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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】水中油型乳化紫外線防御化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20230710BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230710BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230710BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/25
A61K8/37
A61Q17/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019101739
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020196667
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】小田 泰裕
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190299(JP,A)
【文献】特許第6467100(JP,B1)
【文献】特開平09-040884(JP,A)
【文献】特開2019-064945(JP,A)
【文献】特開2016-074660(JP,A)
【文献】特開2017-132820(JP,A)
【文献】特開2012-001500(JP,A)
【文献】特開2018-070556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(D)を含有する水中油型乳化紫外線防御化粧料。
(A)アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体
(B)メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オクトクリレン及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルから選択される1種又は2種以上
(C)5%ジメチコン処理酸化亜鉛被覆メタクリル酸メチルクロスポリマー
(D)セスキイソステアリン酸ソルビタン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化紫外線防御化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線による皮膚への悪影響を防御するため、種々の紫外線吸収剤を含有させた日焼け止め化粧料が開発されている。
特に引用文献1には、有機紫外線吸収剤と、シリコーン油とアクリル酸系水溶性高分子を含有する水中油型紫外線防御化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-89834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1では、トリメチルシロキシケイ酸を含有しているため、耐摩擦性に課題があった。
【0005】
本発明の目的は、さっぱりした使用感であるにもかかわらず、高い紫外線防御効果と耐水性を発揮する水中油型乳化紫外線防御化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下記の(A)~(D)を含有する水中油型乳化紫外線防御化粧料を提供する。
(A)アクリル酸系水溶性高分子
(B)有機紫外線吸収剤
(C)有機球状粉体及び球状シリカから選択される1種又は2種以上の球状粉体の表面に微粒子酸化亜鉛を被覆した複合粒子
(D)セスキイソステアリン酸ソルビタン
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化紫外線防御化粧料は、さっぱりした使用感であるにもかかわらず、高い紫外線防御効果と耐水性に優れるという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
以下、各成分について説明する。
本発明で使用する(A)アクリル酸系水溶性高分子は、アクリル基構造を有しているもので、化粧料として使用可能であればよく、特に限定されない。例えば、ポリアクリル酸及びその塩、カルボマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、アクリルアミド・アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体、アクリル酸塩・アクリロイルジメチルタウリン共重合体、アクリル酸アミド・アクリル酸-2-メチルプロパンスルホン酸塩共重合体、アクリロイルジメチルタウリン塩・ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。これらの中で粉体の安定分散性の観点からアクリル酸塩・アクリロイルジメチルタウリン共重合体を用いることが好ましく、さらには、アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体を用いることが最も好ましい。
【0009】
アクリル酸系水溶性高分子は、水中油型乳化紫外線防御化粧料全量に対し0.01~3質量%配合することが好ましい。0.01質量%未満の配合では、乳化安定性に問題が生じる場合がある。3質量%を超えて配合すると、膜感や、突っ張り感の点から使用感上問題となる場合がある。
【0010】
本発明で使用する(B)有機紫外線吸収剤は、特に限定されず、公知の有機紫外線吸収剤を用いることができる。有機紫外線吸収剤としては、例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、サリチル酸オクチル、ポリシリコーン-15、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及びオクトクリレンが例示され、これらから選択される1種または2種以上を用いる。
【0011】
紫外線吸収能と皮膚への安全性の観点から、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを用いることが好ましい。また、UVA防御機能を兼用させるため、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オクトクリレン及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルから選択される1種又は2種以上を併用して用いることが好ましい。
【0012】
有機紫外線吸収剤の配合量は、水中油型乳化紫外線防御化粧料全量に対し、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上であってもよい。これによって、日焼け止め効果を十分に得ることができる。
【0013】
また、有機紫外線吸収剤の配合量は、水中油型乳化紫外線防御化粧料全量に対し、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。これによって、化粧料のべたつきを抑え、皮膚への一次刺激性を抑制し、良好な使用感を得ることができる。
【0014】
本発明で使用する(C)は、有機球状粉体及び球状シリカから選択される1種又は2種以上の球状粉体(以下単に球状粉体と略する場合がある。)表面に微粒子酸化亜鉛を被覆した複合粒子である。
