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特許7309165二酸化炭素削減装置、二酸化炭素削減方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】二酸化炭素削減装置、二酸化炭素削減方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/32 20060101AFI20230710BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20230710BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20230710BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B01D53/32
B01J19/08 A
B01J19/00 A
B01D53/62
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023527454
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2023004040
【審査請求日】2023-05-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316000943
【氏名又は名称】株式会社ナノシード
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】細萱 武彦
(72)【発明者】
【氏名】田代 哲
【審査官】河野 隆一朗
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/32
B01D 53/62
B01J 19/08
B01J 19/00
H01T 23/00
F24F 7/003
F24F 8/30
A61L 9/04
A61L 9/14
A61L 9/22
B60H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その底にナトリウムイオンを含む水溶液が貯められるようにされているとともに、その内部に空気を導入するための開口である吸気口と、その内部から空気を排出するための開口である排気口とを備える容器と、
前記吸気口と前記容器の底との間に設けられた電極である下陰極と、
前記下陰極に対して相対的にプラスの電位が印加される、前記下陰極と対にされた、前記下陰極に対して下側に位置する電極である下陽極と、
前記下陰極と、前記下陽極との間にコロナ放電を生じさせる電位のパルス電圧を印加するパルス電源装置と、
を備えており、
前記下陰極と前記下陽極との間に生じさせたコロナ放電によって生じるイオン風を、当該イオン風によって加速させた空気ごと前記容器の底に貯められた前記水溶液に衝突させるようになっている二酸化炭素削減装置であって、
前記パルス電源装置は、30Hzから500Hzで4000Vから11000Vのパルス状の高電圧を、前記下陰極と前記下陽極との間に前記パルス電圧として印加するようになっている、
二酸化炭素削減装置。
【請求項2】
前記パルス電源装置は、4000Vから12000Vの間の所定の電位である基準電位差の高電圧を生成する高電圧電源装置と、前記高電圧電源装置に、前記高電圧電源装置が出力する前記パルス電圧の周波数とデューティー比を決定するパルス波形を入力するパルス波形決定装置と、を含んで構成されており、
前記パルス波形決定装置は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つ前記デューティー比が、高電圧電源装置が出力する前記パルス電圧が前記基準電位差の85%以上となる値である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっている、
請求項1記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項3】
前記パルス波形決定装置は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つ前記デューティー比が20%以下である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっている、
請求項2記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項4】
前記パルス波形決定装置は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つ前記デューティー比が10%以下である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっている、
請求項2記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項5】
前記パルス波形決定装置は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つ前記デューティー比が5%以上である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっている、
請求項2から4のいずれかに記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項6】
前記パルス波形決定装置は、周波数が40Hzから60Hzであり、且つ前記デューティー比が、前記高電圧電源装置が出力する前記パルス電圧が前記基準電位差の85%以上となる値である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっている、
請求項2から4のいずれかに記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項7】
前記下陰極は、針状電極である、
請求項1記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項8】
前記下陽極は、上下が開放した円筒形状の電極である、
請求項1又は7記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項9】
前記排気口の近傍に設けられた電極である上陽極と、
前記上陽極に対して相対的にマイナスの電位が印加される、前記上陽極と対にされた、前記上陽極に対して相対的に容器の中心側に位置する電極である上陰極と、
を備えているとともに、
前記パルス電源装置は、前記上陰極と、前記上陽極との間にコロナ放電を生じさせる電位のパルス電圧を印加するようになっており、
前記上陰極と上陽極との間に生じさせたコロナ放電によって生じるイオン風を、当該イオン風によって加速させた空気ごと前記排気口から排出させるようになっている、
請求項2記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項10】
前記上陰極は、針状電極である、
請求項9記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項11】
前記上陽極は、両端が開放した円筒形状の電極であり、前記排気口にはめ込まれている、
請求項9記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項12】
前記下陰極と前記上陰極とは、一連の針状電極である、
請求項9記載の二酸化炭素削減装置。
【請求項13】
その底にナトリウムイオンを含む水溶液が貯められるようにされているとともに、その内部に空気を導入するための開口である吸気口と、その内部から空気を排出するための開口である排気口とを備える容器と、
前記吸気口と前記容器の底との間に設けられた電極である下陰極と、
前記下陰極に対して相対的にプラスの電位が印加される、前記下陰極と対にされた、前記下陰極に対して下側に位置する電極である下陽極と、
