(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】開閉部材駆動装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/10 20060101AFI20230710BHJP
A47K 13/12 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A47K13/10
A47K13/12
(21)【出願番号】P 2019064166
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】石水 昭夫
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-332161(JP,A)
【文献】特開2007-68910(JP,A)
【文献】特開2014-84923(JP,A)
【文献】特開2007-97680(JP,A)
【文献】特開2018-122030(JP,A)
【文献】特開2014-200458(JP,A)
【文献】特開2002-155667(JP,A)
【文献】特開2016-15841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-13/30
E03D 9/00- 9/16
F16H 1/00- 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースから突出する出力軸と、
前記ケースに収容されるモータと、
前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、
前記出力軸の第1回転方向への回転に伴い、前記出力軸を前記第1回転方向とは反対側の第2回転方向へ付勢するアシスト力を発生させるアシストばねと、を有し、
前記アシストばねは、
前記出力軸の回転位置が第1作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第1ばねと、
前記出力軸の回転位置が前記第1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第2ばねと、を備え
、
前記第1ばねおよび前記第2ばねは、ねじりコイルばねであり、
前記第2ばねは、前記第1ばねの内周側に配置され、
前記第1ばねは、前記第2ばねよりばね定数が大きいことを特徴とする開閉部材駆動装置。
【請求項2】
ケースと、
前記ケースから突出する出力軸と、
前記ケースに収容されるモータと、
前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、
前記出力軸の第1回転方向への回転に伴い、前記出力軸を前記第1回転方向とは反対側の第2回転方向へ付勢するアシスト力を発生させるアシストばねと、を有し、
前記アシストばねは、
前記出力軸の回転位置が第1作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第1ばねと、
前記出力軸の回転位置が前記第1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第2ばねと、を備え
、
前記出力軸は、樹脂部を備え、
前記伝達機構は、前記樹脂部に固定される金属製の出力歯車を備え、
前記第1ばねは、前記出力歯車に係合し、
前記第2ばねは、前記樹脂部に係合し、
前記第1ばねは、前記第2ばねよりばね定数が大きいことを特徴とする開閉部材駆動装置。
【請求項3】
ケースと、
前記ケースから突出する出力軸と、
前記ケースに収容されるモータと、
前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、
前記出力軸の第1回転方向への回転に伴い、前記出力軸を前記第1回転方向とは反対側の第2回転方向へ付勢するアシスト力を発生させるアシストばねと、を有し、
前記アシストばねは、
前記出力軸の回転位置が第1作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第1ばねと、
前記出力軸の回転位置が前記第1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第2ばねと、を備え
、
前記第1ばねは、断面矩形の線材からなり、
前記第2ばねは、断面円形の線材からなり、
前記第1ばねは、前記第2ばねよりばね定数が大きいことを特徴とする開閉部材駆動装置。
【請求項4】
ケースと、
前記ケースから突出する出力軸と、
前記ケースに収容されるモータと、
前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、
前記出力軸の第1回転方向への回転に伴い、前記出力軸を前記第1回転方向とは反対側の第2回転方向へ付勢するアシスト力を発生させるアシストばねと、を有し、
前記アシストばねは、
前記出力軸の回転位置が第1作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第1ばねと、
前記出力軸の回転位置が前記第1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第2ばねと、を備え
、
前記ケースは、前記第1ばねまたは前記第2ばねの端部が配置されるばね係止穴が設けられたばね保持部を備え、
前記ばね保持部は、前記ばね係止穴の開口方向と交差する方向から前記モータによって支持されることを特徴とする開閉部材駆動装置。
【請求項5】
前記第1作用角度範囲は、前記第2作用角度範囲より狭いことを特徴とする請求項
