(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】ノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
H02M 1/12 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
H02M1/12
(21)【出願番号】P 2022529240
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022062
(87)【国際公開番号】W WO2021245865
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄己
(72)【発明者】
【氏名】古庄 泰章
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 博行
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-80469(JP,A)
【文献】特開2000-201044(JP,A)
【文献】特開2000-244272(JP,A)
【文献】特開2017-38500(JP,A)
【文献】特開2001-333582(JP,A)
【文献】特開平10-94244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
H03H 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子のスイッチング動作により電力変換を行う電力変換器が発生させるコモンモード電圧を低減するノイズフィルタであって、
前記電力変換器が発生させる前記コモンモード電圧を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器により検出された前記コモンモード電圧を分圧した分圧電圧を出力する分圧回路と、
前記コモンモード電圧と逆極性の注入電圧を前記電力変換器の出力又は入力に重畳させる複数のコモンモードトランスと、
前記分圧電圧に基づいて複数の前記コモンモードトランスの一次側に出力する出力電圧を生成する注入波形生成器と、を備え、
前記注入波形生成器は、複数の前記コモンモードトランスにより重畳させる前記注入電圧を加算した総注入電圧と前記コモンモード電圧との差が許容値以下になる前記出力電圧を生成する、ノイズフィルタ。
【請求項2】
前記注入波形生成器は、全ての前記コモンモードトランスの一次側に同じ前記
出力電圧を出力する、請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
前記注入波形生成器は、複数の出力端子を有し、それぞれの前記出力端子から異なる前記出力電圧を対応する前記コモンモードトランスの一次側に出力する、請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
前記注入波形生成器は複数の波形生成器を備え、
前記波形生成器のそれぞれは、異なる前記出力電圧を対応する前記コモンモードトランスの一次側に出力する、請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項5】
前記注入波形生成器が出力する異なる前記出力電圧は電圧値が異なっている、請求項3または4に記載のノイズフィルタ。
【請求項6】
前記注入波形生成器は、前記分圧電圧の周波数帯域を変更する帯域制限器を備え、
前記注入波形生成器が出力する異なる前記出力電圧は周波数帯域が異なっている、請求項3から5のいずれか1項に記載のノイズフィルタ。
【請求項7】
前記注入波形生成器は、前記分圧電圧の周波数帯域を変更する帯域制限器を備えている、請求項1または2に記載のノイズフィルタ。
【請求項8】
注入波形生成器は、前記分圧電圧を増幅する増幅器を備え、
前記増幅器のゲインは、前記コモンモードトランスの数及び巻数比に基づいて設定されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のノイズフィルタ。
【請求項9】
複数の前記コモンモードトランスは、第一のコモンモードトランスと第二のコモンモードトランスを含んでおり、
前記第一のコモンモードトランスと前記第二のコモンモードトランスとは、コア材、コアの断面積、コアの外径、コアの内径、巻数比の少なくとも1つが異なっている、請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項10】
複数の前記コモンモードトランスは、第一のコモンモードトランスと第二のコモンモードトランスを含んでおり、
前記第一のコモンモードトランスと前記第二のコモンモードトランスとは、コア材、コアの断面積、コアの外径、コアの内径、巻数比の少なくとも1つが異なっている、請求項2から8のいずれか1項に記載のノイズフィルタ。
【請求項11】
前記注入波形生成器は、第一の波形生成器と第二の波形生成器を備え、
前記第一の波形生成器は、第一の前記出力電圧を前記第一のコモンモードトランスに出力し、
前記第二の波形生成器は、第二の前記出力電圧を前記第二のコモンモードトランスに出力する、請求項9記載のノイズフィルタ。
【請求項12】
前記第一の前記出力電圧は、
第二の前記出力電圧における電圧値が異なっている、請求項11記載のノイズフィルタ。
【請求項13】
前記第一の波形生成器及び前記第二の波形生成器は、前記分圧電圧の周波数帯域を変更する帯域制限器を備え、
前記第一の前記出力電圧は、第二の前記出力電圧における周波数帯域が異なっている、請求項11または12に記載のノイズフィルタ。
【請求項14】
前記第一の波形生成器及び前記第二の波形生成器は、前記分圧電圧を増幅する増幅器を備え、
前記増幅器のゲインは、前記コモンモードトランスの数及び巻数比に基づいて設定されている、請求項11から13のいずれか1項に記載のノイズフィルタ。
【請求項15】
前記電圧検出器は、三相交流電力を出力する前記電力変換器が発生させる前記コモンモード電圧を検出し、
前記コモンモードトランスは、二次側の巻線を3つ備えている、請求項1から14のいずれか1項に記載のノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電圧型PWM(Pulse Width Modulation)インバータなどの電力変換装置において、電力用半導体素子の発展に伴い、キャリア周波数の高周波化が進められている。しかし、キャリア周波数の高周波化に伴い、電力用半導体素子のスイッチング動作の際に発生するコモンモード電圧を原因とした電磁障害が問題となっている。この問題の対策のために、コモンモードトランスを用いて電力変換装置が発生するコモンモード電圧を相殺する電圧(相殺電圧)を重畳し、コモンモード電圧によって接地に流れる漏れ電流すなわちコモンモード電流を抑制する方式が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1のコモンモード抑制回路は、インバータとモータとを接続する三相ケーブルに二次側コイルすなわち二次巻線が設けられたコモンモードトランス、コモンモードトランスの一次側コイルすなわち一次巻線に直列接続されたコンデンサ、コモンモード電圧を検出するコンデンサ群、コモンモード電圧を電力増幅した相殺電圧をコモンモードトランスの一次巻線に出力するエミッタフォロワ回路を備えている。特許文献1のコモンモード抑制回路は、コモンモードトランスの一次巻線及び二次巻線の巻数比が1:1であり、スイッチング周波数以上のコモンモード電圧を相殺することで、相殺電圧を重畳するためのコモンモードトランスを、コモンモード電圧を0とする場合よりも小型化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のコモンモード抑制回路ではスイッチング周波数が低い場合、コアに発生する磁束の時間積が大きくなるので、コモンモードトランスに使用されるコアが大きくなるという問題がある。
