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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】油中水型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20230710BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20230710BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20230710BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230710BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/891
A61K8/89
A61K8/894
A61Q1/02
A61Q17/04
A61Q19/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019012616
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2019131541
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018015974
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵悟
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505254(JP,A)
【文献】国際公開第2016/178380(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00
A61K47/00
A61K31/33-33/44
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(e);
(a)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(b)IOBが0.1~0.6の極性油剤 0.5~25質量%
(c)揮発性シリコーン油剤 9~30質量%
(d)25℃の粘度が6~100mPa・sである不揮発性シリコーン油剤 1.8~20質量%
(e)部分架橋型乳化性シリコーンエラストマー 0.25~7質量%
を含有する油中水型乳化組成物であって、
前記成分(b)、(c)、(d)、および(e)を含む全油性成分の総量が、20~60質量%であり、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤を含有する油中水型乳化組成物。
【請求項2】
前記成分(a)と成分(e)の含有質量割合(a)/(e)が、0.8~8であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項3】
前記成分(b)の分子量が、400以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項4】
前記成分(b)と成分(e)の含有質量割合(b)/(e)が、0.4~20であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン酸アミドを高濃度に含有する油中水型乳化組成物に関し、さらに詳細には、IOBが0.1~0.6の極性油剤、揮発性シリコーン油剤、25℃の粘度が6~100mPa・sである不揮発性シリコーン油剤、および部分架橋型乳化性シリコーンエラストマーを併用することで、ニコチン酸アミドの析出のなさに優れ、乳化安定性やべたつき感のない使用感触が良好な油中水型乳化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は加齢やストレスなどの内的要因や、紫外線や空気の乾燥などの外的要因により、しみやシワ、たるみ、色素沈着等を生じる。中でもシワやたるみといった形態的変化は、外観の印象を大きく左右するため改善を望む人は多い。それらシワ・たるみを予防・改善するために多くの薬剤が提案されている。このような中でも、ニコチン酸アミドは安全性が高く、皮膚老化防止効果を有することが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ニコチン酸アミドを高濃度で配合すると、べたつきなどの好ましくない使用感につながるという課題があった。この課題を解決するため、これまでに、ニコチン酸アミドを高濃度で配合しつつも、使用感を向上させる種々検討が行われてきた。
【0003】
ニコチン酸アミドと特定の分岐鎖炭化水素油およびエステル油を組み合わせて水中油型エマルションとすることにより、べたつき感を軽減する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、ニコチン酸アミドと、融点が40℃以上の固形油、メチルフェニルポリシロキサンおよび特定の粘度のジメチルポリシロキサンを組み合わせた、べたつき・油性感のない良好な感触の水中油型化粧料(例えば、特許文献3参照)や、ニコチン酸アミドと、水溶性の皮膜形成性高分子、ポリオキシエチレンメチルグルコシドおよび特定の分子量を有するポリエチレングリコールを組み合わせた、べたつき・きしみのない水中油型化粧料が開示されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、油中水型乳化組成物としては、ニコチン酸アミドと、特定量の非乳化性架橋シロキサンエラストマー、乳化性架橋シロキサンエラストマーおよび乳化剤を組み合わせた、べたつきのない油中水型エマルションが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-130135号公報
【文献】特表2003-502435号公報
【文献】特開2004-300105号公報
【文献】特開2004-300106号公報
【文献】特表2009-517478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2~4の技術は、ニコチン酸アミドによるべたつきは抑制できているものの、油剤によるエモリエント効果に乏しく、保湿感の点で劣るものであった。一方、油中水型乳化組成物中にニコチン酸アミドを配合した特許文献5の技術は、油剤を高配合するためにエモリエント効果に優れ、またべたつきのない感触にも優れるものであった。
