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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】注射練習具
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20230710BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020182892
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073111
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390025634
【氏名又は名称】株式会社ケー・シー・シー・商会
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】姫野 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】亀田 公治
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152770(JP,A)
【文献】特開2012-203153(JP,A)
【文献】特開2019-193809(JP,A)
【文献】特開2016-177234(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110176174(CN,A)
【文献】特開2013-246393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28-23/34
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦長で幅方向の湾曲した弧状の硬質素材により形成され、その内方を腕通し部分とする取付本体と、該取付本体に配置する突弧平面からなる模擬皮下組織層と、前記模擬皮下組織層を上方から覆う模擬皮膚層を有する上カバーと、を有し、
模擬血液を密封した模擬血液バックと管状の血管部とからなる模擬血管を前記模擬皮下組織層に配置可能とし、前記上カバーに前記模擬血液バックを圧迫する押え具により前記血管部を緊張させることが可能な注射練習具であって、
前記取付本体は、前記模擬血液バックを配置可能とする複数のバック配置部と、前記バック配置部の後方に位置して前記血管部の基端部分を支持可能とする複数の基端支持部と、を有し、
前記基端支持部は、両側の側方支持壁と後方の連通支持部からなり、前記血管部の基端部分を収容する凹所を有し、
前記連通支持部は、上縁から下方に従って幅狭となるように両側から傾斜して開孔する通し孔を有することを特徴とする注射練習具。
【請求項2】
連通支持部は、両側の側方支持壁より互いの方向に向かう2つの幅延長部分と、該2つの幅延長部分の各々の延長端より下方に傾斜して切欠き開孔する通し孔とを有し、
前記通し孔の切欠いた上平面に血管部を支持可能な通し孔支持面を有することを特徴とする請求項1に記載の注射練習具。
【請求項3】
取付本体は、後端縁から起立する起立片を有し、該起立片の幅方向中央の突弧状頂部分を切除した切除部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の注射練習具。
【請求項4】
模擬皮下組織層は、切除部付近において、表面から切除部下端に至る短溝が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の注射練習具。
【請求項5】
取付本体は湾曲した突弧状の形態で保持するデッキに着脱自在とするものであって、
前記取付本体の切除部に相当する位置に、前記デッキにデッキ切除部を形成したことを特徴とする請求項3または4に記載の注射練習具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師、看護師、助産師、保健師、臨床検査技師、救急救命士、看護学生など医療関係者が注射に関する様々な手技を練習するにあたり、現実の注射感覚に近い状態を再現し、練習効果を向上させた注射練習具に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
注射は、医師、看護師、助産師、保健師、臨床検査技師、救急救命士、看護学生などの医療関係者にとって、必要不可欠の技術であり、その技量不足は、直ちに患者に苦痛を与えるものである。ところが、注射技術の向上は、従来医療関係者各自の経験の積み重ねに依存するところが大きく、効果的な訓練を行なうことが困難であった。
【0003】
特許文献1には、取付本体に貼着した模擬皮下組織層上に模擬血管を配置し、該模擬皮下組織層及び模擬血管を模擬皮膚層で覆い、取付本体を腕に装着して現実の注射感覚に近い状態を再現した注射練習具が開示されている。模擬血管は一端を模擬血液を貯留した模擬血液バックに一端を連結して形成されている。
【0004】
また医療用のチューブの接続技術として特許文献2には、チューブを嵌入するテーパ部を一端部に有しねじ部を他端部に設けた口金と、テーパ部に対向するテーパ内面を有しチューブの外側に嵌合する締付け用リングと、一端側が口金のねじ部に螺合し他端側が締付け用リングを係止するナットとからなる内視鏡用チューブ接続装置が開示されている。この装置はナットをねじ込むことにより締付け用リングが一端側に移動して、テーパ部とテーパ内面とによりチューブを拡径しながら挟持し、チューブを口金に締め付けて固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-152770号公報
