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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】繰出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/04 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
A45D40/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019141793
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021023449
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-063904(JP,U)
【文献】特開2014-014527(JP,A)
【文献】特開2008-043590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00-40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部及び前記軸部の径方向外側に位置する操作筒部を有する本体部と、
前記操作筒部の径方向内側で前記本体部に対して回動可能に保持される外筒体と、
前記外筒体の径方向内側に保持され、固形内容物の収容空間を区画する内筒体と、
前記内筒体の径方向内側に保持される伝達筒体と、
前記伝達筒体の径方向内側で前記本体部に対して上下動可能に保持され、且つ、前記本体部と共に回転するよう構成された可動筒と、
前記内筒体の径方向内側で前記可動筒の上端部に保持される中皿と、を備え、
前記外筒体は、前記本体部に対する回転により上側位置と下側位置との間で上下動可能に構成されており、
前記外筒体と前記伝達筒体との間には、前記外筒体が前記上側位置にある際に前記外筒体に対する前記伝達筒体の回転を許容し、前記外筒体が前記下側位置にある際に前記外筒体に対する前記伝達筒体の回転を抑制する回転規制部が設けられており、
前記可動筒は、前記外筒体に対する回転が抑制された前記伝達筒体に対するねじ係合により上下動するように構成されていることを特徴とする繰出し容器。
【請求項2】
前記中皿は、前記可動筒に対して所定の範囲内で軸方向に移動可能に構成されている、請求項1に記載の繰出し容器。
【請求項3】
前記本体部は、前記外筒体を上方に付勢する上方付勢部を有し、
前記外筒体が最大まで下降して前記本体部と前記外筒体との間のねじ係合が一時的に解除された際に前記外筒体が上方に移動するように構成されている、請求項1又は2に記載の繰出し容器。
【請求項4】
前記本体部は、前記外筒体を下方に付勢する下方付勢部を有し、
前記外筒体が最大まで上昇して前記本体部と前記外筒体との間のねじ係合が一時的に解除された際に前記外筒体が下方に移動するように構成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の繰出し容器。
【請求項5】
前記本体部は、前記軸部と前記操作筒部との間に位置する筒壁を有し、
前記筒壁に、前記外筒体と係合する雄ねじが設けられている、請求項1~4の何れか一項に記載の繰出し容器。
【請求項6】
前記外筒体は、前記本体部の雄ねじに係合する螺合凸部と、
前記螺合凸部よりも上側に位置し、前記回転規制部を構成する内向き凸部と、
前記内向き凸部よりも上側に位置し、前記内筒体に対する前記外筒体の回転を抑制する上側凸部と、を有する、請求項1~5の何れか一項に記載の繰出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形内容物のための繰出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤または糊などの、塗布対象物に塗布可能な固形内容物を収容する容器として、筒体と、操作部を備える回転部と、固形内容物を保持する保持部と、筒体に対する保持部の回転を阻止した状態で筒体に対する保持部の昇降を許容する案内部と、回転部と保持部をねじ結合させるねじ結合部とを有し、操作部への回転操作により、ねじ結合部と保持部を介して固形内容物を筒体の上端から繰出すことができる繰出し容器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-15417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、比較的軟らかい口紅等の固形内容物に上記の繰出し容器を用いる場合、僅かな回転操作で固形内容物が大きく繰り出されたり、使用後に故意に繰り下げられたりすると、固形内容物が折れたり、傷ついたりする虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、比較的軟らかい固形内容物であっても損傷し難い構成の繰出し容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繰出し容器は、軸部及び前記軸部の径方向外側に位置する操作筒部を有する本体部と、
