(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】エアゾールスプレー整髪剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230710BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230710BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230710BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230710BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/06
A61Q5/06
(21)【出願番号】P 2021548738
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033307
(87)【国際公開番号】W WO2021059908
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2019174192
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 亜紗子
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-217362(JP,A)
【文献】特開2012-025728(JP,A)
【文献】特開2001-288050(JP,A)
【文献】特開2008-290973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾールスプレー容器と、
整髪剤組成物と、
噴射剤とを備え、
前記エアゾールスプレー容器内に、前記整髪剤組成物と前記噴射剤とが充填されており、
前記整髪剤組成物が、前記エアゾールスプレー容器内より霧状に吐出可能であり、
前記整髪剤組成物が、下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cとを含み、
前記整髪剤組成物が、皮膜形成ポリマーを含まないか、又は、皮膜形成ポリマーを0.1質量%以下で含み、
前記整髪剤組成物が、増粘剤を含まないか、又は、増粘剤を0.1質量%以下で含み、
前記成分A100質量%中、下記成分A1の含有量が50.0質量%以上、90.0質量%以下であり、
前記整髪剤組成物100質量%中、前記成分Aの含有量が10.0質量%以上、48.0質量%以下であり、前記成分Bの含有量が30.0質量%以上、85.0質量%以下であり、前記成分Cの含有量が5.0質量%以上、25.0質量%以下であり、
前記噴射剤が、液化石油ガスを含む、エアゾールスプレー整髪剤。
成分A:下記成分A1及び下記成分A2
成分A1:
エチレンオキシドの平均付加モル数が5以上、120以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分A2:
エチレンオキシドの平均付加モル数が10以上、50以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル
成分B:エタノール
成分C:水
【請求項2】
前記整髪剤組成物と前記噴射剤との合計100質量%中、前記整髪剤組成物の含有量が20.0質量%以上、70.0質量%以下である、請求項1に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
【請求項3】
前記噴射剤100質量%中、前記液化石油ガスの含有量が50.0質量%以上である、請求項1又は2に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
【請求項4】
前記成分A1が、下記成分A11と、下記成分A12とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
成分A11:エチレンオキシドの平均付加モル数が5以上、40以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分A12:エチレンオキシドの平均付加モル数が50以上、80以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
【請求項5】
エアゾールスプレー容器内で、前記整髪剤組成物と前記噴射剤とを混合して乳化状態とした後、25℃で静置したときに、前記乳化状態が崩壊して、液相が相分離するまでの時間が、15分以内である、請求項1~4のいずれか1項に記載のエアゾールスプレー整髪剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾールスプレー容器内に、整髪剤組成物が充填されているエアゾールスプレー整髪剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアグリース及びヘアポマード等のグリース状の整髪剤組成物は、毛髪をくせ付ける整髪力、毛髪を立ち上げる整髪力、整髪保持力及び再整髪性等に優れた整髪特性を有し、また、毛髪に艶を付与する特性も有する。しかしながら、グリース状の整髪剤組成物は、固形状又はペースト状の性状を有し、流動性を全く有さないか又は流動性をわずかにしか有さない。そのため、グリース状の整髪剤組成物は、通常、ジャー容器等に充填されている。そして、使用時には、ジャー容器などに充填されたグリース状の整髪剤組成物を、容器から指等で取出し、毛髪などに塗布して、整髪が行われる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、毛髪への塗布性及び使用性に優れる整髪剤として、エアゾール容器内にエアゾール整髪剤組成物が充填されているエアゾール整髪剤が知られている。エアゾール整髪剤には、エアゾール容器から霧状に吐出されるエアゾールスプレー整髪剤、及びエアゾール容器から泡状に吐出されるエアゾールフォーム整髪剤などの種々の形態がある。エアゾール整髪剤用の整髪剤組成物は、エアゾール容器から良好に吐出できるように流動性を有することが必須である。そのため、エアゾール整髪剤用の整髪剤組成物として、従来のグリース状の整髪剤組成物は用いることができない。
【0004】
また、下記の特許文献3に示すように、ポマード作用を有するエアゾールフォーム整髪剤も知られている。特許文献3に記載のエアゾールフォーム整髪剤は、(A)(a1)カルボキシレート基を1個有するアニオン性界面活性剤を1個以上、及び(a2)非イオン性乳化剤を1個以上含有する単一相組成物と、(B)組成物(A)を起泡するための装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-110649号公報
【文献】特開2000-34212号公報
【文献】特開2000-26255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡便に整髪することができ、毛髪をくせ付ける整髪力及び再整髪性に優れ、かつ、吐出安定性に優れるエアゾールスプレー整髪剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ヘアグリース及びヘアポマード等のグリース状の整髪剤組成物は、毛髪をくせ付ける整髪力及び再整髪性に優れるものの、整髪時に整髪剤組成物を掌に取って、掌上でのばす必要があり、また、整髪後に掌を洗浄する必要がある。このため、グリース状の整髪剤組成物は、簡便性に劣る。
【0008】
また、上記の特許文献3に記載のようなポマード作用を有するエアゾールフォーム整髪剤でも、整髪時に整髪剤組成物を掌に取る必要があり、また、整髪後に掌を洗浄する必要があるため、簡便性に劣る。
【0009】
一方、エアゾールスプレー整髪剤は、整髪時に整髪剤組成物を掌に取ることなく、毛髪に直接塗布することができ、また、塗布後に櫛を用いることにより、掌等に整髪剤組成物が付着することなく整髪することができる。このため、エアゾールスプレー整髪剤は、簡便に整髪することができる。なお、特許文献3に記載の整髪剤組成物では、エアゾール容器から該整髪剤組成物を霧状に吐出することはできず、エアゾールスプレー整髪剤として用いることはできない。
