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  • 特許-ウェハー分割装置 図1
  • 特許-ウェハー分割装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】ウェハー分割装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230710BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20230710BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20230710BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/70
B23K26/53
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019201105
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021077681
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】納谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】高澤 正和
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-62949(JP,A)
【文献】特開2017-220631(JP,A)
【文献】特開2019-161037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0301343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/70
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットの端面からインゴット内部の所定の深さにレーザー光を集光させながら前記レーザー光を前記インゴット端面に沿って相対移動させることで前記インゴットとウェハーとの間に分割層を形成した後のウェハー分割装置であって、
前記インゴットの固定手段と、ウェハー側の引張部とを有し、
前記引張部は、前記分割層に分割荷重を加えるための分割駆動部に連結してあり、前記分割駆動部は前記分割層に形成される分割面に対して、一方の端部を支点にして他方の端部に開き方向のモーメントが生じるものであることを特徴とするウェハー分割装置。
【請求項2】
前記分割駆動部は、前記引張部の引張り方向に対してオフセット配置してあることを特徴とする請求項1記載のウェハー分割装置。
【請求項3】
前記インゴットの固定手段は、固定保持具に支持されていて、
前記固定手段は前記固定保持具に対してオフセット配置してあることを特徴とする請求項1記載のウェハー分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットから基板状のウェハーをスライシング分割するための分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Siウェハー,SiCウェハーやGaNウェハー等、劈開性を有し、単一結晶配向を持つ単結晶あるいはエピタキシャル結晶の半導体材料からなるウェハーは、従来円柱状のインゴットから薄い円盤状にワイヤソー等により切断されていたが、その切り代分が材料損失となるだけでなく、ワイヤソーの接触加工によるひずみや加工ダメージも加わる。
また、SiCのように硬度が大きい半導体材料になると、切断そのものが困難となる。
【0003】
そこで例えば、特許文献1には基板表面(インゴット端面)からレーザー光を照射し、基板内部にレーザー光を集光させながらこのレーザー集光手段と、基板を相対的に移動させて改質層を形成することで、ウェハーをスライスする方法を開示する。
しかし、同公報に開示するスライス方法にあっては、インゴットの側壁に改質層を露出させるとともに、その部分に溝を形成し、この溝に楔状圧入材を圧入しなければならないため、装置及び工程が複雑で工数も大きい。
【0004】
また、例えば特許文献2には、SiCインゴットの端面からレーザー光線を入射させて内部に集光させながら、SiCインゴットと相対的に移動させることで、炭素とケイ素とが混在する層を形成し、ウェハーをインゴットから分割させる技術を開示するが、インゴットの上端部の一部を加熱することで、その部分に反りを発生させなければならないものであり、やはり工程が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5509448号公報
【文献】特開2015-223589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は,インゴットからウェハーを分割製造するための構造が簡単で、生産性の高いウェハー分割装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るウェハー分割装置は、インゴットの端面からインゴット内部の所定の深さにレーザー光を集光させながら前記レーザー光を前記インゴット端面に沿って相対移動させることで前記インゴットとウェハーとの間に分割層を形成した後のウェハー分割装置であって、前記インゴットの固定手段と、ウェハー側の引張部とを有し、前記引張部は、前記分割層に分割荷重を加えるための分割駆動部に連結してあり、前記分割駆動部は前記分割層に形成される分割面に対して、一方の端部を支点にして他方の端部に開き方向のモーメントが生じるものであることを特徴とする。
