(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】圧力信号処理
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230710BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20230710BHJP
G01L 1/16 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/044 126
G01L1/16 G
(21)【出願番号】P 2020538115
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 GB2019050067
(87)【国際公開番号】W WO2019145674
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516247225
【氏名又は名称】ケンブリッジ タッチ テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cambridge Touch Technologies Limited
【住所又は居所原語表記】Parallax Building, 270 Cambridge Science Park, Milton Road, Cambridge CB4 0WE United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】ミッチ、 リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】ビト、 マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン、 アロキア
(72)【発明者】
【氏名】バスターニ、 ババク
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050683(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199626(WO,A1)
【文献】特開2006-163618(JP,A)
【文献】特開昭56-044978(JP,A)
【文献】特開2013-186661(JP,A)
【文献】特表2007-533044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0097991(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1942853(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
G01L 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルから、複数の圧電センサからの圧力信号と、複数の静電容量式タッチセンサからの静電容量信号とを受け取ることと、
前記静電容量信号に基づいて、前記タッチパネルとのユーザインタラクションが発生しているユーザインタラクション期間を特定することと、
前記受け取った圧力信号に基づいて処理済み圧力信号を生成することと、
前記ユーザインタラクションに対応する状態レジスタ
の値に応じて前記対応する処理済み圧力信号を条件付きで積分することに
基づいて、前記ユーザインタラクション期間中に前記ユーザインタラクションにより前記複数の圧電センサのそれぞれに加えられた力を測定することと、
を含み、
前記状態レジスタの各値は、前記処理済み圧力信号を積分するための異なる動作に対応しており、
前記状態レジスタは2つ以上の値のうちの1つを取り、各ユーザインタラクションは第1の状態値で初期化され、前記ユーザインタラクションは、前記現在の状態レジスタ値と、1つまたは複数の圧力信号特性とに応じて
、各ユーザインタラクション中に状態レジスタ値の間で遷移する、
方法。
【請求項2】
前記処理済み圧力信号を生成することは、各圧電センサについて、前記受け取った圧力信号からDCオフセット値を減算することを含み、
前記タッチパネルのスイッチを入れてからウォームアップ期間が経過した後に各DCオフセット値が初期化され、前記初期DCオフセット値は、ユーザインタラクションがない場合の前記受け取った圧力信号に基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各圧電センサについて、ユーザインタラクションがないと判定したことに応じて、
受け取った圧力信号値の回帰バッファを維持することと、
前記回帰バッファに記憶された前記値の勾配及び分散を求めることと、
前記勾配及び分散が所定の閾値未満であることに応答して、前記回帰バッファに記憶された前記値に基づいて前記DCオフセット値を更新することと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
処理済み圧力信号を生成することは、前記受け取った圧力信号をフィルタリングすることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各圧電センサについて、
ユーザインタラクションの開始を検出したことに応答して、残留DCオフセット値をゼロに設定することと、
前記ユーザインタラクション期間中に、
処理済み圧力信号値のサンプルバッファを維持することと、
前記サンプルバッファに記憶された前記値の勾配及び分散を求めることと、
前記残留DCオフセット値と、前記サンプルバッファに記憶された前記値の平均値との差を求めることと、
前記勾配及び分散が対応する平坦期間閾値未満であり、前記差がオフセットシフト閾値
を超えることに応答して、前記残留DCオフセット値を前記サンプルバッファに記憶された前記値の前記平均値に更新することと、
積分の前に、前記処理済み圧力信号から前記残留DCオフセット値を減算することと、
をさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記静電容量信号に基づいて、ユーザインタラクションの位置が移動していると判定したことに応答して、移動フラグを真の値に設定することと、
前記移動フラグが真の値を有さないことに応答して、前記平坦期間閾値を第1の所定の平坦期間閾値に設定することと、
前記移動フラグが真の値を有することに応答して、前記平坦期間閾値を第2の所定の平坦期間閾値に設定することと、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各圧電センサについて、前記ユーザインタラクション期間中の前記処理済み圧力信号の初期ピーク値を位置特定し、測定することをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
初期ピーク値を位置特定したことに応答して、
前記ユーザインタラクション期間の開始からの経過時間が所定の閾値を超えたことに応答して、ユーザインタラクションタイプレジスタをソフトタッチ値に対応するように設定することと、
前記ユーザインタラクション期間の開始からの経過時間が前記所定の閾値を超えないことに応答して、前記ユーザインタラクションタイプレジスタをハードタッチ値に対応するように設定することと、
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ユーザインタラクションタイプレジスタを前記ハードタッチ値に設定することであって、
前記残留DCオフセット値が更新されたことと、
前記ユーザインタラクションタイプレジスタが前記ソフトタッチ値に対応することと、
に応答して行われる、前記設定すること
をさらに含む、請求項5または6に従属する場合の請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ユーザインタラクションタイプレジスタを前記ソフトタッチ値に設定することであって、
前記処理済み圧力信号が、前記初期ピーク値の所定の割合を超えたことと、
前記サンプルバッファに記憶された前記値の前記勾配が、ソフト遷移閾値を超えたことと、
前記ユーザインタラクションタイプレジスタが前記ハードタッチ値に対応することと、
に応答して行われる、前記設定すること
をさらに含む、請求項5または6に従属する場合の請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記ユーザインタラクションタイプレジスタが前記ソフトタッチ値に対応することに応答して、前記平坦期間閾値を第3の所定の平坦期間閾値に設定することをさらに含む、請求項6に従属する場合の請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記状態レジスタを第2の状態値に設定することであって、
前記状態レジスタが前記第1の状態値に対応することと、
前記ユーザインタラクションの開始からの経過時間が最小持続時間を超えたことと、
前記処理済み圧力信号が、増加する力に対応する符号を有することと、
に応答して行われる、前記設定すること
をさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記状態レジスタを第3の状態値に設定することであって、
前記状態レジスタが前記第2の状態値に対応することと、
前記処理済み圧力信号が、減少する力に対応する符号を有することと、
に応答して行われる、前記設定すること
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記状態レジスタを第
4の状態値に設定することであって、
前記状態レジスタが前記第2の状態値に対応することと、
前記ユーザインタラクションタイプレジスタが、前記ソフトタッチ値に対応することと、
に応答して行われる、前記設定すること
をさらに含む、請求項8~11のいずれか一項に従属する場合の、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ユーザインタラクション中の前記処理済み圧力信号の信号勾配を求めることと、
前記状態レジスタを第4の状態値に設定することであって、
前記状態レジスタが前記第3の状態値に対応することと、
前記処理済み圧力信号が、信号勾配閾値を下回る信号勾配を有することと、
に応答して行われる、前記設定することと、
をさらに含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記状態レジスタが前記第1の状態値に対応する場合、増加する力に対応する符号を有する処理済み圧力信号値が積分され、減少する力に対応する処理済み圧力信号値は積分されない、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記状態レジスタが前記第2の状態値に対応する場合、全ての処理済み圧力信号値が積分される、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記状態レジスタが前記第3の状態値に対応する場合、処理済み圧力信号値は積分されない、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記状態レジスタが前記第4の状態値に対応する場合、ノイズ閾値を超える処理済み圧力信号値は積分され、前記ノイズ閾値を超えない処理済み圧力信号値は積分されない、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記状態レジスタは、前記複数の圧電センサのそれぞれに対して別々に設定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記静電容量信号に基づいて、前記タッチパネルとの2つ以上のユーザインタラクションを特定すること、
を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記静電容量信号に基づいて、各ユーザインタラクションの位置を特定することと、
各ユーザインタラクションの前記位置に最も近い圧電センサを意思決定センサとして割り当てることと、
他の各圧電センサを、前記最も近い意思決定センサに対応するように割り当てることと、
圧電センサが意思決定センサであることに応答して、前記圧電センサに対応する状態レジスタを独立して更新することと、
圧電センサが意思決定センサでないことに応答して、前記圧電センサに対応する状態レジスタを、前記対応する意思決定センサの前記状態レジスタと等しくなるように更新することと、
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
圧電センサが意思決定センサでないことに応答して、対応する意思決定チャネルに基づいて前記初期ピーク値の前記位置を特定することをさらに含む、請求項7に従属する場合の請求項22に記載の方法。
【請求項24】
他の圧電センサからの信号を処理する前に、意思決定センサからの信号を処理することをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記1つまたは複数の圧力信号特性は、信号値、信号勾配、信号分散、信号標準偏差、信号範囲、信号最小値、信号最大値、前記ユーザインタラクション期間の開始からの経過時間、前記状態レジスタ値が変更されてからの経過時間、前記圧力信号のピークを検出してからの経過時間などを含むグループから選択される1つまたは複数の特性を含み得る、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
非一時的コンピュータ可読媒体に記憶され、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法をデータ処理装置に実行させるための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項27】
複数の圧電センサ及び複数の静電容量式タッチセンサを備えるタッチパネルに接続されるように構成されるコントローラであって、
前記複数の圧電センサからの圧力信号と、前記複数の静電容量式タッチセンサからの静電容量信号とを受け取り、
前記静電容量信号に基づいて、前記タッチパネルとのユーザインタラクションが発生しているユーザインタラクション期間を特定し、
前記受け取った圧力信号に基づいて処理済み圧力信号を生成し、
前記ユーザインタラクションに対応する状態レジスタ
の値に応じて前記対応する処理済み圧力信号を条件付きで積分することに
基づいて、前記ユーザインタラクション期間中に前記ユーザインタラクションにより前記複数の圧電センサのそれぞれに加えられた力を測定する、
ように構成され、
前記状態レジスタの各値は、前記処理済み圧力信号を積分するための異なる動作に対応しており、
前記状態レジスタは2つ以上の値のうちの1つを取り、各ユーザインタラクションは第1の状態値で初期化され、前記ユーザインタラクションは、前記現在の状態レジスタ値と、1つまたは複数の圧力信号特性とに応じて
、各ユーザインタラクション中に状態レジスタ値の間で遷移する、
前記コントローラ。
【請求項28】
請求項
27に記載のコントローラと、
複数の圧電センサ及び複数の静電容量式タッチセンサを備えるタッチパネルと、
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式検知及び圧力検知を組み合わせたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗膜式及び静電容量式タッチパネルは、コンピュータ及びモバイルデバイス用の入力デバイスとして使用されている。静電容量式タッチパネルの一種である投影型静電容量式タッチパネルは、外層がガラス製であり、引っかき傷に強い硬い表面を提供し得るので、モバイルデバイスに使用されることが多い。投影型静電容量式タッチパネルの一例が、US2010/0079384A1に記載されている。
【0003】
投影型静電容量式タッチパネルは、導電性物体の近接により生じる電界の変化を検出することによって動作する。投影型静電容量式タッチパネルがタッチされた位置は、静電容量式センサのアレイまたはグリッドを使用して特定されることが多い。投影型静電容量式タッチパネルは、大抵はシングルタッチイベントとマルチタッチイベントとを区別することができるが、圧力を検知できないという欠点がある。このように、投影型静電容量式タッチパネルは、比較的軽いタップと比較的重いプレスとを区別できない傾向がある。圧力を検知できるタッチパネルにより、単にタッチの位置に追加情報を提供することによって、ユーザは新たな方法でデバイスとインタラクションを行うことが可能になる。
【0004】
WO2016/102975A2及びWO2017/109455A1には、単一のタッチパネルにおいて投影型静電容量式タッチ検知と圧電式圧力検知とを組み合わせることが可能なタッチパネルについて記載されている。
【0005】
圧電センサは過渡信号を生成し、過渡的な圧電信号を、変化しない加えられた力を表す信号に変換するための方法を開発する試みがなされてきた。たとえば、WO2017/122466A1、JP2015/097068A、及びEP2902886A1には、圧電センサからの信号の条件付き積分のための方法が記載されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、タッチパネルから、複数の圧電センサからの圧力信号と、複数の静電容量式タッチセンサからの静電容量信号とを受け取ることを含む方法が提供される。この方法はまた、静電容量信号に基づいて、タッチパネルとのユーザインタラクションが発生しているユーザインタラクション期間を特定することを含む。この方法はまた、受け取った圧力信号に基づいて処理済み圧力信号を生成することを含む。この方法はまた、ユーザインタラクションに対応する状態レジスタに応じて対応する処理済み圧力信号を条件付きで積分することにより、ユーザインタラクション期間中にユーザインタラクションにより複数の圧電センサのそれぞれに加えられた力を測定することを含む。状態レジスタは2つ以上の値のうちの1つを取る。各ユーザインタラクションは第1の状態値で初期化される。ユーザインタラクションは、現在の状態レジスタ値と、1つまたは複数の圧力信号特性とに応じて状態レジスタ値の間で遷移する。
【0007】
圧力信号特性は、信号値、信号勾配、信号分散または標準偏差、信号範囲、信号最小値、信号最大値、ユーザインタラクション期間の開始からの経過時間、状態レジスタ値が変更されてからの経過時間、圧力信号のピークを検出してからの経過時間などのうちの1つまたは複数を含み得る。圧力信号特性は、信号値、信号勾配、信号分散または標準偏差、信号範囲、信号最小値または信号最大値を、1つまたは複数の対応する所定の閾値または範囲と比較することを含み得る。
