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特許7309620皮膚及び/又は粘膜を水和させるためのネフェリウム・ラパセウム(NEPHELIUM LAPPACEUM)の果皮の抽出物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】皮膚及び/又は粘膜を水和させるためのネフェリウム・ラパセウム(NEPHELIUM LAPPACEUM)の果皮の抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230710BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019565201
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 FR2018051973
(87)【国際公開番号】W WO2019025725
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】1757404
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500226948
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】BASF Beauty Care Solutions France S.A.S.
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean de Dieu, F-69007 Lyon, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボネット,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】カダウ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ダノウス,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】デルセヴィル,シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】レオティ-オコンビ,サブリナ
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105985(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104171(WO,A1)
【文献】特開2004-359573(JP,A)
【文献】特開2015-040181(JP,A)
【文献】特表2009-501179(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0056521(KR,A)
【文献】特開2008-013612(JP,A)
【文献】特開平04-244004(JP,A)
【文献】国際公開第2008/066370(WO,A1)
【文献】IJPSR, 2017 March, vol.8, no.3, p.1056-1065
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康な皮膚及び/又は健康な粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるための、ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)の果皮抽出物の美容的使用であって、前記抽出物が、唯一の溶媒としての水の中での抽出によって得られることを特徴とする美容的使用。
【請求項2】
前記果皮抽出物が、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるためのものである、請求項1に記載の美容的使用。
【請求項3】
前記果皮抽出物が、前記皮膚及び/又は前記粘膜においてインボルクリン合成及び/又はヒアルロン酸含有量を増大させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の美容的使用。
【請求項4】
局所的である、請求項1~3のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項5】
前記抽出物が健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜に適用されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項6】
前記抽出物が皮膚の色つやの輝きを増大させることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項7】
前記抽出物が、ATP及び/又はタウリントランスポーターTAUTの合成を増大させる、請求項6に記載の美容的使用。
【請求項8】
前記抽出物が、グリセリンを含有する水溶液中に可溶化されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項9】
少なくとも1つの許容可能な化粧品賦形剤を含む化粧品組成物において、前記抽出物が、前記組成物の全重量に対して、1x10-4重量%~10重量%の濃度で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項10】
少なくとも1つの許容可能な化粧品賦形剤を含む化粧品組成物において、前記抽出物が、前記組成物の全重量に対して、1x10-4重量%~5重量%の濃度で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項11】
少なくとも1つの許容可能な化粧品賦形剤を含む化粧品組成物において、前記抽出物が、前記組成物の全重量に対して、1x10-3重量%~3重量%の濃度で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項12】
健康な皮膚及び/又は健康な粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるため、且つ/或いは皮膚の色つやの輝きを増大させるために、ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)の果皮抽出物、又はそれを含む化粧品組成物を投与することを含み、前記抽出物が、唯一の溶媒としての水の中での抽出によって得られることを特徴とする、美容ケア方法。
【請求項13】
健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるため、且つ/或いは皮膚の色つやの輝きを増大させるために、前記抽出物又はそれを含む化粧品組成物を投与することを含む、請求項12に記載の美容ケア方法。
【請求項14】
皮膚及び/又は粘膜においてインボルクリン合成及び/又はヒアルロン酸含有量を増大させるため、且つ/或いは皮膚においてATP及び/又はタウリントランスポーターTAUTの合成を増大させるための、請求項12又は13に記載の美容ケア方法。
【請求項15】
身体及び/又は顔及び/又は粘膜の全て又は一部に、前記抽出物又はそれを含む化粧品組成物を局所適用することにある、請求項12~14のいずれか一項に記載の美容ケア方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品及び薬学の分野、より具体的には、皮膚科学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、一定数の外部攻撃、特に、ストレス、汚染、UV放射、温度変化からの保護のための主要組織である。皮膚は、脱水に対するものを含む、バリアの役割を果たす。特定の病的状態又は好ましくない外的条件は、皮膚の水和の低下を特に含む、皮膚交換の不均衡を引き起こし得る。
【0003】
ヒアルロン酸は、細胞外マトリックス(ECM)及び表皮内に存在するグリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は、構造的役割と、細胞保護、接着、遊走、分化及び細胞通信に影響する成長因子の貯蔵所としての役割とを有する。ヒアルロン酸は、皮膚の水和レベルの既知のマーカーである。
【0004】
インボルクリンはケラチノサイトにおいて合成される可溶性タンパク質であり、表皮分化に関与することによって、そしてその結果、角質層の粘着を容易にすることによって、皮膚の角質層の水和が維持されるようにする。「バリア効果」という用語が使用される。
【0005】
