(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】紙葉類処理装置、及び紙葉類処理システム
(51)【国際特許分類】
G07D 11/235 20190101AFI20230710BHJP
G07D 7/185 20160101ALI20230710BHJP
G07D 11/60 20190101ALI20230710BHJP
【FI】
G07D11/235
G07D7/185
G07D11/60
(21)【出願番号】P 2019169338
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 淳
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-115856(JP,A)
【文献】特開2015-222488(JP,A)
【文献】特開2007-18170(JP,A)
【文献】特開2016-170673(JP,A)
【文献】特開2010-257338(JP,A)
【文献】国際公開第2014/064776(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/192128(WO,A1)
【文献】特開2015-32172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/235
G07D 7/185
G07D 11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送する搬送路と、
前記搬送路の異なる位置に設けられ、前記搬送路を通過する前記紙葉類の識別番号、及び画像をそれぞれ関連付けて取得する複数のセンサ部と、
前記複数のセンサ部によりそれぞれ取得する前記紙葉類の画像に基づいて、前記紙葉類に欠損が生じたか否かを判定する制御部と、
情報を表示する表示部と、
を備え、
前記制御部は、前記紙葉類に欠損が生じたと判定した場合、紙葉類の識別番号と同じ識別番号の前記複数のセンサ部により取得された前記紙葉類の画像をそれぞれ、当該画像が取得されたセンサ部との対応情報と共に前記表示部に表示する、
紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記表示部にそれぞれ表示される前記紙葉類の画像は、当該画像を取得する前記センサ部の前記搬送路に設けられる位置に応じて並べて表示される、
請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
入力を受付ける入力部を備え、
前記制御部は、前記欠損が生じたと判定した場合に、前記表示部に欠損が生じたと判定した前記紙葉類の識別番号、及び画像を表示し、当該表示された識別番号の入力を前記入力部から受け付けると、前記紙葉類の画像をそれぞれ前記表示部に表示する、
請求項1又は2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記搬送路の異なる位置に設けられるセンサ部のうち最も上流に位置するセンサ部が取得する前記紙葉類の画像を基準にして前記欠損が生じたか否かを判定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
前記複数のセンサ部は、前記紙葉類の検査を行うセンサ部と共用される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
前記紙葉類を断裁する断裁部と、
前記搬送路から分岐され、前記断裁部へ前記紙葉類を搬送する分岐搬送路と、
前記分岐搬送路で搬送される前記紙葉類の識別番号、及び画像を取得する断裁前センサ部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数のセンサ部により取得した画像に基づいて行われる検査により前記紙葉類が損券であることが判定され場合、当該損券と判定された紙葉類の識別番号を取得し、前記断裁前センサ部により前記断裁部により断裁される前記紙葉類の識別番号を取得し、前記損券と判定された紙葉類の識別番号と、前記断裁される前記紙葉類の識別番号とが一致するか否かを判定する、
請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
紙葉類を搬送する搬送路と、
前記搬送路の異なる位置に設けられ、前記搬送路を通過する前記紙葉類の識別番号、及び画像をそれぞれ関連付けて取得する複数のセンサ部と、
情報を表示する表示部と、
を備える紙葉類処理システムであって、