1から4の何れか一項に記載の開閉部材駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉部材が連結される出力軸と、出力軸を駆動する駆動源と、駆動源を収容するケースを備えた開閉部材駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋式トイレの便座や便蓋等の開閉部材を開閉する開閉部材駆動装置として、モータ等の駆動源の回転を、輪列などの伝達機構を介して出力軸に伝達する装置が用いられる。特許文献1には、この種の開閉部材駆動装置(蓋体開閉装置)が開示される。特許文献1の蓋体開閉装置には、出力軸を付勢して開閉部材の開閉をアシストするアシストばねが組み込まれている。また、開閉部材が急に開閉された場合にモータや伝達機構に過大な負荷がかかって破損することを防止するため、トルクリミッタが組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の蓋体開閉装置は、ケース内にモータおよび減速輪列が収容される。出力軸は、減速輪列の最終歯車と噛み合う歯車部と、歯車部の中心から軸線方向に延びる軸部を備えており、軸部の先端がケースの外部へ突出している。アシストばねは、軸部の外周側に配置されている。アシストばねの一端は、歯車部の端面に設けられた固定孔に係止される。アシストばねの他端は、ケースの内壁に設けられた係止部に係止される。
【0005】
特許文献1では、アシストばねはコイルばねであり、1本のアシストばねによって出力軸を付勢する付勢力(アシスト力)を発生させている。しかしながら、1本のアシストばねでは、出力軸の回転位置とアシスト力との関係は単純な比例関係になるため、アシスト力を自由に設定できず、様々な負荷パターンに対応できない。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、開閉部材に連結される出力軸を備えた開閉部材駆動装置において、出力軸を付勢する付勢力(アシスト力)の設定の自由度を高めて、様々な負荷パターンへの対応を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の開閉部材駆動装置は、ケースと、前記ケースから突出する出力軸と、前記ケースに収容されるモータと、前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、前記出力軸の第1方向への回転に伴い、前記出力軸を前記第1方向とは反対側の第2方向へ付勢するアシスト力を発生させるアシストばねと、を有し、前記アシストばねは、前記出力軸の回転位置が第1作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第1ばねと、前記出力軸の回転位置が前記第
1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第2ばねと、を備え、前記第1ばねおよび前記第2ばねは、ねじりコイルばねであり、前記第2ばねは、前記第1ばねの内周側に配置され、前記第1ばねは、前記第2ばねよりばね定数が大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、出力軸を付勢するアシストばねとして、付勢力(アシスト力)を発生させる作用角度範囲が異なる2つのばねを備えている。このように、複数のばねを組み合わせてアシスト力を発生させることにより、1つのばねでアシスト力を発生する場合と比較して、アシスト力の設定の自由度が高まる。従って、様々な負荷パターンに対応できる
。また、作用角度範囲が異なる複数のばねを組み合わせることにより、角度範囲別にアシスト力を設定できる。例えば、開閉部材が閉じている状態では開閉部材の荷重による負荷が加わるため、アシスト力を強くし、開閉部材が開いている状態では負荷が小さいため、アシスト力を小さくすることができる。さらに、複数のアシストばねを組み合わせることにより、ばね形状や線径の自由度を高めることができる。また、取付方法の自由度も高めることができる。
【0009】
本発明において、前記第1ばねは、前記第2ばねよりばね定数が大きいばねである。このように、ばね定数が異なるばねを組み合わせることにより、アシスト力の設定の自由度が高まるので、様々な負荷パターンに対応できる。
【0010】
本発明において、前記第1ばねおよび前記第2ばねは、ねじりコイルばねであり、前記第2ばねは、前記第1ばねの内周側に配置され、前記第1ばねは、前記第2ばねよりばね定数が大きい。このように、2つのばねを2重に配置することにより、限られた配置スペースに複数のばねを配置できる。また、ばね定数の大きいばねは強度が高いため、外側に配置することによって内側のばねを保護できる。
【0011】
本発明の開閉部材駆動装置は、ケースと、前記ケースから突出する出力軸と、前記ケースに収容されるモータと、前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、前記出力軸の第1方向への回転に伴い、前記出力軸を前記第1方向とは反対側の第2方向へ付勢するアシスト力を発生させるアシストばねと、を有し、前記アシストばねは、前記出力軸の回転位置が第1作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第1ばねと、前記出力軸の回転位置が前記第1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第2ばねと、を備え、前記出力軸は、樹脂部を備え、前記伝達機構は、前記樹脂部に固定される金属製の出力歯車を備え、前記第1ばねは、前記出力歯車に係合し、前記第2ばねは、前記樹脂部に係合し、前記第1ばねは、前記第2ばねよりばね定数が大きい。このようにすると、ばね定数が大きい側のばね(すなわち、変形しにくいばね)を金属製の出力歯車によって支持でき、ばね定数が小さいばね(すなわち、変形しやすいばね)を樹脂部によって支持できる。従って、ばね側から加わる負荷による出力軸の変形や破損のおそれが少ない。
【0012】
