(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】米飯、その製造方法、米飯改良剤、米飯のほぐれを改善させる方法、及び米飯炊飯時における釜内部の加熱ムラを改善させる使用方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230710BHJP
【FI】
A23L7/10 B
A23L7/10 E
(21)【出願番号】P 2023514819
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2022035889
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2021158190
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】白石 旭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎平
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 真衣
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-296464(JP,A)
【文献】特開2001-238617(JP,A)
【文献】特開2014-166145(JP,A)
【文献】特開2008-167670(JP,A)
【文献】特開2004-073052(JP,A)
【文献】特開平11-042086(JP,A)
【文献】特開平07-289186(JP,A)
【文献】特開2020-000435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
A47J 27/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(1)~(3)を全て充足する米飯改良剤。
(1)下記(a)及び/又は(b)を充足する
(a)米飯改良剤中のグルタミナーゼの含有量が、0.01~10.0w/w%
(b)米飯改良剤中のグルタミナーゼ酵素活性が100mU/g以上
(2)20℃における米飯改良剤のpHが4.6~9.0である
(3)非解離型酢酸濃度が0.001~2.000w/w%である
【請求項2】
20℃における比重が1.010以上である、請求項1に記載の米飯改良剤。
【請求項3】
食塩相当量が5.0~25.0w/w%である、請求項1又は2に記載の米飯改良剤。
【請求項4】
糖質含有量が0.5~50.0w/w%である、請求項1又は2に記載の米飯改良剤。
【請求項5】
糖質含有量が0.5~50.0w/w%である、請求項3に記載の米飯改良剤。
【請求項6】
グルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、食塩相当量(w/w%)の比率が0.1~730である、請求項3に記載の米飯改良剤。
【請求項7】
グルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する糖質含有量(w/w%)の比率が0.1~300である、請求項4に記載の米飯改良剤。
【請求項8】
食塩相当量(w/w%)に対する糖質含有量(w/w%)の比率が0.5~8である、請求項5に記載の米飯改良剤。
【請求項9】
糖質が可溶性炭水化物である、請求項4に記載の米飯改良剤。
【請求項10】
糖質として還元水飴を含む、請求項4に記載の米飯改良剤。
【請求項11】
酢酸ナトリウムを含有する請求項1
又は2に記載の米飯改良剤。
【請求項12】
酢酸含有量が2.00w/w%以上12.00w/w%以下である、請求項11に記載の米飯改良剤。
【請求項13】
アミラーゼ活性を有する請求項1
又は2に記載の米飯改良剤。
【請求項14】
加水400%のコシヒカリ精米に対して、米飯改良剤を0.1w/w%添加し、昇温速度12℃/分で98℃まで加熱後2分間保持した場合における上清のB型粘度計測定値(No.1ローター、60rpm、20℃)が100cP以下である、請求項1
又は2に記載の米飯改良剤。
【請求項15】
請求項1
又は2に記載の米飯改良剤の製造方法であって、最高到達温度124℃未満で殺菌処理を行うことを含む製造方法。
【請求項16】
請求項1
又は2に記載の米飯改良剤の製造方法であって、製造時に殺菌処理工程を有さないことを特徴とする製造方法。
【請求項17】
請求項1
又は2に記載の米飯改良剤を用いて炊飯することを含む米飯の製造方法。
【請求項18】
米飯が中食用米飯である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
米飯に用いる米がインディカ米及び飼料用米を除く米である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
米飯に用いる米が、見た目アミロース割合30%以下の米である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項21】
以下の段階(i)~(iii)を含む米飯の製造方法。
(i)下記(c)及び/又は(d)を充足するように、生米、水に対して、請求項1
又は2に記載の米飯改良剤を添加して炊飯前米飯を準備する段階
(c)生米重量に対して、グルタミナーゼの含有量が0.0005w/w%以上
(d)生米重量に対して、グルタミナーゼ酵素活性が0.1mU/g以上
(ii)段階(i)の炊飯前米飯を、釜底昇温速度6.0℃/分以上で98℃以上まで加熱する昇温段階
(iii)昇温段階後の米飯を釜底温度98℃以上で2分間以上保持する保温段階
【請求項22】
段階(i)が、食用油脂を生米重量に対して0.1~2w/w%炊飯前米飯に含有させることを含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
段階(ii)を、段階(i)における炊飯前米飯製造後、80分間以内に開始する、請求項21に記載の製造方法。
【請求項24】
段階(i)において、生米重量に対する食塩相当量が0.01~2.5w/w%である、請求項21に記載の製造方法。
【請求項25】
段階(i)において、生米重量に対する糖質の添加量が0.01~0.9w/w%である、請求項21に記載の製造方法。
【請求項26】
段階(ii)における、釜上昇温速度が6.0℃/分以上である、請求項21に記載の製造方法。
【請求項27】
段階(iii)において、昇温段階後の米飯を、釜上温度98℃以上で2分間以上となるように保持する請求項21に記載の製造方法。
【請求項28】
段階(iii)において、昇温段階後の米飯を、釜底温度98℃以上で保持する時間と釜上温度98℃以上で保持する時間との差分が15分間以下となるように保温する請求項21に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯、その製造方法、米飯改良剤、米飯のほぐれを改善させる方法、及び米飯炊飯時における釜内部の加熱ムラを改善させる使用方法に関する。
背景技術
【0002】
近時、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでおにぎりや、弁当、寿司といった米飯を、家庭に持ち帰って食べる「中食」と呼ばれる食事形態が増えている。従って、米飯のおいしさを長時間保持する技術の重要性が増している。
【0003】
米飯のおいしさを(白飯、おにぎり、すし飯等)において長時間保持する技術として、例えば特許文献1では、精白米の炊飯に際し、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素と、食塩及びサイクロデキストリンを添加することを特徴とする米飯の改良方法が開示されている。しかし、当該技術では、米飯のほぐれを十分に改善できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
つまり、本発明の課題は、長時間保管した場合であってもほぐれ性に優れた米飯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前述した課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、炊飯前の生米と水の混合物に対して、所定濃度の非解離型酢酸とグルタミナーゼを添加して炊飯することで、炊飯後長時間保管した場合であっても、ほぐれに優れる米飯を製造できることを見出し、本発明の米飯改良剤を完成させた。
即ち、本発明の趣旨は、例えば以下に関する。
[項1]
以下(1)~(3)を全て充足する米飯改良剤。
(1)下記(a)及び/又は(b)を充足する
(a)米飯改良剤中のグルタミナーゼの含有量が、0.01~10.0w/w%であり、より具体的には、例えば、その下限は0.05w/w%以上、0.1w/w%以上、0.15w/w%以上、0.2w/w%以上、0.3w/w%以上、0.4w/w%以上、0.5w/w%以上、0.6w/w%以上、0.7w/w%以上、0.8w/w%以上、0.9w/w%以上、1.0w/w%以上、1.1w/w%以上、1.2w/w%以上、1.3w/w%以上、1.4w/w%以上、1.5w/w%以上、1.9w/w%以上、2.4w/w%以上であり、その上限は、例えば9.0w/w%以下、8.0w/w%以下、7.0w/w%以下、6.0w/w%以下、5.0w/w%以下、4.5w/w%以下、4.2w/w%以下、3.9w/w%以下、3.7w/w%以下、3.4w/w%以下、3.3w/w%以下、3.1w/w%以下、2.9w/w%以下、2.7w/w%以下、2.4w/w%以下、2.2w/w%以下、2.0w/w%以下、1.8w/w%以下、1.6w/w%以下、1.4w/w%以下、0.5w/w%以下、0.30w/w%以下であり、さらに具体的には、例えば、グルタミナーゼ活性の過半又は全部が酵素製剤に由来し、グルタミナーゼの含有量が、例えば、0.8~5.0w/w%、好ましくは0.9~4.5w/w%、より好ましくは1.0~4.0w/w%、さらに好ましくは1.2~3.6w/w%、さらにより好ましくは1.6~3.4w/w%、とりわけ好ましくは1.8~3.2w/w%、特に好ましくは2.0~3.0w/w%である。
(b)米飯改良剤中のグルタミナーゼ酵素活性が100mU/g以上であり、より具体的には、例えば、その下限は150mU/g以上、200mU/g以上、250mU/g以上、300mU/g以上、400mU/g以上、500mU/g以上、600mU/g以上、650mU/g以上、700mU/g以上、800mU/g以上、900mU/g以上、950mU/g以上、1000mU/g以上、1200mU/g以上、1500mU/g以上、1700mU/g以上、1800mU/g以上、2000mU/g以上であり、その上限は、例えば、900U/g以下、800U/g以下、700U/g以下、600U/g以下、500U/g以下、400U/g以下、300U/g以下、200U/g以下、100U/g以下、90U/g以下、80U/g以下、70U/g以下、60U/g以下、50U/g以下、40U/g以下、30U/g以下、20U/g以下、10U/g以下、5U/g以下、1U/g以下であり、米飯改良剤中のグルタミナーゼ酵素活性が、好ましくは150~10000mU/g、より好ましくは200~9000mU/g、さらに好ましくは300~7000mU/g、さらにより好ましくは600~6000mU/g、とりわけ好ましくは900~4000mU/g、特に好ましくは1000~3000mU/gである。
(2)20℃における米飯改良剤のpHが4.6~9.0であり、より具体的には、例えば、その上限は8.8以下、8.2以下、8.0以下、7.5以下、7.1以下、7.0以下、6.8以下、6.5以下、6.3以下、6.1以下、5.9以下、5.8以下、5.6以下、5.5以下であり、また、その下限は、例えば、4.6以上、4.7以上、4.8以上、4.9以上、5.0以上、5.1以上、5.2以上、5.3以上、5.4以上であり、例えば、20℃における米飯改良剤のpHが、好ましくは4.7~7.0、より好ましくは4.8~6.5、さらに好ましくは4.9~6.4、さらにより好ましくは5.0~6.3、とりわけ好ましくは5.1~6.2、特に好ましくは5.2~6.1である。
(3)非解離型酢酸濃度が0.001~2.000w/w%であり、より具体的には、例えば、その上限は1.900w/w%以下、1.800w/w%以下、1.700w/w%以下、1.650w/w%以下、1.600w/w%以下、1.580w/w%以下、1.510w/w%以下、1.450w/w%以下、1.380w/w%以下、1.280w/w%以下、1.200w/w%以下、1.150w/w%以下、1.100w/w%以下、1.050w/w%以下、1.005w/w%以下、0.980w/w%以下、0.940w/w%以下、0.920w/w%以下であり、また、その下限は、例えば、0.001w/w%以上、0.002w/w%以上、0.005w/w%以上、0.007w/w%以上、0.01w/w%以上、0.015w/w%以上、0.02w/w%以上、0.025w/w%以上、0.03w/w%以上、0.035w/w%以上、0.04w/w%以上、0.045w/w%以上、0.048w/w%以上、0.05w/w%以上、0.053w/w%以上、0.055w/w%以上、0.100w/w%以上、0.150w/w%以上、0.180w/w%以上、0.200w/w%以上、0.210w/w%以上、0.230w/w%以上、0.240w/w%以上、0.270w/w%以上、0.300w/w%以上、0.350w/w%以上、0.400w/w%以上、0.450w/w%以上、0.500w/w%以上、0.550w/w%以上、0.600w/w%以上であり、例えば、非解離型酢酸濃度が、好ましくは0.005~1.800w/w%、より好ましくは0.008~1.700w/w%、さらに好ましくは0.01~1.600w/w%、さらにより好ましくは0.050~1.550w/w%、とりわけ好ましくは0.100~1.450w/w%、特に好ましくは0.300~1.300w/w%である。
[項2]
20℃における比重が1.010以上であり、より具体的には、例えば、20℃における比重が、好ましくは1.010~1.500、より好ましくは1.020~1.450、さらに好ましくは1.030~1.420、さらにより好ましくは1.040~1.400、とりわけ好ましくは1.050~1.350、特に好ましくは1.060~1.300、又は1.100~1.290であり、その下限は、例えば、1.020以上、1.030以上、1.040以上、1.050以上、1.060以上、1.070以上、1.080以上、1.090以上、1.100以上、1.100以上、1.150以上であり、その上限は、例えば、1.500以下、1.450以下、1.400以下、1.350以下、1.300以下、1.250以下である、項1に記載の米飯改良剤。
[項3]
食塩相当量が5.0~25.0w/w%であり、より具体的には、例えば、食塩相当量が、より好ましくは6.0~24.0w/w%、さらに好ましくは7.0~23.0w/w%、さらにより好ましくは8.0~22.0w/w%、とりわけ好ましくは10.0~20.0w/w%、特に好ましくは12.0~18.0w/w%であり、また、その上限は、例えば、26.0w/w%以下、25.0w/w%以下、24.0w/w%以下、23.0w/w%以下、22.0w/w%以下、20.0w/w%以下、19.0w/w%以下、18.0w/w%以下、17.5w/w%以下、17.0w/w%以下、16.0w/w%以下、15.8w/w%以下であり、その下限は、例えば、1.0w/w%以上、2.0w/w%以上、2.5w/w%以上、3.0w/w%以上、3.5w/w%以上、4.0w/w%以上、6.0w/w%以上、7.5w/w%以上、8.0w/w%以上、11.0w/w%以上である、項1又は2に記載の米飯改良剤。