前記操作筒部の径方向内側で前記本体部に対して回動可能に保持される外筒体と、
前記外筒体の径方向内側に保持され、固形内容物の収容空間を区画する内筒体と、
前記内筒体の径方向内側に保持される伝達筒体と、
前記伝達筒体の径方向内側で前記本体部に対して上下動可能に保持され、且つ、前記本体部と共に回転するよう構成された可動筒と、
前記内筒体の径方向内側で前記可動筒の上端部に保持される中皿と、を備え、
前記外筒体は、前記本体部に対する回転により上側位置と下側位置との間で上下動可能に構成されており、
前記外筒体と前記伝達筒体との間には、前記外筒体が前記上側位置にある際に前記外筒体に対する前記伝達筒体の回転を許容し、前記外筒体が前記下側位置にある際に前記外筒体に対する前記伝達筒体の回転を抑制する回転規制部が設けられており、
前記可動筒は、前記外筒体に対する回転が抑制された前記伝達筒体に対するねじ係合により上下動するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
なお、本発明の繰出し容器にあっては、前記中皿は、前記可動筒に対して所定の範囲内で軸方向に移動可能に構成されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の繰出し容器にあっては、前記本体部は、前記外筒体を上方に付勢する上方付勢部を有し、
前記外筒体が最大まで下降して前記本体部と前記外筒体との間のねじ係合が一時的に解除された際に前記外筒体が上方に移動するように構成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の繰出し容器にあっては、前記本体部は、前記外筒体を下方に付勢する下方付勢部を有し、
前記外筒体が最大まで上昇して前記本体部と前記外筒体との間のねじ係合が一時的に解除された際に前記外筒体が下方に移動するように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の繰出し容器にあっては、前記本体部は、前記軸部と前記操作筒部との間に位置する筒壁を有し、
前記筒壁に、前記外筒体と係合する雄ねじが設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の繰出し容器にあっては、前記外筒体は、前記本体部の雄ねじに係合する螺合凸部と、
前記螺合凸部よりも上側に位置し、前記回転規制部を構成する内向き凸部と、
前記内向き凸部よりも上側に位置し、前記内筒体に対する前記外筒体の回転を抑制する上側凸部と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的軟らかい固形内容物であっても損傷し難い構成の繰出し容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る繰出し容器において、固形内容物を繰出す前の状態を示す断面図である。
図2図1に示す繰出し容器における本体部のベース部材を示す側面図である。
図3図1に示す繰出し容器をA-A線で切断した断面図であり、本体部の軸部と可動筒のみを示す断面図である。
図4図1に示す繰出し容器における本体部の操作筒部を示す半断面図である。
図5図1に示す繰出し容器の外筒体を示す断面図である。
図6図1に示す繰出し容器の内筒体を示す断面図である。
図7図1に示す繰出し容器の伝達筒体を示す断面図である。
図8図1に示す繰出し容器の可動筒を示す断面図である。
図9図1に示す繰出し容器の中皿を示す断面図である。
図10図1に示す繰出し容器の摺動リングを示す側面図である。
図11図1に示す繰出し容器の本体部の変形例を示す側面図である。