【0010】
本発明者は、毛髪をくせ付ける整髪力及び再整髪性に優れるという、グリース状の整髪剤組成物の整髪特性を有しながら、霧状に吐出可能なエアゾールスプレー整髪剤を鋭意検討した。その結果、本発明者は、以下のエアゾールスプレー整髪剤であれば、上記の課題を解決できることを見出した。
【0011】
本発明は、エアゾールスプレー容器と、整髪剤組成物と、噴射剤とを備え、前記エアゾールスプレー容器内に、前記整髪剤組成物と前記噴射剤とが充填されており、前記整髪剤組成物が、前記エアゾールスプレー容器内より霧状に吐出可能であり、前記整髪剤組成物が、下記成分(A)と、下記成分(B)と、下記成分(C)とを含み、前記整髪剤組成物が、皮膜形成ポリマーを含まないか、又は、皮膜形成ポリマーを0.1質量%以下で含み、前記整髪剤組成物が、増粘剤を含まないか、又は、増粘剤を0.1質量%以下で含み、前記成分(A)100質量%中、下記成分(A1)の含有量が50.0質量%以上であり、前記整髪剤組成物100質量%中、前記成分(A)の含有量が10.0質量%以上、48.0質量%以下であり、前記成分(B)の含有量が30.0質量%以上、85.0質量%以下であり、前記成分(C)の含有量が5.0質量%以上、25.0質量%以下であり、前記噴射剤が、液化石油ガスを含む、エアゾールスプレー整髪剤を提供する。
【0012】
成分(A):下記成分A1、又は、下記成分A1及び下記成分A2
成分(A1):ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分(A2):ポリオキシエチレンアルキルエーテル
成分(B):エタノール
成分(C):水
【0013】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記整髪剤組成物と前記噴射剤との合計100質量%中、前記整髪剤組成物の含有量が20.0質量%以上、70.0質量%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記噴射剤100質量%中、前記液化石油ガスの含有量が50.0質量%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、前記成分(A1)が、下記成分(A11)と、下記成分(A12)とを含むことが好ましい。
【0016】
成分(A11):エチレンオキシドの平均付加モル数が5以上、40以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分(A12):エチレンオキシドの平均付加モル数が50以上、80以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
【0017】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、エアゾールスプレー容器内で、前記整髪剤組成物と前記噴射剤とを混合して乳化状態とした後、25℃で静置したときに、前記乳化状態が崩壊して、液相が相分離するまでの時間が、15分以内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、簡便に整髪することができ、毛髪をくせ付ける整髪力及び再整髪性に優れ、かつ、吐出安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤は、エアゾールスプレー容器と、整髪剤組成物と、噴射剤とを備える。本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記エアゾールスプレー容器内に、上記整髪剤組成物と上記噴射剤とが充填されている。上記整髪剤組成物は、上記エアゾールスプレー容器内より霧状に吐出可能である。
【0021】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、整髪剤組成物をエアゾールスプレー容器内より霧状に吐出できる。このため、整髪剤組成物を毛髪に直接塗布することができ、また、塗布後に櫛を用いることにより、掌等に整髪剤組成物が付着することなく、整髪することができる。櫛を用いて整髪することにより、整髪後に手を洗う必要がなく、外出先でも、簡便に整髪することができる。
【0022】
本発明では、毛髪をくせ付ける整髪力及び再整髪性に優れるというグリース状の整髪剤組成物が有する整髪特性を、エアゾールスプレー整髪剤で発揮させることができる。また、本発明のエアゾールスプレー整髪剤は、毛髪を立ち上げる整髪力にも優れる。
【0023】
また、一般に、エアゾールスプレー容器は、エアゾールフォーム容器等と比べて、吐出口の孔径が小さいため、整髪剤組成物が詰まりやすい。しかしながら、本発明のエアゾールスプレー整髪剤は、整髪剤組成物が詰まりにくく、吐出安定性に優れる。
【0024】
[整髪剤組成物(エアゾールスプレー整髪剤組成物)]
上記整髪剤組成物は、「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、又は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンアルキルエーテル」と、「エタノール」と、「水」とを含む。
【0025】
本明細書においては、上記「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、又は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンアルキルエーテル」を「成分(A)」と称する場合がある。
【0026】
本明細書においては、上記「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」を「成分(A1)」と称する場合がある。
【0027】
本明細書においては、上記「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」を「成分(A2)」と称する場合がある。
【0028】
すなわち、上記整髪剤組成物は、成分(A)として、成分(A1)を含むか、又は、成分(A1)と成分(A2)との双方を含む。
【0029】
本明細書においては、上記「エタノール」を「成分(B)」と称する場合がある。
【0030】
本明細書においては、上記「水」を「成分(C)」と称する場合がある。
【0031】
上記整髪剤組成物は、成分(A)と成分(B)と成分(C)とを少なくとも含む。上記整髪剤組成物は、成分(A)~(C)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記の成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)や他の成分は、それぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
(成分(A))
成分(A)は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(成分(A1))、又は、成分(A1)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(成分(A2))である。すなわち、成分(A)は、成分(A1)であるか、又は、成分(A1)と成分(A2)との混合物である。成分(A)は、ノニオン界面活性剤である。上記整髪剤組成物は、成分(A)として、成分(A1)のみを含んでいてもよく、成分(A1)と成分(A2)との双方を含んでいてもよい。上記整髪剤組成物は、成分(A2)を含まなくてもよい。
【0033】
<成分(A1)>
成分(A1)は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。成分(A1)は、ノニオン界面活性剤である。成分(A1)を用いることにより、毛髪間に適度な粘着力を付与することができ、かつ、整髪後の毛髪に適度な硬さを付与することができる。そのため、毛髪をくせ付ける整髪力及び再整髪性を高めることができ、また、毛髪を立ち上げる整髪力も高めることができる。さらに、成分(A1)を用いることにより、毛髪に艶を付与することができる。成分(A1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
