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特許7309183毛髪処理剤、酸・熱トリートメント処理方法、およびシャンプー・トリートメント処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】毛髪処理剤、酸・熱トリートメント処理方法、およびシャンプー・トリートメント処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20230710BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230710BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20230710BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230710BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20230710BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K8/365
A61K8/42
A61K8/34
A61Q5/04
A61Q5/12
A61Q5/02
A61K8/37
A61K8/44
A61K8/9794
A61K8/9789
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019158375
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038145
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 真也
(72)【発明者】
【氏名】大竹 真子
(72)【発明者】
【氏名】緑川 朋子
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218395(JP,A)
【文献】特表2016-530306(JP,A)
【文献】特表昭57-502166(JP,A)
【文献】特開2016-017069(JP,A)
【文献】特開2020-026389(JP,A)
【文献】特開2020-066575(JP,A)
【文献】国際公開第2021/037629(WO,A1)
【文献】特開2010-138075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリオキシル酸、グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物(A)5.0~40.0質量%と、
芳香族アルコール(B)0.1~8.0質量%と
エステル油(C)0.1~7.0質量%と、
トリメチルグリシンおよびグルタミン酸から選択される少なくとも1種の成分(E)とを含み、
pHが1.0~2.8である、毛髪処理剤。
【請求項2】
化合物(A)が、グリオキシロイルカルボシステインとグリオキシロイルケラチンアミノ酸との混合物(X)である、請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
植物エキス(D)0.00002~0.3質量%を含む、請求項1または2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
前記植物エキス(D)が、サトウキビエキス、バラ花エキス、カキタンニン、シャクヤクエキス、トウキエキス、ジオウエキス、センキュウエキス、およびショウガエキスから選択される少なくとも1種である、請求項に記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
前記芳香族アルコール(B)が、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、および2-ベンジルオキシエタノールから選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれか一項に記載の毛髪処理剤。
【請求項6】
前記エステル油(C)がアジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸エチルヘキシル、およびパルミチン酸エチルヘキシルから選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の毛髪処理剤。
【請求項7】
酸・熱トリートメント処理に用いる、請求項1~のいずれか一項に記載の毛髪処理剤
