閉回路部分との差圧として、差圧センサー58によって検出される。
【0042】
これに対し、ワークカプセル52内のワークの欠陥が大漏れの場合、テスト圧供給源41からテスト空気圧を印加した時点で、圧縮空気がワーク内に一気に侵入するので、第1開閉弁51a,51bを閉じた後、ワーク側分岐通路45aの閉回路部分には、上述した小漏れの場合の微小な圧力変動が発生しない。その結果、ワーク側分岐通路45aの閉回路部分とマスター側分岐通路45bの閉回路部分との間には差圧が発生せず、差圧センサー58は反応しないので、ワークの欠陥を検出することができない。このように差圧センサー58が反応しないとき、第2開閉弁55a,55bを開いて、ワーク側分岐通路45a及びマスター側分岐通路45bの閉回路部分内の空気をそれぞれ分圧タンク56a,56bに分圧し、前記閉回路部分内を減圧する。ワーク側分岐通路45aの閉回路部分は、分圧による圧力降下がマスター側分岐通路45bの閉回路部分よりも小さく、それにより圧力がマスター側分岐通路45bの閉回路部分よりも高くなるので、その圧力差を差圧センサー58が検出することによって、ワークの大漏れが検出される。
【0043】
エアリーク試験部11には、第1開閉弁51a,51b、及び第2開閉弁55a,55bを駆動するためのバルブ駆動回路が併設されている。前記バルブ駆動回路は、第1及び第2開閉弁51a,51b,55a,55bにバルブ駆動圧を供給するためのバルブ駆動圧供給源43と、駆動圧通路44とを有する。駆動圧通路44は、第1分岐通路61aと第2分岐通路61bとに分岐され、第1分岐通路61aにはレギュレーター62が設けられ、その下流側は更に、第1駆動分岐通路63aと第2駆動分岐通路63bとに分岐されている。
【0044】
第1駆動分岐通路63aの下流端には、バルブ駆動圧供給源43から印加されるバルブ駆動圧によって第1開閉弁51a,51bを開閉する電磁三方弁64が設けられている。第2駆動分岐通路63bの下流端には、バルブ駆動圧供給源43から印加されるバルブ駆動圧によって第2開閉弁55a,55bを開閉する電磁三方弁65が設けられている。第2分岐通路61bにはレギュレーター66が設けられ、その下流端には、電磁三方弁67がシリンダー68を駆動するように接続されている。
【0045】
ヘリウムリーク試験部12は、公知のヘリウムリーク試験装置からなり、
図3には、その好適な回路構成が例示されている。
図3のヘリウムリーク試験装置は、ヘリウム供給部71と、漏れ検査部72とを備える。ヘリウム供給部71は、ボンビングタンク73と、例えばヘリウムボンベからなるヘリウム供給源74(トレーサガス供給源)と、真空ポンプ75とを有する。ボンビングタンク73は、密封可能な圧力容器からなり、その中に検査対象のワークが収容される。ヘリウム供給源74及び真空ポンプ75は、それぞれ開閉弁76,77やレギュレーター(図示せず)を設けた通路78,79を介してボンビングタンク73に接続されている。
【0046】
ワークWのボンビングタンク73から検査カプセル81への移送は、ボンビングタンク73からの取り出し、搬送、検査カプセル81への収容までの全工程を、公知の自動搬送手段(図示せず)を用いることによって、短時間で行うことができる。このような自動搬送手段は、例えば上記特許文献3に記載されている。当然ながら、作業者が手作業でワークWをボンビングタンク73から取り出し、搬送して検査カプセル81内に収容することもできる。
【0047】
漏れ検査部72は、検査カプセル81と、ヘリウムリークディテクター82(トレーサガス検知手段)とを有する。検査カプセル81は、密封可能な真空容器で構成され、その中にボンビングタンク73から取り出したボンビング後のワークが収容される。検査カプセル81は、管路83を介してヘリウムリークディテクター82と接続されている。
【0048】
管路83の下流側は、ヘリウムリークディテクター82の内部において検出通路84と吸引通路85とに分岐されている。検出通路84には、上流側から開閉弁86とヘリウム検知部87とが設けられ、下流端に真空ポンプ88aが接続されている。吸引通路85には、開閉弁89が設けられ、下流端に真空ポンプ88bが接続されている。開閉弁86と開閉弁89とは、その一方が開のときに他方が閉じられ、択一的に開かれるように構成されている。
【0049】
