(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/34 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
G01N3/34 C
G01N3/34 A
(21)【出願番号】P 2019109272
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390004905
【氏名又は名称】株式会社山本水圧工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀田 陽亮
(72)【発明者】
【氏名】安藤 吉則
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 公夫
(72)【発明者】
【氏名】深尾 隆広
(72)【発明者】
【氏名】川野 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 貴朗
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-217829(JP,A)
【文献】特開平01-165931(JP,A)
【文献】特開平01-075936(JP,A)
【文献】特開2013-210312(JP,A)
【文献】特開昭61-097546(JP,A)
【文献】特開2017-133837(JP,A)
【文献】国際公開第03/048741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の試験体に圧縮及び曲げを付与して前記試験体を試験する試験装置であって、
前記試験体の両端部を、それぞれ、前記試験体の長手方向及び曲げ方向に垂直な支軸を中心に回転可能に支持する装置本体と、
前記試験体に引張荷重又は圧縮荷重を負荷する引張圧縮機構と、
前記曲げ方向と逆向きに前記試験体を押さえて前記両端部の回転を規制する回転規制機構と、
を備える、試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試験装置であって、
前記装置本体は、前記試験体の両端部を把持する一対の把持部材を含み、
前記回転規制機構は、前記把持部材の
外側から前記試験体を押さえる、試験装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の試験装置であって、
前記回転規制機構は、
前記曲げ方向において前記試験体の前方に配置される第1規制部材と、
前記曲げ方向において前記試験体の後方に配置され、前記第1規制部材とともに前記試験体を挟持する第2規制部材と、
を含む、試験装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の試験装置であって、さらに、
前記曲げ方向において前記試験体の後方に配置される第1及び第2伸縮部材を含み、前記第1及び第2伸縮部材を伸張させて前記試験体を前記曲げ方向に押すことで前記試験体に曲げを付与する曲げ機構と、
前記曲げ方向において前記試験体の前方に配置され、前記試験体を前記曲げ方向と逆向きに押し返して前記試験体の曲げを解消する曲げ戻し機構と、
を備える、試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載の試験装置であって、
前記曲げ戻し機構は、
前記長手方向において前記第1伸縮部材に対応する位置に配置される第3伸縮部材と、
前記長手方向において前記第2伸縮部材に対応する位置に配置される第4伸縮部材と、
を含む、試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験装置に関し、より詳細には、管状の試験体に圧縮及び曲げを付与して試験体を試験する試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属管本体や、金属管用のねじ継手又は溶接継手等といった管状の試験体を試験するための試験装置が知られている。試験装置は、試験体の機械的性能を評価するため、試験体に荷重を負荷するように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、試験体に対して長手方向の荷重を負荷する試験装置を開示する。特許文献1の試験装置において、試験体は、外套管に挿入された状態で、一端部が装置本体に固定され、他端部がシリンダロッドを介して装置本体に接続される。このシリンダロッドが進退することにより、試験体には長手方向の引張荷重又は圧縮荷重が負荷される。また、試験体内又は外套管内に圧力が導入されることにより、試験体に内圧又は外圧が負荷される。
