(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
B22D17/32 J
B22D17/32 C
B22D17/32 B
(21)【出願番号】P 2020173288
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 友希
(72)【発明者】
【氏名】釜谷 勝浩
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-211967(JP,A)
【文献】特開2005-164449(JP,A)
【文献】実開昭62-022816(JP,U)
【文献】実開昭56-061319(JP,U)
【文献】特開平11-115018(JP,A)
【文献】特開昭60-054262(JP,A)
【文献】特開平03-224710(JP,A)
【文献】特開平06-179232(JP,A)
【文献】特開平04-133712(JP,A)
【文献】特開平07-256709(JP,A)
【文献】特開2004-145742(JP,A)
【文献】特開昭62-103123(JP,A)
【文献】特開昭59-037302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/32
B29C 45/76
B29C 45/82
B29C 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に形成されたキャビティに連通するスリーブと、
前記スリーブ内で前記キャビティに向けて前進することによって、前記スリーブ内の溶湯金属を前記キャビティに供給するプランジャと、
前記スリーブ内で前記プランジャを進退させる複数の油圧部品、及び前記複数の油圧部品それぞれの物理量を検知する複数のセンサを有する油圧回路と、
画像を表示するディスプレイと、
前記油圧回路の動作及び前記ディスプレイの表示を制御する制御装置とを備えるダイカストマシンであって、
前記複数の油圧部品は、
前記プランジャを進退させる油圧シリンダと、
供給流路を通じて前記油圧シリンダに作動油を供給する作動油供給源と、
前記油圧シリンダから排出された作動油が戻り流路を通じて還流する作動油タンクとを含み、
前記制御装置は、
前記複数の油圧部品の接続関係を示す概略回路図を前記ディスプレイに表示し、
前記油圧回路の動作中に前記複数のセンサそれぞれで検知された物理量を、前記概略回路図に含まれる前記複数の油圧部品に対応付けて前記ディスプレイに表示
し、
金型内に溶湯金属を射出して成形品を製造する射出処理の各工程において、前記供給流路及び前記戻り流路の作動油が流通する部分を、作動油が流通しない部分と異なる態様で前記ディスプレイに表示することを特徴とするダイカストマシン。
【請求項2】
前記複数の油圧部品は、前記制御装置から駆動信号が出力されて動作し、
前記制御装置は、
前記ディスプレイに表示した前記概略回路図上において、駆動信号を出力した前記油圧部品を、駆動信号を出力していない前記油圧部品と異なる態様で表示することを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記制御装置は、前記センサで検知された物理量の大きさを、対応する前記油圧部品の物理量の最大値に対する比率として表すインジケータを、前記油圧部品に対応付けて前記ディスプレイに表示することを特徴とする請求項1または2に記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ディスプレイに表示した前記概略回路図上において、前記供給流路と、前記戻り流路とを異なる態様で表示することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ディスプレイに表示した前記概略回路図上において、前記供給流路及び前記戻り流路に沿って、作動油の流通方向を示す矢印を表示することを特徴とする請求項4に記載のダイカストマシン。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記複数のセンサそれぞれで検知された物理量に基づいて、前記複数の油圧部品のうちの故障の可能性のある前記油圧部品を推測し、
前記ディスプレイに表示した前記概略回路図上において、故障の可能性のあると推測した前記油圧部品を、他の前記油圧部品と異なる態様で表示することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項7】
前記複数の油圧部品は、前記制御装置から出力される駆動信号によって動作し、