さらに、ケラチノサイトに蓄積する硫黄含有アミノ酸誘導体であるタウリンは、オスモライトである。タウリンは、細胞容積を維持し、且つ正の水分バランスを保証することによって、皮膚の水和に積極的に関与する。従って、ケラチノサイトの表面に存在するその受容体であるTAUTタンパク質も、皮膚の上層の水和のための別のマーカーを構成する。
【0006】
化粧品活性剤は既にその水和特性で知られているが、化粧品及び皮膚科分野では、いくつかのタンパク質及び/又は分子を同時に標的にすることを可能にする、代替の革新的な水和活性成分を提供することが常に必要とされている。
【0007】
本出願人は、驚くことに、N.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物が、前記植物の別の部分の抽出物よりも効果的に皮膚及び/又は粘膜、特に乾燥皮膚及び/又は乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を増大させる能力を有することを発見した。従って、本出願において実証されるように、果皮は、完全に新規の驚くべき技術的効果を提供する。
【0008】
本発明に従う抽出物の利点の1つは、いくつかのマーカー、適切な例では、インボルクリン、ヒアルロン酸及びタウリントランスポーターTAUTを同時に標的にすることを可能にすることである。別の利点は、通常は活用されない出発材料から、言い換えると、食べられず、且つ通常は利用されない植物の部分である果皮から得られることである。本発明に従う果皮抽出物が由来する国はベトナムである。
【0009】
最後に、本発明に従う抽出物の付加的な利点は、産業規模での生産が容易なことである。
【0010】
ランブータンとしても知られているネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)植物は、東南アジア、特にマレーシア及びインドネシアにおいて見られる木である。それは高さ10~20メートルの木であり、大量の果実を産出する。その官能特性で知られているこの果実は、多量の糖、ビタミンC及び鉄を含有する。また乾燥した根又は葉の煎出液は、発熱と闘うために使用されている。
【0011】
化粧品組成物におけるランブータンの使用は知られている。従って、中国特許第105534812号明細書には、皮膚の水和を含む種々の特性を有する組成物が開示されており、前記組成物は、ランブータンを含む植物のいくつかの抽出物の混合物を含む。
【0012】
特開2002-145730号公報には、水和活性を有するN.ラパセウム(N.lappaceum)の種子抽出物が開示されている。
【0013】
国際公開第2011/18278号パンフレットには、水和目的で化粧品組成物において使用するため、より一般的には、ケラチン繊維、特に毛髪をケアするための、ランブータン種子油の使用が開示されている。
【0014】
特開2001-220344号公報には、ランブータンを含む植物の種々の抽出物の化粧品組成物における使用が開示されている。一方で、水和活性剤としての植物の果皮の使用は開示も示唆もされていない。
【0015】
さらに、米国特許出願第20150238462号明細書には、バリア効果を増大させる皮膚の水分喪失の予防、及びアトピー性皮膚炎の処置へのその効果について、植物抽出物に由来し得るフェノール化合物の存在が開示されている。美容的使用が記載されている。しかしながら、この出願は、N.ラパセウム(N.lappaceum)の抽出物を開示しない。タイムの抽出物、生コーヒー豆の抽出物、及びザクロの抽出物が記載される。水分喪失と闘うために最も活性な抽出物は、区別なくザクロ及び生コーヒー豆の抽出物であり、優先的には経口投与される。従って、ザクロの抽出物はエラグ酸を含有するが、当業者は、このことからこの抽出物の効果がエラグ酸の存在に起因することを推測することができず、そのため、特にザクロ抽出物以外の抽出物に由来するこの特定の分子を使用して水分喪失と闘うことも、皮膚のレベルでバリア効果を増大させることも促されないであろう。
【0016】
最後に、Suganthi et al.(2016,International Journal of Pharmaceutical Science and Research,1,36-39)は、その抗低血糖特性、抗糖尿病特性及び抗高コレステロール血症特性についてN.ラパセウム(N.lappaceum)の抽出物を記載している。植物の果皮中のゲラニン(geranin)の存在が記載されている。しかしながら、この分子は、前記植物のエタノール抽出物中で検出される。この文書のどの内容も、治療以外の任意の用途のために、ゲラニン、又はそれを含むN.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物を使用することを当業者に促さない。さらに、どの内容も、果皮のエタノール抽出物以外の抽出物の調製を促さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本出願人の知る限り、従来技術の文書は、皮膚及び/又は粘膜、特に乾燥皮膚及び/又は粘膜の水和を維持及び/又は増大させるため、或いは皮膚又は粘膜のバリア効果を維持及び/又は増大させるため、或いは膚の色つやの輝きを増大させるための、果皮抽出物の使用を開示しない。しかしながら、本発明は、上述の多数の技術的利点を示す。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の第1の主題は、健康な皮膚及び/又は健康な粘膜、有利には、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるため、且つ/或いは特に、皮膚におけるATP及び/又はタウリントランスポーターTAUTの合成を増大させることによって皮膚の色つやの輝きを増大させるための、N.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物の美容的使用である。
【0019】
本発明の第2の主題は、皮膚及び/又は粘膜、有利には、乾燥皮膚及び/又は粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるため、且つ/或いは特に、皮膚におけるATP及び/又はタウリントランスポーターTAUTの合成を増大させることによって皮膚の色つやの輝きを増大させるために、本発明に従う抽出物の局所投与又は経口投与を含む、美容ケア方法に関する。
【0020】
本発明の第3の主題は、異常乾燥状態に起因する病態、例えば、アトピー性皮膚炎、ひび割れ、湿疹及び/又は魚鱗癬などの予防及び/又は処置においてそれを使用するため、有利には、皮膚科学的に使用するための、N.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物、又は医薬組成物、優先的には、皮膚用組成物に関する。
【0021】
従って、第1の主題は、健康な皮膚及び/又は健康な粘膜、有利には、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるための、N.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物の美容的使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書中の「美容的使用」という用語は、治療的処置を必要としない、非治療的使用を意味することが意図され、すなわち、健康な非病的皮膚又は粘膜の領域の全て又は一部に適用されることが意図される。「健康な皮膚及び/又は健康な粘膜の領域」という語句は、本発明に従う抽出物が適用され、且つ皮膚科医によって「非病的」と称される皮膚及び/又は粘膜の領域、すなわち、感染、瘢痕、皮膚疾患若しくは障害、例えば、カンジダ症、膿痂疹、乾癬、湿疹、ざ瘡若しくは皮膚炎、又は創傷若しくは外傷、及び/又は他の皮膚疾患を有さない皮膚及び/又は粘膜の領域を意味することが意図される。
【0023】
本発明の一実施形態では、本発明に従う果皮抽出物は、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜に適用される。
【0024】
本発明に従うN.ラパセウム(N.lappaceum)抽出物は、局所的に許容可能な成分である。「局所的に許容可能な」という用語は、局所適用に適した成分を意味することが意図され、これは、皮膚及び/又は粘膜に対して無毒性、非刺激性であり、アレルギー応答を誘発せず、化学的に不安定でない。抽出物は経口的又は局所的に使用され得る。有利には、局所的に使用される。「局所的」という用語は、皮膚及び/又は粘膜の表面への成分の直接的な局部適用及び/又は噴霧を意味することが意図される。
【0025】
「粘膜」という用語は、眼球粘膜、膣粘膜、尿生殖器粘膜、肛門粘膜、鼻粘膜、口腔、口唇及び/又は歯肉粘膜;優先的には、口唇及び/又は口腔粘膜を意味することが意図される。
