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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】肌質改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/341 20060101AFI20230710BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230710BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230710BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230710BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K31/341
A61K31/045
A61P43/00 121
A61P17/00
A61P17/16
A61K9/20
A61K8/49
A61K8/34
A61Q19/00
A23L33/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019165281
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021042162
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】303044712
【氏名又は名称】三井農林株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大野 敦子
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197476(JP,A)
【文献】特開2019-058128(JP,A)
【文献】国際公開第2008/143145(WO,A1)
【文献】特開2006-045105(JP,A)
【文献】特開2001-207188(JP,A)
【文献】特開2019-140950(JP,A)
【文献】日本食品科学工学会誌,2017年,Vol. 64, No. 6,pp. 294-301
【文献】茶業研究報告,1967年,Vol. 28,pp. 87-93
【文献】茶業研究報告,1967年,Vol. 28,pp. 93-97
【文献】茶業研究報告,1970年,Vol. 32,pp. 53-62
【文献】コーヒーと紅茶、美容にいいのはどっち? [online],jobikai,[令和5年6月13日検索],2018年03月31日,インターネット<URL:https://jobikai.com/recipe-1111>
【文献】J. Agric. Food Chem.,2001年,Vol. 49,pp. 5391-5396
【文献】LWT - Food Science and Technology,2018年,Vol. 94,pp. 178-189
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 8/00- 8/99
A23L 33/00-33/29
C11B 9/00- 9/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコールおよびゲラニオールを有効成分として含有する肌質改善剤。
【請求項2】
ホトリエノールの濃度が0.0001質量%~10.0質量%である請求項に記載の肌質改善剤。
【請求項3】
肌保湿用又は肌色改善用である、請求項1又は2に記載の肌質改善剤。
【請求項4】
肌質改善作用が角質層水分量の改善、肌色の明るさの改善及び肌の赤みの抑制から選ばれる1以上である請求項1~3のいずれかに記載の肌質改善剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の肌質改善剤を含有する、肌質改善用経口剤。
【請求項6】
肌質改善用経口剤がタブレットである請求項1~5のいずれかに記載の肌質改善用経口剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホトリエノール、フラネオール(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン)、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオールから選ばれる1以上の香気成分を含有する肌質改善剤に関する。また、本発明は肌質改善効果を有する経口剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、睡眠不足、ストレス過多の生活のなかで、日常のスキンケアをしているにも関わらず、肌のかさつき、血行不良、ハリの低下、ニキビの悪化などの肌トラブルが頻発し、女性を中心に大きな悩みとなっている。
