IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フランスベッド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-センサー 図1
  • 特許-センサー 図2
  • 特許-センサー 図3
  • 特許-センサー 図4
  • 特許-センサー 図5
  • 特許-センサー 図6
  • 特許-センサー 図7
  • 特許-センサー 図8
  • 特許-センサー 図9
  • 特許-センサー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】センサー
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/12 20060101AFI20230710BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A61G5/12 701
A47C7/62 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020087433
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021180752
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 寛太郎
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0132875(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/12
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フットレストと、座席部とを備える車椅子に使用されるセンサーであって、
使用者が着座した際の圧力を検出するための複数のセンサー部を有し、少なくとも1つの前記センサー部からなる第1センサー群と少なくとも1つの前記センサー部からなる第2センサー群とが前後方向に並ぶセンサーシートと、
前記センサーシートからの情報に基づき、前記使用者の姿勢崩れを判定する判定部を有するコントローラと、を備え、
前記センサーシートは、前記座席部に配置され、
前記第1センサー群は、前記センサーシートの前記前後方向における中心よりも前記前後方向における前方側に位置し、
前記第2センサー群は、前記中心よりも前記前後方向における後方側に位置し、
前記中心から前記第1センサー群までの距離は、前記中心から前記第2センサー群までの距離よりも短く、
前記判定部は、前記第1センサー群の検出値から得られる第1判定値と、前記第2センサー群の検出値から得られる第2判定値とを比較した結果に基づき、前記使用者の前記前後方向における姿勢崩れを判定する、
センサー。
【請求項2】
前記センサーシートにおいて、少なくとも1つの前記センサー部からなる第3センサー群と少なくとも1つの前記センサー部からなる第4センサー群とが前記前後方向と交差する左右方向に並び、
前記判定部は、前記第3センサー群の検出値から得られる第3判定値と前記第4センサー群の検出値から得られる第4判定値とを比較した結果に基づき、前記使用者の前記左右方向における姿勢崩れを判定する、
請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記コントローラは、前記使用者の姿勢崩れを判定するための感度を調整する調整部をさらに備える、
請求項1または2に記載のセンサー。
【請求項4】
前記センサーシートは、第1シート材と、前記第1シート材に重なる第2シート材とをさらに有し、
前記第1シート材は、前記第2シート材とは反対側に窪む凹部を有し、
前記センサー部は、前記凹部において前記第1シート材と前記第2シート材の間に配置される、
請求項1乃至のうちいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項5】
前記センサーシートは、前記凹部において前記センサー部と前記第2シート材の間に位置するプレートをさらに有する、
請求項に記載のセンサー。
【請求項6】
使用者が着座した際の圧力を検出するための複数のセンサー部を有し、少なくとも1つの前記センサー部からなる第1センサー群と少なくとも1つの前記センサー部からなる第2センサー群とが第1方向に並ぶセンサーシートと、
前記センサーシートからの情報に基づき、前記使用者の姿勢崩れを判定する判定部を有するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記センサーシートに前記使用者が着座した状態における前記複数のセンサー部の検出値に基づき、前記使用者の姿勢崩れを判定するための設定値を定めるキャリブレーション部をさらに備え、
前記判定部は、前記第1センサー群の検出値および前記設定値に基づき1判定値を決定するとともに、前記第2センサー群の検出値および前記設定値に基づき2判定値を決定し、前記第1判定値と前記第2判定値とを比較した結果に基づき、前記使用者の前記第1方向における姿勢崩れを判定する、
センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座する使用者の姿勢崩れを検知することが可能なセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
自力で歩行することが困難な老人や身体が不自由な人は、車椅子を利用して外出したり、室内を移動したりする。車椅子の使用者によっては、着座状態を維持することができず、座席上で姿勢を崩してしまうことがある。使用者が自力で姿勢を直すのが困難な場合には、使用者が座席から転落することもある。そのため、介護者は、車椅子の使用者を見守る必要がある。また、使用者の着座時の姿勢崩れは、使用者の見た目からだけでは気づきづらい。
【0003】
