(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】関心のある作用物質の精製
(51)【国際特許分類】
C07K 1/36 20060101AFI20230710BHJP
C07K 1/22 20060101ALN20230710BHJP
C07K 1/34 20060101ALN20230710BHJP
【FI】
C07K1/36
C07K1/22
C07K1/34
(21)【出願番号】P 2019553002
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 IL2018050372
(87)【国際公開番号】W WO2018178991
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504000281
【氏名又は名称】イッサム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ショセヨフ,オデド
(72)【発明者】
【氏名】ヤアリ,アミット
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】松本 淳
【審判官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-517765号公報(JP,A)
【文献】特開2005-046031号公報(JP,A)
【文献】特表平11-509738号公報(JP,A)
【文献】特表平08-509127号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体混合物から異種タンパク質(HP)を単離する方法であって、
・少なくとも1つの糖結合モジュール及び少なくとも1つのHPのキメラ(CBM-HPキメラ)を含む粗混合物を第1ろ過膜に通して、前記CBM-HPキメラを含む透過液を得ることと;
・前記CBM-HPキメラをセルロースナノ結晶(CNC)と接触させて、前記CBM-HPキメラと相互作用させ、CBM-HP-CNC複合体を含む混合物を得ることと;
・前記CBM-HP-CNC複合体を含む前記混合物を第2ろ過膜に通して、前記CBM-HP-CNC複合体を含む保持液を得ることと;
・前記CBM-HP-CNC複合体から、前記HP及び/又は前記CBM-HPキメラを分離することと
;
を含み、
同じ、又は異なる前記第1及び第2ろ過膜が、前記CBM-HPキメラを透過させ、前記CBM-HP-CNC複合体の透過を妨げるように選択される細孔径を有する、方法。
【請求項2】
粗混合物に前記CBM-HPキメラを得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粗混合物が核酸、タンパク質、炭水化物、ポリフェノール及び巨大非重合体分子から選択される、少なくとも1つの他の物質をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粗混合物が、細胞培養物に含有される細胞の前記細胞膜を破壊することにより形成されるホモジネートである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記CBM-HPキメラが、宿主細胞において作製されるか、又は発現する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記CBM-HPキメラが植物細胞において作製される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記CBM-HPキメラを単離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記HPを単離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記CBM-HPキメラ、及びその後そこから前記HPを単離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CBMがセルロース結合ドメイン(CBD)である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2ろ過膜が同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記CBM-HPキメラがCBD-HPキメラである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記HPが関心のある作用物質を単離する方法における使用に好適な形態で単離される、請求項
8に記載の方法。
【請求項14】
液体混合物から関心のある作用物質(AOI)を単離する方法であって、
・請求項1に記載の方法により、CBM-HPキメラを得ることと;
・少なくとも1つのAOIを含む液体培地を前記CBM-HPキメラを用い、前記少なくとも1つのAOI及びCBM-HPキメラ間に会合を生じさせる条件下で処理して、CBM-HP-AOI複合体を含む混合物を得ることと;
・CNCを前記CBM-HP-AOI複合体を含む混合物に添加して、CNC-CBM-HP-AOI複合体を形成することと;
・前記CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む前記混合物を、前記CNC-CBM-HP-AOI複合体を透過させない細孔径を有するろ過膜に通して、前記CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む保持液を得ることと;
・前記複合体から前記AOIを単離することと、を含む方法。
【請求項15】
液体混合物から関心のある作用物質(AOI)を単離する方法であって、
・少なくとも1つのAOIを含む液体培地をCBM-HPキメラを用い、前記少なくとも1つのAOI及びCBM-HPキメラ間に会合を生じさせる条件下で処理して、CBM-HP-AOI複合体を含む混合物を得ることと;
・CNCを前記CBM-HP-AOI複合体を含む前記混合物に添加して、CNC-CBM-HP-AOI複合体を形成することと;
・前記CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む前記混合物を、前記CNC-CBM-HP-AOI複合体を透過させない細孔径を有するろ過膜に通して、前記CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む保持液を得ることと;
・前記複合体から前記AOIを単離することと、を含む方法。
【請求項16】
前記AOIを含む培地を得ることをさらに含み、前記AOIがこの培地から単離される、請求項
14又は
15に記載の方法。
【請求項17】
前記CBM-HPキメラを含む培地を得ることをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記CBMがセルロース結合ドメイン(CBD)である、請求項
14又は
15に記載の方法。
【請求項19】
前記CBM-HPキメラがCBD-HPキメラである、請求項
14又は
15に記載の方法。
【請求項20】
前記CBM-HP-AOI複合体を単離することを含む、請求項
14又は
15に記載の方法。
【請求項21】
前記CNC-CBM-HP-AOI複合体の形成後、前記CBM-HPキメラを単離することをさらに含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項22】
前記CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む前記混合物が、前記CNC-CBD-HP-AOI複合体から前記AOIを単離する前に、透析又はろ過によりさらに精製される、請求項
14又は
15に記載の方法。
【請求項23】
同じ、又は異なる前記第1ろ過膜及び前記第2ろ過膜が、それぞれ0.2μmから60kDa分子量カットオフの間の細孔径を有する、請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1及び第2ろ過膜が同じである、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記ろ過膜が、0.2μmから60kDa分子量カットオフの間の細孔径を有する、請求項
14~
24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記細孔径が0.45μmから60kDa分子量カットオフの間である、請求項
23又は
25に記載の方法。
【請求項27】
前記細孔径が、1μmから50kDa分子量カットオフの間である、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記細孔径が0.2μmである、請求項
26に記載の方法。
【請求項29】
前記CBMがCBDであり、CBM2~13、CBM16~17、CBM20~28、CBM40~46及びCBM61~67から選択される、請求項1~
28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記CBDがCBD機能性誘導体である、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記HPが1つ以上のCBDと会合する、請求項1~
30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記CBDが1つ以上のHPと会合し、各HPが任意に互いに異なり得る、請求項1~
31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記キメラの前記HP部が、さらなるタンパク質と融合するか、又は結合する、請求項1又は
13に記載の方法。
【請求項34】
前記CBM-HPキメラの前記HP部が、その後にCBMと結合する他の要素とのキメラとして調製される、請求項1~
33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記CBM-HPキメラにおいて、前記HPが、任意に前記CBMに直接付着する、請求項1~
34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記CBM-HPキメラの前記HPが、他のドメイン又は相互作用により前記CBMと結合する、請求項
35に記載の方法。
【請求項37】
前記
CBM-HPキメラが少なくとも1つのリンカーを含む、請求項
35に記載の方法。
【請求項38】
前記CBMが、GenBank番号EEU00265.1を有するCBDである、請求項1~
37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記CNCが、少なくとも50%の結晶化度を有することを特徴とする、請求項1~
38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記CNCが単結晶である、請求項
39に記載の方法。
【請求項41】
前記CNCが最大でも長さ約1,000μmである、請求項1~
40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記AOIがHPとの親和性を有する、請求項
13又は
14に記載の方法。
【請求項43】
前記AOIが、前記HPが抗体、受容体、酵素、基質又はその断片であるアミノ酸系作用物質;前記HPが核酸結合タンパク質又はその断片である核酸系作用物質;前記HPと親和結合することができるペプチド部分を有する糖類、脂肪酸あるいは有機分子から選択される、請求項
42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ナノ結晶セルロース(CNC)のタンパク質-セルロース結合ドメインキメラに対する親和結合を用い、例えば液体細胞培養混合物から、タンパク質などの物質を単離する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
CBMは、様々な有機体に見出される糖結合モジュールである(非特許文献1)。セルロース結合ドメイン(CBD)は、CBMの一例である。CBDclos(非特許文献2)は、細菌のクロストリジウムセルロボランス(Clostridium cellulovorans)から単離されるタンパク質ドメインである。CBDclosは、セルロースと強く結合し、安定しているが可逆的な結合を形成する。この結合はせん断力、並びに酸性及び塩基性pH(pH4~10)、塩度(10mMから飽和NaCl)の穏やかな変化に耐えることができる。CBDは、以前からセルロースカラムによるタンパク質精製に用いられている(非特許文献6)。しかしながら、表面積が広いクロマトグラフィに好適な利用できるセルロースビーズ、高流速及び高圧に耐える能力の欠如により、その適用は限定される。
【0003】
ナノ結晶セルロース(CNCまたはNCC))粒子は小さく(~300nm)、様々な方法によりセルロースから作製される高アスペクト比の晶子である(非特許文献3~5)。各粒子は、10個超のCBDclosドメインと結合することができる。この物質は無毒で、完全に安全である。pH変化(1~13)及び高せん断力に対してもかなり安定しており、安価で、広く利用できる物質である。
【0004】
米国特許第5856201号明細書(特許文献1)は、結晶セルロースに対する、並びにCBD及び第2のタンパク質の融合タンパク質に対するセルロース結合ドメイン(CBD)タンパク質の高親和性、並びにこの融合産物を用いたアフィニティ分離の方法を開示している。
【0005】
クロスフローろ過プロセスは、単純な(デッドエンド)膜ろ過プロセスを改良したものである。膜表面に垂直の高せん断乱流を起こすことにより、膜表面に形成するゲル層を除くことができるため、流束及び作業時間を改善することができる(特許文献2)。膜クロスフローろ過は、乳製品、果物及び野菜ジュース、飲料、ビール、ワインなどの浄化及び濃縮のため、食品産業において非常に大規模(100m3/日)に使用されている。さらなる大規模な適用は血液製剤及び廃棄物処理である(特許文献2)。膜カットオフに応じて、クロスフローろ過膜は、塩イオン(逆浸透)から砂粒子まで、幅広いサイズの粒子を除去することができる。非常に乾燥した固形分(60gt/100gr-1)及び粘度で、動作することもできる(非特許文献7)。しかし、膜プロセスは、著しく大きさが異なる微粒子又はタンパク質の分離のため、主に比較的粗い上流の精製段階に用いられる。効率的な分離には、分離された実体間に、1桁(10倍)のサイズ差が必要とされる(非特許文献8)。このため、類似の大きさのタンパク質又は粒子の集団から特定の実体を分離することが必要とされる場合、この方法を下流の精製及び研磨に用いることは制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5856201号明細書
【文献】Marinaccio, P. J.; Repetti, R. V., Cross-flow filtration. Google Patents: 1989.
