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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】導光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023521346
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2022021225
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/234,499
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】善光 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】金井 紀文
(72)【発明者】
【氏名】河野 省悟
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0225498(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0214494(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111142263(CN,A)
【文献】特表2020-506419(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111766704(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111025657(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部反射によって光を伝搬する導光基板と、
それぞれ該導光基板上に備わる1次元回折格子である第1の部分と第2の部分とを備えた光入射部であって、該第1の部分は受け取った光を第1の光ビームとして該導光基板内の第1の経路に沿って伝搬させるように構成され、該第2の部分は受け取った光を第2の光ビームとして該導光基板内の第2の経路に沿って伝搬させるように構成された光入射部と、
該導光基板上に備わる1次元回折格子であって、該第1の光ビームの該第1の経路の方向を変えるように構成された第1の折り返し部と、
該導光基板上に備わる1次元回折格子であって、該第2の光ビームの該第2の経路の方向を変えるように構成された第2の折り返し部と、
該導光基板上に備わる2次元回折格子であって、該第1の折り返し部からの該第1のビーム及び該第2の折り返し部からの該第2のビームを受け取り、該第1及び第2のビームを結合して該導光基板の外部に射出するように構成された光射出部と、を備えた導光装置であって、
該導光基板の面において、該第1の部分を包含する最小の円の中心は該第2の部分を包含する最小の円の中心よりも該光射出部から離れており、該第1の経路が該第2の部分が備わる該導光基板の領域を通過するように構成された導光装置。
【請求項2】
該導光基板の面において、該光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該第1の部分の回折格子の溝の方向の直線を基準として、該光射出部から離れた側の該光入射部の領域において該第2の部分が占める面積が2%以上であるように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該導光基板の面において、該光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該第1の部分の回折格子の溝の方向の直線を基準として、該光射出部により近い側の該光入射部の領域において該第1の部分が占める面積が10%以上であるように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項4】
該導光基板の面において、該光入射部における該第1の部分と該第2の部分との境界線は、該第1の部分の回折格子の溝の方向に平行な直線であって、該境界線と二以上の点で交わる直線が存在するように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項5】
該導光基板の面において、該光入射部における該第1の部分と該第2の部分との境界線の方向が単一ではなく、該境界線の線分または接線の基準方向に対する角度の差の最大値が75度以上であるように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項6】
該導光基板の面において、該第1の部分及び該第2の部分の少なくとも一方は他方によって互いに分離された少なくとも二つの部分を有する請求項1に記載の装置。
【請求項7】
該装置の使用時に想定される水平方向及び鉛直方向にそれぞれx軸及びy軸を定め、該第1の部分の該1次回折格子の溝の方向のy軸からの傾きが5度以内であり、該第2の部分の該1次元回折格子の溝の方向のx軸からの傾きが15度以内であるように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項8】
該第1の部分の該1次元回折格子の周期は該第2の部分の該1次元回折格子の周期以下であるように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項9】
該導光基板の面において、該光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該装置の使用時に想定される鉛直方向の直線を基準として、該光射出部から離れた側の該光入射部の領域において該第2の部分が占める面積が2%以上であるように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項10】