図12図1に示す繰出し容器の外筒体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明をより具体的に例示説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る繰出し容器1は、本体部10と、外筒体20と、内筒体30と、伝達筒体40と、可動筒50と、中皿60と、キャップ70と、摺動リング80とを備える。ここで、軸線Cは、繰出し容器1の中心軸線に一致し、且つ、本体部10に対する外筒体20の回転軸線である。また、繰出し容器1の収容空間Sに保持される固形内容物Lは、例えば口紅、リップクリーム、スティックアイシャドー等の化粧料、薬剤または糊などとすることができるが、特に限定されず、塗布対象物に塗布可能な種々のものを採用することができる。なお、固形内容物Lとは、形状を留めておける程度の堅さを有する内容物を意味し、例えば半練り状のものなど、ある程度の柔らかさのものを含む。
【0016】
本体部10は、ベース部材11と、ベース部材11に固定される操作筒部12とで構成されている。本例において、操作筒部12は、アンダーカット係合によりベース部材11の底壁13の外周縁部に固定されている。これにより、操作筒部12はベース部材11と共に回転する。なお、底壁13に対する操作筒部12の固定方法は、超音波接着または溶着等でもよい。
【0017】
図2に示すように、ベース部材11は、円板状の底壁13と、底壁13の中心に立設された軸部14と、軸部14の径方向外側で、底壁13に立設された筒壁15と、を有する。筒壁15は、軸部14と操作筒部12との間に位置している。筒壁15の外周面には、雄ねじ15aが設けられている。雄ねじ15aは、例えば二条ねじとすることができるが、これに限定されない。また、雄ねじ15aの下方において、筒壁15の外周面には、直径が大きい大径部15eが設けられている。
【0018】
また、本例では、本体部10のベース部材11に、軸部14の径方向外側で、底壁13に立設された板ばね部16(上方付勢部)が設けられている。板ばね部16は、軸線Cを挟んで周方向の2箇所に対向配置されており、筒壁15に設けられた開口部15bに配置されている。
【0019】
軸部14は、可動筒50の貫通孔51に対応する形状を有する。本例では、図3に示すように、それぞれ貫通孔51の縦溝51aに入り込む6本の縦リブ14aが設けられている。6本の縦リブ14aは、軸部14の軸線Cの周りで周方向に均等配置されており、各縦リブ14aは、軸線Cに平行に延在している。軸部14は、軸線Cに沿って直線的に延在し、高さ全体にわたって同一の横断面を有する。底壁13の外周縁部には、操作筒部12の下端部が固定される。本例では、底壁13の外周面に、ローレット部13aと係合突起13bとが設けられている。ローレット部13aは、底壁13に対する操作筒部12の回転を抑制し、係合突起13bは、底壁13に対して操作筒部12を抜け止め保持する。
【0020】
図4に示すように、操作筒部12は、下側の大径部12aと、大径部12aの上方に段差部12bを介して連なる小径部12cとを有する。小径部12cは、外周面の直径が大径部12aよりも小さい。操作筒部12は、外筒体20の径方向外側に配置される。操作筒部12の小径部12cの外周面には、キャップ70を嵌合保持するための嵌合凸部12dが設けられている。操作筒部12の下部内周面には、底壁13のローレット部13aに対応するローレット溝12fと、係合突起13bに対応する被係合突起12gが設けられている。
【0021】
図5に示すように、外筒体20は、円筒状であり、軸線Cに対して斜めに切断された形状の上端部20aと、軸線Cに対して垂直な下端部20bとを有する。本例の外筒体20は、アルミ等の金属製である。外筒体20の下端部20bには、径方向外側に延びる環状のフランジ21が設けられている。また、外筒体20の内周面には、本体部10における筒壁15の雄ねじ15aにねじ係合する螺合凸部22(雌ねじ)が設けられている。螺合凸部22は、外筒体20の周方向の一部のみに設けられている。本例では、2つの螺合凸部22が、軸線Cを挟んで対向配置されている。
【0022】
また、外筒体20の内周面には、内向き凸部23及び上側凸部24が設けられている。内向き凸部23は螺合凸部22よりも上方に位置しており、上側凸部24は内向き凸部23よりも上方に位置している。内向き凸部23及び上側凸部24は、軸線Cに平行に延在する縦リブ状であるが、これに限定されず、形状は適宜変更可能である。本例において、内向き凸部23は外筒体20の周方向の2箇所に均等に配置され、上側凸部24は外筒体20の周方向の2箇所に均等に配置されている。螺合凸部22、内向き凸部23及び上側凸部24は図示例に限定されず、軸方向位置、周方向位置、数、及び各形状は適宜変更可能である。
【0023】
