(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】ショックアブソーバ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/36 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
F16F9/36
(21)【出願番号】P 2019043303
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 希応乃
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-115232(JP,U)
【文献】特開2004-011786(JP,A)
【文献】特開2005-106206(JP,A)
【文献】特開2010-007765(JP,A)
【文献】実開平07-001345(JP,U)
【文献】登録実用新案第3157500(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドの基端部側を支持する主軸受と前記ピストンロッドの先端部側を支持する副軸受とが組み込まれるケースと、
前記ピストンロッドの基端部に設けられ、前記ケースの基端部側に形成されたオイル室内を移動するピストンと、
内側当接面と外側当接面とが形成され、前記主軸受と前記副軸受との間に前記ケースの先端部側に位置させて前記ケース内に配置されるパッキンホルダと、
前記内側当接面と前記外側当接面との間における前記パッキンホルダの内周面と、前記ピストンロッドの外周面との間に形成される空間と、
前記パッキンホルダの基端部側に前記内側当接面に当接して配置されるインナーパッキンと、
前記パッキンホルダの先端部側に前記外側当接面に当接して配置されるアウターパッキンと、
前記アウターパッキンよりも前記ケースの先端部側に設けられるフィルタと、
前記フィルタが組み込まれ、前記副軸受を固定するカバーと、
を有し、
前記インナーパッキンと前記アウターパッキンとの間のパッキン間距離は、前記ピストンロッドの往復動ストロークよりも長く、
前記パッキンホルダの先端部に突出部を設け、当該突出部の内側に前記アウターパッキンが装着される保持溝を形成し、前記突出部に前記
副軸受を当接させ、
前記ケースの先端部を塑性加工することにより前記カバーを前記ケースに固定する、
ショックアブソーバ。
【請求項2】
請求項1記載のショックアブソーバにおいて、前記内周面の軸方向長さは、前記往復動ストロークと同一かまたは前記往復動ストロークよりも長い、ショックアブソーバ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のショックアブソーバにおいて、前記内側当接面に突き当てられて前記インナーパッキンが装着される内側保持溝を形成する突出部を前記主軸受に設けた、ショックアブソーバ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のショックアブソーバにおいて、前記オイル室に連通するアキュムレータ室を前記主軸受に形成した、ショックアブソーバ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のショックアブソーバにおいて、前記オイル室に前記主軸受を介して連通するアキュムレータ室を前記パッキンホルダに形成した、ショックアブソーバ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のショックアブソーバにおいて、ナットがねじ結合される雄ねじを前記ケースの外周面に形成した、ショックアブソーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動部材の移動を停止する際に移動部材と停止部材とに加わる衝撃力を緩和するショックアブソーバに関する。
【背景技術】
【0002】
移動部材を往復動端の位置で停止させるときに移動部材に加わる衝撃力を緩和するために緩衝器つまりショックアブソーバが用いられている。例えば、電子部品等を往復動テーブルにより移動する場合には、往復動テーブルが往復動端の位置まで移動したときに、往復動テーブルをショックアブソーバやストッパ等の停止部材に衝突させて停止させている。移動部材としての往復動テーブルを停止させる際に、往復動テーブルに加えられる衝撃力を緩和するために、往復動テーブルにはショックアブソーバが取り付けられる。
【0003】
