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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】駆動ユニットおよび電動補助車両
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20230710BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20230710BHJP
【FI】
B62M6/45
B62M6/55
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020081834
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021176717
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 智丈
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078618(JP,A)
【文献】特開平10-230891(JP,A)
【文献】特開2016-193628(JP,A)
【文献】特開2018-054085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/00-6/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動補助車両に用いられる駆動ユニットであって、
出力歯車を有する出力軸を備える電動モータと、
前記電動モータの一部または全部を収容するハウジングと、
前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって回転可能に支持されるペダルクランク軸であって、被駆動歯車が設けられたペダルクランク軸と、
前記電動モータの前記出力歯車のトルクを前記被駆動歯車に伝達する伝達機構と、
前記ペダルクランク軸と同軸で回転し、踏力および前記電動モータの補助力を合成する合力出力軸と、
を備え、
前記伝達機構は、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持される減速機と、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持されるアイドルギアと、
を有し、
前記減速機は、前記電動モータの前記出力歯車の前記トルクを増加させ、
前記増加したトルクは、前記アイドルギアを介して前記被駆動歯車に伝達され
前記電動モータは、前記出力軸が第1中心軸の周りに回転するよう前記ハウジングによって支持され、
前記減速機は、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第2中心軸の周りに回転可能に支持され、第1伝達歯車、前記第1伝達歯車よりも歯数が少ない第2伝達歯車、および前記第1伝達歯車の回転を前記第2伝達歯車に伝える伝達軸を有し、
前記アイドルギアは、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第3中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記ペダルクランク軸は、第4中心軸に沿って前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって前記第4中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記第1中心軸および前記第4中心軸を含む平面から前記第3中心軸までの距離は、前記平面から前記第2中心軸までの距離よりも長く、
前記アイドルギアの直径は、前記被駆動歯車の直径および前記第1伝達歯車の直径のいずれよりも小さい、駆動ユニット。
【請求項2】
電動補助車両に用いられる駆動ユニットであって、
出力歯車を有する出力軸を備える電動モータと、
前記電動モータの一部または全部を収容するハウジングと、
前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって回転可能に支持されるペダルクランク軸であって、被駆動歯車が設けられたペダルクランク軸と、
前記電動モータの前記出力歯車のトルクを前記被駆動歯車に伝達する伝達機構と、
前記ペダルクランク軸と同軸で回転し、踏力および前記電動モータの補助力を合成する合力出力軸と、
を備え、
前記伝達機構は、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持される減速機と、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持されるアイドルギアと、
を有し、
前記減速機は、前記電動モータの前記出力歯車の前記トルクを増加させ、
前記増加したトルクは、前記アイドルギアを介して前記被駆動歯車に伝達され、
前記電動モータは、前記出力軸が第1中心軸の周りに回転するよう前記ハウジングによって支持され、
前記減速機は、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第2中心軸の周りに回転可能に支持され、第1伝達歯車、前記第1伝達歯車よりも歯数が少ない第2伝達歯車、および前記第1伝達歯車の回転を前記第2伝達歯車に伝える伝達軸を有し、
前記アイドルギアは、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第3中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記ペダルクランク軸は、第4中心軸に沿って前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって前記第4中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記第1中心軸および前記第4中心軸を含む平面から前記アイドルギアの最遠点までの距離は、前記平面から前記出力歯車の最遠点、前記平面から前記第1伝達歯車の最遠点、および、前記平面から前記被駆動歯車の最遠点までの各距離よりも長く、
前記アイドルギアの直径は、前記被駆動歯車の直径および前記第1伝達歯車の直径のいずれよりも小さい、駆動ユニット。
【請求項3】
電動補助車両に用いられる駆動ユニットであって、
出力歯車を有する出力軸を備える電動モータと、
前記電動モータの一部または全部を収容するハウジングと、
前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって回転可能に支持されるペダルクランク軸であって、被駆動歯車が設けられたペダルクランク軸と、
前記電動モータの前記出力歯車のトルクを前記被駆動歯車に伝達する伝達機構と、
前記ペダルクランク軸と同軸で回転し、踏力および前記電動モータの補助力を合成する合力出力軸と、
を備え、
前記伝達機構は、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持される減速機と、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持されるアイドルギアと、
を有し、
前記減速機は、前記電動モータの前記出力歯車の前記トルクを増加させ、
前記増加したトルクは、前記アイドルギアを介して前記被駆動歯車に伝達され、
前記電動モータは、前記出力軸が第1中心軸の周りに回転するよう前記ハウジングによって支持され、
前記減速機は、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第2中心軸の周りに回転可能に支持され、第1伝達歯車、前記第1伝達歯車よりも歯数が少ない第2伝達歯車、および前記第1伝達歯車の回転を前記第2伝達歯車に伝える伝達軸を有し、
前記アイドルギアは、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第3中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記ペダルクランク軸は、第4中心軸に沿って前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって前記第4中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、
前記第2中心軸は、前記第1中心軸、前記第3中心軸、および前記第4中心軸を頂点とする三角形に含まれる、駆動ユニット。
【請求項4】
電動補助車両に用いられる駆動ユニットであって、
出力歯車を有する出力軸を備える電動モータと、
前記電動モータの一部または全部を収容するハウジングと、
前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって回転可能に支持されるペダルクランク軸であって、被駆動歯車が設けられたペダルクランク軸と、
前記電動モータの前記出力歯車のトルクを前記被駆動歯車に伝達する伝達機構と、
前記ペダルクランク軸と同軸で回転し、踏力および前記電動モータの補助力を合成する合力出力軸と、
を備え、
前記伝達機構は、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持される減速機と、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持されるアイドルギアと、
を有し、
前記減速機は、前記電動モータの前記出力歯車の前記トルクを増加させ、
前記増加したトルクは、前記アイドルギアを介して前記被駆動歯車に伝達され、
前記電動モータは、前記出力軸が第1中心軸の周りに回転するよう前記ハウジングによって支持され、
前記減速機は、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第2中心軸の周りに回転可能に支持され、第1伝達歯車、前記第1伝達歯車よりも歯数が少ない第2伝達歯車、および前記第1伝達歯車の回転を前記第2伝達歯車に伝える伝達軸を有し、
前記アイドルギアは、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第3中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記ペダルクランク軸は、第4中心軸に沿って前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって前記第4中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、
前記被駆動歯車の少なくとも一部は、前記第1伝達歯車と重なっている、駆動ユニット。
【請求項5】
電動補助車両に用いられる駆動ユニットであって、
出力歯車を有する出力軸を備える電動モータと、
前記電動モータの一部または全部を収容するハウジングと、
前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって回転可能に支持されるペダルクランク軸であって、被駆動歯車が設けられたペダルクランク軸と、