【文献】特開平2-46821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の注射練習具は、模擬血管を模擬皮膚層と模擬皮下組織層とで挟み込み、模擬血液バックを押え具で押さえて血管部を怒張させる状態で注射練習をすることができ、実際の注射行為の状態と似た状態を実現することができた。ところが、特許文献1に記載の発明では、模擬血管を配置する部位が単一の太さの血管部を想定していたため、実際の人体に即した太い血管と細い血管との複数種類を配置し、練習者が選別する作業等を行うことができなかった。また、特許文献1に記載の注射練習具は模擬血管の先端が閉じていることから、模擬血液を抜き取る採血実習を行うには好適であったが、点滴投与などの薬液や食塩水を模擬血管に追加することになる投与に関連する手技を練習し難い。このように特許文献1に記載の注射練習具は、画一的な練習形態しか実現できず、異なる太さの模擬血管を一度に使用したり、投与型の練習を行ったりするなどのフレキシブルな対応をすることが望まれていた。
【0007】
また、特許文献2に記載の血管注射シミュレータは、人工血管から柔軟容器を接続したり、ビニールパウチを接続したりすることができるが、そもそもスポンジ材に溝が配列されて人工血管を配する構成であるため、人工血管の位置が変わらず、練習者が血管の位置を探り当てて練習することができなかった。
【0008】
そこで、従来技術の問題に鑑み、異なる太さの模擬血管を一度に使用したり、投与型の練習を行ったりするなどの様々な状況を再現して練習することができる注射練習具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の注射練習具は、縦長で幅方向の湾曲した弧状の硬質素材により形成され、その内方を腕通し部分とする取付本体と、該取付本体に配置する突弧平面からなる模擬皮下組織層と、前記模擬皮下組織層及び前記模擬血管を上方から覆う模擬皮膚層を有する上カバーと、を有し、模擬血液を密封した模擬血液バックと管状の血管部とからなる模擬血管を前記模擬皮下組織層に配置可能とし、前記上カバーに前記模擬血液バックを圧迫する押え具により前記血管部を緊張させて実習可能な注射練習具であって、前記取付本体は、前記模擬血液バックを配置可能とする複数のバック配置部と、前記バック配置部の後方に位置して前記血管部の基端部分を支持可能とする複数の基端支持部と、を有し、前記基端支持部は、両側に各々支持壁を有して前記血管部の基端部分を収容する凹所と、前記支持壁の先端側で前記血管部を連通可能な通し孔を有する連通支持部と、を有し、前記連通支持部は、上縁から傾斜する傾斜支持部により前記通し孔を形成することを特徴とするものである。
【0010】
また、連通支持部は、両側の側方支持壁より互いの方向に向かう2つの幅延長部分と、該2つの幅延長部分の各々の延長端より下方に傾斜して切欠き開孔する通し孔とを有し、前記通し孔の切欠いた上平面に血管部を支持可能な通し孔支持面を有することが好ましい。
【0011】
また、取付本体は、模擬皮下組織層を前後に壁部で仕切り、前記後側の壁部であって幅方向中央の突弧状頂部分に切除部を形成したことが好ましい。
【0012】
また、模擬皮下組織層は、切除部付近において、表面から切除部下端に至る短溝が形成されていることが好ましい。
【0013】
また、取付本体は湾曲した突弧状の形態で保持するデッキに着脱自在とするものであって、前記取付本体の切除部に相当する位置に、前記デッキにデッキ切除部を形成したことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明により、取付本体に取り付ける模擬血管の血管部の径(太さ)が異なるものであっても、配置が可能となり、様々な実習を可能とすることができる。すなわち、模擬血管は模擬血液バックと血管部とを連結する部分である基端部分に様々なサイズを有し、血管部の太さも異なる。本発明の基端支持部の凹所に基端部分を収容し、傾斜支持部を有する通し孔を有することで太い血管部であれば傾斜支持部の上方で、細い血管部であれば下方で支持することができるため、様々な太さの血管部を用いることができる。さらに、基端支持部が複数配置されることで、動脈などの太い血管とその他の細い血管を同時に配列して、実習者が手探りで所望の血管に注射練習をすることが可能となり、様々な状況を再現できる注射練習具を提供することが可能になる。また、凹所が模擬血管の連結部分を収容するものであるため、押え具による模擬血液バックの押圧を阻害せずに注射練習を行うことが可能になる。
【0015】
請求項2に記載の発明により、連通支持部に幅延長部分を有することで模擬血管の連結部、連結固定部を係り止めすることができ、所謂血管部が抜け落ちることを防止することができる。また、通し孔に通し孔支持面を有することで、この通し孔の上部で支持することができ、上カバーで押さえつけた状態でせん断されないようにしつつ、血管部を位置決めして支持することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明により、取付本体に収まらない長さの模擬血管であっても、取付本体から切除部を通じて外部に出すことで、使用が可能となる。これに加え、模擬血管の先端側でさらに排出容器等に連結することで、採血実習だけでなく、点滴などの投与型実習も加えて行うことが可能になり、様々な状況を再現できる注射練習具を提供することが可能になる。
【0017】
請求項4に記載の発明により、模擬血管及び取付本体の先端側の切除部近傍で、切除部下端に通じる短溝が形成されることで、模擬血管を切除部に簡易に誘導できるだけでなく、上カバーの縁部分で模擬血管の先端側を押圧して点滴などの投与実習を阻害しないようにすることができる。つまり、模擬血管は自由に曲げられる軟質部材であるため、短溝がないと上カバーとの縁部分で不意に曲げられたりして血管内の流路を阻害することとなる。短溝を用いることで上カバーの縁部分との直接の接触を回避し、円滑な投与実習が可能になる。
