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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】骨折した橈骨(とうこつ)の固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
A61B17/72
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021545980
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 IB2019051033
(87)【国際公開番号】W WO2020161525
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521345888
【氏名又は名称】ディスラッド アーゲー
【氏名又は名称原語表記】DISRAD AG
【住所又は居所原語表記】Lengghalde 5 8008 Zurich,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・フルーリ
(72)【発明者】
【氏名】サイラス・ズルシュミーデ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・シュバイツァー
(72)【発明者】
【氏名】ラディスラフ・ナギー
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0271567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの骨セグメントを互いに固定するための橈骨遠位端の骨折固定装置であって、
本体を少なくとも部分的に貫通し、それぞれが骨固定要素を挿入するための少なくとも2つの挿入孔を備えた本体と、
前記本体から延設され、位置決め具を前記骨折固定装置に接続するための位置決め具接続部であって、前記本体から切り離すことができるように構成された位置決め具接続部と、
を備え
前記位置決め具接続部が、プレスフィット接続、フォームフィット接続、クリップ、ねじ込み接続、スナップイン接続、またはそれらの任意の組み合わせによって、前記位置決め具に対して取り外し可能に結合されるように構成されている骨折固定装置。
【請求項2】
前記位置決め具接続部は、ブリッジ部を介して前記本体と一体的に形成されており、
前記位置決め具接続部を前記本体から切り離すための力が前記ブリッジ部に作用したときに前記ブリッジ部は切断される請求項1に記載の骨折固定装置。
【請求項3】
前記位置決め具接続部が、スナップオフエレメントである請求項2に記載の骨折固定装置。
【請求項4】
前記ブリッジ部が前記本体の遠位端に位置し、前記挿入孔が遠位端から本体の近位端に向かって穴が形成されている請求項2または3に記載の骨折固定装置。
【請求項5】
前記位置決め具接続部は、プレスフィット接続、ねじ込み接続、スナップイン接続、またはそれらの任意の組み合わせによって、本体に接続されている請求項1に記載の骨折固定装置。
【請求項6】
それぞれの前記挿入孔が一つずつ軸を有し、それらの軸は対象骨において分岐する請求項1~のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項7】
前記挿入孔の軸が前記骨折固定装置の長手方向に垂直な面から放射状に延びている請求項6に記載の骨折固定装置。
【請求項8】
前記挿入孔のそれぞれが、軸を定義し、挿入孔の軸またはそのそれぞれの延長部が、本体の中心軸を1回横切る請求項1~のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項9】
前記挿入孔のそれぞれが、軸を有し、前記挿入孔の少なくとも1つが、前記骨折固定装置の内側外側平面に対して1°から20°の間の角度を形成し、少なくとも別の挿入孔が、前記内側外側平面に対して30°から90°の間の角度を形成し、
前記内側外側平面は、前記骨折固定装置の長手方向Lと、該長手方向Lに略垂直な横方向Aとによって定義される平面である請求項1~のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項10】
前記挿入孔の数が4つである、請求項1~のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項11】
前記骨折固定装置は、前記本体から延設された細長い尾部をさらに備え、前記尾部は、標的骨の髄管に挿入されるように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項12】
