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特許7309079設備状態監視装置、異常判定システムおよび設備状態監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】設備状態監視装置、異常判定システムおよび設備状態監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230707BHJP
【FI】
G01M99/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022548315
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034278
(87)【国際公開番号】W WO2022054197
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 慎二
(72)【発明者】
【氏名】石神 伸也
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120145(JP,A)
【文献】特開昭62-8023(JP,A)
【文献】特開2014-163047(JP,A)
【文献】特開平6-221969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正常な状態の設備において計測された振動の平均値、最大値および最小値と、振動以外の動作諸元の計測値と、計測時の前記設備の動作条件とが対応付けて登録されたデータベースから、前記設備において計測された振動以外の動作諸元に対応する振動の平均値、最大値および最小値を抽出するデータ抽出部と、
前記データベースから抽出された振動の平均値、最大値および最小値を用いて、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いを演算する演算部と、
振動の計測値の変化度合いの演算値と前記データベースから抽出された振動の最大値が上限値であり振動の最小値が下限値である変化範囲とを示す表示情報を、表示装置に表示させる表示処理部と、
を備えたことを特徴とする設備状態監視装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記設備において計測された振動の計測値が、前記データベースから抽出された振動の平均値よりも大きい場合に、前記データベースから抽出された振動の最大値から平均値を減算し、減算値で振動の計測値を除算した値の100分率を演算し、
前記設備において計測された振動の計測値が、前記データベースから抽出された振動の平均値よりも小さい場合に、前記データベースから抽出された振動の平均値から最小値を減算し、減算値で振動の計測値を除算した値の100分率を演算し、
前記設備において計測された振動の計測値が、前記データベースから抽出された振動の平均値と等しい場合に、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いを0とすること
を特徴とする請求項1に記載の設備状態監視装置。
【請求項3】
正常な状態の設備において計測された振動の平均値、最大値および最小値と、振動以外の動作諸元の計測値と、計測時の前記設備の動作条件とが対応付けて登録されたデータベースと、
前記データベースから前記設備において計測された振動以外の動作諸元に対応する振動の平均値、最大値および最小値を抽出するデータ抽出部と、
前記データベースから抽出された振動の平均値、最大値および最小値を用いて、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いを演算する演算部と、
振動の計測値の変化度合いの演算値と前記データベースから抽出された振動の最大値が上限値であり振動の最小値が下限値である変化範囲とを示す表示情報を、表示装置に表示させる表示処理部と、
振動の計測値の変化度合いに基づいて前記設備が異常な状態であるか否かを判定部と、
を備えたことを特徴とする異常判定システム。
【請求項4】
データ抽出部が、正常な状態の設備において計測された振動の平均値、最大値および最小値と、振動以外の動作諸元の計測値と、計測時の前記設備の動作条件とが対応付けて登録されたデータベースから、前記設備において計測された振動以外の動作諸元に対応する振動の平均値、最大値および最小値を抽出するステップと、
演算部が、前記データベースから抽出された振動の平均値、最大値および最小値を用いて、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いを演算するステップと、
表示処理部が、振動の計測値の変化度合いの演算値と前記データベースから抽出された振動の最大値が上限値であり振動の最小値が下限値である変化範囲とを示す表示情報を、表示装置に表示させるステップと、
を備えたことを特徴とする設備状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備状態監視装置、異常判定システムおよび設備状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転状態のパラメータが変化する設備の劣化および故障を監視する従来の技術として、例えば、特許文献1に記載される監視診断装置がある。この監視診断装置は、回転機械の回転数および回転機械への負荷条件からなる運転状態パラメータに基づいて区分した複数の運転パターンごとにかつ各振動検出センサの設置位置ごとに異常振動の警報発生レベルを備える。回転機械の運転状態の監視において、監視診断装置は、各振動検出センサの設置位置ごとにかつ運転パターンごとに、各振動検出センサで検出される振動レベルと警報発生レベルとを比較して警報判定し、警報発生レベルに達すると警報を表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-109350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の異なる動作状態が発生する動作条件で設備が動作する場合、設備に発生する振動は、動作状態ごとに異なる変化度合いとなる。特許文献1に記載された監視診断装置は、設備に発生した振動の判定値と、振動センサによる振動の計測値の絶対値との比較結果に基づいて設備の状態を監視する。このため、複数の異なる動作状態が発生する動作条件で設備が動作する場合、特許文献1に記載された監視診断装置は、動作状態ごとに判定値を切り替えながら監視する必要があるという課題があった。