【0018】
請求項5に記載の発明により、デッキにもデッキ切除部が形成されることで、取付本体を腕に巻き付ける場合だけでなく、デッキに取付本体を置いた状態で注射練習をするに際しても、採血実習だけでなく、投与実習も行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の注射練習具に新たな模擬血管を備えた状態の全体斜視図である。
図2図1より取付本体をデッキから取り外し、模擬血管も外した状態の斜視図である。
図3】本発明の注射練習具に用いる従来の模擬血管を示す斜視図である。
図4】本発明の注射練習具に用いる新たな模擬血管を示す斜視図である。
図5】取付本体の基端支持部を示す一部拡大斜視図である。
図6】中央の基端支持部を後方から見た一部拡大側面図であり、(a)が従来の模擬血管を取り付けた状態であり、(b)が新たな模擬血管を取り付けた状態である。
図7】取付本体の後端の起立片を後方からみた背面端面図である。
図8】取付本体後方の切除部を示す一部拡大斜視図である。
図9】模擬血管を分解した平面図であって、上段に模擬血液バックとアダプタとコネクタを示し、下段に血管部を示すものである。
図10】連結固定部を分解した拡大縦断面図であって、(a)が通常血管部に用いる連結固定部であり、(b)が細血管部に用いる連結固定部である。
図11図10(a)の連結固定部の動作説明図であって、(a)が血管部にアダプタを取り付けてコネクタと連結する直前の状態であり、(b)がコネクタと連結固定した状態である。
図12】排出接続部及び廃液容器を取り付けた模擬血管の説明図である。
図13】排出接続部を分解した拡大平面図であって、(a)が血管部と第2アダプタと第2コネクタを示し、(b)が中間接続部材と連結部材を示すものである。
図14】排出接続部の拡大縦断面図である。
図15】中間接続部材と連結接続部材との動作説明図であり、(a)が遮蔽弁により閉塞した初期状態であり、(b)が遮蔽弁を破って閉塞を開放した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る注射練習具の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。なお、本説明にあたり、取付本体1の長手方向を前後方向とし、図1の左奥側を前側若しくは基端側とし、右手前側を後側若しくは先端側として説明する。また、取付本体1の長手方向と直交する方向を幅方向若しくは側方として説明する。
【0021】
本発明に係る注射練習具の基本的な形態は、図1、2に示すように、取付本体1と、取付本体1の上面に配置する模擬皮下組織層2と、模擬皮下組織層2の上方を覆う模擬皮膚層4を張設する上カバー5とを備えたものである。模擬皮下組織層2上に模擬血管61、101を配し、上カバー5を被せて模擬皮膚層4から模擬血管61、101を探り当てて注射実習を行うものである(図3、4参照)。
【0022】
まず、本発明の注射練習具の取付本体1について説明する。取付本体1は、硬質樹脂からなる略板状体を全体として突弧形状、アーチ形状に湾曲した形態を有するものである。図2に示すように、突弧形状、アーチ形状となる取付本体1の裏面側となる内方が開放されており、その開放された内方部分が腕通し部分42となる。取付本体1は、図1に示すようにデッキ40に取り付けた状態で卓上に置いて使用することもできるが、図2に示すように、デッキ40から取り外して、取付本体1の内方部分となる腕通し部分42を疑似被用者の腕に巻いて使用することもできる。
【0023】
疑似被用者の腕に巻いて使用する場合、図2に示すデッキから取付本体1を取り外した状態で使用する。取付本体1を腕の肘関節と手首との間の位置で、腕通し部分42を腕に巻いて装着する。そして、腕に装着させた状態で上カバー5の模擬皮膚層4の表面(上面)から模擬血管101に注射針を刺して、血管注射の練習をすることができる。疑似被用者の腕に装着することで、対面した疑似被用者の腕への血管注射を模すことができ、疑似被用者の個人差や対面実施等の臨場感を再現することができる。
【0024】
取付本体1の構成について説明する。図1、2に示すように、取付本体1は、ABS樹脂など硬質の合成樹脂材を用いて、幅方向の中心部を突弧状に湾曲させて全体として突弧状、アーチ状に成型する。このように硬質素材を用いることにより、練習者が誤って使用した場合に、注射針が取付本体1を貫通することを防ぐのみならず、模擬皮膚層4や模擬皮下組織層2等を除いた全体及び外観が硬質素材によって成型されているものであるため、注射練習が未経験であっても安心して利用することができる。
【0025】
取付本体1は、長手方向の両前後端が起立した起立片31、31を有する。取付本体1の表面では、この長手方向に沿って、前側の起立片31から後側の起立片31にかけて、湾曲変更手段である2本の折り曲げ溝32、32を有する。この折り曲げ溝32、32に対応する前後の起立片31、31の位置で切り欠かれた切欠き33、33が形成され、アーチ状の取付本体1のアーチ形態を広げたり、狭めたりすることができる。これにより、疑似被用者の腕の太さに応じて、取付本体1の幅や湾曲状態、アーチ状態を調整することが可能になる。
【0026】
取付本体1は、図1、2に示すように、前側の起立片31の後側に模擬血管101の模擬血液バック102を配置するためのバック配置部11、11が幅方向に複数並び、その後側に従来及び新たな模擬血管61、101の基端部分である連結部64、連結固定部104(図1図3参照)を収容する基端支持部6を有し、その後方に突弧平面状に形成された模擬皮下組織層2を配し、その後方に後側の起立片31が配される。
【0027】
