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特許7309170製品開発支援システム、製品開発支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】製品開発支援システム、製品開発支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20230710BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019028329
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020135440
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】512319232
【氏名又は名称】株式会社KMC
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 声喜
(72)【発明者】
【氏名】大坪 一紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 城太郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 達也
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-155094(JP,A)
【文献】特開平08-125398(JP,A)
【文献】特開2005-309618(JP,A)
【文献】特開2017-033280(JP,A)
【文献】特開2012-195000(JP,A)
【文献】木野 泰伸, ソフトウェア開発プロジェクトの見える化,可視化情報学会誌 ,第31巻 第121号,2011年04月01日, 19~24ページ,[ISSN]0916-4731
【文献】藤井 聡子,デジタルライフ(5)写真、動画、音楽でTwitterを3倍楽しむ!,日経PCビギナーズ,日本,日経BP社 ,2010年10月13日, 第1巻 第7号 , 108~111ページ,[ISSN]2185-1204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも製品の設計の工程、当該製品に使う金型又は生産設備の設計の工程、設計された金型の製造又は設備の生産設定の工程並びに製造された金型又は設定された生産設備を使った試作の工程で用いられ
製品開発における検討事項を打上るため、前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を入力するための打上情報入力部と、
前記検討事項ごとに、前記打上情報入力部により入力された前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積された情報に基づき、複数の前記検討事項についての前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を一覧表示し、打上を登録するための第1の登録ボタンと、製造要件画面を起動するための製造要件ボタンとを表示する打上一覧画面を表示するための打上一覧表示データと、
設計時に用いられる設計標準を表示する前記製造要件画面を表示するための製造要件表示データと
を生成する表示データ生成部と
を具備する製品開発支援システムであって、
前記蓄積部は、前記打上一覧画面で使用される第1の用語と、前記第1の用語と同一の意味で、前記製造要件画面で使用される第2の用語と、を対応付けて蓄積し、
前記表示データ生成部は、
表示された前記打上一覧画面上で、前記第1の用語が選択され、前記第1の登録ボタンを用いて打上登録され、前記製造要件ボタンが操作されると、
前記蓄積部に対応付けて蓄積された前記第1の用語及び第2の用語の情報に基づき、選択された前記第1の用語を前記第2の用語に変換し、
変換後の前記第2の用語が追加された前記製造要件画面を表示するための製造要件表示データを生成し、前記第2の用語が追加された前記製造要件画面が起動される
製品開発支援システム。
【請求項2】
前記表示データ生成部は、前記打上一覧表示データに基づき表示される打上一覧画面が打上時の前記打上情報入力部として機能するように前記打上一覧表示データを生成する
請求項1に記載の製品開発支援システム。
【請求項3】
前記表示データ生成部は、打上後に前記検討事項に対する各前記工程でのコメントを入力し、また打上時に前記打上情報入力部より入力された情報と共に前記入力されたコメントを表示する打上詳細画面を表示するための打上詳細表示データを生成し、
前記蓄積部は、前記打上詳細画面により入力されたコメントを前記検討事項ごとに蓄積する
請求項1又は2に記載の製品開発支援システム。
【請求項4】
複数の前記打上詳細表示データを要素別単位で抽出して集計し、集計した前記打上詳細表示データに基づく打上詳細画面をそれぞれ集計単位で表示する
請求項3に記載の製品開発支援システム。
【請求項5】
前記表示データ生成部は、前記打上詳細画面に前記コメントを時系列に表示するための打上詳細表示データを生成する
請求項3又は4に記載の製品開発支援システム。
【請求項6】
前記コメントを入力するときに、画像データを添付可能であり、
前記蓄積部は、前記コメントに前記画像データが添付されたとき、前記コメントと共に前記画像データを蓄積し、
