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  • 特許-セメント抵抗器 図1
  • 特許-セメント抵抗器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】セメント抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 13/02 20060101AFI20230710BHJP
   H01C 1/024 20060101ALI20230710BHJP
   H01C 3/12 20060101ALI20230710BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20230710BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
H01C13/02 B
H01C1/024 Z
H01C3/12
H01C7/00 100
H01C13/00 P
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018044902
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019160980
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591181908
【氏名又は名称】ミクロン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】杉本 憲治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】永井 良二
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】山本 章裕
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-226301(JP,A)
【文献】特開2017-224641(JP,A)
【文献】特開2013-188092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 13/02
H01C 13/00
H01C 3/12
H01C 1/024
H01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載されるセメント抵抗器であって、
絶縁基板と、
該絶縁基板の一方の面に印刷され、前記モータ制御インバータ装置に搭載されている主回路コンデンサを常時放電するための第1被膜抵抗素子と、
前記絶縁基板の他方の面に印刷され、前記主回路コンデンサの電荷を急速放電するための第2被膜抵抗素子と、
前記第1及び第2被膜抵抗素子を前記主回路コンデンサに並列接続可能にする端子及びリード線と、
前記絶縁基板、前記第1及び第2被膜抵抗素子、並びに、前記端子及びリード線の一部を収容し、セメントで封止されている磁器ケースとを備えることを特徴とするセメント抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載されている主回路コンデンサの電荷を放電するためのセメント抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、従来、電気自動車には、動力源であるモータ15を制御するため、高圧バッテリ12にインバータ装置11が接続される。このインバータ装置11に搭載される主回路コンデンサ13の両端の電圧は、車両の電源を切ってから所定時間内に目標の値まで低下させるため、主回路コンデンサ13の電荷を常時放電する通常時放電抵抗16が設けられる。
【0003】
また、電気自動車の衝突時等には、主回路コンデンサ13の両端電圧を急速に目標電圧まで低下させる必要があるため、急速放電抵抗17を設け、急速放電時には遮断用スイッチ18がオフとなり、放電用スイッチ19がオンとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記通常時放電抵抗16は、通常時の消費電力を小さくするために抵抗値が大きく、急速放電抵抗17は、急速放電を可能にするために抵抗値が小さい。そのため、両者は抵抗値が大きく異なると共に、設置場所も異なるため、従来、大きさやタイプの異なる2つの抵抗器が各々独立して配置されている。そのため、電気自動車の車載装置や車載部品の低コスト化、小型化が求められる近年においては改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載される抵抗器の製造コストを低く抑え、小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載されるセメント抵抗器であって、絶縁基板と、該絶縁基板の一方の面に印刷され、前記モータ制御インバータ装置に搭載されている主回路コンデンサを常時放電するための第1被膜抵抗素子と、前記絶縁基板の他方の面に印刷され、前記主回路コンデンサの電荷を急速放電するための第2被膜抵抗素子と、前記第1及び第2被膜抵抗素子を前記主回路コンデンサに並列接続可能にする端子及びリード線と、前記絶縁基板、前記第1及び第2被膜抵抗素子、並びに、端子及びリード線の一部を収容し、セメントで封止される磁器ケースとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、