【0006】
本願明細書に開示される技術は、スイッチング周波数が低い場合でも小型のコモンモードトランスを用いてコモンモード電圧を抑制できるノイズフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に開示される一例のノイズフィルタは、半導体素子のスイッチング動作により電力変換を行う電力変換器が発生させるコモンモード電圧を低減するノイズフィルタである。ノイズフィルタは、電力変換器が発生させるコモンモード電圧を検出する電圧検出器と、電圧検出器により検出されたコモンモード電圧を分圧した分圧電圧を出力する分圧回路と、コモンモード電圧と逆極性の注入電圧を電力変換器の出力又は入力に重畳させる複数のコモンモードトランスと、分圧電圧に基づいて複数のコモンモードトランスの一次側に出力する出力電圧を生成する注入波形生成器と、を備えている。注入波形生成器は、複数のコモンモードトランスにより重畳させる注入電圧を加算した総注入電圧とコモンモード電圧との差が許容値以下になる出力電圧を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本願明細書に開示される一例のノイズフィルタは、複数のコモンモードトランスを備え、注入波形生成器が複数のコモンモードトランスにより重畳させる注入電圧を加算した総注入電圧とコモンモード電圧との差が許容値以下になる出力電圧を生成するので、スイッチング周波数が低い場合でも小型のコモンモードトランスを用いてコモンモード電圧を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る第一のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図4】
図1の注入波形生成器の第一例を示す図である。
【
図5】
図1の注入波形生成器の第二例を示す図である。
【
図6】
図1の注入波形生成器の第三例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る第二のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る第三のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図9】比較例のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係るノイズフィルタのコアを示す図である。
【
図12】実施の形態1に係るノイズフィルタのコアを示す斜視図である。
【
図13】比較例のノイズフィルタのコアを示す斜視図である。
【
図14】実施の形態1に係る第四のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図15】実施の形態1に係る第五のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図16】実施の形態1に係る第六のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図17】実施の形態2に係る第一のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図18】
図17の第一の注入波形生成器の第一例を示す図である。
【
図19】
図17の第二の注入波形生成器の第一例を示す図である。
【
図20】
図17の第一の注入波形生成器の第二例を示す図である。
【
図21】
図17の第二の注入波形生成器の第二例を示す図である。
【
図22】
図17の第一の注入波形生成器の第三例を示す図である。
【
図23】
図17の第二の注入波形生成器の第三例を示す図である。
【
図24】
図17の第一の注入波形生成器の第四例を示す図である。
【
図25】
図17の第二の注入波形生成器の第四例を示す図である。
【
図26】
図17の第一の注入波形生成器の第五例を示す図である。
【
図27】
図17の第二の注入波形生成器の第五例を示す図である。
【
図28】
図17の第一の注入波形生成器の第六例を示す図である。
【
図29】
図17の第二の注入波形生成器の第六例を示す図である。
【
図30】実施の形態2に係る第二のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【
図31】実施の形態2に係る第三のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ノイズフィルタ及び電動機駆動システムについて、図面を参照しながら説明する。各図において同一またはこれに相当するものに同一符号を付けて説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る第一のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
図2は
図1の電力変換器の構成を示す図であり、
図3は
図1の分圧回路の構成を示す図である。
図4は
図1の注入波形生成器の第一例を示す図であり、
図5は
図1の注入波形生成器の第二例を示す図であり、
図6は
図1の注入波形生成器の第三例を示す図である。
図7は実施の形態1に係る第二のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図であり、
図8は実施の形態1に係る第三のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
図9は、比較例のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
図10は実施の形態1に係るノイズフィルタのコアを示す図であり、
図11は
図10のA-Aで示した破線に沿った断面図である。
図12は実施の形態1に係るノイズフィルタのコアを示す斜視図であり、
図13は比較例のノイズフィルタのコアを示す斜視図である。
図14は実施の形態1に係る第四のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図であり、
図15は実施の形態1に係る第五のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
図16は、実施の形態1に係る第六のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。実施の形態1のノイズフィルタ50は、複数の半導体素子がスイッチング動作を行う電圧型PWMインバータ等の電力変換器2により誘導電動機3を制御するシステムである電動機駆動システム60に適用されている。
