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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】収納容器
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20230710BHJP
   G21F 5/005 20060101ALI20230710BHJP
   G21F 5/12 20060101ALI20230710BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
G21F9/36 521B
G21F5/005
G21F5/12 D
G21F9/36 501C
G21C19/32 080
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020042873
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143943
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 崇
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】下条 純
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-043058(JP,A)
【文献】特開2000-094262(JP,A)
【文献】特開2014-114942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
G21F 5/005
G21F 5/12
G21C 19/32
F16B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質が収納される収納空間を有する有底筒状の胴部と、
前記胴部の一端部に配置された一次蓋と、
前記一次蓋の外側に配置された二次蓋と、
前記一次蓋を前記胴部の一端部に取り付けるボルトと、
前記ボルトの頭部と前記一次蓋との間に配置される座金とを備え、
前記座金には、厚さ方向の途中に、径方向に貫通した孔が形成されていることを特徴とする収納容器。
【請求項2】
前記ボルトの軸部の周囲に、粉末状の粒子が存在することを特徴とする請求項1に記載の収納容器。
【請求項3】
前記座金に、複数の前記孔が形成され、
複数の前記孔が、前記座金の周方向に離れていることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納容器。
【請求項4】
前記座金の内周面は、厚さ方向の一端から厚さ方向の中央に近づくにつれて内径が小さくなるように面取りされていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質が収納される放射性物質収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質は、放射線の遮蔽が可能な水中で、有底筒状の容器本体に収納される。水中で容器本体の開口を一次蓋によって閉じた後、放射性物質が収納された容器本体および一次蓋を水中から取り出す。その後、一次蓋を容器本体にボルトによって取り付け、容器本体から水を抜き、容器本体内を乾燥させ、ヘリウムガスを充填する。二次蓋を容器本体に取り付け、一次蓋と二次蓋の間の空間を真空乾燥させる。
【0003】
上記の一連の工程において、水中で、放射性物質を容器本体へ収納し、容器本体の開口を一次蓋で閉じることにより、一次蓋および容器本体に形成されたボルト挿入孔等に水が入り込む。ボルト挿入孔等に入り込んだ水は、除去されにくく、孔の底等に残留しやすい。残留した水は、一次蓋および二次蓋の間で蒸発して凝縮し、容器や金属ガスケットなどを腐食させるおそれがあるため、ボルト挿入孔等に入り込んだ水を、可能な限り除去することが望ましい。
【0004】
特許文献1の収納容器では、一次蓋を容器本体に取り付ける一次蓋締付けボルトに、軸方向に貫通した貫通孔が形成されている。ボルト挿入孔の底に残留した水は、一次蓋締付けボルトの貫通孔を通って、ボルト挿入孔から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-2777585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、一次蓋締付けボルトに軸方向に貫通した貫通孔を形成した場合、一次蓋締付けボルトの強度が低くなる。一次蓋の締付に必要なボルトの締付力は設計要求から決まるため、貫通孔がある場合ボルトに生じる発生応力が高くなり、ボルト材の応力の設計基準値に対して裕度が小さくなる、或いは、ボルトの径を太くする必要がある。
【0007】
本発明は、一次蓋締付けボルトの強度を低下させることなく、ボルト挿入孔に残留した水等を外部に排出可能な放射性物質収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射性物質収納容器は、放射性物質が収納される収納空間を有する有底筒状の胴部と、前記胴部の一端部に配置された一次蓋と、前記一次蓋の外側に配置された二次蓋と、前記一次蓋を前記胴部の一端部に取り付けるボルトと、前記ボルトの頭部と前記一次蓋との間に配置される座金とを備え、前記座金には、厚さ方向の途中に、径方向に貫通した孔が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、一次蓋締付けボルトの強度を低下させることなく、ボルト挿入孔に残留した水等を外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る放射性物質収納容器の断面図である。