なお、図12は、変形例としての外筒体120を示している。外筒体120は、合成樹脂製である。繰出し容器1において、金属製の外筒体20と合成樹脂製の外筒体120とを使い分けることで、外観等の差別化を図ることができる。例えば、金属製の外筒体20を用いた場合には、繰出し容器1に高級感を持たせることができる。図12に示す外筒体120には、U字状の切欠き溝25、26、27によって弾性変形可能な弾性片25a、26a、27aが形成されている。螺合凸部22、内向き凸部23及び上側凸部24はそれぞれ、弾性片25a、26a、27aの内面に設けられている。弾性片25a、26a、27aが外筒体120の径方向外側に弾性変形することで、内筒体30及び伝達筒体40の外側に外筒体120を配置する作業が容易となる。弾性片25a、26a、27aが外筒体120の径方向外側に弾性変形することで、外筒体120の射出成形後に金型から外筒体120を取り外し易くなる。すなわち、弾性片25a、26a、27aを設けることで、外筒体120の成形が容易となる。
【0024】
図1に示すように、内筒体30は、外筒体20の径方向内側に保持され、中皿60とともに固形内容物Lの収容空間Sを区画する。図6に示すように、内筒体30は円筒状であり、外筒体20と同様に軸線Cに対して斜めに切断された上端部30aと、軸線Cに対して垂直な下端部30bとを有する。また、内筒体30は、内筒本体部31と、内筒本体部31の下側に連なり、内筒本体部31よりも外周面の直径が小さい小径部32と、を有する。内筒本体部31の外周面には、外筒体20の上側凸部24に対応する縦溝状の凹部33が設けられている。縦溝状の凹部33は、内筒本体部31の下端面に開口する切欠き状に構成されている。凹部33は、外筒体20の上側凸部24に対応して、内筒体30の周方向の2箇所に均等に配置されている。小径部32の内周面には、伝達筒体40に係合する爪部34が設けられている。本例の小径部32は、軸線Cを挟んで対向配置された2つの壁部で構成されているが、これに限られず、周方向に間欠しない筒形状であってもよいし、周方向に間隔を空けて形成された3以上の壁部で構成されていてもよい。
【0025】
外筒体20と内筒体30との間には、相対的な回転を抑制する回転抑制部が設けられている。これにより、外筒体20と内筒体30とは共に回転する。本例において、外筒体20と内筒体30との間の回転抑制部は、外筒体20の内周面に設けた上側凸部24と、内筒体30に設けた凹部33とで構成されている。すなわち、外筒体20の上側凸部24が内筒体30の凹部33に入り込むことにより、外筒体20と内筒体30との間の相対的な回転が抑制される。なお、外筒体20は、外筒体20の上側凸部24が凹部33の上端に到達するまでの範囲内で、内筒体30に対して上下動可能に配置されている。
【0026】
図7に示すように、伝達筒体40は、円筒状であり、内筒体30の径方向内側、且つ、可動筒50の径方向外側に保持される。伝達筒体40の下部は、本体部10の筒壁15の径方向内側に配置される。また、伝達筒体40は、中皿60よりも下方に配置される。
【0027】
伝達筒体40の内周面には、逆ねじ形式(外筒体20の螺合凸部22とは逆向き)の雌ねじ41が設けられている。雌ねじ41は、伝達筒体40の上部のみに設けられている。なお、本例において伝達筒体40の上部には、軸線Cを挟んで対向配置された切欠き42が形成されており、雌ねじ41は、当該切欠き42により区画された可動片43の内周面に設けられている。可動片43は、径方向内側及び外側に弾性変形可能な弾性片を構成している。
【0028】
伝達筒体40の外周面には、環状の係合溝44と、係合溝44の下方の外向き凸部45(回転規制部)と、外向き凸部45の下方の爪部46とが設けられている。係合溝44は、軸線Cに沿う軸方向(上下方向)の中間部に設けられている。係合溝44の下側面は、内筒体30の下端部の下方に配置され、内筒体30の下端部と上下方向に係合可能である。爪部46は、開口部15bが設けられた筒壁15の下端に下方から係合する。これにより、本体部10(筒壁15)に対する伝達筒体40の上方移動が抑制される。
【0029】
外向き凸部45は、伝達筒体40の周方向の4箇所に均等配置されている。外向き凸部45の上部には、伝達筒体40の周方向の一方側に向けて斜めに延在する傾斜面45aが形成されている。このような傾斜面45aを設けることにより、伝達筒体40に対して相対的に回転しながら上下動する外筒体20との不要な干渉を防ぐことができ、外筒体20の移動をよりスムーズにすることができる。
【0030】