【非特許文献】
【0007】
【文献】Shoseyov, O.; Shani, Z.; Levy, I., Carbohydrate binding modules: biochemical properties and novel applications. Microbiology and Molecular Biology Reviews 2006, 70 (2), 283-295.
【文献】Goldstein, M. A.; Takagi, M.; Hashida, S.; Shoseyov, O.; Doi, R.; Segel, I., Characterization of the cellulose-binding domain of the Clostridium cellulovorans cellulose-binding protein A. Journal of bacteriology 1993, 175 (18), 5762-5768.
【文献】Charreau, H.; L Foresti, M.; Vazquez, A., Nanocellulose patents trends: a comprehensive review on patents on cellulose nanocrystals, microfibrillated and bacterial cellulose. Recent patents on nanotechnology 2013, 7 (1), 56-80.
【文献】Rebouillat, S.; Pla, F., State of the art manufacturing and engineering of nanocellulose: a review of available data and industrial applications. 2013.
【文献】Peng, B.; Dhar, N.; Liu, H.; Tam, K., Chemistry and applications of nanocrystalline cellulose and its derivatives: a nanotechnology perspective. The Canadian Journal of Chemical Engineering 2011, 89 (5), 1191-1206.
【文献】Shpigel, E.; Goldlust, A.; Eshel, A.; Ber, I. K.; Efroni, G.; Singer, Y.; Levy, I.; Dekel, M.; Shoseyov, O., Expression, purification and applications of staphylococcal Protein A fused to cellulose‐binding domain. Biotechnology and applied biochemistry 2000, 31 (3), 197-203.
【文献】Daufin, G.; Escudier, J.-P.; Carrere, H.; Berot, S.; Fillaudeau, L.; Decloux, M., Recent and emerging applications of membrane processes in the food and dairy industry. Food and Bioproducts Processing 2001, 79 (2), 89-102.
【文献】Cheryan, M., Ultrafiltration and Microfiltration Handbook. Taylor & Francis: 1998.
【文献】Azevedo, A. M.; Rosa, P. A.; Ferreira, I. F.; Aires-Barros, M. R., Chromatography-free recovery of biopharmaceuticals through aqueous two-phase processing. Trends in biotechnology 2009, 27 (4), 240-247.
【文献】Thommes, J.; Etzel, M., Alternatives to chromatographic separations. Biotechnology progress 2007, 23 (1), 42-45.
【文献】Forsgren, A.; Sjoquist, J., “Protein A” from S. aureus I. Pseudo-immune reaction with human γ-globulin. The Journal of Immunology 1966, 97 (6), 822-827.
【文献】Updyke, T. V.; Nicolson, G. L., Immunoaffinity isolation of membrane antigens with biotinylated monoclonal antibodies and immobilized streptavidin matrices. Journal of immunological methods 1984, 73 (1), 83-95.
【文献】Stols, L.; Gu, M.; Dieckman, L.; Raffen, R.; Collart, F. R.; Donnelly, M. I., A new vector for high-throughput, ligation-independent cloning encoding a tobacco etch virus protease cleavage site. Protein expression and purification 2002, 25 (1), 8-15.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高純度、従って高選択性が必要とされるクロマトグラフィ分離プロセス(カラムクロマトグラフィ)が利用されており、基本的にバイオ医薬品業界におけるタンパク質分離の主力である。しかし、クロマトグラフィプロセスは高価(全下流コストの>70%を占める(非特許文献9))で、長時間を要し、上流で複雑な調製を必要とする。規模拡大のコスト及び複雑さのため、高容量プロセスには適さない。大量の高純度タンパク質の必要性が増すに伴い、代替精製方法の需要が増している(非特許文献10)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、糖結合モジュール(CBM)及びナノ結晶セルロース(CNC)の特徴を組み合わせて利用する方法を開示する。この方法は、任意に培養下に存在するか、又は作製される特定の関心のある作用物質(AOI)、例えばタンパク質(POI-関心のあるタンパク質)を「取り出す」ものである。本方法は、細胞培養下における、異種タンパク質(HP)に付着したCBM、又はHPへの強い親和性を有するアフィニティドメインを含むCBM-タンパク質キメラの発現、その後の一連のろ過工程に基づいている。CBM-HPキメラのCBM部にCNCが付着することで、最終的に所望のタンパク質を単離することができる。ここに記載するように、タンパク質は純粋、又は実質的に純粋な形態で単離され得るか、あるいは融合産物として単離され得る。
【0010】
本発明の方法は、中空繊維、クロスフローろ過、その他のろ過装置及び技術を用い、短時間で、経済的及び効率的な3段階の精製/単離方法を行うことができる。本方法は、CBM、及びタンパク質などのAOI、例えば異種タンパク質(HP)から構成されるキメラが、巨大タンパク質/CNC付加物を作製することにより、キメラのCBM部を介して、CNCに可逆的に結合することに基づき、この付加物はろ過により汚染物質から分離され、その後「そのまま」用いることができる。CBM-AOI、例えばCBM-タンパク質キメラ又はCBM-HPキメラは、様々な手段、例えばpH変化、又はタンパク質分解により、CNC粒子から放出され得、また、タンパク質、例えばHPは、後述の様々な開裂又は分離技術により、CBMからさらに分離され得る。
【0011】
本発明は、中空繊維分離プロセス及びクロマトグラフィ分離プロセスの両方の長所を組み合わせる点で有利である。これにより、通常アフィニティクロマトグラフィでのみ見られる非常に高い選択性を提供すると同時に、広範囲のタンパク質及び微粒子物質を含む非常に大量の溶液を取り扱うことができる。ここで記載された方法は、カラム充填の必要性、並びに高圧、低流速及び目詰まりなどの関係する制約を回避する。アフィニティクロマトグラフィにおいて、樹脂の標的タンパク質に対する結合能力は、樹脂1グラム当たり数十ミリグラムまでであるが、本発明においては、CNC1gr当たり数百ミリグラムに達する。さらに、精密ろ過を用いながら、保持液に標的タンパク質を選択的に保持する能力は、通常、高圧、比較的低いろ過率及び目詰まりの問題を伴う限外ろ過と比べ、大きな長所である。
【0012】
従って、その一態様において、本発明は、液体混合物から異種タンパク質(HP)などのタンパク質を単離する方法を提供し、この方法は、
・CBM-タンパク質キメラ、例えばCBM-HPキメラを含む粗混合物を第1ろ過膜に通して、CBM-タンパク質、例えばCBM-HPを含む透過液を得ることと(一方で、保持液に廃棄することができる高分子量又はサイズの大きな不純物を残すこと);
・このキメラ、例えばCMB-HPをCNCと接触させて、例えばCBM-HPキメラと相互作用させ、キメラ-CNC複合体、例えばCBM-HP-CNC複合体を含む混合物を得ることと;
・キメラ-CNC複合体、例えばCBM-HP-CNC複合体を含む混合物を第2ろ過膜でろ過して、この複合体を含む保持液を得ることと;
・タンパク質、つまりHPを単離するため、CBM-HP-CNC複合体からCBM-HP及び/又はHPを任意に分離することと;を含み、
第1及び第2ろ過膜のそれぞれが同じ又は異なり、CBM-タンパク質キメラを透過(あるいはろ過又は通過)させ、複合体の透過を妨げる(又は阻む)ように選択される細孔径を有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、液体混合物から異種タンパク質(HP)を単離する方法を提供し、この方法は、