[項4]
糖質含有量が0.5~50.0 w/w%であり、より具体的には、例えば、糖質含有量が、より好ましくは1.0~40.0w/w%、さらに好ましくは2.0~36.0w/w%、さらにより好ましくは3.0~29.0w/w%、とりわけ好ましくは4.0~27.0w/w%、特に好ましくは5.0~25.0w/w%、又は13.0~25.0w/w%であり、その上限は、例えば、45.0w/w%以下、40.0w/w%以下、36.0w/w%以下、35.0w/w%以下、34.0w/w%以下、33.0w/w%以下、31.0w/w%以下、29.0w/w%以下、28.5w/w%以下、27.5w/w%以下、27.0w/w%以下、26.8w/w%以下、26.3w/w%以下であり、その下限は、例えば、0.5w/w%以上、1.0w/w%以上、1.5w/w%以上、2.0w/w%以上、2.5w/w%以上、3.0w/w%以上、3.5w/w%以上、4.0w/w%以上、6.0w/w%以上、7.0w/w%以上、7.5w/w%以上、8.0w/w%以上、9.0w/w%以上、10.0w/w%以上、11.5w/w%以上、12.0w/w%以上、12.5w/w%以上、13.0w/w%以上、13.5w/w%以上、14.0w/w%以上、16.0w/w%以上、17.0w/w%以上、17.5w/w%以上、18.0w/w%以上である、項1又は2に記載の米飯改良剤。
[項5]
糖質含有量が0.5~50.0 w/w%であり、より具体的には、例えば、糖質含有量が、より好ましくは1.0~40.0w/w%、さらに好ましくは2.0~36.0w/w%、さらにより好ましくは3.0~29.0w/w%、とりわけ好ましくは4.0~27.0w/w%、特に好ましくは5.0~25.0w/w%、又は13.0~25.0w/w%であり、その上限は、例えば、45.0w/w%以下、40.0w/w%以下、36.0w/w%以下、35.0w/w%以下、34.0w/w%以下、33.0w/w%以下、31.0w/w%以下、29.0w/w%以下、28.5w/w%以下、27.5w/w%以下、27.0w/w%以下、26.8w/w%以下、26.3w/w%以下であり、その下限は、例えば、0.5w/w%以上、1.0w/w%以上、1.5w/w%以上、2.0w/w%以上、2.5w/w%以上、3.0w/w%以上、3.5w/w%以上、4.0w/w%以上、6.0w/w%以上、7.0w/w%以上、7.5w/w%以上、8.0w/w%以上、9.0w/w%以上、10.0w/w%以上、11.5w/w%以上、12.0w/w%以上、12.5w/w%以上、13.0w/w%以上、13.5w/w%以上、14.0w/w%以上、16.0w/w%以上、17.0w/w%以上、17.5w/w%以上、18.0w/w%以上である、項3に記載の米飯改良剤。
[項6]
グルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、食塩相当量(w/w%)の比率が0.1~730であり、より具体的には、例えば、グルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、食塩相当量(w/w%)の比率が、0.5~500、0.7~300、0.9~100であり、好ましくは1~50、より好ましくは1.2~30、さらに好ましくは1.5~25、さらにより好ましくは2~15、とりわけ好ましくは3~9、特に好ましくは4~8であり、また、その上限は、例えば、600以下、500以下、400、300以下、200以下、100以下、80以下、60以下、51以下、37以下、35以下、30以下、25以下、24以下、20以下、18以下、14以下、12以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下であり、その下限は、例えば、0.15以上、0.25以上、0.35以上、0.45以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.2以上、1.4以上、2.5以上、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上である、項3に記載の米飯改良剤。
[項7]
グルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する糖質含有量(w/w%)の比率が0.1~300であり、より具体的には、例えば、グルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する糖質含有量(w/w%)の比率が、0.2~150、又は0.1~100であり、好ましくは0.3~70、より好ましくは0.5~60、さらに好ましくは1~50、さらにより好ましくは2~30、とりわけ好ましくは4~15、特に好ましくは6~12であり、その下限は、例えば、0.5以上、0.8以上、1以上、2以上、3以上、5以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上であり、またその上限は、例えば、250以下、200以下、150以下、100以下、80以下、66以下、62以下、50以下、45以下、40以下、30以下、25以下、22以下、20以下、17以下、15以下である、項4に記載の米飯改良剤。
[項8]
食塩相当量(w/w%)に対する糖質含有量(w/w%)の比率が0.5~8であり、より具体的には、例えば、食塩相当量(w/w%)に対する糖質含有量(w/w%)の比率が、より好ましくは0.5~7、さらに好ましくは0.5~6、さらにより好ましくは0.5~5、とりわけ好ましくは0.5~4、特に好ましくは1~3であり、その下限は、例えば、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上であり、また、その上限は、例えば、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下である、項5に記載の米飯改良剤。
[項9]
糖質が可溶性炭水化物であり、より具体的には、例えば、その含有量が項4に記載の規定を充足し、さらに具体的には、例えば、グルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する可溶性炭水化物含有量(w/w%)の比率が項7に記載の規定を充足し、さらにより具体的には、例えば、米飯改良剤の食塩相当量(w/w%)に対する、可溶性炭水化物含有量(w/w%)の比率が項8に記載の規定を充足する、項4に記載の米飯改良剤。
[項10]
糖質として還元水飴を含み、より具体的には、例えば、米飯改良剤における糖質含有量のうち、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、とりわけ好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、または100質量%が還元水飴に由来し、さらに具体的には、例えば、その含有量が項4に記載の規定を充足し、さらにより具体的には、例えば、グルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する還元水飴含有量(w/w%)の比率が項7に記載の規定を充足し、とりわけ具体的には、例えば、米飯改良剤の食塩相当量(w/w%)に対する、還元水飴(w/w%)の比率が項8に記載の規定を充足する、項4に記載の米飯改良剤。
[項11]
酢酸ナトリウムを含有し、より具体的には、例えば、好ましくは食酢および酢酸ナトリウムを含有し、さらに具体的には、例えば、組成物全体の総酢酸含有量に対する、酢酸ナトリウム由来酢酸含有量の比率が、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であり、その上限は、例えば、通常100質量%未満、又は98質量%未満であり、さらにより具体的には、例えば、組成物全体の総酢酸含有量に対する、食酢由来酢酸含有量の比率が、通常50質量%未満、中でも40質量%未満、又は30質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満、又は10質量%未満であり、その下限は、例えば、通常0質量%超、又は2質量%超、又は5質量%超であり、とりわけ具体的には、例えば、酢酸ナトリウムに由来する酢酸濃度が1.9~12.0w/w%であり、より好ましくは2.1~11.0w/w%、より好ましくは2.2~10.0w/w%、より好ましくは2.3~9.5w/w%、さらに好ましくは2.4~9.0w/w%、さらにより好ましくは2.6~8.8w/w%、とりわけ好ましくは2.8~8.5w/w%、特に好ましくは3.0~8.0w/w%、または4.0~7.5w/w%、4.3~7.0w/w%であり、その上限は、例えば、12.0w/w%以下、11.5w/w%以下、11.0w/w%以下、10.5w/w%以下、9.3w/w%以下、9.1w/w%以下、8.9w/w%以下、8.7w/w%以下、8.3w/w%以下、7.7w/w%以下、7.3w/w%以下、7.2w/w%以下、6.9w/w%以下、6.8w/w%以下、6.7w/w%以下であり、一方、その下限は、例えば、2.1w/w%以上、2.2w/w%以上、2.3w/w%以上、2.4w/w%以上、2.7w/w%以上、2.9w/w%以上、3.1w/w%以上、3.2w/w%以上、3.3w/w%以上、3.5w/w%以上、3.7w/w%以上、3.9w/w%以上、4.1w/w%以上、4.3w/w%以上、4.5w/w%以上、4.7w/w%以上、4.9w/w%以上である、項1~10のいずれか1項記載の米飯改良剤。
[項12]
酢酸含有量が2.00w/w%以上12.00w/w%以下であり、より具体的には、例えば、酢酸含有量が、より好ましくは2.1~11.0w/w%、より好ましくは2.2~10.0w/w%、より好ましくは2.3~9.5w/w%、さらに好ましくは2.4~9.0w/w%、さらにより好ましくは2.6~8.8w/w%、とりわけ好ましくは2.8~8.5w/w%、特に好ましくは3.0~8.0w/w%、または4.0~7.5w/w%、4.3~7.0w/w%であり、その上限は、例えば、12.0w/w%以下、11.5w/w%以下、11.0w/w%以下、10.5w/w%以下、9.3w/w%以下、9.1w/w%以下、8.9w/w%以下、8.7w/w%以下、8.3w/w%以下、7.7w/w%以下、7.3w/w%以下、7.2w/w%以下、6.9w/w%以下、6.8w/w%以下、6.7w/w%以下であり、一方、その下限は、例えば、2.1w/w%以上、2.2w/w%以上、2.3w/w%以上、2.4w/w%以上、2.7w/w%以上、2.9w/w%以上、3.1w/w%以上、3.2w/w%以上、3.3w/w%以上、3.5w/w%以上、3.7w/w%以上、3.9w/w%以上、4.1w/w%以上、4.3w/w%以上、4.5w/w%以上、4.7w/w%以上、4.9w/w%以上であり、さらに具体的には、例えば、本発明の米飯改良剤における酢酸は、その一部が酢酸塩の状態で含有されており、さらにより具体的には、例えば、中和滴定によって求められる酸度に対する本発明の高速液体クロマトグラフ法によって測定する酢酸含有量の割合(酢酸含有量/中和滴定によって求められる酸度)が、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上である、項11に記載の米飯改良剤。
[項13]
アミラーゼ活性を有し、より具体的には、例えば、アミラーゼ活性が100mU/g以上1000U/g以下であり、その下限は、例えば、150mU/g以上、200mU/g以上、250mU/g以上、300mU/g以上、400mU/g以上、500mU/g以上、600mU/g以上、700mU/g以上、800mU/g以上、900mU/g以上、1000mU/g以上、1500mU/g以上、2000mU/g以上であり、一方上限は、例えば、900U/g以下、800U/g以下、700U/g以下、600U/g以下、500U/g以下、400U/g以下、300U/g以下、200U/g以下、100U/g以下、90U/g以下、80U/g以下、70U/g以下、60U/g以下、50U/g以下、40U/g以下、30U/g以下、20U/g以下、10U/g以下、5U/g以下、1U/g以下であり、また、さらに具体的には、例えば、アミラーゼ含有量が、酵素としてのαアミラーゼ(CAS9000-90-2)含有量として、0.01w/w%~10w/w%であり、その下限は、例えば、0.05w/w%以上、0.1w/w%以上、0.2w/w%以上、0.3w/w%以上、0.4w/w%以上、0.5w/w%以上、0.6w/w%以上、0.7w/w%以上、0.8w/w%以上、0.9w/w%以上、1.0w/w%以上、1.1w/w%以上、1.2w/w%以上、1.3w/w%以上、1.4w/w%以上、1.5w/w%以上、1.9w/w%以上であり、また、その上限は、例えば、9.0w/w%以下、8.0w/w%以下、7.0w/w%以下、6.0w/w%以下、5.0w/w%以下、4.5w/w%以下、4.2w/w%以下、3.9w/w%以下、3.7w/w%以下、3.4w/w%以下、3.3w/w%以下、3.1w/w%以下、2.9w/w%以下、2.7w/w%以下、2.4w/w%以下、2.2w/w%以下、2.0w/w%以下であり、さらにより具体的には、例えば、米飯改良剤におけるアミラーゼ活性の過半又は全部が酵素製剤に由来し、グルタミナーゼ含有量が上記規定を充足する、項1~12のいずれか1項に記載の米飯改良剤。
[項14]
加水400%のコシヒカリ精米に対して、米飯改良剤を0.1w/w%添加し、昇温速度12℃/分で98℃まで加熱後2分間保持した場合における上清のB型粘度計測定値(No.1ローター、60rpm、20℃)が100cP以下であり、より具体的には、例えば、その上限は95cP以下、90cP以下、85cP以下、80cP以下であり、また、その下限が、例えば、0cP以上、1cP以上、2cP以上、3cP以上、4cP以上、5cP以上であり、さらに具体的には、例えば、米飯改良剤非添加区(酵素活性を有しない態様)に対する米飯改良剤添加区の当該粘度比率(米飯改良剤添加区の当該粘度/米飯改良剤非添加区の当該粘度)が0.0以上0.8未満であり、さらにより具体的には、例えば、その上限が0.75未満、又は0.70未満、又は0.65未満、又は0.60未満であり、また、その下限は、例えば、0.0以上、又は0.1以上、又は0.2以上、又は0.3以上、又は0.4以上、又は0.5以上である 、項1~13のいずれか1項に記載の米飯改良剤。
[項15]
項1~14のいずれか1項に記載の米飯改良剤の製造方法であって、最高到達温度124℃未満で殺菌処理を行うことを含む製造方法。
[項16]
項1~14のいずれか1項に記載の米飯改良剤の製造方法であって、製造時に殺菌処理工程を有さないことを特徴とする製造方法であり、より具体的には、例えば、米炊飯改良剤が容器詰め米炊飯改良剤であり、その賞味期限が常温で4か月以上であり、例えば指標菌のZ値が10分間である場合、124℃1.5925分間に相当する殺菌処理を行わない、米飯改良剤の製造方法。
[項17]
項1~14のいずれか1項に記載の米飯改良剤を用いて炊飯することを含む米飯の製造方法。
[項18]
米飯が中食用米飯であり、より具体的には、例えば、前記中食用米飯が、好ましくは、おにぎり、寿司、弁当に含まれる白飯、すし飯(酢飯)、赤飯、ピラフ、炒飯、炊き込みご飯、おこわである、項17に記載の製造方法。
