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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】線路切換型移相器
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/185 20060101AFI20230710BHJP
   H01P 1/15 20060101ALI20230710BHJP
   H03H 11/20 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
H01P1/185
H01P1/15
H03H11/20 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019125412
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021013071
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 治夫
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-322102(JP,A)
【文献】特開2007-243410(JP,A)
【文献】特開2006-229732(JP,A)
【文献】特開平11-088004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/185
H01P 1/15
H03H 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子との間に縦続接続された第1及び第2ブロックを具備し、
前記第1ブロックは、第1乃至第4FETと、第1及び第2伝送線路とを含み、
前記第1FETのドレインは、前記入力端子に接続され、
前記第1伝送線路の一端は、前記第1FETのソースに接続され、前記第1伝送線路の他端は、前記第2FETのドレインに接続され、
前記第2FETのソースは、第1ノードに接続され、
前記第3FETのドレインは、前記入力端子に接続され、
前記第2伝送線路の一端は、前記第3FETのソースに接続され、前記第2伝送線路の他端は、前記第4FETのドレインに接続され、
前記第4FETのソースは、前記第1ノードに接続され、
前記第2ブロックは、第5乃至第8FETと、第3及び第4伝送線路とを含み、
前記第5FETのドレインは、前記第1ノードに接続され、
前記第3伝送線路の一端は、前記第5FETのソースに接続され、前記第3伝送線路の他端は、前記第6FETのドレインに接続され、
前記第6FETのソースは、前記出力端子に接続され、
前記第7FETのドレインは、前記第1ノードに接続され、
前記第4伝送線路の一端は、前記第7FETのソースに接続され、前記第4伝送線路の他端は、前記第8FETのドレインに接続され、
前記第8FETのソースは、前記出力端子に接続され、
前記第5乃至第8FETのゲート幅は、前記第1乃至第4FETのゲート幅より小さい
線路切換型移相器。
【請求項2】
前記第1伝送線路は、第1長さを有し、
前記第2伝送線路は、前記第1長さより長い第2長さを有し、
前記第3伝送線路は、前記第2長さを有し、
前記第4伝送線路は、前記第2長さより長い第3長さを有する
請求項1に記載の線路切換型移相器。
【請求項3】
前記第2長さは、前記第1長さの概略2倍であり、
前記第3長さは、前記第2長さの概略2倍である
請求項2に記載の線路切換型移相器。
【請求項4】
前記第1伝送線路に信号を入力する場合、前記第1及び第2FETは、短絡状態に設定され、前記第3及び第4FETは、開放状態に設定され、
前記第2伝送線路に信号を入力する場合、前記第1及び第2FETは、開放状態に設定され、前記第3及び第4FETは、短絡状態に設定され、
前記第3伝送線路に信号を入力する場合、前記第5及び第6FETは、短絡状態に設定され、前記第7及び第8FETは、開放状態に設定され、
前記第2伝送線路に信号を入力する場合、前記第5及び第6FETは、開放状態に設定され、前記第7及び第8FETは、短絡状態に設定される
請求項1乃至3のいずれかに記載の線路切換型移相器。
【請求項5】
前記第5乃至第8FETのゲート幅は、前記第1乃至第4FETのゲート幅の概略1/2である
請求項1乃至4のいずれかに記載の線路切換型移相器。
【請求項6】
前記第1乃至第8FETの各々は、HEMTで構成される