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の毛髪処理剤(ii)を毛髪に塗付する工程(II-1)、および
工程(II-1)の後、毛髪を加熱する工程(II-2)を有する、酸・熱トリートメント処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤、酸・熱トリートメント処理方法、およびシャンプー・トリートメント処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、縮毛およびパーマネントウェーブ処理による、毛髪のくせや広がりを抑えることが求められている。これまで、毛髪のくせや広がりを抑えるために、縮毛矯正剤を利用した縮毛矯正処理が広く行われてきた。しかし、縮毛矯正処理は毛髪へのダメージが大きいことが問題となっていた。そこで、ダメージの少ない、毛髪のくせや広がりを抑える新たな方法の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、(a)イノシトールリン酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種と、(b)エタノールとを含有し、25℃におけるpHが2.5~8.0であることを特徴とするちぢれ毛矯正剤が開示されている。また、特許文献2では、毛髪を直毛化する方法として、糖ラクトンと特定の陽イオン界面活性剤を含有するヘアトリートメント組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2005-373437号公報
【文献】特表2007-527878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の技術では、毛髪のくせを抑える効果が充分ではなかった。また、シャンプーを用いた洗浄を行うことで、毛髪のくせがすぐに元に戻ってしまうことも問題であった。
【0006】
このようなことから、本発明は、毛髪へのダメージがほとんどなく、縮毛またはパーマネントウェーブ処理による毛髪のくせや広がりを一定期間抑えることができ、かつ、毛髪の指通り、ツヤ、および柔らかさに優れる毛髪処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪処理剤は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[11]である。
【0008】
[1]グリオキシル酸、グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物(A)5.0~40.0質量%と、芳香族アルコール(B)0.1~8.0質量%とを含み、pHが1.0~2.8である、毛髪処理剤。
【0009】
[2]化合物(A)が、グリオキシロイルカルボシステインとグリオキシロイルケラチンアミノ酸との混合物(X)である、[1]に記載の毛髪処理剤。
[3]エステル油(C)0.1~7.0質量%を含む、[1]または[2]に記載の毛髪処理剤。
【0010】
[4]植物エキス(D)0.00002~0.3質量%を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
[5]前記植物エキス(D)が、サトウキビエキス、バラ花エキス、カキタンニン、シャクヤクエキス、トウキエキス、ジオウエキス、センキュウエキス、およびショウガエキスから選択される少なくとも1種である、[4]に記載の毛髪処理剤。
【0011】
[6]トリメチルグリシンおよびグルタミン酸から選択される少なくとも1種の成分(E)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
[7]前記芳香族アルコール(B)が、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、および2-ベンジルオキシエタノールから選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
【0012】
[8]前記エステル油(C)がアジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸エチルヘキシル、およびパルミチン酸エチルヘキシルから選択される少なくとも1種である、[3]に記載の毛髪処理剤。
【0013】
[9]酸・熱トリートメント処理に用いる、[1]~[8]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の毛髪処理剤(ii)を毛髪に塗付する工程(II-1)、および工程(II-1)の後、毛髪を加熱する工程(II-2)を有する、酸・熱トリートメント処理方法。