【0012】
電動機駆動システム60は、電力系統、自立型電圧源等の交流電源1と、交流電源1の交流電力を直流電力に変換し、直流電力を交流電力に変換する電力変換器2と、交流電源1と電力変換器2との間を接続する三相電力線4と、電力変換器2と誘導電動機3との間を接続する三相電力線5と、ノイズフィルタ50と、を備える。誘導電動機3は接地線6により接地されている。接地GNDの電位すなわち接地電位は、ノイズフィルタ50の基準電位になっている。三相電力線4は、u相の三相電力線4u、v相の三相電力線4v、w相の三相電力線4wを備えている。三相電力線5は、u相の三相電力線5u、v相の三相電力線5v、w相の三相電力線5wを備えている。
【0013】
ノイズフィルタ50は、電圧検出器7、分圧回路9、注入波形生成器10、コモンモードトランス11a、11bを備える。電力変換器2は、半導体素子で構成される順変換回路21、直流電力を蓄電する蓄電素子であるコンデンサ22、半導体素子で構成されており、直流電力を交流電力に変換する逆変換回路23を備える。順変換回路21は、例えば整流回路であり、6個のダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6を備えている。逆変換回路23は、6個の半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6を備えている。一端が交流電源1に接続されている三相電力線4u、4v、4wは、それぞれ他端が電力変換器2の交流入力端子41u、41v、41wに接続されている。一端が誘導電動機3に接続されている三相電力線5u、5v、5wは、それぞれ他端が電力変換器2の交流出力端子42u、42v、42wに接続されている。
【0014】
順変換回路21は、高電位側配線44pと低電位側配線44sとの間に、直列に接続されたダイオードD1、D2である第一直列体、直列に接続されたダイオードD3、D4である第二直列体、直列に接続されたダイオードD5、D6である第三直列体が配置されている。ダイオードD1とダイオードD2との接続点n1は、交流入力端子41uに接続されている。ダイオードD3とダイオードD4との接続点n2は交流入力端子41vに接続されており、ダイオードD5とダイオードD6との接続点n3は交流入力端子41wに接続されている。コンデンサ22は、高電位側配線44pと低電位側配線44sとの間に接続されている。逆変換回路23は、高電位側配線44pと低電位側配線44sとの間に、直列に接続された半導体素子Q1、Q2である第四直列体、直列に接続された半導体素子Q3、Q4である第五直列体、直列に接続された半導体素子Q5、Q6である第六直列体が配置されている。半導体素子Q1と半導体素子Q2との接続点n4は、交流出力端子42uに接続されている。半導体素子Q3と半導体素子Q4との接続点n5は交流出力端子42vに接続されており、半導体素子Q5と半導体素子Q6との接続点n6は交流出力端子42wに接続されている。
【0015】
半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の電力用半導体素子が用いられる。
図2では、MOSFETの例を示した。半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6は、MOSトランジスタM、ダイオードDを備えている。ダイオードDは、MOSトランジスタMと別の素子でもよく、寄生ダイオードでもよい。半導体素子Q1、Q3、Q5のドレインdは高電位側配線44pに接続されており、半導体素子Q2、Q4、Q6のソースsは低電位側配線44sに接続されている。半導体素子Q1のソースsと半導体素子Q2のドレインdは接続されており、半導体素子Q3のソースsと半導体素子Q4のドレインdは接続されており、半導体素子Q5のソースsと半導体素子Q6のドレインdは接続されている。半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6のゲートgに、図示しない制御回路から制御信号が入力される。逆変換回路23は、制御回路からの制御信号に基づいて半導体素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6をスイッチングして直流電力を交流電力に変換する。
【0016】
コモンモード電圧Vciを検出する電圧検出器7は、互いに等しい容量を有する3つのコンデンサ8を備え、各コンデンサ8の一端が三相電力線5の各相に接続されている。各コンデンサ8の他端は接続点n7にて互いに接続されている。分圧回路9は、入力端子94がコンデンサ8の他端が接続された接続点n7に接続され、出力端子95が注入波形生成器10の入力端子51に接続されている。分圧回路9は、接地電位になっている配線24と入力端子94との間の入力電圧であるコモンモード電圧Vciを分圧して、その分圧した分圧電圧Vdを出力電圧として出力する。
【0017】
分圧回路9は、例えばコンデンサ91と、コンデンサ91に並列に接続された抵抗92及び抵抗93の直列体と、を備えている。コンデンサ91の一端及び抵抗92の一端は入力端子94に接続されており、コンデンサ91の他端及び抵抗93の一端は接地電位になっている配線24に接続されている。抵抗92の他端と抵抗93の他端とが接続された接続点は、出力端子95に接続されている。分圧回路9は、入力端子94に入力されたコモンモード電圧Vciを分圧した分圧電圧Vdを出力端子95から出力する。検出されるコモンモード電圧Vciは抵抗92と抵抗93の抵抗比によって分圧される。三相電力線5の各相である三相電力線5u、5v、5wの電圧は、コンデンサ8とコンデンサ91のインピーダンス比によって分圧された後、抵抗92と抵抗93の抵抗比によって分圧され、分圧電圧Vdとして分圧回路9から出力される。
【0018】
分圧電圧Vdは注入波形生成器10の入力端子51に入力される。注入波形生成器10は、入力された分圧電圧Vdに基づいて、帯域制限されかつ電圧値が調整された電圧を出力端子52から出力する。注入波形生成器10の出力端子52から出力される出力はコモンモードトランス11a、11bの一次側すなわち一次巻線に入力される。コモンモードトランス11a、11bは、一次側の一次巻線と二次側の二次巻線を備えており、二次巻線が三相電力線5の各相である三相電力線5u、5v、5wに挿入されている。注入波形生成器10から出力された電圧すなわち出力電圧Vpは各コモンモードトランス11a、11bの一次巻線に印加され、コモンモード電圧Vciと逆極性であり、一次側と二次側の巻数比に応じた電圧である注入電圧Vsが二次巻線に発生する。
【0019】
電力変換器2は、半導体素子Q1~Q6がスイッチング動作する毎にステップ状に変化するコモンモード電圧Vciを発生する。このコモンモード電圧Vciは電圧検出器7により検出され、分圧回路9により分圧電圧Vdに分圧される。分圧電圧Vdは注入波形生成器10により帯域制限されかつ電圧値が調整されて出力された出力電圧Vpは、コモンモードトランス11a、11bの一次巻線に入力される。コモンモードトランス11a、11bの二次巻線に発生した電圧すなわち注入電圧Vsは、電力変換器2で発生したコモンモード電圧Vciを低減するように調整されている。したがって、実施の形態1のノイズフィルタ50は、電圧検出器7により検出されたコモンモード電圧Vciに基づいて、コモンモード電圧Vciと逆極性でかつ、調整された電圧である出力電圧Vpをコモンモードトランス11a、11bに入力して三相電力線5の各相に注入電圧Vsを重畳するので、コモンモード電圧Vciを抑制できる。実施の形態1のノイズフィルタ50が、電力変換器2のスイッチング周波数が低い場合でも小型のコモンモードトランス11a、11bを用いてコモンモード電圧Vciを抑制できることを説明する。
