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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/04 20060101AFI20230710BHJP
   F01B 31/14 20060101ALI20230710BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20230710BHJP
   F02D 15/02 20060101ALI20230710BHJP
   F16J 1/02 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
F02B75/04
F01B31/14
F02B75/32 B
F02D15/02 C
F16J1/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017207964
(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公開番号】P2019078250
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-06-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】523216148
【氏名又は名称】株式会社三井E&S DU
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 孝行
(72)【発明者】
【氏名】山田 敬之
(72)【発明者】
【氏名】中島 勇人
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】鈴木 充
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/108178(WO,A1)
【文献】実開昭63-164535(JP,U)
【文献】特開2016-109123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B75/04
F02B75/32
F02D15/02-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧された作動流体が供給されることで、ピストンと接続されるピストンロッドが圧縮比を高める方向に移動される流体室を有する可変圧縮装置を備える2ストロークエンジンであって、
前記ピストンの位置情報を含む信号を出力する検出手段と、
前記信号に基づいて前記ピストンの位置を取得する位置取得手段と
を有し、
前記検出手段は、前記ピストンに設けられた被検出部と、前記2ストロークエンジンのシリンダライナに設けられた検出部を有し、
前記検出部は、圧縮比が変化しても前記ピストンの径方向で前記被検出部と対向し、前記被検出部の前記ピストンの摺動方向において位置をずらして設けた互いに等しい複数の凹凸の表面との距離の変化により信号を出力することを特徴とするエンジンシステム。
【請求項2】
昇圧された作動流体が供給されることで、ピストンと接続されるピストンロッドが圧縮比を高める方向に移動される流体室を有する可変圧縮装置を備える2ストロークエンジンであって、
前記ピストンの位置情報を含む信号を出力する検出手段と、
前記信号に基づいて前記ピストンの位置を取得する位置取得手段とを有し、
前記検出手段は、前記ピストンに設けられた被検出部と、前記2ストロークエンジンのシリンダライナに設けられた検出部を有し、
前記検出部は、圧縮比が変化しても前記ピストンの径方向で前記被検出部と対向し、前記被検出部の前記ピストンの摺動方向における凹凸の表面との距離の変化により信号を出力し、
前記被検出部は、前記ピストンの摺動面において、周方向かつ前記ピストンの中心を挟んでそれぞれ互いに対向する位置に複数設けられることを特徴とするエンジンシステム。
【請求項3】