該導光基板の面において、該光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該装置の使用時に想定される鉛直方向の直線を基準として、該光射出部により近い側の該光入射部の領域において該第1の部分が占める面積が10%以上であるように構成された請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実システムに使用される導光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲の環境の一部として、または周囲の環境に重ねて仮想対象の画像を表示し、拡張現実環境の仮想画像を生成する拡張現実システム(augmented reality system)が使用されている。拡張現実システムは、一例としてヘッドマウントディスプレイ(head-mounted display)、またはその他の形態のウェアブル装置として実現される。
【0003】
拡張現実システムは、仮想画像を生成する光源と、生成された仮想画像を取り込む光入射部と、光入射部に取り込まれた画像を光線として伝搬させる導光部と、導光部から光線を受け取り、光線から画像を再形成してユーザに提供する光射出部と、を含む。光入射部、光射出部及び導光部を導光装置と呼称する。
【0004】
これまで様々な導光装置が開発されている(特許文献1-3)。しかし、光源からの光の利用効率が十分に高い導光装置は開発されていない。したがって、光源からの光の利用効率が十分に高い導光装置に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US9791703B1
【文献】US2020/0225498A1
【文献】US2021/0109273A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光源からの光の利用効率が十分に高い導光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の導光装置は、内部反射によって光を伝搬する導光基板と、それぞれ該導光基板上に備わる1次元回折格子である第1の部分と第2の部分とを備えた光入射部であって、該第1の部分は受け取った光を第1の光ビームとして該導光基板内の第1の経路に沿って伝搬させるように構成され、該第2の部分は受け取った光を第2の光ビームとして該導光基板内の第2の経路に沿って伝搬させるように構成された光入射部と、該導光基板上に備わる1次元回折格子であって、該第1の光ビームの該第1の経路の方向を変えるように構成された第1の折り返し部と、該導光基板上に備わる1次元回折格子であって、該第2の光ビームの該第2の経路の方向を変えるように構成された第2の折り返し部と、該導光基板上に備わる2次元回折格子であって、該第1の折り返し部からの該第1のビーム及び該第2の折り返し部からの該第2のビームを受け取り、該第1及び第2のビームを結合して該導光基板の外部に射出するように構成された光射出部と、を備える。本発明の導光装置は、該導光基板の面において、該第1の部分を包含する最小の円の中心は該第2の部分を包含する最小の円の中心よりも該光射出部から離れており、該第1の経路が該第2の部分が備わる該導光基板の領域を通過するように構成されている。
【0008】
本発明の導光装置は、該導光基板の面において、第1の部分を包含する最小の円の中心は第2の部分を包含する最小の円の中心よりも光射出部から離れており、第1の経路が第2の部分が備わる導光基板の領域を通過するように構成されるので、第1及び第2の部分の一方から光射出部へ向かう光線の経路が、他方が備わる導光基板の領域を通過しないように構成される従来の導光装置と比較して、光入射部において光を受け取る際の回折効率を向上させることができる。また、第1の部分から光射出部へ向かう光線の経路が、第2の部分が備わる導光基板の領域を通過するように構成されるので、第1及び第2の部分の一方から光射出部へ向かう光線の経路が、他方が備わる導光基板の領域を通過しないように構成される従来の導光装置と比較して、光入射部の第1の部分1及び第2の部分への分割の仕方の自由度がはるかに大きい。したがって、光入射部の第1の部分1及び第2の部分への分割の仕方を変えることによって光源からの光の利用効率を向上させることができる。
【0009】
本発明の第1の実施形態の導光装置は、該導光基板の面において、該光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該第1の部分の回折格子の溝の方向の直線を基準として、該光射出部から離れた側の該光入射部の領域において該第2の部分が占める面積が2%以上であるように構成されている。
【0010】
本実施形態においては、導光基板の面において、入射部を包含する最小の円の中心を通り、第1の部分の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部から離れた側の光入射部の領域において第2の部分が占める面積を2%以上とすることによって、入射部を包含する最小の円の中心を通り、第1の部分の回折格子の溝の方向の直線を第1の部分と第2の部分との境界線とする場合と比較して光源からの光の利用効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の第2の実施形態の導光装置は、該導光基板の面において、該光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該第1の部分の回折格子の溝の方向の直線を基準として、該光射出部により近い側の該光入射部の領域において該第1の部分が占める面積が10%以上であるように構成されている。
【0012】
本実施形態においては、導光基板の面において、光入射部を包含する最小の円の中心を通り、第1の部分の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部により近い側の光入射部の領域において第1の部分が占める面積を10%以上とすることによって、入射部を包含する最小の円の中心を通り、第1の部分の回折格子の溝の方向の直線を第1の部分と第2の部分との境界線とする場合と比較して光源からの光の利用効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の第3の実施形態の導光装置は、該導光基板の面において、該光入射部における該第1の部分と該第2の部分との境界線は、該第1の部分の回折格子の溝の方向に平行な直線であって、該境界線と二以上の点で交わる直線が存在するように構成されている。