前記下陰極と、前記下陽極との間にコロナ放電を生じさせる電位のパルス電圧を印加するパルス電源装置と、
を備えている二酸化炭素削減装置を用いて実行される二酸化炭素削減方法であって、
前記容器内に、前記水溶液を貯める過程、
前記パルス電源装置が、30Hzから500Hzで4000Vから11000Vのパルス状の高電圧を、前記下陰極と前記下陽極との間に前記パルス電圧として印加することにより、前記下陰極と前記下陽極との間に生じさせたコロナ放電によって生じるイオン風を、当該イオン風によって加速させた空気ごと前記容器の底に貯められた前記水溶液に衝突させる過程、
を含む、二酸化炭素削減方法。
【請求項14】
前記水溶液として、亜塩素酸ナトリウム水溶液、または、塩化ナトリウム水溶液を用いる、
請求項13記載の二酸化炭素削減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の居間などの室内、自動車等の乗り物の車内などのような区画された空間内における二酸化炭素(CO)を削減させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の空間内における二酸化炭素の量を削減する、或いは二酸化炭素濃度を下げることが好ましいことはよく知られている。この場合の空間とは例えば、不動産における外部と区切られた空間(オフィスビルにおける執務室、学校における教室等)や、自動車、飛行機、船舶等の外部と区切られた室内の空間を意味する。室内の二酸化炭素濃度が上がると、そこにいる人間の体調に影響を与えることがあり、仕事や学習の効率を下げることがある。
そのようなことを考慮し、例えば、日本の厚生労働省が定める建築物環境衛生管理基準でも、室内環境における好ましい二酸化炭素濃度の基準が定められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
二酸化炭素濃度を低下させるための方法として一般的に採用されているのは換気である。しかしながら換気は、空間内の冷暖房の効率を下げるため、エネルギー効率或いはコストの面で課題がある。
また、換気は、自動的に実行されるのであればそのような問題は生じないが、手動で行われる場合には、換気を行うことが忘れられることによりそもそも換気が行われないということが頻繁に生じうる。
【0004】
ある空間内の二酸化炭素を削減する、或いは二酸化炭素濃度を低減させるための技術は理論的には種々存在するものの、実用的なものは存在せず、少なくともそのような目的の製品が存在していないというのが現状である。
【0005】
本願発明は、空間内の二酸化炭素を削減するための実用的な技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための本願発明は以下のような経緯でなされた。
本願出願人は、ナトリウムイオンを含む水溶液をガス化してイオンを放出する装置に関する発明に係る特許出願をし、既に特許化し(特許文献1:特許第5819560号公報)ている。また、本願出願人は予てから当該発明の実施品であるイオン放出装置を製造販売している。
【0007】
このイオン放出装置は、概ね以下のように構成されている。
イオン放出装置は、その底にナトリウムイオンを含む水溶液が貯められるようにされているとともに、その内部に空気を導入するための開口である吸気口と、その内部から空気を排出するための排気口とを備える容器を備えている。容器の内部には、吸気口と容器の底との間に設けられた電極である下陰極と、下陰極に対して相対的にプラスの電位が印加される、下陰極と対にされた、下陰極に対して下側に位置する電極である下陽極とが設けられている。
イオン放出装置は電源装置を備えており、電源装置により、下陰極と、下陽極との間には、それらの間でコロナ放電を生じさせる程度に高い一定の電位の電圧が印加される。
一対の下陰極と下陽極との間にコロナ放電が生じる程の大きな電圧をかけると、吸気口から容器内に入ってきた空気の中でイオン風が生じる。イオン風の向きは下陰極から下陽極に向かう向きとなるので、イオン風は容器内で下向きとなる。これにより、イオン風と空気は、容器の底に貯められた水溶液に衝突する。それにより、水溶液の一部が蒸散し、溶液から、マイナスの電荷を帯びた微細な溶液の粒が多数生じる。マイナスの電荷を帯びたその粒は、容器の排出口から排出され、例えば、所定の室内の空間に放出される。
マイナスの電荷を帯びた溶液の粒を室内の空間等に放出することによって、空間除菌が実現される。
つまり、本願出願人が先に出願した特許出願に係るイオン放出装置は、空間除菌を目的とした装置であった。
【0008】
ところで、特許文献1に記載されたイオン放出装置において、溶液からマイナスの電荷を帯びた微細な溶液の粒が生じる詳しい機序は少なくとも特許文献1の出願の時点では良くわかっていなかった。もっといえば、イオン放出装置から放出されるマイナスの電荷を帯びた微細な溶液の粒がどのようなものなのか、例えば、粒は1種類だけなのか、それとも性質の異なる複数種類の粒が存在するのか、ということも明確になっていなかった。
そこで、本願出願人は、イオン放出装置の更なる改良を行うにあたり、イオン放出装置の内部でどのような現象、或いは化学反応が生じているか、また、その結果イオン放出装置から放出される微細な粒がどのようなものであるか、ということについて解析を進めた。
その結果、イオン放出装置から放出される物質の中に、微量ではあるが炭酸ナトリウム(NaCO)や、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)が含まれるという事実を確認した。
【0009】
ここで、出願人はあることに気付いた。炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムには共通して炭素(C)が含まれている。
ところが、イオン放出装置の溶液には炭素を含む物質がそもそも存在していない。そうすると、この炭素は、イオン放出装置に取り込まれた空気に含まれる物質に由来するものであると考えられるが、空気中に存在する炭素は、殆ど無視できる量の一酸化炭素を除けば事実上、二酸化炭素中の炭素しか存在しない。
そうすると、上述したイオン放出装置は、マイナスの電荷を帯びた溶液の粒を空間内に放出する過程の少なくとも一部で、二酸化炭素中の炭素を炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムに固定する、或いはそれに伴い二酸化炭素を削減しているということになる。
つまり、上述したイオン放出装置は、二酸化炭素削減装置としても機能していることが判明した。
【0010】
しかしながら、従来のイオン放出装置を稼働させた場合に、放出される物質の中に炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとが含まれるものの、その量は極めて微量である。これは、削減される二酸化炭素の量が微量であるということを意味する。
したがって、従来のイオン放出装置を、空気中の二酸化炭素を削減することを目的とする二酸化炭素削減装置として利用しようとすると、効率が低すぎて実用には不向きであるということになる。
そこで、本願発明者がイオン放出装置について更に解析、研究を進めたところ、イオン放出装置において空気中の二酸化炭素中に含まれる炭素を利用して炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムが生じる反応が最も多く生じるのは、一対の下陰極と下陽極との間に大きな電位差が生じる瞬間(横軸に時間、縦軸に電位差を取ったグラフを書いたときにおけるグラフの立ち上がりが生じる瞬間)である、ということが判明した。
本願発明は、このような知見に基づいてなされた。
【0011】
上述の如き知見に基づいてなされた本願発明は、次のようなものである。