ショックアブソーバは、ケース内に軸方向に往復動自在に組み込まれるピストンロッドを有し、ピストンロッドの一端部はケースの一端面から突出している。ケースの他端部内に設けられたオイル室には、シリコーンオイル等からなる衝撃吸収用のオイルが封入されており、ピストンロッドの他端部に設けられたピストンがオイル室を移動する。オイル室内をピストンが移動するとき、ピストンとオイル室との間の隙間を通過するオイルの流動抵抗により移動部材や停止部材に加わる衝撃力が緩和される。
【0004】
ショックアブソーバが水や切削油などの液体や切粉や研磨剤といった粉体等の異物が飛散し易い環境下で用いられる場合には、特許文献1に記載されるように、インナーシールとアウターシールとが設けられたダンパ装置つまりショックアブソーバが使用される。インナーシールつまりインナーパッキンは、液体の外部への漏出を防止し、アウターシールつまりアウターパッキンは、ケースの先端側部つまりピストンロッドの突出端側部からケース内に液体が入り込むのを防止する。
【0005】
しかし、異物によりアウターパッキンが破損することがあり、アウターパッキンが破損した場合には、外部から液体や異物がショックアブソーバ内部に入り込み、オイル室のオイルが外部へ漏れたり、異物によりピストンロッドが損傷したりと、ショックアブソーバが壊れることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたダンパ装置においては、アキュムレータが設けられたロッドガイドつまり軸受のオイル室側にインナーシールが配置され、反対側にアウターシールが配置されている。ロッドガイドの内周面はピストンロッドの外周面に接触している。インナーシールとピストンロッドとの間を通過したオイルがピストンロッドとロッドガイドとの間に入り込むと、オイルがピストンロッドとロッドガイドとの間の僅かな隙間を毛細管現象によりアウターシールに向けて移動し、外部へ漏出する。このため、オイル室内に充填されたオイルが少しずつ漏出され、ダンパ装置の耐久性が低下する。また、ピストンロッドに付着した液体が、ピストンロッドとロッドガイドとの間に入り込むと、ピストンロッドとロッドガイドとの間の隙間を毛細管現象によりインナーシールに向けて移動する液体は、オイル室内部に混入する。そして、オイル室内の圧力が高まって、ピストンロッドがオイル室内に入り込めなくなり、ダンパ装置の破損要因となる。
【0008】
本発明の目的は、ショックアブソーバの耐久性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のショックアブソーバは、ピストンロッドの基端部側を支持する主軸受と前記ピストンロッドの先端部側を支持する副軸受とが組み込まれるケースと、前記ピストンロッドの基端部に設けられ、前記ケースの基端部側に形成されたオイル室内を移動するピストンと、内側当接面と外側当接面とが形成され、前記主軸受と前記副軸受との間に前記ケースの先端部側に位置させて前記ケース内に配置されるパッキンホルダと、前記内側当接面と前記外側当接面との間における前記パッキンホルダの内周面と、前記ピストンロッドの外周面との間に形成される空間と、前記パッキンホルダの基端部側に前記内側当接面に当接して配置されるインナーパッキンと、前記パッキンホルダの先端部側に前記外側当接面に当接して配置されるアウターパッキンと、前記アウターパッキンよりも前記ケースの先端部側に設けられるフィルタと、前記フィルタが組み込まれ、前記副軸受を固定するカバーと、を有し、前記インナーパッキンと前記アウターパッキンとの間のパッキン間距離は、前記ピストンロッドの往復動ストロークよりも長く、前記パッキンホルダの先端部に突出部を設け、当該突出部の内側に前記アウターパッキンが装着される保持溝を形成し、前記突出部に前記副軸受を当接させ、前記ケースの先端部を塑性加工することにより前記カバーを前記ケースに固定する。
【発明の効果】
【0010】
パッキン間距離は、ピストンロッドの往復動ストロークよりも長く、ピストンロッドの外周面とパッキンホルダの内周面は、これらの間の空間を介して離れており、パッキンホルダの内周面がピストンロッドの外周面に接触していないので、インナーパッキンとピストンロッドとの間から空間内に通過したオイルは、ピストンロッドの外周面に薄膜となって付着してパッキンホルダの内周面には接触しない。したがって、ピストンロッドの外周面に付着したオイルは、外部へ移動することはない。これにより、オイルが外側パッキンとピストンロッドとの間から外部に漏出しないので、ショックアブソーバを長期間に渡って使用しても、オイル室からのオイルの漏出が防止され、ショックアブソーバの耐久性を向上させることができる。また、ピストンロッドに付着した水や油などの液体が、アウターパッキンを通過してピストンロッドの外周面とパッキンホルダの内周面との間の隙間に入り込んでも、ピストンロッドに付着した液体は、パッキンホルダの内周面に接触しない。したがって、ピストンロッドに付着した液体は、インナーパッキンより内部へ移動することはない。これにより、液体が、オイル室内に混入することがないので、ショックアブソーバの破損が防止され、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態であるショックアブソーバを示す断面図である。
