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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】無段変速機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
F16H1/16 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023029562
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2022204535の分割
【原出願日】2022-12-21
【審査請求日】2023-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518111829
【氏名又は名称】有限会社ヨシモト機工
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】吉本 良介
(72)【発明者】
【氏名】吉本 武比古
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-98900(JP,A)
【文献】特開2020-176717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車軸体の周面に形成した螺旋状のネジ歯車の螺旋ピッチを徐々に変化させて構成したウオームギア体と、
前記ウオームギア体の任意の位置で噛み合いするように噛み合い位置調整可能に構成した出力側のホイールギア体と、
前記ホイールギア体と前記ウオームギア体との噛み合い位置調整のために前記ホイールギア体又は前記ウオームギア体又は両ギア体に連動連設した調整用操作部とより構成すると共に、
前記調整用操作部の操作により入力側からのギア回転数を出力側の無段階のギア回転数
に変速可能に構成したことを特徴とする無段変速機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速のみならず変速もできる無段変速機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減速機構の一つとして、はすば歯車の一種であるネジ歯車(ネジ軸)からなるウオームギア体と、ウオームギア体と噛み合う平歯車やはすば歯車からなりウオームギア体に対して一般に大径を有するホイールギア体、とより構成されるウオーム減速機構が知られている(例えば、特許文献1。)。
【0003】
図9は、従来のウオーム減速機構を示す斜視図である。通常は、図9に示すように、ネジ歯車であるウオームギア体W1を入力軸ISとして用い、ホイールギア体W2を取り付けたホイール取付軸を出力軸OSとして用いることによって、出力軸OSを入力軸ISに対して大きな減速比(例えば、10以上)で回転することができる。また、ウオーム減速機構は、出力軸OSの方向を入力軸ISに対して直交方向を含めて交差する方向とすることができることにも特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭54-034280号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来のウオーム減速機構は、ホイールギア体W2のギア歯W21と噛み合うウオームギア体W1のギア歯W11の螺旋ピッチが一定であるため、大きな減速比で減速することはできても、減速比を変えることができない。従って、減速比を変えるためには、インバータ等を別途用いる必要があるが、インバータ等は高価であるため、コスト面で問題を有していた。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、インバータなどを高価な装置を用いることなく、機械的に、減速に加えて無段変速も行うことができる無段変速機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明に係る無段変速機構は、歯車軸体の周面に形成した螺旋状のネジ歯車の螺旋ピッチを徐々に変化させて構成した入力側のウオームギア体と、ウオームギア体の任意の位置で噛み合いするように噛み合い位置調整可能に構成した出力側のホイールギア体と、ホイールギア体とウオームギア体との噛み合い位置及び噛み合い状態の調整のためにホイールギア体又はウオームギア体又は両ギアに連動連設した調整用操作部とより構成すると共に、調整用操作部の操作により入力側からのギア回転数を出力側の無段階のギア回転数に変速可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歯車軸体の周面に形成した螺旋状のネジ歯車の螺旋ピッチを徐々に変化させて構成したウオームギア体と、ウオームギア体