ヘリウム検知部87は、例えば質量分析器からなり、検査カプセル81から吸引されるガス中のヘリウム(トレーサガス)を検知する。ヘリウムリークディテクター82は、ヘリウム検知部87がヘリウムを検知すると検知信号を出力するように制御装置2に接続されている。
【0050】
本発明によれば、リーク試験装置100の検査装置本体1を用いてワークに対して差圧式エアリーク試験及びヘリウムリーク試験を実行する前に、制御装置2において本実施形態のリーク試験条件設計方法を実施して、差圧式エアリーク試験及びヘリウムリーク試験の測定可能な漏れ範囲を予測し、両試験の試験条件を決定する。次に、
図4のフロー図を用いて、本実施形態のリーク試験条件設計方法を説明する。
【0051】
最初に、制御装置2のシミュレーション処理部22において、ワークの密閉された内部空間の容積を取得する(ステップS01)。この密閉内部空間の容積(以下、ワーク内容積という)は、例えばワークの仕様書に記載されている内部寸法から算出することによって、またはその容積自体が仕様書等に記載されていたり、ワークの製造者若しくは提供者から入手できる場合は直接取得することによって、求められる。ワークの内部寸法は、例えば制御装置2の図示しない入力部をオペレーターが操作することによって、または外部装置からの通信を受信することによって、制御装置2に入力することができ、事前に制御装置2に記憶させておくことができる。尚、ワーク内容積とは、例えば、ワークがMEMSのように密閉されたパッケージを有する小型電子部品の場合、パッケージ自体の内部空間の容積からパッケージ内に搭載されているデバイス等の部品の容積を除外した残りの容積をいう。
【0052】
次に、シミュレーション処理部22は、ワークを収容した状態でのワークカプセル52の残容積を取得する(ステップS02)。ワークカプセル52の残容積とは、
図5に示すように、その中にワークWを収容した状態での内部空間52aの容積をいう。空の状態でのワークカプセル52の内容積(内部空間52aの容積)は予め制御装置2に記憶されており、これからワークWの体積(ワーク外容積)を減算することによって、容易に求められる。ワーク外容積も、ワーク内容積と同様に、仕様書等の記載やワーク製造者若しくは提供者から、またはオペレーターの操作や外部からの通信を受信して取得し、またはそのようにして入手した外部寸法から算出することができる。
【0053】
更にシミュレーション処理部22は、差圧式エアリーク試験においてワークを収容したワークカプセル52に印加するべきテスト空気圧を決定する(ステップS03)。テスト空気圧の決定には、制御装置2にオペレーターによって入力されまたは外部装置から提供されたワークの耐圧を考慮して、予め制御装置2に記憶されているデータに基づいて、最適と考えられる値を選択する。
【0054】
次に、ヘリウムリーク試験においてワークに対して行われるヘリウムボンビングの条件を決定する(ステップS04)。ここで決定されるボンビング条件には、ワークを収容したボンビングタンク73に印加されるボンビング圧力、ボンビング圧力を維持するボンビング時間が含まれる。ボンビング圧力の決定には、前記テスト空気圧と同様に、ワークの耐圧を考慮して、予め制御装置2に記憶されているデータに基づいて、最適と考えられる値を選択する。
【0055】
ボンビング時間は、ワーク内容積、ボンビング圧力、ワークについて予想される微小リークの大きさを考慮して、ボンビング後にヘリウムリークディテクター82によって検出可能な十分な量のヘリウムがワーク内部に侵入するように決定される。この決定は、予め制御装置2に記憶されているデータに基づいて、シミュレーション処理部22が行う。
【0056】
ヘリウムリーク試験では、ボンビング後にボンビングタンク73から取り出したワークを検査カプセル81に収容するまでに経過する放置時間の管理が重要である。当業者によく知られているように、ボンビングによりワーク内部に侵入したヘリウムは、ボンビングタンク73内に加圧充填していたヘリウムの排気を開始した時点からワークの外に放出され、その放出量は時間の経過と共に減少する。ここで、ワーク内部に侵入するヘリウムの量は、ワークの密閉内部空間の容積、ボンビング圧力、ボンビング時間、及び漏れ孔の大きさ(例えば、直径とガス流れ方向長さ)に依存する。
【0057】