前記表示データ生成部は、前記コメントに前記画像データが添付されたとき、前記蓄積部のデータから前記コメントに前記画像データを付随して前記打上詳細画面に表示するように、前記打上詳細表示データを生成する
請求項3乃至5の何れか一項に記載の製品開発支援システム。
製品開発支援システム。
【請求項7】
前記蓄積部は、前記製品の出図前に問題提起があったが問題が起きなかった、前記製品の出図前に問題提起があり問題が起きた、又は、前記製品の出図前に問題提起ができずに問題が起きたかを示すEMD情報を蓄積しており、
前記表示データ生成部は、前記蓄積部に蓄積されたEMD情報に基づき、少なくとも前記打上一覧画面上に前記検討事項に応じた前記EMD情報を表示するための前記打上一覧表示データを生成する
請求項1乃至6の何れか一項に記載の製品開発支援システム。
【請求項8】
少なくとも製品の設計の工程、当該製品に使う金型又は生産設備の設計の工程、設計された金型の製造又は設備の生産設定の工程並びに製造された金型又は設定された生産設備を使った試作の工程において、
コンピュータシステムがプログラムを実行することにより、
打上情報入力部により、製品開発における検討事項を打上るため、前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を入力し、
蓄積部により、前記検討事項ごとに、前記打上情報入力部により入力された前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を蓄積し、
表示データ生成部により、
前記蓄積部に蓄積された情報に基づき、複数の前記検討事項についての前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を一覧表示し、打上を登録するための第1の登録ボタンと、製造要件画面を起動するための製造要件ボタンとを表示する打上一覧画面を表示するための打上一覧表示データと、
設計時に用いられる設計標準を表示する前記製造要件画面を表示するための製造要件表示データと
を生成する
製品開発支援方法であって、
前記蓄積部により、前記打上一覧画面で使用される第1の用語と、前記第1の用語と同一の意味で、前記製造要件画面で使用される第2の用語と、を対応付けて蓄積し、
前記表示データ生成部により、
表示された前記打上一覧画面上で、前記第1の用語が選択され、前記第1の登録ボタンを用いて打上登録され、前記製造要件ボタンが操作されると、
前記蓄積部に対応付けて蓄積された前記第1の用語及び第2の用語の情報に基づき、選択された前記第1の用語を前記第2の用語に変換し、
変換後の前記第2の用語が追加された前記製造要件画面を表示するための製造要件表示データを生成し、前記第2の用語が追加された前記製造要件画面が起動される
製品開発支援方法。
【請求項9】
少なくとも製品の設計の工程、当該製品に使う金型又は生産設備の設計の工程、設計された金型の製造又は設備の生産設定の工程並びに製造された金型又は設定された生産設備を使った試作の工程における製品開発支援システムに用いられ
打上情報入力部により、製品開発における検討事項を打上るため、前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を入力するステップと、
蓄積部により、前記検討事項ごとに、前記打上情報入力部により入力された前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を蓄積するステップと、
表示データ生成部により、
前記蓄積部に蓄積された情報に基づき、複数の前記検討事項についての前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を一覧表示し、打上を登録するための第1の登録ボタンと、製造要件画面を起動するための製造要件ボタンとを表示する打上一覧画面を表示するための打上一覧表示データと、
設計時に用いられる設計標準を表示する前記製造要件画面を表示するための製造要件表示データと
を生成するステップと、
をコンピュータシステムに実行させるプログラムであって、
前記蓄積部は、前記打上一覧画面で使用される第1の用語と、前記第1の用語と同一の意味で、前記製造要件画面で使用される第2の用語と、を対応付けて蓄積し、
前記表示データ生成部は、
表示された前記打上一覧画面上で、前記第1の用語が選択され、前記第1の登録ボタンを用いて打上登録され、前記製造要件ボタンが操作されると、
前記蓄積部に対応付けて蓄積された前記第1の用語及び第2の用語の情報に基づき、選択された前記第1の用語を前記第2の用語に変換し、
変換後の前記第2の用語が追加された前記製造要件画面を表示するための製造要件表示データを生成し、前記第2の用語が追加された前記製造要件画面が起動される
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品開発の工程で用いられる製品開発支援システム、製品開発支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
開発期間における製品開発フローは、概ね、商品企画-設計-生産技術設計-金型設計製作-金型・生産試作工程がある。製品開発は製品販売上、定められた期間内で生産部隊(量産)に製造情報と共に生産財(金型・設備)を移管する必要がある。いわゆる生産準備までが開発期間とされる。