・CBM-HPキメラを含む粗混合物を、第1ろ過膜に通し、ろ過して、CBM-HPを含む透過液を得ることと(一方で、保持液に廃棄することができる高分子量又はサイズが大きな不純物を残す);
・CBM-HPキメラをCNCと接触させて、CBM-HPキメラと相互作用させ、CBM-HP-CNC複合体を含む混合物を得ることと;
・CBM-HP-CNC複合体を含む混合物を、第2ろ過膜に通し、ろ過して、CBM-HP-HP-CNC複合体を含む保持液を得ることと;
・任意にCBM-HP-CNC複合体からCBM-HP及び/又はHPを分離することと;を含み、
第1及び第2ろ過膜のそれぞれが同じ又は異なり、CBM-HPキメラを透過(あるいはろ過又は通過)させ、CBM-HP-CNC複合体の透過を妨げる(又は阻む)ように選択される細孔径を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、第1及び第2ろ過膜は同じであり、いくつかの実施形態において、本方法では、単一膜が用いられる。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1及び第2ろ過膜は中空繊維膜から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1及び第2ろ過膜は精密ろ過膜である。
【0017】
いくつかの実施形態において、ろ過膜は0.2μmから60kDaの細孔径を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は粗混合物にCBM-HPキメラを得ることを含む。いくつかの実施形態において、CBM-HPは宿主細胞、例えば植物細胞で作製される/発現する。いくつかの実施形態において、CBM-HPは植物由来である。
【0019】
いくつかの実施形態において、本方法はCNCをCBM-HPキメラを含有する透過液に、CBD-HPキメラ及びCNC間を相互作用させる条件下で添加することを含み、これによりCBM-HP-CNC複合体を含む混合物が得られる。
【0020】
一般的に「異種タンパク質」という用語は、タンパク質を作製する有機体と比較して、同じ又は異なる有機体由来のタンパク質を指す(例えば、異種発現システムにおいて、ほ乳類のタンパク質をコードするベクターを用いて形質転換されるか、又は形質導入される細菌細胞株)。通常、異種タンパク質は、組み換えDNA技術により、タンパク質をコードするDNAを、宿主生物(例えば、酵母宿主細胞)を形質転換するために用いられる発現ビヒクルに挿入することにより作製される。異種タンパク質のいくつかの非限定例は、酵素(例えば、核酸修飾酵素)及びその基質結合ドメイン、プロテアーゼ、リンホカイン、インターフェロン、ホルモン及びホルモン前駆体、ポリペプチド、ペプチド、抗体及び抗体断片、抗原、抗原エピトープ及びその変異体、DNA結合タンパク質、受容体及びその断片、ウイルス抗原又は免疫原、並びに該タンパク質の供給源である有機体とは異なる宿主生物で発現することができる任意のポリペプチド及び糖タンパク質である。従って、キメラは、CBM、並びに酵素(例えば、核酸修飾酵素)及びその基質結合ドメイン、プロテアーゼ、リンホカイン、インターフェロン、ホルモン及びホルモン前駆体、ポリペプチド、ペプチド、抗体及び抗体断片、抗原、抗原エピトープ及びその変異体、DNA結合タンパク質、受容体及びその断片、ウイルス抗原又は免疫原、該タンパク質及びその他の供給源である有機体とは異なる宿主生物で発現することができる任意のポリペプチド及び糖タンパク質その他のいずれか1つ又は複数の間で形成され得る。
【0021】
HPは粗混合物又は培地に存在し得、通常、不純物である作用物質、競争反応産物、細胞残屑及び/又は様々な物質も含む「液体混合物」の形態である。不純物からHP(又は以下に示すような関心のある作用物質)が選択的に単離されるが、不純物は以下の有機化合物(例えば、タンパク質、核酸)、細胞、細胞成分(高分子、細胞残屑)、ポリフェノールなどの小分子;アルカロイド;細胞壁成分などの不溶物(例えば、セルロース、リグニン);ウイルス;細菌;粉塵粒子;塩;農薬;並びにデンプン及びグリコーゲンなどの重合体のいずれか1つ又は複数を含み得る。
【0022】
ここで用いられるように、「CBM-HPキメラ」(融合タンパク質と置き換え可能に用いられる)は一般的に、少なくとも2つのタンパク質を結合することにより作製されるタンパク質を指し、1つがCBM、もう1つがHPである。CBMは糖結合モジュールであり、糖質関連酵素内に連続するアミノ酸配列を有し、目立たない折りたたみは糖結合活性を有する。CBMのいくつかの非限定例は、糖結合モジュールファミリー1から83である。これらは当分野で公知であり、酵素の構造的に関連する触媒及び糖結合モジュール又は機能ドメインのファミリーについてCAZyデータベースで入手できる。CBMは、基質特異性に相当な変化を示し得るため、様々な親和性で単糖などの分子(例えば、ガラクトース、ラクトース、アラビノース)、グリコシド結合、及び多糖(例えば、セルロース、グルコマンナン、キシラン、デンプン、キチン)に結合する。
【0023】
いくつかの実施形態において、CBMはセルロース結合ドメイン(CBD)である。
【0024】
CBDは、連続するアミノ酸配列モジュールであり、セルロース/結晶セルロースと結合することができるタンパク質内に見出される。本発明によりCBD-HPキメラを作製する場合、CBDはタンパク質のC末端又はN末端に付着し得る。本発明のCBM-HPキメラは、いくつかの実施形態においてCBD-HPキメラであり、約0.5μMから約5μMのセルロース結合親和性(解離定数[Kd]により測定される)を有する。結合親和性は、pH値のある範囲にわたって、及び様々な緩衝条件下で維持され得、結合親和性は、例えばpHを約11超に高めることにより逆転させることができ、例えばCBDをCBDと結合したCNCから放出する。
【0025】
HPは1つ以上のCBD単位(例えば、HPのC末端に1つのCBD単位、及びHPのN末端に別のCBD単位)を含み得る。本発明によれば、断片、誘導体、変異体又は修飾がCNC結合性を保持しさえすれば、CBDタンパク質は、例えばhttp://www.cazy.org/carbohydrate-binding-modules.htmlで利用できるCAZyデータベースに記載されたタンパク質又はタンパク質ドメインのいずれかの変異体、誘導体、断片又は化学修飾であり得る。いくつかの実施形態において、各CBD単位は、同じか異なり得る1つ又は複数のHPと会合し得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、CBDタンパク質はCBD機能的ホモログであり、http://www.cazy.org/carbohydrate-binding-modules.htmlに記載されたGenBank受託番号を有するアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%又は95%の相同性を有する。「相同性」という用語は一般的に、参照配列(例えば、GenBank配列番号)との相補性の程度を指し、ある配列は参照配列との部分的相同性(例えば、70%の相同性)又は完全な相同性(つまり、100%同一性)を示し得る。「X%の相同性」(例えば70%の相同性)という用語は、タンパク質の全長にわたってX%の相同性を有する配列に限定されない。このように、70%の相同性は、特定された機能領域に存在する相同性を含むことも意図される。
【0027】
いくつかの実施形態において、CBDは、当技術分野で公知のCBM2~CBM13、CBM16~CBM17、CBM20~CBM28、CBM40~CBM46、及びCBM61~CBM67から選択される。完全を期すために、http://www.cazy.org/carbohydrate-binding-modules.htmlで提供されるCAZyデータベースは、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【0028】
いくつかの実施形態において、機能領域は、高親和性で可逆的にセルロースと結合する能力を有する明確なアミノ酸セットである。いくつかの実施形態において、機能領域は約200のアミノ酸からなる。いくつかの他の実施形態において、機能領域は約185のアミノ酸からなる。いくつかの他の実施形態において、機能領域は約50のアミノ酸からなる。
【0029】
いくつかの実施形態において、CBDタンパク質は、GenBank番号EEU00265.1であるルミニクロストリジウムサーモセラム(Ruminiclostridium thermocellum)のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、CBD配列は、NLKVEFYNSNPSDTTNSINPQFKVTNTGSSAIDLSKLTLRYYYTVDGQKDQTFWCDHAAIIGSNGSYNGITSNVKGTFVKMSSSTNNADTYLEISFTGGTLEPGAHVQIQGRFAKNDWSNYTQSNDYSFKSASQFVEWDQVTAYLNGVLVWGKEPGGSVVPSTQPVTTPPATTKPPATTIPPである。
【0030】
いくつかの実施形態において、CBDはCBD機能性誘導体である。
【0031】
ここで用いられるように、「CBD機能性誘導体」という用語は、上記GenBank配列に示されるCBDタンパク質アミノ酸配列の任意の「断片」、「変異体」、「類似体」又は「化学的誘導体」を指し、高親和性で可逆的にセルロースと結合する能力を保持する。
【0032】
いくつかの実施形態において、CBD機能性誘導体は、長さが約2から約160のアミノ酸である。いくつかの他の実施形態において、CBD機能性誘導体は、長さが約25から約125のアミノ酸である。さらに他の実施形態において、CBD機能性誘導体は、長さが約50から約100のアミノ酸である。
【0033】