そこで、肌質改善を目的として、日常のスキンケアに加えて、高濃度の化粧料あるいは保湿剤を用いた方法が一般的に用いられているが、これらには肌に合わない、べたべた感が残る、洗顔または汗で機能成分が取れてしまう(落ちる)等の欠点がある。一方、肌の改善を目的とした様々な機能性成分または栄養成分をサプリメントとして摂取する方法が開発されているが、消化吸収等を経るため効果の発現までに時間がかかる点、風味や価格の点、過剰摂取による副作用が懸念される点でまだまだ問題がある。
【0003】
近年、「香り」の機能性の活用として、手軽に利用でき、副作用が比較的少ない方法として、肌の改善に対して有効とされる香料が開示されている。例えば、特許文献1には4-メトキシスチレン、クラリセージの抽出物、日本薄荷の抽出物、ジュニパーベリーの抽出物、ジヒドロ-β-イオノール、ゲラニオールから選ばれる1種以上からなる皮膚温度上昇剤、特許文献2にはリナロール、ゲラニオール、シトラール、シトラールジメチルアセタール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、並びにこれらのエステルおよび塩からなる群から選択される少なくとも一つのモノテルペン化合物を有効成分とする皮膚の血流を促進して皮膚状態を改善する方法、特許文献3にはフェネチルアルコールを有効成分とする皮膚バリアー機能回復促進剤、特許文献4には、アニスアルデヒドを含むことを特徴とする肌色改善香料組成物、特許文献5には、ジメトキシベンゼン及び/又はトリメトキシベンゼンからなる肌荒れ改善剤、特許文献6にはリナロールによる皮膚代謝促進が開示されている。
【0004】
紅茶に含まれる香気成分である3,7-ジメチル-1,5(E),7-オクタトリエン-3-オール(ホトリエール)に関して、特許文献7及び特許文献8にはホトリエールを含有する香料組成物、また特許文献9にはホトリエールとアスコルビン酸類を含有し、ホトリエールの含有量が10ppb以上である茶飲料が開示されている。
さらに、同じく紅茶に含まれる香気成分であるβ-フェニルエチルアルコールについては、特許文献10に、ストレス緩和剤としても利用されていることが開示されている。
フラネオールについては、特許文献11及び特許文献12に茶飲料用の添加剤として利用されていること、また特許文献13にリラックス効果について開示されている。
【0005】
従来の香気成分による肌質改善方法において、皮膚へ直接的に塗布する方法では、従来の化粧料や保湿剤同様洗顔、汗等で有効成分が取れやすいという問題がある。一方、吸気による方法ではディフューザー等の特別な器具が必要であり、拡散する香気を取り入れるためにはその付近にとどまっていなければならず、日中の活動のなかでは有効成分を効率よく摂取することは難しかった。
また、経口摂取する方法では、従来の香気成分を鼻から摂取する場合と比較し、鼻腔のみならず、摂取直後あるいは摂取後の口腔内に残る香気からも有効成分を持続的に吸収することができるが、そのため香気成分の嗜好性に影響されやすく、薬のような香りや刺激的な香りでは継続摂取に課題があった。
【0006】
一方、紅茶の香気成分は、食品等の香料として利用されているが、肌質改善効果については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開公報2011/152006号
【文献】特開2009-13937号公報
【文献】特開2000-159666号公報
【文献】特開2004-175951号公報
【文献】特開2010-143884号公報
【文献】特開2005-206596号公報
【文献】特開2000-192073号公報
【文献】特開2002-275494号公報
【文献】特開2009-089641号公報
【文献】特開2001-49286号公報
【文献】特開2008-148604号公報
【文献】特開2007-167003号公報
【文献】特開2019-023172号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】最新 香料の事典、荒井綜一他編、朝倉書店発行(2000年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は上記のような事情に鑑み、より手軽で効率のよい経口用の肌質改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオールから選ばれる1以上を含有する香気成分に肌質改善効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオールから選ばれる1以上の香気成分を含有する肌質改善剤、
[2]ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール及びゲラニオールから選ばれる1以上を合計で0.001質量%以上50質量%を含有する[1]に記載の肌質改善剤、
[3]ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコールおよびゲラニオールを含有する肌質改善剤、
[4]ホトリエノールの濃度が0.0001質量%~10.0質量%である[1]~[3]のいずれかに記載の肌質改善剤、
[5]肌保湿用又は肌色改善用である、[1]~[4]のいずれかに記載の肌質改善剤、
