IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 多摩川精機株式会社の特許一覧

特許7309200フォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置
<>
  • 特許-フォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置 図1
  • 特許-フォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】フォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020034628
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021139627
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 秀樹
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-082914(JP,A)
【文献】特開2009-165299(JP,A)
【文献】特開2004-151040(JP,A)
【文献】特開昭62-074593(JP,A)
【文献】特開昭62-110113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12- 5/252
G01B 7/30
H02P 6/00- 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンバル(2)に設けられ、-有限角側(40)から0度を経て+有限角側(41)、又は、+有限角側(41)から0度を経て-有限角側(40)に回転可能な有限角モータ(5、9)の角度位置を検出するnX型レゾルバ(6、10)と、前記nX型レゾルバ(6、10)の前記0度の位置に設けられたフォトインタラプタ(43)と、前記フォトインタラプタ(43)の光電センサ(44)から出力され、前記nX型レゾルバ(6、10)の前記0度を境として前記-有限角側(40)を「1」前記+有限角側(41)を「0」とする極性検知を示す光電センサ出力(44a)と、前記-有限角側(40)及び+有限角側(41)におけるR/D変換器データMSB、MSB-1を出力するR/D変換器(20)と、を用い、前記R/D変換器データMSB、MSB-1をMSB拡張し、MSB拡張した出力データMSB~MSB-2を出力するようにしたフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法。
【請求項2】
前記nX型レゾルバ(6、10)及びフォトインタラプタ(43)は、前記ジンバル(2)に設けられていることからなる請求項1記載のフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法。
【請求項3】
前記nX型レゾルバ(6、10)は、軸倍角が8Xよりなる請求項1又は2記載のフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法。
【請求項4】
前記フォトインタラプタ(43)が設けられた前記レゾルバ(6、10)の0度の位置における前記光電センサ(44)の切り替わり点(G)は、0度±5.625度以内である請求項1~3の何れか1項に記載のフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法。
【請求項5】
ジンバル(2)に設けられ、-有限角側(40)から0度を経て+有限角側(41)、又は、+有限角側(41)から0度を経て-有限角側(40)に回転可能な有限角モータ(5、9)の角度位置を検出するnX型レゾルバ(6、10)と、前記nX型レゾルバ(6、10)の前記0度の位置に設けられたフォトインタラプタ(43)と、前記フォトインタラプタ(43)の光電センサ(44)から出力され、前記nX型レゾルバ(6、10)の前記0度を境として前記-有限角側(40)を「1」前記+有限角側(41)を「0」とする極性検知を示す光電センサ出力(44a)と、前記-有限角側(40)及び+有限角側(41)におけるR/D変換器データMSB、MSB-1を出力するR/D変換器(20)と、を備え、前記R/D変換器データMSB、MSB-1をMSB拡張し、MSB拡張した出力データMSB~MSB-2を出力するようにしたフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上装置。
【請求項6】
前記nX型レゾルバ(6、10)及びフォトインタラプタ(43)は、前記ジンバル(2)に設けられていることからなる請求項5記載のフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上装置。
【請求項7】
前記nX型レゾルバ(6、10)は、軸倍角が8Xよりなる請求項5又は6記載のフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上装置。
【請求項8】
前記フォトインタラプタ(43)が設けられた前記レゾルバ(6、10)の0度の位置における前記光電センサ(44)の切り替わり点(G)は、0度±5.625度以内である請求項5~7の何れか1項に記載のフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバの角度検出精度向上方法及び装置に関し、特に、メカスイッチ等の代りにフォトインタラプタを用いて、レゾルバの回転角度の-有限角側と+有限角側の極性検知を行い、R/D変換器のデータMSB、MSB-1をMSB拡張して得た出力データMSB~MSB-2を用い、高精度で測角できるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバの角度検出精度向上のための手段としては、例えば、複速レゾルバの使用、減速機の使用等が採用されていた。