【
図2】ピストンロッドが突出した
図1の状態からピストンロッドが後退移動した状態を示す断面図である。
【
図3】(A)はパッキンホルダに装着される前のアウターパッキンとインナーパッキンとを示す断面図であり、(B)はパッキンホルダに装着された後のアウターパッキンとインナーパッキンとを示す断面図である。
【
図4】他の実施の形態であるショックアブソーバを示す断面図である。
【
図5】さらに他の実施の形態であるショックアブソーバを示す断面図である。
【
図6】さらに他の実施の形態であるショックアブソーバを示す断面図である。
【
図7】(A)はさらに他の実施の形態であるショックアブソーバを示す断面図であり、(B)は(A)における7B-7B線断面図である。
【
図8】(A)はさらに他の実施の形態であるショックアブソーバを示す断面図であり、(B)は(A)における8B-8B線断面図である。
【
図9】(A)はさらに他の実施の形態であるショックアブソーバの要部を示す断面図であり、(B)はさらに他の実施の形態であるショックアブソーバの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。それぞれの実施の形態においては、共通性を有する部材には同一の符号が付されている。
【0013】
図1および
図2に示されるショックアブソーバ10aは、円筒形状のケース11を有し、雄ねじ12がケース11の外周面に形成されている。雄ねじ12にねじ結合されるナット13により、ケース11を図示しない部材に締結することができる。雄ねじ12を図示しない部材に設けられたねじ孔にねじ結合させてケース11を部材に取り付けることもできる。ケース11には段付きの収容孔14が形成されており、収容孔14の一端部は外部に開口し、ケース11の他端部には端壁15が設けられている。この明細書においては、ケース11の開口部側をショックアブソーバ10aの先端部とし、端壁15側を基端部または後端部とする。
【0014】
収容孔14は、段差面17を境界として基端部側の小径孔14aと、先端部側の大径孔14bとからなる。ケース11の基端部側にはオイル室21が設けられ、オイル室21内には、ピストン27が、軸方向に移動自在に設けられている。ピストン27により、オイル室21内は第1オイル室21aと第2オイル室21bとに仕切られている。第1オイル室21aの先端部側には、主軸受16が嵌め込まれる。
【0015】
ガイド面23が主軸受16に形成され、ピストンロッド24がガイド面23に案内されて軸方向に往復動自在に主軸受16に装着されている。フランジ25がピストンロッド24に設けられ、ピストンロッド24の基端部に取り付けられたばね受け26とフランジ25との間には、ピストン27が軸方向に移動自在に設けられている。圧縮コイルばね28が端壁15とばね受け26との間に装着され、ピストンロッド24の先端がケース11の先端面から突出する方向のばね力が、圧縮コイルばね28によりピストンロッド24と主軸受16に、ばね受け26を介して加えられている。
【0016】
小径孔14aは、段差面17から端壁15に向けて漸次内径が小さくなったテーパ面を有し、ピストンロッド24が基端部に向けて後退移動すると、ピストン27の外周面と小径孔14aとの間の隙間が漸次狭くなる。
図1はピストンロッド24が突出限位置まで前進移動した状態を示し、このときには、ピストン27と小径孔14aとの間の隙間が最も大きくなる。一方、
図2はピストンロッド24が後退限位置まで後退移動した状態を示し、このときには、ピストン27と小径孔14aとの間の隙間が最も小さくなる。
【0017】
オイルの一例として、シリコーンオイルがオイル室21内に充填される。オイル室21内にシリコーンオイルを充填するために、オイル注入孔31が端壁15に形成されている。オイル室21内にオイルが注入された後に、オイル注入孔31は止めねじ32により閉じられる。主軸受16に筒形の溝を形成することにより、アキュムレータ室33が主軸受16に形成され、アキュムレータ室33は主軸受16に形成された連通路34により、オイル室21に連通している。アキュムレータ35がアキュムレータ室33に組み込まれている。アキュムレータ35は、例えば、独立気泡型のスポンジ等により構成されている。
