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特許7309198機能性ナノ粒子及びそれを製造する方法並びに使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】機能性ナノ粒子及びそれを製造する方法並びに使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20230710BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230710BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20230710BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K49/00
B82Y5/00
B82Y40/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019563785
(86)(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018033755
(87)【国際公開番号】W WO2018213851
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】62/508,703
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510243539
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マ,カイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィースナー,ウルリッヒ,ベー
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/179260(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/102372(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/217528(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/130643(WO,A1)
【文献】特表2016-520287(JP,A)
【文献】Chemistry of Materials,2015年05月13日,27(11),pp. 4119-4133
【文献】Journal of Materials Chemistry,2012年,22(18),pp. 9253-9262
【文献】Chemistry of Materials,2017年07月23日,29(16),pp. 6840-6855
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEG化シリカナノ粒子を機能化して、機能性PEG化シリカナノ粒子を形成する方法であって、
挿入によるPEG化後表面修飾(PPSMI)工程を使用して、シリカナノ粒子を機能化することを含み、
ここで、前記シリカナノ粒子は、10nm未満の直径を有し、ナノ粒子の表面に共有結合した複数のポリエチレングリコール(PEG)基を有しており、及び
前記PPSMI工程は、機能化前駆体を、シリカナノ粒子上のPEG基の間に挿入して、シリカナノ粒子の表面に前記前駆体を共有結合させることを含み、ここで、前記機能化前駆体は、シラン基及び反応基を有するものであり、及び、前記方法は水性媒体中で実施されるものであり、
これにより、ナノ粒子の表面に共有結合された反応基を有する機能性PEG化シリカナノ粒子を形成する、方法。
【請求項2】
さらに、1つ以上の追加の機能化前駆体を、前記シリカナノ粒子上のPEG基の間に挿入して、シリカナノ粒子の表面に前記1つ以上の追加の前駆体を共有結合させることを含み、ここで、前記1つ以上の追加の前駆体はそれぞれ、シラン基及び反応基を有するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各追加の機能化前駆体の挿入が、同じ反応混合物中で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
追加の機能化前駆体の挿入が、別個の反応混合物中で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記反応基が、アミン基、チオール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、エステル基、マレイミド基、アリル基、末端アルキン基、アジド基、チオシアネート基、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シラン基が以下の構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法:
【化1】
ここで、Rはそれぞれ独立して、C1~C4アルキル基である。
【請求項7】
前記機能化前駆体が、以下の構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法:
【化2】
ここで、Xは、アミン基、チオール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、エステル基、マレイミド基、アリル基、末端アルキン基、アジド基、又はチオシアネート基であり、nは1~8であり、Rはそれぞれ独立して、C1~C4アルキル基である。
【請求項8】
前記シリカナノ粒子が、コア-シェルシリカナノ粒子である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記シリカナノ粒子の表面に共有結合された反応基を、機能基前駆体と反応させる工程をさらに含み、それにより機能基を有するナノ粒子を形成する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記機能基前駆体が、色素基、キレート剤基、標的化基、又は薬物基を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記標的化基が、腫瘍細胞に特異的結合親和性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記標的化基が、線状もしくは環状ペプチド、又は抗体フラグメントを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記薬物基が、化学療法剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記機能基前駆体が、さらに、マレイミド基、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)エステル基、アジド基、アミン基、チオール基、又はアルキン基を含む、請求項1013のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水性媒体が、極性非プロトン性溶媒以外の有機溶媒を10%以上含まない、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記シリカナノ粒子が、その中に被包された1つ以上の蛍光色素分子含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記蛍光色素分子が、Cy5又はCy5.5である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応が、クリックケミストリーを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2017年5月19日に出願された米国仮出願62/508,703に基づく優先権を主張し、その開示は参照により本願に包含される。
【0002】
この発明は、国立衛生研究所によって付与された認可番号CA199081の下、政府支援を受けて完成された。合衆国政府は本発明に所定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本開示は、一般に、表面機能化ナノ粒子及びそれを製造する方法、並びに使用する方法に関する。より具体的には、本開示は、一般に、表面機能化シリカ及びアルミノシリケートナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0004】
シリカナノ粒子(SNP)は、その大きな表面積、不活性及び高い生体適合性のため、潜在的な治療/診断用途について関心を集めている。しかしながら、たいていのSNPは10nmを超える大きさである。
【0005】
12nmを超える粒子は、インビボで生体から効率的に除去されず、不都合なことに肝臓及び他の器官/組織に分布し、これらの組織を有毒物質にさらす可能性がある(特に、これらの10nmを超えるSNPは、薬物及び/又は放射能で改変される)。直径約8nmの粒子は約1日間、10~11nmの粒子は約3~5日間体内に存在し、12nmより大きい場合は、除去されないか非常にゆっくりと除去される。
【0006】
現在、極小無機ナノ粒子は、癌セラノスティクス(theranostics)のためのナノ医療として急速に関心を集めている。いくつかの有機系ナノ医療は、多機能性及び多原子価効果に起因して、すでに従来の化学療法薬より競合的である。無機ナノ粒子は、さらに、ナノ医療の構築要素を多様化し、それらの内在的な物性に関連する利点及びより低い製造コストを提供するかもしれない。研究室からクリニックへのナノ粒子の安全な橋渡しには、実質的な科学及び制御に関する多数のハードルを克服することが必要になる。最も重要な判断基準は、好ましい体内分布であり、その経時的進化(薬物動態、PK)プロファイルである。腎クリアランスのための大きさの閾値は、10nm未満である。今日まで、ごく少数の無機ナノ粒子プラットホームが、効率的な腎クリアランスを可能にする10nm未満のサイズで合成されてきた。それらの中で、コーネルドット(Cornell dots)又は単にCドット(C dots)と呼ばれる10nm未満サイズのポリエチレングリコール被覆(PEG化:PEG化)蛍光コア-シェルシリカナノ粒子(SNP)のみが、ヒトでの第一臨床試験のための治験薬(IND)として、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。メラノーマ患者での第一臨床試験の結果が後押ししているが、複数の合成の挑戦が、このような10nm未満サイズの蛍光性有機-無機ハイブリッドSNPのために続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第一に、従前のCドット-タイプのSNP合成の試みはすべて、修正Stober法に従っており、溶媒としてアルコールが使用されていた。しかしながら、生物学的又は臨床応用で使用する物質としては、反応媒体として水が好ましい。それは、合成と精製プロトコルを非常に簡素化し、揮発による無駄をより少なくし、それによって粒子製造を実質的により速くよりコスト効率良くするであろう。さらに、Stober法は直径が数十nm~ミクロンのSNPを製造するために広く使用されているが、アルコール中での反応速度論の制限のため、10nm以下の粒子サイズが、この合成方法によるサイズ制御の限界である。
【0008】
第二に、PEGで共有結合的に覆われたシリカ粒子の表面は、PEG化の間の表面電荷の減少が、粒子凝集をもたらすか、又は少なくとも広い粒径分布をもたらし得るため、扱いにくい可能性がある。この影響は、粒子表面エネルギーの増加に起因して、極小粒子でより明白であり、それゆえ、粒子の単分散度とサイズ制御能力を制限する。
【0009】
第三に、その等電点pH2~3より上では、シリカが負の表面電荷を有するため、負に帯電した基を有するシラン-結合有機蛍光色素の、SNPへの共有結合性の封入効率は低い(シリカとフルオロフォアの間の静電反発力の結果として)。これは特に、生体組織のイメージング用途に最も望ましい近赤外線(NIP)発光色素に当てはまる。NIR色素は、大きな非局在化π-電子系を有し、水に可溶性である(一般的に、その周辺に複数の負の電荷を有する機能基を必要とする(例えば、硫酸塩))。それらの典型的なコストは、1mgあたり200~300ドルのオーダーであり、典型的に用いられているシラン-色素コンジュゲートの最初の合成後の再使用には問題があるため、低い取り込み効率はこれらの色素にとって問題である。
【0010】
最後に、10nm未満サイズの蛍光SNP及びコア-シェルSNPのために報告されている無機元素組成はシリカ以外にはない。特に、剛性の増加が、非放射レートの減少の結果として色素あたりの蛍光収量の増加と直接相関していたため、有機色素環境により高い剛性をもたらす組成は興味深い。ここで、アルミニウムアルコキシドを添加剤として派生するシリカ組成は、アルミニウムアルコキシドがアルコキシシラン由来のシリカにおける既知の硬化成分であり、かつ、アルミナが筋肉内及び皮下注射される高容積ワクチンに添加できる承認されたアジュバントであるため、特に興味深い。
【0011】
これらの課題はすべて、サイズ制御の改善された10nm未満の有機-無機ハイブリッドドットを得るための水ベースのアプローチ、これまで知られていない組成、及び増強したパフォーマンス特性を系統的に開発するために、オリジナルの蛍光性コア-シェルSNP(Cドット)合成を再考することを提起する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、ナノ粒子(例えば、コア又はコア-シェルナノ粒子)を提供する。本開示はまた、ナノ粒子を製造及び使用する方法を提供する。
【0013】
一態様では、本開示は、機能性ナノ粒子(例えば、超小型機能性ナノ粒子)を作製する方法を提供する。この方法は、挿入によるPEG化後表面修飾(PPSMI=post-PEGylation surface modification by insertion)アプローチ(例えば、本明細書中に記載されるような(PPSMI)アプローチ)を含み得る。
【0014】
本方法は、2~15nm(例えば、2~10nm)のナノ粒子(例えば、最長寸法などが、このサイズであるもの)と、少なくとも1つの反応基を有する1つ以上の機能化前駆体(官能化前駆体)との反応に基づき、前記ナノ粒子は、複数のポリエチレングリコール(PEG)基を有する10nm未満のサイズ(例えば、2~9.99nmサイズ)の超小型ナノ粒子であってもよく、そのいくつか又は全ては、ナノ粒子の表面に共有結合された1つ以上の機能基(あるいは反応して、機能基を形成することができる基)で機能化されていてもよい(これは、PEG化ナノ粒子とも呼ばれる)。ナノ粒子の表面に共有結合した1つ以上の反応基を有する得られたナノ粒子は続いて、反応基と反応する機能基前駆体と反応し、ナノ粒子の表面に共有結合した1つ以上の機能基を有するナノ粒子を生じる。
【0015】
一態様では、本開示は、本開示のナノ粒子を含む組成物を提供する。組成物は1つ以上のタイプ(例えば、異なる平均サイズ及び/又は1つ以上の異なる組成特徴を有する)を含むことができる。前記組成物は、NP表面上に配置された(例えば、共有結合された)1~5(例えば、1、2、3、4、又は5)種類の異なる機能性リガンドを有する機能性ナノ粒子を含むことができる。
【0016】
一態様では、本開示は、本開示のナノ粒子及び組成物の使用を提供する。ナノ粒子によって担持されるリガンド(機能基)は、診断薬及び/又は治療薬(例えば、薬物)を含むことができる。したがって、ナノ粒子又はナノ粒子を含む組成物は、送達(例えば、治療方法)及び/又は画像化方法において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の本質及び対象をより完全に理解するために、以下の詳細な説明が、添付の図面とともに参照されるべきである。
【0018】
図1は、挿入によるPEG化後表面修飾(PPSMI)方法を導入するC'ドット合成システムの図を示す。追加の機能性リガンドによるC'ドットの表面修飾(表面改質)は、(i)PEG化工程中に異なるヘテロ二官能性(二機能性)PEG-シランを共凝縮させ、次いでPEG化後に、前記ヘテロ二官能性PEGに機能性リガンドを共有結合的に付着させることによって、又は(ii) PEG化後工程(1又は複数)において、PEG鎖間及びシリカ表面上に官能基(例えばアミン又はチオール)を有するシランを共有結合的に挿入することによって達成される(PPSMI)。各反応ステップにおける代替経路は、破線を用いて表示される。異なる多機能性C'ドットに対する反応経路の具体的な選択は、アプリケーション要件に依存する。SH-薬物-c(RGDyC)-PEG-c'ドットをDFO-薬物-c(RGDyC)-PEG-c'ドットに変換するために使用したチオール-エン反応を、黒の実線の中断を使用して示す(右下)。右上の挿入図は、その合成経路が明るい青色で強調されている5機能性C'ドットの分子レンダリングを示す。5つの機能には、シリカコア内部のNIR蛍光Cy5色素を介する蛍光、特定のc(RGDyC)ペプチドを介する癌細胞標的化、PEG鎖のいくつかに付着した小分子の治療用EFV薬物、特定DFOキレート剤を介する放射性同位体標識、及び第2のセンサFITC色素の付着を介するpH検知が含まれる(後者の2つはPEG鎖の間にある)。シリコン、酸素、炭素、窒素、硫黄、塩素及びフッ素原子は、それぞれ、紫、赤、灰色、青、黄、緑及び淡緑に着色されている。水素原子は、より良好な可視化のために表示されない。
【0019】
図2は、NPあたりのc(RGDyC)ペプチドの数を増加させたc(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットを示す。
(A~C)標準的なC'ドット合成プロトコルを使用して(A)、又は高c(RGDyC)-PEG-シラン濃度で(B)、又はc(RGDyC)-PEG-シランと水酸化アンモニウムの両方を高濃度にして(C)製造された、合成c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットのGPCエルグラム(elugram)を示す。
(D及びE)ペプチドあたり平均で58個のc(RGDyC)を含む精製されたc(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットのGPCエルグラム(D)及びFCS相関曲線(E)。
(F)挿入に示すように、NPあたりのcRGDYリガンドの数を変えた場合の、c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットのUV-可視吸光度スペクトルの比較。
【0020】
図3は、PEG化の間(左)又は後(右)、アミン基で官能化(機能化)されたc(RGDyC)-PEG-C'ドットの特性評価を示す。
(A及びB)4サイクルのGPC精製の前(A)及び後(B)のc(RGDyC)-PEG-NH2-Cy5-C'ドットのGPCエルグラム PEG化の間にアミン基で官能化。
(C)精製c(RGDyC)-PEG-NH2-Cy5-C'ドットのFCS相関曲線及びフィット。
(D)PEG化の間のアミン官能化有り(赤)及び無し(黒)のc(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視スペクトルの比較。
(E及びF)精製の前(E)及び後(F)のNH2-cRGDY-PEG- Cy5-C'ドットのGPCエルグラム PEG化の後にアミン官能化。
(G)精製NH2-cRGDY-PEG- Cy5-C'ドットのFCS相関曲線及びフィット。
(H)PEG化工程後のアミン官能化有り(赤)及び無し(黒)のc(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視スペクトルの比較。
【0021】
図4は、放射性同位体キレート剤を用いたc(RGDyC)-PEG-C'ドットの、PPSMIによる表面機能化を示す。
(A及びB)精製の前(A)及び後(B)のDFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのGPCエルグラム、このために、ワンポットNP合成の間に、PEG化後に派生したアミン官能化NH2-cRGDY-PEG-Cy5-C'ドットに、さらにDFO-NCSを結合させることにより、DFOリガンドを導入した。
(C)精製DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのFCS相関曲線及びフィット。
(D)2つの異なるDFO-NCS濃度を使用して合成した精製DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視スペクトルの比較。
(E及びF)精製の前(E)及び後(F)のDOTA-c(RGDyC)-PEG- Cy5-C'ドットのGPCエルグラム、このために、ワンポットNP合成の間に、PEG化後に派生したアミン官能化NH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットに、さらにDOTA-NCSを付着させることにより、DOTAリガンドを導入した。
(G)精製DOTA-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのFCS相関曲線及びフィット
(H)2つの異なるDOTA-NCS濃度を使用して合成した精製DOTA-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視スペクトルの比較。DFO-NCS及びDOTA-NCSキレート剤の化学構造が、(A)及び(E)にそれぞれ挿入図として示される。
【0022】
図5は、NP表面に3種類の機能性リガンドを有する4機能性C'ドットを示す。
(A)挿入部に示すように、段階的に機能性を増加させたC'ドットの比較。