本発明において、前記第1作用角度範囲は、前記第2作用角度範囲より狭いことが好ましい。このようにすると、弱い側のばねのばね力のみが作用する区間を設けることができるので、アシスト力が弱い区間を設けることができる。
【0013】
本発明の開閉部材駆動装置は、ケースと、前記ケースから突出する出力軸と、前記ケースに収容されるモータと、前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、前記出力軸の第1方向への回転に伴い、前記出力軸を前記第1方向とは反対側の第2方向へ付勢するアシスト力を発生させるアシストばねと、を有し、前記アシストばねは、前記出力軸の回転位置が第1作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第1ばねと、前記出力軸の回転位置が前記第1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第2ばねと、を備え、前記第1ばねは、断面矩形の線材からなり、前記第2ばねは、断面円形の線材からなり、前記第1ばねは、前記第2ばねよりばね定数が大きい。断面矩形の線材は、同径の断面円形の線材よりも強度が高い。従って、線径を太くすることなく、ばね定数の大きいばねを形成
できる。
【0014】
本発明の開閉部材駆動装置は、ケースと、前記ケースから突出する出力軸と、前記ケースに収容されるモータと、前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、前記出力軸の第1方向への回転に伴い、前記出力軸を前記第1方向とは反対側の第2方向へ付勢するアシスト力を発生させるアシストばねと、を有し、前記アシストばねは、前記出力軸の回転位置が第1作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第1ばねと、前記出力軸の回転位置が前記第1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置である間に前記アシスト力を発生させる第2ばねと、を備え、前記ケースは、前記第1ばねまたは前記第2ばねの端部が配置されるばね係止穴が設けられたばね保持部を備え、前記ばね保持部は、前記ばね係止穴の開口方向と交差する方向から前記モータによって支持される。このようにすると、ばね端からケースに加わる負荷によってケースが変形あるいは破損するおそれを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、出力軸を付勢するアシストばねとして、付勢力(アシスト力)を発生させる作用角度範囲が異なる2つのばねを備えている。このように、複数のばねを組み合わせてアシスト力を発生させることにより、1つのばねでアシスト力を発生する場合と比較して、アシスト力の設定の自由度が高まる。従って、様々な負荷パターンに対応できる。また、作用角度範囲が異なる複数のばねを組み合わせることにより、角度範囲別にアシスト力を設定できる。例えば、開閉部材が閉じている状態では開閉部材の荷重による負荷が加わるため、アシスト力を強くし、開閉部材が開いている状態では負荷が小さいため、アシスト力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用した開閉部材駆動装置の外観斜視図である。
【
図2】
図1の開閉部材駆動装置1を備えた洋式便器の説明図である。
【
図4】
図1の開閉部材駆動装置の分解斜視図である。
【
図5】モータ、駆動力伝達機構および出力軸を第1方向の他方側から見た斜視図である。
【
図7】出力歯車、出力軸、およびアシストばねの分解斜視図である。
【
図8】第1ケースおよび中間ケースを第1方向の他方側から見た斜視図である。
【
図9】出力軸が基準位置にあるときのアシストばねの状態を示す説明図である。
【
図10】出力軸が第2ばねの作用開始位置にあるときのアシストばねの状態を示す説明図である。
【
図11】出力軸が第1ばねの作用開始位置にあるときのアシストばねの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した開閉部材駆動装置1の外観斜視図である。
図2は、
図1の開閉部材駆動装置1を備えた洋式便器100の説明図である。
図3は、
図1の開閉部材駆動装置1の断面図である。
図4は、
図1の開閉部材駆動装置1の分解斜視図である。
図5は、モータ3、伝達機構4および出力軸2を第1方向Zの他方側Z2から見た斜視図である。
【0018】
本明細書において、互いに直交する3方向を、第1方向Z、第2方向Yおよび第3方向Xとする。第1方向Zは、出力軸2の軸線Lの方向であり、第2方向Yはケース10の長手方向であり、第3方向Xは、ケース10の短手方向(幅方向)である。また、第1方向Zの一方側をZ1、他方側をZ2とし、第2方向Yの一方側をY1、他方側をY2とし、第3方向Xの一方側をX1、他方側をX2とする。ケース10から出力軸2が突出する側は第1方向Zの他方側Z2であり、ケース10において出力軸2が配置される側は第2方向Yの一方側Y1である。
【0019】
(全体構成)
図1に示す開閉部材駆動装置1は、蓋や扉などの開閉部材を回動させて開閉する装置である。
図2に示す洋式便器100は、便器本体110、便座120、便蓋130、およびタンク140を有する。便座120および便蓋130は、それぞれ、開閉部材駆動装置1の出力軸2(
図3参照)に連結される。便座120および便蓋130は、出力軸2の回転により、便器本体110に被さる閉姿勢、および、便器本体110から立ち上がる開姿勢に変位する。なお、洋式便器100は、便座120および便蓋130の一方のみを開閉部材駆動装置1によって回動させる構成であってもよい。
【0020】
