(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20230710BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230710BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20230710BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/209
H01M50/242
(21)【出願番号】P 2019217697
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083091
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141416
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】田口 佑介
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126430(JP,A)
【文献】特開2017-183071(JP,A)
【文献】特開2018-081790(JP,A)
【文献】特開2015-069768(JP,A)
【文献】特開2017-050164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/289 - 293
H01M 50/209
H01M 50/242
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル積層方向に並ぶ第1電池セルと第2電池セルとに挟まれる樹脂枠を有しており、
前記樹脂枠は、
前記第1電池セルに向けた第1凸部と前記第2電池セルに向けた第2凸部がセル積層直交方向に交互に繰り返す波状部と、
複数の前記第1凸部の一部から前記第1電池セルに向けて突出しており突出方向先端部で前記第1電池セルに当接する第1リブと、
複数の前記第2凸部の一部から前記第2電池セルに向けて突出しており突出方向先端部で前記第2電池セルに当接する第2リブと、
を有しており、
前記第1リブと前記第2リブは、前記第1、第2リブが設けられていないリブ無しの凸部を偶数個介在させて、前記セル積層直交方向に交互に設定されており、
前記リブ無しの凸部の数は、隣り合うそれぞれの前記第1リブと前記第2リブの間で同数である、組電池。
【請求項2】
前記第1リブと前記第2リブの剛性は、前記波状部の剛性に比べて大とされている、請求項1記載の組電池。
【請求項3】
前記第1電池セルおよび前記第2電池セルは、角型の電池セルであり、
前記樹脂枠は、前記第1電池セルと前記第2電池セルの間にあり前記第1電池セルの外周部と前記第2電池セルの外周部に当接する電池押さえ部を有しており、該電池押さえ部の剛性は、前記波状部の剛性に比べて大とされている、請求項1または請求項2記載の組電池。
【請求項4】
前記樹脂枠が前記第1、第2電池セルに挟まれていないとき、前記第1、第2リブは前記電池押さえ部よりも高く設定されており、前記樹脂枠が前記第1、第2電池セルに挟まれているとき、前記第1、第2リブと前記電池押さえ部はともに前記第1、第2電池セルに当接している、請求項3記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル積層方向に並ぶ第1電池セルと第2電池セルとに挟まれる樹脂枠を有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
セル積層方向に並ぶ第1電池セルと第2電池セルとに挟まれる組電池用の樹脂枠は、たとえば特許文献1(特開2009-277471号公報)に開示されている。特許文献1は、樹脂枠(電池ホルダ)の電池セルに接触する部分が、断面視で櫛歯状もしくは平面状となっている技術を開示している。
【0003】
しかし、特許文献1に開示の技術では、樹脂枠が中実(内部に空隙が設けられていない構造)になっており、樹脂枠には電池セルの膨張時に圧縮荷重がかかるようになっている。そのため、電池セルの膨張時にあっても、樹脂枠はほとんど変形せず、樹脂枠で電池セルの変形を吸収することは困難である。その結果、電池セル膨張時に樹脂枠から電池セルにかかる荷重(拘束荷重)の増加量が大きくなり、電池セルの適正な性能を維持することが困難になるおそれがある。
【0004】
