(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】燃料電池用接合セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0276 20160101AFI20230710BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20230710BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20230710BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20230710BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20230710BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/0206
H01M8/0247
H01M8/0267
H01M8/2483
(21)【出願番号】P 2019231102
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健斗
(72)【発明者】
【氏名】石田 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】布川 和男
(72)【発明者】
【氏名】儀賀 章仁
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535915(JP,A)
【文献】特開2014-093212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属セパレータが接合された燃料電池用接合セパレータであって、
互いに反対方向に突出する一対のシール用ビード部で構成されたビードシール部と、
前記ビードシール部の内部に配置された弾性体と、
セパレータの厚さ方向に貫通して形成され反応ガス又は冷媒が流通する複数の第1連通孔と、を有し、
前記ビードシール部は、セパレータの外周縁に沿うように形成されるとともに前記第1連通孔の形状に沿うように形成され、
前記弾性体は、
前記ビードシール部の初期ビード高さが他に比べて低い位置において当該ビードシール部内に所定の長さで配設されていることを特徴とする燃料電池用接合セパレータ。
【請求項2】
一対の金属セパレータが接合された燃料電池用接合セパレータであって、
互いに反対方向に突出する一対のシール用ビード部で構成されたビードシール部と、
前記ビードシール部の内部に配置された弾性体と、
セパレータの厚さ方向に貫通して形成され反応ガス又は冷媒が流通する複数の第1連通孔と、を有し、
前記ビードシール部は、セパレータの外周縁に沿うように形成されるとともに前記第1連通孔の形状に沿うように形成され、
前記弾性体は、前記ビードシール部内において所定の長さで配設されて
おり、
前記セパレータの厚さ方向に貫通して形成され、空気抜き用又は冷媒ドレン用に設けられた第2連通孔を有し、
前記第2連通孔の周囲に形成されたビードシール部内において所定の長さで前記弾性体が配設されていることを特徴とする燃料電池用接合セパレータ。
【請求項3】
積層方向に圧縮荷重が付与されていない状態において、前記弾性体の断面形状が円形状を呈することを特徴とする請求項
1又は請求項2に記載の燃料電池用接合セパレータ。
【請求項4】
積層方向に圧縮荷重が付与されていない状態において、前記第2連通孔の周囲に形成された前記ビードシール部内に配設された前記弾性体の断面形状は、楕円形状又は長丸形状を呈することを特徴とする請求項
2に記載の燃料電池用接合セパレータ。
【請求項5】
前記ビードシール部に並設されたストッパー部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の燃料電池用接合セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用接合セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、接合セパレータを備えた燃料電池セルが開示されている。
燃料電池セルは、電解質膜・電極構造体と、電解質膜・電極構造体を挟む一対の接合セパレータと、を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に関連する接合セパレータの一例を示す断面図である。接合セパレータ120は、
図6に示すように、第1金属セパレータ101と、第2金属セパレータ102とを接合して形成されている。第1金属セパレータ101および第2金属セパレータ102は、凸状を呈するシール用ビード部111を備えている。第1金属セパレータ101と第2金属セパレータ102とは、シール用ビード部111が突出する側の面とは反対側の面同士が接合されている。シール用ビード部111の先端には、シール部材113が設けられている。
【0004】