従って、ボンビング後にワークから放出されて検出されるヘリウムの量も、時間の経過と共に減少する。ボンビング後にヘリウムを検出可能な放置時間は、ワークの密閉内部空間の容積、ボンビング圧力、ボンビング時間、及び漏れ孔から放出されるヘリウムのリーク量によって異なる。漏れ孔から放出されるヘリウムのリーク量は、漏れ孔の大きさ(例えば、直径とガス流れ方向長さ)に依存するが、本実施形態によれば、これをJISに定義される等価標準リーク率に換算して表す。
【0058】
図6は、ワーク内容積Vが1.0mm
3のワークについて、ボンビング圧力Pを500kPaG、ボンビング時間t1を1時間とした場合に、ヘリウムのリーク量をA~Gの7段階に設定して予測されるヘリウム測定量Rと放置時間t2との関係を示している。同図において、リーク量A~Gは、上述したように等価標準リーク率L(Pa・m
3/s)に換算して表している。
図7は、ワーク内容積Vが0.1mm
3のワークについて、
図6と同じボンビング圧力P、ボンビング時間t1で、同じく等価標準リーク率L(Pa・m
3/s)に換算した7段階のリーク量A~Gで予測されるヘリウム測定量Rと放置時間t2との関係を示している。
【0059】
従来技術に関連して上述したように、JIS C60068-2-17:2001の附属書Dには、ヘリウムリーク率と等価標準リーク率との関係式が規定されている。JIS Z2331:2006の附属書7、及びMIL-STD-883 METHOD 1014.15ノ2.1.2.3にも、同様の関係式が規定されている。これらの式を用いて、例えばヘリウムのリーク量を等価標準リーク率で1.0E-5(
図6及び
図7におけるリーク量Aの場合)として、放置時間t2を0.01hずつ増やしながらワーク内容積V、ボンビング圧力P、ボンビング時間t1等の数値を代入し、それぞれについて算出されるヘリウム測定量Rをプロットすることによって、
図6及び
図7のようにグラフ表示することができる。
【0060】
図6及び
図7から、等価標準リーク率L(ヘリウムリーク量)が小さいほど、ヘリウム測定量Rが少なく、従ってヘリウムがワークから抜け出る時間も長くなり、ヘリウムを検出可能な放置時間t2が長くなることが分かる。また、
図7には、等価標準リーク率Lが最も大きいリーク量Aの測定結果が示されていない。これは、リーク量Aの場合、ヘリウム量の測定開始(最小の放置時間t2=0.01h)前に、測定可能な量のヘリウムがワークから放出されてしまうことを示唆している。
【0061】
このように、ワーク内容積、ボンビング圧力、及びボンビング時間が決定すれば、ヘリウム測定量Rと放置時間t2との関係を予測することが可能である。従って、ヘリウムリーク試験における放置時間の管理が容易になる。しかも、ヘリウムリーク量に関する変化を等価標準リーク率に換算して表すことによって、異なる試験条件(テストガス種、印加圧力、試験温度、試験時間等)で行われる複数のヘリウムリーク試験について、それぞれの試験結果を互いに同一の基準、尺度で均等に比較、評価することができる。更に、後述するようにヘリウムリーク試験とエアリーク試験との併用において、それぞれ検出可能な漏れ領域の間に不感帯を生じることなく、ヘリウムリーク試験で測定可能であるとして許容される放置時間を推定することが可能になる。
【0062】
次に、ステップS05において、シミュレーション処理部22は、ステップS03で決定したテスト空気圧を印加した場合に、エアリーク試験部11によるエアリーク試験で得られる差圧値を、以下に説明するように、等価標準リーク率Lに変換する。具体的には、エアリーク試験部11に関連して上述したように、実際の差圧式エアリーク試験でテスト空気圧が正圧の場合、ワークカプセル52のワークに欠陥(漏れ孔)があれば、該テスト空気圧下でワーク内に空気が侵入する。このときワーク側分岐通路45aの閉回路部分に生じる圧力変動を、差圧センサー58がマスター側分岐通路45bの閉回路部分との差圧として検出する。この差圧をΔP、大気圧をP0、ワーク内容積をVW、測定に要した時間をtとしたとき、テスト空気圧下でワーク内に漏れ入るエアリーク量Qは、次式で表わすことができる。
Q=ΔP/(P0 ×t)×VW
この関係式から、前記差圧値を前記テスト空気圧印加時のエアリーク量に変換する。ここで、差圧ΔPは、シミュレーション処理部22において、上述した制御装置2の前記記憶装置に格納されているデータを参照して決定される。
【0063】