【0014】
[11]前記工程(II-1)の前に、アシルイセチオン酸塩およびココイルアルギニンエチルPCAを含む毛髪洗浄剤(i)で毛髪を洗浄する工程(I)を有する、[10]に記載の酸・熱トリートメント処理方法。
【0015】
[12][1]~[9]のいずれかに記載の毛髪処理剤(ii)を毛髪に塗付する工程(II-1)、および工程(II-1)の後、毛髪を加熱する工程(II-2)が行われた毛髪に対して、アシルイセチオン酸塩およびココイルアルギニンエチルPCAを含む毛髪洗浄剤(iii)で洗浄する工程(III)、および工程(III)の後、グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物を0.22~1.0質量%含む毛髪化粧料(iv)を毛髪に塗布する工程(IV)を行う、シャンプー・トリートメント処理方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、毛髪へのダメージがほとんどなく、縮毛またはパーマネントウェーブ処理による毛髪のくせや広がりを一定期間抑えることができ、かつ、毛髪の指通り、ツヤ、および柔らかさに優れる毛髪処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の毛髪処理剤について具体的に説明する。なお、本発明の毛髪処理剤は、毛髪処理剤(ii)とも記す。
【0018】
<毛髪処理剤>
本発明の毛髪処理剤は、グリオキシル酸、グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物(A)5.0~40.0質量%と、芳香族アルコール(B)0.1~8.0質量%とを含み、pHが1.0~2.8である。
【0019】
なお、本発明における各成分の含有量は、毛髪処理剤を100質量%とした場合の含有量を示している。
本発明の毛髪処理剤は、酸・熱トリートメント処理に用いることが好ましい。
【0020】
酸・熱トリートメント処理とは、一般的に、グリコール酸、α-リポ酸、レブリン酸、サリチル酸、乳酸等の酸を配合したトリートメントを毛髪に塗布した後、洗髪し、毛髪を乾かしてから、アイロン等によって熱を加えることを指す。なお、毛髪にアイロン等で熱を加える際は、任意で、毛髪を変形させて、くせを伸ばすことや、所望のウェーブ形成をすることもある。
【0021】
本発明の毛髪処理剤を酸・熱トリートメント処理に用いることによって、縮毛またはパーマネントウェーブ処理により湾曲した毛髪を一定期間直毛にすることができる。
本発明の毛髪処理剤は、縮毛またはパーマネントウェーブ処理による、くせや広がりがある毛髪に用いることが好ましく、くせや広がりを一定期間抑える効果に優れることから、縮毛に対して用いることがより好ましい。
【0022】
<化合物(A)>
本発明の毛髪処理剤は、グリオキシル酸、グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物(A)を5.0~40.0質量%、好ましくは6.0~40.0質量%、より好ましくは20.0~40.0質量%含む。
【0023】
化合物(A)が前記範囲内にあると、毛髪のくせや広がりを改善することができる。
化合物(A)が前記下限量より少ないと、毛髪のくせがあまり伸びず、前記上限量より多いと、剤型が保てなくなってしまう。
【0024】
本発明における化合物(A)としては、グリオキシル酸、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物がより好ましく、グリオキシロイルカルボシステインと、グリオキシロイルケラチンアミノ酸とを組み合わせて用いることが最も好ましい。
【0025】
化合物(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよく、化合物(A)として、後述の混合物(X)のみを用いてもよく、混合物(X)と、他の化合物(A)とを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明では、グリオキシロイルカルボシステインとグリオキシロイルケラチンアミノ酸との混合物を、混合物(X)と記す。
なお、混合物(X)としては、グリオキシロイルカルボシステインと、グリオキシロイルケラチンアミノ酸との質量比(グリオキシロイルカルボシステイン:グリオキシロイルケラチンアミノ酸)が、1:0.8~1:1.25であることが好ましく、1:0.9~1:1.15であることがより好ましい。
【0027】