前記本体が第1中心軸を規定し、一方、前記尾部が第2中心軸を規定し、前記第1および第2中心軸が実質的に平行であるが非同軸である請求項11に記載の骨折固定装置。
【請求項13】
本体が第1中心軸を規定し、一方、前記尾部が第2中心軸を規定し、第1中心軸が第2中心軸に対して角度を有している請求項11に記載の骨折固定装置。
【請求項14】
前記尾部は、前記本体から切り離されるように構成されている、請求項11~13のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項15】
前記尾部は、前記本体と一体的に形成されておらず、前記骨折固定装置が体に取り付けられた後、前記尾部と前記本体とが互いに切り離される請求項11~14のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項16】
前記尾部が、非移植状態で実質的に直線状である第1部を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項17】
前記第1部の遠位端が本体の近位端とつながっており、前記第1尾部の近位端が丸みを帯びている、または面取りされている請求項1に記載の骨折固定装置。
【請求項18】
前記骨折固定装置は、非移植状態で実質的に直線状である第2尾部をさらに備え、前記第2尾部は、前記第1尾部に対して角度がつくように、前記第1尾部とつながっている請求項1に記載の骨折固定装置。
【請求項19】
前記挿入孔は、単一の入口と多数の出口との間で延びており、前記出口の数は前記挿入孔の数と等しい請求項1~18のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項20】
前記挿入孔は、2つの入口と多数の出口との間で延びており、前記出口の数は前記挿入孔の数に等しい請求項1~18のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項21】
前記挿入孔の少なくとも1つは、内側壁の一部が前記本体によって完全には閉じられていない請求項1~20のいずれか1項に記載の骨折固定装置。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の骨折固定装置を備えた橈骨遠位端骨折固定アセンブリであって、前記位置決め具接続部に連結された前記位置決め具をさらに備えた橈骨遠位端骨折固定アセンブリ。
【請求項23】
前記骨折固定装置の剛性を高めるために、前記位置決め具を本体に連結する1つ以上の取り外し可能な剛性化要素をさらに備えた請求項22に記載の橈骨遠位端骨折固定アセンブリ。
【請求項24】
前記1つ以上の取り外し可能な剛性化要素がドリルガイドである、請求項23に記載の遠位橈骨骨折固定アセンブリ。
【請求項25】
前記位置決め具が、プレスフィット接続、フォームフィット接続、ねじ込み接続、またはスナップイン接続のうちの少なくとも1つの接続を使用して、前記位置決め具接続部に取り外し可能に結合されている請求項22から24のいずれか1項に記載の橈骨遠位端骨折固定アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橈骨のような骨の髄管に少なくとも部分的に挿入できる形状および寸法を有する、橈骨遠位端骨折固定装置に関する。また、本発明は、橈骨遠位端骨折固定装置と位置決め具とを含む橈骨遠位端骨折固定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの骨セグメントを互いに固定するために、髄内固定装置などの骨折固定装置を使用することは、整形外科分野ではよく知られている。髄内固定器具は、太い本体と、比較的長くて湾曲した尾部とからなり、橈骨などの骨の髄管に挿入されるように配置されているものが知られている。髄内固定器具を骨に固定し、骨折部を安定させるために、骨ネジを設けたものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
位置決め具は、一般的に、骨折固定装置を位置決めするためのものである。位置決め具は、骨折固定装置を取り付けた後、骨折固定装置から切り離すことができるように、骨折固定装置に何らかの形で接続される。現在知られている接続手段はかなり複雑であり、骨折固定装置を含む接続手段の一般的な製造プロセスは、不必要に複雑である。
【0004】