前記複数のセンサ部によりそれぞれ取得する前記紙葉類の画像に基づいて、前記紙葉類に欠損が生じたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により紙葉類に欠損が生じたと判定した場合、紙葉類の識別番号と同じ識別番号の前記複数のセンサ部により取得された前記紙葉類の画像をそれぞれ、当該画像が取得されたセンサ部との対応情報と共に前記表示部に表示する表示手段と、
を備える紙葉類処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、紙葉類処理装置、及び紙葉類処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ATMの預入取引時の紙幣取込時に、紙幣判別部で紙幣の透過画像と反射画像とを紙幣の固有情報である記番号と対応付けて第1の記憶部に記憶するとともに、紙幣を一時保管庫に保管し、また、入金取消しに伴い、一時保管庫から入出金口への紙幣の搬送時にも紙幣判別部で紙幣の透過画像と反射画像とを記番号に対応付けて第2の記憶部に記憶する。搬送が完了すると、第1の記憶部の画像と第2の記憶部の画像とを比較して紙幣の搬送中に欠損が生じたか否かを検出する。また、紙幣に欠損が生じたときは、入金処理時に紙幣を判別する紙幣判別部と、紙幣を一時保管する一時保管庫との間の搬送路において欠損した部分の紙片が残存していることを表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多くの紙葉類を高速で検査する紙葉類処理装置が知られている。この種の紙葉類処理装置は、ATMと比較し、長さ方向のサイズが数メートルになるほど大型であり、紙葉類を搬送する搬送路も長尺である。このため、搬送路上に設けられる2つの箇所、例えば、紙葉類の投入口近傍と、他の1か所で紙葉類の欠損(欠損)が生じたことが視認できても、その2つの箇所の間の搬送路が長尺であるため、紙葉類の欠損を探すのに多くの時間を必要とする。
【0005】
紙葉類処理装置は、紙葉類の欠損が生じたことを検出すると、当該欠損部分が他の紙葉類の検査に影響を及ぼすのを防止するために装置の動作を停止する。このように動作を停止してしまうと、紙葉類処理装置は、紙葉類の検査をすることができなくなる。このため、欠損部分を探す時間が長くなると、紙葉類を検査する業務が滞り、業務に支障をきたしかねない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、多くの紙葉類を高速で検査する場合に、搬送路上のいずれの箇所で紙葉類に欠損が生じたかを容易に特定することができる紙葉類処理装置、及び紙葉類処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る、紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送する搬送路と、前記搬送路の異なる位置に設けられ、前記搬送路を通過する前記紙葉類の識別番号、及び画像をそれぞれ関連付けて取得する複数のセンサ部と、前記複数のセンサ部によりそれぞれ取得する前記紙葉類の画像に基づいて、前記紙葉類に欠損が生じたか否かを判定する制御部と、情報を表示する表示部と、を備える。また、前記制御部は、前記紙葉類に欠損が生じたと判定した場合、紙葉類の識別番号と同じ識別番号の前記複数のセンサ部により取得された前記紙葉類の画像をそれぞれ、当該画像が取得されたセンサ部との対応情報と共に前記表示部に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る紙葉類処理装置の内部の概略的な構成の一例を示す図。
【
図2】同実施形態に係る紙葉類処理装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】同実施形態に係る画像記憶部の一例を示す図。
【
図5】同実施形態に係る紙葉類の画像を取得する処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】同実施形態に係る搬送路全体の画像を取得する処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】同実施形態に係る紙葉類の形状の異常を検出する処理の一例を示すフローチャート。
【
図8】実施形態に係る表示部に表示されるエラー表示の一例を示す図。
【
図9】同実施形態に係る異常が検出された紙葉類の画像を表示する処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】第2実施形態に係る紙葉類処理装置の内部の概略的な構成の一例を示す図。