本願発明は、その底にナトリウムイオンを含む水溶液が貯められるようにされているとともに、その内部に空気を導入するための開口である吸気口と、その内部から空気を排出するための開口である排気口とを備える容器と、前記吸気口と前記容器の底との間に設けられた電極である下陰極と、前記下陰極に対して相対的にプラスの電位が印加される、前記下陰極極と対にされた、前記下陰極に対して下側に位置する電極である下陽極と、前記下陰極と、前記下陽極との間にコロナ放電を生じさせる電位のパルス電圧を印加するパルス電源装置と、を備えており、前記下陰極と前記下陽極との間に生じさせたコロナ放電によって生じるイオン風を、当該イオン風によって加速させた空気ごと前記容器の底に貯められた前記水溶液に衝突させるようになっている二酸化炭素削減装置である。
そして、この二酸化炭素削減装置における、前記パルス電源装置は、30Hzから500Hzで4000Vから11000Vのパルス状の高電圧を、前記下陰極と前記下陽極との間にパルス電圧として印加するようになっている。
この二酸化炭素削減装置は、容器を備えている。容器は、気密であり、その底にナトリウムイオンを含む水溶液が貯められるようにされている。また、その内部に空気を導入するための開口である吸気口と、その内部から空気を排出するための開口である排気口とを備えている。容器内の吸気口と容器の底との間には下陰極が設けられており、また、下陰極に対して相対的にプラスの電位が印加される、下陰極と対にされた、下陰極に対して下側に位置する電極である下陽極とが設けられている。二酸化炭素削減装置は、また、下陰極と、下陽極との間にコロナ放電を生じさせる電位のパルス電圧を印加するパルス電源装置、を備えている。パルス電源装置が下陰極と下陽極との間にパルス電圧を印加することにより生じさせたコロナ放電によって生じるイオン風は、イオン風によって加速させた空気とともに、容器の底に貯められた水溶液に衝突させられるようになっている。
この二酸化炭素削減装置は基本的に特許文献1に記載のイオン放出装置と同様の構成とされている。したがって、この二酸化炭素削減装置は、イオン放出装置が持っていた空間除菌の効果をそのまま持つ。
従来のイオン放出装置と本願発明による二酸化炭素削減装置との間で相違するのは、特許文献1に記載のイオン放出装置における下陰極と下陽極との間に印加される電圧は、定電圧である(つまり、電圧を印加するための電源は、定電圧電源装置である)のに対して、本願発明の二酸化炭素削減装置では、下陰極と下陽極との間に印加される電圧は、パルス電圧である(つまり、電圧を印加するための電源は、パルス電源装置である)という点である。
この相違点についての構成は、「イオン放出装置において空気中にある二酸化炭素中に含まれる炭素を利用して炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムが生じる反応が最も多く生じるのは、一対の下陰極と下陽極との間に大きな電位が生じる瞬間である」という上述の知見に基づいて、本願発明の二酸化炭素削減装置に採用された。
下陰極と下陽極との間に印加される電圧をパルス電圧(パルス状の高電圧)とすることによって、下陰極と下陽極との間に大きな電位差が生じる瞬間を、パルスの個数と同数回繰り返し生じさせることができることになる。それに伴い、本願発明による二酸化炭素削減装置では、空気中の二酸化炭素中に含まれる炭素を利用して炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムが生じる反応(以下、「特定反応」と称する場合がある。)が生じることになり、結果的に空気中の二酸化炭素が多く削減されることになる。
本願発明による二酸化炭素削減装置における、パルス電源装置は、30Hzから500Hzで4000Vから110000Vのパルス状の高電圧を、下陰極と下陽極との間に印加するようになっている。
パルス電圧の電位の下限を4000Vとするのは、それよりも下陰極と下陽極の間の電位差が小さいとコロナ放電が生じたときにおける放電量が少なく、特定反応が十分に生じなくなるおそれがあるからである。なお、本願で言うコロナ放電には、暗流放電も含む。パルス電圧の電位の上限を11000Vとするのは、それよりも下陰極と下陽極の間の電位差が大きいと、下陰極と下陽極との間で生じる放電が火花を伴う火花放電となるため、消費電力が大きくなったり、下陰極と下陽極、或いはその周囲の部品の劣化が激しくなるおそれがあるからである。パルス電圧の周波数の下限を上述の値とするのは、30Hzつまり、1秒間に30回の特定反応を生じさせれば、二酸化炭素削減の効果がある程度大きくなるからである。他方、パルス電圧の周波数の上限を上述の値とするのは、それ以上の周波数のパルス電圧を生成するのは極めて難しいからである。
【0012】
本願の二酸化炭素削減装置におけるパルス電源装置は、上述したように、30Hzから5000Hzで4000Vから110000Vのパルス状の高電圧を、下陰極と下陽極との間にパルス電圧として印加するようになっていれば良い。
例えば、前記パルス電源装置は、4000Vから12000Vの間の所定の電位である基準電位差の高電圧を生成する高電圧電源装置と、前記高電圧電源装置に、前記高電圧電源装置が出力する前記パルス電圧の周波数とデューティー比を決定するパルス波形を入力するパルス波形決定装置と、を含んで構成されていてもよい。そして、この場合における前記パルス波形決定装置は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つ前記デューティー比が、前記高電圧電源装置が出力する前記パルス電圧が前記基準電位差の85%以上(好ましくは90%以上)となる値である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっていてもよい。
これは、30Hzから70Hzで4000Vから110000Vのパルス状の高電圧を、下陰極と下陽極との間にパルス電圧として印加するための工夫である。
上述のような、周波数が30Hzから500Hzで4000Vから11000Vの高電圧のパルス電圧を発生させる装置は存在するものの、そのような装置は一般的に高価である。
他方、あるパルス波形を入力した場合に、そのパルス波形に応じた高電圧のパルス電圧を発生する高電圧電源装置は公知或いは周知であり、比較的安価で市販もされている。また、高電圧電源装置から出力される高電圧パルスの周波数とデューティー比を決定するパルス波形を高電圧電源装置に入力するパルス波形決定装置も公知或いは周知であり、市販もされている比較的安価なコンピュータ装置等を用いて簡単に製作することが可能である。そのような共に比較的安価なパルス波形決定装置と高電圧電源装置とを組み合わせて、パルス波形決定装置からパルス波形を入力させることにより、安価な高電圧電源装置によって、30Hzから70Hzで4000Vから11000Vのパルス状の高電圧を、下陰極と下陽極との間に印加するようなパルス電圧を発生させることが可能となる。つまり、このような構成によれば、パルス電圧周波数の上限には制限が生じるものの、高電圧電源装置を安価にすることが可能となり、ひいては二酸化炭素削減装置を安価にすることができるようになる。
ここで、パルス波形決定装置が決定するパルス波形は、高電圧電源装置(或いはパルス波形決定装置と高電圧電源装置との組合せによるパルス電源装置)から出力されるパルス電圧の波形と対応したものとなる。
高電圧電源装置(或いはパルス波形決定装置と高電圧電源装置との組合せによるパルス電源装置)から出力されるパルス電圧の波形におけるOFF状態からON状態に切り換わる部分は、グラフにした場合には垂直に近い状態で立ち上がる方が(つまり、なるべく素早く立ち上がる方が)、特定反応を促すのに好ましい。
パルス電圧が下陰極と下陽極との間に与える電位差は、高電圧電源装置が発生させる基準電位差と一致する場合もあるが、基準電位差よりも小さい場合もある。パルス電圧においてOFF状態が維持される時間が短い場合、ON状態のときに下陰極と下陽極との間に与えられた電位差が、OFF状態の間に十分に下がりきらないことがあり得る。そうすると、次のON状態開始時においては、その下がりきっていない電位から基準電位差まで電位が上がることになるので、その場合にはパルス電圧が下陰極と下陽極との間に与える電位差が、高電圧電源装置が発生させる基準電位差よりも小さくなる。