【0026】
抽出物は、有利には、脚、足、脇の下、手、大腿、胃、胸、首、腕、胴、背中、口唇粘膜、顔及び/又は頭皮、より有利には、胸及び/又は顔、さらにより有利には、顔から選択される、身体及び/又は顔及び/又は粘膜の全て又は一部に局所的に適用することができる。
【0027】
本発明の目的のために、「水和を増大させる」という用語は、抽出物を適用せずに測定されたヒト皮膚及び/又は粘膜の水和と比較して、少なくとも2%、有利には少なくとも5%、より有利には少なくとも10%、非常に有利には少なくとも15%の、本発明に従う抽出物の存在下で処置された前記皮膚及び/又は前記粘膜の水和の増大を意味することが意図される
【0028】
本発明の1つの有利な実施形態では、測定は、有利には、ヒト皮膚、より優先的には、乾燥ヒト皮膚における、コルネオメトリーによる水和パラメータのインビボ測定である。有利には、前記測定は、2週間後、4週間後及び/又は8週間後、優先的には、8週間後に実行される。本発明の代替的な実施形態では、静電容量を用いた、有利には、皮膚の表面の電磁場の侵入を測定するMoistureMap MM100(登録商標)として知られている機器を用いた、水和パラメータのインビボ測定が含まれる。優先的には、この測定は、2週間後及び/又は4週間後、より優先的には、4週間後に実行される。本発明の1つの特に有利な実施形態では、この水和のインビボ測定は、実施例2d)に記載される条件下、27人の女性集団において、有利には、頬のレベルで実行される。
【0029】
さらに、「インボルクリンの合成を増大させる」という用語は、IVL遺伝子の遺伝子発現及び/又はインボルクリンタンパク質の発現の増大を意味することが意図される。有利には、これは、インボルクリンタンパク質の増大である。一実施形態では、本発明に従う抽出物は、抽出物の非存在下で検出されたタンパク質発現と比較して、本発明に従う抽出物の存在下で、インボルクリンタンパク質の発現を少なくとも7%、有利には少なくとも15%、より有利には少なくとも30%、非常に有利には少なくとも45%増大させる。1つの有利な実施形態では、タンパク質発現のこの増大は、より有利には、免疫組織化学的技法(ELISAアッセイ)によって、非常に有利には、実施例2a)に記載される条件下、実施例1a)に記載される条件下で調製されたN.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物の存在下、ケラチノサイト、優先的には、正常、すなわち非病的なヒトケラチノサイトにおいて測定される。
【0030】
「ヒアルロン酸含有量を増大させる」という用語は、抽出物の非存在下で検出された含有量と比較して、本発明に従う抽出物の存在下で、少なくとも10%、有利には少なくとも15%、より有利には少なくとも40%、非常に有利には少なくとも50%のヒアルロン酸含有量の増大を意味することが意図される。一実施形態では、この増大は、ケラチノサイト、優先的には正常の、従って非病的なヒトケラチノサイトにおいて測定される。より優先的には、この増大は、実施例2b)に記載される条件下、実施例1a)に従って調製された果皮抽出物の存在下で免疫組織化学的技法(ELISAアッセイ)によって測定されるヒアルロン酸含有量の増大である。
【0031】
従って、本発明に従う果皮抽出物の使用は、皮膚及び/又は粘膜においてインボルクリン合成及び/又はヒアルロン酸含有量を増大させるためのものである。
【0032】
皮膚及び/又は粘膜の「バリア効果を増大させる」という用語は、表皮の厚さを増大させ、且つ/或いは皮膚及び粘膜内の角質層の粘着を促進することを意味することが意図される。「バリア効果を維持する」という用語は、さらに、皮膚及び/又は粘膜における水分喪失を制限することを意味することが意図される。従って、本発明に従う抽出物の使用は、特に、インボルクリン合成を増大させることによって、皮膚及び/又は粘膜におけるバリア効果を維持及び/又は増大させるためのものである。
【0033】
一方で、本発明に従う果皮抽出物は、優先的には、酸化又は皮膚の老化に対して皮膚及び/又は粘膜を保護するために使用されない。本発明の1つの特に好ましい実施形態では、それは抗老化活性剤、又は抗酸化若しくはフリーラジカル捕捉活性剤の問題ではない。
【0034】
「ATPの合成を増大させる」という用語は、本発明に従う抽出物の存在下において、本抽出物の非存在下で測定されるATPレベルと比較して、少なくとも10%、有利には少なくとも20%、より有利には少なくとも60%、非常に有利には少なくとも90%、さらに非常に有利には少なくとも120%の増大を意味することが意図される。本発明の1つの有利な実施形態では、これは、実施例1a)に従って調製された果皮抽出物の存在下、線維芽細胞、優先的には、正常、すなわち非病的なヒト線維芽細胞において測定される増大である。より有利には、ATP合成の増大は、実施例3a)に記載される条件下、ルシフェラーゼの存在下で、バイオルミネセンス(ATP Bioluminescenceキット、Roche Diagnostics France)によって測定される。
【0035】
最後に、「タウリントランスポーターTAUTの合成を増大させる」という用語は、本発明に従う抽出物の存在下、抽出物を用いずに測定されたTAUT含有量と比較して、少なくとも10%、有利には20%、より有利には少なくとも40%、非常に有利には少なくとも60%、さらに非常に有利には少なくとも80%のTAUT合成の増大を意味することが意図される。1つの有利な実施形態では、合成の増大は、ケラチノサイト、有利には、正常、従って非病的なヒトケラチノサイトにおいて測定される。より有利には、TAUT合成の測定は、実施例1a)に従って調製された果皮抽出物の存在下、非常に有利には、タンパク質アッセイにより、優先的には、ブラッドフォード法を用いて実行される。より有利には、この合成は、実施例3b)に記載される条件下において総タンパク質含有量に関連する。
【0036】
さらに、皮膚及び/又は粘膜の「水和を維持する」という用語は、皮膚及び/又は粘膜の脱水を防止することを意味することが意図される。
【0037】
本発明の1つの有利な実施形態では、N.ラパセウム(N.lappaceum)の抽出物は、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和を増大させる。「乾燥皮膚」という用語は、本明細書では、病態がなく且つ治療的処置を必要としない、脱水した健康な皮膚を意味することが意図されるが、これは、かゆみ、こわばり、脱水線、粗い外観及び/若しくは感触、又は色つやの輝きの喪失、すなわち、くすんだ皮膚などの、非審美的及び/又は不快な兆候を伴う。
【0038】
従って、N.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物の美容的使用は、特に、ATP及び/又はタウリントランスポーターTAUTの合成を増大させることにより、皮膚の色つやの輝きを増大させるためのものでもある。従って、本発明に従う抽出物は、特に、エネルギーを与える化粧品活性成分として、細胞代謝を刺激するために有用であり、使用される。
【0039】
皮膚の「色つやの輝きを増大させる」という用語は、本発明に従う抽出物を含むクリームを適用した後に、本抽出物を含まないプラセボクリームと比較して、皮膚のくすんだ色つや及び/又は黄変の少なくとも2%、優先的には4%、より優先的には少なくとも6%の低下を意味することが意図される。有利には、色つやの輝きのこの増大は、15日後、28日後及び/又は56日後に、より有利には、女性集団の顔のレベルで測定される。本発明の1つの有利な実施形態では、色つやの輝きの増大は、皮膚の発光を測定することにより、有利には、パラメータLを測定することにより評価される。前記パラメータは、クロマメトリー(chromametry)又は画像解析から選択されるいくつかの技法によって測定することができる。有利には、パラメータLは、クロマメトリーによって測定されるであろう。
【0040】
本発明の1つの代替的な実施形態では、色つやの輝きは、臨床的評価によって測定される。それは、Goniolux(登録商標)タイプの機器を用いて、又は画像解析によって実行され得る。有利には、画像解析によって実行されるであろう。
【0041】
本発明に従う果皮抽出物は、果皮を含む植物の部分から得られる。有利には、果皮抽出物は果皮のみを含有する。
【0042】
本発明の目的のために、「果皮」という用語は、種子及び果肉が除去された果実の殻を意味することが意図される。従って、果皮は果実ではない。
【0043】
本発明の1つの優先的な実施形態では、本発明に従う果皮抽出物は、ライチ・キネンシス(Litchi chinensis)の果実抽出物と併用されない。本発明の1つの代替的な実施形態では、果皮抽出物は、化粧品組成物及び/又は皮膚用組成物、有利には化粧品組成物において、L.キネンシス(L.chinensis)の果実抽出物と共に使用されない。
