(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】ろ過方法、ろ過体、ろ過装置、及びろ過用積層体
(51)【国際特許分類】
B01D 29/46 20060101AFI20230710BHJP
B01D 29/48 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B01D29/46 B
B01D29/46 A
B01D29/48 C
(21)【出願番号】P 2019045111
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】國谷 正
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-008701(JP,Y1)
【文献】特開2011-212557(JP,A)
【文献】特開昭52-109670(JP,A)
【文献】特開昭64-051109(JP,A)
【文献】特開2003-260487(JP,A)
【文献】特開2006-035077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00- 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚または複数枚のシート状体を1方向に積層させてなる板状のろ過用積層体であって、
前記積層させた各層のシート状体を、隣接する他の層のシート状体と連結する連結部と、
被処理水の流入口となる、前記積層させたシート状体の第1の積層断面と、
処理水の流出口となる、前記積層させたシート状体の前記第1の積層断面
の裏面である第2の積層断面と、
を有するろ過用積層体。
【請求項2】
前記連結部が、前記各層のシート状体の長手方向の端部及び中央部の少なくともいずれかに配置されている、請求項1に記載のろ過用積層体。
【請求項3】
前記連結部が、前記各層のシート状体の長手方向の両端部と中央部とに、積層方向において交互に繰り返すように配置されている、請求項2に記載のろ過用積層体。
【請求項4】
前記連結部が、前記各層のシート状体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに、積層方向において交互に繰り返すように配置されている、請求項2に記載のろ過用積層体。
【請求項5】
前記連結部が、前記各層のシート状体の長手方向の共通する一端部のみに配置されている、請求項2に記載のろ過用積層体。
【請求項6】
前記連結部が、前記各層のシート状体の長手方向の両端部に配置されている、請求項2に記載のろ過用積層体。
【請求項7】
請求項1に記載のろ過用積層体
と、前記ろ過用積層体を支持する支持体と、を備える、ろ過体。
【請求項8】
請求項7に記載のろ過体を備える、ろ過装置。
【請求項9】
請求項1に記載のろ過用積層体により被処理水をろ過して処理水を得るろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過方法、ろ過体、ろ過装置、及び、ろ過用積層体に関する。特に、本発明は、水分及び固形分を含有する被処理水をろ過する際に好適に適用しうるろ過方法、ろ過体、ろ過装置、及びろ過用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形分を含有する液体又は気体等の流体から、固形分を除去する方法が種々検討されている。例えば、特許文献1では、空調システムに組み込まれて空気をろ過するために使用されうる空調用フィルタであって、蛇腹状に織りこんだろ布を2枚重ね合わせて外枠内に収納してなるフィルタが開示されている。特許文献1では、ろ布を2枚重ね合わせることで、フィルタによる集塵効率をろ布1枚を使用した場合よりも高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ろ過効率を高めるためには、ろ材の有効ろ過面積比が大きく、且つ、有効ろ過面積比がろ過処理を実施している期間を通じて、減少し難いことが求められている。しかし、一般に、ろ材を用いたろ過方法では、ろ過処理の時間経過とともに、ろ材に目詰まりが生じ有効ろ過面積比が減少して、ろ過効率が低下する。このため、洗浄処理などを行って、ろ材の目詰まりを解消する必要がある。しかし、特許文献1に記載されたフィルタでは、ろ材の有効ろ過面積比に拡大の余地があるとともに、ろ材を洗浄する際の洗浄容易性にも改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、有効ろ過面積比が充分に大きく、且つ、洗浄容易性に優れるろ材を用いた、高効率なろ過方法及びろ過装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明のろ過方法及びろ過装置に好適に用い得るろ過体、及び当該ろ過体に好適に適用されうるろ過用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、シート状体、即ち、表面及び裏面が厚み分の距離を隔てて対向してなるシート状の物体を積層して形成したろ過用積層体をろ材として用いるにあたり、かかるろ過用積層体の積層断面をろ過面として用いることで、ろ材の有効ろ過面積比を大きくすることができ、且つ、ろ材の洗浄容易性を高めることができることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のろ過方法は、一次側領域と二次側領域とを隔てる積層体により被処理水をろ過してろ過水を得るろ過方法であって、前記積層体は、1枚又は複数枚のシート状体が複数層にわたり積層されてなる積層構造を含み、前記積層構造を形成する各層の端面よりなる一つの積層断面を第1積層断面、該第1積層断面の裏面に相当する積層断面を第2積層断面として、前記第1積層断面は前記一次側領域に面しており、前記第2積層断面は前記二次側領域に面しており、前記被処理水を、前記一次側領域から前記第1積層断面を介して前記積層体に導入し、前記第2積層断面からろ過水を流出させて前記二次側領域に供給する工程を含む、ことを特徴とする。かかる特定構造の積層体は、洗浄する際の洗浄容易性に優れる。また、積層体の積層断面に対して被処理水を流入させる、即ち、積層断面をろ過面として用いてろ過を行うことで、ろ過効率を高めることができる。
【0008】
さらに、本発明のろ過方法にて、前記シート状体がろ布であることが好ましい。ろ布よりなる積層体を用いることで、ろ過効率及び洗浄容易性を一層高めることができるからである。