(B及びC)精製FITC-DFO-c(RGDyC)-PEG-C'ドットのGPCエルグラム(B)及びフィットを伴うFCS相関曲線(C)。
(D及びE)それぞれ、500nm(D)及び650nm(E)の励起波長による精製FITC-DFO-c(RGDyC)-PEG-C'ドットの発光スペクトル
(F)ピークセンサー発光強度(525nm)をピーク参照発光強度(660nm)で割ることによって得られたレシオメトリック較正曲線(対pH)
(A)に示すUV-可視吸光度スペクトルは、NP当たりのFITC色素数を推定するために、所望のFITCシグナルをPBSバッファー溶液中で測定した。
【0023】
図6は、NP表面に4種類の機能性リガンドを有する5機能性C'ドットを示す。
(A~C)5機能性FITC-DFO-EFV-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの、GPCエルグラム(A)、FCS相関曲線(B)、及びフィットを伴うUV-可視スペクトル。EFV薬物の化学構造は(A)に示される。
(D~H)PEG-Cy5-C'ドット(D)、c(RGDyC)(E)、EFV(F)、DFO(G)、及びFITC(H)の寄与へのUV-可視スペクトル(C)のデコンボリューション。デコンボリューションは、個々の成分それぞれの標準スペクトルのセットを使用して、UV-可視スペクトル(C)のフィッティングにより得た(図12B~D、図15E及び図17C)。
【0024】
図7は、多機能性C'ドットの命名法を示す。3機能性DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットが一例として使用され、その粒子構造の図が、左下に挿入される。
【0025】
図8は、異なるNIR色素で機能化された癌ターゲティングc(RGDyC)-PEG-C'ドットを示す。
(A及びB)Cy5.5色素を封入したc(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットの精製前(A)及び後(B)のGPCエルグラム。
(C)精製c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットのFCS相関曲線及びフィット。
(D)c(RGDyC)機能化有り及び無しのPEG-Cy5.5-C'ドットのUV-可視吸光度の比較。
(E及びF)Cy5色素を封入したc(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのNP精製の前(E)及び後(F) のGPCエルグラム。
(G)精製c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのFCS相関曲線及びフィット。
(H)c(RGDyC)機能化有り及び無しのPEG-Cy5-C'ドットのUV-可視吸光度の比較。
(I及びJ)CW800を封入したc(RGDyC)-PEG-CW800-C'ドットのNP精製の前(I)及び後(J) のGPCエルグラム。
(K)精製cRGDY-PEG-CW800-C'ドットのFCS相関曲線及びフィット。
(L)c(RGDyC)機能化有り及び無しのPEG-CW800-C'ドットのUV-可視吸光度の比較。
655nm(D)、657nm(H)及び795nm(L)付近の異なる吸光度ピークは、異なる種類のNIR色素の封入が成功したことを示す。
【0026】
図9は、NPのPEG化の間に、mal-PEG-シランを導入することによって調製された多機能性c(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットの特性評価を示す。
(A及びB)精製前(A)及び後(B)のGPCエルグラム。典型的なC'ドットの精製は、2サイクルのGPC実行により行われるが、c(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットについては、(B)に示される所望の製品純度を得るために、合計4サイクルのGPC実行が必要である。
(C)精製c(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットの代表的なFCS相関曲線及びフィット。
(D)異なるmal-PEG-シラン濃度を使用して合成した、精製c(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視吸光度スペクトルの比較。(D)における挿入は、mal-PEG-シランの濃度が増加するにつれて増加する、短波長における吸収を示し、これは、マレイミド基のNP積載が増加していることに起因し得る。
【0027】
図10は、NPのPEG化の間に、DFO-シラン及びDBCO-PEG-シランを導入することによって調製された、多機能性c(RGDyC)-DBCO-PEG-Cy5-C'ドット及びc(RGDyC)-DFO-PEG-Cy5-C'ドットの特性評価を示す。
(A及びB)PEG化工程の間に、DBCO-PEG-シランと、c(RGDyC)-PEG-シラン及びPEG-シランとの共凝縮によって合成されたc(RGDyC)-DBCO-PEG-Cy5-C'ドットの、精製前(A)及び後(B)のGPCエルグラム。
(C)精製c(RGDyC)-DBCO-PEG-Cy5-C'ドットの代表的なFCS相関曲線及びフィット。
(D)異なるDBCO-PEG-シラン濃度を使用して合成した、精製c(RGDyC)-DBCO-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視吸光度スペクトルの比較。
(E及びF)PEG化工程の間に、DFO-シランと、c(RGDyC)-PEG-シラン及びPEG-シランとの共凝縮によって合成されたc(RGDyC)-DFO-PEG-Cy5-C'ドットの、精製前(E)及び後(F)のGPCエルグラム。
(G)精製c(RGDyC)-DFO-PEG-Cy5-C'ドットの代表的なFCS相関曲線及びフィット。
(H)異なるDFO-シラン濃度を使用して合成した、精製c(RGDyC)-DFO-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視吸光度スペクトルの比較。DBCO-シラン及びDFO-PEG-シランの化学構造が、(A)及び(E)にそれぞれ挿入図として示される。単分散のc(RGDyC)-DBCO-PEG-Cy5-C'ドット、及びc(RGDyC)-DFO-PEG-Cy5-C'ドットが、このアプローチで製造できるが、得られるNPは、制限されたリガンドアクセス性と、望ましくないリガンド分布に起因していると思われる弱いコンジュゲーション活性を示した。
【0028】
図11は、様々な方法を使用してDFOで機能化したc(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視吸光度スペクトルの比較を示す。c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットをDFO-シラン・コンジュゲートと混合すると、得られたNPの吸光度スペクトルは、機能化していないc(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのものと比較して実質的な差を示さず、低い反応効率を示唆する。さらに、cRGDYペプチドは、DFO-NCSと潜在的に反応可能な第一級アミン基を一つ有する。c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットとDFO-NCSによる合成の反応生成物の吸光度スペクトルも、245nm付近に、さらなる吸収特性を示さず、このDFOコンジュゲーションの変換収率が無視できるほどであることを示唆した(結果は、c(RGDyC)ペプチド上の第一級アミン基とDFO-NCSとの限定的な反応性も示唆する)。これらの実験で得られたC'ドットあたりのDFO基の平均数は、0.5未満である。これと比べて、DFO-NCSを、アミノ-シランを用いたPEG化後表面修飾反応から派生したアミン官能化NH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットと混合すると、C'ドット最終生成物は、300nm未満に実質的な吸光度を示し、有意なDFOの付着を示唆する(較正から、C'ドットあたりのDFO分子の平均は~20に達する)。これらのデータは、DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット上のDFO基は、c(RGDyC)ペプチド上の第一級アミン基ではなく、主に、PEG化後に導入されたアミン基を経て付着していることを示唆する。
【0029】
図12は、吸光度スペクトルのデコンボリューションによる、表面に2種以上の機能性リガンドを有する多機能性C'ドットあたりのリガンド数の推定を示す。
(A)機能性を段階的に増加させたC'ドットのC'ドットのUV-可視吸光度スペクトルの比較、それに基づいて、DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの各成分の吸光度スペクトルが生成される(B~D)。C'ドット表面上のc(RGDyC)ペプチドの吸光度シグナル(Cにおける緑色の曲線)は、c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの吸収シグナル(Aにおける緑色の曲線)からPEG-Cy5-C'ドットの吸収シグナル(A/Bにおける赤色の曲線)を差し引くことによって得られる。C'ドット表面上のDFOキレート剤の吸光度(Dにおける青色の曲線)は、DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの吸収シグナル(Aにおける青色の曲線)からcRGDY-PEG-Cy5-C'ドットの吸収シグナル(Aにおける緑色の曲線)を差し引くことによって得られる。得られたc(RGDyC)及びDFOのスペクトルは、その後、遊離c(RGDyC)ペプチド(Cにおける上の緑色の曲線)及びDFO-シラン分子(Dにおける上の青色の曲線)の吸光度と、それぞれ比較され(C及びD)、スペクトルの整合性を確認する。コンジュゲート型DFO-シランが、NP上のDFOとの比較のために、DFO-NCS分子の代わりに使用された理由は、アミン官能化リガンド(例えば、アミン-シラン)へのDFO-NCSの結合が、吸光度スペクトルの実質的な変化をもたらすためである(データは示さない)。それゆえ、DFO-シランの吸光度は、遊離DFO-NCSよりも、C'ドット上のDFO基とより一致する。PEG-Cy5-C'ドット(B)、C'ドット上のc(RGDyC)(Cにおける下の緑色の曲線)、及びC'ドット上のDFO(Dにおける下の青色の曲線)の得られた標準スペクトルは、正規化され、その後、他のDFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットサンプル(E)の吸光度スペクトルをフィットさせるための標準として使用された。適合方程式は、様々な成分の吸収強度の線形結合、すなわち、F(A, B, C, D)=A*IPEG-Cy5-C'ドット+B*Ic(RGDyC)+C*IDFO+Dであり、これはサンプルのスペクトルをよく説明する(E)。パラメータDは、UV-可視セットアップの考えられるベースラインのドリフトを補正するために、適合方程式に加えられる。フィッティングは、個々の成分の寄与(F~H)に、サンプルスペクトル(E)をデコンボリュートし、そこから、NPあたりのCy5、c(RGDyC)、及びDFO分子の数が、Cy5遊離色素、遊離c(RGDyC)ペプチド及び遊離DFO-シラン分子の吸光係数を用いて、それぞれ約1.6、23及び4と推定された。Cy5の吸光係数は、製造者が報告したものを使用し、遊離c(RGDyC)ペプチド及び遊離DFO-シラン分子の吸光係数のそれぞれの較正は、それぞれ(C)及び(D)に挿入した結果を用いて行った。
【0030】
図13は、他の種類のコンジュゲーション化学を使用したPEG化後表面修飾の一般化を示す。
(A~C)NPのPEG化後、精製前に、PEG-Cy5-C'ドットの反応混合物に、チオール-シランを導入することによって合成した、精製チオール官能化SH-PEG-Cy5-C'ドットのGPCエルグラム(A)、FCS相関曲線及びフィット(B)、及びUV-可視吸光度スペクトル(C)。追加のチオール官能化を行わなかったNPと比べて、250nm未満にわずかに増加した吸収が観察された(C)。
(D~F)チオール-シランの添加後、NP精製前に、チオール-官能化SH-PEG-Cy5-C'ドットの反応混合物に、FITC-NCS色素をさらに導入することによって合成した、精製FITC-PEG-Cy5-C'ドットのGPCエルグラム(D)、FCS相関曲線及びフィット(E)、及びUV-可視吸光度スペクトル(F)。チオール-官能化無しのPEG-Cy5-C'ドットを使用して同じように合成したものと比較して、FITC-PEG-Cy5-C'ドットの吸収シグナルは、450nm付近の波長で実質的に増加する。
(F)このシグナルは、DI水におけるFITC色素の吸光度シグナルと対応し、FITCの付着の成功と、SH-PEG-Cy5-C'ドット上のチオール基のアクセス性を確認する。低いFITCシグナルが、チオール-官能化無しのサンプルでも観察されたが、これは、C'ドットへのFITC色素の非特異的吸収か、又はCy5色素シラン-コンジュゲーション工程で使用した過剰のチオール-シランがもたらした、標準的C'ドット合成で残ったチオール基に起因していると思われる。
【0031】
図14は、アミン官能化多機能性C'ドットの安定性を示す。NP製造から6か月後の時点の、精製NH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット(A)、及びDFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット(B)のGPCエルグラム。両方のケースにおいて、NPは、安定性試験の間4℃で、PBSバッファー中で保存された。NH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット(A)のエルグラムは、より小さいモル質量の生成物と関連する小さな追加のピークを示し、シリカ表面上の第一級アミン基によって引き起こされたと思われるNP分解を示唆した。これに比べて、DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット(B)は、安定性試験の全期間にわたり安定であった。
【0032】
図15は、NP表面に3種類の機能性リガンドを有する多機能性C'ドットの吸光度スペクトルのデコンボリューション示す。
(A)PEG-Cy5-C'ドット、c(RGDyC)、DFO、及びFITCからの吸収シグナルの線形結合を使用して十分にフィットされるFITC-DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視吸光度スペクトル。デコンボリューションは、図12のDFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットについて記載したのと同様であるが、さらに、解析においてFITCのUV-可視シグナルを含む。そのフィットに基づいて、スペクトル(A)を、PEG-Cy5-C'ドット(B)、c(RGDyC)(C)、DFO(D)、及びFITC(E)からの寄与にデコンボリュートする。フィットにおけるこれらの寄与から、NPあたりのCy5、c(RGDyC)、DFO、及びFITC分子の数が、それぞれ約1.7、23、19及び4と推定される。
【0033】
図16は、直交表面機能化によって合成した4機能性C'ドットの特性評価及び吸光度スペクトルのデコンボリューションを示す。
(A~C)4機能性FITC-DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの、GPCエルグラム(A)、フィットを伴うFCS相関曲線(B)、デコンボリューションからのフィットを伴うUV-可視スペクトル(C)、ここでFITC及びDFO基は、段階的に付着されるのではなく、同時に導入された(図15の結果との比較)。
(D~G)PEG-Cy5-C'ドット(D)、c(RGDyC)(E)、DFO(F)、及びFITC(G)からの寄与への、UV-可視スペクトル(C)のデコンボリューション。フィットにおけるこれらの寄与から、NPあたりのCy5、c(RGDyC)、DFO、及びFITC分子の数が、それぞれ、約1.9、22、4及び3と推定される。
【0034】
図17は、5機能性C'ドットを調製するための小分子治療薬の付着を示す。
(A)EFV薬物分子をチオール基で官能化するための、EFVとアジド-PEG-チオールとのコンジュゲーション反応。得られたEFV-PEG-チオール分子は、その後、NPのPEG化後、DFOとFITCを導入する前に、チオール-エン反応によって、c(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットに付着された。
(B)FITC-DFO-EFV-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット、及び、FITC-DFO-c(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視スペクトルの比較。2つのサンプルは、EFV-PEG-チオールの添加有り、及び無しで、同じ反応バッチから得られた。
(C)C'ドット上のEFVの標準吸光度スペクトル、これは、FITC-DFO-EFV-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの吸光度から、FITC-DFO-c(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットの吸光度を差し引くことによって得られる。得られたスペクトルは、遊離EFV薬物のUV-可視スペクトルと一致し、C'ドットへのEFVの付着が成功したことを示唆する。遊離EFV薬物分子の吸光係数の較正を(C)に挿入する。
【0035】
図18は、DBCO-PEG-Cy5-C'ドットの特性評価を示す。
(A)異なるDBCOリガンド数を有する、DBCO-PEG-Cy5-C'ドットのデコンボリューションフィットを伴う、UV-可視吸光度スペクトルの比較。
(B~G)粒子あたりそれぞれ、32(B、D、F)及び64(C、E、G)のDBCO基を有するDBCO-PEG-Cy5-C'ドットのUV-可視吸光度デコンボリューション(B、C)、フィットを伴うGPCエルグラム(D、E)、及びフィットを伴うFCS相関曲線(F、G)。
【0036】
図19は、DBCO-DFO-PEG-Cy5-C'ドットの特性評価を示す。
(A)デコンボリューションフィットを伴うUV-可視吸光度スペクトル。
(B)UV-可視吸光度デコンボリューション。
(C)フィットを伴うGPCエルグラム。
(D)フィットを伴うFCS相関曲線。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、ナノ粒子(例えば、コア又はコア-シェルナノ粒子)を提供する。様々な例において、前記ナノ粒子は、極小ナノ粒子である。本開示は、前記ナノ粒子を製造する方法及び使用する方法も提供する。
【0038】
本明細書で提示される範囲はすべて、別段の記載がない限り、少数第十位までの範囲内のすべての値を含む。
【0039】
本明細書中で使用される場合、特に断らない限り、用語「基」は、化学構造の文脈で使用される場合、他の化学種に共有結合することができる1つ以上の末端を有する化学実体を指す。基の非限定的且つ例示的な例には、以下のものが含まれる:
【化1】
基のさらなる非限定的且つ例示的な例には、以下のものが含まれる:
【化2】
【0040】
本明細書中で使用される場合、特に断らない限り、用語「アルキル」は、分岐又は非分岐飽和炭化水素基を指す。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、アルキル基はC1~C8であってもよく、アルキル基はそれらの間の全ての整数値の炭素、及び炭素数の範囲(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、及びC8)を含む。アルキル基は置換されていなくてもよいし、1個以上の置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、例えば、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、及び-I)、脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、アリール基、アルコキシド基、アミン基、カルボキシレート基、カルボン酸、エーテル基、アルコール基、アルキン基(例えば、アセチレニル基)など、及びこれらの組合せなどの様々な置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書に開示される技術は、粒子サイズ、粒子サイズ分布、蛍光波長、蛍光輝度、組成、粒子PEG化、粒子表面機能化、合成収率、生成物純度、及び製造信頼性を含む、複数の側面において改善された制御を有する微小機能性PEG化蛍光シリカナノ粒子への水性合成アプローチを提供する。単一の有機-無機ハイブリッドナノ材料合成システムにおけるこれらの側面を網羅する系統的かつ正確な制御は、これまで達成されておらず、有機-無機ハイブリッドナノ材料の実験室から臨床への安全な橋渡しを妨げている。したがって、本明細書に開示される技術は、ナノ医療用途において有意な可能性を示す、明確に定義され、体系的に調節可能なシリカベースのナノ材料へのアクセスを提供する。
【0042】
本明細書に開示されるのは、例えば、NP表面上に1~5(例えば、1、2、3、4、又は5)種類の異なる機能性リガンドを有する、例えば、本開示のナノ粒子(例えば、超小型の10nm未満のPEG化コア又はコアシェルシリカ又はアルミノシリカナノ粒子)であり得る、ナノ粒子(例えば、コーネルプライムドット(C'ドット))をモジュール式及び直交式に機能化する多用途表面修飾アプローチである。表面修飾アプローチは、ナノ粒子表面上に配置されたPEG基中のギャップ、及び、例えば、アミン及び/又はチオール官能化シラン分子(種々の機能性リガンドで機能化されうる)を使用して挿入されたアンカー基を活用する。