[6]肌質改善作用が角質層水分量の改善、肌色の明るさの改善及び肌の赤みの抑制から選ばれる1以上である[1]~[5]のいずれかに記載の肌質改善剤、
[7][1]~[6]のいずれかに記載の肌質改善剤を含有する、肌質改善用経口剤、
[8]肌質改善用経口剤がタブレットである[1]~[7]のいずれかに記載の肌質改善用経口剤、
[9]ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール及びゲラニオールから選ばれる1以上の香気成分を経口摂取することを特徴とする肌質改善方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の肌質改善剤は、経口剤として摂取した場合、表皮の最外層を構成する角質層の水分量を改善し、肌色、特に肌の明るさの改善、および赤みの抑制に有効である。中でも乾燥しやすい肌に対して効果を発揮し、肌の水分量が増えることで保湿効果が期待でき、乾燥が原因で起こる肌の赤み(炎症)を抑制することができる。また、肌の機能が不調である際の改善効果のみならず、肌の機能の低下を予防する効果も奏する。さらに、喫食経験が豊富で、安全性の高い紅茶の香気成分にも含有されている香気成分であることから、嗜好性の点でも問題なく、経口剤として継続的に、また手軽に使用することができる。
さらに、本発明の肌質改善剤の有効成分であるホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコールおよびゲラニオールは神経伝達系を経て効果がもたらさせるので、身体の内部からの肌質改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】角質層の水分変化量を示す。sampleは試験品A,placeboは試験品Bを示す。
図2】皮膚色L*の変化(ΔL*)を示す。sampleは試験品A,placeboは試験品Bを示す。
図3】皮膚色a*の変化(Δa*)を示す。sampleは試験品A,placeboは試験品Bを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において本発明を詳細に説明する。
本発明の肌質改善剤は、ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオールから選ばれる1以上の香気成分を有効成分として含む。なお、これらにより改善される肌の部位は、特に制限はされないが、例えば顔、首、背中、肩、胸、腹、手、足等が挙げられ、特に顔への効果が期待できる。なお、本明細書において「肌」は、「皮膚」と区別せずに用いられる。
【0015】
本発明の「肌質改善」とは、角質層水分量の改善、肌の色の明るさの改善、肌の赤みの抑制から選らばれる1以上のものを示す。肌の赤みは、乾燥による炎症が原因と言われ、赤みが抑制されていることは、肌表面の炎症が抑制されていることを示している。
その他、肌のキメを整えること、化粧のりをよくすること、吹き出物を抑制すること、または肌のたるみ、くすみを抑制するなどの改善効果も挙げられる。
【0016】
以下、本発明における実施形態の肌質改善剤について詳細に説明する。
〈ホトリエノールについて〉
ホトリエノール(hotrienol:3,7-ジメチルオクタ-1,5,7-トリエン-3-オール)は、華やかで芳醇かつ重厚な花香であり、その合成方法としては、例えば特開2004-107207号公報や特開2000-192073号公報に記載の方法が例示できる。これらの方法で得られたものを利用しても良い。
〈フラネオールについて〉
フラネオール(furaneol:フィルメニッヒ社の商標、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン)は、フルーティーでカラメル様香気を有する。パイナップル、ストロベリータイプのフレーバーなどに使用される(非特許文献1最新 香料の事典、荒井綜一他編、朝倉書店発行(2000年))。
〈2-フェニルエチルアルコールについて〉
2-フェニルエチルアルコール(2-phenylethylalcohol)は、穏やかなローズ様香気を有する香料として知られている。例えば、ローズ等の精油から、常法により単離精製して、本発明において用いることが可能である。
〈ゲラニオールについて〉
ゲラニオール(geraniol)は、ローズ様香気を有する香料として知られている。本発明においては、例えば、紅茶葉の留出液から単離精製したものを利用しても良い。
以上の香気成分は、化学合成されたものであってもよく、市販品を適宜混合したものであってもよい。また、利用しやすさから、通常用いられる方法(スプレードライ等)で粉末状としてもよい。
【0017】
本発明の肌質改善剤の有効成分であるホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオールは、紅茶葉由来の香気成分を利用してもよい。また茶葉由来の香気成分を採用する場合は、実質的にはポリフェノール(タンニン)を含まないことを特徴とする。
【0018】