前記複数の油圧部品は、
作動油がヘッド室に供給されることによって前記プランジャを前進させ、作動油がロッド室に供給されることによって前記プランジャを後退させる油圧シリンダと、
予め蓄圧した作動油を、ヘッド側供給流路を通じて前記ヘッド室に供給するアキュームレータと、
前記制御装置から駆動信号が出力されると前記ヘッド側供給流路を開放し、駆動信号の出力が停止すると前記ヘッド側供給流路を閉塞する低速側電磁弁と、
前記ヘッド側供給流路の前記低速側電磁弁より前記ヘッド室側に配置されて、前記制御装置から出力される駆動信号の大きさに応じて、前記ヘッド側供給流路の絞り量を調整する電磁比例絞り弁とを含み、
前記複数のセンサは、前記プランジャの前進速度を検知する速度センサを含み、
前記制御装置は、前記低速側電磁弁及び前記電磁比例絞り弁に駆動信号を出力している状態で、
前記速度センサで検知された前記プランジャの前進速度が0の場合に、前記低速側電磁弁を故障の可能性のある前記油圧部品だと推測し、
前記速度センサで検知された前記プランジャの前進速度が0より大きく且つ第1適正範囲外の場合に、前記電磁比例絞り弁を故障の可能性のある前記油圧部品だと推測することを特徴とする請求項6に記載のダイカストマシン。
【請求項8】
前記複数の油圧部品は、
前記ヘッド側供給流路の前記電磁比例絞り弁より前記ヘッド室側に配置されて、前記制御装置から出力される駆動信号の大きさに応じて、前記ヘッド側供給流路の作動油の流量を制御する流量制御弁と、
前記電磁比例絞り弁をバイパスして前記流量制御弁に作動油を供給するバイパス流路に配置されて、前記制御装置から駆動信号が出力されると前記バイパス流路を開放し、駆動電圧の出力が停止すると前記バイパス流路を閉塞する高速側電磁弁とを含み、
前記制御装置は、前記流量制御弁及び前記高速側電磁弁に駆動信号を出力している状態で、
前記速度センサで検知された前記プランジャの前進速度が0の場合に、前記高速側電磁弁を故障の可能性のある前記油圧部品だと推測し、
前記速度センサで検知された前記プランジャの前進速度が0より大きく且
つ第2適正範囲外の場合に、前記流量制御弁を故障の可能性のある前記油圧部品だと推測することを特徴とする請求項7に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯金属を金型内に射出して成形品を成形するダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型内に形成されたキャビティに連通するスリーブと、スリーブ内でキャビティに向けて前進することによって、スリーブ内の溶湯金属をキャビティに供給するプランジャと、スリーブ内でプランジャを進退させる油圧回路とを備えるダイカストマシンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このようなダイカストマシンは、油圧回路の動作確認やトラブル調査を行うために、油圧回路に含まれる複数の油圧部品(例えば、アキュームレータ、電磁弁、流量制御弁、絞り弁など)と、油圧部品の動作状態とがリスト化(
図9の左端列)されたI/O画面を、ディスプレイに表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図9のI/O画面には油圧部品間の関係が明示されていないので、油圧部品それぞれの状態が個別に確認できるに留まり、ダイカストマシン全体の状態が分かりずらい。その結果、トラブル発生時に原因を特定するのが難しいという課題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧回路を用いてプランジャを進退させるダイカストマシンにおいて、油圧回路の動作状態を直感的に把握する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、金型内に形成されたキャビティに連通するスリーブと、前記スリーブ内で前記キャビティに向けて前進することによって、前記スリーブ内の溶湯金属を前記キャビティに供給するプランジャと、前記スリーブ内で前記プランジャを進退させる複数の油圧部品、及び前記複数の油圧部品それぞれの物理量を検知する複数のセンサを有する油圧回路と、画像を表示するディスプレイと、前記油圧回路の動作及び前記ディスプレイの表示を制御する制御装置とを備えるダイカストマシンであって、前記複数の油圧部品は、前記プランジャを進退させる油圧シリンダと、供給流路を通じて前記油圧シリンダに作動油を供給する作動油供給源と、前記油圧シリンダから排出された作動油が戻り流路を通じて還流する作動油タンクとを含み、前記制御装置は