上記特許文献1の問題を解消できる技術として、特許文献2(特開2017-183071号公報)に開示される技術がある。特許文献2は、樹脂枠(スペーサ)が断面視で第1~第6突部を有する波状となっている技術を開示している。この特許文献2に開示の技術によれば、電池セルの膨張時には、樹脂枠(第1~第6突部)が変形することで電池セルの膨張を吸収して樹脂枠から電池セルにかかる荷重の増加を抑えることができる。すなわち、特許文献1に存在する上記問題点(樹脂枠から電池セルにかかる荷重の増加量が大)を解消できる。
【0005】
しかし、特許文献2開示の技術には、つぎの問題点がある。
電池セルが膨張していないとき、第1~第6の全ての突部が電池セルに当たる構造にはなっていない。具体的には、電池セルが膨張していないとき、樹脂枠の第1~第4突部のみが電池セルに当たるようになっており、樹脂枠の第5、第6突部は電池セルに当たっていない。樹脂枠の第5、第6突部は、電池セルの膨張時にのみ電池セルに当たるようになっている。そのため、電池セルが膨張していないとき、樹脂枠と電池セルとの接触部が等ピッチにならず、樹脂枠から電池セルへの面圧バラつきが生じて局所的に電池セルが劣化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-277471号公報
【文献】特開2017-183071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電池セルの膨張時に樹脂枠から電池セルにかかる荷重の増加を抑制できること、樹脂枠から電池セルへの面圧バラつきが生じることを抑制できること、の少なくとも一方を達成できる、組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) セル積層方向に並ぶ第1電池セルと第2電池セルとに挟まれる樹脂枠を有しており、
前記樹脂枠は、
前記第1電池セルに向けた第1凸部と前記第2電池セルに向けた第2凸部がセル積層直交方向に交互に繰り返す波状部と、
複数の前記第1凸部の一部から前記第1電池セルに向けて突出しており突出方向先端部で前記第1電池セルに当接する第1リブと、
複数の前記第2凸部の一部から前記第2電池セルに向けて突出しており突出方向先端部で前記第2電池セルに当接する第2リブと、
を有しており、
前記第1リブと前記第2リブは、前記第1、第2リブが設けられていないリブ無しの凸部を偶数個介在させて、前記セル積層直交方向に交互に設定されており、
前記リブ無しの凸部の数は、隣り合うそれぞれの前記第1リブと前記第2リブの間で同数である、組電池。
(2) 前記第1リブと前記第2リブの剛性は、前記波状部の剛性に比べて大とされている、(1)記載の組電池。
(3) 前記第1電池セルおよび前記第2電池セルは、角型の電池セルであり、
前記樹脂枠は、前記第1電池セルと前記第2電池セルの間にあり前記第1電池セルの外周部と前記第2電池セルの外周部に当接する電池押さえ部を有しており、該電池押さえ部の剛性は、前記波状部の剛性に比べて大とされている、(1)または(2)記載の組電池。
(4) 前記樹脂枠が前記第1、第2電池セルに挟まれていないとき、前記第1、第2リブは前記電池押さえ部よりも高く設定されており、前記樹脂枠が前記第1、第2電池セルに挟まれているとき、前記第1、第2リブと前記電池押さえ部はともに前記第1、第2電池セルに当接している、(3)記載の組電池。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)の組電池では、第1電池セルに向けた第1凸部と前記第2電池セルに向けた第2凸部がセル積層直交方向に交互に繰り返す波状部が設けられているため、波状部が曲げ弾性変形することによる弾性力(復元力)により、樹脂枠から第1、第2電池セルにセル積層方向に荷重(拘束荷重)を付与することができる。また、第1電池セルおよび/または第2電池セルの膨張時には、波状部がさらに曲げ弾性変形することで、第1電池セルおよび/または第2電池セルの膨張を吸収できる。ここで、一般的に曲げ変形に要する荷重は圧縮変形に要する荷重よりも小さい。そのため、第1電池セルおよび/または第2電池セルが膨張しても樹脂枠から第1電池セルおよび第2電池セルにかかる荷重の増加を抑制できる。
【0010】
また、第1リブと第2リブがセル積層直交方向に交互に設定されているため、樹脂枠から第1電池セルと第2電池セルの両方にかかる荷重を等しく(ほぼ等しくを含む)することができる。さらに、第1リブと第2リブとの間に介在されるリブ無し凸部の数が、隣り合うそれぞれの第1リブと第2リブの間で同数であるため、隣り合うそれぞれの第1リブと第2のリブとの間の距離(リブ間ピッチ)を等ピッチ(ほぼ等ピッチを含む)にすることができる。よって、樹脂枠と第1、第2電池セルとの接触部が等ピッチになり、樹脂枠から第1、第2電池セルへの面圧バラつきが生じることを抑制できる。