【0004】
特許文献2は、試験体に曲げ荷重を負荷する試験装置を開示する。特許文献2の試験装置は、試験体の四点曲げ試験を行うための装置である。この試験装置は、試験体の両端部を支持する一対の支持柱と、支持柱の間に配置された2つの昇降柱と、を含む。昇降柱の各々が上方に伸張して試験体を押し上げることにより、上向き凸の曲げが試験体に付与される。このとき、試験体の両端部は、試験体の長手方向及び曲げ方向に垂直な支軸を中心に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平01-165931号公報
【文献】特開2013-217829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
管状の試験体に対し、長手方向の荷重及び曲げ荷重の双方を負荷することが可能な試験装置も存在する。この試験装置は、特許文献2の試験装置と同様、試験体の曲げ変形を許容するため、試験体の両端部を回転自在に支持するように構成されている。しかしながら、試験体の両端部が回転自在である場合、試験体に長手方向の圧縮荷重のみを負荷したとき、試験体にわずかでも曲げが残留していると、試験体の両端部が滑って試験体の座屈が発生する可能性がある。特に、圧縮荷重が大きい場合には試験体が座屈しやすく、試験体の試験を安定して行うことが困難となる。
【0007】
本開示は、管状の試験体に圧縮及び曲げの双方を付与する試験を行う際、試験体の座屈が発生するのを抑制することができる試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る試験装置は、管状の試験体に圧縮及び曲げを付与して試験体を試験する。試験装置は、装置本体と、回転規制機構と、を備える。装置本体は、試験体の両端部を、それぞれ、試験体の長手方向及び曲げ方向に垂直な支軸を中心に回転可能に支持する。回転規制機構は、曲げ方向と逆向きに試験体を押さえて両端部の回転を規制する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る試験装置によれば、管状の試験体に圧縮及び曲げの双方を付与する試験を行う際、試験体の座屈が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る試験装置の概略を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す試験装置において試験体に曲げを付与した状態を例示する図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す試験装置において試験体に圧縮のみを付与した状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る試験装置は、管状の試験体に圧縮及び曲げを付与して試験体を試験する。試験装置は、装置本体と、回転規制機構と、を備える。装置本体は、試験体の両端部を、それぞれ、試験体の長手方向及び曲げ方向に垂直な支軸を中心に回転可能に支持する。回転規制機構は、曲げ方向と逆向きに試験体を押さえて両端部の回転を規制する(第1の構成)。
【0012】
第1の構成に係る試験装置において、試験体の両端部は、試験体の長手方向及び曲げ方向に垂直な支軸を中心として回転可能に支持される。試験体に曲げ荷重を負荷したとき、試験体の両端部が支軸周りに回転することにより、試験体の曲げ変形が生じる。一方、第1の構成に係る試験装置は、回転規制機構を備えている。試験体に曲げを付与せず、圧縮のみを付与する場合には、この回転規制機構によって試験体を曲げ方向と逆向きに押さえることで、試験体の両端部の回転を規制することができる。これにより、試験体に圧縮及び曲げの双方を付与する試験を行う際、試験体の座屈が発生するのを抑制することができる。
【0013】