前記電動モータの前記出力歯車のトルクを前記被駆動歯車に伝達する伝達機構と、
前記ペダルクランク軸と同軸で回転し、踏力および前記電動モータの補助力を合成する合力出力軸と、
を備え、
前記伝達機構は、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持される減速機と、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持されるアイドルギアと、
を有し、
前記減速機は、前記電動モータの前記出力歯車の前記トルクを増加させ、
前記増加したトルクは、前記アイドルギアを介して前記被駆動歯車に伝達され、
前記電動モータは、前記出力軸が第1中心軸の周りに回転するよう前記ハウジングによって支持され、
前記減速機は、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第2中心軸の周りに回転可能に支持され、第1伝達歯車、前記第1伝達歯車よりも歯数が少ない第2伝達歯車、および前記第1伝達歯車の回転を前記第2伝達歯車に伝える伝達軸を有し、
前記アイドルギアは、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第3中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記ペダルクランク軸は、第4中心軸に沿って前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって前記第4中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、
前記被駆動歯車と前記アイドルギアとが係合している領域の少なくとも一部は、前記第1伝達歯車と重なっている、駆動ユニット。
【請求項6】
電動補助車両に用いられる駆動ユニットであって、
出力歯車を有する出力軸を備える電動モータと、
前記電動モータの一部または全部を収容するハウジングと、
前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって回転可能に支持されるペダルクランク軸であって、被駆動歯車が設けられたペダルクランク軸と、
前記電動モータの前記出力歯車のトルクを前記被駆動歯車に伝達する伝達機構と、
前記ペダルクランク軸と同軸で回転し、踏力および前記電動モータの補助力を合成する合力出力軸と、
を備え、
前記伝達機構は、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持される減速機と、
前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持されるアイドルギアと、
を有し、
前記減速機は、前記電動モータの前記出力歯車の前記トルクを増加させ、
前記増加したトルクは、前記アイドルギアを介して前記被駆動歯車に伝達され、
前記電動モータは、前記出力軸が第1中心軸の周りに回転するよう前記ハウジングによって支持され、
前記減速機は、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第2中心軸の周りに回転可能に支持され、第1伝達歯車、前記第1伝達歯車よりも歯数が少ない第2伝達歯車、および前記第1伝達歯車の回転を前記第2伝達歯車に伝える伝達軸を有し、
前記アイドルギアは、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第3中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記ペダルクランク軸は、第4中心軸に沿って前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって前記第4中心軸の周りに回転可能に支持され、
前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、
前記第3中心軸は、前記第1伝達歯車と重なっている、駆動ユニット。
【請求項7】
前記アイドルギアは、前記減速機の前記第2伝達歯車および前記被駆動歯車のそれぞれに係合している、請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記減速機の前記第1伝達歯車は、前記電動モータの前記出力歯車に係合している、請求項に記載の駆動ユニット。
【請求項9】
前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、
前記第1から第4中心軸のうちの、ある三軸を頂点とする三角形に、残りの一軸が含まれる、請求項1から8のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項10】
前記ペダルクランク軸にはワンウェイクラッチが設けられている、請求項1からのいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の駆動ユニットを備えた電動補助車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動補助車両の車体フレームに取り付けられる駆動ユニットに関する。また、本発明は、そのような駆動ユニットを備えた電動補助車両にも関する。
【背景技術】
【0002】
動力源が発生させた動力に応じて移動する車両の例として、乗員がペダルを漕ぐ力を電動モータにより補助する電動補助自転車がある(例えば特許文献1参照)。電動補助自転車では、乗員がペダルに加えた人力に応じた駆動力を電動モータに発生させ、例えば坂道の走行時や荷物を積んでいるときの乗員の負担を減らすことができる。
【0003】
電動補助自転車は、電動モータ等を含む駆動ユニットを備える。駆動ユニットとして、後輪のハブ内に配置されるタイプや、車体フレームの下端(ボトムブラケット周辺)に取り付けられるタイプが知られている。近年では、後者のタイプの駆動ユニットが主流になりつつある。
【0004】
特許文献1に開示されている電動補助自転車は、車体フレームの下端に取り付けられた駆動ユニットを備える。この駆動ユニットは、ハウジング、電動モータおよびペダルクランク軸等を備える。電動モータは、ハウジングに収容されており、乗員のペダル踏力をアシストするための駆動力を発生させる。ペダルクランク軸は、ハウジングを車両の左右方向に貫通して配置される。ペダルクランク軸には、アームを介してペダルが取り付けられる。ペダルクランク軸の回転は、駆動スプロケット、チェーン、従動スプロケット等を介して、後輪に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-196080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動補助自転車の駆動ユニットでは、電動モータ、減速機、ペダルクランク軸、制御装置など、バッテリ以外の構成要素の多くが一つのケース内に集約されている。電動補助自転車では、そのような駆動ユニットを、一般的な自転車のペダルクランク軸の位置に該当する位置に取り付けるセンターマウント式と呼ばれる搭載方式がある。
【0007】
この搭載方式では、重量のある機械部品および電子部品をまとめて車体中央下部に配置できるため、車両の重量バランスを向上させることができるという利点がある。また、多くの構成要素を一つのケースに集約しているので、最小限の変更で安価に、多種の自転車フレームに駆動ユニットを搭載できるという利点もある。
【0008】
一方で、電動補助自転車のうちの一般的な自転車のペダルクランク軸の位置に該当する位置に駆動ユニットを配置すると、一般的な自転車と比較してリアセンタ長(ペダルクランク軸と後輪車軸との間の長さ)が長くなるという課題がある。一般に、リアセンタ長が長くなるとハンドリングの俊敏性が低下する。
【0009】
マウンテンバイク等の未舗装路を走行する車種では、最低地上高(地面から駆動ユニットまでの距離)の確保も重要となる。最低地上高が低い場合、走行できるロケーションに制約を与えることになり、走破性が低下する。
【0010】
また、駆動ユニットのサイズが大きいと、リアサスペンションおよびバッテリなどの駆動ユニット周囲の部品は、その配置に制約を受けることになる。
【0011】
本発明は、小型化を実現した駆動ユニット、およびその駆動ユニットを備えた電動補助車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある実施形態に係る駆動ユニットは、電動補助車両に用いられる駆動ユニットであって、出力歯車を有する出力軸を備える電動モータと、前記電動モータの一部または全部を収容するハウジングと、前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって回転可能に支持されるペダルクランク軸であって、被駆動歯車が設けられたペダルクランク軸と、前記電動モータの前記出力歯車のトルクを前記被駆動歯車に伝達する伝達機構と、前記ペダルクランク軸と同軸で回転し、踏力および前記電動モータの補助力を合成する合力出力軸とを備え、前記伝達機構は、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持される減速機と、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって回転可能に支持されるアイドルギアとを有し、前記減速機は、前記電動モータの前記出力歯車の前記トルクを増加させ、前記増加したトルクは、前記アイドルギアを介して前記被駆動歯車に伝達される。
【0013】
電動補助車両のリアセンタ長を短くしようとしたとき、ペダルクランク軸の被駆動歯車の直径を小さくすることが考えられる。このとき、仮に、ペダルクランク軸の被駆動歯車と電動モータとの間に「2軸の減速機」を並べると、軸方向における駆動ユニットの幅を小さくすることが難しくなる。減速機は、直径および歯数が互いに異なる2個の歯車が軸方向に沿って配置された回転軸を有している。2軸の減速機では、そのような回転軸を2個用意し、2個の回転軸を軸方向に互いにずらして配置するため、軸方向のサイズが大きくなってしまう。
【0014】
本発明のある実施形態によれば、アイドルギアを用いることにより、駆動ユニットの幅(軸方向サイズ)を拡げることなく、被駆動歯車の直径を小さくすることを可能にし、電動補助車両のリアセンタ長を短くすることができる。アイドルギアを用いることにより、電動モータ、減速機、および被駆動歯車の配置の自由度が高まり、駆動ユニットの更なる小型化を可能にする。
【0015】
ある実施形態において、前記電動モータは、前記出力軸が第1中心軸の周りに回転するよう前記ハウジングによって支持され、前記減速機は、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第2中心軸の周りに回転可能に支持され、第1伝達歯車、前記第1伝達歯車よりも歯数が少ない第2伝達歯車、および前記第1伝達歯車の回転を前記第2伝達歯車に伝える伝達軸を有し、前記アイドルギアは、前記ハウジングの内部において前記ハウジングによって第3中心軸の周りに回転可能に支持され、前記ペダルクランク軸は、第4中心軸に沿って前記ハウジングを貫通し、前記ハウジングによって前記第4中心軸の周りに回転可能に支持されてもよい。