接合セパレータ120のうち、シール用ビード部111,111でビードシール部121が形成されている。一対の接合セパレータ120,120は、対向するビードシール部121,121同士で電解質膜又は電解質膜外周の樹脂フィルムを挟持してシールすることにより、燃料ガス、酸化剤ガス等の反応ガスの漏洩を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビードシール部121は、凸状のシール用ビード部111の反力と、シール部材113の追従性によりシール性を確保している。しかしながら、シール用ビード部111の反力は、シール用ビード部111(ビードシール部121)の断面形状の誤差や、シールライン形状(ビードシール部121の平面形状)の影響により、箇所によるばらつきが生じる場合がある。ビードシール部121の反力にばらつきがある場合には、面圧がばらつき、シール性に影響がでるおそれがある。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために発明されたものであり、ビードシール部の面圧のばらつきを抑制し、シール性の均一化を図ることが可能な燃料電池用接合セパレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明は、一対の金属セパレータが接合された燃料電池用接合セパレータであって、互いに反対方向に突出する一対のシール用ビード部で構成されたビードシール部と、前記ビードシール部の内部に配置された弾性体と、セパレータの厚さ方向に貫通して形成され反応ガス又は冷媒が流通する複数の第1連通孔と、を有し、前記ビードシール部は、セパレータの外周縁に沿うように形成されるとともに前記第1連通孔の形状に沿うように形成され、前記弾性体は、前記ビードシール部内において所定の長さで配設されていることを特徴とする。
【0009】
かかる燃料電池用接合セパレータによれば、ビードシール部の内部に設けられた弾性体の反力により、低反力部の面圧が向上する。これにより、ビードシール部の箇所による面圧のばらつきを抑制することが可能となり、その結果、所望の面圧をビードシール部全周(全長)にわたって確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃料電池用接合セパレータによれば、ビードシール部の面圧のばらつきを抑制し、シール性の均一化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係る燃料電池セルの断面図である。
【
図2】実施例1に係る燃料電池用セパレータの組付け前の断面図である。
【
図3】燃料電池用接合セパレータの製造方法の弾性体配置工程を示す断面図である。
【
図4】実施例2に係る燃料電池用接合セパレータの平面図である。
【
図5A】実施例2に係る燃料電池用接合セパレータにおいて、第2連通孔の周囲に形成されたビードシール部の組付け前の断面図である。
【
図5B】実施例2に係る燃料電池用接合セパレータにおいて、第2連通孔の周囲に形成されたビードシール部に圧縮荷重が付与された後の断面図である。
【
図6】特許文献1に関連する接合セパレータの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態に係る燃料電池用接合セパレータおよびその製造方法について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、燃料電池セル1は、電解質膜・電極構造体2と、電解質膜・電極構造体2を挟む一対の燃料電池用接合セパレータ3,3と、を備えている。
【0013】
燃料電池用接合セパレータ3は、互いに反対方向に突出する一対の板厚方向の圧縮荷重により弾性変形するシール用ビード部31,31で構成されたビードシール部41と、ビードシール部41の内部に配置された弾性体4と、を有する。
【0014】
本実施形態に係る燃料電池用接合セパレータの製造方法では、第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22とを、シール用ビード部31が突出する側の面とは反対側の面同士を突き合わせつつ、一対のシール用ビード部31の間に弾性体4を配置した状態で、第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22とを接合して燃料電池用接合セパレータ3を形成する。これにより、シール用ビード部31同士を接合することにより形成されたビードシール部41内の弾性体4の反力により低反力部の面圧が向上し、所望の面圧を確保することが可能となる。以下、実施例について詳細に説明する。
【0015】
[実施例1]
燃料電池セル1は、アノード側より供給される水素(燃料ガス)と、カソード側より供給される酸素(酸化剤ガス)との化学反応により発電する部材である。燃料電池スタックは、複数個の燃料電池セル1を並設させ、燃料電池セル1の厚さ方向に所定の圧縮荷重を付与したものである。
図1では、所定の圧縮荷重を付与した状態の燃料電池セル1を描画している。
【0016】
