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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】圧縮機ユニット
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
F04D27/00 101M
F04D27/00 101E
F04D27/00 101K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020211535
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098155
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳吾
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-316759(JP,A)
【文献】特開昭62-099700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮して需要先設備に供給する圧縮機ユニットであって、
モータと、
前記モータにより駆動されるターボ圧縮機からなる圧縮機本体と、
前記モータの回転数を制御するインバータと、
前記圧縮機本体の吸込側の流路に設けられた圧力調整弁と、
前記インバータおよび前記圧力調整弁を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が目標圧力以上のとき、前記モータの回転数が一定値となるように前記インバータを制御するとともに、前記圧縮機本体に吸い込まれる前記ガスの圧力が一定となるように、前記圧力調整弁の開度を調整し、
前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が目標圧力よりも低いとき、前記圧力調整弁の開度を所定値で維持するとともに、前記圧縮機本体への前記ガスの吸込量が一定となるように、前記インバータを制御する、
圧縮機ユニット。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が前記目標圧力よりも低いとき、前記モータの回転数がステップ状に変化するように前記インバータを制御する、
請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項3】
前記圧縮機本体および前記圧力調整弁をバイパスするように、前記圧力調整弁よりも上流側の部分と前記圧縮機本体よりも下流側の部分とを繋ぐバイパス路と、当該バイパス路中に設けられたバイパス弁とを有するバイパス部をさらに備え、
前記制御部は、
前記バイパス弁の開度も制御し、
前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が前記目標圧力よりも低い場合において、前記モータの回転数を増大させる際に、当該モータの回転数を増大させるのに先行して予め設定された所定量だけ前記バイパス部のバイパス弁を開き、前記モータの回転数を減少させる際に、所定量だけ前記バイパス部のバイパス弁の閉じる、
請求項1または請求項2に記載の圧縮機ユニット。
【請求項4】
前記圧縮機本体および前記圧力調整弁をバイパスするように、前記圧力調整弁よりも上流側の部分と前記圧縮機本体よりも下流側の部分とを繋ぐバイパス路と、当該バイパス路中に設けられたバイパス弁とを有するバイパス部をさらに備え、
前記制御部は、
前記バイパス弁の開度も制御し、
前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が前記目標圧力よりも低いときに、前記需要先設備でガスの負荷遮断が発生した場合に、前記圧縮機本体の吐出圧が低下するように前記バイパス部のバイパス弁を開き、前記バイパス弁を開いてから所定時間が経過するまでの間、前記圧縮機本体の吸込圧の上昇に対して前記モータの回転数を一定に維持し、前記所定時間が経過してから前記圧縮機本体への前記ガスの吸込量が一定となるように、前記インバータを制御する、