【0043】
一例では、修飾アプローチは、様々な特性(例えば、蛍光検出、特異的細胞標的化、放射性同位体キレート化/標識化、レシオメトリックpH検知、薬物送達、又はそれらの組み合わせ)を単一のNPに組み込む5機能性ナノ粒子(例えば、C'ドット)の合成を提供し、一方、全体のNPサイズは、例えば10nm未満(例えば、8nm未満又は7nm未満)のままである。これは、C'ドットのPEG層が小分子に浸透可能であるという事実を利用することによって達成される。
【0044】
例えば、アミノ及び/又はチオール官能化シラン分子は、PEG鎖の間、及びナノ粒子(例えば、C'ドット)のシリカ表面上に挿入可能であり、これに、続いてさらなる機能性リガンドが付着され得る。挿入によるこのPEG化後表面修飾(PPSMI)アプローチは、高品質NP生成を減少させることなく、ワンポット型水系合成におけるナノ粒子(例えば、C'ドット)のPEG化と精製との間に挟まれた少数の余分な工程のみを必要とする。追加の機能性を有する得られたナノ粒子(例えば、C'ドット)は、臨床的に転換されたナノ粒子(例えば、Cドット)に近い物理化学的特性(例えば、サイズ及びPEG密度)を示し、それらの臨床用途の多様化へのゲートを開く。ナノ粒子合成(例えば、C'ドット合成)の改変は、例えば、粒子当たり多数の標的化ペプチドを可能にし、且つ、個々の成分への吸収スペクトルのデコンボリューションによって、異なる表面リガンドの具体的な数を定量的に評価するための容易かつ汎用性のある分光アプローチを可能にする。
【0045】
一態様では、本開示は、機能性ナノ粒子(例えば、極小機能性ナノ粒子)を作製する方法を提供する。本方法は例えば、本明細書で説明されるPPSMIアプローチのようなPPSMアプローチを含むことができる。この方法は、水性反応媒体(例えば、水)の使用に基づく。一例では、本開示のナノ粒子(単数又は複数)(例えば、ナノ粒子組成物)は、本開示の方法によって作製される。
【0046】
本方法は、2~15nm(例えば、2~10nm)のナノ粒子(例えば、最長寸法などが、このサイズであるもの)と、少なくとも1つの反応基を有する1つ以上の機能化前駆体(官能化前駆体)との反応に基づき、前記ナノ粒子は、複数のポリエチレングリコール(PEG)基を有する10nm未満のサイズ(例えば、2~9.99nmサイズ)の超小型ナノ粒子であってもよく、そのいくつか又は全ては、ナノ粒子の表面に共有結合された1つ以上の機能基(あるいは反応して、機能基を形成することができる基)で機能化されていてもよい(これは、PEG化ナノ粒子とも呼ばれる)。ナノ粒子の表面に共有結合した1つ以上の反応基を有する得られたナノ粒子は続いて、反応基と反応する機能基前駆体と反応し、ナノ粒子の表面に共有結合した1つ以上の機能基を有するナノ粒子を生じる。
【0047】
この方法は、「ワンポット」反応であってもよい。この方法はまた、個々の反応を含み得る。個々の反応は、同じ又は異なる反応物(例えば、ナノ粒子、機能化前駆体、機能基前駆体、溶媒など、及びそれらの様々な組み合わせ)との反応混合物を有する可能性がある。ナノ粒子は、任意の個々の反応の間で単離することができる。
【0048】
一例では、PEG化ナノ粒子を、1つ以上の機能化前駆体及び1つ以上の機能基前駆体と反応させる。反応はナノ粒子が最初に少なくとも1つの機能化前駆体と反応する限り、任意の順序で行うことができる。例えば、単一タイプの反応基を有するナノ粒子を、1つ以上の機能基前駆体と反応させる。別の例では2つ以上の構造的及び/又は化学的に異なる反応基(例えば、2、3、4、又は5つの構造的及び/又は化学的に異なる反応基)を有するナノ粒子を、2つ以上の異なる機能基前駆体(例えば、2、3、4、又は5つの構造的及び/又は化学的に異なる機能基前駆体)と反応させ、この際、個々の反応基/機能基前駆体は直交反応性を有する可能性がある。
【0049】
様々なコンジュゲーション化学/反応を使用して、機能基をナノ粒子の表面に共有結合させることができる。したがって、機能化前駆体は、様々な反応基を有することができる。多数の適切なコンジュゲーション化学及び反応が、当該分野で公知である。種々の例において、反応基は当該分野で公知の特定のコンジュゲーション化学又は反応において反応するものであり、そして機能基前駆体は、当該分野で公知の特定のコンジュゲーション化学/反応の相補的基を有する。
【0050】
機能化前駆体は1つ以上の反応基と、ナノ粒子の表面と反応して共有結合を形成することができる基(例えば、シラン基)とを含む。反応基は、機能基前駆体と反応して、ナノ粒子の表面に共有結合した機能基を形成することができる。反応基の非限定的な例としては、アミン基、チオール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、エステル基(例えば、活性化エステル基)、マレイミド基、アリル基、末端アルキン基、アジド基、チオシアネート基、及びそれらの組合せが挙げられる。機能化前駆体の例は当技術分野で公知であり、市販されているか、又は当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。
【0051】
様々な例において、機能化前駆体は、1つ以上の-Si-OH基(例えば、1、2、又は3個のSi-OH基) を含むシラン基及び少なくとも1つの反応基(例えば、1、2、又は3個の反応基)を含む。シラン基及び反応基は、連結基、例えば、アルキル基(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、又はC8アルキル基)を介して共有結合されてもよい。いかなる特定の理論に束縛されることも意図しないが、機能化前駆体のSi-OH基は、ナノ粒子の表面水酸基(例えば、表面Si-OH基)と反応すると考えられる。
【0052】
ナノ粒子(単数又は複数)を反応させて、様々な数の反応基及び/又は機能基を形成することができる。例えば、ナノ粒子を反応させて、ナノ粒子の表面に共有結合された1~100個の反応基及び/又は機能基(それらの間の全ての整数の反応基及び/又は範囲を含む)を形成する(例えば、複数のナノ粒子を反応させて、ナノ粒子あたり、平均1~100個の基及び/又は機能基(それらの間の全ての整数の反応基及び範囲を含む)を形成する)。様々な例において、ナノ粒子(単数又は複数)を反応させて、20~100、25~100、30~100、35~100、40~100、又は50~100個の基及び/又は機能基を形成することができる(例えば、複数のナノ粒子を反応させて、ナノ粒子のそれぞれの表面に共有結合した、平均20~100、25~100、30~100、35~100、40~100、又は50~100個の基及び/又は機能基を形成することができる)。所望の数の基及び/又は機能基を形成するための反応条件(反応物濃度、反応時間、反応温度など、又はそれらの組合せ)を決定することは、当業者の範囲内である。
【0053】
機能基前駆体は、ナノ粒子の反応基と反応して、ナノ粒子の表面に共有結合した機能基を形成することができる。機能基前駆体は、機能基(例えば、色素分子、キレート剤分子、標的化分子などに由来し得る、色素基、キレート剤基、標的化基、薬物基、放射性標識/同位体基など)及びナノ粒子の反応基と反応し得る基を有する。反応基と反応する基の非限定的な例としては、アミン基、チオール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、エステル基(例えば、活性化エステル基)、マレイミド基、アリル基、末端アルキン基、アジド基、チオシアネート基、及びそれらの組合せが挙げられる。様々な例において、機能基前駆体は、当技術分野で公知の特定のコンジュゲーション化学又は反応において反応する1つ以上の基を有する(例えば、機能基前駆体は、当技術分野で公知のクリックケミストリーなどの特定のコンジュゲーション化学/反応において、例えば末端アルキンなどのナノ粒子の反応基に相補的な1つ以上の基(例えば、アジドなど)を含む)。機能基前駆体の例は当技術分野で公知であり、市販されているか、又は当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。
【0054】
様々な機能基が当技術分野で知られている。機能基はまた、本明細書中ではリガンドと称され得る。機能基は様々な機能性(例えば、イメージング、センサー機能(例えば、pH検知、イオン検知、酸素検知、生体分子検知、温度検知など)のために使用され得る、例えば、蛍光及びリン光などの吸収/放出挙動、キレート化能力、標的化能力(例えば、抗体フラグメント、アプタマー、タンパク質/ペプチド(天然、切断型、又は合成)、核酸(例えば、DNA及びRNAなど)、診断能力(例えば、放射性同位体)、治療能力(例えば、薬物、核酸など)、及びこれらの組合せを有する。機能基は、画像化機能及び治療機能の両方を有し得る。機能基は、コンジュゲーション化学及び当技術分野で公知の反応を用いて化合物を誘導体化することによって、機能性を示す化合物から形成することができる。
【0055】
ナノ粒子によって担持される機能基は、診断剤及び/又は治療剤(例えば、放射性同位体、薬物、核酸など)を含むことができる。ナノ粒子は、異なる機能基の組合せを含んでもよい。
【0056】
薬物であり得る治療剤の非限定的な例としては、化学療法剤、抗生物質、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、及びそれらの組合せ、ならびにそれらに由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。適切な薬物/薬剤の例は、当技術分野で公知である。
【0057】
ナノ粒子は様々な色素(例えば、様々な色素から形成される機能基)を含むことができる。種々の例において、色素は有機色素である。一例では、色素は金属原子を含まない。色素の非限定的な例としては、蛍光色素(例えば、近赤外(NIR)色素)、リン光色素、非蛍光色素(例えば、1%未満の蛍光量子収率を示す非蛍光色素)、蛍光タンパク質(例えば、EBFP2(青色蛍光タンパク質の変異体)、mCFP(シアン蛍光タンパク質)、GFP(緑色蛍光タンパク質)、mCherry(赤色蛍光タンパク質の変異体)、iRFP720(近赤外蛍光タンパク質))、及びこれらに由来する基が挙げられる。種々の例において、色素は、電磁スペクトルのUV可視部分において吸収を示す。種々の例において、色素は電磁スペクトルの近赤外線部分(例えば、650~900nm)において励起及び/又は発光を有する。
【0058】
有機色素の非限定的な例としては、シアニン色素(例えば、Cy5(登録商標)、Cy3(登録商標)、Cy5.5(登録商標)、Cy7(登録商標)など)、カルボローダミン色素(例えば、ATTO 647N(ATTO-TEC及びSigma Aldrich(登録商標)から入手可能)、BODIPY色素(例えば、BODIPY 650/665など)、キサンテン色素(例えば、フルオレセイン色素、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローズベンガルなど)、エオシン(例えば、エオシンYなど)、及びローダミン(例えば、TAMRA、テトラメチルローダミン(TMR)、TRITC、DyLight(登録商標)633、Alexa 633、HiLyte 594など)、Dyomics(登録商標)DY800、Dyomics(登録商標)DY782及びIRDye(登録商標)800CWなど、及びこれらに由来する基が挙げられる。
【0059】
ナノ粒子は、様々な検知基(センサー基)を有することができる。検知基の非限定的な例には、pH検知基、イオン検知基、酸素検知基、生体分子検知基、温度検知基などが含まれる。適切な検知化合物/基の例は、当技術分野で知られている。
【0060】
ナノ粒子は、様々なキレート基を有することができる。キレート基の非限定的な例には、デスフェロキサミン(DFO)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ酢酸(NOTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリンなど、及びそれらから誘導される基が含まれる。キレート基は、放射性同位体を含んでもよい。放射性同位体の例は本明細書に記載されており、当技術分野で公知である。
【0061】
放射性同位体は機能基であり得る。放射性同位体は、診断剤及び/又は治療剤であり得る。例えば、124Iのような放射性同位体は、陽電子放出断層撮影法(PET)に使用される。放射性同位体の非限定的な例には、124I、131I、225Ac、177Luなどが含まれる。放射性同位体は、キレート基にキレート化され得る。
【0062】
標的化基はまた、ナノ粒子(単数又は複数)の標的化送達を可能にするために、ナノ粒子にコンジュゲートされてもよい。標的化基は、標的化分子から形成され得る(派生し得る)。例えば、特定の細胞型に関連する細胞成分(例えば、細胞膜上の又は細胞内コンパートメント中の)に結合することができる標的化基が、ナノ粒子にコンジュゲートされる。標的化基は、腫瘍マーカー又はシグナル伝達経路における分子であり得る。標的化基は、特定の細胞型(例えば、腫瘍細胞など)に対して特異的結合親和性を有し得る。特定の例では、標的化基は、ナノ粒子を特定の領域、例えば、肝臓、脾臓、脳などに誘導するために使用され得る。イメージングは、個体におけるナノ粒子の位置を決定するために使用され得る。標的化基の例としては、線状及び環状ペプチド(例えば、αvβ3インテグリン標的化環状(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸、チロシン-システイン)ペプチド、c(RGDyC)など)、抗体フラグメント、種々のDNA及びRNAセグメント(例えば、siRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書中で使用される場合、用語「誘導された(派生した)」は特に明記しない限り、化合物の天然の官能基の反応による基の形成(例えば、化合物のアミンと、カルボン酸との反応による基の形成)、又は化合物(反応して基を形成する)上に新しい化学反応基を導入するための化合物の化学修飾を指す。
【0064】
本明細書に記載される方法は、生成物の質に実質的な変化を生じることなく、例えば、10mLの反応から1000mL以上へ、直線的にスケールアップされてもよい。この拡張性は、ナノ粒子の大規模製造にとって重要である。
【0065】
前記方法は、水性反応媒体(例えば、水)中で実施される。例えば、前記水性媒体は水を含む。ある反応物が、極性非プロトン性溶媒(例えば、DMSO又はDMF)による溶液として、様々な反応混合物に添加される。様々な例において、前記水性媒体は、極性非プロトン性溶媒以外の有機溶媒(例えば、C1~C6アルコールなどのアルコール)を、10%以上、20%以上、又は30%以上含まない。ある例では、前記水性媒体は、アルコールを1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、又は5%以上含まない。ある例では、前記水性媒体は、検出可能なアルコールを含まない。例えば、本明細書に開示される任意の方法の任意の工程の反応媒体は、本質的に水、及び任意で極性非プロトン性溶媒からなる。
【0066】
前記方法の様々な時点で、pHを所望の値又は所望の範囲内に調節することができる。前記反応混合物のpHは、塩基の添加によって高めることができる。適切な塩基の非限定的な例には、水酸化アンモニウムが含まれる。
【0067】
様々なナノ粒子が使用できる。ナノ粒子の非限定的な例として、シリカナノ粒子及びアルミノシリケートナノ粒子が挙げられる。ナノ粒子は、コア-シェルナノ粒子であってもよい。ナノ粒子は、ポリエチレングリコール基で表面機能化されていてもよく(例えば、PEG化)、そのいくつか又は全ては、共有結合された1つ以上の機能基(あるいは反応して、機能基を形成することができる基)で機能化されていてもよい)。ナノ粒子は、反応して、機能基を形成することができる基を有するPEG基を含んでもよい。これらのナノ粒子は、1つ以上の機能基で機能化されてもよい。例えば、機能化リガンド(機能基前駆体)は、PEG基の反応基と反応する。ナノ粒子合成後のPEG基の機能化のための適切な反応化学及び条件の例は、当該分野で公知である。適切なナノ粒子及びそのようなナノ粒子の作製方法は、2017年11月2日に出願された米国特許出願第15/571,420号に開示されており、そのようなナノ粒子及び方法に関するその開示は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0068】
例えば、ナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子の表面(ポリエチレングリコール基で表面機能化[すなわち、PEG化]されていてもよい)を作製する方法には、
a)室温(地域に応じて、例えば15℃~25℃)で、水とTMOS(シリカコア形成モノマー)を含む(例えば、11mM~270mMの濃度で)反応混合物を形成すること、ここで、当該反応混合物のpH(例えば、水酸化アンモニウムなどの塩基を使用して調整できる)は6~9である(これが、平均径[例えば、最長寸法]が、例えば1nm~2nmであるコア前駆物質ナノ粒子の形成をもたらす);
b)i)前記反応混合物を、ある時間(t1)及び温度(T1)で保持(例えば、室温~95℃[T1]で0.5日~7日[t1])することにより、平均径(例えば、最長寸法)が2~15nmであるナノ粒子(コアナノ粒子)を形成するか、又は
ii)前記反応混合物を、必要に応じて室温まで冷却し、及び、a)で得られた反応混合物に、シェル形成モノマー(例えば、オルトケイ酸テトラエチル、TMOS以外の、例えば、TEOS又はTPOSなど)を添加する(前記添加は、シェル形成モノマー濃度が二次核形成の閾値未満となるように行われる)ことによって、平均径(例えば、最長寸法)が2~50nm(例えば、2~15nm)のコア-シェルナノ粒子を形成すること;
c)必要に応じて、b)i)で又はb)ii)で得られたコアナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子を含む反応混合物のpHを、pH6~10に調節すること;及び
d)任意で(コアナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子をPEG化する場合)、b)i)の又はb)ii)のコアナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子を含む反応混合物に室温で、PEG-シラン・コンジュゲート(シラン基に共有結合したPEG基を有する)(例えば、10mM~60mMの濃度で)(例えば、DMSO又はDMFなどの極性非プロトン性溶媒中に溶解されたPEG-シラン・コンジュゲート)を添加し、及び、得られた反応混合物をある時間(t2)及び温度(T2)で保持(例えば、室温[T2]で0.5分~24時間[t2])すること(これによって、PEG-シラン・コンジュゲート分子の少なくとも一部がb)で得られたコアナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子の表面の少なくとも一部に吸着する);
e)d)の混合物をある時間 (t3)及び温度(T3)で加熱する(例えば、40~100℃[T3]で1時間~24時間[t3])ことによって、ポリエチレングリコール基で表面機能化(官能化)されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基で表面機能化されたコア-シェルナノ粒子を形成すること、
が含まれる。
【0069】
前記ナノ粒子は、合成後の処理工程にかけられてもよい。例えば、合成後(例えば上記例のe)の後)、溶液を室温まで冷まし、その後透析膜チューブ(例えば、分子量カットオフ[分画分子量]が10,000であり、市場で入手可能な(例えば、Pierceから)透析膜チューブ)に移す。透析チューブに入れた溶液を、DI-水(水の容積は、反応容積より200倍以上大きい、例えば、10mLの反応に対して2000mLの水)で透析し、水を1~6日間毎日交換し、残存試薬、例えば水酸化アンモニウムと遊離シラン分子を洗い流す。前記粒子を、その後200nmのシリンジフィルター(fisher brand)を通してろ過し、凝集物又はダストを除去する。必要であれば、さらに高純度の合成粒子(例えば、未反応試薬又は凝集塊が1%以下)を保証するために、さらなる精製プロセス(ゲル浸透クロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーを含む)を、前記ナノ粒子に適用してもよい。任意の精製プロセス後、もし他の溶媒を更なるプロセスで使用するのであれば、精製されたナノ粒子を脱イオン水に戻してもよい。
【0070】
前記コアはシリコンコアであってもよい。シリコンコア形成で使用される反応混合物は、唯一のシリコンコア形成モノマーとして、TMOSを含んでもよい。
【0071】
前記コアはアルミノシリケートコアであってもよい。アルミノシリケートコア形成で使用される反応混合物は、唯一のシリコンコア形成モノマーとしてTMOSを、及び一以上のアルミナコア形成モノマー(例えば、アルミニウムアルコキシド、例えば、アルミニウム-tri-sec-ブトキシド又は複数のアルミニウムアルコキシドの組み合わせなど)を含むことができる。
【0072】
アルミノシリケートコア合成の場合、反応混合物のpHは、アルミナコア形成モノマーを添加する前に、pH1~2に調節される。アルミノシリケートコア形成後、溶液のpHは、pH7~9に調節され、そして任意で、100~1,000g/moLの分子量(その間の全ての整数値及び範囲を含む)のPEGを、10mM~75mMの濃度(その間の全ての整数値及び範囲を含む)で、前記反応混合物のpHをpH7~9に調節する前に前記反応混合物に添加する。