そこで、本発明者は、ニコチン酸アミドの油中水型乳化組成物への含有を検討したところ、ニコチン酸アミドは水への溶解性が高いにも関わらず、水の含有量が少ない場合が多い油中水型乳化組成物において、1質量%以上という高濃度で配合すると、特に高温と低温の温度サイクル下において経時で析出しやすく、また乳化安定性も著しく低下するという新たな課題が生じた。
すなわち、ニコチン酸アミドの析出のなさと乳化安定性を確保し、かつ、べたつき感のなさに優れる油中水型乳化組成物はこれまでに見出されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情を鑑み、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ニコチン酸アミドを1~10質量%という高濃度で含有した油中水型乳化組成物において、IOBが0.1~0.6の極性油剤を配合した際、予想外なことに、ニコチン酸アミドの水相における結晶析出抑制効果が高いことを見出したが、一方で、乳化安定性に優れない場合があった。
そこでさらに、本発明者は、ニコチン酸アミド1~10質量%、IOBが0.1~0.6の極性油剤を含有する油中水型乳化組成物において、全油性成分の量が20~60質量%であり、かつ、揮発性シリコーン油剤、25℃の粘度が6~100mPa・sである不揮発性シリコーン油剤を含有した時に、合わせて部分架橋型乳化性シリコーンエラストマーを含有すると、乳化安定性を顕著に改善しつつ、さらに、べたつき感のなさに優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油中水型乳化組成物は、ニコチン酸アミドを高濃度で配合しながらも、ニコチン酸アミドの析出のなさと乳化安定性に優れ、べたつき感のない使用感触に優れた効果を有するものである。
【0008】
本発明は、次の成分(a)~(e);
(a)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(b)IOBが0.1~0.6の極性油剤
(c)揮発性シリコーン油剤
(d)25℃の粘度が6~100mPa・sである不揮発性シリコーン油剤
(e)部分架橋型乳化性シリコーンエラストマー
を含有する油中水型乳化組成物であって、
前記成分(b)、(c)、(d)、および(e)を含む全油性成分の総量が、20~60質量%である油中水型乳化組成物を提供するものである。
【0009】
本発明は、前記成分(a)と成分(e)の含有質量割合(a)/(e)が、0.8~8であることを特徴とする油中水型乳化組成物を提供するものである。
【0010】
本発明は、前記成分(b)の分子量が、400以下であることを特徴とする油中水型乳化組成物を提供するものである。
【0011】
本発明は、前記成分(b)と成分(e)の含有質量割合(b)/(e)が、0.4~20であることを特徴とする油中水型乳化組成物を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の
数値を含む範囲を意味するものとする。また、%で表記する数値は、特に記載した場合を
除き、質量を基準にした値である。
【0013】
成分(a):ニコチン酸アミド
本発明における成分(a)ニコチン酸アミドは、ニコチン酸(ビタミンB3/ナイアシン
)のアミドである。ニコチン酸アミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである公
知の物質であり、天然物(米ぬかなど)から抽出されたり、あるいは公知の方法によって
合成することができる。具体的には、第15改正日本薬局方2008に収載されているも
のを用いることが出来る。
【0014】
本発明において成分(a)の量は、1~10質量%(以下、単に「質量%」を「%」と略す)である。成分(a)の量が10%を超えると、べたつき感のなさに優れず、使用性が悪い場合がある。成分(a)の量が1%未満であると、肌荒れの改善効果などの肌効果が不十分である場合がある。成分(a)の量は、ニコチン酸アミドの析出のなさ、べたつき感のなさに優れる点で、3~10%が好ましく、3~7%がより好ましい。
【0015】
成分(b):IOBが0.1~0.6の極性油剤
本発明に用いられる成分(b)はIOBが0.1~0.6の極性油剤である。
ここで、本発明におけるIOB(Inorganic-Organicbalance)とは、下記(式1)で計算されるものである。
IOB=(Σ無機性値/Σ有機性)・・・(式1)
すなわち、IOBは、各種原子及び官能基毎に設定された「無機性値」、「有機性値」に基づいて、界面活性剤等の有機化合物を構成する原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することにより算出することができる(甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、11~17頁、三共出版、1984年発行参照)。
【0016】
本発明において成分(b)は、IOBが0.1~0.6の極性油剤であれば、特に限定されず、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において用いられ得るものを使用することができる。
成分(b)は、特に限定されないが、具体的には、乳酸セチル(IOB=0.42)、乳酸ミリスチル(IOB=0.47)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.19)、ネオペンタン酸オクチルドデシル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸イソステアリル(IOB=0.14)、パルミチン酸イソプロピル(IOB=0.16)、ラウリン酸ヘキシル(IOB=0.17)、
エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(IOB=0.13)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.16)、イソステアリン酸イソプロピル(IOB=0.15)、イソステアリン酸エチル(IOB=0.15)、パルミチン酸エチルヘキシル(IOB=0.13)、ネオデカン酸オクチルドデシル(IOB=0.11)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、(IOB=0.41)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(IOB=0.26)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(IOB=0.17)、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10(IOB=0.25)テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.15)、ミリスチン酸イソセチル(IOB=0.10)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、オクチルドデカノール(IOB=0.26)、デシルテトラデカノール(IOB=0.21)ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.32)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.33)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリトリット(IOB=0.35)、アジピン酸ジイソプロピル(IOB=0.46)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、ジカプリン酸プロピレングリコール(IOB=0.26)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール(IOB=0.52)、イソデシルベンゾエート(IOB=0.23)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.2)、イソノナン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、セバシン酸ジエチルヘキシル(IOB=0.24)、ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.22)、エチルヘキサン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、トリエチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.36)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)、ヒドロキシステアリン酸オクチル(IOB=0.31)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(IOB=0.33)等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0017】
成分(b)の分子量は、特に限定されないが、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性に優れる点で、好ましくは400以下である。
分子量が400以下である成分(b)としては、特に限定されないが、具体的には、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソセチル、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、アジピン酸ジイソプロピル、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、イソデシルベンゾエート、ジカプリン酸プロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸エチルヘキシル、セバシン酸ジエチルヘキシル、ネオペンタン酸イソデシル、エチルヘキサン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、コハク酸ジエチルヘキシル等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0018】
成分(b)の化学構造は、特に限定されないが、ニコチン酸アミドの析出のなさに優れる点で、好ましくは、分岐構造を有し、かつ、分子量が400以下であるものであり、より好ましくは、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、オクチルドデカノール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサン酸グリセリル、コハク酸ジエチルヘキシルから選ばれる一種または二種以上であり、さらに好ましくは、イソノナン酸イソトリデシル、オクチルドデカノール、2-エチルヘキサン酸セチルから選ばれる一種または二種以上であり、さらにより好ましくは、イソノナン酸イソトリデシル、オクチルドデカノール、2-エチルヘキサン酸セチルの三種である。これは、成分(b)の分子量が小さい方が、油相から水相へ分配されやすく、その上で分岐構造を有した場合、ニコチン酸アミドの結晶析出を阻害し得るからである。
【0019】
本発明における成分(b)が含有されていない場合には、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性に優れない場合がある。本発明の効果を損なわない範囲で、IOBが0.1未満の極性油剤やIOBが0.6を超える極性油剤を含有しても良い。しかし、含有される極性油剤が、IOBが0.1未満のものだけである場合は、ニコチン酸アミドの結晶抑制効果に劣り、ニコチン酸アミドの析出のなさに優れない場合や、乳化安定性に優れない場合がある。含有される極性油剤が、IOBが0.6を超えるもののだけである場合は、乳化安定性に優れない場合がある。
【0020】
成分(b)の含有量としては、特に限定されるものではないが、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性の点で、3~20%が好ましく、6~15%がより好ましく、8~13%がさらにより好ましい。
【0021】
成分(c):揮発性シリコーン油剤