【0014】
本発明の第4の実施形態の導光装置は、該導光基板の面において、該光入射部における該第1の部分と該第2の部分との境界線の方向が単一ではなく、該境界線の線分または接線の基準方向に対する角度の差の最大値が75度以上であるように構成されている。
【0015】
本実施形態においては、導光基板の面において、光入射部における第1の部分と第2の部分との境界線の線分または境界線の接線の基準方向に対する角度の差の絶対値が75度以上であるように構成することによって、入射部を包含する最小の円の中心を通る直線を第1の部分と第2の部分との境界線とする場合と比較して光源からの光の利用効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の第5の実施形態の導光装置は、該導光基板の面において、該第1の部分及び該第2の部分の少なくとも一方は他方によって互いに分離された少なくとも二つの部分を有する。
【0017】
本実施形態においては、導光基板の面において、第1の部分及び第2の部分の少なくとも一方は他方によって互いに分離された少なくとも二つの部分を有することによって、入射部を包含する最小の円の中心を通る直線を第1の部分と第2の部分との境界線とする場合と比較して光源からの光の利用効率を向上させることができる。
【0018】
本発明の第6の実施形態の導光装置は、該装置の使用時に想定される水平方向及び鉛直方向にそれぞれx軸及びy軸を定め、該第1の部分の該1次回折格子の溝の方向のy軸からの傾きが5度以内であり、該第2の部分の該1次元回折格子の溝の方向のx軸からの傾きが15度以内であるように構成されている。
【0019】
本発明の第7の実施形態の導光装置は、該第1の部分の該1次元回折格子の周期は該第2の部分の該1次元回折格子の周期以下であるように構成されている。
【0020】
本発明の第8の実施形態の導光装置は、該導光基板の面において、該光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該装置の使用時に想定される鉛直方向の直線を基準として、該光射出部から離れた側の該光入射部の領域において該第2の部分が占める面積が2%以上であるように構成されている。
【0021】
本実施形態においては、導光基板の面において、入射部を包含する最小の円の中心を通り、該装置の使用時に想定される鉛直方向の直線を基準として、光射出部から離れた側の光入射部の領域において第2の部分が占める面積を2%以上とすることによって、入射部を包含する最小の円の中心を通る直線を第1の部分と第2の部分との境界線とする場合と比較して光源からの光の利用効率を向上させることができる。
【0022】
本発明の第9の実施形態の導光装置は、該導光基板の面において、該光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該装置の使用時に想定される鉛直方向の直線を基準として、該光射出部により近い側の該光入射部の領域において該第1の部分が占める面積が10%以上であるように構成されている。
【0023】
本実施形態においては、導光基板の面において、光入射部を包含する最小の円の中心を通り、該装置の使用時に想定される鉛直方向の直線を基準として、光射出部により近い側の光入射部の領域において第1の部分が占める面積を10%以上とすることによって、入射部を包含する最小の円の中心を通る直線を第1の部分と第2の部分との境界線とする場合と比較して光源からの光の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による導光装置の透視図である。
図2】本発明による導光装置の断面図である。
図3】本発明の導光装置の設計方法を説明するための流れ図である。
図4】本明細書で使用する座標を説明するための図である。
図5】xz断面において、光源の発光面の中心から放出されて光入射部の受光面に入射し、導光基板内を進行する光線を示す図である。
図6】xz断面において導光基板に入射する光線の入射角θax及び導光基板の内面の入射角θgxを示す図である。
図7】yz断面において導光基板に入射する光線の入射角θay及び導光基板の内面の入射角θgyを示す図である。
図8】xz断面において光入射部の受光面の入射角と導光基板の内面の入射角との関係を示す図である。
図9】導光基板の内面の入射角が臨界角以上となりピッチが瞳孔サイズよりも小さくなるに光線を伝搬させることのできる光入射部の領域を示す図である。
図10】実施例1の導光装置の平面図である。
図11】実施例1の導光装置のxz断面を示す図である。
図12】比較例の導光装置の平面図である。
図13】比較例の導光装置のxz断面を示す図である。
図14】実施例2の導光装置の平面図である。
図15】実施例2の光入射部の平面図である。
図16】実施例3の導光装置の平面図である。
図17】実施例3の光入射部の平面図である。
図18】実施例4の導光装置の平面図である。
図19】実施例4の光入射部の平面図である。
図20】実施例5の導光装置の平面図である。
図21】実施例5の光入射部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明による導光装置100の透視図である。
【0026】
図2は、本発明による導光装置100の断面図である。
【0027】
導光装置100は、導光基板150と、導光基板150に備わる光入射部110、第1の光折り返し部121、第2の光折り返し部122及び光射出部130と、を備える。光入射部110はそれぞれ1次元表面構造型回折格子である第1の部分111及び第2の部分112を備える。第1の光折り返し部121及び第2の光折り返し部122はそれぞれ1次元表面構造型回折格子である。光射出部130は2次元表面構造型回折格子である。