【0003】
開発における課題は、設計から金型試作工程までの各プロセス間で「手戻り」と言われる検討不足により前の工程に検討作業が戻ってしまうことにある。その手戻りは、開発期間や設計品質、量産時の品質に大きな影響を及ぼす。勿論、利益や生産性、市場での品質評価、はたまた市場クレームなど重大な問題になるおそれがあり、各社が製品開発の「質」と「期間」について様々な取り組みをしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-140036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いまだに「手戻り」の解消はされてない。これには、以下の要因があると考えられる。
【0006】
(1)工程間の手戻り
工程間にまたがる検討事項が存在し、両工程の技術メンバーの検討にタイムラグがあり、後追いで検討が進められる業務フローとなっていることが原因の一つである。
【0007】
(2)開発イベントまでの合意形成
もう一つは開発イベントの時間軸に対する検討不備が挙げられる。どうしても部門間や合意形成者間の検討整合が遅れることで、定められた時期までに合意が取れずに次の工程に進んでしまうことが挙げられる。
【0008】
(3)工程内の検討不足
また、工程内でも検討事項に対する情報不足や知識不足やチェック不足があり不確定な状態で次の検討工程に情報を渡してしまうことが要因で手戻る。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、製品開発工程で発生する手戻りを解消することができる製品開発支援システム、製品開発支援方法及びプログラムを提供することにある。
【0010】
本発明は、上記の目的に加え、製品開発工程における打上の状況を俯瞰することができる製品開発支援システム、製品開発支援方法及びプログラムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る製品開発支援装置は、少なくとも製品の設計の工程、当該製品に使う金型又は生産設備の設計の工程、設計された金型の製造又は設備の生産設定の工程並びに製造された金型又は設定された生産設備を使った試作の工程で用いられる製品開発支援システムであって、前記製品開発における検討事項を打上るため、前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を入力するための打上情報入力部と、前記検討事項ごとに、前記入力部により入力された前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を蓄積する蓄積部と、前記蓄積部に蓄積された情報に基づき、複数の前記検討事項についての前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を一覧表示するための打上一覧表示データを生成する表示データ生成部とを具備する。
ここで、前記表示データ生成部は、前記打上一覧表示データに基づき表示される打上一覧画面が打上時の前記打上情報入力部として機能するように前記打上一覧表示データを生成するように構成してもよい。
【0012】
本発明では、工程間にまたがる検討事項を工程間で共通認識をしながら検討することができ、定められた時期までに合意が取れずに次の工程に進んでしまうことを防止でき、各工程内での検討事項に対する情報不足や知識不足、チェック不足をなくし、不確定な状態で次の検討工程に情報を渡してしまうことを防止できる。これにより、製品開発工程で発生する手戻りを解消することができる。また、打上一覧表示によって、製品開発工程における打上の状況を俯瞰することができる。
【0013】
本発明の一形態に係る製品開発支援装置では、前記表示データ生成部は、打上後に前記検討事項に対する各前記工程でのコメントを入力し、また打上時に前記打上情報入力部より入力された情報と共に前記入力されたコメントを表示する打上詳細画面を表示するための打上詳細表示データを生成し、前記蓄積部は、前記打上詳細画面により入力されたコメントを前記検討事項ごとに蓄積する。打上詳細画面を使って検討事項を検討することで、漏れなく工程間でコミュニケーションをとることができる。
ここで、複数の前記打上詳細表示データを要素別単位で抽出して集計し、集計した前記打上詳細表示データに基づく打上詳細画面をそれぞれ集計単位で表示してもよい。
【0014】
本発明の一形態に係る製品開発支援装置では、前記表示データ生成部は、設計時に用いられる設計標準を表示する製造要件画面を表示するための製造要件表示データを生成し、前記打上一覧表示データに基づき表示される打上一覧画面上に、打上を登録するための第1の登録ボタンが表示されるように、前記打上一覧表示データを生成し、前記製造要件画面上に打上を登録するための第2の登録ボタンが表示されるように、前記製造要件表示データを生成する。これにより、いずれの工程からでも打上が可能となる。
【0015】
本発明の一形態に係る製品開発支援装置では、前記蓄積部は、前記打上一覧画面より打上られる工程で使われる第1の用語と当該第1の用語と同一の意味で前記製造要件画面より打ち上げれる工程で使われる第2の用語とを対応付けて蓄積し、前記表示データ生成部は、前記蓄積部に蓄積された第1及び第2の用語の情報に基づき、前記打上一覧画面で使われた第1の用語が前記製造要件画面では前記第2の用語を用いて表示され、前記製造要件画面で使われた第2の用語が前記打上詳細画面では前記第1の用語を用いて表示されるように、前記製造要件表示データ及び打上詳細表示データを生成する。これにより、工程間での用語の理解不足による検討事項の齟齬をなくすことができる。