【0018】
ピストンロッド24の先端面に移動部材が衝突し、ピストンロッド24がばね力に抗して後退移動すると、
図2に示されるように、ピストンロッド24の基端部が第2オイル室21bに入り込む。したがって、第2オイル室21b内のオイルは、ピストン27の外周面と小径孔14aの内周面との間の隙間を通過して第1オイル室21aに入り込むとともに、一部のオイルが連通路34を介してアキュムレータ室33内に入り込む。これにより、アキュムレータ35はオイルにより収縮される。ピストン27の外周面と小径孔14aの内周面との間の隙間は、漸次狭くなるので、オイルの流動抵抗が徐々に大きくなる。そのため、ピストンロッド24が後退限位置に近づくと、ピストンロッド24に加わる制動力が高くなる。このように、第2オイル室21bから第1オイル室21aに向けて流れるオイルの流動抵抗により、ピストンロッド24の速度が減速され、ピストンロッド24およびピストンロッド24に衝突した移動部材に加わる衝撃力が緩和される。
【0019】
一方、移動部材がピストンロッド24から離れると、圧縮コイルばね28のばね力によりピストンロッド24は前進方向に駆動される。このときには、ピストン27の内周面とピストンロッド24との間の隙間36と、ピストン27の外周面と小径孔14aとの間の隙間とを介して、オイルが第1オイル室21aから第2オイル室21bへ流れる。アキュムレータ35は、ピストンロッド24の突出移動に伴って膨張し、アキュムレータ室33内のオイルは連通路34を介して第2オイル室21bに流れる。
【0020】
パッキンホルダ40が主軸受16よりも先端部側に配置されている。外側保持溝41がパッキンホルダ40の先端部に設けられ、内側保持溝42がパッキンホルダ40の基端部に設けられている。ゴム製のアウターパッキン43が外側保持溝41に装着され、ゴム製のインナーパッキン44が内側保持溝42に装着されている。
図3(B)に示されるように、外側保持溝41は、アウターパッキン43が当接する外側当接面41aと、外側当接面41aよりも外方に突出する突出部41bとにより形成される。内側保持溝42は、インナーパッキン44が当接する内側当接面42aと、内側当接面42aよりも内方に突出する突出部42bとにより形成される。中央保持溝45がパッキンホルダ40の軸方向中央部の外周面に開口して形成され、ゴム製のOリング46が中央保持溝45に装着されている。
【0021】
パッキンホルダ40に設けられた内周面47と、ピストンロッド24の外周面は接触することなく、空間48が内周面47とピストンロッド24の外周面との間に形成されている。空間48は、外側保持溝41と内側保持溝42との間の内周面47の軸方向長さMの範囲に設けられている。空間48の径方向の寸法は、ピストンロッド24に付着した薄膜のオイルが、内周面47に接触しない程度の大きさ、すなわち、空間48内において、毛細管現象が発生しない程度の大きさに設定されている。したがって、空間48内に入り込んだオイルは、毛細管現象によりアウターパッキン43に向けて移動することはない。
【0022】
パッキンホルダ40の基端部は、主軸受16の先端部に設けられた係合溝51に突き当てられて装着されている。一方、副軸受52がケース11の先端部内に設けられ、アウターパッキン43よりも先端部側に配置され、副軸受52に設けられた係合溝53に、パッキンホルダ40の先端部が突き当てられて装着されている。ピストンロッド24の外周面は、副軸受52のガイド面54に接触する。ピストンロッド24は、主軸受16とこれから離れた副軸受52とにより軸方向に往復動自在に支持されているので、ピストンロッド24の軸受強度が高められ、ピストンロッド24を長期間に渡って中心軸のずれを発生させることなく、往復動させることができる。
【0023】
副軸受52は、ケース11の先端部に固定されるカバー55により固定されている。カバー55には外部からケース11内に異物が入り込むのを防止するために、フィルタ56が組み込まれている。カバー55はケース11の先端部を径方向内方にかしめ加工、つまり塑性変形加工することにより、ケース11に固定されている。
【0024】
図3(A)はパッキンホルダ40に装着される前のアウターパッキン43とインナーパッキン44とを示す断面図であり、
図3(B)はパッキンホルダ40に装着された後のアウターパッキン43とインナーパッキン44とを示す断面図である。
【0025】