【0044】
本発明の1つの好ましい実施形態では、果皮抽出物は、非有効濃度のエラジタンニン、有利には、エラグ酸(C14;CAS番号476.66.4;分子量302.194g/mol)を含有する。より優先的には、本発明に従う果皮抽出物は、非有効濃度の没食子酸(C;CAS番号149-91-7;分子量170.12g/mol)及び/又はクロロゲン酸(C1618;CAS番号327-97-9;分子量354.311g/mol)及び/又はカフェイン酸(C;CAS番号331-39-5;分子量180.159g/mol)及び/又はp-クマル酸(C;CAS番号50940-26-6;分子量164.16g/mol)及び/又はフェルラ酸(C1010;CAS番号537-98-4;分子量194.186g/mol)及び/又はゲラニン(C412827;CAS番号60976-49-2;分子量952.648g/mol)も含有する。
【0045】
本発明の1つの特定の実施形態では、本発明に従う果皮抽出物は、非有効濃度のエラグ酸及びゲラニンの両方を含有する。特に有利には、実施例1a)に従って調製される果皮抽出物は、非有効濃度のエラグ酸を含有する。
【0046】
本発明の1つの代替的な実施形態では、本発明に従う化粧品組成物又は皮膚用組成物は、非有効濃度のエラジタンニン及び/又は没食子酸及び/又はクロロゲン酸及び/又はカフェイン酸及び/又はクマル酸及び/又はフェルラ酸及び/又はゲラニン及び/又はエラグ酸を含有するであろう。優先的には、前記組成物は、非有効濃度のエラグ酸を含有するであろう。本発明の1つの特定の実施形態では、本発明に従う化粧品組成物又は皮膚用組成物は、非有効濃度のエラグ酸及びゲラニンの両方を含有するであろう。
【0047】
「非有効濃度」という用語は、前記分子が、果皮抽出物中、並びに/又はそれを含む化粧品成分中、並びに/又はそれを含む化粧品組成物及び/若しくは皮膚用組成物中に、皮膚及び/又は粘膜、有利には、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるのに十分な濃度で存在しないような濃度を意味することが意図される。
【0048】
有利には、本発明によると、エラグ酸は、本発明に従う果皮抽出物中、より有利には、実施例1a)に記載される条件下で調製される果皮の水性抽出物中のその濃度が0.035%(w/w)以下である場合に、非有効濃度で存在すると考えられる。本発明の1つの代替的な実施形態では、エラグ酸は、化粧品成分中、例えば、実施例4に記載されるような化粧品成分中のその濃度が0.007%(w/w)以下である場合に、非有効濃度で存在すると考えられる。或いはさらに、エラグ酸は、化粧品組成物中、有利には、クリーム中、より有利には、実施例5b)に記載されるようなクリーム中のその濃度が1.4x10-4%(w/w)以下である場合に、非有効濃度で存在すると考えられる。
【0049】
同様に、ゲラニンは、抽出物中、有利には、実施例1a)に従って調製される果皮の水性抽出物中のその濃度が0.25%(w/w)以下である場合に、果皮抽出物中に非有効濃度で存在すると考えられる。或いは、ゲラニンは、化粧品成分中、特に、実施例4に記載されるような化粧品成分中のその濃度が0.05%(w/w)以下である場合に、化粧品成分中に非有効濃度で存在すると考えられるであろう。或いはさらに、ゲラニンは、化粧品組成物中、有利には、クリーム中、より有利には、実施例5b)に記載されるようなクリーム中のその濃度が1x10-3%(w/w)以下である場合に、非有効濃度で存在すると考えられるであろう。
【0050】
従って、本発明の1つの有利な実施形態では、エラグ酸は本発明で定義されるインボルクリン合成を増大させないし、皮膚及び/又は粘膜の水和及び/又はバリア効果も増大させない。
【0051】
特に、エラグ酸及び/又はゲラニン、優先的にはエラグ酸は、より具体的には、実施例2c)に記載される条件下、正常、すなわち非病的と言われるケラチノサイトにおいて、インボルクリン合成の刺激を可能にしない。
【0052】
本発明のさらに別の有利な実施形態では、果皮抽出物は、ケブル酸(chebulic acid)(C141211;分子量356.239g/mol;CAS番号23725-05-5)又はケブリン酸(chebulinic acid)(C413227;分子量956.68g/mol;CAS番号18942-26-2)又はケブラニン(chebulanin)(C272419;分子量652.470g/mol;CAS番号166833-80-3)を含有しない。非常に有利には、本発明に従う果皮抽出物は、それを含有するどの植物抽出物とも併用されない、特に、ターミナリア(Terminalia)属の植物のどの抽出物とも併用されない。
【0053】
抽出物は、浸軟、高温煎出(hot decoction)、ミキサーを用いる超音波ミリングを含むミリングから選択される、当業者に知られている種々の抽出法によって得ることもできるし、或いは、抽出物は、亜臨界又は超臨界条件(二酸化炭素)下、水中での抽出によって得ることもできる。優先的には、抽出は浸軟によって実行される。
【0054】
抽出は、物質及び抽出溶媒の全重量に対して0.1重量%~20重量%、有利には1重量%~10重量%、非常に有利には5重量%~10重量%、さらにより有利には10重量%の量の乾燥物質又は新鮮物質、有利には、乾燥物質を用いて実行され得る。
【0055】
抽出は、周囲温度、すなわち20℃の温度を含む4℃~300℃の範囲の温度で実行され得る。本発明の1つの優先的な実施形態では、抽出は、60℃~90℃の温度、優先的には70℃~85℃、より優先的には80℃の温度で実行されるであろう。
【0056】
本発明の1つの代替的な実施形態では、抽出は、4℃~25℃、より優先的には4℃~20℃の温度、より有利には周囲温度、すなわち20℃で実行されるであろう。
【0057】
本発明のさらに別の代替的な実施形態では、抽出は、亜臨界条件下、100℃~300℃の範囲の温度、有利には120℃~250℃、より有利には120℃で水中において実行されるであろう。抽出は、単一の所与の温度で、又は連続的な上昇温度で実行することができる。本発明の1つの有利な実施形態では、抽出は、120℃の単一の温度で実行されるであろう。代替の実施形態では、抽出は、100℃~200℃の間の3つの上昇温度、例えば、120℃、140℃、そして160℃、又は110℃、130℃、そして150℃、或いは120℃、145℃、そして170℃の勾配に従って実行されるであろう。
【0058】
「亜臨界条件」下での抽出という用語は、水が液体状態のままであるが、周囲温度の水よりも低い粘度及び表面張力を有し、その誘電率が増大されるように、100℃よりも高い温度、及び221バールよりも低い圧力の条件下において、水の存在下の抽出を意味することが意図される。
【0059】
従って、抽出圧力は、有利には、圧力抽出オートクレーブにおいて、150バール~250バール、優先的には200~221バールであろう。
【0060】
抽出は、30分~24時間にわたって、優先的には30分~12時間、より優先的には1時間~5時間にわたって、より有利には1時間~2時間にわたって実行することができる。非常に有利には、抽出は、1時間にわたって実行されるであろう。
【0061】
本発明に従う抽出物は、溶媒又は溶媒混合物、好ましくは、プロトン性極性溶媒、有利には、水、アルコール、グリコール、ポリオール、99/1~1/99(w/w)の水/アルコール、水/グリコール、又は水/ポリオール混合物(例えば、水と、エタノール、グリセロール及び/又はブチレングリコール、及び/又は他のグリコール、例えば、キシリトール及び/又はプロパンジオールとの混合物)の中、有利には、唯一の溶媒としての水の中での抽出によって得ることができる。
【0062】
特に、抽出物は水性抽出によって得られる。本発明の目的のために、「水性抽出によって得られる抽出物」は、水溶液の全重量に対して60重量%超、有利には少なくとも70重量%、特に、少なくとも80重量%、より具体的には少なくとも90重量%、特に、少なくとも95重量%の水を含有し、さらにより有利にはグリコールを含有せず、特に、アルコールを含有せず、より具体的には水のみを含有する水溶液による抽出によって得られる任意の抽出物を意味することが意図される。
【0063】
1つの代替の実施形態では、抽出物は、それぞれの割合(80、20;v/v)におけるプロパンジオール及び水の混合物中での抽出によって得られる。
【0064】