、前記複数の油圧部品の接続関係を示す概略回路図を前記ディスプレイに表示し、前記油圧回路の動作中に前記複数のセンサそれぞれで検知された物理量を、前記概略回路図に含まれる前記複数の油圧部品に対応付けて前記ディスプレイに表示し、金型内に溶湯金属を射出して成形品を製造する射出処理の各工程において、前記供給流路及び前記戻り流路の作動油が流通する部分を、作動油が流通しない部分と異なる態様で前記ディスプレイに表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、プランジャを進退させる油圧回路の動作状態を直感的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るダイカストマシンの側面図である。
【
図2】ダイカストマシンのハードウェア構成図である。
【
図3】ディスプレイに表示される油圧回路画面である。
【
図4】低速射出工程における油圧回路画面の表示例である。
【
図5】高速射出工程における油圧回路画面の表示例である。
【
図6】増圧工程における油圧回路画面の表示例である。
【
図7】後退工程における油圧回路画面の表示例である。
【
図8】低速射出工程における油圧回路画面の変形例である。
【
図9】従来のダイカストマシンで表示されるI/O画面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係るダイカストマシン10の側面図である。ダイカストマシン10は、金型内に溶湯金属を射出して、成形品を製造する。
図1に示すように、ダイカストマシン10は、型締装置20と、射出装置30とを主に備える。
【0011】
型締装置20は、金型21の開閉及び型締を行う。具体的には、型締装置20は、固定側金型22を支持する固定ダイプレート23と、可動側金型24を支持する可動ダイプレート25とを主に備える。固定側金型22及び可動側金型24は、ダイカストマシン10の左右方向(水平方向)において、互いに対面するように支持されている。
【0012】
可動ダイプレート25は、型開閉シリンダ26の駆動力がトグルリンク機構27を通じて伝達されることによって、タイバー28に沿って左右方向に移動する。可動ダイプレート25が左方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが離間(型開)する。一方、可動ダイプレート25が右方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが当接(型閉)する。そして、可動ダイプレート25を右方向に移動させる向きの圧力がさらに加わると、固定側金型22及び可動側金型24が型締される。
【0013】
型締された金型21の内部には、ランナR、ゲートG、キャビティC、及びオーバーフロー部Oが形成される。ランナR、ゲートG、キャビティC、及びオーバーフロー部Oは、溶湯金属が進入する内部空間である。
【0014】
ランナRは、金型21の内部空間のうち、溶湯金属の流通方向の最も上流側に位置する。ランナRは、後述する射出スリーブ31に連通する。ゲートGは、ランナR及びキャビティCの間に位置している。ゲートGは、溶湯金属の流通方向に直交する断面積がランナR及びキャビティCより小さい。そのため、ランナRからキャビティCに供給される溶湯金属は、ゲートGを通過する際に加速される。
【0015】
キャビティCは、成形品の形状に対応する空間である。キャビティCに充填された溶湯金属が凝固することによって、成形品が成形される。オーバーフロー部Oは、金型21の内部空間のうち、溶湯金属の流通方向の最も下流側に位置する。オーバーフロー部Oを満たす量の溶湯金属を金型21内に充填することにより、キャビティC内への溶湯金属の充填不足を防止することができる。
【0016】
射出装置30は、型締された金型21内に溶湯金属を射出する。射出装置30は、射出スリーブ(スリーブ)31と、プランジャ32と、油圧回路40とを主に備える。本実施形態に係る射出装置30は、型締装置20と水平方向(型締装置20の右方)に離間して配置されている。
【0017】
射出スリーブ31は、固定ダイプレート23に取り付けられた円筒形状の部材である。射出スリーブ31の先端部は、金型21のランナRに連通している。また、射出スリーブ31には、ラドル(図示省略)によって供給された溶湯金属が貯留される。
【0018】
プランジャ32は、射出スリーブ31内に進退可能に収容されている。プランジャ32が前進すると、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属がランナR及びゲートGを通じてキャビティCに供給される。一方、プランジャ32が後退すると、ラドルから供給される溶湯金属を貯留する空間が射出スリーブ31内に形成される。