【0011】
上記(2)の組電池では、第1リブと第2リブの剛性が、波状部の剛性に比べて大とされているため、波状部ではなく第1、第2リブが変形してしまうことを抑制できる。その結果、波状部による曲げ弾性変形力で第1、第2電池セルを拘束でき、所定の拘束荷重で精度よく第1、第2電池セルを拘束できる。
【0012】
上記(3)の組電池では、つぎの効果を得ることができる。
角型の電池セルにあっては、電池セルの膨張率は、セル積層方向から見たときの電池セルの中央部が最も大きく、電池セルの外周部にいくにしたがって小さくなり、電池セルの外周部でゼロまたはほぼゼロである。ここで本発明では、樹脂枠が第1、第2電池セルのそれぞれの外周部に当接する電池押さえ部を有している。そのため、第1、第2電池セルの膨張時であっても、第1、第2電池セルの外周部と電池押さえ部は膨張の影響が無いかあっても無視できる程度であり、第1、第2電池セルの外周部と電池押さえ部のセル積層方向の位置がズレることが抑制される。よって、第1電池セルおよび/または第2電池セルの膨張時に第1、第2電池セルのそれぞれの端子位置がセル積層方向にズレることを抑制できる。
【0013】
上記(4)の組電池では、樹脂枠が第1、第2電池セルに挟まれていないとき、第1、第2リブは電池押さえ部よりも高く設定されており、樹脂枠が第1、第2電池セルに挟まれているとき、第1、第2リブと電池押さえ部はともに第1、第2電池セルに当接しているため、樹脂枠が第1、第2電池セルに挟まれたときに、第1、第2凸部を確実に曲げ弾性変形させることができ、この弾性変形による拘束荷重を第1、第2電池セルに付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明実施例の組電池の部品構成を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明実施例の組電池における樹脂枠と電池セルを、セル積層方向から見たときの正面図である。
【
図7】本発明実施例の組電池における波状部の部分断面図である。(a)は、電池セルが膨張していないときを示す。(b)は、電池セルが膨張したときを示す。
【
図8】本発明実施例の組電池の一部と、本発明実施例とは異なる比較例の組電池の一部を示す、模式図である。(a1)は、本発明実施例の組電池の一部であって、電池セルが膨張していないときを示す。(a2)は、本発明実施例の組電池の一部であって、電池セルが膨張したときを示す。(b1)は、比較例の組電池の一部であって、電池セルが膨張していないときを示す。(b2)は、比較例の組電池の一部であって、電池セルが膨張したときを示す。
【
図9】本発明実施例の組電池における樹脂枠の、第1、第2電池セルに挟まれる前の自由状態にあるときの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明実施例の組電池を説明する。
【0016】
図1は、本発明実施例の組電池10の部品構成斜視図である。本発明実施例の組電池10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と充放電可能な2次電池とを動力源とするハイブリッド自動車や、外部充電が可能なプラグインハイブリッド自動車、電気自動車等に搭載される。
【0017】
組電池10は、複数の電池セル20と、複数の樹脂枠30と、を有しており、電池セル20と樹脂枠30を交互にセル積層方向D1に積層させた構造を有している。
【0018】
電池セル20と樹脂枠30の積層体のセル積層方向D1の両外側には、それぞれ、組電池10の構成部材であるエンドプレート40が配置されており、該エンドプレート40によって電池セル20と樹脂枠30の積層体は両外側から挟まれている。それぞれのエンドプレート40同士は、図示略の拘束バンドにて繋がれており、これにより電池セル20と樹脂枠30の積層体はセル積層方向D1に拘束荷重が掛けられた状態にある。
【0019】
電池セル20は、リチウムイオン電池である。電池セル20は、セル積層方向D1から見たときに(電池セル20の正面視で)略矩形状を有する角型の電池セルである。電池セル20は、アルミニウム製のセルケース21およびセルケース21の開口を塞ぐ蓋部22を有する。セルケース21は、矩形の開口部を有する扁平直方箱体であり、内部に電解液と共に電極体が収容されている。蓋部22は矩形板状であり、セルケース21の開口部を閉塞するようにしてセルケース21に溶接されている。蓋部22には、セルケース21の内部で電極体の正極や負極に電気的に接続される2つの端子23,24が貫通して支持されている。