の任意の位置で噛み合いするように噛み合い位置調整可能に構成したホイールギア体と、ホイールギア体とウオームギア体との噛み合い位置調整のためにホイールギア体又はウオームギア体又は両ギアに連動連設した調整用操作部とより構成すると共に、調整用操作部の操作により入力側からのギア回転数を出力側の無段階のギア回転数に変速可能に構成したことにより、インバータなどを高価な装置をもちいることなく、機械的に、減速に加えて無段変速も行うことができる無段変速機構を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施例に係る無段変速機構の模式的平面図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る無段変速機構に用いるウオームギア体とホイールギア体の噛み合い関係を示す平面図である。
図3】本発明の第1の実施例に係る実施形態にかかる無段変速機構に用いるウオームギア体とホイールギア体の噛み合い関係を示す斜視図である。
図4】本発明の第1の実施例に係るホイールギア体の図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。
図5】本発明の第1の実施例に係る無段変速機構に用いるネジ歯車からなるウオームギア体の図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB-B線断面図である。
図6】本発明の第1の実施例に係るウオームギア体の変態を示す説明図であり、(a)は斜交角度が15度の場合を示す図であり、(b)は斜交角度が30度の場合を示す図であり、(c)は斜交角度が60度の場合を示す図である。
図7】本発明の第1の実施例に係るホイールギア体の変態を示す説明図であり、(a)はホイールギア体を並進した状態を示す図であり、(b)はホイールギア体を枢軸を回転中心として回動した状態を示す図である。
図8】本発明の第1の実施例に係るウオームギア体の所定のピッチにおけるかみ合い歯(コグ)の歯形の変化を示す説明図であり、(b)は(a)のC-C線による断面図であり、(c)は(a)のD-D線による断面図であり、(d)は(a)のE-E線による断面図である。
図9】従来のウオーム減速機構を示す斜視図である。
図10】本発明の第2の実施例に係る無段変速機構の模式的平面図である。
図11】本発明の第3の実施例に係る無段変速機構の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の要旨は、歯車軸体の周面に形成した螺旋状のネジ歯車の螺旋ピッチを徐々に変化させて構成した入力側のウオームギア体と、ウオームギア体の任意の位置で噛み合いするように噛み合い位置調整可能に構成した出力側のホイールギア体と、ホイールギア体とウオームギア体との噛み合い位置調整のためにホイールギア体又はウオームギア体又は両ギアに連動連設した調整用操作部とより構成すると共に、調整用操作部の操作により入力側からのギア回転数を出力側の無段階のギア回転数に変速可能に構成した無段変速機構を提供することにある。
【0011】
<第1の実施例>
以下、第1の実施例に係る無段変速機構Aについて、図面に基づき詳細に説明する。図1は、無段変速機構Aの基本的構成を示す模式的平面図である。
【0012】
図示するように、無段変速機構Aは、概略的には、
(1)歯車軸体としてギア本体11の周面に形成した螺旋状のギア歯12の螺旋ピッチを徐々に変化させて構成した入力側の複数(本実施例では4本)のウオームギア体1と、
(2)ウオームギア体1の任意の位置(噛み合い位置)で噛み合いするように噛み合い位置調整可能に構成した出力側のホイールギア体2と、
(3)ホイールギア体2とウオームギア体1との噛み合い位置調整のためにホイールギア体2又はウオームギア体1又は両ギア体1,2に連動連設した調整用操作部3と、
より構成されている。
【0013】
ウオームギア体1は、ホイールギア体2に噛合して回転力を伝達する入力側のギア体である。ウオームギア体1は、図1に示すように、回転駆動する入力軸10と、入力軸10と一体的に回転する円柱状のギア本体11と、ギア本体11の外周面で軸方向に沿って螺旋状に形成されるギア歯12と、より構成している。
【0014】
ウオームギア体1のギア歯12は、図1図3に示すように、ギア本体11の外周面に連続して形成される一本の螺旋突条であって、ギア本体11の外周面で一端から他端に向かって螺旋のピッチを漸次拡大又は縮小して形成している。ギア歯12は、ホイールギア体2のギア歯22に噛合対応するギア幅及びギア高さで形成される。
【0015】
このようなウオームギア体1が、入力軸10の軸方向を同一方向して平行に複数並設されている。本実施例の無段変速機構Aのウオームギア体1の本数は4本であるが、1本でもよく、また、2,3本及び5本以上とすることもできる。
【0016】