電解質膜・電極構造体(MEA:Membrane Electrode Assembly)2は、電解質膜11と、電極触媒層12,12と、ガス拡散層13,13とを含んで構成されている。電解質膜11は、ガス拡散層13よりも外側に張り出している。なお、ガス拡散層13よりも外側に張り出す部分は、樹脂フィルム(樹脂枠部材)である場合もある。
【0017】
燃料電池用接合セパレータ3は、電解質膜・電極構造体2の一方側(
図1では下側)および他方側(
図1では上側)にそれぞれ配置される板状部材である。電解質膜・電極構造体2を上下から挟む一対の燃料電池用接合セパレータ3,3は同じ形状・構成になっている場合が多い。
【0018】
燃料電池用接合セパレータ3は、シール領域R1を形成するビードシール部41と、ビードシール部41に並設された複数のストッパー部42とを有する。ストッパー部42は、スタックされた状態で外乱(温度変化や衝突等)が発生した際にビードシール部41が予め設定された最大圧縮量を超えて変形しないように支持する(外乱による荷重を受ける)部位である。
【0019】
ビードシール部41は、電解質膜11に向けて突出しており、例えば、無端状態となるように燃料電池セル1の外周縁の全周に亘って形成されている。ビードシール部41は、本実施例では1つであるが複数設けてもよい。ビードシール部41の内部には弾性体4が設けられている。また、ビードシール部41の先端には、シール部材5が設けられている。
【0020】
弾性体4は、ビードシール部41の内部において、延長方向に断続的又は連続的に設置されている。弾性体4は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなる直径(線径)1mm程度の断面円形の部材である。弾性体4の線径は、ビードシール部41の圧縮後の空間高さ及び容積率等に応じて適宜決定すればよい。なお、弾性体4を構成する材料は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)に限定されるものではなく、例えば、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)等を用いることができる。
【0021】
シール部材5は、弾性材料で形成されており、本実施例では断面矩形のフラットガスケットである。シール部材5は、弾性を有する材料で形成すればよく、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)、ポリイソブチレン(PIB)、SIFEL(登録商標:信越化学工業株式会社)、樹脂等を用いることができる。シール部材5は、ビードシール部41の延長方向に連続して設置されている。
【0022】
ストッパー部42は、複数個形成されており、電解質膜11に向けて突出するとともに電解質膜11に圧縮荷重を受けることなく当接するか、若しくはわずかな隙間をあけて対向している。ストッパー部42は、ビードシール部41の延長方向に沿って、直線状又は曲線状に延設されている。
【0023】
シール領域R1は、一方(
図1において下側)の燃料電池用接合セパレータ3のビードシール部41と、他方(
図1において上側)の燃料電池用接合セパレータ3のビードシール部41とで電解質膜11(または樹脂枠)を挟持することにより形成されている。シール領域R1によって、燃料ガス、酸化剤ガス等の反応ガスの漏洩を防ぐことができる。
【0024】
また、燃料電池用接合セパレータ3のリブ部33,33で反応面・流路部43が形成されている。一方の燃料電池用接合セパレータ3の反応面・流路部43と、他方の燃料電池用接合セパレータ3の反応面・流路部43とで電解質膜・電極構造体2(ガス拡散層13,13)を挟持することにより、反応ガスが流通する反応領域が形成されている。
【0025】
次に、本実施例の燃料電池セル1の製造方法について説明する。燃料電池セル1の製造方法は、燃料電池用接合セパレータの製造方法を含んでおり、セパレータ成形工程と、弾性体配置工程と、接合セパレータ形成工程と、組付け工程と、圧縮工程とを行う。
【0026】
セパレータ成形工程は、第1金属セパレータ21および第2金属セパレータ22を成形する工程である。第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22は同じ外形形状になっている。セパレータ成形工程では、平板状の厚さ0.07~0.20mm程度の金属薄板(素材)をプレス成形することにより第1金属セパレータ21および第2金属セパレータ22を形成する。
【0027】
第1金属セパレータ21は、単一の凸状を呈するシール用ビード部31と、複数の凸状を呈するストッパー用ビード部32(本実施例ではシール用ビード部31を挟んで2つずつ)とを備えている(
図2参照)。シール用ビード部31およびストッパー用ビード部32はいずれもフルビード形状である。フルビード形状とは、ガスケットのシールビード構造において、同じ高さの平面部間に断面台形又は断面円弧形のビードを設けたものをいう。ストッパー用ビード部32の板厚方向の突出高さは、シール用ビード部31よりも小さくなっている。なお、シール用ビード部31およびストッパー用ビード部32の個数、配置はあくまで例示であって、適宜設定すればよい。