装置本体は、一対の把持部材を含んでいてもよい。一対の把持部材は、試験体の両端部を把持する。この場合、回転規制機構は、把持部材の上から試験体を押さえることが好ましい(第2の構成)。
【0014】
第2の構成によれば、回転規制機構と試験体との間に把持部材が介在し、回転規制機構が試験体に直接接触しない。そのため、回転規制機構に起因して試験体に歪みや応力が発生するのを防止することができ、より正確な試験結果を得ることができる。
【0015】
回転規制機構は、第1規制部材と、第2規制部材と、を含んでいてもよい。第1規制部材は、曲げ方向において試験体の前方に配置される。第2規制部材は、曲げ方向において試験体の後方に配置される。第2規制部材は、第1規制部材とともに試験体を挟持する(第3の構成)。
【0016】
第3の構成によれば、回転規制機構は、第1規制部材と第2規制部材とによって試験体を挟持する。これにより、試験体に圧縮のみを付与する際、試験体の両端部の回転をより確実に規制することができる。よって、試験体の座屈をさらに発生しにくくすることができる。
【0017】
試験装置は、さらに、曲げ機構と、曲げ戻し機構と、を備えていてもよい。曲げ機構は、第1及び第2伸縮部材を含むことができる。第1及び第2伸縮部材は、曲げ方向において試験体の後方に配置される。曲げ機構は、第1及び第2伸縮部材を伸張させて試験体を曲げ方向に押すことで試験体に曲げを付与することができる。曲げ戻し機構は、曲げ方向において試験体の前方に配置される。曲げ戻し機構は、試験体を曲げ方向と逆向きに押し返して試験体の曲げを解消することができる(第4の構成)。
【0018】
第4の構成では、試験体の両端部を装置本体が支持した状態で、曲げ機構の2つの伸縮部材が試験体を押すことにより、試験体に曲げが付与される。すなわち、第4の構成に係る試験装置は、試験体の四点曲げを行う。四点曲げは、試験体の曲げ方向を制御しやすい一方、試験体に曲げを残留させやすい。曲げが残留したままの試験体に圧縮のみを付与すると、試験体が座屈しやすい。これに対して、第4の構成に係る試験装置には、曲げ戻し機構が設けられている。曲げ戻し機構は、曲げ機構によって曲げが付与された試験体を押し返して曲げを解消することができる。そのため、試験体に残留する曲げを低減することができる。よって、試験体が座屈するのを抑制することができる。
【0019】
曲げ戻し機構は、第3伸縮部材と、第4伸縮部材と、を含んでいてもよい。第3伸縮部材は、長手方向において第1伸縮部材に対応する位置に配置される。第4伸縮部材は、長手方向において第2伸縮部材に対応する位置に配置される(第5の構成)。
【0020】
第5の構成によれば、試験体の長手方向において、曲げ機構の2つの伸縮部材に対応する位置に、曲げ戻し機構の2つの伸縮部材が設けられる。この曲げ戻し機構は、試験体のうち、曲げ機構によって押された箇所をそのまま押し返すことができる。
【0021】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0022】
[試験装置の構成]
図1は、本実施形態に係る試験装置100を模式的に示す平面図である。
図1を参照して、試験装置100は、管状の試験体Pを試験するために使用される。試験体Pは、特に限定されるものではないが、例えば、金属管本体、金属管用のねじ継手、又は金属管用の溶接継手等である。
図1では、試験体Pを二点鎖線で示している。
【0023】
試験装置100は、引張、圧縮、及び曲げを試験体Pに付与することができるように構成されている。試験装置100は、装置本体10と、引張圧縮機構20と、曲げ機構30と、曲げ戻し機構40と、回転規制機構50と、を備える。
【0024】
装置本体10内には、試験に供される試験体Pが配置される。装置本体10は、試験体Pの両端部を支持する。装置本体10は、支持フレーム111,112と、把持部材121,122と、を含む。
【0025】
支持フレーム111,112の各々は、例えば、概略直方体状をなす。一方の支持フレーム111には、把持部材121を介して試験体Pの一端部が取り付けられる。他方の支持フレーム112には、把持部材122を介して試験体Pの他端部が取り付けられる。試験体Pは、試験に際し、一方の支持フレーム111から他方の支持フレーム112に向かって略水平に延びるように配置される。
【0026】