原料として使用し得る紅茶葉としては、ダージリン、アッサム、ニルギリ、ケニア、キーモン、ラプサンスーチョン、ヌワラエリア、ウバ、ディンブラ等が挙げられるが、中でもダージリンがより好ましく挙げられる。なお、一般的に流通している紅茶葉を原料として使用することも可能である。
【0019】
紅茶葉から香気成分の製造方法としては、紅茶葉から減圧蒸留、水蒸気蒸留、吸着剤への吸着脱着等の抽出処理により調製する方法が挙げられる。例えば、紅茶葉を熱水又は温水に投入して抽出液を得た後、常圧下又は減圧下加熱による蒸留工程で発生した蒸気水を回収することにより、紅茶葉に含まれる香気成分を得ることができる。
【0020】
水蒸気蒸留法により、紅茶葉より本発明の肌質改善剤を製造することもできる。水蒸気蒸留法は、紅茶葉又は紅茶葉を含む水溶液に水蒸気を吹き込み、水蒸気と共に揮発した香気成分を冷却・液化して留出液として回収する方法であり、常圧水蒸気蒸留、加圧水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留等の方法を例示することができる。水蒸気は、飽和水蒸気又は過熱水蒸気のいずれを用いても良い。注入する水蒸気の温度や流量、水蒸気の冷却温度、留出液量等は原料茶葉の種類に応じて任意に設定することができ、水蒸気の温度は40~110℃、流量は原料茶葉1kg当たり0.2~20kg/hr、冷却温度は-10~70℃、留出液量は茶葉1kg当たり0.5~2.5kg等が例示できるが、この範囲に限定されるものではない。
その他の本発明における香気成分の製造方法としては、紅茶葉より、超臨界水又は超臨界二酸化炭素を用いた超臨界抽出法を例示することができる。
【0021】
得られた香気成分を、さらに常圧下又は減圧下精留することにより、より高濃度の香気成分として得ることができる。さらに、逆浸透膜等の非加熱濃縮法により濃縮し、窒素置換等で気中の酸素濃度を低くしたうえで冷凍保存することで、保存性を高めることができる。
また、得られた香気成分は、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法を用いて精製されたものであってもよいし、精製されていない濃縮物であってもよい。
このようにして得られた香気成分は、通常利用される方法(スプレードライ等)で粉末状とし、ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコールまたはゲラニオールの粉末香料を有効濃度になるように添加し、適宜調製して経口剤することによって本発明の肌質改善剤とすることができる。
【0022】
本発明において「紅茶葉由来」の意味は、「紅茶葉に含まれる」ことを意味し、したがって、「紅茶葉由来の香気成分」とは、紅茶葉に含まれる香気成分であり、紅茶葉から上記方法に従って、抽出されたものであってもよく、すでに精製されている市販品を適宜混合したものであってもよく、化学合成されたものであってもよく、また、所望する香気組成となるよう紅茶葉から抽出したものに市販の又は化学合成された香気成分を加えて濃度調整したものであってもよい。そのような調整を専門メーカーに委託加工したものであってもよい。
【0023】
本発明の肌質改善剤は、ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオールから選ばれる1以上を有効成分として含有する。
肌質改善剤は、有効成分のみで構成されていてもよく、効果を妨げない範囲であれば、助剤、添加剤等の任意の他の成分を含有してもよい。添加剤等を適宜選択して、肌質改善剤に含有させれば、肌質改善剤を医薬品、医薬部外品、食品、飲料、化粧料、雑貨等に使用することができる。
【0024】
本発明において、効果が期待できる肌質改善剤中の有効成分の含有量は特に限定されるものではないが、0.001質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.008質量%以上5質量%以下である。
特に、ホトリエノールが、肌質改善剤中に0.0001質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは0.0007質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以上1.0質量%である。
また、フラネオールが、肌質改善剤中に0.0001質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは0.0007質量%以上5質量%、さらに好ましくは0.001質量%以上0.5質量%である。
さらに、肌質改善剤中の有効成分としてホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコールおよびゲラニオールのすべてを含むものも例示でき、この場合ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール、又はゲラニオールの配合比は、ホトリエノール1重量部に対してフラネオールが0.5~2重量部、2-フェニルエチルアルコールが1~6重量部、ゲラニオールが0.5~2重量部であることが好ましい。このような組成に調合することによって紅茶に近い香調が得られ、嗜好性を向上させることができる。