【0020】
図4~
図6に、注入波形生成器10の第一例~第三例を示した。
図4に示した第一例の注入波形生成器10は、帯域制限器12、増幅器13、制御電源15a、15bを備えている。制御電源15aは正側電圧を供給し、制御電源15bは負側電圧を供給する。帯域制限器12により、コモンモード電圧Vciのうち低減する周波数帯域のみをコモンモードトランス11a、11bに印加できるため、コモンモードトランス11a、11bの小型化が可能である。帯域制限器12は、対象とする周波数帯域が通過できればよく、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ及び、ハイパスフィルタのいずれかを適用することができる。例えば、スイッチング周波数が2kHzの場合、帯域制限器12の対象とする周波数帯域を2kHzより高い周波数帯域とし、2kHzより低い周波数にカットオフ周波数をもつハイパスフィルタを接続することで、コモンモードトランス11a、11bに印加される電圧の低周波成分を減衰させ、コモンモードトランス11a、11bを小型化できる。また、帯域制限器12の対象とする周波数帯域を10kHzより高い周波数帯域とした場合、2kHz~10kHzの間にカットオフ周波数をもつハイパスフィルタを接続することで、さらにコモンモードトランス11a、11bを小型化することができる。
図4に示した増幅器13は反転増幅回路の例である。増幅器13は、オペアンプ19、抵抗16、17、18を備えている。オペアンプ19の正側入力端子に、抵抗17を介して接地電位が入力されている。オペアンプ19の負側入力端子に、帯域制限器12の出力が抵抗16を介して入力され、かつオペアンプ19の出力が抵抗18を介して入力されている。
【0021】
オペアンプ19のゲインGiは、抵抗16及び抵抗18の抵抗値をそれぞれr1、r2とすると、式(1)で表せる。また、出力電圧Vpは式(2)で表せる。
Gi=r2/r1 ・・・(1)
Vp=-Gi×Vd ・・・(2)
【0022】
オペアンプ19のゲインGiは、分圧回路9の分圧比Rv、コモンモードトランス11a、11bの巻数比Rr、接続されるコモンモードトランス11a、11bの数である接続トランス数Ntにより設定される。コモンモードトランス11a、11bの二次巻線を介して三相電力線5のu相、v相、w相に重畳される電圧である注入電圧Vsがコモンモード電圧Vciを低減するように、すなわち式(3)が成立するように、ゲインGi、分圧比Rv、巻数比Rr、接続トランス数Ntが設定される。
|Vci-Vst|≦Vtо ・・・(3)
ここで、Vtоは電圧差の許容値である。式(3)は、コモンモード電圧Vciと総注入電圧Vstとの差の絶対値が許容値Vtо以下であることを示している。総注入電圧Vstは、コモンモードトランス11a、11bが発生させる注入電圧Vsを加算した電圧である。
【0023】
注入電圧の電圧値が同一であって接続トランス数Ntが2である場合は、三相電力線5のu相、v相、w相に重畳される電圧の合計である総注入電圧Vstは2×Vsになる。三相電力線5のu相、v相、w相に重畳される電圧の合計である総注入電圧Vstは、接続トランス数Ntを用いると式(4)で表される。
図1の場合の接続トランス数Ntは2である。
Vst=Nt×Vs ・・・(4)
【0024】
分圧回路9の分圧比Rvは、式(5)で表せる。コモンモードトランス11a、11bの巻数比Rrは、一次巻線及び二次巻線の巻数をそれぞれN1、N2とすると、式(6)で表せる。
Rv=Vci/Vd ・・・(5)
Rr=N2/N1 ・・・(6)
【0025】
あるコモンモード電圧Vciの値に対して、接続トランス数Ntが多い程、1つのコモンモードトランスに入力される電圧すなわち注入波形生成器10の出力電圧Vpとコモンモードトランスの二次巻線に出力される電圧である注入電圧Vsとを小さくすることができる。複数のコモンモードトランス11a、11bを備えることで、実施の形態1のノイズフィルタ50は、小型のコモンモードトランス11a、11bで総注入電圧Vstを三相電力線5のu相、v相、w相に重畳することができる。したがって、実施の形態1のノイズフィルタ50は、スイッチング周波数が低い場合でも小型のコモンモードトランスを用いてコモンモード電圧を抑制できる。注入電圧Vsを小さくすることでコモンモードトランスが小型にできることは、後述する。
【0026】
第二例の注入波形生成器10を説明する。第二例の注入波形生成器10は、第一例の注入波形生成器10とは、増幅器13の出力端子と出力端子52との間に電流バッファ14が追加されている点で異なる。なお、増幅器13の出力端子は、オペアンプ19の出力を伝送する配線と抵抗18との接続点である。第二例の注入波形生成器10は、第一例の注入波形生成器10よりも電流供給量を示す電流容量を増やすことが可能である。電流バッファ14は、例えば直列接続された2つのトランジスタBT1、BT2を備えている。トランジスタBT1のコレクタcが制御電源15aに接続されており、トランジスタBT1のエミッタeがトランジスタBT2のエミッタeに接続されており、トランジスタBT2のコレクタcが制御電源15bに接続されている。トランジスタBT1、BT2のベースbは増幅器13の出力が入力され、トランジスタBT1、BT2のエミッタeは出力端子52に接続されている。
【0027】
第一例の注入波形生成器10、第二例の注入波形生成器10では、増幅器13が反転増幅回路の例を示したが、増幅器13が非反転増幅回路であってもよい。
図6に示した第三例の注入波形生成器10は非反転増幅回路の例である。オペアンプ19の正側入力端子に、抵抗17を介して帯域制限器12の出力が入力されている。オペアンプ19の負側入力端子に、接地電位が抵抗16を介して入力され、かつオペアンプ19の出力が抵抗18を介して入力されている。
【0028】
非反転増幅回路のオペアンプ19のゲインGiは、抵抗16及び抵抗18の抵抗値をそれぞれr1、r2とすると、式(7)で表せる。また、出力電圧Vpは式(8)で表せる。
Gi=1+r2/r1 ・・・(7)
Vp=Gi×Vd ・・・(8)
【0029】
増幅器13が非反転増幅回路の場合、
図7に示すように、コモンモードトランス11a、11bの一次巻線への接続を逆に変更し、二次巻線に出力される電圧である注入電圧Vsがコモンモード電圧Vciを低減するように設定する。次に、実施の形態1のノイズフィルタ50を、比較例のノイズフィルタ100と比較しながら説明する。
【0030】