【0019】
図2は、ダイカストマシン10のハードウェア構成図である。油圧回路40は、射出スリーブ31内でプランジャ32を進退させる複数の油圧部品33、41~52と、複数の油圧部品33、41~52それぞれの物理量を検知する複数のセンサ53~59とを有する。また、ダイカストマシン10は、制御装置60と、ディスプレイ64とをさらに備える。
【0020】
制御装置60は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)61、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)62、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)63を備える。そして、ROM62に記憶されたプログラムをCPU61が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0021】
但し、制御装置60の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0022】
制御装置60は、ダイカストマシン10全体の動作を制御する。例えば、制御装置60は、型開閉シリンダ26を駆動(不図示の油圧回路を通じて作動油を給排)することによって、金型21を型開、型閉、及び型締する。また、制御装置60は、油圧部品33、41~52の動作を制御する。さらに、制御装置60は、センサ53~59で検知された物理量に基づいて、油圧回路画面をディスプレイ64に表示する。
【0023】
図3は、ディスプレイ64に表示される油圧回路画面である。油圧回路画面は、複数の油圧部品33、41~52の接続関係を示す概略回路図と、複数のセンサ53~59それぞれで検知された物理量とを含む。制御装置60は、オペレータによって油圧回路画面の表示が指示されたことに応じて、概略回路図をディスプレイ64に表示し、油圧回路40の動作中に複数のセンサ53~59それぞれで検知された物理量を、概略回路図に含まれる複数の油圧部品33、41~52に対応付けてディスプレイ64に表示する。
【0024】
そして、制御装置60は、射出成形処理の各工程において、刻々と変化する物理量をリアルタイムで更新する。なお、本実施形態に係る制御装置60は、センサ53~59で検知した物理量を、数値として表示すると共に、インジケータとして表示する。インジケータは、センサ53~59で検知された物理量の大きさを、対応する油圧部品33、41~52の物理量の最大値に対する比率として表すものである。すなわち、
図3に示すインジケータは、黒色部分及び白色部分の割合によって、検知した物理量の最大値に対する比率を表している。
【0025】
図3に示すように、油圧回路40は、油圧シリンダ33と、作動油タンク41と、アキュームレータ42と、油圧ポンプ43と、低速側電磁弁44と、電磁比例絞り弁45と、流量制御弁46と、高速側電磁弁47と、増圧シリンダ48と、増圧側電磁弁49と、流量制御弁50と、戻り側電磁弁51と、後退側電磁弁52とを、油圧部品として含む。油圧部品の一部は、制御装置60から出力される駆動信号(例えば、駆動電圧、駆動電流)によって動作する。
【0026】
油圧シリンダ33は、作動油が供給及び排出(以下、「給排」と表記する。)されて伸縮することによって、プランジャ32を進退させる。油圧シリンダ33は、シリンダチューブ34と、ピストン35と、ロッド36とで構成される。ピストン35は、シリンダチューブ34内を移動可能に構成されている。また、ピストン35は、シリンダチューブ34内を、ヘッド室37及びロッド室38に区画する。ロッド36は、基端がピストン35に接続され、シリンダチューブ34の外部に突出して、先端にプランジャ32が接続されている。
【0027】
ヘッド室37に作動油が供給され且つロッド室38から作動油が排出されると、ピストン35がロッド室38側に移動して、ロッド36が伸長する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が前進する。一方、ロッド室38に作動油が供給され且つヘッド室37から作動油が排出されると、ピストン35がヘッド室37側に移動して、ロッド36が縮小する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が後退する。
【0028】