また、混合物(X)を用いる場合には、本発明の毛髪処理剤は、グリオキシロイルカルボシステインおよびグリオキシロイルケラチンアミノ酸を、それぞれ独立に2.5~20.0質量%含むことが好ましく、3.0~20.0質量%含むことがより好ましく、10.0~20.0質量%含むことがより好ましい。
混合物(X)としては、例えば、ARTEC KBO-50(Artec Chemical社製)を使用することができる。
【0028】
<芳香族アルコール(B)>
本発明の毛髪処理剤は、芳香族アルコール(B)を0.1~8.0質量%、好ましくは0.1~5.0質量%、より好ましくは0.5~3.0質量%含む。
【0029】
芳香族アルコール(B)が前記範囲内にあると、毛髪への配合成分の浸透性が高まり、くせや広がりを抑える効果が高まる。
芳香族アルコール(B)が前記下限量より少ないと、毛髪のくせがあまり伸びず、毛先のまとまりもよくない。前記上限量より多いと、指通りが悪くなる。また、毛髪処理剤塗布後の毛髪を洗浄しても、毛髪に不快なにおいが残ってしまう。
【0030】
芳香族アルコール(B)が、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、および2-ベンジルオキシエタノールから選択される少なくとも1種であることが好ましく、ベンジルアルコール、およびフェノキシエタノールから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、配合成分の浸透性に優れることから、ベンジルアルコールがさらに好ましい。
芳香族アルコール(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
<pH>
本発明の毛髪処理剤は、pHが1.0~2.8、好ましくは1.0~2.5、より好ましくは1.3~2.0、最も好ましくは2.0である。
【0032】
pHが前記範囲内にあると、皮膚への刺激を少なくすることができる。pHが前記下限値より低いと、くせは伸びやすいが、皮膚、特に頭皮への刺激が強くなってしまう。前記上限値より高いと、毛髪のくせがあまり伸びず、ツヤもあまり出ない。また、毛髪処理剤塗布後の毛髪を洗浄しても、毛髪に不快なにおいが残ってしまう。
【0033】
本発明者らは、毛髪のくせの伸びやすさと、皮膚への刺激の軽減との両立を検討した結果、毛髪への配合成分の浸透性を高めることによって、毛髪のくせや広がりを改善しつつ、従来品よりも刺激の少ない毛髪処理剤を開発することに成功した。
【0034】
本発明の毛髪処理剤におけるpHの調節は、例えば、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、アルギニン、およびアンモニアを適宜配合することによって行うことができる。これらの中でも、安価であることから、pHの調節は、水酸化ナトリウムを適宜配合して行うことが好ましい。
なお、本発明の毛髪処理剤におけるpHの調節は、気泡が発生するため、モノエタノールアミンを配合しないことが好ましい。
【0035】
<エステル油(C)>
本発明の毛髪処理剤は、エステル油(C)を好ましくは0.1~7.0質量%、より好ましくは0.5~5.0質量%、最も好ましくは1.0~3.0質量%含む。
【0036】
エステル油(C)が前記範囲内にあると、毛髪への配合成分の浸透性を高めることができるため好ましい。また、仕上がりの指通りも良くなるため好ましい。
本発明の毛髪処理剤は、前記エステル油(C)がアジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸エチルヘキシル、およびパルミチン酸エチルヘキシルから選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、前記エステル油(C)がアジピン酸ジイソプロピルであることがより好ましい。
エステル油(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<植物エキス(D)>
本発明の毛髪処理剤は、植物エキス(D)を好ましくは0.00002~0.3質量%、より好ましくは0.0001~0.01質量%を含む。
【0038】
植物エキス(D)が前記範囲内にあると、毛髪処理剤塗布後の毛髪に残る不快なにおいを軽減できるため好ましい。
本発明の毛髪処理剤は、前記植物エキス(D)が、サトウキビエキス、バラ花エキス、カキタンニン、シャクヤクエキス、トウキエキス、ジオウエキス、センキュウエキス、およびショウガエキスから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0039】