【0009】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のろ過体は、シート状体が複数層積層されてなる積層体と、該積層体を支持する支持体と、を備えるろ過体であって、前記積層体は、1枚又は複数枚のシート状体が複数層積層されてなる積層構造を含み、前記積層構造を形成する各層の端面よりなる一つの積層断面を第1積層断面、該第1積層断面の裏面に相当する積層断面を第2積層断面として、前記支持体が、前記第1積層断面の少なくとも一部と、前記第2積層断面の少なくとも一部とを、露出した状態で、前記積層体を支持する、ことを特徴とする。積層断面を表面及び裏面とする板状の積層体を含み、表裏の積層断面が露出した状態で支持されてなるろ過体は、ろ過効率及び洗浄容易性に優れており、上述した本発明のろ過方法に好適に用いることができる。
【0010】
ここで、本発明のろ過体にて、前記シート状体がろ布であることが好ましい。ろ布よりなる積層体を備えるろ過体は、ろ過効率及び洗浄容易性に一層優れるからである。
【0011】
さらに、本発明のろ過体にて、前記積層構造の積層方向が1方向であっても良いし、前記積層体が、1枚又は複数枚の前記シート状体が捲回されることにより形成された捲回積層体であっても良い。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のろ過装置は、上述した何れかのろ過体を備えることを特徴とする。上述した何れかのろ過体を含む、本発明のろ過装置は、ろ過効率及びろ過効率再生能に優れる。ここで、ろ過効率再生能とは、ろ過体の洗浄容易性に応じて付与されうる性能であり、ろ過効率が低下した場合に、ろ過体の洗浄等を行うことで、ろ過効率が再生する性能を意味する。
【0013】
ここで、本発明のろ過装置が、前記ろ過体の前記第2積層断面側に配置され前記第2積層断面より流出するろ過水を貯留する処理水貯留部と、前記処理水貯留部に接続され前記ろ過水を装置外へ流出させる処理水流出部と、を備えていても良い。かかる構成を有するろ過装置は、ろ過効率及びろ過効率再生能に優れる。
【0014】
さらに、本発明のろ過装置が、前記ろ過体を2枚備え、前記処理水貯留部が、前記2枚のろ過体の各第2積層断面に隣接するように、前記2枚のろ過体に挟まれて配置されていても良い。
【0015】
さらに、本発明のろ過装置が、前記ろ過体により一次側領域と二次側領域とに区分された流路を有し、前記流路の前記一次側領域内に、前記ろ過体の平面形状と同じ断面形状のテーパ部が配置され、且つ、前記二次側領域内に、前記二次側領域から前記一次側領域に向かう方向で前記ろ過体を押圧する押圧具が配置されており、前記押圧具により押圧された前記ろ過体の一部が前記テーパ部の内表面に接触することにより前記ろ過方向にて前記ろ過体が位置決めされて保持される構成を有していても良い。かかる構成を有するろ過装置は、ろ過効率及びろ過効率再生能に優れる。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のろ過用積層体は、厚み分の距離を隔てて配置された表面及び裏面を有する板状のろ過用積層体であって、1枚又は複数枚の帯状のシート状体が複数層積層されてなる積層構造を含み、前記積層構造を形成する各層の端面よりなる一対の積層断面が、それぞれ、前記表面及び裏面に相当することを特徴とする。かかる構造を有するろ過用積層体は、有効ろ過面積比が充分に大きく、且つ、洗浄容易性に優れる。
【0017】
ここで、本発明のろ過用積層体において、前記積層構造を形成する各層が、隣接する他の層と少なくとも1つの連結部を介して連結されてなることが好ましい。連結部を有するろ過用積層体は、洗浄後のろ過用積層体の形状復元性に優れる。
【0018】
さらに、本発明のろ過用積層体において、前記積層構造を形成する各層が長手方向端部の内の少なくとも一方に孔を有しており、該孔が、前記積層体を積層方向に貫通する支持棒を収容することにより、前記積層体の積層構造が維持され、前記支持棒が、前記支持棒の前記積層方向における位置を固定する固定具を含んでいても良い。かかる構造のろ過用積層体は、洗浄時に、連結部以外の部分の隣接層との間隙を広めることが可能となり洗浄容易性に優れるとともに、洗浄後のろ過用積層体の形状復元性に優れる。
【0019】
さらに、本発明のろ過用積層体において、前記積層構造が、長手方向の一端部が第1の棒に固定され、他端部が第2の棒に固定されてなる、一枚の帯状のシート状体の捲回体により形成されてなり、前記第1及び前記第2の棒が、少なくとも一つの固定具により固定されることで、前記捲回体の捲回構造が維持されていても良い。かかる構造のろ過用積層体は、洗浄時の洗浄容易性に優れるとともに、洗浄後のろ過用積層体の形状復元性に優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、有効ろ過面積比が充分に大きく、且つ、洗浄容易性に優れるろ材を用いた、高効率なろ過方法及びろ過装置を提供することができる。
また、本発明によれば、本発明のろ過方法に好適に用い得るろ過体及び当該ろ過体に好適に適用されうるろ過用積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のろ過方法を説明するための概略図である。
【
図2】シート状体が捲回されてなる、捲回積層体の概略図である。
【
図3】積層体の連結パターンの一例を説明するための概略図である。
【
図4】積層体の連結パターンの一例を説明するための概略図である。
【
図5】積層体の連結パターンの一例を説明するための概略図である。
【
図6】積層体の連結パターンの一例を説明するための概略図である。
【
図7】積層体の連結パターンの一例を説明するための概略図である。
【
図8】捲回積層体の捲回積層構造を形成し、維持するための構造の一例を説明するための概略図である。
【
図9】積層構造の一例を説明するための概略図である。
【
図10】本発明のろ過体の一例を説明するための概略図である。
【
図11A】本発明のろ過体の一例を説明するための概略図である。
【
図12】本発明のろ過体の構成要素である挟持部材の一例を説明するための概略図である。
【
図13】挟持部材を含む本発明のろ過体の構造の他の一例を示す概略図である。
【
図14】本発明のろ過体の構成要素である挟持部材の一例を説明するための概略図である。
【
図15A】本発明のろ過体の構成要素である挟持部材の一例を説明するための概略図である。
【
図16A】本発明のろ過装置の一例を説明するための概略図である。
【
図17A】本発明のろ過装置の一例を説明するための概略図である。
【
図18A】本発明のろ過装置の一例を説明するための概略図である。