図9に示した比較例のノイズフィルタ100は1つのコモンモードトランス101を備えており、比較例の電動機駆動システム110はノイズフィルタ100を備えている。比較例のノイズフィルタ100は、注入波形生成器102からコモンモードトランス101の一次巻線に出力電圧Vpeが出力され、三相電力線5のu相、v相、w相に注入電圧Vseを重畳させる。比較例のノイズフィルタ100は、実施の形態1のノイズフィルタ50とは、1つのコモンモードトランス101を備え、注入波形生成器10が注入波形生成器102に変更されている点で異なる。注入波形生成器102は注入波形生成器10と同様の構成であるが、出力電圧Vpeの値によってはゲインGi等が異なる。比較例のノイズフィルタ100は、接続トランス数Ntが1である。コモンモードトランスの数が異なっても同等のコモンモード電圧の低下を実現するには、同じ値の総注入電圧Vstが必要である。このため、式(4)から分かるように、比較例のノイズフィルタ100は、接続トランス数Ntが2である実施の形態1のノイズフィルタ50が三相電力線5の各相に重畳させる注入電圧Vsの2倍になる注入電圧Vseを三相電力線5の各相に重畳しないと同等のコモンモード電圧の低下を実現することはできない。しがたって、比較例のノイズフィルタ100は、実施の形態1のノイズフィルタ50と同等のコモンモード電圧の低下を実現するには、式(9)が成立する必要がある。
Vse=2×Vs ・・・(9)
【0031】
式(9)を実現させるには、例えば2つの方法が考えられる。第一の方法は、出力電圧Vpeを出力電圧Vpと同じにして、コモンモードトランス101の巻数比Rrを2倍にすることである。第二の方法は、コモンモードトランス101の巻数比Rrをコモンモードトランス11a、11bの巻数比Rrと同じにして、出力電圧Vpeを出力電圧Vpの2倍にすることである。
【0032】
コモンモードトランス11a、11bは、1つの一次巻線及び3つの二次巻線を備えている。コモンモードトランス11a、11bのコアは例えば
図10に示すトロイダル型のコア28である。実施の形態1のノイズフィルタ50は2つのコモンモードトランス11a、11bを備えているので、
図12に示すように2つのコア28を備えている。比較例のコモンモードトランス101も、コモンモードトランス11a、11bと同様である。比較例のノイズフィルタ100は1つのコモンモードトランス101を備えているので、
図13に示すように1つのコア29を備えている。コアのサイズについては後述する。
【0033】
第一の方法において、コモンモードトランス101の巻数比Rrを大きくするには、一次巻線の巻数を減らす方法と二次巻線の巻数を増やす方法がある。一次巻線の巻数を減らす場合、コモンモードトランス101の励磁電流が増加し磁束も増加する。コモンモードトランス101に使用するコアの磁気飽和を避けるには、コアの断面積を増加させる必要がある。対して、二次巻線の巻数を増やす場合、二次巻線には三相電力線5と同等の線径を有する巻線が3相分巻かれているため、コアに必要な内径が大きくなるので、結果として、コアが大型化する。制御電源15a、15bの電圧値以上の電圧を注入電圧Vseとしてコモンモードトランス101の二次巻線に発生させる場合、コアの大型化は避けられない。
【0034】
一方、第二の方法において、コモンモードトランス101に高電圧を印加するには、高電圧を出力する制御電源、高耐圧素子が必要となる。また、コモンモードトランス101における電圧時間積が大きくなるため、コアの磁気飽和を避けるには、コアの断面積の増加、一次巻線の巻数増加が必要となる。巻数比Rrを一定に保つために二次巻線の巻数も増加することになり、結果として、コモンモードトランス101に高電圧を印加する場合もコアの大型化につながる。
【0035】
以上のことから、実施の形態1のノイズフィルタ50では、複数のコモンモードトランス11a、11bを備えることで、1つのコモンモードトランスで発生させる注入電圧Vsを小さくできる。このため、実施の形態1のノイズフィルタ50は、比較例のノイズフィルタ100と異なり、コモンモードトランス11a、11bはコアの断面積を大きくする必要がなく、巻数増加のためにコア内径を大きくする必要がなく、コアを小型化することが可能である。また、実施の形態1のノイズフィルタ50は、コモンモードトランス11a、11bに印加する電圧すなわち出力電圧Vpは低電圧で良く、電圧時間積を小さくできるため、コアの小型化が図れる。加えて、実施の形態1のノイズフィルタ50は、注入波形生成器10に印加する制御電源15a、15bの電圧は低電圧で良く、注入波形生成器10を低耐圧の素子で構成することが可能である。
【0036】
特許文献1のコモンモード抑制回路は、巻数比Rrが1のコモンモードトランスが1つである。前述したように、スイッチング周波数が低い場合、コアに発生する磁束の時間積が大きくなるので、同じ電圧を二次巻線に発生させるためにコモンモードトランスに使用されるコアが大きくなる。1つコモンモードトランスでは、このサイズ増大が顕著になる。実施の形態1のノイズフィルタ50は2つのコモンモードトランス11a、11bを備えるので、特許文献1のコモンモード抑制回路が三相電力線5に重畳する総注入電圧Vstが同じ場合には、各コモンモードトランス11a、11bが重畳する注入電圧VsをVst/2にすることができる。注入電圧VsがVst/2になるので、電圧時間積を小さくでき、さらにコアに発生させる磁束も小さくでき、コアの断面積を小さくすることができる。したがって、実施の形態1のノイズフィルタ50は、特許文献1のコモンモード抑制回路よりも小型のコアを有するコモンモードトランスを用いることができる。
【0037】
実施の形態1のノイズフィルタ50におけるコアのサイズについて、
図10~
図13を用いて説明する。実施の形態1のノイズフィルタ50におけるコアは、前述したように例えば
図10に示すトロイダル型のコア28である。実施の形態1のノイズフィルタ50は2つのコモンモードトランス11a、11bを備えているので、
図12に示すように2つのコア28を備えている。比較例のノイズフィルタ100は1つのコモンモードトランス101を備えているので、
図13に示すように1つのコア29を備えている。コア28の内径はlであり、外径はLであり、幅(厚み)はhである。コア28の断面積がSである。
図11において、左側がコア28の内側であり、右側がコア28の外側である。まず、
図1のように2つのコモンモードトランス11a、11bに同一電圧値の出力電圧Vpを印加する場合を考える。コア28に発生する磁束密度Bは式(10)で表せる。
B=(Vp×t)/(N1×S) ・・・(10)
tは出力電圧Vpを印加する時間である。
【0038】
式(10)から電圧時間積(Vp×t)を小さくすることで、磁束密度Bと一次側の巻数N1を一定にしながら断面積Sを小さくできる。比較例のコモンモードトランス101のコア29に発生する磁束密度と実施の形態1の2つのコモンモードトランス11a、11bのコア28に発生する合計の磁束密度が同じになる場合を考えると、コア28の断面積Sとコア29の断面積Seとの関係は式(11)のようになる。
Se=2×S ・・・(11)
【0039】
コア29の断面積Se及び体積v1は式(12)、(13)で表せる。コア29の断面積Seは、
図10のコア28をコア29とした場合におけるA-Aで示した破線に沿った断面の面積になる。コア29の幅は、コア28の幅と同じhである。
Se=h×(Le-l)/2 ・・・(12)
v1=π×h×(Le
2-l
2)/4 ・・・(13)
【0040】
コア28の断面積S及び体積v2は式(14)、(15)で表せる。
S=h×(L-l)/2 ・・・(14)
