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特許7309581偏径差のばらつきを低減した異形鉄筋の製造方法および製造装置
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  • 特許-偏径差のばらつきを低減した異形鉄筋の製造方法および製造装置 図1
  • 特許-偏径差のばらつきを低減した異形鉄筋の製造方法および製造装置 図2
  • 特許-偏径差のばらつきを低減した異形鉄筋の製造方法および製造装置 図3
  • 特許-偏径差のばらつきを低減した異形鉄筋の製造方法および製造装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】偏径差のばらつきを低減した異形鉄筋の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/16 20060101AFI20230710BHJP
   B21B 1/18 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B21B1/16 K
B21B1/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019209287
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079406
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】助川 純平
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-061369(JP,A)
【文献】特開平01-262014(JP,A)
【文献】特開平07-080505(JP,A)
【文献】特開昭59-050902(JP,A)
【文献】特開2000-158005(JP,A)
【文献】特開平11-090505(JP,A)
【文献】特開平11-047804(JP,A)
【文献】特開2008-264798(JP,A)
【文献】特開平09-094602(JP,A)
【文献】特開2010-236306(JP,A)
【文献】特開2012-096253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材である鋼片の進行方向に沿って第1ロールスタンドから第Nロールスタンドまで夫々2個のカリバーロールを備えた全N台のロールスタンドを配列して、前記第1ロールスタンドから前記第Nロールスタンドで順次圧下を加えることによって異形鉄筋の軸となる直径DROD(mm)の丸棒材を圧延するとともに該丸棒材の外表面に節とリブを形成する異形鉄筋の製造方法において、
前記第Nロールスタンドの入側に隣接する第N-1ロールスタンドに配設される2個のカリバーロールの回転軸に平行な方向の中央部における間隔M(mm)と該中央部の両側に位置する前記カリバーロールの最大間隔Q(mm)とが下記の(1)式を満たし、
前記直径DRODと前記カリバーロールのカリバー幅W(mm)とが下記の(2)式を満たし、
前記第Nロールスタンドの出側に隣接するサイジングロールガイドに配設される2個のガイドロールで前記リブを0.5~1.0mm圧下し、偏径差(=D KNOT -D RIB )のばらつきσを0.030mm以下とすることを特徴とする異形鉄筋の製造方法。
1.0≦Q/M≦1.2 ・・・(1)
1.4≦W/DROD≦1.8 ・・・(2)
【請求項2】
第Nロールスタンドのカリバーロールの回転軸と前記サイジングロールガイドのガイドロール7の回転軸との距離G(mm)が500mm以内であることを特徴とする請求項1に記載異形鉄筋の製造方法。
【請求項3】
素材である鋼片の進行方向に沿って第1ロールスタンドから第Nロールスタンドまで夫々2個のカリバーロールを備えた全N台のロールスタンドを配列して、前記第1ロールスタンドから前記第Nロールスタンドで順次圧下を加えることによって異形鉄筋の軸となる直径DROD(mm)の丸棒材を圧延するとともに該丸棒材の外表面に節とリブを形成する異形鉄筋の製造装置であって、