【
図19A】本発明のろ過装置の一例を説明するための概略図である。
【
図20A】本発明のろ過装置の一例を説明するための分解斜視図である。
【
図20C】
図20A~Bを参照して説明したろ過装置を実装したろ過槽の概略図である。
【
図21A】本発明のろ過装置の一例を説明するための概略図である。
【
図22】本発明のろ過装置の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明のろ過方法及びろ過装置は、汚泥等の固形分を含有する被処理水の処理施設において採用されうる。中でも、本発明のろ過方法及びろ過装置は、上下水道の水処理工程で発生する被処理水を処理する際等に好適に用いることができる。本発明のろ過方法及びろ過装置は、既存の水処理装置に用いられているろ過板を、後述するような特定構造のろ過体に置換する等して、比較的容易に実施又は実装することができる。
【0023】
(ろ過方法)
本発明のろ過方法は、一次側領域と二次側領域とを隔てる所定の積層構造を有するろ過用の積層体により被処理水をろ過してろ過水を得るろ過方法である。本発明のろ過方法で用いるろ過用積層体(以下、単に「積層体」とも称することが有る。)は、1枚又は複数枚のシート状体が複数層にわたり積層されてなる積層構造を含む。かかる積層体は、積層構造を形成する各層の端面よりなる積層断面を有する。そして、本発明のろ過方法は、積層体の一つの積層断面を第1積層断面、当該第一積層断面の裏面に相当する積層断面を第2積層断面として、ろ過を実施するにあたり、第1積層断面が一次側領域に面し、第2積層断面は二次側領域に面するように配置した場合に、被処理水を、一次側領域から第1積層断面を介して積層体に導入し、第2積層断面からろ過水を流出させて二次側領域に供給する工程を含むことを特徴とする。換言すると、本発明のろ過方法では、積層体の積層方向と、一次領域側から二次領域側へと向かうろ過方向とが、実質的に直交する関係が成立している。
【0024】
ろ過用積層体の積層断面を用いてろ過を行うことで、ろ過効率を高めることができる。これは、積層断面により得られる有効ろ過面積比が、従来用いられてきたような一般的なろ材よりも大きいことに起因する。更に、積層断面をろ過面とするろ過体は、洗浄容易性に優れる。これは、ろ過体を洗浄する際に積層構造を開放することにより、積層体の内部まで洗浄することが可能となるからである。また、例えば、従来から用いられてきたような、ろ布表面等をろ過面とするろ過板では、ろ布を支持枠と連結するために形成された縫い目等が、本来ならろ過板にてトラップされるべき固形分の抜け穴となることがあった。本発明の濾過方法では、積層断面をろ過面として用いるため、そのような抜け穴は形成されない。このような観点からも、本発明のろ過方法によればろ過性能を高めることができる。
【0025】
図1を参照して、本発明のろ過方法の流れを説明する。被処理水中に含まれる、汚泥粒子等の固形分は、ろ過を継続した際に第1積層断面1上にて堆積して、汚泥堆積層4を形成する。また、被処理水中の固形分は、積層体10に含まれる各層を形成するシート状体3間の積層界面(間隙)に形成された流路においてもトラップされうる。一方、固形分が除去された水分は、積層体10の第2積層断面2から流出して二次側領域に供給される。
【0026】
なお、
図1に示すような、汚泥堆積層4を有する積層体10を用いて、一般的に、「ケーキろ過」と称されるろ過方法を実施することも可能である。「ケーキろ過」方法では、積層体10と共に、汚泥堆積層4もフィルタのような機能を奏しうる。
【0027】
汚泥堆積層4を経て積層体10内に到達した水分は、各層間の間隙において、各層を構成するシート状体表面の凹凸により形成された流路を拡散する。なお、水分が流路を拡散する際の推進力は、積層体10により区分される一次側領域及び二次側領域間の差圧によって付与されても良いし、流路にて生じうる毛細管現象等によって付与されても良いし、これら双方により付与されても良い。
【0028】
<ろ過用積層体>
図1に概略的に示したような、本発明のろ過方法において用い得る積層体の一例としての積層体10は、複数枚のシート状体3が積層されてなる積層構造を含む板状体である。かかる板状体は、表面(
図1の第1積層断面1に相当)及び裏面(
図1の第2積層断面2に相当)が厚み分の距離を介して対向してなる形状を有する。さらに、
図1に示す積層体10は、「積層構造の積層高さ」の値及び「シート状体の長手方向の長さ」の値の双方よりも、「厚み」の値が小さい、板状体である。なお、シート状体3も同様に、2つの主面(即ち、表面及び裏面)が厚み分の距離を介して対向してなる形状を有している。ここで、「シート状体」と「板状体」とは、形状面では共通の特徴を有するが、「板状体」の厚みの方が「シート状体」の厚みより厚い。さらに、シート状体3により積層構造を構築した状態では、シート状体3の厚み方向と、積層体10(板状体)の厚み方向とが、直交する関係にある。
【0029】
図1では、一例として、積層構造に含まれる各層が、
複数枚のシート状体によって構成される態様を示す
ものとして説明した。しかし、かかる例示の態様にとらわれることなく、積層構造は、一枚のシート状体が、折り曲げ、或いは、捲回されることにより構成されていても良い。そして、積層体10の第1積層断面1及び第2積層断面2は、それぞれ、積層構造を形成する各層の端面の集合体である。さらに、シート状体3は、表面及び裏面のうちの少なくとも一方の表面形状が凹凸を有することで、複数枚のシート状体3を相互に重畳させて積層体10を形成した場合に、シート状体3間の界面にて、流体が拡散可能な流路(間隙)を形成し得る物体である。
【0030】
本発明のろ過方法では、かかる積層断面を用いてろ過を行うため、有効ろ過面積比を大きくすることができる。このため、本発明のろ過方法は、ろ過効率が高い。なお、いうまでもなく、積層体10の積層構造は、ろ過を実施している最中は維持される。
【0031】
上記のように、積層構造の各層を構成するシート状体3は、表面又は裏面の少なくとも一方の表面形状が、凹凸を有する。積層構造において隣接する2つの層を形成するシート状体3の対向表面は、両方が凹凸を有していても良いし、一方が凹凸を有していれば、他方が平坦であってもよい。隣接する2つの層の各対向表面のうちの少なくとも一方が凹凸を有していれば、流路を形成可能である。
【0032】