本発明の別の代替的な実施形態では、抽出は、BASFによりPlantacare(登録商標)1200UPという名称で販売されているラウリルグルコシド、或いはカプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)、優先的には、カプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)から優先的に選択される非イオン性界面活性剤の存在下で実行され得る。非イオン性界面活性剤の重量による濃度は、抽出物の全重量に対して、0.5重量%~5重量%、有利には0.5~1重量%でよく、より有利には1重量%になる。
【0065】
従って、本発明の第1の実施形態では、溶媒及び果皮の全重量に対して10重量%の量の果皮の抽出物は、周囲温度、すなわち20℃の温度で1時間にわたって唯一の溶媒としての水の中での浸軟によって得られる。得られた抽出物はデカントされ、遠心分離され、そして実施例1a)に記載される条件下で上清がろ過される。
【0066】
第2の実施形態では、溶媒及び果皮の全重量に対して10重量%の量の果皮の抽出物は、80℃の温度で1時間にわたって水/エタノール混合物(30、70;v/v)での浸軟によって得られる。抽出物は次にデカントされ、遠心分離され、そして実施例1b)に記載される条件下で上清がろ過される。
【0067】
第3の実施形態では、溶媒及び果皮の全重量に対して5重量%の量の果皮の抽出物は、周囲温度、すなわち20℃の温度で1時間にわたって唯一の溶媒としての水の中での抽出によって得られる。得られた抽出物はデカントされ、遠心分離され、そして実施例1c)に記載される条件下で上清がろ過される。
【0068】
第4の実施形態では、植物及び溶媒の全重量に対して10重量%の量の果皮の抽出物は、亜臨界条件下、120℃の温度、250バールの圧力下で、水中での抽出によって得られる。粗抽出物はデカントされ、遠心分離され、そして実施例1d)に記載される条件下でろ過される。
【0069】
有利には、本発明によると、抽出物は、0.45μmのカットオフ閾値でろ過されるであろう。
【0070】
付加的な脱色及び/又は脱臭ステップは、当業者に知られている技術に従って、抽出の任意の段階で抽出物において実行することができる。特に、抽出物は活性炭により脱色され得る。
【0071】
実施例1a)~1d)に記載される条件下で得られた液体果皮抽出物は次に、溶媒の蒸発によって濃縮することもできるし、或いは、例えば凍結乾燥、又はマルトデキストリンの存在下での噴霧乾燥によって乾燥させることもできる。そして抽出物は粉末形態になる。
【0072】
従って、本発明の1つの優先的な実施形態では、得られた抽出物は、得られた粉末の全重量に対して20重量%~90重量%、優先的には40重量%~80重量%、より優先的には70重量%~80重量%の濃度のマルトデキストリンの存在下で噴霧乾燥されるであろう。本発明の1つの特定の実施形態では、特に、皮膚科においてそれを使用するために、得られたN.ラパセウム(N.lappaceum)抽出物は滅菌される。
【0073】
本発明に従う抽出物は、化粧品成分の形態で単独で使用することもできるし、或いは、少なくとも1つの美容的に許容可能な賦形剤を含む化粧品組成物中で使用することもできる。化粧品成分又は皮膚用成分の形態で単独で使用される場合、抽出物は、優先的には、抽出物を含む水溶液の全重量に対して、有利には60重量%~90重量%の濃度、より有利には70重量%~85重量%の濃度、非常に有利には80重量%の濃度で存在するグリセリンを含有する水溶液中に可溶化される。
【0074】
本発明の1つの代替的な実施形態では、抽出物は、溶媒、特に、極性溶媒、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリコール、例えば、ペンチレングリコール及び/又はブチレングリコール及び/又はヘキシレングリコール及び/又はカプリリルグリコール、又はこれらの混合物、優先的には、水-グリコール混合物(より優先的には、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びこれらの混合物から選択されるグリコールを含有する)の中に可溶化及び/又は希釈されるであろう。有利には、得られた抽出物は、ヘキシレングリコールを含有する、特に、化粧品成分の全重量に対して0.1重量%~10重量%のヘキシレングリコール、優先的には0.5重量%~5重量%のヘキシレングリコールを含有する水溶液中に希釈される、及び/又は可溶性である。有利には、得られた抽出物は、カプリリルグリコールを含有する、特に、抽出物を含む水溶液の全重量に対して0.01重量%~5重量%のカプリリルグリコール、優先的には0.1重量%~1重量%のカプリリルグリコールを含有する水溶液中に希釈される、及び/又は可溶性である。特に、本発明に従ってN.ラパセウム(N.lappaceum)抽出物が可溶化された水溶液は、キサンタンガム、特に、水溶液の全重量に対して0.01重量%~5重量%のキサンタンガム、より具体的には、抽出物を含む水溶液の全重量に対して0.1重量%~1重量%のキサンタンガムを含む。
【0075】
有利には、本発明に従ってN.ラパセウム(N.lappaceum)抽出物が可溶化された溶液は、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びキサンタンガムを含む。
【0076】
また抽出物は、少なくとも1つの美容的に許容可能な賦形剤をさらに含む化粧品組成物中に存在することもできる。「許容可能」という用語は、化粧品賦形剤、又は皮膚に対して非刺激性の賦形剤を意味することが意図され、これはアレルギー応答を誘発せず、化学的に安定である。
【0077】
従って本発明の主題は、皮膚及び/又は粘膜、有利には、乾燥皮膚及び/又は乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるための、化粧品組成物中のN.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物の使用に関する。化粧品組成物は、特に、ゲルカプセル、カプセル又はゲルの形態で、局所的又は経口的に投与され得る。
【0078】
有利には、脚、足、脇の下、手、大腿、胃、胸、首、腕、胴、背中、口唇粘膜、顔及び/又は頭皮、より有利には、胸及び/又は顔、さらにより有利には、顔から選択される、身体及び/又は顔及び/又は粘膜の全て又は一部に局所的に適用され得るのが有利である。
【0079】
有利には、組成物は、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜に適用され得る。
【0080】
本発明の一実施形態では、本発明に従う抽出物は、組成物の全重量に対して1x10-4重量%~10重量%、優先的には1x10-4重量%~5重量%、より優先的には1x10-3重量%~3重量%の濃度で、化粧品組成物又は皮膚用組成物中に存在する。
【0081】
賦形剤は、界面活性剤及び/又は乳化剤、防腐剤、緩衝剤、キレート剤、変性剤、乳白剤、pH調整剤、還元剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、皮膜形成ポリマー、充填剤、つや消し剤、光沢剤、顔料、染料、香料、並びにこれらの混合物から選択され得る。CTFA(Cosmetic Ingredient Handbook,第2版(1992))には、本発明で使用するのに適した種々の化粧品賦形剤が記載されている。
【0082】
有利には、賦形剤は、ポリグリセリン、エステル、セルロースポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、サッカロース系安定剤、ビタミンE及びその誘導体、キサンタンガム、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、不けん化物(unsaponifiable)、フィトステロール、シリコーン、タンパク質加水分解物、ベタイン、アミンオキシド、植物抽出物、サッカロースエステル、二酸化チタン、グリシン、並びにパラベンを含む群から選択され、より好ましくは、ステアレス-2、ステアレス-21、グリコール-15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、カプリリルグリコール、天然トコフェロール、グリセリン、ジヒドロキシセチルナトリウムホスフェート、イソプロピルヒドロキシケチルエーテル、ステアリン酸グリコール、トリイソノナノイン、オクチルココエート、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス-7、カルボマー、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、PEG30-ジポリヒドロキシステレート、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、オクタン酸セテアリル、アジピン酸ジブチル、ブドウ種子油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、キサンタンガム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ワックス及び鉱油、イソステアリン酸イソステアリル、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール、PEG8、蜜ろう、水素化パーム核油(palm heart oil)のグリセリド、ラノリン油、ゴマ油、乳酸セチル、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、サッカロース、低密度ポリエチレン、等張生理食塩水、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0083】
