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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】燃料タンクキャップのロック装置
(51)【国際特許分類】
   B62J 35/00 20060101AFI20230710BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20230710BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20230710BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20230710BHJP
【FI】
B62J35/00 D
B60K15/05 A
E05B49/00 J
E05B83/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019107018
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020199830
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】三村 庸平
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196951(JP,A)
【文献】特開2015-078519(JP,A)
【文献】特開2010-126885(JP,A)
【文献】特開平09-323685(JP,A)
【文献】特開2007-001473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 35/00
B60K 15/05
E05B 83/34
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクに通じた給油口を塞いだ閉塞位置と開放した開放位置との間で移動して当該給油口を開閉可能なキャップと、
操作者によって揺動軸を中心とした揺動操作が可能とされた操作手段と、
前記操作手段の揺動操作に連動して移動可能とされるとともに、前記キャップが給油口を塞いだ状態を保持する係止位置と、当該係止を解除して当該キャップの開動作を許容する許容位置との間で動作する係止手段と、
前記係止手段の係止位置から許容位置への動作をロックし、又は当該ロックを解除して前記係止手段の係止位置から許容位置への動作を許容し得るロック手段と、
運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを発信する発信手段と、
車両側に配設されて前記発信手段からのIDコードを受信し得る受信手段と、
該受信手段で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定する判定手段と、
を具備した燃料タンクキャップのロック装置であって、
前記操作手段の前記揺動軸と前記係止手段との間に形成され、前記操作手段の揺動操作に伴う前記揺動軸の回転力を前記係止手段に伝達して移動させ得る操作力伝達手段を備えるとともに、前記判定手段が正規のIDコードを受信したと判定している場合に限り、前記ロック手段によるロック解除を行わせ得るよう構成され、前記判定手段により正規のIDコードを受信したと判定され、且つ、前記係止手段の移動が検知されたことを条件として、前記ロック手段によるロック解除を行わせることを特徴とする燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項2】
前記操作力伝達手段は、前記揺動軸に形成された第1ギアと、前記係止手段に形成された第2ギアとを有し、前記第1ギア及び第2ギアが噛み合って構成されることにより、前記揺動軸の回転力を前記第1ギア及び第2ギアを介して前記係止手段に伝達することを特徴とする請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項3】
前記第1ギア及び第2ギアは、ラックアンドピニオンを構成するものとされ、前記第1ギアは、前記揺動軸の端部に取り付けられたピニオンから成るとともに、前記第2ギアは、前記係止手段に形成されたラックから成ることを特徴とする請求項2記載の燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項4】
前記ロック手段は、
前記係止手段と連結されて当該係止手段と共に移動可能なスライダと、
前記スライダに係止して当該スライダの移動を規制する位置と、前記スライダに対する係止を解除して当該スライダの移動を許容する位置との間で変位可能なプランジャを有したソレノイドと、