【0008】
圧電センサは、静電容量センサと同一平面上にあるか、または静電容量センサと同じ層内に提供され得る。圧電センサ及び静電容量センサは、共通の1つまたは複数の電極を備え得る。圧電センサ及び静電容量センサは、単一のまたは共通の構造によって提供され得る。圧電センサ及び静電容量センサは別々であり得る。圧電センサ及び静電容量センサは、別々の層に提供され得る。
【0009】
処理済み圧力信号を生成することは、各圧電センサについて、受け取った圧力信号からDCオフセット値を減算することを含み得る。タッチパネルのスイッチを入れてからウォームアップ期間が経過した後に各DCオフセット値が初期化され得る。各初期DCオフセット値は、ユーザインタラクションがない場合の受け取った圧力信号に基づき得る。各初期DCオフセット値は、ユーザインタラクションがない場合の受け取った圧力信号の平均、中央値、最頻値、または範囲に基づき得る。
【0010】
この方法はまた、各圧電センサについて、ユーザインタラクションがないと判定したことに応じて、受け取った圧力信号値の回帰バッファを維持することと、回帰バッファに記憶された値の勾配及び分散を求めることと、勾配及び分散が所定の閾値未満であることに応答して、回帰バッファに記憶された値に基づいてDCオフセット値を更新することと、を含み得る。
【0011】
処理済み圧力信号を生成することは、受け取った圧力信号をフィルタリングすることを含み得る。
【0012】
この方法はまた、各圧電センサについて、ユーザインタラクションの開始を検出したことに応答して、残留DCオフセット値をゼロに設定することを含み得る。この方法はまた、ユーザインタラクション期間中に、処理済み圧力信号値のサンプルバッファを維持することと、サンプルバッファに記憶された値の勾配及び分散を求めることと、残留DCオフセット値と、サンプルバッファに記憶された値の平均値との差を求めることと、を含み得る。この方法はまた、勾配及び分散が対応する平坦期間閾値未満であり、差がオフセットシフト閾値未満であることに応答して、残留DCオフセット値をサンプルバッファに記憶された値の平均値に更新することを含み得る。この方法はまた、積分の前に、処理済み圧力信号から残留DCオフセット値を減算することを含み得る。
【0013】
この方法はまた、静電容量信号に基づいて、ユーザインタラクションの位置が移動していると判定したことに応答して、移動フラグを真の値に設定することを含み得る。この方法はまた、移動フラグが真の値を有さないことに応答して、平坦期間閾値を第1の所定の平坦期間閾値に設定することを含み得る。この方法はまた、移動フラグが真の値を有することに応答して、平坦期間閾値を第2の所定の平坦期間閾値に設定することを含み得る。
【0014】
この方法はまた、各圧電センサについて、ユーザインタラクション期間中の処理済み圧力信号の初期ピーク値を位置特定し、測定することを含み得る。この方法はまた、初期ピーク値を位置特定したことに応答して、ユーザインタラクション期間の開始からの経過時間が所定の閾値を超えたことに応答して、ユーザインタラクションタイプレジスタをソフトタッチ値に対応するように設定することを含み得る。この方法はまた、初期ピーク値を位置特定したことに応答して、ユーザインタラクション期間の開始からの経過時間が所定の閾値を超えないことに応答して、ユーザインタラクションタイプレジスタをハードタッチ値に対応するように設定することを含み得る。
【0015】
この方法はまた、ユーザインタラクションタイプレジスタをハードタッチ値に設定することであって、残留DCオフセット値が更新されたことと、ユーザインタラクションタイプレジスタがソフトタッチ値に対応することと、に応答して行われる、設定することを含み得る。
【0016】
この方法はまた、ユーザインタラクションタイプレジスタをソフトタッチ値に設定することであって、処理済み圧力信号が、初期ピーク値の所定の割合を超えたことと、サンプルバッファに記憶された値の勾配が、ソフト遷移閾値を超えたことと、ユーザインタラクションタイプレジスタがハードタッチ値に対応することと、に応答して行われる、設定することを含み得る。
【0017】
この方法はまた、ユーザインタラクションタイプレジスタがソフトタッチ値に対応することに応答して、平坦期間閾値を第3の所定の平坦期間閾値に設定することを含み得る。
【0018】
この方法はまた、状態レジスタを第2の状態値に設定することであって、状態レジスタが第1の状態値に対応することと、ユーザインタラクションの開始からの経過時間が最小持続時間を超えたことと、処理済み圧力信号が、増加する力に対応する符号を有することと、に応答して行われる、設定することを含み得る。
【0019】
この方法はまた、状態レジスタを第3の状態値に設定することであって、状態レジスタが第2の状態値に対応することと、処理済み圧力信号が、減少する力に対応する符号を有することと、に応答して行われる、設定することを含み得る。
【0020】
この方法はまた、状態レジスタを第3の状態値に設定することであって、状態レジスタが第2の状態値に対応することと、ユーザインタラクションタイプレジスタが、ソフトタッチ値に対応することと、に応答して行われる、設定することを含み得る。
【0021】
この方法はまた、ユーザインタラクション中の処理済み圧力信号の信号勾配を求めることを含み得る。この方法はまた、状態レジスタを第4の状態値に設定することであって、状態レジスタが第3の状態値に対応することと、処理済み圧力信号が、信号勾配閾値を下回る信号勾配を有することと、に応答して行われる、設定することを含み得る。
【0022】
この方法はまた、状態レジスタが第1の状態値に対応する場合、増加する力に対応する符号を有する処理済み圧力信号値が積分され、減少する力に対応する処理済み圧力信号値は積分されないことを含み得る。
【0023】
この方法はまた、状態レジスタが第2の状態値に対応する場合、全ての処理済み圧力信号値が積分されることを含み得る。
【0024】
この方法はまた、状態レジスタが第3の状態値に対応する場合、処理済み圧力信号値は積分されないことを含み得る。
【0025】
この方法はまた、状態レジスタが第4の状態値に対応する場合、ノイズ閾値を超える処理済み圧力信号値は積分され、ノイズ閾値を超えない処理済み圧力信号値は積分されないことを含み得る。
【0026】
状態レジスタは、複数の圧電センサのそれぞれに対して別々に設定され得る。
【0027】
この方法はまた、静電容量信号に基づいて、タッチパネルとの2つ以上のユーザインタラクションを特定することを含み得る。
【0028】
この方法はまた、静電容量信号に基づいて、各ユーザインタラクションの位置を特定することを含み得る。この方法はまた、各ユーザインタラクションの位置に最も近い圧電センサを意思決定(decision making)センサとして割り当てることを含み得る。
【0029】
この方法はまた、他の各圧電センサを、最も近い意思決定センサに対応するように割り当てることを含み得る。この方法はまた、圧電センサが意思決定センサであることに応答して、圧電センサに対応する状態レジスタを独立して更新することを含み得る。この方法はまた、圧電センサが意思決定センサでないことに応答して、圧電センサに対応する状態レジスタを、対応する意思決定センサの状態レジスタと等しくなるように更新することを含み得る。
【0030】
この方法はまた、圧電センサが意思決定センサでないことに応答して、対応する意思決定チャネルに基づいて初期ピーク値の位置を特定することを含み得る。
【0031】
この方法はまた、他の圧電センサからの信号を処理する前に、意思決定センサからの信号を処理することを含み得る。
【0032】
この方法はまた、測定された力のうちの1つまたは複数に基づいて、グラフィカルユーザインターフェース及び/またはコンピュータプログラムに入力を提供することを含み得る。
【0033】
状態レジスタは値を、整数、文字、文字列、または浮動小数点の値の形式で記憶し得る。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、この方法を実行するための命令を記憶する、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0035】
本発明の第3の態様によれば、非一時的コンピュータ可読媒体に記憶され、この方法をデータ処理装置に実行させるための命令を含む、コンピュータプログラムが提供される。
【0036】
本発明の第4の態様によれば、この方法を実行するように構成されるコントローラが提供される。
【0037】
装置は、このコントローラと、複数の圧電センサ及び複数の静電容量式タッチセンサを含むタッチパネルと、を含み得る。
【0038】
本発明の第5の態様によれば、複数の圧電センサ及び複数の静電容量式タッチセンサを備えるタッチパネルに接続されるように構成されるコントローラが提供され、このコントローラは、複数の圧電センサからの圧力信号と、複数の静電容量式タッチセンサからの静電容量信号とを受け取るように構成される。コントローラはまた、静電容量信号に基づいて、タッチパネルとのユーザインタラクションが発生しているユーザインタラクション期間を特定するように構成される。コントローラはまた、受け取った圧力信号に基づいて処理済み圧力信号を生成するように構成される。コントローラはまた、ユーザインタラクションに対応する状態レジスタに応じて対応する処理済み圧力信号を条件付きで積分することにより、ユーザインタラクション期間中にユーザインタラクションにより複数の圧電センサのそれぞれに加えられた力を測定するように構成される。状態レジスタは2つ以上の値のうちの1つを取る。各ユーザインタラクションは第1の状態値で初期化される。ユーザインタラクションは、現在の状態レジスタ値と、1つまたは複数の圧力信号特性とに応じて状態レジスタ値の間で遷移する。
【0039】
圧力信号特性は、信号値、信号勾配、信号分散または標準偏差、信号範囲、信号最小値、信号最大値、ユーザインタラクション期間の開始からの経過時間、状態レジスタ値が変更されてからの経過時間、圧力信号のピークを検出してからの経過時間などのうちの1つまたは複数を含み得る。圧力信号特性は、信号値、信号勾配、信号分散または標準偏差、信号範囲、信号最小値または信号最大値を、1つまたは複数の対応する所定の閾値または範囲と比較することを含み得る。
【0040】
装置は、このコントローラと、複数の圧電センサ及び複数の静電容量式タッチセンサを備えるタッチパネルと、を含み得る。
【0041】
ここで、本発明の特定の実施形態を、例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】圧電式検知及び静電容量式検知を組み合わせたタッチパネルの概略断面図である。
【
図2】圧電式検知及び静電容量式検知を組み合わせたシステムを示す図である。
【
図3】タッチパネルとのユーザインタラクションの力プロファイルを概略的に示す図である。
【
図4】
図3に示す力プロファイルに対応する理想的な圧電圧力信号を示す。
【
図5】タッチパネルとのユーザインタラクションに対応する測定された圧電圧力信号の一例を示す図である。
【
図6】
図5に示す圧電圧力信号に基づいて測定された加えられた力を示す図である。
【
図7】タッチパネルに加えられた力を測定する方法の処理フロー図である。
【
図8】タッチパネルに加えられた力を測定する方法の例示的な実施態様の処理フロー図である。
【
図10】再較正処理の第1の例の処理フロー図である。
【
図11】再較正処理の第2の例の処理フロー図である。
【
図12】プッシュ詳細化処理の処理フロー図である。
【
図13】タッチパネルとのいくつかの同時のユーザインタラクションの位置を示す図である。
【
図14】タッチパネルシステムの意思決定電極の割り当てを示す図である。
【
図15】タッチパネルシステムの非意思決定電極の意思決定電極への依存の割り当てを示す図である。
【
図16】タッチパネルシステムの電極からの信号の処理を示す図である。
【
図17】タッチパネルとの「ソフト」タイプのユーザインタラクションに対応する測定された圧電圧力信号の一例を示す図である。
【
図18】
図17に示す圧電圧力信号に基づいて測定された加えられた力を示す図である。
【
図19】電極チャネル更新処理の処理フロー図である。
【
図20】「ソフト」タイプのユーザインタラクションに遷移する「ハード」タイプのユーザインタラクションに対応する測定された圧電圧力信号の一例を示す図である。
【
図21】
図20に示す圧電圧力信号に基づいて測定された加えられた力を示す図である。
【
図22】「ハード」タイプのユーザインタラクションに遷移する「ソフト」タイプのユーザインタラクションに対応する測定された圧電圧力信号の一例を示す図である。
【
図23】
図22に示す圧電圧力信号に基づいて測定された加えられた力を示す図である。
【
図24】状態更新処理の第1の例の処理フロー図である。
【
図25】状態更新処理の第2の例の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の説明では、同様の部分を同様の参照番号で表す。
【0044】
圧電式圧力検知において遭遇する課題は、圧電材料に力を加えることによって生成される信号が本質的に過渡的であるということである。結果的に、圧電式圧力センサからの出力信号には、変化しないまたはゆっくりと変化する加えられた力の測定を可能にする処理が必要である。本明細書の方法は、圧電型タッチパネルシステムを使用して測定される力の精度及び信頼性を改善しつつ、タッチパネルから受け取った圧電圧力信号を処理する速度を維持または改善することに関する。
【0045】
圧力・静電容量複合タッチパネルシステム
図1を参照すると、圧力及び静電容量を組み合わせた測定のためのタッチパネル1の簡略化された断面が示されている。
【0046】
タッチパネル1は、第1及び第2の層構造2、3、共通電極4、いくつかの第1の検知電極5、及びいくつかの第2の検知電極6を含む。
【0047】
第1の層構造2は、第1の面7及び第2の反対側の面8を有する。第1の層構造2は、少なくとも圧電材料の層9を含む1つまたは複数の層を含む。第1の層構造2に含まれる各層は、一般的には平面であり、厚さ方向zに垂直な第1及び第2の方向x、yに広がる。第1の層構造2の1つまたは複数の層は、第1の層構造2の各層の厚さ方向zが第1及び第2の面7、8に垂直になるように、第1及び第2の面7、8の間に配置される。第1の検知電極5は、第1の層構造2の第1の面7に配置され、共通電極4は、第1の層構造2の第2の面8に配置される。
【0048】
好ましくは、圧電層9は圧電ポリマー、たとえば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)などの適切なフルオロポリマーで形成される。しかしながら、圧電層は、代替的には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックの層から形成され得る。
【0049】
第2の層構造3は、第3の面10及び第4の反対側の面11を有する。第2の層構造3は、1つまたは複数の誘電体層12を含む。各誘電体層12は、一般的には平面であり、厚さ方向zに垂直な第1及び第2方向x、yに広がる。第2の層構造3の1つまたは複数の誘電体層12は、第2の層構造3の各誘電体層12の厚さ方向zが第3及び第4の面10、11に垂直になるように、第3及び第4の面10、11の間に配置される。第2の検知電極6は、第2の層構造3の第3の面10に配置され、第2の層構造3の第4の面11は、第1の検知電極5に接触する。代替的には、第1の検知電極5は、第4の面11に配置され得る。
【0050】
好ましくは、誘電体層(複数可)12は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマー誘電体材料の層、または感圧接着剤(PSA)材料の層を含む。しかしながら、誘電体層(複数可)12は、酸化アルミニウムなどのセラミック絶縁材料の層を含み得る。
【0051】
好ましくは、共通電極4、第1の検知電極5、及び/または第2の検知電極6は、インジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)で形成される。しかしながら、共通電極4、第1の検知電極5、及び/または第2の検知電極6は、ポリアニリン、ポリチフェン、ポリピロール、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)などの導電性ポリマーで形成され得る。共通電極4、第1の検知電極5、及び/または第2の検知電極6は、アルミニウム、銅、銀、または薄膜としての堆積及びパターニングに適した他の金属などの金属膜の形をとり得る。共通電極4、第1の検知電極5、及び/または第2の検知電極6は、金属メッシュ、ナノワイヤ、任意選択で銀ナノワイヤ、グラフェン、またはカーボンナノチューブから形成され得る。
【0052】
図2をさらに参照すると、圧力・静電容量複合検知システム13が示されている。
【0053】
圧力・静電容量複合検知システム13は、タッチパネル1、測定フロントエンド14、圧力信号処理モジュール15、及び静電容量信号処理モジュール16を含む。
【0054】
第1の検知電極5はそれぞれ第1の方向xに伸び、第1の検知電極5は第2の方向yに等間隔に離間した配列で配置される。第2の検知電極6はそれぞれ第2の方向yに伸び、第2の検知電極6は第1の方向xに等間隔に離間した配列で配置される。共通電極4は、共通電極4が少なくとも部分的に第1及び第2の検知電極5、6のそれぞれの下になるように広範囲に及ぶ。共通電極4は、第1の層構造2の第2の面8と実質的に同一の広がりを有し得る。このようにして、第1の検知電極5と第2の検知電極6との各交点17は、効果的に別個のタッチセンサを提供し得る。交点17によって形成される各タッチセンサは、圧電タッチセンサと、静電容量式タッチセンサとの両方になる。
【0055】
タッチパネル1は、圧力・静電容量複合検知システム13を組み込んだ電子デバイス(図示せず)のディスプレイ(図示せず)を覆って接着され得る。たとえば、圧力・静電容量複合検知システム13は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ポータブルまたはラップトップコンピュータ、ディスプレイ、テレビなどに組み込まれ得る。
【0056】