ホイールギア体2は、図3図4(a)及び図4(b)に示すように、その外周面に、軸線方向に沿って伸延する一定の間隔で設けた長尺の噛み合い歯(コグ)としたギア歯22を複数有した平歯車に構成している。なお、ホイールギア体2は、平歯車に限定されず、はすば歯車で形成されていてもよい。
【0017】
詳細には、ホイールギア体2は、ウオームギア体1に噛合してウオームギア体1からの回転力を受けて回転する出力側のギア体である。ホイールギア体2は、出力軸20と、出力軸20と一体的に回転する円柱状のギア本体21と、ギア本体21の外周面に形成した複数のギア歯22と、より構成している。
【0018】
ホイールギア体2のギア歯22は、図2または図3に示すように、ギア本体21の外周面で軸方向に沿って直線状に形成される突条であって、周方向に一定のピッチを保持して複数形成される。すなわち、ホイールギア体2は、隣接するギア歯22同士の間のギア溝にウオームギア体1のギア歯12を挿入してウオームギア体1と噛合対応する。
【0019】
また、ホイールギア体2は、長尺に形成されている。ホイールギア体2の長さは、少なくとも下方に位置する複数のウオームギア体1と噛合可能な長さとしている。これにより、無段変速機構Aは、出力軸側の必要なトルク量に応じてホイールギア体2と噛合するウオームギア体1の数を変更することができ、例えば、出力軸側に伝達される伝達動力が小さい場合、ウオームギア体1の数を1つとして無段変速機構A全体の動力を低く設定することができる。
【0020】
調整用操作部3は、その操作により、入力側のウオームギア体1のギア回転数を出力側のホイールギア体2に一定の減速比で伝達し、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22の噛み合い位置を調整することによって、ギア回転数を連続して無段階に変速することができるように構成している。
【0021】
このような無段変速機構Aは、図1で示したように、平面視で、ホイールギア体2に対し、調整用操作部3を介して4本のウオームギア体1,1,1,1を斜交角度α(ホイールギア体2の出力軸20の直交方向を基準としたウオームギア体1の入力軸10の軸方向の交差角度)だけ斜交して噛合している。
【0022】
すなわち、ウオームギア体1,1,1,1は、調整用操作部3により移動して、入力軸10をホイールギア体2の出力軸20に対する斜交角度を可変可能に構成している。
【0023】
無段変速機構Aは、図1に示すように、矩形箱状の架台4を有し、同架台4にウオームギア体1と、ホイールギア体2と、を設けて構成している。架台4は、底板40と、底板40で対向して立設した一対の出力側支持部41、41’と、底板40に立設した入力側支持部42,42’と、を有して構成している。
【0024】
一対の出力側支持部41、41’は、底板40の左右側で一定間隔を隔てて対向して設けられており、各ウオームギア体1,1,1,1の上方位置で、ホイールギア体2を一定高さに回転可能に軸架する。すなわち、出力側支持部41、41’は、ホイールギア体2の出力軸20の両端部を回転可能に枢支する軸受けとして機能する。
【0025】
なお、ホイールギア体2の出力軸20の一端には、ホイールギア体2とともに一体的に回転する出力変換機構(図示せず)が取り付けられており、ウオームギア体1と調整用操作部3により無段変速されてホイールギア体2に伝達される回転動力を出力するように構成している。
【0026】
また、架台4の内側には、図1に示すように、同一形状および同一長さを有する入力側をなす4つのウオームギア体1,1,1,1が平面視で架台4の左右方向に傾斜状態に伸延している。各ウオームギア体1,1,1,1は、ホイールギア体2に対して同一の斜交角度α(図1では60°)で、互いに一定間隔離間して入力軸10,10,10,10を平行にした状態で配設されている。
【0027】
各ウオームギア体1,1,1,1は、架台4の内側に配設した長尺の一対の入力側支持部42,42’の間で回転可能に枢支されると共に、架台4の内側で水平揺動可能に設けられる。詳細には、各ウオームギア体1は、入力軸10の一端部を一方の入力側支持部42に設けた回転軸30により水平回動可能に枢支されると共に、入力軸10の他端部を他方の入力側支持部42’に設けた回転軸50により水平回動可能に枢支され、架台4の内側で互いに平行状態を維持しながら水平揺動する。
【0028】
各ウオームギア体1,1,1,1の入力軸10,10,10,10の右端部は、一対のベベルギア13,51を介して、右側の入力側支持部42’に取り付けた回転軸50(図6(a)~図6(c)参照)に枢支連結されている。
【0029】
また、各ウオームギア体1,1,1,1の入力軸10,10,10,10の左端部は、回転軸30を介して左側の入力側支持部42に枢支連結されている(図1参照)。
【0030】