【0028】
弾性体配置工程は、一対のシール用ビード部31,31の間に弾性体4を配置する工程である。弾性体配置工程では、
図3に示すように、第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22とを、シール用ビード部31が突出する側の面とは反対側の面同士を突き合わせつつ、シール用ビード部31同士の間に断面円形の弾性体4を配置する。すなわち、弾性体4は、互いに反対方向に突出する一対のシール用ビード部31,31で構成されたビードシール部41の内部に配置する。
【0029】
接合セパレータ形成工程は、燃料電池用接合セパレータ3を形成する工程である。接合セパレータ形成工程では、
図2に示すように、シール用ビード部31同士の間に弾性体4を挟んだ状態で、第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22とを接合して燃料電池用接合セパレータ3を形成する。第1金属セパレータ21と第2金属セパレータ22とは外周及び第一連通孔(
図4の第1連通孔61参照)の周囲をロウ付け、かしめ、溶接等で一体化する。
【0030】
シール用ビード部31,31で構成されたビードシール部41は中空部を備えている。ビードシール部41の中空部には、弾性体4が配設されている。ビードシール部41の両端(図面において上面および下面)にはシール部材5,5をそれぞれ取り付ける。また、ストッパー用ビード部32,32で構成されたストッパー部42も中空部を備えている。
【0031】
組付け工程は、
図2に示すように、電解質膜・電極構造体2(電解質膜11)を、一対の燃料電池用接合セパレータ3,3で挟む工程である。
【0032】
圧縮工程は、組み付けられた燃料電池セル1を複数個並設させつつ、所定の圧縮荷重を付与して燃料電池スタック(燃料電池セル1)を形成する工程である(
図1参照)。ビードシール部41同士で所定の荷重で電解質膜11を挟み込むと、シール領域R1が形成される。ストッパー部42と電解質膜11とは圧縮荷重を受けることなく当接するか、わずかな隙間をあけて対向する。
図1に示すように、燃料電池セル1に圧縮荷重を付与することで、ビードシール部41が圧縮される。ビードシール部41の圧縮に伴い、弾性体4は、ビードシール部41の内面(少なくとも上下の面)に密着した状態で、略楕円形状に圧縮される。弾性体4の弾性率は、シール用ビード部31の弾性率よりも大きくなっている。圧縮された弾性体4は、ビードシール部41内において、ビード断面積の80~90%程度で充填されるのが望ましい。
【0033】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
本実施例の燃料電池用接合セパレータ3によれば、ビードシール部41内に設けられて、圧縮された弾性体4の反力により、低反力部の面圧が向上するため、ビードシール部41の箇所による面圧のばらつきを抑制することができる。
【0034】
また、ストッパー部42を有しているため、スタックされた状態で外乱が発生した際に、ビードシール部41が予め設定された最大圧縮量を超えて変形しないように支持することができる。これにより、ビードシール部41の面圧を安定させることができるため、所望のシール面圧を安定的に得ることができる。
【0035】
以上のように実施形態および実施例について説明したが、適宜設計変更が可能である。前記したストッパー部42は、電解質膜11を挟んで両側に配置されているが、片側のみに配置される領域があってもよいし、一列でもよい。
【0036】
[実施例2]
図4及び
図5A,5Bに記載された実施例2では、燃料電池用接合セパレータ3のうち、弾性体4,4Aの配設位置の一例について説明する。説明の便宜上、
図4における「上下」、「左右」は
図4の矢印に従う。
【0037】
図4に示すように、実施例2の燃料電池用接合セパレータ3は、複数のビードシール部41と、複数の弾性体4,4Aと、複数の第1連通孔61と、複数の第2連通孔65とを備えている。
【0038】
第1連通孔61は、セパレータの厚さ方向に貫通して形成され反応ガス又は冷媒が流通する孔である。第1連通孔61の形状は、本実施例では多角形状を呈するが、円形、楕円形等他の形状であってもよい。第1連通孔61の個数は特に制限されないが、本実施例では燃料電池用接合セパレータ3の左側に3つ(第1連通孔61A~61C)形成され、右側に3つ(第1連通孔61D~61F)形成されている。
【0039】
例えば、左側に形成された第1連通孔61Aから流入した反応ガスは、燃料電池用接合セパレータの中央に形成された反応ガス流路71を通って電解質膜・電極構造体2(
図1参照)の電極触媒層12で化学反応により消費されて発電が行われる。消費された反応ガスは反応ガス流路71を通って右側に形成された第1連通孔61Fから流出するように形成されている。
【0040】
第1連通孔61Aの周囲には、第1連通孔61Aの形状に沿って全周に亘ってビードシール部41Aが形成されている。同様に、第1連通孔61B~61Fの周囲には、各第1連通孔の形状に沿って全周に亘ってビードシール部41B~41Fが形成されている。ビードシール部41A~41Fの内部には、本実施例では弾性体4は配設されていない。