【0016】
歯数の異なる2枚の伝達歯車によって増加させたトルクを、アイドルギアを介して被駆動歯車に伝達することができる。
【0017】
ある実施形態において、前記アイドルギアは、前記減速機の前記第2伝達歯車および前記被駆動歯車のそれぞれに係合していてもよい。
【0018】
アイドルギアが第2伝達歯車および被駆動歯車のそれぞれに係合することにより、単一のアイドルギアを介して減速機から被駆動歯車にトルクを伝達することができる。このようなアイドルギアの存在により、被駆動歯車のサイズを縮小することが容易になる。
【0019】
ある実施形態において、前記減速機の前記第1伝達歯車は、前記電動モータの前記出力歯車に係合していてもよい。
【0020】
単一の減速機および単一のアイドルギアが電動モータのトルクを被駆動歯車まで伝達するため、余分な歯車を用いることなく駆動ユニットを小型化することができる。
【0021】
ある実施形態において、前記第1中心軸および前記第4中心軸を含む平面から前記第3中心軸までの距離は、前記平面から前記第2中心軸までの距離よりも長く、前記アイドルギアの直径は、前記被駆動歯車の直径および前記第1伝達歯車の直径のいずれよりも小さくてもよい。
【0022】
アイドルギアは減速および増速を行わない部材であり、減速機と被駆動歯車との間の動力伝達を実現できるサイズであればよい。このため、アイドルギアは、減速機の第1伝達歯車およびペダルクランク軸の被駆動歯車よりも直径を小さくすることができる。第1中心軸および第4中心軸を含む平面から第3中心軸までの距離を、当該平面から第2中心軸までの距離よりも長くすることにより、直径が相対的に小さいアイドルギアを第1伝達歯車よりも外側に配置することができる。言い換えると、直径が相対的に大きい第1伝達歯車をハウジング内のより内側に配置することができ、外側への出っ張りを抑制することができる。ハウジングの外形を、直径が相対的に大きい第1伝達歯車ではなく、直径が相対的に小さいアイドルギアに沿った形状にできるため、駆動ユニットを小型化することができる。
【0023】
ある実施形態において、前記第1中心軸および前記第4中心軸を含む平面から前記アイドルギアの最遠点までの距離は、前記平面から前記出力歯車の最遠点、前記平面から前記第1伝達歯車の最遠点、および、前記平面から前記被駆動歯車の最遠点までの各距離よりも長く、前記アイドルギアの直径は、前記被駆動歯車の直径および前記第1伝達歯車の直径のいずれよりも小さくてもよい。
【0024】
アイドルギアは減速および増速を行わない部材であり、減速機と被駆動歯車との間の動力伝達を実現できるサイズであればよい。このため、アイドルギアは、減速機の第1伝達歯車およびペダルクランク軸の被駆動歯車よりも直径を小さくすることができる。第1中心軸および第4中心軸を含む平面からアイドルギアの最遠点までの距離を、当該平面から出力歯車の最遠点、当該平面から第1伝達歯車の最遠点、および当該平面から被駆動歯車の最遠点までの各距離よりも長くする。これにより、直径が相対的に小さいアイドルギアを第1伝達歯車よりも外側に配置することができる。言い換えると、直径が相対的に大きい第1伝達歯車をハウジング内のより内側に配置することができ、外側への出っ張りを抑制することができる。ハウジングの外形を、直径が相対的に大きい第1伝達歯車ではなく、直径が相対的に小さいアイドルギアに沿った形状にできるため、駆動ユニットを小型化することができる。
【0025】
ある実施形態において、前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、前記第1から第4中心軸のうちの、ある三軸を頂点とする三角形に、残りの一軸が含まれてもよい。
【0026】
上記残りの一軸の周りに回転する歯車をハウジング内のより内側に配置することができ、当該歯車の外側への出っ張りを抑制することができる。これにより、駆動ユニットを小型化することができる。
【0027】
ある実施形態において、前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、前記第2中心軸は、前記第1中心軸、前記第3中心軸、および前記第4中心軸を頂点とする三角形に含まれてもよい。
【0028】
アイドルギアは減速および増速を行わない部材であり、減速機と被駆動歯車との間の動力伝達を実現できるサイズであればよい。このため、アイドルギアは、減速機の第1伝達歯車およびペダルクランク軸の被駆動歯車よりも直径を小さくすることができる。第2中心軸は、第1中心軸、第3中心軸、および第4中心軸を頂点とする三角形に含まれる。これにより、直径が相対的に大きい第1伝達歯車をハウジング内のより内側に配置することができ、外側への出っ張りを抑制することができる。ハウジングの外形を、直径が相対的に大きい第1伝達歯車ではなく、直径が相対的に小さいアイドルギアに沿った形状にできるため、駆動ユニットを小型化することができる。
【0029】
ある実施形態において、前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、前記被駆動歯車の少なくとも一部は、前記第1伝達歯車と重なっていてもよい。
【0030】
被駆動歯車の少なくとも一部と第1伝達歯車とが重なるように配置することで、第2中心軸と第4中心軸とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸と第4中心軸とを互いに近付けることができる。第1中心軸と第4中心軸との間の距離を短くすることができ、駆動ユニットの前後方向のサイズを小さくすることができる。駆動ユニットの前後方向のサイズが小さくなることで、ダウンチューブに配置するバッテリユニットのスペースを確保することができる。
【0031】
ダウンチューブにバッテリユニットを配置する車両では、車両の前後方向におけるペダルクランク軸と前輪との間の空間(フロントセンタ)にバッテリユニットが配置される。バッテリ容量を大きくしようとするとバッテリユニットのサイズが大きくなり、その分だけフロントセンタ長を長くする必要がある。しかし、フロントセンタ長を長くすると、車両の操作性が低下するという課題がある。
【0032】
本発明のある実施形態によれば、駆動ユニットの前後方向のサイズが小さくなることで、バッテリユニットの配置の自由度を高めることができる。フロントセンタ長を長くすることなく、大容量のバッテリユニットを配置することが容易となる。
【0033】
ある実施形態において、前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、前記被駆動歯車と前記アイドルギアとが係合している領域の少なくとも一部は、前記第1伝達歯車と重なっていてもよい。
【0034】
被駆動歯車とアイドルギアとが係合している領域の少なくとも一部が第1伝達歯車と重なるように配置することで、第2中心軸と第4中心軸とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸と第4中心軸とを互いに近付けることができる。第1中心軸と第4中心軸との間の距離を短くすることができ、駆動ユニットの前後方向のサイズを小さくすることができる。
【0035】
ある実施形態において、前記第1中心軸に平行な軸方向から見たとき、前記第3中心軸は、前記第1伝達歯車と重なっていてもよい。
【0036】
第3中心軸と第1伝達歯車とが重なるようにアイドルギアおよび減速機を配置することで、第2中心軸と第3中心軸とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸と第4中心軸とを互いに近付けることができる。第1中心軸と第4中心軸との間の距離を短くすることができ、駆動ユニットの前後方向のサイズを小さくすることができる。
【0037】
ある実施形態において、前記ペダルクランク軸にはワンウェイクラッチが設けられていてもよい。
【0038】
ペダルクランク軸にワンウェイクラッチが設けられていることにより、ペダルクランク軸の順回転は駆動スプロケットに伝達するが、ペダルクランク軸の逆回転は駆動スプロケットに伝達させないようにすることができる。
【0039】
本発明のある実施形態に係る電動補助車両は、上記の駆動ユニットを備える。
【0040】
電動補助車両がペダルクランク軸の被駆動歯車の直径が小さい駆動ユニットを備えることで、電動補助車両のリアセンタ長を短くすることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のある実施形態に係る駆動ユニットによれば、アイドルギアを用いることにより、駆動ユニットの幅(軸方向サイズ)を拡げることなく、被駆動歯車の直径を小さくすることを可能にし、電動補助車両のリアセンタ長を短くすることができる。アイドルギアを用いることにより、電動モータ、減速機および被駆動歯車の配置の自由度が高まり、駆動ユニットの更なる小型化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施形態に係る電動補助自転車10を示す右側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電動補助自転車10が備える駆動ユニット20の内部構造を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る駆動ユニット20の構成要素の配置関係を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る駆動ユニット20の構成要素の配置関係を示す別の図である。
図5】本発明の実施形態に係る駆動ユニット20の構成要素の配置関係を示すさらに別の図である。
図6】本発明の実施形態に係る駆動ユニット20の構成要素の配置関係を示すさらに別の図である。
図7】本発明の実施形態に係る駆動ユニット20内の被駆動歯車233およびその周囲の構造を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る駆動ユニット20内の電動モータ25およびその周囲の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る駆動システム、および駆動システムを備えた電動補助車両を説明する。実施形態の説明においては、同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。本発明の実施形態における前後、左右、上下とは、電動補助車両のサドル(シート)に乗員がハンドルに向かって着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
[電動補助自転車]
図1を参照しながら、本発明の実施形態による電動補助車両の一例である電動補助自転車10を説明する。図1は、電動補助自転車10の概略構成を示す右側面図である。
【0045】
電動補助自転車10は、車体フレーム12、前輪14F、後輪14R、ハンドル16およびサドル18を備える。電動補助自転車10は、駆動ユニット20およびバッテリユニット26をさらに備える。
【0046】