把持部材121は、試験体Pの一端部を把持するように構成される。把持部材122は、試験体Pの他端部を把持するように構成される。把持部材121,122は、例えば、公知のクランプ又はチャックである。本実施形態の例において、把持部材121,122によって把持される試験体Pの両端部には、筒状の治具131,132が装着される。
【0027】
把持部材121は、一方の支持フレーム111に対し、支軸121aを中心として回転可能に取り付けられる。把持部材122は、他方の支持フレーム112に対し、支軸122aを中心として回転可能に取り付けられる。支軸121a,122aは、それぞれ、試験体Pの長手方向及び曲げ方向に対して実質的に垂直な軸部材である。本実施形態の例では、支軸121a,122aは上下方向に延びている。
【0028】
引張圧縮機構20は、試験体Pに引張荷重又は圧縮荷重を負荷するように構成されている。引張圧縮機構20は、伸縮可能なアクチュエータ21,22を含む。アクチュエータ21,22は、一方の支持フレーム111から他方の支持フレーム112に向かって略水平に延びている。アクチュエータ21,22は、それぞれ、一端部が一方の支持フレーム111に固定され、他端部が他方の支持フレーム112に固定されている。アクチュエータ21,22としては、直線運動を行う公知のアクチュエータを使用することができる。特に限定されるものではないが、アクチュエータ21,22は、例えば油圧シリンダである。
【0029】
曲げ機構30は、試験体Pに曲げ荷重を負荷するように構成されている。本実施形態では、曲げ機構30は、試験体Pに対して水平方向、つまり左右方向の曲げを付与する。左右方向は、試験装置100の平面視で試験体Pの長手方向に対して垂直な方向である。
【0030】
曲げ機構30は、伸縮部材31,32を含む。伸縮部材31,32は、支持フレーム111と支持フレームと112との間に配置される。伸縮部材31,32は、曲げ機構30が試験体Pを曲げる方向(曲げ方向)において試験体Pの後方に配置される。本実施形態では、曲げ方向が水平方向であるため、伸縮部材31,32は、支持フレーム111,112に取り付けられた試験体Pの側方に配置される。伸縮部材31,32は、試験体Pの長手方向中央における横断面に対し、実質的に対称となるように位置付けられる。
【0031】
伸縮部材31,32は、試験体Pの曲げ方向に伸縮可能に構成されている。伸縮部材31,32は、例えば油圧シリンダである。ただし、伸縮部材31,32は、これに限定されるものではない。直線運動を行う公知のアクチュエータを適宜選択し、伸縮部材31,32として使用することができる。
【0032】
曲げ戻し機構40は、曲げ機構30によって付与された試験体Pの曲げを解消するように構成されている。曲げ戻し機構40は、伸縮部材41,42を含む。伸縮部材41,42は、支持フレーム111と支持フレームと112との間に配置される。伸縮部材41,42は、試験体Pの曲げ方向において試験体Pの前方に配置される。伸縮部材41,42は、支持フレーム111,112に取り付けられた試験体Pに対し、曲げ機構30の伸縮部材31,32と反対側に位置付けられる。本実施形態では、試験体Pの両脇(左右)に、曲げ機構30の伸縮部材31,32と、曲げ戻し機構40の伸縮部材41,42とが配置されている。
【0033】
伸縮部材41,42は、試験体Pの長手方向中央における横断面に対し、実質的に対称となるように位置付けられる。一方の伸縮部材41は、試験体Pの長手方向において、曲げ機構30の伸縮部材31と対応する位置に配置される。他方の伸縮部材42は、試験体Pの長手方向において、曲げ機構30の伸縮部材32と対応する位置に配置される。すなわち、伸縮部材41,42は、試験体Pを挟んで曲げ機構30の伸縮部材31,32と向かい合う。
【0034】
伸縮部材41,42は、試験体Pの曲げ方向に伸縮可能に構成されている。伸縮部材41,42としては、曲げ機構30の伸縮部材31,32と同様、直線運動を行う公知のアクチュエータを適宜選択して使用することができる。伸縮部材41,42は、例えば油圧シリンダである。
【0035】
回転規制機構50は、試験体Pの両端部の支軸121a,122a周りの回転を規制するように構成されている。回転規制機構50は、試験体Pの一端側に配置される規制部材511,512と、試験体Pの他端側に配置される規制部材521,522と、を含む。
【0036】