【
図12】同実施形態に係る紙葉類処理装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図13】同実施形態に係る損券と判定された紙葉類と、断裁された紙葉類とが一致するか否かを判定する処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、紙葉類処理装置100の内部の概略的な構成の一例を示す図である。紙葉類処理装置100は、紙葉類の検査を行う装置である。ここで、紙葉類とは、紙幣や証券等である。
図1に示すように、紙葉類処理装置100は、第1ユニット110と、第2ユニット120とを備える。第1ユニット110と、第2ユニット120とは、互いに機械的、かつ、電気的に接続されている。
【0011】
紙葉類処理装置100は、第1ユニット110および第2ユニット120内を通って延在する搬送路111を有している。紙葉類処理装置100は、搬送路111に沿って設けられた検査部112と、券種ごとに紙葉類を集積および施封する複数の施封部113A、113B、113C、113Dと、施封部113A~113Dの下方に設けられ、これらの施封部で施封された紙葉類束を外部へ搬送するための搬送ベルト114と、全体カメラ115と、を備えている。
【0012】
複数の紙葉類束が投入口101に装填されると、紙葉類処理装置100は、投入された紙葉類を一枚ずつ取込み、搬送路111を通して搬送し、検査部112を通過する際に、検査部112により紙葉類を検査する。検査部112は、紙葉類の券種を判定するとともに、紙葉類の正損検出および真偽検出を行う。一般に、紙葉類の製造後(印刷後)に当該紙葉類束に含まれる紙葉類を検査する場合、紙葉類はシリアルナンバー順に積層されている。本実施形態では、このような場合に、紙葉類の検査を行うため、投入口101に装填される複数の紙葉類束は、積層される順に従ってシリアルナンバー順になっている。
【0013】
検査部112により正券であると判定された紙葉類は、券種ごとに、対応する施封部113A~113Dに送られ、施封部により所定枚数(例えば、100枚)ごとに施封される。施封された紙葉類の束は、搬送ベルト114により搬送され、外部に送られる。
【0014】
検査部112は、投入口センサ部112A、第1センサ部112Bからセンサ部112Gを含む。投入口センサ部112Aは、例えば、エリアカメラを含み、搬送路111の最も上流側、つまり、投入口101の装置内部側に設けられる。投入口センサ部112Aは、投入口101から取り込まれる紙葉類を撮影し、撮影した画像から紙葉類の画像と共に紙葉類に一意に付与されるシリアルナンバー(識別情報)を読み取る。シリアルナンバーは、例えば、アルファベットや数字が組み合わされて構成される。
【0015】
第1センサ部112Bから第6センサ部112Gは、搬送路111の異なる位置に配置されるセンサ部であり、第1センサ部112Bから第6センサ部112Gの順に搬送路111の上流側から配置される。第1センサ部112Bから第6センサ部112Gはそれぞれ、紙葉類の券種、正損を判定するためのセンサであり、例えば、光学センサ、磁気センサの他、エリアカメラ、ラインセンサを含む。本実施形態では、第1センサ部112Bから第6センサ部112Gは、光学的特性、磁気的特性等を検出するだけでなく、搬送路111を搬送される紙葉類の画像も検出可能に構成される。全体カメラ115は、例えば、紙葉類処理装置100の筐体を構成する扉の内側に取り付けられ、紙葉類処理装置100の内部側を撮影する。より詳細には、全体カメラ115は、搬送路111の全体を側面から撮影する。
【0016】
図2は、紙葉類処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、紙葉類処理装置100は、CPU(制御部)10、記憶部20、インタフェース30、入力部40、表示部50、搬送部70、検査部112、及び全体カメラ115を含む。
【0017】
CPU10は、搬送部70、及び検査部112を含む紙葉類処理装置100全体を制御する制御装置である。記憶部20は、不揮発性メモリや揮発性メモリを含み、紙葉類に対する検査を実行するための各種プログラムや各種データが記憶される。インタフェース30は、例えば、外部のコンピュータ(情報処理装置)と通信可能に接続するためのインタフェースである。入力部40は、ユーザが紙葉類処理装置100に指示入力を行う装置である。表示部50は、ユーザに所定の情報を表示する装置である。
【0018】