v2=π×h×(L2-l2)/4 ・・・(15)
【0041】
式(11)に式(12)(14)を代入して変形すると、式(16)のようになる。
L=(Le+l)/2 ・・・(16)
【0042】
式(15)の体積v2は、式(16)を用いて変形すると式(17)のようになる。
v2=π×h×(Le2+2Le×l-3l2)/16 ・・・(17)
【0043】
式(13)と式(17)から、コア29の体積v1と2つのコア28の合計体積2×v2は式(18)の関係が成り立つ。
v1>2×v2 ・・・(18)
【0044】
このことから、1つのコモンモードトランス101と同一電圧値の出力電圧Vpを2つのコモンモードトランス11a、11bで分割して、同一電圧値の注入電圧Vsを三相電力線5に重畳する場合は、次のようになる。実施の形態1のノイズフィルタ50におけるコモンモードトランス11a、11bは、磁束密度Bと内径lが一定の条件のもと、1つのコア28における外径Lを外径Leよりも小さくすることで、1つのコア28における断面積Sをコア29の断面積Seの1/2に維持しながら、コア28の合計体積すなわち合計サイズを小さくすることができる。ここで内径lが一定であることは、巻数N1が一定であり必要内径が一定であることによる。
【0045】
また、
図8のように、コモンモードトランス11a、11bが異なる電圧値の注入電圧Vsa、Vsbを三相電力線5に重畳する場合は、特許文献1のコモンモードトランスと異なり、許容値に合わせて総電圧を減らすという操作が可能であるため、コア28の断面積Sを小さくでき、2つのコア28の合計体積(合計サイズ)を小さくすることができる。
【0046】
実施の形態1のノイズフィルタ50は、2つのコモンモードトランスの合計サイズを特許文献1のコモンモードトランスよりも小さくすることができる。実施の形態1のノイズフィルタ50は、小型のコモンモードトランスを2つ用いることで、特許文献1のコモンモード抑制回路よりもコモンモードトランスの配置自由度が高くなる。このため、実施の形態1のノイズフィルタ50は、特許文献1のコモンモード抑制回路よりも効率的な部品配置が可能となり、小型のノイズフィルタを実現できる。さらに、実施の形態1のノイズフィルタ50は、注入波形生成器10がコア増大に大きな影響を及ぼす周波数を排除する帯域制限を分圧電圧Vdに行うことで、特許文献1のコモンモードトランスよりもさらに小さくすることができる。つまり、複数のコモンモードトランス11a、11bによる注入電圧Vsが充分に低電圧化されている場合は、コア増大に大きな影響を及ぼす周波数を排除する帯域制限を行わなくても、特許文献1のコモンモードトランスよりもコモンモードトランス11a、11bを小さくすることができる。
【0047】
特許文献1のコモンモード抑制回路は、制御電源の電力がインバータの入力側直流電源の電力であるため、高耐圧のトランジスタが必要である。これに対して実施の形態1のノイズフィルタ50は、注入電圧Vsが特許文献1のコモンモード抑制回路の注入電圧の1/2になり、注入波形生成器10が出力する出力電圧Vpを特許文献1のコモンモード抑制回路よりも低電圧にできる。このため、注入波形生成器10を低耐圧の素子で構成することができる。
【0048】
コモンモードトランス11a、11bはコア材、コア28の外径L、内径l、断面積S及び巻数N1、N2が同じ場合を示したが、コア材、コア28の外径L、内径l、断面積S及び巻数N1、N2のいずれかが異なっていてもよい。この場合、
図8に示すように、コモンモードトランス11a、11bに入力される注入波形生成器10の出力電圧Vpが同じでも、コモンモードトランス11aが発生させる注入電圧Vsaとコモンモードトランス11bが発生させる注入電圧Vsbとが異なることもある。この場合は、総注入電圧Vstは式(4)の代わりに式(19)を用いる。
Vst=Vsa+Vsb ・・・(19)
【0049】
注入電圧Vsaと注入電圧Vsbが異なる場合でも、比較例及び特許文献1のコモンモード抑制回路と比較して説明した注入電圧Vsを総注入電圧Vstの1/2と考えればよい。したがって、実施の形態1のノイズフィルタ50は、比較例のノイズフィルタ100及び特許文献1のコモンモード抑制回路のコモンモードトランスよりも、コモンモードトランス11a、11bを小型にすることができる。
【0050】
なお、
図1に示した電圧検出器7は三相電力線5に接続されている例を示したが、
図14に示すように電圧検出器7は三相電力線4への接続も可能である。電力変換器2は三相電力線4にもコモンモード電圧Vciを発生させている。この場合でも、三相電力線4から検出されるコモンモード電圧Vciは三相電力線5から検出されるコモンモード電圧Vciと同等なので、式(3)を満たせばよい。また、コモンモードトランス11a、11bは三相電力線5に挿入されている例を示したが、
図15に示すようにコモンモードトランス11a、11bは三相電力線4に挿入することも可能である。三相電力線4でのコモンモード電圧Vciを低減することで、三相電力線5でのコモンモード電圧Vciを低減することができる。
図15では電圧検出器7が三相電力線4に接続されている例を示したが、電圧検出器7が三相電力線5に接続されていても構わない。更に、
図16に示すように、コモンモードトランス11a、11bと電圧検出器7との位置を交換しても構わない。
図1に示した第一例のノイズフィルタ50はフィードフォワード構成であるが、
図16に示した第六例のノイズフィルタ50はフィードバック構成である。
【0051】
分圧回路9の例としてコンデンサ91と抵抗92、93を備える例を示したが、分圧回路9はこれに限定されない。分圧回路9は、2つのコンデンサが直列接続されたコンデンサ91のみの構成、抵抗92、93のみの構成、さらにコンデンサと抵抗の数を増やした構成も可能である。
【0052】
以上のように、実施の形態1のノイズフィルタ50は、半導体素子Q1~Q6のスイッチング動作により電力変換を行う電力変換器2が発生させるコモンモード電圧Vciを低減するノイズフィルタである。ノイズフィルタ50は、電力変換器2が発生させるコモンモード電圧Vciを検出する電圧検出器7と、電圧検出器7により検出されたコモンモード電圧Vciを分圧した分圧電圧Vdを出力する分圧回路9と、コモンモード電圧Vciと逆極性の注入電圧Vs(Vsa、Vsb)を電力変換器2の出力又は入力に重畳させる複数のコモンモードトランス11a、11bと、分圧電圧Vdに基づいて複数のコモンモードトランス11a、11bの一次側に出力する出力電圧Vpを生成する注入波形生成器10と、を備えている。注入波形生成器10は、複数のコモンモードトランス11a、11bにより重畳させる注入電圧Vs(Vsa、Vsb)を加算した総注入電圧Vstとコモンモード電圧Vciとの差が許容値Vtо以下になる出力電圧Vpを生成する。実施の形態1のノイズフィルタ50は、この構成により、複数のコモンモードトランス11a、11bを備え、注入波形生成器10が複数のコモンモードトランス11a、11bにより重畳させる注入電圧Vs(Vsa、Vsb)を加算した総注入電圧Vstとコモンモード電圧Vciとの差が許容値Vtо以下になる出力電圧Vpを生成するので、スイッチング周波数が低い場合でも小型のコモンモードトランス11a、11bを用いてコモンモード電圧Vciを抑制できる。
【0053】
実施の形態2.