請求項1または請求項2に記載の圧縮機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ圧縮機からなる圧縮機本体を備える圧縮機ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ターボ圧縮機からなる圧縮機本体を備える圧縮機ユニットが開示されている。特許文献1に開示の圧縮機ユニットは、圧縮機本体の他に、圧縮機本体を駆動するモータと、モータに電気接続されたインバータと、ガス流路における圧縮機本体よりも上流側の部分に設けられた開閉弁(オン-オフ開閉弁)と、ガス流路における圧縮機本体よりも下流側の部分に設けられたレシーバタンクとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-16464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機ユニットに供給されるガスの圧力は、供給元の状況により変動する場合がある。このように供給ガスの圧力が変動した場合にも、圧縮機本体への供給が必要なガスの容量を確保することが必要となる。これは、圧縮機ユニットの制御を容易にするためである。
【0005】
本発明は、供給されるガスの圧力が変動した場合にも、圧縮機本体へ供給されるガスの容量変動を小さく抑えることができて、制御が容易な圧縮機ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る圧縮機ユニットは、ガスを圧縮して需要先設備に供給する圧縮機ユニットである。本態様に係る圧縮機ユニットは、モータと、圧縮機本体と、インバータと、圧力調整弁と、制御部とを備える。前記圧縮機本体は、前記モータにより駆動されるターボ圧縮機からなる。前記インバータは、前記モータの回転数を制御する。前記圧力調整弁は、前記圧縮機本体の吸込側の流路に設けられている。前記制御部は、前記インバータおよび前記圧力調整弁を制御する。
【0007】
前記制御部は、前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が目標圧力以上のとき、前記モータの回転数が一定値となるように前記インバータを制御する。また、前記制御部は、前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が目標圧力以上のとき、前記圧縮機本体に吸い込まれる前記ガスの圧力が一定となるように、前記圧力調整弁の開度を調整する。
【0008】
前記制御部は、前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が目標圧力よりも低いとき、前記圧力調整弁の開度を所定値で維持するとともに、前記圧縮機本体への前記ガスの吸込量が一定となるように、前記インバータを制御する。
【0009】
上記態様に係る圧縮機ユニットでは、圧力調整弁よりも上流側(一次側)でのガスの圧力が目標圧力以上のとき、制御部は、モータの回転数が一定値となるようにインバータを制御するとともに、圧縮機本体に吸い込まれるガスの圧力が一定となるように圧力調整弁の開度を調整する。
【0010】
一方、一次側でのガスの圧力が目標圧力よりも低いとき、制御部は、圧力調整弁の開度を所定値で維持するとともに、圧縮機本体へのガスの吸込量が一定となるようにインバータによりモータ回転数を一次側でのガスの圧力に基づく回転数に制御する。
【0011】
よって、上記態様に係る圧縮機ユニットでは、一次側でのガスの圧力が変化しても、圧縮機本体へ供給されるガスの容量変動を小さく抑えることができる。
【0012】
上記態様に係る圧縮機ユニットにおいて、前記制御部は、前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が前記目標圧力よりも低いとき、前記モータの回転数がステップ状に変化するように前記インバータを制御してもよい。
【0013】
上記態様に係る圧縮機ユニットでは、一次側でのガスの圧力が目標圧力よりも低いとき、制御部は、モータの回転数がガスの圧力に応じてステップ状に変化するようにインバータを制御する。このため、上記態様に係る圧縮機ユニットでは、一次側でのガスの圧力が目標圧力よりも低いときに、モータの回転数を連続的に変化させる場合に比べて、容易に制御することが可能となる。即ち、上記態様では、モータの回転数をステップ状に変化させることで、変化の途中に回転数が変化しない範囲(不感帯)を設けることができ、回転数の変動が収まってから次のステップへと回転数を増減することができる。
【0014】
上記態様に係る圧縮機ユニットにおいて、バイパス路とバイパス弁とを有するバイパス部をさらに備えてもよい。前記バイパス路は、前記圧縮機本体および前記圧力調整弁をバイパスするように、前記圧力調整弁よりも上流側の部分と前記圧縮機本体よりも下流側の部分とを繋ぐように設けられてもよい。前記バイパス弁は、前記バイパス路中に設けられてもよい。