外向き凸部45は、内向き凸部23とともに回転規制部を構成する。外筒体20が上側位置にある際には、外向き凸部45と内向き凸部23とが係合しないため、外筒体20に対する伝達筒体40の回転が許容される。一方で、外筒体20が下側位置にある際には、外向き凸部45と内向き凸部23とが係合して、外筒体20に対する伝達筒体40の回転が抑制される。これにより、伝達筒体40は、外筒体20が上側位置にある際には外筒体20に対する回転が許容され、外筒体20が下側位置にある際には外筒体20に対する回転が抑制される。なお、回転規制部は、外筒体20と伝達筒体40との間に設けられ、外筒体20が上側位置にある際に外筒体20に対する伝達筒体40の回転を許容し、外筒体20が下側位置にある際に外筒体20に対する伝達筒体40の回転を抑制するものであればよく、本例の内向き凸部23及び外向き凸部45に限定されない。
【0031】
伝達筒体40の下部には、スリット47が形成されている。スリット47は、軸線Cに平行に直線状に延在し、伝達筒体40の下端に開口している。また、スリット47は、外向き凸部45の下側に位置しており、また、伝達筒体40の周方向の2箇所に均等配置されている。なお、係合溝44の上側面は、環状の被係合部48を構成している。
【0032】
図8に示すように、可動筒50は、円筒状であり、本体部10の軸部14の径方向外側、且つ、伝達筒体40の径方向内側に配置される。可動筒50は、本体部10の軸部14に対して上下動可能であり、且つ、軸部14に対する回転を抑制された状態で保持される。
【0033】
可動筒50の中心には貫通孔51が形成されている。貫通孔51は、可動筒50と軸部14との相対的な回転を抑制する縦溝51aを有する。本例では、6本の縦溝51aが可動筒50の周方向に均等に配置されている。軸部14に対する相対的な回転を抑制することができれば、貫通孔51及び軸部14の形状は特に限定されない。すなわち、例えば、貫通孔51及び軸部14は、断面が多角形等の非円形であればよい。
【0034】
可動筒50の外周面には逆ねじ形式(本体部10の筒壁15の雄ねじ15aとは逆向き)の雄ねじ52が設けられている。雄ねじ52は、伝達筒体40の雌ねじ41とねじ係合するものであり、本体部10の筒壁15の雄ねじ15aよりもピッチが小さくなっている。雄ねじ52及び雌ねじ41のピッチを小さくすることにより、固形内容物Lの繰り上げ量の微調整が容易となる。なお、例えば、筒壁15の雄ねじ15aのピッチを3mmとすることができ、可動筒50の雄ねじ52のピッチを0.5mmとすることができる。また、雄ねじ52は、例えば一条ねじとすることができるが、これに限定されない。
【0035】
可動筒50の上端部には、中皿60を保持するための保持凸部53が設けられている。保持凸部53の下方には、環状の小径部54が形成されている。小径部54は、可動筒50の他の部分に比べて外面の直径が小さくなっている。
【0036】
図1に示すように、中皿60は、内筒体30の径方向内側で内筒体30に対して上下動可能に配置されている。中皿60の下方には可動筒50が配置され、中皿60は、可動筒50によって上方に押し上げ可能に配置されている。図9に示すように、中皿60は、円板状の頂壁61と、頂壁61から垂下する円環状の外壁62と、外周壁の径方向内側に位置する内壁63とを有する。内壁63の内周面には、爪部64が形成されている。
【0037】
中皿60は、内壁63の内側には、可動筒50の保持凸部53及び小径部54が配置される。爪部64と保持凸部53とが係合することにより、中皿60が可動筒50に対して抜け止め保持される。なお、本例の中皿60は、可動筒50に対して所定の範囲で上下動可能に保持される。図1に示す状態で、爪部64と保持凸部53とは、軸方向に間隔Gを空けて配置されている。これにより、可動筒50が下降した場合でも、爪部64と保持凸部53とが接触するまでは中皿60は下降しない。
【0038】
キャップ70は有頂円筒状をなしており、本体部10における操作筒部12の小径部に取外し可能に取付けられることで、固形内容物L及び外筒体20等を覆うことができる。
【0039】
図10に示すように、摺動リング80は、円環状の上リング81と、円環状の下リング82と、上リング81及び下リング82の間に設けられたクランク状のばね部83(下方付勢部)とを有する。上リング81の外周面には、環状の凸部81aが設けられている。凸部81aは、操作筒部12の内周面の凸部12eに係合する。摺動リング80の上リング81及び下リング82により、操作筒部12に対する外筒体20の径方向の位置が安定し易くなる。これにより、外筒体20の上下動がより円滑に行われ、動作が安定し易くなる。ばね部83は、軸線Cに垂直な水平部83aと水平部83aの両端にそれぞれ連なる垂直部83b、83cとを有し、垂直部はそれぞれ上リング81及び下リング82に連結している。なお、本例では、2本のばね部83が周方向に均等配置されているが、ばね部83の形状、数、配置は適宜変更可能である。
【0040】