特許文献1においては、エアセルを用いて使用者の姿勢を補正可能なクッションおよび車椅子が開示されている。これらクッションおよび車椅子においてはエアセルを含む複雑な機構が必要であり、活用が困難な場合がある。さらに、使用者の姿勢を検知するための方式にも改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-71099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、着座する使用者の姿勢崩れを精度よく検知することが可能なセンサーを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るセンサーは、使用者が着座した際の圧力を検出するための複数のセンサー部を有し、少なくとも1つの前記センサー部からなる第1センサー群と少なくとも1つの前記センサー部からなる第2センサー群とが第1方向に並ぶセンサーシートと、前記センサーシートからの情報に基づき、前記使用者の姿勢崩れを判定する判定部を有するコントローラと、を備える。前記判定部は、前記第1センサー群の検出値から得られる第1判定値と、前記第2センサー群の検出値から得られる第2判定値とを比較した結果に基づき、前記使用者の前記第1方向における姿勢崩れを判定する。
【0007】
前記センサーシートにおいて、少なくとも1つの前記センサー部からなる第3センサー群と少なくとも1つの前記センサー部からなる第4センサー群とが前記第1方向と交差する第2方向に並んでもよい。この場合において、前記判定部は、前記第3センサー群の検出値から得られる第3判定値と前記第4センサー群の検出値から得られる第4判定値とを比較した結果に基づき、前記使用者の前記第2方向における姿勢崩れを判定してもよい。
【0008】
前記コントローラは、前記使用者の姿勢崩れを判定するための感度を調整する調整部をさらに備えてもよい。前記第1方向は、前記センサーシートの前後方向に相当し、前記第1センサー群は、前記センサーシートの前記前後方向における中心よりも前記前後方向における前方側に位置し、前記第2センサー群は、前記中心よりも前記前後方向における後方側に位置し、前記中心から前記第1センサー群までの距離が前記中心から前記第2センサー群までの距離よりも短くてもよい。
【0009】
前記センサーシートは、第1シート材と、前記第1シート材に重なる第2シート材とをさらに有し、前記第1シート材は、前記第2シート材とは反対側に窪む凹部を有し、前記センサー部は、前記凹部において前記第1シート材と前記第2シート材の間に配置されてもよい。前記センサーシートは、前記凹部において前記センサー部と前記第2シート材の間に位置するプレートをさらに有してもよい。
【0010】
前記コントローラは、前記センサーシートに前記使用者が着座した状態における前記複数のセンサー部の検出値に基づき、前記使用者の姿勢崩れを判定するための設定値を定めるキャリブレーション部をさらに備えてもよい。この場合において、前記判定部は、前記第1センサー群の検出値および前記設定値に基づき前記第1判定値を決定するとともに、前記第2センサー群の検出値および前記設定値に基づき前記第2判定値を決定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、着座する使用者の姿勢崩れを精度良く検知することが可能なセンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係るセンサーを有する車椅子の概略的な構成を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係るセンサーシートの概略的な平面図である。
図3図3は、図2中のA-A線に沿うセンサーシートの概略的な断面図である。
図4図4は、一実施形態に係るセンサーシートに接続されるコントローラを示す図である。
図5図5は、一実施形態に係るセンサーの第1警報モードを含む動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、一実施形態に係るセンサーの第2警報モードを含む動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、一実施形態に係るセンサーの第3警報モードを含む動作の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、一実施形態に係るセンサーのキャリブレーションの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、離席判定方法の一例を説明するための図である。
図10図10は、姿勢崩れ判定方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態につき図面を参照しながら説明する。
本実施形態においては、車椅子の座席部に配置されるセンサーを例示する。当該センサーは、車椅子のみならず他の製品の座席等にも適用することが可能である。各図においては、センサーを構成する各部材の相対的な大きさや位置を模式的に示すことがある。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施形態に係るセンサー1を有する車椅子100の概略的な構成を示す図である。図1に示すように車椅子100は、フレーム2と、一対の前輪3と、一対の後輪4と、座席部5とを備えている。
【0015】
前輪3と後輪4は、フレーム2に対して回転可能に設けられている。前輪3と後輪4によって車椅子100を走行させることができる。フレーム2には一対のハンドル6が設けられており、介護者はハンドル6を握って車椅子100を押して走行させることが可能である。
【0016】
使用者が着座する座席部5は、一対の後輪4の間においてフレーム2に設けられている。座席部5は、クッション材7を有している。クッション材7は、座席部5に着脱可能に取付けられていてもよい。各前輪3の近傍において、フレーム2に一対のフットレスト8が設けられている。座席部5に着座した使用者は、これらフットレスト8に左右の足を乗せる。
【0017】