本発明に従う化粧品組成物は、水性又は油性溶液、クリーム又は水性ゲル又は油性ゲル、特に、シャワーゲル、乳液、エマルション、マイクロエマルション又はナノエマルション(特に、水中油型又は油中水型又は多重又はシリコーン系)、マスク、セラム、ローション、液体セッケン、皮膚用バー(dermatological bar)、軟膏、フォーム、パッチ、無水製品、好ましくは、液体、ペースト又は固体、例えば、メイク用パウダー、ロッド又はスティックの形態、特に、リップスティックの形態から選択され得る。有利には、クリーム又はセラムである。
【0084】
また化粧品組成物は、バリア機能を強化し、且つ不感水分喪失を低減するもの、並びに/又は皮膚及び/若しくは粘膜の含水量を増大させ、且つ/或いは細胞内の水の循環を改善するためにアクアポリン合成を刺激するものから選択される、皮膚及び/又は粘膜の水和に対して活性であり、本発明に従う抽出物との補足又は相乗効果を誘発する他の成分も含み得る。従って、セリン、尿素及びその誘導体、Marine Filling spheres(商標)、Advanced moisturizing complex(商標)、Hyaluronic Filling Spheres(商標)、vegetal filling spheres(商標)、Osmogelline(商標)、Micropatch(商標)、PatcH20(商標)という名称で販売されている製品、アルキルセルロース、レシチン、スフィンゴイド系化合物、セラミド、リン脂質、コレステロール及びその誘導体、スフィンゴ糖脂質、フィトステロール(スチグマステロール及びベータ-シトステロール、カンプエステロール)、必須脂肪酸、1-2ジアシルグリセロール、4-クロマンン、5員環トリテルペン、例えばウルソール酸、ワセリン(petroleum jelly)、ラノリン、糖、特にトレハロース及びその誘導体、ラムノース、フルクトース、マルトース、ラクトース、エリスリトール、マンニトール、D-キシロース及びグルコース、アデノシン及びその誘導体、ソルビトール、多価アルコール(有利には、C~C、より有利には、C~C)、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン及びこれらの混合物、グリセロール及びその誘導体、グリセリルポリアクリレート、乳酸ナトリウム、ペンタンジオール、セリン、乳酸、AHA、BHA、ピドロ酸ナトリウム(sodium pidolate)、キシリトール、乳酸ナトリウム、エクトイン(ectoin)及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、コラーゲン、プランクトン、ステロイド誘導体(DHEA、その7-酸化及び/又は17-アルキル化誘導体及びサポゲニンを含む)、ジヒドロジャスモン酸メチル、ビタミンD及びその誘導体、マルバ・シルベストリス(Malva sylvestres)の抽出物又はセンテラ・アジアチカ(Centella asiatica)の抽出物、アクリル酸ホモポリマー、ベータ-グルカン、及び特に、ナトリウムカルボキシメチルベータ-グルカン、C-グリコシド誘導体、例えば国際公開第02/051828号パンフレットに記載されるもの、ジャコウバラ油、Algualane Zinc(商標)という名称でVincienceによって販売されている亜鉛が豊富な微細藻類プロフィリジウム・クルエンタム(Prophyridium cruentum)の抽出物、アルギニン、Diffuporine(商標)という名称でLipotechによって販売されているアセチルヘキサペプチド、Aquaphyline(商標)という名称でSilabによって販売されているビオラ・トリコロル(Viola tricolor)の加水分解物、又はHyalurosmooth(商標)という名称で本出願人によって販売されているカシア・アングスティフォリア(Cassia angustifolia)種子から抽出された多糖、Relipidium(商標)という名称で販売されているサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の発酵加水分解物、或いはMelhydran(商標)という名称で本出願人によって販売されている、天然保湿因子の化合物又はハチミツの天然抽出物の1つ又は複数が言及され得る。
【0085】
他のタイプの活性剤、例えば、抗老化成分及び/又は漂白活性剤、汚染防止成分及び/又は色つやの輝きを促進する成分が組成物中に存在してもよい。
【0086】
これらは、例えば、DN-Age(商標)という名称で販売されているカシア・アラタ(Cassia alata)の葉抽出物、及び/又は抗酸化活性剤としてLitchiderm(商標)という名称で販売されているライチの抽出物、脱糖化剤(deglycating agent)としてCollRepair(商標)という名称で販売されているサルビア・ミルティオリザ(Salvia miltiorhizza)の抽出物及びナイアシンアミドの組合せ、Lox-Age(商標)という名称で販売されているチコリの抗しわ抽出物、Neurobiox(商標)という名称で販売されているアキレア・ミレフォリウム(Achillea millefolium)の抽出物、Perlaura(商標)という名称で販売されているポリゴヌム・ビストルタ(Polygonum bistorta)の抽出物、Hyalufix(商標)という名称で販売されているガランガ(galanga)の抽出物、Deliner(商標)という名称で販売されているトウモロコシの抽出物、又はEpigenist(商標)という名称で本出願人によって販売されているボアンドゼイア・スブテラネア(Voandzeia subterranea)の抽出物、或いは皮膚の堅さを促進する活性剤、例えば、Dermican(商標)という名称で販売されている合成テトラペプチド、Linefactor(商標)という名称で販売されているハイビスカス・アベルモスクス(Hibiscus abelmoschus)の抽出物、Proteasyl(商標)という名称で販売されているエンドウ豆の精製抽出物、Elestan(商標)という名称で販売されているマニルカラ・ムルチネルビス(Manilkara multinervis)の抽出物、Argassential(商標)という名称で本出願人によって販売されているアルガン(Argan)の果肉抽出物であり得る。Dermagenist(商標)という名称で販売されているオリガヌム・マジョラナ(Origanum majorana)植物の抽出物、及び/又はCollalift(登録商標)18という名称で販売されているカヤ・セネガレンシス(Khaya senegalensis)の抽出物も、化粧品組成物に添加され得る。
【0087】
汚染防止剤、及び/又は皮膚の輝きを促進する薬剤として、Arganyl(商標)という名称で販売されているアルガン油の抽出物、及びPurisoft(商標)という名称で本出願人によって販売されているモリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)の種子抽出物が言及され得る。
【0088】
本発明の別の主題は、健康な皮膚及び/又は健康な粘膜、有利には、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるために、本発明に従う抽出物又はそれを含む化粧品組成物の局所又は経口投与、有利には、局所投与を含む、美容ケア方法に関する。従って、前記方法は、皮膚及び/又は粘膜においてインボルクリン合成及び/又はヒアルロン酸含有量を増大させることを可能にする。
【0089】
本発明の一実施形態では、本方法は、有利には、脚、足、脇の下、手、大腿、胃、胸、首、腕、胴、背中、口唇粘膜、顔及び/又は頭皮、より有利には、胸及び/又は顔、さらにより有利には、顔から選択される、身体及び/又は顔及び/又は粘膜の全て又は一部に、本発明に従う抽出物又はそれを含む化粧品組成物を局所適用することからなる。