成分(A1)のエチレンオキシド(EO)の平均付加モル数(ポリオキシエチレン部分のEOの平均付加モル数)は、特に限定されないが、良好な整髪力を発揮する観点から、好ましくは5以上であり、より好ましくは20~120である。EOの平均付加モル数が小さい成分(A1)は毛髪に艶を付与する効果や毛髪間に粘着力を付与する効果が高く、EOの平均付加モル数が大きくなるに従い、整髪後の毛髪に硬さを付与する効果が高くなる。毛髪間の粘着力が高くなると毛髪をくせ付ける整髪力が高くなる傾向にあり、毛髪に硬さを付与すると毛髪を立ち上げる整髪力が高くなる傾向にある。このため、本発明では、整髪剤組成物に求められる整髪特性に応じて、適切なEOの平均付加モル数を有する成分(A1)を選択すればよい。
【0035】
毛髪に艶を良好に付与する観点及び毛髪間に適度な粘着力を良好に付与する観点からは、成分(A1)は、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数が5以上、40以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含むことが好ましい。本明細書においては、上記「エチレンオキシドの平均付加モル数が5以上、40以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」を「成分(A11)」と称する場合がある。毛髪に艶をより一層良好に付与する観点及び毛髪間に適度な粘着力をより一層良好に付与する観点からは、成分(A11)のEOの平均付加モル数は、好ましくは20以上である。
【0036】
毛髪間に適度な粘着力を良好に付与する観点及び整髪後の毛髪に適度な硬さを良好に付与する観点からは、成分(A1)は、エチレンオキシドの平均付加モル数が50以上、80以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含むことが好ましい。本明細書においては、上記「エチレンオキシドの平均付加モル数が50以上、80以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」を「成分(A12)」と称する場合がある。毛髪間に適度な粘着力をより一層良好に付与する観点及び整髪後の毛髪に適度な硬さをより一層良好に付与する観点からは、成分(A12)のEOの平均付加モル数は、好ましくは60以下である。
【0037】
整髪後の毛髪に適度な硬さを良好に付与するからは、成分(A1)は、エチレンオキシドの平均付加モル数が100以上であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含むことが好ましい。本明細書においては、上記「エチレンオキシドの平均付加モル数が100以上であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」を「成分(A13)」と称する場合がある。整髪後の毛髪に適度な硬さをより一層良好に付与するからは、成分(A13)のEOの平均付加モル数は、好ましくは120以下である。
【0038】
成分(A1)は、成分(A12)を少なくとも含むことが好ましく、成分(A11)と、成分(A12)とを含むことがより好ましく、成分(A11)と、成分(A12)と、成分(A13)とを含むことが特に好ましい。この場合には、毛髪間に適度な粘着力をより一層良好に付与することができ、かつ、整髪後の毛髪により一層適度な硬さを付与することができるので、毛髪をくせ付ける整髪力、毛髪を立ち上げる整髪力及び再整髪性をより一層高めることができる。また、毛髪に艶をより一層良好に付与することができる。
【0039】
成分(A)100質量%中、成分(A1)の含有量は50.0質量%以上である。成分(A)100質量%中の成分(A1)の含有量が50.0質量%未満であると、毛髪をくせ付ける整髪力、毛髪を立ち上げる整髪力及び再整髪性を十分に高めることは困難である。
【0040】
毛髪をくせ付ける整髪力、毛髪を立ち上げる整髪力及び再整髪性をより一層高める観点から、成分(A)100質量%中、成分(A1)の含有量は、好ましくは55.0質量%以上、より好ましくは60.0質量%以上、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは80.0質量%以下である。なお、成分(A)100質量%中、成分(A1)の含有量は100質量%(全量)であってもよい。
【0041】
毛髪に艶を良好に付与する観点及び毛髪間に適度な粘着力を良好に付与する観点からは、成分(A1)100質量%中、成分(A11)の含有量は、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、好ましくは40.0質量%以下、より好ましくは35.0質量%以下である。
【0042】
毛髪間に適度な粘着力を良好に付与する観点及び整髪後の毛髪に適度な硬さを良好に付与するからは、成分(A1)100質量%中、成分(A12)の含有量は、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは30.0質量%以上、さらに好ましくは40.0質量%以上、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下である。なお、成分(A1)100質量%中、成分(A12)の含有量は100質量%であってもよい。すなわち、成分(A1)は、成分(A12)のみを含んでいてもよい。
【0043】
整髪後の毛髪に適度な硬さを良好に付与するからは、成分(A1)100質量%中、成分(A13)の含有量は、好ましくは10.0質量%以上、より好ましくは15.0質量%以上、好ましくは40.0質量%以下、より好ましくは35.0質量%以下である。
【0044】
<成分(A2)>
成分(A2)は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。成分(A2)は、ノニオン界面活性剤である。成分(A2)を用いることにより、整髪後の毛髪に適度な硬さを良好に付与することができる。成分(A2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
整髪後の毛髪に適度な硬さを良好に付与する観点からは、成分(A2)は、セチル基又はステアリル基を有することが好ましい。すなわち、成分(A2)は、ポリオキシエチレンセチルエーテル及び/又はポリオキシエチレンステアリルエーテルであることが好ましい。
【0046】
整髪後の毛髪に適度な硬さを良好に付与する観点からは、成分(A2)のエチレンオキシド(EO)の平均付加モル数(ポリオキシエチレン部分のEOの平均付加モル数)は、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、好ましくは50以下、より好ましくは40以下である。
【0047】
成分(A)100質量%中、成分(A2)の含有量は50.0質量%未満である。成分(A)100質量%中、成分(A2)の含有量は、好ましくは10.0質量%以上、より好ましくは15.0質量%以上、好ましくは40.0質量%以下、より好ましくは35.0質量%以下である。なお、成分(A)100質量%中、成分(A2)の含有量は0質量%(未含有)であってもよい。
【0048】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(A)の含有量は10.0質量%以上、48.0質量%以下である。上記整髪剤組成物100質量%中の成分(A)の含有量が10.0質量%未満であると、毛髪をくせ付ける整髪力、毛髪を立ち上げる整髪力及び再整髪性を十分に高めることは困難である。上記整髪剤組成物100質量%中の成分(A)の含有量が48.0質量%を超えると、整髪剤組成物の粘度が高くなり、霧状に吐出できなくなる場合がある。また、乳化力が高くなり、泡状に吐出される場合がある。さらに、整髪後の毛髪にべたつきが生じる場合がある。