作動油タンク41は、作動油を貯留する。アキュームレータ42は、ヘッド側供給流路L1によって油圧シリンダ33のヘッド室37に接続され、増圧側供給流路L2によって増圧シリンダ48に接続されている。アキュームレータ42は、油圧ポンプ43から供給される作動を圧縮した状態で貯留(蓄圧)する。また、アキュームレータ42は、予め蓄圧された作動油を、ヘッド側供給流路L1を通じてヘッド室37に供給し、増圧側供給流路L2を通じて増圧シリンダ48に供給する。
【0029】
油圧ポンプ43は、ロッド側供給流路L3によって油圧シリンダ33のロッド室38に接続されている。油圧ポンプ43は、モータ(図示省略)の駆動力が伝達されて、作動油タンク41に貯留された作動油を、ロッド側供給流路L3を通じてロッド室38に供給する。
【0030】
低速側電磁弁44は、ヘッド側供給流路L1に配置されている。低速側電磁弁44は、制御装置60から出力される駆動信号(駆動電圧)に従って、ヘッド側供給流路L1を開閉する。低速側電磁弁44は、例えば、制御装置60から駆動電圧が印加されるとヘッド側供給流路L1を開放し、駆動電圧の印加が停止するとヘッド側供給流路L1を閉塞する。
【0031】
電磁比例絞り弁45は、ヘッド側供給流路L1の低速側電磁弁44よりヘッド室37側に配置されている。電磁比例絞り弁45は、制御装置60からから出力される駆動信号(駆動電圧)の大きさに応じて、ヘッド側供給流路L1の絞り量を調整する。電磁比例絞り弁45は、例えば、印加される駆動電圧が大きいほど、ヘッド側供給流路L1の絞り量を大きくする。
【0032】
流量制御弁46は、ヘッド側供給流路L1の電磁比例絞り弁45よりヘッド室37側に配置されている。流量制御弁46は、制御装置60がモータ46aを駆動することによって、ヘッド側供給流路L1の作動油の流量を制御する。流量制御弁46は、例えば、モータ46aに供給する駆動信号(駆動電流)が大きいほど、ヘッド側供給流路L1の流量を増加させる。
【0033】
高速側電磁弁47は、電磁比例絞り弁45をバイパスして流量制御弁46に作動油を供給するバイパス流路L4に配置されている。バイパス流路L4は、低速側電磁弁44よりアキュームレータ42側でヘッド側供給流路L1から分岐し、電磁比例絞り弁45及び流量制御弁46の間でヘッド側供給流路L1に合流する。高速側電磁弁47は、制御装置60から出力される駆動信号(駆動電圧)に従って、バイパス流路L4を開閉する。高速側電磁弁47は、例えば、制御装置60から駆動電圧が印加されるとバイパス流路L4を開放し、駆動電圧の印加が停止するとバイパス流路L4を閉塞する。
【0034】
増圧シリンダ48は、増圧側供給流路L2を通じてアキュームレータ42から作動油が供給されることによって、ヘッド室37側からピストン35を押圧する。ヘッド側供給流路L1を通じて作動油が供給されている間に、増圧シリンダ48がピストン35を押圧することによって、プランジャ32前進速度が増速される。
【0035】
増圧側電磁弁49は、増圧側供給流路L2に配置されている。増圧側電磁弁49は、制御装置60から出力される駆動信号(駆動電圧)に従って、増圧側供給流路L2を開閉する。増圧側電磁弁49は、例えば、制御装置60から駆動電圧が印加されると増圧側供給流路L2を開放し、駆動電圧の印加が停止すると増圧側供給流路L2を閉塞する。
【0036】
流量制御弁50は、増圧側供給流路L2の増圧側電磁弁49より増圧シリンダ48側に配置されている。流量制御弁50は、制御装置60がモータ50aを駆動することによって、増圧側供給流路L2の作動油の流量を制御する。流量制御弁50は、例えば、モータ50aに供給される駆動信号(駆動電流)が大きいほど、増圧側供給流路L2の流量を増加させる。
【0037】
戻り側電磁弁51は、油圧シリンダ33のロッド室38と作動油タンク41とを接続するロッド側戻り流路L5に配置されている。戻り側電磁弁51は、制御装置60から出力される駆動信号(駆動電圧)に従って、ロッド側戻り流路L5を開閉する。戻り側電磁弁51は、例えば、制御装置60から駆動電圧が印加されるとロッド側戻り流路L5を開放し、駆動電圧の印加が停止するとロッド側戻り流路L5を閉塞する。
【0038】
後退側電磁弁52は、ロッド側供給流路L3及びヘッド側戻り流路L6に配置されている。ヘッド側戻り流路L6は、油圧シリンダ33のヘッド室37と作動油タンク41とを接続する。後退側電磁弁52は、制御装置60から出力される駆動信号(駆動電圧)に従って、ロッド側供給流路L3及びヘッド側戻り流路L6を開閉する。後退側電磁弁52は、例えば、制御装置60から駆動電圧が印加されると、ロッド側供給流路L3及びヘッド側戻り流路L6を開放する。一方、後退側電磁弁52は、駆動電圧の印加が停止すると、ロッド側供給流路L3及びヘッド側戻り流路L6を閉塞する。