請求項1乃至5のいずれかに記載の線路切換型移相器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、線路切換型移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイアンテナを備えたアンテナ装置が知られている。このアンテナ装置は、高周波信号の位相を変化させる移相器を備えている。移相器としては、線路切換型移相器が知られている。線路切換型移相器は、長さの異なる2個の伝送線路を備え、各伝送線路の両端にそれぞれスイッチング素子を接続する。そして、このスイッチング素子のオン/オフを制御して、高周波信号を入力する伝送線路を切り換える。2個の伝送線路の線路長差は、移相量として用いられる。
【0003】
線路切換型移相器のスイッチング素子として、例えばHEMT(high electron mobility transistor)が用いられる。HEMTの開放時の抵抗値が小さくなると、このHEMTを介して選択されていない伝送線路に高周波信号が流れてしまう。このため、移相器の位相誤差が大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3356139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐入力電力が小さくなるのを抑制しつつ、位相誤差を小さくすることが可能な線路切換型移相器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る線路切換型移相器は、入力端子と出力端子との間に縦続接続された第1及び第2ブロックを具備する。前記第1ブロックは、第1乃至第4FETと、第1及び第2伝送線路とを含む。前記第1FETのドレインは、前記入力端子に接続され、前記第1伝送線路の一端は、前記第1FETのソースに接続され、前記第1伝送線路の他端は、前記第2FETのドレインに接続され、前記第2FETのソースは、第1ノードに接続され、前記第3FETのドレインは、前記入力端子に接続され、前記第2伝送線路の一端は、前記第3FETのソースに接続され、前記第2伝送線路の他端は、前記第4FETのドレインに接続され、前記第4FETのソースは、前記第1ノードに接続される。前記第2ブロックは、第5乃至第8FETと、第3及び第4伝送線路とを含む。前記第5FETのドレインは、前記第1ノードに接続され、前記第3伝送線路の一端は、前記第5FETのソースに接続され、前記第3伝送線路の他端は、前記第6FETのドレインに接続され、前記第6FETのソースは、前記出力端子に接続され、前記第7FETのドレインは、前記第1ノードに接続され、前記第4伝送線路の一端は、前記第7FETのソースに接続され、前記第4伝送線路の他端は、前記第8FETのドレインに接続され、前記第8FETのソースは、前記出力端子に接続される。前記第5乃至第8FETのゲート幅は、前記第1乃至第4FETのゲート幅より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るアンテナ装置のブロック図である。
図2図2は、図1に示した送受信モジュールのブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る移相器の回路図である。
図4図4は、比較例に係る移相器の回路図である。
図5図5は、移相器に含まれるブロックにおける線路長差と位相誤差との関係を示すグラフである。
図6図6は、移相器のビット数と合計位相誤差との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
[1] アンテナ装置の構成
図1は、実施形態に係るアンテナ装置1のブロック図である。
【0010】
アンテナ装置1は、アレイアンテナ10、複数の送受信モジュール12、分配合成器13、制御回路14、送信器15、及び受信器16を備える。
【0011】
アレイアンテナ10は、フェーズドアレイアンテナからなる。アレイアンテナ10は、2次元に配列された複数のアンテナ素子11を備える。アレイアンテナ10は、高周波信号(RF信号とも呼ぶ)を送信及び受信する。
【0012】
複数の送受信モジュール12はそれぞれ、複数のアンテナ素子11に接続される。送受信モジュール12は、高周波信号の位相変換及び増幅を行う。
【0013】
分配合成器13は、高周波信号を分配及び合成する。分配合成器13は、複数の分配器、及び複数の合成器を備える。また、分配合成器13は、送信信号と受信信号との経路を切り替えるサーキュレータを含む。