[項19]
米飯に用いる米がインディカ米及び飼料用米を除く米である、項17又は 18に記載の製造方法。
[項20]
米飯に用いる米が、見た目アミロース割合30%以下であり、より具体的には、例えば、その上限が28%以下、又は25%以下、又は20%以下であり、またその下限が、例えば、3%以上、又は5%以上の米である、項17~19のいずれか1項に記載の製造方法。
[項21]
以下の段階(i)~(iii)を含む米飯の製造方法。
(i)下記(c)及び/又は(d)を充足するように、生米、水に対して、項1~14のいずれか1項に記載の米飯改良剤を添加して炊飯前米飯を準備する段階
(c)生米重量に対して、グルタミナーゼの含有量が0.0005w/w%以上であり、より具体的には、例えば、その下限は0.0006w/w%以上、0.007w/w%以上、0.0008w/w%以上、0.0009w/w%以上、0.001w/w%以上、0.003w/w%以上、0.004w/w%以上、0.005w/w%以上、0.006w/w%以上、0.007w/w%以上、0.008w/w%以上、0.009w/w%以上、0.010w/w%以上、0.011w/w%以上、0.012w/w%以上、0.013w/w%以上、0.014w/w%以上、0.015w/w%以上、0.016w/w%以上、0.017w/w%以上、0.018w/w%以上、0.02w/w%以上、0.05w/w%以上、0.08w/w%以上、0.1w/w%以上、0.14w/w%以上、0.2w/w%以上、0.3w/w%以上、0.4w/w%以上、0.5w/w%以上、0.6w/w%以上、0.7w/w%以上、0.8w/w%以上、0.9w/w%以上、1.0w/w%以上、1.1w/w%以上、1.2w/w%以上、1.3w/w%以上、1.4w/w%以上、1.5w/w%以上、1.9w/w%以上であり、また、その上限は、例えば、2.0w/w%以下、1.5w/w%以下、1.0w/w%以下、0.5w/w%以下、0.4w/w%以下、0.3w/w%以下、0.25w/w%以下、0.20w/w%以下、0.15w/w%以下、0.10w/w%以下、0.05w/w%以下、0.03w/w%以下、0.01w/w%以下であり、さらに具体的には、例えば、炊飯前米飯におけるグルタミナーゼ活性の50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は100%が酵素製剤に由来する態様であり、さらにより具体的には、例えば、炊飯前米飯におけるグルタミナーゼ活性の過半又は全部が酵素製剤に由来し、生米重量に対するグルタミナーゼの含有量が、例えば、0.0005~0.20w/w%であり、好ましくは0.0007~0.17w/w%、より好ましくは0.0008~0.15w/w%、さらに好ましくは0.001~0.13w/w%、さらにより好ましくは0.001~0.10w/w%、とりわけ好ましくは0.001~0.05w/w%、特に好ましくは0.001~0.03w/w%である。
(d)生米重量に対して、グルタミナーゼ酵素活性が0.1mU/g以上であり、より具体的には、例えば、その下限は0.3mU/g以上、0.5mU/g以上、0.7mU/g以上、0.9mU/g以上、1.0mU/g以上、1.1mU/g以上、1.2mU/g以上、1.3mU/g以上、1.4mU/g以上、1.5mU/g以上、1.6mU/g以上、1.7mU/g以上、1.8mU/g以上、1.9mU/g以上、2.0mU/g以上、3.0mU/g以上、4.0mU/g以上、5.0mU/g以上、9.0mU/g以上、10mU/g以上、20mU/g以上、30mU/g以上、40mU/g以上、50mU/g以上、60mU/g以上、70mU/g以上、80mU/g以上、90mU/g以上、100mU/g以上、150mU/g以上、200mU/g以上、300mU/g以上、400mU/g以上、500mU/g以上であり、一方上限は、例えば、9U/g以下、8U/g以下、7U/g以下、6U/g以下、5U/g以下、4U/g以下、3U/g以下、2U/g以下、1U/g以下、0.9U/g以下、0.8U/g以下、0.7U/g以下、0.6U/g以下である。
(ii)段階(i)の炊飯前米飯を、釜底昇温速度6.0℃/分以上 で98℃以上まで加熱する昇温段階であり、より具体的には、例えば、その下限は6.5℃/分以上であり、又は7.0℃/分以上、又は7.5℃/分以上、又は8.0℃/分以上、又は8.5℃/分以上、又は9.0℃/分以上、又は9.5℃/分以上、又は10.0℃/分以上、又は11.0℃/分以上、又は12.0℃/分以上、又は13.0℃/分以上、又は14.0℃/分以上、又は15.0℃/分以上であり、また、その上限は、例えば、23℃/分以下、又は20℃/分以下である。
(iii)昇温段階後の米飯を釜底温度98℃以上で2分間以上保持する保温段階であり、より具体的には、例えば、その下限は3分間以上であり、又は4分間以上、又は5分間以上、又は6分間以上、又は7分間以上、又は8分間以上、又は9分間以上、又は10分間以上、又は11分間以上、又は12分間以上、又は13分間以上、又は14分間以上、又は15分間以上であり、その上限は、例えば、120分間以下であり、100分間以下、又は80分間以下、又は60分間以下、又は50分間以下、又は40分間以下である。
[項22]
段階(i)が、食用油脂を生米重量に対して0.1~2w/w%炊飯前米飯に含有させることを含み、より具体的には、例えば、生米重量に対する食用油脂の含有量が、より好ましくは0.15~1.5w/w%、さらに好ましくは0.3~1.2w/w%、さらにより好ましくは0.35~1.0w/w%、とりわけ好ましくは0.40~0.90w/w%、特に好ましくは0.45~0.80w/w%であり、また、その上限値は、例えば、2w/w%、または1.8w/w%、または1.6w/w%、または1.4w/w%であり、下限値は、例えば、0.1w/w%、または0.2w/w%、または0.4w/w%である、項21に記載の製造方法。
[項23]
段階(ii)を、段階(i)における炊飯前米飯製造後、80分間以内に開始し、より具体的には、例えば、炊飯前米飯製造後、炊飯を開始するまでの時間は70分間以下、又は60分間以下、又は50分間以下、又は40分間以下、又は30分間以下、又は20分間以下、又は15分間以下、又は10分間以下、又は5分間以下、又は1分間以下、又は0.5分間以下であり、その下限は、例えば、0分間以上、0.1分間以上、0.2分間以上である、項21又は22に記載の製造方法。
[項24]
段階(i)において、生米重量に対する食塩相当量が0.01~2.5w/w%であり、より具体的には、例えば、生米重量に対する食塩相当量が、特に好ましくは0.05~0.2w/w%である、項21~23のいずれか1項に記載の製造方法。
[項25]
段階(i)において、生米重量に対する糖質の添加量が0.01~0.9w/w%であり、より具体的には、例えば、生米重量に対する糖質の添加量が、特に好ましくは0.05~0.2w/w%である、項21~24のいずれか1項に記載の製造方法であり、さらに具体的には、例えば、前記項24に記載の製造方法である場合、食塩相当量に対する糖質添加量の比率は、好ましくは0.5~8であり、より好ましくは0.5~7、さらに好ましくは0.5~6、さらにより好ましくは0.5~5、とりわけ好ましくは0.5~4、特に好ましくは1~3である、製造方法。
[項26]
段階(ii)における、釜上昇温速度が6.0℃/分以上であり、より具体的には、例えば、その下限は6.5℃/分以上であり、又は7.0℃/分以上、又は7.5℃/分以上、又は8.0℃/分以上、又は8.5℃/分以上、又は9.0℃/分以上、又は9.5℃/分以上、又は10.0℃/分以上、又は11.0℃/分以上、又は12.0℃/分以上、又は13.0℃/分以上、又は14.0℃/分以上、又は15.0℃/分以上であり、また、その上限は、例えば、通常23℃/分以下、又は20℃/分以下である、項21~25のいずれか1項に記載の製造方法。
[項27]
段階(iii)において、昇温段階後の米飯を、釜上温度98℃以上で2分間以上となるように保持し、より具体的には、例えば、その下限は3分間以上であり、又は4分間以上、又は5分間以上、又は6分間以上、又は7分間以上、又は8分間以上、又は9分間以上、又は10分間以上、又は11分間以上、又は12分間以上、又は13分間以上、又は14分間以上、又は15分間以上であり、その上限は、例えば、100分間以下であり、又は80分間以下、又は60分間以下、又は50分間以下、又は40分間以下である、項21~26のいずれか1項に記載の製造方法。
[項28]
段階(iii)において、昇温段階後の米飯を、釜底温度98℃以上で保持する時間と釜上温度98℃以上で保持する時間との差分が15分間以下となるように保温し、より具体的には、例えば、その上限は、14分間以下であり、又は13分間以下、又は12分間以下、又は11分間以下、又は10分間以下、又は9分間以下、又は8分間以下、又は7分間以下であり、その下限は、例えば、1分間以上、又は2分間以上であり、さらに具体的には、例えば、釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間が15分間以上であり、かつ釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間の差分が10分間以内である、項21~27のいずれか1項に記載の製造方法。
[項29]
項1~14のいずれか1項に記載の米飯改良剤の、中食用米飯の製造への使用。
さらに、本発明の趣旨には、例えば以下も含まれる。
[1]米飯のほぐれを改善するための米飯改良剤であって、前記米飯はインディカ米及び飼料用米を除く米から製造された米飯であり、前記米飯改良剤はグルタミナーゼを含有し、加水前の生米に対して0.003~0.15w/w%のグルタミナーゼが炊飯前に生米と水の混合物に添加されるように用いることを特徴とする米飯改良剤。
[2]食用塩を、グルタミナーゼの含有量に対する比率(食用塩含有量/グルタミナーゼの含有量)が0.1~740となるように含有する前記いずれか1に記載の米飯改良剤。
[3]糖類を、グルタミナーゼの含有量に対する比率(糖類含有量/グルタミナーゼの含有量)が0.1~400となるように含有する前記いずれか1に記載の米飯改良剤。
[4]液体状の態様であり、pH調整剤を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の米飯改良剤。
[5]前記いずれか1項に記載の米飯改良剤によってほぐれが改善された、インディカ米及び飼料用米を除く米から製造された米飯。
[6]中食用米飯であることを特徴とする前記いずれか1に記載の米飯。
[7]食用油脂を、その添加量が加水前の生米に対して0.1~2w/w%となるように含有することを特徴とする前記いずれか1項に記載の米飯。
[8]前記いずれか1に記載の米飯改良剤を炊飯前にインディカ米及び飼料用米を除く生米と水の混合物に添加することを特徴とする米飯の製造方法。
[9]前記米飯が中食用米飯であることを特徴とする前記いずれか1に記載の米飯の製造方法。
[10]食用油脂を、その添加量が加水前の生米に対して0.1~2w/w%となるように炊飯前に生米と水の混合物に添加することを特徴とする前記いずれか1に記載の米飯の製造方法。
[11]炊飯後の米飯を冷却処理することを特徴とする前記いずれか1に記載の米飯の製造方法。
[12]前記いずれか1に記載の米飯改良剤を炊飯前にインディカ米及び飼料用米を除く生米と水の混合物に添加することを特徴とする米飯のほぐれを改善させる方法。
[13]食用油脂を、その添加量が加水前の生米に対して0.1~2w/w%となるように炊飯前に生米と水の混合物に添加することを特徴とする前記いずれか1に記載の米飯のほぐれを改善させる方法。
[14]前記いずれか1に記載の米飯改良剤を炊飯前にインディカ米及び飼料用米を除く生米と水の混合物に添加することを特徴とする米飯炊飯時における釜内部の加熱ムラを改善させる方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明おける米飯改良剤によれば、炊飯後長時間保管した場合であってもほぐれに優れた米飯を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、数値範囲の規定について複数の上限値及び/又は複数の下限値を示す場合、特に明示されない場合であっても少なくとも上限規定の最大値と下限規定の最小値とを組み合わせた数値範囲の規定が直接的に記載されているものとし、さらに当該上限値のうち任意の上限値と当該下限値のうち任意の下限値とを組み合わせて得られる全ての数値範囲が本発明の一実施形態に含まれるものとする。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に示されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
本発明において、「湿潤質量換算」(単に「湿潤質量基準」と称する場合もある。)とは、試料の水分を含む湿潤質量を分母、試料中の対象成分の含有質量を分子として算出される、試料中の対象成分の含有比率を表す。また、本発明における割合規定において、特に指定なく単に「質量%」及び「w/w%」と記載される場合、「湿潤質量換算」の割合を表す。
【0009】
<米飯>
「米飯」とは、生米を炊飯したものを指す。本発明の米飯は、例えば白飯、すし飯(酢飯)、赤飯、ピラフ、炒飯、炊き込みご飯、おこわ等が挙げられる。また、すし、おにぎりといった食品の一部に米飯を含むものについては、当該食品中に含まれる米飯が、本実施の形態の「米飯」に包含される。また、本願請求項、および明細書中には「炊飯後の米飯」なる記載があるが、これは、生米を炊飯することによって得られた米飯を指す。
【0010】
<中食用米飯>
本食品の製造方法により得られる食品の種類は限定されないが、製造あるいは加工から喫食に至るまでに時間を要する中食食品であることが好ましい。すなわち、本発明における「中食」食品とは、惣菜店やコンビニエンスストア・スーパーなどでお弁当や惣菜などを購入したり、外食店のデリバリーなどを利用したりして、家庭外で商業的に調理・加工されたものを購入して食べる形態の食品である。
これらの形態の食品は、簡易のトレーや容器、びん詰、缶詰、袋(パウチ)詰、レトルトパウチ等の形態で販売されている。一般に、中食食品、及び/又は、惣菜は製造してから消費者の口に入るまで数時間以上経過しているものが多く、常温域(10~25℃)や、チルド下(10℃より低い温度帯)で数時間~100時間程度保管される。また、冷凍下(-10℃以下)では1年程度保管される。パウチ品については、常温域やチルド下で約15日~45日程度もしくは約1年~2年程度保管される。
「中食用米飯」とは、調理済み食品を、家庭に持ち帰って食べる食事形態に適合するように製造された米飯を指し、例えばコンビニエンスストアやスーパーマーケット等で販売されるおにぎりや寿司、弁当等に含まれる白飯、すし飯(酢飯)、赤飯、ピラフ、炒飯、炊き込みご飯、おこわ等が挙げられる。中食用米飯は、製造後から喫食開始するまでの時間が長い場合が多く、さらに、保存性、運搬性等の観点から炊飯後の米飯を冷却する場合があることから、優れた風味・ほぐれを長時間保持できることが重要である。また、中食用米飯は容器に充填される場合が多いため、充填性の観点から、米飯がほぐれやすい品質であることが好ましいとされる。
【0011】