いずれにせよ、パルス波形決定装置は、パルス電圧の波形を決定するパルス波形におけるデューティー比を、高電圧電源装置が出力する前記パルス電圧が基準電位差の85%以上となる値に決定するようになっている。これは平たく言えば、パルス波形決定装置が、デューティー比をある程度より小さく決定するようになっているということである。そうすることにより、パルス電圧のOFF状態の時間を長く稼げるようになり、それにより、次のON状態を開始する時点における高電圧電源装置から出力されるパルス電圧の電位を十分に小さくすることができるようになる。そうすることにより、次のON状態が開始されるときに立ち上がるパルス電圧の電位差を基準電位差に近づけることが可能となり、特定反応を生じさせるに必要な程度に大きなものとすることができるようになる。
【0013】
前記パルス波形決定装置は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つ前記デューティー比が20%以下である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっていてもよい。
周波数が30Hzから70Hzでありデューティー比が20%以下であるパルス波形を高電圧電源装置に入力することにより、高電圧電源装置に、下陰極と下陽極との間に、30Hzから70Hzの周波数で4000Vから11000Vのパルス状の高電圧を印加するようなパルス電圧を出力させることが可能となる。
前記パルス波形決定装置は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つ前記デューティー比が10%以下である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっているのが更に好ましい。そうすることにより、高電圧電源装置に、下陰極と下陽極との間に、30Hzから70Hzの周波数で4000Vから11000Vのパルス状の高電圧を印加するようなパルス電圧を出力させることが可能となるだけでなく、パルス電圧における各ON状態において下陰極と下陽極に与えられる電位差を、基準電位差に近い理想的な値(或いは基準電圧そのもの)に近づけることが可能となるから、次のON状態が開始されるときに立ち上がるパルス電圧の電位差を、特定反応を生じさせるに必要な程度に大きなものとすることができるようになる。また、デューティー比を小さくすることは、消費電力の抑制にも効果がある。
前記パルス波形決定装置は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つ前記デューティー比が5%以上である前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっていてもよい。
デューティー比がこれ以上小さくなると、高電圧電源装置にて発生されたパルス波形に基づいて高電圧電源装置がパルス電圧を出力する場合におけるパルス電圧のON状態において、十分に電圧を立ち上げられなくなることが考えられるからである。
前記パルス波形決定装置は、周波数が40Hzから60Hzであり、且つ前記デューティー比が、前記高電圧電源装置が出力する前記パルス電圧が前記基準電位差の85%以上となる値であるである前記パルス波形を、前記高電圧電源装置に入力するようになっていてもよい。
パルス波形の周波数はこれまで説明したように、30Hzから70Hzとすることができる。ただし、周波数を40Hzから60Hzとした場合には、特定反応を生じさせる回数の多さと、消費電力の損失の小ささとの双方を実現することができる。
【0014】
下陰極と下陽極は、それらの間にコロナ放電を発生させることが可能であり、それにより下向きのイオン風を生成し、イオン風と空気を容器の底に溜まった水溶液に衝突させるためのものである。それが可能な限り、下陰極と下陽極の構成は自由である。
これには限られないが、前記下陰極は、針状電極とすることができる。また、前記下陽極を、上下が開放した円筒形状の電極とすることができる。
例えば、下陽極を上下が開放した円筒形状の電極とすることで、下向きのイオン風の流れを円筒形状とされた下陽極の中を通すことができるようになる。下陰極を例えば下向きの針状電極とし、下陰極を円筒形状とされた下陽極と同軸に配すると、イオン風の流れを円筒形状とされた下陽極の中を通る、事実上の鉛直下向きとすることが可能となる。
これは、イオン風と空気を効率良く水溶液に衝突させるのに役立つ。
【0015】
他方、本願発明は、下陰極と下陽極とに加え、上陰極と上陽極とを備えていても良い。下陰極と下陽極とは、水溶液の近くに対で存在することが必要であるため、上陰極と上陽極とは、その名称にも関わらず必ずしも下陰極と下陽極よりも上に位置することが必須ではないが、通常下陰極と下陽極よりも相対的に上に位置する。
例えば、本願発明による二酸化炭素削減装置は、前記排気口の近傍に設けられた電極である上陽極と、前記上陽極に対して相対的にマイナスの電位が印加される、前記上陽極と対にされた、前記上陽極に対して相対的に容器の中心側に位置する電極である上陰極とを備えていても良い。
その場合、前記パルス電源装置は、前記上陰極と、前記上陽極との間にコロナ放電を生じさせる電位のパルス電圧を印加するようになっている。それにより、前記上陰極と上陽極との間に生じさせたコロナ放電によって生じるイオン風は、当該イオン風によって加速させた空気ごと前記排気口から排出させるようになっている。
つまり、下陰極と下陽極とは、イオン風と空気を水溶液に効率良く衝突させるためのものであったが、上陰極と上陽極は、イオン風と空気(空気には特定反応等によって生じた物質等が混ざっている)を、排気口から効率よくケース外に排出させられるようにするという機能を持つ。
これは、ケース内を負圧化させることで、吸気口から空気をケース内に効率よく吸入させることにも繋がり、イオン風と空気を効率良く水溶液に衝突させるのにも役立つ。
ここで、前記上陰極は、針状電極であってもよい。また、前記上陽極は、両端が開放した円筒形状の電極であり、前記排気口にはめ込まれていてもよい。
例えば、上陽極を両端が開放した円筒形状の電極とし、更に排気口にはめ込むことで、所定の向きのイオン風の流れを円筒形状とされた上陽極の中、つまり排気口の中を通すことができるようになる。上陰極を例えば円筒形状とされた上陽極の軸に平行な長さ方向を持つ針状電極とし、上陰極を円筒形状とされた上陽極と同軸に配すると、イオン風の流れを事実上円筒形状とされた上陽極の中を通る方向とすることが可能である。これにより、イオン風の流れが円筒形状とされた上陽極の中、つまり排気口の中を自然に通ることになり、容器からの排気が進むようになる。
下陰極と上陰極とがともに針状電極である場合、前記下陰極と前記上陰極とは、一連の針状電極であってもよい。下陰極と上陰極とを一体とすることにより、回路構成を単純化することができる。
この場合、上下に伸びる一本の針状電極の下側を下陰極と、上側を上陰極とすることができる。その場合、典型的には、下陰極と上陰極とを兼ねる針状電極と同軸な位置であって針状電極の下側の位置に、上下が開口した円筒形状とされた下陽極が、針状電極と同軸な位置であって針状電極の上側の位置に、上下が開口した円筒形状とされた上陽極が配置されることになる。
【0016】
本願発明者は、二酸化炭素削減を行う二酸化炭素削減方法をも本願発明の一態様として提案する。二酸化炭素削減方法の効果は、以上に述べた二酸化炭素削減装置の効果に等しい。
一例となる二酸化炭素削減方法は、その底にナトリウムイオンを含む水溶液が貯められるようにされているとともに、その内部に空気を導入するための開口である吸気口と、その内部から空気を排出するための開口である排気口とを備える容器と、前記吸気口と前記容器の底との間に設けられた電極である下陰極と、前記下陰極に対して相対的にプラスの電位が印加される、前記下陰極と対にされた、前記下陰極に対して下側に位置する電極である下陽極と、前記下陰極と、前記下陽極との間にコロナ放電を生じさせる電位のパルス電圧を印加するパルス電源装置と、を備えている二酸化炭素削減装置を用いて実行される二酸化炭素削減方法である。