前記第Nロールスタンドの入側に隣接する第N-1ロールスタンドに配設される2個のカリバーロールの回転軸に平行な方向の中央部における間隔M(mm)と該中央部の両側に位置する前記カリバーロールの最大間隔Q(mm)とが下記の(1)式を満たし、
前記直径DRODと前記カリバーロールのカリバー幅W(mm)とが下記の(2)式を満たし、
前記第Nロールスタンドの出側に前記リブを0.5~1.0mm圧下するための2個のガイドロールを備えたサイジングロールガイドを配設し、偏径差(=D KNOT -D RIB )のばらつきσを0.030mm以下とすることを特徴とする異形鉄筋の製造装置。
1.0≦Q/M≦1.2 ・・・(1)
1.4≦W/DROD≦1.8 ・・・(2)
【請求項4】
第Nロールスタンドのカリバーロールの回転軸と前記サイジングロールガイドのガイドロール7の回転軸との距離G(mm)が500mm以内であることを特徴とする請求項3に記載の偏異形鉄筋の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやモルタルを用いて構築される建造物を補強するために使用される異形鉄筋の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタルを用いて構築される建造物を補強するために使用される異形鉄筋は、コンクリートやモルタルの付着性を高めるために、節やリブと呼ばれる線状の突起が表面に設けられる。そして建造物が完成した後、地震や強風等によって建造物が振動した時に発生する引き抜き力に対して、節やリブが抵抗となって、建造物の倒壊や損壊を防止することができる。したがって異形鉄筋は、建造物を補強する構造用鉄筋として広く普及している。
【0003】
異形鉄筋の製造工場では、複数台のロールスタンドからなる圧延機に素材である鋼片を装入して、所定の直径を有する丸棒状の鋼材(以下、丸棒材という)とすると同時に、丸棒材の表面に節やリブを設けるのが一般的であり、その一連の工程に様々な工夫が加えられている(たとえば特許文献1、2参照)。
【0004】
異形鉄筋を製造するために従来から使用されている圧延機は、各ロールスタンドがいずれも2個のカリバーロールを備えており、第1ロールスタンド(鋼材が装入される最初のロールスタンド)から第Nロールスタンド(異形鉄筋が排出される最終のロールスタンド)に到る各ロールスタンドのカリバー形状を適宜設定して素材を圧延することによって、丸棒材の直径を所定の目標値に仕上げるとともに節やリブを表面に形成する。通常の異形鉄筋を製造するための圧延機に配列されるロールスタンドの台数は10~20台(N=10~20)程度である。
【0005】
こうして製造された異形鉄筋を出荷するために、製造工場では圧延に続いて、
(a)異形鉄筋を所定の長さに切り揃える
あるいは
(b)異形鉄筋をコイル状に巻き取る
等の加工を加える。上記(b)の場合は、異形鉄筋を一定の曲率で湾曲させるために、異形鉄筋の偏径差のばらつきを小さく抑える必要がある。偏径差のばらつきが大きい異形鉄筋は、湾曲させる際の曲率が変動し易いので、円滑に巻き取るのが困難である。なお偏径差は、異形鉄筋の節部の直径DKNOT(mm)とリブ部の直径DRIB(mm)から下記の(3)式で算出される値である。
異形鉄筋の偏径差=DKNOT-DRIB ・・・(3)
さらに、ユニット加工用の異形鉄筋に曲げ加工を施す場合にも、偏径差のばらつきが大きい異形鉄筋は、円滑な曲げ加工に支障を来す。特に近年、異形鉄筋を自動で切断して曲げ加工を自動で行なう加工機が実用化されており、その加工機の機能を十分に発揮させるために、偏径差のばらつき低減の要求が高まっている。しかしながら特許文献1、2に開示された異形鉄筋の製造技術では、偏径差のばらつきを小さく抑える効果は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭55-126302号公報