【0073】
コアナノ粒子を形成するために使用される反応混合物は、色素前駆物質を含んでもよい。この場合、得られたコア又はコア-シェルナノ粒子は、その中に被包された又は取り込まれた一以上の色素分子を有する。例えば、コアナノ粒子は、その中に被包された、1,2,3,4,5,6,又は7つの色素分子を有する。色素前駆物質の混合物を使用してもよい。前記色素前駆物質は、シランにコンジュゲートした色素である。例えば、マレイミド官能基を有する色素が、チオール官能基を有するシランにコンジュゲートされる。別の例では、NHSエステル官能基を有する色素が、アミン官能基を有するシランにコンジュゲートされる。適切なシランとコンジュゲーション化学の例は、当該分野において既知である。前記色素は、波長400nm(青)~800nm(近赤外)の発光(例えば、蛍光)を有してもよい。例えば、前記色素はNIR色素である。適切な色素の例が本明細書中に記載される。様々な例において、ポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子又はポリエチレングリコール基で表面機能化されたコア-シェルナノ粒子は、その中に被包された一以上の蛍光色素分子を有する。
【0074】
シリカシェルは、前記コアナノ粒子上に形成されることができる。シリカシェルは、例えばコア形成が完了した後、形成される。シリカシェル形成前駆物質の例には、オルトケイ酸テトラアルキル(例えば、TEOS及びTPOSなど)が含まれる。シリカシェル形成前駆物質の混合物を使用してもよい。TMOSは、シリカシェル形成前駆物質ではない。シリカシェル形成前駆物質は、極性非プロトン性溶媒による溶液として、前記反応混合物に添加されてもよい。適切な極性非プロトン性溶媒の例として、DMSO及びDMFが挙げられる。
【0075】
シリカシェル形成前駆物質は別々のアリコートで添加することが望ましい。例えば、前記シェル形成モノマー(単数又は複数)を、別個のアリコート(例えば、40~500アリコート)で添加する。前記アリコートは、一以上のシェル形成前駆物質(例えば、TEOS及び/又はTPOS)と極性非プロトン性溶媒(例えば、DMSO)を含むことができる。各アリコートは、1~20マイクロモルのシェル形成モノマーを有することができる。アリコートを添加する間隔は、1~60分(その間の全ての整数の分の値と範囲を含む)とすることができる。反応混合物のpHは、シリカシェル形成プロセスの間に変動し得る。pHを7~8に維持するためにpHを調節することが望ましい。
【0076】
コア又はコア-シェルナノ粒子形成後、前記コア又はコア-シェルナノ粒子を、一以上のPEG-シラン・コンジュゲートと反応させてもよい。様々なPEG-シラン・コンジュゲートを、一緒に又は様々な順番で添加することができる。このプロセスは本明細書においてPEG化とも称される。PEG-シランの変換率は5%と40%の間であり、ポリエチレングリコールの表面密度は、nm2あたり1.3~2.1のポリエチレングリコール分子である。リガンド機能化PEG-シランの変換率は40~100%であり、各粒子と反応するリガンド機能化PEG-シラン前記物質の数は3~90である。
【0077】
PEG化は様々な時間と温度で実施することができる。例えば、シリカコア又はコア-シェルナノ粒子の場合は、PEG化は室温で0.5分から24時間(例えば一晩)ナノ粒子と接触させることによって実施できる。例えば、アルミナ-シリケートナノ粒子(例えば、アルミナ-シリケートコアナノ粒子、又はシリカコア・シリカシェルナノ粒子)の場合、温度は80℃で一晩である。
【0078】
PEG-シランのPEG基の鎖長(すなわち、PEG基の分子量)は、3~24のエチレングリコールモノマー(例えば、3~6、3~9、6~9、8~12、又は8~24のエチレングリコールモノマー)に調節されてもよい。PEG-シランのPEG鎖長は、粒子を取り囲むPEG層の厚みとPEG化粒子の薬剤動態特性を調節するために選択できる。リガンド-機能化PEG-シランのPEG鎖長は、粒子のPEG層の表面上のリガンド基のアクセス性(露出度)(これにより結合性能及び標的指向性能が変化する)を調節するために使用することができる。
【0079】
PEG-シラン・コンジュゲートは、リガンドを含むことができる。リガンドは、PEG-シラン・コンジュゲートのPEG基に共有結合する(例えば、PEG-シラン・コンジュゲートのヒドロキシ末端を通じて)。前記リガンドは、シラン基にコンジュゲートした末端と反対側のPEG基の末端にコンジュゲートできる。PEG-シラン・コンジュゲートは、ヘテロ二官能性PEG化合物(例えば、マレイミド官能基を有するヘテロ二官能性PEG、NHSエステル官能基を有するヘテロ二官能性PEG、アミン官能基を有するヘテロ二官能性PEG、チオール官能基を有するヘテロ二官能性PEGなど)を使用して形成することができる。適切なリガンド(機能基)の例が、本明細書中に記載される。
【0080】
例えば、リガンドを含むPEG-シラン・コンジュゲートを、PEG-シランに加えて添加する(例えば、上記例のd)で)。この場合、リガンドを含むポリエチレングリコール基及びポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基及びリガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子、が形成される。リガンド-機能化又は反応基-機能化PEG-シランの変換率は40~100%であり、各粒子と反応するリガンド-機能化PEG-シラン前駆物質の数は3~600である。
【0081】
例えば、PEG-シラン・コンジュゲートを添加(例えば、上記例のd)で) する前後(例えば、20秒~5分前又は後)に、リガンドを含むPEG-シラン・コンジュゲートを(例えば、0.05mM~2.5mMの間の濃度で)、室温で、前記コアナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子を含む反応混合物(例えば、上記例のb)i)又はb)ii)から得られたもの)に添加する。得られた反応混合物を、ある時間(t4)と温度(T4)で(例えば、室温[T4]で0.5分から24時間[t4])保持し、PEG-シラン・コンジュゲート分子の少なくとも一部を、前記コアナノ粒子又はコア-シェルナノ粒子(例えば、上記例のb)から得られたもの)の表面の少なくとも一部に吸着させる。続いて、前記反応混合物を、ある時間(t5)と温度(T5)で(例えば、40℃~100℃[T5]で1時間~24時間[t5])加熱し、リガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、又はリガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子を形成する。任意で、その後に、得られた反応混合物(リガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、又はリガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子を含む反応混合物)に、PEG-シラン・コンジュゲート(リガンド無しのPEG-シランの濃度は10mM~75mMの間)(例えば、極性非プロトン性溶媒[例えば、DMSO又はDMFなど]に溶解したPEG-シラン・コンジュゲート)を室温で添加し、得られた反応混合物をある時間(t6)と温度(T6)で(例えば、室温[T6]で0.5分~24時間[t6])保持する(それによって、PEG-シラン・コンジュゲート分子の少なくとも一部が、リガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子の表面の少なくとも一部、又はリガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子の少なくとも一部に吸着される)、及び、得られた混合物をある時間(t7)と温度(T7)で(例えば、40℃~100℃[T7]で1時間~24時間[t7])加熱し、それによって、ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子を形成する。
【0082】
別の例では、前記PEG-シランの少なくとも一部又は全てが、PEG基の末端(PEG-シラン・コンジュゲートのシラン基コンジュゲート末端とは反対側の末端)に反応基を有し(ヘテロ二官能性PEG化合物から形成される)、それにより、反応基を有するポリエチレングリコール基、及び任意でポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、反応基を有するポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子を形成する。任意で、ポリエチレングリコール基を、第二反応基(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたコアシェルナノ粒子の反応基と同じであっても異なっていてもよい)で機能化された第二リガンド(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたコアシェルナノ粒子のリガンドと同じであっても異なっていてもよい)と反応させ、それによって、第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基、及び、任意でポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基、及び任意で、ポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子を形成する。
【0083】
別の例では、前記PEG-シランの少なくとも一部又は全てが、PEG基の末端(PEG-シラン・コンジュゲートのシラン基コンジュゲート末端とは反対側の末端)に反応基を有し(ヘテロ二官能性PEG化合物から形成される)、反応基を任意で有するポリエチレングリコール基、及び任意でポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、反応基を有するポリエチレングリコール基、及び任意でポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子を形成した後、第二反応基(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたコアシェルナノ粒子の反応基と同じであっても異なっていてもよい)で機能化された第二リガンド(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたコアシェルナノ粒子のリガンドと同じであっても異なっていてもよい)と反応させ、それによって、第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基、及び、任意でポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基、及び任意で、ポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子を形成し、ここで、前記PEG-シランの少なくとも一部はPEG基の末端(PEG-シラン・コンジュゲートのシラン基コンジュゲート末端とは反対側の末端)に反応基を有し(ヘテロ二官能性PEG化合物から形成される)、反応基を有するポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、反応基を有するポリエチレングリコール基で表面機能化されたコアシェルナノ粒子、反応基を有するポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたナノ粒子、又は反応基を有するポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたコアシェルナノ粒子の形成後、前記反応基を、ある反応基で機能化された第二リガンド(ポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基とリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたコアシェルナノ粒子のリガンドと同じであっても異なっていてもよい)と反応させ、それによって、ポリエチレングリコール基と第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基とで表面機能化されたナノ粒子、ポリエチレングリコール基と第二リガンドで機能化されたポリエチレングリコール基とで表面機能化されたコアシェルナノ粒子、リガンドを含むポリエチレングリコール基で表面機能化されたナノ粒子、又はポリエチレングリコール基と第二リガンドで機能化されたリガンドを含むポリエチレングリコール基とで表面機能化されたコアシェルナノ粒子を形成する。
【0084】
前記ナノ粒子は、狭い粒度分布を有することができる。様々な例において、前記ナノ粒子の粒度分布(PEG化の前又は後)(これは、外来性物質、例えば、未反応試薬、ダスト粒子/凝集物などを含まない)は、平均粒径(例えば、最長寸法)+/-5,10,15,又は20である。粒径は、当該分野で既知の方法で測定できる。例えば、粒径は、TEM、GPS、又はDLSで決定される。DLSは、系統偏差を含み、それゆえ、DLS粒度分布は、TEM又はGPSによって決定される粒度分布と相関しないかもしれない。
【0085】
ナノ粒子は、機能基以外の色素分子に由来する1つ以上の基(例えば、ナノ粒子当たり1~7個の色素)を含んでもよい。例えば、本明細書中に記載されるような色素分子又は色素分子の誘導体は、ナノ粒子のネットワークに(例えば、色素前駆物質の部分であり得るリンカー部分を介して)共有結合される。得られた共有結合色素基は、元の色素分子に由来する。色素分子から誘導される基の例示的な非限定的な例は、本明細書に記載される。一実施例では、ゾル-ゲルシリカ前駆体(例えば、Rがアルキル基である-Si(OR)3基)にコンジュゲートされた色素を含む色素前駆物質を使用して、色素がシリカ又はアルミノシリケートネットワークに組み込まれる。
【0086】
一面では、本開示は、本開示のナノ粒子を含む組成物を提供する。前記組成物は、一以上の種類を含むことができる(例えば、異なる平均径及び/又は一以上の異なる組成的特徴を有する)。該組成物はNP表面上に配置された(例えば、共有結合された)1~5(例えば、1、2、3、4、又は5)種類の異なる機能性リガンドを有する機能性ナノ粒子を含むことができる。例えば、5機能性ナノ粒子(例えば、C'ドット)は、様々な特性、すなわち、蛍光検出、特異的細胞標的化、放射性同位体キレート化/標識化、レシオメトリックpH検知、及び薬物送達を単一のNPに統合するが、全体のNPサイズは7nm未満のままである)。
【0087】
例えば、組成物は、複数のコアナノ粒子及び/又はコア-シェルナノ粒子(例えば、シリカコアナノ粒子、シリカコア-シェルナノ粒子、アルミノシリケートコアナノ粒子、アルミノシリケートコア-シェルナノ粒子)を含む。ナノ粒子は、1種以上のポリエチレングリコール基(例えば、ポリエチレングリコール基、機能化[例えば、一以上のリガンド及び/又は反応基で機能化された]ポリエチレングリコール基、又はそれらの組み合わせ)で表面機能化されていてもよい。ナノ粒子は、その中に被包された一つの色素又は複数の色素の組み合わせ(例えば、NIR色素)を有していてもよい。色素分子は、ナノ粒子に共有結合される。前記ナノ粒子は、本開示の方法によって作製できる。
【0088】
組成物中のナノ粒子は、様々な大きさを有することができる。前記ナノ粒子は、2~15nmのコアサイズ(その間の全ての0.1nmの値及び範囲を含む)を有することができる。様々な例において、前記ナノ粒子は、2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5,8,8.5,9,9.5,10,10.5,11,11.5,12,12.5,13,13.5,14,14.5又は15nmのコアサイズを有する。様々な例において、前記ナノ粒子(例えば、コア及び/又はコア-シェルナノ粒子)の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%又は100%が、2~15nmの大きさ(例えば、最長寸法)を有する。前記ナノ粒子は、極小ナノ粒子であってもよい。様々な例において、極小ナノ粒子(例えば、極小コア及び/又はコア-シェルナノ粒子)は、10nm以下の大きさを有する(例えば、2~8nm又は2~7nm)。様々な例において、前記極小粒子(例えば、極小コア及び/又はコア-シェルナノ粒子)の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%又は100%が、10nm以下の大きさ(例えば、最長寸法)を有する(例えば、2~8nm又は2~7nm)。代表的な粒度分布の場合、前記組成物は、粒径判別(粒径選択/除去)プロセス(例えば、ろ過、透析、クロマトグラフィー(例えば、GPC)、遠心分離など)にかけられなくてよい。例えば、本開示のナノ粒子は、前記組成物の唯一のナノ粒子である。
【0089】
前記組成物は、さらなる成分を含んでもよい。例えば、前記組成物は、個体(例えば、哺乳類、例えばヒト)に投与するために適切なバッファーも含むことができる。前記バッファーは、薬学的に許容できるキャリアでもよい。
【0090】
前記組成物は、合成された際、そして合成後の加工/処理の前に、ナノ粒子、粒子(2~15nm)、ダスト粒子/凝集物(>20nm)、未反応試薬(<2nm)を有してもよい。
【0091】
一面では、本開示は、本開示のナノ粒子及び組成物の使用を提供する。例えば、ナノ粒子又はナノ粒子を含む組成物は、治療(例えば、送達)及び/又は診断(例えば、イメージング)方法で使用される。
【0092】
ナノ粒子によって運ばれるリガンド(機能基)は、診断及び/又は治療薬(例えば、薬物)を含んでもよい。治療薬の例には、化学療法剤、抗生物質、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。親和性リガンドが前記ナノ粒子にコンジュゲートされ、ナノ粒子の標的化送達を可能にしてもよい。例えば、前記ナノ粒子は、特定の細胞型に関連する細胞成分(例えば、細胞膜上の又は細胞内コンパートメント中の)に結合する能力のあるリガンドにコンジュゲートされる。標的にされる分子は、腫瘍マーカー又はシグナル伝達経路の分子であってもよい。前記リガンドは、ある細胞型(例えば、腫瘍細胞など)に特異的に結合する親和性を有してもよい。ある例では、前記リガンドは、ナノ粒子を特定のエリア、例えば、肝臓、脾臓、脳などに導くために使用されてもよい。個体におけるナノ粒子の位置を決定するためにイメージングが使用できる。
【0093】
前記ナノ粒子又はナノ粒子を含む組成物は、例えば、薬学的に許容できるキャリア(前記ナノ粒子を体の一つの器官又は部分から、体の別の器官又は部分に輸送するのを促進するもの)内に含まれて、個体に投与されてもよい。個体の例には、ヒト及び非ヒト動物などの動物が含まれる。個体の例には哺乳類も含まれる。
【0094】
薬学的に許容できるキャリアは、一般的に水性である。薬学的に許容できるキャリアで使用できる物質の例には、糖(例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース);デンプン(例えば、コーンスターチ及びポテトスターチ);セルロース、及びその誘導体(例えばカルボキシメチル・セルロース・ナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース);粉末トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバター及び坐剤ワックス);油(例えば、ピーナツ油、綿実油、サフラワー油、セサミ油、オリーブ油、コーン油、大豆油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル);アガー;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム):アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;及び製薬処方で採用される他の非毒性の適合物質が含まれる(REMINGTON'S PHARM. SCI., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton (1975)参照)。例えば、非毒性であるさらなる適切なキャリア又は賦形剤として、バッファー(例えば、酢酸塩、トリス、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸);抗酸化剤(アスコルビン酸及びメチオニンが挙げられる)、保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど);フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチル又はプロピルパラベンなど);カテコール;レゾルシノール:シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール;アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジンなど);単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、又はデキストリンが挙げられる);キレート剤(例えば、EDTAなど);等張化剤(tonicifier;例えば、トレハロース及び塩化ナトリウムなど);糖類(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなど);界面活性剤(例えば、ポリソルベートなど);塩形成対イオン(例えば、ナトリウムなど);及び/又は非イオン性界面活性剤(例えば、Tween又はポリエチレングリコール(PEG)など)等が挙げられる。医薬組成物は、他の治療剤を含んでもよい。