【0025】
本発明の肌質改善剤の摂取方法は、体内に取り込まれる方法であれば特に制限されず、例えば、皮膚、経鼻、経口等から摂取する方法が挙げられ、なかでも経口剤として摂取する方法がより好ましく、特に飲食品であることが好ましい。また、飲食品の形態も、特に制限はされず、例えば固形状、液状、ゲル状等であり得る。例えば、タブレット(錠菓)、トローチ、チュアブル、飴、チューインガム、カプセル、ドリンク、ゼリー、顆粒等であり得る。このような各組成物は常法によって調製することができる。
【0026】
本発明の肌質改善剤の成人一日あたりの摂取量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限はされない。例えば、乾燥質量換算で、1~100mg/dayが好ましく、10~60mg/dayがより好ましく、20~50mg/dayがさらに好ましく、30~40mg/dayがよりさらに好ましい。
【0027】
本発明の肌質改善用経口剤は、口腔内に長時間滞留されることでより効果を奏することができるため、タブレット又はトローチが好ましい。
本発明の肌質改善剤をタブレットとして提供する場合は、有効成分以外に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤等の添加剤を用いることができる。その他成分としては、例えばpH調整剤、増粘剤、界面活性剤、香味剤、甘味剤等が挙げられるが、特に限定はされない。このような成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、賦形剤として、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、ラクチトール、パラチノースが挙げられる。
さらに、本発明のタブレットは、1回1粒を口腔内に5分以上滞留できればよく、大きさ、重量、形状、表面積は、口腔内に留まりやすいものを選択すればよい。例えば、タブレットの重量は1粒当たり、500~2000mgが好ましく、900~1000mgとすることがより好ましい。
本発明のタブレットの形状は、例えば、略円柱形、略球状、ラグビーボール状、ドーナツ形などが挙げられ、公知の菓子類又は医薬製剤で用いられている任意の形状でよい。好ましい態様としては、直径が10~15mm、最大厚さは5~15mmの略円柱形である。
本発明の肌質改善用経口剤の摂取方法は、肌質改善剤の一日あたりの摂取量のあわせて、一日3~5に分けて摂取すればよい。一定時間あけて摂取すればよく、特に毎食後および就寝前に、1回1錠を口腔内で溶かして、噛まずに摂取することが好ましい。
【0028】
本発明の肌質改善用経口剤はその効果をよりよく発揮させるために、毎日決められた量を3日以上継続的に摂取することが好ましい。より好ましくは1週間以上、さら好ましくは4週間以上継続的に摂取すればよい。
【0029】
本発明の肌質改善用経口剤は、タブレット1粒を900~1000mgとした場合、1粒当たりの肌質改善剤(ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール及びゲラニオールから選ばれる1以上)を0.05~10mg配合することを好ましい。より好ましくは0.08~5mg、さらに好ましくは1~3mgである。
上記1粒(900~1000mg)当たりのそれぞれの配合量は以下のように例示することができる。
ホトリエノールの配合量は、0.005~10mgであることが好ましい。0.008~5mgがより好ましく、0.01~2mgがさら好ましい。
フラネオールの配合量は、0.005~10mgであることが好ましい。0.008~5mgがより好ましく、0.01~2mgがさら好ましい。
2-フェニルエチルアルコールの配合量は、0.01~10mgであることが好ましい。0.03~5mgがより好ましく、0.05~3mgがさら好ましい。
ゲラニオールは、0.005~10mgであることが好ましい。0.01~8mgがより好ましく、0.03~3mgがさら好ましい。
【0030】
(タブレットの製造方法)
本発明の肌質改善用経口剤の製造方法は、タブレットの場合、従来の製造に用いられている方法をそのまま利用して製造することができる。例えば、粉末化したタブレット材料を混合し、直接打錠する方法を採用しても良く、または、タブレット材料を別々にまたは混合して湿式または乾式で顆粒化したのちに、混合して、打錠する方法を採用しても良い。
【0031】
本発明の肌質改善剤を少なくとも一種以上を飲食品に配合することによって、その食品を肌質の改善を目的とした機能性食品にすることができる。
【実施例
【0032】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
<香気化合物の分析方法>
ホトリエノール、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオール
定性分析用試料としては、各香気成分を水で適宜希釈したものを測定試料とした。