を有することを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項5】
前記キャップは、前記揺動軸を挿通する挿通孔が形成されるとともに、当該揺動軸には、前記挿通孔をシールするシール手段が取り付けられたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の燃料タンクキャップのロック装置。
【請求項6】
前記判定手段が正規のIDコードを受信したと判定したことを条件として、車両のエンジン始動を許可することを特徴とする請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置
【請求項7】
前記操作力伝達手段は、リンク部材又はカム部材を有して構成され、前記揺動軸の回転力を前記リンク部材又はカム部材を介して前記係止手段に伝達することを特徴とする請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに通じた給油口を塞ぐためのキャップの開閉をロック又はロック解除を行うための燃料タンクキャップのロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、大型の二輪車における燃料タンクの上部には、給油口が設けられるとともに、その給油口を塞いだ閉塞位置と開放した開放位置との間で移動して当該給油口を開閉可能なキャップと、キャップの開閉をロック又はロック解除を行うためのロック手段とを有した燃料タンクキャップのロック装置が提案されている。例えば、従来の燃料タンクキャップのロック装置として、特許文献1にて開示されているように、操作者によって揺動軸を中心とした揺動操作が可能とされた操作ノブと、操作ノブの揺動操作に連動して移動可能とされるとともに、キャップが給油口を塞いだ状態を保持する係止位置と、当該係止を解除して当該キャップの開動作を許容する許容位置との間で動作する係止手段と、係止手段の係止位置から許容位置への動作をロックし、又は当該ロックを解除して係止手段の係止位置から許容位置への動作を許容し得るロック手段とを具備したものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】イタリア国特許第393382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、操作ノブを揺動操作すると、その操作ノブの基端が係止手段と当接してテコの原理で許容位置まで移動させることにより、キャップの開動作が許容される構成であったので、操作ノブを想定より強く操作した場合、その強い操作力が直接、係止手段に伝達されてしまい、操作ノブやスライダ等が破損してしまう虞があった。
【0005】
また、上記従来技術においては、キャップが閉塞位置にあるとき、係止手段と嵌合して連結するための嵌合凹部がスライダに形成されているため、キャップが開放位置にあるとき、当該嵌合凹部が上方に臨んだ状態とされ、嵌合凹部に異物が詰まってしまう可能性があった。この場合、キャップを閉塞位置に揺動させても、嵌合凹部に係止手段を嵌合させることができず、ロック手段によるロックを正常に行うことができない虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、操作手段の操作力が係止手段に対して直接伝達されるのを回避して、操作ノブ又は係止手段の破損を防止することができるとともに、異物が装置内部に侵入してしまうのを防止することができる燃料タンクキャップのロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両の燃料タンクに通じた給油口を塞いだ閉塞位置と開放した開放位置との間で移動して当該給油口を開閉可能なキャップと、操作者によって揺動軸を中心とした揺動操作が可能とされた操作手段と、前記操作手段の揺動操作に連動して移動可能とされるとともに、前記キャップが給油口を塞いだ状態を保持する係止位置と、当該係止を解除して当該キャップの開動作を許容する許容位置との間で動作する係止手段と、前記係止手段の係止位置から許容位置への動作をロックし、又は当該ロックを解除して前記係止手段の係止位置から許容位置への動作を許容し得るロック手段と、運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを発信する発信手段と、車両側に配設されて前記発信手段からのIDコードを受信し得る受信手段と、該受信手段で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定する判定手段とを具備した燃料タンクキャップのロック装置であって、前記操作手段の前記揺動軸と前記係止手段との間に形成され、前記操作手段の揺動操作に伴う前記揺動軸の回転力を前記係止手段に伝達して移動させ得る操作力伝達手段を備えるとともに、前記判定手