アウターパッキン43とインナーパッキン44は、
図2および
図3に示されるように、それぞれ径方向中央部に環状の溝60が形成され、径方向内側リップ部61と径方向外側リップ部62とを有し、両方のリップ部61、62の横断面形状がV字形状となっている。アウターパッキン43は両方のリップ部61、62がフィルタ56に向けて延在しており、インナーパッキン44は両方のリップ部61、62がケース11の端壁15側、つまり主軸受16に向けて延在している。アウターパッキン43とインナーパッキン44のパッキン間距離Lは、
図3に示されるように、アウターパッキン43の径方向内側リップ部61
がピストンロッド24に接触する部分と、インナーパッキン44の径方向内側リップ部61がピストンロッド24に接触する部分との間の距離である。
【0026】
ピストンロッド24の往復動ストロークをSとすると、パッキン間距離Lは往復動ストロークSよりも長く設定されている。ショックアブソーバ10aが使用されると、ピストンロッド24は繰り返し往復動される。このとき、インナーパッキン44のリップ部61により、第1オイル室21aからインナーパッキン44より先端部へ、オイルが漏出することを防ぐ。そして、ピストンロッド24の外周面に付着したオイルは、インナーパッキン44とピストンロッド24との間から空間48内を通過しても、パッキン間距離Lは往復動ストロークSよりも長いので、アウターパッキン43より外部へオイルが漏出することはない。また、ピストンロッド24の外周面に密着するオイルは、ミクロン単位の極めて薄い厚みであり、表面張力によりピストンロッド24の外周面に密着し、パッキンホルダ40の内周面47に接触しない。これにより、空間48内において、毛細管現象によるアウターパッキン43に向けてのオイルの移動がない。
【0027】
毛細管現象によるアウターパッキン43に向けてのオイルの移動がないので、ピストンロッド24が後退移動するときに、アウターパッキン43がピストンロッド24の外周面に付着したオイルを払拭することはない。また、空間48内において、毛細管現象が防止されるため、オイルが空間48内に留まりやすい。そのため、アウターパッキン43とピストンロッド24との間からオイルが外部に漏出することが防止され、ショックアブソーバ10aの耐久性が向上する。
【0028】
図1に示されるように、ピストンロッド24が突出限位置にあるとき、ピストンロッド24の一部(露出部)は、外部に露出する。ショックアブソーバ10aの使用環境により、粉体などの異物や、油などの液体が、ピストンロッド24の露出部に付着する。ピストンロッド24が後退移動するとき、ピストンロッド24の露出部は、収容孔14内に入り込む。このとき、アウターパッキン43より先端部側に配置されるフィルタ56により、露出部に付着した異物が捕集され、アウターパッキン43の破損が防止される。そして、露出部に付着した液体がアウターパッキン43により払拭される。また、ピストンロッド24の外周面に付着した液体が、アウターパッキン43とピストンロッド24との間から空間48内を通過しても、パッキン間距離Lが往復動ストロークSより長いので、払拭されなかった液体は、空間48内に留まり、オイル室21内へは混入しない。つまり、外部からの異物や液体がオイル室21内へ混入することを防ぐことにより、ショックアブソーバ10aの耐久性が向上する。
【0029】
図4~
図9はそれぞれ他の実施の形態であるショックアブソーバ10b~10hを示す断面図であり、ショックアブソーバ10aにおける部材と共通性を有する部材には同一の符号が付されている。
【0030】
図4に示されるショックアブソーバ10bにおいては、主軸受16の先端部に内側保持溝42が形成されている。インナーパッキン44は内側保持溝42に装着され、パッキンホルダ40の内側当接面42aに当接している。このように、インナーパッキン44を主軸受16に装着するようにしても良く、パッキンホルダ40の内側当接面42aにインナーパッキン44を当接させることにより、インナーパッキン44はパッキンホルダ40に保持される。突出部41bをパッキンホルダ40に設けることなく、副軸受52に設けると、パッキンホルダ40は突出部41bが設けられていない形態となる。しがって、パッキンホルダ40としては、両端にパッキンが当接する当接面が設けられている構造とすることができる。
【0031】
主軸受16に形成された環状溝には、Oリング46aが装着されている。ショックアブソーバ10bのパッキン間距離Lは、ショックアブソーバ10aと同様に、往復動ストロークSよりも長い。
【0032】