摺動リング80は、操作筒部12の大径部12aの径方向内側、且つ、外筒体20の径方向外側に配置される。また、摺動リング80は、外筒体20のフランジ21の上方、且つ、操作筒部12の内面段差部12hの下方に配置される。摺動リング80は、外筒体20が本体部10の操作筒部12に対して上昇した際に、外筒体20を下方に付勢するように構成されている。これにより、外筒体20が本体部10に対して最大まで上昇し、雄ねじ15aに対する螺合凸部22の係合が外れた際には、雄ねじ15aに対して螺合凸部22が係合するまで摺動リング80のばね部83によって外筒体20が押下げられることとなる。その結果、外筒体20が上昇する方向に、操作筒部12を回転させ続けると、外筒体20は上側の領域で上下動を繰り返すこととなる。
【0041】
ここで、板ばね部16は、外筒体20が本体部10に対して下降した際に、外筒体20を上方に付勢するように構成されている。これにより、外筒体20が本体部10に対して最大まで下降し、雄ねじ15aに対する螺合凸部22の係合が外れた際には、雄ねじ15aに対して螺合凸部22が係合するまで、板ばね部16によって外筒体20が押上げられることとなる。その結果、外筒体20が下降する方向に操作筒部12を回転させ続けると、外筒体20は下側の領域で上下動を繰り返すこととなる。
【0042】
なお、図11は、本体部10の変形例を示している。図11に示す例では、摺動リング80及び板ばね部16を設ける代わりに、雄ねじ15aの両側の終端部に、それぞれ戻り経路15c、15dを設けている。これにより、外筒体20が本体部10に対して最大まで上昇した際には、螺合凸部22が戻り経路15cに沿って移動するため、上記摺動リング80を設けた場合と同様に外筒体20が一時的に下降し、螺合凸部22が戻り経路15cを通過した後は再び上昇する。すなわち、外筒体20が上昇する方向に、操作筒部12を回転させ続けると、外筒体20は上側の領域で上下動を繰り返す。また、外筒体20が本体部10に対して最大まで下降した際には、螺合凸部22が戻り経路15dに沿って移動するため、板ばね部16を設けた場合と同様に、外筒体20が一時的に上昇し、螺合凸部22が戻り経路15dを通過した後は再び下降する。すなわち、外筒体20が下降する方向に操作筒部12を回転させ続けると、外筒体20は下側の領域で上下動を繰り返す。
【0043】
以下に、繰出し容器1を構成する各部材のセット方法(組立て方法)の一例について説明する。先ず、ベース部材11に、伝達筒体40を取り付ける。その際、ベース部材11の軸部14を伝達筒体40に通し、伝達筒体40の下部を、筒壁15の内側に差し込む。本例では、伝達筒体40の下部にスリット47が形成されているため、伝達筒体40の下端部側が径方向内側に弾性変形し易くなっており、容易に伝達筒体40の下部を筒壁15の内側に差し込むことができる。なお、伝達筒体40の下端部側が径方向内側に弾性変形する際に、伝達筒体40の爪部46同士が干渉しないように、爪部46の周方向の端部には面取り部を設けておくことが好ましい。また、図1に示すように、組立てが完了した状態においては、伝達筒体40の下部が、可動筒50と筒壁15とによって径方向の内外両側から挟まれて変形し難くなるため、伝達筒体40の爪部46は筒壁15に強固に係合する。
【0044】
次いで、ベース部材11に可動筒50を取り付ける。ベース部材11の軸部14を可動筒50に通しつつ、可動筒50を伝達筒体40の内側に差し込む。本例では、伝達筒体40の上部に切欠き42が形成されており、雌ねじ41を有する可動片43が径方向外側に弾性変形することで、容易に可動筒50を伝達筒体40の内側に差し込むことができる。
【0045】
次いで、予め外筒体20を外側に取り付けた内筒体30を伝達筒体40の外側に取り付ける。内筒体30の爪部34が、伝達筒体40の被係合部48に係合することにより、内筒体30は伝達筒体40に対して抜け止め保持される。なお、外筒体20の内側に内筒体30をセットする際には、上側凸部24と凹部33の周方向位置が合うようにしつつ、外筒体20の上端部20aの開口から内筒体30を挿入する。
【0046】
次いで、中皿60を内筒体30の内側に差し込み、可動筒50の上端部に中皿60を取り付ける。そして、摺動リング80を内側に取り付けた操作筒部12をベース部材11の底壁13にアンダーカット係合等により固定する。さらに、収容空間Sに固形内容物Lを充填し、最後に、操作筒部12にキャップ70を取り付けることで、図1に示す状態となる。このように、本実施形態の繰出し容器1は、容易に組立てることができる。なお、繰出し容器1の組立ての順序は上記方法に限定されず、適宜変更可能である。
【0047】