段が正規のIDコードを受信したと判定している場合に限り、前記ロック手段によるロック解除を行わせ得るよう構成され、前記判定手段により正規のIDコードを受信したと判定され、且つ、前記係止手段の移動が検知されたことを条件として、前記ロック手段によるロック解除を行わせることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記操作力伝達手段は、前記揺動軸に形成された第1ギアと、前記係止手段に形成された第2ギアとを有し、前記第1ギア及び第2ギアが噛み合って構成されることにより、前記揺動軸の回転力を前記第1ギア及び第2ギアを介して前記係止手段に伝達することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記第1ギア及び第2ギアは、ラックアンドピニオンを構成するものとされ、前記第1ギアは、前記揺動軸の端部に取り付けられたピニオンから成るとともに、前記第2ギアは、前記係止手段に形成されたラックから成ることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記ロック手段は、前記係止手段と連結されて当該係止手段と共に移動可能なスライダと、前記スライダに係止して当該スライダの移動を規制する位置と、前記スライダに対する係止を解除して当該スライダの移動を許容する位置との間で変位可能なプランジャを有したソレノイドとを有することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記キャップは、前記揺動軸を挿通する挿通孔が形成されるとともに、当該揺動軸には、前記挿通孔をシールするシール手段が取り付けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記判定手段が正規のIDコードを受信したと判定したことを条件として、車両のエンジン始動を許可することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の燃料タンクキャップのロック装置において、前記操作力伝達手段は、リンク部材又はカム部材を有して構成され、前記揺動軸の回転力を前記リンク部材又はカム部材を介して前記係止手段に伝達することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、操作手段の揺動軸と係止手段との間に形成され、操作手段の揺動操作に伴う揺動軸の回転力を係止手段に伝達して移動させ得る操作力伝達手段を備えたので、操作手段の操作力が係止手段に対して直接伝達されるのを回避して、操作手段又は係止手段の破損を防止することができるとともに、異物が装置内部に侵入してしまうのを防止することができる。
また、運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを発信する発信手段と、車両側に配設されて発信手段からのIDコードを受信し得る受信手段と、受信手段で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定する判定手段とを備えるとともに、判定手段が正規のIDコードを受信したと判定している場合に限り、ロック手段によるロック解除を行わせ得るので、第三者が不正にロック手段によるロック解除を行ってしまうのを防止することができ、防犯性を向上させることができる。
さらに、判定手段により正規のIDコードを受信したと判定され、且つ、係止手段の移動が検知されたことを条件として、ロック手段によるロック解除を行わせるので、操作手段の操作の過程でロック解除を行わせることができ、操作性を向上させることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、操作力伝達手段は、揺動軸に形成された第1ギアと、係止手段に形成された第2ギアとを有し、第1ギア及び第2ギアが噛み合って構成されることにより、揺動軸の回転力を第1ギア及び第2ギアを介して係止手段に伝達するので、操作手段の操作に伴う係止手段の移動量や操作方向、及び操作手段の操作により係止手段に伝達される操作力を容易に調整することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、第1ギア及び第2ギアは、ラックアンドピニオンを構成するものとされ、第1ギアは、揺動軸の端部に取り付けられたピニオンから成るとともに、第2ギアは、係止手段に形成されたラックから成るので、揺動軸の回転力を効率よく係止手段に伝達してスライドさせることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、ロック手段は、係止手段と連結されて当該係止手段と共に移動可能なスライダと、スライダに係止して当該スライダの移動を規制する位置と、スライダに対する係止を解除して当該スライダの移動を許容する位置との間で変位可能なプランジャを有したソレノイドとを有するので、確実に係止手段の動作をロックさせることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、キャップは、揺動軸を挿通する挿通孔が形成されるとともに、当該揺動軸には、挿通孔をシールするシール手段が取り付けられたので、挿通孔を介して雨水や塵等の異物が装置内部に侵入してしまうのを容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る燃料タンクキャップのロック装置を示す平面図及び側面図