【0095】
本ナノ粒子を含む組成物は、任意の適切なルートで、単独で又は他の剤と組み合わせて、個体に投与できる。投与は、任意の手段、例えば、非経口的、粘膜、肺、局所、カテーテルを使用した、又は経口的手段による送達などによって、達成できる。非経口的送達には、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、及び臓器の組織への注射が含まれる。粘膜送達には、例えば、鼻腔内送達が含まれる。肺送達には、薬物の吸入が含まれる。カテーテルを使用する送達には、イオン注入カテーテル系送達による送達が含まれる。経口送達には、腸溶性剤による送達、又は経口での液体の投与が含まれる。経皮送達には、皮膚パッチの使用による送達が含まれる。
【0096】
本ナノ粒子を含む組成物の投与後、NPの経路、位置、及びクリアランスを、一以上の画像処理技術を使用してモニターできる。適切な画像処理技術の例には、Artemis Fluorescence Camera Systemが含まれる。
【0097】
本開示は、細胞、細胞外成分又は組織などの生物材料をイメージング(画像処理)する方法を提供し、当該方法は、前記生物材料を、一以上の色素を含むナノ粒子あるいは当該ナノ粒子を含む組成物と接触させること;励起電磁(e/m)放射線(例えば、光)を、組織又は細胞に照射し、それによって、前記色素分子を励起させること;前記励起色素分子によって放射されるe/m放射線を検出すること;及び検出されたe/m放射線を捕獲し処理して、前記生物材料の一以上のイメージを提供することを含む。これらの工程の一以上を、インビトロ又はインビボで実施できる。例えば、細胞又は組織は個体に存在してもよく、培地中に存在してもよい。e/m放射線への細胞又は組織の暴露は、インビトロで(例えば、培養条件下で)達成されてもよく、又はインビボで達成されてもよい。個体内又は個体の体の一部内にあり、容易に到達できない細胞、細胞外物質、組織、器官などにe/m放射線を照射するために、光ファイバー装置が使用できる。
【0098】
例えば、個体内の領域をイメージングする方法は、(a)前記個体に、一以上の色素分子を含む本開示のナノ粒子又は組成物を投与すること;(b)被検者に励起光を照射し、それによって、前記一以上の色素分子の少なくとも一つを励起すること;(c)励起された光を検出すること(検出された光は、励起光による励起の結果として個体中の前記色素分子によって放射されたものである);及び(d)検出された光に対応するシグナルを処理して前記被検者内の領域のイメージを一つ以上提供すること(例えば、リアルタイムのビデオストリーム);を含む。
【0099】
蛍光粒子は、遊離色素より明るいので、蛍光粒子は、組織画像処理のため、及び、転移腫瘍を画像化するために使用できる。加えて、又はその代わりに、リガンド-機能化粒子のリガンド基(例えば、チロシン残基又はキレート剤)に、又は特定のリガンド機能化がないPEG化粒子のシリカマトリクスに、光誘起電子移動イメージングのために、放射性同位体をさらに付着させることができる。前記放射性同位体が治療のために選択される場合(例えば、225Ac又は177Luなど)、これは付加的な放射線治療特性を有する粒子をもたらすであろう。
【0100】
例えば、薬物-リンカー・コンジュゲート(このリンカー基は、薬物放出のために、腫瘍内の酵素又は酸性条件で特異的に切断されることができる)を、薬物送達用の粒子上の機能性リガンドに共有結合的に付着することができる。例えば、薬物-リンカー-チオール・コンジュゲートは、マレイミド-PEG-粒子の合成後、チオール-マレイミド・コンジュゲーション反応を通じて、マレイミド-PEG-粒子に付着できる。さらに、薬物-リンカー・コンジュゲートと癌を標的とするペプチドの両方を、腫瘍に特異的に薬物送達するために、粒子表面に付着することができる。
【0101】
本明細書に開示された様々な実施形態と例において記載する方法の工程は、本開示の方法を実施し、本開示の組成物を製造するのに十分である。このように、一実施形態では、前記方法は本質的に、本明細書に開示の方法の工程の組み合わせからなる。別の実施形態では、前記方法は、そのような工程のみからなる。
【0102】
以下の陳述において、本開示の方法及び組成物の種々の例、ならびに組成物を使用する方法が記載される:
陳述1.本開示の機能性ナノ粒子を形成する方法であって、ナノ粒子の表面に共有結合した複数のポリエチレングリコール(PEG)基を有する、例えば、シリカナノ粒子又はアルミノシリケート粒子などの(例えば、2~15nm(例えば、10nm以下、例えば、2~10nm又は2~9.99nmなど)のサイズ(例えば、最長寸法)を有する)ナノ粒子を、少なくとも1つの反応基を有する1つ以上の機能化前駆体と接触させることを含み、これにより、機能性ナノ粒子の表面に共有結合した少なくとも1つの反応基を有する機能性ナノ粒子が形成される、方法。
陳述2.前記接触が水性媒体(例えば、水)中で行われる、陳述1に記載の方法。
陳述3.前記ナノ粒子が2つ以上の機能化前駆体(例えば、各々が少なくとも1つの反応基を有する2、3、4、又は5つの機能化前駆体、ここで、個々の機能化前駆体の反応基の少なくとも2つ又は全てが、他の機能化前駆体の反応基と構造的に異なる)と接触する場合、当該接触が単一の反応混合物中で実施される、陳述1又は2に記載の方法。
陳述4.前記ナノ粒子が2つ以上の機能化前駆体(例えば、それぞれが少なくとも1つの反応基を有する2、3、4、又は5つの機能化前駆体、ここで、個々の機能化前駆体の反応基の少なくとも2つ又はすべてが、他の機能化前駆体の反応基と構造的に異なる)と接触する場合、当該接触が、少なくとも2つの異なる反応混合物中で実施される、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述5.さらに、前記機能性ナノ粒子を、少なくとも1つの追加の機能化前駆体と接触させることを含み、個々の機能化前駆体の少なくとも1つ、少なくとも2つ又はすべての反応基が、他の機能化前駆体の反応基と構造的に異なっており、ここで、前記少なくとも1つの追加の機能化前駆体の官能基が、機能化前駆体の反応基と構造的に異なっており、前記機能性ナノ粒子を2つ以上の追加の機能化前駆体と接触させる場合、個々の機能化前駆体の反応基は、他の機能化前駆体の反応基と構造的に異なっており、機能性ナノ粒子の表面に共有結合した2つ以上の反応基を有する機能性ナノ粒子が形成される、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述6.さらに、前記機能性ナノ粒子を、1つ以上の機能基を有する1つ以上の機能基前駆体と接触させることを含み、ここで、機能基を有する機能性ナノ粒子が形成され、各機能基が、機能性ナノ粒子の表面に共有結合している、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述7.各機能基前駆体との接触が単一の反応混合物中で行われる、陳述6に記載の方法。
陳述8.個々の機能基前駆体との各接触について、前記接触を別個の反応混合物中で行う、陳述6に記載の方法。
陳述9.ポリエチレングリコール(PEG)で表面機能化されたナノ粒子を、少なくとも1つの第一反応基を有する第一機能化前駆体と接触させ、機能性ナノ粒子の表面に共有結合した前記少なくとも1つの反応基を有する第一機能性ナノ粒子を形成する、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述10.さらに、前記機能性ナノ粒子を、少なくとも1つの第二反応基を有する第二機能化前駆体と接触させることを含み、ここで、前記第一反応基及び前記第二反応基は構造的に異なるものであり、前記機能性ナノ粒子の表面にそれぞれ共有結合した前記少なくとも1つの第一反応基及び前記少なくとも1つの第二反応基を有する第二機能性ナノ粒子が、形成される、陳述9に記載の方法。
陳述11.さらに、前記第二機能性ナノ粒子を、少なくとも1つの第三反応基を有する第三機能化前駆体と接触させることを含み、ここで、前記第一反応基、前記第二反応基、及び前記第三反応基は、構造的に互いに異なるものであり、機能性ナノ粒子の表面にそれぞれ共有結合した前記少なくとも1つの第一反応基、前記少なくとも1つの第二反応基、及び前記少なくとも1つの第三反応基を有する第三機能性ナノ粒子が形成される、陳述10に記載の方法。
陳述12.さらに、前記第三機能性ナノ粒子を、少なくとも1つの第三反応基を有する第三機能化前駆体と接触させることを含み、ここで、前記第一反応基、前記第二反応基、及び前記第三反応基は、構造的に互いに異なるものであり、機能性ナノ粒子の表面にそれぞれ共有結合した前記少なくとも1つの第一反応基、前記少なくとも1つの第二反応基、及び前記少なくとも1つの第三反応基を有する第三機能性ナノ粒子が形成される、陳述11に記載の方法。
陳述13.さらに、前記第三機能性ナノ粒子を、少なくとも1つの第四反応基を有する第四機能化前駆体と接触させることを含み、ここで、前記第一反応基、前記第二反応基、前記第三反応基、及び前記第四反応基は、構造的に互いに異なるものであり、機能性ナノ粒子の表面にそれぞれ共有結合した前記少なくとも1つの第一反応基、前記少なくとも1つの第二反応基、前記少なくとも1つの第三反応基、及び前記少なくとも1つの第四反応基を有する第四機能性ナノ粒子が形成される、陳述12に記載の方法。
陳述14.さらに、第四機能性ナノ粒子を、少なくとも1つの第五反応基を有する第五機能化前駆体と接触させることを含み、ここで、前記第一反応基、前記第二反応基、前記第三反応基、前記第四反応基、及び前記第五反応基は、構造的に互いに異なるものであり、機能性ナノ粒子の表面にそれぞれ共有結合した前記少なくとも1つの第一反応基、前記少なくとも1つの第二反応基、前記少なくとも1つの第三反応基、前記少なくとも1つの第四反応基、及び前記少なくとも1つの第五反応基を有する第五機能性ナノ粒子が形成される、陳述13に記載の方法。
陳述15.さらに、前記機能性ナノ粒子を、1つ以上の機能基を有する1つ以上の機能基前駆体(例えば、第一機能基前駆体、第二機能基前駆体、第三機能基前駆体、第四機能基前駆体、第五機能基前駆体、又はそれらの組み合わせ)と接触させることを含み、ここで、機能基を有する機能性ナノ粒子が形成され、各機能基が、機能性ナノ粒子の表面に共有結合している、陳述9~14のいずれか1つに記載の方法。
陳述16.各機能基前駆体との接触が、単一の反応混合物中で行われる、陳述15に記載の方法。
陳述17.個々の機能基前駆体との各接触について、前記接触を別個の反応混合物中で行う、陳述15に記載の方法。
陳述18.前記機能化前駆体が、アミン基、チオール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、エステル基(例えば、活性化エステル基)、マレイミド基、アリル基、末端アルキン基、アジド基、チオシアネート基、及びそれらの組み合わせから選択される反応基を有する、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述19.前記機能化前駆体が、1つ以上のシラン基及び1つ以上の反応基を有する、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述20.前記シラン基が以下のものから選択される、前記陳述のいずれか1つに記載の方法:
【化3】
ここで、Rはそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、C1、C2、C3又はC4アルキル基)であり、Rはそれぞれ独立して、H又はアルキル基(例えば、C1、C2、C3又はC4アルキル基)である。
陳述21.前記機能化前駆体の1又は複数が以下の構造を有する、前記陳述のいずれか1つに記載の方法:
【化4】
ここで、Xは本明細書に記載されている反応基(例えば、アミン基、チオール基、カルボン酸基、カルボキシレート基、エステル基(例えば、活性化エステル基)、マレイミド基、アリル基、末端アルキン基、アジド基、又はチオシアネート基)、nは例えば、1,2,3,4,5,6,7又は8であり、Rはそれぞれ独立して、アルキル基(例えば、C1、C2、C3又はC4アルキル基)である。
陳述22.少なくとも1つの機能基又は全ての機能基が、リンカー基を介してナノ粒子の表面に共有結合している、陳述6~8及び15~20のいずれか1つに記載の方法。
陳述23.それぞれの個々の場合におけるリンカー基がアルキル基(例えば、C1、C2、C3又はC4アルキル基)から選択される、陳述22に記載の方法。
陳述24.前記機能基が、本明細書に記載の機能基及びそれらの組み合わせから選択される、陳述6~8及び15~20のいずれか1つに記載の方法。
陳述25.本明細書に記載される複数のナノ粒子(例えば、複数のナノ粒子であって、各ナノ粒子は、ナノ粒子表面に共有結合した複数のポリエチレングリコール(PEG)基と、機能性ナノ粒子の表面に共有結合した少なくとも1つの機能基(例えば、1、2、3、4、又は5つの異なるタイプの機能基)を含んでいる)を含む組成物であって、ナノ粒子の少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)が、本明細書に記載されるサイズ(例えば、2~15nm(例えば、10nm以下、例えば、2~8又は2~7nm)、又は2~10nmもしくは2~9.99nm)を有し、当該組成物が粒子サイズ識別処理を受けていない、組成物。
陳述26.前記ナノ粒子が、コアナノ粒子(例えば、2~15nm(例えば、10nm以下、例えば、2~10nm又は2~9.99nmなど)のサイズ(例えば、最長寸法)を有するもの)、コア-シェルナノ粒子(例えば、2~15nm(例えば、10nm以下、例えば、2~10nm又は2~9.99nmなど)のサイズ(例えば、最長寸法)を有するもの)、又はそれらの組合せである、陳述25に記載の組成物。
陳述27.前記コアナノ粒子が、アルミノシリケートコアナノ粒子又はシリカコアナノ粒子である、陳述26に記載の組成物。
陳述28.前記コアがシリカコアであるか、又は前記コア-シェルナノ粒子のコア及びシェルがシリカシェルである、陳述26又は27に記載の組成物。
陳述29.前記コアシェルナノ粒子のコアが、アルミノシリケートコアであり、前記コアシェルナノ粒子のシェルが、シリカシェルである、陳述26~28のいずれか1つに記載の組成物。
陳述30.前記機能基が、本明細書に記載の機能基及びそれらの組み合わせから選択される、陳述25~29のいずれか1つに記載の組成物。
陳述31.少なくとも1つの機能基又は全ての機能基が、リンカー基を介してナノ粒子の表面に共有結合している、陳述25~30のいずれか1つに記載の方法。
陳述32.各リンカー基がアルキル基(例えば、C1からC4アルキル基)から選択される、陳述31に記載の方法。
陳述33.1~100(例えば、20~100、25~100、30~100、35~100、40~100、又は50~100)の機能基(例えば、平均1~100の機能基)が、各ナノ粒子の表面に共有結合している、陳述25~32のいずれか1つに記載の組成物。
陳述34.ポリエチレン基の少なくとも一部又は全てが、1つ以上の機能基を有する、陳述25~33のいずれか1つに記載の組成物。
陳述35.機能基が、本明細書に記載の機能基及びそれらの組み合わせから選択される、陳述34に記載の方法。
陳述36.ナノ粒子が、その中に封入された本明細書に記載の1つ以上の色素分子又はそれらの組み合わせをさらに含む、陳述25~35のいずれか1つに記載の組成物。
陳述37.コア当たりの色素分子の数が1~7である、陳述36に記載の組成物。
陳述38.組成物が安定である(例えば、凝集及び/又は分解(例えば、機能基の喪失)が観察されない;例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、又は蛍光相関分光法(FCS)とGPCとの組合せによって)(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、又は24ヶ月間) 、陳述25~37のいずれか1つに記載の組成物。
陳述39.陳述25~38のいずれかに記載の組成物を使用する、本明細書に開示の診断方法(例えば、画像化方法)(例えば、本明細書に開示の個体内領域画像化方法であって、陳述25~38のいずれか1つに記載の組成物を個体に投与すること、ここで、ナノ粒子は1つ以上の色素分子及び/又は1つ以上の色素基を含んでいる;励起電磁放射線を被験体に向け、それによって前記1つ以上の色素分子及び/又は1つ以上の色素基の少なくとも1つを励起すること;励起電磁放射線による励起の結果として個体内の色素分子によって放出された励起電磁放射線を検出すること;及び検出された電磁放射線に対応する信号を処理して被験体内の領域の1つ以上の画像を提供することを含む、方法)。
陳述40.薬物を含む機能基又は薬物に由来する機能基を有する1つ以上のナノ粒子を含む陳述25~38のいずれか1つに記載の組成物を使用する、本明細書に開示の治療方法(例えば、薬物を個体に送達する方法)(例えば、薬物を含む機能基又は薬物に由来する機能基を有する1つ以上のナノ粒子を含む陳述25~38のいずれか1つに記載の組成物を個体に投与することを含む、本明細書に開示の個体への薬物送達方法であって、この際、薬物が個体内で放出される、方法)。
陳述41.本明細書に開示された、個体内領域画像化(例えば、陳述39に記載の方法)をさらに含む、陳述40に記載の治療方法。
【0103】
以下の実施例は、本開示を説明するために提示される。これらは、いかなる方法による限定も意図していない。
【0104】
[実施例1]
この実施例は、本開示の方法及び組成物、並びにその使用の例を示す。
【0105】
様々な機能成分を単一のNPプラットフォームに組み合わせる多機能性ナノ粒子(NP)は、ナノバイオテクノロジー及びナノ医療の分野において非常に興味深い。本実施例では、NP表面上に4種類までの異なる機能性リガンドを有する、コーネルプライムドット(C'ドット)、10nm以下の極小PEG化蛍光コアシェルシリカナノ粒子を、モジュール式及び直交式に機能化するための多用途表面修飾アプローチを記載する。それは、様々な特性(すなわち蛍光検出、特異的細胞標的化、放射性同位体キレート化/標識化、レシオメトリックpH検知、及び薬物送達)を単一のNPに統合する5機能性C'ドットの合成を可能にし、一方、全体的なNPサイズは7nm未満のままである。これは、C'ドットのPEG層が小分子に浸透可能であるという事実を利用することによって達成される。アミン及び/又はチオール官能化シラン分子は、PEG鎖の間及びC'ドットのシリカ表面上に挿入可能であり、これに、続いてさらなる機能性リガンドが付着可能である。挿入によるこのPEG化後表面修飾(PPSMI)アプローチは、高品質のNP生成を減少させることなく、C'ドットPEG化とワンポット型水系合成における精製との間に生じる少数の余分な工程のみを必要とする。追加の機能性を有する得られたC'ドットは、臨床的に転換されたCドットに近いそれらのサイズ及びPEG密度のような物理化学的特性を示し、それらの臨床応用の多様化へのゲートを開く。本発明者らはさらに、粒子当たり多数の標的化ペプチドを可能にするC'ドット合成の改変、ならびに個々の成分への吸収スペクトルのデコンボリューションによって、異なる表面リガンドの具体的な数を定量的に評価するための容易かつ汎用性のある分光アプローチを実証する。合成PEG化及びPEG化後表面修飾法のこの研究から得られた知見は、生物医学的用途及び臨床解釈のための他のPEG化NPプラットフォームの開発に移行可能である。
【0106】
この実施例では、この目標を達成する、モジュール式及び直交式の挿入によるPEG化後表面修飾(PPSMI)法を記載する(図1)。それは、直交官能基、例えばアミン及びチオールを有するシランを、NPのPEG化と精製との間に生じる合成工程において、PEG鎖の間及びC'ドットのシリカ表面上に共有結合的に挿入することからなる(図1)。本発明者らは、このようにして、PEG化の間にこれらの基が導入される際に観察される粒子凝集を含む、既存の機能化ストラテジーの制限を克服できることを実証する。PPSMI法は、水性媒体中でのC'ドット合成のワンポット性を保存する。さらに、本発明者らは、これらのモジュール及び直交表面改質反応が、サイズ及びPEG密度を含む粒子の全体的な物理化学的特性にわずかな影響しか及ぼさず、それによって、それらの臨床への橋渡しの機会を最大化することを示す。このアプローチを用いて、種々の多機能性C'ドットを生成することができる(表1)。特に、NP表面に結合した全部で4つの機能性リガンドを有する5機能性C'ドット粒子を合成し、同時蛍光追跡、腫瘍標的化、レシオメトリックpH検知、放射性同位体キレート化及び疾患治療を可能にする(図1)。この表面修飾アプローチは、良好にPEG化されたNPのPEG層が、依然として他の分子によって浸透可能であるという事実を利用する。このような粒子の化学的複雑性を適切に説明し、異なる多機能性NP化学を互いに区別するために、本発明者らは、(i)NPプラットフォーム、例えば、C'ドット対メソポーラスCドット(mCドット)、(ii)封入蛍光色素、(iii)特異的表面機能性及び粒子に対するその結合性、(iv)特異的付着化学、(v)特異的PEG鎖長、及びその他に関する情報を含む命名システムを開発する(例えば、図7)。最後に、個々の成分への吸収スペクトルのデコンボリューションによって、粒子表面に導入された異なるリガンドの具体的な数を定量的に評価するための分光学的アプローチを実証する。本研究で得られた洞察はまた、生物医学的応用のための他のPEG化NPプラットフォームの開発への道筋を提供すると期待される。
【0107】
[表1]
【0108】
結果と考察