搬送部70は、投入口101に投入された複数の紙葉類を1枚ずつ検査部112に搬送し、検査部112を通過した紙葉類を施封部113Aから113Dのいずれかに集積する搬送制御を行う。検査部112は、既述のように、投入口センサ部112Aからセンサ部112Gを含み、紙葉類の例えば、印刷品質等の品質を検査する。検査部112は、投入口センサ部112Aから第6センサ部112Gから得られる検査結果を利用して、紙葉類に対して複数の検査項目に応じた検査を実行する。ここで、紙葉類の検査項目は、例えば、RGB各色、模様の色合い、模様等の位置、シリアルナンバーの正確さ、サイズ等であり、本実施形態では、これらの検査を行う際に、紙葉類の画像を取得することとする。なお、本実施形態では、紙葉類の画像を取得する場合で説明するが、投入口センサ部112Aから第6センサ部112Gそれぞれから少なくとも紙葉類の形状が取得できればよい。
【0019】
全体カメラ115は、画角の広い広角レンズを有するカメラであり、既述のように、搬送路111全体を側面から撮影する。したがって、全体カメラ115は、搬送路111を順次、高速で搬送される紙葉類の様子を撮影することができるようになっている。
【0020】
図3は、画像記憶部60の一例を示す図である。
画像記憶部60は、センサ画像記憶部61、及び全体画像記憶部62を含む。センサ画像記憶部61は、投入口センサ部112Aから第6センサ部112Gにより得られる紙葉類の画像を当該紙葉類のシリアルナンバーに対応づけて記憶する。全体画像記憶部62は、全体カメラ115が撮影した画像を記憶する。本実施形態では、画像記憶部60は、記憶部20に設けられることとするが、これに限るものではない。例えば、紙葉類処理装置100がインタフェース30を介してコンピュータ等の情報処理装置と接続する場合は、当該コンピュータ内の記憶部に画像記憶部60が設けられるようにしてもよい。
【0021】
図4は、紙葉類Pの一例を示す図である。
図4に示すように、紙葉類Pは、長方形状をした用紙であり、紙葉類Pを他の紙葉類から識別するためのシリアルナンバーP1が印刷されると共に、図柄P2が印刷されている。検査部112では、紙葉類Pの図柄やシリアルナンバーの印刷品質等が所定の基準を満たしているか否かが検査される。
【0022】
次に、紙葉類Pの画像を取得する処理について説明する。
図5は、紙葉類Pの画像を取得する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、CPU10が記憶部20に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0023】
CPU10は、入力部40を介して操作者から検査開始の指示を受付けた場合、投入口101に投入される紙葉類の束から紙葉類を一枚ずつ取り込み、この取り込まれた紙葉類Pを、搬送路111を介して施封部113A~113Dのいずれかまで搬送する。この際、
図5に示すように、まず、CPU10は、投入口101から取込んだ紙葉類Pの画像を取得する(ST101)。つまり、CPU10は、投入口センサ部112Aにより紙葉類Pに対して上面(又は上面及び下面)から撮影し、その撮影画像を取得する。次に、CPU10は、この取得した撮影画像に基づいて紙葉類Pのシリアルナンバーを取得する(ST102)。そして、CPU10は、このように取得したシリアルナンバーと関連付けて紙葉類Pの画像をセンサ画像記憶部61に記憶する(ST103)。
【0024】
次に、第1センサ部112Bから第6センサ部112Gの取得画像からそれぞれ紙葉類Pの画像を取得する(ST104からST109)。この際、第1センサ部112Bから第6センサ部112Gにより取得される紙葉類Pの画像それぞれが、ステップST101の処理により取得されるシリアルナンバーに関連付けて、センサ画像記憶部61に記憶される。これにより、紙葉類処理装置100に取り込まれる紙葉類Pに関して、紙葉類Pに付与されているシリアルナンバー毎に、投入口センサ部112Aで取得する紙葉類Pの画像(取込み時の画像)、及び第1センサ部112Bから第6センサ部112Gからそれぞれ取得する紙葉類Pの画像がセンサ画像記憶部61に記憶される。なお、センサ画像記憶部61には、シリアルナンバーと関連付けて他の検査に関する画像や検査結果も含まれるようにしてもよい。
【0025】
次に、全体カメラ115で搬送路111の全体を撮影し、撮影画像を取得する処理について説明する。