また、中食用米飯は、工業用の炊飯釜を用いて大量に(一釜あたり十キロ程度~数十キロ単位で)炊飯されることが多いため、釜内部で米がうまく対流せず、釜内部での加熱ムラが生じてしまうため、炊き上がった米飯の固さや粒立ちが一律でなく、釜内部での位置によっては、米飯表面が互いに結着し、塊状になってしまったり、糊状になるなど、喫食した際に満足な美味しさ(風味や食感)を感じられなくなってしまう。さらに、加熱ムラが生じると、炊飯釜の焦げつきが生じやすく、廃棄ロスによる収率の低下や、その後の釜洗浄時の作業負荷の増大や、炊飯釜自体の劣化、など生産性の上でも問題になる。従って、中食用米飯の製造においては、加熱ムラを低減させることが強く望まれる。
【0012】
<ほぐれ>
米飯の「ほぐれ」とは、「飯粒同士の結着が弱くほぐれやすいこと」を指す。おにぎりや寿司といった米飯において、ほぐれが良いことは消費者の嗜好性を向上させる。また、弁当における米飯においては、容器への米飯の充填を容易にする観点から、米飯のほぐれが良いことは、好ましい特徴とされる。
【0013】
米飯のほぐれは、例えば官能評価によって、「口に含んで舌、前歯、上顎で感じる米粒同士の結着の強さが弱い様」として、食感として評価することができるほか、後述する炊飯直後の炊き上がりの米飯のカニ穴の数や、しゃもじ通りの良さからも評価することができる。
【0014】
<米飯のおいしさ>
本発明における米飯の「おいしさ」とは、米の味や食感、口に含んだ際に感じられる風味から総合的に判断される好ましさの程度を指し、例えば官能評価によって評価することができる。前述した米飯の「ほぐれ」の良さも、米飯の「おいしさ」に影響を及ぼす要因の1つである。
【0015】
<カニ穴>
「カニ穴」とは、「炊飯時に発生した蒸気が抜けた通り道の穴」を指し、炊飯直後の米飯表面の目視によって、直径3~10mmの略円状の開口部を有する空洞として確認できる。炊飯直後の炊飯釜において、炊飯直後の米飯の表面にカニ穴が多くできている場合、炊飯された米飯全体でほぐれが良好で、良い加熱状態で炊飯されている米飯を製造できたと評価することができる。
【0016】
<しゃもじ通り>
「しゃもじ通り」とは、「炊飯終了後の米飯を炊飯釜内部でかき混ぜた時の、かき混ぜやすさ」を指す。米飯のほぐれが良い場合、米粒同士の結着が弱いため、米飯をかき混ぜる動作に要する力が減り、しゃもじ通りは良くなる。反対に、米飯のほぐれが悪い場合、しゃもじ通りは悪くなる。また、炊飯釜への焦げ付きが小さいと、しゃもじ通りは良くなる。さらに、しゃもじ通りの良いと、弁当などに米飯を充填するのが容易になる。従って、しゃもじ通りが良い場合、炊飯された米飯全体でほぐれが良好で、例えば中食用米飯への使用に適した米飯を製造できたと評価することができる
【0017】
<加熱ムラ>
本発明における「加熱ムラ」とは、釜の上部から底面にかけて温度勾配が生じ、炊き上がりの米飯の品質が一律でなく、ムラができる状態を指す。加熱調理により炊飯釜内部の原料(米や水や具材や調味液等)に含まれる成分(澱粉など)の物性が変化し、粘度が上昇する。粘度の上昇により、釜内部の原料がうまく対流しなくなると、釜の上部から底面にかけて温度勾配が生じる。このような温度勾配が生じると、米飯の表面が互いに結着し、塊状になる部分や、糊状になる部分ができるなど、炊き上がりの米飯の品質にムラができる。炊飯時における釜の上部と底部の温度差を小さくすることで、加熱ムラを改善することができる。逆に、釜の上部と底部の温度差が大きい場合、適切な加熱状態ではなくなり、加熱ムラは大きくなる。本発明における「釜の上部」「釜の底部」とは、釜内の生米と米を混合した炊飯前米飯の状態における位置を表す。「釜の上部」とは釜開口部中央を通過する仮想鉛直線を想定した場合において液面を始点として下方1cmに相当する当該仮想鉛直線上の位置(すなわち釜中央かつ仕込んだ炊飯前米飯の液面下1cmの位置)を表し、「釜の底部」とは、釜底を始点として上方2cmに相当する当該仮想鉛直線上の位置(すなわち釜中央かつ釜底から2cmの位置)を表す。
【0018】
加熱ムラは、炊飯前米飯が炊飯後米飯へと変化する過程における釜の上部と底部の温度変化を測定することで評価できる。例えば、温度測定器(DATATRACE(記憶式温度計)Micropack III)を用いて炊飯釜の上部と底部の温度差をモニタリングすることで評価でき、例えば、炊飯開始後所定時間以内に、炊飯釜の上部と底部の温度が、共に98℃に到達すると、加熱ムラが小さいと評価できる。具体的には炊飯開始後2分間以上20分間以内に釜の上部と底部の温度が、共に98℃以上に到達することであっても良い。より具体的に、その上限は18分間以内、又は16分間以内、又は14分間以内、又は12分間以内、又は10分間以内、又は8分間以内であっても良い。その下限は3分間以上、4分間以上であっても良い。
また、炊飯開始後から炊飯完了までにおいて、炊飯釜の上部および底部の両方で、温度が98℃以上となる時間が所定時間以上であることで、加熱ムラが小さいと評価できる。具体的には、釜の上部および底部の両方で、温度が98℃以上となる時間が8分間以上40分間以内であっても良い。より具体的に、その上限は35分間以内、30分間以内、25分間以内、20分間以内であってもよい。また、炊飯釜の上部および底部における温度が98℃以上となる時間の差が7分間以内である場合、特に加熱ムラが小さいと評価できる。
【0019】
<生米>
「生米」とは、炊飯前の米を指す。本発明における米は、玄米(イネの果実である籾(もみ)から籾殻(もみがら)を除去した状態、白米(玄米から糠を取り除いた状態)、またはその混合物を指す。本発明に適用される生米は、本発明の課題である「米飯のほぐれを改善する」必要性が大きくなるという観点から、好ましくはジャポニカ米であり、インディカ米及び飼料用米を含まないことが好ましい。
【0020】
<ジャポニカ米>
「ジャポニカ米」の例としては、あいちのかおり、あきたこまち、いちほまれ、おぼろづき、風さやか、きぬひかり、きらら397、銀河のしずく、こしいぶき、コシヒカリ、金色の風、サキホコレ、ササニシキ、里山のつぶ、新之助、青天の霹靂、だて正夢、津軽ロマン、つきあかり、つや姫、てんたかく、天のつぶ、どんぴしゃり、ななつぼし、にこまる、はえぬき、ハツシモ、ひとめぼれ、ひゃくまん穀、ふさこがね、ふっくりんこ、富富富、まっしぐら、ミネアサヒ、森のくまさん、雪若丸、ゆめおばこ、ゆめぴりか、ゆめみづほ等が挙げられる。なお、ジャポニカ米とインディカ米を交雑させることで、食味を改善した米については、本発明に適用できる。
【0021】
<飼料用米>
「飼料用米」とは、主に家畜の飼料に供することを目的として栽培される米の品種を指し、主に人類が主食として食べることを想定して栽培される主食用米と区別される。飼料用米の品種としては、例えばアキヒカリ、ふくひびき、べこあおば、いわいだわら、夢あおば、モミロマン等が挙げられる。尚、主食用米と飼料用米を交雑させることで、食味を改善した米については、本発明に適用できる。
【0022】
<生米のアミロース含有量>
一般的に見た目アミロース割合が高い米からなる米飯はそもそもほぐれやすく、本発明の課題が小さい。従って、本発明に適用される米は、本発明の課題である「米飯のほぐれを改善する」必要性が大きくなるという観点から、見た目アミロース割合が所定値以下の米からなる米飯に対して本発明の米飯改良剤を使用することがより有用である。本発明における見た目アミロース割合とは、ヨウ素呈色反応を利用し、米粉に含まれる胚乳でんぷんのアミロースとヨウ素の複合体量を単一波長の吸光値により測定した、見かけのアミロース含有率である。見た目アミロース割合は公知の方法で測定すればよいが、例えば稲津(1988)北海道産米の食味向上による品質改善に関する研究、北海道立農業試験場報告、66号、p.1-89(1988-03)に従い測定することができる。
具体的には、見た目アミロース割合が所定値以下の米に対して、本発明の米飯改良剤を用いて、米飯の製造することで、本発明をより有用に用いることができる。具体的には、見た目アミロース割合0%以上30%以下の米であっても良い。より具体的には、その上限が28%以下、又は25%以下、又は20%以下であっても良い。またその下限が3%以上、又は5%以上であっても良い。
【0023】
<炊飯>
炊飯とは、生米を適宜洗浄し、加水したもの(生米と水の混合物)を、加熱することを指す。
【0024】
<米飯改良剤>
米飯改良剤とは、米飯の品質を向上させる効果を有する飲食品である。米飯改良剤は、通常、炊飯前または炊飯後に使用されるが、本発明の米飯改良剤は、炊飯前に使用される。本発明の米飯改良剤の形態は特に限定されず、例えば液体状または固形状(ペレット状、粉末状等の形態が包含される)であってもよいが、添加後の混合のしやすさという観点から、液体状であることが好ましい。
【0025】
本発明の米飯改良剤を、生米の炊飯前に添加するタイミングは、生米と水を混合する直前(加水前)であってもよいし、加水後、浸漬を開始した直後であってもよいし、生米を浸漬させた後の、炊飯の直前であってもよいが、米飯改良剤を添加した後、炊飯を開始するまでの時間が所定時間以内であることが好ましい。
【0026】
本発明の米飯改良剤は、グルタミナーゼを含有する。
<グルタミナーゼ>
「グルタミナーゼ」とは、アミドヒドラーゼ酵素の一種で、次の反応によりグルタミンからグルタミン酸を産生する。なお、グルタミナーゼは、グルタミン残基とリジン残基の架橋形成を促進するトランスグルタミナーゼとは、別の酵素である。
・グルタミン + H2O → グルタミン酸 + NH3(式1)
【0027】
本発明の米飯改良剤に含有されるグルタミナーゼは、第9版食品添加物公定書において定義されるものを包含するが、本発明の組成物に含まれるグルタミナーゼの由来は、特に制限されるものではなく、グルタミナーゼを含有する各種天然材料に由来するものでもよく、合成されたものでもよく、それらを共に使用してもよい。天然材料に由来する場合、各種材料に含有されるグルタミナーゼを単離、精製して用いてもよいが、斯かるグルタミナーゼを含有する材料をそのまま用いてもよい。また、本発明の米飯改良剤に含有されるグルタミナーゼは、例えば市販されているもの(例えば、天野エンザイム社、グルタミナーゼ SD-C100S等)であってもよい。
【0028】
本発明の米飯改良剤はグルタミナーゼを所定量含有することを特徴の一つとする。所定量のグルタミナーゼと後述する非解離型酢酸とを組み合わせて炊飯を行うことで、炊飯釜内部の加熱ムラを改善でき、長時間保管した場合であってもほぐれ性に優れた米飯を提供することができる。その原理は不明であるが、非解離型酢酸が炊飯中の米飯に浸透して粘性の原因となる成分の流出を促進し、グルタミナーゼが炊飯初期段階から当該成分を分解することで加熱ムラを改善している可能性がある。
具体的には、本発明の米飯改良剤は、下記(a)及び/又は(b)を充足することが好ましく、(a)と(b)を共に充足することがさらに好ましい。
(a)米飯改良剤中のグルタミナーゼの含有量が、0.01~10.0w/w%
(b)米飯改良剤中のグルタミナーゼの酵素活性が100mU/g以上
【0029】
上記(a)における米飯改良剤中のグルタミナーゼの含有量は、下記(b)における酵素活性が充足されるように適宜調整すればよい。本発明におけるグルタミナーゼの含有量とは、酵素としてのグルタミナーゼ(CAS9001-47-2)の含有量を表す。例えば、米飯改良剤の質量100gあたりの質量gとして、0.01~10w/w%であっても良い。より具体的にはその下限は0.05w/w%以上、0.1w/w%以上、0.15w/w%以上、0.2w/w%以上、0.3w/w%以上、0.4w/w%以上、0.5w/w%以上、0.6w/w%以上、0.7w/w%以上、0.8w/w%以上、0.9w/w%以上、1.0w/w%以上、1.1w/w%以上、1.2w/w%以上、1.3w/w%以上、1.4w/w%以上、1.5w/w%以上、1.9w/w%以上、2.4w/w%以上であってもよい。また、その上限は限定されないが、例えば9.0w/w%以下、8.0w/w%以下、7.0w/w%以下、6.0w/w%以下、5.0w/w%以下、4.5w/w%以下、4.2w/w%以下、3.9w/w%以下、3.7w/w%以下、3.4w/w%以下、3.3w/w%以下、3.1w/w%以下、2.9w/w%以下、2.7w/w%以下、2.4w/w%以下、2.2w/w%以下、2.0w/w%以下、1.8w/w%以下、1.6w/w%以下、1.4w/w%以下、0.5w/w%以下、0.30w/w%以下であってもよい。
また、グルタミナーゼ活性の過半又は全部が酵素製剤に由来する場合、グルタミナーゼの含有量が0.8~5.0w/w%であってもよく、好ましくは0.9~4.5w/w%、より好ましくは1.0~4.0w/w%、さらに好ましくは1.2~3.6w/w%、さらにより好ましくは1.6~3.4w/w%、とりわけ好ましくは1.8~3.2w/w%、特に好ましくは2.0~3.0w/w%であってもよい。
【0030】
上記(b)における米飯改良剤中のグルタミナーゼ酵素活性が所定値以上であることで、本発明の効果が奏されるため好ましい。本発明における「グルタミナーゼ酵素活性」とは、1分間に1μmolのグルタミン酸を生成する酵素量を1ユニット(1U=1000mU)とする。グルタミナーゼ酵素活性を測定する方法は公知の方法を採用できるが、例えば10mM燐酸緩衝液(pH7.0)を使用し適宜希釈した酵素液0.1mLに30mMのLグルタミン溶液2.0mLを加え30℃で30分間反応させ、生成したグルタミン酸を公知の方法で定量(例えばグルタミン酸測定キット(生化学工業(株)製)を使用)することで測定することができる。具体的に、米飯改良剤中のグルタミナーゼ酵素活性は100mU/g以上1000U/g以下であっても良い。より具体的には、その下限は150mU/g以上、200mU/g以上、250mU/g以上、300mU/g以上、400mU/g以上、500mU/g以上、600mU/g以上、650mU/g以上、700mU/g以上、800mU/g以上、900mU/g以上、950mU/g以上、1000mU/g以上、1200mU/g以上、1500mU/g以上、1700mU/g以上、1800mU/g以上、2000mU/g以上であっても良い。一方上限は900U/g以下、800U/g以下、700U/g以下、600U/g以下、500U/g以下、400U/g以下、300U/g以下、200U/g以下、100U/g以下、90U/g以下、80U/g以下、70U/g以下、60U/g以下、50U/g以下、40U/g以下、30U/g以下、20U/g以下、10U/g以下、5U/g以下、1U/g以下であってもよい。また、米飯改良剤中のグルタミナーゼ酵素活性は、好ましくは150~10000mU/g、より好ましくは200~9000mU/g、さらに好ましくは300~7000mU/g、さらにより好ましくは600~6000mU/g、とりわけ好ましくは900~4000mU/g、特に好ましくは1000~3000mU/gであっても良い。
【0031】
本発明の米飯改良剤は、pHが所定値以上であること、本発明の効果が奏されるため好ましい。その原理は不明であるが、米飯改良剤のpHが所定値以上であることで、炊飯初期段階における米飯中の解離酢酸に対する非解離型酢酸割合が保持され、非解離酢酸が炊飯中の米飯に浸透して粘性の原因となる成分の流出を促進している可能性がある。具体的には、本発明の米飯改良剤のpHは、20℃において、通常4.6~9.0であっても良く、好ましくは4.7~7.0、より好ましくは4.8~6.5、さらに好ましくは4.9~6.4、さらにより好ましくは5.0~6.3、とりわけ好ましくは5.1~6.2、特に好ましくは5.2~6.1であっても良い。より具体的には、その上限は限定されないが、例えば8.8以下、8.2以下、8.0以下、7.5以下、7.1以下、7.0以下、6.8以下、6.5以下、6.3以下、6.1以下、5.9以下、5.8以下、5.6以下、5.5以下である。一方、その下限は限定されないが、例えば4.6以上、4.7以上、4.8以上、4.9以上、5.0以上、5.1以上、5.2以上、5.3以上、5.4以上である。