図2図1におけるII-II線断面図であって、(a)キャップが閉塞位置にある状態(b)キャップが開放位置にある状態を示す模式図
図3図1におけるIII-III線断面図
図4】同燃料タンクキャップのロック装置における操作手段の操作前の状態(係止手段が係止位置にある状態)を示す模式図
図5】同燃料タンクキャップのロック装置おける操作手段の操作後の状態(係止手段が許容位置にある状態)を示す模式図
図6】同燃料タンクキャップのロック装置における操作手段、係止手段及びロック手段を示す斜視図
図7】同燃料タンクキャップのロック装置におけるキャップを示す平面図及び側面図
図8】同燃料タンクキャップのロック装置における揺動軸及び第1ギアを示す側面図及び正面図
図9】同燃料タンクキャップのロック装置における操作手段を示す平面図及び側面図
図10】同燃料タンクキャップのロック装置における係止手段を示す4面図
図11】同燃料タンクキャップのロック装置におけるスライダを示す斜視図
図12】同スライダを示す4面図
図13】同燃料タンクキャップのロック装置におけるスライダと、ソレノイド及び検知スイッチが取り付けられた取付部材とを示す斜視図
図14】同燃料タンクキャップのロック装置におけるスライダと、ソレノイド及び検知スイッチが取り付けられた取付部材とを示す3面図
図15】同燃料タンクキャップのロック装置におけるスライダと及び検知スイッチの位置関係を示す模式図
図16】同燃料タンクキャップのロック装置におけるスライダと及び検知スイッチの位置関係を示す模式図
図17】同燃料タンクキャップのロック装置の全体構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る燃料タンクキャップのロック装置は、大型二輪車における燃料タンクに通じた給油口を塞ぐためのキャップの開閉をロック又はロック解除するものであり、図1~3に示すように、キャップ1と、操作ノブ2(操作手段)と、係止手段3と、ロック手段としてのソレノイド5及びスライダ6と、検知スイッチ8とを有して構成されている。なお、上記構成部品は、給油口Taが形成された収容部材Tにて収容されている。また、収容部材Tの上部には、図1~3に示すように、円環状のカバー部Hが複数のボルトにて固定されている。
【0023】
キャップ1は、車両の燃料タンクに通じた給油口Taを塞いだ閉塞位置(図2(a)参照)と開放した開放位置(図2(b)参照)との間で移動して当該給油口Taを開閉可能なもので、上側キャップ部1a及び下側キャップ部1bから構成されている。本実施形態においては、運転者等の操作者が操作ノブ2を手で摘まんで上方に引き上げることにより、キャップ1が揺動軸Laを中心に揺動し、閉塞位置から開放位置に移動して給油口Taを外部に臨ませ得るようになっている。
【0024】
上側キャップ部1aは、図7に示すように、湾曲したアーム部1cが形成されており、当該アーム部1cの所定部位には、キャップ1を閉塞位置と開放位置との間で揺動させる揺動軸Laが形成されている。また、上側キャップ部1aは、図3、7に示すように、所定位置に挿通孔1aaが形成されており、当該挿通孔1aaに後述する揺動軸Lbを挿通し得るようになっている。下側キャップ部1bは、キャップ1が閉塞位置にあるとき、給油口Taをシールするシール材Sが取り付けられるとともに、図4~6に示すように、係止手段3を係止位置と許容位置との間で移動可能な状態で収容して構成されている。
【0025】
操作ノブ2(操作手段)は、図9に示すように、揺動軸Lbを挿通するための挿通孔2aが形成されたもので、当該挿通孔2aに揺動軸Lbが挿通した状態にてキャップ1(上側キャップ部1a)の上面に形成された凹部に取り付けられている。そして、操作者が操作ノブ2を上方に引き上げて操作すると、当該操作ノブ2が揺動軸Lbを中心に揺動操作可能とされている。
【0026】
揺動軸Lbは、操作ノブ2の揺動操作に伴って回転し得るよう構成されたもので、図8に示すように、その一端部に第1ギアG1が取り付けられている。かかる第1ギアG1は、後述する第2ギアG2と噛み合って構成されるラックアンドピニオンのピニオンから成るもので、外周面に歯面を有する歯車から成り、操作ノブ2の操作に伴って揺動軸Lbと一体的に回転し得るようになっている。