センサー1は、センサーシート10と、センサーシート10に接続されたコントローラ20(リモートコントローラ)とを備えている。センサーシート10は、後述するセンサー部Pを有している。センサーシート10は、座席部5のクッション材7に配置される。センサーシート10は、クッション材7に内蔵されてもよいし、クッション材7の上に配置されてもよいし、クッション材7の下に配置されてもよい。センサーシート10は、任意のクッション材と組み合わせて使用することが可能である。
【0018】
コントローラ20は、コードCを介してセンサーシート10と通信可能に接続されている。コントローラ20とセンサーシート10は、コードCと着脱可能に接続されてもよい。コントローラ20は、コードCを介さずに無線でセンサーシート10と接続されてもよい。
【0019】
コントローラ20は、判定部21と、調整部22と、キャリブレーション部23とを主要な要素として備えている。判定部21は、センサーシート10からの情報に基づき、座席部5に着座している使用者の状態を判定する。使用者の状態には、使用者が座席部5に着座しているか、座席部5から離席したかのみならず、着座した状態での座席部5に対する前後方向や左右方向への姿勢崩れ(例えば、横崩れや仙骨座りなど)が含まれる。
【0020】
調整部22は、座席部5に着座する使用者の状態を判定部21が判定するための感度を調整する。感度の調整には、例えば、判定部21が判定するために使用する閾値(後述する閾値T1,T2,T3)の調整が含まれる。調整部22により、着座する使用者に応じて自由に感度を調整することができる。感度の調整は、センサー1の起動中いつでも変更可能であってもよい。
【0021】
キャリブレーション部23は、センサーシート10に使用者が着座した状態における複数のセンサー部Pの検出値に基づき、座席部5に着座する使用者に応じて、使用者の状態を判定するための設定値Rを定める。キャリブレーション方法については、図8を参照して後述する。
【0022】
例えば、コントローラ20は、FPGA等の論理回路デバイス、各種の条件を記憶するメモリ、コードCを介してセンサーシート10から得られるアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路、センサー1の各部に電源を供給するバッテリ等を含む。判定部21、調整部22およびキャリブレーション部23を含むコントローラ20の動作は、例えば上記論理回路デバイスによって実現することができる。ただし、コントローラ20の動作は、プロセッサがコンピュータプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0023】
車椅子100やセンサー1は、図1に示した構成要素以外の他の要素を含むものとして定義されてもよい。例えば、コントローラ20は、センサー1の動作条件等を表示するディスプレイや動作条件等を他の装置に送信する通信ユニットなどの出力装置を備えてもよい。
【0024】
図2は、本実施形態に係るセンサーシート10の一例を示す概略的な平面図である。センサーシート10は、例えば矩形状のシートである。センサーシート10は、4個のセンサー部P(P1,P2,P3,P4)を有している。センサー部Pは、センサーシート10が配置される座席部5に着座している使用者の体重による圧力を検出する。センサー部Pによるセンシングの方式は特に限定されないが、例えば加圧式や静電容量式を用いることができる。静電容量式の場合、センサー部Pは一対の電極間の静電容量の変化から圧力を検出することができる。
【0025】
センサーシート10が有するセンサー部Pの数は4個に限定されず、3個以下であってもよいし、5個以上であってもよい。各センサー部Pは、それぞれコードCを介して図1に示したコントローラ20と接続されている。
【0026】
4個のセンサー部P(P1,P2,P3,P4)は、センサーシート10に対して第1方向X1および第1方向X1と交差する第2方向X2にマトリクス状に配置されている。本実施形態においては、第1方向X1と第2方向X2が直交している。
【0027】
センサーシート10は、第1方向X1における端部10a,10bと、第2方向X2における端部10c,10dとを有している。図2の例において、端部10a,10bは第2方向X2と平行であり、端部10c,10dは第1方向X1と平行である。
【0028】
センサー部P1,P2は、センサーシート10の第1方向X1における中心C1と端部10aの間に位置している。センサー部P3,P4は、中心C1と端部10bの間に位置している。センサー部P1,P3は、センサーシート10の第2方向X2における中心C2と端部10cの間に位置している。センサー部P2,P4は、中心C2と端部10dの間に位置している。
【0029】
センサー部P1,P3は、第1方向X1に並んでいる。センサー部P2,P4は、第1方向X1に並んでいる。センサー部P1,P2は、第2方向X2に並んでいる。センサー部P3,P4は、第2方向X2に並んでいる。
【0030】
図2の例においては、センサー部P1から中心C2に向けてパッドPD1が延出し、センサー部P2から中心C2に向けてパッドPD2が延出し、センサー部P3から中心C2に向けてパッドPD3が延出し、センサー部P4から中心C2に向けてパッドPD4が延出している。
【0031】
コードCは、センサーシート10の端部10bの近傍に接続されている。コードCとセンサーシート10の接続位置は、例えば中心C2と一致する。コードCは、固定具Fによってセンサーシート10に固定されている。固定具Fとしては、例えば合成樹脂製のバンドを用いることができるが、この例に限られない。
【0032】
コードCは、パッドPD1に接続される配線LN1と、パッドPD2に接続される配線LN2と、パッドPD3に接続される配線LN3と、パッドPD4に接続される配線LN4とを含む。図2の例において、配線LN1,LN2,LN3,LN4は、センサーシート10の内部で端部10bから中心C2に沿って第1方向X1に延び、それぞれパッドPD1,PD2,PD3,PD4に対応する位置で第2方向X2に曲がっている。
【0033】