図3に示すように、開閉部材駆動装置1は、モータ3と、出力軸2と、モータ3の駆動力を出力軸2に伝達する伝達機構4と、出力軸2を付勢するアシストばね5と、モータ3および伝達機構4を収容するケース10と、を有する。出力軸2は、ケース10に収容される基部21と、ケース10の開口部9から突出する連結軸22を備える。連結軸22には、
図2に示す便座120、便蓋130などの開閉部材が連結される。
図1に示すように、ケース10は、出力軸2の軸線方向である第1方向Zから見た場合に、第2方向Yに細長い形状を備える。出力軸2が配置されるケース10の開口部9は、ケース10の長手方向である第2方向Yの一方側の端部に位置している。
【0021】
ケース10は樹脂製である。
図1に示すように、ケース10は、第2方向Yに平行に延びる第1側壁11および第2側壁12を備える。また、ケース10は、第1側壁11および第2側壁12の第2方向Yの他方側Y2の端を接続する第3側壁13、および、第1側
壁11および第2側壁12の第2方向Yの一方側Y1の端を接続する第4側壁14を備える。第3側壁13は、第3方向Xに直線状に延びている。第4側壁14は、第2方向Yの一方側Y1へ突出する凸形状である。本形態では、第4側壁14は第1方向Zの他方側Z2から見て半円状の湾曲面である。
【0022】
図1、
図3に示すように、ケース10は、第1方向Zに沿って配列された第1ケース15、中間ケース16、および第2ケース17を備える。第1ケース15は中間ケース16の第1方向Zの一方側Z1に位置し、第2ケース17は中間ケース16の第1方向Zの他方側Z2に位置する。第1ケース15に中間ケース16が固定され、第2ケース17が中間ケース16に固定されることによって、ケース10が組み立てられている。
【0023】
第1ケース15は、底板151と、底板151の外周縁から第1方向Zの他方側Z2に延びる枠部152とを備える。枠部152は、ケース10の第1側壁11、第2側壁12、第3側壁13、および第4側壁14の第1方向Zの一方側Z1の端部分を構成する。第1ケース15にはモータ3が固定されている。モータ3は、モータ本体30と、モータ本体30から突出する回転軸31を備える。回転軸31は、出力軸2の軸線Lと交差する方向を向いている。本例では、回転軸31の回転中心線L1(
図4参照)は、出力軸2の軸線Lと直交する。また、回転軸31は、第1方向Zから見た場合に、第2方向Y(ケース10の長手方向)に対して傾斜している。回転軸31の先端は、第1ケース15に保持される軸受部材32によって回転可能に支持されている。
【0024】
中間ケース16は、中間板161と、中間板161の外周縁から第1方向Zの他方側Z2に延びる中間枠部162とを備える。中間枠部162は、ケース10の第1側壁11、第2側壁12、第3側壁13、および第4側壁14の第1方向Zの中間部分を構成する。中間ケース16には、伝達機構4を構成する複数の歯車のうちの一部の歯車が収容される。また、中間ケース16には、出力軸2の基部21が収容される。
【0025】
中間ケース16における第2ケース17の側の端部分には、板状の補強部材18が固定される。補強部材18は、ケース10よりも剛性が高い。本例において、補強部材18は、金属製である。補強部材18には、補強部材側開口部181が設けられており、補強部材側開口部181からは、出力軸2が第1方向Zの他方側Z2に突出する。また、補強部材18には、ポテンショメータ8が取り付けられている。ポテンショメータ8は、第2方向Yにおいて、出力軸2とは反対側(第2方向Yの他方側Y2)の端部分に配置される。
【0026】
ポテンショメータ8は、伝達機構4を構成する複数の歯車のうちのいずれかの歯車に噛合するポテンショ歯車81(
図5参照)と、ポテンショ歯車81の回転角度位置を検出する検出部82(
図3、
図4参照)を備える。検出部82は、回路基板を備える。ポテンショ歯車81は、補強部材18の第1方向Zの一方側Z1に位置して、第3歯車の第3小径歯車に噛合する。検出部82は、補強部材18の他方側Z2に位置し、回路基板が補強部材18に固定されている。
【0027】
第2ケース17は、板状であり、第1方向Zの他方側Z2から中間ケース16に被せられている。第2ケース17は、ケース10の第1側壁11、第2側壁12、第3側壁13、および第4側壁14の第1方向Zの他方側Z2の端部分に接続され、第1方向Zの他方側Z2から補強部材18を被う。第2ケース17は、第1方向Zから見て補強部材側開口部181と重なる部位を貫通する開口部9を備える。
図3に示すように、開口部9に配置される出力軸2と開口部9の内周面との隙間は、Oリング19によって封止される。
【0028】
図5に示すように、伝達機構4は、駆動力伝達経路の上流側から下流側に向かって、ウォーム40、第1歯車41、第2歯車42、第3歯車43、第4歯車44、および出力歯
車45を備える。ウォーム40は、モータ3の回転軸31の外周側に固定されている。
図4に示すように、ウォーム40および第1歯車41は、第1ケース15内に配置される。
図3に示すように、第2歯車42、第3歯車43、第4歯車44、および出力歯車45は中間ケース16内に配置される。
【0029】
第1歯車41は、ウォーム40に噛合する第1大径歯車411と、第1大径歯車411と同軸で第1大径歯車411よりも外径寸法が小さい第1小径歯車412を備える。第1大径歯車411は、第1小径歯車412の第1方向Zの一方側Z1に位置する。第1歯車41は、第1方向Zに延びる第1支軸413(
図4参照)に回転可能に支持されている。第1支軸413は、一方の端部分が第1ケース15の底板151に保持され、他方の端部分が中間ケース16の中間板161に保持されている。第1歯車41は、第1大径歯車411と第1小径歯車412との間に駆動力の伝達を継断するトルクリミッタ46を備える。
【0030】
第2歯車42は、第1小径歯車412に噛合する第2大径歯車421と、第2大径歯車421と同軸で第2大径歯車421よりも外径寸法が小さい第2小径歯車422を備える複合歯車である。第2大径歯車421は、第2小径歯車422の第1方向Zの一方側Z1に位置する。第2大径歯車421は、中間ケース16の中間板161に設けられた開口部163(