このように無段変速機構Aは、右側の入力側支持部42’と、左側の入力側支持部42と、最上段に配置したウオームギア体1と、最下段に配置したウオームギア体1とによって形状を変えることができる平面視平行四辺形からなるウオームギア体支持枠6を形成する(図1参照)。
【0031】
右側の入力側支持部42’に配設した各回転軸50には、スプロケットホイール(図示しない)が取り付けられている。各スプロケットホイールは、複数の無端チェーン52,52,52で互いにタンデム式に連動連結されている。
【0032】
最上段の回転軸50には減速用大歯車53が固着され、減速用大歯車53は減速用小歯車54と噛合している。減速用小歯車54は、駆動部としてのウオームギア体駆動用モータ(図示せず)に連結されている。
【0033】
すなわち、駆動部としてのウオームギア体駆動用モータを駆動すると、減速用小歯車54、減速用大歯車53が回転して、無端チェーン52,52,52を介して各回転軸50,50,50,50が回転駆動する。この回転軸50の回転駆動に伴いベベルギア51,13が回転することで、4個のウオームギア体1,1,1,1が同期して軸線回りに回転することとなる。
【0034】
調整用操作部3は、ホイールギア体2に対するウオームギア体1の斜交角度αを調整可能とする操作部である。この調整用操作部3について、図1及び図6(a)~図6(c)を参照して説明する。
【0035】
調整用操作部3は、調整用操作部3を調整する駆動機構により、図6(a)~図6(c)に示すように、ウオームギア体支持枠6の形態を変更して、ホイールギア体2に対するウオームギア体1の斜交角度αを変化することができる。
【0036】
ところで、上記したように、歯車軸体の周面に形成した螺旋状のネジ歯車の螺旋ピッチを徐々に変化させて構成した入力側のウオームギア体1を採用しただけでは、図1に示すように、ウオームギア体1の螺旋ピッチの変化によって、ネジ歯車のねじれ角が変化するので、そのままでは、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22との間に良好な噛み合いを確保することは困難である。
【0037】
そこで、本実施例における無段変速機構では、調整用操作部3を用いてホイールギア体2に対するウオームギア体1の斜交角度αを変化させることでホイールギア体2とウオームギア体1との噛み合い位置を調整するようにしている。
【0038】
調整用操作部3は、例えば、左側の入力側支持部42の中間部分に、図示しない伸縮シリンダの先端を連結することによって容易に構成できる。すなわち、調整用操作部3は、伸縮シリンダと、伸縮シリンダの伸縮作動により移動する左側の入力側支持部42とにより構成している。
【0039】
換言すれば、各ウオームギア体1は、調整用操作部3の伸縮シリンダの伸縮作動に伴い、入力軸10の一端部を回転可能に支持した左側の入力側支持部42と共に、入力軸10の他端部を回転可能に支持した右側の入力側支持部42’の回転軸50を中心に水平方向に回動変位する。
【0040】
すなわち、ウオームギア体1の入力軸10は、他端部を駆動部に接続して回転駆動力が伝達される固定端部にすると共に、同他端部で回転軸50を中心に一端部を水平回動させる自由端部にした可動軸として構成している。
【0041】
これにより、噛み合い位置に基づいてウオームギア体1のギア歯12の歯筋の方向(断面と直交する方向)とホイールギア体2のギア歯22の歯筋の方向(断面と直交する方向)とを一致させ、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22との間に良好な噛み合いを確保することができるようにしている。
【0042】
すなわち、図1において、本実施例では、調整用操作部3を構成する伸縮シリンダを操作することによって、図1における最上段のウオームギア体1の入力軸10の右端を枢支する回転軸50を回転中心にウオームギア体支持枠6の形態を、図6(a)から図6(c)の何れかの形態に変態することができる。
【0043】
ウオームギア体支持枠6の形態変化によって、ウオームギア体1は、伸縮シリンダが縮退した際には、ウオームギア体支持枠6は図6(a)に示す平行四辺形形状を有して実線で示す位置にある。
【0044】
この位置では、各ウオームギア体1の一端に形成した15度のネジ角度を有するピッチ部分において、15度の傾斜角度で、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22とが噛み合うことになる。
【0045】
次に、伸縮シリンダが中間位置まで伸長した際には、ウオームギア体1は、実線で示す位置に移動し、ウオームギア体支持枠6は、図6(a)に示す形態から回転軸50を中心として反時計周りに回動して図6(b)の右側の形態に変態する。
【0046】