得られたエアリーク量から、ワークの大きさに対応して、その漏れ孔の大きさ(寸法)を仮定値として決定する。漏れ孔の大きさは、例えば孔径で表すことができる。上述したようにヘリウムボンビングでワークの漏れ孔から放出されるヘリウムのリーク量が漏れ孔の大きさに依存することと同様に、ワークカプセル52のワークにテスト空気圧を印加したときに生じるエアリーク量は、該ワークの漏れ孔の大きさに依存する。シミュレーション処理部22は、予め制御装置2に記憶されているデータに基づいて、漏れ孔の大きさを決定することができる。この漏れ孔の孔径に基づいて、シミュレーション処理部22が制御装置2の前記記憶装置に格納されるデータ及び前記ROMに格納されているプログラム等を用いて行うシミュレーション処理によって、上記関係式により得られたエアリーク量Qを等価標準リーク率に換算する。このように、エアリーク試験部11により実際にワークをエアリーク試験する前に、そのシミュレーションによりテスト空気圧を印加したときに生じるであろうワーク側分岐通路45aの閉回路部分とマスター側分岐通路45bの閉回路部分との差圧を求め、これを等価標準リーク率に換算して差圧換算値として、等価標準リーク率を横軸(または縦軸)とするグラフ上に表すことができる。
【0064】
図8は、上述したシミュレーションによって等価標準リーク率に換算した差圧換算値をグラフ表示している。同図において、実線で示す曲線AL1は、グロスリーク領域において漏れ孔の孔径が比較的小さい小漏れの場合、破線で示す曲線AL2は、漏れ孔の孔径が比較的大きい大漏れの場合をそれぞれ示している。例えば、実線で示す曲線AL1において、差圧が150Paを超える範囲は、不良と判定することができる。また、破線で示す曲線AL2では、差圧が2000Paを超える範囲を、不良と判定することができる。
【0065】
更に、ステップS06において、シミュレーション処理部22は、ステップS04で決定したヘリウムボンビング条件に従って、ヘリウムリーク試験部12でヘリウムリーク試験を行った場合に得られるであろうヘリウムリーク量を予測し、それを以下に説明するように等価標準リーク率Lに変換する。上述したように、JIS C60068-2-17:2001の附属書Dには、ヘリウムリーク率と等価標準リーク率との関係式が規定されている。JIS Z2331:2006の附属書7、及びMIL-STD-883 METHOD 1014.15の2.1.2.3にも、同様の関係式が規定されている。
【0066】
これら関係式のいずれかに、ステップS01で求めたワーク内容積、ステップS04で決定したボンビング圧力及びボンビング時間、大気圧、空気の質量、ヘリウムガスの質量、ワークをボンビングタンク73から取り出してヘリウムリーク量の測定が終了するまでの時間を代入する。更に、ワーク自体の条件(構造、形態、材質、ワーク内容積等)やワークの実際の使用条件、ヘリウムリーク試験の試験条件等を考慮して、等価標準リーク率及び/または放置時間を適当に設定し、その場合に得られるであろうヘリウムリーク量を算出する。
【0067】
この等価標準リーク率及び放置時間の設定は、シミュレーション処理部22が、予め制御装置2に記憶されているデータに基づいて行うことができ、またはオペレーターが前記入力部から直接入力し、若しくはシミュレーション処理部22が設定した値を修正または調整することによって行われる。これによって、ヘリウムリーク試験部12により実際にワークをヘリウムリーク試験する前に、そのシミュレーションにより予測されるヘリウムリーク量を求め、これを等価標準リーク率に換算してヘリウムリーク量換算値として、等価標準リーク率を横軸(または縦軸)とするグラフ上に表すことができる。
【0068】
図9は、上述したシミュレーションによって等価標準リーク率に換算したヘリウムリーク量換算値をグラフ表示している。同図において、曲線HL1は、ボンビング後の放置時間を短く5分に設定した場合を、曲線HL2は、ボンビング後の放置時間を長く20分に設定した場合をそれぞれ示している。同図において、例えばへリウムリーク量が1.0E
-9Pa・m
3/sを超える範囲を、不良と判定することができる。
【0069】
次に、試験条件決定部23は、ステップS05で得られたグラフ1とステップS06で得られたグラフ2とを、等価標準リーク率を横軸(または縦軸)とする同一グラフ上に表示可能に統合する(ステップS07)。統合されたグラフ1及びグラフ2のデータは、表示部3のL換算結果表示部32に出力され、その表示画面にグラフ3として表示される。統合された前記データは、制御装置2に接続された前記外部装置及び/またはプリンター等にも出力することができる。