センサー部P1,P2,P3,P4のうちの少なくとも1つによって、使用者の姿勢崩れを検出するためのセンサー群Gが構成される。本実施形態においては、センサー部P1,P2により第1センサー群G1が構成され、センサー部P3,P4により第2センサー群G2が構成され、センサー部P1,P3により第3センサー群G3が構成され、センサー部P2,P4により第4センサー群G4が構成される。第1センサー群G1と第2センサー群G2は、第1方向X1に並んでいる。第3センサー群G3と第4センサー群G4は、第2方向X2に並んでいる。
【0034】
第1センサー群G1(センサー部P1,P2)は、中心C1よりも端部10a側に位置し、第2センサー群G2(センサー部P3,P4)は、中心C1よりも端部10b側に位置している。
【0035】
中心C1から第1センサー群G1までの距離L1(中心C1からセンサー部P1,P2までの距離)は、中心C1から第2センサー群G2までの距離L2(中心C1からセンサー部P3,P4までの距離)よりも短い。言い換えると、端部10aから第1センサー群G1までの距離L3(端部10aからセンサー部P1,P2までの距離)は、端部10bから第2センサー群G2までの距離L4(端部10bからセンサー部P3,P4までの距離)よりも長い。
【0036】
一方、第3センサー群G3と第4センサー群G4は、中心C2に関して対称に並んでいる。つまり、中心C2から第3センサー群G3までの距離(中心C2からセンサー部P1,P3までの距離)と、中心C2から第4センサー群G4までの距離(中心C2からセンサー部P2,P4までの距離)とが等しい。また、端部10cから第3センサー群G3までの距離(端部10cからセンサー部P1,P3までの距離)と、端部10dから第4センサー群G4までの距離(端部10dからセンサー部P2,P4までの距離)とが等しい。
【0037】
本実施形態においては、第1方向X1がセンサーシート10の前後方向に相当する。端部10aはセンサーシート10の前方側に相当し、端部10bはセンサーシート10の後方側に相当する。また、第2方向X2がセンサーシート10の左右方向に相当する。端部10cはセンサーシート10の右側に相当し、端部10dはセンサーシート10の左側に相当する。センサーシート10の前後方向および左右方向は、センサーシート10が設置される座席部5の前後方向および左右方向と一致する。
【0038】
つまり、第1センサー群G1と第2センサー群G2はセンサーシート10が配置される座席部5の前後方向に並んでおり、第1センサー群G1は座席部5の前方側に位置し、第2センサー群G2は座席部5の後方側に位置している。また、第3センサー群G3と第4センサー群G4はセンサーシート10が設置される座席部5の左右方向に並んでおり、第3センサー群G3は座席部5の右側に位置し、第4センサー群G4は座席部5の左側に位置している。
【0039】
座席部5に着座する使用者がフットレスト8に足を乗せた場合、使用者の体重による圧力は座席部5の後方寄りに強く作用する。そのため、センサーシート10が座席部5の中央に配置され、かつ中心C1から第1センサー群G1までの距離L1と中心C1から第2センサー群G2までの距離L2が等しい場合、使用者がフットレスト8に足を乗せたときに使用者の体重による圧力を正確に検出できない可能性がある。
【0040】
これに対し、本実施形態のようにセンサー部Pをセンサーシート10の後方寄りに配置することで、使用者がフットレスト8に足を乗せた場合であっても使用者の体重による圧力を正確に検出でき、前後方向における姿勢崩れの判定精度が向上する。
【0041】
図3は、図2中のA-A線に沿うセンサーシート10の概略的な断面図である。センサーシート10は、第1シート材11と、第1シート材に重なる第2シート材12とを有している。第1シート材11および第2シート材12は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)で形成することができる。
【0042】
第1シート材11は、第2シート材12とは反対側に窪む第1凹部11aと第2凹部11bを有している。図2に示すように、第1凹部11aはセンサー部P1,P2,P3,P4のそれぞれに対して設けられ、第2凹部11bはセンサーシート10内での配線LN1,LN2,LN3,LN4の形状に合わせて設けられている。
【0043】
図3に示すように、センサー部P1,P2は、第1凹部11aにおいて第1シート材11と第2シート材12の間に配置されている。センサー部P3,P4も同様に、第1凹部11aにおいて第1シート材11と第2シート材12の間に配置されている。コードC(配線LN1,LN2)は、第2凹部11bにおいて第1シート材11と第2シート材12の間に配置されている。配線LN3,LN4も同様に、第2凹部11bにおいて第1シート材11と第2シート材12の間に配置されている。
【0044】
図3に示す各第1凹部11aにおいて、センサー部P1,P2と第2シート材12の間には、プレート13が配置されている。センサー部P3,P4と第2シート材12の間にもプレート13が配置されている。プレート13は、第1シート材11および第2シート材12よりも高い剛性を有している。プレート13は、例えばABS樹脂で形成することができる。
【0045】
プレート13は、第1シート材11および第2シート材12より厚くてもよい。一例では、プレート13の厚さが1mmであり、第1シート材11および第2シート材12の厚さが0.8mmである。このようなプレート13をセンサー部P1,P2,P3,P4の上方に配置することにより、センサー部P1,P2,P3,P4の感度を上げることができる。
【0046】
第1シート材11と第2シート材12は、これらの間にセンサー部P1,P2、プレート13およびコードCを配置した状態で貼り合わされる。第1シート材11と第2シート材12の貼り合わせには、例えば高周波溶着を用いることができる。
【0047】
図3の例においては、貼り合わされた第1シート材11と第2シート材12が袋体14に入れられている。袋体14は、例えば第1シート材11および第2シート材12よりも薄く、第1シート材11および第2シート材12の外面に密着している。一例では、袋体14の厚さは0.3mmであり、ポリ塩化ビニル(PVC)で形成されている。
【0048】