【文献】特公平1-46566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、偏径差のばらつきを低減した異形鉄筋の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、図4に示すような異形鉄筋1を製造する圧延機の各ロールスタンドの設定を種々変更して、丸棒材2の表面に節3とリブ4を形成する実験を行ない、得られた異形鉄筋1の長手方向の複数箇所で、節部の直径DKNOT(mm)、リブ部の直径DRIB(mm)、および丸棒材の直径DROD(mm)を測定した。そして、DROD(mm)の測定値と目標値の誤差、ならびに(3)式で算出される偏径差のばらつきを調査した結果、異形鉄筋1を所定の形状・寸法に仕上げる役割を担う最終のロールスタンド(第Nロールスタンド)の1台手前、すなわち入側に隣接するロールスタンド(第N-1ロールスタンド)のカリバー形状が異形鉄筋1の寸法精度ならびに偏径差のばらつきに多大な影響を及ぼすことが判明した。つまり、第N-1ロールスタンドのカリバー形状を改善すれば、第Nロールスタンドで仕上げられた異形鉄筋1の寸法精度を向上し、かつ偏径差のばらつきを抑制する効果が得られる。
【0009】
次に本発明者は、偏径差のばらつきを更に抑制する技術について検討した。そして、第Nロールスタンドの出側に隣接させてガイドロールを配設して、リブ4を圧下することによって、偏径差のばらつきを抑制する効果が一層向上することを見出した。そのガイドロールは、リブ4のみに当接して圧下を加えれば良いので、必ずしもカリバーロールを使用する必要はない。
【0010】
2個のガイドロールが配設されるロールスタンドは、圧延機の第1~第Nロールスタンドで構成される圧延機の出側の第N+1ロールスタンドに相当する順で配列されるが、カリバーロールを用いて素材に圧下を加えて節とリブを形成する圧延機の全N台のロールスタンドと区別するために、以下ではサイジングロールガイドと記す。
【0011】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、素材である鋼片の進行方向に沿って第1ロールスタンドから第Nロールスタンドまで夫々2個のカリバーロールを備えた全N台のロールスタンドを配列して、第1ロールスタンドから第Nロールスタンドで順次圧下を加えることによって異形鉄筋の軸となる直径DROD(mm)の丸棒材を圧延するとともに丸棒材の外表面に節とリブを形成する異形鉄筋の製造方法において、第Nロールスタンドの入側に隣接する第N-1ロールスタンドに配設される2個のカリバーロールの回転軸に平行な方向の中央部における間隔M(mm)と中央部の両側に位置するカリバーロールの最大間隔Q(mm)とが下記の(1)式を満たし、
直径DRODとカリバーロールのカリバー幅W(mm)とが下記の(2)式を満たし、第Nロールスタンドの出側に隣接するサイジングロールガイドに配設される2個のガイドロールでリブを0.5~1.0mm圧下する異形鉄筋の製造方法である。
【0012】
また本発明は、素材である鋼片の進行方向に沿って第1ロールスタンドから第Nロールスタンドまで夫々2個のカリバーロールを備えた全N台のロールスタンドを配列して、第1ロールスタンドから第Nロールスタンドで順次圧下を加えることによって異形鉄筋の軸となる直径DROD(mm)の丸棒材を圧延するとともに丸棒材の外表面に節とリブを形成する異形鉄筋の製造装置であって、第Nロールスタンドの入側に隣接する第N-1ロールスタンドに配設される2個のカリバーロールの回転軸に平行な方向の中央部における間隔M(mm)と中央部の両側に位置する前記カリバーロールの最大間隔Q(mm)とが下記の(1)式を満たし、直径DRODとカリバーロールのカリバー幅W(mm)とが下記の(2)式を満たし、第Nロールスタンドの出側にリブを0.5~1.0mm圧下するための2個のガイドロールを備えたサイジングロールガイドを配設する異形鉄筋の製造装置である。
1.0≦Q/M≦1.2 ・・・(1)
1.4≦W/DROD≦1.8 ・・・(2)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異形鉄筋の偏径差のばらつきを低減できるので、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にて第N-1ロールスタンドに配設されるカリバーロールの例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明にてサイジングロールガイドに配設されるガイドロールの例を模式的に示す断面図である。
図3】偏径差の測定結果を示すグラフである。