本明細書では、「ユーザインタラクション」という用語は、ユーザがタッチパネル1またはタッチパネルを覆う材料の層にタッチするかまたはこれらをプレスすることを指し得る。ユーザインタラクションは、ユーザの指またはスタイラス(導電性か否かを問わない)に関与し得る。タッチインタラクションは、ユーザの指または導電性スタイラスが、直接的な物理的接触なしに、または大きな圧力を加えることなしに、タッチパネル1に近接することを含み得る。プレスインタラクションは、圧電材料の層9の歪み及び圧電応答の発生を引き起こすのに十分な力でユーザがタッチパネル1をプレスすることを含む。ユーザインタラクションの位置は、ユーザが指またはスタイラスを動かすにつれて、時間と共に変化し得る。タッチパネル1及びシステム13は、「マルチタッチ」インタラクションと呼ばれることもある、1つまたは複数の同時のユーザインタラクションの測定及び追跡をサポートする。
【0057】
測定フロントエンド14は、タッチパネル1上で圧力及び静電容量を組み合わせた測定を実行する。測定フロントエンド14は、圧力を加えるユーザインタラクションに応じた圧電層9の歪みによって第1の検知電極5と共通電極4との間に誘導された電圧、及び/または第2の検知電極6と共通電極4との間に誘導された電圧を検出することによって、圧力を測定する。このようにして、測定フロントエンド14は、1つまたは複数のユーザインタラクションによってタッチパネル1に加えられた圧力の1次元または2次元の分解測定値を提供し得る。好ましくは、圧力は、第1及び第2の検知電極5、6の両方によって測定される。測定フロントエンド14はまた、第1及び第2の検知電極5、6の各交点17の相互静電容量を測定する。
【0058】
測定フロントエンド14は、圧電圧力信号及び静電容量を同時に測定し得る。たとえば、測定フロントエンド14は、WO2017/109455A1に記載のように、またはWO2016/102975A2に記載のように構成され得、両文書の内容全体が引用により本明細書に組み込まれている。具体的には、適切な圧力・静電容量複合タッチパネルシステム13が、WO2017/109455A1の
図4~
図23に示されており、それらを参照して説明されている。さらに、適切な圧力・静電容量複合タッチパネルシステム13が、WO2016/102975A2の
図15~
図29に示されており、それらを参照して説明されている。
【0059】
測定フロントエンド14は、圧力信号18及び静電容量信号19を出力する。圧力信号18は、第1の検知電極5と共通電極4との間、及び/または第2の検知電極6と共通電極4との間に誘導される増幅及び/または積分された圧電電圧に対応する。測定フロントエンド14が圧電圧力信号と静電容量とを同時に測定する場合に、たとえば、測定フロントエンド14がWO2017/109455A1に記載のように、またはWO2016/102975A2に記載のように構成される場合、圧力信号18及び静電容量信号19は、各検知電極5、6に対応する信号を周波数分離して信号18、19を取得することによって得られる。測定フロントエンド14は、圧電材料の層9の焦電応答を除去するように構成される低周波数カットオフフィルタを含み得る。低周波数カットオフは、1Hzと7Hzとの間の値をとり得る。測定フロントエンド14は幹線配電周波数、たとえば、50Hzまたは60Hzを除去するように構成されるノッチフィルタを含み得る。
【0060】
静電容量信号処理モジュール16は、静電容量信号19を受け取り、処理して、ユーザインタラクションの数と、各ユーザインタラクションのx-y座標とを含む静電容量情報20を決定する。静電容量信号処理モジュール16は、従来の静電容量式タッチコントローラと同じように機能し得、従来の静電容量式タッチコントローラによって提供され得る。いくつかの例では、静電容量信号処理モジュール16はまた、静電容量測定のための駆動信号を測定フロントエンド14に提供する。検知電極5、6の自己静電容量、または第1の検知電極5と第2の検知電極6との任意の対の間の相互静電容量は、既知の方法に従って静電容量信号処理モジュール16により測定され得る。
【0061】
圧力信号処理モジュール15は、圧力信号18と、ユーザインタラクションの数及び各ユーザインタラクションのx-y座標を含む静電容量情報20とを受け取る。任意選択で、圧力信号処理モジュール15はまた、未処理の静電容量信号19を受け取り得る。圧力信号処理モジュール15は、過渡圧力信号18を使用して、タッチパネル1に圧力を加えるユーザインタラクションに対応する1つまたは複数の出力力(output force)21を測定するように構成される。静電容量情報20は、出力力21の測定に使用される。出力力21を測定する方法については、以下で詳細に説明する。任意選択で、未処理の静電容量信号19はまた、たとえば、所与の第1または第2の検知電極5、6からの信号の品質及び信頼性の推定に寄与するように、信号処理モジュール15によって使用され得る。
【0062】
第1及び第2の検知電極5、6は実質的に長方形であるように図示しているが、投影型静電容量式タッチパネルでの使用が知られている他の任意の形状が使用され得る。たとえば、ダイヤモンドパターンの電極が、第1及び第2の検知電極5、6に使用され得る。
【0063】
タッチセンサ1の第1の層構造2に圧電材料の層9のみを含めて、第1及び第2の反対側の面7、8が圧電材料層9の面になるようにし得る。代替的には、第1の層構造2は、圧電材料の層9と第1の層構造2の第1の面7との間に積み重ねられる1つまたは複数の追加の誘電体層(図示せず)を含み得る。第1の層構造2は、第1の層構造2の第2の面8と圧電材料の層9との間に積み重ねられる1つまたは複数の追加の誘電体層(図示せず)を含み得る。好ましくは、1つまたは複数の追加の誘電体層(図示せず)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマー誘電体材料の層、または感圧接着剤(PSA)材料の層を含む。しかしながら、1つまたは複数の追加の誘電体層(図示せず)は、酸化アルミニウムなどのセラミック絶縁材料の層を含み得る。1つまたは複数の追加の誘電体層(図示せず)は、第2の層構造3の誘電体層12と同様であり得る。
【0064】
第2の層構造3は単一の誘電体層12を含んで、第3及び第4の反対側の面10、11が単一の誘電体層12の面になるようにし得る。代替的には、第2の層構造3が使用される必要はなく、代わりに、第2の検知電極6を第1の面7に第1の検知電極5と共に配置することができる。
【0065】
図1及び
図2では、第1及び第2の面7、8と、第1及び第2の層構造2、3の層とが、x及びyとラベル付けした直交軸に沿って広がるように図示しており、第1及び第2の層構造2、3の各層の厚さ方向は、x軸及びy軸と直交するzとラベル付けした軸と一致する。しかしながら、第1、第2及び厚さ方向x、y、zは、図示のように右手直交セットを形成する必要はない。たとえば、第1及び第2の方向x、yは、30度もしくは45度の角度、または0度より大きく90度未満の任意の他の角度で交差し得る。
【0066】
前述の、WO2017/109455A1及びWO2016/102975A2を参照して説明したタッチパネル1及びシステム13の詳細は、本明細書の方法を理解することを目的として提供しているが、本明細書の方法はタッチパネル1及びシステム13に限定されない。本明細書の方法は、圧電センサのアレイ及び静電容量センサのアレイを含む任意のタッチパネルシステムで採用され得る。
【0067】
図3をさらに参照すると、タッチパネル1に加えられる概略的な力入力22が示されている。
【0068】
圧電材料の層9は分極され、十分な力を加えるユーザインタラクションによって生じる歪みに応じて、分極Pで分極状態になる。圧電材料の層9の分極Pにより、対応する電荷Q
piezo(t)が共通電極4と検知電極5、6との間に発生する。分極Pを生成する歪みは、圧縮または張力に起因し得る。分極Pを生成する歪みは、圧電材料層9の面内伸張であり得る。圧電材料の層9と検知電極5、6との間の密接な接触は必要とされない。一般に、(より力強いユーザインタラクションによって)圧電材料の層9の歪みが大きくなると、分極Pが大きくなり、それに対応して、検知電極5、6に誘導される電荷差ΔQ
piezoの大きさが大きくなる。電荷Q
piezo(t)に関連する電流である圧電応答I
piezo(t)は増幅及び/または積分されて、圧電圧力信号23(
図4)が決定され得る。
【0069】
図4をさらに参照すると、力入力22に対応する理想的な圧電圧力信号23が示されている。
【0070】
たとえば、測定フロントエンド14から出力される、及び/またはそれによって増幅された圧電圧力信号23は、基本的に過渡信号である。誘導された圧電電圧は、漏れ電流のために時間と共に減衰する。また、圧電電流Ipiezoを増幅するために使用され得る積分型電荷増幅器の出力も、時間と共に減衰する。
【0071】
たとえば、第1の負荷期間t0≦t≦t1の間に、力22はゼロから第1の力値F1まで着実に増加する。力22の増加速度が圧電圧力信号23の減衰速度に比べて速い場合、対応する圧電圧力信号23は、第1の負荷期間t0≦t≦t1中に着実に減少して、力22が第1の力値F1に達したときに、第1のピーク値V1に達する。次いで、力22は、第1の保持期間t1<t≦t2の間、F1で一定に保持される。第1の保持期間t1<t≦t2の間に、圧電圧力信号23は、第1のピーク値V1から、理想的な場合にはゼロのDCオフセットに向かって上向きに減衰する。
【0072】
力22は、第2の負荷期間t2<t≦t3の間に、第1の力値F1から第2の力値F2に再び増加する。力22の増加速度が圧電圧力信号23の減衰速度と比較して速い場合、対応する圧電圧力信号23は、第2の負荷期間t2<t≦t3の間に着実に減少して、力22が第2の力値F2に達したときに、第2のピーク値V2に達する。次いで、力22は、第2の保持期間t3<t≦t4の間、F2で一定に保持される。第2の保持期間t3<t≦t4の間に、圧電圧力信号23は、第2のピーク値V2から、理想的な場合にはゼロの信号に向かって上向きに減衰する。
【0073】
第2の保持期間t3<t≦t4の終了時に、ユーザインタラクションは、除荷期間t4<t≦t5の間の力22の解放によって終了する。力22の減少速度が圧電圧力信号23の減衰速度と比較して速い場合、対応する圧電圧力信号23は、除荷期間t4<t≦t5の間に着実に増加して、力22がゼロに達したときに、第3のピーク値V3に達する。負荷ではなく除荷の結果として生じる第3のピーク値V3は、第1及び第2のピーク値V1、V2と反対の符号を有する。ユーザインタラクションの終了後、圧電圧力信号23は、理想的な場合にはゼロのDCオフセットに向かって減衰する。
【0074】
図4では、圧電圧力信号23が負荷に応答して負になり、除荷に応答して正になることを示しているが、圧電圧力信号23の極性は、他の例では、タッチパネル1及びシステム13の構成に応じて反転され得る。
【0075】
図4に示すように、圧電圧力信号23が理想的である場合、圧電圧力信号23の減衰は、たとえば、圧電圧力信号23の勾配及び/または値に基づく圧電圧力信号23の条件付き積分などの様々な方法によって補償され得る。圧電圧力信号23の勾配及び値が同じ符号である場合に圧電圧力信号23を積分することにより、加えられた力22に比例する推定測定値が回復され得る。
【0076】
しかしながら、圧力及び静電容量を組み合わせた測定のためのタッチパネル1及びシステム13が使用される場合、圧電圧力信号23は、実際には、DCオフセットの継続的な変動と、著しいノイズ源とにさらされ得、これにより単純な値及び勾配ベースの条件付き積分の信頼できる動作が妨げられ得る。
【0077】
理論または特定の具体例によって限定されることを望まないが、本明細書を理解するために、タッチパネル1及びシステム13に関するDCオフセット変動及びノイズの潜在的な原因について議論することは有用であり得る。タッチパネル1及びシステム13は、手持ち型の電池式のデバイス(図示せず)に設置され得ることが多い。そのようなデバイスは典型的には接地されていないか、またはわずかにしか接地されていないので、ノイズを拾いやすくなり得、DCオフセットが変動しやすくなり得る。追加的には、ユーザは、衣服、履物、及び/または自身の環境との相互作用の結果として、静電気を帯びることがしばしばあり得る。これはDCオフセットの変動にさらに影響し得、また、タッチパネル1との最初の接触時に、ユーザの指及び/またはスタイラスとの間で静電気放電をもたらし得る。そのような静電気放電によって、ユーザインタラクションに近い検知電極5、6に電荷Qesdが加えられる可能性があり、これは加えられた力に起因する電荷Qpiezoに等しいか、さらにはそれを著しく超え得る。さらに、タッチパネル1をすばやく連続してタップするなどの短いインタラクションは、勾配及び値ベースの手法を混乱させ得、その理由は、1回のタップからの信号が、次のタップが始まる前に完全に減衰していない場合があり、力の測定値が不正確になり得るためである。前述の説明は網羅的ではなく、多くの追加の要因が、タッチパネル1及びシステム13のDCオフセット変動及びノイズレベルに影響し得る。したがって、感度及び/または計算速度を犠牲にすることなく、改善された信頼性でタッチパネル1に加えられた力を測定する方法が必要とされている。
【0078】
たとえば、
図5をさらに参照すると、タッチパネル1及びシステム13の一例を使用して取得される測定された圧電圧力信号24の一例が示されている。
【0079】
測定された圧電圧力信号24は、いくつかの重要な点で理想的な圧電圧力信号23から逸脱していることが観察され得る。第1に、静電容量情報20から判定されるタッチイベントの開始は、圧力信号24の値P(t)がゼロのDCオフセットにない場合に発生する。代わりに、ユーザインタラクションの開始に関する時刻t=0において、圧力信号24の値P(t)は、多くの場合、初期DCオフセット値P
0=P(0)を示し得る。これは様々な理由で発生し得、たとえば、前のユーザインタラクションの後の残留DCオフセット、タッチパネル1への最初の接触時のユーザの指の静電気放電、前のユーザインタラクションからの信号が完全に減衰する前の繰り返しタッチなどがある。初期オフセットP
0は実際にはかなりのものであり得る。ユーザの指が静電気放電を受けた場合、初期オフセットP
0に初期偽ピークP
5(
図17)が付随することがあり得、これは静電気放電に起因すると考えられる。初期偽ピークP
5(
図17)を含めると、力出力が不正確になり得る。しかしながら、単に勾配及び値の閾値を設定して初期オフセットP
0及び/または偽ピークP
5(
図17)を排除すると、ユーザインタラクションの残り全体の感度が低下してしまう。
【0080】
第2に、初期ピークP1に達した後、圧力信号24の値P(t)は、ゼロに等しくないオフセット値Poffまで減衰し得る。オフセット値Poffは一般に初期ピークP1と反対の符号であることが観察されている。また、オフセット値Poffは、特定の検知電極5、6との各ユーザインタラクションの後に変化し得るので、従来のDCオフセット補正及び較正方法はあまり効果的でない場合があることも観察されている。さらに、圧力信号24の値P(t)は、ユーザインタラクションの一部の間に、偽ピークP2を示し得、その間に、圧力信号24のP(t)が整定前にオフセット値Poffをオーバーシュートする。偽ピークP2の大きさは、一部のユーザインタラクション中ではかなりのものになり得る。
【0081】
前述のように、単に勾配及び値の閾値を設定して初期オフセット及び/または静電気放電ピークを排除すると、オフセット値P
off及び偽ピークP
2、P
5(
図17)により、ユーザインタラクションの残り全体にわたって感度が低下し得る。これにより、たとえば、メインの除荷ピークP
4の直前のユーザのわずかな圧力の離昇に対応する小さなピークP
3の検出に失敗し得る。
【0082】
本明細書で詳述する方法は、閾値を上げて感度を下げる必要なしに、DCオフセットの変動及び他のノイズ源に対してより頑健な、タッチパネル1に加えられた力を測定する方法を提供することによって、そのような問題に対処することを意図している。同時に、本明細書で詳述する方法は、コントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、またはマイクロプロセッサにより、ユーザにより認識され得る過度の待ち時間の導入を回避するのに十分な速度で効率的に実行され得る。過度の待ち時間はユーザにとって煩わしい場合があり、または待ち時間が長くなりすぎる場合、正しい入力を提供することが困難または不可能になり得る。
【0083】
図6及び
図7をさらに参照して、本明細書の方法について説明する。
【0084】
圧力信号18は、タッチパネル上に支持されるか、またはその内部に埋め込まれたいくつかの圧電センサから受け取られる(ステップS1)。
【0085】
静電容量信号19は、タッチパネル上に支持されるか、またはその内部に埋め込まれたいくつかの静電容量式タッチセンサから受け取られる(ステップS2)。
【0086】
たとえば、タッチパネルは、共通の電極のセット4、5、6を使用した、圧力及び静電容量を組み合わせた測定のためのタッチパネル1であり得る。代替的には、タッチパネルは、圧電センサを含む層に、静電容量式タッチセンサを含む別の層が積み重ねられ得る。
【0087】
静電容量信号19に基づいて、タッチパネルとのユーザインタラクションが発生しているユーザインタラクション期間が特定され(ステップS3)、たとえば、期間t
0~t
5(
図3)である。
【0088】
ユーザインタラクションが発生していない場合(ステップS3)、圧力信号の次のサンプリングが取得される(ステップS1)。
【0089】
ユーザインタラクションが発生している場合(ステップS3)、受け取った圧力信号に基づいて、処理済み圧力信号が生成される(ステップS4)。たとえば、処理済み圧力信号を生成することは、各圧電センサについて、受け取った圧力信号からDCオフセット値を減算することを含み得る。各圧電センサに対応するDCオフセット値は、タッチパネルのスイッチを入れてからウォームアップ期間が経過した後に初期化され得る。初期DCオフセット値は、ユーザインタラクションがない場合に受け取った圧力信号に基づき、たとえば、圧力信号の平均、中央値、最頻値、または範囲に基づく。
【0090】
任意選択で、追加の再較正ステップが使用され得る。たとえば、各圧電センサについて、システム13は、ユーザインタラクションがない期間中に受け取った圧力信号18の値の回帰バッファを維持し得る。回帰バッファに記憶された値の勾配及び分散が求められ得、勾配及び分散が所定の閾値未満であることに応答して、回帰バッファに記憶された値に基づいてDCオフセット値が更新され得る。たとえば、DCオフセット値は、回帰バッファに記憶された値の平均、中央値、最頻値または範囲に基づいて補正され得る。
【0091】
処理済み圧力信号を生成することは、受け取った圧力信号18をフィルタリングすることをさらに含み得る。
【0092】
受け取った信号が、新たに開始されたユーザインタラクションの最初のサンプリングに対応するか否かが判定され(ステップS5)、新たなユーザインタラクションが開始されると、状態レジスタが第1の状態値S0に初期化される(ステップS6)。