c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットの合成及び精製。以前に報告されたC'ドットの合成は、異なるタイプの色素及び癌標的化ペプチドを用いてC'ドットの機能化を可能にする多用途アプローチである(図8)。例えば、c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットと呼ばれる、NIR色素Cy5.5及びαvβ3インテグリン-ターゲティング環状(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸-D-チロシン-システイン)ペプチド(c(RGDyC))で機能化したC'ドットを生成するために、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)及びCy5.5 シランコンジュゲート(Cy5.5-シラン)を、まず室温でpH8付近の水酸化アンモニウム水溶液に添加した。加水分解されたTMOS及びCy5.5-シラン分子は、一緒に縮合して、シリカマトリクス中に共有結合的に封入されたCy5.5色素を有する極小シリカNPを形成する。次の工程では、シラン官能化PEG(PEG-シラン)及びc(RGDyC)ペプチド修飾PEG-シラン(c(RGDyC)-PEG-シラン)を一緒に反応混合物に添加した。添加すると、c(RGDyC)-PEG-シラン及びPEG-シランは、表面シラノール基とPEGとの間の水素結合を介してNP表面上に迅速に吸着され、それによってナノ粒子成長を終結させる。反応混合物を室温で一晩放置した後、反応温度を80℃に上昇させ、そこで一晩維持して、NP表面へのPEG-シラン及びc(RGDyC)-PEG-シランの共有結合を増強した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、c(RGDyC)-Cy5.5-Cドットを、最終的にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて精製し、続いて最終用途のために滅菌フィルターを用いて濾過した。
【0109】
c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットのGPCエルグラムは、精製前に3つのピークを示した(図2A及び図8A)。約9分での主ピークは、c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットナノ粒子生成物に対応し、約5分及び16分でのピークはそれぞれ、PEG試薬及び未反応Cy5.5-シランからの不純物に対応した。ナノ粒子生成物に対応する溶出体積を収集し、GPCカラムに再度流して、可能な限り最高の純度を保証した。GPC精製後、最終C'ドット溶液のエルグラムは、約9分で単一のピークのみを示し、約100%のGPC純度を示した(図8B)。さらに、生成物ピークは、検出可能な歪みのない狭くて非常に対称的な形状を示し、単一成分ガウス分布を用いてフィッティングすることができ、NP生成物の狭いサイズ分散性を示した。
【0110】
次いで、精製したc(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットを、吸光度及び蛍光相関分光法(FCS)特性評価に供した。c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットの吸光度スペクトルは、Cy5.5色素に対応する約675nmにピークを示し、及び、c(RGDyC)機能化を伴わないPEG化Cy5.5-C'ドット(PEG-Cy5.5-C'ドット)では見られなかった275nm付近の小さなピークを示した(図8D)。従って、このピークの存在はc(RGDyC)ペプチドに特徴的であり、C'ドット表面へのc(RGDyC)の首尾よい付着を実証する。c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットのFCS曲線は、NP生成物の狭いサイズ分散性を確認する単一モードFCS相関関数を用いて良好にフィッティングされた(図8C)。FCSフィットから、流体力学的粒子直径及び粒子濃度を決定することができる。吸光度測定から得られたCy5.5及びc(RGDyC)の濃度を、FCSから得られた粒子濃度で割ることによって、Cドット当たりのCy5.5色素及びc(RGDyC)リガンドの数を推定した。結果はc(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットが約6.4nmの平均直径を有し、NP当たり約1.6個のCy5.5色素及び24個のc(RGDyC)ペプチドが存在することを示した(表1)。最後に、FCSと吸光度測定の組合せはまた、c(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットが、FCSセットアップの励起条件下で、水溶液中の遊離Cy5.5色素よりも約3倍明るいことを示唆する粒子輝度の推定を可能にする。最終的なc(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドット生成物を、さらなる使用の前に4℃で脱イオン(DI)水中に保存した。
【0111】
PEG化コンディションの調整によるc(RGDyC)表面リガンド密度の増加。臨床用に変換されたC'ドットの以前に報告された合成アプローチにおいて、c(RGDyC)癌標的化ペプチドは、PEG化工程の間にNP表面上へのc(RGDyC)-PEG-シラン及びPEG-シランの両方の縮合を介して導入された。c(RGDyC)-PEG-シランがPEG-シランよりもはるかに高価であることを考慮して、c(RGDyC)-PEG-シランは常に、PEG-シランの添加前に反応混合物に添加され、初期のNP表面との反応を可能にし、所望の変換効率を達成する。このアプローチは、NP当たり最大で約20~25のc(RGDyC)リガンドを有するC'ドットを生成するために使用できるが、c(RGDyC)-PEG-シランの濃度をさらに増加させても、分散性の狭いC'ドットは得られないことが観察された。むしろ、合成混合物は、これらのより高い濃度でc(RGDyC)-PEG-シランを添加すると直ちに濁り、NP凝集を示唆する。実際、反応生成物のGPCエルグラムは、NP凝集に起因する5~11分の広いピークを示す(図2B)。GPC精製を多数繰り返した後でさえ、NP生成物のGPCエルグラムは広く分布したままであり、合成の失敗を示唆する。
【0112】
NP凝集を引き起こすことなく合成中に許容されるc(RGDyC)-PEG-シランの量は、水酸化アンモニウム[NH3OH]の濃度に非常に敏感であることが分かった。[NH3OH]を基準の2mMから6mMに増加させると、c(RGDyC)-PEG-シランの濃度は、良好なNP生成物の質を維持しながら、3倍まで増加させることができる。6mMの[NH3OH]及び3倍のc(RGDyC)-PEG-シラン濃度で合成したC'ドットのGPCエルグラム(図2C)は、通常のコンディション(図2A)と同様の特性を示した。結果は、高品質NP生成物を示唆し、前述のようにGPCを用いて、他の不純物からのC'ドットの分離を可能にする。精製後、NP当たり推定58個のリガンドを有する狭く分散したc(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットが首尾よく生成された(図2D~F)。より少ないリガンド数のc(RGDyC)-PEG-Cy5.5-C'ドットと比較して、予想通り、UV-Visスペクトルにおける275nmでの吸収が増強される(図2F)。FCS特性評価によれば、これらの粒子はまた、より低いリガンド数の(すなわち、24c(RGDyC)の)粒子よりも、わずかに増加した流体力学的サイズ、すなわち、6.8nm対6.4nm(図2E及び表1)を有し、これはおそらく、粒子当たりのc(RGDyC)の数の増加(図2D)に起因している(より大きなシリカコアではなく)。
【0113】
c(RGDyC)表面機能化の成功のための[NH3OH]に対する高感受性は、おそらく、裸のシリカ表面へのc(RGDyC)ペプチドの迅速な吸着、及びNP間の静電相互作用の変化によって引き起こされる。C'ドット合成については、PEG化工程の間に、PEG及びPEG-ペプチド・コンジュゲートの両方が、おそらく水素結合を介して、裸のシリカNP表面に迅速に吸着されることが実証されている。この迅速なPEG吸着は、NP成長を効率的に停止させ、c(RGDyC)-PEG-シラン添加の変換効率を改善するために、C'ドット合成において利用されている。しかしながら、各c(RGDyC)ペプチドは、反応pHで正電荷を有する複数のアミン基を含有する、すなわち、それらは弱塩基であるので、c(RGDyC)ペプチドの吸着は、裸のシリカNPの正味の負電荷を効果的に覆い、NPの静電安定性の損失をもたらし、それによってNP凝集をもたらし得る。対照的に、[NH3OH]がわずかに増加すると、c(RGDyC)ペプチドの平均正味正電荷が減少し、極小シリカNPが、NP安定性を失うことなく、PEG化の間により多くのc(RGDyC)-PEG-シランを吸着することが可能になる。このメカニズムについてのこの仮説を裏付けるために、より系統的な研究が必要とされるが、癌標的化ペプチドの表面リガンド密度を2倍以上向上する能力は、C'ドットの腫瘍標的化効率をさらに増強し得る。
【0114】
PEG化の間に共縮合リガンド-PEG-シラン・コンジュゲートを介してC'ドット表面に二次機能基を導入。58c(RGDyC)までのリガンドでC'ドット表面を機能化するために開発された反応条件はまた、C'ドット表面に複数のタイプの他の機能性リガンドを導入するために適用された。これは、c(RGDyC)-PEG-シランを、PEG化工程の間に、異なるリガンド-PEG-シラン及び/又はリガンド-シラン・コンジュゲートの組合せに置き換えることによって達成された。しかし、合成された多機能性C'ドットの品質、すなわちこのアプローチを用いた成功は、機能性リガンドの特性に大きく依存した。
【0115】
例えば、c(RGDyC)-PEG-シラン、マレイミド(mal)官能化PEG-シラン(mal-PEG-シラン)及びPEG-シランの組合せを、PEG化工程の間、この順序でCy5系C'ドットの反応混合物に添加した。得られたc(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットは、c(RGDyC)ペプチドに加えて、PEG化NP表面上にマレイミド基を有し、C'ドットが、セラノスティック用途のために、例えばチオール官能化薬物-リンカー-コンジュゲートとさらに反応することを可能にした(図1)。合成されたままのc(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットのGPCエルグラム(すなわち、GPC精製前)は、わずかに歪んだNPピークを示したが(図9A)、GPC精製の4サイクル後に、満足なFCS特性決定結果と共に対称NPピークが得られ(図9B及びC)、NP合成生成物の許容可能な品質を示唆した。異なるmal-PEG-シラン濃度から得られた精製c(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットの吸光度スペクトルは、c(RGDyC)リガンドに帰する275nm付近に強いピークを示すだけでなく、対照NPと比較して250nm未満の吸収を増加させ、これはマレイミド官能基の存在に帰するものであった(図9D)。FCSによるc(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットは、約6.8nmの流体力学的サイズを有した(表1)。
【0116】
多機能性C'ドットの合成は、他のタイプのリガンドが使用される場合、等しく成功しないかもしれない。例えば、マレイミド基は、アジド基と反応するジベンゾシクロオクチル(DBCO)基によって置換され、クリックケミストリーを介してC'ドットの他のリガンドによる修飾を可能にした。GPC、UV-vis及びFCS特性評価によれば、このアプローチを用いて単分散DBCO-c(RGDyC)-PEG-C'ドットを生成することができたが(図10A~D、表1)、DBCO-c(RGDyC)-PEG-C'ドットをアジド官能化基と結合させる試みにおいて、DBCO反応性は観察されなかった。これは、C'ドット表面上のDBCOリガンドのアクセス性が低いことを示唆する。これは、マレイミド基と比較して、DBCOリガンドの疎水性が高いことに起因し得る。DBCOリガンドの水溶性が乏しいと、NPのPEG化後でさえ、C'ドットのシリカ表面と会合したままになることがあり、それによって、それらのアクセス性及び反応性が制限される。
【0117】
我々の最初の試験では、c(RGDyC)-PEG-Cy5-Cドットを、124Iを用いてc(RGDyC)ペプチドのチロシン残基上で標識し、陽電子放出断層撮影法(PET)イメージングの使用を可能にした。C'ドットを他の放射性同位体、例えば、ジルコニウム(89Zr)又はルテチウム(177Lu)で標識するためには、特定のキレート剤リガンドでC'ドットを機能化することが非常に望ましい。例えば、デフェロキサミン(DFO)は、89Zrによる放射線標識のための最も効率的なキレート剤の1つである。C'ドットをDFOで機能化するために、イソチオシアネート(NCS)官能化DFO(NCS-DFO)を、まずアミノシランとコンジュゲートさせてDFO-シランを生成し、次いでこれを、PEG化中に、c(RGDyC)-PEG-シラン及びPEG-シランと共に、反応混合物に添加した。狭く分散したDFO-c(RGDyC)-PEG-C'ドットがこのアプローチによって生成されたが(図10E~H及び表1)、これらのNPは、生物学的実験において好ましくない結果を示し、我々はこれを、様々なC'ドットにわたるDFO基の不均一な分布の結果であると仮定した(データは示さず)。
【0118】
最後の実施例は、c(RGDyC)-PEG-C'ドットのアミン基による官能化であり、C'ドットをアミン反応性機能性リガンドで修飾することを可能にする。アミノプロピル-トリメトキシシラン(APTMS)のようなアミノシランを、c(RGDyC)-PEG-シラン及びPEG-シランと一緒に、PEG化中に導入した場合、得られたc(RGDyC)-NH2-PEG-C'ドットは、GPCエルグラムにおいて広がった粒子ピークを示した(図3A)。ピークは、4サイクルのGPC精製後でさえも歪んだままであった(図3B)。歪んだGPCエルグラムは、NP凝集を示し、これは、おそらく、結合したアミン基がSi-O-Si結合形成を触媒し、NP安定性の損失をもたらすことによって引き起こされる。FCS特性評価によって示唆されるように、GPC精製後、平均粒径は約6.8nmのままであったが(図3C及び表1)、元の凝集ピークが精製NPでも依然として観察されたので、このNP凝集は最終C'ドット生成物の収率及び品質の両方に大きく影響した(図3B)。さらに、この方法を用いて合成したc(RGDyC)-NH2-PEG-Cy5-C'ドットの吸光度は、標準c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットと比較して、480nm付近に追加のピークを示した(図3D)。この吸光度は、おそらくアミン基とシリカ表面に近いCy5分子との間の相互作用によって引き起こされる、Cy5色素の分解生成物に起因し得る。Cy5色素のこの分解は、粒子の蛍光輝度を低下させ、生物医学的用途には非常に望ましくない。
挿入によるPEG化後表面修飾(PPSMI)を介したC'ドット表面への二次機能基の導入。PEG化の間に異なるリガンド-シラン・コンジュゲートを共縮合させることによってC'ドット表面に二次機能基を導入する試みは、異なる機能基と裸のシリカNP表面との間の劇的に変化する親和性に基づく。生物医学的用途にとって興味深い機能性リガンドの多くは、シリカに対して高い親和性を有するかなりの量のアミン基及び/又はヒドロキシル基を保有する。前節で説明したように、このようなリガンドとシリカとの間の強い会合は潜在的に、それらのアクセス不能性及び不均質な分布につながる可能性がある。
【0119】
この課題に対する1つの可能な解決策は、リガンドとシリカとの間の会合の動力学を制御することである。理想的な状況では、反応転化率を高めるために、リガンドと裸のシリカとの間に、ある程度の親和性があることが好ましい。一方、親和性が高すぎると、リガンドアクセス性が妨げられ、リガンド分布が不均一になることがある。会合動力学の制御に依存することは、いくつかの理由から最適ではない。第1に、リガンドとシリカとの間の会合は、リガンド分子構造の詳細に非常に感受性である。全ての異なるリガンドについて別々にPEG化条件を最適化することは非効率的であろう。第2に、水中の裸のシリカNPは静電的に安定化され、それらの安定性は、イオン強度及びpHを含む反応条件に非常に敏感であるので、PEG化条件を調整することはNP安定性を妨害し、その結果、合成が失敗しうる(上記を参照のこと)。
【0120】
これらの問題を克服するために、PEG化工程中にC'ドットを機能化し続けるのではなく、挿入によるPEG化後表面修飾(PPSMI)反応を用いて実験した。このPPSMIアプローチは、C'ドットの十分に確立されたPEG化プロトコルを利用する。粒子PEG化は、追加のリガンドとシリカNP表面との間の会合を減速させ、これらのリガンドに、シリカNPと反応する前に、反応混合物中に均一に分散するためのより多くの時間を残す。さらに、明確に定義されたPEG化は、C'ドットに、より極端な合成条件下であっても、凝集からC'ドットを保護する明確な立体安定性を与える。したがって、追加のリガンドによる効率的な表面修飾のために反応パラメータを調整するためのより広いウィンドウを提供する。最も重要なことに、PEG化NPのPEG層は、多くのパラメータ(表面PEG密度及びNP表面曲率を含む)に依存して、タンパク質のような生体分子によって依然として透過可能であり得ることが最近報告されている。一方、PEG化後でさえ、シリカコアとPEG化シリカナノ粒子のPEG層との間の界面には常に残存するシラノール基が存在し、潜在的に、小さなシラン分子とのさらなる縮合を可能にする。
【0121】
その目的に向けた最初の試みにおいて、我々はc(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの反応混合物中に、すなわちPEG化工程の後に、DFO-シランを添加した。残念ながら、最終生成物は300nm未満のレジームにおいて吸光度シグナルの予想される増加を示さず、これはDFO-シランとの低い反応効率を示唆する(図11)。これは、いくつかの理由に起因する可能性がある。第1に、DFO-シラン・コンジュゲートは、C'ドットPEG化に使用されるPEG-シランよりもさらに大きいモル質量を有するので、PEG層を通って効率的に拡散せず、下にあるシリカ表面シラノール基と反応し得ない。これは、我々の以前の研究と一致するPEG化C'ドットのかなり密なPEG層を示唆する。第2に、加水分解されたDFO-シランの自己縮合は、C'ドットへのそれらの付着と競合する。自己縮合は、PEG層を通るDFO-シランの浸透が遅いので、反応を引き継ぐことができる。これらの初期の結果及び結論に基づいて、我々はc(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットをDFOで機能化するための代替的なアプローチを選択し、ここで、表面修飾は2つの工程に分割された(図1)。第1の工程では、アミノシランを反応混合物に添加した。アミノシランは比較的小さい分子であり、したがって、PEG層中により速く拡散し、その下のシリカ表面に付着することが予想される。得られたNH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットは、対応する(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットと比較して、粒子特性に実質的な変化を示さなかった(表1、及び、図3E~Hと図8E~Hとの比較)。例えば、c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット及びNH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの吸光度スペクトルは、互いにほぼ完全に重なり合っており、c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットへのアミノシランの付着は、これらの粒子の光学特性に影響を及ぼさないことを示唆している(図3H)。
【0122】
その後、追加の表面アミン基を使用して、二次機能性リガンドをC'ドットシリカ表面に導入することができる。この考えを試験するために、アミノ-シランの添加に続いて、DFO-NCSを次の工程で添加して、アミン-NCS反応により、PEG層の下に位置するアミン基と反応させた(図1)。この方法の利点は、比較的高いDFO濃度を適用してDFO-NCS分子をPEG層に浸透させることができる一方、余分なDFOは、遠心分離及びGPCによって最終精製工程で容易に除去することができることである。得られたDFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのGPCエルグラムは、NP生成物の1つの主ピークのみを有する比較的クリーンなサンプルを示唆した(図4A)。精製後、直径6.4nmの狭く分散したC'ドットが得られた(図4B及びC、表1)。精製されたDFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットは、NH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットと比較して、200~300nmの間に明確な吸光度特性を有した(図4D)。この吸光度シグナルは、DFO分子による吸光度に対応し、反応に使用されるDFO-NCSの濃度が増加するにつれて増加する。DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの吸光度を、一組の吸光度標準を用いてスペクトルをフィッティングすることにより、各成分からの個々の寄与にデコンボリューションした(図12)。次いで、粒子当たりのCy5、c(RGDyC)及びDFO分子の数は、約0.2mMのDFO-NCS濃度を用いて合成されたC'ドットについて、それぞれ約1.6、23及び4であると推定された(図12及び表1)。これらの光学分光法の結果は、NH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットへのDFOの付着の成功を実証し、さらなる反応のためのNH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット上のアミン基のアクセス性を確認する。DFO分子の付着以外に、c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット又はNH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットに対するさらなるGPC及びFCSに基づくC'ドット特性評価において、実質的な変化は観察されず(表1)、このことは、この室温のPEG化後修飾が、通常のc(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの特性に対してわずかな影響しか有さず、それによって、臨床応用への機会を最大にすることを示唆する。