図4】異形鉄筋の例を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図4に示すような異形鉄筋は、複数台のロールスタンドを備えた圧延機で製造される。以下では圧延機に配列されるロールスタンドの台数をN台とする。つまりNは整数(N>0)であり、一般に普及している圧延機ではN=10~20程度である。
【0016】
各ロールスタンドは、いずれも2個のカリバーロールを備えており、第1ロールスタンド(鋼材が装入される最初のロールスタンド)から第Nロールスタンド(異形鉄筋1が排出される最終のロールスタンド)に到る各ロールスタンドのカリバー形状を適宜設定して、素材となる鋼材を圧延することによって、異形鉄筋1の軸となる丸棒材2(直径DROD)と、その表面に節3とリブ4を形成する。
【0017】
異形鉄筋1の丸棒材2は、夫々のロールスタンドにて2個のカリバーロールが素材を挟んで圧下を加えることによって、直径DROD(mm)の丸棒材2に仕上げられる。節3は、各ロールスタンドのカリバーロールに溝状の凹部を設けて、丸棒材2の圧下と同時に凹部にも鋼材を充満させることによって形成される。つまり、カリバーロールの回転軸に平行な方向に溝状の凹部を設けることによって、図4に示すような節3を形成することができる。リブ4は、夫々のロールスタンドにて2個のカリバーロールの隙間に素材が突出することによって形成される。
【0018】
つまり、圧延機に配列される全N台のロールスタンドは、いずれも素材を複雑に変形させるために圧下を加える。したがって、変形抵抗に対抗して丸棒材2、節3、リブ4の成形を可能にするために、圧延機のロールスタンドは全て動力源(たとえば電動モーター等)に連結して、その駆動力でカリバーロールを回転させる。
【0019】
このような圧延機において、N台のロールスタンドのうち、最終の第Nロールスタンドは異形鉄筋1を所定の形状に仕上げるものであるから、カリバーロールに設けられる溝状の凹部に鋼材を十分に充満させれば、所定の直径を有する丸棒材2および一定の形状の節3を安定して形成することができる。そこで、第Nロールスタンドの入側に隣接して配列される第N-1ロールスタンドに、図1に示すようなカリバー形状のカリバーロールを配設する。
【0020】
ここで図1を参照して、第N-1ロールスタンドの2個のカリバーロール5で形成されるカリバーの形状について説明する。第N-1ロールスタンドのカリバー形状は、カリバーロール5の回転軸6に平行な方向の中央部における間隔をM(mm)とし、その中央部の両側にて間隔を最も大きく広げた位置における最大間隔をQ(mm)とし、さらに第N-1ロールスタンドの回転軸6に平行な方向の幅(以下、カリバー幅という)をW(mm)として、Q/M値が1.0未満では、節3が飛び出してサイジングロールガイドのガイドロール7に衝突し、ガイドロール7の損傷や節3の折れ曲がりを引き起こし、その結果、異形鉄筋の品質欠陥の原因となる。一方で、Q/M値が1.2を超えると、節3が形成されず、下記の(3)式で算出される偏径差が大きくなる。
【0021】
さらに、W/DROD値が1.4未満では、節3が形成されず、偏径差が大きくなる。W/DROD値が1.8を超えると、節3が飛び出してサイジングロールガイドのガイドロール7に衝突し、ガイドロール7の損傷や節3の折れ曲がりを引き起こし、その結果、異形鉄筋の品質欠陥の原因となる。
【0022】
したがって、M、Q、W、DRODが下記の(1)(2)式を満たすように2個のカリバーロール5を設定する。そのカリバーロールには、回転軸に平行な溝状の凹部は設けない。
【0023】
ここで、カリバー幅Wを具体的に説明する。カリバー幅Wは、2個のカリバーロール5の最大間隔Qの位置におけるカリバー形状と同じ曲率で、間隔Mの位置(すなわち回転軸6に平行な方向の中央部)から遠ざかる方向に延伸した円弧が交差する点同士の距離である(図1参照)。
1.0≦Q/M≦1.2 ・・・(1)
1.4≦W/DROD≦1.8 ・・・(2)
なお、圧延機に配列される第1~第Nロールスタンドは全て動力源に連結して、その駆動力でカリバーロールを回転させる。ただし第N-1ロールスタンドを除く、第1~第N-2ロールスタンドと第Nロールスタンドについては、カリバーロールの間隔およびカリバー形状、溝状の凹部の形状を従来通りに設定する。
【0024】