【0093】
受け取った信号18、19が、新たに開始されたユーザインタラクションの最初のサンプリングに対応しない場合(ステップS5)、状態レジスタ値が更新され得る(ステップS7)。ユーザインタラクションは、現在の状態レジスタ値と、1つまたは複数の圧力信号特性とに応じて、状態レジスタ値間で遷移する。圧力信号特性には、信号値、信号勾配、信号分散または標準偏差、信号範囲、信号最小値、信号最大値、ユーザインタラクション期間の開始からの経過時間、状態レジスタ値が変更されてからの経過時間、圧力信号のピークを検出してからの経過時間などのうちの1つまたは複数が含まれ得る。圧力信号特性には、信号値、信号勾配、信号分散または標準偏差、信号範囲、信号最小値または信号最大値を、1つまたは複数の対応する所定の閾値または範囲と比較することが含まれ得る。
【0094】
一例では、状態レジスタは、4つの値S0、S1、S2、またはS3のうちの1つに設定され得る。状態レジスタは、ユーザインタラクションの開始からの経過時間が最小持続時間を超えたこと、及び処理済み圧力信号が増加する力に対応する符号を有することに応答して、第1の状態値S0から第2の状態値S1に変更され得る。状態レジスタは、処理済み圧力信号が減少する力に対応する符号を有することに応答して、第2の状態値S1から第3の状態値S2に変更され得る。状態レジスタは、処理済み圧力信号が信号勾配閾値未満の信号勾配を有することに応答して、第3の状態値S2から第4の状態値S3に変更され得る。
【0095】
この例では、4つの状態S0、S1、S2、S3の間の遷移は線形であるが、状態遷移を状態レジスタの現在値にも依存させる方法は、状態レジスタの値の階層的な、非線形の、及び/または分岐するシーケンスをサポートする。これにより、信号処理の動作がユーザインタラクションの現状に大きく依存するようになり得るので、感度を犠牲にすることなく、圧力信号処理の信頼性を向上させることが可能になり得る。
【0096】
ユーザインタラクションによって複数の圧電センサのそれぞれに加えられた力の測定値が更新される(ステップS8)。ユーザインタラクション中に、ユーザインタラクションに対応する状態レジスタの値に応じて対応する処理済み圧力信号を条件付きで積分することによって、力が測定される。積分は数値的手段、たとえば、単純な総和、台形則の適用などを使用して実装され得る。
【0097】
状態レジスタが4つの値S0、S1、S2、またはS3のうちの1つに設定され得る一例では、状態レジスタS0、S1、S2、S3の各値は、処理済み圧力値を積分するための異なる動作に対応するように設定され得る。
【0098】
たとえば、状態レジスタが第1の状態値S0に対応する場合、増加する力に対応する符号を有する処理済み圧力信号値は積分され得、減少する力に対応する処理済み圧力信号値は積分されなくてもよい。状態レジスタが第2の状態値S1に対応する場合、全ての処理済み圧力信号値が積分され得る。状態レジスタが第3の状態値S2に対応する場合、処理済み圧力信号値は積分されなくてもよい。状態レジスタが第4の状態値S
3
に対応する場合、ノイズ閾値を超える処理済み圧力信号値は積分され得、ノイズ閾値を超えない処理済み圧力信号値は積分されなくてもよい。
【0099】
タッチパネルシステムが動作を継続する間(ステップS9)、圧力信号の次のサンプリングが取得される(ステップS1)。
【0100】
このようにして、状態レジスタ値間の遷移は状態レジスタの現在値にも依存するので、圧力信号はより応答性の高い方法で処理され得、これにより測定された力の信頼性の向上が可能になり得る。
【0101】
状態レジスタ値は、複数の圧電センサのそれぞれに対して別々に設定され得る。代替的には、状態レジスタ値はユーザインタラクションごとに設定され得、それによって、隣接する圧電センサのセットは、それらが全て同じユーザインタラクションによって影響を受ける場合に、共通の状態レジスタを使用し得る。
【0102】
この方法は、タッチパネルとの複数の同時のユーザインタラクションをサポートする。
【0103】
ここで特に
図5及び
図6を参照して、
図5に示す測定された圧力信号24への、この方法の一実施態様の適用を説明する。
【0104】
ユーザインタラクションが進むにつれて、圧力信号処理モジュール15は、少なくとも4つの区別可能な状態S
0、S
1、S
2及びS
3
の間で状態レジスタ値を更新する(ステップS7)。参考のため、状態S
0、S
1、S
2、S
3の境界及びそれらの間の遷移を
図5及び
図6に示す。この例では、状態レジスタは、4つの値S
0、S
1、S
2、及びS
3
のうちの1つに設定され得る。測定された圧電圧力信号24の値P(t)は、本明細書の方法に従って処理されて、処理済み圧力信号25が決定され(ステップS4)、これを使用して出力力26が測定される(ステップS8)。
図6では、出力力26を第2のy軸に対してプロットしている。
【0105】
静電容量情報20に基づいて特定されるユーザインタラクションが始まった場合(ステップS3)、ユーザインタラクションは第1の、すなわち初期状態S
0に初期化される(ステップS6)。この例では、初期状態S
0の間、圧力信号24の値P(t)は、タッチパネル1への増加する負荷に関する適切な符号を有さない限り使用されない。
図5及び
図6に示す例では、適切な符号は負であるが、他の例では、圧力信号24の値P(t)は、増加する加えられた力に応じて増加し得る。実際には、この条件は、次式に従って処理済み圧力信号25の値P
*(t)を生成することにより適用され得る。
【0106】
初期状態S0の間に、出力力信号F(t)は、圧力信号24の値P(t)の新たなサンプリングごとに、対応する処理済み信号25の値P*(t)を出力力信号の以前の値に追加すること、すなわち、F(t)=F(t-1)+P*(t)によって取得される(ステップS8)。圧力信号24の値P(t)が増加する加えられた力に関して誤った符号を有する場合、処理済み信号25の値P*(t)はゼロに設定されるので、これらの値は出力力信号F(t)に影響しない。
【0107】
出力力信号26の値F(t)は加えられた力に比例するが、絶対的な加えられた力の推定測定値を取得するには、測定値F(t)に対応するスケール係数を乗算することが必要になる。スケール係数は、既知の印加力プロファイルを使用した較正実験から取得され得る。スケール係数はさらに、タッチパネル1とのユーザインタラクションの位置に依存し得る。
【0108】
第2の主負荷状態S1への遷移は、ユーザインタラクションの開始から所定の持続時間が経過すると発生し得る(ステップS7)。ユーザインタラクションの開始は、静電容量情報20から良好な精度で知られる。主負荷状態S1の間、全てのサンプル圧力信号24の値P(t)は無条件に使用され得、すなわち、処理済み信号はP*(t)=P(t)として設定され得(ステップS4)、出力力信号F(t)はF(t)=F(t-1)+P*(t)として更新され得る(ステップS8)。
【0109】
圧力信号24の値P(t)が符号を変えた場合、または圧力信号処理モジュール15が初期負荷ピークP
1を最終的に検出した場合に(ステップS7)、第3の、すなわち整定状態S
2への遷移が発生し得る。
図5及び
図6に示す例では、圧力信号24の値P(t)が符号を負から正に変化させたので、S
1からS
2への状態遷移が発生する。当然ながら、加える力を増加させると圧力信号24が増加する他の例では、遷移は反対方向に検出される。初期ピークP
1のおおよその時刻及び値を特定するための例示的な処理を以下に説明する。整定状態S
2の間、圧力信号24の値P(t)は、たとえば、処理済み信号値P
*(t)をP
*(t)=0として設定することによって(ステップS4)、使用されなくてもよい(ステップS8)。このように、
図5及び
図6では、この例では、処理済み信号P
*(t)は、偽のオーバーシュートのピークP
2の間にゼロにクランプすることが観察され得る。
【0110】
圧力信号24の値P(t)がDCオフセットPoffで安定すると(ステップS7)、第4の、すなわち安定状態S3への遷移が発生し得る。一般に、DCオフセットPoffは、時間と共にゆっくりと、及び/または圧力信号24の値P(t)の各負荷/除荷ピークに続いて変化し得る。いくつかの例では、圧力信号処理モジュール15は、Nbuff個の以前の圧力サンプル{P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)}のバッファを維持し、その状況で、t、t-1、t-Nbuffはサンプリング時刻を示す整数である。それぞれの新たな圧力サンプルP(t)が取得された場合、圧力信号処理モジュール15は、バッファされたサンプル{P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)}への線形回帰を計算する。バッファされた圧力信号24のサンプル{P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)}の傾きmの大きさ及び分散値VARが事前に較正された閾値mstable、VARstableを下回ると、圧力信号処理モジュール15は、状態レジスタ値を安定状態S3に更新し、バッファされたサンプル{P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)}の平均値を、オフセット補正値Pcor=mean({P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)})として設定する。
【0111】
安定状態S
3の間、処理済み信号25のサンプルP
*(t)は、P
*(t)=P(t)-P
corに従って設定され得る(ステップS4)。次いで、出力力信号26の値F(t)は、次式に従って更新され得る(ステップS8)。
【0112】
ここで、Pnoiseはノイズ閾値である。たとえば、Pnoiseは、ユーザインタラクションがない較正期間中の圧力信号24の値P(t)の標準偏差の倍数に設定され得る。ノイズ閾値Pnoiseは、較正期間中に記録された圧力信号24の値P(t)の標準偏差の5倍に設定され得る。ノイズ閾値Pnoiseは事前に設定され得、または静電容量情報20においてユーザインタラクションが検出されない静穏期間中に定期的に更新され得る。
【0113】
ユーザの圧力の変化は、安定状態S
3の間に、加えられた力の増加または減少のいずれであるかに関係なく、高感度でキャプチャされ得る。
図5及び
図6に示す例では、加えられる圧力のわずかな減少に対応する小さなピークP
3が検出され、出力力信号26の値F(t)が対応して減少する。
【0114】
安定状態S3の間に、タッチパネル1に加えられる力の変化を検出するための閾値は、信号全体に適用される従来の勾配及び値に基づく条件付き積分の場合に可能な値よりも低い値に設定され得る。これは、静電気放電、初期オフセットP0、オーバーシュートオフセットPoff、及び偽ピークP2などの影響は、他の状態レジスタ値S0、S1、及びS2を使用することで排除され得るためである。このようにして、本明細書の方法は、ユーザの指または導電性スタイラスがタッチパネル1と最初に接触している間及びその直後の信頼性を向上させるだけでなく、ユーザインタラクションの主要部分の間の加えられる力の比較的小さなユーザの調節の高感度検出も可能にし得る。
【0115】
実際には、必要なオフセット補正Pcorは、ユーザが一定の圧力を維持している間に、ゆっくりとドリフトし得る。追加的には、ユーザが加える圧力を大幅に増加または減少させた場合、これによって、圧電圧力信号24の値P(t)の減衰後のオフセットPoffが変化し得る。しかしながら、バッファ{P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)}が比較的平坦のまま(すなわち、m<mstableかつVAR<VARstable)である間に、補正値Pcorを単純に継続的に更新することはできない。この場合には、加えられる圧力のわずかな増加または減少は、処理済み圧力25のサンプルP*(t)から継続的に除去されることになるので、検出されなくなる。
【0116】
代わりに、安定状態S3の間に、圧力信号処理モジュール15は、それぞれの新たなサンプリングP(t)の後に、バッファ{P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)}に対して線形回帰を実行し得る。バッファ{P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)}は平坦のまま(すなわち、m<mstableかつVAR<VARstable)である間に、バッファされたサンプルの平均値が補正値Pcorと比較され、差の大きさ|mean({P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)})-Pcor|が閾値ΔPcor未満である場合、補正値Pcorは変更されない。しかしながら、差|mean({P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)})-Pcor|が閾値ΔPcorを超える場合、補正値はPcor=mean({P(t),P(t-1),...,P(t-Nbuff+1)})に更新される。
【0117】
閾値ΔPcorの値は、タッチパネル1及びシステム13ごとに異なり得る。所与のタッチパネル1及びシステム13の適切な値は、既知の較正力プロファイルから選択したものに対応するデータを測定することによって取得され得る。単純なケースでは、閾値ΔPcorは、既知の変化しない加えられた力の持続時間にわたって観測された最大のドリフトに応じて設定され得る。代替的には、既知の較正力プロファイルを使用して得られた測定値を使用して、既知の力と測定された力との偏差をコスト関数として使用した当てはめ用のトレーニングセットを生成し得る。
【0118】
安定状態S3は、ユーザインタラクションの終了時に終了する。
【0119】
以下でさらに説明するいくつかの例では、本明細書では「ハード」タイプのユーザインタラクションと呼ぶ、初期負荷ピークP1への明らかな圧力の増加から始まるユーザインタラクションと、本明細書では「ソフト」タイプのユーザインタラクションと呼ぶ、圧力が初期負荷ピークP1までよりゆっくりと増加する他のユーザインタラクションとを区別することが有用であり得る。一部の「ソフト」タイプのユーザインタラクションでは、加えられる力が非常にゆっくりと増加する場合、はっきりした初期負荷ピークP1が観察されない場合がある。「ハード」及び「ソフト」タイプのユーザインタラクションの区別された処理を含むような方法の拡張について、以下で説明する。
【0120】
方法を実装する例
図8をさらに参照すると、本明細書による方法を実装するための例示的な処理チェーンの処理フロー図が示されている。本明細書の方法は、
図8と、特定の信号処理ステップのさらなる詳細を示す後続の図とに示すステップに限定されない。
【0121】
圧力信号処理モジュール15は、第1及び第2の検知電極5、6に対応する圧力信号18の値P(t)を受け取る(ステップS10)。第1及び第2の検知電極5、6それぞれの圧力信号18の値P(t)は、全て同時に受け取られ得る。代替的には、第1及び第2の電極5、6の各対が所定のまたは動的に決定されたシーケンスに従って読み出される場合、第1及び第2の検知電極5、6に対応する圧力信号18の値P(t)は順次受け取られ得る。一般に、各サンプリング周期中に第1または第2の検知電極5、6のそれぞれについて、1つの圧力信号18の値P(t)が取得される。たとえば、
図1及び
図2に示すように配向され、第2のy方向に座標y
1、y
2、...、y
Nに離間したN個の第1の検知電極5が存在する場合、サンプリング時刻tにおける対応する圧力サンプルのセットは、{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}と表され得る。セット{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}は、圧力信号処理モジュール15によって同時にまたは順次受け取られ得る。同様に、圧力信号処理モジュール15は、
図1及び
図2に示すように配向され、第1のx方向に座標x
1、x
2、...、x
Mに離間したM個の第2の検知電極6から圧力サンプルのセット{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}を同時にまたは順次受け取る。
【0122】
圧力サンプル{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}が同時に受け取られる場合、サンプリング時刻インデックスtの意味は明確であり、これは対応するサンプルが取得された時刻を表し、t-1は前のサンプリングであり、t+1は次のサンプリングであり、以下同様である。圧力サンプル{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}が順次取得される場合、インデックスtは検知電極5、6を読み取る1サイクルを指す。たとえば、タッチパネル1が読み取られて、圧力サンプルのセット{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}が取得され、次いでスキャンが繰り返された場合、それに続く圧力サンプルのセット{P(t+1,y1),P(t+1,y2),...,P(t+1,yN)}、{P(t+1,x1),P(t+1,x2),...,P(t+1,xM)}が取得され、以下同様である。
【0123】
粗いDCオフセット補正は、各圧力サンプル{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}から第1のDCオフセットDC
1を減算することにより実行される(ステップS11)。一般に、各検知電極5、6は、異なる第1のオフセット値を有し、セット{DC
1(y
1),DC
1(y
2),...,DC
1(y
N)}及び{DC
1(x
1),DC
1(x
2),...,DC
1(x
M)}を形成し得る。タッチパネル1及びシステム13が電源投入されると、ウォームアップフェーズ中に第1のオフセットDC
1が決定され、この処理については以下で詳細に説明する(
図9)。
【0124】
圧力サンプル{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}は、フィルタリング、間引きなどの処理を含み得る信号調整ステップに従って処理される(ステップS12)。以前に受け取った圧力サンプル{P(t-1,y1),P(t-1,y2),...,P(t-1,yN)}、{P(t-1,x1),P(t-1,x2),...,P(t-1,xM)}のバッファは、時間領域フィルタを適用する際に使用するために維持され得る。