【0028】
光源50は光入射部110上に画像を形成するように構成されている。光源50はレーザビームの走査によって光入射部110上に画像を形成するレーザ光源であってもよい。図2において光源50と導光基板150との間の距離をDで表す。光入射部110の第1の部分111に受け取られた光は回折光として導光基板150内に取り込まれ、導光基板150内の全反射によって第1の光折り返し部121へ伝送される。図2において導光基板150の厚みをdで表す。第1の光折り返し部121へ到達した光は第1の光折り返し部121によって進行方向を変えられ光射出部130へ伝送される。光入射部110の第2の部分112に受け取られた光は回折光として導光基板150内に取り込まれ、導光基板150内の全反射によって第2の光折り返し部122へ伝送される。第2の光折り返し部122へ到達した光は第2の光折り返し部122によって進行方向を変えられ光射出部130へ伝送される。光射出部130は第1の光折り返し部121及び第2の光折り返し部122から受け取った光を結合してアイボックス200内に画像を形成する。アイボックス200は観察者の瞳孔が移動しても画像が欠けない範囲を指す。図2においてアイボックス200と導光基板150との間の距離をD’で表す。図2における導光基板150内の光線の経路は導光基板150内の全反射を説明するためのもので実際の経路を示すものではない。
【0029】
図3は、本発明の導光装置100の設計方法を説明するための流れ図である。
【0030】
図3のステップS1010において光入射部110のサイズを定める。
【0031】
図4は、本明細書で使用する座標を説明するための図である。導光装置100の使用時の水平方向に対応する方向にx軸を定め、鉛直方向に対応する方向にy軸を定める。x軸の座標は光射出部130の座標が光入射部110の座標より大きくなるように定め、y軸の座標は光射出部130の座標が光入射部110の座標より小さくなるように定める。x軸及びy軸の交点を原点として両軸に直交するz軸を定める。
【0032】
たとえば、光入射部110の受光面上にx軸及びy軸を定め、受光面の中心を原点とする。光源50の中心はz軸上で原点からDの距離に位置するものとする。z軸の座標は光源50の中心の座標が原点の座標より小さくなるように定める。光源50の中心から放出されて光入射部110の受光面上の点Pに到達する光線の入射角をθで表す。θのx軸方向の成分及びy軸方向の成分をそれぞれθx及びθyで表す。θx及びθyはそれぞれ光線が、座標が大きくなるように進行してから入射する場合に正とする。図4においてθxは負でありθyは正である。
【0033】
光入射部110のx軸方向の長さL1x及びy軸方向の長さL1yはそれぞれ以下の式に基づいて定める。
【数1】
【数2】
ここで
D 光源の中心から原点までの距離
L10x 光源のx軸方向の長さ
L10y 光源のy軸方向の長さ
θxmax θxの絶対値の最大値
θymax θyの絶対値の最大値
【0034】
図3のステップS1020において、光入射部110の第1の部分111の格子周期Λ1を求める。第1の部分111の回折格子の溝はy軸方向であるとする。
【0035】
図5は、xz断面において、光源50の発光面の中心から放出されて光入射部110の受光面に入射し、導光基板150内を進行する光線を示す図である。図5においてx軸の座標は光射出部130の座標が光入射部110の座標より大きくなるように定めているので導光基板150内を進行する光線の進行方向はx軸に沿って座標が増加する方向である。また、θxは負である。
【0036】
図6は、xz断面において導光基板150に入射する光線の入射角θax及び導光基板150の内面の入射角θgxを示す図である。簡単化のため図6において光入射部110は図示していない。回折格子の溝は紙面に垂直な方向である。回折の式は以下のとおりである。図6の場合に、光線はx座標が減少する方向に進行してから光入射部110に入射するのでθaxの値は負である。
【数3】
ここで
na 空気の屈折率
ng 導光基板の屈折率
θax 光入射部の受光面のxz断面における入射角
θgx 導光基板の内面のxz断面における入射角
m 回折次数、m=1
λ 光線の波長
Λ 格子周期
【0037】
図6において、導光基板150の内面の入射角θgxが臨界角以上である場合に光入射部110の受光面から導光基板150に入った光線は図2に示すように全反射しながら導光基板150内を進行することができる。したがって、光入射部110の受光面の入射角θaxは導光基板150の内面の入射角θgxが臨界角以上となるように定める必要がある。
【0038】
式(1)においてθgxに臨界角を代入すると以下の式が得られる。
【数4】
【0039】
式(2)において、θaxにxz断面における最大入射角-θxmaxを代入しΛを求めその値をΛ1とする。上述のようにθxmaxは絶対値である。式(1)によれば格子周期がΛ1の場合にθaxが大きくなる(θaxの絶対値が小さくなる)にしたがってθgxは大きくなる。したがって、θaxが-θxmax以上であればθgxは臨界角以上となって光線は全反射しながら導光基板150内を進行することができる。
【0040】
一般的に、格子周期を小さくすることによってθgxが臨界角以上となる入射角度の絶対値は増加する。
【0041】
図3のステップS1030において、光入射部110の第2の部分112の格子周期Λ2を求める。第2の部分112の回折格子の溝はx軸方向であるとする。y軸の座標は光射出部130の座標が光入射部110に座標より小さくなるように定めているので導光基板150内を進行する光線の進行方向はy軸に沿って座標が減少する方向である。
【0042】
図7は、yz断面において導光基板150に入射する光線の入射角θay及び導光基板150の内面の入射角θgyを示す図である。図7のピッチpは図7に示すyz断面において光線が導光基板150の内面において全反射する点の間の間隔を示す。簡単化のため図7において光入射部110は図示していない。回折格子の溝は紙面に垂直な方向である。回折の式は以下のとおりである。図7の場合に、光線はy座標が減少する方向に進行してから光入射部110に入射するのでθayの値は負である。