さらに、多くの骨折固定器具では、外科医は、骨折固定器具を埋め込むために、複数の皮膚を切開し、複数の骨の穴を開ける必要がある。これにより、多くの器具を必要とする長くて複雑な手術となる上に、患者にさらなる病気をもたらしたり、治癒まで長くかかったりといった問題が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、骨折固定器具に関する上記の問題点の少なくとも一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、請求項1に記載の骨折固定装置が提供される。
【0007】
本骨折固定装置は、位置決め具を骨折固定装置に接続することが非常に容易であるという利点を有する。さらに、この接続は十分な強度を有しているが、骨折固定装置が移植されて固定されると、位置決め具は骨折固定装置から容易に切り離すことができる。また、ここでの解決策は、実際の位置決め具が骨折固定装置と一体的に形成されていないので、骨折固定装置の製造が非常に容易であるという利点もある。さらに、この解決策は、骨折固定装置および骨ネジなどの骨固定要素を容易に配置するために必要な皮膚の開口が1つだけ(切開が1つだけ)という利点もある。
【0008】
本発明の第2の側面によれば橈骨遠位端骨折固定用アセンブリが提供される。
【0009】
本発明の第3の側面によれば橈骨遠位端骨折を治療する方法が提供される。
【0010】
本発明の他の側面は、本明細書に添付された従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態による骨折固定用アセンブリを示す等角図である。
図2】本発明の第1実施形態による骨折固定装置の側面図である。
図3図2の骨折固定装置の上面図である。
図4図2の骨折固定装置の側面図であり、骨固定要素をさらに示している。
図5図4の骨折固定装置の上面図である。
図6図1の骨折固定装置を対象骨に移植する際の骨折固定アセンブリを示す等角図である。
図7図2の骨折固定装置の側面図であるが、スナップオフ要素はない。
図8】本発明の第2実施形態による骨折固定アセンブリを示す等角図である。
図9】第2実施形態による骨折固定装置の側面図であり、骨固定要素をさらに示している。
図10図9の骨折固定装置の上面図である。
図11図8の骨折固定装置を標的骨に移植する際の骨折固定アセンブリを示す等角図である。
図12】本発明の第3実施形態による骨折固定装置の側面図であり、骨固定要素をさらに示している。
図13図12の骨折固定装置の上面図である。
図14】本発明の第3実施形態による骨折固定用アセンブリを示す等角図である。
図15】骨折固定装置を対象骨に移植する際の、第3実施形態による骨折固定アセンブリを示す側面図である。
図16】第3実施形態による骨折固定装置を対象骨に埋入したときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、少なくとも2つの骨セグメントを架橋するための橈骨遠位端骨折固定装置およびアセンブリの文脈で説明される。一実施形態では、骨折固定装置は、橈骨などの骨の髄管または空洞に挿入されるように構成された髄内骨折固定装置である。しかし、本発明の教示は、この環境または用途に限定されない。異なる図面に表示される同一または対応する機能および構造要素には、同じ参照番号が割り当てられている。本明細書では、「および/または」は、「および/または」で結合されたリストの項目のうちの任意の1つまたは複数を意味する。例えば、「xおよび/またはy」とは、3要素の集合{(x)、(y)、(x、y)}の任意の要素を意味する。つまり、"xおよび/またはy"は、"xとyの一方または両方"を意味する。別の例として、「x、y、および/またはz」とは、7要素集合{(x)、(y)、(z)、(x、y)、(x、z)、(y、z)、(x、y、z)}のいずれかの要素を意味する。つまり、"x、yおよび/またはz"とは、"x、yおよびzのうちの少なくとも1つ"という意味である。さらに、本明細書では、"備える"という用語は、オープンエンドの用語として使用されている。これは、対象物がリストアップされた全ての要素を包含することを意味するが、さらに追加の要素を含むこともある。したがって、"備える"という言葉は、"含む"、"内容とする"、または"内包する"より広い意味で解釈される。
【0013】