図4は、本実施形態に係るセンサーシート10に接続されるコントローラ20を示す図である。コントローラ20は、コードCを介してセンサーシート10を制御することが可能である。コントローラ20は、電源ボタン30と、電源表示部31と、音量調整ダイヤル32と、状態表示部33と、モード切替部34と、基準設定部35とを有している。
【0049】
電源ボタン30は、例えばコントローラ20の右側面に設けられている。使用者や介護者は、電源ボタン30を操作することでセンサー1を起動させることができる。本実施形態において操作とは、ボタンを押す動作や、ダイヤルをひねる動作などをいう。電源表示部31は、例えばLEDであり、センサー1が起動すると点灯する。音量調整ダイヤル32を操作すると、コントローラ20に内蔵されたスピーカによる警報音量を調整することができる。
【0050】
状態表示部33は、離席表示部36と、注意表示部37と、安定表示部38とを有している。これら表示部36,37,38は例えばLEDによって構成され、着座している使用者の状態に応じて点灯する。各表示部の点灯色は、それぞれ異なっていてもよい。各点灯色を分けることで、状態確認の視認性を向上させることができる。一例として、離席表示部36の点灯色は赤色であり、注意表示部37の点灯色は黄色であり、安定表示部38の点灯色は緑色である。
【0051】
モード切替部34は、選択ボタン39と、モード表示部40,41と、警報停止ボタン42とを有している。選択ボタン39を操作することで、センサー1の警報モードを第1警報モード、第2警報モードおよび第3警報モードの間で切り替えることができる。第1警報モードは、使用者の離席を監視するモードである。第2警報モードは、使用者の姿勢崩れを監視するモードである。第3警報モードは、使用者の離席および姿勢崩れの双方を監視するモードである。
【0052】
第1警報モードが選択されている場合にはモード表示部40が点灯し、モード表示部41が消灯する。第2警報モードが選択されている場合にはモード表示部41が点灯し、モード表示部40が消灯する。第3警報モードが選択されている場合には、モード表示部40,41が両方とも点灯する。
【0053】
使用者や介護者は、センサー1が起動している状態であれば、モード切替部34を操作することで警報モードを切り替えることが可能である。警報が発せられた場合に警報停止ボタン42を操作することで、警報を停止することができる。
【0054】
基準設定部35は、設定ボタン43と、設定中表示部44と、感度調整ダイヤル45とを有している。設定ボタン43を操作することで、後述のキャリブレーションが実行される。キャリブレーション中は設定中表示部44が点灯し、キャリブレーションが完了すると設定中表示部44が消灯する。使用者や介護者は、センサー1が起動している状態であれば、設定ボタン43を操作することでキャリブレーションを実行することが可能である。
【0055】
感度調整ダイヤル45を操作することで、座席部5に着座する使用者の状態を判定部21が判定するための感度を調整することができる。例えば、感度調整は多段階で実施可能であり、感度調整ダイヤル45の周囲には目盛りが記されている。使用者や介護者は、センサー1が起動している状態であれば、感度調整ダイヤル45を操作することで感度の調整が可能である。なお、感度調整の方法は感度調整ダイヤル45を用いたものに限られず、ボタンやスイッチの操作に応じて行われてもよい。
【0056】
図5は、本実施形態に係るセンサー1の第1警報モードを含む動作の一例を示すフローチャートである。まず、電源ボタン30を操作すると電源が入り、センサー1が起動する(ステップS101)。センサー1が起動すると、電源表示部31が点灯する。現在選択されている警報モードに応じて、モード表示部40,41が点灯する。図5に示す例においては第1警報モードが選択されており、モード表示部40が点灯するとともにモード表示部41が消灯する。
【0057】
使用者は、電源ボタン30の操作前あるいは操作後にセンサーシート10が配置された座席部5に着座する。判定部21は、着座している使用者の座位が安定したかを判定する(ステップS102)。使用者の座位が安定しない場合(ステップS102のNo)、判定部21は、座位安定の判定を繰り返し行う。座位安定の判定は、例えば各センサー部Pから得られる検出値Vに基づいて行われる。各センサー部Pから得られる検出値Vがそれぞれ一定期間(例えば、20秒間)にわたり規定範囲内を維持した場合、判定部21は、使用者の座位が安定したと判定する(ステップS102のYes)。このとき、安定表示部38が点灯するとともに、センサー1の動作が第1警報モードに移行する(ステップS103)。第1警報モードに移行すると、モード表示部40の点灯色(表示態様)が切り替わる。モード表示部40の点灯色が切り替わることで、使用者や介護者は第1警報モードに移行したことを認識することができる。
【0058】
第1警報モードに移行すると、判定部21は、使用者の離席判定を行う。具体的には、判定部21は、各センサー部Pの検出値Vを得る(ステップS104)。判定部21は、各センサー部Pから得られる検出値Vに基づいて、使用者が座席部5から離席したかを判定する(ステップS105)。離席判定方法については、図9を参照して後述する。
【0059】
使用者が座席部5を離席していないと判定した場合(ステップS105のNo)、判定部21の動作はステップS104に戻る。すなわち、使用者が座席部5を離席していないと判定される間、繰り返しステップS104,S105が実行される。
【0060】
一方、使用者が座席部5から離席したと判定した場合(ステップS105のYes)、判定部21は、警報を発する(ステップS106)。具体的には、判定部21は、離席表示部36を点灯させるとともに、スピーカに警報音を発生させる。警報音は、例えばブザー音であってもよいしメロディーであってもよい。ブザー音やメロディーは、警報モードに応じて異なってもよい。警報が発せられた場合、安定表示部38は消灯する。
【0061】