図2図1に示す放射性物質収納容器のIIの拡大断面図である。
図3A】座金の平面図である。
図3B】座金の断面図(図3AのIIIB-IIIB線に沿った断面図)である。
図4】本発明の第2実施形態に係る放射性物質収納容器のボルト周辺の拡大断面図である。
図5】変形例に係る放射性物質収納容器の座金の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
放射性物質収納容器1は、図1に示すように、有底筒状の胴部2と、胴部2の一端部に配置される一次蓋3および二次蓋4とを有する。図1では、断面を示すハッチングを省略している。放射性物質収納容器1には、放射性物質が収納される。放射性物質は、例えば使用済燃料又は放射性廃棄物である。放射性廃棄物は、金属廃棄物およびプラスチック廃棄物等である。
【0012】
胴部2には、放射性物質が収納される空間2Sが形成されている。胴部2は、金属製である。胴部2の外側に、放射線を遮蔽する遮蔽層11、12が配置されている。
【0013】
一次蓋3は、胴部2の一端部にボルト5によって取り付けられている。一次蓋3は、金属製である。二次蓋4は、胴部2の一端部にボルト6によって取り付けられている。二次蓋4は、一次蓋3の外側に配置されている。一次蓋3の外側とは、一次蓋3に対して空間2Sと反対側である。
【0014】
図2に、図1のボルト5の周辺を示している。図2は、図1のIIの拡大図である。図2に示すように、ボルト5の軸部21が、ボルト挿入孔30に配置されている。ボルト挿入孔30は、一次蓋3および胴部2に連通した孔である。
【0015】
ボルト5の頭部22は、一次蓋3と二次蓋4の間の空間Mに配置されている。ボルト5の頭部22と一次蓋3との間に、座金7が配置されている。
【0016】
座金7は、図3Aに示すように、環状である。座金7には、図3Bに示すように、径方向に貫通した第1孔7aおよび第2孔7bが形成されている。第1孔7aおよび第2孔7bは、座金7の厚さ方向の途中に形成されている。「座金7の厚さ方向」とは、座金7の径方向に直交する方向であり、且つ、厚さ方向の一方の端面(図3B中の上端面)7xおよび他方の端面(図3B中の下端面)7yに直交する方向である。「座金7の厚さ方向の途中」とは、座金7の厚さ方向について座金7の一方の端面7xと他方の端面7yとの間である。「座金7の一方の端面7xと他方の端面7yとの間」には、座金7の一方の端面7xと他方の端面7yが含まれない。
【0017】
第1孔7aおよび第2孔7bは、座金7の厚さ方向の中央Ct付近に形成されている。第1孔7aおよび第2孔7bは、座金7の厚さ方向について同じ位置に形成されているが、座金7の厚さ方向について異なる位置に形成されていてもよい。
【0018】
図3Aに示すように、第1孔7aおよび第2孔7bは、径方向に対向している。第1孔7aおよび第2孔7bは、座金7の周方向に半周だけ離れている。第1孔7aは、第2孔7bを、環状の座金7の中心Cを中心に180度回転させた位置に形成されている。
【0019】
なお、本発明において、「座金の厚さ方向の途中に形成され、径方向に貫通した複数の孔が、座金の周方向に離れている」とは、複数の孔が、座金の厚さ方向について同じ位置に形成されているかに関係なく、座金の周方向に離れていることを意味する。本発明において、「座金の厚さ方向の途中に形成され、径方向に貫通した複数の孔が、座金の周方向に離れている」とは、座金の厚さ方向について同じ位置に形成された複数の孔が座金の周方向に離れていることを意味することもあり、座金の厚さ方向について異なる位置に形成された複数の孔が座金の周方向に離れていることを意味することもある。
【0020】
図3Bに示すように、座金7の内周面には、第1面取り部7hおよび第2面取り部7iが形成されている。第1面取り部7hは、厚さ方向の一端(図3B中の上端)7uから厚さ方向の中央Ctに近づくにつれて内径が小さくなるように面取りされた部分である。第2面取り部7iは、厚さ方向の他端(図3B中の下端)7lから厚さ方向の中央Ctに近づくにつれて内径が小さくなるように面取りされた部分である。
【0021】
以下の方法によって、放射性物質が放射性物質収納容器1(図1参照)に収納される。
水中で、放射性物質を胴部2に収納し、胴部2の開口を一次蓋3によって閉じる。水中から、放射性物質が収納された胴部2および一次蓋3を取り出し、ボルト5によって一次蓋3を胴部2に取り付ける。胴部2内の水を抜き、胴部2内を乾燥させ、ヘリウムガスを充填する。一次蓋3の外側に二次蓋4を配置し、ボルト6によって二次蓋4を胴部2に取り付ける。一次蓋3と二次蓋4と胴部2とに囲まれた空間Mを真空乾燥させる(図2参照)。
【0022】
空間Mを真空乾燥させたとき、図2の拡大図に示すように、ボルト挿入孔30に残留した水等は上昇し、座金7の第1孔7aおよび第2孔7bを通って、ボルト挿入孔30から排出される。
【0023】
上記により、ボルト挿入孔30に残留した水等を、ボルト挿入孔30から効率よく排出することができる。本実施形態では、ボルト5に軸方向に貫通した孔を形成することなく、ボルト挿入孔30に残留した水等を排出することができるため、ボルト5の強度が低下しない。
上記より、ボルト5の強度を低下させることなく、ボルト挿入孔30に残留した水等を、ボルト挿入孔30から外部に排出することができる。
【0024】
また、一次蓋3を胴部2に取り付けるとき(図1および図2参照)、ボルト5を締め付けることによって、座金7の端面(図3Bに示す一方の端面7x)が変形することがある。しかし、図3Bに示すように、座金7の第1孔7aおよび第2孔7bは、厚さ方向の途中、言い換えると、座金7の一方の端面7xと他方の端面7yの間に形成されているため、ボルト5の端面(一方の端面7x)が変形しても、第1孔7aおよび第2孔7bが塞がれない。そのため、水等が通る通路が確保される。