【0039】
また、油圧回路40は、プランジャ32の前進速度を検知する速度センサ53と、プランジャ32の位置を検知する位置センサ54と、アキュームレータ42に蓄圧された作動油の圧力を検知する圧力センサ55と、電磁比例絞り弁45に印加される駆動電圧の電圧値を検知する電圧値センサ56と、流量制御弁46の弁の位置を検知する位置センサ57と、流量制御弁50の弁の位置を検知する位置センサ58と、増圧シリンダ48の押圧力を検知する圧力センサ59とを、物理量(例えば、速度、位置、圧力、電圧値など)を検知するセンサとして含む。
【0040】
次に、
図4~
図7を参照して、射出処理の各工程を説明する。
図4は、低速射出工程における油圧回路画面の表示例である。
図5は、高速射出工程における油圧回路画面の表示例である。
図6は、増圧工程における油圧回路画面の表示例である。
図7は、後退工程における油圧回路画面の表示例である。
【0041】
まず、制御装置60は、ヘッド側供給流路L1及びロッド側戻り流路L5を開放し、増圧側供給流路L2、ロッド側供給流路L3、バイパス流路L4、及びヘッド側戻り流路L6を閉塞し、電磁比例絞り弁45の絞り及び流量制御弁46の流量を調整する。これにより、ヘッド側供給流路L1を通じてアキュームレータ42からヘッド室37に作動油が供給され、ロッド側戻り流路L5を通じてロッド室38から作動油タンク41に作動油が排出される。その結果、プランジャ32が低速(第1適正範囲内の速度)で前進し、射出スリーブ31内の溶湯金属がランナR及びゲートGに充填される。以下、この工程を「低速射出工程」と表記する。
【0042】
制御装置60は、低速射出工程において、低速側電磁弁44、電磁比例絞り弁45、流量制御弁46、及び戻り側電磁弁51に駆動信号を出力している。そこで
図4に示すように、制御装置60は、駆動信号を出力している油圧部品44、45、46、51を、駆動電圧を印加していない油圧部品と異なる表示態様でディスプレイ64に表示する。
図4では、駆動電圧を印加している油圧部品を太枠で囲った例を示す。但し、表示態様の異ならせ方は前述の例に限定されず、油圧部品の色を変えてもよいし、色を反転(ハイライト表示)してもよいし、点滅表示してもよい。
【0043】
図4を見たオペレータは、速度センサ53で検知されたプランジャ32の前進速度が第1適正範囲に含まれている場合に、低速射出工程が適切に実行されていると判断する。一方、オペレータは、速度センサ53で検知されたプランジャ32の前進速度が第1適正範囲外の場合に、低速射出工程が適切に実行されていないと判断する。
【0044】
そして、オペレータは、太枠で囲まれた油圧部品44、45、46、51のいずれかが故障している可能性があると推測する。オペレータは、例えば、プランジャ32の前進速度が0の場合に、低速側電磁弁44または戻り側電磁弁51が故障の可能性のある油圧部品だと推測する。一方、オペレータは、例えば、プランジャ32の前進速度が0より大きく且つ第1適正範囲外の場合に、電磁比例絞り弁45または流量制御弁46が故障の可能性のある油圧部品だと推測する。
【0045】
次に、制御装置60は、位置センサ54で検知されたプランジャ32の位置が予め定められた第1前進位置に達した(すなわち、溶湯金属がゲートGに充填された)タイミングで、バイパス流路L4をさらに開放する。これにより、電磁比例絞り弁45をバイパスしてアキュームレータ42からヘッド室37に作動油が供給される。その結果、プランジャ32が高速(第2適正範囲内の速度)で前進し、射出スリーブ31内の溶湯金属がキャビティC及びオーバーフロー部Oに充填される。以下、この工程を「高速射出工程」と表記する。
【0046】
制御装置60は、高速射出工程において、低速側電磁弁44、電磁比例絞り弁45、流量制御弁46、高速側電磁弁47、及び戻り側電磁弁51に駆動信号を出力している。そこで
図5に示すように、制御装置60は、駆動信号を出力している油圧部品45、46、47、51を、駆動電圧を印加していない油圧部品と異なる表示態様でディスプレイ64に表示する。
【0047】
図5を見たオペレータは、速度センサ53で検知されたプランジャ32の前進速度が第2適正範囲に含まれている場合に、高速射出工程が適切に実行されていると判断する。一方、オペレータは、速度センサ53で検知されたプランジャ32の前進速度が第2適正範囲外の場合に、高速射出工程が適切に実行されていないと判断する。
【0048】