本発明の毛髪処理剤は、配合成分由来の複雑なにおいを有することから、これらの中でも、サトウキビエキス、バラ花エキス、カキタンニン、シャクヤクエキス、トウキエキス、ジオウエキス、センキュウエキス、およびショウガエキスを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0040】
植物エキス(D)は、サトウキビエキス、カキタンニン、シャクヤクエキス、トウキエキス、ジオウエキス、センキュウエキス、およびショウガエキスとしては、これらの葉、根、茎、花等の部位の抽出物を用いることができる。
【0041】
サトウキビエキスとしては、例えば、さとうきび抽出物 MSX-245(三井製糖株式会社製)、バラ花エキスとしては、例えば、ガリカバラ花エキスを含む、ローズクリーン(大洋香料株式会社製)、カキタンニンとしては、例えば、パンシルC-15(リリース科学工業株式会社製)、シャクヤクエキス、トウキエキス、ジオウエキス、センキュウエキス、およびショウガエキスの混合物としては、例えば、シャクヤ根クエキス、トウキ根エキス、ジオウ根エキス、センキュウ根茎エキス、およびショウガ根茎エキスの混合物を含む、植物エキスOG-D1(小川香料株式会社製)を用いることができる。
植物エキス(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
<トリメチルグリシンおよびグルタミン酸から選択される少なくとも1種の成分(E)>
本発明の毛髪処理剤は、トリメチルグリシンおよびグルタミン酸から選択される少なくとも1種の成分(E)を含むことが好ましい。
【0043】
本発明の毛髪処理剤は、成分(E)を含むことによって、仕上がりの毛髪の柔らかさが向上することや、熱によって毛髪が硬くなることを抑制するため、好ましい。
本発明の毛髪処理剤は、成分(E)を好ましくは0.1~0.5質量%、より好ましくは0.3~0.5質量%含む。
【0044】
本発明の毛髪処理剤は、成分(E)として、トリメチルグリシンおよびグルタミン酸を合計で0.1~0.5質量%含むことが好ましく、0.3~0.5質量%含むことがより好ましい。
【0045】
本発明の毛髪処理剤は、成分(E)として、トリメチルグリシンおよびグルタミン酸を併用する場合には、トリメチルグリシンと、グルタミン酸との質量比(トリメチルグリシン:グルタミン酸)が、1:4~4:1であることが好ましい。
【0046】
本発明の毛髪処理剤は、成分(E)として、トリメチルグリシンおよびグルタミン酸を併用する場合には、例えば、トリメチルグリシンを0.1~0.5質量%、およびグルタミン酸を0.1~0.5質量%を含むことができ、トリメチルグリシンを0.3~0.5質量%、およびグルタミン酸を0.1~0.2質量%含むことが特に好ましい。
【0047】
《その他成分》
本発明の毛髪処理剤は、通常は水を含む。水の含有量は特に限定されず、使用する目的に応じて、適宜調整して用いることができる。水として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
【0048】
本発明の毛髪処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外に任意の成分を含有することができる。任意の成分としては、例えば、保湿剤、生薬類、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、帯電防止剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、増粘剤、乳化剤、乳化安定剤、界面活性剤、高級アルコール、シリコーン類、油剤、溶剤、および色素が挙げられる。
【0049】
本発明の毛髪処理剤は、任意の成分として、具体的には、乳化剤としてステアルトリモニウムクロリド;溶剤としてエタノール;乳化安定剤としてセタノールを用いることができる。
【0050】
なお、本発明の毛髪処理剤は、モノエタノールアミンを配合すると気泡が発生するため、モノエタノールアミンを含まないことが好ましい。本発明者らは、モノエタノールアミンは、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸と反応するため気泡が発生すると推察している。
【0051】
《製法等》
本発明の毛髪処理剤は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、加熱条件下で行ってもよい。加熱条件下で製造する場合の温度としては、例えば75~85℃が挙げられる。
【0052】
《剤型》
本発明の毛髪処理剤の状態としては、例えば、クリーム状、ミルク状などが挙げられ、毛髪に均一に塗布しやすい観点から、クリーム状が好ましい。
【0053】