前記検出部は、前記ピストンの摺動方向において、前記シリンダライナの掃気ポートよりも燃焼室から離れた位置に設けられることを特徴とする請求項1または2記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、クロスヘッドを有する大型往復ピストン燃焼エンジンが開示されている。特許文献1の大型往復ピストン燃焼エンジンは、重油などの液体燃料と天然ガス等の気体燃料との両方での稼働が可能とされるデュアルフュエルエンジンである。特許文献1の大型往復ピストン燃焼エンジンは、液体燃料による稼働に適する圧縮比と気体燃料による稼働に適する圧縮比との双方に対応するため、油圧によりピストンロッドを移動させることで圧縮比を変更させる調整機構をクロスヘッド部分に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-20375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような圧縮比を変更する圧縮調整装置を有するエンジンシステムは、ピストンロッドの移動方向における位置を変更することにより、ピストンの下死点及び上死点位置を変更し、圧縮比を調整している。このような圧縮比の調整は、操縦者の操作等に基づいてエンジンシステムの制御装置が行っている。しかしながら、制御装置は、ピストンロッドの位置を把握しておらず、正確に圧縮比を調整することが難しい。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、可変圧縮装置を有するエンジンシステムにおいて、正確に圧縮比を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、昇圧された作動流体が供給されることで、ピストンと接続されるピストンロッドが圧縮比を高める方向に移動される流体室を有する可変圧縮装置を備える2ストロークエンジンであって、上記ピストンの位置情報を含む信号を出力する検出手段と、上記信号に基づいて上記ピストンの位置を取得する位置取得手段とを有する、という構成を採用する。
【0007】
第2の手段として、上記第1の手段において、上記検出手段は、少なくとも一部がシリンダライナに設けられ、上記ピストンの摺動方向における位置を検出する、という構成を採用する。
【0008】
第3の手段として、上記第2の手段において、上記検出手段は、上記ピストンに設けられた被検出部と、上記シリンダライナに設けられた検出部とを有する、という構成を採用する。
【0009】
第4の手段として、上記第3の手段において、上記被検出部は、上記ピストンの摺動面において、周方向に複数設けられる、という構成を採用する。
【0010】
第5の手段として、上記第3または4の手段において、上記検出部は、上記ピストンの摺動方向において、上記シリンダライナの掃気ポートよりも燃焼室から離れた位置に設けられる、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検出手段により、ピストンの移動方向における位置情報を含む信号を出力し、制御手段により、ピストンの位置情報を取得すると共に、位置情報に基づいて、昇圧機構を制御する。これにより、制御手段は、ピストンの移動方向における正確な位置を取得し、目標とするピストンの位置と合っているかを常に監視することができる。さらに、制御手段は、ピストンの位置を正確に把握することにより、より安定的に可変圧縮装置を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムの断面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムの一部を示す模式断面図である。
図3】本発明の一実施形態におけるエンジンシステムの一部を示す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明におけるエンジンシステム100の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
[第1実施形態]
本実施形態のエンジンシステム100は、例えば大型タンカなど船舶に搭載され、図1に示すように、エンジン1と、過給機200と、制御部300(位置取得手段)と、位置検出部400(検出手段)とを有している。なお、本実施形態においては、過給機200を補機として捉え、エンジン1(主機)と別体として説明する。但し、過給機200をエンジン1の一部として構成することも可能である。
【0015】
エンジン1は、多気筒のユニフロー掃気ディーゼルエンジンとされ、天然ガス等の気体燃料を重油などの液体燃料と共に燃焼させるガス運転モードと、重油などの液体燃料を燃焼させるディーゼル運転モードとを有している。なお、ガス運転モードでは、気体燃料のみを燃焼させても良い。このようなエンジン1は、架構2と、シリンダ部3と、ピストン4と、排気弁ユニット5と、ピストンロッド6と、クロスヘッド7と、油圧部8(昇圧機構)と、連接棒9と、クランク角センサ10と、クランク軸11と、掃気溜12と、排気溜13と、空気冷却器14とを有している。また、シリンダ部3、ピストン4、排気弁ユニット5及びピストンロッド6により、気筒が構成されている。
【0016】
架構2は、エンジン1の全体を支持する強度部材であり、クロスヘッド7、油圧部8及び連接棒9が収容されている。また、架構2は、内部において、クロスヘッド7の後述するクロスヘッドピン7aが往復動可能とされている。