定量分析用試料としては、以下のように調製した。試験品(タブレットの場合は1粒、粉末香料の場合は100mgを使用した)を100mLの水で希釈した液10ml及び塩化ナトリウム3gを20mLバイアルに入れ、終濃度で500ppbとなるように内部標準物質としてシクロヘプタノール(東京化成工業(株)製)を添加し、測定試料液とした。
各測定試料液中の香気化合物を固相マイクロ抽出法(Solid Phase Micro Extraction:SPME)により、吸着剤を用いて回収し、以下に示す分析条件でガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)により分析した。
ホトリエノール、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオールの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析法により定量した。
【0034】
<SPME-GC/MS条件>
GC:TRACE GC ULTRA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
MS:TSQ QUANTUM XLS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
SPMEファイバー:50/30μm Divinylbenzene/Carboxen/Polydimethylsiloxane Stableflex (シグマアルドリッチ社製)
抽出:60℃、30分
カラム:SUPELCO WAX10 0.25mmI.D.×60m×0.25μm(シグマアルドリッチ社製)
オーブンプログラム:40℃で2分間保持した後、160℃まで3℃/分で昇温し、その後280℃まで10℃/分で昇温
キャリアーガス:ヘリウム(100kPa、一定圧力)
インジェクター:スプリットレス、240℃
イオン化:電子イオン化
イオン化電圧:70eV
【0035】
モニタリングイオン:ホトリエノール;m/z=71、ゲラニオール;m/z=69、2-フェニルエチルアルコール;m/z=91
【0036】
《LC-MSによるフラネオール定量方法》
上記の香気成分と同様に溶解後、0.45μmのフィルター(アドバンテック社)でろ過したものを試料とし、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS分析)に供した。LC-MS分析条件は以下の通りである。定量には、標準物質としてフラネオール(furaneol:東京化成工業社製)を超純水に溶解し、段階的に希釈したものを標準溶液として用いた。
<LC条件>
使用機器:Agilent1100Series(Agilent technologies社)
カラム:Atlantis T3 2.1×100mm、粒子径3μm
カラム温度:40℃
流速:0.2mL/min
移動相:(A)水+0.1%(v/v)ギ酸(B)アセトニトリル+0.1%(v/v)ギ酸
グラジエント条件:0分(A)95%(B)5%、1分(A)95%(B)5%、21分(A)20%(B)80%、24分(A)0%(B)100%、30分(A)95%(B)5%
<MS条件>
使用機器:3200QTRAP(AB SCIEX社)
スプレー電圧:5500V
イオン源温度:600℃
カーテンガス:10psi
コリジョンガス:3psi
測定モード:スキャン、Multiple Reaction Monitoring (MRM)
MRM条件: Q1(m/z)=129.04、Q2(m/z)=100.90
【0037】
<製造例1>
ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール、ゲラニオールの粉末品をタブレット1粒(900mg)中に下記の組成となるように、甘味料(エリスリトール、ソルビトール)、ショ糖エステルと混合し、ロータリー打錠機 (富山薬品機械 FY-ACU-PCMA)にて予備打錠圧0.91t、本打錠圧2.54tで直接打錠し、硬度12kgfのタブレットを製造した(試験品A)。
ホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコール及びゲラニオールは粉末香料であって、すべて曽田香料株式会社製を使用した。なお、粉末香料は香料成分以外の賦形剤を含み、香料の濃度は、タブレット1粒を100mLのイオン交換水に溶解して上記分析方法にて濃度を求めた。
・タブレット1粒(900mg)あたり
エリスリトール:85質量%
ソルビトール:10質量%
ショ糖エステル:4質量%
粉末香料合計:1質量%(粉末香料中、ホトリエノール0.11質量%、フラネオール0.10質量%、2-フェニルエチルアルコール0.47質量%、ゲラニオール0.26質量%含有 合計0.95質量%)
タブレット中の香料の濃度(前記方法により測定結果)
ホトリエノール:0.001質量%
フラネオール:0.001質量%
2-フェニルエチルアルコール:0.004質量%
ゲラニオール:0.002質量%
合計:0.008質量%
・タブレットの形態:直径15mm、厚さ5-6mm
対象(プラセボ)として、香料成分を配合しない代わりにデキストリン(1質量%)を配合して、同様に製造した(試験品B)。
【0038】
[肌質改善試験]
〈対象者〉