本発明の毛髪処理剤の外観は、例えば、透明または不透明な外観が挙げられる。本発明の毛髪処理剤の各種配合成分を均一に混合する観点から、乳化状態であり、不透明な外観であり、油層と水層が分離していないことが好ましい。
【0054】
《使用方法》
本発明の毛髪処理剤は、毛髪に塗布して使用することができる。
本発明の毛髪処理剤は、例えばシャンプー等の毛髪洗浄剤で毛髪を洗浄した後の毛髪に塗布して使用することが好ましい。
【0055】
本発明の毛髪処理剤は、毛髪が乾燥している状態でも、濡れている状態でも塗布して使用することができるが、くせや広がりを改善する効果が高いことから、本発明における毛髪処理剤は、毛髪が乾燥している状態で塗布して使用することが好ましい。
【0056】
本発明の毛髪処理剤は、用途について特に制限はないが、酸・熱トリートメント処理に用いることがより好ましい。
本発明において、酸・熱トリートメント処理を酸・熱トリートメント処理(II)とも記す。本発明の酸・熱トリートメント処理方法は、毛髪処理剤(ii)を毛髪に塗付する工程(II-1)、および工程(II-1)の後、毛髪を加熱する工程(II-2)を有する。
【0057】
本発明の毛髪処理剤を酸・熱トリートメント処理に用いる場合、あらかじめ毛髪をシャンプー等の毛髪洗浄剤で洗浄することが好ましい。酸・熱トリートメント処理としては、例えば、下記のような方法で実施することができる。
【0058】
本発明の酸・熱トリートメント処理方法の一態様としては、アシルイセチオン酸塩およびココイルアルギニンエチルPCAを含む毛髪洗浄剤(i)で毛髪を洗浄する工程(I)、工程(I)の後、本発明の毛髪処理剤(ii)を毛髪に塗付する工程(II-1)、工程(II-1)の後、毛髪を加熱する工程(II-2)を有する。
【0059】
なお、前記アシルイセチオン酸塩およびココイルアルギニンエチルPCAを含む毛髪洗浄剤(i)は、工程(I)で用いる場合には毛髪洗浄剤(i)と記し、後述する工程(III)で用いる場合には、毛髪洗浄剤(iii)と記す。
【0060】
本発明の毛髪処理剤を用いて、酸・熱トリートメント処理(II)が行われた毛髪に対して行うことが可能な、毛髪の洗浄、トリートメントとしては、以下の処理が挙げられる。
【0061】
すなわち、本発明のシャンプー・トリートメント処理方法は、本発明の毛髪処理剤(ii)を毛髪に塗付する工程(II-1)、および工程(II-1)の後、毛髪を加熱する工程(II-2)が行われた毛髪に対して、アシルイセチオン酸塩およびココイルアルギニンエチルPCAを含む毛髪洗浄剤(iii)で洗浄する工程(III)、および工程(III)の後、グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物を0.22~1.0質量%含む毛髪化粧料(iv)を毛髪に塗布する工程(IV)を行う。
【0062】
前記アシルイセチオン酸塩およびココイルアルギニンエチルPCAを含む毛髪洗浄剤(i)および(iii)は、アシルイセチオン酸塩として、具体的にはココイルイセチオン酸ナトリウムを含むことが好ましい。毛髪洗浄剤(i)および(iii)は、アシルイセチオン酸塩およびココイルアルギニンエチルPCA以外の成分として、通常シャンプー剤に用いられる成分を含んでいてもよい。
【0063】
前記グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物を0.22~1.0質量%含む毛髪化粧料(iv)は、具体的には、グリオキシロイルカルボシステインと、グリオキシロイルケラチンアミノ酸とを組み合わせて用いることが好ましい。毛髪化粧料(iv)は、前記グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物以外の成分として、通常トリートメント剤に用いられる成分を含んでいてもよい。
【0064】
本発明の毛髪処理剤(ii)を毛髪に塗付する工程(II-1)では、本発明の毛髪処理剤(ii)を毛髪に塗付したまま10~20分静置することが好ましい。
工程(II)では、工程(II-1)の後、毛髪を加熱する工程(II-2)の前に、毛髪を洗浄して乾燥させることが好ましい。
【0065】
毛髪を加熱する工程(II-2)は、ヘアアイロンを用いて毛髪を加熱することが好ましい。なお、ヘアアイロンの温度は、好ましくは170~210℃、より好ましくは178~182℃である。ヘアアイロンとしては、例えば、ADST Premium DS2(株式会社ハッコー)を用いることができる。
【0066】
毛髪を加熱する工程(II-2)において、毛髪を加熱する方法としては、例えば、乾いた毛髪の根元から毛先に向かって、ヘアアイロンを2~15秒接触させることが好ましく、接触させる回数は、好ましくは1~10回、より好ましくは2~4回である。