【0125】
必要であれば、圧力サンプル{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}は、受け取った静電容量情報20と同期するまでバッファされ、遅延される(ステップS13)。静電容量情報20は、たとえば、1つまたは複数のユーザインタラクション27(
図13)の数、開始時刻、終了時刻、及び位置を示すために、本明細書の方法によって使用される。しかしながら、静電容量情報20が静電容量信号処理モジュール16から利用可能になる前に、伝搬遅延及び処理遅延がしばしばあり得る。圧力サンプル{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}に適用される遅延が、以降の処理のために静電容量情報20との再同期が可能になるように決定される。静電容量情報20が利用可能になる前の伝搬遅延及び処理遅延がタッチパネル1の1サンプリング周期未満である場合、遅延(ステップS13)は不要であり得る。
【0126】
圧力信号18を受け取ることに加えて、圧力信号処理モジュール1
5は、静電容量信号処理モジュール16から出力された静電容量情報20も受け取る(ステップS14)。静電容量情報20は、ユーザインタラクション27(
図13)が静電容量信号処理モジュール16によって検出されたか否かに関する情報と、検出されたユーザインタラクションごとのタッチパネル上の対応するx-y座標とを含む。好ましくは、圧力信号処理モジュール1
5は、2つ以上のユーザインタラクション27(
図13)のマルチタッチ検出を同時にサポートする。
【0127】
任意選択で、静電容量情報20と、圧力サンプルのセット{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}とのサンプリング周期が等しくない場合、静電容量情報20の時間軸は、圧力サンプル{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}の時間軸と一致するように変換され得る(ステップS15)。
【0128】
圧力信号処理モジュール15は、タッチパネル1及びシステム13の最初の電源投入に続くウォームアップ期間が終了したか否かをチェックする(ステップS16)。ウォームアップ期間の終了は、タッチパネル1及びシステム13のスイッチを入れてから固定または所定の期間後に発生する必要はない。代わりに、タッチパネル1及びシステム13が安定動作に達したと較正手順(ステップS17)が判定した場合に、圧力信号処理モジュール15はウォームアップフラグを「完了」の値に設定する。
【0129】
圧力信号処理モジュール15は、圧力サンプル{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}が安定したDCオフセット値に達したか否かを判定するための初期較正手順を実行する(ステップS17)。圧力サンプル{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}が安定したDCオフセット値に達した場合、ウォームアップフラグが「完了」に設定される。全ての検知電極5、6に対応する圧力サンプル{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}は、ウォームアップ期間に「完了」のフラグが立てられる前に、安定したDCオフセット値に達しなければならない。この条件が全ての検知電極5、6について満たされると、対応する第1のDCオフセット値のセット{DC
1(y
1),DC
1(y
2),...,DC
1(y
N)}及び{DC
1(x
1),DC
1(x
2),...,DC
1(x
M)}が取得される。初期較正手順の一例については、以下でさらに詳細に説明する(
図9参照)。
【0130】
ウォームアップフラグが「完了」に設定されている場合(ステップS18)、現在の圧力サンプルのセット{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}の以降の処理が実行される(ステップS19)。そうでない場合、圧力信号処理モジュール15は、次の圧力サンプルのセット{P(t+1,y1),P(t+1,y2),...,P(t+1,yN)}、{P(t+1,x1),P(t+1,x2),...,P(t+1,xM)}(ステップS10)と、静電容量情報(ステップS14)とを取得する。
【0131】
任意選択で、さらなる信号調整が、圧力サンプル{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}に適用され得る(ステップS19)。たとえば、移動平均フィルタが適用され得る。以前に受け取った圧力サンプル{P(t-1,y1),P(t-1,y2),...,P(t-1,yN)}、{P(t-1,x1),P(t-1,x2),...,P(t-1,xM)}のバッファが、フィルタを適用する際に使用するために維持され得る。追加的または代替的には、さらなる信号調整は、処理の異なる時点で(たとえば、ステップS20とステップS21との間に)実行され得る。
【0132】
第1のDCオフセットDC
1は初期較正後には正確であるが、前述のように、圧力信号18のDCオフセットは、時間の経過と共にわずかに変化し得、ユーザインタラクション27(
図13)の実行の後または間にも変化し得る。静電容量情報20から検出されたユーザインタラクション27(
図13)がないアイドル期間中に、追加の第2の、すなわち細かいDCオフセット値DC
2を決定するために再較正処理が行われる(ステップS20)。第2のDCオフセット値DC
2は、各圧力サンプル{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}から減算される。一般に、各検知電極5、6は、異なる第2のオフセット値に対応して、セット{DC
2(y
1),DC
2(y
2),...,DC
2(y
N)}及び{DC
2(x
1),DC
2(x
2),...,DC
2(x
M)}を形成し得る。再較正処理の一例については、以下でさらに説明する(
図10)。
【0133】
静電容量情報20に基づいて、アクティブなユーザインタラクション27(
図13)の数N
touchが特定される(ステップS21)。同時にアクティブなユーザインタラクション27(
図13)の最大数は、静電容量信号処理モジュール16の能力に依存し、たとえば、1~10個のユーザインタラクション27(
図13)であり得る。
【0134】
現在の圧力サンプル{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}、及びバッファされた以前に受け取った圧力サンプル{P(t-1,y
1),P(t-1,y
2),...,P(t-1,y
N)}、{P(t-1,x
1),P(t-1,x
2),...,P(t-1,x
M)}などを分析して、各検知電極5、6に対応する状態レジスタ値S
0、S
1、S
2、S
3(及び任意選択で、ユーザインタラクションタイプ)を決定する(ステップS22)。また、出力される処理済み圧力サンプル{P
*(t,y
1),P
*(t,y
2),...,P
*(t,y
N)}、{P
*(t,x
1),P
*(t,x
2),...,P
*(t,x
M)}が確定される。この処理は本明細書では「プッシュ詳細化(push elaboration)」と呼び、一例を以下でさらに説明する(
図12)。
【0135】
前述の状態レジスタ値S0、S1、S2、S3に応じて、測定された出力力26の値F(t)が更新される(ステップS23)。出力力26は、第1のセット{F(t,y1),F(t,y2),...,F(t,yN)}を形成する第1の検知電極5ごとに、また、第2のセット{F(t,x1),F(t,x2),...,F(t,x
M
)}を形成する第2の検知電極6ごとに、別々に測定される。
【0136】
タッチパネル1及びシステム13の力検知機能がアクティブである限り(ステップS24)、圧力信号処理モジュール15は、次の測定された圧力サンプルのセット{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}(ステップS10)と、対応する静電容量情報20(ステップS14)とを受け取ることによって継続する。
【0137】
初期較正
図9をさらに参照すると、例示的な初期較正処理(ステップS17)の処理フロー図が示されている。
【0138】
初期較正処理(ステップS17)は、圧力信号処理モジュール15がウォームアップ段階に「完了」のフラグをまだ立てていないと判定された場合に実行される(ステップS16)。
【0139】
静電容量情報20をチェックして、静電容量信号処理モジュール16が任意のユーザインタラクション27(
図13)を検出したか否かを判定する(ステップS25)。発生している任意のユーザインタラクション27(
図13)が存在する場合、初期較正は実行されない(ステップS18)。較正は各検知電極5、6に対して別々に実行されるが、タッチパネル1のプレートのたわみによって一般的には圧電層9全体に歪みが加えられるので、較正ではタッチパネル1のどこにもユーザインタラクション27(
図13)が発生していないことが必要である。これにより、ゼロ信号条件に対応するデータの取得が妨げられる。
【0140】
アクティブなユーザインタラクション27(
図13)が存在しない場合(ステップS25)、圧力信号処理モジュール15は、各検知電極5、6について、較正バッファに記憶されたN
buf2個の最も直近の圧力サンプルの平均値を計算する(ステップS26)。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目について、圧力信号処理モジュール15は、対応するオフセット値OFF(t,y
n)=mean({P(t,y
n),P(t-1,y
n),...,P(t-N
buf2+1,y
n)})を計算する。このようにして、第1の検知電極5のそれぞれに対応するオフセット値のセット{OFF(t,y
1),OFF(t,y
2),...,OFF(t,y
N)}が取得され、第2の検知電極6のそれぞれに対応するオフセット値のセット{OFF(t,x
1),OFF(t,x
2),...,OFF(t,x
M)}も取得される。
【0141】
オフセット値{OFF(t,y1),OFF(t,y2),...,OFF(t,yN)}、{OFF(t,x1),OFF(t,x2),...,OFF(t,xM)}がオフセットバッファに追加され、これはNbuf3個の最も直近に取得されたオフセット値を保持するものである(ステップS27)。
【0142】
各検知電極5、6について、オフセットバッファに記憶された対応するオフセット値の範囲が決定される(ステップS28)。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目について、圧力信号処理モジュール15は、対応するオフセット値のセットの範囲をRANGE({OFF(t,yn),OFF(t-1,yn),...,OFF(t-Nbuf3+1,yn)})として計算する。
【0143】
各検知電極5、6について、オフセットバッファの対応する範囲は、所定の範囲閾値P
rangeに対してチェックされる(ステップS29)。決定された範囲のいずれかが所定の範囲閾値P
range以上である場合、ウォームアップ段階はまだ完了しておらず、ウォームアップフラグは「未完了」のままである。範囲閾値P
rangeは、システム13が電源投入され、安定状態に達するまでデータが記録される較正実験から決定され得る。ユーザインタラクション27(
図13)がない場合の圧力信号18の統計を使用して、範囲閾値P
rangeを決定し得る。範囲閾値P
rangeは、各検知電極5、6に対して個別に設定され得る。
【0144】
しかしながら、決定された範囲の全てが所定の範囲閾値Prange未満である場合、ウォームアップフラグは「完了」の値に設定される(ステップS30)。
【0145】
各検知電極5、6に対応するDC1オフセット値は、それぞれのオフセットバッファの中間点に基づいて設定される(ステップS31)。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目に対応するDC1オフセットは、DC1(yn)=0.5*(MAX({OFF(t,yn),OFF(t-1,yn),...,OFF(t-Nbuf3+1,yn)})+MIN({OFF(t,yn),OFF(t-1,yn),...,OFF(t-Nbuf3+1,yn)})として計算され、他の各検知電極5、6についても同様である。
【0146】
圧力サンプル{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}は、それぞれDCオフセットに応じて調整され、これは、それぞれのDC1オフセット値{DC1(y1),DC1(y2),...,DC1(yN)}、{DC1(x1),DC1(x2),...,DC1(xM)}を減算することによって行われる(ステップS32)。P(t,yn)などの用語は、DC1オフセットでの調整後の圧力サンプルを指すためにも使用される。
【0147】
第1の再較正処理
図10をさらに参照すると、第1の例示的な再較正処理(ステップS20)の処理フロー図が示されている。
【0148】
静電容量情報20がチェックされて、静電容量信号処理モジュール16が任意のユーザインタラクション27(
図13)を検出したか否かが判定される(ステップS33)。再較正は各検知電極5、6に対して別々に実行されるが、タッチパネルのプレートのたわみによって一般的には圧電層9全体に歪みが加えられるので、再較正ではタッチパネル1のどこにもユーザインタラクション27(
図13)が発生していないことが必要である。これにより、ゼロ信号条件に対応するデータの取得が妨げられる。
【0149】
アクティブなユーザインタラクション27(
図13)が存在しない場合(ステップS33)、圧力信号処理モジュール15は、タッチフラグを「真」の値に設定し(ステップS34)、圧力サンプルのセット{P(t,y
1),P(t,y
2),...,P(t,y
N)}、{P(t,x
1),P(t,x
2),...,P(t,x
M)}を回帰バッファに追加し、これはN
buf4個の最も直近に取得された圧力サンプルを記憶するものである(ステップS35)。
【0150】
各検知電極5、6について、回帰バッファに記憶された対応する圧力サンプルに対して線形回帰直線が計算される(ステップS36)。回帰直線は、回帰バッファが満杯になると、条件付きで計算される。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目について、回帰バッファにNbuf4個の以前のサンプルが記憶されると、圧力信号処理モジュール15は、圧力サンプルのセット{P(t,yn),P(t-1,yn),...,P(t-Nbuf4+1,yn)}を使用して、N個の第1の検知電極5のうちのn番目についての回帰直線を計算する。
【0151】
回帰バッファが満杯になる条件は、いくつかの方法で実施され得る。たとえば、静電容量情報20から最後のユーザインタラクション27(
図13)が検出されてからのサンプル数のカウンタが使用され得る。代替的には、回帰バッファには最初に「Inf」または「NAN」(非数)などの未定義の値が入力され得、その結果、全ての初期値が実際のデータで上書きされるまで回帰分析が数値を返すことはないので、回帰バッファが満杯になったときを簡単に検出することが可能になる。この場合、ユーザインタラクション27(
図13)が発生すると、回帰バッファはこの初期状態にリセットされ得る(ステップS41)。
【0152】
各検知電極5、6について、対応する圧力サンプルの回帰直線分析から得られた勾配m及び分散VARは、再較正のために、所定の勾配閾値mrecal及び所定の分散閾値VARrecalと比較される(ステップS37)。
【0153】
特定の検知電極5、6に対応する勾配m及び分散VARが共に、それぞれの勾配及び分散の閾値mrecal、VARrecal未満である場合(ステップS37)、対応するDC2オフセット値が更新される(ステップS38)。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目について、条件m<mrecalかつVAR<VARrecalが満たされている場合、対応するDC2オフセットDC2(yn)は、たとえば、P(t,yn)またはMEAN({P(t,yn),P(t-1,yn),...,P(t-Nbuf4+1,yn)})に更新され、他の検知電極5、6についても同様である。
【0154】
初期較正(ステップS17)とは異なり、DC2オフセットは全て同時に更新される必要はない。たとえば、いくつかの検知電極5、6に対応する回帰直線が勾配閾値及び分散閾値を満たす場合、対応するDC2オフセットが更新され、残りのDC2オフセットは更新されない。
【0155】
圧力サンプル{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}は各々、それぞれのDC2オフセット値{DC2(y1),DC2(y2),...,DC2(yN)}、{DC2(x1),DC2(x2),...,DC2(xM)}を減算することにより、調整される(ステップS39)。DC2オフセットのいずれかが更新されなかった場合(ステップS38)、以前のDC2オフセットが使用される。タッチパネル1及びシステム13が電源投入されると、全てのDC2オフセットがゼロに初期化される。
【0156】
P(t,yn)などの用語は、DC2オフセットでの調整後の圧力サンプルを指すためにも使用される。
【0157】
アクティブなユーザインタラクション27(
図13)が静電容量情報20から特定された場合(ステップS33)、タッチフラグが「真」の値を有するか否かがチェックされる(ステップS40)。
【0158】
タッチフラグが「真」の値を有する場合(ステップS40)、回帰バッファが消去される(ステップS41)。たとえば、カウンタを使用して回帰バッファが満杯になったときを特定した場合に、回帰バッファは全てゼロにリセットされ得る。代替的には、前述のように、回帰バッファは、記憶された全ての値を「Inf」または「NAN」の未定義の値にリセットすることにより、消去され得る。ほとんどのコンピュータプログラミング言語またはスクリプト言語は、ゼロ除算エラーなどのサポートを許可するために、未定義の値のサポートを含む。
【0159】
タッチフラグは「偽」の値に設定され(ステップS42)、圧力サンプル{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}は各々、それぞれのDC2オフセット値{DC2(y1),DC2(y2),...,DC2(yN)}、{DC2(x1),DC2(x2),...,DC2(xM)}を減算することによって調整される(ステップS39)。