ここで用いられるように、一般的に「断片」という用語は、ここで定義されるCBDタンパク質由来のCBDタンパク質を指し、天然に存在する配列を有する。いくつかの実施形態において、CBD断片は、完全長CBDタンパク質のタンパク質分解開裂により作製される。他の実施形態において、C末端、N末端、及び/又は天然に存在する配列内の1つ又は複数の部位で、1つ又は複数のアミノ酸を欠失させることにより、CBDタンパク質をコードするDNA配列を適切に修飾させて、CBD断片が組換え技術により得られる。本発明によれば、ここに記載された、例えばCDB-HPキメラを作製するのに用いられるCBDの断片は、高親和性で可逆的にセルロースと結合する能力についてスクリーニングされて、機能性誘導体の固有性又は有用性を決定し得る。
【0034】
「変異体」は、天然に存在する分子のアミノ酸配列、グリコシル化パターン、又は他の特徴が共有結合的、又は非共有結合的に修飾されている分子であり、突然変異体を含むことが意図される。変異体のいくつかの非限定例としては、最終構築物が高親和性で可逆的にセルロースと結合する所望の能力を保持する限り、アミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入が挙げられる。
【0035】
CBDタンパク質におけるアミノ酸置換は、関係する残基の極性、帯電、溶解性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性における類似性に基づき成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸としてはアスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられ;正に帯電したアミノ酸としてはリシン及びアルギニンが挙げられ;類似の親水性値を有する非帯電極性頭部基又は非極性頭部基を備えたアミノ酸としては、以下のロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;フェニルアラニン、及びチロシンが挙げられる。変異体は、高親和性で可逆的にセルロースと結合する能力を保持しさえすれば、C末端、N末端、及び天然に存在するCBD配列内の1つ又は複数の部位にさらなるアミノ酸も含み得る。
【0036】
一般的に、「化学的誘導体」という用語は、天然に存在する又は変異体のCBDタンパク質を化学修飾することにより作製されるCBDタンパク質を指す。化学修飾のいくつかの非限定例は、例えば、アルキル、アシル、又はアミノ基によるHの置換である。
【0037】
ここで記載されたCBD-HPキメラを作製するため、CBDをコードする核酸は、CBDタンパク質又はCBD-HPキメラを発現することができる組み換え発現ベクターを構築するのに用いられ得る。一般的に、該キメラを発現するのに用いられる発現ベクター(つまり、核酸構築物)は、転写及び翻訳調節情報を有するヌクレオチド配列を含み、これらの配列は動作可能に連結される(つまり、調節DNA配列及び発現するDNA配列が、CBD-HPキメラポリペプチドへのRNAの転写及び最終的には翻訳がなされる方法で接続されるように連結される)。本発明によれば、CBD-HPキメラ発現ベクターを構築すると同時に、CBDタンパク質をコードする核酸は、CBDタンパク質及び第2のタンパク質のオープンリーディングフレームが完全なままであるように、HPをコードする核酸に連結又は結合され、これによりCBD融合タンパク質の翻訳を開始させる。CBD核酸は、高親和性で可逆的に結合するセルロース結合ドメインを作製するか、又はCBDをコードするmRNAを作製する様々な細胞源から得られ得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、CBDタンパク質をコードする核酸は、クロストリジウムセルロボランスから得られる。
【0039】
他の実施形態において、CBDをコードする核酸は、参照によりここに組み込まれる米国特許第5856201号明細書に記載のように得られる。
【0040】
本発明によれば、CBDタンパク質をコードする核酸は、細胞源から単離、精製されたDNAから、又はゲノムクローニングにより得られ得る。遺伝子クローニングがCBDタンパク質の供給源である場合、クローンのcDNA又はゲノムライブラリーのどちらかが、当業者に周知の技術を用いて調製され得る。ライブラリーは、遺伝子の任意の部分に実質的に相補的であるヌクレオチドプローブを用い、特定のCBDをコードする核酸についてスクリーニングされ得る。CBDタンパク質をコードする保存ヌクレオチド領域の検出が所望されるなら、ヌクレオチドプローブは種から種へと保存されたCBDヌクレオチド配列に基づく。CBDタンパク質をコードする固有のヌクレオチド領域の検出が所望されるなら、ヌクレオチドプローブは固有のCBDヌクレオチド配列に基づく。あるいは、cDNA又はゲノムDNAが、好適なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRクローニングの鋳型として用いられ得る。完全長クローン、つまり所望のCBDタンパク質の全コード領域を含有するものは、発現ベクターを構築するために選択され得、又は重複cDNAは、共にライゲーションされ、完全なコード配列を形成することができる。あるいは、CBDをコードするDNAは、当技術分野で標準とみなされる技術を用い、化学合成により全体又は一部として合成され得る。
【0041】
当業者に容易に理解されるように、好適な発現ベクターの選択は、様々なパラメータに依存する。例えば、
・核酸増幅又は核酸発現に用いられるかどうか;
・ベクターに挿入される核酸のサイズ;
・ベクターで形質転換される宿主細胞、である。
【0042】
本発明によれば、各ベクターは、その機能(核酸の増幅又は核酸の発現)及び適合する宿主細胞に応じて、様々な成分を含有し得る。
【0043】
CBD-HP融合タンパク質は、宿主細胞(つまり、細胞系培養システム)において、組み換えプラスミドベクターの方向/制御下、CBD-HPキメラ融合タンパク質を作製する発現ベクター(例えば、大腸菌発現ベクター)にCBD-HPのDNAをサブクローニングすることにより得られ得る。「宿主細胞」(ここでは「細胞系培養システム」で置き換え可能)は、培養下で増殖することができ、CBDタンパク質又はCBD-HPキメラを発現することができる細胞型である。宿主細胞は、原核、真核、及び昆虫細胞など、生体外培養で増殖する細胞であり得る。宿主細胞は、挿入配列の発現を調節するか、又は所望の具体的な方法で遺伝子産物を修飾及び処理する株から選択され得る。例えば、あるプロモータからの発現は、ある誘導物質(例えば、メタロチオネインプロモータに対して亜鉛及びカドミウムイオン)の存在下で高めることができる。宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するように選択され得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、細胞系培養システムは、大腸菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)及びシュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)から選択される細菌システムである。他の実施形態において、細胞系培養システムは、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキアパストリス(Pichia Pastoris)、フィラメンタスフンジ(Filamentous fungi)、バキュロウイルス感染細胞、非溶解性昆虫細胞発現系及びリーシュマニア(Leishmania)から選択される真核細胞システムである。他の実施形態において、細胞系培養システムは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、マウス骨髄腫リンパ芽球様細胞、ヒト胎児腎臓細胞(HEK-293)、ヒト胎児網膜細胞、及びヒト羊膜細胞(例えば、グリコトープ及びCEVEC)から選択されるほ乳類システムである。さらに他の実施形態において、細胞系培養システムは、タンパク質合成に必要とされるすべての細胞成分を含有する無細胞システムであり、タンパク質は、精製されたRNAポリメラーゼ、リボソーム、tRNA及びリボヌクレオチドを用い、生体外で作製される。
【0045】
CBD又はCBD-HPキメラは、参照によりここに組み込まれる米国特許第5856201号明細書に記載のように作製することができる。
【0046】
従って、CBDタンパク質又はCBD-HP融合タンパク質の発現は、制御され得る。CBDタンパク質又はCBD-HP融合タンパク質が宿主細胞に対して致死性であれば、発現を制御する能力は重要である。いくつかの実施形態において、HPはCBDタンパク質とのキメラとして調製される組み換えタンパク質であり、CBDはHPのN又はC末端に融合される。いくつかの実施形態において、キメラのHP部は、第3のタンパク質と融合又は結合し得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、HPは他の要素(例えば、ストレプトアビジン、Fc断片、抗原その他)とのキメラとして調製され、その後CBMに結合することができる(又はこの要素の対応物に付着したCBMと結合することができる)。従って、本発明によれば、HPは、例えば組み換え手段により連続するアミノ酸として作製される場合、CBMに直接付着するか、あるいは例えばタンパク質A/Fc断片、ストレプトアビジン/ビオチン等、他のドメイン又は相互作用を通してCBMと結合することができる。いくつかの実施形態において、HPは開裂部位(例えば、TEVドメイン)によりCBMと接続するか、又はCBD-HPキメラを形成する。
【0048】
いくつかの実施形態において、CDM-HPキメラは少なくとも1つのリンカー(例えば、開裂可能なリンカー)を含む。このリンカーは長さが約1から100のアミノ酸又は2から20のアミノ酸を有し、CBM及びHP間に挿入され、細胞培養におけるその増殖中(例えば、繰り返す継代培養中)に、CBD-HPキメラのタンパク質分解安定性を向上し得る。
【0049】