【0032】
また、本発明の米飯改良剤は、非解離型酢酸濃度が所定範囲であることを特徴の一つとする。
【0033】
<非解離型酢酸濃度>
酢酸分子は水溶液中で解離型と非解離型で共鳴状態になっていることが知られている。すなわち解離型酢酸濃度を〔A-〕、プロトン濃度を〔H+〕、非解離型酢酸濃度を〔AH〕とすると、下式の状態で両者が平衡状態で共存する。
【0034】
〔AH〕⇔〔H+〕+〔A-〕(式2)
【0035】
一方、非解離型酢酸濃度〔AH〕とは以下の計算式によりpHと酢酸濃度により求めることができる。本発明における酢酸濃度(酢酸含有量と称する場合がある)は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「有機酸」の測定方法に準じ、高速液体クロマトグラフ法によって測定する。即ち、特に酢酸ナトリウムなどの酢酸塩が多く含まれる場合、中和滴定法によって求められる「酸度」よりも大きな値が得られる場合がある。
【0036】
pH=4.76+log10〔A-〕/〔AH〕(式3)
【0037】
本発明の米飯改良剤は非解離型酢酸濃度を所定量含有することを特徴の一つとする。所定量のグルタミナーゼと非解離型酢酸とを組み合わせて炊飯を行うことで、炊飯釜内部の加熱ムラを改善でき、長時間保管した場合であってもほぐれ性に優れた米飯を提供することができる。その原理は不明であるが、非解離型酢酸が炊飯中の米飯に浸透して粘性の原因となる成分の流出を促進し、グルタミナーゼが炊飯初期段階から当該成分を分解することで加熱ムラを改善している可能性がある。
具体的には、本発明の米飯改良剤における非解離型酢酸濃度は、通常0.001~2.000w/w%であっても良く、より好ましくは0.005~1.800w/w%、より好ましくは0.008~1.700w/w%、さらに好ましくは0.01~1.600w/w%、さらにより好ましくは0.050~1.550w/w%、とりわけ好ましくは0.100~1.450w/w%、特に好ましくは0.300~1.300w/w%であっても良い。より具体的には、その上限は限定されないが、例えば1.900w/w%以下、1.800w/w%以下、1.700w/w%以下、1.650w/w%以下、1.600w/w%以下、1.580w/w%以下、1.510w/w%以下、1.450w/w%以下、1.380w/w%以下、1.280w/w%以下、1.200w/w%以下、1.150w/w%以下、1.100w/w%以下、1.050w/w%以下、1.005w/w%以下、0.980w/w%以下、0.940w/w%以下、0.920w/w%以下である。また、その下限は限定されないが、0.001w/w%以上、0.002w/w%以上、0.005w/w%以上、0.007w/w%以上、0.01w/w%以上、0.015w/w%以上、0.02w/w%以上、0.025w/w%以上、0.03w/w%以上、0.035w/w%以上、0.04w/w%以上、0.045w/w%以上、0.048w/w%以上、0.05w/w%以上、0.053w/w%以上、0.055w/w%以上、0.100w/w%以上、0.150w/w%以上、0.180w/w%以上、0.200w/w%以上、0.210w/w%以上、0.230w/w%以上、0.240w/w%以上、0.270w/w%以上、0.300w/w%以上、0.350w/w%以上、0.400w/w%以上、0.450w/w%以上、0.500w/w%以上、0.550w/w%以上、0.600w/w%以上である。
【0038】
本発明の米飯改良剤は、酢酸および酢酸ナトリウムを共に含有することを好ましい特徴の一つとする。所定量の酢酸および酢酸ナトリウムを共に含有した米飯改良剤を用いることで、炊飯中の米飯における酢酸が非解離型酢酸の状態を保ちやすくなり、本発明の効果が奏されやすくなると考えられる。本発明の米飯改良剤における酢酸は、食材に含まれるものでもよく、食材から抽出したものでもよく、化合物として添加されるものでもよく、それらを組み合わせたものであってもよい。但し、本発明の米飯改良剤は、食酢を含んでいることが好ましく、より好ましくは、食酢および酢酸ナトリウムを含有することが好ましい。また、組成物全体の総酢酸含有量に対する、酢酸ナトリウム由来酢酸含有量の比率が、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であっても良い。その上限は特に制限されず、通常100質量%未満、又は98質量%未満であっても良い。また、酢酸ナトリウムに由来する酢酸濃度が1.9~11.9w/w%であっても良く、より好ましくは2.1~11.0w/w%、より好ましくは2.2~10.0w/w%、より好ましくは2.3~9.5w/w%、さらに好ましくは2.4~9.0w/w%、さらにより好ましくは2.6~8.8w/w%、とりわけ好ましくは2.8~8.5w/w%、特に好ましくは3.0~8.0w/w%、または4.0~7.5w/w%、4.3~7.0w/w%であっても良い。より具体的には、その上限は限定されないが、例えば12.0w/w%以下、11.5w/w%以下、11.0w/w%以下、10.5w/w%以下、9.3w/w%以下、9.1w/w%以下、8.9w/w%以下、8.7w/w%以下、8.3w/w%以下、7.7w/w%以下、7.3w/w%以下、7.2w/w%以下、6.9w/w%以下、6.8w/w%以下、6.7w/w%以下である。一方、その下限は限定されないが、例えば2.1w/w%以上、2.2w/w%以上、2.3w/w%以上、2.4w/w%以上、2.7w/w%以上、2.9w/w%以上、3.1w/w%以上、3.2w/w%以上、3.3w/w%以上、3.5w/w%以上、3.7w/w%以上、3.9w/w%以上、4.1w/w%以上、4.3w/w%以上、4.5w/w%以上、4.7w/w%以上、4.9w/w%以上であっても良い。
また、組成物全体の総酢酸含有量に対する、食酢由来酢酸含有量の比率が、通常50質量%未満、中でも40質量%未満、又は30質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満、又は10質量%未満であっても良い。その下限は特に制限されず、通常0質量%超、又は2質量%超、又は5質量%超である。
【0039】
<酢酸含有量>
本発明の米飯改良剤は、酢酸含有量が所定範囲にあっても良い。具体的にはその含有量は、2.0~12.0w/w%であっても良く、より好ましくは2.1~11.0w/w%、より好ましくは2.2~10.0w/w%、より好ましくは2.3~9.5w/w%、さらに好ましくは2.4~9.0w/w%、さらにより好ましくは2.6~8.8w/w%、とりわけ好ましくは2.8~8.5w/w%、特に好ましくは3.0~8.0w/w%、または4.0~7.5w/w%、4.3~7.0w/w%であっても良い。より具体的には、その上限は限定されないが、例えば12.0w/w%以下、11.5w/w%以下、11.0w/w%以下、10.5w/w%以下、9.3w/w%以下、9.1w/w%以下、8.9w/w%以下、8.7w/w%以下、8.3w/w%以下、7.7w/w%以下、7.3w/w%以下、7.2w/w%以下、6.9w/w%以下、6.8w/w%以下、6.7w/w%以下である。一方、その下限は限定されないが、例えば2.1w/w%以上、2.2w/w%以上、2.3w/w%以上、2.4w/w%以上、2.7w/w%以上、2.9w/w%以上、3.1w/w%以上、3.2w/w%以上、3.3w/w%以上、3.5w/w%以上、3.7w/w%以上、3.9w/w%以上、4.1w/w%以上、4.3w/w%以上、4.5w/w%以上、4.7w/w%以上、4.9w/w%以上であっても良い。
また、本発明の米飯改良剤における酢酸は、その一部が酢酸塩の状態で含有されても良い。具体的には、中和滴定によって求められる酸度に対する本発明の高速液体クロマトグラフ法によって測定する酢酸含有量の割合(酢酸含有量/中和滴定によって求められる酸度)が1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上であっても良い。
【0040】
本発明の米飯改良剤は、20℃における比重が所定範囲であることが好ましい。比重とはある物質の密度(単位体積当たり質量)と、基準となる水(4℃)の密度との比であり、無次元量である。具体的に、本発明の米飯改良剤の、20℃における比重は、好ましくは1.010~1.500、より好ましくは1.020~1.450、さらに好ましくは1.030~1.420、さらにより好ましくは1.040~1.400、とりわけ好ましくは1.050~1.350、特に好ましくは1.060~1.300、又は1.100~1.290であってもよい。より具体的には、その下限は限定されないが、1.020以上、1.030以上、1.040以上、1.050以上、1.060以上、1.070以上、1.080以上、1.090以上、1.100以上、1.100以上、1.150以上であっても良い。その上限は限定されないが、例えば1.500以下、1.450以下、1.400以下、1.350以下、1.300以下、1.250以下である。
【0041】
本発明の米飯改良剤は、所定量の食塩相当量であることが好ましい。
【0042】
<食塩相当量>
本発明の米飯改良剤における食塩相当量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「食塩相当量」に準じ、原子吸光法を用いて測定したナトリウム量に2.54を乗じた値として算出する。
【0043】
本発明の米飯改良剤における食塩相当量は、ナトリウム塩を含有する塩化ナトリウムや酢酸ナトリウム塩に由来するものであっても良く、食材に含まれるナトリウム塩に由来するものでもよく、食材から抽出したナトリウム塩に由来するものでもよく、化合物として添加されるナトリウム塩でもよく、それらを組み合わせたものであってもよい。一般的に、ナトリウム塩を添加して炊飯すると、米の表面の澱粉の膨潤が抑制されるため、米飯の表面が硬くなり、パサついた食感となってしまい、結果的においしさが悪化してしまうが、本発明における米飯改良剤では、グルタミナーゼの効果によって、ナトリウム塩に起因する米飯の表面のパサつきも改善される。これは、ナトリウム塩を添加して炊飯する態様としては、極めて異質な効果である。これらの効果が奏される詳細なメカニズムは不明であるが、グルタミナーゼによって米飯が柔らかくなる効果と、ナトリウム塩によって米飯の表面が硬くなる効果という、一見すると相反する効果が、最適なバランスで発揮されるためであると推察される。また、本発明の米飯改良剤が所定量の食塩相当量である場合、米飯のしゃもじ通りが良くなる。
【0044】
米飯改良剤における食塩相当量は、具体的には5.0~25.0w/w%であっても良く、より好ましくは6.0~24.0w/w%、さらに好ましくは7.0~23.0w/w%、さらにより好ましくは8.0~22.0w/w%、とりわけ好ましくは10.0~20.0w/w%、特に好ましくは12.0~18.0w/w%であっても良い。また、その上限は限定されないが、例えば26.0w/w%以下、25.0w/w%以下、24.0w/w%以下、23.0w/w%以下、22.0w/w%以下、20.0w/w%以下、19.0w/w%以下、18.0w/w%以下、17.5w/w%以下、17.0w/w%以下、16.0w/w%以下、15.8w/w%以下であっても良い。一方、その下限は限定されないが、例えば1.0w/w%以上、2.0w/w%以上、2.5w/w%以上、3.0w/w%以上、3.5w/w%以上、4.0w/w%以上、6.0w/w%以上、7.5w/w%以上、8.0w/w%以上、11.0w/w%以上であっても良い。
【0045】
また、本発明の米飯改良剤における食塩相当量は、米飯改良剤に含まれるグルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、米飯改良剤における食塩相当量(w/w%)の比率(米飯改良剤におけるの食塩相当量(w/w%)/米飯改良剤に含まれるグルタミナーゼの含有量(w/w%))として特定することもできる。
【0046】
本発明の米飯改良剤におけるグルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、米飯改良剤における食塩相当量(w/w%)の比率は、所定範囲であることが好ましい。その値は、例えば0.1~730、0.5~500、0.7~300、0.9~100、好ましくは1~50、より好ましくは1.2~30、さらに好ましくは1.5~25、さらにより好ましくは2~15、とりわけ好ましくは3~9、特に好ましくは4~8である。また、その上限は限定されないが、例えば600以下、500以下、400、300以下、200以下、100以下、80以下、60以下、51以下、37以下、35以下、30以下、25以下、24以下、20以下、18以下、14以下、12以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下である。一方、その下限は限定されないが、例えば0.15以上、0.25以上、0.35以上、0.45以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.2以上、1.4以上、2.5以上、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上である。
【0047】
本発明の米飯改良剤は、所定量の糖質を含有することが好ましい。
【0048】
<糖質>
「糖質」とは、食品表示法(平成25年法律第70号)第4条第1項の規定に基づく食品表示基準に規定される、当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分及び水分量を除いたものである。本発明の米飯改良剤に含有される糖質は、好ましくは可溶性炭水化物として含有される。本発明における「可溶性炭水化物」とは、水に可溶な炭水化物をいい、単糖類及び少糖類(単糖が2~10個結合した糖類)の総称、および糖アルコールをいう。従って、それよりもはるかに多くの糖が結合したでんぷんは含まれない。可溶性炭水化物の例としては、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、ソルビトール等が挙げられる。これらは、化合物単独で含有されてもよいが、それらを含有する甘味料である黒糖、ハチミツ、水飴等によって含有されてもよい。
【0049】
本発明の米飯改良剤に糖質を含有させることで、グルタミナーゼによって米飯が柔らかくなりすぎることを防ぎ、米飯の食感と成型性を向上させることができ、長時間保管した場合であってもおいしい米飯が得られる。これらの効果が奏される詳細なメカニズムは不明であるが、糖質の保水性が何らかの寄与しているものと推察される。また、一般的に、糖質を添加して炊飯すると、炊飯釜が焦げついてしまうという問題があるが、本発明における米飯改良剤を用いることで、後述する「米飯炊飯時における釜内部の対流を改善する」効果によって、炊飯釜の焦げつきを抑制できる。これは、糖質を添加して炊飯する態様としては、極めて異質な効果である。
【0050】