【0016】
本発明の一形態に係る製品開発支援装置では、前記表示データ生成部は、前記打上詳細画面に前記コメントを時系列に表示するための打上詳細表示データを生成する。これにより、コメントを直感的に流れよく理解することができる。
【0017】
本発明の一形態に係る製品開発支援装置では、前記コメントを入力するときに、画像データを添付可能であり、前記蓄積部は、前記コメントに前記画像データが添付されたとき、前記コメントと共に前記画像データを蓄積し、前記表示データ生成部は、前記コメントに前記画像データが添付されたとき、前記蓄積部のデータから前記コメントに前記画像データを付随して前記打上詳細画面に表示するように、前記打上詳細表示データを生成する。これにより、検討事項を直感的に理解することができる。
【0018】
本発明の一形態に係る製品開発支援装置では、前記蓄積部は、前記製品の出図前に問題提起があったが問題が起きなかった、前記製品の出図前に問題提起があり問題が起きた、又は、前記製品の出図前に問題提起ができずに問題が起きたかを示すEMD情報を蓄積しており、前記表示データ生成部は、前記蓄積部に蓄積されたEMD情報に基づき、少なくとも前記打上一覧画面上に前記検討事項に応じた前記EMD情報を表示するための前記打上一覧表示データを生成する。これにより、検討事項の重複や検討事項の重要度を直感的に知ることができる。
【0019】
本発明の一形態に係る製品開発支援方法は、少なくとも製品の設計の工程、当該製品に使う金型又は生産設備の設計の工程、設計された金型の製造又は設備の生産設定の工程並びに製造された金型又は設定された生産設備を使った試作の工程における製品開発支援方法であって、前記製品開発における検討事項を打上るため、前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を入力し、前記検討事項ごとに、前記入力された検討事項の情報、検討事項を検討する工程の情報及び検討事項の検討終期に関する情報を蓄積し、前記蓄積された情報に基づき、複数の前記検討事項についての前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を一覧表示する。
【0020】
本発明の一形態に係るプログラムは、少なくとも製品の設計の工程、当該製品に使う金型又は生産設備の設計の工程、設計された金型の製造又は設備の生産設定の工程並びに製造された金型又は設定された生産設備を使った試作の工程における製品開発支援システムに用いられるプログラムであって、前記製品開発における検討事項を打上るため、前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を入力するステップと、前記検討事項ごとに、前記入力された検討事項の情報、検討事項を検討する工程の情報及び検討事項の検討終期に関する情報を蓄積するステップと、
前記蓄積された情報に基づき、複数の前記検討事項についての前記検討事項の情報、前記検討事項を検討する工程の情報及び前記検討事項の検討終期に関する情報を一覧表示するための打上一覧表示データを生成するステップと、をコンピュータシステムに実行させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、製品開発工程で発生する手戻りを解消することができ、また製品開発工程における打上の状況を俯瞰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る製品開発支援システム1の概略を示す図である。
図2】サーバ10による処理のもとでコンピュータシステム20A~20Iの表示部に表示される画面の遷移図である。
図3】打上一覧画面110の一例を示す図である。
図4】打上詳細画面120の一例を示す図である。
図5】製造要件画面130の一例を示すである。
図6】カルテ連帯画面140の一例を示す図である。
図7】グラフ画面150の例(その1)を示す図である。
図8】グラフ画面150の例(その2)を示す図である。
図9】グラフ画面150の例(その3)を示す図である。
図10】グラフ画面150の例(その4)を示す図である。
図11】各工程A~Hにおける打上一覧画面110、打上詳細画面120及び製造要件画面130の利用の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る製品開発支援システムの概略を示す図である。
【0025】
図1に示すように、金型によって生産される製品の開発を含めた量産までの工程は、典型的には、製品の機能検討の工程A、製品の設計の工程B、当該製品に使う金型の設計の工程C、設計された金型の製造の工程D、第1の試作の工程E、第2の試作の工程F、生産準備の工程G、量産の工程Hを有する。第1の試作の工程Eとは、例えば、材料を金型に入れて部品を成型する工程であり、第2の試作の工程Fとは、第1の試作工程Eで成型された部品に塗装をする工程である。
本実施形態に係る製品開発支援システム1は、上記の各工程A~Hに用いられるもので、サーバ10と、工程A~Hごとに配置され、通信ネットワーク30を介してサーバ10と接続されたコンピュータシステム20A~20Hとを有する。管理者が別途コンピュータシステムを持っていてもよく、ここではコンピュータシステム20Iとする。