【0005】
本開示は上記課題を解決するものであり、設備の動作状態ごとに判定値を切り替えなくても、設備の状態を監視することができる設備状態監視装置、異常判定システムおよび設備状態監視方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る設備状態監視装置は、正常な状態の設備において計測された振動の平均値、最大値および最小値と、振動以外の動作諸元の計測値と、計測時の設備の動作条件とが対応付けて登録されたデータベースから、設備において計測された振動以外の動作諸元に対応する振動の平均値、最大値および最小値を抽出するデータ抽出部と、データベースから抽出された振動の平均値、最大値および最小値を用いて、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いを演算する演算部と、振動の計測値の変化度合いの演算値とデータベースから抽出された振動の最大値が上限値であり振動の最小値が下限値である変化範囲を示す表示情報を、表示装置に表示させる表示処理部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、設備において計測された振動の平均値、最大値および最小値を用いて、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いを演算し、振動の計測値の変化度合いの演算値と、振動の最大値が上限値であり振動の最小値が下限値である変化範囲とを示す表示情報を、表示装置に表示させる。作業者は、表示情報を参照することにより、動作条件および振動以外の動作諸元に対応付けられた振動の計測値の変化度合いを認識でき、振動の計測値の変化に伴った設備の状態の変化を容易に認識できる。これにより、本開示に係る設備状態監視装置は、設備の動作状態ごとに判定値を切り替えなくても設備の状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る異常判定システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る機器状態監視方法を示すフローチャートである。
図3】AEセンサによって計測された振動の時間波形を示す波形図である。
図4】振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いおよび振動の計測値の変化範囲が設定された表示画像の例を示す図である。
図5】振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いおよび振動の計測値の変化範囲が設定されたメータ画像の例を示す図である。
図6図6Aは、実施の形態1に係る設備状態監視装置の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図であり、図6Bは、実施の形態1に係る設備状態監視装置の機能を実現するソフトウェアを実行するハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る異常判定システム1の構成を示すブロック図である。図1において、異常判定システム1は、設備状態監視装置2を用いて設備3の状態を監視し、設備3の状態を表示装置4に表示し、異常判定部5が、設備3の状態の変化に基づいて、設備3が異常な状態であるか否かを判定する。監視対象の設備3は、例えば、モータ、減速機、切削器、ポンプおよびタービンといった回転機械である。
【0010】
設備3は、設備制御部3aを備えている。設備制御部3aは、予め設定された動作条件に従って設備3の動作を制御する。設備3がクレーンである場合、動作条件は、例えば、荷物の巻上げ速度である。
【0011】
設備3には、AE(アコースティックエミッション)センサ6、電流センサ7および温度センサ8が設けられる。例えば、設備状態監視装置2とは別に設けられた外部装置が、表示装置4および異常判定部5を備える。外部装置は、設備3を点検する作業者が用いるパーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。ただし、表示装置4および異常判定部5は、設備状態監視装置2が備えてもよい。
【0012】
AEセンサ6は、設備3に発生した振動に応じたAE波を検出する。AEとは、固体が変形または破壊するときに、この固体の内部に蓄えられた弾性エネルギーが、弾性波(AE波)として放出される現象である。また、AEセンサ6は、設備3において計測されたAE波の正弦波信号を出力するカンチレバー構造を有する。
【0013】
カンチレバー構造は、Q値が高い圧電材料で構成された発振構造であり、AE波の周波数帯域に共振周波数が設定される。例えば、回転機械の回転で発生した振動に応じた広帯域(数kHzから数MHzの周波数成分)のAE波のうち、共振周波数に対応したAE波の正弦波信号がカンチレバー構造から出力される。
【0014】