【0020】
図3に示すように、樹脂枠30は、セル積層方向D1に並んでおり互いに隣り合う2つの電池セル20,20(以下、第1電池セル20a、第2電池セル20bという)の間に挟まれて配置されている。樹脂枠30は、絶縁性材料から形成されており第1、第2電池セル20a、20b間を電気的に絶縁している。樹脂枠30は型成形品であり一部品構成である。樹脂枠30は、樹脂製であり、たとえばポリプロピレン樹脂製である。
【0021】
樹脂枠30は、外枠部31と、波状部32と、第1リブ33と、第2リブ34と、連結部35と、電池押さえ部36と、を有する。
【0022】
外枠部31は、セル積層方向D1から見たときに、第1、第2電池セル20a、20bよりも外側にある。外枠部31は、第1、第2電池セル20a、20bにおけるそれぞれの、セルケース21の下底部21aおよび左右側面の少なくとも一部と、蓋部22の少なくとも一部と、を覆うようにして設けられている。
【0023】
波状部32は、セル積層方向D1から見たときに、第1、第2電池セル20a、20bの内側にある。波状部32は、セル積層方向D1から見たときに、第1、第2電池セル20a、20bの内部にある電極体が接触するセルケース21部分の全域またはほぼ全域にわたって設けられている。
【0024】
図4に示すように、波状部32は、第1電池セル20aに向けた第1凸部32aと第2電池セル20bに向けた第2凸部32bがセル積層直交方向D2に交互に繰り返す滑らかな波状の断面形状を有する部分である。セル積層直交方向D2は、セル積層方向D1と直交する方向である。波状部32の板厚は一定または略一定とされておりセル積層方向D1から荷重が加わった際に比較的容易に曲げ弾性変形できる程度の厚みとされている。波状部32は、第1、第2電池セル20a、20bの膨張収縮にかかわらず、第1、第2電池セル20a、20bに直接には当接しておらず、第1、第2リブ33,34を介してのみ第1、第2電池セル20a、20bに当接している。
【0025】
第1リブ33は、複数の第1凸部32aの一部からセル積層方向D1に第1電池セル20aに向けて突出しており突出方向先端部で第1電池セル20aに当接している。第1リブ33は、成形時の型抜きを可能にするために、突出方向先端にいくにつれて先細る形状となっている。第1リブ33は、突出方向先端部で第1電池セル20aに面接触している。第1リブ33は、波状部32に比べて厚肉であり内部に空隙が設けられていない中実のブロック状となっており、波状部32に比べて高剛性となっている。
【0026】
第2リブ34は、複数の第2凸部32bの一部からセル積層方向D1に第2電池セル20bに向けて突出しており突出方向先端部で第2電池セル20bに当接している。第2リブ34の波状部32からの突出方向は、第1リブ33の波状部32からの突出方向と反対方向となっている。第2リブ34は、成形時の型抜きを可能にするために、突出方向先端にいくにつれて先細る形状となっている。第2リブ34は、突出方向先端部で第2電池セル20bに面接触している。第2リブ34は、第1リブ33と向きが反対とされた同形状となっており、波状部32に比べて厚肉であり内部に空隙が設けられていない中実のブロック状となっており、波状部32に比べて高剛性となっている。
【0027】
第1リブ33と第2リブ34は、第1、第2凸部32a、32bのうち第1、第2リブ33,34のいずれも設けられていないリブ無しの凸部32cを偶数個介在させて、セル積層直交方向D2に交互に設定されている。リブ無し凸部32cの数は、隣り合うそれぞれの第1リブ33と第2リブ34の間で同数である。
【0028】
隣り合うそれぞれの第1、第2リブ33,34の間にあるリブ無し凸部32cの数は、前述したように偶数個であるが、自然数のうち最小の偶数である2個であることが望ましい(図示例では2個の場合を示している)。これは、第1リブ33と第2リブ34との間に介在するリブ無し凸部32cの数が4個以上の偶数個である場合に比べて、第1リブ33と第2リブ34との間の距離(リブ間ピッチP)を小さくでき、第1、第2リブ33、34と第1、第2電池セル20a、20bとの接触面積を増加させることができ、その結果、樹脂枠30から電池セル20にかかる荷重を分散させることができるからである。
【0029】
図5、