以下に、繰出し容器1の使用方法について説明する。繰出し容器1から固形内容物Lを繰出す際には、図1に示す状態からキャップ70を取り外し、外筒体20を把持して操作筒部12(本体部10)を一方向(繰り出し方向)に回転させる。外筒体20に対して操作筒部12を回転させると、操作筒部12と共に筒壁15及び軸部14が回転し、軸部14と共に可動筒50が回転する。また、本体部10が回転すると、筒壁15の雄ねじ15aと外筒体20の螺合凸部22との係合(螺合)により、外筒体20が操作筒部12及び本体部10に対して下方に移動する。外筒体20が下側位置まで下降すると、回転規制部としての内向き凸部23と外向き凸部45とが係合することにより、外筒体20に対する伝達筒体40の回転が抑制される。そのため、本体部10の操作筒部12と共に回転する可動筒50が、伝達筒体40に対して回転し、可動筒50が伝達筒体40及び本体部10に対して上昇する。その結果、可動筒50とともに中皿60及び固形内容物Lが上昇し、固形内容物Lが内筒体30の上端部30a及び外筒体20の上端部20aから繰り出される。上記のように、本例の繰出し容器1において固形内容物Lを繰出す際には、外筒体20が所定の距離だけ下降してから固形内容物Lの上昇が開始される。
【0048】
より具体的に、本例の繰出し容器1では、図1に示す状態からキャップ70を取り外し、最初に外筒体20に対して操作筒部12を1回転させると、外筒体20が本体部10に対して3mm下降して、下側位置となる。その後、さらに操作筒部12を同一方向に回転させると、本体部10の雄ねじ15aと外筒体20の螺合凸部22との係合が一時的に解除され、外筒体20は板ばね部16に押し上げられて1.5mm上昇し、雄ねじ15aと螺合凸部22とが再び係合する。さらに操作筒部12を同一方向に回転させると、外筒体20は本体部10に対して1.5mm下降し、再び1.5mm上昇する、ということを繰り返す。なお、このように操作筒部12を繰り出し方向に回転させることで外筒体20が下側の領域で上下動を繰り返す際には、伝達筒体40の雌ねじ41と可動筒50の雄ねじ52とが係合して可動筒50が中皿60及び固形内容物Lと共に上方に移動し続ける。
【0049】
また、固形内容物Lを繰出して塗布対象物に塗布した後で、操作筒部12を繰り出し方向とは逆の繰り下げ方向に回転させると、筒壁15の雄ねじ15aと外筒体20の螺合凸部22との係合により、外筒体20が操作筒部12及び本体部10に対して上昇する。例えば、本例では1/4回転で外筒体20が0.75mm上昇する。このように外筒体20が本体部10に対して上昇する過程で、内向き凸部23と外向き凸部45とが係合している間は外筒体20に対する伝達筒体40の回転が抑制されるため、可動筒50が伝達筒体40及び本体部10に対して下降する。しかしながら、中皿60の爪部64と可動筒50の保持凸部53との間には間隔Gが設けられているため、可動筒50が本体部10に対して下降した際、爪部64と保持凸部53とが接触するまでは中皿60は下降しない。すなわち、操作筒部12を繰り下げ方向に回転させても、中皿60及び固形内容物Lが直ちに繰り下げられることはない。
【0050】
そして、操作筒部12をさらに繰り下げ方向に回転させると、外筒体20が上側位置まで上昇して、内向き凸部23と外向き凸部45との係合が解除される。例えば、本例では、上記1/4回転後の3/4回転で外筒体20がさらに2.25mm上昇する。これにより、外筒体20に対する伝達筒体40の回転が許容される。すなわち、外筒体20に対して伝達筒体40が空転し、可動筒50と伝達筒体40とが相対的に回転しなくなるため、それ以上操作筒部12を繰り下げ方向に回転させても、可動筒50は下降しない。これにより、操作筒部12を繰り下げ方向に回転させても、中皿60及び固形内容物Lが繰り下げられず、一定の高さで停止した状態となる。なお、本例では、操作筒部12を繰り下げ方向に上記1/4回転及び3/4回転させたことにより、合計で外筒体20が3mm上昇した後、さらに操作筒部12を繰り下げ方向に回転させると、外筒体20は摺動リング80のばね部83に押下げられることによる1.5mmの下降と、雄ねじ15aと螺合凸部22との係合による1.5mmの上昇を繰り返す。このように操作筒部12を繰り下げ方向に回転させることで外筒体20が上下動する際には、外筒体20に対して伝達筒体40が空転し、可動筒50と伝達筒体40とが相対的に回転しないため、中皿60及び固形内容物Lは停止した状態となっている。
【0051】