そして、この二酸化炭素削減方法は、前記容器内に、前記水溶液を貯める過程、前記パルス電源装置が、30Hzから500Hzで4000Vから11000Vのパルス状の高電圧を、前記下陰極と下陽極との間に前記パルス電圧として印加することにより、前記下陰極と前記下陽極との間に生じさせたコロナ放電によって生じるイオン風を、当該イオン風によって加速させた空気ごと前記容器の底に貯められた前記水溶液に衝突させる過程、を含む。
この二酸化炭素削減方法では、前記水溶液として、亜塩素酸ナトリウム水溶液、または、塩化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態による二酸化炭素削減装置の構造を模式的に示す断面図。
図2図1に示した二酸化炭素削減装置に含まれるパルス電源装置の回路図。
図3(A)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
図3(B)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
図3(C)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
図3(D)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
図3(E)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
図3(F)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
図3(G)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
図3(H)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
図3(I)】図1に示した二酸化炭素削減装置で高電圧電源装置に理論上入力可能なパルス波形を例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態における二酸化炭素削減装置について図面を用いて説明する。
図1に、二酸化炭素削減装置の構造を模式的に示す断面図を示す。
【0019】
二酸化炭素削減装置は、図1に示したように容器10を備えている。容器10は、気密であり水密であり、これには限られないが、この実施形態では、円筒形状とされている。容器10は、例えば、樹脂、或いは金属により構成することができる。
容器10のこれには限られないが側面には、開口である吸気口11が設けられている。吸気口11の大きさ、形状は適宜に定めることができるが、この実施形態では、吸気口11は適当な径の円形とされている。
吸気口11の縁には、管であるダクト12の基端側の縁が隙間なく接続されている。ダクト12は気密な素材、例えば、容器10と同じ素材で構成することができ、この実施形態では必ずしもそうする必要はないが、容器10と同じ素材で構成されている。ダクト12は、その基端側から水平に、容器10の軸にまで至り、容器10の軸の部分で鉛直下向きに曲折するように構成されている。ダクト12の先端側を下方に向けて開口させているのは、後述するようにして、イオン風と空気を、後述する水溶液に衝突させ易くするためである。ダクト12のダクト12が容器10の軸と交わる部分よりも基端側の水平な部分は、吸気口11が円形であることもあり、吸気口11の径とその内径が同径な円筒形状とされている。ダクト12のダクト12が容器10の軸と交わる部分よりも先端側の鉛直な部分は、それよりも基端側の部分よりも大径の円筒形状とされている。ただし、ダクト12はその全長にわたって、断面形状が同じとされていても構わない。なお、ダクト12の鉛直な部分の下端の開口は円形であるが、その中心は容器10の軸の上に乗っている。
容器10の上方には、開口である排気口13が設けられている。排気口13の大きさ、形状は適宜に定めることができるが、この実施形態では、排気口13は適当な径の円形とされている。容器10の上方の排気口13に連なる部分は、この実施形態では漏斗を逆さまにしたような状態で上方に向けて絞られているが、これは必ずしもこの限りではない。また、これには限られないがこの実施形態では、円形である排気口13の中心は、容器10の軸が通過する位置に位置させられている。
【0020】
容器10には3つの電極が設けられている。針状電極21、第1筒状電極22、第2筒状電極23である。針状電極21、第1筒状電極22、第2筒状電極23はいずれも、導電性のある金属、例えば鉄や銅によって構成可能である。
これらのうち、針状電極21には、第1筒状電極22と第2筒状電極23に比較して、相対的にマイナスの電位が与えられる。
針状電極21は、上下方向に伸びる針状の電極である。針状電極21は、これには限られないがこの実施形態では、ダクト12の上側の部分を貫通するようにして、容器10と同軸の位置に設けられている。針状電極21のダクト12の内部に位置している部分21Aが、本願における下陰極に相当し(以下、その部分を下陰極21Aと称する。)、針状電極21のダクト12の外側(上側)に露出している部分21Bが、本願における上陰極に相当する(以下、その部分を上陰極21Bと称する。)。この実施形態では、下陰極21Aと上陰極21Bとを一つの針状電極21の一部と残部として一体化しているが、これは必ずしも必須ではない。
第1筒状電極22は、針状電極21に対して相対的に下側に位置しており、これには限られないがこの実施形態では、ダクト12の鉛直な部分の下端の内側に嵌っている。第1筒状電極22は筒状或いはリング状であり、その外面の径がダクト12の鉛直な部分の内面の径と等しくなっている。それにより、ダクト12の内面にその外面を隙間なく接触させた状態で、第1筒状電極22は、ダクト12の鉛直な部分の下端の内側に取付けられている。平面視で円形である第1筒状電極22の中心は、容器10の軸の上に乗っている。したがって、第1筒状電極22の中心は、針状電極21の真下に位置している。
第2筒状電極23は、針状電極21に対して相対的に排気口13の近くに位置している。第2筒状電極23は、針状電極21の上側に位置しており、これには限られないがこの実施形態では、排気口13の内側に嵌っている。第2筒状電極23は筒状或いはリング状であり、その外面の径が排気口13の内面の径と等しくなっている。それにより、排気口13の内面にその外面を隙間なく接触させた状態で、第2筒状電極23は、排気口13の内側に取付けられている。平面視で円形である第2筒状電極23の中心は、容器10の軸の上に乗っている。したがって、第2筒状電極23の中心は、針状電極21の真上に位置している。
【0021】
容器10の適当な位置、この実施形態では、図1における左側の側面には、制御部30が設けられている。
制御部30の外側には操作スイッチ31(図1では図示を省略するが、図2に記載がある。)が設けられている。操作スイッチ31は、後述するようにしてユーザが二酸化炭素削減装置の動作をON・OFFするために用いられる。操作スイッチ31は、その移動によってON・OFFの切換えを行う物理スイッチ、タッチすることによりON・OFFの切換えを行うタッチパネル等、公知又は周知の適宜のものを採用すれば良い。
制御部30の内側は、中空となっており、そこには電源装置であるパルス電源装置40が配置されている。パルス電源装置40は、針状電極21と、第1筒状電極22、第2筒状電極23との間に、より詳細には、下陰極21Aと第1筒状電極22との間と、上陰極21Bと第2筒状電極23との間とに、パルス状の高電圧である後述するようなパルス電圧をかけるための電源装置である。パルス電源装置40は、30Hzから500Hzで4000Vから11000Vのパルス状の高電圧を、下陰極21Aと第1筒状電極22との間にパルス電圧として印加するようになっている。高価な電源装置を用いれば、そのようなパルス電圧を生成することが可能である。
