(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】有益なダニを放出するシステムおよびその使用
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20230710BHJP
A23K 50/90 20160101ALI20230710BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20230710BHJP
A01M 1/00 20060101ALI20230710BHJP
A01K 13/00 20060101ALI20230710BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20230710BHJP
A01N 63/14 20200101ALI20230710BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
A01K67/033 502
A23K50/90
A23K10/20
A01M1/00 Z
A01K13/00 C
A01P7/02
A01N63/14
B32B15/08 E
(21)【出願番号】P 2020501810
(86)(22)【出願日】2018-07-16
(86)【国際出願番号】 NL2018050490
(87)【国際公開番号】W WO2019017776
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-15
(32)【優先日】2017-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】507223568
【氏名又は名称】コッパート・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ハウテン,イヴォンヌ・マリア
(72)【発明者】
【氏名】フェーンマン,アーレント
(72)【発明者】
【氏名】ホーヘルブルッヘ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ベヴァリッジ,ニコラス・ジョルジュ・ペトルス
(72)【発明者】
【氏名】フロート,トーマス・フォルカート・マリー
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/079353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有益なダニ種の集団と、前記有益なダニのための食料源とを保持するダニ区画を備える、有益なダニを放出するシステムであって、前記ダニ区画は、前記ダニ区画と境を接する内面、前記ダニ区画の外部の外面を有し、かつ、≦5g/m
2*24時間の水蒸気透過率を有するガスバリヤー性材料を含む、封入材により囲まれており、前記ダニ区画はxmm
3の容積を有し、xは3*10
3から600*10
3mm
3の間であり、前記システムはさらに前記ダニ区画を前記ダニ区画の外部の空間と連絡するいくつかの連絡部を備えており、前記いくつかの連絡部はそれぞれ面積yを有し、yは0.1から4.0mm
2の間であり、前記いくつかの連絡部の面積の総計はΣyであり、5*10
3mm≦x/Σy≦70*10
3mmであり、
前記封入材の前記外面が吸水性多孔質材料を含むことを特徴とする、システム。
【請求項2】
選択される前記ガスバリヤー性材料が、ポリマー-金属積層体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記封入材が前記ガスバリヤー性材料を含む積層体である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記有益なダニ種の集団が担体と共にある、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記有益なダニ種が、捕食性ダニ種から選択される、請求項1~
4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記捕食性ダニ種が、メソスティグマチドダニ種またはプロスティグマチドダニ種から選択される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記捕食性ダニ種が、i)カブリダニ科、ii)マヨイダニ科、iii)トゲダニ科、iv)ハエダニ科、v)ヤドリダニ科、vi)コハリダニ科、vii)ツメダニ類、viii)オソイダニ科、ix)タカラダニ科、x)ナガヒシダニ科、およびxi)ハモリダニ科からなる群から選択される、請求項
5または
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記有益なダニ種が、コナダニ亜目のダニ種から選択される、請求項1~
4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記有益なダニ種が捕食性ダニ種であり、前記捕食性ダニ種の前記食料源がコナダニ亜目から選択される餌のダニ種を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
有益なダニ種を標的領域に導入するための、請求項1~
9のいずれか1項に記載のシステムの使用。
【請求項11】
捕食性の節足動物種の餌となり得る害虫を防除する方法であって、前記害虫を防除しようとする標的領域に請求項1~
4のいずれか1項に記載のシステムのいくつかを供給するステップを含み、前記捕食性の節足動物種が捕食性ダニ種であり、請求項1~3のいずれか1項に記載の前記システムが前記有益なダニ集団として前記捕食性ダニ種の集団を含む、方法。
【請求項12】
捕食性の節足動物種の餌となり得る害虫が寄生しやすい非ヒト生物から農畜産物を生産する方法であって、
-ある領域、すなわち標的領域に、いくつかの非ヒト生物を供給するステップと;
-前記標的領域に、またはそれに近接して、請求項1~
4のいずれか1項に記載のシステムのいくつかを供給するステップと;
-前記農畜産物を生産させるために、前記いくつかの非ヒト生物に適切な栄養物および環境条件を与えるステップと;
を含み、
前記捕食性の節足動物種が捕食性ダニ種であり、請求項1~
4のいずれか1項に記載の前記システムが前記有益なダニ集団として前記捕食性ダニ種の集団を含む、方法。
【請求項13】
前記いくつかの非ヒト生物が、作物種、鳥類種、家畜哺乳類から選択される、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
≦5g/m
2*24時間の水蒸気透過率を有する金属化されたポリマーフィルム、および吸水性多孔質材料の外層を含む積層体の、有益なダニを保持するダニ区画を含む有益なダニを放出するシステムの構築材料としての使用であって、前記積層体は吸水性多孔質材料の前記外層が前記システムの外部となるように使用される、使用。
【請求項15】
有益なダニを放出するシステムを製造する方法であって、
-第1の表面、すなわち内面、および第2の表面、すなわち外面を有し、≦5g/m
2*24時間の水蒸気透過率を有するガスバリヤー性材料を含む材料、すなわち封入材を準備するステップと、
ここで、前記外面が吸水性多孔質材料を含み、水が前記吸水性多孔質材料上に導入されたとき水膜を形成し;
-前記封入材から、有益なダニを保持するのに適した区画であるダニ区画を含む構造体を構築するステップと、
ここで、前記構造体が、前記第1の表面が前記ダニ区画に面するように構築され;
-前記ダニ区画内にいくつかの有益なダニを配置するステップと
を含