模擬皮下組織層2は、取付本体1の上面の湾曲形状と一致する突弧状、アーチ状体であり、皮下組織の感触を再現し、取付本体1の湾曲形状の変形に耐え得るために低反発性発泡材とからなる。低反発性発泡材は例えば低発泡ウレタンなどであり、メモリーフォーム(登録商標)が好ましい。模擬皮下組織層2は着脱自在としており、その平面は起立片31の上縁付近に至る。
【0028】
次に模擬皮膚層4を張設する上カバー5について説明する。模擬皮下組織層2の上側を覆う模擬皮膚層4は、取付本体1の上面に配置する上カバー5に張設される。この上カバー5は、取付本体1上面の湾曲形状と一致するアーチ状に形成され、その中央部分が切除され、模擬皮膚層4が張設される。上カバー5の前側には押え具8が形成され、上カバー5と押え具8との間は、幅方向両側を開放した押え具連結部7が形成される。押え具8は、上カバー5を閉じた状態で後述するバック配置部11、11の上側に位置し、押え具連結部7は基端支持部6の上側に位置する。
【0029】
模擬皮膚層4は、ウレタン系材料で形成することで、シリコン系材料で形成した場合と異なり、消毒アルコールの乾燥状態(濡れ具合)を目視で確認でき、乾燥が不十分な未消毒状態での注射を防ぐことができる。また、ウレタン系マイクロセルポリマーシートを用いることで、アルコールによる膨張から未消毒状態を確認することができる。
【0030】
上カバー5は、長手方向の側縁部分に取付本体1への固定手段として、その側方に係止爪34が形成される。一方、取付本体1に被係止部35が形成され、これらの係合により、上カバー5を取付本体1に対して着脱自在に取り付けることができる。
【0031】
次に、取付本体1に配置する模擬血管について説明する。従来の模擬血管61は、図3に示すように、血管部63と模擬血液バック62とを連結部64により連結固定したものであり、使い捨てのものとして供給している。模擬血液バック62は、図面上方形の袋(バック)に模擬血液を収容し、このバック62の基端部分と模擬血管61の基端部63aとを円筒状の連結部64で接続している。この血管部63は天然ゴムなどで形成する筒状の管を使用し、連結部64は血管部63とほぼ同じ太さ(径)の樹脂成型品を用いている。
【0032】
本実施形態で用いることができる新たな模擬血管101は、図4に示すように、血管部103と模擬血液バック102とを連結固定部104で連結する。詳細は後述するが、この連結固定部104は、図11に示すように、血管部103の基端部分103aにアダプタ105を配し、このアダプタ105を模擬血液バック102の流出筒111に螺合することで接続、保持するコネクタ106により接続する。コネクタ106はアダプタ105を内包するようにして接続するため、従来の連結部64よりも太さ、外径が大きくなる。この新たな模擬血管101の連結固定部104により太さの異なる血管部103を連結固定することが可能になる。
【0033】
従来及び新たな模擬血管61、101に充填する模擬血液は、図3、4に示すように、赤く着色し臨場感を持たせるとともに、血管部63、103を含めその内部に空気が入らない状態で密封している。模擬血液バック62、102や血管部63、103内に空気が入らない状態としておくことによって、練習者が針を刺した時、液体と空気が混じりあった気泡がシリンジ内に入るのを防止することができる。また、模擬血液バック62、102を完全な密封包装とすることによって、模擬血液バック62、102や天然ゴムである血管部63、103の劣化を防止することができる。
【0034】
本発明の基端支持部6について図5、6を示して説明するが、模擬血管については図3、4も参照されたい。基端支持部6は、血管部63、103の基端部分63a、103aを支持するもので、模擬血液バック62、102から突出する接続部分、連結部64や連結固定部104を支持するものである(図1参照)。幅方向に3つ並んだバック配置部11、11の後方に複数の段部12、12が形成され、この段部12、12の間に凹所13、13が形成される。この凹所13、13は、新たな模擬血管101の連結固定部104を収容できるように所定の幅長さを有している。この幅長さは従来の連結部64の太さ(径)の2倍以上の長さを有することが好ましい(図6参照)。
【0035】
凹所13、13は、段部12、12の側面となる側方支持壁12a、12aに幅方向両側を囲まれ、後方に連通支持部14があるが、前方は開放されている。連通支持部14は、段部12、12の後方部分が各々凹所を形成する方向にせり出すように突出する幅延長部分14a、14aを有し、この幅延長部分14a、14aの延長した先であって連通支持部14、14の上縁から下方に、かつ、各々の対向する幅延長部分14a、14aに向けて傾斜するように切欠かれて形成された通し孔14b、14bが配される。この傾斜して切欠く傾斜部分(通し孔14bの外縁)は下方で湾曲して連続するようにした丸みのあるV字状となり、通し孔14b、14bの下端は模擬皮下組織層2の上表面よりも下方に位置している。連通支持部14、14は、単なる板状体ではなく、所定の前後方向の厚みを有し、傾斜するように切欠く部分においても同じく厚みを有する通し孔支持面14c、14cを有する。
【0036】
連通支持部14、14の幅延長部分14a、14aにより、凹所13、13に配された模擬血管61、101の連結部64、連結固定部104が模擬皮下組織層2に抜け出さないように支持しつつ、V字状の通し孔14b、14bは太さ(径)の異なる血管部63、103をいずれも配することができるようにしている。しかも、通し孔14b、14bの下端が模擬皮下組織層2の上表面よりも下方に位置して、通し孔14b、14bと模擬皮下組織層2との間に所定の前後方向間に隙間を設けることで血管部63、103の遊びの位置を確保して、上カバー5を閉じた状態で模擬皮下組織層2の上縁で傷ついたり破損することを防止している。一般に径の細い血管部の方が強度が弱いところ、径の細い血管部になればなるほど、連通支持部14、14では下方で支持されることになり、破損し難いものとしている。また、連通支持部14、14の通し孔14b、14bの上平面に所定の前後方向長さの通し孔支持面14c、14cが形成されることにより、通し孔14b、14bでの上カバー5の押圧で血管部63、103が破損せずに支持するようにしている。