「粗混合物」から、例えばHPであるAOIがCBDとのキメラとして単離され、「粗混合物」は一般的に液体細胞培養混合物(つまり、酵母又は大腸菌細胞培養などの宿主細胞培養物)であり、無傷で分割された細胞の混合物を含み、ここで定義されるCBD-HPタンパク質キメラが豊富である。この粗混合物は、核酸、タンパク質、炭水化物、ポリフェノール、及び脂質などの巨大非重合体分子などの他の成分(例えば、高分子)も含有し得る。いくつかの実施形態において、粗混合物はホモジネートであり、細胞培養物に含有される細胞の細胞膜を破壊することにより形成される。
【0050】
本発明に従って利用される「ろ過膜」は、一般的にマイクロ膜であり、(例えば、汚染又は粗)流体を流通させて、流体に含有される微生物及び懸濁粒子を分離する。第1及び第2ろ過膜は同じか異なり、定義されるようにCBM-HP-CNC複合体の透過を妨げると同時にCBM-HPキメラを透過させる細孔径を有し得る。いくつかの実施形態において、このプロセスで使用されるろ過膜は両方のろ過工程で同じである。いくつかの実施形態において、ろ過膜は0.2μmから60kDa分子量カットオフの細孔径を有する。
【0051】
この膜は、当技術分野で公知の任意の好適なろ過膜であり、ある成分(例えば、タンパク質)をその物理的及び/又は化学的性質に応じて通過させる物的障壁として作用することができる。ろ過膜はここで記載された粗混合物から、所望の分子(例えば、CDB-HPキメラ)をろ過するのに好適である。ろ過膜は、適切な強度(例えば、ろ過中に破断及び引裂されない)並びに十分な親水性(適切な濡れ)を特徴とする。本発明によれば、ろ過膜の第1分子量カットオフ(つまり、90%の溶質が膜に保持される、最小の溶質分子量(ダルトン))は約50kDaである。
【0052】
いくつかの実施形態において、ろ過工程のいずれかに用いられるろ過膜は同じであり、同様に作製、構成、構築又は使用され得る。膜の細孔径が0.2μmから60kDa分子量カットオフで選択されるように、このような細孔径選択は、0.1から10μmの細孔径を有する精密ろ過膜、並びに0.1から0.01μmの細孔径を有する限外ろ過膜の両方を包含することを目的とする。あるいは、ろ過膜は、60kDa以下である分子量カットオフに基づき選択され得る。
【0053】
従って、膜は0.2から10μm、又は0.01から0.1μmの細孔径、あるいは60kDaまでの分子量カットオフを有するように選択され得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、小さめの膜サイズは0.2μmである細孔径に基づき選択され、最大サイズは60kDa以下である分子量カットオフに基づき選択される。
【0055】
いくつかの実施形態において、ろ過膜のどちらか又は両方は、0.45μmから60kDa(分子量カットオフ)の細孔径を有する。他の実施形態において、ろ過膜は1μmから50kDa(分子量カットオフ)の細孔径を有する。一実施形態において、ろ過膜は約0.2μmの細孔径を有する。
【0056】
ろ過膜は本発明に従って用いられ、(例えば、組み換えプロセスにより作製される)ここで記載されたCBD-HPキメラを、このキメラを作製した宿主細胞を含有する粗混合物からろ過する。通常、粗混合物はここで記載するように、CBD-HPキメラ、並びに様々な可溶性及び不溶性の汚染物質を含む。従って、例えば、約300kDa分子量カットオフで、ろ過膜は巨大粒子及び細菌を保持し、多くの球状タンパク質及び小分子がCBM-HPキメラと共に容易に透過する。CBM-HPの多くが膜でろ過された後、(主に汚染物質を含有する)保持液が廃棄される。
【0057】
ろ過膜は中空繊維膜から選択され、Pall Membralox、GEA、Novasep Kerasep製のセラミック中空繊維膜、GE、ザルトリウスその他製の高分子中空繊維膜など、当技術分野で利用できる任意の材料であり得る。
【0058】
キメラの分離後、CNC(例えば、CNC粒子)が添加され、キメラと相互作用して、CBM-HP-CNC複合体が得られ、これはCBM-HPキメラのCBM部にCNCが結合して形成される。本発明によれば、CNCは、CNC粒子の懸濁液形態で水又は低電導度リン酸緩衝液に添加され得、懸濁液中のCNC粒子の濃度は、約0.01%から10wt%又は0.5%から2%である。
【0059】
いくつかの実施形態において、CNCのCBM-HPキメラへの結合は、pH7.4の10mMリン酸緩衝液中で行われる。
【0060】
いくつかの実施形態において、CNCは約10分から約240分、中性pHで(例えば、pH7.4の1~100mMリン酸緩衝液)、4から20℃、又は約4℃の温度でキメラを含有する透過液と共にインキュベートされ、その後CBM-HP-CNC複合体を含有する混合物をろ過膜に通す。
【0061】
「結晶ナノ-セルロース」(CNC)は、ナノメートルサイズ範囲(高さ、長さ及び幅、全方向)を有するセルロース結晶形態のセルロース由来物質である。CNCは、バクテリアセルロース、植物セルロースその他など、セルロースの任意の形から作製され得る。本発明によれば、ここで記載された方法で用いられるCNCは、市販の供給源から得られ得るか、又は参照によりここに組み込まれる国際公開第2012/014213号又はそれに相当する米国特許出願に記載のプロセスなど、公知の方法に従って調製され得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、CNCは少なくとも50%の結晶化度を有することを特徴とする。いくつかの他の実施形態において、CNCは単結晶である。いくつかの実施形態において、CNCは、様々な起源のセルロースから粒子として(例えば、小繊維、又は他の場合、結晶材料として)作製され、長さが少なくとも約100nmであるように選択される。いくつかの実施形態において、CNCは長さが最大でも約1,000μmである。他の実施形態において、CNC粒子は、長さ約100nmから1,000μm、長さ約100nmから900μm、長さ約100nmから600μm、又は長さ約100nmから500μmである。さらに他の実施形態において、CNC粒子は、長さ約100nmから1,000nm、長さ約100nmから900nm、長さ約100nmから800nm、長さ約100nmから600nm、長さ約100nmから500nm、長さ約100nmから400nm、長さ約100nmから300nm、又は長さ約100nmから200nmである。
【0063】
本発明によれば、CNCの厚さは、約5nmから100nmであり得、CNCはアスペクト比(長さと直径の比)が10以上であるように選択され得る。いくつかの実施形態において、アスペクト比は67から100である。いくつかの実施形態において、CNCは長さ約100nmから400nm、厚み約5nmから30nmであるように選択される。
【0064】
本発明の方法によれば、CBM-HP-CNC(例えば、CBD-HP-CNC)複合体を含む混合物を異なる又は同じろ過膜に通過させるが、大きさが増すことにより、CBD-HP-CNC複合体は透過しない。(例えば、様々な植物タンパク質を含有する)透過液が廃棄された後、(精製された)CBM-HP-CNC複合体を含有する保持液は処理されて、HPを単離又は分離する。CBM-HP-CNC複合体からHPの分離は、当技術分野で一般的な様々な化学的手法(例えば、pH上昇、タンパク質分解を用いた溶離)を用いて実施することができる。例えば、pHを上昇させることにより、CBM-HPキメラはCNC粒子から放出され得る。これによりCBM-HPキメラが得られ、好適なタンパク質分解酵素を用いたタンパク質分解後、CBM-HPキメラからHPが放出される。いくつかの実施形態において、pHを約11~12のpH値まで上昇させることによりHPを単離し得、NCCからCBM-HPキメラを放出後、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を添加して、HPからCBMを放出させる。タンパク質分解酵素のいくつか非限定例は、タバコエッチ病ウイルス核内封入体aエンドペプチダーゼ(TEV)、第X因子、エンテロキナーゼ、トロンビンHRV-3C、フィシン及びパパインである。
【0065】
本発明の方法で得られるHPは、関心のある作用物質(AOI)を「取り出す」のに用いることができ、この作用物質はアミノ酸系又は非アミノ酸系作用物質であり得る。従って、本方法は、単離されたHP又はHPキメラ、例えばCBM-HPキメラ、及び少なくとも1つのAOI間を相互作用させる工程をさらに含み得る。AOIは、HPと親和結合することができる任意の作用物質又は物質であり得る。このような作用物質は、HPが抗体、受容体、酵素、基質など、又はその断片であるアミノ酸系作用物質;HPが核酸結合タンパク質又はその断片である核酸系作用物質;HPと親和結合することができるペプチド部分を有する糖、脂肪酸又は小有機分子から選択され得る。
【0066】
従って、別の一態様において、本発明は液体混合物から関心のある作用物質(AOI)を単離する方法を提供し、この方法は、
・少なくとも1つのAOIを含む培地をCBM-HPキメラ(上記で定義された本発明の方法に従って任意に得られ、単離される;又は任意の他の方法により調製、単離される)を用い、AOI及びCBM-HPキメラ間を会合させる条件下で処理して、CBM-HP-AOI複合体を含む混合物を得ることと;
・CBM-HP-AOI複合体を含む混合物にCNCを添加して、CNC-CBM-HP-AOI複合体を形成することと;
・CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む混合物をCNC-CBM-HP-AOI複合体を透過させないろ過膜に通して、CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む保持液を得ることと;
・複合体からAOIを単離することと、を含む。
【0067】
ろ過膜は上記のように定義され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、本方法は単離されるAOIを含む培地を得る工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、ここで定義されるように、培地はAOIを含有する粗混合物であるため、約0.2ミクロンの細孔径を有するろ過膜を通過させて、培地から不純物を部分的に除去し得る。
【0069】