【0025】
また、図3Bに示すように、座金7に複数の孔(第1孔7a、第2孔7b)が形成されているため、いずれかの孔が水等によって塞がれても、他の孔からボルト挿入孔30の水等を排出することができる。
【0026】
また、図3Bに示すように、座金7の内周面の一端部(図3B中の上端部)が面取りされたことにより、第1面取り部7hが形成されている。座金7の内周面の他端部(図3B中の下端部)が面取りされたことにより、第2面取り部7iが形成されている。
図2の拡大図に示すように、第1面取り部7hが、ボルト5の頭部22と軸部21の角部5kに沿って配置される。角部5kには丸みがあるが、第1面取り部7hを丸みのある角部5kに沿わせることができる。これにより、ボルト5を締め付けたとき、座金7が変形しにくい。
また、座金7が径方向の片方に寄って取り付けられた場合であっても座金7が一次蓋3のボルト孔に掛かることなく、座金7と一次蓋3が確実に接触する。
さらに、座金7の内周面の厚さ方向の両端部に面取り部(第1面取り部7h、第2面取り部7i)が形成されているため、座金7の表と裏を逆にしても、上述した効果が得られる。そのため、ボルト5により一次蓋3を胴部2に取り付けるとき、座金7の表と裏を考慮しなくてよい。
【0027】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図4を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、ボルト5の軸部21に粉末状の粒子が付着している点である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0028】
図4の拡大図に示すように、ボルト挿入孔30には、ボルト5の軸部21の周囲に、粉末状の粒子110が存在する。粉末状の粒子110により、ボルト挿入孔30には、ボルト5の軸部21の周囲に、隙間Gが確実に形成される。粉末状の粒子は、固体である。粉末状の粒子とは、粉体である。粉末状の粒子は、塊状のもの、および、粉体を固めて成形された、粉体より大きいもの(顆粒等)を含まない。粉末状の粒子は、金属を腐食させない粒子であることが好ましい。粉末状の粒子は、例えば、黒鉛紛、二硫化モリブデンであるが、これらに限定されない。
【0029】
ボルト挿入孔30に残留した水等は、真空乾燥により、図4の拡大図に示すように、隙間Gに吸い上げられる。吸い上げられた水は、座金7の第1孔7aおよび第2孔7bを通って排出される。
【0030】
以上のように、第2実施形態の放射性物質収納容器によると、第1実施形態の放射性物質収納容器1と同様に、ボルト5の強度を低下させることなく、ボルト挿入孔30に残留した水等を外部に排出することができる。また、真空乾燥により、ボルト挿入孔30に残留した水等が隙間Sに吸い上げられるため、ボルト挿入孔30から水等が排出されやすい。
【0031】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0032】
例えば、上記第1実施形態および第2実施形態では、図3Aおよび図3Bに示すように、座金7には、厚さ方向の途中に、径方向に貫通した2つの孔(第1孔7a、第2孔7b)が形成されている。しかし、座金の厚さ方向の途中に径方向に貫通した孔は、座金に1個だけ形成されていてもよく、3個以上形成されていてもよい。孔の個数は限定されないが、2個が好ましい。
【0033】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、図3Aに示すように、座金7の厚さ方向の途中に径方向に貫通した2つの孔(第1孔7a、第2孔7b)が、座金7の周方向に、半周だけ離れている。しかし、孔と孔の間隔は、座金7の周方向について半周でなくてよい。
【0034】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、図3Bに示すように、第1孔7aおよび第2孔7bが、座金7の厚さ方向の中央Ct付近に形成されている。しかし、第1孔7aおよび第2孔7bは、座金7の厚さ方向の中央Ct付近に形成されていなくてもよい。座金の径方向に貫通した孔は、厚さ方向の途中であれば、どの位置に形成されていてもよい。
【0035】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、図3Bに示すように、座金7の内周面において、厚さ方向の一方の端部に第1面取り部7hが形成され、厚さ方向の他方の端部に第2面取り部7iが形成されている。言い換えると、座金7の内周面において厚さ方向の両端部が面取りされている。しかし、座金7の内周面が面取りされていなくてもよい。また、図5に示すように、座金207の内周面において厚さ方向の一方の端部だけに、面取り部207iが形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1、301 放射性物質収納容器
2 胴部
2S 空間
3 一次蓋
4、304 二次蓋
5、6 ボルト
7 座金
7a 第1孔
7b 第2孔
7h 第1面取り部
7i 第2面取り部
7x 一方の端面
7y 他方の端面
8A、208A 周側面
8B、208B 一端面
8C、208C 他端面
21 軸部
22 頭部
30 ボルト挿入孔
110 粒子
310 外容器
311 容器本体
S 隙間
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5