こうして、素材となる鋼片を圧延機に装入して第1~第Nロールスタンドで圧延することによって、異形鉄筋1の丸棒材2の直径DRODおよび節部の直径DKNOTを所定の寸法に仕上げることができる。
【0025】
しかしリブ4は、各ロールスタンドに配設される2個のカリバーロールの隙間に素材が突出することによって形成されるものであるから、リブ部の直径DRIBは第Nロールスタンドの出側で不均一になり易い。そこで、第Nロールスタンドの出側に隣接してサイジングロールガイドを配設して、リブ4のみを圧下する(図2参照)。つまりサイジングロールガイドにて、2個のガイドロール7の回転軸8が、第Nロールスタンドのカリバーロールの回転軸6に対して直角をなすように配設して、ガイドロール7をリブ4に当接させて0.5~1.0mmの圧下(片方のリブ4に0.25~0.5mmずつ)を加えることによって、直径DRIBを均一に仕上げる。ガイドロール7による圧下量が0.5mm未満では、圧下量が不足して直径DRIBを均一に圧下する効果が得られない。圧下量が1.0mm超では、加工硬化によってリブ4の変形抵抗が増加するので、ガイドロール7に損傷(たとえば疵、変形等)が発生し易くなり、直径DRIBを均一に圧下する効果が得られない。
【0026】
ガイドロール7は、リブ4のみを圧下するものであるから、リブ4に当接できる形状のものを使用する。図2にはロール表面が湾曲する形状のものを例示するが、必ずしも表面が湾曲したガイドロール7を使用する必要はなく、円柱状のものを使用しても良い。また、動力源に必ずしも連結する必要はなく、第Nロールスタンドから排出される異形鉄筋1に追随して回転するロール(いわゆるアイドルロール)を使用しても良い。
【0027】
第Nロールスタンドのカリバーロールの回転軸とサイジングロールガイドのガイドロール7の回転軸8との距離G(mm)が大き過ぎると、ガイドロール7がリブ4に当接する前に異形鉄筋1の温度が低下して、変形抵抗が増加する。したがって、距離Gは500mm以内が好ましい。
【0028】
こうして異形鉄筋1の直径DKNOTと直径DRIBを均一に仕上げることができ、その結果、下記の(3)式で算出される偏径差のばらつきσを0.030mm以下に抑えることができる。
異形鉄筋の偏径差=DKNOT-DRIB ・・・(3)
【実施例
【0029】
JIS規格SD295Aに相当する成分の鋼片を圧延機に装入して、JIS規格G3112に規定されるD13の異形鉄筋(DROD=12mm)を製造した。圧延機は、入側の第1ロールスタンドから出側(仕上げ)の第20ロールスタンドまで全20台(N=20)のロールスタンドを有し、各ロールスタンドはいずれも2個のカリバーロールを備えたものを使用した。第19ロールスタンドのカリバーロールは、M=9.8mm、Q=10.3mm、W=19mmとなるように設定した(図1参照)。さらに、第20ロールスタンドの出側に2個のガイドロールを備えたサイジングロールガイドを配設(図2参照)して、リブに0.8mm(片側0.4mmずつ)の圧下を加えた。
【0030】
こうして得られた異形鉄筋から長さ500mmの試験片を5000mmピッチで切り出して、各試験片のDKNOTとDRIBをマイクロメーターで測定した。測定位置は70ケ所とした。これを発明例とする。
【0031】
次に、比較のために、サイジングロールガイドを使用せず、かつ第19ロールスタンドのカリバーロールの設定をM=Q=9.6mm、W=20mmとして、発明例と同一成分の鋼片の圧延を行なった。圧延機の第1~第18、第20ロールスタンドは発明例と同じ設定とした。得られた異形鉄筋から、発明例と同様に試験片を切り出してDKNOTとDRIBを測定した。測定位置は70ケ所とした。これを比較例とする。
【0032】
KNOTとDRIBの測定値から偏径差(=DKNOT-DRIB)を算出した結果を図3に示す。図3に示す発明例の偏径差のばらつきσは0.015mmであり、比較例の偏径差のばらつきσは0.044mmであった。したがって本発明によって、異形鉄筋の偏径差(=DKNOT-DRIB)のばらつきが低く抑えられることが確かめられた。
【符号の説明】
【0033】
1 異形鉄筋
2 丸棒材
3 節
4 リブ
5 第N-1ロールスタンドのカリバーロール
6 カリバーロールの回転軸
7 サイジングロールガイドのガイドロール
8 ガイドロールの回転軸
図1
図2
図3
図4