主回路コンデンサを常時放電するための第1被膜抵抗素子と、急速放電するための第2被膜抵抗素子を一つのセメント抵抗器に収容すると共に、両抵抗素子を1枚の絶縁基板に印刷したため、部品点数を削減することができ、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載される抵抗器の製造コストを低く抑えると共に、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載されるセメント抵抗器の製造コストを低く抑え、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかるセメント抵抗器を示す図であって、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は下側面図である。
図2図1に示すセメント抵抗器の磁器ケース7の内部に収容される抵抗素子等を示す図であって、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図3】電気自動車のモータ制御インバータ装置の構成を説明するための概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1及び図2は、本発明にかかるセメント抵抗器の一実施の形態を示し、このセメント抵抗器1は、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2aに印刷される常時放電抵抗としての被膜抵抗素子3と、絶縁基板2の背面2bに印刷される急速放電抵抗としての被膜抵抗素子4と、被膜抵抗素子3、4をモータ制御インバータ装置に搭載される主回路コンデンサに並列接続するための端子5(5A~5E)及びリード線(6A~6D)と、絶縁基板2~リード線6の一部を収容し、セメントで封止される磁器ケース7と、爪8aによって磁器ケース7に装着され、磁器ケース7をモータ制御インバータ装置に取り付けるブラケット(取付部材)8とを備える。尚、図1では、説明の都合上、セメントで封止する前の状態を示している。
【0012】
絶縁基板2は、セラミック等の絶縁材料からなり、絶縁基板2の表面2a側の被膜抵抗素子3は、上記常時放電抵抗として機能し、その抵抗値は例えば100kΩ程度である。一方、絶縁基板2の背面2b側の被膜抵抗素子4は、上記急速放電抵抗として機能し、その抵抗値は例えば100~500Ω程度である。
【0013】
被膜抵抗素子3には、3つの端子5A~5Cが設けられ、端子5B、5Cは互いに接続されている。端子5A、5Bにはリード線6A、6Bが接続されるが、端子5Cは後述する端子5Dとリード線6Cを介して接続されている。
【0014】
被膜抵抗素子4には、2つの端子5D、5Eが設けられ、端子5Dは上述のように端子5Cとリード線6Cを介して接続され、端子5Eにはリード線6Dが接続される。
【0015】
ここで、リード線6Bは被膜抵抗素子3、4において共用され、図3に示すように、モータ制御インバータ装置の高圧バッテリ12に対し、正極側の配線20に接続される、リード線6Aは負極側の配線21に接続され、リード線6Dはモータ制御インバータ装置に搭載されるスイッチ素子を介して、負極側の配線21に接続される。急速放電時には遮断用スイッチ18がオフとなり、放電用スイッチ19がオンとなることで、通常時と緊急時で主回路コンデンサ13の電荷を放電する被膜抵抗素子を切り替えることができる。
【0016】
磁器ケース7は、上記構成を有する絶縁基板2~リード線6を収容するため、リード線6A、6B、6Dを挿通可能な3つの溝7a、7b、7cを有する。
【0017】
ブラケット8は、セメントで封止された磁器ケース7を背面側から囲繞するように爪8aによって磁器ケース7に装着され、セメント抵抗器1をモータ制御インバータ装置に設置するため、ボルト(不図示)等が挿入される貫通孔8bを備える。
【0018】
以上のように、本実施の形態によれば、主回路コンデンサを常時放電するための被膜抵抗素子3と、急速放電するための被膜抵抗素子4を一つのセメント抵抗器1に収容すると共に、両抵抗素子3、4を1枚の絶縁基板2の両面2a、2bに印刷したため、部品点数を削減することができ、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載される抵抗器の製造コストを低く抑えると共に、小型化を図ることが可能となる。
【0019】
尚、上記実施の形態においては、絶縁基板2の表面2aに常時放電抵抗としての被膜抵抗素子3を、絶縁基板2の背面2bに急速放電抵抗としての被膜抵抗素子4を設けたが、絶縁基板2の表面2aに急速放電抵抗としての被膜抵抗素子4を、絶縁基板2の背面2bに常時放電抵抗としての被膜抵抗素子3を設けてもよい。また、端子5Cを絶縁基板2の背面2bに設け、端子5B、5Cをリード線6Cを介して接続し、端子5Dにリード線6Bを接続してもよい。
【0020】
また、端子5C、5Dの接続方法としては、リード線6Cの代わりに、端子5C、5Dに絶縁基板2の表面2aと背面2bを貫通する孔(スルーホール)を設け、そこに導体を流し込むなどして端子5C、5Dを接続してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 セメント抵抗器
2 絶縁基板
2a 表面
2b 背面
3、4 被膜抵抗素子
5(5A~5E) 端子
6(6A~6D) リード線
7 磁器ケース
7a~7c 溝
8 ブラケット
8a 爪
8b 貫通孔
図1
図2
図3