車体フレーム12は、ヘッドチューブ121、トップチューブ122、ダウンチューブ123、シートチューブ124およびブラケット125を含む。
【0047】
ヘッドチューブ121は、車体フレーム12の前部に配置され、上下方向に延びている。ヘッドチューブ121には、ステム27が回転自在に挿入されている。ステム27の上端には、ハンドル16が固定されている。ステム27の下端には、フロントフォーク28が固定されている。フロントフォーク28の下端には、前輪14Fが回転可能に取り付けられている。つまり、前輪14Fは、ステム27およびフロントフォーク28を介して、車体フレーム12に支持されている。
【0048】
トップチューブ122は、ヘッドチューブ121の後方に配置され、前後方向に延びている。トップチューブ122の前端は、ヘッドチューブ121に接続されている。トップチューブ122の後端は、シートチューブ124に接続されている。
【0049】
ダウンチューブ123は、ヘッドチューブ121の後方に配置され、前後方向に延びている。ダウンチューブ123は、トップチューブ122の下方に配置されている。ダウンチューブ123の前端は、ヘッドチューブ121に接続されている。なお、図1に示す例では、ダウンチューブ123の前端部は、トップチューブ122の前端部にも接続されている。ダウンチューブ123の後端は、ブラケット125に接続されている。
【0050】
ダウンチューブ123には、バッテリユニット26が取り付けられている。図1に示す例では、バッテリユニット26はダウンチューブ123の内部に取り付けられている。バッテリユニット26は、駆動ユニット20に電力を供給する。バッテリユニット26は、バッテリおよび制御回路を有する。バッテリは、充放電可能な充電池である。制御回路は、バッテリの充放電を制御するとともに、バッテリの出力電流および残量等を監視する。
【0051】
シートチューブ124は、トップチューブ122およびダウンチューブ123の後方に配置され、上下方向に延びている。シートチューブ124の下端は、ブラケット125に接続されている。つまり、シートチューブ124は、ブラケット125から上方に延びている。
【0052】
図1に示す例では、シートチューブ124は、上下方向の中間部分で折れ曲がっている。その結果、シートチューブ124の下部は上下方向に延びているが、シートチューブ124の上部は上下方向に対して傾斜した方向に延びている。
【0053】
シートチューブ124には、シートポスト29が挿入されている。シートポスト29の上端には、サドル18が取り付けられている。
【0054】
ブラケット125は、車体フレーム12の下端に位置している。ブラケット125は、駆動ユニット20を支持する。車体フレーム12に取り付けられた駆動ユニット20は、車輪(ここでは後輪14R)に伝達される駆動力を発生させる。駆動ユニット20の詳細については、後述する。
【0055】
車体フレーム12は、さらに、スイングアーム30、一対の接続アーム303およびサスペンション304をさらに含む。スイングアーム30は、一対のチェーンステー301および一対のシートステー302を含む。
【0056】
一対のチェーンステー301は、それぞれ前後方向に延びている。一対のチェーンステー301は、左右方向に並んで配置されている。一対のチェーンステー301の間には、後輪14Rが配置されている。一対のチェーンステー301は、左右対称に配置されている。そのため、図1では、右側のチェーンステー301だけが図示されている。
【0057】
各チェーンステー301の前端部は、ブラケット125に取り付けられている。つまり、各チェーンステー301は、ブラケット125から後方に延びている。各チェーンステー301は、ブラケット125に対して、左右方向に延びる軸線周りで揺動可能に配置されている。
【0058】
各チェーンステー301の後端部には、後輪14Rの車軸141が回転不能に取り付けられている。つまり、一対のチェーンステー301により、後輪14Rが車軸141の周りで回転可能に支持されている。言い換えると、後輪14Rは、車体フレーム12によって支持されている。後輪14Rには、複数段の従動スプロケット32が固定されている。
【0059】
一対のシートステー302は、それぞれ前後方向に延びている。一対のシートステー302は、左右方向に並んで配置されている。一対のシートステー302の間には、後輪14Rが配置されている。一対のシートステー302は、左右対称に配置されている。そのため、図1では、右側のシートステー302だけが図示されている。
【0060】
左側のシートステー302の後端部は、左側のチェーンステー301の後端部に接続さ れている。右側のシートステー302の後端部は、右側のチェーンステー301の後端部に接続されている。
【0061】
一対の接続アーム303は、それぞれ前後方向に延びている。一対の接続アーム303は、左右方向に並んで配置されている。一対の接続アーム303の間には、シートチューブ124が配置されている。一対の接続アーム303は、左右対称に配置されている。そのため、図1では、右側の接続アーム303だけが図示されている。
【0062】
各接続アーム303は、シートチューブ124に取り付けられている。各接続アーム303は、シートチューブ124に対して、左右方向に延びる軸線周りで揺動可能に配置されている。
【0063】
車両の側面から見たときに、各接続アーム303の前端は、シートチューブ124よりも前方に位置している。車両の側面から見たときに、各接続アーム303の後端は、シートチューブ124よりも後方に位置している。
【0064】
右側の接続アーム303の後端部は、右側のシートステー302の前端部に取り付けられている。右側の接続アーム303は、右側のシートステー302に対して、左右方向に延びる軸線周りで揺動可能に配置されている。
【0065】
左側の接続アーム303の後端部は、左側のシートステー302の前端部に取り付けられている。左側の接続アーム303は、左側のシートステー302に対して、左右方向に延びる軸線周りで揺動可能に配置されている。
【0066】
サスペンション304は、シートチューブ124の前方であって、且つ、ダウンチューブ123の後方に配置されている。サスペンション304の上端部は、一対の接続アーム303に取り付けられている。サスペンション304は、一対の接続アーム303に対して、左右方向に延びる軸線周りで揺動可能に配置されている。サスペンション304の下端部は、ブラケット125に取り付けられている。サスペンション304は、ブラケット125に対して、左右方向に延びる軸線周りで揺動可能に配置されている。サスペンション304のブラケット125への取付位置は、シートチューブ124のブラケット125への取付位置よりも前方にある。
【0067】
駆動ユニット20には、支持部材33を介して、駆動スプロケット34が取り付けられている。駆動スプロケット34および従動スプロケット32には、チェーン36が巻き掛けられている。
【0068】
[駆動ユニット]
図2を参照しながら、駆動ユニット20の構成例を説明する。図2は、駆動ユニット20の内部構造の一例を示す断面図である。
【0069】
図2に示すように、駆動ユニット20は、ハウジング21、ペダルクランク軸22、回転軸23、伝達機構40および電動モータ25を備える。
【0070】
まず、本実施形態に係るハウジング21の構成を説明する。
【0071】
ハウジング21は、複数の締結具により、ブラケット125(図1)に固定される。ハウジング21は、第1ケース211、第2ケース212およびカバー213を含む。第1ケース211、第2ケース212およびカバー213は、それぞれ金属材料(例えばアルミニウム合金)で形成されている。
【0072】
第1ケース211は、第2ケース212に対して、左右方向で左側から重ね合わせられる。第1ケース211と第2ケース212とは、複数の締結具により固定される。その結果、第1ケース211と第2ケース212との間には、空間214が形成されている。
【0073】
カバー213は、第1ケース211に対して、左右方向で左側から重ね合わせられる。カバー213と第1ケース211とは、複数の締結具により固定される。その結果、第1ケース211の左側には、カバー213で覆われた空間215が形成されている。この空間215には電動モータ25が収容される。
【0074】
次に、本実施形態に係るペダルクランク軸22の構成を説明する。
【0075】
ペダルクランク軸22は、ハウジング21を車両の左右方向に貫通して配置され、ハウジング21によって回転可能に支持されている。ペダルクランク軸22の中心軸線CL4は、左右方向に延びている。中心軸線CL4は、ペダルクランク軸22の軸方向(スラスト方向)から見た場合に、ペダルクランク軸22の回転中心軸RC4(第4中心軸)となる。ペダルクランク軸22は、中心軸線CL4周りでハウジング21に対して回転する。
【0076】
ペダルクランク軸22は、第4中心軸RC4に沿ってハウジング21を貫通し、ハウジング21によって第4中心軸RC4の周りに回転可能に支持される。ペダルクランク軸22は、ハウジング21内で一対のベアリング(軸受)38Lおよび38Rによって回転可能に支持されている。ベアリング38Lは、軸方向における左側に配置され、第1ケース211に固定されている。ベアリング38Rは、軸方向における右側に配置され、第2ケース212に固定されている。
【0077】
ペダルクランク軸22は、回転軸23を貫通して配置されている。回転軸23は、ハウジング21に収容されている。回転軸23の詳細については、後述する。ペダルクランク軸22には、左右一対のクランクアーム35(図1)が取り付けられる。クランクアーム35のそれぞれには、ペダル37(図1)が取り付けられる。
【0078】
次に、本実施形態に係る電動モータ25および伝達機構40の構成を説明する。
【0079】
電動モータ25は、ハウジング21に収容され、ハウジング21に固定されている。電動モータ25は、電動補助自転車10の走行をアシストするための駆動力を発生する。電動モータ25は、ステータ251およびロータ252を有する。
【0080】
ステータ251は、コイル2511が巻き回されたボビン2512を複数個有する。各ボビン2512には、鉄心2513が挿入されている。ステータ251は、空間215内に配置されている。この状態で、ステータ251は、第1ケース211に固定されている。
【0081】
ステータ251には、支持部材253が取り付けられている。支持部材253は、樹脂材料から形成されている。支持部材253には、複数のバスバー(不図示)が埋め込まれている。これらのバスバーのそれぞれは、対応するコイル2511に接続されている。バスバーへの通電を制御することにより、ステータ251に磁力が発生する。
【0082】
ロータ252は、ステータ251の内側に配置されている。ロータ252の中心軸線CL1は、ペダルクランク軸22の中心軸線CL4と平行である。つまり、ロータ252は、ペダルクランク軸22と平行に配置されている。中心軸線CL1は、ペダルクランク軸22の軸方向から見たときに、ロータ252の回転中心軸RC1(第1中心軸)となる。
【0083】
ロータ252は、ロータ本体2521と、出力軸2522とを含む。ロータ本体2521の外周面には、N極とS極とが周方向に交互に着磁されている。