また、特許文献1の回転角検出装置には、ビット拡張をしているレゾルバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再公表特許WO2011/010516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレゾルバの角度検出精度向上のための手段としては、以上のように種々採用されていたが、何れも、次のような課題が存在していた。
すなわち、第1従来例としての複速レゾルバを用いる構成の場合、少なくとも、軸倍角又は回転速度が異なる2個のレゾルバを用意しなければならず、その場合には、全体形状が大型化し、小型機器への適用が極めて困難であった。
また、第2従来例としての減速機を用いてレゾルバの複速回転を得る構成は、レゾルバが大型化し、かつ、大型の機器用のレゾルバ装置となっていた。
また、ビット拡張を行う構成のIC化については、小型化は可能であるが、カスタムICとなり、開発のコストには限界があった。また、回路構成が複雑であるため、簡単に小型化することは困難であった。また、マイクロスイッチで切換える構成もあるが、寿命の問題及びチャタリングの問題もあり、長期の実用性に問題が存在していた。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、フォトインタラプタを用いて、光電センサの出力を-有限角側と+有限角側に分け、R/D変換器のデータMSB、MSB-1を周知のMSB拡張で拡張し、得られた出力データMSB~MSB-2を用い、高精度で測角できるようにしてなるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法は、ジンバルに設けられ、-有限角側から0度も経て+有限角側、又は、+有限角側から0度を経て-有限角側に回転可能な有限角モータの角度位置を検出するnX型レゾルバと、前記nX型レゾルバの前記0度の位置に設けられたフォトインタラプタと、前記フォトインタラプタの光電センサから出力され、前記nX型レゾルバの前記0度を境として前記-有限角側を「1」前記+有限角側を「0」とする極性検知を示す光電センサ出力と、前記-有限角側及び+有限角側におけるR/D変換器データMSB、MSB-1を出力するR/D変換器と、を用い、前記R/D変換器データMSB、MSB-1をMSB拡張し、MSB拡張した出力データMSB~MSB-2を出力するようにした方法であり、また、前記nX型レゾルバ及びフォトインタラプタは、前記ジンバルに設けられている方法であり、また、前記nX型レゾルバは、軸倍角が8Xよりなる方法であり、また、前記フォトインタラプタが設けられた前記レゾルバの0度の位置における前記光電センサの切り替わり点は、0度±5.625度以内である方法であり、また、本発明によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上装置は、MSB-1を出力するR/D変換器と、を用い、前記R/D変換器データMSB、MSB-1をMSB拡張し、MSB拡張した出力データMSB~MSB-2を出力するようにした構成であり、また、前記nX型レゾルバ及びフォトインタラプタは、前記ジンバルに設けられている構成であり、また、前記nX型レゾルバは、軸倍角が8Xよりなる構成であり、また、前記フォトインタラプタが設けられた前記レゾルバの0度の位置における前記光電センサの切り替わり点は、0度±5.625度以内とした構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、ジンバルに設けられ、-有限角側から0度を経て+有限角側、又は、+有限角側から0度を経て-有限角側に回転可能な有限角モータの角度位置を検出するnX型レゾルバと、前記nX型レゾルバの前記0度の位置に設けられたフォトインタラプタと、前記フォトインタラプタの光電センサから出力され、前記nX型レゾルバの前記0度を境として前記-有限角側を「1」前記+有限角側を「0」とする極性検知を示す光電センサ出力と、前記-有限角側及び+有限角側におけるR/D変換器データMSB、MSB-1を出力するR/D変換器と、を用い、前記R/D変換器データMSB、MSB-1をMSB拡張し、MSB拡張した出力データMSB~MSB-2を出力するようにした方法及び装置において、フォトインタラプタを用いているため、従来のマイクロスイッチに比べると、切換え動作時のノイズや音がなく、静かで安定した動作を得ることができる。また、MSB拡張により、小さい角度範囲でも、ノイズを伴うことなくMSB拡張を行うことができる。
また、前記nX型レゾルバ及びフォトインタラプタは、前記ジンバルに設けられていることにより、空間安定台の小型化に寄与することができる。
また、前記nX型レゾルバは、軸倍角が8Xよりなることにより、角度検出の精度を高く保持することができる。
また、前記フォトインタラプタが設けられた前記レゾルバの0度の位置における前記光電センサの切り替わり点は、0度±5.625度以内であることにより、+側及び-側における±5.625度以内は、光電センサ出力を無視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置を示すためのジンバルを示す斜視図である。
図2図1のジンバルに設けられたレゾルバの出力データ等を示す8Xレゾルバの多回転検出ロジックである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置は、フォトインタラプタを用いて、レゾルバの回転角度の-有限角側と+有限角側の極性検知を行い、R/D変換器のデータMSB、MSB-1をMSB拡張して得た出力データMSB~MSB-2を用い、高精度で測角ができるようにすることである。