【0015】
上記態様に係る圧縮機ユニットにおいて、前記制御部は、前記バイパス弁の開度も制御してもよい。前記制御部は、前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が前記目標圧力よりも低い場合において、前記モータの回転数を増大させる際に、当該モータの回転数を増大させるのに先行して予め設定された所定量だけ前記バイパス部のバイパス弁を開いてもよい。また、前記制御部は、前記モータの回転数を減少させる際に、所定量だけ前記バイパス部のバイパス弁を閉じてもよい。
【0016】
上記態様に係る圧縮機ユニットでは、一次側でのガスの圧力が目標圧力よりも低い場合において、モータの回転数を増大させる際に、バイパス弁を予め設定された所定量だけ開き、モータの回転数を減少させる際に、バイパス弁を上記所定量だけ開度を減少させることとしている。
【0017】
ここで、一次側でのガスの圧力が目標圧力よりも低い場合に、二次側でのガスの容量を確保するためにガスの圧力に応じてモータの回転数を増加させるが、当該モータの回転数の増加により圧縮機本体から吐出されるガスの圧力が不安定になることが懸念される。
【0018】
これに対して、上記態様に係る圧縮機ユニットでは、上記のようにモータの回転数を増加(減少)させる際に、回転数の増加(減少)に先行してバイパス弁の開度を僅かに開く(僅かに閉じる)こととしているので、圧縮機本体から吐出されるガスの圧力を安定化することができる。
【0019】
上記態様に係る圧縮機ユニットにおいて、バイパス路とバイパス弁とを有するバイパス部をさらに備えてもよい。前記バイパス路は、前記圧縮機本体および前記圧力調整弁をバイパスするように、前記圧力調整弁よりも上流側の部分と前記圧縮機本体よりも下流側の部分とを繋ぐように設けられてもよい。前記バイパス弁は、前記バイパス路中に設けられてもよい。
【0020】
上記態様に係る圧縮機ユニットにおいて、前記制御部は、前記バイパス弁の開度も制御してもよい。前記制御部は、前記圧力調整弁よりも上流側での前記ガスの圧力が前記目標圧力よりも低いときに、前記需要先設備でガスの負荷遮断が発生した場合に、前記圧縮機本体の吐出圧が低下するように前記バイパス部のバイパス弁を開いてもよい。また、前記制御部は、前記バイパス弁を開いてから所定時間が経過するまでの間、前記圧縮機本体の吸込圧の上昇に対して前記モータの回転数を一定に維持し、前記所定時間が経過してから前記圧縮機本体への前記ガスの吸込量が一定となるように、前記インバータを制御してもよい。
【0021】
上記態様に係る圧縮機ユニットでは、一次側でのガスの圧力が目標圧力よりも低く、モータの回転数の増減により圧縮機本体へのガスの容量が制御されているときに、需要先設備でガスの負荷遮断が発生した場合に、制御部は、上述のようにインバータを制御する。即ち、上記のような負荷遮断が発生した場合には、制御部は、所定時間が経過するまでモータの回転数が負荷遮断に関する情報が入力される直前の状態で一定に維持されるようにインバータを制御することとしている。
【0022】
需要先設備でガスの負荷遮断が発生した場合には、圧縮機本体から吐出されたガスはバイパス路を通り一次側に戻される。このため、バイパス路を通り戻されたガスにより、二次側でのガスの圧力が一時的に上昇することになる。
【0023】
上記態様に係る圧縮機ユニットでは、上記のような二次側でのガスの圧力(吸込圧)の一時的な上昇が生じた場合にも、モータの回転数が変動しないように割り込み制御を行うものである。よって、上記態様に係る圧縮機ユニットでは、需要先設備でガスの負荷遮断が発生した場合にも、圧縮機本体の運転が不安定になってしまうのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
上記の各態様に係る圧縮機ユニットでは、供給されるガスの圧力が変動した場合にも、圧縮機本体へ供給されるガスの容量変動を小さく抑えることができるため、制御が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る圧縮機ユニットの構成を示すブロック図である。
図2】制御部が実行する吸込側ガスの容量制御方法を示すフローチャートである。
図3】(a)は、一次側流路でのガス圧力と圧力調整弁の弁開度との関係の一例を示す図であり、(b)は、一次側流路でのガス圧力とモータ回転数との関係の一例を示す図である。