図1は、骨折固定アセンブリ(骨折固定システムともいう)1の第1実施形態を示す。骨折固定アセンブリは、骨折固定具(骨折固定装置ともいう)3と、位置決め具(挿入具ともいう)5とからなり、この例では、物理的に分離した独立した要素である。言い換えれば、骨折固定アセンブリは、非モノブロック要素である。本実施例では、骨折固定装置は、手首の骨折としても知られる橈骨遠位端骨折の治療に使用されるように構成されているので、装置3は、橈骨遠位端釘とも呼ばれることがある。図1はまた、骨折固定装置3に接続された骨固定要素7を示しており、この例では骨ネジであるが、例えば、代わりに釘、ピン、または部分的にねじ切りされた要素であってもよい。また、1つの単一の骨折固定装置3で骨ネジと釘の両方を使用することも可能である。骨折固定装置は、図2から図5および図7によく示されている。図6は、位置決め具5を使用して骨折固定装置をどのように移植することができるかを示している。図6に見られるように、骨折固定装置3の少なくとも一部は、この例では橈骨である骨11の髄管9の内部で長手方向に延びるような大きさおよび形状を有している。
【0014】
本実施形態によれば、骨折固定装置3は、4つの異なる部分、すなわち、尾部13、本体またはヘッド部15、位置決め具接続部17、および本体15と位置決め具接続部17とを一緒に接続するためのブリッジングまたはネック部19から構成されている。この例では、骨折固定装置3は、モノブロック要素(材料の1つのブロックとしてモノリシックに形成されている)、すなわち、1つのピースから構成されている。しかし、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、本体15と位置決め具接続部17とは、物理的には別個の2つの要素であっても、一旦組み立てられれば互いに強固に、しかし着脱可能に接続されることもあり得る。言い換えれば、位置決め具接続部17が本体15と一体的に形成されていない可能性もある。位置決め具接続部17は、プレスフィットまたはフォームフィットの接続で、本体15に接続または結合され得る。例えば、一方の部分は、突出部またはリップを有し得、このリップは、任意にプレスフィットまたはフォームフィットの方法で、他方の部分のキャビティ内に受容されるように配置される。他の可能な接続は、例えば、ねじ込み式またはスナップイン式の接続である。
【0015】
図に示すように、骨折固定装置3は、本体15が第1中心軸A1を有する一方で、尾部部13が第2中心軸A2を有するような長手方向の要素である。これらの軸の両方は、それぞれの本体に沿って長手方向に延びる。第1および第2中心軸は、実質的に平行であるが、第1および第2実施形態では、同軸ではなく、第1および第2実施形態では、同軸ではない。しかし、第1および第2中心軸A1,A2は、平行でなくてもよい。言い換えれば、第1および第2中心軸A1,A2は、それらの間にゼロではない角度を有していてもよい。それぞれの中心軸を含む平面は、それぞれのボディまたはその断面を対称的な半分に分割すると考えてもよい。
【0016】
尾部は、第1尾部21と第2尾部23とからなり、非組立状態ではいずれも直線状の部分である。第2テール部は、第1テール部に対して角度を有している。その角度は、10°以上80°以下、より具体的には20°以上70°以下、または30°以上60°以下であってもよい。しかし、第1および/または第2尾部21,23は、代わりに湾曲していてもよい。さらに、尾部13は、組み立てられた状態(すなわち、移植された状態)では、尾部が髄管9の内部にあるときに湾曲していてもよいように、柔軟な材料で作られている。このように、尾部13は、橈骨の髄管内に存在するような形状および寸法になっている。したがって、尾部は、髄管9の形状に適合するように弾性的に変形可能に構成されている。第1尾部21は、尾部13の遠位端である第1端部で本体15と結合または合体し、一方、第2尾部23は、尾部13の近位端である第2端部に位置している。第2尾部21の目的は、骨折固定装置3の髄管への挿入を容易にすることである。しかし、第2尾部が角度を持つ代わりに、第1尾部が単に面取りされたまたは丸みを帯びた端部を持つことも可能である。言い換えれば、骨折固定装置は、任意に面取りされたまたは丸みを帯びた近位端を有する1つの尾部のみから構成されてもよい。
【0017】
本発明の一変形例によれば、尾部13は、所望であれば、例えば手術中に本体15から取り外せるように構成されている。取り出しを容易にするために、尾部の外面に沿って、尾部を切り取ったり、スナップオフしたりすることができる所望の位置に、1つ以上の溝を円周方向に設けてもよい。溝の代わりに、尾部13は、尾部の残りの部分に比べて直径が狭くなった他の任意の領域を含んでいてもよい。より広く言えば、尾部は、所望の位置に、機械的強度が低下した任意の数の領域を構成して、これらの領域での尾部の除去を容易にしてもよい。
【0018】
第1および第2直線状の尾部の代わりに、骨折固定装置3は1つの尾部のみで構成され得ることに留意すべきであり、この場合、尾部は湾曲しているであろう。尾部またはさらに骨折固定装置全体は、長手方向Lと、長手方向Lに対して実質的に垂直に配向された縦方向または横方向Tとによって規定される平面内で湾曲し得る。さらに、またはその代わりに、骨折固定装置3または少なくとも尾部13は、長手方向と、長手方向および横方向に対して実質的に垂直な横方向Aとによって規定される平面内で湾曲し得る。横方向は、したがって、内側-外側方向と一致する。