【0070】
図10のグラフは、等価標準リーク率を横軸とする同一グラフ上に
図8のグラフと
図9のグラフとを表示している。このグラフから、オペレーターは、ワークに対する差圧式エアリーク試験及びヘリウムリーク試験で検出可能な範囲を一目ではっきりと確認することができる。それにより、オペレーターは、上述したように決定したエアリーク試験及び/またはヘリウムリーク試験の試験条件の適否を簡単に判定することができる。更にオペレーターは、差圧式エアリーク試験及び/またはヘリウムリーク試験でワークの良否を判定するための閾値を、
図10のグラフから決定することができる。オペレーターは、決定した閾値を制御装置2に入力することができる。
【0071】
同図において、エアリーク試験の実線で示す曲線AL1と破線で示す曲線AL2とは、等価標準リーク率の横軸上で6.5E-5Pa・m3/s~2.1E-4Pa・m3/sの範囲R1で重複している。従って、曲線AL1及び曲線AL2が形成されるように、エアリーク試験の条件を設定することにより、グロスリーク試験領域で大漏れと小漏れとの間で不感帯を生じることなく、測定可能であると評価することができる。
【0072】
また、エアリーク試験の曲線AL1とヘリウムリーク試験の曲線HL1とは、等価標準リーク率の横軸上で1.0E-6Pa・m3/s~7.5E-6Pa・m3/sの範囲R2で十分に重複している。従って、曲線AL1及び曲線HL1が形成されるように、エアリーク試験及びヘリウムリーク試験の試験条件を設定することにより、両試験領域の間で不感帯を生じることなく、測定可能であると評価することができる。
【0073】
これに対し、エアリーク試験の曲線AL1とヘリウムリーク試験の曲線HL2とは、等価標準リーク率の横軸上で1.0E-6Pa・m3/s~1.5E-6Pa・m3/sの非常に狭い範囲R3でしか重複していない。このことから、曲線AL1及び曲線HL2が形成されるように、エアリーク試験及びヘリウムリーク試験の試験条件を設定すると、実際にワークにエアリーク試験とヘリウムリーク試験とを行ったとき、それらの試験領域の間で不感帯を生じる虞があると、評価することができる。
【0074】
試験条件決定部23は、
図10に示されるように統合されたグラフのデータから、等価標準リーク率軸上で、エアリーク試験とヘリウムリーク試験の試験範囲即ち両リーク試験で測定可能な漏れ領域の範囲の間に、かつ/または試験条件が異なるエアリーク試験同士若しくはヘリウムリーク試験同士の試験範囲の間に、十分に重複した領域があるか、不感帯を生じる虞があるかを判定する(ステップS09)。判定結果は、表示部3のL換算結果表示部32に出力され、かつ/または前記外部装置やプリンター等に出力することができる。
【0075】
更に試験条件決定部23は、十分に重複した領域があり、不感帯を生じる虞が無いと判定した場合、上述したようにステップS03及びステップS04で決定したエアリーク試験及びヘリウムリーク試験の試験条件を適であるとしてリーク試験制御部21に送信し、記憶させる。これにより、リーク試験制御部21は、不感帯を生じる虞が無い状態で、ワークに対して実際にエアリーク試験及びヘリウムリーク試験が行われるように、検査装置本体1のエアリーク試験部11とヘリウムリーク試験部12とを制御することができる。
【0076】
この場合、試験条件決定部23は、差圧式エアリーク試験及び/またはヘリウムリーク試験でワークの良否を判定する閾値に好ましいと考えられる差圧値及び/またはヘリウムリーク量を、
図10に示されるグラフのデータから決定することができる。この閾値の決定は、例えばオペレーターが予め制御装置2に入力した情報や、前記記憶装置に記憶されているデータに基づいて行われる。このように試験条件決定部23が決定した閾値は、例えば表示部3の表示画面に表示させて、オペレーターの承認が得られた後、リーク試験制御部21に送信することが好ましい。
【0077】
逆に、試験条件決定部23が、十分に重複した領域が無く、不感帯を生じる虞があると判定した場合、ステップS03及び/またはステップS04で決定したエアリーク試験及び/またはヘリウムリーク試験の試験条件は、不適であるとの警告を表示部3のL換算結果表示部32や前記外部装置やプリンターに出力することができる。これにより、オペレーターが誤って、好ましくない試験条件を採用する虞を防止することができる。