図17は、実施の形態2に係る第一のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
図18は
図17の第一の注入波形生成器の第一例を示す図であり、
図19は
図17の第二の注入波形生成器の第一例を示す図である。
図20は
図17の第一の注入波形生成器の第二例を示す図であり、
図21は
図17の第二の注入波形生成器の第二例を示す図である。
図22は
図17の第一の注入波形生成器の第三例を示す図であり、
図23は
図17の第二の注入波形生成器の第三例を示す図である。
図24は
図17の第一の注入波形生成器の第四例を示す図であり、
図25は
図17の第二の注入波形生成器の第四例を示す図である。
図26は
図17の第一の注入波形生成器の第五例を示す図であり、
図27は
図17の第二の注入波形生成器の第五例を示す図である。
図28は
図17の第一の注入波形生成器の第六例を示す図であり、
図29は
図17の第二の注入波形生成器の第六例を示す図である。
図30は実施の形態2に係る第二のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図であり、
図31は実施の形態2に係る第三のノイズフィルタ及び電動機駆動システムの構成を示す図である。
【0054】
図17に示した実施の形態2のノイズフィルタ50は、2つの注入波形生成器10a、10bにより3つのコモンモードトランス11a、11b、11cに出力電圧Vpa、Vpb、Vpcが出力され、3つのコモンモードトランス11a、11b、11cが三相電力線5の各相に注入電圧Vsa、Vsb、Vscを発生させる点で、実施の形態1のノイズフィルタ50と異なる。
図18に示した第一の注入波形生成器10aの第一例は、
図4に示した注入波形生成器10とは、帯域制限器12が低周波数帯域を通過させ高周波数帯域を減少させる帯域制限器32に変更され、2つの出力端子52a、52bを有する点で異なる。
図19に示した第二の注入波形生成器10bの第一例は、
図4に示した注入波形生成器10とは、帯域制限器12が高周波数帯域を通過させ低周波数帯域を減少させる帯域制限器33に変更されている点で異なる。注入波形生成器10aは、出力端子52aから出力電圧Vpaを出力し、出力端子52bから出力電圧Vpbを出力する。注入波形生成器10bは、出力端子52から出力電圧Vpcを出力する。なお、
図18、
図19において、接地電位になっている配線24は省略した。
図20~
図29においても、接地電位になっている配線24は省略した。なお、実施の形態2のノイズフィルタ50は、2つの波形生成器(注入波形生成器10a、10b)を備えた注入波形生成器を備えているということもできる。
【0055】
実施の形態1のノイズフィルタ50と異なる部分を主に説明する。注入波形生成器10aは低周波数帯域のみ増幅し、高周波数帯域は減少させるよう設定される。一方、注入波形生成器10bは高周波数帯域のみ増幅し、低周波数帯域は減少させるよう設定される。すなわち、注入波形生成器10aは低周波数帯域の出力電圧Vpa、Vpbをコモンモードトランス11a、11bに出力し、注入波形生成器10bは高周波数帯域の出力電圧Vpcをコモンモードトランス11cに出力する。出力電圧Vpa、Vpbは出力電圧Vpcとは周波数帯域が異なっている。これにより、注入波形生成器10aに接続されるコモンモードトランス11a、11bには低周波数帯域の電圧が印加され、注入波形生成器10bに接続されるコモンモードトランス11cは高周波数帯域の電圧が印加される。また、出力電圧Vpa、Vpbは出力電圧Vpcとは周波数帯域に応じて電圧値が異なっていてもよい。
【0056】
一般に、トランスに印加する電圧が高周波数帯域になるほどコア材の性質によりコア内に発生する磁束は少ない。つまり磁束が少なくなることに伴ってトランスにおける電圧時間積が小さいため、トランスが必要とするコアの断面積は小さくなる。したがって、高周波数帯域が印加されるコモンモードトランス11cはコモンモードトランス11a、11bと比較し、小型化することが可能である。
【0057】
また、コア28の断面積Sを小さくする代わりにコモンモードトランス11cの巻数N1、N2を減らすことでもコモンモードトランス11cを小型化することができる。巻数N1、N2を減らす場合、コア28に必要となる内径lが小さくなる。コア28の断面積Sを一定とした場合、内径lを小さくすると外径Lも小さくすることができるため、結果として、コモンモードトランス11cの小型化が可能となる。これらは同時に行うことも可能であり、トランスにおける電圧時間積が小さい場合は、コア28の断面積Sを小さくしつつ、巻数N1、N2を減らしコア28の外径L、内径lを小さくすることも可能である。
【0058】
一般に、トランスはインダクタンスと寄生容量による自己共振の影響を受け、高周波数帯域でインピーダンスが低下し、励磁電流が増加する。この自己共振周波数はコア材により異なるため、高周波数帯域の電圧が印加されるコモンモードトランス11cに自己共振周波数が高く、高周波数帯域においても高いインピーダンスをもつコア材を使用することで、励磁電流を低減することができる。これにより、注入波形生成器10bに電力を供給する制御電源15a、15bの電力供給量を示す電源容量を低減することが可能である。
【0059】
このように、この実施の形態2では2つの注入波形生成器10a、10bを異なる構成とし、3つのコモンモードトランス11a、11b、11cを異なる構成とし、印加する電圧を低周波数帯域と高周波数帯域とに分離することで、コモンモードトランスのコアの小型化及び制御電源15a、15bの電源容量の低減が可能になる。制御電源15a、15bの電源容量を低減した場合は、例えば増幅器13のゲインGiを増加することで、出力電圧Vpa、Vpb、Vpcを制御電源15a、15bの電源容量を低減しない場合と同じにすることができる。
【0060】
図20に示した第一の注入波形生成器10aの第二例は、
図5に示した注入波形生成器10とは、帯域制限器12が低周波数帯域を通過させ高周波数帯域を減少させる帯域制限器32に変更され、2つの出力端子52a、52bを有する点で異なる。
図21に示した第二の注入波形生成器10bの第二例は、
図5に示した注入波形生成器10とは、帯域制限器12が高周波数帯域を通過させ低周波数帯域を減少させる帯域制限器33に変更されている点で異なる。注入波形生成器10aは、出力端子52aから出力電圧Vpaを出力し、出力端子52bから出力電圧Vpbを出力する。注入波形生成器10bは、出力端子52から出力電圧Vpcを出力する。また、第一の注入波形生成器10aの第二例は、第一の注入波形生成器10aの第一例とは、増幅器13の出力端子と出力端子52a、52bとの間に電流バッファ14が追加されている点で異なる。第二の注入波形生成器10bの第二例は、第二の注入波形生成器10bの第一例とは、増幅器13の出力端子と出力端子52との間に電流バッファ14が追加されている点で異なる。第一の注入波形生成器10aの第二例及び第二の注入波形生成器10bの第二例は、電流バッファ14により第一例の注入波形生成器10a、10bに比べて電流供給量を示す電流容量を増やすことが可能である。
【0061】
図22に示した第一の注入波形生成器10aの第三例は、
図18に示した第一の注入波形生成器10aの第一例とは、入力端子51側に帯域制限器32がなく、増幅器13の出力端子と出力端子52a、52bとの間にそれぞれ帯域制限器32a、32bが配置されている点で異なる。帯域制限器32aの周波数帯域と帯域制限器32bの周波数帯域は同じでもよく、異なっていてもよい。帯域制限器32aの周波数帯域と帯域制限器32bの周波数帯域が異なる場合は、周波数帯域の異なる出力電圧Vpa、Vpbを出力することができる。なお、出力電圧Vpa、Vpbの周波数帯域は、出力電圧Vpcよりも低い周波数帯域である。
図23に示した第二の注入波形生成器10bの第三例は、