警報を発している間、判定部21は、警報停止ボタン42の操作を待つ(ステップS107)。警報停止ボタン42が操作された場合(ステップS107のYes)、判定部21は警報を停止する。以上で第1警報モードの動作が終了する(ステップS108)。図5のフローチャートにおいて警報停止ボタン42の操作により警報が停止した後、ステップS102から動作が再開されてもよい。
【0062】
図6は、本実施形態に係るセンサー1の第2警報モードを含む動作の一例を示すフローチャートである。まず、電源ボタン30を操作すると電源が入り、センサー1が起動する(ステップS201)。センサー1が起動すると、電源表示部31が点灯する。図6に示す例においては第2警報モードが選択されており、モード表示部41が点灯するとともにモード表示部40が消灯する。
【0063】
使用者は、電源ボタン30の操作前あるいは操作後にセンサーシート10が配置された座席部5に着座する。判定部21は、ステップS102と同様に使用者の座位が安定したかを判定する(ステップS202)。使用者の座位が安定した場合(ステップS202のYes)、安定表示部38が点灯し、センサー1の動作が第2警報モードに移行する(ステップS203)。第2警報モードに移行すると、モード表示部41の点灯色が切り替わる。モード表示部41の点灯色が切り替わることで、使用者や介護者は第2警報モードに移行したことを認識することができる。
【0064】
第2警報モードに移行すると、判定部21は、使用者の姿勢崩れ判定を行う。具体的には、判定部21は、各センサー群Gの現在値Qを算出する(ステップS204)。現在値Qの算出方法は、センサーシート10が設置される座席部5において複数のセンサー群Gが並ぶ方向によって異なる。座席部5の前後方向に並ぶ複数のセンサー群Gの場合、各センサー群Gのセンサー部Pから得られる検出値Vのうち、大きい値が現在値Qとなる。一方、座席部5の左右方向に並ぶ複数のセンサー群Gの場合は、各センサー群Gのセンサー部Pから得られる検出値Vのうち、小さい値が現在値Qとなる。
【0065】
本実施形態においては、第1センサー群G1と第2センサー群G2が座席部5の前後方向(第1方向X1)に並んでおり、第3センサー群G3と第4センサー群G4が座席部5の左右方向(第2方向X2)に並んでいる。つまり、第1センサー群G1に関しては、センサー部P1から得られる検出値V1とセンサー部P2から得られる検出値V2のうち、大きい値が第1センサー群G1の現在値Q1となる。第2センサー群G2に関しては、センサー部P3から得られる検出値V3とセンサー部P4から得られる検出値V4のうち、大きい値が第2センサー群G2の現在値Q2となる。第3センサー群G3に関しては、センサー部P1から得られる検出値V1とセンサー部P3から得られる検出値V3のうち、小さい値が第3センサー群G3の現在値Q3となる。第4センサー群G4に関しては、センサー部P2から得られる検出値V2とセンサー部P4から得られる検出値V4のうち、小さい値が第4センサー群G4の現在値Q4となる。
【0066】
判定部21は、ステップS204で算出された現在値Qに基づいて、各センサー群Gの判定値Jを決定する(ステップS205)。判定値Jは、以下の式1を用いて決定することができる。式1において、設定値Rは、各センサー群Gに対して予め定められていてもよいし、図8において説明するキャリブレーションを用いて着座する使用者に応じて決定されてもよい。
[式1]J=Q-R
各センサー群G1,G2,G3,G4に対して設定値R1,R2,R3,R4がそれぞれ定められているとすると、ステップS205においては、第1センサー群G1の判定値J1(=Q1-R1)、第2センサー群G2の判定値J2(=Q2-R2)、第3センサー群G3の判定値J3(=Q3-R3)、第4センサー群G4の判定値J4(=Q4-R4)が決定される。
【0067】
判定部21は、ステップS205で決定された前後方向に並ぶ第1センサー群G1の判定値J1と第2センサー群G2の判定値J2とを比較した結果に基づいて、使用者の前後方向における姿勢崩れを判定する(ステップS206)。使用者が前後方向の姿勢崩れを起こしていないと判定した場合(ステップS206のNo)、判定部21は、ステップS205で決定された左右方向に並ぶ第3センサー群G3の判定値J3と第4センサー群の判定値J4とを比較した結果に基づき、使用者の左右方向における姿勢崩れを判定する(ステップS207)。
【0068】
使用者が左右方向の姿勢崩れを起こしていないと判定した場合(ステップS207のNo)、判定部21の動作はステップS204に戻る。すなわち、使用者が姿勢崩れを起こしていないと判定される間、繰り返しステップS204~S207が実行される。なお、図6の例においては、前後方向の姿勢崩れの判定の後に左右方向の姿勢崩れの判定が行われているが、左右方向の姿勢崩れの判定の後に前後方向の姿勢崩れの判定が行われてもよい。
【0069】
左右方向および前後方向の姿勢崩れの具体的な判定方法については、図10を参照して後述する。判定値J1は第1判定値の一例であり、判定値J2は第2判定値の一例であり、判定値J3は第3判定値の一例であり、判定値J4は第4判定値の一例である。
【0070】
使用者が前後方向の姿勢崩れを起こしていると判定した場合(ステップS206のYes)、もしくは左右方向の姿勢崩れを起こしていると判定した場合(ステップS207のYes)、判定部21は警報を発する(ステップS208)。具体的には、判定部21は、注意表示部37を点灯させるとともに、スピーカに警報音を発生させる。警報が発せられた場合、安定表示部38は消灯する。
【0071】
警報を発している間、判定部21は、警報停止ボタン42の操作を待つ(ステップS209)。警報停止ボタン42が操作された場合(ステップS209のYes)、判定部21は警報を停止する。以上で第2警報モードの動作が終了する(ステップS210)。図6のフローチャートにおいて警報停止ボタン42の操作により警報が停止した後、ステップS202から動作が再開されてもよい。
【0072】
なお、図6の例においては、前後方向の姿勢崩れ判定にて姿勢崩れを起こしていると判定された場合、左右方向の姿勢崩れ判定を行うことなく判定結果が出力される。他の例として、前後方向の姿勢崩れの姿勢崩れを起こしていると判定された場合であっても、左右方向の姿勢崩れ判定が行われてもよい。