【実施例
【0010】
以下、図面と共に本発明によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置に適用される空間安定台1のジンバル2を具体的に示している。
前記空間安定台1の台3には、2軸式の前記ジンバル2が設けられ、このジンバル2は、主として、枠状をなしAZ軸60を中心に回動自在なAZ枠4と、前記AZ枠4に設けられ、このAZ枠4を回動させるためのAZ用有限角モータ5及びAZ用レゾルバ6と、前記AZ枠4の内側に設けられ前記AZ軸とは直交するEL軸61を中心に回動可能なEL枠8と、前記AZ枠4の側部に設けられ前記EL枠8を前記AZ枠4の回動方向とは直交する方向に回動させるためのEL用有限角モータ9及びEL用レゾルバ10と、から構成されている。
尚、前述のジンバル2は周知の構造であるため、図示を一部省略しているが、各モータ5、9は各枠4、8を独立してAZ軸回転方向50及びEL軸回転方向51に各々回動し、前記各モータ5、9と各レゾルバ6、10は各々連動して回動するように、二軸ジンバルを構成している。
【0011】
前記ジンバル2の前記EL枠8の前面には、カメラ12が取り付けられており、例えば、各モータ5、9を駆動している間に前記カメラ12でターゲット(図示せず)を据えた場合は、前記各モータ5、9の駆動を、各レゾルバ6、10からの角度信号に基づいて、図示しない制御部で制御することにより、前記ジンバル2を自動的に駆動して、前記ターゲットを追従し続けることができるように構成されている。
【0012】
次に、図2は、前記各レゾルバ6、10の出力データの周知のMSB拡張について示している。
図2において、(M)は各レゾルバ6、10の機械角度(0度から-45度、0度から+45度)で、図示しない機械ストッパが0度から-31度、0度から+31度の間で、有限角の角度検出を行うことができるように構成されている。
【0013】
さらに、図2の(M1)においては、前述のように、各レゾルバ6、10の0度の位置に設置され光電センサ44を内蔵したフォトインタラプタ43における周知の光電センサ44からの光電センサ出力44aは、光電センサ44の切り替わり点Gが0度±5.625度以内(すなわち、図2のGで示すハッチング部分に相当)であるため、このハッチング部分を除いて、光電センサ44の光電センサ出力44aは、-45度から0度の手前迄が「1」、+45度から0度の手前迄が「0」となっている。
前記光電センサ44の切り替わり点Gは、フォトインタラプタ43の光電センサ44の動作範囲、すなわち、0度は図2のM1の極性検知に相当し、雑音やチャタリング等のない電気的に安定した極性切り換え動作を得ることができる。
【0014】
さらに、図2の(M2)においては、各レゾルバ6、10の出力データをR/D変換するため、R/D変換器(図示せず)のデータMSB、MSB-1は「00」、「01」、「10」、「11」、「00」、「01」、「10」、「11」のロジックの組み合わせとなる。
また、(M3)のように、(M3)で示すR/D変換器データMSB、MSB-1を周知のMSB拡張した出力データとした場合には、MSB~MSB-2は、-33.75度から0度迄は、101、110、111となり、さらに、0度から+33.75度迄は、000、001、010のロジックの組み合わせとなる。
【0015】
従って、図2の多回転検出ロジックは、以下の通りである。
R/D変換器データのMSB、MSB-1=11の場合 111とする。
R/D変換器データのMSB、MSB-1=00の場合 000とする。
R/D変換器データのMSB、MSB-1=上記以外の場合 (光電センサ出力)+(R/D変換器データのMSB、MSB-1)とする。
【0016】
尚、本発明の実施の形態によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置の特徴的構成を示すと、下記の通りである。
すなわち、軸倍角が8XからなるnX型レゾルバであるAZ用レゾルバ6及びEL用レゾルバ10は、図2で示されるように、-有限角側40から0度を経て+有限角側41、又は、+有限角側41から0度を経て-有限角側40に回転可能な有限角モータ5、9の角度位置を検出し、前記0度の位置にフォトインタラプタ43が設けられ、前記フォトインタラプタ43の光電センサ44から、前記0度の位置を境として、前記-有限角側40を「1」前記+有限角側41を「0」とする極性検知後の光電センサ出力44を得ることができ、R/D変換器20は、前記-有限角側40及び+有限角側41におけるR/D変換器データMSB、MSB-1を出力し、前記R/D変換器データMSB、MSB-1がMSB拡張されることによって出力データMSB、MSB-2が出力され、前記nX型レゾルバ6、10及びフォトインタラプタ43は、ジンバル2に設けられ、前記フォトインタラプタ43が設けられたレゾルバ6、10の0度位置における前記光電センサ44の切り替わり点の0度は、0度±5.625度以内に設定されている。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によるフォトインタラプタを用いたレゾルバの角度検出精度向上方法及び装置は、フォトインタラプタを用いて、+、-有限角側の切換時に、従来のような機械スイッチによる切換音を発することもなく、無音状態で切換動作を行うことができ、R/D変換器の出力データMSB、MSB-1をMSB拡張した出力データMSB、MSB-2を得て、分解能の向上によって、高精度で測角できることである。
【符号の説明】
【0018】
2 ジンバル
5、9 有限角モータ
6、10 nX型レゾルバ
20 R/D変換器
40 -有限角側
41 +有限角側
43 フォトインタラプタ
44 光電センサ
44a 光電センサ出力
MSB、MSB-1 R/D変換器データ
X 軸倍角
図1
図2