【0084】
出力軸2522は、ロータ本体2521を貫通して配置されている。出力軸2522は、ロータ本体2521に固定されている。つまり、出力軸2522は、ロータ本体2521とともに回転する。
【0085】
出力軸2522は、ハウジング21の内部において第1中心軸RC1の周りに回転可能なようにハウジング21によって支持される。出力軸2522は、2つのベアリング42Lおよび42Rにより、中心軸線CL1周りで、ハウジング21に対して、回転可能に支持されている。ベアリング42Lは、カバー213に固定されている。ベアリング42Rは、ロータ本体2521よりも右側に配置され、第1ケース211に固定されている。出力軸2522は第1ケース211を貫通して配置されている。出力軸2522のうち、空間214内に位置する部分には、出力歯車252Aが形成されている。出力歯車252Aは、例えば、はすば歯車である。
【0086】
伝達機構40は、ハウジング21に収容されている。具体的には、伝達機構40は、空間214内に配置されている。伝達機構40は、減速機24、アイドルギア41および回転軸43を有する。伝達機構40は、電動モータ25の出力歯車252Aのトルクを、後述する被駆動歯車233に伝達する。
【0087】
減速機24は、ハウジング21によって回転可能に支持されており、電動モータ25の出力歯車252Aのトルクを増加させる。減速機24は、第1伝達歯車241、第2伝達歯車242および伝達軸243を有する。伝達軸243の中心軸線CL2は、ペダルクランク軸22の中心軸線CL4と平行である。つまり、伝達軸243は、ペダルクランク軸22の中心軸線CL4に対して平行に延びる。中心軸線CL2は、伝達軸243の軸方向、つまり、ペダルクランク軸22の軸方向から見たときに、伝達軸243の回転中心軸RC2(第2中心軸)となる。減速機24は、ハウジング21の内部においてハウジング21によって第2中心軸RC2の周りに回転可能に支持される。
【0088】
第1伝達歯車241は、軸方向における伝達軸243の右部分に配置される。伝達軸243の左部分は、ベアリング44Lにより回転可能に支持される。伝達軸243の右部分に配置された第1伝達歯車241は、ベアリング44Rにより回転可能に支持される。伝達軸243および第1伝達歯車241は、2つのベアリング44Lおよび44Rにより、中心軸線CL2周りで回転可能に支持される。ベアリング44Lは、第1ケース211に固定される。ベアリング44Rは、第2ケース212に固定される。
【0089】
第1伝達歯車241は、電動モータ25の出力歯車252Aと噛み合う。これにより、電動モータ25で発生した駆動力が出力歯車252Aから第1伝達歯車241に伝達される。
【0090】
第1伝達歯車241と伝達軸243との間には、ワンウェイクラッチ244が配置されている。ワンウェイクラッチ244は、伝達軸243と第1伝達歯車241とを結合する。ワンウェイクラッチ244は、伝達軸243に対する第1伝達歯車241の回転を一方向に規制する。電動補助自転車10の後輪14R(図1)を前転させる方向の出力歯車252Aの回転力は、第1伝達歯車241を介して伝達軸243に伝達されるが、後輪14Rを後転させる方向の出力歯車252Aの回転力は、伝達軸243には伝達されない。また、ワンウェイクラッチ244は、乗員の人力により発生したペダルクランク軸22の前転方向の回転力が、電動モータ25に伝達されることを防止している。
【0091】
第1伝達歯車241は、電動モータ25の出力歯車252Aよりも大径であり、出力歯車252Aよりも多い歯を有する。つまり、第1伝達歯車241は、出力歯車252Aよりも減速される。
【0092】
第2伝達歯車242は、金属材料(例えば鉄)から形成されている。第2伝達歯車242は、伝達軸243に配置される。第2伝達歯車242は、伝達軸243の軸方向で第1伝達歯車241と異なる位置に配置される。第2伝達歯車242は、第1伝達歯車241よりも小径であり、第1伝達歯車241よりも少ない歯を有する。本実施形態では、伝達軸243と第2伝達歯車242とは一体に形成されているが、それに限定されない。第2伝達歯車242は、セレーション結合(または圧入)により、伝達軸243に固定されていてもよい。第2伝達歯車242は伝達軸243とともに回転する。伝達軸243は、第1伝達歯車241の回転を第2伝達歯車242に伝達する。
【0093】
アイドルギア41は、金属材料(例えば鉄)から形成されている。アイドルギア41は回転軸43に配置されている。アイドルギア41は、例えば締結具により回転軸43に固定されるが、それに限定されない。アイドルギア41は、セレーション結合(または圧入)により、回転軸43に固定されていてもよい。また、アイドルギア41と回転軸43とは一体に形成されていてもよい。アイドルギア41は回転軸43とともに回転する。
【0094】
回転軸43の中心軸線CL3は、ペダルクランク軸22の中心軸線CL4と平行である。つまり、回転軸43は、ペダルクランク軸22の中心軸線CL4に対して平行に延びる。中心軸線CL3は、回転軸43の軸方向、つまり、ペダルクランク軸22の軸方向から見たときに、回転軸43の回転中心軸RC3(第3中心軸)となる。回転軸43に固定されたアイドルギア41は、ハウジング21の内部においてハウジング21によって第3中心軸RC3の周りに回転可能に支持される。
【0095】
回転軸43は、2つのベアリング46Lおよび46Rにより、中心軸線CL3周りで回転可能に支持される。ベアリング46Lおよび46Rは、第1ケース211に固定される。アイドルギア41は、回転軸43の軸方向でベアリング46Lよりもベアリング46Rの近くに配置される。アイドルギア41は、減速機24の第2伝達歯車242と噛み合う。これにより、減速機24により増加された電動モータ25の出力トルクがアイドルギア41に伝達される。
【0096】
次に、ペダルクランク軸22周りの構成を説明する。
【0097】
回転軸23は、ペダルクランク軸22と同軸に配置され、ペダルクランク軸22とともに回転可能である。回転軸23は、連結軸231およびワンウェイクラッチ50を含む。
【0098】
連結軸231は、円筒形状を有する。連結軸231には、ペダルクランク軸22が挿入されている。連結軸231は、ペダルクランク軸22と同軸に配置されている。
【0099】
連結軸231の左端部は、ペダルクランク軸22に対して、セレーション結合等で連結されている。その結果、ペダルクランク軸22が前転方向および後転方向の何れに回転しても、連結軸231はペダルクランク軸22とともに回転する。
【0100】
連結軸231の周囲には、トルク検出装置232が配置されている。トルク検出装置232は連結軸231に支持されており、第1ケース211に対しては回転不能となっている。トルク検出装置232は、運転者がペダルを漕ぐときに連結軸231に発生するトルクを検出する。トルク検出装置232は、例えば磁歪式のトルクセンサである。トルク検出装置232は、検出したトルクに応じた信号を、基板48に実装された制御装置に出力する。制御装置は、トルク検出装置232が検出したトルクを参照して、運転者によるペダリングの状態を把握し、電動モータ25を制御する。
【0101】
ワンウェイクラッチ50は、ペダルクランク軸22の軸方向でトルク検出装置232よりも右側に配置されている。ワンウェイクラッチ50は、連結軸231を介してペダルクランク軸22に設けられている。ワンウェイクラッチ50は、ペダルクランク軸22と同軸に配置されている。ワンウェイクラッチ50は、インナ部材51およびアウタ部材52を備える。
【0102】
ワンウェイクラッチ50のインナ部材51は、円筒形状を有する。インナ部材51には、連結軸231の右部分が挿入されている。インナ部材51は、連結軸231と同軸に配置されている。この状態で、連結軸231の右部分は、インナ部材51に対して、セレーション結合等で連結されている。その結果、連結軸231が前転方向および後転方向のいずれに回転しても、インナ部材51は、連結軸231とともに回転する。つまり、ペダルクランク軸22が前転方向および後転方向のいずれに回転しても、インナ部材51は、ペダルクランク軸22とともに回転する。連結軸231およびインナ部材51は、ペダルクランク軸22と一体的に回転するクランク回転入力軸として機能する。
【0103】
ワンウェイクラッチ50のアウタ部材52は、円筒形状を有する。アウタ部材52には、ペダルクランク軸22が挿入されている。アウタ部材52とペダルクランク軸22との間には、滑り軸受49が配置されている。これにより、アウタ部材52は、ペダルクランク軸22に対して同軸で回転可能に配置されている。
【0104】
アウタ部材52とインナ部材51との間には、ワンウェイクラッチ機構としてのラチェット機構が形成されている。これにより、インナ部材51の前転方向の回転力は、アウタ部材52に伝達されるが、インナ部材51の後転方向の回転力は、アウタ部材52に伝達されない。また、電動モータ25の回転により発生したアウタ部材52の前転方向の回転力は、インナ部材51に伝達されない。
【0105】
アウタ部材52は、ベアリング38Rにより、ペダルクランク軸22の中心軸線CL4周りで、ハウジング21に対して回転可能に支持されている。アウタ部材52は、第2ケース212を貫通して配置されている。アウタ部材52のうち、ハウジング21の外側(右側)に位置する部分には、駆動スプロケット34が取り付けられる。
【0106】
アウタ部材52は、被駆動歯車233を有する。被駆動歯車233は、ワンウェイクラッチ50および連結軸231を介してペダルクランク軸22に設けられている。被駆動歯車233は、アイドルギア41と噛み合っている。被駆動歯車233は、第2伝達歯車242およびアイドルギア41よりも大径であって、且つ、第2伝達歯車242およびアイドルギア41よりも多い歯を有する。つまり、被駆動歯車233の回転速度は、第2伝達歯車242およびアイドルギア41のそれぞれの回転速度よりも遅くなる。アイドルギア41が第2伝達歯車242および被駆動歯車233のそれぞれと噛み合うことにより、減速機24により増加された電動モータ25の出力トルクを、単一のアイドルギア41を介して被駆動歯車233に伝達することができる。
【0107】
アウタ部材52は、連結軸231に伝達された人力(ペダル踏力)と、電動モータ25の補助駆動力との合力を駆動スプロケット34に伝達する。アウタ部材52により、ワンウェイクラッチ50を介して入力される人力と、被駆動歯車233を介して入力される補助駆動力とを合成して出力する合力出力軸235が実現されている。合力出力軸235は、ペダルクランク軸22と同軸で回転する。合力出力軸235は、回転軸23に含まれる。
【0108】
[アイドルギア]
次に、本実施形態のアイドルギア41を備える駆動ユニット20についてより詳細に説明する。
【0109】
上述したように、電動補助自転車のうちの一般的な自転車のペダルクランク軸の位置に該当する位置に駆動ユニットを配置すると、一般的な自転車と比較してリアセンタ長が長くなるという課題がある。
【0110】