図6に示すように、連結部35は、外枠部31と波状部32とを連結する部分である。連結部35は、セル積層直交方向D2に延びている。
【0030】
電池押さえ部36は、連結部35に設けられている。電池押さえ部36は、セル積層方向D1から見たときに、少なくとも一部が第1、第2電池セル20a、20bの内側にある。すなわち、電池押さえ部36は、少なくとも一部が第1、第2電池セル20a、20bの間にある。
【0031】
電池押さえ部36は、第1、第2電池セル20a、20bの充放電時など第1、第2電池セル20a、20bが膨張収縮する際に、形状変化が無いかほとんど無いそれぞれの電池セル20a、20b部分に当接している。この、形状変化が無いかほとんど無いそれぞれの電池セル20a,20b部分は、セル積層方向D1から見たときにおける、第1、第2電池セル20a、20bのそれぞれの外周部20a1、20b1である。外周部20a1,20b1は、電池セル20a、20bの角部(直角形状でもR形状でもよい)やその近傍などである。電池押さえ部36は、第1、第2電池セル20a,20bのそれぞれの外周部20a1,20b1の全周にわたって連続して当接していてもよく、第1、第2電池セル20a、20bのそれぞれの四隅のみに当接していてもよく、第1、第2電池セル20a、20bのそれぞれの下底部21aおよび蓋部22に沿う位置(上縁および下縁)のみに当接していてもよい。
【0032】
電池押さえ部36は、スペーサとしての働きを有する。電池押さえ部36は、波状部32に比べて厚肉であり内部に空隙が設けられていない中実のブロック状となっており、波状部32に比べて高剛性となっている。電池押さえ部36は、セル積層方向D1の両端部に配置されるエンドプレート40同士が図示略の拘束バンドにて繋がれた時(スタック時)の初期荷重で、第1、第2電池セル20a、20bのセル積層方向D1位置を規制(固定)している。
【0033】
第1、第2リブ33,34と電池押さえ部36がともに、波状部32に比べて高剛性となっているため、第1電池セル20aおよび/または第2電池20bの膨張収縮時には、波状部32が主に変形し、第1、第2リブ33,34および電池押さえ部36は変形しないか変形しても無視できる程度となっている。
【0034】
本発明実施例の比較例を示す
図8(b1)、(b2)に示すように、樹脂枠30に電池押さえ部36が設けられていない場合、電池セル20が膨張すると(図中膨張セルを符号20-1で示す)、膨張セル20-1によりその両側にある樹脂枠30-1が押されその外側にある隣接セル20-2がセル積層方向D1に押されて位置ズレするおそれがある。しかし、本発明実施例を示す
図8(a1),(a2)に示すように、樹脂枠30に電池押さえ部36が設けられていると、膨張セル20-1の膨張がその両側にある樹脂枠30-1の波状部32で吸収されるだけであり、膨張セル20-1及びその両側にある隣接セル20-2のセル積層方向D1の位置が変わることを抑制できる。
【0035】
図9に示すように、樹脂枠30が第1、第2電池セル20a、20bに挟まれておらず自由状態にあるとき、すなわち、波状部32が曲げ弾性変形しておらず自由状態にあるとき、電池押さえ部36が波状部32よりも高く設定されており(
図9におけるH1)、第1、第2リブ33,34が電池押さえ部36よりも高く設定されている(
図9におけるH2)。すなわち、樹脂枠30(波状部32)が自由状態にあるとき、樹脂枠30の面直方向(セル積層方向D1、
図9における左右方向)への突出量は、波状部32よりも電池押さえ部36が大となっており、電池押さえ部36よりも第1、第2リブ33,34が大となっている。
【0036】
一方、
図3に示すように、樹脂枠30が第1、第2電池セル20a、20bに挟まれているとき、波状部32は曲げ弾性変形しており、第1、第2リブ33,34と電池押さえ部36は、ともに同じ高さにあり第1、第2電池セル20a、20bに当接している。
【0037】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
(A)第1電池セル20aに向けた第1凸部32aと第2電池セル20bに向けた第2凸部32bがセル積層直交方向D2に交互に繰り返す波状部32が設けられているため、波状部32が曲げ弾性変形することによる弾性力(復元力)により、樹脂枠30から第1、第2電池セル20a、20bにセル積層方向D1に荷重(拘束荷重)を付与することができる。また、第1電池セル20aおよび/または第2電池セル20bの膨張時には、波状部32がさらに曲げ弾性変形することで、第1電池セル20aおよび/または第2の電池20bの膨張を吸収できる。ここで、一般的に曲げ変形に要する荷重は圧縮変形に要する荷重よりも小さい。そのため、第1電池セル20aおよび/または第2電池セル20bが膨張しても樹脂枠30から第1電池セル20aおよび第2電池セル20bにかかる荷重の増加を抑制できる。