む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ダニ種のヒトのための使用に関する。ヒトにとって有益に使用することができるダニ種は、例えば、植物生産物のための農業生産システム、動物生産物および畜産物のための農業生産システムを含む農業の分野、食品の貯蔵の分野などにおいて害虫を防除するのに使用し得る。かかる用途において、捕食性ダニ種ならびに捕食性ダニ種または他の捕食性の節足動物種のための餌として適したダニ種は有益であると考えることができる。
【背景技術】
【0002】
園芸を含む農業における有益なダニの使用は公知である。例えば、欧州特許第1686849号、欧州特許第2042036号、欧州特許第1830631号、欧州特許第1965634号に記載されているものなどの捕食性ダニは作物の害虫を防除するのに用いられることができる。欧州特許第2405741号および欧州特許第2612551号はさらに幾種もの有益な捕食性ダニを記載している。ダニ種をヒトのために使用することができる上述の分野は、その可能性のいくつかを包含する(encompass/include)に過ぎない。
【0003】
有益なダニをうまく使用するには、標的領域における有益なダニの思い通りの放出が必要とされる。有益なダニを放出し、またはそれらに餌のダニを供給するために様々なシステムが開発されている。これらの伝統的なシステムにおいて、有益なダニは、代謝ガス(特にO2)が透過可能な材料、または、周囲の大気とのガス交換を可能にするために比較的大きい通気口を有する材料で作製された容器に入れられる。これは、当技術分野における、容器内での有益なダニの長期の生存(少なくとも2週間)には広範囲にわたるガス交換が必要とされるという一般的な信念に基づいている。これらの要件は、中でも、ガスが透過可能な材料(布地またはポリエチレン(PE)でコートされた紙)で作製された有益な昆虫およびダニのための放出システムに関するGB2393890(例えば、第4頁第30行~第5頁第2行参照)に反映されている。
【0004】
しかし、有益なダニの長期の放出のために、ガス透過性材料および/または比較的大きい通気口を有する材料を使用するシステムを使用することには、ある種の欠点がある。特に、ガスに対して相当に透過性の材料は、かなりの水蒸気の交換も可能にする。同様に、大きい通気口は、代謝ガスの交換を可能にするだけでなく水蒸気の流出も可能にする。加えて、大きい通気口には、有益なダニが存在するシステム内部に液状の水分が入る危険性がある。このため、水分レベルを目標の範囲内に維持することは従来技術のシステムに伴う問題である。目標の範囲外の水分レベルはシステム内の有益なダニの健康および/または集団の増殖に所望でない影響を与える可能性がある。このため、伝統的なシステムが有益なダニを放出するように長期に機能するには、周囲の相対湿度が約70%以上である必要がある。
【0005】
最近になって、本出願人の研究チームによる慎重な調査の後、驚くべきことに、有益なダニを長期に放出する(供給する)ためのシステムにはガス透過性材料および/または比較的大きい通気口を使用しなければならないという一般的な信念に反して、低いガス透過率を有する材料により囲まれた区画であって、その区画の内部(ダニ個体を収容している)と外部を連絡する開口が(例えば、ガス透過性材料を使用する現存のシステムの大きさの範囲内のように)比較的小さい前記区画において、有益なダニの種の集団を効果的に維持することが可能であるということが見出された。これらの知見は、早期公開されてない特許出願EP17151679.2およびPCT/NL2017/050022として出願され、今はそれぞれ欧州特許出願公開第3192366号および国際公開第2017/123094号として公開されている発明の様々な態様の根底にある。この新世代のダニ放出システムの分野における機能に関するさらなる研究により、さらに改良をなし得るということが明らかになった。これらのさらなる改良が本発明の根底にある。
【0006】
中でも、一定の条件下で、ダニ放出システムが金属化されたポリマーフィルムを含む積層フィルムから構築されている場合、これらのシステムが(例えば約0.7mm)小さい直径の単一のダニ出口を含むときでも、ダニ区画への水の流入の危険性があることが見出された。この問題の発生は驚くべきことであったし、報告されていない。水の流入の危険性を低減するために、さらなる研究が行われた。その間に、驚くべきことに、外層として紙の層を含む積層フィルムを使用すると、水の浸入の危険性が低減したことが判明した。発生する問題および紙の層により提供される解決策の慎重な分析により、本発明者は、水の流入の危険性がダニ放出システムの外面に水膜維持材料を使用することによって低減されるという結論に至った。
【発明の概要】
【0007】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、好ましくは担体と共にある有益なダニ種の集団と、有益なダニのための食料源とを保持する区画である「ダニ区画」からなる有益なダニを放出するためのシステムに関し、前記ダニ区画は、ダニ区画を縁取る内面、ダニ区画の外部にある外面を有し、≦5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有するガスバリヤー性材料を含む封入材により囲まれており、前記ダニ区画は3*103から600*103mm3の間の容積xを有しており、システムはさらにダニ区画をダニ区画の外部の空間と連絡するいくつかの連絡部を含んでおり、前記いくつかの連絡部は各々が0.1から4.0mm2の間の面積yを有しており、前記いくつかの連絡部の面積の総計はΣyであり、5*103mm≦x/Σy≦70*103mm、好ましくは6*103mm≦x/Σy≦60*103mm、より好ましくは7*103mm≦x/Σy≦50*103mmである。この有益なダニを放出するシステムは封入材の外面が水膜維持材料を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明のさらなる態様は、有益なダニ種を標的領域に導入するための本発明によるシステムの使用、および捕食性の節足動物種の餌になることができる害虫を標的領域で防除する方法であって、本発明によるシステムを前記標的領域に提供することを含む前記方法に関する。
【0009】
本発明のさらにもう1つ別の態様は、捕食性の節足動物種の影響を受けやすい害虫に弱いいくつかの非ヒト生物から農畜産物を生産する方法に関し、前記方法は、
前記いくつかの非ヒト生物をある領域、すなわち標的領域に供給し、
標的領域に、本発明に記載のシステムの複数を供給し、
前記いくつかの非ヒト生物に適切な栄養物および環境条件を与えて、農畜産物を生産する
ことを含む。
【0010】
本発明のさらなる態様は、≦5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有する金属化されたポリマーフィルム、および紙などの吸水性多孔質材料の外層を含む積層体に関する。
【0011】
さらなる態様によれば、本発明は、有益なダニを保持する小袋などのダニ区画を含む、有益なダニを放出するシステムのための構築材料としての本発明の積層体の使用に関する。
【0012】
本発明はまた、本発明の積層体を構築材料として使用する、有益なダニを放出するシステムを製造する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、本発明によるダニ放出システムの前側の図を示す。
図1Bは、本発明によるダニ放出システムの後側の図を示す。
図1Cは、
図1Aおよび1Bに示されているダニ放出システムの最長の軸の方向の図を示す。
図1Dは、
