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<図1>
  • 特許-内燃機関システムの異常診断装置 図1
  • 特許-内燃機関システムの異常診断装置 図2
  • 特許-内燃機関システムの異常診断装置 図3
  • 特許-内燃機関システムの異常診断装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】内燃機関システムの異常診断装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20230710BHJP
   F02B 29/04 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02D45/00 360A
F02B29/04 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019209657
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021080890
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 平
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069243(WO,A1)
【文献】特開2008-14211(JP,A)
【文献】特開2005-188479(JP,A)
【文献】特開2016-194278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 45/00
F02B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、ガスを加圧して前記内燃機関に供給するターボチャージャと、前記ターボチャージャから前記内燃機関に供給される前記ガスを冷却するインタークーラとを備える内燃機関システムの異常を診断する異常診断装置であって、
前記ターボチャージャのコンプレッサに導入されるガスの温度である吸気温を検出する吸気温センサと、
外気温を検出する外気温センサと、
前記インタークーラを通過して前記内燃機関に供給される前記ガスの温度であるインタークーラ通過後ガス温度を検出するインタークーラ通過後ガス温度センサと、
前記吸気温に基づいて推定される温度であり前記インタークーラに導入されるガスの温度であるインタークーラ入口温度と、前記外気温と、前記インタークーラ通過後ガス温度とに基づいてインタークーラ効率を算出する効率算出部と、
前記吸気温と前記外気温との差分である吸気外気温度差分値を算出する温度差分値算出部と、
前記吸気外気温度差分値及び前記インタークーラ効率に基づいて、前記インタークーラの効率低下、及び、前記外気温センサの特性異常を判定する異常判定部と、
を備え、
前記異常判定部は、
前記吸気外気温度差分値が温度差分閾値範囲以内であり、前記インタークーラ効率が正常効率閾値範囲より低い場合、前記インタークーラの効率が低下していると判定し、
前記吸気外気温度差分値が前記温度差分閾値範囲外であり、前記吸気温が前記外気温よりも低く、前記インタークーラ効率が100%を超えている場合、前記外気温センサに過剰側特性異常が生じていると判定し、
前記吸気外気温度差分値が前記温度差分閾値範囲外であり、前記吸気温が前記外気温よりも高く、前記インタークーラ効率が前記正常効率閾値範囲より低い場合、前記外気温センサに過少側特性異常が生じていると判定する、内燃機関システムの異常診断装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、
前記吸気外気温度差分値が前記温度差分閾値範囲以内であり、前記インタークーラ効率が0%以下である場合、前記インタークーラ通過後ガス温度センサに過剰側特性異常が生じていると判定し、
前記吸気外気温度差分値が前記温度差分閾値範囲以内であり、前記インタークーラ効率が100%を超えている場合、前記インタークーラ通過後ガス温度センサに過少側特性異常が生じていると判定する、請求項1に記載の内燃機関システムの異常診断装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、
前記吸気外気温度差分値が前記温度差分閾値範囲外であり、前記吸気温が前記外気温よりも高く、前記インタークーラ効率が前記正常効率閾値範囲以内である場合、前記吸気温センサに過剰側特性異常が生じていると判定し、
前記吸気外気温度差分値が前記温度差分閾値範囲外であり、前記吸気温が前記外気温よりも低く、前記インタークーラ効率が前記正常効率閾値範囲以内である場合、前記吸気温センサに過少側特性異常が生じていると判定する、請求項1又は2に記載の内燃機関システムの異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関システムの異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、ターボチャージャ付のディーゼルエンジンシステムが知られている。このシステムでは、ターボチャージャによって加圧された空気がインタークーラによって冷やされてエンジンに供給される。
【0003】