図6は、搬送路111全体の画像を取得する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、CPU10が記憶部20に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0026】
まず、CPU10は、検査開始か否かを判定する(ST201)。例えば、
図5のステップST101の場合と同様に、入力部40を介して操作者から検査開始の指示を受付けた否かに基づいて、この判定が行われる。検査開始と判定された場合(ST201:YES)、CPU10は、全体カメラ115の画像取得を開始する(ST202)。つまり、全体カメラ115を起動し、搬送路111全体を撮影し、その撮影画像を全体画像記憶部62へ記憶する処理を開始する。
【0027】
次に、CPU10は、検査終了か否かを判定する(ST203)。検査が終了していないとCPU10が判定した場合(ST203:NO)、処理はステップST202に戻り、既述の処理を継続する。つまり、全体カメラ115の撮影画像を取得する処理が継続される。一方、検査が終了したと判定した場合(ST203:YES)、CPU10は、全体カメラ115の画像取得を終了し(ST206)、この処理を終了する。これにより、紙葉類Pの検査を実行している間の搬送路111の全体画像を取得することができる。
【0028】
次に、紙葉類Pが破損や折れが等の欠損が生じた場合、言い換えれば、紙葉類Pの形状の異常が発生した場合を検出する処理について説明する。
図7は、紙葉類Pの形状の異常を検出する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、CPU10が記憶部20に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。なお、本実施形態では、この処理は、投入口101から取込み後の紙葉類Pが取り込まれた後、当該紙葉類Pが少なくとも第6センサ部112Gを通過した後に開始されることとする。
【0029】
CPU10は、シリアルナンバーを指定して紙葉類Pの形状の画像を取得する(ST301)。これにより、指定されたシリアルナンバーと、当該シリアルナンバーに対応付けられた紙葉類Pの形状の画像がセンサ画像記憶部61から取得される。なお、シリアルナンバーは、既述のステップST102の処理により紙葉類Pから取得した順に指定される。
【0030】
次に、CPU10は、取得した画像を比較する(ST302)。より詳細には、CPU10は、投入口センサ部112Aから取得した紙葉類Pの画像(第1の画像)と、第1センサ部112Bから第6センサ部112Gからそれぞれ取得した紙葉類Pの画像(第2の画像)とをそれぞれ比較する。投入口センサ部112Aから取得した紙葉類Pの画像に基づいて比較するのは、紙葉類処理装置100に取り込まれたときの紙葉類Pの画像が紙葉類P本来の形状だからである。
【0031】
次に、CPU10は、所定の欠損率以上を有する画像があるか否かを判定する(ST303)。本実施形態では、CPU10は、ステップST302の処理で比較する第1の画像から得られる形状に対する第2の画像から得られる形状の欠損率を算出し、当該欠損率が所定の欠損率以上である場合には、異常があると判定する。CPU10が所定の欠損率以上を有する画像がないと判定した場合(ST303:NO)、処理はステップST301に戻り、次のシリアルナンバーの紙葉類Pに対して同様な処理が実行される。
【0032】
一方、所定の欠損率以上を有する画像があると判定した場合(ST303:YES)、CPU10は、エラーを表示する(ST304)。つまり、表示部50に異常な形状の紙葉類Pを検出した旨が表示される。この際の表示部50の表示には、異常を検出した旨、異常を検出した紙葉類Pの画像、異常を検出したセンサ部、及びシリアルナンバーが含まれる。そして、CPU10は、紙葉類Pの取込みを停止する(ST305)。これにより、紙葉類処理装置100は、投入口101から新たな紙葉類Pを取込まなくなる。
【0033】
次に、CPU10は、取込んだ紙葉類Pの処理が終了したか否かを判定する(ST306)。例えば、CPU10は、センサ画像記憶部61に記憶されるシリアルナンバーに対して全て処理行ったか否かに基づいて判定する。CPU10が終了していないと判定した場合(ST306:NO)、処理はステップST301に戻り、次のシリアルナンバーの紙葉類に対しても同様な処理が実行される。一方、終了したと判定した場合(ST306:YES)、CPU10は、この処理を終了する。これにより、取り込んだ全ての紙葉類Pに対して画像を比較する処理が実行される。なお、一回異常を検出した後に、再度、異常を検出した場合、エラー表示(ST304)はされるが、新たな紙葉類Pの取り込みは既に停止しているため、ステップST305の処理は行われずに、ステップST306の処理が実行される。