【0017】
シリンダ部3は、円筒状のシリンダライナ3aと、シリンダヘッド3bとシリンダジャケット3cとを有している。シリンダライナ3aは、円筒状の部材であり、ピストン4との摺動面が内側に形成されている。このようなシリンダライナ3aの内周面とピストン4とにより囲まれた空間が燃焼室R1とされている。また、シリンダライナ3aの下部には、複数の掃気ポートSが形成されている。掃気ポートSは、シリンダライナ3aの周面に沿って配列された開口であり、シリンダジャケット3c内部の掃気室R2とシリンダライナ3aの内側とを連通している。シリンダヘッド3bは、シリンダライナ3aの上端部に設けられた蓋部材である。シリンダヘッド3bは、平面視において中央部に排気ポートHが形成され、排気溜13と接続されている。また、シリンダヘッド3bには、不図示の燃料噴射弁が設けられている。さらに、シリンダヘッド3bの燃料噴射弁の近傍には、不図示の筒内圧センサが設けられている。筒内圧センサは、燃焼室R1内の圧力を検出し、制御部300へと送信している。シリンダジャケット3cは、架構2とシリンダライナ3aとの間に設けられ、シリンダライナ3aの下端部が挿入された円筒状の部材であり、内部に掃気室R2が形成されている。また、シリンダジャケット3cの掃気室R2は、掃気溜12と接続されている。
【0018】
ピストン4は、略円柱状とされ、後述するピストンロッド6と接続されてシリンダライナ3aの内側に配置されている。また、ピストン4の外周面には不図示のピストンリングが設けられ、ピストンリングにより、ピストン4とシリンダライナ3aとの間隙を封止している。ピストン4は、燃焼室R1における圧力の変動により、ピストンロッド6を伴ってシリンダライナ3a内を摺動する。
【0019】
排気弁ユニット5は、排気弁5aと、排気弁筐5bと、排気弁駆動部5cとを有している。排気弁5aは、シリンダヘッド3bの内側に設けられ、排気弁駆動部5cにより、シリンダ部3内の排気ポートHを閉塞する。排気弁筐5bは、排気弁5aの端部を収容する円筒形の筐体である。排気弁駆動部5cは、排気弁5aをピストン4のストローク方向に沿う方向に移動させるアクチュエータである。
【0020】
ピストンロッド6は、一端がピストン4と接続され、他端がクロスヘッドピン7aと連結された長尺状部材である。ピストンロッド6の端部は、クロスヘッドピン7aに挿入され、連接棒9が回転可能となるように連結されている。また、ピストンロッド6は、クロスヘッドピン7a側端部の一部の径が太く形成された太径部を有している。
【0021】
クロスヘッド7は、図2に示すように、クロスヘッドピン7aと、ガイドシュー7bと、蓋部材7cとを有している。クロスヘッドピン7aは、ピストンロッド6と連接棒9とを移動可能に連結する円柱状部材であり、ピストンロッド6の端部が挿入される挿入空間に、作動油(作動流体)の供給及び排出が行われる油圧室R3(流体室)が形成される。クロスヘッドピン7aには、中心よりも下側に、クロスヘッドピン7aの軸方向に沿って貫通する出口孔Oが形成されている。出口孔Oは、ピストンロッド6の不図示の冷却流路を通過した冷却油が排出される開口である。内部また、クロスヘッドピン7aには、油圧室R3と後述するプランジャポンプ8cとを接続する供給流路R4と、油圧室R3と後述するリリーフ弁8fとを接続するリリーフ流路R5とが設けられている。
【0022】
ガイドシュー7bは、クロスヘッドピン7aを回動可能に支持する部材であり、クロスヘッドピン7aに伴ってピストン4のストローク方向に沿って不図示のガイドレール上を移動する。ガイドシュー7bがガイドレールに沿って移動することにより、クロスヘッドピン7aは、回転運動と、ピストン4のストローク方向に沿う直線方向以外への移動が規制される。蓋部材7cは、クロスヘッドピン7aの上部に固定され、ピストンロッド6の端部が挿入される環状部材である。このようなクロスヘッド7は、ピストン4の直線運動を連接棒9へと伝達している。
【0023】
図3に示すように、油圧部8は、供給ポンプ8aと、揺動管8bと、プランジャポンプ8cと、プランジャポンプ8cが有する第1逆止弁8d及び第2逆止弁8eと、リリーフ弁8fとを有している。また、ピストンロッド6、クロスヘッド7、油圧部8、制御部300及び位置検出部400は、本発明における可変圧縮装置として機能する。
【0024】
供給ポンプ8aは、制御部300からの指示に基づいて、不図示の作動油タンクから供給される作動油を昇圧してプランジャポンプ8cへと供給するポンプである。供給ポンプ8aは、船舶のバッテリの電力により駆動され、燃焼室R1に液体燃料が供給されるよりも前に稼働することが可能である。揺動管8bは、供給ポンプ8aと各気筒のプランジャポンプ8cとを接続する配管であり、クロスヘッドピン7aに伴って移動するプランジャポンプ8cと、固定された供給ポンプ8aとの間において、揺動可能とされている。