図8参照)を介して第1小径歯車412に噛合する。第2歯車42は、第1方向Zに延びる第2支軸423(
図5参照)に回転可能に支持される。
【0031】
第3歯車43は、第2小径歯車422に噛合する第3大径歯車431と、第3大径歯車431と同軸で第3大径歯車431よりも外径寸法が小さい第3小径歯車432を備える複合歯車である。第3大径歯車431は、第3小径歯車432の第1方向Zの一方側Z1に位置する。第3歯車43は、第1方向Zに延びる第3支軸433に回転可能に支持される。第3支軸433は、一方の端部分が中間ケース16の中間板161に保持され、他方の端部分は、補強部材18を貫通して第2ケース17に保持されている。
【0032】
第4歯車44は、第3小径歯車432および出力歯車45に噛合する平歯車である。第4歯車44と出力歯車45とは第2方向Yに配列されている。第4歯車44は、第2歯車42と同軸に配置されて、第2支軸423に回転可能に支持されている。第2支軸423は、一方の端部分が中間ケース16に保持され、他方の端部分が補強部材18に保持されている。すなわち、補強部材18は、第2歯車42および第4歯車44を支持する第2支軸423を保持する軸保持部182(
図3参照)を備える。
【0033】
図6は、出力歯車45および出力軸2の分解斜視図である。出力歯車45は金属製である。出力歯車45には、樹脂製の出力軸2が同軸に固定される。出力歯車45は、第1方向Zに開口する中心穴451を備えた環状部材である。中心穴451の内周面には周方向に複数の凹部452が設けられ、出力軸2の基部21の外周面には、出力歯車45の内周面の凹部452に嵌る複数の凸部23が設けられている。従って、出力歯車45と出力軸2とは、軸線L周りに相対回転不能な状態で連結される。出力軸2の基部21は樹脂部であり、熱カシメによって出力歯車45に固定される。
【0034】
出力歯車45は、補強部材18によって、回転可能に支持されている。出力歯車45は、第1方向Zの他方側Z2の端部分に外周面に歯部を有さない円環状部450を備える。一方、補強部材18は、補強部材側開口部181の外周縁部分に、出力歯車の円環状部450を外周側から回転可能に支持する出力歯車受部183を備える(
図3参照)。出力歯車受部183は、補強部材18における補強部材側開口部181の第1方向の他方側に屈曲して延びる環状筒部であり、例えば、バーリング加工により形成される。
【0035】
図7は、出力歯車45、出力軸2、およびアシストばね5の分解斜視図である。
図3、
図7に示すように、アシストばね5は、第1ばね51および第2ばね52を備える。第1ばね51および第2ばね52はねじりコイルばねである。
図3に示すように、第2ばね52は、第1ばね51の内周側に配置される。第1ばね51は、出力歯車45の第1方向Zの一方側Z1に位置する。また、第2ばね52は、出力軸2の第1方向Zの一方側Z1に位置し、第1ばね51の内周側に位置する。
【0036】
図7に示すように、第1ばね51は、断面矩形の線材50Aを螺旋状に巻いたばね部510と、ばね部510から第1方向Zの一方側Z1へ延びる第1端部511と、ばね部510からから第1方向Zの他方側Z2へ延びる第2端部512を備える。
図5に示すように、第1ばね51の第2端部512は、出力歯車45の外周面を内周側へ切り欠いた切欠き部453に配置される。出力歯車45は、切欠き部453を除く範囲の外周面に歯部が形成されている。切欠き部453は、周方向の一端に設けられた第1面454、および、周方向の他端に設けられた第2面455を備える。後述するように、出力軸2が所定の角度位置まで回転すると、第2面455に第2端部512が接触する。さらに出力軸2が回転すると、出力歯車45を介して出力軸2が第1ばね51によって付勢される。
【0037】
図8は、第1ケース15よび中間ケース16を第1方向Zの他方側Z2から見た斜視図である。
図3、
図8に示すように、中間ケース16は、中間板161から第1方向Zの他方側Z2へ突出する支持部6を備える。
図3に示すように、支持部6は、第1ばね51および第2ばね52の内周側に位置し、第1ばね51および第2ばね52よりも第1方向Zの他方側Z2に突出する。すなわち、第1ばね51および第2ばね52は、支持部6によって保持されると共に、中間板161によって第1方向Zの一方側Z1から支持される。
【0038】
本形態では、中間板161の第1方向Zの一方側Z1にモータ3が配置される。中間板161は、ケース10の内部空間をモータ3が配置される下部空間と、出力軸2およびアシストばね5等が配置される上部空間とに区画する。モータ3は、中間板161を第1方向Zの一方側Z1から支持する受け部33を備える。受け部33は、モータ本体30の第1方向Zの他方側Z2の側面であり、例えば、金属製のモータケースによって構成される。本形態では、モータ本体30は断面角型であるため、受け部33は軸線Lに対して垂直な平坦面である。受け部33は、中間板161を支持すると共に、出力軸2とは軸線L方向で反対側(すなわち、第1方向Zの一方側Z1)から支持部6を支持している。
【0039】
出力軸2および出力歯車45は、支持部6の先端部分によって回転可能に支持される。出力軸2は、基部21の第1方向Zの一方側Z1の端面に他方側Z2に窪む円形凹部24が設けられており、支持部6は、その先端部分が円形凹部24に配置され、円形凹部24の底面に接触している。ここで、支持部6の第1方向Zの他方側Z2の先端は、出力歯車45の円環状部450を回転可能に支持している補強部材18の出力歯車受部183の内周側の位置まで延びている。
【0040】