CNC-CBD-HP-AOI複合体からAOIを単離/分離するため、当技術分野で通常の様々な化学的手段を実施することができる。例えば、pHをpH1.5から3に低下させ、NaClなどの特定の塩、塩化グアニジン、又は酢酸リチウムなどの酢酸金属、又はエタノール及びn-ブタノールなどの溶媒を添加することにより、AOIを放出することができる。放出後、AOIは膜を通過するため、溶液から除去される。いくつかの実施形態において、CNC-CBD-HP-AOI複合体からAOIを単離する前に、さらなる透析(半透膜を通る拡散率の差により溶液中の分子を分離する)又はろ過により、CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む混合物をさらに精製する。
【0070】
いくつかの実施形態において、CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む保持液(混合物)が採取され、必要に応じてさらに処理するために保存される。
【0071】
他の実施形態において、本発明の方法で得られるCNC-CBM-HP-AOI複合体又はCNC-CBM-HP複合体からCNCを放出するため、複合体を含む混合物のpHを約10から約13に上昇させる。このような実施形態によれば、CNCは廃棄、又は再生利用され得、CBM-HP-AOI複合体を(例えば、ろ過により)採取することができる。
【0072】
他の実施形態において、純粋なHPを単離するため、ここで記載するように、好適なプロテアーゼを使用し得る。このような実施形態によれば、CBMタンパク質及びHPタンパク質間に存在するリンカータンパク質は消化され、従ってHPは膜を透過することができ、透過液に採取され得る。CNC-CBM複合体は保持液と共に廃棄される。
【0073】
さらに他の実施形態において、HPがAOI(例えば、別のタンパク質、小分子核酸配列等)と親和結合しているCNC-CBM-HP-AOI複合体からAOIが単離される場合、HP及びAOIの結合は、好適な化学的手段(例えば、pH又は塩濃度変化)を用いて開裂される。従って、例えば、(AOIである)抗体が、CBM-CNCに連結する(HPである)タンパク質Aと結合するなら、低pHによりタンパク質Aから抗体のみが放出され、CBDはCNCから放出されない。
【0074】
いくつかの実施形態において、CBMはここで定義されるようにCBDである。
【0075】
本発明によれば、ここに記載される方法におけるろ過工程のいずれかは、所望の純度が得られるまで、(例えば、複数の緩衝液体積を用いて)少なくとも1回繰り返され得る。
【0076】
本発明に記載の方法の概略図は、
図1A~1Eに提供され、
図1Aに示すように、キメラ及びすべてのサイズの汚染物質のどちらも含有する粗混合物は、例えば0.2μmの膜でろ過される。巨大な不溶性粒子のみが保持され、キメラがすべて透過すると、粒子は廃棄され得る。その後、
図1Bに示すように、キメラを含有する透過液は、混合物に添加されるCNCと接触し、短時間のインキュベーション後、異なる、類似、又は同一のろ過膜、例えば0.2μmの膜でろ過される。小さな可溶性分子及び汚染タンパク質のみが透過し、廃棄される。
図1Cに示すように、所望の純度に達すると、pHを上昇させ、CBDがNCC粒子から放出される。(例えば、関心のあるタンパク質、POIの)キメラは膜を自由に透過し、採取される。(現在NCCのみを含有する)保持液は廃棄される。
【0077】
CBD部分の無い純粋なキメラのみが所望されるなら、
図1Dに示すように、好適なタンパク質分解酵素が添加され得る。CBD及びAOI/HP(例えば、POI)間の接続を切断後、CBDはNCあCに結合したままで、AOI/HP(例えば、POI)は膜を自由に透過し、採取される。しかし、もし、
図1Eに示すように、NCC-CBD-HP/AOI複合体が所望されるなら(例えば、NCC-IL-2-TEV-CBD)、段階B後に直接採取することができる。従って、本発明はさらに、液体混合物からHPを単離する方法を提供し、この方法は、
・少なくとも1つの糖結合モジュール及び少なくとも1つのHPのキメラ(CBM-HPキメラ)を含む粗混合物を第1ろ過膜に通して、CBM-HPキメラを含む透過液を得ることと;
・CBM-HPキメラをセルロースナノ結晶(CNC)と接触させて、CBM-HPキメラと相互作用させ、CBM-HP-CNC複合体を含む混合物を得ることと;
・CBM-HP-CNC複合体を含む混合物を第2ろ過膜に通して、CBM-HP-CNC複合体を含む保持液を得ることと;
・CBM-HP-CNC複合体からHP及び/又はCBM-HPキメラを分離することと、を含み
同じ又は異なる第1及び第2ろ過膜は、同じ又は異なり、CBM-HPキメラを透過させ、CBM-HP-CNC複合体の透過を妨げるように選択される細孔径を有する。
【0078】
いくつかの実施形態において、本方法は、粗混合物にCBM-HPキメラを得ることをさらに含み、CBM-HPキメラは粗混合物から単離され得る。いくつかの実施形態において、粗混合物は核酸、タンパク質、炭水化物、ポリフェノール及び巨大非重合体分子から選択される少なくとも1つの他の物質をさらに含む。いくつかの実施形態において、粗混合物は、細胞培養物に含有される細胞の細胞膜を破壊することにより形成されるホモジネートである。
【0079】
いくつかの実施形態において、CBM-HPキメラは宿主細胞で作製されるか、又は発現する。
【0080】
いくつかの実施形態において、CBM-HPキメラは植物細胞で作製される。
【0081】
いくつかの実施形態において、本方法は、CBM-HPキメラ及び/又はHPを単離することをさらに含む。いくつかの実施形態において、CBM-HPキメラが最初に単離され、次にそこからHPが単離される。
【0082】
いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも1つの関心のある作用物質(AOI)を含む液体培地を、CBM-HPキメラを用い、少なくとも1つのAOI及びCBM-HPキメラ間に会合を生じさせる条件下で処理することをさらに含み、CBM-HP-AOI複合体を含む混合物が得られる。
【0083】
いくつかの実施形態において、本方法はCBM-HP-AOI複合体からAOIを単離することを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、CBMはセルロース結合ドメイン(CBD)である。
【0085】
いくつかの実施形態において、第1及び第2ろ過膜は同じである。
【0086】
いくつかの実施形態において、CBM-HPキメラはCBD-HPキメラである。
【0087】
いくつかの実施形態において、HPは関心のある作用物質を単離する方法で使用するのに好適な形態で単離される。
【0088】
本発明はさらに、液体混合物から関心のある作用物質(AOI)を単離する方法を提供し、この方法は、
・本発明の方法に従って、CBM-HPキメラを得ることと;
・少なくとも1つのAOIを含む液体培地を、CBM-HPキメラを用い、少なくとも1つのAOI及びCBM-HPキメラ間に会合を生じさせる条件下で処理して、CBM-HP-AOI複合体を含む混合物を得ることと;
・CBM-HP-AOI複合体を含む混合物にCNCを添加して、CNC-CBM-HP-AOI複合体を形成することと;
・CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む混合物を、CNC-CBM-HP-AOI複合体を透過させない細孔径を有するろ過膜に通して、CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む保持液を得ることと;
・複合体からAOIを単離することと、を含む。
【0089】
本発明はさらに、液体混合物から関心のある作用物質(AOI)を単離する方法を提供し、この方法は、
・少なくとも1つのAOIを含む液体培地を、CBM-HPキメラを用い、少なくとも1つのAOI及びCBM-HPキメラ間に会合を生じさせる条件下で処理して、CBM-HP-AOI複合体を含む混合物を得ることと;
・CBM-HP-AOI複合体を含む混合物にCNCを添加して、CNC-CBM-HP-AOI複合体を形成することと;
・CBM-HP-AOI複合体を含む混合物を、CNC-CBM-HP-AOI複合体を透過させない細孔径を有するろ過膜に通して、CNC-CBM-HP-AOI複合体を含む保持液を得ることと;
・この複合体からAOIを単離することと、を含む。
【0090】
以下の図は、本発明のいくつかの有利な特徴を示す。なお、提示する詳細は例であり、本発明の実施形態を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】
図1は、本発明による単離方法の概略図を提供する。
【
図2】
図2は、本発明による単離方法の概略図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0092】
他に定義されない限り、ここで用いられる技術及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。ここで記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験で用いることができるが、好ましい方法及び材料は以下に記載する。
【0093】
主な態様の1つにおいて、本発明は液体混合物に存在する異質タンパク質を得る方法を提供し、この方法は、
・第1粗混合物において、セルロース結合ドメイン(CBD)に付着した異質タンパク質(HP)を作製することと;
・第1粗混合物を60kDa(UF範囲)から0.45ミクロン(MF範囲)までの第1カットオフを有する第1ろ過膜に通し、巨大汚染粒子から構成される保持液を廃棄して、透過液を得ることと;
・(2)の透過液にCNC粒子を添加して、第2混合物を得ることと;
・(3)の第2混合物を最大0.45ミクロンのカットオフを有する第2ろ過膜に通し、これにより精製されたCNC粒子に付着した異質タンパク質を得ることと、を含む。
【0094】
異種タンパク質(HP)は、例えばCBDタンパク質とのキメラとして調製されるか、または後でCBD(又は要素の対応物を有するCBD)と結合可能な別の要素(ストレプトアビジン、Fc断片、抗原等)とのキメラとして調製される組み換えタンパク質など、産物の末端に得られることが必要な関心のあるタンパク質であり得る。