【0025】
プランジャポンプ8cは、クロスヘッドピン7aに固定されており、棒状のプランジャ8c1と、プランジャ8c1を摺動可能に収容する筒状のシリンダ8c2と、プランジャ駆動部8c3とを有している。プランジャポンプ8cは、プランジャ8c1が不図示の駆動部と接続されることで、シリンダ8c2内を摺動し、作動油を昇圧して油圧室R3へと供給する。また、シリンダ8c2には、端部に設けられた作動油の吐出側の開口に第1逆止弁8dが設けられ、側周面に設けられた吸入側の開口に第2逆止弁8eが設けられている。プランジャ駆動部8c3は、プランジャ8c1に接続され、制御部300からの指示に基づいてプランジャ8c1を往復動させる。
【0026】
第1逆止弁8dは、シリンダ8c2の内側に向けて弁体が付勢されることで閉弁する構造とされ、油圧室R3に供給された作動油がシリンダ8c2へと逆流することを防止している。また、第1逆止弁8dは、シリンダ8c2内の作動油の圧力が第1逆止弁8dの付勢部材の付勢力(開弁圧力)以上となると、弁体が作動油に押されることにより開弁する。第2逆止弁8eは、シリンダ8c2の外側に向けて付勢されており、シリンダ8c2に供給された作動油が供給ポンプ8aへと逆流することを防止している。また、第2逆止弁8eは、供給ポンプ8aから供給される作動油の圧力が第2逆止弁8eの付勢部材の付勢力(開弁圧力)以上となると、弁体が作動油に押されることにより開弁する。なお、第1逆止弁8dは、開弁圧力が第2逆止弁8eの開弁圧力よりも高く、予め設定された圧縮比で運転される定常運転時においては、供給ポンプ8aから供給される作動油の圧力により開弁することはない。
【0027】
リリーフ弁8fは、クロスヘッドピン7aに設けられ、本体部8f1と、リリーフ弁駆動部8f2とを有している。本体部8f1は、油圧室R3及び不図示の作動油タンクに接続される弁である。リリーフ弁駆動部8f2は、本体部8f1の弁体に接続され、制御部300からの指示に基づいて本体部8f1を開閉弁する。リリーフ弁8fがリリーフ弁駆動部8f2により開弁することで、油圧室R3に貯留された作動油が作動油タンクに戻される。
【0028】
図1に示すように、連接棒9は、クロスヘッドピン7aと連結されると共にクランク軸11と連結されている長尺状部材である。連接棒9は、クロスヘッドピン7aに伝えられたピストン4の直線運動を回転運動に変換している。クランク角センサ10は、クランク軸11のクランク角を計測するためのセンサであり、制御部300へとクランク角を算出するためのクランクパルス信号を送信している。
【0029】
クランク軸11は、気筒に設けられる連接棒9に接続された長尺状の部材であり、それぞれの連接棒9により伝えられる回転運動により回転されることで、例えばスクリュー等に動力を伝える。掃気溜12は、シリンダジャケット3cと過給機200との間に設けられ、過給機200により加圧された空気が流入する。また、掃気溜12には、空気冷却器14が内部に設けられている。排気溜13は、各気筒の排気ポートHと接続されると共に過給機200と接続される管状部材である。排気ポートHより排出されるガスは、排気溜13に一時的に貯留されることにより、脈動を抑制した状態で過給機200へと供給される。空気冷却器14は、掃気溜12内部の空気を冷却する装置である。
【0030】
過給機200は、排気ポートHより排出されたガスにより回転されるタービンにより、不図示の吸気ポートから吸入した空気を加圧して燃焼室R1に供給する装置である。
【0031】
制御部300は、船舶の操縦者による操作等に基づいて、燃料の供給量等を制御するコンピュータである。制御部300は、位置検出部400と有線により接続されている。また、制御部300は、油圧部8を制御することにより、燃焼室R1における圧縮比を変更する。具体的には、制御部300は、位置検出部400からの信号に基づいてピストンロッド6の位置情報を取得し、プランジャポンプ8c、供給ポンプ8a及びリリーフ弁8fを制御し、油圧室R3における作動油の量を調整することにより、ピストンロッド6の位置を変更させて圧縮比を変更する。
【0032】