本発明に用いられる成分(c)揮発性シリコーン油剤とは、1気圧下における沸点が100~260℃以下のシリコーン油剤からなる群から選択される一種又は二種以上である。具体的には、特に限定されないが、メチルトリメチコン、テトラキストリメチルシロキシシラン、ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度1~5mPa・s)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン等の環状ポリシロキサン類、またはカプリリルメチコン等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらのうち、好ましくはメチルトリメチコン、テトラキストリメチルシロキシシラン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度1~5mPa・s)から選ばれる一種又は二種以上であり、より好ましくはメチルトリメチコン、テトラキストリメチルシロキシシラン、デカメチルシクロペンタシロキサンから選ばれる一種又は二種以上である。また、本発明における粘度は、ブルックフィールド型粘度計を用いた化粧品原料基準・粘度測定法第二法に従って測定することができる。
【0022】
本発明における成分(c)が含有されていない場合には、ニコチン酸アミドの析出のなさ、べたつき感のなさに優れない場合がある。本発明における成分(c)の含有量は、特に限定されないが、べたつき感のなさに優れる点で、10~30%が好ましく、15~25%がより好ましい。
【0023】
成分(d):25℃の粘度が6~100mPa・sである不揮発性シリコーン油剤
本発明に用いられる成分(d)の25℃の粘度が6~100mPa・sである不揮発性シリコーンは、1気圧下における沸点が260℃を超えるシリコーン油からなる群から選択される一種又は二種以上であって、25℃の粘度が6~100mPa・sであるものである。
【0024】
成分(d)は、特に制限されないが、具体的には、例えば、25℃の粘度が6~100mPa・sであるジメチルポリシロキサンやメチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。市販品としては、特に限定されないが、KF-96A-6CS、KF-96-10CS、KF-96-20CS、KF-96-50CS、KF-56(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0025】
本発明における成分(d)が含有されていない場合には、ニコチン酸アミドの析出のなさ、べたつき感のなさに優れない場合がある。本発明における成分(d)の含有量は、特に限定されないが、油系成分が均一に混合されるために乳化安定性に優れ、かつ、べたつき感のなさに優れる点で、3~20%が好ましく、5~15%がより好ましい。
【0026】
成分(e):部分架橋型乳化性シリコーンエラストマー
本発明に用いられる成分(e)部分架橋型乳化性シリコーンエラストマーは、オルガノポリシロキサンを架橋結合させて得られる、一部に三次元架橋構造を有し、分子中にポリオキシアルキレン基やポリグリセリン基やアルキル基を含有し得る重合物である。本発明における部分架橋型乳化性シリコーンエラストマーには、例えば米国特許第5,412,002号、同第5,837,793号及び同第5,811,487号に記載されるものが挙げられる。
【0027】
上記ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシC2~8アルキレン基が好ましく、ポリオキシC2~4アルキレン基がより好ましい。具体的には、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が挙げられ、特にポリオキシエチレン基であると好ましい。 ポリオキシエチレンの重合度としては2~50が好ましく、5~30が特に好ましい。また、オルガノポリシロキサン鎖に残基(分岐鎖)を有するものが好ましい。
【0028】
上記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。該アルキル基の炭素数は、8~20が好ましく、10~16がより好ましく、10~14が更に好ましい。具体的には、カプリル基、ラウリル基、ミリスチル基等が挙げられる。
【0029】
このような成分(e)部分架橋型乳化性シリコーンエラストマーは、通常の化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等の部分架橋型ポリエーテル変性シリコーン、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型アルキル・ポリエーテル共変性シリコーン、(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー等の部分架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー等の部分架橋型アルキル・ポリグリセリン共変性シリコーンが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0030】
このような成分(e)部分架橋型乳化性シリコーンエラストマーは、混合物の形態で市販されており、部分架橋型ポリエーテル変性シリコーンとジメチルポリシロキサンとの混合物としてKSG-210(固形分20~30%)、部分架橋型アルキル・ポリエーテル共変性シリコーンと油剤との混合物としてKSG-310(固形分25~35%)、KSG-320(固形分20~30%)、KSG-330(固形分15~25%)及びKSG-340(固形分25~35%)、部分架橋型ポリグリセリン変性シリコーンとジメチルポリシロキサンの混合物としてKSG-710(固形分20~30%)、部分架橋型アルキル・ポリグリセリン共変性シリコーンと油剤との混合物として、KSG-810(固形分25~35%)、KSG-820(固形分20~30%)、KSG-830(固形分15~25%)、及びKSG-840(固形分25~35%)(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明の油中水型乳化組成物における成分(e)は、油系成分である成分(b)IOBが0.1~0.6の極性油、(c)揮発性シリコーン油剤、および(d)25℃の粘度が6~100mPa・sである不揮発性シリコーン油剤のいずれに対しても相溶性に優れ、油相成分全体を均一に混合させる「つなぎ」の役割を果たし、乳化安定性の向上に寄与することが期待できる。さらに、成分(e)は、予想外なことに、水相に存在し得る水溶性のニコチン酸アミドにも分子間相互作用をもたらし、油相への分散性を向上させる役割を果たすことで、ニコチン酸アミドの析出のなさ、さらには、べたつき感のなさを良好にし得る。本発明における成分(e)が含有されていない場合には、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性、べたつき感のなさに優れない場合がある。