サーバ10は、以下に示す画面に表示する情報などを蓄積する蓄積部11と、以下に示す表示処理などを実行する表示データ生成部12とを有する。
【0026】
コンピュータシステム20A~20Hは、一般的なPCでもよいが、タブレットなどでもよい。
本実施形態では、一連データの処理をすべてサーバ10側で行って、コンピュータシステム20A~20H側ではデータの入力と情報の表示を行っている。なお、一連のデータの処理の一部又は全部を各コンピュータシステム20A~20I側で行ってもよい。
【0027】
図2はサーバ10による処理のもとでコンピュータシステム20A~20Iの表示部に表示される画面の遷移図である。
図2に示すように、表示部に表示される画面には、メニュー画面100、打上一覧画面110、打上詳細画面120、製造要件画面130、カルテ連帯画面140、グラフ画面150がある。ユーザは、メニュー画面100より、製造要件画面130、打上一覧画面110及びカルテ連帯画面140を起動することができ、更に図示を省略したが部品一覧画面、ナレッジ一覧画面、トライ一覧画面、ユーザ管理画面及び権限管理画面を起動することができる。ここで、部品一覧画面とは、成形品の情報の一覧画面である。ナレッジ一覧画面とは、設計標準の一覧画面であり、ものづくりの知識(knowledge)を樹脂部品やプレス、ダイカストなどものの作り方や、その時点の規格を用いてまとめられている。トライ一覧画面とは、成形トライの結果を部品単位で見ることができる一覧画面であり、同じ部品でも複数回試作を行うため、その情報が一覧として表示される。ユーザ管理画面とは、本システムにログインするユーザを管理する画面である。権限管理画面とは、ユーザが操作できる機能を定義する画面であり、システム管理者、設計者、現場ユーザが使用する機能だけが見えるように設定、定義する画面である。
【0028】
<打上一覧画面110>
打上一覧画面110は、複数の検討事項についての検討事項の情報、検討事項を検討する工程の情報及び検討事項の検討終期に関する情報を一覧表示する画面である。また、打上一覧画面110が打上時の打上情報入力部として機能する。つまり、ユーザが打上時に上記の検討事項の情報、検討事項を検討する工程の情報及び検討事項の検討終期に関する情報をこの打上一覧画面より入力する。
ここで、検討事項とは、典型的には、検討すべき項目(例えばゲート)に関して懸念点や不具合の可能性がある事項をいう。打上とは、典型的には、そのような検討事項を発見したときにユーザが問題提起することである。
【0029】
図3に打上一覧画面110の一例を示す。打上一覧画面110は、典型的には、1つの検討事項について1行で表示する。1つの検討事項についての表示項目としては、ステータス、EMD、イベント、発生工程、コメント、画像、対策担当者、納期、対策内容、対策結果、対策確認者、対策完了日、打上日、製品名、部品コード、部品名、事象、要因、製造要件である。
【0030】
ステータスは、当該検討事項について未対応、対応確認済み、対応確認待ち等を表示する。
EMDは、当該検討事項について、製品の出図前に問題提起があったが問題が起きなかった(E)、製品の出図前に問題提起があり問題が起きた(M)、又は、製品の出図前に問題提起ができずに問題が起きた(D)、のいずれかを示すEMD情報を表示する。
イベントは、検討事項を登録した部署や会議などを表示する。
発生工程は、検討事項が発生する工程を表示する。
コメントは、検討事項を登録したときのコメントを表示する。
画像は、検討事項を登録したときに添付された画像を表示する。
対策担当者は、検討事項の対策担当者を表示する。
納期は、検討事項の納期を表示する。
対策内容は、検討事項に対する対策内容を表示する。
対策結果は、対策内容に対する結果を表示する。
対策確認者は、検討事項の対策確認者を表示する。
【0031】
対策完了日は、検討事項の対策の完了日を表示する。
打上日は、検討事項が打上られた日を表示する。
製品名、部品コード、部品名は、検討事項の対象の製品のものを表示する。
事象は、検討事項についてどのような事象であるかを表示する。
要因は、事象の要因を表示する。
製造要件は、ナレッジ(設計標準)を表示する。
打上一覧画面110は、上記の一覧の他に、打上登録ボタン111、詳細ボタン112、メール送信ボタン113及び製造要件ボタン114を表示する。
【0032】
打上時にユーザは例えば新たな行にこれらの項目に必要な情報を入力し、打上登録ボタン111を例えばマウス(図示せず)を使って画面上でマウスポンタ(図示せず)を指示し、マウスをクリックすると(以下、これらの操作を単にボタンを押すと、いう。)、新たな検討事項が打上る。
また、ユーザが一覧から一行を選択して詳細ボタン112を押すと、その行の検討事項に対応する打上詳細画面120が起動される。
ユーザが一覧から一行を選択してメール送信ボタン113を押すと、メーラによって電子メールが起動し、電子メールの本文にその行の検討事項に対応するサーバ10の蓄積部11のメールアドレスが挿入される。ユーザはその電子メールの宛先に担当者のメールアドレスを入れて電子メールを送信する。例えば、当該ユーザが試作の工程の担当者であるときに、製品設計の担当者や型設計の担当者のアドレスを入力してメールを送信する。