【0067】
なお、毛髪にヘアアイロンを接触させて加熱する一連の処理を、アイロンスルー処理ともいう。
【実施例
【0068】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0069】
<実施例1~57、比較例1~4>
実施例および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0070】
【表1】
【0071】
表2~表9に示す処方で各成分を混合することにより毛髪処理剤を製造し、(1)伸長度および(2)伸長度の評価、ならびに(3)~(10)の官能評価の試料とした。
(1)伸長度および(2)伸長度の評価は、必須の評価項目とし、後述の条件で毛束を前処理した後、酸・熱トリートメント処理を行った。
(3)~(10)の官能評価は、任意の評価項目とした。(3)~(7)、および(10)は後述の条件でウィッグをブリーチ処理した後、酸・熱トリートメント処理を行って官能評価の試料とした。(8)および(9)の官能評価は、(1)伸長度の評価で使用した毛束の半分を用いて官能評価の試料とした。
【0072】
(1)伸長度および(2)伸長度の評価、ならびに(3)~(10)の官能評価の結果は、表2~表9に示す。なお、表中の処方の数値は、毛髪処理剤を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
【0073】
〔毛束の前処理〕
縮毛またはパーマネントウェーブ処理された毛髪の再現として、毛束の前処理を行った。長さを37.5cmに揃えた未処理毛束(ビューラックス社製、BS-B3A)2gに、カーリング料(株式会社アリミノ、コスメカールEX、コスメカールアフターローション)を用いてパーマ処理を行い、ウェービー毛を調製した。ウェービー毛の長さは、乾燥状態で27.5cmであった。
【0074】
〔毛束の酸・熱トリートメント処理〕
前処理した毛束2gに表2~表9に示す各毛髪処理剤を10g塗布し15分放置後、水洗し、ドライヤーで乾燥後、180℃に設定したヘアアイロン(株式会社ハッコー、ADST Premium DS2、180℃)を用いて、根元から毛先まで10秒間かけてアイロンスルーを3回行った。このときの毛束の状態について(1)伸長度、および(2)伸長度の評価を行った。
【0075】
〔ウィッグのブリーチ処理〕
室温(25℃)の条件下で、トップ40cm、ネープ25cmのウィッグ(東京チャーム社製No.55デザインカットモデル)をブリーチ処理して使用した。
【0076】
ブリーチ処理は、アリミノ社製カラーストーリ―アドミオ14ライトナーを使用した。所定の2剤と組み合わせた薬剤を塗布し、45℃の恒温槽の中で15分放置した後、40℃前後の温水でウィッグの毛髪をよくすすいだ。
【0077】
〔ウィッグの酸・熱トリートメント処理〕
表2~表9に示す各毛髪処理剤を3g手にとり、手のひらで伸ばした後、ブリーチ処理したウィッグのワンパネル(幅8cm、厚さ2cm)に塗布し、15分静置した。その
後水洗し、ドライヤーで乾燥後、ヘアアイロン((株式会社ハッコー、ADST Premium DS2、180℃)を用いてアイロンスルー処理(トップ部分は、根元から毛先まで約12秒の速さ、ネープ部分は、根元から毛先まで約6秒の速さ)を3回行った。このときのウィッグの状態について(3)~(7)、および(10)の官能評価を行った。
【0078】
(3)~(10)の官能評価は、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ評価を行った。評価は項目ごとに記載した下記の評価点基準による10名の平均点を算出し、平均点に基づいて以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0079】
(1)伸長度
調製したウェービー毛に対して、酸・熱トリートメント処理を行い、長さを計測した。
なお、ウェービー毛は、長さ27.5cm、重さ2gであった。ウェービー毛を調製する前の、未処理毛束は、長さ37.5cm、重さ2gであった。ウェービー毛に酸・熱トリートメント処理を行った毛束は、長さbcm(各種毛髪処理剤を用いた酸・熱トリートメント処理後に計測)とし、重さ2gであった。
【0080】
下記式(A)を用いて、伸長度Eを算出した。
伸長度E(%)=((b-27.5)/(37.5-27.5))×100・・・式(A)
【0081】
(2)伸長度の評価
伸長度E(%)の値から、くせのおさまりについて、以下の評価基準に従って評価した。
85%以上 :非常に良い、◎◎
70%以上85%未満 :とても良い、◎
50%以上70%未満 :良い、〇
15%以上50%未満 :あまり良くない、△