【0160】
ステップS33、S34、S40、及びS42の全体的な効果は、ユーザインタラクションがない場合にタッチフラグが「真」の値をとること、及び新たなユーザインタラクションの最初のサンプルが受け取られると、タッチフラグが「偽」の値にリセットされ、回帰バッファが消去されることである。
【0161】
ユーザインタラクション27(
図13)がないタッチパネル1の静穏期間中のDC
2オフセットの継続的な再較正により、時間の経過に伴うDCオフセットのドリフトに対してこの方法の精度が維持される。
【0162】
第2の再較正処理
図11をさらに参照すると、第2の例示的な再較正処理(ステップS20)の処理フロー図が示されている。
【0163】
第2の例示的な再較正処理(ステップS20)は、第1の例示的な再較正処理(ステップS20)の全てのステップと、各検知電極5、6に対応する信号の分散を追跡することに向けられる追加のステップとを含む。この情報は各検知電極5、6に対応する測定値の品質を推定するのに役立ち得、これは、この方法のいくつかの例では、意思決定チャネルの割り当てを支援するために使用される。第1の再較正方法と同じ第2の再較正方法のステップには、同じ番号が付けられている。
【0164】
任意のアクティブなユーザインタラクション27(
図13)の存在が、静電容量情報を使用して判定され(ステップS33)、ユーザインタラクション27(
図13)がない場合、タッチフラグは前述のように「真」の値に設定される(ステップS34)。
【0165】
カウンタC
varが1だけインクリメントされる(ステップS43)。ユーザインタラクション27(
図13)が最初に検出されたときはいつでも、カウンタC
varはゼロにリセットされる(ステップS47)。
【0166】
圧力信号処理モジュール15は、圧力サンプルのセット{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}を分散バッファに追加し、これは最大Nbuf5個の最も直近に取得された圧力サンプルを記憶するものである(ステップS44)。
【0167】
圧力信号処理モジュール15は、カウンタCvarが分散バッファ長Nbuf5に等しいか否かをチェックする(ステップS45)。等しい場合、満杯の分散バッファに基づいて、一時的なチャネル分散VARtempが計算される(ステップS46)。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目について、圧力信号処理モジュール15は、圧力サンプルのセット{P(t,yn),P(t-1,yn),...,P(t-Nbuf5+1,yn)}の分散を測定する。一般に、各検知電極5、6に対応するチャネル分散は個別に追跡され、その結果、測定された分散は、セット{VARtemp(y1),VARtemp(y2),...,VARtemp(yN)}、{VARtemp(x1),VARtemp(x2),...,VARtemp(xM)}を形成する。
【0168】
次いで、カウンタCvarがゼロにリセットされる(ステップS47)。このようにして、一時的なチャネル分散VARtempは、Nbuf5サンプルごとに更新されて、各検知電極5、6に対応する分散が追跡される。
【0169】
DC2オフセットチェック及び更新手順は、前述のように進行する(ステップS35、S36、S37、及びS38)。
【0170】
静電容量情報20においてユーザインタラクション27(
図13)が検出された場合(ステップS33)、圧力信号処理モジュール15は、前述のように、タッチフラグが「真」の値に設定されているか否かをチェックする(ステップS40)。
【0171】
タッチフラグが「真」に等しい場合(ステップS40)、すなわち、これが新たなユーザインタラクション27(
図13)に対応する最初のサンプルである場合、圧力信号処理モジュール15は、カウンタC
varが最小値C
min以上であるか否かを判定する(ステップS48)。カウンタがC
var<C
minを満たす場合、最も直近に取得されたチャネル分散のセット{VAR
temp(y
1),VAR
temp(y
2),...,VAR
temp(y
N)}、{VAR
temp(x
1),VAR
temp(x
2),...,VAR
temp(x
M)}が、新たに開始されたユーザインタラクション27(
図13)に対応する出力分散{VAR
out(y
1),VAR
out(y
2),...,VAR
out(y
N)}、{VAR
out(x
1),VAR
out(x
2),...,VAR
out(x
M)}として設定される(ステップS50)。このようにして、第1及び第2のユーザインタラクション27(
図13)の間隔がC
min未満である場合、第1のユーザインタラクション27(
図13)の前に、最も直近に取得されたチャネル分散が、第2のユーザインタラクション27(
図13)にも割り当てられる。
【0172】
しかしながら、カウンタC
var≧C
minである場合(ステップS48)、各検知電極5、6に対応する出力分散{VAR
out(y
1),VAR
out(y
2),...,VAR
out(y
N)}、{VAR
out(x
1),VAR
out(x
2),...,VAR
out(x
M)}は、最も直近に取得されたチャネル分散{VAR
temp(y
1),VAR
temp(y
2),...,VAR
temp(y
N)}、{VAR
temp(x
1),VAR
temp(x
2),...,VAR
temp(x
M)}と、分散バッファの現在満たされている部分の分散との加重平均として決定される(ステップS49)。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目について、圧力信号処理モジュール15は、対応する出力分散VAR
out(y
n)を、VAR
temp(y
n)と、圧力サンプルのセット{P(t,y
n),P(t-1,y
n),...,P(t-C
var+1,y
n)}の分散との加重和として取得し、他の検知電極5、6についても同様である。和は、分散値を取得するために使用されるサンプルの数、すなわち、N
buf5及びC
varに従って重み付けされる。このようにして、新たなユーザインタラクション27(
図13)に至るまでの最も正確な一時的な分散の測定値が取得され得る。
【0173】
各検知電極5、6に対応する出力分散値{VARout(y1),VARout(y2),...,VARout(yN)}、{VARout(x1),VARout(x2),...,VARout(xM)}は、いくつかの例では、それぞれの検知電極5、6の品質指標に寄与し得る。そのような品質指標は、出力力のセット{F(t,y1),F(t,y2),...,F(t,yN)}、{F(t,x1),F(t,x2),...,F(t,x
M
)}を測定するための主要または意思決定検知電極5、6の決定を手助けするために使用され得る。主要または意思決定検知電極5、6を割り当てて使用する機能については、以下で説明する。
【0174】
新たなユーザインタラクション27(
図13)の最初のサンプルに関して、分散バッファは、全ての値をゼロに再初期化することで消去され(ステップS51)、回帰バッファが前述のように消去され(ステップS41)、カウンタC
varがゼロにリセットされ(ステップS47)、タッチフラグが前述のように「偽」の値に設定される(ステップS42)。
【0175】
静電容量情報20からユーザインタラクション27(
図13)が検出され(ステップS33)、タッチフラグが「偽」の値を有する(ステップS40)場合、すなわち、ユーザインタラクションの2つ目以降のサンプリングの場合、出力分散の最も直近の値{VAR
out(y
1),VAR
out(y
2),...,VAR
out(y
N)}、{VAR
out(x
1),VAR
out(x
2),...,VAR
out(x
M)}が再使用される(ステップS52)。換言すれば、ユーザインタラクションが開始されたときに求められた出力分散VAR
outが、そのユーザインタラクション27(
図13)全体を通して使用される。これは、ユーザインタラクション27(
図13)に関連する圧力信号及び/または追加のノイズ源のために、ユーザインタラクション27(
図13)中に、各検知電極5、6に対応する内在する分散を求めることが困難であり得るためである。
【0176】
プッシュ詳細化処理
図12をさらに参照すると、状態レジスタ値S
0、S
1、S
2、S
3と、処理済み圧力値{P
*(t,y
1),P
*(t,y
2),...,P
*(t,y
N)}、{P
*(t,x
1),P
*(t,x
2),...,P
*(t,x
M)}と、任意選択で、進行中のユーザインタラクション27(
図13)のタイプ(ハードまたはソフト)とを決定する処理の処理フロー図が示されている。この処理は、簡潔にするために、「プッシュ詳細化」処理と呼ぶ。
【0177】
アクティブなユーザインタラクションの数の特定(ステップS21)に続いて、プッシュ詳細化処理が開始する(ステップS22)。
【0178】
アクティブなセンサセットが第1のセンサセットに割り当てられる(ステップS53)。一般に、タッチパネル1は、1つ、2つまたはそれ以上の異なるセットの検知電極5、6を含み得る。たとえば、
図1及び
図2に示すタッチパネル1では、第1の検知電極5はy方向の力を測定するyセットを形成し、第2の検知電極6はx方向の力を測定するxセットを形成する。
【0179】
アクティブなセンサセットの物理パラメータが取り出される(ステップS54)。たとえば、第1のyセットの検知電極5と、第2のxセットの検知電極6とを有する、
図1及び
図2に示すタッチパネル1において、第1の電極5のy方向の間隔は、第2の電極6のx方向の間隔と等しい必要はない。検知電極5、6の物理的位置及び間隔は、主要または意思決定電極5、6を特定するために使用される(ステップS58)。
【0180】
現在の圧力サンプルのセット{P(t,y1),P(t,y2),...,P(t,yN)}、{P(t,x1),P(t,x2),...,P(t,xM)}がプッシュ詳細化圧力バッファに追加され、これはNbuf6個の最も直近に受け取った圧力サンプルを保持するものである(ステップS55)。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目について、プッシュ詳細化圧力バッファは、圧力サンプルのセット{P(t,yn),P(t-1,yn),...,P(t-Nbuf6+1,yn)}を保持し、その他の検知電極5、6についても同様である。
【0181】
圧力信号処理モジュール15は、静電容量情報20に基づいて、任意のユーザインタラクション27(
図13)が発生しているか否かを判定する(ステップS56)。少なくとも1つのユーザインタラクション27(
図13)が発生している場合、ユーザインタラクション持続時間カウンタC
intがインクリメントされる(ステップS57)。カウンタC
intは、1ずつインクリメントされる。
【0182】
静電容量情報20に基づいて、主要または意思決定検知電極5'、6'の初期割り当てが行われる(ステップS58)。一般に、検知電極5、6の各セットについて、意思決定検知電極5'、6'の初期割り当ては、1つまたは複数のユーザインタラクション27(
図13)の2Dマルチタッチデータを静電容量情報20からそれぞれの電極のセットの物理的位置に投影して、各アクティブなユーザインタラクション27(
図13)に最も近い検知電極5、6を特定することを含む。最も近い検知電極5、6は、最も強い圧力信号を有する可能性が高く、結果的に、最初に意思決定検知電極5'、6'として選択される。しかしながら、たとえば、隣接チャネルが優れた品質を有すると判定された場合、初期割り当てはその後変更され得る。たとえば、ユーザインタラクション27(
図13)に最も近い検知電極5、6が、最も強い圧力信号を有しており、また、ユーザの指の静電気放電から最も大きく影響を受ける場合があり、その結果、実際には隣接する検知電極5、6がより良好な品質の信号を提供する。
図1及び
図2に示すように、検知電極5、6がx電極及びy電極として配置される場合、ユーザインタラクションの2次元位置をxセットまたはyセットに投影すると、意思決定電極5'、6'の数が、アクティブなユーザインタラクション27(
図13)の数よりも少なくなり得る。
【0183】
図13及び
図14をさらに参照すると、4つの同時のユーザインタラクション27
A、27
B、27
C、27
Dの一例について、意思決定検知電極5'、6'の初期割り当てを行う処理が示されている。
【0184】
図13及び
図14に示す例では、N=8個の第1の検知電極5
1、5
2、…、5
8があり、これらは、n番目の第1の検知電極5
nに最も近い点の所在地がy
n-1≦y<y
nとして表され、圧力サンプルP(t,y
n)に対応し得るように離間している。同様に、M=15個の第2の検知電極6
1、6
2、...、6
15があり、これらは、m番目の第2の検知電極6
mに最も近い点の所在地がx
m-1≦x<x
mとして表され、圧力サンプルP(t,x
m)に対応し得るように離間している。
【0185】
特に
図13を参照すると、第1のユーザインタラクション27
Aは、静電容量信号処理モジュール16によって決定され、静電容量情報20に含まれる重心座標x=x
A、y=y
Aを有する。重心座標x
A、y
Aは、x
1≦x
A<x
2及びy
2≦y
A<y
3となるようなものであり、すなわち、第1のユーザインタラクション27
Aは、3番目のy電極5
3及び2番目のx電極6
2に最も近い。同様に、第2のユーザインタラクション27
Bは、重心座標x
5≦x
B<x
6及びy
5≦y
B<y
6を有し、第3のユーザインタラクション27
Cは、重心座標x
5≦x
C<x
6及びy
2≦y
C<y
3を有し、第4のユーザインタラクション27
D
は、重心座標x
11≦x
D<x
12及びy
3≦y
D<y
4を有する。
【0186】
特に
図14を参照すると、4つのユーザインタラクション27
A、27
B、27
C、27
Dの重心座標がx軸上に投影される場合、第2及び第3のユーザインタラクション27
B、27
Cは一意ではない。第2及び第3のユーザインタラクション27
B、27
Cの両方は、6番目すなわちx電極6
6に対応する。結果的には、意思決定検知電極5'、6'は一意でなければならないので、x電極6のうちの3つ、すなわち、第1のユーザインタラクション27
Aに対応する2番目のx電極6
2と、第2及び第3のユーザインタラクション27
B、27
Cに対応する6番目のx電極6
6と、第4のユーザインタラクション27
Dに対応する12番目のx電極6
12とが、意思決定電極6'として選択される。
【0187】
同様に、第1すなわちy検知電極のセット51、5
2
、...、58が処理される場合、3つの意思決定y電極5'、すなわち、第1及び第3のユーザインタラクション27A、27Cに対応する3番目のy電極53と、第4のユーザインタラクション27Dに対応する4番目のy電極54と、第2のユーザインタラクション27Bに対応する6番目のy電極56とが選択される。
【0188】
圧力信号処理モジュール15は、静電容量情報20に基づいて、1つまたは複数のユーザインタラクション27のステータスまたはパターンが前回のサンプリング以降に変化したか否かを判定する(ステップS59)。本明細書の方法は、最初に意思決定電極5'、6'に対応するサンプルを処理し、残りの非意思決定電極5、6はそれぞれ、意思決定電極5'、6'のうちの1つに依存するように割り当てられる。意思決定電極5'、6'の数または識別情報が変化した場合、たとえば、ユーザが追加の指をタッチパネル1に接触させたときに、新たなユーザインタラクション27が開始した場合に、1つまたは複数のユーザインタラクション27のステータスが変更されたと判定される。代替的には、ユーザがタッチパネル1から指を取り除いたときに、ユーザインタラクションの数が減少した場合に、1つまたは複数のユーザインタラクション27のステータスが変更される。代替的には、1つまたは複数のユーザインタラクション27が十分遠くに移動して、対応する重心が異なる検知電極5、6に対応する場合などに、1つまたは複数のユーザインタラクション27のステータスが変更される。
【0189】
1つまたは複数のユーザインタラクション27のステータスが変更されたと判定された場合(ステップS59)、(任意のユーザインタラクション27が以前のサンプルに関して進行中であったか否かに応じて)検知電極5、6の依存関係が割り当てまたは再割り当てされる(ステップS60)。非意思決定電極5、6はそれぞれ、近接度に基づいて意思決定電極5'、6'に割り当てられる。
【0190】
図15をさらに参照すると、電極5、6の依存関係を割り当てる一例が示されている。
【0191】
図15に示す例は、
図13及び
図14に示す4つのユーザインタラクション27
A、27
B、27
C、27
Dに対応する。第1の反復It1では、意思決定電極6'は、x
1≦x<x
2に対応する6
2、x
5≦x<x
6に対応する6
6、及びx
11≦x<x
12に対応する6
12として割り当てられる。
【0192】
第2の反復It2では、意思決定電極62、66、612に直接隣接する電極61、63、65、67、611、613が、隣接する意思決定電極62、66、612に依存するように割り当てられる。たとえば、x4≦x<x5に対応する電極65及びx6≦x<x7に対応する電極67は共に、x5≦x<x6に対応する意思決定電極66に依存するように割り当てられる。
【0193】
さらなる反復It3、It4が実行され、それぞれの間に、全ての電極6が割り当てられるまで、未割り当ての電極6が同じ意思決定チャネル6'に、それらに直接隣接するものとして依存するように割り当てられる。競合は任意の適切なルールを使用して、たとえば、小さい方の番号(
図15に図示)または大きい方の番号の意思決定電極6'に割り当てるか、あるいは競合発生時に常に左側または右側に割り当てることにより、解決され得る。非意思決定の第1の電極5の依存関係は、同じ方法で割り当てられる。
【0194】
代替的には、反復処理が使用される必要はない。その代わりに、競合が前述のように解決される単一ステップで、全ての非意思決定電極5、6が、最も近接した意思決定電極5'、6'に依存するように割り当てられ得る。
【0195】
どのように電極の依存関係が決定されても、競合を解決するための代替手段は、静電容量情報20からの正確な重心座標を使用して、どのユーザインタラクション27が電極5、6に最も近いかを特定し、次いでその電極5、6を、対応する意思決定電極5'、6'に依存するように割り当てることである。重心座標は、従来の投影型静電容量式タッチ検知中に標準的な位置補間関数が適用されるので、電極5、6の間隔よりも正確であり得る。