図1A-1Cのダニ放出システムを形成するための面状ホイルを示す。
【
図2】
図2は、いかにして多数のダニ放出小袋をホイルのロールから形成することができるかを示す。
【
図3A-3B】
図3Aおよび3Bは、ダニ区画を包囲するガスバリヤー性材料を有する早期公開されてない特許出願EP17151679.2およびPCT/NL2017/050022(今ではそれぞれ欧州特許出願公開第3192366号および国際公開第2017/123094号として公開されている)のダニ放出システムの内部の捕食性の(ダニスワルスキーカブリダニ(A.swirskii))および餌のダニ(サトウダニ(C.lactis))の計数結果を示す。計数はこれらの早期公開されてない出願の実験において試験された異なる設計変更に関する。この実験はまたガスバリヤー性材料の効果の参照のために本出願においても実験1として提示されている。
【
図4A-4B】
図4Aおよび4Bは、早期公開されてない特許出願EP17151679.2およびPCT/NL2017/050022(今ではそれぞれ欧州特許出願公開第3192366号および国際公開第2017/123094号として公開されている)のダニ放出システムの内部の水分活性(a
w)および含水量の値を時間と共に示す。
【
図5A-5B】
図5Aおよび5Bは、早期公開されてない特許出願EP17151679.2およびPCT/NL2017/050022(今ではそれぞれ欧州特許出願公開第3192366号および国際公開第2017/123094号として公開されている)のダニ放出システムに関する実験1で試験したウォーキングアウト試験において集めた捕食性ダニ(スワルスキーカブリダニ)および餌のダニ(サトウダニ)の計数結果を示す。
【
図6】
図6は、実験2で使用した小袋を正面図で示す。左から右へ、処置(C)、(D)、(A)、(B)。処置(C)および(D)は本発明による。
【
図7】
図7は、実験2で使用した小袋を側面図で示す。左から右へ、処置(A)、(B)、(C)、(D)。
【
図8】
図8は、実験で使用した灌漑水の組成を示す。
【
図9】
図9は、実験2の14日後のふすまの観察結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシステムは有益なダニを放出するのに適したシステムである。このシステムは構造要素、特に封入材、およびある種の実施形態では他の要素も含み、ならびに生物要素、特に有益なダニの集団を含む。有益なダニを放出するかかるシステムは、有益なダニを放出する装置または有益なダニを放出する容器といってもよい。したがって用語「システム」は用語「装置」または「容器」のいずれかと代えてもよい。
【0015】
生物学の用語「ダニ」は当業者には明白である。特に、当業者は知っているように、ダニは外骨格および関節肢を有することで特徴付けられるダニ亜綱(Acari)という亜綱の無脊椎動物である。本発明のシステムにより放出される有益なダニは、それらが果たし得る有用な機能の点で有益である。かかる有用な機能としては、例えば、昆虫および/またはダニ害虫の集団の防除などの、園芸を含めた農業における機能を挙げることができる。特に捕食性ダニは昆虫および/またはダニ害虫または線虫の集団の防除に有用である。あるいは、有益なダニは、それらが有益な捕食性ダニまたは他の有益な捕食性節足動物のための食料源として役立ち得る一方で、使用される標的領域において害虫とはならないという意味で有用であり得る。このように、有益なダニは、標的領域に存在する(人為的な導入によるかまたは天然に存在することによる)捕食性種の集団の増殖を、標的領域に負の影響を及ぼす最小限の危険性で支持し得る。したがって「有益」という用語は「有用」を意味するものと理解されてよい。
【0016】
捕食性ダニは、例えば以下のものから選択され得る。
以下のようなメソスティグマチド(Mesostigmatid)ダニ種:
i)以下のようなカブリダニ科(Phytoseiidae):
アムブリセイイナエ亜科(Amblyseiinae)、例えば、アムブリセイウス属(Amblyseius)、例えばアンダソニガブリダニ(Amblyseius andersoni)、アムブリセイウス・アエリアリス(Amblyseius aerialis)、スワルスキーカブリダニ(Amblyseius swirskii)、アムブリセイウス・ヘルビコルス(Amblyseius herbicolus)またはラーゴカブリダニ(Amblyseius largoensis)、ユーセイウス属(Euseius)、例えばユーセイウス・フィンランディクス(Euseius finlandicus)、ユーセイウス・ヒビスキ(Euseius hibisci)、ユーセイウス・オバリス(Euseius ovalis)、ユーセイウス・ビクトリエンシス(Euseius victoriensis)、ユーセイウス・スティピュラツス(Euseius stipulatus)、ユーセイウス・スクタリス(Euseius scutalis)、ユーセイウス・ツラレンシス(Euseius tularensis)、ユーセイウス・アドエンシス(Euseius addoensis)、ユーセイウス・コンコルディス(Euseius concordis)、ユーセイウス・ホー(Euseius ho)、ユーセイウス・ガリクス(Euseius gallicus)、ユーセイウス・シトリフォリウス(Euseius citrifolius)またはユーセイウス・シトリ(Euseius citri)、イフィセイオデス属(Iphiseiodes)、例えばイフィセイオデス・ズルアギ(Iphiseiodes zuluagi)、イフィセイウス属(Iphiseius)、例えばイフィセイウス・デゲネランス(Iphiseius degenerans)、ネオセイウルス属(Neoseiulus)、例えばネオセイウルス・バーケリ(Neoseiulus barkeri)、ネオセイウルス・カリフォルニクス(Neoseiulus californicus)、ネオセイウルス・ククメリス(Neoseiulus cucumeris)、ネオセイウルス・ロンギスピノサス(Neoseiulus longispinosus)、ネオセイウルス・ウォメルスレイイ(Neoseiulus womersleyi)、ネオセイウルス・イダエウス(Neoseiulus idaeus)、ネオセイウルス・アノニムス(Neoseiulus anonymus)、ネオセイウルス・パスパリボルス(Neoseiulus paspalivorus)、ネオセイウルス・レドゥクツス(Neoseiulus reductus)またはネオセイウルス・ファラシス(Neoseiulus fallacis)、ネオセイウルス・バラキ(Neoseiulus baraki)、アムブリドロマルス属(Amblydromalus)、例えばアムブリドロマルス・リモニカス(Amblydromalus limonicus)、チフロドロマルス属(Typhlodromalus)、例えばチフロドロマルス・アリポ(Typhlodromalus aripo)、チフロドロマルス・ライラエ(Typhlodromalus lailae)またはチフロドロマルス・ペレグリヌス(Typhlodromalus peregrinus)、トランセイウス属(Transeius)(あるいはチフロドロミプス(Typhlodromips)ともいわれる)、例えばトランセイウス・モントドレンシス(Transeius montdorensis)(あるいはチフロドロミプス・モントドレンシス(Typhlodromips montdorensis)ともいわれる)、フィトセイウルス属(Phytoseiulus)、例えばチリカブリダニ(Phytoseiulus persimilis)、フィトセイウルス・マクロピリス(Phytoseiulus macropilis)、フィトセイウルス・ロンギペス(Phytoseiulus longipes)、フィトセイウルス・フラガリアエ(Phytoseiulus fragariae);