【0014】
制御回路14は、送受信モジュール12及び分配合成器13の動作を制御する。
【0015】
送信器15は、アンテナ素子11から送信する送信信号を生成する装置である。送信器15は、送信信号を生成し、分配合成器13に出力する。
【0016】
受信器16は、分配合成器13から取得した高周波信号に信号処理を施して受信信号を生成する装置である。受信器16は、生成した受信信号を後段の回路(図示せず)に出力する。
【0017】
次に、送受信モジュール12の構成の一例について説明する。図2は、図1に示した送受信モジュール12のブロック図である。
【0018】
送受信モジュール12は、サーキュレータ20、受信用増幅器21、受信用移相器22、送信用移相器23、及び送信用増幅器24などを備える。
【0019】
サーキュレータ20は、受信信号と送信信号との経路を切り替える。受信用増幅器21は、入力された信号を低雑音で増幅する。受信用移相器22は、入力された信号の位相を制御する。送信用移相器23は、入力された信号の位相を制御する。送信用増幅器24は、入力された信号の電力を増幅する。
【0020】
なお、送信用移相器と受信用移相器とを共用にしてもよい。この場合、移相器と増幅器との間に、送信信号と受信信号とを切り換えるためのSPDT(single-pole double-throw)スイッチが挿入される。
【0021】
[2] 移相器22の構成
次に、移相器22の構成について説明する。図3は、移相器22の回路図である。移相器22は、線路切換型移相器である。なお、移相器23は、移相器22と同じ構成である。
【0022】
移相器22は、入力端子30、出力端子31、及びn個のブロック32-1~32-nを備える。nは、2以上の整数である。ブロック32-1~32-nは、入力端子30と出力端子31との間に縦続接続される。1段目のブロックを第1ブロックと呼び、2段目のブロックを第2ブロックと呼ぶ。
【0023】
第1ブロック32-1は、4個のトランジスタ33a~33dと、2個の伝送線路34a、35aとを備える。
【0024】
トランジスタ33a~33dは、電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)、又は高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)で構成される。FETとしては、例えばnチャネルFETが用いられる。本実施形態では、トランジスタ33a~33dとして、HEMTを例に挙げて説明する。HEMTは、高速動作が可能であり、低消費電力で動作可能である。
【0025】
伝送線路34aは、長さL1を有する。伝送線路34aの長さは、伝送線路35a長さより長い。伝送線路35aは、長さL2を有する。長さL2は、長さL1の概略2倍である。
【0026】
HEMT33aのドレインは、入力端子30に接続され、そのソースは、伝送線路34aの一端に接続される。HEMT33bのドレインは、伝送線路34aの他端に接続され、そのソースは、接続ノードN1に接続される。
【0027】
HEMT33cのドレインは、入力端子30に接続され、そのソースは、伝送線路35aの一端に接続される。HEMT33dのドレインは、伝送線路35aの他端に接続され、そのソースは、接続ノードN1に接続される。
【0028】
HEMT33a~33dのゲートには、制御回路14から制御信号が入力される。HEMT33a~33dは、制御回路14によりオン/オフが制御される。
【0029】
第2ブロック32-2は、4個のトランジスタ36a~36dと、2個の伝送線路35b、37とを備える。トランジスタ36a~36dとしては、例えばHEMTが用いられる。
【0030】
伝送線路35bは、長さL2を有する。すなわち、伝送線路35bの長さは、ブロック32-1に含まれる伝送線路35aの長さと同じである。伝送線路37の長さは、伝送線路35bの長さより長い。伝送線路37の長さL3は、長さL2の概略2倍である。
【0031】
HEMT36aのドレインは、接続ノードN1に接続され、そのソースは、伝送線路35bの一端に接続される。HEMT36bのドレインは、伝送線路35bの他端に接続され、そのソースは、接続ノードN2に接続される。
【0032】
HEMT36cのドレインは、接続ノードN1に接続され、そのソースは、伝送線路37の一端に接続される。HEMT36dのドレインは、伝送線路37の他端に接続され、そのソースは、接続ノードN2に接続される。