規制部材511,512は、一方の支持フレーム111の近傍に設けられる。規制部材511は、試験体Pの曲げ方向において試験体Pの前方に配置されている。規制部材512は、試験体Pの曲げ方向において試験体Pの後方に配置されている。言い換えると、規制部材511は、曲げ機構30によって曲げられる試験体Pの背側に配置され、規制部材521は、曲げ機構30によって曲げられる試験体Pの腹側に配置される。
【0037】
本実施形態の例では、規制部材511,512は、試験体Pの長手方向において、把持部材121に対応する位置に配置されている。規制部材511,512は、把持部材121の両脇(左右)に水平に並んでいる。ただし、規制部材511,512は、水平面に対して傾いて配置されていてもよい。例えば、規制部材511,512は、把持部材121の真横から試験体Pの管軸周りに45°回転した位置に配置されていてもよい。
【0038】
規制部材521,522は、他方の支持フレーム112の近傍に設けられる。規制部材521は、試験体Pの曲げ方向において試験体Pの前方に配置されている。規制部材522は、試験体Pの曲げ方向において試験体Pの後方に配置されている。言い換えると、規制部材521は、曲げ機構30によって曲げられる試験体Pの背側に配置され、規制部材522は、曲げ機構30によって曲げられる試験体Pの腹側に配置される。
【0039】
本実施形態の例では、規制部材521,522は、試験体Pの長手方向において、把持部材122に対応する位置に配置されている。規制部材521,522は、把持部材122の両側方(左右)に水平に並んでいる。ただし、規制部材521,522は、水平面に対して傾いて配置されていてもよい。例えば、規制部材521,522は、把持部材122の真横から試験体Pの管軸周りに45°回転した位置に配置されていてもよい。
【0040】
規制部材511,512は、それぞれ、把持部材121を押さえることができるように構成されている。規制部材521,522は、それぞれ、把持部材122を押さえることができるように構成されている。規制部材511,512及び規制部材521,522は、典型的には油圧シリンダである。ただし、規制部材511,512及び規制部材521,522は、これに限定されるものではなく、例えば、スクリュージャッキであってもよいし、把持部材121又は把持部材122に対して進退可能なピン状部材等であってもよい。
【0041】
[試験装置の使用方法]
次に、試験装置100の使用方法について説明する。試験装置100を使用して試験体Pを試験するに際し、まず、治具131,132が装着された試験体Pの両端部を把持部材121,122によって把持させる。これにより、支持フレーム111,112間に試験体Pを配置する。この試験体Pに対し、曲げ機構30を用いて曲げを付与し、引張圧縮機構20によって引張又は圧縮を付与する。具体的には、曲げ機構30及び/又は引張圧縮機構20を用い、試験体Pに対して曲げ荷重、引張荷重、又は圧縮荷重、あるいは、曲げと引張又は圧縮との複合荷重を繰り返し負荷する。例えば、試験体Pが油井で用いられる金属管(油井管)用のねじ継手である場合、試験体Pには、API RP5C5及びISO13679に準拠した複合荷重が繰り返し負荷される。
【0042】
図2は、試験装置100において試験体Pに曲げを付与した状態を例示する図である。
図2を参照して、試験体Pに曲げを付与する際、曲げ機構30の伸縮部材31,32を試験体Pに向かって伸張させ、伸縮部材31,32によって試験体Pを曲げ方向に押す。このとき、試験体Pの両端部を把持する把持部材121,122が、それぞれ支軸121a,122aを中心として回転する。これにより、試験体Pは、左右方向の一方側、すなわち曲げ戻し機構40側に凸の形状に変形する。
【0043】
試験体Pの曲げを解消する場合、まず、曲げ機構30の伸縮部材31,32を、
図2において二点鎖線で示すように縮退させ、試験体Pから遠ざける。これにより、試験体Pから曲げがある程度除去される。続いて、曲げ戻し機構40の伸縮部材41,42を、
図2において二点鎖線で示すように試験体Pに向かって伸張させ、伸縮部材41,42によって試験体Pを曲げ方向と逆向きに押す。曲げ戻し機構40の伸縮部材41,42は、曲げ機構30の伸縮部材31,32によって曲げられた試験体Pを背側から押し戻す。これにより、試験体Pに残留していた曲げが除去される。