【0095】
HPは、粗混合物から関心のある作用物質(アミノ酸系又は非アミノ酸系作用物質であり得る)を「取り出す」のに用いられ得る。
【0096】
本第2の態様によれば、本発明は、液体混合物に存在し、異質タンパク質と親和結合することができる関心のある作用物質を得ることに関し、この方法は、
・第1粗混合物におけるセルロース結合ドメイン(CBD)に付着した異質タンパク質(HP)を液体混合物に添加することと;
・CBD-HPキメラの添加前又は後のどちらかに、第1粗混合物を10kDa(UF)から0.45ミクロン(MF範囲)の第1カットオフを有する第1ろ過膜に通し、巨大汚染粒子から構成される保持液を廃棄して、透過液を得ることと;
・(2)の透過液にCNC粒子を添加して、第2混合物を得ることと;
・(3)の第2混合物を最大0.45ミクロンのカットオフを有する第2ろ過膜に通し、保持液を得て、これにより関心のある作用物質を得ることと、を含む。
【0097】
なお、工程2では、第1ろ過後、CBD-HPキメラを添加することが好ましく、これにより、より低いカットオフの膜を使用することができ、従って精製を改善することができる。
【0098】
本方法は、関心のある作用物質及び異質タンパク質の親和結合を分離するため、当技術分野で公知の追加の工程をさらに含み得、pH調整、イオン調整、カオトロピック又はコスモトロピック剤、尿素、有機溶媒又は洗浄剤、糖類、ヌクレオチド(例えば、ATP)の添加、温度調整、あるいは親和結合ドメインの除去を含むが、これらに限定されない。さらなる透析又はろ過により、任意の添加材料を、その後廃棄することができる。
【0099】
異質タンパク質と親和結合することができる関心のある作用物質(AOI)は、アミノ酸系作用物質(HPが抗体、受容体、酵素、基質など、又はその断片)、核酸系作用物質(及びHPが核酸結合タンパク質又はその断片)、HPと親和結合することができる(HPである)アミノ酸系分子を有する糖、脂肪酸、小有機分子であり得る。
【0100】
下記は、第1及び第2オプションのどちらにも関連する。
【0101】
一般的に、第1膜及び第2膜は同じであり、0.2ミクロンのカットオフを有する。
【0102】
膜は中空繊維又はクロスフローろ過膜であり得る。
【0103】
HPは、例えば組み換え手段により連続するアミノ酸として作製されるCBDに直接付着するか、あるいは別のドメイン又は相互作用、例えば、タンパク質A/Fc断片、ストレプトアビジン/ビオチン等によりCBDに結合する。TEVドメインなど開裂部位を介してCBDにHPを接続することもできる。これはCBD-HPキメラを形成する。
【0104】
本発明の方法の工程(4)で得られる保持液は、下記によりさらに処理され得る。
・CNC-CBD-HP複合体全体が所望されるなら、単純に採取することができる。
・CBD-HPキメラが所望の産物であり、CNCが廃棄されるのであれば、pHを約pH10.5~13に上昇させて、タンパク質が直ちに放出され、膜を透過して採取される。CNC粒子は(コストがわずかであることから)廃棄されるか、再生利用される。
・純粋なHPのみが所望されるなら、好適なプロテアーゼが溶液に添加され、CBDタンパク質及びHPタンパク質間のリンカータンパク質を消化し、従ってNCCに結合したままのCBDからHPが放出される。放出されたHPは、膜を透過することができ、透過液に採取され、CNC-CBD複合体は保持液と共に廃棄される。
【0105】
切断されたCBDからHPを分離することは、CBD-HPキメラが切断され、CBDがCNCから放出される非常に特異的な場合でのみ必要であり、そうでなければ、CBDはCNCに結合したまま、一緒に廃棄される。
【0106】
実際にキメラがまずCNCから放出され、その後消化されるなら、クロマトグラフィ、又は特異的なタンパク質生化学的性質に依存する他の分離方法を用いて、分離を行うことができる。
【0107】
本発明は、膜分離プロセス及びクロマトグラフィ分離プロセスの両方の利点を兼ね備える点で有利である。つまり、アフィニティクロマトグラフィでのみ見られる非常に高い選択性を提供すると同時に、広範囲のタンパク質及び微粒子物質を含む非常に大量の溶液を取り扱うことができる。カラム充填の必要性、並びに高圧、低流速及び目詰まりなどの関係する制約を回避する。
【0108】
通常、アフィニティクロマトグラフィにおいて、標的タンパク質に対するアフィニティクロマトグラフィ樹脂の結合能力は、樹脂1グラム当たり数十ミリグラムまでである。本発明において、CNC1grの能力は、CNC1グラム当たり数百ミリグラムに達する。さらに、精密ろ過を用いながら、保持液に選択的に標的タンパク質を保持する能力は、高圧、比較的遅いろ過速度及び目詰まりの問題を伴う限外ろ過と比較して、大きな長所である。
【0109】
記載された精製方法は、中空繊維及びクロスフローろ過等の既存のろ過装置及び技術を用い、短時間で、経済的及び効率的な3段階のタンパク質精製を行うことができる。本発明の方法は、セルロース結合ドメイン(CBD)及び異種タンパク質(HP)から構成されるキメラの、このキメラのCBD部を介した、結晶ナノセルロース(CNC)への可逆的結合に基づいており、このようにして巨大なタンパク質/CNC付加物を作製する。付加物はろ過により汚染物質から分離され、その後「そのまま」用いられるか、あるいはキメラ(CBD-HP)がpH変化又はタンパク質分解によりCNC粒子から放出されるか、あるいはHPが以下に説明するような様々な開裂又は分離技術によりCBDから分離される。
【0110】
HPは、CBDに直接付着するか、あるいは別のドメイン又は相互作用、例えばタンパク質A/Fc断片、ストレプトアビジン/ビオチン等を介してCBDに結合する必要がある。TEVドメインなど開裂部位を介してCBDにHPを接続することもできる。これはCBD-HPキメラを形成する。
【0111】
異種タンパク質(HP)は、例えばCBDタンパク質とのキメラとして調製されるか、または後でCBD(又は要素の対応物を有するCBD)と結合可能な別の要素(ストレプトアビジン、Fc断片、抗原等)とのキメラとして調製される組み換えタンパク質など、産物の末端に得られることが必要な関心のあるタンパク質であり得る。
【0112】
あるいは、HPは、サンプル中に存在し、分離する必要がある関心のあるタンパク質と親和結合することができるタンパク質(抗体又は断片、受容体又は断片、酵素の基質結合ドメイン、基質、DNA結合タンパク質等)である。
【0113】
CBD-HPキメラは、例えば組み換えプロセスにより作製することができ、調製された粗混合物から精製される必要がある。このような場合、CBD-HPキメラ、並びに様々な種類及びサイズ(可溶性及び不溶性のどちらも)の汚染物質を含有する粗混合物は、まず0.1~0.45、好ましくは0.2μmの精密ろ過膜、好ましくは中空繊維膜又はクロスフロー装置でろ過される。このカットオフで、膜は巨大粒子及び細菌を保持するが、多くの球状タンパク質及び小分子は、CBD-HPキメラと共に容易に透過する。多くのCBD-HPが分離された後、保持液(現在主に汚染物質を含有する)は廃棄される。
【0114】
CBD-HPが、粗混合物から(キメラのHP部と親和結合する)関心のあるタンパク質を「探す」ことが意図されるなら、上記と同じ工程が実施され得るか、あるいはまず粗混合物が0.1~0.45、好ましくは0.2μmの精密ろ過膜、好ましくは中空繊維膜又はクロスフロー装置でろ過される。このカットオフで、膜は巨大粒子及び細菌を保持するが、多くの球状タンパク質は保持されず、この工程後にのみ、CBD-HPが添加される。
【0115】
第2段階で、CNCが添加され、CBD-HPはCNC粒子と結合し、膜のカットオフ0.1~0.45、好ましくは0.2μmの膜カットオフよりも大きい巨大な付加物を形成し、膜を透過することができない。従って、これらは保持液に保持されるが、他のすべての汚染小分子及びタンパク質は除去される。所望の純度が達成されるまで、様々な緩衝液体積を交換することができる。
【0116】
最終段階で、産物が採取される。これは4つの方法のうちの1つで実施することができる。
HPが(例えば、組み換え技術で作製される)関心のあるタンパク質である場合:
1.CNC-CBD-HP複合体全体が所望されるなら、簡単に採取することができる。
2.CBD-HPキメラが所望の産物であり、CNCが廃棄されるのであれば、pHを約pH10.5~11に上昇させ、タンパク質が直ちに放出され、膜を透過して採取される。CNC粒子は(コストがわずかであることから)廃棄されるか、又は再生利用される。
3.純粋なHPのみが所望されるなら、好適なプロテアーゼが溶液に添加され、CBDタンパク質及びHPタンパク質間のリンカータンパク質が消化され、NCCと結合したままのCBDからHPが放出される。放出されたHPは膜を透過することができ、透過液に採取され、CNC-CBD複合体は保持液と共に廃棄される。
4.HPが関心のある作用物質である別の作用物質(別のタンパク質、小分子、核酸配列等)と親和結合する場合において、HPが上記(1)のようにそのままであるか、あるいは例えば、pH又は塩濃度変化により上記2又は3のように分離される場合、HP及び関心のある作用物質間の親和結合は切断される。CNCからCBDを放出することなく、親和結合のみが切断される好適な条件が定義されなければならない。
【0117】
結晶ナノ-セルロース(ここで用いられるようにCNC)は、すべての方向(長さ及び幅)にナノメートルサイズ範囲であり、バクテリアセルロース、植物セルロース等を含むセルロースの任意の形であるセルロース結晶を指す。
【0118】
いくつかの実施形態において、ナノ-セルロース材料は、少なくとも50%の結晶化度を有することを特徴とする。さらなる実施形態において、ナノ-セルロース材料は単結晶である。
【0119】
いくつかの実施形態において、様々な起源のセルロースから粒子として(例えば、小繊維、又は他の場合、結晶材料として)作製されるナノ-セルロース材料は、長さが少なくとも約100nmであるように選択される。他の実施形態において、長さは最大でも約1,000μmである。他の実施形態において、ナノ-セルロース材料粒子は、長さ約100nmから1,000μm、長さ約100nmから900μm、長さ約100nmから600μm、又は長さ約100nmから500μmである。