そのような電圧を印加することが可能なように、パルス電源装置40は、針状電極21と、第1筒状電極22、第2筒状電極23とのうちの必要なものと、導線によって接続されている。
【0022】
パルス電源装置40の回路図を図2に示す。図2中、操作スイッチ31、針状電極21、第1筒状電極22、第2筒状電極23を除く部分がパルス電源装置40である。
この実施形態におけるパルス電源装置40は、後述するように高電圧電源装置を含んでいる。パルス電源装置40のうち、高電圧電源装置よりも前段の部分が本願でいうパルス波形決定装置である。つまり、この実施形態におけるパルス電源装置は、本願発明のうち、パルス波形決定装置と、高電圧電源装置とを含む態様に相当する。
パルス電源装置40は、図2に示したようにコンピュータ41を備えている。コンピュータ41は、情報処理を行う装置であり、インストールされるソフトウエアによってそれが行う情報処理を自由に変化させることが可能である。コンピュータ41は、それが可能なのであればパーソナルコンピュータの如きコンピュータ装置であっても良いし、英国ラズベリーパイ財団が製造販売するラズベリーパイの如きシングルボードコンピュータであっても良いし、IC(集積回路)であってもよい。この実施形態におけるコンピュータ41は、いずれにせよ、ある周波数で、あるデューティー比の矩形波である基準矩形波を出力するようになっている。コンピュータ41はまた、操作スイッチ31と接続され操作スイッチ31からの入力を受取るようになっている。コンピュータ41は、操作スイッチ31からの入力、例えば二酸化炭素削減装置の動作を開始する旨の入力(ON入力)を受取ると、それをきっかけとして基準矩形波を生成して出力するとともに、後述する高電圧電源装置の電源を入れる。コンピュータ41はまた、操作スイッチ31からの入力、例えば二酸化炭素削減装置の動作を終了する旨の入力(OFF入力)を受取ると、それをきっかけとして基準矩形波の生成を中止するとともに、後述する高電圧電源装置の電源を切る。
以上のような情報処理を行うことのできるコンピュータ41は、コンピュータ41がコンピュータ装置であろうと、シングルボードコンピュータであろうと、ICであろうと公知或いは周知であることは当然であるため、これ以上の説明は省略する。
【0023】
基準矩形波は、コンピュータ41から第1接続線42Aを介して、NPNトランジスタ43のベースに入力されるようになっている。NPNトランジスタ43のエミッタは接地(GRD)されている。NPNトランジスタ43のコレクタは、その途中に抵抗44が設けられた第2接続線42Bを介して、PNPトランジスタ45のベースに接続されている。
PNPトランジスタ45のエミッタは、12Vの電源に接続されている。PNPトランジスタ45のコレクタは、第3接続線42Cにより高電圧電源装置46に接続されている。
高電圧電源装置46は、第3接続線42Cを介して入力される後述するパルス波形に応じたパルス状の高電圧を出力する公知、或いは周知の装置である。高電圧電源装置46は、接地(GRD)されており、GNDの電位を基準の0Vとした高電圧を発生させるようになっている。この実施形態では、これには限られないが高電圧電源装置46が発生させることのできる電圧は-4000Vから-12000Vの間とされるが、これには限られないがこの実施形態では-8000Vである。これが本願でいう基準電位差に当たる。
高電圧電源装置46は第4接続線42Dによって針状電極21に接続されている。高電圧電源装置46が生成したパルス状の高電圧は、第4接続線42Dを介して針状電極21に送られるようになっている。
他方、針状電極21の下と上にはそれぞれ、既に説明した第1筒状電極22と第2筒状電極23とが設けられている。第1筒状電極22と、第2筒状電極23とはいずれも接地(GRD)されている。これには限られないが、この実施形態では、第1筒状電極22と、第2筒状電極23とは互いに第5接続線42Eによって接続されており、第5接続線42Eを介して接地されている。
なお、説明する必要もないであるが、第1接続線42Aから第5接続線42Eはいずれも、導電性を持つ導線である。
【0024】
以上で説明した二酸化炭素削減装置の使用方法、及び動作について説明する。
ユーザが二酸化炭素削減装置を使用するには、二酸化炭素削減装置を例えば室内の適宜の位置に配置する。二酸化炭素削減装置が配置される「室内」とは典型的には、不動産の室内や自動車の室内である。二酸化炭素削減装置は持ち運び可能な程度に小型化、軽量化が可能である。
二酸化炭素削減装置を室内の適宜の位置に配置するのと前後して、ユーザは、容器10の底に水溶液50を貯める。水溶液50は、ナトリウムイオンNaを含んでいる。水溶液50は例えば、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液、または、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液とすることができ、この実施形態ではこれには限られないが、塩化ナトリウム水溶液を用いる。水溶液50は例えば、排気口13からホースを用いて容器10の底に注ぐことができる。或いは、容器10に水溶液50を注入するための開閉自在な注入口を、容器10の底付近に設けておきそこから容器10の内部に水溶液50を注入してもよい。容器10の底に貯められる水溶液50は、その水面51が第1筒状電極22に接触しないようにする。
室内の適宜の位置に二酸化炭素削減装置を配置したら、ユーザは操作スイッチ31を操作し、二酸化炭素削減装置の動作を開始させるための入力であるON入力を入力する。ON入力は、コンピュータ41に入力される。
【0025】
ON入力を受取った、コンピュータ41は、ある周波数で、あるデューティー比の矩形波である基準矩形波を出力する。コンピュータ41が出力する矩形波の周波数とデューティー比とは、常に同じであっても、例えば操作スイッチ31からの入力により変化するようになっていても良いが、この実施形態ではそれらは常に同じであるものとする。矩形波の周波数とデューティー比とは、例えばコンピュータ41に備えられているメモリに記録されていた周波数とデューティー比とをそれぞれ特定するデータによって一意に決定される。
ON入力を受取ったコンピュータ41は、また、高電圧電源装置46の電源を入れる。それにより、高電圧電源装置46は、後述するパルス波形を入力された場合に、パルス状の高電圧であるパルス電圧を発生させられる状態となる。
【0026】
コンピュータ41は、矩形波である基準矩形波を生成する。概念的に、図2にXの符号を付して基準矩形波を示す。
基準矩形波は、コンピュータ41から第1接続線42Aを介して、NPNトランジスタ43のベースに入力されるようになっている。基準矩形波の電圧(ON状態の部分とOFF状態の部分との電位差)はこれには限られないが5Vとなっている。NPNトランジスタ43のコレクタからは、コンピュータ41が作った基準矩形波と周波数とデューティー比は同じであるが、電圧が12Vに増幅された基準波形が出力される。増幅された基準波形は、NPNトランジスタ43のコレクタから第2接続線42Bに出力され、抵抗44を通ってPNPトランジスタ45のベースに入力される。
PNPトランジスタ45のコレクタからは、コンピュータ41が作った基準矩形波と周波数とデューティー比は同じであるが、電流が増幅された基準波形が出力される。この基準波形は、本願でいうパルス波形である。パルス波形を概念的に、図2にYの符号を付して示す。パルス波形Yは、上述したようにコンピュータ41が作った基準波形と、周波数及びデューティー比という点で同じであるが、矩形波ではなくなっている。パルス波形Yは、OFF状態からON状態に切り換わる部分での立ち上がり(横軸に時間、縦軸に電位差を取った波形を書いたときにおける当該波形における立ち上がり)は垂直に近く、ON状態では略一定の電位を保つが、ON状態からOFF状態に切り替わっても直ちには電位が落ちず、電位は略直線的に下がっていく。