【0037】
また、基端支持部6、6の前側のバック配置部11、11は、取付本体1の下面に形成されるもので、模擬血液バック62、102がずれないように所定大きさの凹みが形成される。また、前側の起立片31には、模擬血液バック62、102の基端位置に配される突出片を挿入して固定するための支持孔31aが形成される。この支持孔31aは、異なる大きさの突出片に対応できるよう、上側に幅狭、下側に幅広の孔を組み合わせた形態としている。
【0038】
バック配置部11、11は、使用時に駆血帯を巻くことで、上カバー5の前側に形成された押え具8により、複数の模擬血液バック62、62、102、102を一度に圧迫することができる。押え具8を下方に向けて押し込むと、模擬血液バック62、102を上方から圧迫し、その内部に充填している模擬血液の内圧を上昇させる。この内圧上昇は、血管部63(103)内の模擬血液も同じであり、現実の怒張状態と似た状態を実現する。駆血帯を巻くために、取付本体1に並ぶバック配置部11、11の両側と、押え具8の両側に駆血帯を保持し易くするための凹状に切欠いた駆血帯通し孔15、15が形成される(図1参照)。
【0039】
取付本体1の後端の起立片31にある切除部21及び短溝22について説明する。図7、8に示すように、後端の起立片31は、折り曲げ溝32、32に対応した切欠き33、33が形成されるが、この切欠き33、33の間であって、取付本体1の湾曲する頂点位置に起立片31を下方まで切り欠いた切除部21が形成される。切除部21は、切欠き33、33と異なり幅広であって、起立片31から傾斜して下方を湾曲したV字状に形成される。切除幅は、少なくとも太い血管部を通す程度であり、複数の血管部103、103を通すことができる程度の幅が好ましく、基端支持部6の連通支持部14の通し孔14bと同程度が好ましい。この切除部21を有することにより、取付本体1の長手方向よりも長い血管部103を使用することもできる。これのみでなく図1、12に示すように、血管部103の先端側に排出接続部107や中間接続部108、連結部材109を設けて排出することが可能となり、投与型の実習が可能になる。
【0040】
また、起立片31の切除部21の付近の模擬皮下組織層2は、切除部21の下端に至る短溝22が形成される。短溝22は、その基端(前側端)から徐々に下降して切除部21の下端に至ることが好ましく、切除部21の幅と同程度の幅であることが好ましいが、基端は直角に下降するものであってもよい。短溝22は、切除部21を有する後側の起立片31の近傍のみに配され、その他の模擬皮下組織層2には溝形状のものは存在していない。
【0041】
短溝22の長手方向長さは起立片31の立ち上がり高さと同程度の長さであって、模擬皮下組織層2の長手方向長さの10分の1乃至2程度の長さ、より好ましくは同長さの10分の1である。短溝22の深さは、血管部63、103が完全に没入する深さを有し、短溝22の幅方向長さよりも深い。
【0042】
この短溝22が形成されることにより、上カバー5の後端縁で排出する血管部103を傷つけて破損することを防止し、さらには起立片31の切除部21で血管部103の破損が発生することを防止している。また、本実施形態の模擬皮下組織層2自体には、他製品に存するような血管部を保持する溝などがなく、自由に血管部103を這わせることができ、複数の血管や太さの異なる血管を自由に配することができ、使用者が手探りで血管の位置を確認するようにしている。その一方、押え具8で模擬血液バック62、102を押圧して血管部63、103を怒張させた状態で実習することもあり、この状態で血管部103を損傷させることなく、切除部21から排出する必要がある。そのため、短溝22はできる限り短くしつつ、怒張した血管部103を没入するために必要な長さを有することが好ましい。
【0043】
さらに、図1に示すように、取付本体1は、机などに載置するために底面が平坦となったデッキ40を設けている。このデッキ40にも起立片31の切除部21に対応する位置に、デッキ切除部23を設けている。このデッキ切除部23を有することで、デッキ40に取付本体1を配して卓上で実習する場合においても、長い血管部を使用したり、投与型の実習を行うことが可能になる。
【0044】
以下、本発明の注射練習具に用いることができる新たな模擬血管の一例を、図4図9乃至図15に基づいて説明する。なお、本説明に際し、図面上の左側(例えば図4の模擬血液バック側)を基端側とし、図面上の右側(例えば図4の血管部側)を先端側として説明する。
【0045】
模擬血管101は、図4に示すように、模擬血液を貯留した模擬血液バック102と、血管を模擬した円筒形状、管状で長尺な血管部103と、模擬血液バック102と血管部103とを接続して固定する連結固定部104とからなる。特に図示しないが模擬血液は赤く着色して臨場感を持たせた液体からなり、模擬血液バック102に注入されて模擬血管101の内部に空気が入らない状態で密封される。なお、模擬血管101は、使用済みとなると廃棄されるもので、所謂使い捨て材である。
【0046】
図9に示すように、模擬血管101の連結固定部104は、アダプタ105とコネクタ106とからなり、血管部103をアダプタ105に接続したうえで、アダプタ105をコネクタ106に内包しつつ模擬血液バック102の流出筒111に接続することで、模擬血液バック102と血管部103とを模擬血管101内で連通した状態で接続固定する。血管部103は軟質樹脂から成型され、アダプタ105とコネクタ106も樹脂材により成型されたものである。