電動補助車両のリアセンタ長を短くしようとしたとき、ペダルクランク軸に設けられた被駆動歯車の直径を小さくすることが考えられる。このとき、仮に、被駆動歯車と電動モータとの間に「2軸の減速機」を並べると、軸方向における駆動ユニットの幅を小さくすることが難しくなる。減速機の回転軸には、直径および歯数が互いに異なる2個の歯車が軸方向に沿って配置されるため、回転軸の軸方向のサイズは大きくなる傾向にある。2軸の減速機では、そのような回転軸を2個用意し、2個の回転軸を軸方向に互いにずらして配置するため、軸方向のサイズが大きくなってしまう。
【0111】
本実施形態では、動力伝達経路における減速機24と被駆動歯車233との間にアイドルギア41を設けることにより、被駆動歯車233の直径を小さくすることができる。被駆動歯車233の直径を小さくした場合でも、アイドルギア41を介して電動モータ25の出力トルクを被駆動歯車233に伝達することができる。本実施形態では、アイドルギア41を用いることにより、駆動ユニット20の幅(軸方向サイズ)を拡げることなく、被駆動歯車233の直径を小さくすることを可能にし、電動補助自転車10のリアセンタ長を短くすることができる。また、アイドルギア41を用いることにより、電動モータ25、減速機24、および被駆動歯車233の配置の自由度を向上させることができ、駆動ユニット20の更なる小型化を可能にする。
【0112】
以下、駆動ユニット20の小型化を可能にする駆動ユニット20の構成要素の配置関係について説明する。
【0113】
図3から図6は、軸方向から見たときの駆動ユニット20の構成要素の配置関係を示す図である。軸方向は、第1から第4中心軸RC1からRC4のそれぞれに平行な方向である。
【0114】
上述したように、電動モータ25の出力軸2522および出力歯車252Aは、第1中心軸RC1の周りに回転する。減速機24の第1伝達歯車241、第2伝達歯車242および伝達軸243は、第2中心軸RC2の周りに回転する。アイドルギア41および回転軸43は、第3中心軸RC3の周りに回転する。ペダルクランク軸22および被駆動歯車233は、第4中心軸RC4の周りに回転する。アイドルギア41の直径は、被駆動歯車233の直径および第1伝達歯車241の直径のいずれよりも小さい。
【0115】
図3を参照して、第1中心軸RC1および第4中心軸RC4を含む平面を平面61とする。図3では、平面61と図の紙面とが交差する線(破線)によって平面の位置を示している。この破線は、第1中心軸RC1および第4中心軸RC4のそれぞれに直角に交わる垂線であって、第1中心軸RC1と第4中心軸RC4とを結ぶ垂線に相当する。このことは、後述する図4でも同様である。
【0116】
この平面61から第3中心軸RC3までの距離をd3とし、平面61から第2中心軸RC2までの距離をd2とする。このとき、距離d3は距離d2よりも長い。すなわち、ハウジング21内において、アイドルギア41は、減速機24よりも外側に配置されている。
【0117】
アイドルギア41は減速および増速を行わない部材であり、減速機24と被駆動歯車233との間の動力伝達を実現できるサイズであればよい。このため、アイドルギア41は、減速機24の第1伝達歯車241および被駆動歯車233よりも直径を小さくすることができる。距離d3が距離d2よりも長くなるようにアイドルギア41および減速機24を配置することで、直径が相対的に小さいアイドルギア41を第1伝達歯車241よりも外側に配置することができる。言い換えると、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241をハウジング21内のより内側に配置することができ、外側への出っ張りを抑制することができる。ハウジング21の外形を、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241ではなく、直径が相対的に小さいアイドルギア41に沿った形状にできるため、駆動ユニット20を小型化することができる。駆動ユニット20の上下方向のサイズを小さくできることにより、電動補助自転車10の最低地上高を高くすることができる。
【0118】
また、図3に示すように、アイドルギア41を駆動ユニット20の下方に配置することで、サスペンション304(図1)の配置の自由度を高めることができる。アイドルギア41を駆動ユニット20の上方に配置しても上記と同様の効果が得られる。しかし、図1に示すような駆動ユニット20の上方にサスペンション304を配置する車両においては、アイドルギア41を駆動ユニット20の上方に配置すると、サスペンション304の配置に影響を与えることになる。アイドルギア41を駆動ユニット20の下方に配置することで、サスペンション304の配置の自由度を高めることができる。
【0119】
図4を参照して、駆動ユニット20の構成要素の配置関係をさらに説明する。
【0120】
ここで、平面61からアイドルギア41の最遠点までの距離をL3とする。アイドルギア41の最遠点は、アイドルギア41の歯の先端同士を結んだ歯先円のうち、平面61から最も遠い位置を意味する。平面61から出力歯車252Aの最遠点までの距離をL1、平面61から第1伝達歯車241の最遠点までの距離をL2、平面61から被駆動歯車233の最遠点までの距離をL4とする。出力歯車252Aの最遠点は、出力歯車252Aの歯の先端同士を結んだ歯先円のうち、平面61から最も遠い位置を意味する。第1伝達歯車241の最遠点は、第1伝達歯車241の歯の先端同士を結んだ歯先円のうち、平面61から最も遠い位置を意味する。被駆動歯車233の最遠点は、被駆動歯車233の歯の先端同士を結んだ歯先円のうち、平面61から最も遠い位置を意味する。
【0121】
距離L3は、距離L1、L2およびL4のいずれよりも長い。特に、距離L2よりも距離L3を長くすることで、直径が相対的に小さいアイドルギア41を第1伝達歯車241よりも外側に配置することができる。すなわち、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241をハウジング21内のより内側に配置することができ、外側への出っ張りを抑制することができる。これにより、駆動ユニット20を小型化することができる。
【0122】
図5を参照して、駆動ユニット20の構成要素の配置関係をさらに説明する。
【0123】
軸方向から見た駆動ユニット20において、第1から第4中心軸RC1からRC4のうちの、ある三軸を頂点とする三角形を設定する。このとき、この三角形の内部に、第1から第4中心軸RC1からRC4のうちの残りの一軸が含まれる。図5は、一例として、軸方向から見たときの中心軸RC1、RC3およびRC4を頂点とする三角形63を示している。図5に示す例では、第1伝達歯車241の第2中心軸RC2は、この中心軸RC1、RC3およびRC4を頂点とする三角形63の内部に含まれる。直径が相対的に大きい第1伝達歯車241をハウジング21内のより内側に配置することで、外側への出っ張りを抑制することができる。これにより、駆動ユニット20を小型化することができる。
【0124】
次に、減速機24の第1伝達歯車241と被駆動歯車233との位置関係を説明する。
【0125】
図3を参照して、本実施形態では、軸方向から見た駆動ユニット20において、被駆動歯車233の少なくとも一部が第1伝達歯車241と重なるように、第1伝達歯車241および被駆動歯車233が配置されている。
【0126】
被駆動歯車233の少なくとも一部と第1伝達歯車241とが重なるように配置することで、第2中心軸RC2と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸RC1と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。第1中心軸RC1と第4中心軸RC4との間の距離を短くすることができ、駆動ユニット20の前後方向のサイズを小さくすることができる。
【0127】
駆動ユニット20の前後方向のサイズが小さくなることで、ダウンチューブ123(図1)に配置するバッテリユニット26(図1)のスペースを確保することができる。ダウンチューブにバッテリユニットを配置する車両では、車両の前後方向におけるペダルクランク軸と前輪との間の空間(フロントセンタ)にバッテリユニットが配置される。バッテリ容量を大きくしようとするとバッテリユニットのサイズが大きくなり、その分だけフロントセンタ長を長くする必要がある。しかし、フロントセンタ長を長くすると、車両の操作性が低下するという課題がある。
【0128】
本実施形態によれば、駆動ユニット20の前後方向のサイズを小さくできることで、バッテリユニット26の配置の自由度を高めることができる。フロントセンタ長を長くすることなく、大容量のバッテリユニット26を配置することが容易となる。
【0129】
次に、図6を参照して、減速機24の第1伝達歯車241と、アイドルギア41と、被駆動歯車233との位置関係を説明する。
【0130】
軸方向から見た駆動ユニット20において、被駆動歯車233とアイドルギア41とは領域65(図6に黒塗りで示す部分)において係合している。本実施形態では、この被駆動歯車233とアイドルギア41とが係合する領域65の少なくとも一部が第1伝達歯車241と重なるように、第1伝達歯車241、アイドルギア41および被駆動歯車233が配置されている。
【0131】
被駆動歯車233とアイドルギア41とが係合する領域65の少なくとも一部が第1伝達歯車241と重なるように配置することで、第2中心軸RC2と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸RC1と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。第1中心軸RC1と第4中心軸RC4との間の距離を短くすることができ、駆動ユニット20の前後方向のサイズを小さくすることができる。
【0132】
次に、図6を参照して、第3中心軸RC3と減速機24の第1伝達歯車241との位置関係を説明する。アイドルギア41は第3中心軸RC3の周りに回転する。
【0133】
軸方向から見た駆動ユニット20において、第3中心軸RC3は、第1伝達歯車241と重なっている。第3中心軸RC3と第1伝達歯車241とが重なるようにアイドルギア41および減速機24を配置することで、第2中心軸RC2と第3中心軸RC3とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸RC1と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。第1中心軸RC1と第4中心軸RC4との間の距離を短くすることができ、駆動ユニット20の前後方向のサイズを小さくすることができる。
【0134】
[被駆動歯車の支持構造]
次に、被駆動歯車233を支持する構造を説明する。図7は、駆動ユニット20内の被駆動歯車233およびその周囲の構造の一例を示す断面図である。
【0135】
上述したように、被駆動歯車233は、ワンウェイクラッチ50のアウタ部材52に設けられている。アウタ部材52のうち、ハウジング21の外側(右側)に位置する部分には、駆動スプロケット34が取り付けられる。
【0136】
アウタ部材52および駆動スプロケット34がともに回転しながら電動補助自転車10が走行しているとき、アウタ部材52には駆動スプロケット34からの荷重が掛かる。この駆動スプロケット34からの荷重により、被駆動歯車233を備えるアウタ部材52には、すりこぎ運動(歳差運動)が発生する。すりこぎ運動が大きいと、被駆動歯車233とアイドルギア41との噛み合い精度が低下するという課題が発生する。