【0120】
いくつかの実施形態において、CNC粒子は長さ約100nmから1,000nm、長さ約100nmから900nm、長さ約100nmから800nm、長さ約100nmから600nm、長さ約100nmから500nm、長さ約100nmから400nm、長さ約100nmから300nm、又は長さ約100nmから200nmである。
【0121】
CNCの厚さは、約5nmから100nmの間で変わり得る。
【0122】
CNCの小繊維は、アスペクト比(長さと直径の比)が10以上であるように選択され得る。いくつかの実施形態において、アスペクト比は67~100である。
【0123】
NCNCは長さが約100nmから400nm、厚みが約5nmから30nmであるように選択される。
【0124】
NCCは市販のものを使用し得るか、あるいは参照によりここに組み込まれる国際特許第2012/014213号又はそれに相当する米国出願に記載されたプロセスなど、公知の方法に従って調製され得る。
【0125】
CBDタンパク質
CBDタンパク質は、断片、誘導体、変異体又は修飾がCNC結合性を保持しさえすれば、http://www.cazy.org/carbohydrate-binding-modules.htmlに示すタンパク質又はタンパク質ドメインのいずれかの変異体、誘導体、断片又は化学修飾であり得る。
【0126】
本発明のCBDタンパク質は、上記GenBank受託番号のアミノ酸配列と少なくとも70%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、より好ましくは少なくとも90%の相同性、最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有するものである。「X%の相同性」という用語は、タンパク質の全長にわたってX%の相同性を有する配列に限定されるとは意図されない。70%の相同性は、上記GenBank受託番号のCBDタンパク質内における特定された機能領域に生じるX%の相同性を含むことも意図される。機能領域の一例は、高親和性で可逆的にセルロースと結合する能力を有する定義されたアミノ酸セットである。このようなタンパク質ホモログは、ここでは「CBD機能的ホモログ」とも呼ばれ得る。本発明の一実施形態において、このような機能領域は約100のアミノ酸を有し得る。本発明の別の実施形態において、このような機能領域は約50のアミノ酸を有し得る。本発明の最も望まれるCBDタンパク質は、上述のアミノ酸配列から構成されるものである。
【0127】
ここで用いられる「CBD機能性誘導体」という用語は、上述のGenBank配列で示すCBDタンパク質アミノ酸配列の任意の「断片」、「変異体」、「類似体」又は「化学的誘導体」を指し、高親和性で可逆的にセルロースと結合する能力を保持し、好ましくは長さ約2から約160のアミノ酸、より好ましくは長さ約25から約125のアミノ酸、最も好ましくは長さ約50から約100のアミノ酸である。
【0128】
「断片」という用語は、提示するCBDタンパク質由来で、天然に存在する配列を有するCBDタンパク質を指すために用いられる。このような断片は、完全長タンパク質のタンパク質分解開裂により作製され得る。あるいは、断片は、CBDタンパク質をコードするDNA配列を適切に修飾して、C末端、N末端、及び天然に存在する配列内の1つ又は複数の部位で1つ又は複数のアミノ酸を欠失することにより、組み換え技術によって得られる。CBDタンパク質の断片は、高親和性で可逆的にセルロースと結合する能力についてスクリーニングされ、機能性誘導体の固有性又は有用性を決定することができる。
【0129】
ここで用いられるような「変異体」という用語は、天然に存在する分子のアミノ酸配列、グリコシル化パターン、又は他の特徴が共有結合的又は非共有結合的に修飾されている分子として定義され、突然変異体を含むことが意図される。本発明に含まれるいくつかの変異体は、最終構築物が高親和性で可逆的にセルロースと結合する所望の能力を保持するという条件で、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有する。CBDタンパク質におけるアミノ酸置換は、関係する残基の極性、帯電、溶解性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性における類似性に基づいてなされ得る。例えば、負に帯電したアミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられ;正に帯電したアミノ酸としては、リシン及びアルギニンが挙げられ;類似の親水性値を有する非帯電極性頭部基又は非極性頭部基を有するアミノ酸としては、以下のロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;フェニルアラニン、チロシンが挙げられる。変異体が、高親和性で可逆的にセルロースと結合する能力を保持しさえすれば、変異体の定義内で、C末端、N末端、及び天然に存在するCBD配列内の1つ又は複数の部位で追加のアミノ酸を有するタンパク質も含まれる。
【0130】
ここで用いられるように、「化学的誘導体」という用語は、天然に存在する又は変異体のCBDタンパク質を化学修飾することにより作製されるCBDタンパク質を指す。化学修飾の一例は、アルキル、アシル、又はアミノ基によるHの置換である。
【0131】
CBD-HPキメラ
ここで用いられるように、「CBD-HPキメラ」という用語は、少なくとも2つのタンパク質、つまりCBDタンパク質及びHPである第2のタンパク質の結合を指す。本発明のいくつかの実施形態において、HPは第3のタンパク質と融合するか、又は結合し得る。本発明において、HPの例としては、核酸修飾酵素、プロテアーゼなどの酵素、ホルモン又はホルモン前駆体、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗原、抗原エピトープ及びその変異体が挙げられる。
【0132】
CBDをコードする核酸は、本発明のCBDタンパク質又はCBD-HPキメラを発現することができる組み換え発現ベクターを構築するのに用いられ得る。核酸構築物は、転写及び翻訳調節情報を含有するヌクレオチド配列を含有し、このような配列がヌクレオチドをコードする配列に「動作可能に連結されている」なら、タンパク質を発現することができる。「動作可能に連結されている」とは、調節DNA配列及び発現するDNA配列が、転写及び最終的な翻訳がなされるように接続する結合を指す。
【0133】
CBD-HPキメラ発現ベクターを構築する際、CBDタンパク質及び第2のタンパク質のオープンリーディングフレームが完全なままであるように、CBDタンパク質をコードする核酸が、HPをコードする核酸に連結又は結合され、CBD融合タンパク質の翻訳を開始させる。CBD核酸は、高親和性で可逆的に結合するセルロース結合ドメインを作製するか、又はCBDをコードするmRNAを作製する様々な細胞源から得られ得る。CBDをコードする核酸の好ましい供給源は、クロストリジウムセルロボランスである。CBDをコードする核酸は、参照によりここに取り込まれる米国特許第5856201号明細書に記載のように得られ得る。
【0134】
本発明のCBDタンパク質をコードする核酸は、細胞源から単離、精製されたDNAから、又はゲノムクローニングにより得られ得る。クローンのcDNA又はゲノムライブラリーは、当技術分野で周知の技術を用いて調製され得、遺伝子の任意の部分に実質的に相補的であるヌクレオチドプローブを用い、特定のCBDをコードする核酸についてスクリーニングされ得る。CBDタンパク質をコードする保存ヌクレオチド領域の検出が所望されるなら、ヌクレオチドプローブは、種から種へ保存されたCBDヌクレオチド配列に基づくべきである。CBDタンパク質をコードする特有のヌクレオチド領域の検出が所望されるなら、ヌクレオチドプローブは、特有のCBDヌクレオチド配列に基づくべきである。あるいは、cDNA又はゲノムDNAは、好適なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRクローニングの鋳型として使用され得る。完全長クローン、つまり、所望のCBDタンパク質の全コード領域を含有するものは、発現ベクターを構築するために選択され得る。又は重複cDNAが共にライゲーションされて、完全なコード配列を形成することができる。あるいは、CBDをコードするDNAは、当技術分野で標準であるとみなされる技術を用い、化学合成により、全体又は一部で合成され得る。
【0135】
多くのベクターを利用することができ、適切なベクターの選択は、下記1)核酸増幅又は核酸発現に用いられるかどうか、2)ベクターに挿入される核酸の大きさ、及び3)ベクターを用いて形質転換される宿主細胞など、様々な要因に依存するが、これらに限定されない。各ベクターは、その機能(核酸の増幅又は核酸の発現)並びに適合する宿主細胞に応じて様々な成分を含有する。
【0136】
「宿主細胞」という用語は、培養下で増殖することができ、CBDタンパク質又はCBD-HPキメラを発現することができる細胞を指す。本発明の宿主細胞は、体外培養での細胞を包含し、原核、真核、及び昆虫細胞を含む。挿入配列の発現を調節するか、又は所望の特異的な方法で遺伝子産物を修飾、処理する宿主細胞株が選択され得る。特定のプロモータからの発現は、特定の誘導物質(例えば、メタロチオネインプロモータの場合、亜鉛及びカドミウムイオン)の存在下で上昇させることができる。従って、CBDタンパク質又はCBD融合タンパク質の発現は、制御され得る。発現を制御する能力は、CBDタンパク質又はCBD融合タンパク質が宿主細胞に対して致死性であれば重要である。タンパク質産物の修飾(例えば、リン酸化)及び処理(例えば、開裂)は、タンパク質の機能に重要である。種々の宿主細胞は、タンパク質の翻訳後処理及び修飾に特有の特異的機構を有する。適切な細胞株又は宿主システムは、発現するCBDタンパク質又はCBD融合タンパク質の正しい修飾及び処理が確保されるように選択することができる。宿主細胞のタンパク質分解酵素の分泌は最少量であることが好ましい。
【0137】
参照によりここに組み込まれる米国特許第5856201号明細書において、CBD又はCBD-HPキメラを作製する他の詳細な情報を見出すことができる。