以上のように、本実施形態の繰出し容器1にあっては、外筒体20が上側位置にある際には可動筒50が上下動せず、外筒体20が下側位置にある際には可動筒50が上下動する構成としている。これにより、固形内容物Lを繰出す際には、外筒体20が下側位置となるまで操作筒部12を回転させることが必要となるため、僅かな回転操作で固形内容物Lが大きく繰り出されることがなくなる。また、使用後に繰り下げ方向に操作筒部12を回転させても、外筒体20が上側位置まで上昇すると固形内容物Lが繰り下げられなくなる。すなわち、使用時には固形内容物Lは少しずつ繰り出されることとなり、且つ、使用後には故意に繰り下げられることを抑制することができる。その結果、比較的軟らかい固形内容物Lであっても、固形内容物Lが使用過程で折れたり、傷ついたりし難くなる。
【0052】
また、本実施形態の繰出し容器1にあっては、中皿60が、可動筒50に対して所定の範囲内で軸方向に移動可能な構成としたことで、固形内容物Lがさらに繰り下げられ難くなる。これにより、固形内容物Lの損傷を抑制する効果を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態の繰出し容器1にあっては、外筒体20が最大まで下降して本体部10と外筒体20との間のねじ係合が一時的に解除された際に、外筒体20が上方付勢部(板ばね部16)によって上方に移動する構成としている。このような構成により、本体部10と外筒体20とが確実にねじ係合するため、操作筒部12の回転に伴う外筒体20の動作の安定性を高めることができる。また、当該構成により、固形内容物Lを繰出す過程で外筒体20が上下動を繰り返すことになるため、固形内容物Lの繰出し量を微調整し易くなり、固形内容物Lの損傷を抑制する効果を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態の繰出し容器1にあっては、板ばね部16をベース部材11の底壁13に一体連結して形成(一体成形)したことにより、部品数を削減することができる。
【0055】
また、本実施形態の繰出し容器1にあっては、外筒体20が最大まで上昇して本体部10と外筒体20との間のねじ係合が一時的に解除された際に、外筒体20が下方付勢部(ばね部83)によって、下方に移動する構成としている。このような構成により、本体部10と外筒体20とが確実にねじ係合するため、操作筒部12の回転に伴う外筒体20の動作の安定性を高めることができる。
【0056】
また、本実施形態の繰出し容器1にあっては、操作筒部12に対する外筒体20の径方向位置を安定させるための上リング81及び下リング82と、外筒体20を下方に付勢するためのばね部83とを一体物として形成(一体成形)したことにより、部品数を削減することができる。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0058】
例えば、前記の実施形態では、キャップ70が本体部10にアンダーカット係合により保持される構成としているが、ねじ係合により保持される構成としてもよい。また、本体部10を構成するベース部材11及び操作筒部12、並びに、外筒体20、内筒体30、伝達筒体40、可動筒50、中皿60、キャップ70、摺動リング80はそれぞれ合成樹脂製とすることができるが、これに限らず種々の材質を採用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:繰出し容器
10:本体部
11:ベース部材
12:操作筒部
12a:大径部
12b:段差部
12c:小径部
12d:嵌合凸部
12e:凸部
12f:ローレット溝
12g:被係合突起
12h:内面段差部
13:底壁
13a:ローレット部
13b:係合突起
14:軸部
14a:縦リブ
15:筒壁
15a:雄ねじ
15b:開口部
15c、15d:戻り経路
15e:大径部
16:板ばね部(上方付勢部)
20:外筒体
20a:上端部
20b:下端部
21:フランジ
22:螺合凸部(雌ねじ)
23:内向き凸部(回転規制部)
24:上側凸部
30:内筒体
30a:上端部
30b:下端部
31:内筒本体部
32:小径部
33:凹部
34:爪部
40:伝達筒体
41:雌ねじ
42:切欠き
43:可動片
44:係合溝
45:外向き凸部(回転規制部)
46:爪部
47:スリット
48:被係合部
50:可動筒
51:貫通孔
51a:縦溝
52:雄ねじ
53:保持凸部
54:小径部
60:中皿
61:頂壁
62:外壁
63:内壁
64:爪部
70:キャップ
80:摺動リング
81:上リング
82:下リング
81a:摺動凸部
83:ばね部(下方付勢部)
C:軸線
G:間隔
L:固形内容物
S:収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12