【0034】
図8は、表示部50に表示されるエラー表示の一例を示す図である。
図8に示すように、表示画面例50Aには、紙葉類Pの異常を検出した旨(紙葉類にエラーを検出しました。)、異常を検出した紙葉類Pの画像(紙葉類Pの左上が欠損している画像)、異常を検出したセンサ部(検出センサは第5センサ、第6センサです。)及び、異常を検出した紙葉類Pのシリアルナンバーが表示される。なお、図示では第5センサ部112Fの取得画像に対応する紙葉類Pの画像が1つしか図示されていないが、所定の操作により第6センサ部112Gの取得画像に対応する紙葉類Pの画像を表示することができる。また、第5センサ部112F、第6センサ部112Gに対応する画像をそれぞれ同時に表示するようにしてもよい。
【0035】
次に、異常が検出された紙葉類Pに関する画像を表示する処理について説明する。
図9は、異常が検出された紙葉類の画像を表示する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、CPU10が記憶部20に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0036】
図9に示すように、CPU10は、シリアルナンバーの入力を受付けたか否かを判定する(ST401)。例えば、CPU10は、所定の画面から操作者によりシリアルナンバーが入力されたか否かに基づいてこの判定をしてもよいし、
図8の表示画面のシリアルナンバーにリンクが張られている場合は、当該シリアルナンバーがクリックされたか否かに基づいてこの判定をしてもよい。
【0037】
シリアルナンバーの入力を受付けたと判定した場合(ST401:YES)、CPU10は、シリアルナンバーに関連付けられた画像を取得する(ST402)。より詳細には、CPU10は、入力を受付けたシリアルナンバーに関連付けられた投入口センサ部112A、及び第1センサ部112Bから第6センサ部112Gから取得した紙葉類Pの画像を取得する。
【0038】
このように画像を取得すると、CPU10は、表示部50に画像を表示する(ST403)。これにより、表示部50に所定のフォーマットで各画像が表示される。そして、この処理は終了する。
【0039】
図10は、ステップST403で表示される画面表示例50Bを示す図である。
図10に示すように、画面表示例50Bの上側には、所定のシリアルナンバーの各画像である旨が表示される。また、投入口センサ部112Aから取得した紙葉類Pの画像が取込み画像D1として、取込み画像の文字(対応情報)と共に表示される。さらに、第1センサ部112Bから第6センサ部112Gから取得した紙葉類Pの第1センサ画像D2から第6センサ画像D7がそれぞれ、第1センサ画像から第6センサ画像の文字(対応情報)と共に表示される。取込み画像D1が上部に表示され、その下側に2段になって、第1センサ画像D2から第3センサ画像D4、第5センサ画像D5から第6センサ画像D7が表示される。このように、表示部50にそれぞれ表示される紙葉類の取込み画像D1、第1センサ画像D2から第6センサ画像D7は、当該画像を取得するセンサ部の搬送路111に設けられる位置に応じて並べて表示される。各画像D1から画像D7の配置方法は、任意に設定可能である。なお、
図10に示す例では、紙葉類Pの形状だけでなく、図柄も表示されているが、少なくとも形状が表示されていればよい。
【0040】
図10に示すように、画面表示例50Bには、第5センサ画像D6、第6センサ画像D7の左上が欠損しており、異常が生じている状態が表示されている。これに対して、取込み画像D1、第1センサ画像D2から第4センサ画像D5には、当該欠損は見受けられない。既述の
図1に示すように、センサ部の並び順は、搬送路111の上流側から投入口センサ112A、第1センサ部112B、第2センサ部112C、第3センサ部112D、第4センサ部112E、第5センサ部112F、第6センサ部112Gであるため、操作者は、当該画面表示例50Bを確認することにより、第4センサ部112E、第5センサ部112Fとの間で紙葉類Pに欠損が発生したと予測することができる。
【0041】
紙葉類処理装置100は、紙葉類Pの異常を検出した場合、それ以降は、紙葉類Pを取り込んでいないため、操作者が