【0008】
このように分割面に対してインゴットとウェハーとの間に相互のモーメントが生じると、
分割面の一方の端部を支点にして他方の端部に加わる開き方向の力により、分割層に沿って順次、亀裂が伝播するようにスライシングされるので分割面が均一になりやすく、従来に比較して小さい分割力で済む。
【0009】
分割面にモーメントが生じるものであれば、分割荷重を加える手段に制限はない。
例えば、前記分割駆動部は、前記引張部の引張り方向に対してオフセット配置してある態様、前記インゴットの固定手段は、固定保持具に支持されていて、前記固定手段は前記固定保持具に対してオフセット配置してある態様、この場合に分割駆動部側と固定手段側の両方ともオフセット配置してあってもよい。
【0010】
ここで、インゴットから薄い基板からなるウェハーを分割スライシングするための上記分割層を形成する手段は、レーザー光をインゴットの内部に集光させながら相対移動させる公知の手段を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、インゴットからウェハーを分割する際に、分割面に分割荷重を負荷するだけでなく、モーメント力を作用させたので、分割面の一方から順次剥離するようになるため、簡単な構造で短時間にウェハーを分割製造することができる。
特にインゴットの固定手段に対して、分割駆動部をオフセット配置した構造の場合には、装置の構造が簡単になり連続生産も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】分割装置の構造例を模式的に示す。(a)は軸支部に沿って見た正面図、(b)はその側面図、(c)はA-A線断面図を示す。
図2】ウェハーとインゴットの分割面付近の拡大図を示す。
図3】インゴットの固定手段を固定保持具に対してオフセット配置した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るインゴットからウェハーを分割スライシングする分割装置の構造例を、以下図に基づいて説明する。
本発明は、分割装置に特徴があり、インゴットの端面から所定の内部深さに集光させながらレーザー光の集光手段をインゴット端面に沿って相対移動させることで、インゴットのウェハーとの間に分割層を形成することは公知の技術を適用できるので、工程の内容は省略する。
【0014】
分割装置の実施例1を、図1に示す。
装置のベース部(図示省略する)に取り付けた固定保持具11の上部にシャフト部12の下部側を、軸部材を用いて軸支した軸支部13を形成してある。
図1(a),(c)に示すように、固定保持具11に凹部を形成し、凹部の内周面とシャフト部12との間に所定のクリアランスdを設けることで、図1(c)では左右方向に所定の範囲でシャフト部12が回動自在になっている。
このシャフト部12が垂直状態に起立した中心線の上側延長線上に、分割駆動部15を配置し、分割駆動部15が上昇及び下降制御されている。
本明細書では、シャフト部12が垂直状態で軸支部13の中心と分割駆動部の中心に沿って、垂直中心線を分割駆動軸線Dと表現する。
シャフト部12の上部側には、上記分割駆動軸線Dよりも図1(a)では、右側にオフセットさせた位置にインゴットPを固定する固定手段14aを配置した水平方向の保持部14を連結固定してある。
一方、分割駆動部15の下部側には、インゴットPの固定手段14aに対向する位置に、ウェハーPの吸着手段16aを配置した。
吸着手段16aは引張部16に設けてあり、この引張部16は水平方向のアーム17を介して分割駆動部16に連結してある。
【0015】
インゴットPとウェハーPとの間に分割層を有し、固定手段14a及び吸着手段16a付近の拡大図を図2に示す。
図1(a)に示すように、分割駆動軸線に沿って分割駆動部15を上昇させることで、引張部16及び吸着手段16aを介して、ウェハーPに分割方向の引張荷重を加えると、図1(c)に矢印に示すように上記分割荷重の他に、シャフト部12の回動方向にモーメント力Mが出現する。
これにより、ウェハーとインゴットの分割面に図2では、中心線に対して外側の端部aを支点にして内側の端部bにモーメント力Mの垂直成分力fが作用するようになり、ウェハーPが短時間で簡単に分割及び分離できた。
本実施例では、分割駆動部の軸線に対して引張部(吸着手段)をオフセット配置し、インゴットの固定手段を固定保持具の軸線に対してオフセット配置した例になっているが、固定手段は固定保持具の軸線上に設けてウェハーの引張部のみ、分割駆動部に対してオフセット配置してもよい。
【0016】
上記実施例では、シャフト部12の下部側を軸支することで、モーメント力Mが出現し易いようにした例であるが、このシャフト部12を弾性材で製作することでも同様の作用が出現する。
【0017】
図3に分割装置の実施例2を示す。
本実施例は、固定保持具11の上部側に水平方向の保持部14を連結することで、インゴットの固定手段14aを、この固定保持具に対してオフセット配置した例であり、ウェハーPの吸着手段16aを分割駆動部15の軸線上に設けてある。
【符号の説明】
【0018】
11 固定保持具
12 シャフト部
13 軸支部
14 保持部
14a 固定手段
15 分割駆動部
16 引張部
16a 吸着手段
D 分割駆動軸線
インゴット
ウェハー
図1
図2
図3