【0032】
本発明における成分(e)の含有量は、特に限定されないが、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性、べたつき感のなさの点で、0.25~7%が好ましく、0.5~2.5%がより好ましい。
【0033】
本発明において、ニコチン酸アミドの結晶形成抑制と乳化安定性を確保するため、成分(b)、(c)、(d)、および(e)を含む全油性成分の総量は、20~60%である。成分(b)、(c)、(d)、および(e)を含む全油性成分の総量が20%未満であると、乳化安定性に優れない場合があり、60%を超えると、ニコチン酸アミドの析出のなさと乳化安定性に優れない場合がある。また、成分(b)、(c)、(d)、および(e)を含む全油性成分の総量は、ニコチン酸アミドの析出のなさと乳化安定性に優れる点で、25~55%が好ましく、30~50%がより好ましい。
【0034】
本発明において、成分(a)と成分(e)は適宜含有させることができるが、含有質量割合(a)/(e)は、ニコチン酸アミドの析出のなさに優れる点で、0.8~8が好ましく、2.0~7.5がより好ましく、3.6~7.2がさらにより好ましく、4~6がさらに特により好ましい。これは、乳化界面に存在する成分(e)が、予想外なことに、水相中で結晶を形成し得るニコチン酸アミドに分子間相互作用をもたらし、水相や油相への分散性を向上させる役割を果たし得るためである。
【0035】
本発明において、成分(b)と成分(e)は適宜含有させることができるが、含有質量割合(b)/(e)は、ニコチン酸アミドの析出のなさと乳化安定性に優れる点で、0.4~20が好ましく、0.5~19がより好ましく、1~15がさらにより好ましく、5~12がさらに特により好ましい。部分架橋型乳化性シリコーンエラストマー(e)は成分(b)を、成分(c)および成分(d)を含む油相成分全体を均一に混合させる「つなぎ」の役割を果たし、乳化安定性を向上させ得るためである。
【0036】
本発明は、前記成分(a)~(e)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(a)~(e)以外の任意成分、すなわち、成分(a)~(e)以外の、油性成分、界面活性剤、粉体、水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、色素、香料等の通常公知の成分を含有することができる。
【0037】
成分(b)~(e)以外の油性成分としては、通常化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において用いられ得るものであれば、特に限定されず、固体、半固体、液体油、また、動物油、植物油、鉱物油、合成油を問わず、用い得る。
【0038】
界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等の化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において用いられ得るものであれば特に限定はない。非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンが挙げられる。等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びそれらの無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α-スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-メチル-N-アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシル-N-アルキルアミノ酸塩、ο-アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N-ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N-トリアルキル-N-スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N-ジアルキル-N,N-ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2-アルキル-1-ヒドロキシエチル-1-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等を挙げることができる。カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩またはエチレンオキサイド(EO)付加型の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。具体的には、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレン(15EO)ヤシ油アルキルメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレン(4EO)ラウリルエーテルジメチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0039】
本発明において、界面活性剤は、特に限定されないが、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性の点で、好ましくは、ポリエーテル変性シリコーンであり、より好ましくは、分岐構造を有するオルガノポリシロキサン基を主鎖として、ポリオキシアルキレン基をグラフトしたもの(シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン)である。シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンとしては、具体的には、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。ニコチン酸アミドの析出のなさに優れる点で、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが好ましい。