図4】変形例1に係る圧縮機ユニットにおいて、制御部が実行するバイパス弁の開度制御方法を示すフローチャートである。
図5】変形例2に係る圧縮機ユニットにおいて、制御部が実行するバイパス弁およびインバータの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0027】
[実施形態]
1.圧縮機ユニット1の構成
本実施形態に係る圧縮機ユニット1の構成について、図1を用いて説明する。
【0028】
図1に示すように、圧縮機ユニット1は、モータ10と、圧縮機本体11と、インバータ12と、圧力調整弁13と、圧力センサ14と、制御部15と、ガス流路LN1,LN2と、バイパス部17とを備える。圧縮機本体11にはモータ10が接続されており、圧縮機本体11はモータ10により駆動される。
【0029】
インバータ12は、モータ10に電気接続されている。また、インバータ10は、電力供給源に電気接続されている。さらに、インバータ12は、制御部15に信号接続されており、制御部15から入力される制御信号に従って、モータ10の回転数を制御する。
【0030】
圧縮機本体11は、ターボ圧縮機からなり、吸込側のガス流路である吸込側ガス流路LN1から供給されたガスを吸い込み、当該吸い込んだガスを圧縮して吐出側のガス流路である吐出側ガス流路LN2に吐出する。
【0031】
圧力調整弁13は、吸込側ガス流路LN1に設けられている。圧力調整弁13は、制御部15に信号接続されており、制御部15から入力される制御信号に従って、開度を調整する。なお、本明細書では、吸込側ガス流路LN1のうち、ガスの流れ方向において、圧力調整弁13よりも上流側の部分を一次側流路LN11とし、圧力調整弁13と圧縮機本体11との間の部分を二次側流路LN12とする。
【0032】
圧力センサ14は、一次側流路LN11に設けられている。圧力センサ14は、制御部15に信号接続されており、制御部15に対して一次側流路LN11中のガス圧力Pを示す情報を出力する。なお、圧力センサ14から制御部15へのガス圧力情報の出力は、時間的に連続的であってもよいし間欠的であってもよい。
【0033】
制御部15は、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有して構成されている。制御部15は、メモリに予め格納されたファームウェア等を実行することにより、圧力センサ14からのガス圧力情報を基に、インバータ12の制御および圧力調整弁13の開度制御を実行する。
【0034】
バイパス部17は、圧縮機本体11から吐出されたガスの一部を一次側流路LN11に戻すための部位である。バイパス部17は、バイパス路LN3とバイパス弁16とを有する。バイパス路LN3は、圧縮機本体11と圧力調整弁13とをバイパスするように、一次側流路LN11と吐出側ガス流路LN2とを繋ぐように設けられている。
【0035】
バイパス弁16は、バイパス路LN3に設けられている。バイパス弁16は、制御部15に信号接続されている。制御部15は、バイパス弁16の開度制御も実行する。制御部15は、需要先の需要量が圧縮機ユニット1が供給可能な最低供給流量を下回った場合に、余剰量をバイパス路LN3にて戻し、サージングの発生を防止する。
【0036】
なお、本実施形態に係る圧縮機ユニット1は、発電設備で利用される燃料ガスや、化学プラントで利用されるCO、硝酸、硫化水素などのガスの圧縮に利用される。
【0037】
2.制御部15が実行する吸込側ガスの容量制御
圧縮機ユニット1において、制御部15が実行する吸込側ガスの容量制御方法について、図2および図3を用いて説明する。
【0038】
図2に示すように、制御部15は、圧力センサ14からガス圧力Pの情報を取得する(ステップS1)。ガス圧力Pは、上述のように、ガスの流れ方向において、圧力調整弁13よりも上流側である一次側流路LN11中を流れるガスの圧力である。
【0039】
次に、制御部15は、ガス圧力Pがメモリに予め格納された目標圧力Pth以上であるか否かを判定する(ステップS2)。ガス圧力Pが目標圧力Pth以上である場合(ステップS2:Yes)、図3(b)に示すように、制御部15は、モータ10の回転数RSが所定値RSで一定となるようにインバータ12を制御する(ステップS3)。
【0040】