この位置では、各ウオームギア体1の一端に形成した30度のネジ角度を有するピッチ部分において、30度の傾斜角度で、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22とが噛み合うことになる。
【0047】
さらに、伸縮シリンダが最大長まで伸長した際には、ウオームギア体1は、実線で示す位置に移動し、ウオームギア体支持枠6は、図6(a)に示す形態から回転軸50を中心として反時計回りに回動して図6(c)の右側の形態に変態する。
【0048】
この位置では、各ウオームギア体1の一端に形成した60度のネジ角度を有するピッチ部分において、60度の傾斜角度で、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22とが噛み合うことになる。
【0049】
以上のような構成を有する無段変速機構Aの動作及び効果について説明する。無段変速機構Aは、ウオームギア体駆動用モータを駆動すると、入力側のウオームギア体1が回転し、出力側のホイールギア体2との噛み合いによって、ウオームギア体駆動用モータで生起された回転力をホイールギア体2及びホイールギア体2の出力側に連結した負荷に伝達することができる。
【0050】
また、無段変速機構Aは、調整用操作部3である伸縮シリンダが伸縮することによって、最上段のウオームギア体1の右端の回転軸50を回転中心として、ウオームギア体支持枠6の平行四辺形を変態して、ホイールギア体2に対するウオームギア体1の斜交角度αを変化することができる。
【0051】
図6(a)に示すように,各ウオームギア体1の一端に形成した15度のネジ角度を有するピッチ部分をホイールギア体2と位置的に一致させることによって、15度の傾斜角度で、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22とを噛み合わせることができる。
【0052】
一方、伸縮シリンダが中間位置まで伸張した際には、ウオームギア体支持枠6は図6(a)に示す位置から示す図6(b)に示す位置まで移動し、ウオームギア体支持枠6の平行四辺形形状を変態する。その結果、各ウオームギア体1の他端に形成した30度のネジ角度を有するピッチ部分におけるギア歯12が、30度の角度でホイールギア体2のギア歯22と噛み合うことになる。
【0053】
さらに、伸縮シリンダが最大伸張した際には、ウオームギア体支持枠6は図6(b)に示す位置から示す図6(c)に示す位置まで移動し、平行四辺形形状をさらに変態させる。
【0054】
その結果、各ウオームギア体1の他端に形成した60度のネジ角度を有するピッチ部分におけるギア歯12が、60度の角度でホイールギア体2のギア歯22と噛み合うことになる。
【0055】
また、無段変速機構Aは、図5(a)及び図5(b)に示すように、ウオームギア体1の歯車軸体の周面に形成した螺旋状のギア歯12の螺旋ピッチを15度と45度との間で無段階に変化させている。
【0056】
従って、本実施形態に記載の無段変速機構Aは、螺旋状のギア歯12を螺旋ピッチの異なる角度に連続して変化させるように構成することでウオームギア体1とホイールギア体2との間の減速比を容易に変化させることができる。
【0057】
すなわち、無段変速機構Aは、ウオームギア体1の一端部から他端部にかけて螺旋ピッチが拡大するように螺旋状のギア歯12を連続的に変化するよう構成することにより無段階で連続的に変速できる。また、このような構成により、ウオームギア体1の全長にわたり、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22との間に良好な噛み合いを確保することができる。
【0058】
<第2の実施例>
次に、第2の実施例に係る無段変速機構A2について、図10を参照しながら説明する。上述した第1の実施例に係る無段変速機構Aでは、入力側の4本のウオームギア体1と出力側のホイールギア体2と噛み合い位置の調整に際して、入力側の4本のウオームギア体1を並進移動させるとともにホイールギア体2は固定位置に保持するようにしている。
【0059】
これに対して、本実施例に係る無段変速機構A2では、入力側の4本のウオームギア体1と出力側のホイールギア体2との噛み合い位置の調整に際して、入力側のウオームギア体1を固定して、出力側のホイールギア体2を横方向に並進可能な構成にしたことを特徴とする。
【0060】
なお、本実施例に係る無段変速機構A2の基本的構成は、無段変速機構Aと基本的構成が同じなので、相違する構成要素のみについて説明し、同一の構成要素は、同一の符号を用いて示すと共にその詳細な説明は省略する。
【0061】
図10に示すように、ウオームホイール並進装置60を用いて、ホイールギア体2を、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22とが15度の角度で噛み合う噛み合い位置P1(実線で示す位置)と、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22とが60度の角度で噛み合う噛み合い位置P2(破線で示す位置)との間で並進移動可能としている。