電流センサ7は、設備3を動作させるための電流を計測するセンサである。例えば、設備3がクレーンである場合、電流センサ7は、クレーンが備える巻き上げモータに流されるモータ電流を計測する。温度センサ8は、設備3の周辺温度を計測するセンサである。モータ電流および周囲温度は、AEセンサ6によって計測される振動以外の設備3の動作諸元である。動作諸元は、設備3の振動に関与するパラメータであればよく、モータ電流および周囲温度以外に、例えば、設備3に印加される圧力であってもよい。
【0015】
設備状態監視装置2は、データベース21、データ抽出部22、演算部23および表示処理部24を備える。データベース21は、正常な状態の設備3において計測された振動の平均値、最大値および最小値と、振動以外の動作諸元の計測値と、計測時の設備の動作条件が対応付けて登録されたデータベースである。振動以外の動作諸元は、設備3がクレーンである場合に、モータ電流および周囲温度である。
【0016】
導入初期の設備3の状態は正常であるといえる。データベース21には、正常な状態の設備3から、予め設定された計測期間、AEセンサ6によって計測された振動の平均値、最大値および最小値と、AEセンサ6と並行して電流センサ7および温度センサ8により計測された電流および温度が登録される。さらに、これらの計測値に対応付けて、計測時の設備3の動作条件がデータベース21に登録される。なお、データベース21は、設備状態監視装置2とは別に設けられた記憶装置に記憶されたものでもよい。
【0017】
データ抽出部22は、電流センサ7および温度センサ8によって振動以外の設備3の動作諸元である電流および温度が計測されると、計測された電流および温度に対応する振動の平均値、最大値および最小値を、データベース21から抽出する。例えば、設備3から計測された振動の平均値および最小値は、設備3の劣化の判定に用いられ、振動の最大値は、突発的な設備3の故障の判定に用いられる。
【0018】
演算部23は、データベース21から抽出された振動の平均値、最大値および最小値を用いて、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いを演算する。例えば、設備3において計測された振動の計測値がデータベース21から抽出された振動の平均値よりも大きい場合、演算部23は、振動の計測値が平均値を超えた割合の100分率を演算する。また、設備3において計測された振動の計測値がデータベース21から抽出された振動の平均値よりも小さい場合、演算部23は、振動の計測値が平均値を下回った割合の100分率を演算する。さらに、設備3において計測された振動の計測値とデータベース21から抽出された振動の平均値とが等しい場合、演算部23は、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いの割合が0%であると判断する。
【0019】
表示処理部24は、演算部23によって演算された振動の計測値の変化度合いの演算値と、データベース21から抽出された振動の最大値が上限値であり、振動の最小値が下限値である変化範囲と、を示す表示情報を生成する。表示情報は、表示装置4に出力されて表示される。例えば、表示処理部24は、上限値を一方の端部に設定し、下限値を他方の端部に設定して上記変化範囲を示した線状の画像を生成し、振動の計測値の変化度合いを示す帯状の画像を生成して、線状の画像に帯状の画像を重畳させた表示情報を生成する。
【0020】
実施の形態1に係る設備状態監視方法の詳細は、以下の通りである。
図2は、実施の形態1に係る機器状態監視方法を示すフローチャートであって、設備3の状態を監視する一連の処理を示している。データ抽出部22が、データベース21からデータを抽出する(ステップST1)。例えば、データベース21は、正常な状態の設備3において計測された振動の平均値、最大値および最小値と、振動以外の動作諸元(例えば、モータ電流および周囲温度)の計測値と、計測時の設備3の動作条件とが対応付けて登録されている。データ抽出部22は、電流センサ7および温度センサ8によって設備3から計測された振動以外の動作諸元である電流および周囲温度をキーとしてデータベース21を検索し、これらの動作諸元に対応する振動の平均値、最大値および最小値をデータベース21から抽出する。
【0021】
続いて、演算部23は、データベース21から抽出された振動の平均値、最大値および最小値を用いて、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いを演算する(ステップST2)。例えば、演算部23は、設備3において計測された振動の計測値Vが、データベース21から抽出された振動の平均値Vaveよりも大きい場合には、下記式(1)に従って、データベース21から抽出された振動の最大値Vmaxから平均値Vaveを減算し、減算値(Vmax-Vave)で振動の計測値Vを除算した値の100分率を演算する。演算部23は、設備3において計測された振動の計測値Vが、データベース21から抽出された振動の平均値Vaveよりも小さい場合は、下記式(2)に従って、振動の平均値Vaveから最小値Vminを減算し、減算値(Vave-Vmin)で振動の計測値Vを除算した値の100分率を演算する。演算部23は、設備3において計測された振動の計測値Vが、データベース21から抽出された振動の平均値Vaveと等しい場合には、下記式(3)に示すように、振動の平均値Vaveに対する振動の計測値Vの変化度合いを0%とする。
%演算値={V/(Vmax-Vave)}×100 (V>Vave) (1)
%演算値={V/(Vave-Vmin)}×100 (V<Vave) (2)
%演算値=0 (V=Vave) (3)
【0022】