また、ガス圧力Pが目標圧力Pth以上である場合(ステップS2:Yes)、制御部15は、圧力調整弁13の開度VOを、ガス圧力Pに基づいて規定される開度VO(P)とする制御を実行する(ステップS4)。図3(a)に示すように、ガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合の弁開度VOは開度VOで一定に設定される一方で、ガス圧力Pが目標圧力Pth以上の場合の弁開度VOはガス圧力Pに基づきVOとVOとの間の値の弁開度VO(P)に設定される。ここで、本実施形態では、VOはVOよりも小さい値である。図3(a)に示すように、ガス圧力Pが目標圧力Pth以上である場合の圧力調整弁13の弁開度VO(P)は、ガス圧力Pが高くなるに従って絞られるように(小さくなるように)制御される。
【0041】
ここで、図3(a)に示すガス圧力Pと弁開度VO(P)との関係については、制御部15のメモリに予め格納されている。
【0042】
なお、本実施形態では、弁開度VOは一例として100%の開度であり、弁開度VOは一例として圧力調整弁13の最小開度(0%よりも大きい開度)である。
【0043】
図2に戻って、ガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合(ステップS2:No)、制御部15は、モータ10の回転数RSがガス圧力Pに基づく回転数RS(P)となるようにインバータ12の制御を実行する(ステップS5)。図3(b)に示すように、ガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合のモータ回転数RS(P)は、ガス圧力PがPthからPへと低くなるに従ってRSからRSへとステップ状に増大するように設定されている。
【0044】
図3(b)に示すガス圧力Pとモータ10の回転数RS(P)との関係についても、制御部15のメモリに予め格納されている。
【0045】
また、ガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合(ステップS2:No)、制御部15は、弁開度VOが所定値VOで維持されるように圧力調整弁13を制御する(ステップS6)。なお、所定値VOは、上述のように、一例として100%の開度である。
【0046】
3.効果
本実施形態に係る圧縮機ユニット1では、圧力調整弁13よりも上流側の一次側流路LN11でのガス圧力Pが目標圧力Pth以上のとき(図2のステップS2:Yesのとき)、制御部15は、モータの回転数RSが所定値RSで一定となるようにインバータ12を制御するとともに、圧縮機本体11に吸い込まれるガスが流れる二次側流路LN12でのガス圧力が一定となるように(図3(a)に示すように弁開度VOがガス圧力Pに基づく弁開度VO(P)となるように)、圧力調整弁13を制御する。
【0047】
一方、一次側流路LN11でのガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低いとき(図2のステップS2:Noのとき)、制御部15は、圧力調整弁13の開度VOを所定値VO(一例として100%の開度)で維持するとともに、図3(b)に示すようにモータ10の回転数RSがガス圧力Pに基づく回転数RS(P)となるように、即ち、ガス圧力Pが低くなるのに従って回転数RS(P)が増大するように、インバータ12を制御する。これにより、圧縮機本体11へのガスの吸込量を一定にすることができる。
【0048】
よって、本実施形態に係る圧縮機ユニット1では、一次側流路LN11でのガス圧力Pが変動しても、圧縮機本体11に吸入されるガスの容量変動を小さく抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る圧縮機ユニット1では、一次側流路LN11でのガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低いとき(図2のステップS2:Noのとき)、制御部15は、図3(b)に示すように、モータ10の回転数RSがステップ状に変化するようにインバータ12を制御する。このため、圧縮機ユニット1では、一次側流路LN11でのガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低いときに、モータ10の回転数RSを連続的に変化させる場合に比べて、容易に制御することが可能となる。