【0049】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(A)の含有量は、好ましくは15.0質量%以上、より好ましくは20.0質量%以上、好ましくは45.0質量%以下、より好ましくは40.0質量%以下である。成分(A)の含有量が上記下限以上であると、毛髪をくせ付ける整髪力、毛髪を立ち上げる整髪力及び再整髪性をより一層高めることができる。また、毛髪に艶をより一層良好に付与することができる。成分(A)の含有量が上記上限以下であると、成分(A)の析出を効果的に抑え、吐出安定性をより一層高めることができる。上記整髪剤組成物が成分(A2)を含まない場合に、成分(A)の含有量は、成分(A1)の含有量である。上記整髪剤組成物が成分(A2)を含む場合に、成分(A)の含有量は、成分(A1)と成分(A2)との合計の含有量である。
【0050】
(成分(B))
成分(B)は、エタノールである。成分(B)を用いることにより、上記整髪剤組成物が低粘度となるため、エアゾールにより吐出可能となる。また、成分(B)の消泡効果により、吐出後の整髪剤組成物が泡状とならず、霧状に吐出可能となる。
【0051】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(B)の含有量は30.0質量%以上、85.0質量%以下である。上記整髪剤組成物100質量%中、成分(B)の含有量は、好ましくは35.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは75.0質量%以下である。成分(B)の含有量が上記下限以上であると、整髪剤組成物を霧状に良好に吐出することができる。成分(B)の含有量が上記上限以下であると、成分(A)による整髪力をより一層効果的に発揮させことができる。
【0052】
(成分(C))
成分(C)は、水である。成分(C)を用いることにより、成分(A)による整髪力を効果的に発揮させることができる。なお、成分(C)を用いない場合、整髪力を高めることは困難である。成分(C)は、精製水であることが好ましい。
【0053】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(C)の含有量は5.0質量%以上、25.0質量%以下である。上記整髪剤組成物100質量%中の成分(C)の含有量が5.0質量%未満であると、毛髪をくせ付ける整髪力、毛髪を立ち上げる整髪力及び再整髪性を十分に高めることは困難である。上記整髪剤組成物100質量%中の成分(C)の含有量が25.0質量%を超えると、整髪剤組成物をエアゾールスプレー容器内より霧状に吐出できず、フォーム状(泡状)に吐出されやすくなる。
【0054】
上記整髪剤組成物100質量%中、成分(C)の含有量は、好ましくは10.0質量%以上、好ましくは20.0質量%以下である。成分(C)の含有量が上記下限以上であると、毛髪をくせ付ける整髪力、毛髪を立ち上げる整髪力及び再整髪性をより一層高めることができる。成分(C)の含有量が上記上限以下であると、整髪剤組成物をエアゾールスプレー容器内より霧状に良好に吐出できる。
【0055】
成分(B)の含有量の成分(A)の含有量に対する質量比(成分(B)の含有量/成分(A)の含有量)は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下である。上記質量比(成分(B)の含有量/成分(A)の含有量)が上記下限以上であると、吐出安定性をより一層高めることができる。上記質量比(成分(B)の含有量/成分(A)の含有量)が上記上限以下であると、成分(A)による整髪力をより一層効果的に発揮させることができる。
【0056】
成分(C)の含有量の成分(A)の含有量に対する質量比(成分(C)の含有量/成分(A)の含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.35以下である。上記質量比(成分(C)の含有量/成分(A)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、成分(A)による整髪力をより一層効果的に発揮させることができ、かつ、吐出安定性をより一層高めることができる。
【0057】
(他の成分)
上記整髪剤組成物は、上述した成分(A)~(C)以外の成分を含んでいてもよい。成分(A)~(C)以外の成分としては、特に限定されないが、例えば、油性成分、多価アルコール、清涼剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、金属封鎖剤、ビタミン類、動植物抽出エキス、パール化剤、着色剤、及び香料等が挙げられる。上記他の成分は、それぞれ1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
<皮膜形成ポリマー>
整髪剤組成物を霧状に安定して吐出する観点から、上記整髪剤組成物は、皮膜形成ポリマーを含まないか、又は、皮膜形成ポリマーを0.1質量%以下で含む。上記整髪剤組成物が上記皮膜形成ポリマーを含む場合に、上記整髪剤組成物100質量%中、上記皮膜形成ポリマーの含有量は0.1質量%以下であり、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、最も好ましくは0質量%(未含有)である。したがって、上記整髪剤組成物は、上記皮膜形成ポリマーを含まないことが最も好ましい。上記皮膜形成ポリマーの含有量が0.1質量%を超えると、上記整髪剤組成物中で該皮膜形成ポリマーが析出しやすく、吐出安定性が低下する。また、上記皮膜形成ポリマーが0.1質量%を超えると、再整髪性が低下する。
【0059】
なお、成分(A)は、上記皮膜形成ポリマーに含まれないものとする。上記皮膜形成ポリマーとしては、アニオン性皮膜形成ポリマー、カチオン性皮膜形成ポリマー、両性皮膜形成ポリマー、及びノニオン性皮膜形成ポリマー等が挙げられる。
【0060】
上記アニオン性皮膜形成ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、メチルビニルエーテル/マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロリルアクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体、ポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、(スチレン/アクリル酸アルキル)共重合体、(スチレン/アクリル酸アミド)共重合体、ウレタン-アクリル系共重合体、及びポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」と「メタクリル」との双方を意味する。
【0061】
上記カチオン性皮膜形成ポリマーとしては、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、及び(ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)共重合体等が挙げられる。
【0062】
上記両性皮膜形成ポリマーとしては、N-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、N,Nジメチル-N-(2-メタクリロイルオキシエチル)アミン=N-オキシド・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体、ジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、及び(イソブチレン/ジエチルアミノプロピルマレイミド/マレイン酸)共重合体等が挙げられる。
【0063】
上記ノニオン性皮膜形成ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸エチル共重合体、及びポリビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0064】