表示処理部24は、振動の計測値の変化度合いの演算値と、データベース21から抽出された振動の最大値が上限値であり振動の最小値が下限値である変化範囲と、を示す表示情報を、表示装置4に表示させる(ステップST3)。図3は、AEセンサ6により計測された振動の時間波形を示す波形図であり、複数の動作条件A~Dのそれぞれに従って、設備3であるクレーンが動作した際に、AEセンサ6によってクレーンから計測された振動の各波形を示している。動作条件Aは、クレーンを用いて荷物を高速で巻き上げる動作条件であり、動作条件Bは、クレーンを用いて荷物を高速で巻き下げる動作条件である。また、動作条件Cは、クレーンを用いて荷物を低速で巻き上げる動作条件であり、動作条件Dは、クレーンを用いて荷物を低速で巻き下げる動作条件である。
【0023】
クレーンに負荷が掛かっていない状態から荷物の巻き上げを開始すると、巻上げ機構のバックラッシュによってクレーンに大きな振動が発生する。このため、動作条件Aおよび動作条件Cにおいて、動作初期に大きな振動が発生している。この傾向は、巻上げ速度が高くなるにつれて顕著になるので、動作条件Aの初期に発生する振動のレベルが動作条件Cよりも大きくなっている。
【0024】
全ての動作条件A~Dにおいて、クレーンが安定して巻き上げまたは巻き下げを行っている期間である期間A1、B1、C1およびD1においては、クレーンに発生する振動のレベルの変動が少なく安定している。また、全ての動作条件A~Dにおいて、クレーンが目的の位置まで荷物の巻き上げまたは巻き下げが完了して動作が停止されると、反動によって期間A1~D1以降の期間に大きな振動が発生する。
【0025】
前述したように、同じ動作条件であっても、クレーンには様々な動作状態があり、動作状態ごとにクレーンに発生する振動の変化度合いも異なる。このような振動レベルの変化は、正常状態のクレーンにおいても発生し得る通常の変化である。このため、従来の技術では、同じ動作条件であってもクレーンの動作状態ごとに異常検知用の判定値を用意しなければ、正確な異常判定ができないという課題があった。
【0026】
これに対して、設備状態監視装置2が提供する表示情報は、動作条件および振動以外の動作諸元(例えば、モータ電流および周囲温度)に対応付けられた振動の計測値の変化度合いを示している。このため、設備3の点検作業者は、表示情報を参照することにより、設備3の動作状態ごとの振動の計測値の変化度合いを容易に認識することができる。このように、設備状態監視装置2は、設備3の動作状態ごとに判定値を切り替えなくても、設備3の状態を監視することができる。
【0027】
図4は、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いおよび振動の計測値の変化範囲が設定された表示画像の例を示す図である。図4(a)~(d)は、動作条件A~Dに従って動作するクレーンから期間A1~D1に計測されたモータ電流(A)とAEセンサ出力(振動レベルを示す出力信号の振幅)(mV)との対応関係を示している。図4(a)~(d)に示す対応関係は、表示処理部24によって表示情報として表示装置4に表示される。
【0028】
図4(a)~(d)において、直線a1~a4は、動作条件A~Dに従って動作するクレーンから期間A1~D1に計測された、モータ電流に対応する振動の平均値を示している。破線の直線b1~b4は、モータ電流に対応する振動の最大値を示しており、破線の直線c1~c4は、モータ電流に対応する振動の最小値を示している。符号W1~W4で示す範囲は、振動の最大値が上限値であり振動の最小値が下限値である変化範囲である。図4(a)~(d)に示す対応関係の表示画面には、表示処理部24によって、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いの演算値が描き入れられる。
【0029】
例えば、図4(a)に示す動作条件Aにおいて、設備3の点検作業者は、振動の計測値の変化度合いの演算値と変化範囲W1を参照することにより、振動の計測値の変化度合いに対応する設備3の状態を容易に認識可能である。例えば、異常判定部5は、振動の計測値の変化度合いの演算値が変化範囲W1内であるか否かに基づいて、設備3の状態が異常であるか否かを判定する。例えば、あるモータ電流値に対応する振動の計測値の変化度合いの演算値が、直線b1で示す振動の最大値を超えるレベルであった場合、異常判定部5によって設備3に突発的な異常が発生したと判定される。これは、動作条件B~Dにおいても同様である。
【0030】
図5は、振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いおよび振動の計測値の変化範囲が設定されたメータ画像の例を示す図である。表示処理部24は、メータ画像を、表示装置4に表示させてもよい。図5に示すメータ画像において、例えば、データベース21から抽出された振動の平均値が0%の目盛りに設定され、振動の最大値が100%の目盛りに設定され、振動の最小値が-100%の目盛りに設定されている。
【0031】
振動の平均値に対する振動の計測値の変化度合いの演算値(%)は、指針画像によって表示される。例えば、振動の平均値に対して振動の計測値が25%大きい場合、指針画像は、+25%の目盛りを指し、振動の平均値に対して振動の計測値が25%小さければ、指針画像は、-25%の目盛りを指す。設備3が経年劣化すると、指針画像は、0%からはずれた値の目盛りを指すことが多くなるので、点検作業者は、複数の動作状態が発生する動作条件Aでクレーンが動作していても、指針画像が示す目盛りの変化を参照することにより、クレーンの経年劣化を認識することができる。
【0032】
100%の目盛りは、設備3が正常状態であると判定される振動の最大値に対応しており、-100%の目盛りは、設備3が正常状態であると判定される振動の最小値に対応している。このため、100%から150%の目盛りの範囲および-100%から-150%の目盛りの範囲は、設備3が異常状態であると判定される範囲である。点検作業者は、複数の動作状態が発生する動作条件Aでクレーンが動作していても、メータ画像における指針画像の動きを参照することにより、クレーンの経年劣化および異常の発生を認識することができる。