即ち、圧縮機ユニット1では、一次側流路LN11でのガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合に、モータ10の回転数RS(P)をガス圧力Pに基づきステップ状に変化させることで、変化の途中に回転数が変化しない範囲(RS,RS,RS,RS,RS,RSで回転数RSが一定の範囲)を設けることができ、回転数RSの変化に伴うガスの容量変動が収まってから次のステップへと回転数RSを増減させることができる。例えば、ガス圧力PがPとなったときにモータ10の回転数RSをRSからRSへと増大させ、ガス圧力PがPからPの間にあるときにはモータ10の回転数RSをRSのまま維持する。このようにガス圧力Pが変動してもモータ10の回転数RSを変動させない不感帯を設けることで、回転数RSの増減に伴うガスの容量変動を抑えることができる。
【0050】
以上より、本実施形態に係る圧縮機ユニット1では、一次側流路LN11のガス圧力Pが変動した場合にも、圧縮機本体11へ供給されるガスの容量変動を小さく抑えることができ、制御が容易である。
[変形例1]
変形例1に係る圧縮機ユニット1において、制御部15が実行するバイパス弁16の開度制御方法について、図4を用いて説明する。なお、本変形例に係る圧縮機ユニット1の構成は、上記実施形態に係る圧縮機ユニット1と同じである。また、図2および図3を用いて説明した、制御部15による吸込側ガスの容量制御についても、同じである。よって、以下では、制御部15が実行するバイパス弁16の開度制御方法に絞って説明する。
【0051】
図4に示すように、制御部15は、圧力センサ14からガス圧力Pを示す情報を取得し(ステップS11)、ガス圧力Pが目標圧力Pthより低いか否かを判定する(ステップS12)。制御部15は、ガス圧力Pが目標圧力Pth以上と判定した場合には(ステップS12:No)、制御をリターンする。
【0052】
制御部15は、ガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低いと判定した場合には(ステップS12:Yes)、モータ10の回転数RSを増大させる胸の指示があったか否かを判定する(ステップS13)。制御部15は、ガス圧力Pに基づきモータ10の回転数RSを増大させる旨の指示があったと判定した場合には(ステップS13:Yes)、モータ10の回転数RSを増大させるのに先行して、バイパス弁16を予め設定された所定量だけ開く(ステップS14)。なお、ステップS14では、バイパス弁16を微開させる。この場合の微開量とは例えば1%~5%程度である。これにより、圧縮機本体11から吐出されたガスの一部が一次側流路LN11に戻される。
【0053】
制御部15は、バイパス弁16を微開した後(ステップS14の実行後)、モータ10の回転数RSをガス圧力Pに基づく回転数RS(P)に増大させる(ステップS15)。
【0054】
一方、制御部15は、ガス圧力Pに基づきモータ10の回転数RSを増大させる旨の指示がないと判定した場合には(ステップS13:No)、モータ10の回転数RSを減少させる旨の指示の有無を判定する(ステップS16)。ステップS13では、モータ回転数RSがRSからRSに向けて減少させる旨の指示の有無を判定する。(図3(b)を参照)。
【0055】
制御部15は、モータ10の回転数RSを減少させる旨の指示があったと判定した場合には(ステップS16:Yes)、バイパス弁16の開度を所定量だけ減少させ(ステップS17)、その後にモータ10の回転数RSを減少させる(ステップS18)。換言すると、本変形例に係る圧縮機ユニット1における制御では、モータ10の回転数RSを減少させるのに先行して、バイパス弁16の開度を微閉する。この場合の微閉量とは例えば1%~5%程度である。
【0056】
制御部15は、ステップS16の判定において、モータ10の回転数RSを減少させる旨の指示がないと判定した場合には(ステップS16:No)、制御をリターンする。
【0057】
本変形例に係る圧縮ユニット1においても、上記実施形態に係る圧縮機ユニット1と同様の構成を有し、また、制御部15が上記実施形態と同様の制御(図2および図3を用いて説明した制御)を実行するので、上記実施形態に係る圧縮機ユニット1と同様の効果を奏することができる。
【0058】