<増粘剤>
成分(A)による整髪力を発揮する観点及び整髪剤組成物を霧状に安定して吐出する観点から、上記整髪剤組成物は、増粘剤を含まないか、又は、増粘剤を0.1質量%以下で含む。上記整髪剤組成物が上記増粘剤を含む場合に、上記整髪剤組成物100質量%中、上記増粘剤の含有量は0.1質量%以下であり、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、最も好ましくは0質量%(未含有)である。したがって、上記整髪剤組成物は、上記増粘剤を含まないことが最も好ましい。上記整髪剤組成物に含まれる成分(C)の含有量は多くないため、上記増粘剤の含有量が0.1質量%を超えると、上記整髪剤組成物中で成分(A)や増粘剤が析出しやすく、吐出安定性が低下する場合がある。また、整髪力が低下する場合がある。
【0065】
なお、成分(A)は、上記増粘剤に含まれないものとする。上記増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキルコポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー及び(アクリレーツ/ネオデカン酸ビニル)クロスポリマー等のアクリル系増粘剤;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系増粘剤;キサンタンガム、ゼラチン、グアガム、カラギーナン、ペクチン及びローカストビーンガム等の天然ガム系増粘剤等が挙げられる。
【0066】
<成分(A)以外の界面活性剤>
成分(A)の整髪力を発揮する観点から、上記整髪剤組成物100質量%中、上記成分(A)以外の界面活性剤の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、最も好ましくは0質量%(未含有)である。したがって、上記整髪剤組成物は、上記成分(A)以外の界面活性剤を含まないことが最も好ましい。上記成分(A)以外の界面活性剤の含有量が1.0質量%を超えると、成分(A)が発揮させる整髪力が低下することがある。
【0067】
上記成分(A)以外の界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、成分(A)とは異なるノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0068】
上記カチオン界面活性剤としては、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩、アルキルアミン、及び脂肪酸アミドアミン等が挙げられる。
【0069】
上記アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、及びセチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のα-オレフィンスルホン酸塩;ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレオイルメチルタウリンナトリウム、及びヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等のN-アシルメチルタウリン塩;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、及びスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等のスルホコハク酸アルキル塩;スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウリル二ナトリウム等のスルホコハク酸ポリオキシエチレンアルキル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、セチルリン酸ナトリウム、及びセチルリン酸ジエタノールアミン等のモノアルキルリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、ミリストイルサルコシンナトリウム、及びヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン塩;ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニントリエタノールアミン、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、及びヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム等のN-アシル-N-メチル-β-アラニン塩;ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、及びヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン等のN-アシルグルタミン酸塩;ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、及びヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム等のN-アシルグリシン塩;ラウリルグリコール酢酸ナトリウム(ドデカン-1,2-ジオール酢酸ナトリウム)、ラウリルグリコール酢酸カリウム、ミリスチルグリコール酢酸ナトリウム、ミリスチルグリコール酢酸カリウム、パルミチルグリコール酢酸ナトリウム、パルミチルグリコール酢酸カリウム、ステアリルグリコール酢酸ナトリウム、ステアリルグリコール酢酸カリウム、ベヘニルグリコール酢酸ナトリウム、及びベヘニルグリコール酢酸カリウム等のアルキルエーテルグリコール酢酸塩等が挙げられる。
【0070】
上記両性界面活性剤としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、及びヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドベタイン型両性界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、及びN-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸塩、及びアルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びアルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤;アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウム型両性界面活性剤;N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-プロピルスルホン酸塩;N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩;N-脂肪酸アミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩等が挙げられる。
【0071】
上記成分(A)とは異なるノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリグリセリンアルキルエーテル、及び脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。
【0072】
<油性成分>
上記整髪剤組成物は、炭化水素油、エステル油、植物油、シリコーン油、高級アルコール、高級脂肪酸、及び油脂からなる群より選ばれる油性成分(少なくとも1の油性成分)を含んでいてもよい。この場合には、毛髪に艶を良好に付与することができる。上記油性成分は、炭化水素油、エステル油、植物油、及びシリコーン油からなる群より選ばれる油性成分(少なくとも1の油性成分)であることが好ましい。
【0073】
上記炭化水素油としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカン等が挙げられる。