ここで、「凹凸」の形状は特に限定されない。例えば、シート状体3が、織布又は不織布のような、繊維よりなるシートである場合には、繊維による凹凸が、シート表面に現れ得る。従って、例えば、シート状体3が織布よりなる場合には、織布の織目に沿った規則的な形状が、シート状体3の表面及び裏面の凹凸形状に対応する。ここで、織目のパターンは特に限定されることなく、あらゆるパターンであり得る。例えば、織目のパターンとしては、朱子織及び杉綾織等の、織目を形成する織り糸が一定の方向に並列して配置されてなるパターンが挙げられる。また、例えば、シート状体3が、樹脂組成物を、射出成形及び押出成形等の一般的な成形方法によってフィルム状に成形してなる樹脂成形物である場合には、エンボス加工等の表面加工方法に供されることによって、表面に凹凸が形成されうる。この場合、凹凸形状は任意の形状であり得る。一例としては、特開2015-227565号公報に開示されたシートが有する表面形状が挙げられる。
【0033】
ここで、積層体10は、使用に伴い、汚泥堆積層4が過密になる、厚膜化する、或いは、積層体10の各層間の界面に目詰まりが生じる等によりろ過効率が低下しうる。このため、積層体10のろ過性能を回復させるために、積層体10を洗浄することがある。積層体10の洗浄は、積層体10に付着した汚泥堆積層4を除去することができ、且つ/又は、積層体10の層界面から固形分を除去することが可能である限りにおいて特に限定されることなく、既知の洗浄方法で実施することができる。例えば、積層体10の洗浄方法としては、積層体の積層構造を開放して層間の間隙を広くして洗い流す洗浄法が挙げられ、この他に積層体10の二次側領域側から一次側領域側に洗浄水を流す逆流洗浄法等を挙げることができる。
【0034】
積層体10の洗浄容易性を一層速める観点から、積層構造を形成するシート状体3がろ布であることが好ましい。ろ布の材質は、特に限定されることなく、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン)、及びポリエステル等の各種合成樹脂材料、又は、種々の天然樹脂材料であり得る。また、積層構造が複数枚のシート状体3を含む場合には、かかる複数枚のシート状体が全て同じ種類のシート状体であっても良いし、異なる種類のシート状体であっても良い。換言すると、積層体10中に、複数の種類のシート状体3が混在していても良い。
【0035】
なお、積層体10に含まれる積層構造の積層数は、特に限定されることなく、本発明のろ過方法を適用する用途及び装置の仕様等に応じて、適宜調節することができる。また、積層体10のサイズは、設置箇所等の条件に応じて適宜変更することができる。
【0036】
また、原水の水質に応じた適切なろ過性能を保持するために、積層構造における流路(間隙)の大きさを調整できるようにしてもよい。例えば、隣接するシート状体3間にスペーサー(例えば、バーや平板等)を介在させることで、流路を広げることができる。あるいは、積層構造の上側から圧力をかけて、積層体を押し潰す、或いは、シート状体3を変形させることで、流路を狭くすることができる。
【0037】
ここで、
図1に示した、一例に係る積層体10は、厚み分の距離を隔てて配置された表面及び裏面を有する板状の積層体である。かかる積層体10において、積層構造を形成する各層の端面よりなる積層断面が、表面及び裏面に相当する。
図1では、積層体10を構成する各層の積層方向は1方向(
図1における上下方向に相当)である。その一方で、本発明のろ過方法にて用いることができる他の例に係る積層体は、
図2に示すように、シート状体3’が捲回されることにより積層された捲回積層体11であっても良い。
【0038】
積層方向が1方向である積層体は、
図1に示すように積層構造を構成する各層が1枚のシート状体3より形成されてなる積層体10であっても良いし、一枚のシート状体が折り曲げられることにより積層されて、複数の層を形成してなる積層体であっても良い。そして、積層構造に含まれる各層は、隣接層との連結部を少なくとも1つ有していることが好ましい。積層体の積層構造に含まれる各層が、隣接層との連結部を少なくとも1つ有していれば、積層体を洗浄した後に、再度積層構造を形成して積層体とする際の形状復元性を高めることができる。以下、
図3~7を参照して、積層体の連結パターンの幾つかの例を具体的に説明する。
【0039】
図3に示す積層構造では、連結部5αが、積層体を構成し得る各層6aの長手方向両端部、及び長手方向中央部の何れかに配置されている。より具体的には、積層構造の積層方向(
図3における上下方向)において、各層6aの長手方向両端部に配置された端部連結部5Eと、長手方向中央部に配置された中央連結部5Mとが、交互に繰り返されるように配置されている。連結部5αは、両面テープ、接着剤、薄型ビス、溶着部、及び縫製部等の着脱不可の連結部、或いは、マグネット等の磁性体、面ファスナー、スナップ、フック等の留め具、及び再剥離性を有する接着部等の着脱可能な連結部により実装されうる。中でも、
図3に示す積層構造において、着脱不可の連結部を採用することが好ましい。上記したような着脱可能な連結部は着脱不可の連結部に比べて厚みのある構造をとる場合が多く、中央連結部5Mの厚みが薄い方が、ろ過性能を高め易いからである。
【0040】
図3に示す積層構造では、洗浄容易性と、洗浄後の積層構造の復元容易性とをバランスよく両立することができる。より具体的には、積層体を洗浄する際に、積層体にて洗浄水等に起因して応力が生じるが、
図3に示したような連結構造によれば、積層体に生じた応力を均等に分散させることができる。このため、洗浄による積層体の劣化を抑制することができる。更に、かかる連結構造によれば、連結部が、着脱不可の連結部及び着脱可能な連結部の何れにより構成される場合であっても、洗浄時に層間の間隙を均等に開放することができるため、洗浄容易性を一層高めることができる。なお、各層6aの「端部」は、各層6aの長手方向における最端部である必要は無く、各層6aの長手方向における最端部から所定距離内の位置であればよい。
【0041】
また、
図4~5に示すように、積層構造を形成する各層6b又は6cが隣接する他の層と少なくとも1つの連結部5β又は5γを介して連結されてなり、かかる連結部5β又は5γが、各層6b又は6cの長手方向の両端部の内の何れか一方に配置されていても良い。かかる構成によっても、洗浄容易性と、洗浄後の積層構造の復元容易性とをバランスよく両立することができる。より具体的には、
図4には、積層構造の積層方向(
図4における上下方向)において、上下の連結部5βが各層6bの長手方向の両端部に交互に配置されるようになっている構成を示す。また、
図5には、各層の長手方向の共通する一端部のみに連結部5γが配置されるようになっている構成を示す。なお、
図4~5に示す例における「端部」の意味するところは、