図10に示す画面表示例50Bを確認作業が終了するときには、動作が停止している。このため、操作者は、画面表示例50Bを確認した後、まず、施封部113Aから113Dから異常が検出された紙葉類Pを取り出す。本実施形態では、紙葉類Pはシリアルナンバー順に搬送されているため、シリアルナンバーが把握できればいずれの施封部にあるか、さらに、積層されている紙葉類Pのいずれの位置にあるかを容易に把握することができる。操作者は、取り出した紙葉類Pを確認し、紙葉類Pの左上が折れているのか、破損しているのかを確認する。
【0042】
紙葉類Pが折れていない、つまり、破損していることを確認した場合、操作者は、直ぐに、紙葉類処理装置100の筐体を開き、搬送路111の第4センサ部112Eと、第5センサ部112Fとの間を確認する。これにより、操作者は、紙葉類Pの欠損を最短時間で発見することが可能になる。
【0043】
また、紙葉類Pは搬送路111を高速に搬送されるため、その勢いにより紙葉類Pの欠損部分が搬送路111の第4センサ部112Eと、第5センサ部112Fとの間から別の場所に飛翔する場合も考えられる。この場合、搬送路111の第4センサ部112Eと、第5センサ部112Fとの間を確認しても欠損部分は見つからない。このような場合、本実施形態では、全体カメラ画像記憶部62に記憶されている全体カメラ115で撮影した画像を確認する。既述のように、欠損部分が飛翔した場合には、当該状態はカメラ画像から確認することができるため、操作者は、カメラ画像を確認することにより、欠損の飛翔した方向を把握することができる。そして、操作者は、その方向先の場所を探すことにより、容易に欠損部分を発見することができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、紙葉類処理装置100の表示部50にエラー表示(参照:
図8)、異常を検出した紙葉類Pの画像表示(参照:
図10)を表示する場合で説明したが、これに限るものではない。例えば、既述のように、インタフェース30を介してコンピュータ等の情報処理装置と接続され、当該コンピュータ内の記憶部に画像記憶部60が設けられている場合は、情報処理装置の表示部にエラー表示、異常を検出した紙葉類Pの画像表示をするようにしてもよい。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態は、紙葉類処理装置100に、検査部112により損券と判定された紙葉類Pを断裁する装置を追加し、この装置を使用して、損券を断裁する処理を実行し、損券と判定された紙葉類Pと、断裁された紙葉類Pとが一致するか否かを判定する処理を追加した点が上記第1実施形態と異なる。なお、上記第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すこととし、これらについては詳細な説明は省略する。
【0046】
図11は、本実施形態の紙葉類処理装置100の内部の概略的な構成の一例を示す図である。本実施形態の紙葉類処理装置100は、搬送路111から分岐する分岐搬送路111aが設けられ、当該分岐搬送路111aが断裁部117まで延出されている。また、断裁部117に搬送される紙葉類Pを撮影するセンサ部118が設けられている。なお、本実施形態では、紙葉類Pの検査は、製造された(印刷された)直後にするものではなく、流通された後、回収された紙葉類Pの束に対して行われる検査の場合である。
【0047】
分岐搬送路111aは、検査部112において、損券と判定された紙葉類Pを断裁部117に搬送する搬送路である。ここで、損券とは、付着した汚れの度合いが大きく、再度、流通させないことが望ましい状態にある紙葉類Pである。断裁部117は、損券と判定された紙葉類Pを断裁する装置である。センサ部(断裁前センサ部)118は、例えば、エリアカメラであり、断裁部117で断裁される前の紙葉類Pを撮影する。
【0048】
図12は、紙葉類処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図12に示すように、本実施形態の紙葉類処理装置100は、断裁部117、センサ部118が追加されている。断裁部117で断裁される紙葉類Pは、センサ部118により撮影され、その撮影された撮影画像からシリアルナンバーが認識され、シリアルナンバーと関連付けて撮影画像が記憶される。例えば、既述の画像記憶部60内の所定の第1領域に記憶される。一方、検査部112で損券であると判定された紙葉類Pに関しても、シリアルナンバーと関連付けて画像記憶部60内の所定の第2領域に記憶される。
【0049】
次に、損券を断裁する処理を実行し、損券と判定された紙葉類Pと、断裁された紙葉類Pとが一致するか否かを判定する処理について説明する。