【0040】
粉体としては、化粧料に一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これら粉体はその1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
水性成分としては、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール等の多価アルコール、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や樹脂等の粘液質等が挙げられ、通常化粧品一般に使用されるものであれば特に限定はない。
【0042】
保湿剤としては、例えば、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
【0043】
本発明の油中水型乳化組成物の製造方法は、特に制限はなく、常法により調製される。例えば、成分(b)~(e)を含有する油系成分を、必要に応じて均一に加温溶解した後、成分(a)を均一に溶解させた水性成分を添加混合して乳化することにより調製することができる。
【0044】
本発明の油中水型乳化組成物は、他の成分との併用により種々の剤型とすることもでき
る。具体的には、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、固形状等、種々の剤型にて実
施することができる。
【0045】
本発明の油中水型乳化組成物は、種々の用途の化粧料として利用できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディローシ
ョン、ボディクリーム、日焼け止めなどのスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシ
ャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、リップクリーム等
の仕上げ用化粧料ヘアミスト、トリートメント、ヘアクリーム、等の頭髪用化粧料などを
例示することができる。その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に
含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明の油中水型乳化組成物は、皮膚外用剤の用途としても利用可能である。例えば、
外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、
硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等が挙げられる。またその使用方法は、前記した化粧料と
同様に挙げることができる。
【実施例
【0047】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0048】
実施例1~15及び比較例1~8:乳液
下記表1~3に示す処方の乳液を調製し、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性、べたつき感のなさについて下記の方法により評価した。その結果も併せて表1~3に示す。
【0049】
【表1】
【表2】
【表3】
【0050】
*1:サラコス 913(日清オイリオグループ社製)
*2:リソノール 20SP(高級アルコール工業社製)
*3:サラコス 816T(日清オイリオグループ社製)
*4:コスモール 43V(日清オイリオグループ社製)
*5:KLEAROL(SONNEBORN社製)
*6:KSG-710(ポリマー分25%、信越化学工業社製)
*7:KSG-16(ポリマー分25%、信越化学工業社製)
*8:KF-6038(信越化学工業社製)
*9:KF-6028P(信越化学工業社製)
【0051】
(製造方法)
A:成分1~16を室温にて均一に混合・分散する。
B:成分17~21を室温にて均一に混合溶解する。
C:AにBを室温で添加し、均一に攪拌し乳化して、乳液を得た。
【0052】
(評価項目)
イ.ニコチン酸アミドの析出のなさ
ロ.乳化安定性
ハ.べたつき感のなさ
【0053】
[イ.ニコチン酸アミドの析出のなさ]
各試料について、製造直後および20-40℃(48時間サイクル)の恒温槽に1ヶ月間保管したものを、倍率100倍、露光時間1/200秒にて正立型顕微鏡(オリンパス社製)を用いて偏光下にて観察し、経時での変化の様子を以下の4段階判定基準に従って評価した。
偏光下では、ニコチン酸アミドを含む結晶は、結晶化が進行するにつれ、顕微鏡にて不明瞭な光輝物として灰色調の像として現れ、さらに結晶化が進行すると、小さな結晶光輝物が発生し、その数が増えると推察される。
【0054】
4段階評価判断基準
(判定基準) (評価)
1ヶ月間保管品が、製造直後品と比べて、変化なし(結晶光輝物が全く観察されない):◎
1ヶ月間保管品が、製造直後品と比べて、不明瞭な光輝物が観察される:○
1ヶ月間保管品が、製造直後品と比べて、小さな結晶光輝物がわずかに多く観察される:△
1ヶ月間保管品が、製造直後品と比べて、明瞭な結晶光輝物が多数観察される:×
【0055】
[ロ.乳化安定性]
製造直後及び50℃の恒温槽に1ヶ月間保管した各試料の乳化滴の平均粒子径を、サブミクロン粒子アナライザーN5(ベックマン・コールター社製)で測定し、製造直後を基準として平均粒子径の変化率を以下の4段階判定基準にて評価した。なお、 下記、評価にて△、×であった時には、外観上離しょうが生じ、使用性に優れなかった。
【0056】
4段階評価判断基準
(判定基準):(評価)
平均粒子径の変化率が25%未満:◎
平均粒子径の変化率が25%以上50%未満:○
平均粒子径の変化率が50%以上70%未満:△
平均粒子径の変化率が70%以上:×
【0057】
[ハ.べたつき感のなさ]
20代~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネルを10名選定した。各試料について専門パネルが皮膚に塗布した時に感じるべたつき感のなさを下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0058】