図3を参照して説明した意味と同じである。また、連結部5β又は5γを実装する際には、
図3を参照して説明した連結部5αと同様の態様で実装することができる。ここで、
図4~5に示すように、連結部5β又は5γが、各層6b又は6cの長手方向の両端部の内の少なくとも何れか一方に配置されており、各層6b又は6cの中央部に連結部が配置されていなければ、積層体を含んでなるろ過体によるろ過効率を一層高めることができる。なお、各層6b又は6cの長手方向の端部に配置された連結部5β又は5γは、後述するような枠体を備えるろ過体において、積層体の端部が枠体内に収容されうる。このため、このような態様のろ過体においては、連結部5β又は5γにより有効ろ過面積比が小さくなることは無い。
【0042】
図5に示すような連結部5γの配置態様は、積層体の積層枚数が少ない場合に適している。積層枚数が少ない、例えば、積層枚数が10枚以下程度である場合に、連結部5γを
図5に示すような態様で配置すれば、積層体の洗浄容易性を良好に担保することができる。また、
図5に示すような、各層の長手方向の共通する一端部のみに連結部5γが配置される態様は、連結箇所の数が少ない。一般に、積層体の繰り返しの使用及び洗浄等に際して、連結箇所には応力が集中し易く、破壊点となり易い傾向がある。よって、連結箇所の少ない
図5に示す配置態様は、積層体の耐久性を高めるという点で有利である。なお、連結部5γも、
図3を参照して説明した連結部5αと同様の態様で実装することができる。さらに、連結部5γは、簡便性の観点から、着脱不能な連結部として実装されることが好ましい。
【0043】
さらにまた、
図6~7に示すように、積層構造を形成する各層6dが、隣接する他の層と少なくとも1つの連結部5δを介して連結されていてもよい。かかる構成では、洗浄容易性と、洗浄後の積層構造の復元容易性とをバランスよく両立することができる。より具体的には、
図6に示す積層構造は、ジグザグ状にたたまれた一枚のシート状体3”よりなり、畳まれ、相互に重ねられて形成された積層構造における各層間が、連結部5δにより、各層の長手方向の両端部にて連結されている。なお、洗浄容易性を一層高める観点から、
図6に示す積層構造を採用する場合には、連結部5δは着脱可能な連結部として構成されることが好ましい。
図6に示すような、一枚のシート状体3”により形成された積層体は、ローラー等を用いた洗浄に適している。また、
図6に示す様な形状の積層体を構成する際に用いるシート状体3”が、表裏共に同じパターン(例えば、織り目形状)を有することが好ましい。各層6d界面にて形成される流路が同一となり、ろ過性能を一層高めることができるからである。なお、
図6に示すようなジグザグ状に折りたたまれてなる積層体は、端部の折り返し部分における層間の隙間が大きく、かかる箇所が対応する積層断面の部分(即ち、積層断面の周縁部)におけるろ過性能が、積層断面の周縁部よりも内側の部分におけるろ過性能に比較して劣るため、後述するような、枠体を備えるろ過体の構成要素とする際には、かかる部分を枠体内に収容することが好ましい。
【0044】
図7に示す積層構造では、各1枚のシート状体3’’’より形成される層6eが長手方向の両端部に連結部5εを有しており、隣接する他の層6eと連結されている。なお、洗浄容易性を一層高める観点から、
図7に示す積層構造を採用する場合には、連結部5εは着脱可能な連結部として構成されることが好ましい。また、
図7に示す積層構造において、各層6eの長手方向最端部から、連結部5εまでの領域に位置する層界面を経て、ろ過が不十分な被処理水が流出しないように、かかる領域に間詰め層を設けても良い。かかる間詰め層は、被処理水の通過を妨げることができる限りにおいて特に限定されることなく、樹脂又は粘土等により形成することができる。
【0045】
さらに、積層体が捲回積層体11’である場合には、
図8に示すように、積層体は、長手方向の一端部が第1の棒7Aに固定され、他端部が第2の棒7Bに固定されてなる、一枚の帯状のシート状体の捲回体として構成される。そして、第1の棒7A及び第2の棒7Bが、少なくとも一つの固定具8により固定されることで、捲回積層体11’の捲回構造が維持されている。ここで、固定具8は、
図8に示す例では、第1のガイド棒8A及び第2のガイド棒8Bを備える。第1のガイド棒8Aは第1ガイド孔G1を備え、第2のガイド棒8Bは第2ガイド孔G2を備える。そして、これらの第1及び第2ガイド孔G1及びG2には、第2の棒7Bが貫通している。さらに、第2の棒7Bには、位置ずれを防止するためのナット9等が取り付けられている。第1の棒がレバーL等の巻取手段を有しており、かかるレバーLを操作してシート状体を巻き取ることで捲回積層体11’を形成することができる。シート状体を捲回することに従って第1及び第2ガイド孔G1及びG2内を、下方向から上方向に第2の棒7Bがスライドし、捲回積層体の完成に伴ってナット9により第2の棒7Bの上下方向における位置が固定されうる。第1のガイド棒8A及び第2のガイド棒8Bを備える固定具8は、捲回積層体11’を厚み方向の両端面(即ち両積層断面)側から挟みこみ、捲回積層体11’に対して、厚み方向の押圧力を加えるように構成されている。なお、捲回積層体11’を洗浄する際には、ナット9を開放して巻きを緩める、或いは、巻きを開放する等により、捲回積層体11’の層界面の間隙を広げて、洗浄することができる。
【0046】
また、シート状体が連結部を有さない場合における積層構造の一例としては、
図9のような、各層6fが一枚のシート状体により構成されてなり、各1枚のシート状体が、端部に支持棒12を挿入可能な孔13を有する態様が挙げられる。
図9では、各層6fを構成する1枚のシート状体がそれぞれ長手方向両端部に1つずつ、計2つの孔13を有する態様を具体的に示した。しかし、図示の態様に限定されることなく、例えば、各層を構成する1枚のシート状体が片側に1つの孔を有しており、1本の連結棒により積層構造を構成する全てのシート状体が連結される態様であっても良い。なお、支持棒12は、頭部14を有するボルトにより形成されており、積層構造を形成する複数のシート状体を貫通した状態で、積層体の積層構造を保持するための固定具(例えば、ナット。図示しない。)を有していても良い。かかる固定具により、積層方向における支持棒の位置が固定されるとともに、積層構造が維持されうる。さらに、
図9では、各層6fを構成するシート状体の形状及びサイズを全て同じものとして示したが、積層構造がサイズの異なるシート状体により形成されていても良い。より具体的には、例えば、積層構造の下部から上部に向かって、シート状体の長手方向の長さが短くなり、積層断面が直角三角形状の積層構造が形成されても良い。