パルス波形の波形が、コンピュータ41が生成した基準矩形波形と異なるものとなるのは、コンピュータ41と高電圧電源装置46との間にあるNPNトランジスタ43とPNPトランジスタ45とが、コンデンサーのように機能するからである。
【0027】
高電圧電源装置46には、PNPトランジスタ45のコレクタから、第3接続線42Cを介して、パルス波形が入力される。
高電圧電源装置46は、受取ったパルス波形に応じた、パルス状の高電圧を生成する。
パルス状の高電圧であるパルス電圧は、高電圧電源装置46から、第4接続線42Dを介して、針状電極21に印加される。高電圧電源装置46は接地されており、また、第1筒状電極22と第2筒状電極23も接地されているので、針状電極21と、第1筒状電極22及び第2筒状電極23の間の電位差は、高電圧電源装置46が生成したパルス電圧に対応した電位差となる。言い換えれば、針状電極21と、第1筒状電極22及び第2筒状電極23の間にはパルス電圧に対応した高電圧が印加されることになる。
それにより、針状電極21と、第1筒状電極22の間、また、針状電極21と第2筒状電極23の間には、それぞれの前者から後者に向けて空気中を電子が飛ぶコロナ放電が生じることになる。
【0028】
その状態で、吸気口11から容器10内に空気が入ってくる。空気には、よく知られているように窒素、酸素、二酸化炭素に加えて水蒸気(つまり、水HO)が含まれている。
空気は、ダクト12を通って針状電極21の下陰極21Aと第1筒状電極22との間に至る。そこ(図1における、概略で破線αで囲まれた部分、以下、「α範囲」と称する。)では、上述したようにコロナ放電(暗流放電の場合もある。)が行われている。
α範囲では、針状電極21の下陰極21Aから、第1筒状電極22に向けて電子eが放出されている。
放出された電子eは、空気中の酸素Oに衝突し、以下の化学式(1)に示した化学反応によりオゾンOが生成される。
3O+6e→2O……(1)
また、α範囲では、電子eは、オゾンOと水蒸気HOに衝突し、以下の化学式(2)に示した化学反応によって、酸素Oと水酸化物イオンOHが生成される。
+HO+2e→O+2OH……(2)
マイナスの電荷をもつ水酸化物イオンOHは、下陰極21Aに対して相対的に+の電位を持つ第1筒状電極22(電圧0V)に引っ張られることにより、加速され、第1筒状電極22を通過する。これがイオン風である。イオン風と空気は水溶液50に衝突する。
下陰極21Aと第1筒状電極22とは、このように、両者の間でコロナ放電を生じることと、下向きのイオン風を生成することとを目的としている。したがって、下陰極21Aを針状電極21の一部とする必要はないし、第1筒状電極22を筒状とする必要もない。上述の目的を達成できる範囲でそれらに変更を加えることが可能である。
【0029】
次に、イオン風と空気が水溶液50に衝突する部分(図1における、概略で破線βで囲まれた部分、以下、「β範囲」と称する。)では以下の現象が生じる。
イオン風に含まれる水酸化物イオンOHは、水溶液50に衝突する。それにより、水溶液50の蒸散が生じる。蒸散が生じるメカニズムは、おそらく以下のようなものであると考えられる。
水溶液50の中では、高速な水酸化物イオンOHと、静止している水溶液50中の分子との速度差により両者の境界部に負圧が生じ、水中の気泡核が膨らみ、気泡に成長する(キャビテーションによる気泡発生)。
成長した気泡は、軽いため、水面51に向かって浮き上がっていく。水面51の近くで、大気圧で加圧され、気泡が破裂し、衝撃波が発生する(キャビテーションによる衝撃波の発生)。
クーロン力で引っ張り合っている水溶液50の水面51の水HOの分子は、衝撃波で引き離され、表面張力が低下し、水溶液50の蒸散が生じる(キャビテーションによる水溶液50の蒸散)。
水溶液50の蒸散により、水溶液50の成分(塩化物イオンCl、水HO)が、蒸散する。
また、ベータ範囲では、以下の化学反応も生じる。
水溶液50中には、水HOと、塩化ナトリウムNaClとが存在している。塩化ナトリウムは、水溶液50中で電離して、ナトリウムイオンNaと塩化物イオンClになっている。また、水溶液50中の水HOの一部は電離して水素イオンHと、水酸化物イオンOH-とに別れている。また、水溶液50に衝突した水酸化物イオンOH-の一部は水溶液50に含まれた状態となっている。
つまり、水溶液50の中にはナトリウムイオンNaと水酸化物イオンOH-とが存在する状態となっている。これは、水溶液50が亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の水溶液である場合でも同じである。
水溶液50の中で、ナトリウムイオンNa及び水酸化物イオンOH-が、二酸化炭素COと、以下の化学式(3)又は(4)で示した反応(これらが特定反応である)を生じ、炭酸ナトリウムNaCO又は炭酸水素ナトリウムNaHCOを生じる。
2Na+2OH-+CO→NaCO+HO……(3)
Na+OH-+CO→NaHCO……(4)
炭酸ナトリウムNaCOと炭酸水素ナトリウムNaHCOは、水溶液50中に溶解し続ける場合もあるし、空気に混ざる場合もあり得る。二酸化炭素CO中の炭素Cを炭酸ナトリウムNaCOと炭酸水素ナトリウムNaHCOに固定することにより、二酸化炭素が削減される。
特定反応は、パルス電源装置40が下陰極21Aと第1筒状電極22との間に高電圧を印加するたびに生じる。パルス状の高電圧の周波数は30Hzから70Hzとされるので、特定反応が生じるタイミングは1秒間に30回から70回存在する。それ故、この二酸化炭素削減装置によれば、多くの二酸化炭素が削減されることになる。
【0030】
蒸散した塩化物イオンCl、水HO、またそれらに加えて、オゾンO、炭酸ナトリウムNaCO、炭酸水素ナトリウムNaHCOを含む空気は、上部に向かって移動し、針状電極21の上陰極21Bと第2筒状電極23との間に至る。そこ(図1における、概略で破線γで囲まれた部分、以下、「γ範囲」と称する。)では、上述したようにコロナ放電が行われている。
γ範囲では、上陰極21Bから、第2筒状電極23へと電子eが放出されている。
放出された電子eは、空気中の酸素Oに衝突し、上述の化学式(1)に示した化学反応によりオゾンOが生成される。
また、γ範囲では、電子eは、オゾンOと水蒸気HOに衝突し、上述の化学式(2)に示した化学反応によって、酸素Oと水酸化物イオンOHが生成される。
マイナスの電荷をもつ塩化物イオンClと水酸化物イオンOHは、上陰極21Bに対して相対的に+の電位を持つ第2筒状電極23(電圧0V)に引っ張られることにより、加速され、第2筒状電極23を通過して、容器10の上部の排気口13から容器10の外部に放出される。この流れがイオン風である。
イオン風が容器10外に排気されるのに伴い、水酸化物イオンOH、塩化物イオンCl、水HO、オゾンO、炭酸ナトリウムNaCO、炭酸水素ナトリウムNaHCOを含む空気が、容器10外に排出される。それにより、容器10内が負圧化されるので、吸気口11から容器10内への空気の流れ込みが促進される。
上陰極21Bと第2筒状電極23とは、このように、両者の間でコロナ放電を生じることと、排気口13に向かうイオン風を生成することとを目的としている。したがって、上陰極21Bを針状電極21の一部とする必要はないし、第2筒状電極23を筒状とする必要もない。また、上陰極21Bと下陰極21Aとを一体とする必要もない。上述の目的を達成できる範囲でそれらに変更を加えることが可能である。
水酸化物イオンOH、塩化物イオンCl、オゾンOを室内に放出することになるので、この二酸化炭素削減装置は、空間除菌の効果も併せ持つ。
【0031】
パルス電源装置40について、補足する。
パルス電源装置40が生成するパルス状の高電圧は、その周波数が30Hzから70Hzとされる。また、下陰極21Aと第1筒状電極22との間、及び上陰極21Bと第2筒状電極23との間に印加される電圧の電位差は、4000Vから11000Vとなるようにされる。
上述したように、パルス電源装置40における高電圧電源装置46には、コンピュータ41が生成した基準矩形波を、電圧を増幅するNPNトランジスタ43と、電流を増幅するPNPトランジスタ45とを経過させて作られたパルス波形が入力されるようになっている。