【0078】
この警告を受けたオペレーターは、エアリーク試験及び/またはヘリウムリーク試験の試験条件を変更して、制御装置2に上述したリーク試験条件設計方法を再度実行させることができる。また、試験条件決定部23は、その後同じワークについて、十分に重複した領域があり、不感帯を生じる虞が無いという判定結果が得られるまで、自動でリーク試験条件設計方法のワークカプセル52の残容積を求めるステップS02以降の過程を繰り返し実行するように構成することができる。
【0079】
また、上記繰り返しの過程でワークカプセル52の残容積を見直すことは、ワークカプセル52の残容積を減らすとエアリーク試験の検出感度が向上することを考慮すれば、エアリーク試験及びヘリウムリーク試験の試験範囲の間で不感帯を排除して重複する領域を実現する上で有効である。更に、前記残容積の見直しは、ワークカプセル52自体の形状や設計値の見直しにも利用することができるので、有利である。
【0080】
本実施形態のリーク試験方法によれば、上述したリーク試験条件設計方法によって適と判定された試験条件に基づいて、エアリーク試験及びヘリウムリーク試験を実行する。
図11のフロー図は、
図1のリーク試験装置100を用いて、
図4のリーク試験条件設計方法に続いて実行されるエアリーク試験及びヘリウムリーク試験の好適な実施形態を示している。
【0081】
先ず、実際にリーク試験を行うワークとマスターとを準備する(ステップS101)。次に、ワークをボンビングタンク73に収容してヘリウムを供給し、
図4のステップS04で決定したボンビング条件に基づいてボンビングを行う(ステップS102)。設定されたボンビング時間の経過後、ボンビングタンク73からワークを取り出し、エアリーク試験部11に搬送してエアリーク試験を実行する(ステップS103)。
【0082】
ワークのエアリーク試験は、リーク量の小さい「小漏れ」とリーク量の大きい「大漏れ」とに分けて、順に実施する。リーク試験制御部21は、第2開閉弁55a,55bを閉じた状態で、ワークとマスターをエアリーク試験部11のワークカプセル52とマスターカプセル53にそれぞれ収容した後、テスト圧供給源41から
図4のステップS03で決定したテスト空気圧をワーク側分岐通路45a及びマスター側分岐通路45bに印加させる。
【0083】
次に、第1開閉弁51a,51bを閉じて、それより下流側のワーク側分岐通路45aの閉回路部分とマスター側分岐通路45bの閉回路部分との間に生じる差圧(小漏れ)を差圧センサー58により検出させる。更に、第1開閉弁51a,51bを閉じたまま、第2開閉弁55a,55bを開けて、分圧タンク56a,56bにワーク側及びマスター側分岐通路45a,45bの閉回路部分内の空気をそれぞれ分圧し、分圧後の圧力差(大漏れ)を差圧センサー58により検出させる。この後、ワーク側及びマスター側分岐通路45a,45b内の空気を排気し、ワークカプセル52からワークを取り出してヘリウムリーク試験部12に搬出し、ヘリウムリーク試験に移行する。
【0084】
エアリーク試験部11は、検出した小漏れまたは大漏れの差圧が事前に設定した閾値の範囲内であれば、ワークが良品であると判断して信号を表示部3に出力し、試験結果表示部31の表示画面に良品であることを表示させる。検出した小漏れまたは大漏れの差圧が前記閾値を超えている場合、エアリーク試験部11は、ワークがグロスリークを有する欠陥品であると判断して信号を表示部3に出力し、試験結果表示部31の表示画面に欠陥品であることを表示させる。
【0085】
次に、ステップS104において、ヘリウムリーク試験部12は、ヘリウムリーク試験を実行する。エアリーク試験部11からヘリウムリーク試験部12に搬出されたワークは検査カプセル81に移され、該ワークから漏出するヘリウムリーク量をヘリウムリークディテクター82によって検出する。
【0086】
このとき、ヘリウムリーク試験部12は、ワークをボンビングタンク73から検査カプセル81へ移動してヘリウムリーク試験を完了するまでの時間をカウントすることができる。そして、カウントした時間が予め設定された放置時間内であったか否かを表示部3に出力して画面表示させることが、放置時間の管理上好ましい。