【0047】
(ろ過体)
本発明のろ過体は、シート状体が複数層積層されてなる積層体と、該積層体を支持する支持体と、を備えるろ過体である。積層体は、1枚又は複数枚のシート状体が複数層積層されてなる積層構造を含む。本発明のろ過体において、積層体の積層構造を形成する各層の端面よりなる一つの積層断面を第1積層断面、該第1積層断面の裏面に相当する積層断面を第2積層断面とした場合に、支持体が、第1積層断面の少なくとも一部と、第2積層断面の少なくとも一部とを、露出した状態で、積層体を支持することを特徴とする。このような構造を有する本発明のろ過体は、ろ過効率及び洗浄容易性に優れる。
【0048】
<積層体>
積層体としては、上述した本発明の積層体(ろ過用積層体)を好適に用いることができる。
【0049】
<支持体>
支持体は、積層体の第1積層断面の少なくとも一部と、第2積層断面の少なくとも一部とを、露出した状態で、積層体を支持する。中でも、支持体が枠体を備えることが好ましい。枠体とは、積層体の端面を支持する部材を意味する。枠体の形状としては、例えば、
図10に示すような、積層体の第1及び第2積層断面が多角形状である場合に、係る多角形状の内の一部の辺に相当する端面を覆う部材と、残る辺に相当する端面を覆う部材とから組み立てられうる形状が挙げられる。なお、
図10では、積層体10’(
図3を参照して説明した連結態様を満たす積層構造を有する。)の第1及び第2積層断面が四角形状である場合に、かかる積層体10’が、かかる四角形状の内の3つの辺に相当する端面を覆い、且つ、第1及び第2積層断面の各端部を覆うように成形された第1枠部材15Aと、残る一辺に相当する蓋状の第2枠部材15Bとからなる枠体により支持されてなる構成を図示する。なお、
図10では、明確のために、積層体10’のサイズを小さく、より具体的には、各層の長手方向の長さを短くして図示した。しかし、実際には、積層体10’の各層の長手方向の長さは、第2枠部材15Bの長手方向の長さに一致し、各層の長手方向両端部が第2枠部材15Bにはめ込まれ、収容された状態となる。
【0050】
第1枠部材15Aは、任意で、内壁に緩衝部材が配置されていても良い。かかる緩衝部材は、例えば、ゴム等の弾性材料よりなり、その配置態様は、第1枠部材の、第1及び第2積層断面の各端部を覆うエッジ部分EDの内壁に沿うような配置態様であり得る。そして、第1枠部材15Aのような枠部材により、積層体の積層断面の周縁部を覆うことで、積層断面の中心部分よりもろ過性能に劣る部分がろ過に用いられないようにすることができる。これにより、ろ過性能を一層高めることができる。また、第2枠部材15Bは、図示のような板状の部材に限定されることなく、例えば、第1及び第2積層断面の上側の周縁部を覆うエッジ部分を有していても良い。
【0051】
また、
図11A~Bには、枠体の構造の他の一例として、ピボットにより連結されてなる2つの枠部材よりなる枠体を例示する。
図11Aに斜視図を示すように、ピボットPにより回転可能に支持されてなる上側枠部材15C及び下側枠部材15Dにより積層体10”を収容することで、ろ過体を形成することができる。そして、
図11Bに側面図を示すように、上側枠部材15C及び下側枠部材15Dを閉鎖した状態にて、積層体10”の積層断面の一部が露出した状態で支持されうる。
【0052】
さらに、
図12~
図15Bに示すように、支持体が、積層体に対して、挟持圧力を印加するように構成された挟持部材を含んでいても良い。より具体的には、
図12~13に示すように、積層体の対向する一対の端面を支持し得る形状の挟持部材16、16’を含む支持体が挙げられる。挟持部材16は、
図12を参照して説明するように、第1挟持板16A及び第2挟持板16Bが、両端が摺動部材S1に連結されてなるブレースB1を介して可動に連結されている。第1挟持板16Aは第1ガイド孔G3を、第2挟持板16Bは、第2ガイド孔G4を有しており、第1及び第2ガイド孔G3,G4内で、摺動部材S1が移動することで、第1挟持板16A及び第2挟持板16Bの間の間隙の大きさを調節することができる。よって、かかる間隙内に積層体(
図12には図示しない)を配置することで、積層体に対して挟持圧を印加することができる。積層体の配置方向は、
図12における上下方向、即ち、挟持圧の印加方向と、積層方向が一致するような方向であっても良いし、
図13に示すように、挟持圧の印加方向と積層方向とが直交するような方向であっても良い。なお、
図13に示す構成では、積層方向の上側に蓋材17Aが、下側に底材17Bがそれぞれ備えられ、これらの蓋材17A及び底材17Bにより、積層構造を維持するための積層圧力が印加されうる。さらに、
図13に示す構成では、積層圧力の印加される方向に対して垂直な方向における挟持圧力を印加するように、
図12を参照して説明した構造と略同様の構造を有する挟持部材16’が配置されている。かかる挟持部材16’は第1挟持板16C及び第2挟持板16Dが、両端が摺動部材S2に連結されてなるブレースB2を介して可動に連結されている。第1挟持板16Cは第1ガイド孔G5を、第2挟持板16Dは、第2ガイド孔G6を有しており、第1及び第2ガイド孔G5,G6内で、摺動部材S2が移動することで、第1挟持板16C及び第2挟持板16Dの間の間隙の大きさを調節することができる。
【0053】
さらに、
図14に示すように、挟持部材が、例えば、万力等の部材として実装されていても良い。万力の形状としては、挟持圧力を発生可能である限りにおいて、特に限定されることなく、あらゆる形状であり得る。
図14では、本体16Eと、ねじ作用で開閉する可動体16Fとを備える挟持部材16”を例示する。挟持部材16”は、可動体16Fと、本体16Eとで積層体10”を挟みこむことで、積層体10”の積層方向にて積層圧力を生じさせつつ、積層構造を保持するように作用する。
【0054】
さらに、
図15A~Bに示すように、挟持部材16'''が一対の挟持板16G及び16Hと、かかる一対の挟持板16G及び16Hが対となった状態で保持するベルトBとを備えていても良い。挟持板16G及び16Hの間に積層体10”を挟み込み、ベルトBにより生じる積層方向の挟持圧力により、積層体10”の積層構造が保持される。なお、
図15Bの平面図に示すように、挟持部材16'''は、積層体10”の長手方向両端部に備えられていても良い。或いは、挟持部材16'''は、積層体10”の片側端部のみに備えられても良い。かかる態様は、積層体10”の積層数が少ない場合に、好適に用いることができる。
【0055】
(ろ過装置)