【0137】
本実施形態では、アウタ部材52を支持するベアリング38Rとして、2個のベアリング381Rおよび382Rを備える。ベアリング381Rおよび382Rのそれぞれは、内輪、外輪および転動体を含む転がり軸受である。ベアリング381Rおよび382Rそれぞれの外輪は、ハウジング21の第2ケース212に圧入されており、それらの内輪にアウタ部材52がすきまばめされている。
【0138】
駆動ユニット20の左右方向において、ベアリング382Rは外側に配置されており、ベアリング381Rは内側に配置されている。ベアリング381Rとベアリング382Rとは互いに接触していてもよいし、互いに離れて配置されていてもよい。
【0139】
アウタ部材52を2個のベアリング381Rおよび382Rで支持することにより、アウタ部材52の回転のぶれを低減させ、アウタ部材52のすりこぎ運動を低減させることができる。すりこぎ運動が低減することにより、被駆動歯車233とアイドルギア41との噛み合い精度を向上させることができる。これにより、被駆動歯車233とアイドルギア41とが噛み合うときに発生する騒音を低減させることができるとともに、回転軸の摩耗を低減させることができる。また、アウタ部材52を支持するベアリング381Rおよび382Rのシール性を向上させることができる。
【0140】
ここで、駆動スプロケット34、被駆動歯車233、ベアリング381Rおよび382Rの位置関係を説明する。
【0141】
ペダルクランク軸22の軸方向において、アウタ部材52のうちの駆動スプロケット34が取り付けられる位置341から、ベアリング381Rの最も内側に位置する部分(ベアリング381Rの左端部)までの距離をaとする。ペダルクランク軸22の軸方向において、取り付け位置341から、被駆動歯車233とアイドルギア41とが噛み合う部分の中心までの距離をbとする。このとき、距離aと距離bとの関係は、下記(式1)で表される。
a/b≧0.5 ・・・(式1)
【0142】
駆動ユニット20の左右方向において内側に配置されるベアリング381Rの位置は、駆動スプロケット34の取り付け位置341から離れている方が、アウタ部材52のすりこぎ運動をより低減させることができる。駆動ユニット20の左右方向において、距離bの半分の位置よりも内側にベアリング381Rの左端部が位置するように、ベアリング381Rを配置することで、アウタ部材52のすりこぎ運動をより低減させることができる。
【0143】
ベアリング381Rを駆動スプロケット34の取り付け位置341から離して配置するとともに、ベアリング382Rは、取り付け位置341にできるだけ近い位置に配置することで、アウタ部材52のすりこぎ運動をより低減させることができる。例えば、駆動ユニット20の左右方向において、距離bの半分の位置よりも外側にベアリング382Rの左端部が位置するように、ベアリング382Rを配置することで、アウタ部材52のすりこぎ運動をより低減させることができる。
【0144】
ベアリング381Rとベアリング382Rとのサイズは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0145】
また、ベアリング381Rおよび382Rの代わりに、複列型のベアリングが用いられてもよい。複列型のベアリングとして、例えば、複列アンギュラ玉軸受および複列深溝玉軸受などを用いることができるが、それらに限定されない。ベアリング381Rおよび382Rの代わりに、ニードルベアリングを用いてもよい。
【0146】
[放熱構造]
次に、電動モータ25のコイル2511に発生した熱を外部に放熱する構造を説明する。図8は、駆動ユニット20内の電動モータ25およびその周囲の構造の一例を示す断面図である。図8に示す例では、電動モータ25のステータ251とハウジング21のカバー213との間に、放熱剤2515(図8にハッチングで示す部分)が配置されている。ステータ251のボビン2512に巻かれたコイル2511とカバー213との間に放熱剤2515を設けることで、コイル2511に発生した熱を効率的に外部に放熱することができる。
【0147】
放熱剤2515としては、熱伝導率が高い任意の材料が用いられる。例えば、放熱剤2515として、アルミナフィラを混入した高熱伝導のエポキシおよび不飽和ポリエステル樹脂などが用いられるが、それらに限定されない。
【0148】
ボビン2512に巻かれたコイル2511の全周を放熱剤2515で覆っても、放熱は可能である。しかし、コイル2511の全周を覆うように放熱剤2515を充てんした場合、駆動ユニット20の重量が増加するという課題がある。また、コイル2511の全周を放熱剤2515で覆う場合、放熱剤2515を充てんするための金型が必要となり、製造コストおよび製造工程が増加するという課題がある。
【0149】
本実施形態では、ステータ251とカバー213との間のみに放熱剤2515を設けることで、重量の増加を抑えながら、コイル2511に発生した熱を効率的に外部に放熱することができる。
【0150】
図8を参照して、本実施形態のカバー213は内壁2131を有する。カバー213は、内壁2131とカバー213の外周部分の壁部2132とで、コイル2511が巻かれたボビン2512の左部分を覆う形状を有している。駆動ユニット20の製造時においては、カバー213の内壁2131と壁部2132との間に放熱剤2515を塗布する。そして、その放熱剤2515が塗布されたカバー213をハウジング21の第1ケース211に取り付けることで、コイル2511とカバー213との間に放熱剤2515を設けた構成を容易に実現することができる。放熱剤2515を充てんするための金型は不要であり、製造コストおよび製造工程を低減させることができる。
【0151】
また、カバー213が内壁2131を有することで、カバー213に放熱剤2515を塗布するときに、放熱剤2515が不要な領域に放熱剤2515が流れ出すことを抑制することができる。また、カバー213の内壁2131と壁部2132とで、コイル2511が巻かれたボビン2512の左部分を覆うことで、放熱剤2515がロータ252側に流れ出すことを抑制することができる。
【0152】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、サスペンションを備える電動補助自転車を例示したが、本発明は、サスペンションを備えていない電動補助自転車にも好適に用いることができる。
【0153】
上述の実施形態において、駆動ユニット20(図2)は、出力軸2522、伝達軸243、回転軸43およびペダルクランク軸22の4軸を備えていたが、軸の数は4軸に限定されない。本発明は、5軸以上を備える駆動ユニットにも適用される。例えば、電動モータ25の出力歯車252Aと減速機24の第1伝達歯車241との間に歯車が配置され、その歯車を介して出力歯車252Aから第1伝達歯車241へトルクが伝達されるような駆動ユニットにも本発明は適用される。
【0154】
上述した実施形態では、電動モータ25の全体がハウジング21内に収容されていたが、ハウジング21の構造はこれに限定されない。電動モータ25の一部のみがハウジング21内に収容されてもよい。例えば、第1ケース211の左部分に電動モータ25が通ることのできる開口部があり、その開口部を通って、電動モータ25の一部がハウジング21内に位置するように取り付けられてもよい。また、その場合、防塵および防水のために開口部をカバーで覆ってもよい。
【0155】
カバー213(図2)は、ハウジング21の一部であり得、ハウジング21に含まれ得る。カバー213は、電動モータ25の側面を覆う形状を有し、電動モータ25はカバー213によって支持されてもよい。電動モータ25がカバー213によって支持される形態も、電動モータ25がハウジング21によって支持される形態に含まれる。
【0156】
上述した実施形態では、電動補助自転車10として二輪の電動補助自転車を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電動補助自転車10は三輪以上の電動補助自転車であってもよい。
【0157】
上述した実施形態では、乗員がペダルを踏んで発生させる人力および電動モータが発生させる補助力が伝達される駆動輪は後輪であったが、本発明はこれに限定されない。電動補助自転車の形態に応じて、それら人力および補助力は前輪に伝達されてもよいし、前輪および後輪の両方に伝達されてもよい。
【0158】
上述した実施形態では、車両は電動補助自転車であったが、電動補助自転車以外の車両であってもよい。駆動ユニットの小型化が求められる車両において、本発明は好適に用いられ得る。
【0159】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0160】
本発明のある実施形態に係る駆動ユニット20は、電動補助車両10に用いられる。駆動ユニット20は、出力歯車252Aを有する出力軸2522を備える電動モータ25と、電動モータ25の一部または全部を収容するハウジング21と、ハウジング21を貫通し、ハウジング21によって回転可能に支持されるペダルクランク軸22であって、被駆動歯車233が設けられたペダルクランク軸22と、電動モータ25の出力歯車252Aのトルクを被駆動歯車233に伝達する伝達機構40と、ペダルクランク軸22と同軸で回転し、踏力および電動モータ25の補助力を合成する合力出力軸235とを備える。伝達機構40は、ハウジング21の内部においてハウジング21によって回転可能に支持される減速機24と、ハウジング21の内部においてハウジング21によって回転可能に支持されるアイドルギア41とを有する。減速機24は、電動モータ25の出力歯車252Aのトルクを増加させ、増加したトルクは、アイドルギア41を介して被駆動歯車233に伝達される。
【0161】
電動補助車両10のリアセンタ長を短くしようとしたとき、ペダルクランク軸22の被駆動歯車233の直径を小さくすることが考えられる。このとき、仮に、ペダルクランク軸22の被駆動歯車233と電動モータ25との間に「2軸の減速機」を並べると、軸方向における駆動ユニット20の幅を小さくすることが難しくなる。減速機の回転軸には、直径および歯数が互いに異なる2個の歯車が軸方向に沿って配置されるため、回転軸の軸方向のサイズは大きくなる傾向にある。2軸の減速機では、そのような回転軸を2個用意し、2個の回転軸を軸方向に互いにずらして配置するため、軸方向のサイズが大きくなってしまう。
【0162】
本発明のある実施形態によれば、アイドルギア41を用いることにより、駆動ユニット20の幅(軸方向サイズ)を拡げることなく、被駆動歯車233の直径を小さくすることを可能にし、電動補助車両10のリアセンタ長を短くすることができる。アイドルギア41を用いることにより、電動モータ25、減速機24、および被駆動歯車233の配置の自由度が高まり、駆動ユニット20の更なる小型化を可能にする。
【0163】