【数5】
ここで
θay 光入射部の受光面のyz断面における入射角
θgy 導光基板の内面のyz断面における入射角
【0043】
観察者に安定した画像を提供するためにはピッチpは瞳孔のサイズ以下とする必要がある。瞳孔サイズのピッチpに対応する導光基板の内面の入射角θgyをピッチ角θpと呼称する。ピッチ角θpは瞳孔サイズのピッチpから以下の式によって求まる。
【数6】
式(1)’においてθgyにθpを代入すると以下の式が得られる。
【数7】
式(3)’において、格子周期Λを適切に定め、光入射部の受光面のyz断面における入射角θayを求める。θayの絶対値がyz断面における最大入射角以上であればその値をΛ2とする。θayの絶対値がyz断面における最大入射角よりも小さければ格子周期Λを小さくしてΛ2を求める。
【0044】
一般的に格子周期を大きくすることによってピッチ長は小さくなり画像は観察しやすくなる。したがって、最大入射角の条件を満たす限り格子周期を大きくするのが好ましい。格子周期とピッチ長との関係については実施例1において詳細に説明する。
【0045】
図8は、xz断面において光入射部の受光面の入射角と導光基板の内面の入射角との関係を示す図である。図8は後で説明する実施例1の上記の関係を示す。図8の横軸は光入射部110のxz断面における入射角を示し、図8の縦軸は導光基板の内面のxz断面における全反射角度を示す。光入射部の受光面のxz断面における入射角がθacx以上であれば導光基板の内面のxz断面における入射角は臨界角以上となる。光入射部の受光面のxz断面における入射角がθapx以下であればピッチは瞳孔サイズよりも小さくなる。θapxはxz断面においてピッチ角に対応する入射角である。このように光入射部の受光面のxz断面における入射角は、導光基板の内面のxz断面における入射角が臨界角以上となりピッチが瞳孔サイズよりも小さくなる角度範囲とする必要がある。
【0046】
図3のステップS1040において、導光基板の内面の入射角が臨界角以上となりピッチが瞳孔サイズよりも小さくなるように光線を伝搬させることのできる光入射部110の領域を求める。
【0047】
xz断面における光線の臨界角について考察する。xz断面において導光基板の内面の入射角が臨界角の場合の受光面の入射角θacxは負の値である。θacxは式(2)のΛにΛ1を代入して求める。
【0048】
xz断面において、導光基板の内面の入射角を臨界角以上とするための入射角の条件は以下の式で表せる。
【数8】
ここで
θax xz断面における光入射部の受光面の入射角
θay yz断面における光入射部の受光面の入射角
α 溝の方向がほぼy軸方向の格子の溝のy軸からの傾き角度(反時計回り)
【0049】
yz断面における光線の臨界角について考察する。導光基板の内面の入射角が臨界角の場合の受光面の入射角θacyは正の値である。θacyは式(1)’から求まる以下の式のΛにΛ2を代入して求める。
【数9】
【0050】
yz断面において、導光基板の内面の入射角を臨界角以上とするための入射角の条件は以下の式で表せる。
【数10】
ここで
θax xz断面における光入射部の受光面の入射角
θay yz断面における光入射部の受光面の入射角
β 溝の方向がほぼx軸方向の格子の溝のx軸からの傾き角度(反時計回り)
【0051】
xz断面における光線のピッチについて考察する。導光基板における瞳孔サイズのピッチに対応する受光面の入射角θapxは正の値である。θapxは式(1)のθgxにθpを代入して得られる以下の式のΛにΛ1を代入して求める。
【数11】
【0052】
xz断面において、導光基板におけるピッチを瞳孔サイズ以下とするための入射角の条件は以下の式で表せる。
【数12】
ここで
θax xz断面における光入射部の受光面の入射角
θay yz断面における光入射部の受光面の入射角
α 溝の方向がほぼy軸方向の格子の溝のy軸からの傾き角度(反時計回り)
【0053】
yz断面における光線のピッチについて考察する。導光基板における瞳孔サイズのピッチに対応する受光面の入射角θapyは負の値である。θapyは式(3)’のΛにΛ2を代入して求める。
【0054】
yz断面において、導光基板におけるピッチを瞳孔サイズ以下とするための入射角の条件は以下の式で表せる。
【数13】
ここで
θax xz断面における光入射部の受光面の入射角
θay yz断面における光入射部の受光面の入射角
β 溝の方向がほぼx軸方向の格子の溝のx軸からの傾き角度(反時計回り)
【0055】
なお、光入射部の第1及び第2の部分から放出された光は第1及び第2の光折り返し部でほぼ90度方向を変えるので波数空間で考慮すると、導光基板の内面の入射角が臨界角以上となりピッチが瞳孔サイズよりも小さくなるように光線を伝搬させるためにさらに以下の追加条件を満たす必要がある。
【0056】
第1の部分111から入射した光線の追加条件は以下の式で表せる。
【数14】
xz断面において格子周期がΛ2の場合に臨界角に対応する受光面の入射角θacx’は式(2)のΛにΛ2を代入して求める。
【0057】
第1の部分112から入射した光線の入射角の条件は以下の式で表せる。
【数15】
yz断面において格子周期がΛ1の場合に臨界角に対応する受光面の入射角θapy’は式(3)のΛにΛ1を代入して求める。
【0058】
図9は、導光基板の内面の入射角が臨界角以上となりピッチが瞳孔サイズよりも小さくなるに光線を伝搬させることのできる光入射部110の領域を示す図である。図9のx軸はtan(θax)を示し、図9のy軸はtan(θay)を示す。図9の直線L1、L2、L3及びL4はそれぞれ式(4)、(5)、(6)及び(7)を表す。また、L1’及びL4’はそれぞれ式(4)’及び(7)’を表す。直線L1’、L2、L3及びL4’で囲まれた領域が導光基板の内面の入射角が臨界角以上となりピッチが瞳孔サイズよりも小さくなるように光線を伝搬させることのできる領域である。この領域を重複領域と呼称する。