図8に示すように、中間ケース16には、中間板161を第1方向Zに貫通する開口部164が設けられている。開口部164は、中間ケース16の中間枠部162において、第2方向Yに平行に延びる一対の枠部分のうち、第3方向Xの一方側X1に位置する枠部分165と支持部6との間に設けられている。開口部164は、支持部6の外周側に第1ばね51および第2ばね52を装着した場合に、第1ばね51の第1端部511を配置可能な位置に設けられている。また、第1ケース15には、第1方向Zから見て中間ケース16の開口部164と重なる位置にばね保持部153が設けられている。ばね保持部153は、第1方向Zの一方側Z1に窪むばね係止穴154を備える。第1ばね51は、第1端部511が中間ケース16の開口部164から第1方向Zの一方側Z1に突出し、第1ケース15のばね保持部153に設けられたばね係止穴154に挿入される。
【0041】
第1ケース15において、ばね保持部153は、ばね係止穴154が開口する方向である第1方向Zと交差する方向からモータ3によって支持される。すなわち、モータ3は、ばね係止穴154の開口方向(第1方向Z)と交差する方向からばね保持部153を受けるばね受け部34を備える。
図8に示すように、ばね保持部153は、第1ケース15の枠部152の内面からモータ本体30が位置する側(第3方向Xの他方側X2)へ突出する。ばね保持部153は、第3方向Xの他方側X2の端部にモータ本体30の側面と平行になるように切り欠かれた傾斜面155を備える。第1ケース15にモータ3を収容すると、ばね保持部153の傾斜面155がモータ本体30の側面によって第3方向Xの他方側X2から支持される。すなわち、ばね受け部34は、モータ本体30の側面であり、例えば、金属製のモータケースによって構成される。
【0042】
図7に示すように、第2ばね52は、断面円形の線材50Bを螺旋状に巻いたばね部520と、ばね部520の第1方向Zの一方側Z1の端部から径方向内側へ屈曲して直線状に延びる第1端部521と、ばね部520から第1方向Zの他方側Z2へ延びる第2端部522を備える。第2ばね52の第1端部521は、支持部6に設けられた溝部61(
図8、
図9(b)、
図10(b)参照)に配置される。これにより、第2ばね52の第1端部521が中間ケース16に係止される。また、
図7に示すように、出力軸2は、基部21の他方側Z2の端面に設けられたばね係止穴25を備える。第2ばね52の第2端部522は、出力軸2のばね係止穴25に配置される。
【0043】
図8に示すように、中間ケース16は、支持部6の外周側において周方向に延びるリブ7を備える。リブ7は、中間板161から第1方向Zの他方側Z2へ突出する。支持部6の外周側に第1ばね51および第2ばね52を装着したとき、リブ7の周方向の一端は、第1ばね51と第2ばね52との間に配置される(
図3参照)。リブ7の内周縁71は円弧状である。すなわち、リブ7の内周縁71は、内周側に配置されるばねである第2ばね52のばね部520の外周に沿う形状である。一方、リブ7の外周縁は、周方向の両端にそれぞれ、第1ばね51のばね部510の内周に沿う円弧部72A、72Bが設けられ、周方向の中央に、径方向外側へ突出する突出部73が設けられている。突出部73は、開口部164の内側へ突出する形状になっている。また、リブ7の外周縁は、突出部73の先端の周方向の両側がそれぞれ、円弧部72の接線方向に延びる直線部74A、74Bが設けられている。
【0044】
図7に示すように、第1ばね51は、ばね部510の1巻目510Aの巻き始め位置から1巻目510Aの接線方向へ延びる直線状部分513を備えており、第1端部511は、直線状部分513の先端から第1方向Zの一方側Z1へ屈曲して延びている。中間ケース16に設けられたリブ7は、周方向の一方側の端部に設けられた円弧部72Aが、ばね部510の1巻目510Aの巻き始め部分内周に沿って延びている。また、円弧部72Aから突出部73の先端まで延びる直線部74Aは、直線状部分513に沿って延びている。第1ばね51は、ばね部510の1巻目510Aの巻き始め部分および直線状部分513がリブ7の外周縁に沿って延びる状態に配置される。これにより、リブ7の突出部73によって第1ばね51の回り止めがなされるとともに、第1ばね51の直線状部分513が開口部164へ向かって延びる角度位置に位置決めされる。
【0045】
リブ7の第1方向Zの突出高さは、第1ばね51を構成する線材50Aの線径よりも小さい。第1ばね51は、ばね部510の1巻目510Aの巻き終り部分が、リブの突出部73の第1方向Zの一方側Z1において周方向に延在する。従って、突出部73は、第1ばね51を第1方向Zの一方側Z1から支持する受け部として機能している。
【0046】
(動作)
開閉部材駆動装置1は、モータ3が正方向あるいは逆方向に駆動されると、モータ3の駆動力が伝達機構4を介して出力軸2に伝達され、出力軸2が第1回転方向CWあるいは第2回転方向CCWに回転する。これにより、出力軸2に固定された便座、便蓋などの開閉部材は、開方向あるいは閉方向に回転する。開閉部材が回転すると、ポテンショメータ8からは、開閉部材の位置に対応する信号が出力される。また、出力軸2に連結された開閉部材が第1回転方向CWに回転すると、アシストばね5は、出力軸2を軸線L周りで第1回転方向CWとは反対の第2回転方向CCWに回転させる付勢力を出力軸2に加える。つまり、開閉部材を駆動する際に、出力軸2を付勢するアシスト力が出力軸2に加えられる。また、伝達機構4は、第1歯車41にトルクリミッタ46を備えているので、開閉部材から出力軸2を介して伝達機構4に過大な負荷が加わった場合には、トルクリミッタ46が機能して、伝達機構4による駆動力伝達の伝達を遮断する。これにより、外部からの過大な負荷に起因して、伝達機構4が破損することを防止できる。
【0047】
(アシストばねの作用角度範囲)