ある実施形態において、電動モータ25は、出力軸2522が第1中心軸RC1の周りに回転するようハウジング21によって支持され、減速機24は、ハウジング21の内部においてハウジング21によって第2中心軸RC2の周りに回転可能に支持され、第1伝達歯車241、第1伝達歯車241よりも歯数が少ない第2伝達歯車242、および第1伝達歯車241の回転を第2伝達歯車242に伝える伝達軸243を有し、アイドルギア41は、ハウジング21の内部においてハウジング21によって第3中心軸RC3の周りに回転可能に支持され、ペダルクランク軸22は、第4中心軸RC4に沿ってハウジング21を貫通し、ハウジング21によって第4中心軸RC4の周りに回転可能に支持されてもよい。
【0164】
歯数の異なる2枚の伝達歯車によって増加させたトルクを、アイドルギア41を介して被駆動歯車233に伝達することができる。
【0165】
ある実施形態において、アイドルギア41は、減速機24の第2伝達歯車242および被駆動歯車233のそれぞれに係合していてもよい。
【0166】
アイドルギア41が第2伝達歯車242および被駆動歯車233のそれぞれに係合することにより、単一のアイドルギア41を介して減速機24から被駆動歯車233にトルクを伝達することができる。このようなアイドルギア41の存在により、被駆動歯車233のサイズを縮小することが容易になる。
【0167】
ある実施形態において、減速機24の第1伝達歯車241は、電動モータ25の出力歯車252Aに係合していてもよい。
【0168】
単一の減速機24および単一のアイドルギア41が電動モータ25のトルクを被駆動歯車233まで伝達するため、余分な歯車を用いることなく駆動ユニット20を小型化することができる。
【0169】
ある実施形態において、第1中心軸RC1および第4中心軸RC4を含む平面61から第3中心軸RC3までの距離d3は、平面61から第2中心軸RC2までの距離d2よりも長く、アイドルギア41の直径は、被駆動歯車233の直径および第1伝達歯車241の直径のいずれよりも小さくてもよい。
【0170】
アイドルギア41は減速および増速を行わない部材であり、減速機24と被駆動歯車233との間の動力伝達を実現できるサイズであればよい。このため、アイドルギア41は、減速機24の第1伝達歯車241およびペダルクランク軸22の被駆動歯車233よりも直径を小さくすることができる。第1中心軸RC1および第4中心軸RC4を含む平面61から第3中心軸RC3までの距離d3を、当該平面61から第2中心軸RC2までの距離d2よりも長くすることにより、直径が相対的に小さいアイドルギア41を第1伝達歯車241よりも外側に配置することができる。言い換えると、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241をハウジング21内のより内側に配置することができ、外側への出っ張りを抑制することができる。ハウジング21の外形を、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241ではなく、直径が相対的に小さいアイドルギア41に沿った形状にできるため、駆動ユニット20を小型化することができる。
【0171】
ある実施形態において、第1中心軸RC1および第4中心軸RC4を含む平面61からアイドルギア41の最遠点までの距離L3は、平面61から出力歯車252Aの最遠点、平面61から第1伝達歯車241の最遠点、および、平面61から被駆動歯車233の最遠点までの各距離L1、L2、L4よりも長く、アイドルギア41の直径は、被駆動歯車233の直径および第1伝達歯車241の直径のいずれよりも小さくてもよい。
【0172】
アイドルギア41は減速および増速を行わない部材であり、減速機24と被駆動歯車233との間の動力伝達を実現できるサイズであればよい。このため、アイドルギア41は、減速機24の第1伝達歯車241およびペダルクランク軸22の被駆動歯車233よりも直径を小さくすることができる。第1中心軸RC1および第4中心軸RC4を含む平面61からアイドルギア41の最遠点までの距離L3を、当該平面61から出力歯車252Aの最遠点、当該平面61から第1伝達歯車241の最遠点、および当該平面61から被駆動歯車233の最遠点までの各距離L1、L2、L4よりも長くする。これにより、直径が相対的に小さいアイドルギア41を第1伝達歯車241よりも外側に配置することができる。言い換えると、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241をハウジング21内のより内側に配置することができ、外側への出っ張りを抑制することができる。ハウジング21の外形を、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241ではなく、直径が相対的に小さいアイドルギア41に沿った形状にできるため、駆動ユニット20を小型化することができる。
【0173】
ある実施形態において、第1中心軸RC1に平行な軸方向から見たとき、第1中心軸RC1からRC4のうちの、ある三軸を頂点とする三角形に、残りの一軸が含まれてもよい。
【0174】
上記残りの一軸の周りに回転する歯車をハウジング21内のより内側に配置することができ、当該歯車の外側への出っ張りを抑制することができる。これにより、駆動ユニット20を小型化することができる。
【0175】
ある実施形態において、第1中心軸RC1に平行な軸方向から見たとき、第2中心軸RC2は、第1中心軸RC1、第3中心軸RC3、および第4中心軸RC4を頂点とする三角形に含まれてもよい。
【0176】
アイドルギア41は減速および増速を行わない部材であり、減速機24と被駆動歯車233との間の動力伝達を実現できるサイズであればよい。このため、アイドルギア41は、減速機24の第1伝達歯車241およびペダルクランク軸22の被駆動歯車233よりも直径を小さくすることができる。第2中心軸RC2は、第1中心軸RC1、第3中心軸RC3、および第4中心軸RC4を頂点とする三角形に含まれる。これにより、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241をハウジング21内のより内側に配置することができ、外側への出っ張りを抑制することができる。ハウジング21の外形を、直径が相対的に大きい第1伝達歯車241ではなく、直径が相対的に小さいアイドルギア41に沿った形状にできるため、駆動ユニット20を小型化することができる。
【0177】
ある実施形態において、第1中心軸RC1に平行な軸方向から見たとき、被駆動歯車233の少なくとも一部は、第1伝達歯車241と重なっていてもよい。
【0178】
被駆動歯車233の少なくとも一部と第1伝達歯車241とが重なるように配置することで、第2中心軸RC2と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸RC1と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。第1中心軸RC1と第4中心軸RC4との間の距離を短くすることができ、駆動ユニット20の前後方向のサイズを小さくすることができる。駆動ユニット20の前後方向のサイズが小さくなることで、ダウンチューブ123に配置するバッテリユニット26のスペースを確保することができる。
【0179】
ダウンチューブにバッテリユニットを配置する車両では、車両の前後方向におけるペダルクランク軸と前輪との間の空間(フロントセンタ)にバッテリユニットが配置される。バッテリ容量を大きくしようとするとバッテリユニットのサイズが大きくなり、その分だけフロントセンタ長を長くする必要がある。しかし、フロントセンタ長を長くすると、車両の操作性が低下するという課題がある。
【0180】
本発明のある実施形態によれば、駆動ユニット20の前後方向のサイズが小さくなることで、バッテリユニット26の配置の自由度を高めることができる。フロントセンタ長を長くすることなく、大容量のバッテリユニット26を配置することが容易となる。
【0181】
ある実施形態において、第1中心軸RC1に平行な軸方向から見たとき、被駆動歯車233とアイドルギア41とが係合している領域65の少なくとも一部は、第1伝達歯車241と重なっていてもよい。
【0182】
被駆動歯車233とアイドルギア41とが係合している領域65の少なくとも一部が第1伝達歯車241と重なるように配置することで、第2中心軸RC2と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸RC1と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。第1中心軸RC1と第4中心軸RC4との間の距離を短くすることができ、駆動ユニット20の前後方向のサイズを小さくすることができる。
【0183】
ある実施形態において、第1中心軸RC1に平行な軸方向から見たとき、第3中心軸RC3は、第1伝達歯車241と重なっていてもよい。
【0184】
第3中心軸RC3と第1伝達歯車241とが重なるようにアイドルギア41および減速機24を配置することで、第2中心軸RC2と第3中心軸RC3とを互いに近付けることができる。これにより、第1中心軸RC1と第4中心軸RC4とを互いに近付けることができる。第1中心軸RC1と第4中心軸RC4との間の距離を短くすることができ、駆動ユニット20の前後方向のサイズを小さくすることができる。
【0185】
ある実施形態において、ペダルクランク軸22にはワンウェイクラッチ50が設けられていてもよい。
【0186】
ペダルクランク軸22にワンウェイクラッチ50が設けられていることにより、ペダルクランク軸22の順回転は駆動スプロケット34に伝達するが、ペダルクランク軸22の逆回転は駆動スプロケット34に伝達させないようにすることができる。
【0187】
本発明のある実施形態に係る電動補助車両10は、上記の駆動ユニット20を備える。
【0188】
電動補助車両10が、ペダルクランク軸22の被駆動歯車233の直径が小さい駆動ユニット20を備えることで、電動補助車両10のリアセンタ長を短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、電動補助車両および電動補助車両に搭載される駆動ユニットの分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0190】
10:電動補助車両(電動補助自転車)、 20:駆動ユニット、 21:ハウジング、 22:ペダルクランク軸、 24:減速機、 25:電動モータ、 26:バッテリユニット、 34:駆動スプロケット、 35:クランクアーム、 37:ペダル、 40:伝達機構、 41:アイドルギア、 50:ワンウェイクラッチ、 51:インナ部材、 52:アウタ部材、 61:平面、 63:三角形、 65:領域、 123:ダウンチューブ、 233:被駆動歯車、 235:合力出力軸、 241:第1伝達歯車、 242:第2伝達歯車、 243:伝達軸、 252A:出力歯車、 2522:出力軸、 d2:距離、 d3:距離、 L1:距離、 L2:距離、 L3:距離、 L4:距離、 RC1:第1中心軸、 RC2:第2中心軸、 RC3:第3中心軸、 RC4:第4中心軸
図1
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図8