【0059】
図3のステップS1050において、光射出部130のサイズを定める。
【0060】
図4に示した座標の原点を光射出部130の面の中心と一致させ、x軸及びy軸を含む面を光射出部130の面と一致させる。また、アイボックス200の中心をz軸上の定め、アイボックス200はx軸及びy軸を含む面と平行とする。光射出部130の面上の点P’から放出されてアイボックス200の中心に入射する光線の入射角をθで表す。θのx軸方向の成分及びy軸方向の成分をそれぞれθx及びθyで表す。
【0061】
光射出部130のx軸方向の長さL2x及びy軸方向の長さL2yはそれぞれ以下の式に基づいて定める。
【数16】
【数17】
ここで
D’ アイボックスの面の中心から原点(光射出部の面の中心)までの距離
L20x アイボックスのx軸方向の長さ
L20y アイボックスのy軸方向の長さ
θxmax θxの絶対値の最大値
θymax θyの絶対値の最大値
【0062】
なお、光射出部130は、導光基板上に備わる2次元表面構造型回折格子であって、二種類の回折格子のそれぞれの格子周期は対応する光入射部110の第1の部分111または第2の部分112の1次元回折格子の格子周期と同じである。
【0063】
図3のステップS1060において、瞳孔間距離と目と耳の位置関係から、光入射部110と光射出部130との相対的な位置を定める。
【0064】
図3のステップS1070において、重複領域を考慮しながら光入射部110の第1の部分111及び第2の部分112への分割の仕方を変化させ瞳によって観察される画像の輝度を光学シミュレーション(たとえば、Virtuallabを使用したもの)によって評価して分割の仕方を最適化する。また、そのように分割された光入射部110に合わせて第1の光折り返し部121及び第2の光折り返し部122の形状を最適化する。
【0065】
従来技術の装置においては、第1及び第2の部分の一方から光射出部へ向かう光線の経路が、他方が備わる導光基板の領域を通過しないように構成される。他方、本発明の導光装置は、導光基板の面において、第1の部分を包含する最小の円の中心は第2の部分を包含する最小の円の中心よりも光射出部から離れており、第1の部分から光射出部へ向かう光線の経路が、第2の部分が備わる導光基板の領域を通過するように構成されている。したがって、本発明の導光装置において光入射部110の第1の部分111及び第2の部分112への分割の仕方の自由度が従来技術の導光装置と比較してはるかに大きい。
【0066】
以下において本発明の実施例及び比較例について説明する。
【0067】
光入射部110、第1の光折り返し部121、第2の光折り返し部122及び光射出部130を備えた導光基板150の材料はポリカーボネートであり、波長520ナノメータの光の屈折率は1.6748である。導光基板150の厚さは1.25ミリメータである。各実施例の対応する素子は同じ符号で表す。
【0068】
光入射部110は矩形であり、x軸方向の長さは3.343ミリメータ、y軸方向の長さは2.49ミリメータである。光入射部110の第1の部分111の溝はほぼy軸の方向であり、格子周期は410ナノメータである。光入射部110の第2の部分112の溝はほぼx軸の方向であり、格子周期は460ナノメータである。
【0069】
光射出部130は矩形であり、x軸方向の長さは21.207ミリメータ、y軸方向の長さは11.929ミリメータである。光射出部130のx軸方向の格子周期は460ナノメータであり、y軸方向の格子周期は460ナノメータである。
【0070】
格子の溝の方向はy軸を基準として時計回りの角度で表す。格子の溝の方向を格子の方向とも呼称する。
【0071】
光源50と光入射部110との間の距離Dは6.3ミリメータ、光射出部130とアイボックス200との距離D’は18ミリメータである。光入射部110の対角画角は30度である。
【0072】
光源50はレーザ光源であり、スポットはx軸方向が0.4ミリメータ、y軸方向が0.8ミリメータである。アイボックス200はx軸方向が12.8ミリメータ、y軸方向が7.2ミリメータである。
【0073】
実施例1
図10は実施例1の導光装置100の平面図である。
【0074】
図11は実施例1の導光装置100のxz断面を示す図である。
【0075】
光入射部110の第1の部分111の格子の方向は0度であり、格子周期は410ナノメータである。光入射部110の第2の部分112の格子の方向は90度であり、格子周期は460ナノメータである。第1の部分111と第2の部分112とは光入射部110の中心を通りy軸と平行な境界線によって両者の面積が等しくなるように分割される。
【0076】
実施例1の光入射部110は、第1の部分111は第2の部112部分よりも光射出部130から離れており、第1の部分111から光射出部130へ向かう光線の経路が、第2の部分112が備わる導光基板150の領域を通過するように構成されている。具体的に、第1の部分111から第1の光折り返し部121へ向かう光線はx座標が増加するようにx軸方向に進行し、導光基板150の第2の部112部分が備わる領域を通過する。第2の部分112から第2の光折り返し部122へ向かう光線はy座標が減少するようにy軸方向に進行する。
【0077】
第1の光折り返し部121の格子の方向は45度であり、格子周期は290ナノメータである。第2の光折り返し部122の格子の方向は45度であり、格子周期は325ナノメータである。
【0078】
表1はアイボックスの受光面における輝度を示す表である。輝度の数値は光源の輝度に対する比率(パーセント)で示す。なお、表1及び以下の表の輝度の数値は光学シミュレーション(たとえば、Virtuallabを使用したもの)によって求めた。
【0079】
図2に示すように、アイボックス200の受光面と光射出部130の射出面とは平行であり、両方の面の中心を結ぶ直線はz軸方向である。そこで、光射出部130の射出面の中心から射出される光線の入射角度によってアイボックス200の受光面上の位置を定めることができる。表1の横方向の角度は入射角度のx軸方向の成分、すなわちx軸方向の座標を表し、表1の縦方向の角度は入射角度のy軸方向の成分、すなわちy軸方向の座標を表す。