カタカブリダニ亜科(Typhlodrominae)、例えば、ガレンドロムス属(Galendromus)、例えばガレンドロムス・オクシデンタリス(Galendromus occidentalis)、メタセイウルス属(Metaseiulus)、例えばメタセイウルス・フルメニス(Metaseiulus flumenis)、ギナエセイウ属(Gynaeseiu)、例えばギナエセイウス・リツリボルス(Gynaeseius liturivorus)、チフロドロムス属(Typhlodromus)、例えばチフロドロムス・エクスヒララテス(Typhlodromus exhilarates)、チフロドロムス・フイアラツス(Typhlodromus phialatus)、チフロドロムス・レッキ(Typhlodromus recki)、チフロドロムス・トランスバーレンシス(Typhlodromus transvaalensis)、チフロドロムス・ピリ(Typhlodromus pyri)、チフロドロムス・ドレーナエ(Typhlodromus doreenae)またはチフロドロムス・アチアサエ(Typhlodromus athiasae);
ii)マヨイダニ科(Ascidae)、例えば、プロクトラエラプス属(Proctolaelaps)、例えばプロクトラエラプス・ピグマエウス(ミュラー)(Proctolaelaps pygmaeus (Muller));ブラッチソシウス属(Blattisocius)、例えばブラッチソシウス・タルサリス(ベルレース)(Blattisocius tarsalis (Berlese))、タンカンマヨイダニ(Blattisocius keegani (Fox));ラシオセイウス属(Lasioseius)、例えばラシオセイウス・フィメトルム・カーグ(Lasioseius fimetorum Karg)、ラシオセイウス・フロリデンシス・ベルレース(Lasioseius floridensis Berlese)、ラシオセイウス・ベスピノサス・エバンス(Lasioseius bispinosus Evans)、ラシオセイウス・デンタツス・フォックス(Lasioseius dentatus Fox)、ラシオセイウス・スカプラツス(ケネット)(Lasioseius scapulatus (Kenett))、ラシオセイウス・アチアサエ・ナワー&ナスル(Lasioseius athiasae Nawar & Nasr);アークトセイウス属(Arctoseius)、例えばアークトセイウス・セミシッサス(ベルレース)(Arctoseius semiscissus (Berlese));プロトガマセルス属(Protogamasellus)、例えばプロトガマセルス・ディオコルス・マンソン(Protogamasellus dioscorus Manson);
iii)トゲダニ科(Laelapidae)、例えば、ストラチオラエラプス属(Stratiolaelaps)、例えばストラチオラエラプス・シミツス(ウォマースレイ)(Stratiolaelaps scimitus (Womersley));ガエオラエラプス属(Gaeolaelaps)、例えばガエオラエラプス・アキュレイファー(カネストリニ)(Gaeolaelaps aculeifer (Canestrini));アンドロラエラプス属(Androlaelaps)、例えばアンドロラエラプス・カザリス(ベルレース)(Androlaelaps casalis (Berlese))、コスモラエラプス属(Cosmolaelaps)、例えばコスモラエラプス・クラビガー(Cosmolaelaps claviger)、コスモラエラプス・ジャボチカバレンシス(Cosmolaelaps jaboticabalensis);
iv)ハエダニ科(Macrochelidae)、例えば、マクロケレス属(Macrocheles)、例えばマクロケレス・ロブスツルス(ベルレース)(Macrocheles robustulus (Berlese))、マクロケレス・ムスカエドメスティカエ(スコポリ)(Macrocheles muscaedomesticae (Scopoli))、マクロケレス・マトリウス(フル)(Macrocheles matrius (Hull));
v)ヤドリダニ科(Parasitidae)、例えば、ペルガマサス属(Pergamasus)、例えばペルガマサス・キスキリアルム・カネストリニ(Pergamasus quisquiliarum Canestrini);パラシツス属(Parasitus)、例えばパラシツス・フィメトルム(ベルレース)(Parasitus fimetorum (Berlese))、パラシツス・ビツベロサス(Parasitus bituberosus)、パラシツス・ミコフィルス(Parasitus mycophilus)、パラシツス・マンミラツス(Parasitus mammilatus);
以下のようなプロスティグマチド(Prostigmatid)ダニ種:
vi)コハリダニ科(Tydeidae)、例えば、ホメオプロネマツス属(Homeopronematus)、例えばトマトツメナシコハリダニ(Homeopronematus anconai (Baker));ティデウス属(Tydeus)、例えばティデウス・ランビ(ベーカー)(Tydeus lambi (Baker))、ティデウス・カウダツス(ジュゲス)(Tydeus caudatus (Duges));プロネマツス属(Pronematus)、例えばプロネマツス・ユビキタス(マックグレゴー)(Pronematus ubiquitous (McGregor));
vii)ツメダニ類(Cheyletidae)、例えば、ケイレツス属(Cheyletus)、例えばホソツメダニ(Cheyletus eruditus (Schrank))、クワガタツメダニ(Cheyletus malaccensis Oudemans);
viii)オソイダニ科(Cunaxidae)、例えば、コレオシルス属(Coleoscirus)、例えばコレオシルス・シンプレクス(ユーイング)(Coleoscirus simplex (Ewing))、クナクサ属(Cunaxa)、例えばクナクサ・セチロストリス(ヘルマン)(Cunaxa setirostris (Hermann));
ix)タカラダニ科(Erythraeidae)、例えば、バラウスチウム属(Balaustium)、例えばバラウスチウム・プトマニ・スミレイ(Balaustium putmani Smiley)、バラウスチウム・メジカゴエンセ・マイヤー&ライク(Balaustium medicagoense Meyer &Ryke)、カベアナタカラダニ(Balaustium murorum (Hermann))、バラウスチウム・ヘルナンデジ(Balaustium hernandezi)、バラウスチウム・リーンデリ(Balaustium leanderi);
x)ナガヒシダニ科(Stigmaeidae)、例えば、アギステムス属(Agistemus)、例えばアギステムス・エクセルツス・ゴンザレズ(Agistemus exsertus Gonzalez);例えば、ゼッツェリア属(Zetzellia)、例えばゼッツェリア・マリ(ユーイング)(Zetzellia mali (Ewing));
xi)ハモリダニ科(Anystidae)、例えば、アニスティス属(Anystis)、例えばハモリダニ(Anystis baccarum)。