ここで、高速射出工程では、低速射出工程と比較して、バイパス流路L4がさらに開放されている。そのため、オペレータは、太枠で囲まれた油圧部品45、46、47、51のうち、バイパス流路L4が開放されたことに影響する油圧部品46、47のいずかが故障している可能性があると推測する。オペレータは、例えば、プランジャ32の前進速度が0の場合に、高速側電磁弁47が故障の可能性のある油圧部品だと推測する。一方、オペレータは、例えば、プランジャ32の前進速度が0より大きく且つ第2適正範囲外の場合に、流量制御弁46が故障の可能性のある油圧部品だと推測する。
【0049】
次に、制御装置60は、位置センサ54で検知されたプランジャ32の位置が予め定められた第2前進位置に達した(すなわち、溶湯金属がオーバーフロー部Oに充填された)タイミングで、増圧側供給流路L2をさらに開放し、流量制御弁50の流量を調整する。これにより、増圧シリンダ48によってプランジャ32が押圧される。その結果、キャビティCの隅々まで溶湯金属が行き渡る。以下、この工程を「増圧工程」と表記する。
【0050】
制御装置60は、増圧工程において、低速側電磁弁44、電磁比例絞り弁45、流量制御弁46、高速側電磁弁47、増圧側電磁弁49、流量制御弁50、及び戻り側電磁弁51に駆動信号を出力している。そこで
図6に示すように、制御装置60は、駆動信号を出力している油圧部品45、46、47、49、50、51を、駆動電圧を印加していない油圧部品と異なる表示態様でディスプレイ64に表示する。
【0051】
図6を見たオペレータは、圧力センサ59で検知された増圧シリンダ48の押圧力が適正範囲に含まれている場合に、増圧工程が適切に実行されていると判断する。一方、オペレータは、圧力センサ59で検知された増圧シリンダ48の押圧力が適正範囲に含まれていない場合に、増圧工程が適切に実行されていないと判断する。
【0052】
ここで、増圧工程では、高速射出工程と比較して、増圧側供給流路L2がさらに開放されている。そのため、オペレータは、太枠で囲まれた油圧部品45、46、47、49、50、51のうち、増圧側供給流路L2が開放されたことに影響する油圧部品49、50のいずかが故障している可能性があると推測する。オペレータは、例えば、増圧シリンダ48の押圧力が0の場合に、増圧側電磁弁49が故障の可能性のある油圧部品だと推測する。一方、オペレータは、例えば、増圧シリンダ48の押圧力が0より大きく且つ適正範囲外の場合に、流量制御弁50が故障の可能性のある油圧部品だと推測する。
【0053】
次に、制御装置60は、予め定められた保圧時間が経過したタイミングで、ヘッド側供給流路L1、増圧側供給流路L2、バイパス流路L4、及びロッド側戻り流路L5を閉塞し、ロッド側供給流路L3及びヘッド側戻り流路L6を開放する。これにより、ロッド側供給流路L3を通じて油圧ポンプ43からロッド室38に作動油が供給され、ヘッド側戻り流路L6を通じてヘッド室37から作動油タンク41に作動油が排出される。その結果、プランジャ32が後退する。以下、この工程を「後退工程」と表記する。
【0054】
制御装置60は、後退工程において、後退側電磁弁52に駆動信号を出力している。そこで
図7に示すように、制御装置60は、駆動信号を出力している油圧部品52を、駆動電圧を印加していない油圧部品と異なる表示態様でディスプレイ64に表示する。
【0055】
図7を見たオペレータは、位置センサ54で検知されたプランジャ32の位置が後退方向に変化している場合に、後退工程が適切に実行されていると判断する。一方、オペレータは、位置センサ54で検知されたプランジャ32の位置が変化しない場合に、後退工程が適切に実行されていないと判断する。この場合、オペレータは、太枠で囲まれた油圧部品52が故障している可能性があると推測する。
【0056】
また、制御装置60は、後退工程と並行して、金型21を型開し、可動側金型24に保持された成形品を取出し、射出スリーブ31に溶湯金属を貯留する。そして、制御装置60は、前述した低速射出工程、高速射出工程、増圧工程、及び後退工程を、この順に繰り返し実行する。これにより、成形品が連続して成形される。
【0057】
また、制御装置60は、
図4~
図7において、作動油供給源(すなわち、アキュームレータ42、油圧ポンプ43)から圧送された作動油を油圧シリンダ(すなわち、油圧シリンダ33、増圧シリンダ48)に供給する供給流路(すなわち、ヘッド側供給流路L
1、増圧側供給流路L
2、ロッド側供給流路L
3、バイパス流路L
4)と、油圧シリンダから排出された作動油を作動油タンク41に還流させる戻り流路(すなわち、ロッド側戻り流路L
5、ヘッド側戻り流路L
6)とを、異なる態様(例えば、供給流路を赤色、戻り流路を青色)で表示する。