アシストばね5は、第1ばね51と第2ばね52の作用角度範囲(付勢力を発生させる角度範囲)が異なる。開閉部材が便座や便蓋である場合に、開閉部材を基準位置から所定角度回転させる際の回転負荷と基準位置からの回転角度との関係を示す負荷曲線は、単純な比例関係を示す形状ではない。そこで、作用角度範囲が異なる複数のばねを組み合わせることにより、モータ3の駆動力と第1ばね51および第2ばね52による付勢力とを合計した力と回転角度との関係を示すグラフを負荷曲線に近づけている。
【0048】
図9は、出力軸2が基準位置R0にあるときのアシストばね5の状態を示す説明図である。
図10は、出力軸2が第2ばね52の作用開始位置R2にあるときのアシストばね5の状態を示す説明図である。
図9(a)、
図10(a)は出力軸2の回転位置を示し、
図9(b)、
図10(b)はアシストばね5の状態を示す。
図11は、出力軸2が第1ばね51の作用開始位置R1にあるときのアシストばね5の状態を示す説明図である。
【0049】
図9(a)に示すように、出力軸2が基準位置R0にあるとき、第1ばね51は、第2端部512が出力歯車45の切欠き部453の周方向の一方寄りに位置し、第2面455から離れている。従って、第1ばね51から出力歯車45へ付勢力は加わらない。また、
図9(b)に示すように、支持部6に設けられた溝部61の周方向の中央に第2ばね52の第1端部521が位置する。溝部61は、支持部6の径方向の中心から径方向外側へ向かうに従って周方向の幅(溝幅)が大きくなっており、溝部61の内面と接触しない範囲で第1端部521が周方向に動ける形状である。従って、第2ばね51から出力軸2へ付勢力は加わらない。
【0050】
図10(a)に示すように、出力軸2が第2ばね52の作用開始位置R2まで第1回転方向CWに回転すると、第1ばね51は、第2端部512が第2面455に近づくが、まだ第2面455から離れている。従って、第1ばね51から出力歯車45へ付勢力は加わらない。一方、
図10(b)に示すように、第2ばね52は、出力軸2の回転に伴って第1端部521が溝部61内で第1回転方向CWに傾き、溝部61の内面と接触している。従って、ここからさらに出力軸2が第1回転方向CWに回転した場合には、第2ばね52が変形して付勢力を発生させることになる。
【0051】
次に、
図11に示すように、出力軸2がさらに第1回転方向CWに回転して、第1ばね51の作用開始位置R1に至ると、第1ばね51は、第2端部512が第2面455に接触する。従って、ここからさらに出力軸2が第1回転方向CWに回転した場合には、第1ばね51が変形して付勢力を発生させることになる。以上より、アシストばね5は、基準位置R0から第2ばね52の作用開始位置R2まではアシスト力を発生させず、作用開始位置R2から作用開始位置R1までは、第2ばね52のみが付勢力を発生させるので、1
つのばねのみでアシスト力を発生させる。そして、作用開始位置R1からは、第2ばね52と第1ばね51の両方が付勢力を発生させるので、その合計がアシスト力となる。
【0052】
本形態において、基準位置R0における出力軸2の回転角度を0°とし、最大回転位置における出力軸2の回転角度をRmax°とするとき、第1ばね51の作用角度範囲(第1作用角度範囲)は、第1ばね51の作用開始位置R1から最大回転位置までの範囲である。また、第2ばね52の作用角度範囲(第2作用角度範囲)は、第2ばね52の作用開始位置R2から最大回転位置までの範囲である。例えば、Rmax°が120°であり、第1ばね51の作用開始位置R1における回転角度が50°である場合には、第1作用角度範囲は50°~120°である。また、第2ばね52の作用開始位置R2における回転角度が20°である場合には、第2作用角度範囲は、20°~120°である。従って、出力軸2が基準位置R0から20°回転するまではアシスト力が発生せず、基準位置R0からの回転角度が20°~50°の範囲では第2ばね52の付勢力がアシスト力となり、基準位置R0からの回転角度が50°~120°の範囲では第2ばね52の付勢力と第1ばね51の付勢力の合計がアシスト力となる。
【0053】
アシストばね5は、第1ばね51のばね定数が第2ばね52のばね定数より大きい。第1ばね51は断面角型の線材50Aからなり、第2ばね52は断面円形の線材50Bからなり、線材50A、線材50Bの線径は同一である。線径が同一である場合には、断面円形の線材によって形成されるコイルばねより、断面角型の線材によって形成されるコイルばねの方が、ばね定数は大きい。
【0054】
また、アシストばね5は、ばね定数が大きい第1ばね51の作用角度範囲(第1作用角度範囲)が、ばね定数が小さい第2ばね52の作用角度範囲(第2作用角度範囲)より小さい。上記のように、第1ばね51の作用開始位置R1が50°、第2ばね52の作用開始位置R2が20°である場合には、閉位置から開位置まで開閉部材を回転させる際に、ばね定数が小さい第2ばね52の方が先に付勢力を発生させ始める。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の開閉部材駆動装置1は、ケース10と、ケース10から突出する出力軸2と、ケース10に収容されるモータ3と、ケース10に収容され、モータ3の回転を出力軸2に伝達する伝達機構4と、出力軸2の第1回転方向CWへの回転に伴い、出力軸2を第1回転方向CWとは反対側の第2回転方向CCWへ付勢するアシスト力を発生させるアシストばね5と、を有する。アシストばね5は、出力軸2の回転位置が第1作用角度範囲内の位置(例えば、50°~120°の範囲内の回転位置)である間にアシスト力を発生させる第1ばね51と、出力軸2の回転位置が第1作用角度範囲と異なる第2作用角度範囲内の位置(例えば、20°~120°の範囲内の回転位置)である間にアシスト力を発生させる第2ばね52と、を備える。
【0056】