【0017】
重要な害虫に対する捕食性挙動を考慮して、捕食性ダニは、好ましくは、カブリダニ科、特にアムブリセイウス属、例えばスワルスキーカブリダニ、ラーゴカブリダニおよびアンダソニガブリダニ、ネオセイウルス属、例えばネオセイウルス・カリフォルニクス、ネオセイウルス・ククメリス、ネオセイウルス・バーケリ、ネオセイウルス・バラキおよびネオセイウルス・ロンギスピノサスおよびネオセイウルス・ファラシス、特にユーセイウス属、例えばユーセイウス・ガリクス、イフィセイウス属、例えばイフィセイウス・デゲネランス、トランセイウス属、例えばトランセイウス・モントドレンシス、アムブリドロマルス属、例えばアムブリドロマルス・リモニカス(あるいはチフロドロマルス・リモニカス(Typhlodromalus limonicus)ともいわれる)、ガレンドロムス属、例えばガレンドロムス・オクシデンタリス、フィトセイウルス属、例えばチリカブリダニ、フィトセイウルス・マクロピリスおよびフィトセイウルス・ロンギペス、ツメダニ科、特にケイレツス属、例えばホソツメダニ(Cheyletus eruditus)、トゲダニ科、特にアンドロラエラプス属、例えばアンドロラエラプス・カザリス(Androlaelaps casalis)、ストラチオラエラプス属、例えばストラチオラエラプス・シミツス(Stratiolaelaps scimitus)(あるいはヒポアスピス・ミルス(Hypoaspis miles)ともいわれる)、ガエオラエラプス属、例えばガエオラエラプス・アキュレイファー(Gaeolaelaps aculeifer)(あるいはヒポアスピス・アキュレイファー(Hypoaspis aculeifer)ともいわれる)、またはハエダニ科、特にマクロケレス属、例えばマクロケレス・ロブスツルス(Macrocheles robustulus)から選択される。捕食性ダニのこれらの好ましい選択の中から、捕食性ダニは最も好ましくはカブリダニ科から選択される。
【0018】
カブリダニ科の名称については、Chant D.A., McMurtry, J.A. (2007) Illustrated keys and diagnoses for the genera and subgenera of the Phytoseiidae of the world (Acari: Mesostigmata)、Indira Publishing House, West Bloomfied, MI, USAを参照されたい。マヨイダニ科、トゲダニ科、ハエダニ科、ヤドリダニ科、コハリダニ科、ツメダニ類、オソイダニ科、タカラダニ科およびナガヒシダニ科の名称については、Carrillo, D., de Moraes, G.J., Pena, J.E. (ed.) (2015) Prospects for Biological Control of Plant Feeding Mites and Other Harmful Organisms. Springer, Cham, Heidelberg, New York, Dordrecht, Londonを参照されたい。パラシツス・ミコフィルスについては、Baker A.S.,Ostoja-Starzewski J.C (2002) New distributional records of the mite Parasitus mycophilus (Acari: Mesostigmata), with a redescription of the male and first description of the deutonymph. Systematic & Applied Acarology 7, 113-122が参照できる。パラシツス・マンミラツスについては、Karg, W. (1993) Die Tierwelt Deutschlands, 59.Teil. Acari (Acarina), Milben Parasitiformes (Anactinochaeta) Cohors Gamasina Leach. Gustav Fischer, Jenaが参照できる。ハモリダニ科については、Cuthbertson A.G.S., Qiu B.-L., Murchie A.K. (2014) Anystis baccarum: An Important Generalist Predatory Mite to be Considered in Apple Orchard Pest Management Strategies. Insects 5, 615-628; doi:10.3390/insects5030615が参照できる。
【0019】
当業者は選択された捕食性ダニ種にとっての潜在的な宿主範囲を知っている。捕食性ダニにより有効に防除し得る害虫は、例えば、コナジラミ類、例えばオンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)およびタバココナジラミ(Bemisia tabaci);アザミウマ類、例えばネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)およびフランクリニエラ属の種(Frankliniella spp.)、例えばミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、フランクリニエラ・シュルツァイ(Frankliniella schultzei)ハダニ、例えばナミハダニ(Tetranychus urticae)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、他の植物性のダニ、例えばチャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)、または他の害虫、例えば、エリオフィズ(Eriophyids)、テヌイパルピズ(Tenuipalpids)、キジラミ(Psyllids)、ヨコバイ、アブラムシ、ハエ目である。加えて、鳥類に寄生するダニ、例えば、ワクモ(Dermanyssus gallinae)、および爬虫類に寄生するダニ、例えば、オオサシダニ科(Macronyssidae)、例えば、オフィオニサス属(Ophionyssus)、例えばヘビオオサシダニ(Ophionyssus natricis)も、捕食性ダニ、特にヒポアスピス属(Hypoaspis)、例えばヒポアスピス・アンギュスタ(Hypoaspis angusta)、ケイレツス属、例えばケイレツス・エルディティス(Cheyletus eruditis)、アンドロラエラプス属、例えばアンドロラエラプス・カザリス、トゲダニ科、例えば、ストラチオラエラプス属、例えばストラチオラエラプス・シミツス(ウォマースレイ);ガエオラエラプス属、例えばガエオラエラプス・アキュレイファー(カネストリニ);アンドロラエラプス、例えばアンドロラエラプス・カザリス(ベルレース)、またはマクロケレス属、例えばマクロケレス・ロブスツルスから選択される捕食性ダニの餌になり得る。
【0020】
本発明のある種の実施形態によれば、捕食性ダニまたはその他の捕食性節足動物の食料源として役立ち得る有益なダニは、アスティグマチド(Astigmatid)ダニ種、特に以下から選択されるアスティグマチドダニ種から選択され得る。
i)サトウダニ科(Carpoglyphidae)、例えば、サトウダニ属(Carpoglyphus)、例えばサトウダニ(Carpoglyphus lactis);