【0074】
上記エステル油としては、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸エリスリチル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ヘキサ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
【0075】
上記植物油としては、例えば、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボカド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シア脂(シアバター)、カカオバター、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドホーム油、ハッカ油、アルガンオイル、カロットオイル、ラベンダー油、シュガースクワラン、ダマスクバラ花ロウ、センチフォリアバラ花ロウ、ソケイ花ワックス、これらの水素添加物(例えば、水素添加ヒマシ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油、水素添加アボカド油、水素添加大豆油等)等が挙げられる。
【0076】
上記シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン;メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノール等が挙げられる。
【0077】
上記高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、及びオレイルアルコール等の炭素数12~22の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0078】
上記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸などの炭素数12~22の脂肪酸が挙げられる。
【0079】
上記整髪剤組成物100質量%中、上記油性成分の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下である。上記油性成分の含有量が上記下限以上であると、毛髪に艶を良好に付与することができる。上記油性成分の含有量が上記上限以下であると、吐出安定性が高めることができる。
【0080】
<多価アルコール>
上記整髪剤組成物は、多価アルコールを含んでいてもよい。上記多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、ポリエチレングリコール、及びポリオキシプロピレンメチルグルコシド等が挙げられる。上記整髪剤組成物が上記多価アルコールを含む場合には、毛髪に艶を良好に付与することができる。
【0081】
上記整髪剤組成物100質量%中、上記多価アルコールの含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%以下である。上記多価アルコールの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、毛髪に艶を良好に付与することができる。
【0082】
<清涼剤>
上記清涼剤としては、l-メントール、1,8-シネオール、及びカンファ等が挙げられる。
【0083】
<防腐剤>
上記防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、及びフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0084】
上記整髪剤組成物は、公知慣用のエアゾールスプレー整髪剤組成物の製造方法により、製造することができる。上記整髪剤組成物は、特に限定されないが、例えば、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、必要に応じて配合される他の成分とを混合することにより製造することができる。
【0085】
[噴射剤]
上記噴射剤は、液化石油ガス(LPG)を含む。上記噴射剤は、上記液化石油ガス以外の噴射剤を含んでいてもよい。上記液化石油ガス以外の噴射剤としては、ジメチルエーテル(DME)、イソブタン、及び窒素ガス等が挙げられる。上記噴射剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記噴射剤は、上記液化石油ガスであるか、又は、上記液化石油ガスとジメチルエーテルとの混合物であることが好ましく、上記液化石油ガスであることが最も好ましい。
【0087】
成分(A)の析出をより一層抑制し、吐出安定性を向上する観点から上記噴射剤100質量%中、上記液化石油ガスの含有量は、好ましくは50.0質量%以上、より好ましくは60.0質量%以上、更に好ましくは80.0質量%以上、特に好ましくは90.0質量%以上、最も好ましくは100質量%(全量)である。
【0088】
[エアゾールスプレー整髪剤]
本発明のエアゾールスプレー整髪剤は、エアゾールスプレー容器と、上記整髪剤組成物と、上記噴射剤とを備える。上記エアゾールスプレー容器は、ボタン型アクチュエーターを有する。上記エアゾールスプレー整髪剤では、上記エアゾールスプレー容器内に、上記整髪剤組成物と上記噴射剤とが充填されている。上記整髪剤組成物は、上記エアゾールスプレー整髪剤において、上記エアゾールスプレー容器内に充填されている充填物のうち、上記噴射剤を除く配合物である。
【0089】
本発明のエアゾールスプレー整髪剤は、スプレー塗布されるエアゾールスプレー整髪剤である。本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記整髪剤組成物がエアゾールスプレー容器内より霧状に吐出される。本発明のエアゾールスプレー整髪剤では、上記整髪剤組成物がエアゾールスプレー容器内より霧状に噴霧される。
【0090】
上記エアゾールスプレー整髪剤は、既知の方法により作製することができる。上記エアゾールスプレー整髪剤の作製方法としては、上記整髪剤組成物又は上記整髪剤組成物に含有される各配合成分をエアゾールスプレー容器内に充填して、エアゾール用バルブによりエアゾールスプレー容器をクリンチした後、噴射剤をステムより充填し、ステムに適した噴射ボタンを装着する方法等が挙げられる。
【0091】
上記整髪剤組成物と上記噴射剤との合計100質量%中、上記整髪剤組成物の含有量は、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは30.0質量%以上、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下である。上記整髪剤組成物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、吐出性がより一層良好になる。
【0092】
上記整髪剤組成物と上記噴射剤との合計100質量%中、上記噴射剤の含有量は、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは30.0質量%以上、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下である。上記噴射剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、吐出性がより一層良好になる。
【0093】
エアゾールスプレー容器内で、上記整髪剤組成物と上記噴射剤とを混合して乳化状態とした後、25℃で静置したときに、上記乳化状態が崩壊して、液相が相分離するまでの時間は、好ましくは15分以内、より好ましくは10分以内、更に好ましくは8分以内である。
【0094】
上記液相が相分離するまでの時間は、上記整髪剤組成物と上記噴射剤とを混合して得られる乳化状態の液相が、2層に相分離するまでの時間である。上記液相が相分離するまでの時間は、目視により測定することができる。この測定は、透明の耐圧容器に、上記整髪剤組成物と上記噴射剤とを充填して行ってもよい。なお、この測定で用いられる上記整髪剤組成物と上記噴射剤との配合比は、エアゾール整髪剤における配合比である。