本形態では、出力軸2を付勢するアシストばね5として、付勢力(アシスト力)を発生させる作用角度範囲が異なる2つのばねを備えている。このように、複数のばねを組み合わせてアシスト力を発生させることにより、1つのばねでアシスト力を発生する場合と比較して、アシスト力の設定の自由度が高まる。従って、様々な負荷パターンに対応できる。また、作用角度範囲が異なる複数のばねを組み合わせることにより、角度範囲別にアシスト力を設定できる。例えば、開閉部材が閉じている閉位置では開閉部材の荷重による負荷が加わるため、2本のばねの付勢力が働くようにしてアシスト力を強くし、開閉部材が開くにつれて負荷が小さくなるため、付勢力が働くばねを少なくし、アシスト力を小さくするような構成が可能である。
【0057】
また、このように、複数のアシストばね5を組み合わせることにより、ばね形状や線径
の自由度を高めることができる。すなわち、線径を太くすることなく、大きなアシスト力を得ることができる。また、取付方法の自由度も高めることができる。本形態では、出力軸2の外周側でなく、出力軸2を回転可能に支持する支持部6の外周側にアシストばね5を配置するスペースを確保している。これにより、第1ばね51と第2ばね52を2重に配置することができる。
【0058】
本形態では、第1ばね51は、第2ばね52よりばね定数が大きい。このように、ばね定数が異なるばねを組み合わせることにより、アシスト力の設定の自由度が高まるので、様々な負荷パターンに対応できる。また、第2ばね52は、第1ばね51の内周側に配置され、外周側に配置される第1ばね51は、第2ばね52よりばね定数が大きい。このように、2つのばねを2重に配置することにより、限られた配置スペースに複数のばねを配置できる。また、ばね定数の大きいばねは強度が高いため、外側に配置することによって内側のばねを保護できる。
【0059】
本形態では、出力軸2は樹脂製であり、伝達機構4は、樹脂部である出力軸2の基部21に固定される金属製の出力歯車45を備え、第1ばね51は、出力歯車45に係合し、第2ばね52は、樹脂部に係合する。従って、ばね定数が大きい側のばね(すなわち、変形しにくいばね)を金属製の出力歯車45によって支持でき、ばね定数が小さいばね(すなわち、変形しやすいばね)を樹脂部である出力軸2によって支持できるため、ばね側から加わる負荷による出力軸2の変形や破損のおそれが少ない。
【0060】
本形態では、第1ばね51の付勢力が発生する第1作用角度範囲は、第2ばね52の付勢力が発生する第2作用角度範囲より狭い。従って、弱い側のばねである第2ばね52の付勢力のみが作用する区間を設けることができるので、アシスト力が弱い区間を設けることができる。よって、アシスト力の設定の自由度が高まる。
【0061】
本形態では、第1ばね51は、断面矩形の線材50Aからなり、第2ばね52は、断面円形の線材50Bからなる。断面矩形の線材50Aは、同径の断面円形の線材50Bよりも強度が高い。従って、線径を太くすることなく、ばね定数の大きいばねを形成できる。
【0062】
なお、第1ばね51と第2ばね52の作用角度範囲、ばね定数の大小関係は、上記とは異なっていてもよく、開閉部材を駆動する際の負荷曲線に応じて適宜設定することができる。また、アシストばね5を3本以上のばねによって構成してもよい。さらに、アシストばね5を形成する線材の形状や線径は上記の組み合わせに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0063】
本形態では、第1ケース15は、第1ばね51の端部が配置されるばね係止穴154が設けられたばね保持部153を備え、ばね保持部153は、ばね係止穴154の開口方向(第1方向Z)と交差する方向からモータ3に設けられたばね受け部33によって支持される。従って、ばね端から第1ケース15に加わる負荷によって第1ケース15が変形あるいは破損するおそれを少なくすることができる。ばね保持部153を支持するばね受け部34は、金属製のモータケースによって構成されている。従って、剛性の高い部品によってばね保持部153を支持できるなお、第1ばね51でなく第2ばね52の端部を同様の構造で保持することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1…開閉部材駆動装置、2…出力軸、3…モータ、4…伝達機構、5…アシストばね、6…支持部、7…リブ、8…ポテンショメータ、9…開口部、10…ケース、11…第1側壁、12…第2側壁、13…第3側壁、14…第4側壁、15…第1ケース、16…中間ケース、17…第2ケース、18…補強部材、19…Oリング、21…基部、22…連結
軸、23…凸部、24…円形凹部、25…ばね係止穴、30…モータ本体、31…回転軸、32…軸受部材、33…受け部、34…ばね受け部、40…ウォーム、41…第1歯車、42…第2歯車、43…第3歯車、44…第4歯車、45…出力歯車、46…トルクリミッタ、50A…線材、50B…線材、61…溝部、71…内周縁、72A、72B…円弧部、73…突出部、74A、74B…直線部、81…ポテンショ歯車、82…検出部、100…洋式便器、110…便器本体、120…便座、130…便蓋、140…タンク、151…底板、152…枠部、153…ばね保持部、154…ばね係止穴、155…傾斜面、161…中間板、162…中間枠部、163…開口部、164…開口部、165…枠部分、181…補強部材側開口部、182…軸保持部、183…出力歯車受部、411…第1大径歯車、412…第1小径歯車、413…第1支軸、421…第2大径歯車、422…第2小径歯車、423…第2支軸、431…第3大径歯車、432…第3小径歯車、433…第3支軸、450…円環状部、451…中心穴、452…凹部、453…切欠き部、454…第1面、455…第2面、510A…1巻目、510…ばね部、511…第1端部、512…第2端部、513…直線状部分、520…ばね部、521…第1端部、522…第2端部、CCW…第2回転方向、CW…第1回転方向、L…出力軸の軸線、L1…モータの回転中心線、R1…第1作用開始位置、R2…第2作用開始位置、X…第3方向、Y…第2方向、Z…第1方向