【0196】
電極処理順序が割り当てまたは再割り当てされる(ステップS61)。意思決定電極5'、6'が最初に処理され、続いて、依存する/関連付けられる意思決定電極5'、6'に応じてグループ化された非意思決定電極5、6が処理される。
【0197】
たとえば、
図13~
図15に示すユーザインタラクションのセット27
A、27
B、27
C、27
Dの場合、第2の電極6は、意思決定電極6'に対応する6
2、6
6、6
12、続いて第1の意思決定電極6
2に対応する6
1、6
3、6
4、続いて第2の意思決定電極6
6
に対応する6
5、6
7、6
8、6
9、続いて第3の意思決定電極6
12に対応する6
10、6
11、6
13、6
14、6
15の順序で処理される。
【0198】
1つまたは複数のユーザインタラクションの状態が変化していない場合(ステップS59)、または電極処理順序の(再)順序付け(ステップS61)の後に、以前のまたは新たな順序付けにおける最初の電極5、6が選択され(ステップS62)、それぞれの圧力サンプルP(t)が処理されて、対応する状態レジスタ値S0、S1、S2、S3と、処理済み圧力サンプルP*(t)とが決定される(ステップS63)。たとえば、N個の第1の検知電極のうちのn番目が処理される場合、それぞれの圧力サンプルP(t,yn)が処理されて、対応する状態レジスタ値S0、S1、S2、S3と、対応する処理済み圧力サンプルP*(t,yn)とが決定される。
【0199】
電極の処理(ステップS63)は、状態レジスタ値S
0、S
1、S
2、S
3の決定のみに限定されず、いくつかの最適化もこのステップ中に実施され得、たとえば、「ハード」または「ソフト」タイプなどのタッチタイプの割り当てが含まれる。これらの任意選択の処理については、
図16~
図23を参照してより詳細に説明する。しかしながら、状態S
0、S
1、S
2、S
3及び処理済み圧力サンプル{P
*(t,y
1),P
*(t,y
2),...,P
*(t,y
N)}、{P
*(t,x
1),P
*(t,x
2),...,P
*(t,x
M)}の決定のみが、本明細書の方法に必須である。
【0200】
現在処理中のセット内にさらなる電極5、6がある場合(ステップS64)、現在の順序付けの次の電極が選択され(ステップS65)、処理される(ステップS63)。
【0201】
現在処理中のセット内にさらなる電極5、6がない場合(ステップS64)、処理すべき追加のセンサセットがあるか否かがチェックされ(ステップS66)、ない場合、この方法は出力力値のセット{F(t,y1),F(t,y2),...,F(t,yN)}、{F(t,x1),F(t,x2),...,F(t,xM)}の更新に進む(ステップS23)。
【0202】
処理すべき追加のセンサセットがある場合(ステップS66)、次のセンサセットが選択され(ステップS67)、次のセンサセットのパラメータが取り出され(ステップS54)、新たなセンサセットに対してプッシュ詳細化処理(ステップS22)が繰り返される。
【0203】
静電容量情報20から特定された、発生しているユーザインタラクション27がない場合(ステップS56)、全てのバッファ及び出力力値{F(t,y1),F(t,y2),...,F(t,yN)}、{F(t,x1),F(t,x2),...,F(t,xM)}がゼロなどにリセットされ(ステップS68)、カウンタCintがゼロにリセットされる(ステップS69)。
【0204】
電極処理
図16をさらに参照すると、電極処理(ステップS63)の一例の処理フロー図が示されている。明確な説明のために、この処理は、N個の第1の検知電極5のうちのn番目の処理に関連して説明しているが、検知電極5、6のいずれにも等しく適用可能である。
【0205】
プッシュ詳細化圧力バッファに記憶された現在処理中の電極5、6のデータに対して線形回帰分析が実行される(ステップS70)。対応する圧力サンプルのセット{P(t,yn),P(t-1,yn),...,P(t-Nbuf6+1,yn)}の傾きm、分散VAR、及び平均値が測定される。
【0206】
任意選択のデータクリップ処理が実行され得る(ステップS71、S72)。データクリップ処理は、タッチパネル1及びシステム13がユーザの指から静電気放電を受ける場合に有用であり得、これにより、圧力サンプルP(t,y
n)の正または負の値が過度に大きくなる可能性がある。圧力サンプルP(t,y
n)は、クリップ閾値P
clipに照らしてチェックされ(ステップS71)、圧力サンプルの大きさ|P(t,y
n
)|がクリップ閾値P
clipを超える場合、圧力サンプルP(t,y
n)は、次式に従ってクリップ閾値に等しくなるように設定される(ステップS72)。
【0207】
追加的には、処理中の電極に対して、データクリップフラグが「クリップ済み」の値に設定される(ステップS72)。データクリップフラグが「クリップ済み」の値に等しい場合、その電極に対応する残留オフセットを更新する処理(ステップS80)を省略して、電極データがクリップされている場合の平坦領域の誤検出を回避する。また、データクリップフラグは、処理済み電極に対応する出力力値F(t,yn)が低い信頼性を有し得ることを示すために使用され得る。クリップ閾値Pclipは、たとえば、既知の上限較正力をタッチパネル1に加えて、最大の起こり得る圧力サンプル値P(t,yn)を決定することによって、事前に較正され得る。一般に、タッチパネル1の至る所からの圧力信号18は、タッチパネル1のプレートのたわみが、タッチパネル1の境界における機械的境界条件と組み合わせられるので、位置に応じて変化し得る。結果的に、クリップ閾値Pclipは、各検知電極5、6について別々に事前調整されて、クリップ閾値のセット{Pclip(y1),Pclip(y2),...,Pclip(yN)}、{Pclip(x1),Pclip(x2),...,Pclip(xM)}が取得され得る。
【0208】
現在の圧力サンプルP(t,y
n)をチェックして、初期負荷ピークP
1が割り当てられ得るか否かを検討する(ステップS73)。新たなユーザインタラクション27が始まった場合、暫定ピーク値P
temp1はゼロに設定される。続いて受け取られた各圧力サンプルP(t,y
n)が、暫定ピーク値P
temp1と比較される。現在のサンプルP(t,y
n)が暫定ピーク値P
temp1を超える場合、暫定ピーク値はP
temp1=P(t,y
n)として更新される。たとえば、増加する加えられた力が負の値に対応する場合、暫定ピーク値P
temp1は次式に従って更新される。
【0209】
暫定ピーク値Ptemp1が更新されるたびに、ピークカウンタCpeakは正の整数値Ndetectに設定され、ピーク時刻tpeakは、静電容量情報20から決定されるユーザインタラクション27の開始以降の経過時間に設定される。個別の暫定ピーク値Ptemp1、ピークカウンタCpeak、及びピーク時刻tpeakは、静電容量信号処理モジュール16によって検出され、静電容量情報20に含まれる個別のユーザインタラクション27ごとに、また、任意選択で各検知電極5、6について、記憶及び追跡される。
【0210】
ピークカウンタCpeakは、新たなユーザインタラクション27が始まると負の値に初期化され、新たな圧力サンプルP(t,yn)が受け取られるたびに1ずつデクリメントされる。したがって、ピークカウンタCpeakは、暫定ピーク値Ptemp1を更新した後に、Ndetectサンプルの期間だけ正になる。ピークカウンタCpeakがカウントダウンされてCpeak=0に等しくなると、暫定ピーク値Ptemp1及び対応するピーク時刻tpeakを、それぞれ初期負荷ピークP1の振幅及び時刻に対応するように設定して、初期ピークP1が確認される(ステップS74)。
【0211】
圧力が比較的ゆっくりと増加している場合に初期負荷ピークP1の決定に到達できないことを回避するために、ピークカウンタCpeakが0<Cpeak≦Ndetect/2の条件を満たすときに暫定ピーク値Ptemp1が更新された場合、ピークカウンタはCpeak=1に設定され、その結果、Cpeakがゼロにデクリメントされると、初期ピークP1の位置の決定が次のサンプルで強制される。この条件は、最初のピークの後に、ただちにではなく、非常に近いうちに他のピークを検出することに対応する。結果的に、カウントダウン期間の半分が、内在するノイズの典型的な変動周期よりも、好ましくは数周期分だけ長くなるように、値Ndetectが設定される必要があり、それによって、初期ピークP1の位置の決定を強制する条件は、圧力信号24の変動以外では発動されなくなる。内在するノイズの変動周期は、たとえば、ユーザインタラクションがない場合の圧力信号24の周波数スペクトルを取得することによって決定され得る。
【0212】
好ましくは、非意思決定電極5、6が処理される場合、意思決定電極5'、6'が最初に処理されるので、ピークが発見されたか否かを判定するステップ(ステップS73)は、意思決定電極5'、6'が初期負荷ピークP
1を発見したか否か、すなわち、意思決定電極5、6のピーク発見フラグが「真」の値を有するか否かをチェックすること、次いで、対応して処理中の非意思決定電極の時刻及び振幅を設定すること(ステップS74)ことから成り得る。たとえば、
図13~
図15に示す例示的なユーザインタラクション27の場合、意思決定電極6
2でピークP
1が発見されると、時間インデックスt
peakが設定され、振幅はP(t
peak,y
2)となる。次いで、非意思決定電極6
1、6
3、6
4について、ピーク振幅は、単純にピーク時刻t
peakにおけるそれぞれの圧力サンプルに基づいて割り当てられ得、すなわち、それぞれの振幅は、P(t
peak,y
1)、P(t
peak,y
3)、P(t
peak,y
4)として設定され得る。このようにして、非意思決定電極5、6のかなりの部分の処理はスキップされ得、プッシュ詳細化処理(ステップS22)の速度が高まり、それによって、測定された出力力値F(t)を更新する際の待ち時間が短縮される。1つまたは複数の意思決定電極5'、6'は、対応する1つまたは複数のユーザインタラクション27に関して比較的強い信号を有する可能性が高いので、精度は保存され得る。
【0213】
この方法の任意選択の拡張では、各検知電極5、6は、たとえば、対応するユーザインタラクション27(
図11参照)の前の、その検知電極5、6に対応する分散、及び/または現在の圧力サンプルP(t,y
n)の、対応する意思決定電極5'、6'の圧力サンプルに対する比率に基づいて、品質指標が割り当てられ得る。たとえば、N個の第1の検知電極5のうちのn番目が処理中であり、対応する意思決定電極5'がN個の第1の検知電極5のうちのp番目である場合、比率P(t,y
n)/P(t,y
p)が品質指標として使用され得る。当然ながら、品質指標はこれらの例に限定されず、検知電極5、6の信号品質の他の統計的尺度が使用され得る。非意思決定電極5、6の品質指標が事前に較正された閾値未満である場合、非意思決定電極5、6は、対応する意思決定電極5'、6'から初期負荷ピークP
1検出を取得し得る。しかしながら、非意思決定電極5、6の品質指標が事前に較正された閾値を超える場合、非意思決定電極5、6は、初期負荷ピークP
1の独立した検出を行い得る。これは、非意思決定電極5、6が意思決定電極5'、6'の前にピークP
1を検出した場合に有利であり、その理由は、これが、意思決定電極5'、6'が実際には最良の信号を有さず、ピークP
1を検出した非意思決定電極5、6が、対応するユーザインタラクション27について意思決定電極5'、6'になるように更新され得ることを示し得るためである。
【0214】
静電容量情報20に基づいて、処理中の検知電極5、6に対応するユーザインタラクション27の重心座標を以前の値に照らしてチェックして、差Δx、Δyを決定し、差が次式を満たす場合、ユーザインタラクションは移動していると判定される(ステップS75)。
【0215】
ここでΔmoveは、事前に較正された移動閾値である。移動閾値Δmoveは、たとえば、ユーザの指の重心座標を同じ位置に保持して、重心座標におけるノイズを定量化できるようにする実験によって決定され得る。次いで、移動閾値Δmoveは、較正実験を通した平均重心座標に対する測定された重心座標の標準誤差の5倍として設定され得る。好ましくは、移動閾値Δmoveは、重心座標にオフセットを生じさせ得る、加えられる圧力が増加または減少したときのユーザの指の接触面積の変動も考慮し得る。この影響もやはり、適切な較正実験を行うことで考慮され得る。
【0216】
処理中の電極に対応するユーザインタラクション27が移動していると判定された場合(ステップS75)、移動フラグが「真」の値に設定される(ステップS76)。
【0217】
好ましくは、意思決定電極5'、6'が最初に処理されるので、非意思決定電極5、6に対する移動フラグの割り当て(ステップS75、S76)は、対応する意思決定電極5'、6'の値に従って各非意思決定電極5、6の移動フラグステータスを割り当てることによって簡略化され得る。
【0218】
任意選択で、処理中の検知電極5、6に対応するユーザインタラクション27にタイプが割り当てられ得る(ステップS77、S78)。
図5及び
図6に示す測定された圧力信号24は、第1のまたは「ハード」タイプであり、ユーザが指または導電性スタイラスを比較的素早く置くために、最初の衝撃があることに対応する。しかしながら、ユーザが指または導電性スタイラスをタッチパネル1上にそっと置いた後、加える力をゆっくりと増加させる場合、状態レジスタ値S
0、S
1、S
2、S
3の進行を修正すると有利であり得る。この第2のタイプのユーザインタラクションは、本明細書では第2のまたは「ソフト」タイプと呼ぶ。
【0219】
図17をさらに参照すると、「ソフト」タイプのユーザインタラクションに対応する測定された圧力信号24の値P(t)及び対応する処理済み圧力信号25の値P
*(t)が、状態レジスタ値S
0、S
1、S
2、S
3の間の遷移と共に示されている。以下で論じるように、「ソフト」タイプのユーザインタラクション27を処理する場合、第3のまたは整定状態S
2は省略され得る。
【0220】
図18をさらに参照すると、
図17のソフトタイプのタッチに対応する出力力26の値F(t)が示されている。
【0221】
静電容量情報20を使用して判定される、初期オフセットP0でのユーザインタラクション27の開始に続いて、圧力信号24の値P(t)は、ゼロを超えて、ユーザの指の静電気放電に由来し得ると考えられる偽ピークP5まで増加することが観察され得る。偽ピークP5の間、状態レジスタ値が初期状態S0に設定されるので、処理済み圧力信号P*(t)は、偽ピークP5の間にゼロを超えて増加しない。
【0222】
しかしながら、「ソフト」タイプのユーザインタラクションの場合、初期負荷ピークP
1は、「ハード」タイプのユーザインタラクションの場合よりも比較的遅れて発生し得る。さらに、圧力信号24の値P(t)は、一般的なDCオフセットP
offまですぐに減衰しない場合がある。代わりに、圧電材料層9の歪みの増加による電荷発生は、ゼロに達したりゼロと交差したりすることなく、圧力信号24の値P(t)の減衰とほぼバランスし得る。たとえば、
図17に示すように、測定された圧力信号24には、はっきりした初期負荷ピークP
1がない場合がある。
【0223】
「ハード」及び「ソフト」タイプのユーザインタラクションが実施された場合、圧力信号処理モジュール15は、処理中の電極5、6に対応するユーザインタラクションにタイプが割り当て済みか否かをチェックし(ステップS77)。まだタイプが割り当てられていない場合は、タイプ割り当て処理が行われる(ステップS78)。タイプ割り当て処理は、「ハード」、「ソフト」、または「未定義」の3つの可能な結果を有し得、最後のものは、「ハード」または「ソフト」への割り当てを行うための条件がまだ満たされていない場合に適用される。タイプの割り当ては、ピークカウンタCpeakがゼロに等しいときに、初期ピークP1が割り当てられるまで行われない。この時点で、(静電容量情報20から特定される)ユーザインタラクションの開始からのピーク時刻tpeakが最大遅延Δtmaxを超えて、tpeak>Δtmaxとなった場合、ユーザインタラクションは「ソフト」タイプとして設定される。そうでなければ、ユーザインタラクションは「ハード」タイプとして設定される。ユーザインタラクションが「ソフト」タイプのユーザインタラクションとして設定された場合、以下で説明するように、第3の状態S2はスキップされ得る。
【0224】
最大遅延Δtmaxは、特定のタッチパネル1及びシステム13に応じて変化し得、制御された既知のランピングレートを有する印加力プロファイルを使用して適切な実験を行うことで事前に較正され得る。較正データは、「ハード」タイプ及び「ソフト」タイプのユーザインタラクションとして別々に処理され得、臨界ランピングレート未満では、「ソフト」タイプの処理によって、適用された較正力プロファイルのより近い再構成が提供され得る。次いで、最大遅延Δtmaxは、タイプ割り当て処理(ステップS78)によって、臨界ランピングレート以下の較正力プロファイルが「ソフト」タイプとして割り当てられるまで調整され得る。当業者であれば、適切な最大遅延Δtmaxを設定する他の方法を使用することができる。
【0225】
「ソフト」タイプのユーザインタラクションは、2つの広範囲に及ぶ状況で検出され得る。1つ目は、最大遅延Δt
maxの後に発生する初期負荷ピークP
1の明らかな検出である。2つ目は、
図17及び
図18に示しているが、徐々に増加する加えられた力によって、測定される圧力信号24が変動し、それによって、ピークカウンタC
peakが0<C
peak≦N
detect/2の条件を満たすときに暫定ピーク値P
temp1が更新され、その結果、ピークカウンタがC
peak=1に設定され、初期ピークP
1の位置及びユーザインタラクションのタイプの決定が次のサンプルで強制される場合である。
【0226】
傾き閾値mflat及び分散閾値VARflatが、処理中の電極に対して設定される(ステップS79)。傾き及び分散の閾値mflat、VARflatの値は、対応するユーザインタラクション27が移動しているか否かに応じて設定される。「ハード」及び「ソフト」のユーザインタラクションタイプが使用される場合、移動していないユーザインタラクション27の傾き及び分散の閾値mflat、VARflatの値は、ユーザインタラクション27が「ハード」または「ソフト」タイプのいずれであるかに応じて設定され得る。特定の閾値は、既知の印加力プロファイルを使用した較正実験から決定され、電極チャネル更新ステップ(ステップS80)によって、既知の印加力プロファイルが増加も減少もしていないときを除いて、平坦な領域が検出されず、残留オフセットPcorが更新されないように、選択される必要がある。一般に、移動するユーザインタラクション27の傾き及び分散の閾値mflat、VARflatは、「ソフト」タイプのユーザインタラクション27の傾き及び分散の閾値mflat、VARflat未満であり、これらは「ハード」タイプのユーザインタラクション27の傾き及び分散の閾値mflat、VARflat未満である。