図5に示されるショックアブソーバ10cにおいては、副軸受52がパッキンホルダ40の先端部にパッキンホルダ40と一体に設けられ、アウターパッキン43とインナーパッキン44との間に配置されている。したがって、パッキンホルダ40は空間48を形成する内周面47とガイド面54と有している。このように、パッキンホルダ40に副軸受52を設けるようにしても、ピストンロッド24の軸受強度を高めることができる。
【0033】
ショックアブソーバ10cのパッキン間距離Lは、ショックアブソーバ10aと同様に、往復動ストロークSよりも長い。また、ショックアブソーバ10cにおける内周面47の軸方向長さMは、上述したショックアブソーバ10a、10bの場合よりも長く、ピストンロッド24の往復動ストロークSと同一に設定されている。このように、軸方向長さMを往復動ストロークSと同一に設定すると、ピストンロッド24の外周面に表面張力により薄膜となって密着したオイルは、ピストンロッド24の外周面に付着したままの状態で、アウターパッキン43にまで移動することがない。また、ピストンロッド24の露出部に付着した液体が空間48内に入り込んでも、インナーパッキン44にまで移動することがない。なお、軸方向長さMを、往復動ストロークSよりも長く設定しても同様の作用効果が得られる。
【0034】
したがって、パッキン間距離Lが往復動ストロークSより長く、かつ、内周面47の軸方向長さMを往復動ストロークSと同一かまたはそれよりも長くすると、軸方向長さMが往復動ストロークSより短い場合よりも、オイルの外部への漏出や外部からの液体の浸入をより確実に防止することができる。
【0035】
このショックアブソーバ10cにおいては、
図4に示したショックアブソーバ10bと同様に、主軸受16の先端部に内側保持溝42が形成されており、インナーパッキン44は主軸受16に装着されている。パッキンホルダ40に副軸受52を一体に設けることにより、ショックアブソーバ10cのケース11の長さを、ショックアブソーバ10a、10bのケース11の長さとほぼ同一にしつつ、内周面47の軸方向長さMをショックアブソーバ10a、10bよりも長くすることができる。
【0036】
図6に示されるショックアブソーバ10dは、ショックアブソーバ10aと同様に、パッキンホルダ40の先端部にアウターパッキン43が保持され、後端部にインナーパッキン44が保持される。このショックアブソーバ10dは、ショックアブソーバ10cと同様に、パッキンホルダ40に副軸受52が設けられ、アウターパッキン43とインナーパッキン44との間に配置されている。ショックアブソーバ10dのパッキン間距離Lは、ショックアブソーバ10aと同様に、往復動ストロークSよりも長い。また、ショックアブソーバ10dにおける内周面47の軸方向長さMは、ショックアブソーバ10cと同様に、ピストンロッド24の往復動ストロークSと同一かまたはそれよりも長く設定されている。したがって、ピストンロッド24の外周面に表面張力により薄膜となって密着したオイルは、ピストンロッド24の外周面に付着したままの状態で、アウターパッキン43にまで移動することがない。また、ピストンロッド24の露出部に付着した液体が空間48内に入り込んでも、インナーパッキン44にまで移動することがない。このように、ショックアブソーバ10dは、ショックアブソーバ10cと同様に、軸方向長さMが往復動ストロークSより短い場合よりも、オイルの外部への漏出や外部からの液体の浸入をより確実に防止することができる。
【0037】
なお、上述のショックアブソーバ10a、10bにおいて、内周面47の軸方向長さMが、上述したショックアブソーバ10c、10dと同様に、ピストンロッド24の往復動ストロークSとほぼ同一に設定されていてもよい。
【0038】
図7に示されるショックアブソーバ10eにおいては、パッキンホルダ40に筒形に形成された溝により、アキュムレータ室33がパッキンホルダ40に形成されている。アキュムレータ室33にはアキュムレータ35が装着されている。パッキンホルダ40の内周面47とピストンロッド24との間には空間48が形成される。主軸受16は、パッキンホルダ40よりもケース11の端壁15側に位置させて大径孔14bに配置されている。ピストンロッド24は主軸受16のガイド面23と、副軸受52のガイド面54とに接触して、軸方向に往復動自在に支持されている。
【0039】
主軸受16の外周面には軸方向に延びて切欠き面63が形成され、切欠き面63と収容孔14の内周面との間で連通路34aが形成されている。主軸受16の端部はパッキンホルダ40に当接しており、パッキンホルダ40の当接端部には連通路34aと連通する環状溝64が形成されている。環状溝64とアキュムレータ室33とを連通させる連通路65がパッキンホルダ40に設けられ、アキュムレータ室33は主軸受16を介してオイル室21に連通する。