【0090】
有利には、本方法は、本発明に従う抽出物又はそれを含む化粧品組成物を、乾燥皮膚及び/又は乾燥粘膜に局所適用することからなる。
【0091】
本発明の代替的な実施形態では、美容ケア方法は、特に、皮膚におけるATP及び/又はタウリントランスポーターTAUTの合成を増大させることにより、皮膚の色つやの輝きを増大させることを可能にする。
【0092】
本発明の最後の主題は、皮膚及び/又は粘膜の異常乾燥状態に起因する病態、例えば、アトピー性皮膚炎、ひび割れ、湿疹及び/又は魚鱗癬などの予防及び/又は処置においてそれを使用するため、優先的には、皮膚科学的に使用するための、N.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物、又はそれを含む医薬組成物、優先的には、皮膚用組成物に関する。
【0093】
従って、N.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物、又はそれを含む医薬組成物、優先的には、皮膚用組成物を投与することを含む、皮膚及び/又は粘膜の異常乾燥状態に起因する病態、例えば、アトピー性皮膚炎、ひび割れ、湿疹及び/又は魚鱗癬などの予防及び/又は処置のための方法が提供される。
【0094】
最後に、皮膚及び/又は粘膜の異常乾燥状態に起因する病態、例えば、アトピー性皮膚炎、ひび割れ、湿疹及び/又は魚鱗癬などの予防及び/又は処置を目的とした薬剤、優先的には、皮膚用薬剤を製造するための、N.ラパセウム(N.lappaceum)の果皮抽出物、又はそれを含む医薬組成物、優先的には、皮膚用組成物の使用も考えられる。
【0095】
「異常乾燥状態」という用語は、本明細書では、治療的処置を必要とする病理学的な乾燥状態を意味することが意図される。
【0096】
本発明の一実施形態では、抽出物は、少なくとも1つの薬学的又は皮膚科学的に許容可能な賦形剤も含む医薬組成物、優先的には、皮膚用組成物中に含まれる。有利には、抽出物は、組成物の全重量に対して1x10-4重量%~10重量%、有利には1x10-3重量%~3重量%、より有利には、組成物の全重量に対して0.01重量%~3重量%の濃度で組成物中に存在する。
【0097】
本発明の記載に関連する実施例は以下に提供される。これらの実施例は説明的な目的で与えられるものであって、本発明の範囲を決して限定することはない。実施例のそれぞれは、一般的な範囲を有する。実施例は本発明の不可欠な部分であり、実施例を含むその全体としての記載から任意の従来技術と比べて新規であると思われる任意の特徴は何であっても本発明の不可欠な部分である。
例えば、本発明は以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]健康な皮膚及び/又は健康な粘膜、有利には、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるための、ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)の果皮抽出物の美容的使用。
[実施形態2]前記果皮抽出物が、前記皮膚及び/又は前記粘膜においてインボルクリン合成及び/又はヒアルロン酸含有量を増大させることを特徴とする、実施形態1に記載の美容的使用。
[実施形態3]前記抽出物が、溶媒又は溶媒混合物、例えば、水、アルコール、グリコール、ポリオール、99/1~1/99(w/w)の水/アルコール、水/グリコール、又は水/ポリオール混合物(例えば、水と、エタノール、グリセロール及び/又はブチレングリコール、及び/又は他のグリコール、例えば、キシリトール及び/又はプロパンジオールとの混合物)の中での抽出によって得られる、実施形態1又は2に記載の使用。
[実施形態4]前記抽出物が、唯一の溶媒としての水の中での抽出によって得られる、実施形態1~3のいずれかに記載の使用。
[実施形態5]局所的又は経口的、優先的には、局所的である、実施形態1~4のいずれかに記載の美容的使用。
[実施形態6]前記抽出物が健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜に適用されることを特徴とする、実施形態1~5のいずれかに記載の美容的使用。
[実施形態7]前記抽出物が皮膚の色つやの輝きを増大させることを特徴とする、実施形態1~6のいずれかに記載の美容的使用。
[実施形態8]前記抽出物が、ATP及び/又はタウリントランスポーターTAUTの合成を増大させる、実施形態7に記載の美容的使用。
[実施形態9]前記抽出物が、グリセリンを含有する水溶液中に可溶化され、有利には、前記抽出物を含む水溶液の全重量に対して、60重量%~90重量%の濃度、より有利には70重量%~85重量%の濃度、非常に有利には80重量%の濃度で存在することを特徴とする、実施形態1~8のいずれかに記載の美容的使用。
[実施形態10]少なくとも1つの許容可能な化粧品賦形剤を含む化粧品組成物において、前記抽出物が、前記組成物の全重量に対して、1x10 -4 重量%~10重量%、優先的には1x10 -4 重量%~5重量%、より優先的には1x10 -3 重量%~3重量%の濃度で前記組成物中に存在することを特徴とする、実施形態1~9のいずれかに記載の美容的使用。
[実施形態11]健康な皮膚及び/又は健康な粘膜、有利には、健康な乾燥皮膚及び/又は健康な乾燥粘膜の水和及び/又はバリア効果を維持及び/又は増大させるため、且つ/或いは皮膚の色つやの輝きを増大させるために、実施形態1~6のいずれかに記載の抽出物、又はそれを含む化粧品組成物を投与すること、優先的には、局所的に投与することを含む、美容ケア方法。
[実施形態12]皮膚及び/又は粘膜においてインボルクリン合成及び/又はヒアルロン酸含有量を増大させるため、且つ/或いは皮膚においてATP及び/又はタウリントランスポーターTAUTの合成を増大させるための、実施形態11に記載の美容ケア方法。
[実施形態13]有利には、脚、足、脇の下、手、大腿、胃、胸、首、腕、胴、背中、口唇粘膜、顔及び/又は頭皮、より有利には、胸及び/又は顔、さらにより有利には、顔から選択される、身体及び/又は顔及び/又は粘膜の全て又は一部に、実施形態1~6のいずれかに記載の抽出物又はそれを含む化粧品組成物を局所適用することにある、実施形態11又は12に記載の美容ケア方法。
[実施形態14]皮膚及び/又は粘膜の異常乾燥状態に起因する病態、例えば、アトピー性皮膚炎、ひび割れ、湿疹及び/又は魚鱗癬などの予防及び/又は処置において使用するため、優先的には、皮膚科学的に使用するための、ネフェリウム・ラパセウム(Nephelium lappaceum)の果皮抽出物、又はそれを含む医薬組成物、優先的には、皮膚用組成物。
[実施形態15]前記組成物の全重量に対して1x10 -4 重量%~10重量%の濃度、有利には、1x10 -3 重量%~3重量%の濃度、より有利には、前記組成物の全重量に対して0.01重量%~3重量%の濃度で前記組成物中に存在することを特徴とする、実施形態14に記載の抽出物。
[実施形態16]実施形態3又は4において定義される、実施形態14又は15に記載の抽出物。
【実施例
【0098】
実施例1:本発明に従ってN.ラパセウム(N.lappaceum)の抽出物を調製するための方法
実施例1a)果皮及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウム(N.lappaceum)の乾燥果皮を、20℃の温度で1時間にわたって浸軟により抽出した。得られた抽出物をデカントし、遠心分離し、そして上清をろ過した。抽出物は液体形態である。
【0099】
実施例1b)溶媒及び果皮の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウム(N.lappaceum)の乾燥果皮を、80℃の温度で1時間にわたって、水/エタノール混合物(30、70;v/v)中で浸軟により抽出した。粗抽出物をデカントし、遠心分離し、そして上清をろ過した。抽出物は液体形態である。
【0100】
実施例1c)果皮及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して5重量%の量のN.ラパセウム(N.lappaceum)の乾燥果皮を、20℃の温度で1時間にわたって浸軟により抽出した。得られた抽出物をデカントし、遠心分離し、そして上清をろ過した。抽出物は液体形態である。
【0101】
実施例1d)果皮及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウム(N.lappaceum)の乾燥果皮を、亜臨界条件下、120℃の温度、250バールの圧力下で抽出した。粗抽出物をデカントし、遠心分離し、そしてろ過した。抽出物は液体形態である。