【0027】
さらに、本実施形態に係る揺動軸Lbには、図3に示すように、挿通孔1aaをシールするシール手段fが取り付けられている。すなわち、本実施形態においては、揺動軸Lbの回転力が係止手段3に伝達されるよう構成されているので、挿通孔1aaを介して装置の内部と外部とが連通した状態とされており、揺動軸Lbにシール手段fを取り付けることにより挿通孔1aaを容易且つ確実にシールすることができるのである。
【0028】
係止手段3は、操作ノブ2の操作と連動して移動可能とされるとともに、キャップ1が給油口Taを塞いだ状態を保持する係止位置(図4参照)と、当該係止を解除して当該キャップ1の開動作を許容する許容位置(図5参照)との間で動作するものである。より具体的には、本実施形態に係る係止手段3は、下側キャップ部1b内の作動空間(図6参照)において略直線状にスライド可能とされており、係止位置にあるとき、図4に示すように、先端の係止部3aがカバー部Hに形成された被係止部Haに係止してキャップ1の閉塞位置から開放位置への移動を規制するとともに、操作ノブ2が操作されて許容位置にあるとき、図5に示すように、係止部3aが被係止部Haから離間して係止が解かれ、キャップ1の閉塞位置から開放位置への移動を許容するよう構成されている。
【0029】
また、係止手段3は、図4、5に示すように、コイルスプリング9の付勢力により許容位置から係止位置に向かって付勢されるとともに、図10に示すように、係止部3aの裏面側にテーパ面3aaが形成されている。そして、キャップ1を開放位置から閉塞位置に向かって揺動させると、テーパ面3aaがカバー部Hの被係止部Haに干渉し、係止手段3がコイルスプリング9の付勢力に抗して許容位置に向かう方向に僅かに移動するようになっている。このようにして、係止手段3が移動して、テーパ面3aaが被係止部Haに干渉しなくなる位置に達すると、キャップ1が閉塞位置まで揺動するとともに係止手段3がコイルスプリング7の付勢力にて係止位置まで移動するので、係止部3aが被係止部Haに係止することとなる。
【0030】
さらに、本実施形態に係る係止手段3は、図10に示すように、係止部3a及びテーパ面3aaの他、連結部3b及び延設部3cを有している。連結部3bは、係止部3aの裏面側から下方に向かって延設された部位から成り、図4、5に示すように、スライダ6の嵌合凹部6aaと嵌合し得るようになっている。延設部3cは、係止部3aの両端部から一体的に延設された左右一対の部位から成り、それぞれの端部3caは、既述のコイルスプリング9の一端と当接可能とされている。
【0031】
ここで、本実施形態に係る係止手段3は、左右一対の延設部3cのうち一方の延設部3cに第2ギアG2が形成されている。かかる第2ギアG2は、既述の第1ギアG1と噛み合って構成されるラックアンドピニオンのラックから成るもので、延設部3cの表面に形成された歯面を有し、操作ノブ2の操作により第1ギアG1が回転すると、その回転力が伝達されて係止手段3を移動可能とされている。
【0032】
すなわち、第1ギアG1及び第2ギアG2は、操作ノブ2の揺動軸Lbと係止手段3との間に形成され、操作ノブ2の揺動操作に伴う揺動軸Lbの回転力を係止手段3に伝達して移動させ得る操作力伝達手段を構成するものであり、これら第1ギアG1及び第2ギアG2が噛み合って構成されることにより、揺動軸Lbの回転力を第1ギアG1及び第2ギアG2を介して係止手段3に伝達するラックアンドピニオンを構成している。
【0033】
さらに、本実施形態においては、係止手段3の係止位置から許容位置への動作をロックし、又は当該ロックを解除して係止手段3の係止位置から許容位置への動作を許容し得るロック手段を具備している。具体的には、本実施形態に係るロック手段は、係止手段3と連結されて当該係止手段3と共に移動可能なスライダ6と、スライダ6に係止して当該スライダ6の移動を規制する位置(突出状態)と、スライダ6に対する係止を解除して当該スライダ6の移動を許容する位置(収縮状態)との間で変位可能なプランジャ5aを有したソレノイド5とを有して構成されている。
【0034】
スライダ6は、図11、12に示すように、突出部6aと、ソレノイド5のプランジャ5aと干渉可能な干渉部6bと、検知スイッチ8の作動部8aを作動可能な凸部6cとが一体形成された部品から成り、図4、5に示すように、突出部6aに形成された嵌合凹部6aaに係止手段3の連結部3bが嵌合して組み付けられている。これにより、係止手段3が係止位置と許容位置との間で移動するのに追従して、スライダ6が収容部材T内で移動可能とされている。なお、スライダ6は、図4、5に示すように、コイルスプリング7にて同図中左側に向かって付勢されている。
【0035】