15%未満 :悪い、×
【0082】
(3)仕上がり後の毛先のまとまり
酸・熱トリートメント処理後のウィッグについて、毛先のまとまり具合を観察し、目視で評価を行った。
4点:非常にまとまりがある
3点:まとまりがある
2点:あまりまとまりがない
1点:全くまとまりがない
【0083】
(4)仕上がり後の毛髪の指通り
酸・熱トリートメント処理後のウィッグに手ぐしを通し、指通りの評価を行った。
4点:非常に良い
3点:良い
2点:悪い
1点:非常に悪い
【0084】
(5)仕上がり後の毛髪のツヤ
酸・熱トリートメント処理後のウィッグについて、ツヤを観察し、目視で評価を行った。
4点:非常に良い
3点:良い
2点:悪い
1点:非常に悪い
【0085】
(6)仕上がり後の毛髪の柔らかさ
酸・熱トリートメント処理後のウィッグを手で触り、柔らかさについて評価を行った。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:あまり柔らかくない
1点:硬い
【0086】
(7)7回シャンプー後のまとまりの持続性
酸・熱トリートメント処理後のウィッグを、シャンプー(株式会社アリミノ、シェルパD-1シャンプー)2gを用いて洗浄し、ドライヤーで乾燥させた。シャンプーを用いた洗浄後にドライヤーで乾燥させる行為を繰り返し、合計7回行ったものを試料とした。この試料と、(3)において評価した試料とを比較し、毛先のまとまり具合について目視で評価を行った。
4点:非常にまとまりがある
3点:まとまりがある
2点:あまりまとまりがない
1点:全くまとまりがない
【0087】
(8)および(9)酸・熱トリートメント処理を3回した時のくせのおさまり、および柔らかさ
(1)で使用した毛束の半分を用いて、酸・熱トリートメント処理を繰り返し、酸・熱トリートメント処理を合計3回行った。その後、シャンプー(株式会社アリミノ、シェルパD-1シャンプー)1gを用いて洗浄し、ドライヤーで乾燥させた。シャンプーを用いた洗浄後にドライヤーで乾燥させる行為を繰り返し、合計7回行ったものを試料とした。この試料と、(1)で使用した毛束の残り半分について、シャンプーを用いた洗浄後にドライヤーで乾燥させる行為を繰り返し、合計7回行った試料とを比較し、(8)くせのおさまり、および(9)柔らかさについて評価を行った。
【0088】
(8)くせのおさまり
4点:非常にくせがおさまっている。
3点:おさまっている。
2点:あまりおさまっていない。
1点:全くおさまっていない。
【0089】
(9)柔らかさ
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:あまり柔らかくない
1点:硬い
【0090】
(10)仕上がり後のにおい
酸・熱トリートメント処理後のウィッグに鼻に近づけて、においの評価を行った。
4点:全くにおいがしない
3点:あまりにおいがしない
2点:においがする
1点:かなりにおいがする
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
実施例1~57で製造した毛髪処理剤は、(1)~(10)の評価項目において良好な結果となった。実施例57は、特に良好な結果となった。
本発明の毛髪処理剤は、毛髪へのダメージがほとんどなく、縮毛またはパーマネントウェーブ処理による毛髪のくせや広がりを一定期間抑えることができ、かつ、毛髪の指通り、ツヤ、および柔らかさに優れる毛髪処理剤であることがわかる。
【0100】
比較例1で製造した毛髪処理剤は、グリオキシル酸、グリオキシル酸水和物、グリオキシロイルカルボシステイン、およびグリオキシロイルケラチンアミノ酸から選択される少なくとも1種の化合物(A)が規定量より少ないため、くせのおさまりが悪かった。また、毛先にあまりまとまりがなく、酸・熱トリートメント処理を3回した時のくせのおさまりの持続性も悪かった。
【0101】
比較例2で製造した毛髪処理剤は、芳香族アルコール(B)が規定量より少ないため、くせのおさまりが悪かった。また、毛先にあまりまとまりがなく、7回シャンプー後のまとまりの持続性、および酸・熱トリートメント処理を3回した時のくせのおさまりの持続性も悪かった。
【0102】
比較例3で製造した毛髪処理剤は、芳香族アルコール(B)が規定量より多いため、くせのおさまりが悪かった。また、毛先にあまりまとまりがなく、7回シャンプー後のまとまりの持続性、および酸・熱トリートメント処理を3回した時のくせのおさまりの持続性も悪かった。
【0103】
比較例4で製造した毛髪処理剤は、pHが規定値より高いため、くせのおさまりが悪かった。また、仕上がり後の毛髪のツヤが悪く、および酸・熱トリートメント処理を3回した時のくせのおさまりの持続性も悪かった。