上述したようなシステムにおいては、インタークーラ効率(冷却効率)を求めることが行われている。このインタークーラ効率は、外気温センサによって検出された外気温等の各種センサの検出値に基づいて算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-245600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、インタークーラ効率の低下を精度よく判定するためには、外気温センサに特性異常が生じておらず外気温を正しく検出できている必要がある。そこで、本発明は、インタークーラの効率低下、及び外気温センサの特性異常の有無を判定することが可能な内燃機関システムの異常診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関と、ガスを加圧して内燃機関に供給するターボチャージャと、ターボチャージャから内燃機関に供給されるガスを冷却するインタークーラとを備える内燃機関システムの異常を診断する異常診断装置であって、ターボチャージャのコンプレッサに導入されるガスの温度である吸気温を検出する吸気温センサと、外気温を検出する外気温センサと、インタークーラを通過して内燃機関に供給されるガスの温度であるインタークーラ通過後ガス温度を検出するインタークーラ通過後ガス温度センサと、吸気温に基づいて推定される温度でありインタークーラに導入されるガスの温度であるインタークーラ入口温度と、外気温と、インタークーラ通過後ガス温度とに基づいてインタークーラ効率を算出する効率算出部と、吸気温と外気温との差分である吸気外気温度差分値を算出する温度差分値算出部と、吸気外気温度差分値及びインタークーラ効率に基づいて、インタークーラの効率低下、及び、外気温センサの特性異常を判定する異常判定部と、を備え、異常判定部は、吸気外気温度差分値が温度差分閾値範囲以内であり、インタークーラ効率が正常効率閾値範囲より低い場合、インタークーラの効率が低下していると判定し、吸気外気温度差分値が温度差分閾値範囲外であり、吸気温が外気温よりも低く、インタークーラ効率が100%を超えている場合、外気温センサに過剰側特性異常が生じていると判定し、吸気外気温度差分値が温度差分閾値範囲外であり、吸気温が外気温よりも高く、インタークーラ効率が正常効率閾値範囲より低い場合、外気温センサに過少側特性異常が生じていると判定する。
【0007】
この内燃機関システムの異常診断装置は、吸気外気温度差分値及びインタークーラ効率に基づいて、インタークーラの効率低下を判定でき、更に、インタークーラ効率を算出するために用いられる外気温を検出する外気温センサの特性異常を判定できる。すなわち、内燃機関システムの異常診断装置は、外気温センサの特性異常を判定できるため、インタークーラの効率低下の判定結果の信頼性を向上させることができる。このように、内燃機関システムの異常診断装置は、インタークーラの効率低下、及び外気温センサの特性異常の有無を判定することができる。
【0008】
内燃機関システムの異常診断装置において、異常判定部は、吸気外気温度差分値が温度差分閾値範囲以内であり、インタークーラ効率が0%以下である場合、インタークーラ通過後ガス温度センサに過剰側特性異常が生じていると判定し、吸気外気温度差分値が温度差分閾値範囲以内であり、インタークーラ効率が100%を超えている場合、インタークーラ通過後ガス温度センサに過少側特性異常が生じていると判定してもよい。このように、内燃機関システムの異常診断装置では、インタークーラ効率を算出するために用いられるインタークーラ通過後ガス温度を検出するインタークーラ通過後ガス温度センサの特性異常を判定できる。これにより、内燃機関システムの異常診断装置は、インタークーラ通過後ガス温度センサの特性異常に起因する誤判定を抑制して、インタークーラの効率低下をより精度よく判定できる。
【0009】
内燃機関システムの異常診断装置において、異常判定部は、吸気外気温度差分値が温度差分閾値範囲外であり、吸気温が外気温よりも高く、インタークーラ効率が正常効率閾値範囲以内である場合、吸気温センサに過剰側特性異常が生じていると判定し、吸気外気温度差分値が温度差分閾値範囲外であり、吸気温が外気温よりも低く、インタークーラ効率が正常効率閾値範囲以内である場合、吸気温センサに過少側特性異常が生じていると判定してもよい。上述したように、インタークーラ入口温度は、吸気温センサで検出された吸気温に基づいて推定される。異常診断装置は、推定されたインタークーラ入口温度等に基づいてインタークーラ効率を算出する。ここで、異常診断装置は、吸気外気温度差分値及びインタークーラ効率に基づいて、インタークーラ入口温度を推定するために用いられる吸気温を検出する吸気温センサの特性異常を判定することができる。これにより、内燃機関システムの異常診断装置は、吸気温センサの特性異常に起因する誤判定を抑制して、インタークーラの効率低下をより精度よく判定できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インタークーラの効率低下、及び外気温センサの特性異常の有無を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る異常診断装置及びエンジンシステムの概略構成を示す図である。
図2図2は、異常診断装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、センサの特性異常を示す図である。
図4図4は、エンジンシステム等に生じる種々の異常内容と吸気外気温度差分値等との対応関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1に示されるように、異常診断装置10は、内燃機関としてのディーゼルエンジン2を備えるエンジンシステム(内燃機関システム)1の異常等を診断する。エンジンシステム1は、例えばトラック等の車両に搭載されている。