【0038】
(B)第1リブ33と第2リブ34がセル積層直交方向D2に交互に設定されているため、樹脂枠30から第1電池セル20aと第2電池セル20bの両方にかかる荷重を等しく(ほぼ等しくを含む)することができる。さらに、第1リブ33と第2リブ34との間に介在されるリブ無し凸部32cの数が、隣り合うそれぞれの第1リブ33と第2リブ34の間で同数であるため、隣り合うそれぞれの第1リブ33と第2のリブ34との間の距離(リブ間ピッチP)を等ピッチ(ほぼ等ピッチを含む)にすることができる。よって、樹脂枠30と第1、第2電池セル20a、20bとの接触部がセル積層直交方向D2で等ピッチになり、樹脂枠30から第1、第2電池セル20a、20bへの面圧バラつきが生じることを抑制できる。
【0039】
(C)
図7の(a)、(b)に示すように、第1、第2リブ33,34の間にリブ無し凸部32cが偶数個存在しているため、第1電池セル20aおよび/または第2電池セル20bの膨張を、リブ無し凸部32cの各曲率(曲げ形状)が変わることで、第1リブ33と第2リブ34とのリブ間ピッチPをほとんど変えることなく吸収できる。よって、リブ間ピッチPが変わり樹脂枠30自体のセル積層直交方向D2の全長が変わってしまうことを抑制できる。
【0040】
(D)第1リブ33と第2リブ34の剛性が、波状部32の剛性に比べて大とされているため、波状部32ではなく第1、第2リブ33,34が変形してしまうことを抑制できる。その結果、波状部32による曲げ弾性変形力で第1、第2電池セル20a、20bを拘束でき、所定の拘束荷重で精度よく第1、第2電池セル20a、20bを拘束できる。
【0041】
(E)角型の電池セルにあっては、電池セルの膨張率は、セル積層方向から見たときの電池セルの中央部が最も大きく、電池セルの外周部にいくにしたがって小さくなり、電池セルの外周部でゼロまたはほぼゼロである。ここで本発明実施例では、樹脂枠30が第1、第2電池セル20a、20bのそれぞれの外周部20a1,20b1に当接する電池押さえ部36を有している。そのため、第1、第2電池セルの膨張時であっても、第1、第2電池セル20a、20bの外周部20a1,20b1と電池押さえ部36は膨張の影響が無いかあっても無視できる程度であり、第1、第2電池セル20a、20bの外周部20a1,20b1と電池押さえ部36のセル積層方向D1の位置がズレることが抑制される。よって、第1電池セル20aおよび/または第2電池セル20bの膨張時に第1、第2電池セル20a、20bのそれぞれの端子23,24位置がセル積層方向D1にズレることを抑制できる。
【0042】
(F)樹脂枠30が第1、第2電池セル20a、20bに挟まれていないとき、第1、第2リブ33,34は電池押さえ部36よりも高く設定されており、樹脂枠30が第1、第2電池セル20a、20bに挟まれているとき、第1、第2リブ33,34と電池押さえ部36はともに第1、第2電池セル20a、20bに当接しているため、樹脂枠30が第1、第2電池セル20a、20bに挟まれたときに、第1、第2凸部32a、32bを確実に曲げ弾性変形させることができ、この弾性変形による拘束荷重を第1、第2電池セル20a、20bに付与することができる。
【0043】
本発明実施例では、樹脂枠30がポリプロピレン樹脂製である場合を説明したが、波状部32のみ、または波状部32と第1、第2リブ33,34は、エラストマや天然ゴム、シリコーンゴム等の、弾性限度が高く、弾性率の低い素材で構成されていてはもよい。なお、これら低弾性率の材料を使用する際、樹脂枠30は、波状部32と第1、第2リブ33,34のみ低弾性率の材料にし、連結部35、電池押さえ部36および外枠部31をより高弾性率の材料とする2色成形で作製されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 組電池
20 電池セル
20a 第1電池セル
20a1 第1電池セルの外周部
20b 第2電池セル
20b1 第2電池セルの外周部
21 セルケース
21a 下底部
22 蓋部
23,24 端子
30 樹脂枠
31 外枠部
32 波状部
32a 第1凸部
32b 第2凸部
32c リブ無し凸部
33 第1リブ
34 第2リブ
35 連結部
36 電池押さえ部
40 エンドプレート
D1 セル積層方向
D2 セル積層直交方向