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:べたつきを感じない
4点:ほとんどべたつきを感じない
3点:ややべたつきを感じる
2点:べたつきを感じる
1点:非常にべたつきを感じる
【0059】
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0060】
表1~3から明らかなごとく、本発明の実施例1~15の油中水型乳化乳液は、「ニコチン酸アミドの析出のなさ」、「乳化安定性」「べたつき感のなさ」のすべての項目において優れた油中水型乳化乳液であった。
これに対し、成分(a)の含有量が10%を超える比較例1は、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性、べたつき感のなさに劣っていた。
成分(b)、(c)、(d)、および(e)を含む全油性成分の総量が20%未満である比較例2は、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性に劣っていた。
成分(b)、(c)、(d)、および(e)を含む全油性成分の総量が60%を超える比較例3は、ニコチン酸アミドの析出のなさ、べたつき感のなさに劣っていた。
成分(b)IOBが0.1~0.6の極性油剤を含有しない比較例4は、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性、べたつき感のなさに劣っていた。
成分(c)を含有しない比較例5は、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性に劣っていた。
成分(d)を含有せず、25℃の粘度が100mPa・sを超えるシリコーン油剤を配合した比較例6、比較例7は、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性に劣っていた。
成分(e)を含有せず、部分架橋型非乳化性シリコーンエラストマーを配合した比較例8は、ニコチン酸アミドの析出のなさ、乳化安定性に劣っていた。
【0061】
実施例16: 油中水型乳化ファンデーション
下記に示す組成及び製造方法で、油中水型乳化ファンデーションを調製した。
(組成) (%)
(1)ジメチルポリシロキサン3%処理
酸化チタン(平均粒径300nm) 9
(2)ジメチルポリシロキサン2%処理黒酸化鉄 0.3
(3)ジメチルポリシロキサン2%処理黄酸化鉄 1.8
(4)ジメチルポリシロキサン2%処理ベンガラ 0.6
(5)ジメチルポリシロキサン3%処理セリサイト 1
(6)窒化ホウ素 2
(7)ラウリルPEG-9
ポリジメチルシロキシエチルジメチコン *8 5
(8)イソドデカン 5
(9)デカメチルシクロペンタシロキサン 15
(10)ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度 10mPa・s)

(11)ジカプリン酸プロピレングリコール
(IOB=0.26) *10 3
(12)ミリスチン酸イソプロピル
(IOB=0.18) *11 2
(13)ラウロイルグルタミン酸ジ
(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)
(IOB=0.30) *12 0.5
(14)パラメトキシケイ皮酸2-エチルへキシル
(IOB=0.28) *13 5
(15)2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)
安息香酸へキシルエステル *14 0.7
(16)(ジメチコン/(PEG-10/15))
クロスポリマー混合物 *15 5
(17)ニコチン酸アミド 5.5
(18)精製水 残量
(19)エタノール 5
(20)フェノキシエタノール 0.3
(21)ジプロピレングリコール 5
*10:ニッコール PDD(日光ケミカルズ社製)
*11:IPM-EX(日本サーファクタント工業社製)
*12:エルデュウ PS-306(味の素社製)
*13:UVINUL MC80(BASF社製)
*14:UVINUL A PLUS(BASF社製)
*15:KSG-210(ポリマー分25%、信越化学工業社製)
【0062】
(製造方法)
A.成分(1)~(8)を均一に分散する。
B.成分(9)~(16)を必要に応じて80℃に加温して均一に分散し、Aに攪拌しな
がら添加する。
C.成分(17)~(21)を室温で均一に混合する。
D.Bを攪拌しながら徐々にCを加えて室温で乳化し、油中水型乳化ファンデーションを得た。
【0063】
以上のようにして得られた実施例16の油中水型乳化ファンデーションは、「ニコチン酸アミドの析出のなさ」、「乳化安定性」「べたつき感のなさ」のすべてにおいて優れているものであった。
【0064】
実施例17: 油中水型乳化日焼け止め料
下記に示す組成及び製造方法で、油中水型乳化日焼け止め料を調製した。
(組成) (%)
(1)微粒子酸化亜鉛
(平均粒径25nm、比表面積50m2/g) 3
(2)ジメチルシリル化シリカ
(平均粒径7nm、比表面積300m2/g) 0.5
(3)デカメチルシクロペンタシロキサン 5
(4)メチルトリメチコン *16 10
(5)ラウリルPEG-9
ポリジメチルシロキシエチルジメチコン *8 1
(6)ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール
(IOB=0.32) *17 2
(7)デシルテトラデカノール(IOB=0.21) *18 5
(8)乳酸セチル(IOB=0.42) *19 1
(9)イソノナン酸イソノニル(IOB=0.2) *20 1
(10)パラメトキシケイ皮酸2-エチルへキシル
(IOB=0.28) *13 3
(11)4-tert-ブチル-4’-メトキシ-
ジベンゾイルメタン *21 1
(12)メチルフェニルポリシロキサン *22 3
(13)(PEG-15/ラウリルジメチコン)
クロスポリマー *23 5
(14)球状PMMA *24 0.5
(15)香料 0.03
(16)ニコチン酸アミド 4.5
(17)精製水 残量
(18)1,3-ブチレングリコール 5
(19)塩化ナトリウム 0.1
(20)エタノール 2
(21)フェノキシエタノール 0.05
*16:TMF-1.5(信越化学工業社製)