本発明のろ過装置は、上記したような本発明のろ過体を備える。本発明のろ過装置は、本発明のろ過体を備えるため、ろ過効率が高く、且つ、ろ材の洗浄容易性に優れる。以下、例として、本発明のろ過装置の3つの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0056】
(1)第1実施形態に係るろ過装置
本発明のろ過装置の第1実施形態では、ろ過装置は、ろ過体に加えて、ろ過体の第2積層断面側に配置され、かかる第2積層断面より流出するろ過水を貯留する処理水貯留部と、処理水貯留部に接続されろ過水を装置外へ流出させる処理水流出部と、を備えることができる。処理水貯留部及び処理水流出部の形状及び配置態様は、ろ過装置の全体構成に応じて種々の態様が有り得る。以下、
図16A~
図20Cを参照して、種々の構造のろ過装置における、各構成部の形状及び配置態様を説明する。なお、
図16A~
図18B、及び、
図20A~Cでは、ろ過体として、
図10を参照して説明した、積層断面の平面形状が四角形状であり、積層体の4つの端面を保護する枠体により支持されてなるろ過体を実装したものとして説明する。
【0057】
図16Aは、一例に係るろ過装置200の斜視図である。ろ過装置200は、開口部APを介して第1積層断面が露出するように配置されたろ過体102が、カバーCVにより筺体18の内壁に固定されてなる構造を有する。このような構造のろ過装置200では、筺体18の外部が一次側領域、筺体18の内部空間が二次側領域及び処理水貯留部19に相当し、第1積層断面を介して流入した被処理水がろ過体102によりろ過されて、ろ過水となり、筺体18の内部空間である処理水貯留部19に貯留される。そして、ろ過装置200は、処理水流出部20を介して、ろ過水を装置外へと流出させる。なお、配管等に接続可能なように、処理水流出部20を構成する管状体は、図示のように、外壁にねじ切りが施されていても良い。
【0058】
図16Bは、
図16Aのろ過装置200をI-I断面で切断したと想定した場合の断面図である。
図16Bより明らかなように、ろ過体102の第1積層断面1’は、開口部APを介して、筺体18の外部、即ち一次側領域に露出しており、ろ過体102の第2積層断面2’が、カバーCVの開口部を介して処理水貯留部19に露出している。
図16Bにおいて、ろ過体102を固定するカバーCVはボルトBLを介して、筺体18の内壁に取り付けられている。しかし、ろ過体102の筺体18に対する固定態様は図示した特定の態様に限定されることなく、あらゆる態様であり得る。
【0059】
図17Aは、他の一例に係るろ過装置201の斜視図である。ろ過装置201は筺体18Aの内壁に取り付けられたスロットSLに差し込まれることで、筺体18A内に取り付けられる。図示の態様は、筺体18Aが、相互に空間を空けて配置された2つのスロットSLを有しており、かかる空間が、処理水貯留部に相当する。また、2つのスロットは、ろ過体100が取り付けられた場合に、ろ過体100の第1積層断面1”が、筺体18Aの内壁に接しないように、即ち、筺体18Aの内壁と第1積層断面1”との間に、空間が設けられるように配置されている。また、筺体18Aは、被処理水を流入させる被処理水配管21を有している。さらに、蓋部18Bは、処理水流出部としてのろ過水配管20Aを有している。
【0060】
そして、
図17Aに示したろ過装置201では、
図17Bの断面図に示すように、筺体内部において一次側領域22と、二次側領域としての処理水貯留部19Aとが、ろ過体100によって区画されている。従って、被処理水配管21を経て、一次側領域22に流入した被処理水が、ろ過体100によりろ過されて処理水貯留部19Aに流入し、貯留される。そして、処理水貯留部19Aに貯留されたろ過水は、ろ過水配管20Aを経て装置外へと流出する。
【0061】
図18Aは、更に他の一例に係るろ過装置202の斜視図である。ろ過装置202は、2枚のろ過体100A及び100Bと、当該2枚のろ過体100A及び100Bの各第2積層断面に隣接するように、2枚のろ過体100A及び100Bに挟まれて配置された処理水貯留部19Bを備える。
図18Aでは、処理水貯留部19Bを内部に設けるための具体的な構成として、ろ過体100A及び100Bの備える枠体と同じ形状の枠体15Eを図示している。ろ過体100A及び100Bと処理水貯留部19Bを内包する枠体15Eとの接続部は、シール部23によりシールされている。シール部23は、ろ過体100A及び100Bと処理水貯留部19Bを内包する枠体15Eとの接続部を水密に密閉可能な限りにおいて特に限定されることなく、ゴム等の弾性材料により形成されうる。そして、枠体15Eには、処理水流出部としてのろ過水配管20Bが接続されている。なお、図示しないが、2枚のろ過体100A及び100B、並びに、枠体15Eは、これら全てを貫くボルト状の部材と、かかる部材を固定するナット状の部材とにより連結されていても良い。
【0062】
図18Bは、
図18Aに示したろ過装置202の断面図を示す。ろ過装置202は、ろ過体100A及び100Bの各第1積層断面から流入した被処理水をろ過水として、処理水流出部としてのろ過水配管20Bより装置外へと流出させる。
【0063】
図19Aは、
図18A~Bを参照して説明したろ過装置202と同様の構成を有する、積層断面の平面形状が三角形状の積層体、及びかかる平面形状に応じた形状の枠体を備える2つのろ過体103A及び103Bと、同形状の枠体15Gにより構成される処理水貯留部19Cとを備えるろ過装置203を示す図である。枠体15Gには、処理水流出部としてのろ過水配管20Cが接続されている。第1積層断面から流入した被処理水はろ過水となって処理水貯留部19Cに貯留され、ろ過水配管20Cより装置外へと流出させる。
【0064】
図19Bに示すように、
図19Aに示すような特定の形状のろ過装置203は、汚泥の沈殿を促進するように機能し得る複数の傾斜板401を備えた沈殿池400等において、空いたスペースに好適に配置することができる。このように、ろ過装置の形状を設置箇所に応じた形状とすることで、限られたスペースに配置されうる水処理装置のろ過性能を効率的に高めることができる。
【0065】
図20Aは、更に他の一例に係るろ過装置204の分解斜視図である。ろ過装置204では、2枚のろ過体100A及び100Bの各第2積層断面が、積層方向に対して垂直な平面において、鋭角αを成すように配置されてなる。従って、2枚のろ過体100A及び100Bに挟まれた処理水貯留部を内包する枠体15Hの形状は、図示するように、一つの角が鋭角αである、三角形の面を上下の面とし、且つ、少なくとも2つの側面がそれぞれろ過体を含んでなる、三角柱状であり得る。なお、枠体15Hは、処理水流出部としてのろ過水配管20Dを有している。