【0080】
表2以下の表においても、輝度の数値、横方向の角度及び縦方向の角度は同様に定義される。
【表1】
【0081】
表2は、実施例1の導光装置100において、様々な入射角度の光線についての導光基板150におけるピッチ長を示す表である。ピッチ長の単位はミリメータである。
【表2】
【0082】
表3は、実施例1の導光装置100の第2の部分111の格子周期を460ナノメータから410ナノメータに変えた場合に、様々な入射角度の光線についての導光基板150におけるピッチ長を示す表である。ピッチ長の単位はミリメータである。
【表3】
【0083】
格子周期が410ナノメータの表3の場合に格子周期が460ナノメータの表2の場合と比較してピッチ長は増加していている。このように格子周期を短くするとピッチ長は増加する。
【0084】
比較例
図12は比較例の導光装置100’の平面図である。
【0085】
図13は比較例の導光装置100’のxz断面を示す図である。
【0086】
光入射部110’の第1の部分111’の格子の方向は0度であり、格子周期は410ナノメータである。光入射部110’の第2の部分112’の格子の方向は90度であり、格子周期は460ナノメータである。第1の部分111’と第2の部分112’とは光入射部110’の中心を通りy軸と平行な境界線によって両者の面積が等しくなるように分割される。
【0087】
比較例において、第1及び第2の部分の一方から光射出部130’へ向かう光線の経路が、他方が備わる導光基板150’の領域を通過しないように構成されている。具体的に、第1の部分111’から第1の光折り返し部121’へ向かう光線はx座標が増加するようにx軸方向に進行し、第2の部分112’から第2の光折り返し部122’へ向かう光線はy座標が減少するようにy軸方向に進行する。このように第1の部分111’及び第2の部分112’の一方から射出された光線は他方が備わる導光基板150’の領域を通過しない。
【0088】
第1の光折り返し部121’の格子の方向は45度であり、格子周期は325ナノメータである。第2の光折り返し部122’の格子の方向は45度であり、格子周期は290ナノメータである。
【0089】
表4はアイボックスの受光面における輝度を示す表である。
【表4】
【0090】
実施例2
図14は実施例2の導光装置100の平面図である。
【0091】
光入射部110の第1の部分111の格子の方向は2度であり、格子周期は410ナノメータである。光入射部110の第2の部分112の格子の方向は85度であり、格子周期は460ナノメータである。
【0092】
実施例2の光入射部110は、第1の部分111は第2の部112部分よりも光射出部130から離れており、第1の部分111から光射出部130へ向かう光線の経路が、第2の部分112が備わる導光基板150の領域を通過するように構成されている。
【0093】
図15は実施例2の光入射部110の平面図である。第1の部分111と第2の部112部分との境界線はx軸方向の4本の線分及びy軸方向の5本の線分からなる。
【0094】
たとえば、光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向に平行な直線は境界線と四点で交わる。
【0095】
第1の部分111と第2の部分112との境界線の方向が単一ではなく、該境界線の線分または接線の基準方向に対する角度の差の最大値は90度である。
【0096】
光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部130から離れた光入射部110の領域において第2の部分112が占める面積は4.76%である。
【0097】
光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部130により近い光入射部110の領域において第1の部分111が占める面積は13.72%である。
【0098】
第1の光折り返し部121の格子の方向は46度であり、格子周期は285ナノメータである。第2の光折り返し部122の格子の方向は42.5度であり、格子周期は310ナノメータである。
【0099】
表5はアイボックスの受光面における輝度を示す表である。
【表5】
【0100】
実施例3
図16は実施例3の導光装置100の平面図である。
【0101】
光入射部110の第1の部分111の格子の方向は5度であり、格子周期は410ナノメータである。光入射部110の第2の部分112の格子の方向は90度であり、格子周期は460ナノメータである。
【0102】
実施例3の光入射部110は、第1の部分111は第2の部112部分よりも光射出部130から離れており、第1の部分111から光射出部130へ向かう光線の経路が、第2の部分112が備わる導光基板150の領域を通過するように構成されている。
【0103】
図17は実施例3の光入射部110の平面図である。第1の部分111と第2の部分112との境界線はx軸方向の1本の線分及びy軸方向の2本の線分からなる。
【0104】
第1の部分111と第2の部分112との境界線の方向が単一ではなく、該境界線の線分または接線の基準方向に対する角度の差の最大値は90度である。
【0105】
光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部130から離れた光入射部110の領域において第2の部分112が占める面積は18.21%である。
【0106】
光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部130により近い光入射部110の領域において第1の部分111が占める面積は18.21%である。
【0107】
第1の光折り返し部121の格子の方向は47.5度であり、格子周期は286ナノメータである。第2の光折り返し部122の格子の方向は45度であり、格子周期は325ナノメータである。