【0044】
図3は、試験装置100において試験体Pに曲げを付与せず、圧縮のみを付与した状態を例示する図である。
図3を参照して、試験体Pに圧縮のみを付与する際には、回転規制機構50によって試験体Pの両端部の回転を規制する。試験体Pの曲げを行った後で試験体Pに圧縮のみを付与する場合には、曲げ戻し機構40によって試験体Pの曲げを解消した上で、回転規制機構50によって試験体Pの両端部の回転を規制する。
【0045】
回転規制機構50の規制部材511,512は、試験体Pの一端部を把持する把持部材121に向かって伸張する。規制部材511は、把持部材121の上から試験体Pの一端部を曲げ方向と逆向きに押さえる。規制部材512は、規制部材511の逆側から把持部材121に接触する。規制部材512は、規制部材511とともに、把持部材121の上から試験体Pの一端部を挟持する。これにより、試験体Pの一端部が拘束される。
【0046】
回転規制機構50の規制部材521,522は、試験体Pの他端部を把持する把持部材122に向かって伸張する。規制部材521は、把持部材122の上から試験体Pの他端部を曲げ方向と逆向きに押さえる。規制部材522は、規制部材521の逆側から把持部材122に接触する。規制部材522は、規制部材521とともに、把持部材122の上から試験体Pの他端部を挟持する。これにより、試験体Pの他端部が拘束される。
【0047】
回転規制機構50が試験体Pの両端部を拘束した状態で、引張圧縮機構20のアクチュエータ21,22を圧縮する。これにより、試験体Pに長手方向の圧縮荷重のみが負荷される。このとき、試験体Pの両端部及び把持部材121,122は、回転規制機構50によって拘束されているため、支軸121a,122a周りに回転しない。
【0048】
試験体Pに長手方向の引張荷重を負荷する場合には、引張圧縮機構20のアクチュエータ21,22を伸張させればよい。このとき、試験体Pの両端部及び把持部材121,122は、回転規制機構50によって拘束されていてもよいし、回転規制機構50の拘束から解放されていてもよい。
【0049】
曲げと引張又は圧縮との複合荷重を試験体Pに負荷する場合には、引張圧縮機構20及び曲げ機構30の双方を駆動する。すなわち、曲げ機構30の伸縮部材31,32を伸張させるとともに、引張圧縮機構20のアクチュエータ21,22を伸張させることにより、曲げ及び引張の複合荷重を試験体Pに負荷する。あるいは、曲げ機構30の伸縮部材31,32を伸張させるとともに、引張圧縮機構20のアクチュエータ21,22を圧縮することにより、曲げ及び圧縮の複合荷重を試験体Pに負荷する。このとき、試験体Pの両端部及び把持部材121,122は、回転規制機構50によって拘束されず、支軸121a,122a周りに回転可能となっている。
【0050】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る試験装置100において、把持部材121,122によって把持された試験体Pの両端部は、支軸121a,122aを中心として回転可能となっている。よって、曲げ機構30の伸縮部材31,32が伸張して試験体Pが押されたとき、試験体Pの両端部が回転して試験体Pに曲げが発生する。一方、試験装置100は、回転規制機構50を備える。この回転規制機構50は、試験体Pに圧縮のみが付与されたとき、規制部材511,521によって試験体Pを曲げ方向と逆向きに押さえる。これにより、試験体Pの両端部が支軸121a,122a周りに回転するのを規制することができ、試験体Pの座屈の発生を抑制することができる。
【0051】
本実施形態において、回転規制機構50の規制部材511,512及び規制部材521,522は、把持部材121,122の上から試験体Pを押さえる。すなわち、回転規制機構50は、試験体Pに直接接触せずに、試験体Pの両端部の回転を規制する。そのため、回転規制機構50によって試験体Pに歪みや応力が発生するのを防止することができる。よって、試験装置100を用いた試験体Pの試験において、正確な試験結果を確保することができる。
【0052】
本実施形態において、回転規制機構50は、規制部材511,512によって試験体Pの一端部を挟持し、規制部材521,522によって試験体の他端部を挟持する。これにより、試験体Pに圧縮のみを付与する際、試験体Pの両端部をしっかりと拘束することができる。よって、試験体Pの両端部の回転をより確実に規制することができ、試験体Pの座屈をさらに発生しにくくすることができる。