【0014】
より詳細には、エンジンシステム1は、ディーゼルエンジン2、ターボチャージャ3、及びインタークーラ4を備えている。ターボチャージャ3は、ディーゼルエンジン2から排出された排気ガスによってコンプレッサ3aを作動させ、ディーゼルエンジン2に供給するガス(空気)を加圧する。ターボチャージャ3によって加圧されたガスは、インタークーラ4によって冷却されてディーゼルエンジン2に供給される。インタークーラ4は、ターボチャージャ3によって加圧されたガスを外気によって冷却する。
【0015】
異常診断装置10は、エンジンシステム1の異常等を診断する。異常診断装置10は、異常診断ユニット5、吸気温センサS1、外気温センサS2、インタークーラ通過後ガス温度センサS3、ブースト圧センサS4、及び大気圧センサS5を備えている。
【0016】
吸気温センサS1は、ターボチャージャ3のコンプレッサ3aの上流側において、コンプレッサ3aに導入されるガス(空気)の温度である吸気温を検出する。外気温センサS2は、ディーゼルエンジン2の周囲の外気温を検出する。インタークーラ通過後ガス温度センサS3は、インタークーラ4を通過してディーゼルエンジン2に供給されるガスの温度であるインタークーラ通過後ガス温度を検出する。すなわち、インタークーラ通過後ガス温度センサS3は、インタークーラ4によって冷やされたガスの温度を検出する。インタークーラ通過後ガス温度センサS3は、インタークーラ4とディーゼルエンジン2との間のガス流通経路のいずれの位置に設けられていてもよい。例えば、インタークーラ通過後ガス温度センサS3は、ディーゼルエンジン2のインテークマニホールド部分に設けられていてもよい。
【0017】
ブースト圧センサS4は、ターボチャージャ3によって加圧されてディーゼルエンジン2に供給されるガスのブースト圧を検出する。例えば、ブースト圧センサS4は、ディーゼルエンジン2のインテークマニホールド部分に設けられていてもよい。大気圧センサS5は、ディーゼルエンジン2の周囲の大気圧を検出する。
【0018】
異常診断ユニット5は、吸気温センサS1~大気圧センサS5の検出結果に基づいて、種々の異常の有無の判定等を行う。異常診断ユニット5は、例えば、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。異常診断ユニット5では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。
【0019】
図2に示されるように、異常診断ユニット5は、機能的には、効率算出部11、温度差分値算出部12、及び異常判定部13を備えている。
【0020】
効率算出部11は、外気温センサS2で検出された外気温と、インタークーラ通過後ガス温度センサS3で検出されたインタークーラ通過後ガス温度と、インタークーラ入口温度とに基づいてインタークーラ効率を算出する。インタークーラ入口温度とは、ターボチャージャ3からインタークーラ4に導入されるガスの温度である。
【0021】
インタークーラ入口温度は、吸気温センサS1で検出された吸気温に基づいて周知の方法によって推定することができる。例えば、効率算出部11は、インタークーラ入口温度を次の式(1)に基づいて算出することができる。ここでは、効率算出部11は、大気圧センサS5で検出された大気圧とブースト圧センサS4で検出されたブースト圧とを用いてコンプレッサ3aの圧力比を算出し、コンプレッサ3aによる圧縮(加圧)をポリトロープ圧縮とみなすことによって、吸気温センサS1で検出された吸気温からコンプレッサ3aの出口でのガス温度、すなわちインタークーラ入口温度を推定することができる。
【数1】

:インタークーラ入口温度=コンプレッサ出口でのガス温度
:吸気温センサで検出された吸気温=コンプレッサ入口でのガス温度
:ブースト圧センサで検出されたブースト圧=コンプレッサ出口での圧力
:大気圧センサで検出された大気圧=コンプレッサ入口での圧力
γ:ポリトロープ指数
【0022】
また、効率算出部11は、インタークーラ入口温度と、外気温と、インタークーラ通過後ガス温度とに基づいて、周知の方法によってインタークーラ効率を算出することができる。例えば、効率算出部11は、次の式(2)に基づいて、インタークーラ効率を算出することができる。
【数2】

η:インタークーラ効率
’:インタークーラ通過後ガス温度センサで検出されたインタークーラ通過後ガス温度
:外気温センサで検出された外気温
【0023】
温度差分値算出部12は、吸気温センサS1で検出された吸気温と外気温センサS2で検出された外気温との差分である吸気外気温度差分値Aを算出する。本実施形態において、温度差分値算出部12は、吸気外気温度差分値Aを次の式(3)に基づいて算出する。
吸気外気温度差分値A=吸気温-外気温 …(3)
【0024】
異常判定部13は、吸気外気温度差分値A及びインタークーラ効率ηに基づいて、インタークーラの効率低下、及び、外気温センサS2の特性異常を判定する。外気温センサS2の特性異常の判定とは、図3に示されるように、検出されたセンサ値が実際の値(実値)よりも過剰側にずれているか又は過少側にずれているかの判定である。以下で説明する他のセンサの特性異常の判定についても同様とする。
【0025】