図19に示した第二の注入波形生成器10bの第一例とは、入力端子51側に帯域制限器33がなく、増幅器13の出力端子と出力端子52との間に帯域制限器33が配置されている点で異なる。
【0062】
図24に示した第一の注入波形生成器10aの第四例は、第一の注入波形生成器10aの第三例とは、増幅器13の出力端子と帯域制限器32a、32bの入力側との間に電流バッファ14が追加されている点で異なる。
図25に示した第二の注入波形生成器10bの第四例は、第二の注入波形生成器10bの第三例とは、増幅器13の出力端子と帯域制限器33の入力側との間に電流バッファ14が追加されている点で異なる。第一の注入波形生成器10aの第四例及び第二の注入波形生成器10bの第四例は、電流バッファ14により第三例の注入波形生成器10a、10bに比べて電流供給量を示す電流容量を増やすことが可能である。
【0063】
図24に示した第一の注入波形生成器10aの第四例は、増幅器13の出力端子と帯域制限器32a、32bの入力側との間に電流バッファ14が配置されている例であるが、電流バッファ14は帯域制限器32a、32bの出力側と出力端子52a、52bとの間に配置されてもよい。
図26に示した第一の注入波形生成器10aの第五例は、第一の注入波形生成器10aの第三例とは、帯域制限器32aの出力側と出力端子52aとの間に電流バッファ14aが追加され、帯域制限器32bの出力側と出力端子52bとの間に電流バッファ14bが追加されている点で異なる。第一の注入波形生成器10aの第五例は、電流バッファ14a、14bにより第三例の注入波形生成器10aに比べて電流供給量を示す電流容量を増やすことが可能である。
【0064】
同様に、
図25に示した第二の注入波形生成器10bの第四例は、増幅器13の出力端子と帯域制限器33の入力側との間に電流バッファ14が配置されている例であるが、電流バッファ14は帯域制限器33の出力側と出力端子52との間に配置されてもよい。
図27に示した第二の注入波形生成器10bの第五例は、第二の注入波形生成器10bの第三例とは、帯域制限器33の出力側と出力端子52との間に電流バッファ14が追加されている点で異なる。第二の注入波形生成器10bの第五例は、電流バッファ14により第三例の注入波形生成器10bに比べて電流供給量を示す電流容量を増やすことが可能である。
【0065】
図28に示した第一の注入波形生成器10aの第六例は、第一の注入波形生成器10aの第三例とは、入力端子51と増幅器13の入力側との間に帯域制限器32cが配置されている点で異なる。
図29に示した第二の注入波形生成器10bの第六例は、第二の注入波形生成器10bの第三例とは、入力端子51と増幅器13の入力側との間に帯域制限器34が配置されている点で異なる。帯域制限器32cの周波数帯域は、帯域制限器32a、32bと同様に、第二の注入波形生成器10bにおける帯域制限器33、34よりも低い周波数帯域である。帯域制限器34の周波数帯域は、帯域制限器33と同様に、第一の注入波形生成器10aにおける帯域制限器32a、32b、32cよりも高い周波数帯域である。
【0066】
第一の注入波形生成器10aの第六例は、入力側にも帯域制限器32cを備えているので、出力側の帯域制限器32a、32bを小型にできる。このため第一の注入波形生成器10aの第六例は、小型の帯域制限器32a、32b、32cにより、2つの帯域制限器32a、32bを備える第一の注入波形生成器10aの第三例のよりも帯域制限器の合計消費電力を低減することができる。第二の注入波形生成器10bの第六例は、入力側にも帯域制限器34を備えているので、出力側の帯域制限器33を小型にできる。このため第二の注入波形生成器10bの第六例は、小型の帯域制限器33、34により、1つの帯域制限器33を備える第二の注入波形生成器10bの第三例のよりも帯域制限器の合計消費電力を低減することができる。
【0067】
図17では注入波形生成器が2つあり、コモンモードトランスが3つである場合を示したが、それぞれの数を限定するものではない。例えば
図30のように、2つのコモンモードトランス11a、11cに対して2つの注入波形生成器10a、10bから出力電圧Vpa、Vpcを出力するようにしてもよい。
図30に示した実施の形態2の第二のノイズフィルタ50は、
図1に示した実施の形態1のノイズフィルタ50とは、2つの注入波形生成器10a、10bにより2つのコモンモードトランス11a、11cに出力電圧Vpa、Vpcが出力されている点で異なる。
【0068】
また、例えば
図31のように、2つのコモンモードトランス11a、11cに対して1つの注入波形生成器10aから出力電圧Vpa、Vpcを出力するようにしてもよい。この場合の注入波形生成器10aは、出力端子52a、52bの側に帯域制限器32a、32bを備えている、
図22、
図24、
図26、
図28に示した注入波形生成器10aを適用できる。
【0069】
また、注入波形生成器10a、10bは周波数帯域が異なるすなわち周波数特性が異なる場合を示したが、同じゲイン及び周波数特性でも構成可能である。この場合の実施の形態2のノイズフィルタ50は、実質的に実施の形態1のノイズフィルタ50と同じ作用を生じるので、実施の形態1のノイズフィルタ50と同様の効果を奏する。なお、注入波形生成器10a、10bはそれぞれ異なるゲインの増幅器13を備え、異なる電圧値の出力電圧Vpa、Vpcを出力するようにしてもよい。
【0070】
コモンモードトランス11a、11b、11cはコア材、コア28の外径L、内径l、断面積S及び巻数N1、N2が異なる場合を示したが、同じコア材、コア28の外径L、内径l、断面積S及び巻数N1、N2でも構成可能である。
【0071】
なお、実施の形態1及び実施の形態2のノイズフィルタ50は、三相交流電力から直流電力を介して三相交流電力に変換する電力変換器2を搭載した電動機駆動システム60に適用した例を示したが、この例に限定されない。実施の形態1及び実施の形態2のノイズフィルタ50は、半導体素子のスイッチング動作によりコモンモード電圧を発生する電力変換器が搭載されたシステムにも適用できる。例えば、電力変換器2が絶縁型DC-DCコンバータであってもよい。この場合、交流電源1は直流電源になり、誘導電動機3は直流電動機になる。
【0072】
以上のように、実施の形態2のノイズフィルタ50は、低周波数帯域の出力電圧Vpaが入力されるコモンモードトランス11aと高周波数帯域の出力電圧Vpcが入力されるコモンモードトランス11cとを備えるので、高周波数帯域用のコモンモードトランス11cを低周波帯域用のコモンモードトランス11aよりも小型にできる。このため、実施の形態2のノイズフィルタ50は、特許文献1のコモンモードトランスよりも小型にでき、スイッチング周波数が低い場合でも小型のコモンモードトランスを用いてコモンモード電圧を抑制できる。また、実施の形態2のノイズフィルタ50は、高周波数帯域のコモンモードトランス11cよりも大きくなる低周波数帯域のコモンモードトランスを複数設けることで、実施の形態1で説明したように、1個当たりの注入電圧Vsa、Vsbが小さくなるので、さらに各コモンモードトランス11a、11bが小型にでき、特許文献1のコモンモードトランスよりも小型にできる。
【0073】
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0074】
2…電力変換器、7…電圧検出器、9…分圧回路、10…注入波形生成器、10a、10b…注入波形生成器(波形生成器)、11a、11b、11c…コモンモードトランス、12…帯域制限器、13…増幅器、28…コア、32、32a、32b、32c…帯域制限器、33…帯域制限器、34…帯域制限器、50…ノイズフィルタ、52、52a、52b…出力端子、Gi…ゲイン、l…内径、L…外径、Nt…接続トランス数、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6…半導体素子、Rr…巻数比、S…断面積、Vci…コモンモード電圧、Vd…分圧電圧、Vp、Vpa、Vpb、Vpc…出力電圧、Vs、Vsa、Vsb、Vsc…注入電圧、Vst…総注入電圧