位置検出部400は、図1及び図3に示すように、被検出部410と、検出部420とを有している。被検出部410は、2つの凹凸部411、412により構成されている。凹凸部411、412は、ピストン4の摺動面下端側に設けられ、それぞれ、ピストン4の摺動方向に向けて等間隔で形成された複数の凹凸により構成されている。また、凹凸部411、412は、ピストンの周方向において、隣接して設けられている。さらに、凹凸部411、412は、互いに等しく凹凸が配置されると共に、ピストン4の摺動方向において、それぞれの凹凸の位置が各凹部の幅の半分量だけずれるように設けられている。それぞれの凹凸の位置のずれ量は、各凹部の幅の半分量に限らず、検出部の分解能に応じて任意に設定してもよい。なお、被検出部410は、ピストン4に設けられるピストンリング(不図示)よりも下方(ピストンロッド6側)に設けられている。これにより、被検出部410は、ピストン4の摺動面における潤滑油の影響を受けにくい。
【0033】
検出部420は、掃気ポートSよりも燃焼室R1から離れた位置であるシリンダライナ3aの内周面下端側であって、シリンダライナ壁面と同じか若しくは外側に設置される。本実施形態では、シリンダライナ3aの内周面下端側に埋設されて固定されている。検出部420は、2つの被検出部410の移動に伴う被検出部410の表面との距離の変化により電気信号(ピストンロッド6の位置情報を含む信号)を発生させるセンサである。
【0034】
このようなエンジンシステム100は、不図示の燃料噴射弁より燃焼室R1に噴射された燃料を着火、爆発させることによりピストン4をシリンダライナ3a内で摺動させ、クランク軸11を回転させる装置である。詳述すると、燃焼室R1に供給された燃料は、掃気ポートSより流入した空気と混合された後、ピストン4が上死点方向に向けて移動することにより圧縮されて温度が上昇し、自然着火する。また、液体燃料の場合には、燃焼室R1において温度上昇することにより気化し、自然着火する。
【0035】
そして、燃焼室R1内の燃料が自然着火することで急激に膨張し、ピストン4には下死点方向に向けた圧力がかかる。これにより、ピストン4が下死点方向に移動し、ピストン4に伴ってピストンロッド6が移動され、連接棒9を介してクランク軸11が回転される。さらに、ピストン4が下死点に移動されることで、掃気ポートSより燃焼室R1へと加圧空気が流入する。排気弁ユニット5が駆動することで排気ポートHが開き、燃焼室R1内の排気ガスが、加圧空気により排気溜13へと押し出される。
【0036】
圧縮比を大きくする場合には、制御部300により供給ポンプ8aが駆動され、プランジャポンプ8cに作動油が供給される。そして、制御部300は、プランジャポンプ8cを駆動して作動油を、ピストンロッド6を持ち上げることが可能な圧力となるまで加圧し、油圧室R3へと作動油を供給する。油圧室R3の作動油の圧力により、ピストンロッド6の端部が持ち上がり、これに伴ってピストン4の上死点位置が上方(排気ポートH側)に移動される。
【0037】
圧縮比を小さくする場合には、制御部300によりリリーフ弁8fが駆動され、油圧室R3と不図示の作動油タンクとが連通状態となる。そして、ピストンロッド6の荷重が油圧室R3の作動油にかかり、油圧室R3内の作動油がリリーフ弁8fを介して作動油タンクへと押し出される。これにより、油圧室R3の作動油が減少し、ピストンロッド6が下方(クランク軸11側)に移動され、これに伴ってピストン4の上死点位置が下方に移動される。
【0038】
続いて、本実施形態におけるピストンロッド6の位置調整方法について説明する。
また、ピストンロッド6の移動に伴ってピストン4が移動されると、被検出部410の凹凸が相対的に移動されることにより、検出部420が検出する被検出部410との距離が変化する。検出部420は、このような凹凸の変化、すなわち被検出部410の表面との相対的な距離の変化を電気信号として制御部300に出力する。なお、2つの被検出部410が各凹部の幅の半分量だけずれるように配置され、それぞれの被検出部410の磁界を検出しているため、検出部420による位置検出の分解能は、それぞれの凹凸のピストン4摺動方向における幅の半分の長さとなる。
【0039】
制御部300は、検出部420の電気信号を受信し、当該電気信号に基づいて、ピストン4の位置を算出(取得)する。そして、制御部300は、ピストン4の位置に基づいて、油圧部8の制御を行う。
【0040】
このような本実施形態におけるエンジンシステム100によれば、位置検出部400により、ピストン4の移動方向における位置情報を含む信号を出力し、制御部300により、ピストン4の位置情報を取得する。これにより、制御部300は、ピストン4の移動方向における位置が、目標とするピストン4の位置と合っているかを常に監視し、ピストン4の移動方向における位置を正確に調整することができる。さらに、制御部300は、ピストン4の位置を正確に把握することにより、より安定的に可変圧縮装置を制御することができる。
【0041】