ii)チリダニ科(Pyroglyphidae)、例えば、ヒョウヒダニ属(Dermatophagoides)、例えばヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronysinus)、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae);ユーログリファス属(Euroglyphus)、例えばユーログリファス・ロンギアー(Euroglyphus longior)、シワダニ(Euroglyphus maynei);ピログリファス属(Pyroglyphus)、例えばピログリファス・アフリカヌス(Pyroglyphus africanus);
iii)ニクダニ科(Glycyphagidae)、例えば、ステノグリフィナエ亜科(Ctenoglyphinae)、例えば、ディアメゾグリファス属(Diamesoglyphus)、例えばディアメゾグリファス・インテルメディユーサー(Diamesoglyphus intermediusor)、ステノグリファス属(Ctenoglyphus)、例えばステノグリファス・プルミガー(Ctenoglyphus plumiger)、ステノグリファス・カネストリニイ(Ctenoglyphus canestrinii)、ステノグリファス・パルミファー(Ctenoglyphus palmifer);グリシファギナエ亜科(Glycyphaginae)、例えば、ブロミア属(Blomia)、例えばブロミア・フリーマニ(Blomia freemani)、またはグリシファガス属(Glycyphagus)、例えばグリシファガス・オーナツス(Glycyphagus ornatus)、グリシファガス・ビカウダツス(Glycyphagus bicaudatus)、チリニクダニ(Glycyphagus privatus)、イエニクダニ(Glycyphagus domesticus)、またはレピドグリファス属(Lepidoglyphus)、例えばレピドグリファス・ミカエリ(Lepidoglyphus michaeli)、レピドグリファス・フスティファー(Lepidoglyphus fustifer)、サヤアシニクダニ(Lepidoglyphus destructor)、またはオーストログリシファガス属(Austroglycyphagus)、例えばオーストログリシファガス・ゲニクラタス(Austroglycyphagus geniculatus);アエログリフィナエ亜科(Aeroglyphinae)、例えば、アエログリファス属(Aeroglyphus)、例えばアエログリファス・ロブスツス(Aeroglyphus robustus);ラビドフォリナエ亜科(Labidophorinae)、例えば、ゴヒエリア属(Gohieria)、例えばゴヒエリア・フスカ(Gohieria fusca);またはニクテリグリフィナエ亜科(Nycteriglyphinae)、例えば、コプログリファス属(Coproglyphus)、例えばコプログリファス・スタンメリ(Coproglyphus stammeri)、またはコルトグリフィダエ亜科(Chortoglyphidae)、例えば、コルトグリファス属(Chortoglyphus)、例えばコルトグリファス・アルクアツス(Chortoglyphus arcuatus)、より好ましくはグリシファギナエ亜科から選択され、より好ましくはグリシファガス属またはレピドグリファス属から選択され、最も好ましくはイエニクダニまたはサヤアシニクダニから選択される;
iv)コナダニ科(Acaridae)、例えば、チロファガス属(Tyrophagus)、例えばケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)、チロファガス・トロピクス(Tyrophagus tropicus)、アカルス属(Acarus)、例えばアシブトコナダニ(Acarus siro)、アカルス・ファリス(Acarus farris)、アカルス・グラシリス(Acarus gracilis);ラルドグリファス属(Lardoglyphus)、例えばコウノホシカダニ(Lardoglyphus konoi)、サイレオファガス属(Thyreophagus)、例えばムシクイコナダニ(Thyreophagus entomophagus);アレウログリファス属(Aleuroglyphus)、例えばムギコナダニ(Aleuroglyphus ovatus);
v)チビコナダニ科(Suidasiidae)、例えば、スイダシア属(Suidasia)、例えばスイダシア・ネスビチ(Suidasia nesbiti)、スイダシア・ポンチフィカ(Suidasia pontifica)またはネッタイチビコナダニ(Suidasia medanensis)。
【0021】
好ましいアスティグマチドダニは、サヤアシニクダニ、サトウダニ科、例えば、サトウダニ属、例えばサトウダニ、サイレオファガス属、例えばムシクイコナダニ、コナダニ科、例えば、スイダシア・ポンチフィカまたはネッタイチビコナダニから選択され得る。
【0022】
アスティグマチドダニは、Hughes(Hughes, A.M., 1977, The mites of stored food and houses. Ministry of Agriculture、Fisheries and Food, Technical Bulletin No. 9: 400 pp)により記載されているようにその天然の生息地から分離することができ、Parkinson (Parkinson, C.L., 1992, ”Culturing free living astigmatid mites.” Arachnida: Proceedings of a one day symposium on spiders and their allies held on Saturday 21st November 1987 at the Zoological Society of London)、およびSolomon & Cunnington (Solomon, M.E. and Cunnington, A.M., 1963, Rearing acaroidmites、Agricultural Research Council, Pest Infestation Laboratory, Slough, England, pp 399 403)に記載されているように維持し培養することができる。
【0023】
用語「放出」は、有益なダニがシステムから外に出てこられることを意味するものと理解されたい。したがって、本発明のダニ放出システムは、有益なダニを放出、散布または供給するのに適している。当業者には理解されるように、有益なダニの放出はそれらがその有用な機能を使用し得る標的領域にそれらを導入するものである。
【0024】
本発明のシステムは、有益なダニの集団を保持する区画である、ダニ区画を含んでいる。区画の機能は、有益なダニ集団の個体および前記有益なダニ個体に関連するあらゆる追加の材料を保持することである。かかる追加の材料は、当業者に公知の担体材料および/または食料源から選択され得る。
【0025】
区画の大きさおよび形状(または形態)は、選択される有益なダニに応じて変化し得る。適切な大きさの範囲および形状(または形態)の選択は当業者の常識の範囲内である。例えば、適切な形状および大きさを有するダニまたは昆虫のためのシステムを開示するGB2393890およびGB2509224を参照できる。当業者には理解されるように、本発明によるシステムはまた、GB2393890およびGB2509224に開示されているダニ放出システムに従っても設計し得る。したがって、本発明のダニ放出システムは、少なくとも1つの本発明の他のシステムと連結することによって本発明の少なくとも1つの他のシステムと連合し、その結果、複数の本発明のシステムの連合体を形成してもよい。本発明の複数のシステムの連合体は、細長い物体が形成されるのが好ましい。この細長い物体は、好ましくは、個々のシステムよりも長い長さ、かつ、単一のシステムと本質的に同じ広さの幅を有する。ある種の好ましい実施形態によると、システムの連合体は、逆向きのVまたはU字状に折り畳み可能な本発明のシステムを2つ含み、折り畳まれた構造の内側に連絡部(ダニ区画の内部を外部空間と連絡する開口)が位置する。他の好ましい実施形態によると、システムの連合体は少なくとも10~180メートルの長さ、例えば80~160メートルの細長い物体を有する。