より詳細には、異常判定部13は、図4に示されるように、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX以内であり、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BX以内である場合、エンジンシステム1等の各部は正常であると判定する。なお、温度差分閾値範囲AXの上限値及び下限値は、予め設定されている。また、正常効率閾値範囲BXの上限値及び下限値は、予め設定されている。例えば、正常効率閾値範囲BXの下限値は、0%より大きい値が設定され、正常効率閾値範囲BXの上限値は100%以下の値が設定される。
【0026】
また、異常判定部13は、インタークーラ4の効率の低下の有無を判定する。具体的には、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX以内であり、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BXよりも低い場合、インタークーラ4の効率が低下していると判定する。
【0027】
さらに、異常判定部13は、外気温センサS2の特性異常を判定する。具体的には、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX外であり、吸気温が外気温よりも低く、インタークーラ効率ηが100%を超えている場合、外気温センサS2に過剰側特性異常が生じていると判定する。すなわち、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX外であり、吸気外気温度差分値Aが負の値であり、インタークーラ効率ηが100%を超えている場合、外気温センサS2に過剰側特性異常が生じていると判定する。
【0028】
一方、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX外であり、吸気温が外気温よりも高く、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BXより低い場合、外気温センサS2に過少側特性異常が生じていると判定する。すなわち、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX外であり、吸気外気温度差分値Aが正の値であり、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BXより低い場合、外気温センサS2に過少側特性異常が生じていると判定する。
【0029】
このように、異常診断装置10は、吸気外気温度差分値A及びインタークーラ効率ηに基づいて、インタークーラ4の効率低下を判定でき、更に、インタークーラ効率を算出するために用いられる外気温を検出する外気温センサS2の特性異常を判定できる。すなわち、異常診断装置10は、外気温センサS2の特性異常を判定できるため、インタークーラ4の効率低下の判定結果の信頼性を向上させることができる。このように、異常診断装置10は、インタークーラ4の効率低下、及び外気温センサS2の特性異常の有無を判定することができる。
【0030】
また、異常判定部13は、インタークーラ通過後ガス温度センサS3の特性異常を判定することができる。具体的には、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX以内であり、インタークーラ効率ηが0%以下である場合、インタークーラ通過後ガス温度センサS3に過剰側特性異常が生じていると判定する。
【0031】
一方、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX以内であり、インタークーラ効率ηが100%を超えている場合、インタークーラ通過後ガス温度センサS3に過少側特性異常が生じていると判定する。
【0032】
このように、異常診断装置10は、吸気外気温度差分値A及びインタークーラ効率ηに基づいて、インタークーラ効率ηを算出するために用いられるインタークーラ通過後ガス温度を検出するインタークーラ通過後ガス温度センサS3の特性異常を判定できる。これにより、異常診断装置10は、インタークーラ通過後ガス温度センサS3の特性異常に起因する誤判定を抑制して、インタークーラ4の効率低下をより精度よく判定できる。
【0033】
また、異常判定部13は、吸気温センサS1の特性異常を判定することができる。具体的には、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX外であり、吸気温が外気温よりも高く、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BX以内である場合、吸気温センサS1に過剰側特性異常が生じていると判定する。すなわち、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX外であり、吸気外気温度差分値Aが正の値であり、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BX以内である場合、吸気温センサS1に過剰側特性異常が生じていると判定する。
【0034】