本発明の米飯改良剤における糖質含有量は、所定値以下であることが好ましい。具体的には、本発明の米飯改良剤における糖質含有量は、好ましくは0.5~50.0w/w%であっても良く、より好ましくは1.0~40.0w/w%、さらに好ましくは2.0~36.0w/w%、さらにより好ましくは3.0~29.0w/w%、とりわけ好ましくは4.0~27.0w/w%、特に好ましくは5.0~25.0w/w%、又は13.0~25.0w/w%であっても良い。より具体的には、その上限は限定されないが、例えば45.0w/w%以下、40.0w/w%以下、36.0w/w%以下、35.0w/w%以下、34.0w/w%以下、33.0w/w%以下、31.0w/w%以下、29.0w/w%以下、28.5w/w%以下、27.5w/w%以下、27.0w/w%以下、26.8w/w%以下、26.3w/w%以下である。一方、その下限は限定されないが、例えば0.5w/w%以上、1.0w/w%以上、1.5w/w%以上、2.0w/w%以上、2.5w/w%以上、3.0w/w%以上、3.5w/w%以上、4.0w/w%以上、6.0w/w%以上、7.0w/w%以上、7.5w/w%以上、8.0w/w%以上、9.0w/w%以上、10.0w/w%以上、11.5w/w%以上、12.0w/w%以上、12.5w/w%以上、13.0w/w%以上、13.5w/w%以上、14.0w/w%以上、16.0w/w%以上、17.0w/w%以上、17.5w/w%以上、18.0w/w%以上であっても良い。
【0051】
また、本発明の米飯改良剤は、糖自体の味による、米飯の食味の悪化を抑制でき、かつ、本発明のほぐれ効果が顕著に得られる観点から、糖質の由来として、好ましくは還元水飴を含有してもよい。還元水飴とは、でんぷんを原料とし、酸や酵素で加水分解することにより得られる水飴を、還元することによって製造される糖類である。本発明の米飯改良剤が還元水飴によって糖質を含有する場合、米飯改良剤における糖質含有量のうち、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、とりわけ好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、または100質量%が還元水飴に由来してもよい。また、還元水飴の含有量は0.0~50.0w/w%であっても良く、さらに上記糖質含有量の上下限に関する規定を充足することが好ましい。
【0052】
また、本発明の米飯改良剤は、糖自体の味による、米飯の食味の悪化を抑制でき、かつ、本発明のほぐれ効果が顕著に得られる観点から、糖質の由来として、好ましくは可溶性炭水化物を含有してもよい。本発明の米飯改良剤が可溶性炭水化物によって糖質を含有する場合、米飯改良剤における糖質含有量のうち、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、とりわけ好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、または100質量%が可溶性炭水化物に由来してもよい。
また、可溶性炭水化物の含有量0.0~50.0w/w%であっても良く、さらに上記糖質含有量の上下限に関する規定を充足することが好ましい。
【0053】
また、本発明の米飯改良剤における糖質含有量は、米飯改良剤に含まれるグルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、米飯改良剤に含まれる糖質含有量(w/w%)の比率(米飯改良剤に含まれる糖質含有量(w/w%)/米飯改良剤に含まれるグルタミナーゼの含有量(w/w%))が所定割合以上であることで、上記効果がより好ましく奏される場合がある。
具体的には、米飯改良剤におけるグルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、糖質含有量(w/w%)の比率は、例えば0.1~300、0.2~150、又は0.1~100であっても良く、好ましくは0.3~70、より好ましくは0.5~60、さらに好ましくは1~50、さらにより好ましくは2~30、とりわけ好ましくは4~15、特に好ましくは6~12であっても良い。より具体的には、その下限は限定されないが、例えば0.5以上、0.8以上、1以上、2以上、3以上、5以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8以上、9以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上であっても良い。またその上限は限定されないが、例えば250以下、200以下、150以下、100以下、80以下、66以下、62以下、50以下、45以下、40以下、30以下、25以下、22以下、20以下、17以下、15以下であっても良い。また、米飯改良剤のグルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、可溶性炭水化物含有量(w/w%)の比率が上記規定を充足しても良い。さらに、米飯改良剤のグルタミナーゼの含有量(w/w%)に対する、還元水飴含有量(w/w%)の比率が上記規定を充足しても良い。
【0054】
また、本発明の米飯改良剤は、米飯改良剤における食塩相当量(w/w%)に対する、糖質含有量(w/w%)の比率が、所定範囲にあることが好ましい。この態様においては、食塩相当量とグルタミナーゼとの相乗効果、糖質とグルタミナーゼとの相乗効果の双方を得ることができ、かつ、グルタミナーゼを含有しない場合に生じる、食塩相当量による米飯のパサつきや、糖質による炊飯釜の焦げ付きを改善できるため、特に好ましい。具体的には、前記比率は、好ましくは0.5~8であっても良く、より好ましくは0.5~7、さらに好ましくは0.5~6、さらにより好ましくは0.5~5、とりわけ好ましくは0.5~4、特に好ましくは1~3であっても良い。より具体的には、その下限は0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上であっても良い。また、その上限は特に限定されないが、例えば8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下であっても良い。また、米飯改良剤の食塩相当量(w/w%)に対する、可溶性炭水化物含有量(w/w%)の比率が上記規定を充足しても良い。さらに、米飯改良剤の食塩相当量(w/w%)に対する還元水飴含有量(w/w%)の比率が上記規定を充足しても良い。
【0055】
本発明における米飯改良剤は、本発明の目的を損なわない限り、酢酸、酢酸ナトリウム以外のpH調整剤を含んでもよい。pH調整剤の種類は特に限定されず、市販のpH調整剤や、有機酸またはその塩、さらには有機酸またはその塩を含む組成物を用いることができる。
【0056】
前記「有機酸」としては、例えば乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フィチン酸、フマル酸、リン酸等が挙げられる。これらの有機酸は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
【0057】
前記「有機酸塩」としては、例えばクエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム等が挙げられる。これらの有機酸塩は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
【0058】
本発明における米飯改良剤には、本発明の目的を損なわない限り、前記成分以外の成分を含んでいてもよい。前記成分は、例えば各種食食材、または食品添加剤によって供給される。食品添加剤とは、食品の製造過程において、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用されるものを指し、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、食用油脂等が挙げられる。
【0059】
本発明の米飯改良剤は、米飯改良剤中のアミラーゼ活性が所定値以上であることで、本発明の効果に加えて米飯の釜離れが良くなるため好ましい。本発明における「アミラーゼ活性」とは、デンプン(溶性)を基質とし、40 ℃,pH5.0において、30分間に1 %デンプン溶液1 mlをヨウ素呈色度が波長670 nm、光路長10 mmで66 %の透過率を与えるまで分解する活性を 1 単位(1U=1000mU)とする。アミラーゼ活性を測定する方法は公知の方法によって測定することができる。(https://www.jfrl.or.jp/storage/file/222.pdfまたはhttps://web.archive.org/web/20220918072602/https://www.jfrl.or.jp/storage/file/222.pdfなどを参照することができる)。具体的に、米飯改良剤中のアミラーゼ活性は100mU/g以上1000U/g以下であっても良い。より具体的には、その下限は150mU/g以上、200mU/g以上、250mU/g以上、300mU/g以上、400mU/g以上、500mU/g以上、600mU/g以上、700mU/g以上、800mU/g以上、900mU/g以上、1000mU/g以上、1500mU/g以上、2000mU/g以上であっても良い。一方上限は900U/g以下、800U/g以下、700U/g以下、600U/g以下、500U/g以下、400U/g以下、300U/g以下、200U/g以下、100U/g以下、90U/g以下、80U/g以下、70U/g以下、60U/g以下、50U/g以下、40U/g以下、30U/g以下、20U/g以下、10U/g以下、5U/g以下、1U/g以下であってもよい。
【0060】
米飯改良剤中のアミラーゼの含有量は、上記アミラーゼ活性が充足されるように適宜調整すればよい。本発明におけるアミラーゼ含有量とは、酵素としてのαアミラーゼ(CAS9000-90-2)含有量を表す。例えば、米飯改良剤質量100gあたりの質量gとして、0.01w/w%~10w/w%であっても良い。より具体的にはその下限は0.05w/w%以上、0.1w/w%以上、0.2w/w%以上、0.3w/w%以上、0.4w/w%以上、0.5w/w%以上、0.6w/w%以上、0.7w/w%以上、0.8w/w%以上、0.9w/w%以上、1.0w/w%以上、1.1w/w%以上、1.2w/w%以上、1.3w/w%以上、1.4w/w%以上、1.5w/w%以上、1.9w/w%以上であってもよい。また、その上限は限定されないが、例えば9.0w/w%以下、8.0w/w%以下、7.0w/w%以下、6.0w/w%以下、5.0w/w%以下、4.5w/w%以下、4.2w/w%以下、3.9w/w%以下、3.7w/w%以下、3.4w/w%以下、3.3w/w%以下、3.1w/w%以下、2.9w/w%以下、2.7w/w%以下、2.4w/w%以下、2.2w/w%以下、2.0w/w%以下であってもよい。また、米飯改良剤におけるアミラーゼ活性の過半又は全部が酵素製剤に由来してもよい。
【0061】
本発明の米飯改良剤は所定のグルタミナーゼ等の酵素活性を有することで、炊飯中における水分の粘度が低下し、炊飯釜内部の加熱ムラを改善できるため好ましい。具体的には、米飯改良剤の酵素活性は、加水400%のコシヒカリ精米に対して、米飯改良剤を0.1w/w%添加し、昇温速度12℃/分で98℃まで加熱後2分間保持した場合における上清のB型粘度計による測定値(No.1ローター、60rpm、20℃)が所定値以下であっても良い。本発明の粘度はB型粘度計(例えば東機産業社製の「B-II」)を用いて測定することができる。具体的には、20℃に温度調整した測定対象液をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、No.1ローターを用いて回転数60rpmで粘度を測定することができる。具体的には、当該粘度が0cP以上100cP以下であっても良い。より具体的には、その上限は95cP以下、90cP以下、85cP以下、80cP以下であっても良い。また、その下限が0cP以上、1cP以上、2cP以上、3cP以上、4cP以上、5cP以上であっても良い。
さらに、本発明の米飯改良剤の酵素活性は、米飯改良剤非添加区(酵素活性を有しない態様)に対する米飯改良剤添加区の当該粘度比率(米飯改良剤添加区の当該粘度/米飯改良剤非添加区の当該粘度)が所定値以下となっていることが好ましい。具体的には当該比率が0.0以上0.8未満であっても良い。より具体的には、その上限が0.75未満、又は0.70未満、又は0.65未満、又は0.60未満であっても良い。また、その下限は特に限定されないが0.0以上、又は0.1以上、又は0.2以上、又は0.3以上、又は0.4以上、又は0.5以上であっても良い。
【0062】
本発明の米飯改良剤は、その酵素活性保持の目的から、製造時に最高到達温度124℃未満で殺菌処理を行うことが好ましく、殺菌処理工程を有さないことが好ましい。具体的には、例えば指標菌のZ値が10分間である場合、124℃1.5925分間に相当する殺菌処理を行わないことが好ましい。より具体的には、本発明の米飯改良剤の水分活性が0.94以下であることが好ましい。水分活性値は、一般的な水分活性測定装置(例えば電気抵抗式(電解質式)湿度センサを用いたノバシーナ社製「LabMaster-aw NEO」)を用い、定法に従って測定することが可能である。本発明の米飯改良剤が容器詰め米飯改良剤であって、その賞味期限が常温で4か月以上である場合、上記規定を充足することが好ましい。
【0063】
本発明はまた、本発明の米飯改良剤を使用して米飯を製造する方法に関する。なお、この態様における本発明の米飯改良剤とは、本明細書に開示した米飯改良剤の好ましい態様を、任意に組み合わせた態様を包含する。
【0064】
また、本発明の米飯改良剤を使用して米飯を製造する場合、前記米飯は中食用米飯であることが、特に好ましい。中食用米飯は、優れた風味・ほぐれを長時間保持できること、加熱ムラを低減させることが強く望まれ、本発明の米飯改良剤の効果が、特に有用であるためである。
【0065】
本発明における米飯改良剤を用いて米飯を製造する場合、本発明の目的を損なわない限り、調味料や香辛料、着色料等の食品添加剤や具材等を、生米と水の混合物、または炊飯後の米飯に添加ことができる。
【0066】
生米と水の混合物、または炊飯後の米飯に添加できる調味料としては、調味酢(例えば汎用性調味酢、酢の物用調味酢、すし飯用調味酢、酢漬け(例えばピクルス等)用調味液、甘酢等)、米飯用調味料、だし含有調味料等が挙げられる。
【0067】
本明細書における香辛料とは、特有の香り、刺激的な呈味、色調を有し、香り付け、消臭、調味、着色等の目的で飲食品に配合する植物体の一部(植物の果実、果皮、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎など)をいい、香辛料にはスパイス又はハーブが含まれる。スパイスとは、香辛料のうち、利用部位として茎と葉と花を除くものを指す。本発明における生米と水の混合物、または炊飯後の米飯に添加できる香辛料としては、例えば、胡椒(黒胡椒、白胡椒、赤胡椒)、ニンニク、ショウガ、ゴマ(ゴマの種子)、唐辛子、ホースラディシュ(西洋ワサビ)、マスタード、柚子、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペッパー、オリーブの実などが挙げられる。また、ハーブとは、香辛料のうち、茎と葉と花を利用するものをいい、例えば、クレソン、コリアンダー、シソ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉などが挙げられる。
【0068】
上記具材としては、例えば野菜(ニンジン、ゴボウ、大根等)や、穀類(小豆、大豆等)や、肉類や、魚類等が挙げられる。これらの具材は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0069】