図1図7に示された第1実施形態では、尾部13の外面は、骨折固定装置3が骨折固定用の釘、より具体的には髄内釘であると考えられるように、実質的に滑らかであり、ねじ山がない。本発明の変形例によれば、尾部は、骨折固定装置3が骨折固定用ネジまたはピン、より具体的には髄内ネジまたはピンであると見なされ得るような、ネジ山のある要素である。さらに、図面に示されている実施形態によれば、尾部13は、いかなる骨固定要素も受け入れるように構成されていない。言い換えれば、尾部は、いかなる挿入孔も有していない。これは、骨折固定装置3を移植するために必要な皮膚切開の数を最小限に抑えることができるという利点がある。ただし、尾部が骨固定要素を受け入れるように構成されている解決策も排除されない。
【0019】
図に示す実施形態では、本体は、実質的に管状の形状、すなわち、横方向および横方向によって定義される平面において実質的に円形または楕円形の断面を有する(ただし、任意に丸みを帯びた角を有する実質的に楕円形または長方形の形状など、他の断面形状も同様に可能である)。胴体部の断面積は、尾部13の断面積よりも大きくなっている。さらに、長手方向および横方向によって定義される平面における断面は、実質的に菱形またはひし形の形状を有していてもよい。本実施形態では、位置決め具接続部17は、この要素を横断する長手方向の空洞を少なくとも有する中空の要素である。本体は、中空であってもなくてもよい。本体15と位置決め具接続部17の外径は、実質的に同じであってもよい。
【0020】
本体15は、一組の骨固定要素7(チャネルごとに1つの骨固定要素)を受け入れるための通路または貫通孔である、一組の挿入孔25を備える。本明細書では、「チャネル」という語は、広義に解釈され、密閉されていてもいなくてもよく、管状の形状を有していてもいなくてもよい通路を意味するものとする。この例では、チャネル25の全てまたは一部が、骨ネジ7のネジ山(雄ネジを有する)と一致するように、ネジ山付きの内面(雌ネジを有する)から構成されていてもよい。しかし、チャネルは、代わりに、釘を受け入れるためのねじ山のない滑らかな内面を有することができ、また、代わりに、骨ねじが使用される場合には、チャネル表面に独自のねじ山を形成することができる。各チャネル25は、チャネル挿入点とチャネル出口点との間に延びている。さらに、セット内の各チャネル25は、ねじの長手方向軸(ねじがチャネル内に受容されるとき)と一致するであろう、挿入孔の軸を定義する。この具体例では、本体15は、4つのチャネル25からなる。さらに、この例では、挿入孔の軸は平行ではなく、したがって、全て異なる方向に向いている。しかし、本発明の変形例によれば、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、挿入孔の軸のうち少なくとも2つは平行であってもよいし、平行でなくても、少なくとも同一平面上に位置していてもよい。
【0021】
前述したように、図1図7に示す実施形態では、骨折固定装置3は、4つの挿入孔25、すなわち、軸C1で定義される第1挿入孔、軸C2で定義される第2挿入孔、軸C3で定義される第挿入孔、および軸C4で定義される第挿入孔を備えている。これらの4つの軸の方向は、図5に示されている。図示された実施形態では、全ての4つの挿入孔は、共通挿入点を有する。さらに、図示の実施形態では、全ての挿入孔の軸は、本体15の遠位端に位置する共通挿入点から骨折固定装置3の近位端に向かって延びている。例えば図5にさらに見られるように、挿入孔の軸は、骨折固定装置の近位端に向かって四方八方に延びる。言い換えれば、図示された実施形態では、全ての挿入孔の軸C1、C2、C3、C4は、標的骨内においても四方八方に延びることになる。図4に示すように、例えば、4つの挿入孔の軸のいずれも、骨折固定装置3の中心軸A1,A2と平行ではない。実のところ、これらの4つの軸は全て、本体3の中心軸A1を一度だけ横切っている。図4および図5にさらに示すように、第1および第2チャネルに受容されたときの骨ネジ7は、横方向および長手方向によって定義され、第2中心軸A2を含む内側(ないそく)外側(がいそく)平面を横切るように配置される。第1および第2挿入孔の軸C1,C2は、内側-外側平面に対して、例えば0°~50°の間の角度、より具体的には1°~20°の間の角度、より具体的には3°~20°の間の角度を有してもよい。一方、第3および第4の挿入孔の軸C3,C4は、内側-外側平面に対して、例えば30°以上90°以下、より具体的には40°以上80°以下、または50°以上80°以下の角度を有していてもよい。さらに、図に示す例では、これら4つの挿入孔の軸は全て、縦方向と横方向によって定義される垂直面から放射状に伸びている。これらのチャネルのいずれかと垂直面との間の角度は、例えば0°から60°の間、より具体的には5°から40°または10°から30°の間であってもよい。