ユーザが一覧から一行を選択して製造要件ボタン114を押すと、その行に対応する製造要件画面130が起動される。
【0033】
<打上詳細画面120>
図4に打上詳細画面120の一例を示す。
図4に示す打上詳細画面120には、打上られた1つの検討事項について、製品名、部品コード、部品名、ステータス、EMD、イベント、発生工程、事象、要因、打上日、納期、対策担当者、対策確認者、対策完了日を表示する。
打上詳細画面120は、上記の入力項目の他に、コメント欄121、登録ボタン122、製造要件ボタン123を表示する。
【0034】
コメント欄121において、符号121aにはプルダウンメニューより当該コメントや画像データが問題提起、対策内容、結果確認のどの位置付けになるかが選択して表示され、符号121bには図面などの画像データなどが貼り付けられて表示され、121cには当該コメントの登録日が表示され、符号121dには当該コメントを入力したユーザ名が表示され、符号121eには当該コメントが入力されて表示される。
【0035】
ユーザがコメント等を追加し、登録ボタン122を押すと、そのコメント欄121の情報が蓄積部11に登録される。
【0036】
打上詳細画面120にはコメント欄121が時系列に表示される。例えば、例えば、コメント欄121は、入力された順番に上から下に表示され、かつ、コメント入力者に応じた列が異なる表示がされていく。図4の例でいうと、コメント欄121(C1)とコメント欄121(C3)がコメント入力者Xによるもので、コメント121(C2)はコメント入力者Yによるものである。最初コメント入力者Xによるコメントとしてコメント欄121(C1)への入力に対して、コメント入力者Yがコメント欄121(C2)で答え、それに対してコメント入力者Xがコメント欄121(C3)で答えている。なお、コメント入力者が増えると縦のコメントの列が増えることになる。
【0037】
打上詳細画面120において、ユーザが製造要件ボタン123を押すと、当該検討事項に対応する製造要件画面130が起動される。
【0038】
<製造要件画面130>
製造要件画面130は、製造要件を表示する。製造要件とは、製品設計や金型設計においてユーザが参照するナレッジ(設計標準)である。図5に製造要件画面130の一例を示す。図5に示す製造要件画面130において、イベント131は現在のステージを表す。
【0039】
イベント131は、プルダウンメニューにより選択する。選択肢は、例えば引合、設計、出図、試作、量産などがある。
ツリー132は、画面中央のツリー133のカテゴリの位置付けである。図中、現在は「金型」に対する設計標準を見ているので、「金型」を表示している。ツリー132は、プルダウンメニューにより選択する。選択肢は、例えば金型、部品、成形、塗装などがある。
確認項目134は、ある種のチェック項目である。ツリー132、133を選択すると、確認項目134には、チェック項目が表示される。例えば、サブマリンゲートを設計するにあたって、ツリー132、133において「サブマリンゲート」を選択すると、確認項目134には、「ゲート跡が目立たない位置に設定する事」が表示される。ユーザはCADモデル135を見ながら、ゲート跡が目立たない位置に設定されているかを確認する。そして、ユーザはゲート跡が目立たない位置に設定されていないと判断したときには、それを検討項目として打上る。
ナレッジ136は、確認項目134が文字での表現に対し、ファイル名で表現されて表示する。例えば、ユーザがツリー132、133において「サブマリンゲート」を選択すると、ナレッジ136にはゲートの設置のマニュアルなどを登録される。
現トラ137には、同じ事象の問題が発生すると、ここに打上げられた内容が登録される。これは、設計する段階で、例えばゲートを検討しようとしたら、型製造や試作、或いはそれ以降の現場からはゲートに関連した不具合が発生したんだ、ということをわからせるためのものである。つまり、現トラ137には、ナレッジや過去トラブルになる前のリアルタイムでの生の情報を表示する。
【0040】
製品設計時や金型設計時に、ユーザはナレッジ136のデータを見ながらCADモデル135を検討する。その際に、ユーザは、設計時の懸念点や不具合の可能性など、検討事項があると判断したときに、検討事項を打上る。具体的には、製造要件画面130の打上登録ボタン138を押す。選択したナレッジツリーの構成が後述するカルテ連帯データに基づき用語が変換され、打上一覧画面110に検討事項が追加される。つまり、打上一覧画面110の入力項目には、すでに打上の情報が入力済の状態で検討事項が追加される。従って、打上る側(例えば上長)は、CADモデル135を見ながら、検討すべき項目(例えばゲート)に関して懸念点や不具合の可能性などの検討事項を見つけると、該当するツリー133を選択して、打上登録ボタン138を押せば、打上一覧画面110にその検討項目が打上られ、後述するようにその打上一覧画面110はすでに型製造や試作、或いはそれ以降の現場において理解可能な用語に置き換わっている。
【0041】
<カルテ連帯画面140>
図6にカルテ連帯画面140の一例を示す。
カルテ連帯画面140は、打上一覧画面110より打上られる工程、例えば設計された金型の製造の工程D、製造された金型を使った第1の試作の工程E、第2の試作の工程F、生産準備の工程G、量産の工程Hで使われる第1の用語と当該第1の用語と同一の意味で製造要件画面130より打ち上げれる工程、例えば製品の設計の工程B、当該製品に使う金型の設計の工程Cで使われる第2の用語とを対応付けた画面である。カルテ連帯画面140のデータは、例えばユーザによって作成され、サーバ10の蓄積部11に蓄積されている。