【0073】
図7は、本実施形態に係るセンサー1の第3警報モードを含む動作の一例を示すフローチャートである。まず、電源ボタン30を操作すると電源が入り、センサー1が起動する(ステップS301)。センサー1が起動すると、電源表示部31が点灯する。図7に示す例においては第3警報モードが選択されており、モード表示部40,41が両方とも点灯する。
【0074】
使用者は、電源ボタン30の操作前あるいは操作後にセンサーシート10が配置された座席部5に着座する。判定部21は、ステップS102と同様に使用者の座位が安定したかを判定する(ステップS302)。使用者の座位が安定した場合(ステップS302のYes)、安定表示部38が点灯し、センサー1の動作が第3警報モードに移行する(ステップS303)。第3警報モードに移行すると、モード表示部40,41の点灯色が両方とも切り替わる。モード表示部40,41の点灯色が切り替わることで、使用者や介護者は第3警報モードに移行したことを認識することができる。
【0075】
第3警報モードに移行すると、判定部21は、使用者の離席判定と姿勢崩れ判定を並行して実行する。離席判定において、判定部21は、ステップS104と同じく各センサー部Pの検出値Vを得るとともに(ステップS304)、ステップS105と同じく使用者が座席部5から離席したかを判定する(ステップS305)。使用者が座席部5から離席したと判定した場合(ステップS305のYes)、判定部21は、ステップS106と同じく警報を発し(ステップS306)、ステップS107と同じく警報停止ボタン42の操作を待つ(ステップS307)。警報停止ボタン42が操作された場合(ステップS307のYes)、判定部21が警報を停止して第3警報モードの動作が終了する(ステップS308)。
【0076】
一方、姿勢崩れ判定において、判定部21は、ステップS204と同じく各センサー群Gの現在値Qを算出するとともに(ステップS309)、ステップS205と同じく現在値Qに基づいて各センサー群Gの判定値Jを決定する(ステップS310)。さらに、判定部21は、ステップS206と同じく使用者の前後方向における姿勢崩れを判定するとともに(ステップS311)、ステップS207と同じく使用者の左右方向における姿勢崩れを判定する。(ステップS312)。使用者が前後方向または左右方向の姿勢崩れを起こしていると判定した場合(ステップS311またはS312のYes)、判定部21は、ステップS208と同じく警報を発し(ステップS313)、ステップS209と同じく警報停止ボタン42の操作を待つ(ステップS314)。警報停止ボタン42が操作された場合(ステップS314のYes)、判定部21が警報を停止して第3警報モードの動作が終了する(ステップS308)。
【0077】
使用者が離席しておらず、かつ姿勢崩れも起こしていない間、ステップS304,S305,S309~S312の動作が繰り返される。図7のフローチャートにおいて警報停止ボタン42の操作により警報が停止した後、ステップS302から動作が再開されてもよい。
【0078】
図8は、本実施形態に係るセンサー1のキャリブレーションの一例を示すフローチャートである。センサー1は、センサーシート10に使用者が着座した状態におけるセンサー部Pの検出値Vに基づき、着座する使用者に応じてキャリブレーションを実行する。使用者によって着座しやすい姿勢は異なるが、キャリブレーションを実行することで使用者の座っている姿勢を基準として姿勢崩れ等を判定することができる。
【0079】
使用者や介護者が基準設定部35の設定ボタン43を操作すると(ステップS401)、キャリブレーション部23がキャリブレーションに係る処理を開始する。キャリブレーションが開始されると、設定中表示部44が点灯する。
【0080】
キャリブレーションにおいて、キャリブレーション部23は、各センサー部Pから得られる検出値Vに基づき各センサー群Gの代表値を算出する(ステップS402)。代表値は、上述した図6のステップS204における現在値Qの算出方法と同様の方法で算出される。キャリブレーション部23は、規定回数(例えば10回)にわたりステップS402を繰り返す(ステップS403のNo)。これにより、規定回数分の時系列の代表値が得られる。各回の代表値を算出するための検出値Vをセンサー部Pから得る時間間隔は、例えば100ms以下であり、一例では10msである。
【0081】
規定回数分の代表値を得た後、キャリブレーション部23は、各センサー群Gの設定値Rを決定する(ステップS404)。設定値Rは、例えば算出された代表値の平均値である。すなわち、第1センサー群G1について算出された規定回数分の代表値の平均値が第1センサー群G1の設定値R1となり、第2センサー群G2について算出された規定回数分の代表値の平均値が第2センサー群G2の設定値R2となり、第3センサー群G3について算出された規定回数分の代表値の平均値が第3センサー群G3の設定値R3となり、第4センサー群G4について算出された規定回数分の代表値の平均値が第4センサー群G4の設定値R4となる。
【0082】
設定値Rが決定された場合、キャリブレーション部23は、キャリブレーションを終了する(ステップS405)。キャリブレーションが終了すると、設定中表示部44は消灯する。キャリブレーションは、使用者が座席部5に着座したタイミングのみならず、センサー1が起動中はいつでも実行することができてもよい。
【0083】
図9は、離席判定方法の一例を説明するための図である。図9において、縦軸が検出値Vを示している。離席判定は、各センサー部Pで得られる検出値Vを離席判定の閾値T1と比較することで行われる。
【0084】
具体的には、例えば各センサー部P1,P2,P3,P4で得られる検出値V1,V2,V3,V4が全て閾値T1未満の場合、判定部21は、使用者が座席部5から離席したと判定する。閾値T1は、予め定められていてもよいし、感度調整ダイヤル45を操作することで使用者に応じて変更可能であってもよい。図9においては、各検出値V1,V2,V3,V4は全て閾値T1以上である。この場合、判定部21は、使用者が座席部5から離席していないと判定する。