【0033】
伝送線路34a、35a、35b、37は、例えばマイクロストリップ線路で構成される。
【0034】
HEMT36a~36dのゲートには、制御回路14から制御信号が入力される。HEMT36a~36dは、制御回路14によりオン/オフが制御される。
【0035】
ここで、第2ブロック32-2に含まれるHEMT36a~36dのゲート幅は、第1ブロック32-1に含まれるHEMT33a~33dのゲート幅より小さく設定される。例えば、HEMT36a~36dのゲート幅は、HEMT33a~33dのゲート幅の概略1/2である。第1ブロック32-1に含まれるHEMT33a~33dのゲート幅は同じである。第2ブロック32-2に含まれるHEMT36a~36dのゲート幅は同じである。ゲート幅とは、チャネル長方向に直交するチャネル幅方向におけるゲート電極の長さである。
【0036】
HEMTにおけるドレイン及びソース間の抵抗値及び容量はゲート幅に依存し、一般的に、ゲート幅が小さくなるほど、抵抗値は高くなり、容量は小さくなる。この抵抗値は、HEMTが開放時(オフ時)の抵抗値である。
【0037】
図3では、HEMT33aが2個のトランジスタ記号で表されているが、これは、HEMT33aのゲート幅が相対的に大きいことを等価的に表している。HEMT33b~33dについても同様である。一方、HEMT36aは、1個のトランジスタ記号で表されているが、これは、HEMT36aのゲート幅が相対的に小さいことを等価的に表している。HEMT36b~36dについても同様である。
【0038】
第1ブロック32-1と第2ブロック32-2とにおけるゲート幅の関係は、第2ブロック32-2より後段のブロックについても維持される。
【0039】
ブロック32-1~32-nの数、すなわちブロックの段数は、移相器のビット数に対応する。ビット数が増えるにつれて、変化する位相の単位が小さくなる。例えば、2ビット移相器は、0~360度の位相を90度ずつ変化させることができる。また、5ビット移相器は、0~360度の位相を11.25度ずつ変化させることができる。
【0040】
[3] 動作
上記のように構成された移相器22の動作について説明する。
【0041】
制御回路14は、移相器22に含まれる複数のHEMTのゲートに制御電圧(ゲート電圧)を印加し、移相器22が設定する位相を制御する。
【0042】
第1ブロック32-1で位相を遅らせない場合は、HEMT33a、33bを短絡状態に設定し、HEMT33c、33dを開放状態に設定する。HEMTを短絡状態に設定する場合は、ゲート及びソース間を同電位に設定、すなわち、ゲートに0Vを印加する。HEMTを開放状態に設定する場合は、ゲートにソースより負の電圧を印加、すなわち、ゲートに負の電圧を印加する。これにより、入力端子30に入力された高周波信号は、一番短い伝送線路34aを通り、第2ブロック32-2に伝達される。
【0043】
第1ブロック32-1で位相を遅らせる場合は、HEMT33a、33bを開放状態に設定し、HEMT33c、33dを短絡状態に設定する。これにより、入力端子30に入力された高周波信号は、2番目に短い伝送線路35aを通り、第2ブロック32-2に伝達される。よって、第1ブロック32-1は、移相器のビット数に対応した位相量だけ位相を変化させることができる。例えば、5ビット移相器である場合は、第1ブロック32-1は、11.25度だけ位相をシフトさせることができる。
【0044】
第2ブロック32-2で位相を遅らせない場合は、HEMT36a、36bを短絡状態に設定し、HEMT36c、36dを開放状態に設定する。これにより、第1ブロック32-1から入力された高周波信号は、伝送線路35bを通り、後段のブロックに伝達される。
【0045】
第2ブロック32-2で位相を遅らせる場合は、HEMT36a、36bを開放状態に設定し、HEMT36c、36dを短絡状態に設定する。これにより、第1ブロック32-1から入力された高周波信号は、伝送線路37を通り、後段のブロックに伝達される。よって、第2ブロック32-2は、移相器のビット数に対応した位相量だけ位相を変化させることができる。例えば、5ビット移相器である場合は、第2ブロック32-2は、22.5度だけ位相をシフトさせることができる。
【0046】
第2ブロック32-2より後段のブロックの動作は、第1ブロック32-1及び第2ブロック32-2と同様である。
【0047】
[4] 比較例
次に、比較例について説明する。図4は、比較例に係る移相器22の回路図である。