【0022】
なお、挿入孔の数や配置については、さまざまなバリエーションがある。例えば、挿入孔の数は4つである必要はない。有利には、挿入孔25の数は2~5個である。さらに、挿入孔の向きは、図5に示された向きと比較して異なっていてもよい。例えば、1つ以上のチャネルは、骨折固定装置の遠位端の方、すなわち、位置決め具接続部17の方に向けられ得る。具体的な変形例によれば、骨折固定装置3は、少なくとも1つの挿入孔が本体15の中心軸A1と実質的に平行になるように任意に配置された3つの挿入孔を有してもよい。さらなる変形例によれば、第3および第4挿入孔は、いずれも、長手方向および横方向によって定義される垂直面内に位置する。さらに、図示された実施形態では、全ての挿入孔の挿入および退出点は、肥厚部、すなわち本体に位置しているが、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、1つまたは複数の挿入孔が、少なくとも部分的に尾部13を通って延びることも可能である。
【0023】
図面に示されているように、位置決め具接続部分または要素17は、ブリッジ部または要素19を介して本体15と一体的に形成されており、これにより、本体15と位置決め具接続部17との間にブリッジまたは接続領域が形成されている。位置決め具5は、プレスフィット接続またはフォームフィット接続で位置決め具接続部17に接続または結合されてもよい。他の可能な接続は、例えば、ねじ込み式またはスナップイン式の接続である。この目的のために、位置決め具5は、位置決め具接続部17の少なくとも一部を、任意に実質的に完全に受け入れるような形状および寸法の開口部、空洞部または穴を備える。代替的に、または追加的に、クリップなどの他の接続手段が、位置決め具接続部17および/または位置決め具5に設けられて、これらの要素を強固に接続してもよい。さらに、位置決め具接続部17は、位置決め具5が位置決め具接続部17に結合されたときに、位置決め具5に対して静止するための1つ以上の停止要素、肩部または突起部を含んでいてもよい。このようにして、いかなる状況下でも、位置決め具がこの停止部を越えて移動しないことを保証することができる。代替的に、または加えて、位置決め具接続部17は、位置決め具接続部17の直径がブリッジ部19に向かって増加するような円錐形状を有していてもよい。
【0024】
位置決め具5は、穿孔要素もしくはピース、またはドリルガイド(図15に29で示す)を受け入れるための一組の穿孔路27をさらに備える。有利には、穿孔路27の数は、挿入孔の数に等しい。より具体的には、第1穿孔路が第1挿入孔と整列し、第2穿孔路が第2挿入孔と整列し、第3穿孔路が第3の挿入孔と整列し、第4の穿孔路が第4の挿入孔と整列する。穿孔要素は、標的骨9に穴を開けるために穿孔要素が対応する挿入孔25も横切ることができるように、穿孔路27に受容されるように構成される。図示された実施形態では、位置決め具接続部17は、穿孔要素がこれらの開口部を横切り、挿入孔を通って標的骨9まで延びることができるように、その側面に開口部または溝を有する中空要素である。一旦、標的骨に穴が開けられるか作られると、骨固定要素7は、挿入孔内に存在する間、これらの穴に挿入され、ロックすることができる。このようにして、骨折固定装置3を標的骨に固定することができる。有利には、骨固定要素7のうちの少なくとも1つが、第1骨セグメントと第2骨セグメントとの間の骨折線を横断するように構成されていることに留意されたい。残りの骨固定要素は、第1骨セグメントまたは第2骨セグメントのいずれかに完全に残っていてもよい。
【0025】