【0085】
なお、離席判定方法はここで例示したものに限られない。例えば、判定部21は、検出値V1,V2,V3,V4のうちの1つ、2つまたは3つが閾値T1未満となった場合に使用者が離席したと判定してもよい。
【0086】
また、検出値V1,V2,V3,V4の少なくとも1つが閾値T1以上となった時間が短い場合には、離席と判定されないようにしてもよい。すなわち、判定部21は、検出値V1,V2,V3,V4の少なくとも1つが継続して一定時間以上(例えば1秒)にわたり閾値T1以上となった場合に離席と判定する。この場合においては、車椅子100の走行時における振動や、特に留意する必要のない使用者の安全な動作に起因して検出値V1,V2,V3,V4が変動したとしても、警報が発せられない。
【0087】
図10は、姿勢崩れ判定方法の一例を説明するための図である。図10において、縦軸が前後方向および左右方向における判定値Jの差Dである。姿勢崩れ判定は、各方向に並ぶセンサー群Gの判定値Jを比較した結果に基づいて行われる。差Dは、例えば絶対値である。
【0088】
具体的には、判定部21は、前後方向の姿勢崩れを判定する場合、前後方向に並ぶセンサー群G1,G2の判定値J1,J2の差D1を前後方向の姿勢崩れの閾値T2と比較する。差D1が閾値T2以上の場合、判定部21は、使用者が座席部5上で前後方向の姿勢崩れを起こしていると判定する。
【0089】
また、判定部21は、左右方向の姿勢崩れを判定する場合、左右方向に並ぶセンサー群G3,G4の判定値J3,J4の差D2を左右方向の姿勢崩れの閾値T3と比較する。差D2が閾値T3以上の場合、判定部21は、使用者が座席部5上で左右方向の姿勢崩れを起こしていると判定する。
【0090】
図10の場合、差D1は閾値T2未満のため、判定部21は、使用者が座席部5の前後方向の姿勢崩れを起こしていないと判定される。また、差D2は閾値T3未満のため、判定部21は、使用者が座席部5の左右方向の姿勢崩れを起こしていないと判定される。つまり、使用者の座位は、座席部5上で安定している。
【0091】
閾値T2,T3は、感度調整ダイヤル45を操作することで変更可能である。すなわち、姿勢崩れ判定の感度を向上させる方向に感度調整ダイヤル45が操作された場合には閾値T2,T3が小さくなり、姿勢崩れ判定の感度を低下させる方向に感度調整ダイヤル45が操作された場合には閾値T2,T3が大きくなる。
【0092】
差D1が閾値T2以上となった時間や差D2が閾値T3以上となった時間が短い場合には、姿勢崩れと判定されないようにしてもよい。すなわち、判定部21は、差D1が継続して一定時間以上(例えば1秒)にわたり閾値T2以上となった場合に前後方向の姿勢崩れを起こしていると判定し、差D2が継続して一定時間以上(例えば1秒)にわたり閾値T3以上となった場合に左右方向の姿勢崩れを起こしていると判定する。この場合においては、車椅子100の走行時における振動や、特に留意する必要のない使用者の安全な動作に起因して差D1,D2が変動したとしても、警報が発せられない。
【0093】
閾値T1,T2,T3は、キャリブレーション時に得られる各センサー部Pの検出値Vに基づいて動的に設定されてもよい。これにより、使用者の体重や座り方の癖に応じた最適な閾値T1,T2,T3を設定することが可能となる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態に係るセンサー1によれば、センサーシート10が設置される座席部5に着座している使用者の離席や姿勢崩れを検知することができる。また、離席や姿勢崩れを検知した場合に警報を発することで、介護者などの周囲の者に異常を知らせることができる。本実施形態に係るセンサー1を使用すれば、介護者が使用者の見た目からだけでは気づきづらい着座時の姿勢崩れを知ることができ、介護者の熟練度による影響も受けない。姿勢崩れに早い段階で気づき、使用者を座り直させることができれば、使用者の車椅子からの転落等の予防にもつながる。
【0095】
本実施形態においては、前後方向(第1方向X1)に並ぶセンサー群G1,G2の検出値から得られる判定値J1,J2の差D1に基づき使用者の前後方向の姿勢崩れが判定され、左右方向(第2方向X2)に並ぶセンサー群G3,G4の検出値から得られる判定値J3,J4の差D2に基づき使用者の左右方向の姿勢崩れが判定される。このように、姿勢崩れを判定すべき方向に並ぶ複数のセンサー群Gの各判定値Jの比較に基づけば、当該方向における姿勢崩れを精度良く検出することができる。
【0096】
本実施形態に係るセンサー1のセンサーシート10は、任意の座席に設置することができるため、既存の車椅子に対してもセンサー1を使用することが可能である。また、センサー1の感度調整や着座する使用者に応じてキャリブレーションを実行することができるため、使用者に特有の着座姿勢や座席に配置するクッションなどの離席や姿勢崩れの判定への影響を抑制することが可能である。
【0097】
以上説明した実施形態は、発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明はその他の様々な形態で実施することが可能である。当該実施形態にて開示した構成やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1…センサー、2…フレーム、3…前輪、4…後輪、5…座席部、6…ハンドル、7…クッション材、8…フットレスト、10…センサーシート、11…第1シート材、12…第2シート材、13…プレート、14…袋体、20…コントローラ、21…判定部、22…調整部、23…キャリブレーション部、30…電源ボタン、31…電源表示部、32…音量調整ダイヤル、33…状態表示部、34…モード切替部、35…基準設定部、36…離席表示部、37…注意表示部、38…安定表示部、39…選択ボタン、40,41…モード表示部、42…警報停止ボタン、43…設定ボタン、44…設定中表示部、45…感度調整ダイヤル、100…車椅子、P…センサー部、C…コード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10