一方、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX外であり、吸気温が外気温よりも低く、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BX以内である場合、吸気温センサS1に過少側特性異常が生じていると判定する。すなわち、異常判定部13は、吸気外気温度差分値Aが温度差分閾値範囲AX外であり、吸気外気温度差分値Aが負の値であり、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BX以内である場合、吸気温センサS1に過少側特性異常が生じていると判定する。
【0035】
上述したように、インタークーラ入口温度Tは、吸気温センサS1で検出された吸気温Tに基づいて推定される。異常診断装置10は、推定されたインタークーラ入口温度T等に基づいてインタークーラ効率ηを算出する。ここでは、異常診断装置10は、吸気外気温度差分値A及びインタークーラ効率ηに基づいて、インタークーラ入口温度Tを推定するために用いられる吸気温を検出する吸気温センサS1の特性異常を判定することができる。これにより、異常診断装置10は、吸気温センサS1の特性異常に起因する誤判定を抑制して、インタークーラ4の効率低下をより精度よく判定できる。
【0036】
ここで、例えば、インタークーラ効率が100%を超えるような現象は、インタークーラ4の出口でのガス温度(インタークーラ通過後ガス温度)が外気温よりも冷やされた温度となるため、インタークーラ通過後ガス温度センサS3又は外気温センサS2の特性異常が疑われる。このため、異常診断装置10は、インタークーラ効率ηが100%を超える場合、吸気外気温度差分値Aに基づいて外気温センサS2又はインタークーラ通過後ガス温度センサS3の特性異常の有無を判定する。
【0037】
一方、例えば、インタークーラ効率が0%以下となるような現象は、インタークーラ4の出口でのガス温度(インタークーラ通過後ガス温度)と入口でのガス温度(インタークーラ入口温度T)とが逆転することとなり、インタークーラ4の出口でのガス温度を検出するインタークーラ通過後ガス温度センサS3の特性異常が疑われる。このため、異常診断装置10は、インタークーラ効率ηが0%以下の場合、吸気外気温度差分値Aに基づいてインタークーラ通過後ガス温度センサS3の特性異常の有無を判定する。
【0038】
また、インタークーラ効率が正常効率閾値範囲以内であっても、吸気温センサS1と外気温センサS2との差分(吸気外気温度差分値A)が大きい場合、吸気温センサS1の特性異常が疑われる。このため、異常診断装置10は、インタークーラ効率ηが正常効率閾値範囲BX以内の場合、吸気外気温度差分値Aに基づいて吸気温センサS1の特性異常の有無を判定する。
【0039】
なお、上述した式(1)に示されるように、インタークーラ入口温度Tの推定に吸気温Tが用いられているが、式(2)に示されるようにインタークーラ効率ηの計算時に分子と分母とのそれぞれに同じ値(T)が入るため、吸気温の影響が取り除かれている。
【0040】
以上のように異常診断装置10は、図4に示されるように、吸気外気温度差分値A及びインタークーラ効率ηを用いることによって、インタークーラ4の効率低下と、吸気温センサS1、外気温センサS2、及びインタークーラ通過後ガス温度センサS3の特性異常の有無とを精度よく判定することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、吸気外気温度差分値Aは、変形例として、「外気温-吸気温」によって算出されてもよい。この場合、図4に示される正差分及び負差分の正負をそれぞれ逆にして上述した判定を行えばよい。
【0042】
また、異常診断装置10は、上限値と下限値とを有する温度差分閾値範囲AXを用いたが、上限値と下限値とが同じであり温度差分閾値範囲AXの範囲が無い場合、すなわち、温度差分閾値範囲AXの値を0(ゼロ)として、上述した判定を行ってもよい。具体的には、異常診断装置10は、上述した差分値Aが温度差分閾値範囲AX以内であるか否かという判定条件に代えて、吸気温と外気温との差分値が0(差分が無い)であるか否かという判定条件を用いて上述した種々の判定を行ってもよい。これと同様に、異常診断装置10は、上限値と下限値とを有する正常効率閾値範囲BXに代えて、正常効率閾値範囲BXの値を0(ゼロ)として、上述した判定を行ってもよい。
【0043】
エンジンシステム1の構成は、図1に示される構成に限定されない。例えば、エンジンシステム1は、排気ガスの一部をEGR(排気再循環)ガスとして還流させるEGRユニットを備えていてもよい。
【0044】
また、エンジンシステム1は、内燃機関としてディーゼルエンジン2を備えていることに限定されない。例えば、エンジンシステム1は、ガソリンエンジン、ガスタービン等のディーゼルエンジン2以外の内燃機関を備えていてもよい。そして、異常診断装置10は、ディーゼルエンジン2以外の内燃機関を備えるエンジンシステム1の種々の異常の診断を行ってもよい。
【0045】
以上に記載された実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部が任意に組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…エンジンシステム(内燃機関システム)、2…ディーゼルエンジン(内燃機関)、3…ターボチャージャ、3a…コンプレッサ、4…インタークーラ、5…異常診断ユニット、10…異常診断装置、11…効率算出部、12…温度差分値算出部、13…異常判定部、S1…吸気温センサ、S2…外気温センサ、S3…インタークーラ通過後ガス温度センサ、S4…ブースト圧センサ、S5…大気圧センサ。
図1
図2
図3
図4