ソレノイド5は、取付部材10に取り付けられ、通電によりプランジャ5aを突出状態と収縮状態との間で変位させ得るもので、当該プランジャ5aが突出状態のとき、スライダ6の干渉部6bと干渉することにより係止してスライダ6の移動(すなわち、係止手段3との連動)を規制し得るとともに、プランジャ5aが収縮状態のとき、スライダ6の干渉部6bから離間することによりスライダ6に対する係止を解除してスライダ6の移動(すなわち、係止手段3との連動)を許容し得るようになっている。
【0036】
なお、プランジャ5aは、通電によって、突出状態と収縮状態との間で変位可能とされ、突出状態でスライダ6の干渉部6bと干渉する位置、及び収縮状態で当該干渉部6bから離間した位置となるよう設定されるとともに、ソレノイド5の内部に形成されたスプリング(不図示)によって、収縮状態から突出状態に向かう方向に常時付勢されている。すなわち、プランジャ5aは、通電されない状態において、内部のスプリングの付勢力にて突出状態とされてスライダ6を係止することにより係止手段3をロックするとともに、通電されると、内部のスプリングの付勢力に抗して収縮状態とされてスライダ6の係止を解除することにより係止手段3のロックを解除するのである。
【0037】
検知スイッチ8は、取付部材10に取り付けられ、スライダ6の移動を検知することにより係止手段3の移動を検知可能なマイクロスイッチから成るもので、図4、15に示すように、検出手段3が係止位置にあるとき、作動部8aがスライダ6の凸部6cに押圧されて検知スイッチ8が電気的にオンした状態となっている。そして、操作ノブ2を操作開始して係止手段3が係止位置から許容位置に向かって移動し始めると、図16に示すように、スライダ6が同方向に移動して作動部8aから凸部6cが離間するので、検知スイッチ8が電気的にオフした状態となる。これにより、検知スイッチ8のオン・オフ状態を検知することにより、操作ノブ2の操作に伴う係止手段3の移動を検知することができる。なお、本実施形態においては、図13、14に示すように、ソレノイド5、スライダ6、コイルスプリング7、検知スイッチ8及び取付部材10は、ユニット4を構成している。
【0038】
加えて、本実施形態に適用される車両は、図17に示すように、運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを電波に乗せて発信する発信手段11と、車両側に配設されて発信手段11からのIDコードを受信し得る受信手段12と、該受信手段12で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定する判定手段13とを有しており、判定手段13が正規のIDコードを受信したと判定したことを条件として、ECU14に制御信号を送信してエンジン始動を許可するようになっている。
【0039】
さらに、本実施形態に係る判定手段13は、検知スイッチ8と電気的に接続されており、判定手段13が正規のIDコードを受信したと判定され、且つ、検知スイッチ8により係止手段3の移動が検知されたことを条件として、ソレノイド5のプランジャ5aを収縮状態としてロック解除を行わせるよう構成されている。すなわち、判定手段13が正規のIDコードを受信したと判定している場合、検知スイッチ8により係止手段3の移動開始を検知することにより、ソレノイド5のプランジャ5aを突出状態から収縮状態としてロック手段のロックを解除し、係止手段3の係止位置から許容位置への移動を許容するとともに、判定手段15が正規のIDコードを受信していると判定されない場合、検知スイッチ8により係止手段3の移動開始を検知しても、ソレノイド5のプランジャ5aを突出状態に維持してロック手段によるロック解除動作が行われないようになっている。
【0040】
本実施形態によれば、操作ノブ2の揺動軸Lbと係止手段3との間に形成され、操作ノブ2の揺動操作に伴う揺動軸Lbの回転力を係止手段3に伝達して移動させ得る操作力伝達手段(具体的には、第1ギアG1及び第2ギアG2で構成されるラックアンドピニオン)を備えたので、操作ノブ2の操作力が係止手段3に対して直接伝達されるのを回避して、操作ノブ2又は係止手段3の破損を防止することができるとともに、異物が装置内部に侵入してしまうのを防止することができる。
【0041】
特に、本実施形態に係る操作力伝達手段は、揺動軸Lbに形成された第1ギアG1と、係止手段3に形成された第2ギアG2とを有し、第1ギアG1及び第2ギアG2が噛み合って構成されることにより、揺動軸Lbの回転力を第1ギアG1及び第2ギアG2を介して係止手段3に伝達するので、操作ノブ2の操作に伴う係止手段3の移動量や操作方向、及び操作ノブ2の操作により係止手段3に伝達される操作力を容易に調整することができる。
【0042】