【0108】
表6はアイボックスの受光面における輝度を示す表である。
【表6】
【0109】
実施例4
図18は実施例4の導光装置100の平面図である。
【0110】
光入射部110の第1の部分111の格子の方向は0度であり、格子周期は410ナノメータである。光入射部110の第2の部分112の格子の方向は100度であり、格子周期は460ナノメータである。
【0111】
実施例4の光入射部110は、第1の部分111は第2の部112部分よりも光射出部130から離れており、第1の部分111から光射出部130へ向かう光線の経路が、第2の部分112が備わる導光基板150の領域を通過するように構成されている。
【0112】
図19は実施例4の光入射部110の平面図である。第1の部分111と第2の部112部分との境界線はy軸に対して傾斜した線分である。
【0113】
光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部130から離れた光入射部110の領域において第2の部分112が占める面積は14.96%である。
【0114】
光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部130により近い光入射部110の領域において第1の部分111が占める面積は14.96%である。
【0115】
第1の光折り返し部121の格子の方向は45度であり、格子周期は290ナノメータである。第2の光折り返し部122の格子の方向は50度であり、格子周期は360ナノメータである。
【0116】
表7はアイボックスの受光面における輝度を示す表である。
【表7】
【0117】
実施例5
図20は実施例5の導光装置100の平面図である。
【0118】
光入射部110の第1の部分111の格子の方向は2度であり、格子周期は410ナノメータである。光入射部110の第2の部分112の格子の方向は85度であり、格子周期は460ナノメータである。
【0119】
実施例5の光入射部110は、第1の部分111は第2の部112部分よりも光射出部130から離れており、第1の部分111から光射出部130へ向かう光線の経路が、第2の部分112が備わる導光基板150の領域を通過するように構成されている。
【0120】
図21は実施例5の光入射部110の平面図である。第1の部分111と第2の部112部分との境界線はx軸方向の1本の線分及びy軸方向の3本の線分からなる。
【0121】
第1の部分111と第2の部分112との境界線の方向が単一ではなく、該境界線の線分または接線の基準方向に対する角度の差の最大値は90度である。
【0122】
光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部130から離れた光入射部110の領域において第2の部分112が占める面積は4.28%である。
【0123】
光入射部110の中心である座標の原点を通り第1の部分111の回折格子の溝の方向の直線を基準として、光射出部130により近い光入射部110の領域において第1の部分111が占める面積は23.93%である。
【0124】
第2の部分112は第1の部分111によって互いに分離された二つの部分を有する。
【0125】
第1の光折り返し部121の格子の方向は46度であり、格子周期は285ナノメータである。第2の光折り返し部122の格子の方向は42.5度であり、格子周期は310ナノメータである。
【0126】
表8はアイボックスの受光面における輝度を示す表である。
【表8】
【0127】
実施例の性能の評価
アイボックスの受光面における輝度を示す表1及び表4-6によって実施例及び比較例の性能を評価する。最初に実施例1の表1と比較例の表4とを比較する。観察可能な輝度の閾値を0.001%とすると表1の全ての値は閾値以上である。他方、表2においては黒で示した9か所の値が閾値未満である。したがって、実施例1の装置の光利用効率は比較例の装置の光利用効率よりも高い。その理由は、実施例1における光線の経路の方が比較例における光線の経路よりも光入射部110における回折効率が高いからである。
【0128】
つぎに、実施例1-5の輝度を示す表1及び表5-8において輝度の最小値は以下のとおりである。
実施例1(表1) 0.007%
実施例2(表5) 0.022%
実施例3(表6) 0.015%
実施例4(表7) 0.027%
実施例5(表8) 0.022%
【0129】
実施例2-5においては、光入射部110の第1の部分111と第2の部分112との境界線を適切に定めることによって輝度の最小値は、第1の部分111と第2の部分112とを光入射部110の中心を通りy軸と平行な境界線によって両者の面積が等しくなるように分割した実施例1と比較して大幅に向上している。その理由は、実施例2-5においては、第1の部分111と第2の部分112との配置を柔軟に変化させることによって、アイボックスの受光面の輝度を向上させ、アイボックスの受光面における位置による輝度の差を小さくすることができるためである。
【要約】
本装置は、内部反射によって光を伝搬する導光基板を有し、該導光基板は、1次元回折格子であって、受け取った光を第1の光ビームとして該導光基板内の第1の経路に沿って伝搬させる第1の部分、及び受け取った光を第2の光ビームとして該導光基板内の第2の経路に沿って伝搬させる第2の部分を有する光入射部と、1次元回折格子であって、該第1の光ビームの第1の経路の方向を変える第1の折り返し部、及び該第2の光ビームの第2の経路の方向を変える第2の折り返し部と、2次元回折格子であって、該第1及び第2の折り返し部からの第1及び第2のビームを受け取り、これらを結合して該導光基板の外部に射出する光射出部と、を備える。該導光基板の面において、該第1の部分を包含する最小の円の中心は該第2の部分を包含する最小の円の中心よりも該光射出部から離れており、該第1の経路が該第2の部分が備わる該導光基板の領域を通過するように構成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21