したがって、位置決め具5は、骨折固定装置3をその移植位置に誘導するために使用することができる。この目的のために、位置決め具は、ハンドルを備える。骨折固定装置がその正しい位置にあると、位置決め具5とともに位置決め具接続部17を本体15から切り離すために、位置決め具に力を加えてもよい。加えられる力は、直線的な力および/または回転的な力(トルク)であってもよい。ブリッジ部は、例えば、壊れる前に回転力よりも直線力をより多く維持できるように設計されていてもよい。このように、位置決め具接続部17に(位置決め具を介して)十分な力が加わると、折れてしまうことがある。このため、位置決め具接続部17は、スナップオフ要素またはチューブと呼ばれることもある。上で説明したように、スナップオフ要素は、最初は本体15に硬く取り付けられているが、手術中に取り外される。言い換えれば、スナップオフ要素は移植されない。なお、ブリッジ部19は、結合解除を容易にするために、上述した任意の尾部配置と同様の機械的に弱められた領域(溝など)を含んでいてもよいことに留意されたい。スナップオフ要素および本体は、骨折固定装置をより剛性にし、より具体的には位置決め具接続部と本体との間の接続をより強固にするために、挿入中にドリルガイド29(図14および図15に示す)などの支持要素または剛性化要素で任意に固定される。剛性化要素は、骨折固定装置3の剛性を高めるために、位置決め具5を本体15に連結する長手方向の、任意に中空の要素であってもよい。
【0026】
ブリッジ部19は、一連の接続点から構成されており、本実施形態では、これらの接続点は全て実質的に単一の平面内にある。しかし、代わりに、接続点は、これらの平面が任意に互いに直交するような、複数の平面にあることも可能である。本体15の中心軸の方向(または長さ方向L)におけるブリッジ部の長さは、有利には、ブリッジ部が破壊された後に本体15から突出する材料を最小限にするために小さく保たれる。その長さは、0.5mmから10mmの範囲、より具体的には1mmから5mmまたは1mmから3mmの範囲であってよい。また、横方向Tにおける架橋部の高さは、例えば、長さの最大で半分、より具体的には、長さの最大で3分の1、または、長さの最大で4分の1であってもよい。さらに、横方向Aにおける架橋部の幅は、長さの少なくとも2倍、より具体的には長さの少なくとも3倍または長さの4倍であってもよいが、有利には常に横方向Aにおける本体15の幅よりも小さい。
【0027】
図8図11は、本発明の第2実施形態による骨折固定アセンブリ1および骨折固定装置3を示す図である。第1実施形態と比較して、第2実施形態による骨折固定装置は、尾部を構成していない点が異なる。したがって、第2実施形態による骨折固定デバイスは、必ずしも骨の髄管の長さ軸に沿って延びるように設計されていない。しかし、骨折固定装置3は、少なくとも部分的に髄管内に侵入していてもよい。より具体的には、図8図11に示す設計では、本体15は、骨の中に位置するが、主に髄管の外側に位置するように構成されている。しかし、1つ以上のネジ7は、髄管の長さ方向に実質的に垂直な方向に髄管を完全に横断してもよい。したがって、第2実施形態の骨折固定装置3は、第1実施形態の意味での髄内固定装置ではないと考えられる。髄内デバイス」という用語は、骨の髄管内に少なくとも部分的に存在するインプラント、より具体的には、1つの要素が髄管内に長手方向に存在するインプラントを示す。さらに、図9によく示されているように、第1および第2挿入孔の軸C1,C2の向きも、例えば図4に示されているようなこれらの軸の向きと比較して僅かに異なっている。図9では、第1および第2挿入孔の軸C1,C2は、横方向および長手方向によって定義される平面内にある。しかし、図4に示すような方向を含め、他の方向も同様に可能である。
【0028】
骨折固定デバイスおよび/または挿入デバイスは、例えば、3-Dプリントまたは機械加工、より具体的には、フライス加工および/またはフライスと旋盤加工によって製造することができる。これらのデバイスは、ポリエーテルエーテルケトンなどの任意の適切なポリマー、または、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マグネシウムなどの金属材料であってもよい。
【0029】
図12図16は、本発明の第3実施形態に係る骨折固定アセンブリ1および骨折固定装置3を示す図である。本実施形態では、テール部13は、本体15と一体的に形成されていない。言い換えれば、テール部と本体とは一体的な要素を形成していない。したがって、尾部と本体とは、所望であれば、例えば、移植プロセスが完了した後に、容易に互いに切り離すことができる。尾部は、例えば、プレスフィットまたはフォームフィット接続で本体に接続することができる。他の可能な接続は、例えば、ねじ込み式またはスナップイン式の接続である。あるいは、尾部13と本体とは、これらの2つの要素の間の接続点を分断することによって、互いに切り離されてもよい。この例では、第1および第2中心軸A1,A2は、互いに平行ではない。図12に示すように、これらの軸は、互いに対して所定の角度を有している。この角度は、3°から40°の間、より具体的には3°から30°の間、または5°から20°の間であってもよい。ゼロでない角度は、移植プロセスをさらに容易にする可能性がある。
【0030】