また、第1ギアG1及び第2ギアG2は、ラックアンドピニオンを構成するものとされ、第1ギアG1は、揺動軸Lbの端部に取り付けられたピニオンから成るとともに、第2ギアG2は、係止手段3に形成されたラックから成るので、揺動軸Lbの回転力を効率よく係止手段3に伝達してスライドさせることができる。なお、本実施形態においては、揺動軸Lbの一端部に第1ギアG1が形成されているが、当該揺動軸Lbの両端部に第1ギアG1をそれぞれ取り付け、各第1ギアG1に噛み合う第2ギアG2を係止手段3の延設部3cのそれぞれに形成するようにしてもよい。
【0043】
さらに、本実施形態に係るロック手段は、係止手段3と連結されて当該係止手段3と共に移動可能なスライダ6と、スライダ6に係止して当該スライダ6の移動を規制する位置と、スライダ6に対する係止を解除して当該スライダ6の移動を許容する位置との間で変位可能なプランジャ5aを有したソレノイド5とを有するので、確実に係止手段3の動作をロックさせることができる。
【0044】
またさらに、本実施形態に係るキャップ1は、揺動軸Lbを挿通する挿通孔1aaが形成されるとともに、当該揺動軸Lbには、挿通孔1aaをシールするシール手段fが取り付けられたので、挿通孔1aaを介して雨水や塵等の異物が装置内部に侵入してしまうのを容易に防止することができる。なお、シール手段fは、挿通孔1aaをシールし、且つ、揺動軸Lbの回転を妨げないものであれば、如何なる形態であってもよい。
【0045】
また、運転者が携帯し得るとともに車両固有のIDコードを発信する発信手段11と、車両側に配設されて発信手段11からのIDコードを受信し得る受信手段12と、受信手段12で受信したIDコードが当該車両における正規のものであるか否かを判定する判定手段13とを備えるとともに、判定手段13が正規のIDコードを受信したと判定している場合に限り、ロック手段によるロック解除を行わせ得るので、第三者が不正にロック手段によるロック解除を行ってしまうのを防止することができ、防犯性を向上させることができる。
【0046】
特に、判定手段13により正規のIDコードを受信したと判定され、且つ、係止手段3の移動が検知されたことを条件として、ロック手段によるロック解除を行わせるので、操作ノブ2の操作の過程でロック解除を行わせることができ、例えば車両側に取り付けられた別個の操作手段(アクセススイッチ等)にてロック解除を行わせるものに比べて、操作性を向上させることができる。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば操作力伝達手段は、操作ノブ2(操作手段)の揺動軸Lbと係止手段3との間に形成され、操作ノブ2の揺動操作に伴う揺動軸Lbの回転力を係止手段3に伝達して移動させ得るものであれば、第1ギアG1及び第2ギアG2で構成されるものに限定されず、リンク部材やカム部材等の他の形態のものであってもよい。
【0048】
また、本実施形態に係る操作力伝達手段は、第1ギアG1及び第2ギアG2で構成されるラックアンドピニオンから成るものとされているが、両ギアが歯車から成るもの、或いは第1ギアG1及び第2ギアG2の間に別個のギアが噛み合ったもの等であってもよい。特に、第1ギアG1及び第2ギアG2の間に別個のギアが噛み合った操作力伝達手段としれば、操作ノブ2の操作方向に対する係止手段3の移動方向を逆向きに変更することができる。なお、適用される車両は、自動車や二輪車の他、バギー又は雪上車等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
操作手段の揺動軸と係止手段との間に形成され、操作手段の揺動操作に伴う揺動軸の回転力を係止手段に伝達して移動させ得る操作力伝達手段を備えるとともに、判定手段が正規のIDコードを受信したと判定している場合に限り、ロック手段によるロック解除を行わせ得るよう構成され、判定手段により正規のIDコードを受信したと判定され、且つ、係止手段の移動が検知されたことを条件として、ロック手段によるロック解除を行わせる燃料タンクキャップのロック装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 キャップ
1a 上側キャップ部
1aa 挿通孔
1b 下側キャップ部
1c アーム部
2 操作ノブ(操作手段)
2a 挿通孔
3 係止手段
3a 係止部
3aa テーパ面
3b 連結部
3c 延設部(ラック)
4 ユニット
5 ソレノイド(ロック手段)
5a プランジャ
6 スライダ(ロック手段)
6a 突出部
6aa 嵌合凹部
6b 干渉部
6c 凸部
7 コイルスプリング
8 検知スイッチ
8a 作動部
9 コイルスプリング
10 取付部材
11 発信手段
12 受信手段
13 判定手段
14 ECU
G1 第1ギア
G2 第2ギア
T 収容部材
Ta 給油口
H カバー部
Ha 被係止部
S シール材
La、Lb 揺動軸
f シール手段
図1
図2
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