高電圧電源装置46に入力されるパルス波形の周波数は、高電圧電源装置46から出力されるパルス状の高電圧の周波数と同一である。高電圧電源装置46から出力されるパルス状の高電圧の周波数は、パルス波形の周波数と同じに決定されるからである。また、パルス波形の周波数は、コンピュータ41が生成する基準矩形波の周波数とも一致する。
高電圧電源装置46に入力されるパルス波形のデューティー比は、高電圧電源装置46から出力されるパルス状の高電圧のデューティー比と同一である。高電圧電源装置46から出力されるパルス状の高電圧の周波数は、パルス波形のデューティー比により決定されるからである。また、パルス波形のデューティー比は、コンピュータ41が生成する基準矩形波のデューティー比とも一致する。
したがって、コンピュータ41は、パルス電源装置40が生成するパルス状の高電圧の周波数及びデューティー比と同じ周波数及びデューティー比を持つ基準矩形波を生成することになる。
【0032】
コンピュータ41が生成する基準矩形波の周波数とデューティー比は以下のように決定することができる。
基準矩形波の周波数は、30Hzから70Hzの間で設定する。二酸化炭素削減の効果を十分に得るために特定反応が生じる回数を稼ぐためには、少なくとも30Hz程度の周波数が必要であるからである。周波数の上限を70Hzとするのは、それ以上周波数を上げると、パルスのON状態において下陰極21Aと第1筒状電極22との間に印加された電圧を下げるためのOFF状態の時間を十分に取ることができず、下陰極21Aと第1筒状電極22との間に印加される電圧を十分に大きくすることが難しくなるからである。
OFF状態の時間を十分に取れなくなることは以下の2つの理由により生じる。一つは周波数が高すぎること、もう一つはデューティー比が高すぎることである。
デューティー比(1周期分の時間中のON状態の時間の比率)を下げてやれば、ある程度周波数が高くても、パルスのON状態において下陰極21Aと第1筒状電極22との間に印加された電圧を下げるための時間を十分に取れることになる。
コンピュータ41は、周波数が30Hzから70Hzであり、且つデューティー比が、高電圧電源装置46が出力するパルス電圧が基準電位差の85%以上(好ましくは90%以上)となる値である基準矩形波を生成するようになっている。高電圧電源装置46が出力するパルス電圧が基準電位差の85%以上となるようにするのは、高電圧電源装置46が本来発生させることのできる電圧である基準電位差を、なるべくそのまま、下陰極21Aと第1筒状電極22との間にかけるようにするためである。
【0033】
パルス波形の周波数とデューティー比についての以上の説明を、図3を用いて説明する。
図3(A)~(I)には、高電圧電源装置46に入力される直前のパルス波形(図1においてYの符号で示したもの。)を示している。図3(A)~(I)のそれぞれに示されたパルス波形では、周波数とデューティー比を様々に変化させている。
高電圧電源装置46が生成する高電圧のパルス波形は、理論的には、図3(A)~(I)に示されたパルス波形の電圧のみを高く変更したものとなる。
図3(A)~(I)は、横軸に時間、縦軸に電圧を取っている。縦軸の縮尺は、図3(A)~(I)のすべてで変わらないが、横軸の縮尺は、周波数が同じもの同士では一定しているものの、周波数が異なるもの同士では変更されている。もちろん、周波数が高いほど、横軸一杯の時間は短い。
【0034】
図3(A)で示すのは、周波数が2Hzで、デューティー比が50%のパルス波形である。周波数が2Hzと小さいので、デューティー比が50%と大きくても、電圧が落ちる十分な時間が確保されている。なお、図中の矢印が電圧を表している。矢印が示す電圧の大きさは、図3(A)~(I)のすべてで等しい。
図3(B)で示すのは、周波数が5Hzで、デューティー比が50%のパルス波形である。周波数が5Hzと比較的小さいので、デューティー比が50%と大きくても、図3(A)の場合と同じく電圧が落ちる十分な時間が確保されている。
図3(C)で示すのは、周波数が5Hzで、デューティー比が70%のパルス波形である。周波数が5Hzと比較的小さいので、デューティー比が70%と更に大きくても、図3(A)の場合と同じく電圧が落ちる十分な時間が確保されている。
図3(D)で示すのは、周波数が30Hzで、デューティー比が10%のパルス波形である。周波数が30Hzと大きくなっているが、デューティー比を10%と小さくしているので、図3(A)の場合と同じく電圧が落ちる十分な時間が確保されている。
図3(E)で示すのは、周波数が50Hzで、デューティー比が10%のパルス波形である。周波数が50Hzと更に大きくなっているため、デューティー比を10%と小さくしても、電圧が落ちる時間がやや足りなくなっている。とはいえ、ON状態における電圧は、図3(A)における電圧の90%程度である(矢印全体の長さにおける、矢印の破線より上の部分の長さが占める割合が90%程度である。)ため、このパルス波形を入力された高電圧電源装置46が出力するパルス電圧における電圧は、基準電圧の90%程度となる。この程度の電圧の低下は本願では許容できる。
図3(F)で示すのは、周波数が50Hzで、デューティー比が90%のパルス波形である。周波数が50Hzと更に大きくなっている上に、デューティー比が90%と大きいため、電圧が落ちる時間が完全に不足している。ON状態における電圧は、図3(A)における電圧の20%程度であるため、このパルス波形を入力された高電圧電源装置46が出力するパルス電圧における電圧は、基準電圧の20%程度となる。これは、許容できない。
図3(G)で示すのは、周波数が100Hzで、デューティー比が10%のパルス波形である。周波数が100Hzと更に大きくなっているため、デューティー比を10%と小さくしても、電圧が落ちる時間がやや足りなくなっている。ON状態における電圧は、図3(A)における電圧の70%程度であるため、このパルス波形を入力された高電圧電源装置46が出力するパルス電圧における電圧は、基準電圧の70%程度となる。これも許容できない。
図3(H)、(I)で示すのはそれぞれ、周波数が500Hzで、デューティー比が50%のパルス波形と、周波数が1kHzで、デューティー比が50%のパルス波形である。どちらも周波数が非常に大きくなっているため、電圧が落ちる時間が完全に不足している。ここまで周波数が大きくなると、デューティー比が更に小さくなったとしても電圧が落ちる時間が不足することは明らかであろう。図3(H)、(I)のパルス波形ではともに、ON状態における電圧は、図3(A)における電圧の10~20%程度であるため、このパルス波形を入力された高電圧電源装置46が出力するパルス電圧における電圧は、基準電圧の10~20%程度となる。これは、許容できない。
【0035】
以上を踏まえ、この実施形態のコンピュータ41は、周波数が30Hzから70Hz(好ましくは、40Hzから60Hz)であり、デューティー比が20%以下(好ましくは10%以下)であり、5%以上である基準矩形波を生成するように構成されている。
【符号の説明】
【0036】
10 容器
11 吸気口
12 ダクト
13 排気口
21 針状電極
21A 下陰極
21B 上陰極
22 第1筒状電極
23 第2筒状電極
40 パルス電源装置
41 コンピュータ
46 高電圧電源装置
50 水溶液
【要約】
空間内の二酸化炭素を削減するための実用的な技術を提供する。
二酸化炭素削減装置は、塩化ナトリウムの水溶液50を底に貯めた容器10を備える。容器10には吸気口11と排気口13があり、その内部に針状電極21と、第1筒状電極22、第2筒状電極23を備える。針状電極21と、第1筒状電極22及び第2筒状電極23の間には、前者がマイナスとなるようにして8000Vのパルス状の電圧がかけられる。パルス状の電圧の周波数は30Hzから70Hzであり、そのデューティー比は5%から10%である。
図1
図2
図3(A)】
図3(B)】
図3(C)】
図3(D)】
図3(E)】
図3(F)】
図3(G)】
図3(H)】
図3(I)】