【0087】
ヘリウムリーク試験部12は、検出したヘリウムリーク量が事前に設定した閾値の範囲内であれば、ワークが良品であると判断して信号を表示部3に出力し、試験結果表示部31の表示画面に良品であることを表示させる。検出したヘリウムリーク量が前記閾値を超えている場合、ヘリウムリーク試験部12は、ワークが微小リークを有する欠陥品であると判断して信号を表示部3に出力し、試験結果表示部31の表示画面に欠陥品であることを表示させる。
【0088】
更にヘリウムリーク試験部12は、ワークをボンビングタンク73から検査カプセル81へ移動してヘリウムリーク試験を完了するまでのカウント時間が前記予め設定された放置時間を超えた場合にも、ワークを欠陥品であると判断し、表示部3に出力して、カウント時間と共に画面表示させることができる。これは、前記放置時間を、
図6及び
図7に例示される予測結果に基づいて、上述したステップS104のヘリウムリーク試験で検査可能な漏れ領域を保証できる放置時間として設定しており、これを超えると保証できなくなる虞があるからである。
【0089】
これを、
図10のグラフを用いて具体的に説明する。同図において、ヘリウムリーク試験の曲線HL1は、ワークをボンビングタンク73から取り出して5分後に測定した場合のシミュレーション結果であり、20分後に測定した場合のシミュレーション結果である曲線HL2と比較すると、エアリーク試験の曲線AL1側により近くなっており、曲線AL1との間に十分に重複した領域が存在している。これに対し、曲線HL2は、曲線AL1と重複する領域が狭いことから、安全率をも考慮して、ヘリウムリーク試験で許容できる放置時間を5分と設定することができる。放置時間を5分を超過すれば、
図10におけるヘリウム測定流量のグラフは、曲線HL1から曲線HL2側へと、曲線AL1から離れる向きにシフトし、曲線AL1との重複領域が狭くなっていくので、保証できなくなる場合が起こり得る。
【0090】
上述したエアリーク試験及びヘリウムリーク試験の検出結果は、それぞれエアリーク試験部11及びヘリウムリーク試験部12から制御装置2に出力される。制御装置2のリーク試験制御部21は、エアリーク試験部11及びヘリウムリーク試験部12から入手した差圧及びヘリウムリーク量の測定値を等価標準リーク率に換算し(ステップS105)、表示部3に出力して画面表示させる(ステップS106)。
【0091】
表示部3が、リーク試験制御部21から受信した前記測定値の等価標準リーク率換算値をL換算結果表示部32に、
図4のステップS07で生成した統合グラフ3上に重ねて表示させると、エアリーク試験及びヘリウムリーク試験の測定結果が、上述したリーク試験条件設計方法によって想定された試験範囲内にあるか否かを視覚的に簡単に検証することができる。ステップS105の前記測定値の等価標準リーク率換算値は、前記外部装置やプリンターに出力することもできる。
【0092】
本実施形態において、
図11に関連して上述したように、最初にワークにヘリウムボンビングを行い、設定された放置時間内にエアリーク試験とヘリウムリーク試験とを連続して行うリーク試験方法は、特に1台の自動検査装置で両リーク試験を自動で連続して行う場合に適している。別の実施形態では、エアリーク試験とヘリウムリーク試験とをそれぞれ別個の検査装置で行うことができる。この場合、先にエアリーク試験装置でエアリーク試験を行った後、ワークをヘリウムリーク試験装置へ搬送し、ボンビングタンク73に移してヘリウムボンビングを行い、ヘリウムリーク試験を行うことになる。
【0093】
以上、本発明をその好適な実施形態に関連して詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施することができる。例えば、
図11に示すリーク試験方法において、エアリーク試験(ステップS103)とヘリウムリーク試験(ステップS104)を実行する順序は、逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 検査装置本体
2 制御装置
3 表示部
11 エアリーク試験部
12 ヘリウムリーク試験部
21 リーク試験制御部
22 シミュレーション処理部
23 試験条件決定部
31 試験結果表示部
32 等価標準リーク率換算結果表示部(L換算結果表示部)
100 リーク試験装置