【0053】
本実施形態に係る試験装置100は、試験体Pの四点曲げを行う装置である。すなわち、試験装置100では、試験体Pの両端部が装置本体10に支持された状態で曲げ機構30の伸縮部材31,32が試験体Pの外周面を押すことにより、試験体Pに曲げが付与される。このような四点曲げは、試験体Pの曲げ方向を制御しやすいが、試験体Pに曲げを残留させやすい。そのため、試験装置100は、曲げ戻し機構40を備える。曲げ戻し機構40は、曲げ機構30によって曲げが付与された試験体Pを押し返し、試験体Pの曲げを確実に解消することができる。これにより、試験体Pに圧縮のみが付与された際、残留曲げに起因して試験体Pの座屈が発生するのを抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、曲げ戻し機構40の伸縮部材41,42は、試験体Pの長手方向において、曲げ機構30の伸縮部材31,32に対応する位置に配置される。よって、曲げ戻し機構40は、試験体Pのうち曲げ機構30によって押される箇所をそのまま押し返すことができる。
【0055】
本実施形態において、曲げ戻し機構40の伸縮部材41,42は、試験体Pの長手方向中央における横断面に対し、実質的に対称となるように配置される。これにより、試験体Pからバランスよく曲げを除去することができる。
【0056】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0057】
上記実施形態において、回転規制機構50は、規制部材511,512及び規制部材521,522によって把持部材121,122の上から試験体Pを押さえるように構成されている。しかしながら、回転規制機構50は、治具131,132の上から試験体Pを押さえてもよいし、試験体Pを直接押さえてもよい。回転規制機構50は、試験体Pの支軸121a,122b周りの回転を規制するよう、試験体Pを直接又は間接的に押さえることができればよい。
【0058】
上記実施形態において、回転規制機構50は、規制部材511,512及び規制部材521,522によって試験体Pを挟持する。しかしながら、回転規制機構50は、少なくとも、試験体Pの曲げ方向と逆向きに試験体Pを押さえることができればよい。回転規制機構50は、例えば、曲げ方向において試験体Pの後方に配置される規制部材512,522を有しなくてもよい。回転規制機構50は、試験体Pの各端部を3つ以上の規制部材で固定するように構成されていてもよい。
【0059】
上記実施形態において、曲げ機構30の伸縮部材31,32及び曲げ戻し機構40の伸縮部材41,42は、製造上の容易性を考慮し、試験体Pの両脇(左右)に配置される。よって、試験体Pは、曲げ機構30によって左右方向の一方側に曲げられる。しかしながら、曲げ機構30の伸縮部材31,32を試験体Pの下方に配置し、曲げ戻し機構40の伸縮部材41,42を試験体Pの上方に配置することもできる。この場合、試験体Pは、曲げ機構30によって上方に曲げられる。試験体Pが上方に曲げられる場合、回転規制機構50は、少なくとも下向きに試験体Pを押さえることができるように構成される。
【0060】
上記実施形態に係る試験装置100は、試験体Pの四点曲げを行う装置である。しかしながら、試験装置100は、試験体Pの三点曲げを行うものであってもよい。この場合、公知の三点曲げ機構を試験装置100に適用すればよい。試験装置100を三点曲げ試験装置に変更する場合、試験装置100は、曲げ戻し機構40を備えていなくてもよい。
【0061】
上記実施形態に係る試験装置100には、試験体Pの試験に必要な機構を適宜追加することができる。例えば、試験装置100は、試験体P内に流体を充満させ、試験体Pに内圧を負荷する機構をさらに備えていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100:試験装置
10:装置本体
121,122:把持部材
121a,122a:支軸
30:曲げ機構
31,32:伸縮部材
40:曲げ戻し機構
41,42:伸縮部材
50:回転規制機構
511,512,521,522:規制部材
P:試験体