また、本変形例に係る圧縮機ユニット1では、一次側流路LN11でのガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合において(図4のステップS12:Yes)、制御部15は、モータ10の回転数RSを増大させる旨の指示があったか否かを判定する(図4のステップS13:Yes)。そして、制御部15は、ステップS12,S13がともにYesであると判定した場合には、モータ10の回転数RSを増大させるのに先行して、バイパス弁16を予め設定された所定量だけ開く(ステップS14)。なお、ステップS14において、バイパス弁16は、微開される。このように、バイパス弁16を微開することで、圧縮機本体11から吐出されたガスの一部が一次側流路LN11に戻される。制御部15は、上記のように吐出ガスの一部が一次側流路LN11に戻される状態において、モータ10の回転数RSをガス圧力Pに基づく回転数RS(P)に増大させる(ステップS15)。
【0059】
ここで、一次側流路LN11でのガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合に(図4のステップS12:Yes)、二次側流路LN12でのガスの容量を確保するためにモータ10の回転数RSをガス圧力Pに基づく回転数RS(P)に増大させるため、当該回転数RSの増大により圧縮機本体11から吐出側ガス流路LN2に吐出されるガスの圧力が変動することが懸念される。本変形例に係る圧縮機ユニット1では、上記のようにモータ10の回転数RSをガス圧力Pに基づいて増大させる場合に、モータ10の回転数RSを増大させるのに先行してバイパス弁16を所定量だけ微開することとしているので、圧縮機本体11から吐出されたガスの一部を一次側流路LN11に戻すことができる。即ち、モータ10の回転数RSを増大させるのに先行してバイパス弁16を微開させるフィードフォワード制御を実行することにより、モータ10の回転数RSを増大させる場合においても、圧縮機本体11に吸い込まれる二次側流路LN12でのガスの圧力変動を緩和することができる。
【0060】
また、本変形例に係る圧縮機ユニット1では、モータ10の回転数RSを減少させる場合においても、モータ10の回転数RSを減少させるのに先行してバイパス弁16の開度を微閉させるフィードフォワード制御を実行することとしている。よって、本変形例に係る圧縮機ユニット1では、モータ10の回転数RSを減少させる場合にも、圧縮機本体11から吐出されるガスの圧力を安定化することができる。
【0061】
[変形例2]
変形例2に係る圧縮機ユニット1において、制御部15が実行するバイパス弁16およびインバータ12の制御方法について図5を用いて説明する。なお、本変形例に係る圧縮機ユニット1は、上記実施形態に係る圧縮機ユニット1と同様の構成を有する。また、本変形例に係る圧縮機ユニット1でも、上記実施形態および上記変形例1に係る圧縮機ユニット1の制御部15が実行する各制御を実行する。以下では、本変形例に係る圧縮機ユニット1の制御部15が実行する制御のうち、上記変形例1との差異だけを説明する。
【0062】
本変形例に係る圧縮機ユニット1は、発電プラントのガスタービンに圧縮ガスを供給するユニットを一例として想定している。即ち、火力発電プラントのガスタービンが需要先設備に該当する。ここで、火力発電プラントのガスタービン等は緊急停止されることがあり、この場合には、圧縮機ユニット1に対して負荷遮断に関する情報が送られるようになっている。このような前提のもと、以下の説明を行う。
【0063】
図5に示すように、制御部15は、圧力センサ14からガス圧力Pに係る情報を取得する(ステップS21)。そして、制御部15は、取得したガス圧力Pがメモリに予め格納された目標圧力Pthより低いか否かを判定する(ステップS22)。制御部15は、ガス圧力Pが目標圧力Pth以上であると判定した場合には(ステップS22:No)、制御をリターンする。
【0064】
一方、制御部15は、取得したガス圧力Pがメモリに予め格納された目標圧力Pthより低いと判定した場合には(ステップS22:Yes)、需要先設備からガスの負荷遮断が発生したとの情報が入力されたか否かを判定する(ステップS23)。制御部15は、需要先設備からガスの負荷遮断が発生したとの情報が入力されていないと判定した場合には(ステップS23:No)、制御をリターンする。
【0065】
制御部15は、ステップS23において、需要先設備からガスの負荷遮断が発生した旨の情報が入力されたと判定した場合には(ステップS23:Yes)、バイパス部17のバイパス弁16を開き(ステップS24)、タイマーをONにして計時を開始する(ステップS25)。なお、タイマーについては、制御部15に内蔵していてもよいし、外部に設けられたものであってもよい。
【0066】