【0048】
第2ブロック32-2は、HEMT33e~33hを備える。HEMT33e~33hのゲート幅は、HEMT33a~33dのゲート幅と同じである。その他の構成は、図3の実施形態と同じである。
【0049】
図5は、移相器に含まれるブロックにおける線路長差と位相誤差との関係を示すグラフである。図5は、電波の周波数帯域がX帯である場合のグラフである。図5の横軸が線路長差[mm]であり、図5の縦軸が位相誤差[度]である。図5では、ゲート幅Wgが150μm、300μmの2種類のゲート幅のHEMTを用いている。
【0050】
図5から、ゲート幅が大きいほど位相誤差が大きくなる。また、位相誤差は、線路長差が長くなるほど大きくなる。
【0051】
図6は、移相器のビット数と合計位相誤差との関係を示すグラフである。図6は、電波の周波数帯域がX帯である場合のグラフである。図6の横軸が移相器のビット数であり、図6の縦軸が移相器の合計位相誤差[度]である。比較例は、1段目のブロックに含まれるHEMTのゲート幅Wg=300μm、2段目のブロックに含まれるHEMTのゲート幅Wg=300μmである。実施形態は、1段目のブロックに含まれるHEMTのゲート幅Wg=300μm、2段目のブロックに含まれるHEMTのゲート幅Wg=150μmである。
【0052】
比較例では、1段目のブロックと2段目のブロックとで、HEMTのゲート幅が同じである。
【0053】
一方、実施形態では、2段目のブロックに含まれるHEMTのゲート幅を1段目のブロックよりも小さくしている。2段目のブロックに含まれるHEMTのゲート幅は、1段目のブロックに含まれるHEMTのゲート幅の概略1/2である。このため、2段目のブロックのHEMTのソース及びドレイン間の抵抗値は、1段目のHEMTのソース及びドレイン間の抵抗値より高くなる。
【0054】
HEMTの抵抗値が高くなると、選択されていない伝送線路に流れる電流量が低減できる。これにより、選択されていない伝送線路の影響による移相器の位相誤差を小さくすることができる。この結果、図6に示すように、移相器の合計位相誤差を小さくすることが可能となる。
【0055】
また、比較例及び実施形態ともに、1段目のブロックに含まれるHEMTのゲート幅は、300μmである。よって、実施形態では、比較例に比べて、耐入力電力が小さくなるのを抑制できる。
【0056】
[5] 実施形態の効果
以上詳述したように本実施形態では、線路切換型移相器22は、入力端子30と出力端子31との間に縦続接続された複数のブロック32を備える。複数のブロック32は、1段目の第1ブロック32-1と、2段目の第2ブロック32-2とを含む。そして、第2ブロック32-2に含まれるFETのゲート幅を、第1ブロック32-1に含まれるFETのゲート幅より小さくしている。
【0057】
本実施形態によれば、第2ブロック32-2におけるHEMTのソース及びドレイン間の抵抗値は、第1ブロック32-1におけるHEMTのソース及びドレイン間の抵抗値より高くなる。これにより、選択されていない伝送線路の影響による移相器の合計位相誤差を小さくすることができる。
【0058】
また、移相器の耐入力電力は、1段目のブロックの耐入力電力によって決定される。第1ブロック32-1の抵抗値は相対的に高いため、移相器の耐入力電力が小さくなるのを抑制できる。すなわち、本実施形態では、耐入力電力が小さくなるのを抑制しつつ、位相誤差を小さくすることができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、線路切換型移相器をフェーズドアレイアンテナに適用した場合について示している。しかし、これに限定されず、本実施形態における線路切換型移相器は、位相を制御する機能を有する様々な装置に適用できる。
【0060】
また、線路切換型移相器を構成するトランジスタとして、FET及びHEMT以外に、バイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…アンテナ装置、10…アレイアンテナ、11…アンテナ素子、12…送受信モジュール、13…分配合成器、14…制御回路、15…送信器、16…受信器、20…サーキュレータ、21…増幅器、22…移相器、23…移相器、24…増幅器、30…入力端子、31…出力端子、32…ブロック、33a~33d,36a~36d…トランジスタ、34a,35a,35b,37…伝送線路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6