【0047】
模擬血管101の模擬血液バック102について説明する。模擬血液バック102は、中空矩形状の貯留部110と、貯留部110の一面から突出する円筒形状の流出筒111とからなる。流出筒111は基端側内周から内方に突出した円環形状の受け部112を有する(図10参照)。受け部112は、後述するアダプタ105を受けて係合して軸方向に位置決め、固定する。
【0048】
流出筒111の外周には、後述するコネクタ106に固定するために突出するねじ部113と、ねじ部113の基端側となる貯留部110の中央下端から下方に向けた突条となる2つの係止部114、114を有する。係止部114、114は、流出筒111の表面と裏面にあり、円周方向に180度離れて並んでいる。係止部114、114は、コネクタ106を流出筒111に固定(螺合)が完了した状態で、コネクタ106の被係止部135、135に嵌まり込んで係合し、コネクタ106の螺進を停止するとともに、係止状態でコネクタ106が不意の回動を起こさないようにロックしている。
【0049】
模擬血液バック102と血管部103とが接続、固定されることで、貯留部110と血管部103との内部が連通し、貯留部110から模擬血液を血管部103内に供給可能としている。模擬血液バック102は、真空採血管より陽圧側の負圧状態で模擬血液を貯留し、真空採血管に模擬血液を供給可能としつつ、採血などにより血管部103に生じた針孔からの液漏れを抑制している。
【0050】
血管部103について説明する。血管部103は、長手方向の基端側を開口する基端部分103a、他端側を閉塞する先端部分103bを有し、所定の長さを有する管状物であり、基端部分103aを連結固定具104により模擬血液バック102に接続する。血管部103は注射針や点滴針などを複数回突き刺せるエラストマーなどの軟質素材により形成し、自由曲線状に屈曲して配置して個体差のある血管を模擬可能としている。血管部103は径方向の厚さ(内側直径と外側直径との差の半分)を薄手として、約0.4mmとしている。
【0051】
連結固定部104について説明する。上記のとおり連結固定部104は、血管部103を取り付けて保持するアダプタ105と、このアダプタ105を流出筒111に螺合することで接続、保持するコネクタ106とからなる。連結固定部104はこの接続により不可逆的に血管部103を模擬血液バック102に固定して、互いの内部を連通させ、模擬血液の流路としている。
【0052】
アダプタ105について説明する。アダプタ105は、図9、10、11に示すように、外筒121と内筒122とからなる先端側の面が開口した二重筒構造としている。アダプタ105は、2つの筒121、122の間の空間に、血管部103の基端部分103aを挿入して保持する空間を有する。この空間の径方向の厚さ(内側直径と外側直径との差の半分)を血管部103の厚さより大きい寸法として、約0.44mmとしている。内筒122の内周に両端が開口された長手方向の空間を有し、流出筒111と血管部103とを連通する流路となる。
【0053】
アダプタ105は、基端側位置にあって外周に向けて傾斜するアダプタ基端部123があり、このアダプタ基端部123の先端側から血管部103を挿入する開口側、内側に若干傾斜して延長された外筒121が形成される。外筒121は、アダプタ基端部123側から先端側にかけて厚みが徐々に薄くなる先細り形状を有し、円周方向に分割されて、複数のスリット124、124が形成されている。
【0054】
模擬血液バック102の流出筒111内へアダプタ105を挿入したとき、傾斜面を有する円錐筒形状に形成されたアダプタ基端部123が、流出筒111内に突出する受け部112に係合し、かつ、食い込むことで、アダプタ105を軸方向(長手方向)に位置決めして、固定する。また、後述するが、コネクタ106を模擬血液バック102の流出筒111へ固定していく(螺入していく)ことで、アダプタ105の外筒121は血管部103の基端部分103aを徐々に締め付けて固定する。
【0055】
本実施形態では血管部103として、図10(a)に示すように、通常の血管を模擬する血管部103を用いているが、通常の血管部103と異なる径の血管部を用いることができる。図10(b)に血管部103より細く、細血管を模擬する細血管部115を示す。通常の血管部103の内径(内側直径)を1.5mmとし、細血管部115の内径を1.3mmとしている。アダプタも、通常の血管部103に用いるアダプタ105と、細血管部115を保持するための細型アダプタ105aとを有している。
【0056】
細型アダプタ105aは、外筒121の内径をアダプタ105より細くし、内筒122の外径をアダプタ105より太い形状として、細血管部115のサイズに合わせている。細型アダプタ105aは、外筒121の外径とアダプタ基端部123の形状、寸法を、通常のアダプタ105と同じにすることで、コネクタ106及び流出筒111(模擬血液バック102)とを取付、保持可能としている。上記通常の血管部103、細血管部115の他に、より細い血管部や、太い血管部といった異なる径の血管部を用いることができる。
【0057】
次に、コネクタ106について説明する。コネクタ106は、図9、10、11に示すように、外壁131と底部132とからなる円筒状の箱型(キャップ型)形態である。外壁131は、その内面から中心方向に突出するねじ部131aを有し、模擬血液バック102の流出筒111のねじ部113に螺合して係合するナット状物である。円盤状の底部132は、中心位置が開口し、血管部103を挿通する貫通孔133が形成される。コネクタ106は、ナット状の外壁131を流出筒111のねじ部113に螺合した状態で、外壁131の内側空間に血管部103の基端部分103aを保持した状態のアダプタ105を内包し、貫通孔133より血管部103を導出する。