また、軸C1~C4の向きも、他の実施形態に比べて若干異なっている。本体15を他の実施形態に比べて小さくするために、第3実施形態では、少なくとも1つの挿入孔25が、その長さ軸に沿って外側に向かって開いているように、本体の側面に配置されている。言い換えれば、本体15は、その長さ軸に沿って、またはその中心軸に沿って、少なくとも1つの挿入孔25を完全には囲んでいない。この例では、2つの挿入孔25が、その長さ軸に沿って本体に完全には囲まれていない。さらに、挿入孔内にあるときの骨ネジ7は、2つの骨ネジが上を向いている第1実施形態とは対照的に、全て下を向いている。また、本実施形態では、挿入孔25内にあるときの骨ネジ7は、対象骨内で分岐している。本実施形態では、図13に示すように、2つの挿入孔からなる。
【0031】
図14はまた、位置決め具を位置決め具接続部17に取り外し可能に固定するための、この例ではネジである位置決め具固定要素28を示している。より具体的には、ねじ28は、位置決め具接続部17に設けられた雌ねじに螺合することができるような外ねじを有している。この例では、ねじは手で回すことができ、したがって、この目的のために工具は必要ない。
【0032】
図15には、2つのドリルガイド29が見えている。これらのガイドの目的は、特に移植プロセスの間、骨折固定装置3の剛性を高めることである。移植プロセス中に標的骨と接触するドリルガイド29の先端は、ドリルガイドを回転させることによって挿入孔25にねじ込むことができ、骨折固定装置3とドリルガイド29との間にしっかりとした接続を形成することができるような外ねじを有していてもよい。あるいは、この接続は、フォームフィットまたはプレスフィット接続であってもよい。ドリルガイドが所定の位置に配置されると、ドリルビットがドリルガイド29を介して挿入されて、骨固定要素7を受け入れるために標的骨9に穴を開けることができるようになってもよい。
【0033】
さらに、第3実施形態では、尾部の長さLTは、第1実施形態による尾部の長さよりも小さいことに留意されたい。骨折固定装置3の長さをFLと表記すると、第3実施形態ではLT<2×FT、より具体的にはLTが1×FTから1.5×FTの間にある。
【0034】
次に、橈骨遠位端骨折を治療するための骨固定装置1の移植工程を簡単に説明する。本実施例によれば、本方法は以下のように構成される。
【0035】
橈骨遠位部の骨、より具体的には橈骨遠位部のスタイロイド突起に穴をあけるステップ。
【0036】
骨折固定装置3の少なくとも一部(すなわち、尾部13の一部または全体)が橈骨遠位部の髄内管11内に位置するまで、骨折固定装置1を進入孔から挿入するステップ。
【0037】
橈骨遠位部の骨9に、挿入孔25を介して、ドリルチャネル27を介して、穴を開けるステップ。
【0038】
骨固定要素7をドリルチャネルに挿入し、そこに固定して骨折部に骨固定装置を固定するステップ。
【0039】
位置決め具接続部17を、位置決め具5と一緒に本体15から取り外すステップ。
【0040】
本発明は、図面および前述の説明において詳細に図示および説明されているが、そのような図示および説明は、例示的または模範的なものとみなされるべきであり、制限的なものではなく、本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。他の実施形態および変形例は、図面、開示および添付の請求項の検討に基づいて、請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。さらなる実施形態は、上記の実施形態に関連して記載された教示のいずれかを組み合わせることによって得ることができる。
【0041】
特許請求の範囲では、「備えた」という言葉は他の要素やステップを除外するものではない。異なる特徴が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実だけで、これらの特徴の組み合わせを有利に使用することができないことを示しているわけではない。特許請求の範囲におけるあらゆる参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
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図4
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図8
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図10
図11
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図16