【0095】
以下に、本発明の構成と本発明の効果との関連性を更に詳細に説明する。ただし、以下のメカニズムは推定であり、本発明は、このメカニズムによるものに限定されない。
【0096】
本発明の第一の特徴は、エアゾールスプレー整髪剤における整髪剤組成物として、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を特定の配合量で含有する組成物を用いることにある。
【0097】
成分(A)と成分(C)とを併用することによって、整髪剤組成物が毛髪に塗布された後、ポマード様の整髪特性(くせ付け力、再整髪力、立ち上げ力)を発揮する。これは、成分(A)と成分(C)とが高次構造を形成するためであると推定される。これに対して、成分(C)を含まず、かつ成分(A)と成分(B)とを含む整髪剤組成物は、上記整髪特性を発揮しない。
【0098】
成分(A)及び成分(C)が、溶媒としての成分(B)に、溶解又は分散することにより、整髪剤組成物を霧状に吐出できる。成分(A)と成分(C)とは上述のとおり高次構造を形成するため、一定量以上の成分(B)を溶媒として配合しない場合には、整髪剤組成物がゲル化して流動性が低下し、霧状に吐出できなくなる。
【0099】
本発明の第二の特徴は、エアゾールスプレー整髪剤における噴射剤として、液化石油ガス(LPG)を含む噴射剤を用いることにある。これにより、エアゾールスプレー整髪剤を低温保管した場合であっても、成分(A)の析出が抑制され、析出物による目詰まりを防止することができ、エアゾールスプレー整髪剤の吐出安定性を高めることができる。これは液化石油ガス(LPG)を含む噴射剤を用いることで、エアゾールスプレー容器内で、液相が整髪剤組成物の相と噴射剤の相とに相分離した状態で存在し、成分(A)の低温での析出を抑制するためであると推定される。特に、噴射剤100質量%中、液化石油ガスの含有量が50.0質量%以上である場合には、上記相分離状態がより一層維持され、成分(A)の低温での析出がより一層抑制される。これに対して、液化石油ガスを含まず、かつジメチルエーテル(DME)を比較的多量に含む噴射剤を用いる場合には、液相中で整髪剤組成物と噴射剤とが相溶状態となる。この場合、ジメチルエーテルと成分(C)とが相互作用し、成分(A)と成分(C)との相互作用力が低下する。成分(A)は成分(C)が相互作用することにより整髪剤組成物中で安定して存在できるため、成分(A)と成分(C)との相互作用力が低下すると、整髪剤組成物中での成分(A)の相溶性が低下して、成分(A)が低温で析出しやすくなる。そのため、液化石油ガスを含まず、かつジメチルエーテル(DME)を比較的多量に含む噴射剤を用いる場合には、エアゾールスプレー整髪剤の吐出安定性を高めることはできない。
【0100】
本発明の第三の特徴は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の配合量を特定の範囲にして、エアゾールスプレー容器から、整髪剤組成物を霧状に吐出可能としたことにある。成分(A)が乳化剤として機能することにより、エアゾールスプレー容器を振とうした際に、噴射剤と整髪剤組成物とがO/Wエマルジョンを形成し、相分離状態から乳化状態となるため、エアゾールにより吐出可能となる。さらに、成分(A)により乳化作用がある程度に抑えられており、かつ成分(B)が消泡作用を発揮することにより、形成されたO/Wエマルジョンは不安定であり、エアゾールスプレー容器内からの吐出時にO/Wエマルジョンは崩壊する。その結果、整髪剤組成物が霧状に吐出される。なお、形成されたO/Wエマルジョンが安定である場合には、吐出後もO/Wエマルジョンが保たれるため、噴射剤の揮発により、整髪剤組成物が泡状となる。本発明では、整髪剤組成物が霧状に吐出されるため、整髪剤組成物を均一かつ高濃度で毛髪に塗布することができ、成分(A)による整髪力が十分に発揮される。また、櫛により整髪することが可能となり、手を汚さずに、簡便に整髪することもできる。
【0101】
本発明の第四の特徴は、整髪剤組成物が皮膜形成ポリマー及び増粘剤をそれぞれ含まないか、又は、極めて少量でしか含まないことにある。このため、エアゾールフォーム容器と比べてアクチュエータの機構が複雑なエアゾールスプレー容器であっても、目詰まりを起こしにくく、吐出安定性に優れる。整髪剤組成物が増粘剤をある程度含む場合には、増粘剤と成分(C)とが相互作用し、成分(A)と成分(C)との相互作用力が低下することにより、整髪力が低下したり、成分(A)が析出しやすくなったりする。整髪剤組成物が増粘剤を含まないか、又は、極めて少量でしか含まないことにより、整髪力及び吐出安定性を高めることができる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。なお、以下の実施例19,20は参考例である。
【0103】
実施例及び比較例で用いた主な成分は以下のとおりである。
【0104】
(成分(A))
成分(A1):
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.):日本サーファクタント工業社製「NIKKOL HCO-20」、エチレンオキシドの平均付加モル数20
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.):日本サーファクタント工業社製「NIKKOL HCO-40」、エチレンオキシドの平均付加モル数40
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.):日本サーファクタント工業社製「NIKKOL HCO-50」、エチレンオキシドの平均付加モル数50
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.):日本サーファクタント工業社製「NIKKOL HCO-60」、エチレンオキシドの平均付加モル数60
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.):日本サーファクタント工業社製「NIKKOL HCO-100」、エチレンオキシドの平均付加モル数100
【0105】
成分(A2):
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.):青木油脂工業社製「ブラウノン CH-320L」、エチレンオキシドの平均付加モル数20
ポリオキシエチレンセチルエーテル(40E.O.):青木油脂工業社製「ブラウノン CH-340」、エチレンオキシドの平均付加モル数40
【0106】
(実施例1~24及び比較例1~12)
下記の表1~5に示す配合成分を配合(配合単位は質量%)し、下記の表1~5に示す組成を有する整髪剤組成物(原液)を調製した。得られた整髪剤組成物(原液)をエアゾールスプレー容器(容量95mL)に充填した。次いで、エアゾール用バルブをエアゾールスプレー容器にクリンチした後、下記の表1~5に示す噴射剤をステムより充填し、ステムに適したボタンを装着して、エアゾールスプレー整髪剤を作製した。また、ボタン孔径は0.45mm、ステム孔径は0.4mm(ステム孔数:1個)、ハウジング孔径は下孔径0.65mm、横孔径0.42mmであった。表中の配合量(整髪剤組成物100質量%中の配合量)は、純分の配合量(単位:質量%)で示した。
【0107】
(評価)
得られたエアゾールスプレー整髪剤について、以下の評価を行った。評価結果は表1~5中に示した。なお、評価は専門パネル3名で行い、協議して評価結果を決定した。
【0108】
(試験例1-1:吐出性)
得られたエアゾールスプレー整髪剤において、15cm離れた位置からショートヘアのウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)の毛髪上に3秒間均一に噴霧した。上記噴霧の状態を観察し、下記の基準に従い吐出性を評価した。
【0109】
<吐出性の評価基準>
○:整髪剤組成物がエアゾールスプレー容器内から霧状に吐出される