25~39歳の女性16名であって、自覚症状としてストレスによる肌の乾燥が気になり、日常的に2種類以上の基礎化粧品を使用し、スキンケアをしている者を被験対象者とした。
〈試験スケジュール〉
2期2試験品(A及びB)使用による2群クロスオーバー試験を試験デザインとして、3週間ずつ交互に実施した。各群を8名とした。
第1期(1週目~3週目)は、1群は試験品A、2群は試験品Bを用い、第2期(4週目~6週目)は、1群は試験品B、2群は試験品Aを用いて試験を行った。
〈摂取方法〉
1日4回(原則毎食後および就寝前)、1回1錠を噛まずに5分間かけて口腔内で溶かして摂取した。
〈試験項目〉測定方法の詳細は以下のとおりである。
各測定・評価は、摂取前(摂取開始時、0W)、摂取3週後(3W)および摂取終時(摂取6週後;6W)に各群の被験者に対して行った。
【0039】
[1]角質層水分量(μS:電気伝導度)
・測定部位:頬部位
・測定機器:SKICON-200EX (株式会社ヤヨイ)
顔面頬部の角質層水分量を5回以上測定し、安定した5回の測定値の平均値を採用した。
得られた水分量から、水分変化量を求めた。3週後の測定値は3週後の値から開始前の値を引いた値を示し、6週後の測定値は6週後の値から3週後の値を引いた値を示す。
検定は、ノンパラメトリックなウィルコクソンの順位和検定を用いた。結果を図1に示す。
図1中のsampleは試験品A,placeboは試験品Bを示す。
【0040】
[2]肌の明度、色(赤み)
・測定部位:頬部位
・測定機器:分光測色計CR-13(コニカミノルタ社)
なお、L*値は、数値が大きいほど肌が白いことを示し、a*値は赤色を示しその変化から肌の炎症を判断できる。
*値、a*値からそれぞれの変化量を求め、水分量、肌の色の変化を検証した。
*値の変化量(以下ΔL*)は3週後の測定値は3週後のL*値から開始前のL*値を引いた値を示し、6週後の測定値は6週後のL*値から3週後のL*値を引いた値を示す。
*値の変化量(以下Δa*)も同様に算出した。
検定は、ノンパラメトリックなウィルコクソンの順位和検定を用いた。結果を図2、3に示す。図2及び3中のsampleは試験品A、placeboは試験品Bを示す。
【0041】
〈結果〉
[1]角質層水分量
図1より、プラセボ群(試験品B)に比べて、サンプル群(試験品A)が、有意に角質層の水分変化量が増加したことが示されており、本発明の肌質改善剤により角質層水分量が増え、保湿効果または肌の乾燥状態を予防する効果が期待できる。
【0042】
図2より、サンプル群(試験品A)がプラセボ群(試験品B)と比較して、有意にΔL*が増加したことから、本発明の肌質改善剤により、肌の色がより明るくなることが確認できた。また図3より、Δa*が減少したことからは、肌の赤みが減少したことが示された。肌の炎症が減少した可能性が高く、肌の乾燥による肌あれ等の炎症がより抑制できたことが予想された。これらのことから、本発明の肌質改善剤が有意に肌の色をより明るくし、炎症による赤みを抑制できたことが確認できた。
【0043】
以上の結果をまとめると、本発明のホトリエノール、フラネオール、2-フェニルエチルアルコールおよびゲラニオールを含有する肌質改善剤により、表皮の最外層を構成する角質層の水分量が有意に増加し、顔の肌色、特に肌の明るさの改善、および赤みの抑制に有効であることが確認できた。
【0044】
<製造例2>
紅茶葉(ダージリン産 2nd flush)を用いて各々の香気成分を調製した。茶葉180kgに対して温水1800kgを加水後、フィルターで茶葉を除去し、抽出液1600kgを回収した。抽出液を減圧加熱濃縮し、蒸発分を冷却して凝縮させた香気水1440kgを回収後、逆浸透膜(RO膜)処理により香気成分各50kg(Brix0.09)を得た。香気成分に含まれる化合物について、上記に示す分析条件のガスクロマトグラフ質量分析法により分析した。
得られた香気成分は、デキストリンを賦形剤としてスプレードライにより粉末化した。タブレット1粒の濃度が、ホトリエノール0.002質量%、フラネオール0.002質量%、2-フェニルエチルアルコール0.004質量%、ゲラニオール0.002質量%となるように、それぞれ粉末香料を添加混合した。得られた粉末香料をタブレット1粒中の濃度が1質量%となるよう添加混合し、製造例1と同様に肌質改善用のタブレットを製造した。
【0045】
<製造例3>
製造例1の粉末香料(粉末香料中、ホトリエノール0.11質量%、フラネオール0.10質量%、2-フェニルエチルアルコール0.47質量%、ゲラニオール0.26質量%含有 合計0.95質量%)、エリスリトールの濃度を変更した以外は、下記に示した処方にて製造例1と同様に肌質改善用のタブレットを製造した。
・タブレット1粒(900mg)あたり
エリスリトール:84質量%
ソルビトール:10質量%
ショ糖エステル:4質量%
粉末香料合計:2質量%
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の肌質改善剤は、肌の保湿効果、肌の明度の増加および赤みの抑制が期待でき、肌質改善用のサプリメントまたは飲食品として日常的に、手軽に使用することができる。
図1
図2
図3