本発明の製造方法は、本願明細書に記載の米飯改良剤を用いて、下記段階(i)、(ii)及び段階(iii)を含むことを特徴とする。
(i)下記(a)及び/又は(b)を充足するように、本発明の米飯改良剤を添加して炊飯前米飯を準備する段階
(a)生米重量に対して、グルタミナーゼの含有量が0.0005w/w%以上
(b)生米重量に対して、グルタミナーゼ酵素活性が0.1mU/g以上
(ii)段階(i)の炊飯前米飯を、釜底昇温速度6.0℃/分以上 で98℃以上まで加熱する昇温段階
(iii)昇温段階後の米飯を釜底温度98℃以上で2分間以上保持する保温段階
以下、斯かる本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0070】
段階(i)米飯改良剤を添加して炊飯前米飯を準備する段階
本段階(i)では、本発明の米飯の原料となる生米、水、米飯改良剤と、任意により用いられるその他の食材とを混合することにより、本発明の米飯の元となる組成物(これを適宜「炊飯前米飯」と称する。)を調製する。
本発明の段階(i)における炊飯前米飯はグルタミナーゼを所定量含有することを特徴の一つとする。所定量のグルタミナーゼと非解離型酢酸とを組み合わせて炊飯を行うことで、炊飯釜内部の加熱ムラを改善でき、長時間保管した場合であってもほぐれ性に優れた米飯を提供することができる。その原理は不明であるが、非解離型酢酸が炊飯中の米飯に浸透して粘性の原因となる成分の流出を促進し、グルタミナーゼが炊飯初期段階から当該成分を分解することで加熱ムラを改善している可能性がある。
具体的には、本発明の炊飯前米飯は、下記(c)及び/又は(d)を充足することが好ましく、(c)と(d)を共に充足することがさらに好ましい。
(c)生米重量に対して、グルタミナーゼの含有量が0.0005w/w%以上
(d)生米重量に対して、グルタミナーゼ酵素活性が0.1mU/g以上
【0071】
上記(c)における生米重量に対する米飯中のグルタミナーゼの含有量は、下記(d)における酵素活性が充足されるように適宜調整すればよい。本発明におけるグルタミナーゼの含有量とは、酵素としてのグルタミナーゼ(CAS9001-47-2)の含有量を表す。例えば、生米の質量100gあたりの質量gとして、0.0005w/w%~2.0w/w%であっても良い。より具体的にはその下限は0.0006w/w%以上、0.007w/w%以上、0.0008w/w%以上、0.0009w/w%以上、0.001w/w%以上、0.003w/w%以上、0.004w/w%以上、0.005w/w%以上、0.006w/w%以上、0.007w/w%以上、0.008w/w%以上、0.009w/w%以上、0.010w/w%以上、0.011w/w%以上、0.012w/w%以上、0.013w/w%以上、0.014w/w%以上、0.015w/w%以上、0.016w/w%以上、0.017w/w%以上、0.018w/w%以上、0.02w/w%以上、0.05w/w%以上、0.08w/w%以上、0.1w/w%以上、0.14w/w%以上、0.2w/w%以上、0.3w/w%以上、0.4w/w%以上、0.5w/w%以上、0.6w/w%以上、0.7w/w%以上、0.8w/w%以上、0.9w/w%以上、1.0w/w%以上、1.1w/w%以上、1.2w/w%以上、1.3w/w%以上、1.4w/w%以上、1.5w/w%以上、1.9w/w%以上であってもよい。また、その上限は限定されないが、例えば2.0w/w%以下、1.5w/w%以下、1.0w/w%以下、0.5w/w%以下、0.4w/w%以下、0.3w/w%以下、0.25w/w%以下、0.20w/w%以下、0.15w/w%以下、0.10w/w%以下、0.05w/w%以下、0.03w/w%以下、0.01w/w%以下であってもよい。
また、炊飯前米飯におけるグルタミナーゼ活性の50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は100%が酵素製剤に由来する態様であっても良い。また、炊飯前米飯におけるグルタミナーゼ活性の過半又は全部が酵素製剤に由来する場合、生米重量に対するグルタミナーゼの含有量が0.0005~0.20w/w%であってもよく、好ましくは0.0007~0.17w/w%、より好ましくは0.0008~0.15w/w%、さらに好ましくは0.001~0.13w/w%、さらにより好ましくは0.001~0.10w/w%、とりわけ好ましくは0.001~0.05w/w%、特に好ましくは0.001~0.03w/w%であってもよい。
【0072】
上記(d)における炊飯前米飯のグルタミナーゼ酵素活性が所定値以上であることで、本発明の効果が奏されるため好ましい。具体的に、炊飯前米飯中において生米重量に対してグルタミナーゼ酵素活性は0.1mU/g以上10U/g以下であっても良い。より具体的には、その下限は0.3mU/g以上、0.5mU/g以上、0.7mU/g以上、0.9mU/g以上、1.0mU/g以上、1.1mU/g以上、1.2mU/g以上、1.3mU/g以上、1.4mU/g以上、1.5mU/g以上、1.6mU/g以上、1.7mU/g以上、1.8mU/g以上、1.9mU/g以上、2.0mU/g以上、3.0mU/g以上、4.0mU/g以上、5.0mU/g以上、9.0mU/g以上、10mU/g以上、20mU/g以上、30mU/g以上、40mU/g以上、50mU/g以上、60mU/g以上、70mU/g以上、80mU/g以上、90mU/g以上、100mU/g以上、150mU/g以上、200mU/g以上、300mU/g以上、400mU/g以上、500mU/g以上であっても良い。一方上限は9U/g以下、8U/g以下、7U/g以下、6U/g以下、5U/g以下、4U/g以下、3U/g以下、2U/g以下、1U/g以下、0.9U/g以下、0.8U/g以下、0.7U/g以下、0.6U/g以下であってもよい。
【0073】
また、段階(i)の炊飯前米飯において、以下(e)~(g)の1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3つ全てを充足するように、米飯改良剤を使用してもよい。
(e)炊飯前の生米に対する食塩相当量が0.01~2.5w/w%
(f)炊飯前の生米に対する糖質の添加量が0.01~0.9w/w%
(g)食塩相当量に対する糖質添加量の比率が1~8
なお、上記(e)~(g)の1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3つ全てを充足する場合、炊飯前の生米に対する食塩相当量は、特に好ましくは0.05~0.2w/w%であってもよく、炊飯前の生米に対する糖質の添加量は、特に好ましくは0.05~0.2w/w%であってもよく、食塩相当量に対する糖質添加量の比率は、好ましくは0.5~8であっても良く、より好ましくは0.5~7、さらに好ましくは0.5~6、さらにより好ましくは0.5~5、とりわけ好ましくは0.5~4、特に好ましくは1~3であっても良い。
【0074】
また、段階(i)において、炊飯前に食用油脂を添加することで製造してもよい。例えば、中食用米飯においては、炊飯後の米飯の釜離れを良くするために食用油脂を添加することがあるが、食用油脂を添加して炊飯すると、食用油脂そのものによって米飯がべたつき、口当たりが悪くなってしまい、おいしさは著しく低下する。本発明の米飯は、グルタミナーゼと食用油脂を併用して炊飯することで、グルタミナーゼと食用油脂の相乗効果によって、米飯のほぐれを顕著に向上させることができるため、結果的においしさが大幅に改善された米飯を提供できる。これは、食用油脂を含有する米飯としては極めて異質な効果である。尚、添加する食用油脂に特に制限はなく、例えばサラダ油、コメ油、コーン油、ベニバナ油、オリーブ油、豚脂、牛脂、バター等であってもよく、「炊飯油」として市販されているものであってもよい。また、これらの食用油脂を任意に組み合わせてもよい。
【0075】
本発明の米飯が、炊飯前に食用油脂を添加されることで食用油脂を含有する場合、その含有量は、米飯のほぐれ改善効果を有し、かつ油脂そのものによる米飯の風味への影響を小さくするという観点から、加水前生米質量100gに対する添加量gとして、好ましくは0.1~2w/w%、より好ましくは0.15~1.5w/w%、さらに好ましくは0.3~1.2w/w%、さらにより好ましくは0.35~1.0w/w%、とりわけ好ましくは0.40~0.90w/w%、特に好ましくは0.45~0.80w/w%である。また、その上限値は、例えば2w/w%、または1.8w/w%、または1.6w/w%、または1.4w/w%であることができ、下限値は、例えば0.1w/w%、または0.2w/w%、または0.4w/w%であることができる。
【0076】
また、段階(i)で用いる生米は、特に限定されないが、本発明がより有用に用いられる観点から、インディカ米及び飼料用米を除く生米であってもよい。また、同様の理由で見た目アミロース割合が30%以下の生米であっても良い。即ち、本発明の米飯改良剤は、インディカ米及び飼料用米を除く生米に用いる米飯改良剤、又は見た目アミロース割合が30%以下の生米に用いる米飯改良剤であっても良い。
【0077】
また、段階(i)における加水は、一般的な条件で行えばよい。本発明における「加水」とは、生米に水を加えることを指し、加水量とは加水前の生米の質量に対する水の質量を指す。本発明の加水における水分は、水分を含有する食材や米飯改良剤に由来するものであっても良く、水として加水されるものでもよく、後述する浸漬工程によって生米に吸水された水分であっても良く、それらを組み合わせたものであってもよい。段階(i)における加水量は任意に調整できるが、加水前の生米の質量に対して、好ましくは1.10~2.00倍であっても良く、より好ましくは1.12~1.90倍、さらに好ましくは1.15~1.80倍、さらにより好ましくは1.17~1.70倍、とりわけ好ましくは1.18~1.60倍、特に好ましくは1.2~1.55倍、又は1.20~1.50倍であっても良い。また、その上限は特に制限されるものではないが、例えば、2.00倍以下、1.90倍以下、1.80倍以下、1.75倍以下、1.65倍以下、1.55倍以下、1.50倍以下、1.45倍以下、1.40倍以下であってもよい。また、下限値は特に制限されるものではないが、例えば、1.05倍以上、1.10倍以上、1.12倍以上、1.13倍以上、1.14倍以上、1.15倍以上、1.16倍以上、1.17倍以上、1.18倍以上、1.19倍以上、1.20倍以上、1.21倍以上、1.22倍以上、1.23倍以上、1.24倍以上であっても良い。
【0078】
また、段階(i)における生米は、あらかじめ浸漬された生米を用いても良い。「浸漬」とは、生米に加水した後、炊飯開始前に、生米と水の混合物を特定の時間保持することを指す。本発明では、生米の中心部まで熱を通しやすくするために、加水した生米を所定時間浸漬した浸漬後生米を用いても良い。生米の浸漬は、例えば、生米を加水して特定の時間保持した後、そのまま炊飯することで行う形態で行ってもよいし、生米を加水して特定の時間保持した後、水を廃棄し、再度加水して炊飯する形態で行ってもよい。なお、浸漬を行う際はあらかじめ浸漬前の生米重量を測定し、浸漬後生米重量との差分によって浸漬によって生米に吸水された水分重量を把握することができる。浸漬の時間は、生米内部への水の浸透が生じる限り特に制限はないが、例えば10分間~48時間であっても良く、より好ましくは15分間~36時間、さらに好ましくは20分間~24時間、さらにより好ましくは25分間~20時間、とりわけ好ましくは30分間~16時間、特に好ましくは45~12時間であっても良い。より具体的には、その下限は、特に制限されるものではないが、例えば、10分間以上、20分間以上、30分間以上、40分間以上、50分間以上、60分間以上であっても良い。その上限は、特に制限されるものではないが、例えば48時間以下、36時間以下、24時間以下、30時間以下、24時間以下、20時間以下、16時間以下、12時間以下である。
【0079】
また、段階(i)における炊飯前米飯は一般的な温度条件とすることができるが、予め所定温度以上に加温した炊飯前米飯を用いても良い。具体的には炊飯前米飯の温度が20℃以上60℃以下であっても良い。より具体的には、その下限は特に限定されないが20℃以上、又は25℃以上、又は30℃以上、又は35℃以上、又は40℃以上であっても良い。またその上限は特に限定されないが60℃以下、又は55℃以下、又は50℃以下であっても良い。
【0080】
段階(ii)炊飯前米飯を加熱する昇温段階
本段階(ii)では、段階(i)で得られた炊飯前米飯を98℃以上まで加熱する(これを適宜「昇温段階」と称する。)。
本発明の段階(ii)における昇温段階においては、釜底昇温速度が所定値以上であることを特徴の一つとする。その原理は不明であるが、本発明の米飯改良剤によって、炊飯釜内部の加熱ムラが改善し、釜内における熱対流がスムーズに行われることで、昇温段階において釜内で先行してその温度が高まるため比較的速度が高まりやすい釜上昇温速度のみならず、遅れて昇温する釜底昇温速度についても所定以上の速度とすることができると考えられる。
具体的に、段階(ii)における炊飯前米飯は釜底昇温速度が6.0℃/分以上25℃/分以下で98℃以上まで加熱される態様であっても良い。より具体的には、その下限は特に制限されないが、6.5℃/分以上であっても良く、又は7.0℃/分以上、又は7.5℃/分以上、又は8.0℃/分以上、又は8.5℃/分以上、又は9.0℃/分以上、又は9.5℃/分以上、又は10.0℃/分以上、又は11.0℃/分以上、又は12.0℃/分以上、又は13.0℃/分以上、又は14.0℃/分以上、又は15.0℃/分以上であっても良い。また、その上限は特に制限されないが、通常23℃/分以下、又は20℃/分以下であっても良い。
【0081】
また、本発明の段階(ii)における炊飯前米飯は釜底昇温速度が所定値以上であることに加えて、釜上昇温速度が所定値以上であることが好ましい。
具体的に、段階(ii)における炊飯前米飯は釜上昇温速度が6.0℃/分以上25℃/分以下で98℃以上まで加熱される態様であっても良い。より具体的には、その下限は特に制限されないが、6.5℃/分以上であっても良く、又は7.0℃/分以上、又は7.5℃/分以上、又は8.0℃/分以上、又は8.5℃/分以上、又は9.0℃/分以上、又は9.5℃/分以上、又は10.0℃/分以上、又は11.0℃/分以上、又は12.0℃/分以上、又は13.0℃/分以上、又は14.0℃/分以上、又は15.0℃/分以上であっても良い。また、その上限は特に制限されないが、通常23℃/分以下、又は20℃/分以下であっても良い。
【0082】
また、段階(ii)において、釜上温度と釜底温度が共に98℃に到達する所要時間が、炊飯開始後所定時間以内である態様であっても良い。具体的には、釜上温度と釜底温度が共に98℃に到達する所要時間が炊飯開始後3分間以上15分間以下であっても良い。より具体的には、その上限は特に制限されないが14分間以下、又は13分間以下、又は12分間以下、又は11分間以下、又は10分間以下、又は9分間以下、又は8分間以下であっても良い。その下限は特に制限されないが3分間以上、4分間以上、5分間以上であっても良い。
【0083】
また、段階(ii)を、段階(i)における炊飯前米飯製造後、所定時間以内で開始することが好ましい。その原理は不明であるが、米飯改良剤を添加した後に時間が経過しすぎると、酵素反応によって食感が柔らかくなることで食味が低下すると考えられる。具体的には、米飯改良剤を添加してから、米飯改良剤を炊飯前米飯に添加し、炊飯を開始するまでの時間は80分間以下0分間以上であっても良い。より具体的にはその上限は80分間以下、又は70分間以下、又は60分間以下、又は50分間以下、又は40分間以下、又は30分間以下、又は20分間以下、又は15分間以下、又は10分間以下、又は5分間以下、又は1分間以下、又は0.5分間以下であっても良く、その下限は0分間以上、0.1分間以上、0.2分間以上であってもよい。