【0042】
例えば、ユーザが製造要件画面130の画面中央のツリー133の「構造」、「ゲート」、「ダイレクトゲート」を選択し、打上登録をすると、カルテ連帯画面140で示される符号141のデータに対応する符号142のデータに基づき、打上詳細画面120の「発生工程」、「事象」、「要因」の項目にそれぞれ、「成形」、「ひけ」、「ゲート位置設定」が選択される。
【0043】
また、打上一覧画面110から、打上登録をする場合に、「発生工程」、「事象」、「要因」の入力項目に、それぞれ「成形」、「ひけ」、「ゲート位置設定」を選択して、製造要件ボタン114を押すと、カルテ連帯画面140で示される符号142のデータに対応する符号141のデータに基づき、ユーザが製造要件画面130の画面中央のツリー133が「構造」、「ゲート」、「ダイレクトゲート」を選択した状態で製造要件画面130が起動される。
【0044】
これにより、製造要件画面130の各項目には、設計者の使う用語で表示され、打上詳細画面120には、現場で使う用語で表示され、設計者と現場との間で用語の理解不足による検討事項の齟齬をなくすことができる。
【0045】
<グラフ画面150>
グラフ画面150は、サーバ10の蓄積部11に蓄積された、打上一覧画面110を表示するためのデータに基づき、典型的には統計データをグラフで表示する画面である。
【0046】
グラフ画面150には、例えば図7に示すようにイベント別打上件数を年代別に表示したり、図8に示すように発生工程別の打上件数を表示したり、図9に示すように打上ランキングを表示したり、図10に示すように期間別の打上件数を表示する。例えば管理者はグラフ画面150に表示されたこれらのグラフにより検討事項を俯瞰することができ、検討事項に関する全体の状況を把握することが容易になる。
【0047】
<各画面の利用の態様>
図11に各工程A~Hにおける打上一覧画面110、打上詳細画面120及び製造要件画面130の利用の態様を示す。
【0048】
図11に示すように、工程Aでは、打上一覧画面110を用いて設計時の機能が検討される。
製品の設計の工程Bでは、製造要件画面130を用いて設計時の機能検討がされる。
金型の設計の工程Cでは、製造要件画面130を用いて製造時の要件検討がされる。また、打上詳細画面120を介して金型の製造の工程D、第1の試作の工程E及び生産準備の工程Gとの間でコミュニケーションがとられる。
金型の製造の工程Dでは、打上一覧画面110を用いて不具合情報の確認がされ、不具合が登録されると打上詳細画面120を介して金型の設計の工程Cとの間でコミュニケーションがとられる。
【0049】
第1の試作の工程Eでは、打上詳細画面120を用いて不具合の登録がされると打上詳細画面120を介して金型の設計の工程Cとの間でコミュニケーションがとられる。
第2の試作の工程Fでは、打上一覧画面110を用いて不具合情報の確認がされ、打上詳細画面120を用いて対策が登録され、製造要件画面130を用いて対策の根拠が確認される。
生産準備の工程Gでは、打上一覧画面110を用いて過去の不具合情報の確認がされ、打上詳細画面120を用いて対策の詳細が確認され、打上詳細画面120を介して金型の設計の工程Cとの間でコミュニケーションがとられる。
量産の工程Hでは、打上一覧画面110を用いて不具合情報の確認がされ、打上詳細画面120を用いて不具合が登録され、製造要件画面130を用いて対策の根拠が確認される。
【0050】
<まとめ>
(1)工程間の手戻りについて
工程間にまたがる検討事項はおおよそ決まっている場合が多いが、実際の開発では製品開発個々の課題が生まれる。設計が知りえない知見を生産技術・金型部門に求める。生産技術・金型は時には無理難題の製品仕様や不成立要件、製造コストを下げるための設計変更要求を出す。これが担当者間や部門間で共有されず、時間と共に検討不足のまま開発は進行し、結果、打上詳細表示部に問題が顕在化したときに「手戻り」として前の工程に差し戻される。
【0051】
本実施形態に係る製品開発支援システム1では、打上詳細画面120のコメント欄121を用いて工程間・部門間の例えばQA(質問と答え)の記録を残し、情報を共有できるようにした。これにより、工程間の手戻りを防止することができる。
打上詳細画面120の所定の欄には、工程(部門)の誰がいつ発信した内容か、同様にどの工程(部門)の誰がいつ回答した内容かを記録し、画像乃至3Dデータを添付して形状を直感できるようにし、回答期日を記入して遅れを防止する。
また、打上一覧画面110には、検討事項を全て網羅して、要素別、部門別、担当者別に層別できるようにし、打上一覧画面110の表形式だけでなくグラフ画面150によるグラフによっても監視できる。
DR(デザインレビュー)の際に、検討結果一覧と残課題が、打上一覧画面110に係る情報にまとめられて報告ができる。
【0052】
(2)開発イベントでの合意形成
製品開発は通常開発イベント・スケジュールに従って進行する。その間、各部門/工程との整合を行うDR等の評価会を実施する。一般的には開発管理と呼ばれる。しかしながら、開発イベントの間に設定されたDRまでに検討が間に合わないことことが頻発する。原因は、DRまでに参加する工程の意見が集約されずに進行してしまうからである。開発イベントやDRの開催などの管理と共に、そのDR検討要素の進捗管理まで行われていないのが原因である。