【0062】
具体的には、ウオームホイール並進装置60は、
(1)図面上、縦方向に伸延するホイールギア体2の両端においてホイールギア体2の軸線と直交方向(図面上横方向)に伸延状態に配置される一対の移送用ネジ軸61,61’と、
(2)ホイールギア体2を固着した出力軸20の両端を回転自在に枢支するとともに移送用ネジ軸61,61’に螺着される螺着部分を有する一対の移動ブロック62,62’と、
(3)移送用ネジ軸61,61’の対応する一端に固着したスプロケットホイール63,63’と、一方の移送ネジ用軸61の一端に連結され、調整用操作部として機能するホイールギア体駆動モータ(図示せず)と、
(4)ホイールギア体2の出力軸20の軸線と平行にスプロケットホイール63,63’間に巻回された同期用無端チェーン64とを具備する。
【0063】
上記した構成によって、調整用操作部の一部を構成するホイールギア体駆動モータを駆動すると、移送用ネジ軸61,61’が同期用無端チェーン64によって同期して回動する。
【0064】
そして、この回動によって、移送用ネジ軸61,61’と螺合する移動ブロック62,62’と、移動ブロック62,62’間に架設したホイールギア体2が並進移動することになる。
【0065】
すなわち、ホイールギア体2は、噛み合い位置P1と噛み合い位置P2との間で並進移動することができる。これにより、無段変速機構A2は、ホイールギア体2を並進移動してウオームギア体1との噛み合い位置を調整する。
【0066】
具体的には、噛み合い位置に基づいてウオームギア体1のギア歯12の歯筋の方向(断面と直交する方向)とホイールギア体2のギア歯22の歯筋の方向(断面と直交する方向)とを一致させ、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22との噛み合い位置を調整する。この調整によって、ギア回転数を無段階に変速することができる。
【0067】
<第3の実施例>
次に、上記した第3の実施例に係る無段変速機構A3について、図11を参照して説明する。上記した無段変速機構Aでは、入力側の4本のウオームギア体1と出力側のホイールギア体2と噛み合い位置を調整するに際して、図1における最上段のウオームギア体1の右端を枢支する回転軸50(図6(a)を参照)を回転中心として、ウオームギア体支持枠6を変形して入力側の4本のウオームギア体1を並進移動させる。一方、ホイールギア体2は、固定位置に保持するようにしている。
【0068】
これに対して、本実施例に係る無段変速機構A3は、図11に示すように、ホイールギア体2の出力軸20の一端部を架台4に立設した枢軸70によって回転自在に枢支するとともに、ホイールギア体2の出力軸20の他端部を並進移動させるようにしたことを特徴とする。無段変速機構A3は、上記した構成によって、ホイールギア体2とウオームギア体1との噛み合い位置を調整する。
【0069】
具体的には、噛み合い位置に基づいてウオームギア体1のギア歯12の歯筋の方向(断面と直交する方向)とホイールギア体2のギア歯22の歯筋の方向(断面と直交する方向)とを一致させる。
【0070】
これによって、ウオームギア体1のギア歯12とホイールギア体2のギア歯22との間に良好な噛み合いを確保することができる。
【0071】
以上、第1~第3の実施例に係る無段変速機構A~A3を説明してきたが、これらの無段変速機構は以下の構成とすることもできる。
【0072】
図8に示すように、所定のピッチ内では、実際の噛み合い状態を考慮して、図8(a)における断面C―C, D-D, E-Eを、円滑な噛み合いを得るために、最適な形状とすることもできる(図8(b)、図8(c)、図8(d))。
【符号の説明】
【0073】
A 無段変速機構
1 ウオームギア体
10 入力軸
11 ギア本体
12 ギア歯
2 ホイールギア体
20 出力軸
21 ギア本体
22 ギア歯
【要約】
【課題】インバータなどの高価な装置を用いることなく、機械的に無段変速可能な無段変速機構を提供する。
【解決手段】歯車軸体の周面に形成した螺旋状のネジ歯車の螺旋ピッチを徐々に変化させて構成した入力側のウオームギア体と、ウオームギア体の任意の位置で噛み合いするように噛み合い位置調整可能に構成した出力側のホイールギア体と、ホイールギア体とウオームギア体との噛み合い位置調整のためにホイールギア体又はウオームギア体又は両ギアに連動連設した調整用操作部とより構成すると共に、調整用操作部の操作により入力側からのギア回転数を出力側の無段階のギア回転数に変速可能に構成した無段変速機構とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11