【0084】
段階(iii)昇温段階後の米飯を釜底温度98℃以上で保持する保温段階
本段階(iii)では、段階(ii)で得られた昇温段階後米飯を98℃以上で保持する(これを適宜「保温段階」と称する。)。
本発明の段階(iii)における保温段階においては、昇温段階後の米飯を釜底温度98℃以上で所定時間以上保持することを特徴の一つとする。その原理は不明であるが、本発明の米飯改良剤によって、炊飯釜内部の加熱ムラが改善し、釜内における熱対流がスムーズに行われることで、比較的温度が上がりにくい釜底温度についても98℃以上の保温時間が所定時間以上確保できると考えられる。
具体的には、段階(iii)において、昇温段階後の米飯を釜底温度98℃以上で2分間以上120分間以下保持する態様であっても良い。より具体的には、その下限は特に制限されないが3分間以上であっても良く、又は4分間以上、又は5分間以上、又は6分間以上、又は7分間以上、又は8分間以上、又は9分間以上、又は10分間以上、又は11分間以上、又は12分間以上、又は13分間以上、又は14分間以上、又は15分間以上であっても良い。その上限は特に制限されないが、100分間以下であっても良く、又は80分間以下、又は60分間以下、又は50分間以下、又は40分間以下であっても良い。
【0085】
また、本発明の段階(iii)における保温段階においては、昇温段階後の米飯を釜底温度98℃以上で所定時間以上保持することに加えて、釜上温度98℃以上で所定時間以上保持する態様であっても良い。
具体的には、段階(iii)において、昇温段階後の米飯を釜上温度98℃以上で2分間以上120分間以下保持する態様であっても良い。より具体的には、その下限は特に制限されないが3分間以上であっても良く、又は4分間以上、又は5分間以上、又は6分間以上、又は7分間以上、又は8分間以上、又は9分間以上、又は10分間以上、又は11分間以上、又は12分間以上、又は13分間以上、又は14分間以上、又は15分間以上であっても良い。その上限は特に制限されないが、100分間以下であっても良く、又は80分間以下、又は60分間以下、又は50分間以下、又は40分間以下であっても良い。
また、釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間が所定時間以上であることが好ましい。具体的には釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間が10分間以上100分間以下であっても良い。より具体的にはその下限は特に制限されないが11分間以上であっても良く、又は12分間以上、又は13分間以上、又は14分間以上、又は15分間以上であっても良い。また、その上限は特に制限されないが、90分間以下であっても良く、又は80分間以下、又は60分間以下、又は50分間以下、又は40分間以下で、又は30分間以下あっても良い。
【0086】
また、釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間の差分が所定時間以内であることが好ましい。その原理は不明であるが、本発明の米飯改良剤によって炊飯釜内部の加熱ムラが改善し、釜内における熱対流がスムーズに行われることで、昇温段階において釜内で先行してその温度が高まる釜上温度と、通常遅れて昇温する釜底温度が連動して昇温することで当該時間の差分が小さくなると考えられる。具体的には、釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間の差分は0分間以上15分間以下であっても良い。より具体的には、特に制限されないがその上限は14分間以下であっても良く、又は13分間以下、又は12分間以下、又は11分間以下、又は10分間以下、又は9分間以下、又は8分間以下、又は7分間以下であっても良い。その下限は特に制限されないが、1分間以上、又は2分間以上であってもよい。また、釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間が所定時間以上であり、さらに釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間の差分が所定時間以内であることで品質の良い米飯となるために好ましく、具体的には釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間が15分間以上、かつ釜上温度および釜底温度が共に98℃以上となる時間の差分が10分間以内であることがより好ましい。
【0087】
また、本発明の米飯の製造方法は、炊飯後の米飯を冷却処理する段階を含んでいてもよい。この態様においては、米飯の温度を50℃以下にすることが好ましい。前記冷却工程は、市販の真空冷却機(例えば、三浦工業(株)製:GMJ-20QE等)によって実施することができる。
【0088】
また、本発明の米飯は、炊飯完了後に喫食されるまでの間、0℃以上40℃以下の温度帯で所定時間以上保持される態様であっても良い。具体的には炊飯完了後に喫食されるまでの間、0℃以上40℃以下の温度帯で8時間以上72時間以下保持される態様であっても良い。その下限は特に制限されないが10時間以上であっても良く、又は12時間以上、又は14時間以上、又は16時間以上であっても良い。その上限は特に制限されないが、68時間以下、又は60時間以下、又は54時間以下、又は48時間以下、又は40時間以下、又は36時間以下、又は32時間以下、又は36時間以下、又は24時間以下であっても良い。また、炊飯完了後に喫食されるまでの間の保持温度帯が0℃以上30℃以下、特に0℃以上20℃以下において、上記時間保持される態様において、本発明は特に有用である。
【0089】
本発明はまた、本発明の米飯改良剤を使用して、米飯のほぐれを改善する方法、米飯炊飯時における釜内部の加熱ムラを改善する方法、米飯炊飯時における釜内部の焦げ付きを低減する方法に関する。
【0090】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0091】
評価試験1(グルタミナーゼ、pHおよび非解離型酢酸濃度の調整による効果の検証)
表1の組成となるように、酢酸、醸造酢、酢酸ナトリウム、グルタミナーゼ酵素製剤を、適宜水道水で希釈した。また、市販の酵素製剤を用いて米飯改良剤のアミラーゼ活性が0.1U/g以上となるように調整した。さらに、90℃以上で適宜殺菌処理して米飯改良剤を調製した(比較例1、実施例1~6)。なお、比較例1を評価試験1~4における対照とした。
<米飯改良剤の酵素活性>
米飯改良剤の酵素活性は、加水400%のコシヒカリ精米に対して、米飯改良剤を0.1w/w%添加し、昇温速度12℃/分で98℃まで加熱後2分間保持した場合における上清のB型粘度計による測定値(No.1ローター、60rpm、20℃)を確認することで評価した。具体的には、B型粘度計(例えば東機産業社製の「B-II」)を用いて20℃に温度調整した測定対象液をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、No.1ローターを用いて回転数60rpmで粘度を測定した。当該粘度が100cP以下であった場合、評価○とし、そうでない場合は評価×とした。また、比較例1に対する米飯改良剤添加区の当該粘度比率(米飯改良剤添加区の当該粘度/比較例1の当該粘度)が0.8倍未満となっていた場合、評価○とし、そうでない場合は評価×とした。
【0092】
富山県産コシヒカリ精米(見た目アミロース割合17.1%)を450g計量し、洗米した後、生米が完全に浸かる程度の水を加えて室温(20℃)で60分間浸漬を行った。浸漬後、浸漬に用いた水を捨て、浸漬後の生米に対して、加水前の生米重量(450g)に対する加水倍率が1.40倍(水総質量630g)になるように、また、加水前の生米重量に対するグルタミナーゼの含有量が、表1に示す値となるように米飯改良剤および水を添加し、米飯改良剤および水の添加後30分間以内に、IH炊飯器(タイガー魔法瓶(株)製:JKT-G101)の早炊きモードで炊飯を開始し、米飯を得た(比較例1、実施例1~6)。
【0093】
炊飯開始後から炊飯終了時にかけて、温度測定器(DATATRACE(記憶式温度計)Micropack III)を用いて、釜の上部と底部の温度変化を測定することで、炊飯時の加熱ムラを評価した。釜の上部と釜の底部のそれぞれにおいて、98℃以上までの昇温速度が6.0℃/分以上である場合は、評価○、そうでない場合は評価×とした。また、釜上部と釜底部のそれぞれにおいて、98℃以上保持時間が10分間以上である場合は評価○、そうでない場合は評価×とした。さらに、釜上部と釜底部における98℃以上保持時間の差が7分間以内である場合は評価◎、7分間超15分間以内である場合は評価○、そうでない場合は×とした。
【0094】
炊飯終了後、炊き上がった米飯におけるカニ穴の数を目視により数え、下記のように5段階で評価した。
<カニ穴の数>
評価5:30個以上
評価4:20~30個
評価3:10~20個
評価2:0~10個
評価1:0個
【0095】
炊飯終了後、炊き上がった米飯をしゃもじでかき混ぜ、比較例1を対照としてしゃもじ通りの良さを下記のように4段階で評価した。
<しゃもじ通りの良さ>
評価4:対照より非常に良い
評価3:対照より良い
評価2:対照よりやや良い
評価1:対照と同等
【0096】
炊き上がった米飯を、真空冷却機(三浦工業(株)製:GMJ-20QE)にて45℃に冷却した後、シャリ玉成型機(鈴茂器工(株)製:SSN-FRA)を用いて各20gのシャリ玉を成型した。
【0097】
上記のようにして製造したシャリ玉を、20℃で3時間、及び中食を想定して20℃で24時間保管した後、以下の官能評価試験に供した。官能評価は、10名の専門パネリストにより、米飯のほぐれ、おいしさ(米の味や食感、口に含んだ際に感じられる風味から総合的に判断される好ましさの程度)を、比較例1を対照として評価し、その算術平均値を算出した。
【0098】
<米飯のほぐれ>
評価7:対照より非常に良い
評価6:対照より良い
評価5:対照よりやや良い
評価4:対照と同等
評価3:対照よりやや悪い
評価2:対照より悪い
評価1:対照より非常に悪い
【0099】
<米飯のおいしさ>
評価7:対照より非常に良い
評価6:対照より良い
評価5:対照よりやや良い
評価4:対照と同等
評価3:対照よりやや悪い
評価2:対照より悪い
評価1:対照より非常に悪い
【0100】
【0101】
表1より、グルタミナーゼを含有し、pHおよび非解離型酢酸濃度を調整した米飯改良剤によって、ほぐれが良く、おいしい米飯を得ることができることが分かった。尚、20℃で3時間保管した場合であっても、同様の評価が得られた。また、アミラーゼ活性を調整した試験区では、米飯の釜離れが改善された。
【0102】
評価試験2(食塩相当量を調整した米飯改良剤による効果の検証)
本試験では、表2の組成となるように、酢酸、醸造酢、酢酸ナトリウム、グルタミナーゼ酵素製剤、食塩を、適宜水道水で希釈した。また、市販の酵素製剤を用いて米飯改良剤のアミラーゼ活性が0.1U/g以上となるように調整した。さらに、90℃以上で適宜殺菌処理して米飯改良剤を調製した。
【0103】
前記米飯改良剤を、評価試験1と同様の工程で、加水前の生米重量に対するグルタミナーゼの含有量が、表2に示す値となるように米飯改良剤を添加して米飯を得た(比較例2、実施例7~12)。
【0104】
前記工程によって得られた米飯を、評価試験1と同様に評価した。
【0105】
【0106】
表2より、食塩相当量を調整した米飯改良剤によって、ほぐれが良く、おいしく、しゃもじ通りが改善された米飯を得ることができた。尚、20℃で3時間保管した場合であっても、同様の評価が得られた。また、実施例12においては、食塩由来の塩味を感じたという意見がみられた。さらに、アミラーゼ活性を調整した試験区では、米飯の釜離れが改善された。
【0107】
評価試験3(米飯改良剤における糖質含有量の調整による効果の検証)
本試験では、表3の組成となるように、酢酸、醸造酢、酢酸ナトリウム、グルタミナーゼ酵素製剤、還元水飴を、適宜水道水で希釈した。また、市販の酵素製剤を用いて米飯改良剤のアミラーゼ活性が0.1U/g以上となるように調整した。さらに、90℃以上で適宜殺菌処理して米飯改良剤を調製した。
【0108】
前記米飯改良剤を、評価試験1と同様の工程で、加水前の生米重量に対するグルタミナーゼの含有量が、表3に示す値となるように米飯改良剤を添加して米飯を得た(比較例3、実施例13~18)。
【0109】
前記工程によって得られた米飯を、評価試験1と同様に評価した。
【0110】
【表3】
表3より、米飯改良剤における糖質含有量の調整によって、ほぐれが良く、おいしい米飯を得ることができることが分かった。尚、20℃で3時間保管した場合であっても、同様の評価が得られた。また、比較例3においては、炊飯釜の焦げつきが確認された。さらに、実施例18においては、還元水飴由来の甘味を感じたという意見がみられた。また、アミラーゼ活性を調整した試験区では、米飯の釜離れが改善された。
【0111】
評価試験4(米飯改良剤における食塩相当量および糖質含有量を調整した場合、米飯改良剤の比重を調整した場合、米飯改良剤のアミラーゼ活性を調整した場合、並びに炊飯前に油脂を添加した場合における効果の検証)
本試験では、表4―1、表4-2の組成となるように、酢酸、醸造酢、酢酸ナトリウム、グルタミナーゼ酵素製剤、食塩、還元水飴を、適宜水道水で希釈した。また、実施例21~28では、市販の酵素製剤を用いて米飯改良剤のアミラーゼ活性が0.1U/g以上となるように調整して米飯改良剤を調製した。なお、本試験では、米飯改良剤の90℃以上での殺菌処理は行わなかった。
【0112】
前記米飯改良剤を評価試験1と同様の工程で、加水前の生米重量に対するグルタミナーゼの含有量が、表4―1、表4-2に示す値となるように米飯改良剤を添加して米飯を得た(実施例19~28)。また、比較例4および実施例26~28では、炊飯前に市販の食用油脂を、加水前の生米重量に対する含有量が表4―2に示す値になるように添加した。
【0113】
前記工程によって得られた米飯を、評価試験1と同様に評価した。
【0114】
【0115】
表4-1、表4-2より、米飯改良剤における食塩相当量および糖質含有量を調整し、さらに米飯改良剤の比重を調整することで、ほぐれが良く、おいしい米飯を得ることができることが分かった。尚、20℃で3時間保管した場合であっても、同様の評価が得られた。また、比較例4では、食用油脂による口当たりの悪さがあるという意見がみられた。さらに、アミラーゼ活性を調整した試験区では、アミラーゼ活性のない試験区よりも米飯の釜離れが改善された。
【要約】
本発明は、調理後長時間保管した米飯において、米飯のほぐれを改善することで、炊飯後長時間保管した場合であっても炊飯直後の米飯の風味を十分に感じることができる米飯を、効率的に製造する技術を提供することを目的とする。本発明は、以下(1)~(3)を全て充足する米飯改良剤を提供する。
(1)下記(a)及び/又は(b)を充足する
(a)米飯改良剤中のグルタミナーゼの含有量が、0.01~10.0w/w%
(b)米飯改良剤中のグルタミナーゼ酵素活性が100mU/g以上
(2)20℃における米飯改良剤のpHが4.6~9.0である
(3)非解離型酢酸濃度が0.001~2.000w/w%である