【0066】
そして、
図20Bに断面図を示すように、ろ過装置204は、ろ過体100A及び100Bの各第1積層断面より流入した被処理水をろ過水として、ろ過水配管20Dを介して装置外へと流出させる。
【0067】
図20A~Bに示すような特定の形状のろ過装置204は、
図20Cに示すように互い違いに配置することで、直方体形状のろ過槽500内にて効率的に配置することができる。なお、図示のように、各ろ過装置204に備えられたろ過水配管20Dは、ろ過槽500外にて、集合管501に接続されていても良い。このように、ろ過装置の形状を設置箇所に応じた形状としつつ、適正な配置とすることで、限られたスペースに配置されうる水処理装置のろ過性能を効率的に高めることができる。
【0068】
(2)第2実施形態に係るろ過装置
図21Aは、本発明の第2実施形態に係るろ過装置205の断面図である。かかるろ過装置205は、ろ過体104と、ろ過体104により一次側領域と二次側領域とに区分された流路30と、を備える。
図21AにおけるII-II断面図を
図21Bに示す。
図21Bから明らかなように、捲回積層体であるろ過体104は、緩衝部材32を介して、取付部材40により、流路30を形成する、断面円形の配管31内に取り付けられている。緩衝部材32は、緩衝性を呈しつつ、ろ過体104と配管31内壁との間隙を水密に維持出来る部材である限りにおいて特に限定されることなく、所謂「クッション材」として市販されている材料よりなる部材、及び、「ドーナツ」のような平面形状を有するチューブ状の部材(例えば、リング状のうきわのような部材)でありうる。なお、ろ過体104の中心部は、捲回中心である芯材7Cが配置されうる。芯材7Cは、積層断面に露出する面が、被処理水を通さないように閉塞している部材である。かかるろ過体104により、流路30が、ろ過体104を基準として、被処理水の流入側領域である一次側領域と、ろ過水の流出側領域である二次側領域とに区分されている。
【0069】
そして、ろ過装置205は、任意で、逆洗弁33と、流路30の二次側領域に連通し、バルブ等の開閉手段を備える逆洗配管(図示しない)と、を有していても良い。ろ過効率が低下した場合には、被処理水の送水を停止し、且つ、逆洗弁33を開放状態とした状態で、ろ過体に対して、二次側領域から一次側領域に向かう方向で、逆洗配管等を介して逆洗水(例えば、ろ過水)を流して、ろ過体104を逆流水により洗浄することができる。
【0070】
なお、
図21A~Bでは、配管31が断面円形であり、捲回積層体であるろ過体104が、かかる配管31の円形断面に取り付けられる態様を具体的に説明した。しかし、本実施形態に係るろ過装置205は、配管が角管であり、積層体の積層断面の平面形状が四角形であっても良い。
【0071】
(3)第3実施形態に係るろ過装置
本発明のろ過装置の第3実施形態では、ろ過装置は、ろ過体と、当該ろ過体により一次側領域と二次側領域とに区分された特殊な構造の流路とを有することを特徴とする。特殊な構造の流路について、
図22を参照して説明する。
図22に示すように、ろ過装置206の流路30’は、ろ過体104により一次側領域と二次側領域とに区分されている。そして、ろ過装置206は、ろ過体104に対して被処理水が流入する側である一次側領域において、流路30’に、軸線方向に対して垂直な断面形状が、ろ過体104の平面形状と同じであるテーパ部34を有し、且つ、流路30’の二次側領域内に、二次側領域から一次側領域に向かう方向でろ過体104を押圧可能に構成された押圧具35を有する。そして、押圧具35により押圧されたろ過体104の一部が、テーパ部34の内表面の一部に接触することにより、ろ過方向にてろ過体104が位置決めされて保持される。
【0072】
図22に示したろ過装置206において、テーパ部34と押圧具35とにより、ろ過方向におけるろ過体の位置を定める、という構造を採用したことで、水流等の影響によりろ過体の大きさが変動した場合にも、ろ過体104により一次側領域と二次側領域とが区分された状態を良好に維持することができる。例えば、ろ過体104が捲回積層体である場合に、被処理水の水流の影響により、捲きが緩まる、又は、締まる等して、ろ過体104の積層断面の直径が変動することがある。このような場合に、押圧具35により押圧されつつ、テーパ部34の軸線方向にてろ過体104の位置が変更され、その時点でのろ過体104の平面形状に適した位置で留まることで、テーパ部34内にて隙間なくろ過体104を保持することができ、流路30’において一次側領域と二次側領域とが区分された状態を良好に保持することができる。
【0073】
なお、
図22にて示しているようにテーパ部34が弾性部材36を内壁に有していても良い。かかる弾性部材により、ろ過体104を一層水密に支持することが可能となり、流路30’において一次側領域と二次側領域とが区分された状態を一層良好に保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、有効ろ過面積比が充分に大きく、且つ、洗浄容易性に優れるろ材を用いた、高効率なろ過方法及びろ過装置を提供することができる。
また、本発明によれば、本発明のろ過方法に好適に用い得るろ過体及び当該ろ過体に好適に適用されうる積層体を提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
1~1” 第1積層断面
2~2” 第2積層断面
3~3''' シート状体
4 汚泥堆積層
5α~5ε 連結部
6a~6e 層
7A 第1の棒
7B 第2の棒
7C 芯材
8 固定具
8A 第1のガイド棒
8B 第2のガイド棒
9 ナット
10~10” 積層体
11、11’ 捲回積層体
G1~G6 ガイド孔
L レバー
12 支持棒
13 孔
14 頭部
15A 第1枠部材
15B 第2枠部材
15C 上側枠部材
15D 下側枠部材
15E~H 枠体
16~16” 挟持部材
16A~D、G~H 挟持板
16E 本体
16F 可動体
17A 蓋材
17B 底材
18、18A 筺体
18B 蓋部
19、19A~C 処理水貯留部
20 処理水流出部
20A~D ろ過水配管
21 被処理水配管
22 一次側領域
23 シール部
30、30’ 流路
31 配管
32 緩衝部材
33、33’ 逆洗弁
34 テーパ部
35 押圧具
36 弾性部材
40 取付部材
100~102 ろ過体
100A~B ろ過体
200~205 ろ過装置
400 沈殿池
401 傾斜板
500 ろ過槽
501 集合管
AP 開口部
B バンド
CV カバー
ED エッジ部分
L レバー
P ピボット