【0227】
電極チャネル更新処理が実行され、その間に、処理中の電極5、6からの圧力信号18が平坦であるか、または少なくとも十分にゆっくり変化しているか否かが判定されて、残留オフセット補正値Pcorが更新される(ステップS80)。判定は、プッシュ詳細化バッファ内の圧力サンプル{P(t,yn),P(t-1,yn),...,P(t-Nbuf6+1,yn)}の傾きm及び分散VARを、以前に決定された傾き及び分散の閾値mflat、VARflatの値と比較することによって行われる(ステップS79)。任意選択で、「ハード」タイプのユーザインタラクションが「ソフト」タイプのユーザインタラクションに遷移すべきか否か、またはその逆にすべきか否かも判定され得る。処理済み圧力サンプルP*(t,yn)は、圧力サンプルP(t,yn)から残留オフセットPcor(yn)の現在値を減算することによって、P*(t,yn)=P(t,yn)-Pcor(yn)に従って取得される(ステップS81)。
【0228】
次いで、処理中の検知電極5、6の状態レジスタ値S
0、S
1、S
2、S
3は、ステートマシン処理(ステップS82)によって更新され、その詳細は以下で説明する(
図24)。
【0229】
電極チャネル更新ステップ
図19をさらに参照すると、電極チャネル更新処理(ステップS80)の一例の処理フロー図が示されている。
【0230】
状態レジスタ値が第1または第2の状態S0、S1に対応する場合(ステップS83)、あるいは初期ピークP1がまだ割り当てられていない場合(ステップS84)、チャネル更新処理は実行されない。
【0231】
処理中の検知電極が第3または第4の状態S2、S3に対応する状態レジスタ値を有し(ステップS83)、初期ピーク値P1が割り当てられている(ステップS84)場合、電極チャネル更新処理は継続する。「ハード」及び「ソフト」タイプのユーザインタラクションの任意選択の割り当てが採用されている場合、初期ピーク値P1が割り当て済みの場合に割り当てが実行されることに留意されたい。
【0232】
線形回帰(ステップS70)から決定された傾きmが傾き閾値mflat未満であり(ステップS85)、線形回帰(ステップS70)からの分散VARが分散閾値VARflat未満である(ステップS86)場合、処理中の検知電極5、6に対して、平坦領域フラグが「真」の値に設定される(ステップS87)。一般に、移動するユーザインタラクションの傾き及び分散の閾値mflat、VARflatは、「ソフト」タイプのユーザインタラクションの傾き及び分散の閾値mflat、VARflat未満であり、これらは「ハード」タイプのユーザインタラクションの傾き及び分散の閾値mflat、VARflat未満である。このように、残留オフセット補正値Pcorを更新するための条件は、移動するまたは「ソフト」タイプのユーザインタラクション27に対して、「ハード」タイプのユーザインタラクション27よりも比較的厳しくなり得る。これにより、残留オフセット補正値Pcorの継続的な更新が、移動中または「ソフト」タイプのユーザインタラクション中に徐々に増加または減少する加えられた力を誤って割り引くことが回避され得る。
【0233】
任意選択の「ソフト」及び「ハード」タイプの割り当てが使用される場合、平坦領域を判定したことに応じて、「ソフト」タイプのユーザインタラクション27は、「ハード」タイプのユーザインタラクションとして再割り当てされる(ステップS88)。
【0234】
残留オフセット補正Pcorは、処理中の検知電極5、6の圧力信号18の平坦期間中に継続的に更新することができず、その理由は、これによって、加えられた力の小さな変化が無視されるためである。代わりに、現在の残留オフセットPcorと、線形回帰(ステップS70)から取得された平均値との差が、Pcor-MEAN({P(t,yn),P(t-1,yn),...,P(t-Nbuf6+1,yn)})として取得され、この差の大きさが閾値ΔPcorを超える場合(ステップS89)、残留オフセット補正値Pcorは、Pcor=MEAN({P(t,yn),P(t-1,yn),...,P(t-Nbuf6+1,yn)})として更新される(ステップS90)。
【0235】
しかしながら、線形回帰(ステップS70)から決定された傾きmが傾き閾値mflat以上であるか(ステップS85)、または線形回帰(ステップS70)からの分散VARが分散閾値VARflat以上である(ステップS86)場合、処理中の検知電極5、6に対して平坦領域フラグが「偽」の値に設定される(ステップS94)。
【0236】
任意選択で、ユーザインタラクション27が「ハード」タイプである場合(ステップS91)、圧力信号処理モジュール15は、ユーザインタラクション27が「ソフト」タイプのユーザインタラクション27として再割り当てされるべきか否かを判定する(ステップS92)。圧力サンプルP(t,yn)が初期負荷ピークP1の記憶された大きさの事前に指定された割合fsoftを超える場合、かつ、線形回帰(ステップS70)から決定された傾きmの大きさが最大値msoftを超える場合に、ユーザインタラクション27は、「ソフト」タイプのユーザインタラクション27として再割り当てされるべきである。これらの条件が満たされた場合、ユーザインタラクションは、「ハード」タイプであると想定できなくなり、代わりに「ソフト」タイプに設定される(ステップS93)。割合fsoft及び最大値msoftは、所与のタッチパネル1及びシステム13に対して、所定の印加力プロファイルを使用した適切な較正実験から決定され得、0.1≦fsoft≦0.9及び0.5<msoft<5の範囲内で変化し得る。
【0237】
図20及び
図21をさらに参照すると、「ソフト」タイプのユーザインタラクション27に遷移する「ハード」タイプのユーザインタラクション27について、測定された圧力信号24、処理済み圧力信号25、及び出力力26が示されている。遷移のポイントは、「ソフト遷移」とラベル付けした矢印で図に示している。「ハード」及び「ソフト」という用語は、圧力信号24及び力出力26の実際の大きさとは必ずしも相関しないことに留意されたい。むしろ、「ハード」及び「ソフト」という用語は、圧力信号24の初期増加速度により密接に関連している。本発明者らは、圧力信号24の初期増加の不正確な処理が、ユーザインタラクション27の残りの部分についての出力力26のその後の測定に多大な影響を及ぼす可能性があることと、「ハード」及び「ソフト」タイプのユーザインタラクション27の区別により、一部の例では、測定された出力力の精度が向上し得ることとを見出した。
【0238】
図22及び
図23をさらに参照すると、加えられた力が一定になり、平坦な領域が検出されるために、「ハード」タイプのユーザインタラクション27に遷移する「ソフト」タイプのユーザインタラクション27について、測定された圧力信号24、処理済み圧力信号25、及び出力力26が示されている。遷移のポイントは、「ハード遷移」とラベル付けした矢印で図に示している。
【0239】
第1のステートマシン
図24をさらに参照すると、ステートマシン処理(ステップS82)の第1の例の処理フロー図が示されている。ステートマシン処理(ステップS82)の第1の例は、「ハード」及び「ソフト」タイプのユーザインタラクション27の任意選択の割り当てを含まない。
【0240】
全ての新たなユーザインタラクション27は第1の初期状態S0で初期化され、ステートマシン(ステップS82)は、受け取った各圧力サンプルP(t,yn)によって処理中の検知電極5、6の状態レジスタ値S0、S1、S2、S3を処理して、特定の条件が満たされた場合に状態レジスタ値を更新する。
【0241】
処理中の検知電極5、6が初期状態S0に対応する状態レジスタを有し(ステップS95)、圧力サンプルP(t,yn)はゼロ未満であり(ステップS96)、カウンタCint(ステップS57)によって追跡されるユーザインタラクションの開始以降の経過時間が、所定の最小値WAITを超える(ステップS97)場合、処理中の検知電極5、6の状態レジスタは、第2の主負荷状態S1に更新される(ステップS98)。
【0242】
ステップS96でチェックされる符号は、タッチパネル1及びシステム13の構成に依存する。本明細書の例に示すように、増加する加えられた力が減少する圧力信号18として記録される場合、テストはP(t,yn)<0である。しかしながら、増加する加えられた力が増加する圧力信号18として記録される場合、テストは代わりにP(t,yn)>0となる。
【0243】
処理中の検知電極5、6が第2の主負荷状態S1に対応する状態レジスタを有し(ステップS99)、圧力サンプルP(t,yn)がゼロより大きい(ステップS100)場合、処理中の検知電極5、6の状態レジスタは、第3の整定状態S2に更新される(ステップS101)。
【0244】
ステップS100でチェックされる符号は、タッチパネル1及びシステム13の構成に依存する。本明細書の例に示すように、増加する加えられた力が減少する圧力信号18として記録される場合、テストはP(t,yn)>0である。しかしながら、増加する加えられた力が増加する圧力信号18として記録される場合、テストは代わりにP(t,yn)<0となる。
【0245】
処理中の検知電極5、6が第3の整定状態S2に対応する状態レジスタを有し(ステップS102)、平坦領域フラグが「真」の値を有する(ステップS103)場合、処理中の検知電極5、6の状態レジスタは、第4の安定状態S3に更新される(ステップS104)。初期負荷ピークP1が決定される後まで、平坦領域フラグを「真」の値に設定できないことに留意されたい。
【0246】
第2のステートマシン
図25をさらに参照すると、ステートマシン処理(ステップS82)の第2の例の処理フロー図が示されている。ステートマシン処理(ステップS82)の第2の例は、「ハード」及び「ソフト」タイプのユーザインタラクション27の任意選択の割り当てを含む。
【0247】
状態レジスタ値S0及びS1の間の遷移は、第1のステートマシンの場合(ステップS95~S98)と同様である。
【0248】
処理中の検知電極5、6が第2の主負荷状態S1に対応する状態レジスタを有し(ステップS99)、ユーザインタラクション27のタイプが「ソフト」である(ステップS105)場合、処理中の検知電極5、6の状態レジスタは第4の安定状態S3に更新される(ステップS104)。このようにして、「ソフト」タイプのユーザインタラクション27は、第3の整定状態S2をスキップし得る。
【0249】
処理中の検知電極5、6が第2の主負荷状態S1に対応する状態レジスタを有し(ステップS99)、ユーザインタラクション27のタイプは「ソフト」ではなく(ステップS105)、圧力サンプルP(t,yn)がゼロより大きいか(ステップS100)、またはユーザインタラクションのタイプ27が「ハード」である(ステップS106)場合、処理中の検知電極5、6の状態レジスタは第3の整定状態S2に更新される(ステップS101)。
【0250】
処理中の検知電極5、6が第3の整定状態S2に対応する状態レジスタを有し(ステップS102)、ユーザインタラクション27のタイプが「ソフト」である(ステップS107)場合、処理中の検知電極5、6の状態レジスタは第4の安定状態S3に更新される(ステップS104)。
【0251】
処理中の検知電極5、6が第3の整定状態S2に対応する状態レジスタを有し(ステップS102)、ユーザインタラクション27のタイプは「ソフト」ではなく(ステップS107)、ユーザインタラクション27のタイプは「ハード」であり(ステップS108)、平坦領域フラグが「真」の値を有する(ステップS103)場合、処理中の検知電極5、6の状態レジスタは第4の安定状態S3に更新される(ステップS104)。
【0252】
平坦領域フラグ及び「ハード」または「ソフト」タイプの割り当ては、初期負荷ピークP1が決定される後まで実行できないことに留意されたい。
【0253】
出力力値の更新
図26をさらに参照すると、出力力26の値{F(t,y
1),F(t,y
2),...,F(t,y
N)}、{F(t,x
1),F(t,x
2),...,F(t,x
M)}を更新(ステップS23)する一例の処理フロー
図26が示されている。
【0254】
出力力値を更新するステップ(ステップS23)は、各検知電極5、6に対して実行され、検知電極5、6の順序は、この処理にとって重要ではない。たとえば、プッシュ詳細化処理(ステップS22)に使用される順序が使用され得る。出力力更新処理は、N個の第1の検知電極5のうちのn番目を参照して説明するが、出力力更新処理は、他の各検知電極5、6でも同じである。
【0255】
N個の第1の検知電極5のうちのn番目が第1の初期状態S0に対応する状態レジスタを有し(ステップS109)、処理済み圧力サンプルP*(t,yn)がゼロより大きい(ステップS110)場合、処理済み圧力サンプルP*(t,yn)がゼロに等しくなるように設定され(ステップS111)、出力力はF(t,yn)=F(t-1,yn)+P*(t,yn)として更新される(ステップS116)。
【0256】
ステップS110でチェックされる符号は、タッチパネル1及びシステム13の構成に依存する。本明細書の例に示すように、増加する加えられた力が減少する圧力信号24として記録される場合、テストはP*(t,yn)>0である。しかしながら、増加する加えられた力が増加する圧力信号24として記録される場合、テストは代わりにP(t,yn)<0となる。
【0257】
N個の第1の検知電極5のうちのn番目が第1の初期状態S0に対応する状態レジスタを有し(ステップS109)、処理済み圧力サンプルP*(t,yn)がゼロ以下である(ステップS110)場合、出力力はF(t,yn)=F(t-1,yn)+P*(t,yn)として更新される(ステップS116)。
【0258】
N個の第1の検知電極5のうちのn番目が第2の主負荷状態S1に対応する状態レジスタを有する場合(ステップS112)、出力力はF(t,yn)=F(t-1,yn)+P*(t,yn)として更新される(ステップS116)。
【0259】
N個の第1の検知電極5のうちのn番目が第3の整定状態S2に対応する状態レジスタを有する場合(ステップS113)、圧力サンプルP*(t,yn)は無条件にゼロに等しくなるように設定され(ステップS114)、出力力はF(t,yn)=F(t-1,yn)+P*(t,yn)として更新される(ステップS116)。
【0260】
N個の第1の検知電極5のうちのn番目が第4の安定状態S3に対応する状態レジスタを有する場合、すなわち、初期状態S0(ステップS109)、主負荷状態S1(ステップS112)、または整定状態S2(ステップS113)にない場合、処理済み圧力サンプルP*(t,yn)の大きさが所定のノイズ閾値Pnoiseを超える場合(ステップS115)、出力力はF(t,yn)=F(t-1,yn)+P*(t,yn)として更新される(ステップS116)。
【0261】
N個の第1の検知電極5のうちのn番目が第4の安定状態S3に対応する状態レジスタを有する場合、すなわち、初期状態S0(ステップS109)、主負荷状態S1(ステップS112)、または整定状態S2(ステップS113)にない場合、処理済み圧力サンプルP*(t,yn)の大きさが所定のノイズ閾値Pnoiseを超えない場合(ステップS115)、出力力はF(t,yn)=F(t-1,yn)として更新される(ステップS117)。
【0262】
他の例では、出力力F(t)の更新はより高次の数値積分、たとえば台形則、すなわち、F(t,yn)=F(t-1,yn)+0.5*(P*(t,yn)+P*(t-1,yn))を使用し得る。
【0263】
修正例
前述の実施形態には多くの修正が加えられ得ることは理解されよう。そのような修正は、静電容量式タッチパネルの設計、製造、及び使用においてすでに知られており、本明細書で説明済みの特徴の代わりに、またはそれに加えて使用され得る同等及び他の特徴を含み得る。一実施形態の特徴は、他の実施形態の特徴によって置き換えられるかまたは補われ得る。たとえば、1つのディスプレイスタックアップまたは組み込みディスプレイスタックアップの特徴は、他のディスプレイスタックアップ及び/または他の組み込みディスプレイスタックアップの特徴によって置き換えられるかまたは補われ得る。
【0264】
本明細書の方法は、静電容量式タッチ方法を使用して1つまたは複数のユーザインタラクションの数及び位置を含む静電容量情報20を測定することが可能であって、圧電材料の層9を歪ませることによって生成された圧力信号18を同時にまたは連続的に測定することも可能な任意のタッチパネルシステムにおいて有用であり得る。タッチパネル1及びシステム13において、圧力及び静電容量の信号18、19は、単一の電極のセットによって生成される。しかしながら、本明細書の方法は、互いに交互配置されるか、または互いの上に積み重ねられた、完全に別個の圧電式タッチセンサ及び静電容量式タッチセンサに等しく適用可能である。
【0265】
測定フロントエンド14、圧力信号処理モジュール15、及び静電容量信号処理モジュール16は、別個の構成要素として説明してきたが、これはそうである必要はない。いくつかの例では、圧力信号処理モジュール15及び静電容量信号処理モジュール16は、単一のコントローラまたは特定用途向け集積回路(ASIC)によって統合され、提供され得る。さらなる例では、測定フロントエンド14、圧力信号処理モジュール15、及び静電容量信号処理モジュール16の機能は全て、単一のコントローラまたはASICによって提供され得る。
【0266】
本明細書の方法の詳細な実施態様を
図8~
図26に関連して説明してきたが、例示的な実施態様の任意の所与のステップまたは処理は、本明細書の方法において分離されて別個に実装され得、その所与のステップまたは処理に必要な入力を提供するステップまたは処理をさらに実装することのみを条件とすることは理解されたい。
【0267】
特許請求の範囲は、本出願では特定の特徴の組み合わせに対して作成しているが、本発明の開示の範囲は、本明細書で明示的または暗黙的に開示した任意の新規の特徴または任意の新規の特徴の組み合わせ、あるいはそれらの任意の一般化も含み、これは、任意の請求項において現在特許請求しているのと同じ発明に関連するか否か、及び本発明と同じ技術的課題のいずれかまたは全てを軽減するか否かによらないことを理解されたい。これにより出願人は、本出願またはそこから派生する任意のさらなる出願の審査中に、そのような特徴及び/またはそのような特徴の組み合わせに対して新たな請求項が作成され得ることを予告している。