【0058】
コネクタ106の貫通孔133の周囲から外壁131の内方に向けて延長された、言い換えると、先端側から基端側に向けて突出する突出係止部134が形成される。突出係止部134は、厚みが先端側から基端側にかけて徐々に薄くなる先細り形状を有し、さらにいうと突出係止部134の外側面は水平に形成されるが、内側面は外側面に向けて傾斜する傾斜面となっている。
【0059】
突出係止部134は、底部132の貫通孔133の縁部に形成され、軸方向に沿うように外壁131の内部空間に向けて突出している。突出係止部134は、先細り状となった円筒形状であり、血管部103を装着したアダプタ105を模擬血液バック102の流出筒111内に挿入した状態でコネクタ106を流出筒111に螺入していくと、先細りとなった突出係止部134の先端からアダプタ105の外筒121と流出筒111の内周面との間に挿入されていく。基端側から先端側にかけて徐々に太くなる突出係止部134がコネクタ106の螺入に従って挿入されていくことで、徐々にアダプタ105の外筒121が血管部103の基端部分103aに押圧され、血管部103のアダプタ105による保持状態が強固になる。
【0060】
コネクタ106の外壁131は、底部132と反対側端縁であって模擬血液バック102に形成される2つの係止部114、114に相当する位置を凹ませた凹所状とした2つの被係止部135、135が形成される。この被係止部135、135の凹み形状は、コネクタ106を模擬血液バック102の流出筒111に最深位置まで螺合した状態で、突条の係止部114、114が凹み部分に位置させることで、螺合完了位置に位置決め、固定される。また、この係合によりコネクタ106が不意に回転したときに突条の係止部114、114がコネクタ106の凹んだ被係止部135、135に当たり、コネクタ106の緩みを防止することができる。
【0061】
上記のとおり、模擬血管101のアダプタ105とコネクタ106とからなる連結固定部104により模擬血液バック102と血管部103とを接続、固定することができる。血管部は異なる径のものを使用することができることで様々な径の模擬血管をもって実習を行うことができる。さらにコネクタ106と模擬血液バック102(流出筒111)を共通部品として、部品点数を抑えることができるとともに、コネクタ106がアダプタ105を包み込むように接続、固定していることから、連結固定部104を小型化して、模擬血液バック102の押圧や、実習を阻害しないようにすることができる。
【0062】
次に、上記の接続固定部104に加え、採血実習に加えて投与実習を行うことができる模擬血管101(新たな模擬血管の第2実施形態)について説明する。第2の実施形態は、上記の第1実施形態において使用したアダプタ105とコネクタ106とを模擬血管101の先端部分103bに配して点滴等の投与実習を行うもので、アダプタとコネクタとを共有して用いることで、部品点数を少なくすることができる。
【0063】
図4に示す模擬血管101(第1実施形態)は、基端部分を接続固定部104で模擬血液バック102に接続し、先端部分103bは閉塞された状態である。一方、図12に示すように、第2実施形態である模擬血管101は、先端部分103bの端部を基端部分103aと同じように開口し(図14参照)、血管部103を貫通管状に形成して、排出接続部107を取り付けるものである。第2実施形態の排出接続部107は、中間接続部材108、連結部材109を取り付け、連結部材109に廃液チューブ143の一端を接続し、廃液チューブ143の他端に外部の廃液容器141を接続して、血管部103に投与した薬液などを廃液容器141に排出可能としている。
【0064】
排出接続部107は、図13、14、15に示すように、第2のアダプタ145と第2のコネクタ146とからなり、第2のアダプタ145は第1のアダプタ105と共通する形態を有し、第2のコネクタ146は第1のコネクタ106と共通する形態を有する。第2のコネクタ146に螺合される中間接続部材108と、中間接続部材108を連結する連結部材109を介して廃液チューブ143を接続することが好ましいが、排出接続部107(第2のコネクタ146)に直接、廃液容器141に接続してもよい。
【0065】
第2のアダプタ145は、第1のアダプタ105と同一形状を有し、共通部品としている。第1のアダプタ105と同じく、外筒151、内筒152、アダプタ基端部153、スリット154、154が形成され、外筒151と内筒152との間の空間に血管部103の先端部分103bを保持する。
【0066】
第2のコネクタ146は、第1のコネクタ106と同一形状を有し、共通部品としている。第1のコネクタと同じく、外壁161、ねじ部161a、底部162、貫通孔163、突出係止部164、凹状の被係止部165、165が形成され、第2のコネクタ146を中間接続部材108に螺入していくと、突出係止部164、164が外壁161を内方に締め付けていくことも同じである。
【0067】
中間接続部材108について説明する。図14図15に示すように、中間接続部材108は、流出筒111と同じ形状、寸法の流入筒171と、流入筒171より先端側に位置して内部で連通する円筒状の排出部172と、を有する。中間接続部材108は、長手方向にかけて部材中心を貫通した内部空間を有し、血管部103から連通する廃液の排出流路173となる。
【0068】
流入筒171は、外周にネジ山が形成されたねじ部174を有する。また、後述する排出部172の一部である鍔172aの表面と裏面に長手方向に沿って上方に突出する突条の係止部175、175を有し、基端側内周に受け部176を有している。これらの形状及び寸法は、模擬血液バック102の流出筒111のねじ部113、係止部114、114、受け部112と同じとなる。
【0069】