【0040】
図7に示されるように、パッキンホルダ40にアキュムレータ35を装着するために、パッキンホルダ40は、上述したショックアブソーバ10a~10dのパッキンホルダ40よりも長く設定される。したがって、内周面47の軸方向長さMとパッキン間距離Lは、ピストンロッド24の往復動ストロークSよりも長い。
【0041】
図8に示されるショックアブソーバ10fは、
図7に示したショックアブソーバ10eと同様に、アキュムレータ室33がパッキンホルダ40に形成され、アキュムレータ室33にはアキュムレータ35が装着されている。パッキンホルダ40の内周面47とピストンロッド24との間には空間48が形成される。主軸受16は、ショックアブソーバ10eと同様に、パッキンホルダ40よりもケース11の端壁15側に位置させて大径孔14bに配置され、ケース11の開口端側に副軸受52が配置されている。ピストンロッド24は主軸受16のガイド面23と、副軸受52のガイド面54とに接触して、軸方向に往復動自在に支持されている。
【0042】
主軸受16の外周面には、ショックアブソーバ10eと同様に、軸方向に切欠き面63が形成され、連通路34aはパッキンホルダ40に形成された連通路65に連通している。連通路65、34aとの回転方向のずれを防止するために、パッキンホルダ40に設けられた突起66が主軸受16に形成された係合溝67に係合している。
図8に示されるショックアブソーバ10fにおいても、アキュムレータ室33は主軸受16を介してオイル室21に連通する。
【0043】
図9(A)に示されるショックアブソーバ10gと
図9(B)に示されるショックアブソーバ10hの基本構造は、
図8に示したショックアブソーバ10fと同様であり、アキュムレータ室33は、パッキンホルダ40に形成された連通路65と主軸受16に形成された連通路34aを介してオイル室21に連通している。
【0044】
ショックアブソーバ10gにおいては、ずれ防止部材として、キー71がパッキンホルダ40と主軸受16との間に取り付けられている。これに対し、ショックアブソーバ10hにおいては、ずれ防止部材として、ピン72がパッキンホルダ40と主軸受16との間に取り付けられている。
【0045】
ショックアブソーバ10f、10g、10eの内周面47の軸方向長さと、パッキン間距離は、ショックアブソーバ10eと同様であり、ピストンロッド24の往復動ストロークSよりも長い。
【0046】
上述のように、ショックアブソーバはケース11内に、主軸受16とこれよりもケース11の開口端部側の副軸受52とが設けられている。それぞれの軸受に軸方向に移動自在に支持されるピストンロッド24の基端部に設けられたピストン27はオイル室21内を移動する。アウターパッキン43が外側当接面41aに当接してパッキンホルダ40に保持され、インナーパッキン44が内側当接面42aに当接してパッキンホルダ40に保持されている。
【0047】
副軸受52は、ショックアブソーバ10a、10bのように、パッキンホルダ40とは別部材としてケース11内に取り付けられる形態と、ショックアブソーバ10c、10dのように、パッキンホルダ40の端部に一体に設けられる形態とがある。主軸受16は、ショックアブソーバ10a~10dのように、アキュムレータ35が設けられる形態と、ショックアブソーバ10e~10hのように、アキュムレータ35が設けられない形態とがある。主軸受16にアキュムレータ35が設けられない形態においては、パッキンホルダ40にアキュムレータ35が設けられる。
【0048】
いずれの形態においても、パッキン間距離Lを往復動ストロークSより長く、かつ、内周面47の軸方向長さMを往復動ストロークSと同一かまたはそれよりも長くすると、オイルの外部への漏出や外部からの液体の浸入をより確実に防止することができる。ショックアブソーバの耐久性を向上させるとともに破損を防止することができる。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
10a~10h ショックアブソーバ
11 ケース
14 収容孔
15 端壁
16 主軸受
21a 第1オイル室
21b 第2オイル室
23 ガイド面
24 ピストンロッド
27 ピストン
28 圧縮コイルばね
33 アキュムレータ室
34、34a 連通路
35 アキュムレータ
40 パッキンホルダ
43 アウターパッキン
44 インナーパッキン
47 内周面
48 空間
52 副軸受
53 係合溝
54 ガイド面