×:整髪剤組成物がエアゾールスプレー容器内から霧状に吐出されない
【0110】
(試験例1-2:毛髪をくせ付ける整髪力)
試験例1-1でエアゾールスプレー整髪剤を噴霧したウィッグの左右いずれか片側を、櫛を用いて、ウィッグの形状に沿うように前方から後方へと毛髪を撫でつけるように整髪を施した。整髪直後に、側頭部の毛髪の整髪状態を観察し、毛髪をくせ付ける整髪力を下記の基準に従い評価した。
【0111】
<毛髪をくせ付ける整髪力の評価基準>
○(良好):毛髪が前方から後方にしっかりとくせ付けられている
△(使用可能):毛髪が下方向にやや落ちており、くせ付けがやや弱いが、実用上許容可能である
×(不良):毛髪が下方向に落ちており、くせ付けが不十分である
【0112】
(試験例1-3:毛髪を立ち上げる整髪力)
試験例1-1でエアゾールスプレー整髪剤を噴霧したウィッグの、試験例1-2で整髪を施した側とは反対側を、手で毛髪の根元から上向きに髪を立ち上げて整髪を施した。整髪直後に、頭頂部付近の毛髪の立ち上がりの角度を観察し、毛髪を立ち上げる整髪力を下記の基準に従い評価した。なお、上記角度は水平方向を0°、垂直方向を90°とする。
【0113】
<毛髪を立ち上げる整髪力の評価基準>
○(良好):毛髪が立ち上がる(45°以上の角度である)
△(使用可能):毛髪があまり立ち上がらない(20°以上45°未満の角度である)
×(不良):毛髪がほぼ立ち上がらない(20°未満の角度である)
【0114】
(試験例1-4:使用性)
試験例1-2及び試験例1-3での整髪時の操作性より、下記の基準に従い使用性を評価した。
【0115】
<使用性の評価基準>
○(良好):整髪剤組成物が毛髪に均一に付着しており、整髪時の操作性がよい
×(不良):整髪剤組成物が毛髪に均一に付着しておらず、整髪時に引っ掛かりを感じ、整髪時の操作性が悪い
【0116】
(試験例1-5:艶)
試験例1-2の評価後に、整髪後のウィッグの毛髪を目視にて観察した。また、比較基準として、下記のモデル処方のグリース状整髪剤組成物0.5gをウィッグの左右いずれか片側に塗布し、試験例1-2と同様に整髪を施し、整髪後のウィッグの毛髪を目視にて観察した。下記の基準に従い、毛髪の艶を評価した。
【0117】
<モデル処方:グリース状整髪剤組成物>
セテス-40:25質量%
水 :75質量%
【0118】
<艶の評価基準>
○○(優れる):比較基準と比べて、明らかに光沢が強い
○(良好):比較基準と同等、又は、比較基準と比べて、わずかに光沢が強い
×(不良):比較基準と比べて、光沢が劣る
【0119】
(試験例1-6:再整髪性)
試験例1-3で整髪を施してから1時間後に、整髪した髪型を崩し、再度、手で毛髪の根元から上向きに髪を立ち上げて再整髪を施した。再整髪直後に、頭頂部付近の毛髪の立ち上がりの角度を観察し、再整髪性を下記の基準に従い評価した。なお、上記角度は水平方向を0°、垂直方向を90°とする。
【0120】
<再整髪性の評価基準>
○(良好):毛髪が立ち上がる(45°以上の角度である)
△(使用可能):毛髪があまり立ち上がらない(20°以上45°未満の角度である)
×(不良):毛髪がほぼ立ち上がらない(20°未満の角度である)
【0121】
(試験例2-1:吐出安定性(目詰まり試験))
エアゾールスプレー整髪剤を3本作製し、以下の操作を行った。
<保管工程>
各エアゾールスプレー整髪剤を-3℃で48時間保管した。
<繰り返し噴射工程>
上記保管工程の後、「25℃の環境下で、各エアゾールスプレー整髪剤を3回軽く振り、正立状態で10秒間噴射する」手順を、毎日1回繰り返し行った。なお、上記手順は、整髪剤組成物(原液)がなくなるまで繰り返した。
上記繰り返し噴射工程における吐出状態を観察し、下記の基準に従い吐出安定性を評価した。
【0122】
<吐出安定性(目詰まり試験)の評価基準>
○(良好):3本全てが、途中で吐出不良が起こることなく、整髪剤組成物を霧状に吐出できる(すなわち、整髪剤組成物がなくなるまで、繰り返し噴射工程を行う間、吐出不良が生じなかった)
×(不良):3本のうち少なくとも1本に、途中で目詰まりが生じ、吐出不良が認められる(すなわち、整髪剤組成物がなくなるまで、繰り返し噴射工程を行う間に、吐出不良が生じた)
【0123】
(試験例2-2:吐出安定性(析出物及び不溶物の有無))
下記の表1~5に示す配合成分を配合(配合単位は質量%)し、下記の表1~5に示す組成を有する整髪剤組成物(原液)を調製した。得られた整髪剤組成物(原液)を透明耐圧瓶(エアゾール試験瓶、容量100mL)に充填した。次いで、瓶用バルブを透明耐圧瓶にクリンプした後、下記の表1~5に示す噴射剤をステムより充填し、評価用サンプルを作製した。なお、評価用サンプルは3本作製した。
【0124】
上記評価用サンプルを-3℃で48時間静置した後、析出物及び不溶物の有無を確認した。
【0125】
<吐出安定性(析出物及び不溶物の有無)の評価基準>
○(良好):3本全てにおいて、析出物及び不溶物が認められない
×(不良):3本のうち少なくとも1本に、析出物又は不溶物が認められる
【0126】
(試験例3:相分離)
試験例2-2と同様にして、評価用サンプルを作製した。評価用サンプルの透明耐圧瓶内で、上記整髪剤組成物と上記噴射剤とを混合して乳化状態とした後、25℃で静置した。上記乳化状態が崩壊して、液相が相分離するまでの時間を目視により測定した。
【0127】
<相分離の評価基準>
○:O/Wエマルジョンを形成した後、相分離するまでの時間が10分以内である
×1:O/Wエマルジョンを形成した後、相分離するまでの時間が10分を超える
×2:均一に溶解する
×3:乳化せず、相分離状態のままである
【0128】
組成及び結果を下記の表1~5に示す。
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
以下に、本発明のエアゾールスプレー整髪剤の処方例を示す。
【0135】
(処方例1)
(整髪剤組成物)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 2.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 5.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 5.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 6.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.) 7.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(40E.O.) 2.0質量%
ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20E.O.) 3.0質量%
ジプロピレングリコール 3.0質量%
グリセリン 2.0質量%
香料 1.0質量%
水 10.0質量%
エタノール 残部
合計 100.0質量%
(噴射剤)
LPG 100.0質量%
整髪剤組成物:噴射剤=60:40(質量比)
【0136】
(処方例2)
(整髪剤組成物)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 5.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 6.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 5.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.) 8.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 10.0質量%
1,3-ブチレングリコール 3.0質量%
ジグリセリン 2.0質量%
香料 1.2質量%
水 15.0質量%
エタノール 残部
合計 100.0質量%
(噴射剤)
LPG 80.0質量%
DME 20.0質量%
合計 100.0質量%
整髪剤組成物:噴射剤=50:50(質量比)