図13は、損券と判定された紙葉類Pと、断裁された紙葉類Pとが一致するか否かを判定する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、CPU10が記憶部20に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0050】
図13に示すように、CPU10は、断裁した紙葉類Pを確認するための操作を受付けたか否かを判定する(ST501)。例えば、操作者が表示部50に表示された所定の画面表示上から入力部40を操作して、断裁した紙葉類Pを確認するための操作を行ったか否かに基づいて判定される。
【0051】
当該操作を受付けたと判定した場合(ST501:YES)、CPU10は、損券と判定した紙葉類Pのシリアルナンバー、及びその画像を取得する(ST502)。本実施形態では、CPU10は、画像記憶部60の第2領域に記憶されている損券と判定された紙葉類Pのシリアルナンバー及び画像を取得する。次に、CPU10は、断裁前の紙葉類Pのシリアルナンバー、及びその画像を取得する(ST503)。本実施形態では、CPU10は、画像記憶部60の第1領域に記憶されている断裁前の紙葉類Pのシリアルナンバー及び画像を取得する。
【0052】
次に、CPU10は一致するか否かを判定する(ST504)。より詳細には、CPU10は、ステップST502の処理で取得した損券と判定した紙葉類Pのシリアルナンバーと、ステップST503の処理で取得した断裁前の紙葉類Pのシリアルナンバーとが一致するか否かを判定する。
【0053】
一致すると判定した場合(ST504:YES)、CPU10は、一致している旨を表示部50に表示する(ST505)。一方、一致していないと判定した場合(ST504:NO)、CPU10は、一致していない旨を表示部50に表示すると共に、少なくとも一致していない紙葉類Pのシリアルナンバー、及びその画像を表示する(ST506)。一般に、損券と判定された紙葉類Pと、断裁される紙葉類Pは原則として一致する。しかし、何らかの事態が発生し、損券と判定されたにも関わらず断裁されていない紙葉類Pが発生することも考えられる。本実施形態では、このような場合に、シリアルナンバーが一致しなかった紙葉類Pのシリアルナンバー、及びその画像が表示部50に表示される。
【0054】
以上のように説明した紙葉類処理装置100によると、操作者は、損券と判定された紙葉類Pが断裁部117により確実に断裁されたか否かを確認することできる。したがって、損券と判定された紙葉類Pが断裁されずに、紛失するような事態が生じた場合には、操作者は、紙葉類Pが紛失したことを把握することができる。
【0055】
なお、上記第1実施形態では、全体カメラ115の撮影画像を紙葉類Pの検査開始から終了まで取得する場合で説明したが、当該画像を取得する際に、投入口101から取込まれた紙葉類Pのシリアルナンバーを読取るタイミングを取得し、当該シリアルナンバー、及びタイミングを撮影画像と関連付けて全体画像記憶部62に記憶するようにしてもよい。このように構成すると、操作者が全体カメラ115により撮影された全体画像を確認する際に、欠損を生じた紙葉類Pのシリアルナンバーを入力することにより、画像全体の中から欠損が生じたタイミングに容易にアクセスすることができ、紙葉類Pの欠損部分の行方を探す時間を短くすることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、紙葉類Pの画像を取得するセンサ部は、検査部112内の投入口センサ部112A、及び紙葉類Pの検査に用いる第1センサ部112Bから第6センサ部112Gと共用とする場合で説明したがこれに限るものではない。例えば、紙葉類Pの画像を取得するセンサ部を検査部112以外の搬送路111の異なる位置に配置してもよいし、このようなセンサ部と、紙葉類Pの検査に用いる第1センサ部112Bから第6センサ部112Gと共用するセンサ部を混在させるようにしてもよい。このように構成すると、搬送路111の種々の位置にセンサ部を設けることが可能になり、搬送路111全体の異なる位置での紙葉類Pの画像を取得できるようになる。
【0057】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10…CPU、20…記憶部、30…インタフェース、40…入力部、50…表示部、60…画像記憶部、61…センサ画像記憶部、62…全体画像記憶部、111…搬送路、111a…分岐搬送路、112…検査部、112A…投入口センサ部、112B~112G…センサ部、115…全体カメラ、117…断裁部、118…センサ部、P…紙葉類、P1…シリアルナンバー。