【0058】
より詳細には、制御装置60は、供給流路及び戻り流路のうち、各工程で作動油が流通する部分のみの表示態様を異ならせ、作動油が流通しない部分を共通の表示態様(例えば、黒色)で表示してもよい。なお、表示態様の異ならせ方は色を変えることに限定されず、線種を変える(一方を実線、他方を破線など)、線幅を変える(一方を太線、他方を細線など)等でもよい。
【0059】
さらに、制御装置60は、
図4~
図7において、作動油の流通方向を示す矢印を各流路L
1~L
6に沿って表示する。より詳細には、制御装置60は、例えば
図4に示すように、増圧側電磁弁49が閉塞している場合に、増圧側供給流路L
2のうち、増圧側電磁弁49より作動油の流通方向の上流側に矢印を付加し、増圧側電磁弁49より作動油の流通方向の下流側に矢印を付加しない。他の流路についても同様である。
【0060】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0061】
上記の実施形態によれば、センサ53~59で検知された物理量を、概略回路図に含まれる複数の油圧部品33、41~52に対応付けてディスプレイ64に表示することによって、油圧回路40の動作状態を直感的に把握することができる。その結果、トラブル発生時に迅速に原因を究明することができる。
【0062】
また、上記の実施形態によれば、概略回路図上において、駆動信号を出力している油圧部品を、駆動信号を出力していない油圧部品と異なる表示態様で表示するので、故障の可能性がある油圧部品を特定するのがさらに容易になる。
【0063】
また、上記の実施形態によれば、センサ53~59で検知した物理量を、数値としてだけでなく、インジケータとして表示するので、物理量が適正範囲に含まれているか否かを、さらに直感的に把握することができる。
【0064】
また、上記の実施形態によれば、概略回路上において、供給流路及び戻り流を異なる態様で表示したり、作動油の流通方向を示す矢印を各流路L1~L6に沿って表示することにより、各工程で作動油が流れる流路の特定が容易になる。その結果、故障の可能性がある油圧部品を特定するのがさらに容易になる。
【0065】
なお、油圧回路画面の具体例は、
図3~
図7の例に限定されない。
図8は、低速射出工程における油圧回路画面の変形例である。
図8に示す油圧回路画面は、アキュームレータ42から油圧シリンダ33に至る各流路に配置される油圧部品を、作動油の流通方向の上流側から下流側に向けてツリー状に配置した例である。このような表示態様でも、油圧回路40の動作状態を直感的に把握することができる。
【0066】
また、上記の実施形態では、油圧回路画面を見たオペレータが故障の可能性のある油圧部品を推測する例を説明した。しかしながら、制御装置60が故障の可能性のある油圧部品を推測してもよい。推測する方法は、前述の例と同じである。そして、制御装置60は、ディスプレイ64に表示された概略回路図において、故障の可能性のあると推測した油圧部品を、他の油圧部品と異なる態様で表示してもよい。
【0067】
これにより、経験の少ないオペレータでも油圧回路40の状態を適切に把握することができる。なお、表示態様の異ならせ方は、枠で囲む、色を変える、点滅させるなど、どのような方法でもよい。
【0068】
さらに、上記の実施形態に係る複数の油圧部品33、41~52の接続関係、センサ53~59によって検知される物理量、及び故障の可能性のある油圧部品の推測方法は、一例であって、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0069】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…ダイカストマシン、20…型締装置、21…金型、22…固定側金型、23…固定ダイプレート、24…可動側金型、25…可動ダイプレート、26…型開閉シリンダ、27…トグルリンク機構、28…タイバー、30…射出装置、31…射出スリーブ、32…プランジャ、33…油圧シリンダ、34…シリンダチューブ、35…ピストン、36…ロッド、37…ヘッド室、38…ロッド室、40…油圧回路、41…作動油タンク、42…アキュームレータ、43…油圧ポンプ、44…低速側電磁弁、45…電磁比例絞り弁、46,50…流量制御弁、46a,50a…モータ、47…高速側電磁弁、48…増圧シリンダ、49…増圧側電磁弁、51…戻り側電磁弁、52…後退側電磁弁、53…速度センサ、54,57,58…位置センサ、55,59…圧力センサ、56…電圧値センサ、60…制御装置、61…CPU、62…ROM、64…ディスプレイ