【0041】
また、本実施例では、燃料電池用接合セパレータ3の外周縁に沿うように形成されるとともに第1連通孔61A~61Fの形状に沿うように形成されたビードシール部41(ビードシール部41G)が形成されている。ビードシール部41Gは、上部及び下部においては燃料電池用接合セパレータ3の上縁及び下縁とそれぞれ平行に形成されている。また、ビードシール部41Gは、左右両側においては、ビードシール部41A~41C、ビードシール部41D~41Fの間をそれぞれジグザグに通るように形成されている。
【0042】
ビードシール部41Gの成形後の高さが低い箇所、つまり、初期ビード高さが他の箇所より低い位置には、内部に所定の長さで、圧縮荷重を付与する前の形状が断面円形の弾性体4が配設されている。弾性体4の直径を例えば1.0mmに設定した場合、潰し代は20~40%程度が望ましい。
【0043】
また、弾性体4は、例えば、ビードシール部41Gのうち曲部(R部)にも配設されている。また、弾性体4は、ビードシール部41Gのうち、ビードシール部41Gとビードシール部41Jとが突き当たる位置にも配設されている。このようにビードシール部41,41同士が突き当たる部位でも面圧の低下が発生しやすいため、弾性体4を配置して面圧を確保することが好ましい。
【0044】
ビードシール部41Hは、燃料電池用接合セパレータ3の外周縁に沿うように周方向全体に亘って形成されている。ビードシール部41Hの内部には、本実施例では弾性体4は配設されていない。
【0045】
また、燃料電池用接合セパレータ3の角部には、空気抜き用又は冷媒ドレン用の第2連通孔65が形成されている。第2連通孔65は、本実施例では平面視円形を呈するが、楕円形、多角形であってもよい。第2連通孔65の個数は特に制限されないが、本実施例では2つ形成されている。空気抜き用の第2連通孔65は、冷媒中の空気を抜くための孔である。冷媒ドレン用の第2連通孔65は、冷媒を排出するための孔である。
【0046】
第2連通孔65Aの周囲には、第2連通孔65Aの形状に沿ってビードシール部41Iが形成されている。ビードシール部41Jは、ビードシール部41Iとビードシール部41Gとを連結する部位である。
【0047】
第2連通孔65Bの周囲には、第2連通孔65Bの形状に沿ってビードシール部41Kが形成されている。ビードシール部41Lは、ビードシール部41Kとビードシール部41Gとを連結する部位である。
【0048】
ビードシール部41Iには、弾性体4Aが配設されている。弾性体4Aは、
図5Aに示すように、圧縮荷重を付与する前の形状が長丸形状を呈する。つまり、弾性体4Aは、対向する一対の直線部と、対向する一対の曲線部を備えている。弾性体4Aは、楕円形状であってもよい。
図5Bに示すように、圧縮荷重が付与されると、弾性体4Aは、ビードシール部41Iの形状に沿って潰れ、ビードシール部41I内においてビード断面積の80~90%程度で充填されるのが望ましい。
【0049】
弾性体4Aの潰し代は適宜設定すればよいが、例えば、高さ寸法の5~20%の範囲で適宜設定することができる。
【0050】
ビードシール部41Iと同様に、ビードシール部41Kにも弾性体4Aが配設されている。弾性体4Aの長さは適宜設定すればよいが、例えば、ビードシール部41I,41Kでは、セパレータの外周側に周方向の3/4程度に亘って配設されている。
【0051】
以上説明した本実施例によっても実施例1と同等の効果を得ることができる。ここで、例えば、ビードシール部41Gにおいて、ビードシール部41Gを構成するシール用ビード部31(
図2参照)の成形後の高さが低い場合(初期ビード高さが他に比べて低い位置がある場合)、当該箇所が低反力部となって所望の面圧が得られないおそれがある。また、例えば、ビードシール部41,41同士が突き当たる部位で面圧が低下する傾向がある。しかし、本実施例によれば、ビードシール部41Gの低反力部の内部に所定の長さで断面円形の弾性体4を配設することにより、低反力部の面圧を改善することができる。
【0052】
また、空気抜き用又は冷媒ドレン用に設けられた第2連通孔65には積層方向に圧縮荷重を付与する際に、大きな荷重が作用する傾向がある。そこで、例えば、第2連通孔65(65A,65B)のように、圧縮荷重を付与する時に大きな荷重が作用する部位に断面長丸形状又は楕円形状の弾性体4Aを配設することにより、所定の最大荷重を超えないようにすることができる。つまり、ビードシール部41(41I,41K)が所定の最大圧縮量を超えないように弾性体4Aをストッパーとして機能させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 燃料電池セル
2 電解質膜・電極構造体
3 燃料電池用接合セパレータ
4 弾性体
4A 弾性体
5 シール部材
11 電解質膜(フィルム)
21 第1金属セパレータ
22 第2金属セパレータ
41 ビードシール部
42 ストッパー部
61 第1連通孔
65 第2連通孔
R1 シール領域