流入筒171は、血管部103を保持した第2のアダプタ145を挿入した状態で受け部176により位置決められて固定される。さらに、突条の係止部175、175により、第2のコネクタ146の凹状の被係止部165、165の凹み位置に至って係止されるまで第2のコネクタ146を螺進することができ、係止部175、175と第2のコネクタ146の被係止部165、165との係合により、第2のコネクタ146の不意の回動等による緩みを防止することも、流出筒111と第1のコネクタ106と同じとなる。
【0070】
中間接続部材108の排出部172は、流入筒171と同心円の円筒形状とし、長手方向において流入筒171の反対側に向けて突出形成している。流入筒171の基端部分が外方に正六角板状に突出した鍔172a、鍔172aから円筒状に突出する基部172b、基部172bの先端からさらに突出する円筒形状の連結筒172cとからなる。連結筒172cは、表面にネジ山からなるねじ部172fを有し、外径を流入筒171と同じ寸法としている。
【0071】
基部172bの先端(連結筒172c側端)が外方に突出する環状凸部172dを有し、鍔172aからは連結部材109の螺進を停止する2つの中間係止部172e、172eが凸状に突出形成されている。中間係止部172e、172eは表面、裏面に形成され、円周に180度離れている。
【0072】
中間接続部材108は、流入筒171から排出部172にかけての長手方向を、部材の中心を貫通する排出流路173が形成されるが、排出部172の先端付近内部で排出流路173を遮蔽する薄膜の遮蔽弁177が配置される(図14、15参照)。この遮蔽弁177により、中間接続部材108に連結部材109を完了位置まで螺入させなければ、血管部103の先端部分103bを閉塞した状態を維持できる。
【0073】
次に、連結部材109について説明する。連結部材109は、図14、15に示すように、外壁181と底部182とからなる円筒状の箱型(キャップ型)形態である。外壁181は、その内面から中心方向に突出するねじ部181aを有し、中間接続部材108の排出部172のねじ部172fに螺合して係合するナット状物である。
【0074】
外壁181は、底部182と反対側端縁を一部凹ませたもので、中間接続部材108の鍔172aに形成される中間係止部172e、172eに相当する位置に、2つの被係止部183、183が形成される。この係止部183、183により、不意に連結部材109が回動することを防止し、螺合状態を継続させることができる。また、外壁181の底部182と反対側端縁は、内面側に向けて周縁から突出した抜け止め突出部184が形成され、中間接続部材108の環状凸部172dと係合し、一定範囲以上で抜けないようにしている。
【0075】
連結部材109は、底部182の円中心位置から、外壁181の内方に向けて針状に突出する連通針185と、同じく底部182の円中心位置から連通針185の反対側に突出するジョイント管部186が配置される。連通針185は、内部に連通用流路である排出流路187を有する筒部と、その先端から突出する円錐状の針先とを有し、連通針185とジョイント管部186とは内部空間を連通する排出流路187が形成される。ジョイント管部186は、先端にカエシがついた部材であり、廃液チューブ143のチューブ内に差し込んで連結することができる。
【0076】
連結部材109を中間接続部材108に螺入していくと、連結部材109の内方に向けて突出する連通針185が、中間接続部材108の排出流路173内に侵入する。さらに螺入を継続すると、連通針185の針先が、上述した中間接続部材108の排出流路173を閉塞する遮蔽弁177を突き破る。この状態で、中間接続部材108の排出流路173から排出される排出液が、連通針185に形成された開口185aから連結部材109の排出流路187内に流入し、ジョイント管部186の先端の開口186aから排出される。
【0077】
このように、第2実施形態の模擬血管101は、先端部分103bに第2のアダプタ145、第2のコネクタ146とからなる排出接続部107を配置することで、直接に廃液容器141と接続することもでき、さらに中間接続部材108と連結部材109とを接続することで、閉塞状態と排出状態とを容易に切り替えることができる。すなわち、中間接続部材108を排出接続部107に接続し、中間接続部材108と連結部材109との螺合を完全にせずに緩めた状態としておくと、中間接続部材108に形成される遮蔽弁177により、模擬血管101の先端側で遮蔽された状態となる。この状態から連結部材109を中間接続部材108に螺合させていくと、上記のとおり、連通針185が遮蔽弁177を突き破り、ジョイント管部186から廃液チューブ143を介して廃液容器141へと廃液を排出する。このように螺合の動作だけで切り替えることが可能になる。これにおり、閉塞状態で行う採血実習と、排出状態で行う投与実習とを、簡単に切り替えて、行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0078】
1…取付本体、2…模擬皮下組織層、4…模擬皮膚層、5…上カバー、6…基端支持部、7…押え具連結部、8…押え具(駆血帯巻付け部分)、11…バック配置部、12…段部、13…凹所、13a…側方支持壁、14…連結支持部、14a…幅延長部分、14b…通し孔、14c…通し孔支持面、15…駆血帯通し孔、21…切除部、22…短溝、23…デッキ切除部、31…起立片、31a…支持孔、32…折り曲げ溝、33…切欠き、34…係止部、35…被係止部、40…デッキ、42…腕通し部分、61…模擬血管、62…模擬血液バック、63…血管部、64…連結部、101…模擬血管、102…模擬血液バック、103…血管部、104…連結固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15