【0026】
区画内に収容される有益なダニの集団は、好ましくは繁殖集団である。本明細書で用語「繁殖(breeding)」とは、生殖による増殖および集団の増殖を包含して意味するものと理解される。当業者は承知し理解するように、多くのダニ種は有性生殖によって生殖するが、いくつかの種は無性生殖によって生殖する。当業者はどのダニ種が有性生殖し、どのダニ種が無性生殖するか特定することができる。本質的に、繁殖集団は生殖によってその個体の数を増大することができる。したがって、当業者には理解されるように、繁殖集団は、生殖することができる、すなわち子孫を産むことができるメスのダニ個体、または子孫を産むことができる生活段階へと成熟することができるメスのダニ個体を含む。さらに、当業者には理解されるように、有性生殖するダニ種の場合、繁殖集団は性的に成熟したオスの個体または性的に成熟したオスの個体に成熟し得るオスの個体を含む。あるいは、有性生殖するダニ種の場合、繁殖集団は1匹以上の受精したメスを含んでいてもよい。
【0027】
ダニの集団は、好ましくは担体と共にある。有益なダニを含む製品中における担体の使用は、当技術分野で一般的な慣行であり、個体に担体表面を提供するのに適した原則的にあらゆる固体材料を使用し得ることが知られている。したがって、一般に、担体粒子は有益なダニの個体の大きさより大きいサイズを有する。好ましくは、担体は、ダニ集団により生成された代謝ガスおよび熱の交換を可能にする多孔性の媒体を与える。当業者は、特定の担体の適性が、選択される有益なダニの種に依存することを知っており、適切な担体を選択することができる。例えば、適切な担体は、(小麦)ふすま、おがくず、とうもろこし穂軸グリットなどの植物材料から選択し得る。国際公開第2013/103295号はさらにダニ集団用担体材料としてのもみ殻の適性を開示している。担体がダニ区画内に存在する場合、担体材料は好ましくはダニ区画を完全に満たすことはないが、幾分かのヘッドスペースがダニ区画内に残される。ヘッドスペースは、ダニ区画の容積xの60~95%、好ましくは70~90%、より好ましくは75~85%の担体容積を使用することによって作られ得る。ヘッドスペースは連絡部を介するガス交換に寄与し得る。これを考慮して、担体を使用し、ダニ区画内にヘッドスペースがある場合、連絡部は好ましくは(ヘッドスペースが位置している)ダニ区画の上方部分に設けられる。
【0028】
区画はさらに、有益なダニのための食料源を含んでいる。当業者には理解されるように、食料源の適性は、選択される有益なダニの種に依存し得る。捕食性の種の場合、生餌が好ましい可能性がある。例えば、アスティグマチドダニは、捕食性ダニの適切な餌になり得る。捕食性ダニ種の食料源として選択し得るアスティグマチドダニ種は既に上記した。したがって、本発明のある種の好ましい実施形態によると、ダニ区画は捕食性ダニ種を有益なダニとして含み、かつその捕食性ダニの食料源としてアスティグマチドダニ種を含む。本発明のさらなる実施形態によると、捕食性ダニの食料源として提示されるアスティグマチドダニ種の集団は、国際公開第2013/103294号に開示されているように、少なくとも部分的に不動化されてもよい。加えて、鱗翅目のガイマイツヅリガ(Corcyra cephalonica)またはスジコナマダラメイガ(Ephestia kuehniella)の卵はカブリダニ捕食性ダニなどの多くのメソスティグマチドまたはプロスティグマチド捕食性ダニのための食料源として適切となり得る。当業者には分かるように、鱗翅目の卵は、捕食性ダニに対する食料源として供えられるとき、通常不活化されている。当業者には知られるように、捕食性ダニのさらなる食料源は、アルテミア(Artemia)またはガマ属の種(Typha spp.)の花粉などの花粉から選択され得る。
【0029】
本発明のシステムのダニ区画は低いガス交換速度、および特に≦5、例えば≦4、≦3、≦2.5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有するガスバリヤー性材料を含む封入材によって囲まれる。かかる低い水蒸気透過率をもつ材料はまた、ダニ(および同様にダニ培養物中に存在する微生物)により産生されるO2および/またはCO2などの代謝ガスに対する低い透過率も有する。既に上に示したように、本発明の発明者は最近、驚くべきことに、有益なダニを放出する(供給する)ためのシステムにはガス透過性材料を使用しなければならないという一般的な信念に反して、低いガス透過率を有する材料により囲まれた区画内に有益なダニの種の集団を有効に維持することが可能であるということを見出した。示された水蒸気透過率を有するいかなる材料も本発明内で適切に使用することができる。技術的に実行可能である限り、水蒸気透過率に特定の下限はない。当業者には知られるように、無限に小さい水蒸気透過率を有する水蒸気バリヤー材料が入手可能である。したがって、選択されたガスバリヤー性材料の水蒸気透過率は5.0g/m2*24時間~0.00g/m2*24時間の理論値であり得る。したがって、好ましい実施形態によると、適切なガスバリヤー性材料は5.0~0.01g/m2*24時間、例えば3.5~0.01g/m2*24時間、3.5~0.5g/m2*24時間、2.5~0.01g/m2*24時間、2.5~0.5g/m2*24時間、または2.0~0.5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有し得る。3.5~0.01g/m2*24時間の値が最も好ましい。
【0030】
当業者には理解されるように、ダニ区画を作るのに必要とされるガスバリヤー性材料の異なる部分間に作製されるシールなどの接触部および連絡部もガスバリヤー性材料と同一の範囲で水蒸気透過に対して抵抗性でなければならない。当業者は、水蒸気透過に対して抵抗性の連絡部をいかに作製するか知識があるだろう。適切なガスバリヤー性材料は、好ましくはさらに水蒸気透過に対して抵抗性のシールの創成を可能にする。
【0031】
本記載の範囲内で用語「区画」は、仕切られる部分または空間を意味する。本発明のシステムにおいて、ダニ区画の空間は、封入材により囲まれることによって仕切られる。封入材により「囲まれた」ダニ区画への言及は、したがって、その区画空間が封入材により取り囲まれている(またはその中に包み込まれている)ことを意味する。使用される封入材は、好ましくはシート形態であり、より好ましくは柔軟なシートである。ダニ区画は封入材のいくつかの面により囲まれる。ダニ区画を囲む、取り囲む、包み込むために、「いくつかの」封入材が使用される。好ましくは単一の種類の封入材がダニ区画を囲む封入材の全ての面に使用され、したがって封入材の「数」は1つの封入材を指し、すなわち単数形である。しかし、ある種の代わりの実施形態においては、異なる種類の封入材が、ダニ区画を囲む全ての面のうち異なる面に使用され得る。例えば、小袋の場合、(連絡する開口が位置する)前面は第1の封入材製で、背面は第2の種類の封入材製であってもよい。かかる場合封入材の数は複数の封入材を意味する。
【0032】