【0033】
次に、設備状態監視装置2の機能を実現するハードウェア構成は、以下の通りである。
設備状態監視装置2が備える、データ抽出部22、演算部23および表示処理部24の機能は、処理回路によって実現される。すなわち、設備状態監視装置2は、図2に示したステップST1からステップST3の処理を実行する処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0034】
図6Aは、設備状態監視装置2の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。図6Bは、設備状態監視装置2の機能を実現するソフトウェアを実行するハードウェア構成を示すブロック図である。図6Aおよび図6Bにおいて、入力インタフェース100は、AEセンサ6、電流センサ7および温度センサ8から設備状態監視装置2へ出力される計測信号を中継する。出力インタフェース101は、設備状態監視装置2から表示装置4または異常判定部5へ出力されるデータを中継する。記憶装置102には、データベース21が記憶されている。
【0035】
処理回路が、図6Aに示す専用のハードウェアの処理回路103である場合、処理回路103は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはこれらを組み合わせたものが該当する。設備状態監視装置2が備える、データ抽出部22、演算部23および表示処理部24の機能を、別々の処理回路で実現してもよいし、これらの機能をまとめて1つの処理回路で実現してもよい。
【0036】
処理回路が図6Bに示すプロセッサ104である場合、設備状態監視装置2が備える、データ抽出部22、演算部23および表示処理部24の機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはソフトウェアとファームウェアの組み合わせによって実現される。なお、ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述されてメモリ105に記憶される。
【0037】
プロセッサ104は、メモリ105に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、設備状態監視装置2が備える、データ抽出部22、演算部23および表示処理部24の機能を実現する。例えば、設備状態監視装置2は、プロセッサ104によって実行されるときに、図2に示したフローチャートにおけるステップST1からステップST3の処理が結果的に実行されるプログラムを記憶するためのメモリ105を備える。これらのプログラムは、データ抽出部22、演算部23および表示処理部24の手順または方法をコンピュータに実行させる。メモリ105は、コンピュータを、データ抽出部22、演算部23および表示処理部24として機能させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
【0038】
メモリ105は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically-EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDなどが該当する。
【0039】
設備状態監視装置2が備える、データ抽出部22、演算部23および表示処理部24の機能の一部を専用ハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、データ抽出部22および演算部23は、専用のハードウェアである処理回路103によって機能が実現され、表示処理部24は、プロセッサ104がメモリ105に記憶されたプログラムを読み出し実行することにより機能が実現される。このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせにより、上記機能を実現することができる。
【0040】
以上のように、実施の形態1に係る設備状態監視装置2は、設備3において計測された振動の平均値、最大値および最小値を用いて、動作条件および振動以外の動作諸元に対応する振動の計測値の変化度合いを演算し、動作条件および振動以外の動作諸元に対応する振動の計測値の変化度合いの演算値と、振動の平均値が中央値、最大値が上限値、最小値が下限値である変化範囲とを示す表示情報を表示装置4に表示させる。設備3の点検作業者は、表示情報を参照することにより、動作条件および振動以外の動作諸元に対応付けられた振動の計測値の変化度合いを認識でき、振動の計測値の変化に伴った設備の状態の変化を容易に認識できる。これにより、設備状態監視装置2においては、設備3の動作状態ごとに判定値を切り替えなくても、設備3の状態を監視することができる。
【0041】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示に係る設備状態監視装置は、例えば、回転機械の状態の監視に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 異常判定システム、2 設備状態監視装置、3 設備、3a 設備制御部、4 表示装置、5 異常判定部、6 AEセンサ、7 電流センサ、8 温度センサ、21 データベース、22 データ抽出部、23 演算部、24 表示処理部、100 入力インタフェース、101 出力インタフェース、102 記憶装置、103 処理回路、104 プロセッサ、105 メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6