制御部15は、タイマーがタイムアップするまでの間(ステップS27:No)、モータ10の回転数RSを一定(ステップS24の実行開始時の回転数)に維持するようにインバータ12を制御する(ステップS26)。そして、制御部15は、タイマーがタイムアップすると(ステップS27:Yes)、タイマーをOFFにして計時を終了するとともに(ステップS28)、モータ10の回転数RSがガス圧力Pに基づく回転数RS(P)となるようにインバータ12を制御する(ステップS29)。なお、ガス圧力Pに基づく回転数RS(P)は、図3(b)に示した通りである。制御部15は、ステップS29の実行の後、制御をリターンする。
【0067】
本変形例に係る圧縮機ユニット1では、ガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合であって(図5のステップS22:Yes)、且つ、需要先設備からガスの負荷遮断が発生した場合に(図5 のステップS23:Yes)、所定時間Tthが経過するまでモータ10の回転数を一定に維持する。なお、ステップS22,S23の判定がともに“Yes”の場合には、バイパス弁16が開かれるので(ステップS24)、圧縮機本体11から吐出されたガスは一次側流路LN11へと戻される。このため、バイパス路LN3を通り戻されたガスにより、二次側流路LN12でのガスの圧力が一時的に上昇することになる。
【0068】
本変形例に係る圧縮機ユニット1では、上記のような二次側流路LN12でのガスの圧力(吸込圧)の一時的な上昇に対して、所定時間Tthだけモータ10の回転数RSを一定に維持する割り込み制御を行うものである。よって、本変形例に係る圧縮機ユニット1では、一次側流路LN11でのガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低く、且つ、モータ10の回転数RSの増減により圧縮機本体11へのガスの容量が制御されているときに、需要先設備でガスの負荷遮断が発生した場合にも、圧縮機本体11の運転が不安定になってしまうのを抑制することができる。
【0069】
本変形例に係る圧縮機ユニット1は、ガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合に、モータ10の回転数RSをガス圧力Pに対して1次関数や対数関数などの滑らかな関係をもって規定された回転数RS(P)に設定されていてもよい。
【0070】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1,2では、図1に示したように圧縮機ユニット1が1つの圧縮機本体11を備える構成を一例として採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。即ち、2つ以上の圧縮機本体を備える多段式の構成を採用することも可能である。
【0071】
また、上記実施形態に係る圧縮機ユニット1では、バイパス部17は必須の構成要件ではない。
【0072】
また、図1では、圧縮機本体11から吐出されたガスを冷却するためのクーラなどを図示していないが、吐出側ガス流路LN2にクーラを設けることも可能である。
【0073】
また、上記実施形態および上記変形例1,2では、図3(a)における弁開度VOを一例として100%の開度としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。弁開度VOは、圧力調整弁13の最小開度VOよりも大きい開度であればよい。
【0074】
また、上記実施形態および上記変形例1では、図3(b)に示したように、ガス圧力Pが目標圧力Pthよりも低い場合に、モータ10の回転数RS(P)を一例として6段階のステップ状に増減させることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、5段階以下のステップ状に変化させることや、7段階以上のステップ状に変化させることも可能である。また、各ステップ間のガス圧力Pの間隔については、必ずしも均一とすることは必要ない。同様に、各ステップ間のモータ回転数RSの間隔についても、必ずしも均一とすることは必要ない。
【符号の説明】
【0075】
1 圧縮機ユニット
10 モータ
11 圧縮機本体
12 インバータ
13 圧力調整弁
15 制御部
16 バイパス弁
17 バイパス部
LN1 吸込側ガス流路
LN2 吐出側ガス流路
LN3 バイパス路
LN11 一次側流路
LN12 二次側流路
図1
図2
図3
図4
図5