【0123】
PPSMI法の一般化
c(RGDyC)-PEG-C'ドットにDFOを付着させるのと同様のアプローチを使用して、他のタイプの機能性リガンドを導入することもできる。例えば、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)は、177Luのような放射性同位体による放射性標識のための最も効率的なキレート剤の1つである。DFO-NCSをDOTA-NCSに置き換えることにより、狭く分散したDOTA機能化c(RGDyC)-PEG-C'ドット、すなわちDOTA-c(RGDyC)-PEG-C'ドットが生成され、それにより、例えば、177Lu放射性標識が可能になった(図4E~H)。このアプローチは、他のタイプのコンジュゲーション化学にも適用することができる。例えば、PEG化後表面修飾工程においてアミノシランをチオールシランで置換することによって、チオール官能化C'ドットを生成することができ、追加のチオール基は、チオール-エンクリック反応を介して、例えばマレイミド-官能化リガンドとさらに反応することができる。原理証明として、このアプローチによって、チオール-シランをPEG-Cy5-C'ドットのシリカ表面上に導入し、狭く分散したSH-PEG-Cy5-C'ドットを生成した(図13A~C、表1)。その後、マレイミド官能化FITC色素(mal-FITC)を、精製工程の前にSH-PEG-Cy5-C'ドットの反応混合物に添加して、チオール-マレイミド・コンジュゲーションを介してpH検知FITC色素でNPを機能化した(図1)。得られたFITC-PEG-Cy5-C'ドットは精製後にクリーンなGPCエルグラムを示し、高品質のNP精製物を示唆した(図13D)。FCS特性評価は、6.7nmの平均粒径を示した(図13E、表1)。精製されたFITC-PEG-Cy5-C'ドットは、PEG-Cy5-C'ドットと比較して、450nm付近の波長でさらなる吸収特性を示し、これはFITC色素の特徴的な吸収に対応していた(図13F)。結果は、チオール-エンクリック反応によるFITC色素の付着の成功と、チオール-PEG-Cy5-C'ドット上のチオール基のアクセス性を実証した。
【0124】
上記のアミン-シラン/NCS-リガンド及びチオール-シラン/mal-リガンド化学に加えて、類似のアプローチ(例えば、アジド-シラン/アルキン-リガンド(下記参照))を用いて、他のタイプのコンジュゲーション化学を適用することもできる。
【0125】
PPSMI合成アプローチは、様々な機能性を有するC'ドットのファミリーの生成を可能にし、これにはアミン及びチオール官能化C'ドットも含まれる。これらの反応性C'ドットは、目的とする用途に応じて様々なリガンドを使用する、後続の修飾、すなわちNP製造後の修飾を可能にする、有用なプラットフォームとなり得る。しかしながら、特にNH2-c(RGDyC)-Cy5-C'ドットを用いて作業する欠点の1つは、それらが減少した安定性を示すことである。NH2-c(RGDyC)-Cy5-C'ドットについては、小モル質量種に関連するピークが、NP製造後6ヶ月でGPCエルグラム中に現れ始めた(図14A)。これは、例えば、NP表面から放出されるペプチド基に起因し得る。対照的に、通常のc(RGDyC)-PEG-C'ドットは、NP特性又はインビボ性能のいずれの変化もなく、少なくとも2年の期間にわたって明確なNP安定性を示す。従って、アミノ化C'ドットの分解はおそらく、シラン加水分解を促進する第一級アミン基の周りの局所的な高pH環境によって引き起こされると考えられる。
【0126】
対照的に、アミンベースのPPSMIアプローチを用いたNP製造の6ヶ月後、DFO-c(RGDyC)-Cy5-C'ドットについてのGPCエルグラム及びFCS特性評価において実質的な変化は観察されず、所望のNP安定性を示唆した(図14B)。これは、おそらく、PEG化後修飾反応の間に、DFO-NCSが第一級アミン基を終結させることに起因しており、それによって活性な第一級アミン基を有するC'ドットの寿命が短くなるためである。この理由から、アミン及びチオール官能化C'ドットは原則として、NP製造後のさらなる修飾のために別々に製造することができるが、NP製造中にさらなる機能性NPリガンドの導入を介してこれらの官能基を直接反応させて、これらの反応基を迅速に変換することが、所望のNP安定性及び長い製品保存可能期間のために最も望ましい。
【0127】
3種類の機能性表面リガンドを有する4機能性C'ドット:PPSMIアプローチのモジュラリティ。上記の様々なコンジュゲーション化学は、PEG化後の表面修飾反応の間に組み合わされて、全てワンポット合成において、多機能性C'ドットへのモジュール経路を提供し得る。
【0128】
原理証明として、c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットを、PEG化後にまずアミン基で官能化し、NH2-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットを生成した。次いで、DFO-NCSキレート剤を、アミン-NCSコンジュゲーションを介してこれらのC'ドットに付着させ、それによって第一級アミン基を終結させた。その後、得られたDFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットを、チオール-シランでさらに官能化し、SH-DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットを生成した。最終的に、FITC-mal・pH検知色素をPEG層に挿入し、チオール-エンクリック反応を介してC'ドットシリカ表面に付着させ、反応性チオール基を終結させた(図1)。得られた狭く分散したFITC-DFO-C(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットは、吸光度測定によって確認されるように、合計4つの機能基を統合したが(図5A)、GPC及びFCS特性評価の両方によって示唆されるように、6.8nmの粒径は、狭い分布のままであり且つ7nm未満であった(図5B及びC)。NP当たりのCy5、c(RGDyC)、DFO及びFITC基の数を、個々の成分についての吸光度標準のセットを使用して、上記のデコンボリューション法に従って推定した(図15及び表1)。c(RGDyC)ペプチドをC'ドットPEG層の外側に付着させて、活性な腫瘍標的化を可能にした。放射性同位体キレート化及びpH検知をそれぞれ可能にするDFO及びFITCリガンドを、PEG層に挿入した。この設計は、小さいイオンへのそれらのアクセス性を確実にするが、同時に、C'ドットのインビボ性能に対する潜在的な負の副作用を減少させる。NPは、488nmで励起された場合、525nm付近に、様々なpHにより変化する蛍光強度を示した(図5D)。この蛍光は、PEG層に挿入されたpH感受性FITC色素の発光に割り当てることができる。比較として、NPは、645nmで励起された場合、約675nmにpH非依存性蛍光を示した(図5E)。この蛍光は、シリカコア内のCy5色素に対応する。この明るいNIR蛍光は、例えば、画像誘導手術のためにC'ドットを使用する光学的画像化を可能にするだけでなく、レシオメトリックpH検知のための参照シグナルとしても使用され得る。その目的のために、pHの関数として、ピークセンサー発光強度(525nm)を、ピーク参照発光強度(660nm)で割ることによって、レシオメトリック較正曲線を得た(図5F)。
【0129】
FITC-DFO-C(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのpH応答は、以前に報告されたpH検知CドットのpH範囲、すなわち、pH4.5からpH8(中間pH約6.541)と比較して、より広いpH領域、すなわち、pH4からpH10(中間pH約7)をカバーすることは注目に値する(図5E)。これは、FITC-DFO-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットのPEG層下の末端第二アミン基が、FITC色素周辺の局所酸性度に影響を及ぼすことによって起こると考えられる。PEG層におけるFITC及びアミン基の共局在化は、他の粒子機能に加えて、C'ドットに明確なpH感受性を与える。この設計戦略はまた、色素を取り囲む化学環境、すなわちシリカコア及びPEG層を注意深く調整することによって、C'ドットの光学特性をさらに調整する概念を提供する。
【0130】
PPSMIアプローチの直交性
上述のPPSMIアプローチの最も重要な利点の1つは、それが、十分に確立された、モジュール式の、ならびに直交コンジュゲーション化学の豊富なツールボックスによってサポートされるという事実である。例えば、上記のアミン-シラン/NCS-リガンド及びチオール-シラン/mal-リガンド化学に加えて、類似のアプローチ、例えば、アジド-シラン/アルキン-リガンドを用いて、他のタイプのコンジュゲーション化学を適用することもできる。さらに、異なる化学的性質を用いるこれらのコンジュゲーション反応は、通常、互いに干渉しないので、異なる機能性リガンドをC'ドットに同時に付着させることができる。
【0131】
原理証明として、アミン-シランの逐次添加の代わりに、DFO-NCS、チオール-シラン及びFITC-mal、アミン-シラン及びチオール-シランを、c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドット反応に一緒に添加し、C'ドットをアミン及びチオール基の両方で同時に官能化した。次いで、DFO-NCS及びFITC-malを一緒に添加して、アミン及びチオール基を機能性リガンドに同時に変換した。得られたFITC-DFO-c(RGDyC)-Cy5-C'ドットは、精製後、所望のGPCエルグラムを示し、FCS特性評価当たり約6.7nmの平均直径を有した(図16A及びB)。精製された粒子のUV-visスペクトル(図16C)をフィッティングすることによって、Cy5、c(RGDyC)、DFO及びFITCを含む個々の成分の吸収をデコンボリューションした(図16D~G)。これは、同時コンジュゲーション反応を用いたDFO及びFITCによる表面修飾の成功を示した。PPSMIを用いたコンジュゲーションの直交性は、表面修飾に必要な反応時間を有意に短縮し、それによって多機能性シリカNPの製造をさらに単純化するので、PPSMIアプローチは、PEG化シリカNPを機能化するための強力な方法である。
【0132】
PEG化の間及びPEG化の後の表面修飾の組合せによる4種類の機能性表面リガンドを有する5機能性C'ドット
我々は、異なるタイプの機能基が、PEG化工程の間又はPEG化後の表面修飾を介して、C'ドット表面に導入できることを記載した。これらの2つのアプローチの組合せは、水性媒体中でのワンポット合成アプローチにおいて、最も多数の表面機能基を有する多機能性C'ドットへの、モジュール経路及び直交経路を提供する。その目的のために、原理証明として、NP表面上に全部で4つの異なる機能性リガンドを有する5機能性C'ドットを合成し(図1)、同時光学トレーシング、特異的細胞標的化、レシオメトリック検知、放射性金属キレート化、及び潜在的薬物送達を可能にした。
【0133】
5機能性C'ドットを合成するために、NP表面をまず、PEG化工程の間に、特異的細胞標的化基、すなわちc(RGDyC)ペプチド、及びマレイミド基で修飾した。これは、c(RGDyC)-PEG-シラン、mal-PEG-シラン、及びPEG-シランを、上記のようにシリカコアの表面上に共縮合させることによって行った。PEG化後、チオール修飾小薬物分子を反応混合物に添加して、チオール-エンクリック反応を介してC'ドット表面上のマレイミド基に付着させた(それによってマレイミド基を終結させた)。原理証明のために、我々は、HIV/AIDSを治療及び予防するために使用される周知の抗レトロウイルス薬である小分子治療薬の例として、エファビレンツ(EFV、分子構造については図6Aを参照のこと)を選択した。EFVはアルキン基を含み、これは別の工程において、クリックケミストリーによってヘテロ二官能性アジド-PEG-チオールと反応し、EFVをチオール基で修飾する(図17A)。さらに、EFVは、5機能性C'ドット上の他の機能基の吸光度と区別することができる、300nm未満の波長範囲における独特の吸光度特性を示す(図17B及びC)。本明細書では、先に記載した酵素切断可能な薬物-リンカー・コンジュゲートを含む、他の薬物リンカー-コンジュゲーション戦略を使用することができることに留意されたい。チオール修飾EFVをc(RGDyC)-mal-PEG-Cy5-C'ドットに付着させた後、アミン-シラン、DFO-NCS、チオール-シラン及びFITC-malを、上記の4機能性C'ドットのPPSMI合成アプローチに従う順序で反応混合物に添加して、さらにDFO及びFITC基を、EFV-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットに導入し、放射性金属キレート化及びレシオメトリックpH検知をそれぞれ可能にした。
【0134】
得られたFITC-DFO-EFV-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットは、精製後に所望のGPCエルグラムを示し、高い粒子純度を示唆した(図6A)。FCS自己相関曲線は、狭い粒径分布を示すシングルモード相関関数を用いて良好に適合された(図6B)。FITC-DFO-EFV-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットの吸光度は、スペクトル全体にわたって複数のピークを示し、これは、一連の吸光度スペクトル標準を用いてスペクトルをフィッティングすることによって、各成分からの個々の寄与にうまくデコンボリューションすることができた(図6D~H)。次いで、C'ドット上の各機能基についての具体的な平均数を、各成分の濃度を上記と同様にFCSから得られたNPの濃度で割ることによって推定した(表1及び図6C~H)。合計4種類の異なる機能基がC'ドット表面に付着しているが、平均粒径は6.9nmと7nm未満のままであり、依然として臨床的に適用されたC'ドットのサイズに非常に近かった(表1)。
【0135】
この実施例では、蛍光超小型(<10nm直径)PEG化シリカベースのナノ粒子(ここではC'ドット)の表面上に、複数の(ここでは4つまでの)種類の機能性リガンドをモジュール式及び部分的に直交する方法で導入するワンポット型合成アプローチを記載する。様々なヘテロ二官能性PEG-シランをシリカコアの表面上に共縮合させることにより、PEG化工程の間に、様々な種類の機能基を導入することができる。しかし、我々はPEG化工程の間に機能基が導入されるこのアプローチ及び類似のアプローチが限定され、そしてしばしば、粒子凝集のような望ましくない特性をもたらすことを実証した。これらの制限は、挿入によるPEG化後表面修飾(PPSMI)反応に移行することによって克服することができる。PEG化後、小さい直交反応性リガンド、例えばアミノ-及び/又はチオール-シラン分子をPEG層に挿入し、シラン縮合を介してシリカ表面に付着させて、粒子追跡及び腫瘍標的化リガンドのための蛍光に勝る機能性を有するモジュールNP修飾を可能にすることができる。最も効率的なキレート剤(例えば、89Zr及び177Lu標識のための)であるDFO及びDOTAはそれぞれ、アミン又はチオール基との反応を通じて、PEG鎖間及びC'ドットのシリカ表面に結合することができる。C'ドット型PEG化シリカナノ粒子を機能化するためのPPSMI法は、チオール-エン及びアジド-アルキンクリック反応を含む他の種類の広く使用されているコンジュゲーション化学を採用することによって一般化することができる。さらに、異なるコンジュゲーション化学を使用する挿入によるPEG化後表面修飾を組み合わせて、多機能性C'ドットへのモジュール及び直交アクセスを提供することができる。最後に、表面機能性を最大にするために、PEG鎖間にリガンドを挿入することによるPEG化後表面修飾を、PEG化工程中のものと組み合わせて、表面結合PEG鎖の外側に表面リガンドをもたらすことができる。原理証明として、5機能性DFO-FITC-EFV-c(RGDyC)-PEG-Cy5-C'ドットを合成し、単一粒子上で合計5種類のリガンド基/機能性を組み合わせた:光学粒子イメージングを可能にする粒子コア中のNIR蛍光色素、特異的腫瘍細胞標的化を可能にするペプチドリガンド、定量的レシオメトリック検知を可能にするpH検知色素、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング及び放射線療法へのアクセスを可能にする放射線金属キレート剤、ならびに粒子をセラノスティックにし、疾患治療能力を可能にするリガンド-薬物コンジュゲート。これは全て、臨床への粒子適用に必要とされる好ましい生体内分布及びPK特性を維持するはずの、7nm未満の超小粒子サイズ、高いPEG化密度、良好なコロイド安定性、及び個々のリガンド数/表面密度に対する制御のようなナノ粒子特性を同時に維持しながら達成される。複数の特定のC'ドットが、ヒト臨床試験のためにFDAによって既にIND承認されているが、この研究はC'ドットの臨床適用のさらなる多様化のためのゲートを開く。
【0136】
化学物質及び試薬
全ての材料は、受け取ったままで使用した。ジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロパノール、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、エファビレンツ(EFV)、及びエタノール中2.0Mアンモニアを、Sigma Aldrichから購入した。メトキシ末端ポリ(エチレングリコール)鎖(PEG-シラン、モル質量約500)をGelestから購入した。マレイミド基及びNHSエステル基を有するヘテロ二官能性PEG(mal-PEG-NHS、モル質量約870)をQuanta BioDesignから購入した。ヘテロ官能性アジド-PEG-チオール(約600のモル質量)は、Nanocs Inc.から購入した。Cy5及びCy5.5蛍光色素をGEから購入し、CW800蛍光色素をLi-corから購入した。S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA-NCS)、及び1-(4-イソチオシアナトフェニル)-3-[6,17-ジヒドロキシ-7,10,18,21-テトラオキソ-27-(N-アセチルヒドロキシルアミノ)-6,11,17,22-テトラアザヘプタエイコシン]チオ尿素(DFO-NCS)を、Macrocyclicsから購入した。環状(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸-Dチロシン-システイン)ペプチド(c(RGDyC))は、Peptide Internationalから購入した。Millipore Milli-Qシステムを用いて脱イオン水(DI水)を生成した。
【0137】
様々なC'ドット化学を記述するための包括的な命名法
本明細書で導入され、異なるC'ドット化学を区別するために以下で使用される命名法は、図7に示される(表1も参照)。より詳細には、左側からの第1の語がNP生成物プラットフォーム、例えば、水ベースのC'ドット又は単孔メソポーラスシリカナノ粒子(mCドット)。シリカマトリクス中に共有結合的に封入された特定の色素は、NPプラットフォームに続く括弧内で特定される(例えば、図7のCy5)。括弧の右側の内容は、NP表面に付着した成分を、それらの付着の順序で記述する(ドットは最初に合成されるので、それらは既存の短縮された命名法におけるように、右側ではなく左側に現れる)。粒子表面上の機能基の結合性を強調するために、我々は以下の区別を導入する:ダッシュの右側に現れる成分は、それがそのダッシュの左側の成分に直接付着していることを示す。対照的に、成分がアンダースコアの右側に現れる場合、この成分は、そのアンダースコアの左側の先の成分に付着されるのではなく、シリカNP表面に直接付着される。コンジュゲーション化学に使用される基(例えば、マレイミドとチオール基との間のコンジュゲーションを表すmal-チオール)とは対照的に、機能を規定する成分(例えば、標的リガンド又は他の蛍光色素)は太字であり、イタリック体である(図7及び表1を参照のこと)。機能基がPEG鎖を介してシリカNP表面に連結される場合、エチレングリコールモノマー単位の数が示される(例えばPEG6又はPEG12)。序論で概説したように、このようにして、ナノ粒子名は、(i)NPプラットフォーム、(ii)封入された蛍光色素、(iii)特定の表面機能性及び粒子へのその結合性、(iv)特定のコンジュゲーション化学、(v)合成順序、又は(vi)特定のPEG鎖長に関する正確な情報を有する。
【0138】