*17:コスモール 525(日清オイリオグループ社製)
*18:リソノール 24SP(高級アルコール工業社製)
*19:CERAPHYL 28(ASHLAND SPECIALTY INGREDIENTS社製)
*20:サラコス 99(日清オイリオグループ社製)
*21:PARSOL 1789(L.C.UNITED社製)
*22:KF-56(信越化学工業社製)
*23:KSG-310(ポリマー分30%、信越化学工業社製)
*24:マツモトマイクロスフェアーM311(松本油脂製薬社製)
【0065】
(製造方法)
A.成分(1)~(3)を均一に分散する。
B.成分(4)~(15)を必要に応じて80℃に加温し、均一に分散し、Aに攪拌しな
がら添加する。
C.成分(16)~(21)を室温で均一に混合する。
D.Bを攪拌しながら徐々にCを加えて室温で乳化し、油中水型乳化日焼け止め料を得た。
【0066】
以上のようにして得られた実施例17の油中水型乳化ファンデーションは、「ニコチン酸アミドの析出のなさ」、「乳化安定性」「べたつき感のなさ」のすべてにおいて優れているものであった。
【0067】
実施例18: 油中水型乳化日中用美容液
下記に示す組成及び製造方法で、油中水型乳化日中用美容液を調製した。
(組成) (%)
(1)ジメチルポリシロキサン
(25℃における粘度 1.5mPa・s) 10
(2)パルミチン酸エチルヘキシル
(IOB=0.13) *25 2
(3)乳酸ミリスチル(IOB=0.47) *26 2
(4)コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32) *27 5
(5)パラメトキシケイ皮酸2-エチルへキシル
(IOB=0.28) *13 1
(6)ミネラルオイル 1
(7)スクワラン 3
(8)セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン *28 3
(9)ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度 20mPa・s)

(10)ジメチコン/オクチルシリル化処理
微粒子酸化チタン(平均粒径35nm) 3
(11)ポリメチルシルセスキオキサン *29 0.5
(12)(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)
クロスポリマー混合物 *6 6
(13)精製水 残量
(14)ニコチン酸アミド 4
(15)トリプロピレングリコール 5
(16)1,3-ブチレングリコール 0.2
(17)塩化ナトリウム 1
(18)エタノール 2
(19)クロルフェネシン 0.03
*25:PALMESTER 1543(PALM OLEO社製)
*26:CERAPHYL 50(ASHLAND SPECIALTY INGREDIENTS社製)
*27:CRODAMOL OSU(クローダジャパン社製)
*28:ABIL EM-90(EVONIC社製)
*29:TOSPEARL 3000A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
【0068】
A.成分(1)~(12)を均一に分散する。
B.成分(13)~(19)を室温で均一に混合する。
C.Aを攪拌しながら徐々にBを加えて室温で乳化し、油中水型乳化日中用美容液を得た。
【0069】
以上のようにして得られた実施例18の油中水型乳化日中用美容液は、「ニコチン酸アミドの析出のなさ」、「乳化安定性」「べたつき感のなさ」のすべてにおいて優れているものであった。
【0070】
実施例19:油中水型乳化コンシーラー
下記に示す組成及び製造方法で、油中水型乳化コンシーラーを調製した。
(組成) (%)
(1)ジメチルポリシロキサン3%処理酸化チタン
(平均粒径250nm) 15
(2)ジメチルポリシロキサン2%処理黒酸化鉄 0.3
(3)ジメチルポリシロキサン2%処理黄酸化鉄 1.0
(4)ジメチルポリシロキサン2%処理ベンガラ 0.5
(5)ジメチルポリシロキサン3%処理雲母チタン 3
(6)(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)
クロスポリマー *30 5
(7)PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン *9 3
(8)イソステアリン酸イソプロピル
(IOB=0.15) *31 3
(9)ネオペンタン酸イソステアリル
(IOB=0.14) *32 2
(10)パラメトキシケイ皮酸2-エチルへキシル
(IOB=0.28) *13 5
(11)ビスエチルヘキシルオキシフェノール
メトキシフェニルトリアジン *33 0.5
(12)デカメチルシクロペンタシロキサン 5
(13)イソドデカン 5
(14)メチルトリメチコン *16 5
(15)ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度 20mPa・s)

(16)香料 0.2
(17)(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)
クロスポリマー混合物 *6 5
(18)メチルパラベン 0.1
(19)エタノール 5
(20)ニコチン酸アミド 6
(21)精製水 残量
(22)ブチレングリコール 5
(23)グリセリン 0.2
(24)ヒアルロン酸Na 0.1
(25)加水分解シルク 0.1
(26)グリシン 0.1
(27)加水分解エラスチン 0.1
(28)ヒアルロン酸酵母発酵液 0.1
(29)ビタミンEニコチネート 0.01
*30:KSP-101(信越化学工業社製)
*31:IPIS(高級アルコール工業社製)
*32:ネオライト 180P(高級アルコール工業社製)
*33:TINOSORB S(BASF社製)
【0071】
(製造方法)
A.成分(1)~(8)を均一に分散する。
B.成分(9)~(17)、成分(29)を必要に応じて80℃に加温し、均一に分散し、Aに攪拌しながら添加する。
C.成分(18)~(28)を室温で均一に混合する。
D.Bを攪拌しながら徐々にCを加えて室温で乳化し、油中水型乳化コンシーラーを得た。
【0072】
以上のようにして得られた実施例19の油中水型乳化コンシーラーは、「ニコチン酸アミドの析出のなさ」、「乳化安定性」「べたつき感のなさ」のすべてにおいて優れているものであった。