さらに、本実施形態におけるエンジンシステム100においては、架構2に対して相対移動することのないシリンダライナ3aに検出部420を埋設している。これにより、検出部420と制御部300とを有線接続することができる。したがって、テレメータ等の無線送信装置を設ける必要がなく、設置が容易となる。
【0042】
また、本実施形態におけるエンジンシステム100においては、ピストン4の摺動方向において半波長分ずらして配置された2つの被検出部410が設けられている。被検出部410を複数設けることにより、検出部420は、確実に被検出部410を検出することができる。また、凹凸のピストン4の摺動方向における幅の半分の長さを最低分解能として、ピストン4の位置を検出することができるため、より高精度にピストン4の位置を検出することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、検出部420が掃気ポートSよりも燃焼室R1から離れた位置に設けられている。これにより、検出部420が燃焼室R1における熱及び圧力の影響を小さくすることができる。
【0044】
[第2実施形態]
上記第1実施形態の変形例を第2実施形態として説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成の部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態におけるエンジンシステム100は、位置検出部400を有していない。このような構成において、制御部300(位置取得手段)は、筒内圧センサ(検出手段)からの信号から算出される燃焼室R1内圧力に基づいて、実際の圧縮比を算出し、ピストン4の位置を取得する。
【0045】
ピストン4が下死点に位置するときの筒内圧をP、ピストン4が上死点に位置するときの筒内圧をPとしたとき、圧縮比εは、下記式1で示される。なおκは、ポリトロープ指数を示す。
【0046】
【数1】
【0047】
制御部300は、筒内圧センサから入力される信号から上記式1に基づいてシリンダ部3における圧縮比を算出する。さらに、制御部300は、算出された圧縮比からピストン4の位置を算出する。
【0048】
このような本実施形態におけるエンジンシステム100によれば、筒内圧に基づいて、ピストン4の位置を取得する。これにより、制御部300は、ピストン4の移動方向における位置が、目標とするピストン4の位置と合っているかを常に監視し、ピストン4の移動方向における位置を正確に調整することができる。さらに、制御部300は、ピストン4の位置を正確に把握することにより、より安定的に可変圧縮装置を制御することができる。
【0049】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0050】
上記実施形態においては、位置検出部400は、凹凸を検出することでピストン4の位置を取得したが、本発明はこれに限定されない。例えば、位置検出部400は、磁性部材がピストン4摺動方向に向けて等間隔で配置された被検出部410と、磁界の変化を検出する検出部420とを有するものとしてもよい。
【0051】
また、被検出部410の設置個所、位置、数量は、上記実施形態に限定されるものではない。被検出部410は、3箇所以上に設けられるものとしても、1箇所のみに設けられるものとしてもよい。さらに、検出部420が複数設けられ、複数の被検出部410がピストン4の中心を挟んでそれぞれ互いに対向する位置に設けられるものとしてもよい。この場合、被検出部410及び検出部420による位置検出の分解能を上げることにより、ピストン4の摺動方向に対する傾きを検出することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 エンジン
2 架構
3 シリンダ部
3a シリンダライナ
3b シリンダヘッド
3c シリンダジャケット
4 ピストン
5 排気弁ユニット
5a 排気弁
5b 排気弁筐
5c 排気弁駆動部
6 ピストンロッド
7 クロスヘッド
7a クロスヘッドピン
7b ガイドシュー
7c 蓋部材
8 油圧部
8a 供給ポンプ
8b 揺動管
8c プランジャポンプ
8c1 プランジャ
8c2 シリンダ
8c3 プランジャ駆動部
8d 第1逆止弁
8e 第2逆止弁
8f リリーフ弁
8f1 本体部
8f2 リリーフ弁駆動部
9 連接棒
10 クランク角センサ
11 クランク軸
12 掃気溜
13 排気溜
14 空気冷却器
100 エンジンシステム
200 過給機
300 制御部
400 位置検出部
410 被検出部
411 凹凸部
412 凹凸部
420 検出部
H 排気ポート
O 出口孔
R1 燃焼室
R2 掃気室
R3 油圧室
R4 供給流路
R5 リリーフ流路
R6 補助流路
S 掃気ポート
図1
図2
図3