様々な種類のNIR色素で機能化したC'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6の合成
c(RGDyC)機能化C'ドットの詳細な合成は、我々の以前の刊行物に記載されている。様々な種類のNIR色素を封入するために、シラン官能化色素、すなわち、Cy5-シラン、Cy5.5-シラン及びCW800-シランを、C'ドット合成の第一工程の間にTMOSと一緒に、反応混合物に添加した。NP合成の残りは、c(RGDyC)機能化C'ドットについて以前に報告したプロトコルと同じままとした。
【0139】
粒子当たりのc(RGDyC)数の増加を伴うC'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6の合成
c(RGDyC)-PEG-シランの濃度を、最初の0.69mMから(これは、C'ドット当たりのc(RGDyC)ペプチドの数を、典型的には16~25とする)、1.73mM(この濃度は、NP当たりのc(RGDyC)の数をさらに増加させる)に増加させた。NP凝集を防ぐために、水酸化アンモニウムの反応濃度も2mMから6mMに増加させた。これは、6mMの水酸化アンモニウム濃度でC'ドット合成を開始するか、又はPEG化工程の直前に追加の水酸化アンモニウムを添加して水酸化アンモニウムの濃度を6mMに増加させるかのいずれかによって、達成することができる。これらの2つのわずかに異なるアプローチによって生成された最終的なC'ドット生成物には、わずかな差異のみが観察された。したがって、製造工程を簡略化するためには、アンモニウム濃度6mMで合成を開始することが好ましい。
【0140】
C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG12-mal_PEG6、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_アミン-NCS-DFO_PEG6、及びC'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG4-DBCO_PEG6の合成。
C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6に追加の機能性リガンドを導入するために、PEG化工程中に、リガンド-シラン・コンジュゲートを、c(RGDyC)-PEG-シラン及びPEG-シランと共に、反応混合物に添加した。これらのリガンド-シラン・コンジュゲートには、マレイミド官能化ヘテロ二官能性PEG-シラン(mal-PEG-シラン)、DFO機能化シラン(DFO-NCS-アミン-シラン)及びDBCO機能化ヘテロ二官能性(二機能性)PEG-シラン(DBCO-PEG-シラン)が含まれた。これらのリガンド-シラン・コンジュゲートの濃度は、表面リガンド密度の要求に応じて、0.01mM~0.34mMの範囲であった。このアプローチによって産生されたC'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG12-mal_PEG6は、チオール-官能化リガンドとの所望の反応性を示した。しかし、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_アミン-NCS-DFO_PEG6及びC'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG4-DBCO_PEG6は、望ましくない特性プロファイル又は不均一なリガンド分布を示した。
【0141】
C'ドット(色素)-アミン_PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6、及びC'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミンの合成。
C'ドットにアミン基を導入するために、アミノシラン、すなわちAPTMSを、C'ドット合成の異なる工程の間に、反応混合物中に導入した。1つの方法では、APTMSを、c(RGDyC)-PEG-シラン及びPEG-シランを1.7mMの濃度で添加する直前に、激しい撹拌下で反応混合物に添加したが、合成の残りは同じままとした。得られたC'ドット(色素)-アミン_PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6は、広がったNPサイズ分布を示した。同時に、Cy5色素の分解が観察された。PEG化後アプローチでは、APTMSをPEG化工程の後に添加した。これは、PEG化工程の最後で、まず反応温度を80℃から室温に下げ、続いて2.3mMの濃度で激しく撹拌しながらAPTMSを添加することによって行った。次いで、反応混合物を、激しく撹拌しながら室温で一晩放置した後、精製した。得られたC'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミンは、GPC及びUV-vis特性評価によって示されるように、所望のNPサイズ分布及び好ましい吸光度特性を示した。このアプローチでは、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミンを、0.3mM程度の低いAPTMS濃度で首尾よく製造することができた(アミン反応性リガンドとの反応性を失ったNP生成物を生じることなしに)。
【0142】
C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFO、及び、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DOTAの、PPSMIに基づく合成
C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFO、及び、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DOTAは、アミノ-シラン添加の1日後、激しく撹拌しながら室温にて、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミンの反応混合物中に、DFO-NCS又はDOTA-NCSをそれぞれ添加することによって合成した。反応物を、激しく撹拌しながら室温にて一晩放置し、その後精製した。DFO-NCS、及びDOTA-NCSの濃度を、大まかに0.02mM~0.4mMの間で変化させ、NP当たりのDFO又はDBCOの数を変化させた。APTMS及びDFOの両方の濃度は、NP当たりのDFOの数を制御するために変えることができた。
【0143】
C'ドット(色素)-PEG6_チオール、及び、C'ドット(色素)-PEG6_チオール-mal-FITCの、PPSMIに基づく合成
PEG-C'ドットにチオール基を導入して、チオール-官能化C'ドット(色素)-PEG6_チオールを生成するために、アミン-シランをチオール-シランで置き換えること、及び、ベースNPとして、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6の代わりに、C'ドット(色素)-PEG6を使用することによって、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミンの合成を修正した。NPの合成の残りは、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミンの合成と同じとした。さらに、FITC色素を、C'ドット(色素)-PEG6_チオールに付着させて、C'ドット(色素)-PEG6_チオール-mal-FITCを生成するために、DFO-NCSをFITC-malで置き換えることによって、及び、ベースNPとして、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミンの代わりに、C'ドット(色素)-PEG6_チオールを使用することによって、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFOの合成を修正した。NPの合成の残りは、C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFOの合成と同じとした。
【0144】
4機能性のC'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFO_チオール-mal-FITCのPPSMIに基づく合成
C'ドット(色素)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFOのために記載した合成アプローチにより、C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6にまずDFO基を導入することによって、C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFO_チオール-mal-FITCを合成した。その後、前記合成アプローチにより、チオール基を、C'ドット(色素)-PEG6_チオールに添加して、C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFO_チオールを生成した。最後の工程で、前記合成アプローチにより、FITC色素を、C'ドット(色素)-PEG6_チオール-mal-FITCに付着させた。得られたC'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFO_チオール-mal-FITCを、最終的に、GPCによって精製し、FCS及び光学特性評価に供した。同じC'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFO_チオール-mal-FITCはまた、別のアプローチでも合成され、そのアプローチでは、アミン-シランとチオール-シランを、別々に添加する代わりに、反応混合物中に一緒に添加した。反応物をその後、激しく撹拌しながら室温で4時間放置し、続いて、DFO-NCS及びFITC-malを同時に添加した。反応の残りは同じとした。
【0145】
C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG12-mal-チオール-PEG10-EVF_PEG6_アミン-NCS-DFO_チオール-mal-FITCの合成
DMSO中でのアジド-アルキン・クリックケミストリーによって、まずEFVにアジド-PEG-チオールをコンジュゲートすることによって、C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG12-mal-チオール-PEG10-EVF_PEG6_アミン-NCS-DFO_チオール-mal-FITCを合成した。この際、モル比は4EFV:1アジド-PEG-チオールとし、EFVの濃度は約0.021Mとした。反応混合物を、窒素下で6日間放置し、所望のコンジュゲーション率を達成した。得られたチオール-官能化EFVを、次いで、PEG工程の直後、すなわち、80℃での熱処理工程後に、1.15mMの濃度で、C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG12-mal_PEG6の反応混合物中に添加した。反応混合物をその後激しく撹拌しながら、室温でさらに6日間放置し、チオール-官能化EFVを、C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG12-mal_PEG6上のマレイミド基に付着させて、C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG12-mal-チオール-PEG10-EVF_PEG6を生成した。その後、C'ドット(Cy5)-PEG12-mal-チオール-c(RGDyC)_PEG6_アミン-NCS-DFO_チオール-mal-FITCのために上述したのと同じ手順によって、DFO及びFITCを導入した。
【0146】
c(RGDyC)-PEG-C'ドットのGPC特性評価及び精製
C'ドットの詳細なGPC特性評価及び精製工程は、我々の以前の刊行物に記載されている。
【0147】
UV-vis及びFCS測定
試料の吸光度スペクトルを、Varian Cary 5000分光光度計で測定した。FCS測定は、前述のように家庭用FCS/FCCSセットアップを使用して行った。635nmの固体レーザーを用いてCy5及びCy5.5ドットを励起し、785nmの固体レーザーを用いてcw800ドットを励起した。
【0148】
様々なC'ドット化学を記述するための包括的な命名法
本明細書で導入され、異なるC'ドット化学を区別するために以下で使用される命名法は、図7に示される(表1も参照)。より詳細には、左側からの第1の語がNP生成物プラットフォーム、例えば、水ベースのC'ドット又は単孔メソポーラスシリカナノ粒子(mCドット)。シリカマトリクス中に共有結合的に封入された特定の色素は、NPプラットフォームに続く括弧内で特定される(例えば、図7のCy5)。括弧の右側の内容はNP表面に付着した成分を、それらの付着の順序で記述する(ドットは最初に合成されるので、それらは我々の既存の命名法におけるように、右側ではなく左側に現れる)。粒子表面上の機能基の結合性を強調するために、我々は以下の区別を導入する:ダッシュの右側に現れる成分は、それがそのダッシュの左側の成分に直接付着していることを示す。対照的に、成分がアンダースコアの右側に現れる場合、この成分は、そのアンダースコアの左側の先の成分に付着されるのではなく、シリカNP表面に直接付着される。コンジュゲーション化学に使用される基(例えば、マレイミド基とチオール基との間のコンジュゲーションを表すmal-チオール)とは対照的に、機能を規定する成分(例えば、標的リガンド又は他の蛍光色素)は太字であり、イタリック体である(図7及び表1を参照のこと)。機能基がPEG鎖を介してシリカNP表面に連結される場合、エチレングリコールモノマー単位の数が示される(例えばPEG6又はPEG12)。序論で概説したように、このようにして、ナノ粒子名は、(i)NPプラットフォーム、(ii)封入された蛍光色素、(iii)特定の表面機能性及び粒子へのその結合性、(iv)特定のコンジュゲーション化学、(v)合成順序、又は(vi)特定のPEG鎖長に関する正確な情報を有する。
【0149】
[実施例2]
この実施例は、本開示の方法及び組成物、並びにその使用の例を提供する。
【0150】
PPSMIアプローチによって合成された機能的C'ドットの例、すなわちDBCO-PEG-Cy5-C'ドットを記載する(図18)。DBCO-PEG-Cy5-C'ドットは、C'ドット表面上のPEG鎖間にDBCO反応基を含有する。DBCO基は、クリックケミストリーを介して、アジド-コンジュゲート化機能性リガンドとさらに反応することができ、C'ドットに追加の機能基を導入する。DBCO-PEG-Cy5-C'ドットを生成するために、シラン-コンジュゲート化Cy5蛍光色素を、まずシリカナノ粒子中に共有結合的に封入した(C'ドットシリカコアの形成中に)。次いで、PEG-シランをシリカナノ粒子の表面に共有結合させて、PEG化PEG-Cy5-C'ドットを形成した。PEG化工程の後、アミン-シランを反応混合物に添加して、シラン縮合を介して、C'ドットのPEG層下の残りのシラノール基に共有結合させ、反応性アミン基を導入した。次いで、DBCO-PEG4-NHSエステルを添加して、アミン-NHSエステル・コンジュゲーション反応を介して、C'ドットのPEG層下のアミン基とさらに反応させた。異なる濃度のDBCO-PEG4-NHSエステルを使用して、DBCO-PEG-Cy5-C'ドットのDBCOリガンド数を変化させた。
【0151】
[実施例3]
この実施例は、本開示の方法及び組成物、並びにその使用の例を提供する。
【0152】
PPSMIアプローチによって合成された機能性C'ドットの例、すなわち、DBCO-DFO-PEG-Cy5-C'ドットを記載する(図19)。DBCO-DFO-PEG-Cy5-C'ドットは、C'ドット表面上のPEG鎖間に、DBCO反応性基及びDFOキレート基の両方を含む。DBCO基は、C'ドットに追加の機能基を導入するために、クリックケミストリーを介して、アジド-コンジュゲート化機能性リガンドとさらに反応することができるが、DFO基は放射性金属をキレート化して、C'ドットを陽電子放出断層撮影(PET)プローブとして使用することを可能にする。DBCO-DFO-PEG-Cy5-C'ドットを製造するために、シラン-コンジュゲート化Cy5蛍光色素を、まずシリカナノ粒子中に共有結合的に封入した(C'ドットシリカコアの形成中に)。次いで、PEG-シランをシリカナノ粒子の表面に共有結合させて、PEG化PEG-Cy5-C'ドットを形成した。PEG化工程の後、アミン-シランを反応混合物に添加して、シラン縮合を介して、C'ドットのPEG層下の残りのシラノール基に共有結合させ、反応性アミン基を導入した。次に、SCN官能化DFO(DFO-SCN)を反応混合物に添加して、アミン-SCN・コンジュゲーション反応を介して、C'ドットのPEG層下のアミン基と反応させた。
低濃度のDFO-SCNを用いて、各C'ドットに、5個未満と少ないDFOキレート剤を導入した。従って、C'ドット表面上の残りのアミン基は、上記のようにDBCO付着のために使用され得る。DFO-SCNの添加の1日後、次いで、DBCO-PEG4-NHSエステルを反応混合物に添加して、アミン-NHSエステル・コンジュゲーション反応を介して、C'ドットのPEG層下の残りのアミン基とさらに反応させた。その結果、DFOとDBCOの両方が、PPSMI法によりPEG鎖間のC'ドット表面に共有結合した。
【0153】
[実施例4]
この実施例は、本開示の反応条件の要約を提供する。
【0154】
合成システムは、様々な機能基を、単一のナノ粒子プラットフォーム上で選択的に組み合わせるために、少なくとも9つの直交式及びモジュール式機能化経路に拡張することができる。これらの機能化アプローチが適用可能なナノ粒子プラットフォームには、C'ドット、AlC'ドット、及びmCドットが含まれるが、これらに限定されない(表2の1)。
【0155】
Cy5、Cy5.5及びcw800に加えて、他の種類の色素をコンジュゲーション化学(チオール-エン、アミン-NHSエステル、アジド-アルキン化学を含むがこれらに限定されない)によって、シラン基で官能化することができる。次いで、色素-シラン・コンジュゲートを、異なる蛍光特性をナノ粒子に与えるために、コア形成工程の間に添加することができる。異なる種類の色素としては、DACM、DEAC、RHG、TMR、TRITC、FITC、Cy3、ATTO647N、ATTO680及びDY782が挙げられるが、これらに限定されない(表2の2)。
【0156】
c(RGDyC)癌標的化ペプチドに加えて、特定の用途機能を果たす他のリガンドを、コンジュゲーション化学(チオール-エン、アミン-NHSエステル、アジド-アルキン化学を含むがこれらに限定されない)により、ヘテロ二官能性PEG-シランに付着させることができる。次いで、得られたリガンド-PEG-シラン・コンジュゲートを、PEG化工程中に添加して、ナノ粒子に異なる機能を付与することができる。異なる機能性リガンドには、ペプチド、抗体フラグメント、DNA分子、RNA分子、蛍光色素、検知分子、薬物分子及びキレート剤分子が含まれるが、これらに限定されない(表2の3)。
【0157】
マレイミド官能化ヘテロ二官能性PEG-シランに加えて、反応基を含有する他のヘテロ二官能性PEG-シランを、PEG化工程の間に、ナノ粒子表面に付着させることができ、追加の機能性リガンドでナノ粒子をさらに修飾することができる(PEG鎖末端にて)。反応基としては、マレイミド基、NHSエステル基、アジド基、アミン基、チオール基、アルキン基及びDBCO基が挙げられるが、これらに限定されない(表2の4)。
【0158】
EFV-PEG-SHに加えて、PEG化後、特定の用途機能を実行する他のリガンドを、コンジュゲーション化学(チオール-エン反応、アミン-NHSエステル反応、又はアジド-アルキン反応を含むが、これらに限定されない)により、ナノ粒子表面上のPEG鎖末端に既に存在する反応基に付着させることができる。異なる機能性リガンドには、ペプチド、抗体フラグメント、DNA分子、RNA分子、蛍光色素、検知分子、薬物分子、及びキレート剤分子が含まれるが、これらに限定されない(表2の5)。
【0159】
チオール-シラン及びアミノ-シランに加えて、反応基を有する他のシランコンジュゲートを、PEG化後にPEG層中に挿入し、下のシリカ表面に付着させることができ、追加の機能性リガンドでナノ粒子をさらに修飾することができる(PEG鎖の間で)。反応基としては、マレイミド基、NHSエステル基、アジド基、アミン基、チオール基、アルキン基及びDBCO基が挙げられるが、これらに限定されない(表2の6)。
【0160】
DFO、DOTA及びFITCに加えて、PEG化後、特定の用途機能を果たす他のリガンドを、PEG層中にすでに挿入されている反応基に付着させることができる。異なる機能性リガンドには、ペプチド、抗体フラグメント、DNA分子、RNA分子、蛍光色素、検知分子、及びキレート剤分子が含まれるが、これらに限定されない(表2の7)。
【0161】
特定の用途機能を果たす小さいリガンドを含む他のシランコンジュゲートを、PEG化後にPEG層中に挿入し、その下のシリカ表面に付着させることができる。異なる機能性リガンドには、ペプチド、抗体フラグメント、DNA分子、RNA分子、蛍光色素、検知分子及びキレート剤分子が含まれるが、これらに限定されない(表2の8)。
【0162】
[表2]
図1
図2A-C】
図2D-F】
図3A-D】
図3E-H】
図4A-D】
図4E-H】
図5A-C】
図5D-F】
図6A-D】
図6E-H】
図7
図8A-D】
図8E-H】
図8I-L】
図9
図10A-D】
図10E-H】
図11
図12A-D】
図12E-H】
図13A-C】
図13D-F】
図14
図15A-C】
図15DE
図16A-C】
図16D-G】
図17
図18A-C】
図18D-G】
図19