【0053】
本実施形態に係る製品開発支援システム1では、各開発工程と部門・人の間の検討情報管理は打上詳細画面120及び製造要件画面130に係る情報により集約され管理され、共有できる。更に、打上一覧画面110から、DRイベントに沿って、DR検討事項がまとめ、表示管理される。また、各開発イベント管理では、そのDR情報をもとに開発進捗、懸案事項管理が行われる。
【0054】
以上より、開発イベントでの合意形成を行うことができる。
【0055】
(3)工程内の検討不足
加工工程内での設計・検討・製作・評価がベテラン・中堅・若手と能力にばらつきがあり、従来の俗人的な工程内設計・評価ではどうしても設計・検討品質にばらつきが出る。全工程のノウハウを終結するのが理想であるが、集めても工程ごとの検討は役割・目的が違うので必要である。しかしながら、各工程の検討項目を見ると、目線が違うだけで、検討項目としては共通している。要するに、検討項目は同じでも工程ごとの判断が異なることがわかる。これを同期的に行えれば課題は解消する。
各工程・部署にはベテランと呼ばれる熟練した設計者・エンジニアと中堅・若手と言われる非熟練者が存在する。そのスキル差を埋める手法は数億提案されている。多くの設計支援システムは「標準・規格」としてまとめ上げ、それを共有化しようとする試みである。この場合、その標準が新製品ごと、製造工法、材料変更等の変化に追いついて行かない大きな課題がある。
【0056】
本実施形態に係る製品開発支援システム1では、常にその最新化が図れるように、打上一覧画面110、打上詳細画面120、製造要件画面130に係る情報より、新標準・規格項目を抽出し、新たなナレッジとしてナレッジデータベース(蓄積部11)に蓄積することで、誰でも最新の情報を知ることができる。それは同様に量産段階における生産情報からも今起きている。本実施形態に係る製品開発支援システム1では、不具合やその対策を設計標準や生産技術標準にフィードバッグする回路を設けて、打上一覧画面110、打上詳細画面120に係る情報、例えば不具合事例などの生産情報をそのナレッジデータベース(蓄積部11)に組み入れて自動更新するように構成している。
【0057】
以上により、工程内の検討不足を解消することができる。
【0058】
次に、本発明の応用例を説明する。
本発明に係る製品開発支援システムは、部品単位のみならずアッセンブリーでの検討も可能である。典型的な一企業が扱うアッセンブリーを構成する部品の点数は総計年間15000を超え、それらの部品毎に60程度の検討事項が存在する。つまり、典型的な一企業において、15000×60程度の検討事項が存在する。しかも、通常、設計部門の人数1000人に対して生産技術部門の人数は200人程度であり、検討事項の全てを検討しきることは、現段階においはできていない。また、少子高齢化などで人員不足を抱える将来を考えると、尚更全て検討しきることはできなると考えられる。そこで、本発明に係る製品開発支援システムでは、検討項目を要素別単位に抽出して集計することで、要素ごとにまとまったナレッジとして表示できるようにする。
具体的には、図4に示した打上詳細画面120を構成するデータが検討事項の数、例えば15000×60程度、存在するが、これらのデータを要素別単位に抽出して集計する。例えば、これらのデータを、工程ごと、例えば金型製造工程、成形工程、塗装工程、組立加工程ごとに抽出して集計し、各工程の担当にはそれぞれの集計したデータからなる打上詳細画面120を表示する。
【0059】
このような抽出・集計は、以下のとおり行う。
打上詳細画面120における事象、例えば図4でいうと「ひけ」に対応する発生工程を図6に示したカルテ連帯画面140を構成するデータから判別する。ここでは、「ひけ」に対応する工程は「金型」である。すべての検討事項、つまり打上詳細画面120を構成するデータを工程で分類する。そして、各工程の担当にそれぞれ、分類したデータ、つまり抽出・集計したデータである打上詳細画面120を表示する。なお、工程が外部の業者、つまり外注である場合であっても外注がこのデータを表示可能とすれば、工場内の担当と同様と考えることができる。
【0060】
以上により、各担当は、自分の見るべき箇所に絞って検討をすることが可能となり、少人数も高品質な設計を実現することができる。
【0061】
<その他>
本発明は、上記の実施形態には限定されず、その技術思想の範囲内で様々な変形や応用をしての実施が可能であり、その実施の範囲も本発明技術思想に属する。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、金型の設計及び製造の工程を含む製品開発の工程に本発明を適用したものであったが、金型の設計及び製造の工程に代え或いは金型の設計及び製造の工程と共に、生産設備の設計及び設定の工程を含む製品開発の工程に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 :製品開発支援システム
11 :蓄積部
12 :表示データ生成部
20A~20I :コンピュータシステム
110 :打上一覧画面
120 :打上詳細画面
121 :コメント
111、138 :打上登録ボタン
130 :製造要件画面
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11