【0102】
実施例2:N.ラパセウム(N.lappaceum)の抽出物の水和効果
実施例2a)インボルクリン合成の増大
プロトコル:2%のウシ胎仔血清を含有するMCDB153培地(Dutscher France)中で、正常、すなわち非病的なヒトケラチノサイトを培養した。37℃で3日間の培養の後、種々の最終濃度のN.ラパセウム(N.lappaceum)の抽出物(培地の全体積に対する重量による)を含有するか、又は抽出物を含まない(対照)、MCDB153培地で成長培地を置き換えた(表1)。培養培地を置き換え、次に抽出緩衝液中に可溶化した。インボルクリンの量をELISAアッセイによって定量化した。得られた結果は、対照に対する%で表される(n=3)(MEAN:平均;SD:標準偏差)。
【0103】
種々の抽出物を次のように調製した:
葉抽出物:葉及び抽出した水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウム(N.lappaceum)の乾燥葉を、周囲温度、すなわち20℃で1時間にわたって唯一の溶媒としての水の中で浸軟により抽出した。次に抽出物をデンカントし、遠心分離し、そして上清をろ過する。抽出物は液体形態である。
【0104】
種子抽出物:種子及び溶媒の全重量に対して5重量%の量のN.ラパセウム(N.lappaceum)の種子を、80℃の温度で1時間にわたって、唯一の溶媒としての水/エタノール混合物(70、30;v/v)中で浸軟により抽出した。次に抽出物をデカントし、遠心分離し、そして上清をろ過する。抽出物は液体形態である。
【0105】
枝抽出物:80℃の温度で1時間にわたって、枝及び唯一の溶媒としての水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウム(N.lappaceum)植物の乾燥枝を用いて浸軟によって抽出物を得た。粗抽出物をデカントし、遠心分離し、そしてろ過した。
【0106】
【表1】
【0107】
結論:果皮抽出物は、対照と比較して、インボルクリン合成を少なくとも7%、そして最大57%まで増大させ、皮膚及び/又は粘膜の水和を増大させるその能力が実証された。果皮抽出物は、N.ラパセウム(N.lappaceum)植物の他の抽出物、すなわち植物の他の部分、特に種子よりも大きいインボルクリン合成の増大を示し、皮膚の水和を増大させるために果皮を使用する利点が実証された。
【0108】
実施例2b)ヒアルロン酸合成の増大
プロトコル:2%のウシ胎仔血清を含有するMCDB153培地(Dutscher France)中で、正常なヒトケラチノサイトを培養した。37℃で3日間の培養の後、所与の濃度(培地の全体積に対する重量による最終濃度)のN.ラパセウム(N.lappaceum)の抽出物を含有する(表2)か、又は抽出物を含まない(対照)、MCDB153培地で成長培地を置き換えた。
【0109】
ヒアルロン酸の定量化は、ろ過した培養培地において、免疫化学的技法(Echelon K-1200ヒアルロン酸ELISAキット)により実行した。
【0110】
N.ラパセウム(N.lappaceum)の種々の抽出物を実施例2a)に記載されるように調製した。果皮抽出物は、実施例1a)に記載されたものである。果肉抽出物は、果肉及び水の全重量に対して10重量%の量のN.ラパセウム(N.lappaceum)の乾燥果肉を用いて、周囲温度、すなわち20℃で1時間にわたって、唯一の溶媒としての水の中で浸軟により得た。次に粗抽出物をデカントし、そして遠心分離し、ろ過した。
【0111】
【表2】
【0112】
結論:果皮抽出物は、ヒトケラチノサイトにおけるヒアルロン酸合成を少なくとも19%、そして最大94%まで増大させ、皮膚の水和並びに皮膚及び/又は粘膜のバリア効果を増大させるその能力が実証された。果皮抽出物は、植物の他の部分の抽出物、特に果肉抽出物及び種子抽出物よりも大きいヒアルロン酸合成の増大を示し、皮膚及び/又は粘膜の水和及び/又はバリア効果を増大させるために果皮を使用する利点が実証された。
【0113】
実施例2c)エラグ酸又はゲラニンによるインボルクリン合成の刺激の不在
プロトコル:2%のウシ胎仔血清を含有するMCDB153培地(Dutscher France)中で、正常、すなわち非病的なヒトケラチノサイトを培養した。37℃で3日間の培養の後、2つの最終濃度のエラグ酸又はゲラニン(w/v最終培地)を含有するか、又はエラグ酸もゲラニンも含まない(対照)、MCDB153培地で成長培地を置き換えた(表3)。培養培地を置き換えた。インボルクリンの量をELISAアッセイにより定量化した。得られた結果は、対照に対する%で表される(n=3)。
【0114】
【表3】
【0115】
結論:エラグ酸もゲラニンも、実施例4の化粧品成分中に存在するゲラニン及びエラグ酸の濃度に相当する試験濃度においてインボルクリン合成を刺激しなかった。従って、エラグ酸もゲラニンも、皮膚及び/又は粘膜の水和及び/又はバリア効果の維持及び/又は増大の原因ではない。
【0116】
実施例2d)本発明に従う抽出物による皮膚の水和の増大のインビボ測定
プロトコル:27人の女性集団の皮膚の水和のインビボ測定は、実施例4に記載される2%(w/v)の活性成分を含む化粧品製剤を一方の頬に適用してからT14(2週)及びT28(4週)の時点で、MoistureMap MM100(登録商標)機器(Courage & Khazaka)を用いる静電容量の測定によって実行した。実施例4の化粧品成分を含まないプラセボクリームを適用した後、同じ集団の他方の頬において同じ測定を行った。
【0117】
【表4】
【0118】
結論:活性成分を含むクリームは、プラセボクリームの存在下で測定された水和率に対して、分析した集団の皮膚の水和を少なくとも3%増大させることを可能にした。
【0119】
実施例3:本発明に従う抽出物による皮膚の色つやの輝きの増大
実施例3a)ATP合成
プロトコル:DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)及び10%のウシ胎仔血清を含む成長培地において、37℃(CO=5%、95%相対湿度)で3日間、正常、すなわち非病的なヒト線維芽細胞をインキュベートした。培地の全体積に対して、2つの最終体積濃度で、実施例1c)に従って調製された果皮抽出物を含有するHanks生理食塩水(H8264,Sigma France)で培地を置き換えた。24時間のインキュベーション期間の後、細胞をUVA下で照射し、次に37℃で24時間にわたって培養に戻した。
【0120】
細胞ATPをDMSOで抽出し、抽出物のアリコートにおいてアッセイした。
【0121】
【表5】
【0122】
結論:本発明に従う果皮抽出物は、ヒト線維芽細胞におけるATP合成を少なくとも60%、そして最大170%まで増大させた。
【0123】
実施例3b)タウリントランスポーターTAUTの合成の刺激
プロトコル:2%のウシ胎仔血清を含有するMCDB153培地(Dutscher France)中で、正常なヒトケラチノサイトをコンフルエンスまで培養した。培地の全体積に対して0.2体積%の培地中の最終濃度の、実施例1c)に従って調製された果皮抽出物の存在下、又は抽出物を用いずに(対照)、細胞を24時間にわたってインキュベートした。
【0124】
細胞を溶解させてから、TAUTタンパク質含有量をELISAアッセイにより定量化した。総タンパク質含有量は、ブラッドフォード法により定量化した。結果は、タンパク質1mg当たりのTAUT(ng)で表される(n=3)。
【0125】
【表6】
【0126】
結論:果皮抽出物はヒトケラチノサイトにおけるTAUTタンパク質合成を少なくとも80%増大させ、エネルギーを与えるその活性剤特性が実証された。
【0127】
実施例4:化粧品活性成分
果皮抽出物 実施例1a) 0.5%
グリセリン 80%
水 19.5%
【0128】
実施例5:製剤例
実施例5a):身体及び顔用セラムの形態の本発明に従う組成物:
【0129】
【表7】
【0130】
実施例5b):顔用クリーム
特に種々の相を混ぜ合わせることに関して当業者に知られている方法に従って、以下の組成物が調製される。示される量は、組成物の全重量に対する重量百分率である。
【0131】
実施例4に従う化粧品成分 3.00
キサンタンガム 0.50
EDTA 0.05
ステアレス-2 2.00
ステアレス-21 2.50
セテアリルアルコール 1.00
カプリル酸プロピルヘプチル 15.00
水酸化ナトリウム(30%溶液) 0.10
フェノキシエタノール、クロルフェネシン、安息香酸、ブチレングリコール、ソルビン酸の混合物(Germazide(商標)PBS) 1.25
ポリアクリレート-X、イソヘキサデカン及びポリソルベート60の混合物(Sepigel(商標)SMS60) 4.00
水 100になるまでの量