有機球状粉体として、例えば、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)クロスポリマー, アクリレーツコポリマー, アクリレーツクロスポリマー, (ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー,メチルシロキサン網状重合体、架橋型メチルポリシロキサン、ウレタン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体、ポリエチレン、シルク、セルロース等が挙げられる。有機球状粉体及び球状シリカの平均粒子径は、2~30μmが好ましく、より好ましくは3~20μmのものを用いることが複合化する上で好適である。ここで、平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により体積基準の平均粒子径である。またこれらの球状粉体の形状は、真球状のものだけに限定されるものでなく、扁平状、お椀状、多角状の形状を意味し、中実、中空、カプセル状、多孔質等の性質を問わない。
【0015】
本発明の複合粒子に用いられる酸化亜鉛は、化粧料に配合し得るものであれば特に限定されない。酸化亜鉛の形状は特に限定されないが、平均粒子径は、紫外線防御効果の観点より、10~200nmが好ましく、15~100nmがより好ましく、さらには15~50nmが一層好ましい。
【0016】
酸化亜鉛は未処理の酸化亜鉛をそのまま用いることもできるが、疎水化処理を施した酸化亜鉛を用いることが好ましい。疎水化処理剤としては特に限定されるものではなく、ジメチコン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、金属石鹸等が例示される。これらの疎水化処理剤の中でも、ジメチコン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、これらの共重合体、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。疎水化処理剤の被覆量は酸化亜鉛を疎水化処理するのに十分な量であればよい。具体的には酸化亜鉛と疎水化処理剤の質量比が85:15~99:1が好ましく、さらには90:10~98:2が好ましい。
【0017】
本発明の水中油型乳化紫外線防御化粧料に用いられる複合粒子において、球状粉体1質量部に対し、酸化亜鉛の被覆量は0.2質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また、球状粉体1質量部に対し、酸化亜鉛の被覆量は2質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。この範囲で、高い紫外線防御効果とさっぱりした使用感の両方の効果を発揮することができる。
【0018】
球状粉体への酸化亜鉛の被覆方法としては、これまで知られた各種方法を用いることができ、例えば物理化学的な混合摩砕法(乾式、湿式)や化学的な沈着法等が選択され得る。複合粒子の皮脂固化能の点から、乾式の混合摩砕法を好ましく用いることができる。
【0019】
本発明の複合粒子は、上記した球状粉体の中から選択した1種または2種以上を、酸化亜鉛によって被覆したものを用いることができる。酸化亜鉛には、未処理の酸化亜鉛、疎水化処理した酸化亜鉛、またはこれらの組み合わせを用いてもよい。また、本発明の化粧料には、上記した球状粉体の中から選択される1種または2種以上と、酸化亜鉛との組み合わせである複合粒子を1種単独で、または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0020】
本発明の水中油型乳化紫外線防御化粧料は、上記複合粒子を含むことによって、高い紫外線防御効果とさっぱりした使用感を発揮することができる。
【0021】
複合粒子の水中油型乳化紫外線防御化粧料への配合量としては、水中油型乳化紫外線防御化粧料全量に対し、0.5~90質量%が好ましい。この配合量が0.5質量%未満では、複合粒子の皮脂固化能が化粧料中で有効に発揮されにくくなる傾向がある。一方、90質量%を超える複合粒子を化粧料に配合すると、製剤化が難しくなる傾向がある。
【0022】
本発明で使用する(D)セスキイソステアリン酸ソルビタンは、親油性のノニオン界面活性剤である。かかるセスキイソステアリン酸ソルビタンとしては、市販のものを使用することができ例えば、EMALEX SPIS-150(日本エマルジョン社製)、NIKKOL SI-15RV(日光ケミカルズ社製)、コスモール 182V(日清オイリオグループ社製)が例示される。
【0023】
セスキイソステアリン酸ソルビタンの配合量は、併用する有機紫外線吸収剤や他の油剤によって適宜決定することができる。水中油型乳化紫外線防御化粧料の安定性及び耐水性付与の観点から、水中油型乳化紫外線防御化粧料全量に対し、0.1~3質量%、好ましくは0.1~2質量%配合する。
【0024】
本発明の水中油型乳化紫外線防御化粧料には、紫外線防御能を付与するために、微粒子金属酸化物を配合することが好ましい。金属酸化物としては、具体的には例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。水中油型乳化紫外線防御化粧料への配合しやすさの点から微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化チタンから選択される1種又は2種を用いることが好ましく、さらには、微粒子酸化亜鉛を用いることが好ましい。
【0025】
かかる微粒子金属酸化物は、表面を疎水化処理したものを用いることが好ましい。疎水化処理剤としては、通常の化粧料に用いられるものであればよく、例えば、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、有機チタネート化合物、金属石鹸、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、ワックス、ロウ、界面活性剤等が挙げられ、これらを組み合わせた複合処理を行ってもよい。これらの中でも、高級脂肪酸、(ジメチコン/メチコン)コポリマー、トリアルコキシシラン、アルキルチタネート、ジメチコンから選択される疎水化処理剤が好ましい。疎水化処理の表面処理量は、微粒子金属酸化物1質量部に対し、疎水化処理剤0.1~10質量部とすることが好ましく、さらには1~5質量部とすることがより好ましい。
【0026】
本発明の水中油型乳化紫外線防御化粧料は、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤、美白剤等を挙げることができる。
【0027】
本発明の水中油型乳化紫外線防御化粧料は定法により調製することができる。
【0028】
本発明の水中油型乳化紫外線防御化粧料は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【実施例
【0029】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0030】
[SPF評価]
SPF効果はSPFアナライザー(UV-2000S Labsphere社製)を用いて、In-VitroにおけるSPF値を測定した。測定条件は、サージカルテープ(エムスリー社製)に、表2に記載のサンプルを1mg/cmの割合で均一に塗布後、前記の測定機器を用いて、290~400nmの範囲におけるSPF値を測定し、5点×3回の平均値を算出して、以下の判定基準に従って判定した。
<判定基準>
(SPF値) :(判定)
30以上 :○
30未満 :×
【0031】
[使用感評価]
メイクアップ専門の官能評価員3名による合議により、塗布時の軽さ、耐水性について評価を行った。
○:耐水性が高い、使用感が軽い。
△:耐水性が少し悪い、使用感が少し重い。
×:耐水性が悪い、使用感が重い。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示した通り、本発明の実施例1は高SPFの水中油型乳化でありながら、耐水性に優れ、使用感が軽いことが示された。これに対し、微粒子酸化亜鉛を被覆せずに配合した比較例1はSPFが低く、使用感も少し重いものであった。また、HLB値が8のセスキイソステアリン酸ソルビタンをHLB値が9のイソステアリン酸ソルビタンに代替した比較例2は、耐水性に劣るものであった。