用語「面」とは、あらゆる可能な形状または構造をもつ表面を意味する。好ましくはダニ区画を囲むいくつかの面は少なくとも本質的に平坦である。あるいは面は曲面であってもよい。ある種の実施形態によると、面は少なくとも本質的に平坦な領域と曲面の領域とを含む混合形態であってもよい。少なくとも本質的に平坦とは、平坦および完全に平坦を含む。
【0033】
「いくつかの」とは、本発明の本記載の範囲内で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上などの1以上を意味する。ある種の実施形態においていくつかのは2、4、5、6、8または10などの複数である。ダニ区画を囲む封入材のいくつかの面は、単一の面でよい。当業者は知っており理解しているように、単一の面は、面が曲げられ、3次元の囲い構造に固定されれば、ある一定の容積を有する区画を囲む3次元の囲いを形成することができる。例えば、シュガースティックまたはコーヒークリーマースティックと類似の形状の閉じた区画は、円筒形の形状に曲げた長方形の柔軟なシートから、円筒マントルで出会う辺を固定して閉じたマントルを形成し、その後円筒の2つの対向する開放端(「頂部」および「底部」端)を固定して開放端を閉じることで形成し得る。かかる物体内の区画は封入材の単一の面によって囲まれている。
【0034】
当業者は、水蒸気とは何か、具体的には、それが水の気体状態であることを認識している。本発明の範囲内で使用するのに適切な低いガス交換速度を有する材料である、ガスバリヤー性材料は、≦5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有する。ある種の好ましい実施形態によると、水蒸気透過率の試験条件は、38℃、90%RHである。水蒸気透過率は、ASTM E96、ASTM E398、またはASTM F1249標準法の手順に従って決定することができる。ある種の好ましい実施形態によると、ASTM E96の手順が水蒸気透過率を決定するのに使用される。本発明で選択される水蒸気透過の低い値を有する材料は、代謝ガスの透過レベルも低い。例えば、BUI43ホイル(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlandsから得ることができる)は、供給業者によると約5cc/m2*24時間(ASTM F 1927に従って23℃、50%RHで測定)の酸素透過率を有する。同様に、NativiaTM NZSSフィルム(Taghleef Industries)は、製造業者によると約12cc/m2*24時間(ASTM D 3985に従って23℃、50%RHで測定)の酸素透過率を有し、EcoMetフィルム(Ultimet Films)は、製造業者によると約3.0cc/m2*24時間(ASTM D 3985に従って23℃、50%RHで測定)の酸素透過率を有する。また、Ceramis(登録商標)バリヤー性フィルム(Amcor, Kreuzlingen, Swirserlandから得ることができる)などのSiOxでコートされたバリヤー性フィルムも適切に選択することができる。
【0035】
ガスバリヤー性材料は、示された水蒸気移動速度を有する任意の材料から選択することができ、当業者は、示された範囲内の水蒸気移動速度を有する材料を選択することができる。多層の積層体が好ましい。定義により積層体は少なくとも2つの層を有するはずであるので、多層積層体は、少なくとも3つの層を有する積層体であると理解されたい。多層積層体は、特に追加の機能を有すると共に良好なガスバリヤー特性を有するように製造することができる。ある種の好ましい実施形態によると、選択されたガスバリヤー性材料は、ポリマー-金属積層体、好ましくは金属化したポリマーフィルムを含む積層フィルムなどのポリマー-金属積層フィルムであってよい。ポリマー-金属積層体は、特に多層化されている場合に、特に良好なガスバリヤー特性を有する。柔軟なフィルムは、より容易に所望の形状に形成することができるので、特に好ましい。ガスバリヤー性材料は、例えば、供給業者によると<5g/m2*24時間(ASTM E96に従って38℃、90%RHで決定)の水蒸気透過率を有するNatureFlexTM N932(InnoviaTM Films)フィルムから選択し得る。しかし、本発明者による観察では、この材料が供給業者により示されているより低い水蒸気透過率を有し得ることが示された。代わりに、BUI43ホイル(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlandsから得ることができる)を使用し得る。このBUI43ホイルは、供給業者によると<1.5g/m2*24時間(ASTM E96に従って38℃、90%RHで決定)の水蒸気透過率を有する。他の代わりのガスバリヤー性材料は、供給業者によると約2.3g/m2*24時間(ASTM F1249に従って38℃、90%RHで決定)の水蒸気透過率を有するNativiaTM NZSSフィルム(Taghleef Industries)、および供給業者によると約1.0g/m2*24時間(ASTM F1249に従って38℃、90%RHで決定)の水蒸気透過率を有するEcoMetフィルム(Ultimet Films)から選択され得る。これらの材料の使用は特に好ましいが、本発明の本記載の内容から当業者には明らかなように、金属化されたポリマーフィルムを含む積層フィルムなど、ポリマー-金属積層フィルムなどのポリマー-金属積層体以外の材料をガスバリヤー性材料として選択してもよい。ある種の金属表面は水膜を維持することができ、したがってその金属の層は水膜維持材料として機能し得るという事実を考慮して金属化されたポリマーフィルムも好ましい。
【0036】
ダニ区画を囲む封入材のいくつかの面は、mm2で表すことができる、ある一定の表面積zを有する。言及される表面積は、ダニ区画を画定する(またはその境界を形成する)表面積であるバリヤー材料の有効表面積である。これは、ダニ区画の内部空間と接触する封入材の表面積である。ダニ分配システムの特定用途に応じて、封入材の表面積の値zは、0.5*103~30*103mm2、好ましくは2.5*103~15*103mm2、より好ましくは3.0*103~7.0*103mm2から選択される値を有し得る。
【0037】
ダニ区画はmm3で表すことができる、ある一定の容積xを有する。ダニ区画の容積は、封入材の平面により囲まれる空間の容積である。容積の値xは、3*103から600*103mm3、好ましくは6*103から300*103mm3、より好ましくは8*103から100*103mm3、最も好ましくは9*103から35*103mm3の範囲内で選択し得る。
【0038】
システムはさらに、ダニ区画の内部空間をダニ区画の外部の空間と連絡するいくつかの連絡部を含む。連絡部は主として、ガス交換を可能にし、有益なダニ集団の(動ける)個体がダニ区画から出て行くことを可能にする機能を有する。いくつかの、とは、上で定義されたように、1以上と理解するべきである。封入材における開口は、連絡部として供されるのに適している。開口は、当業者に公知の任意の適切な手段により、例えばパンチまたは針穿刺などの機械的穿刺、または、封入材が多くの金属化されたポリマーフィルムである場合などの比較的低い融解温度(150℃未満)を有するとき加熱穿刺または焼成により設けることができる。開口を作り出すための他の代わりの手段はレーザー穿刺を含み得る。好ましくは、封入材の除去により開口を作る方法が選択される。
【0039】
いくつかの連絡部は、各々mm2で表すことができるある一定の表面積yを有する。連絡部の面積yは、連絡部を介したガス交換に利用可能な面積である。Σyは、システム内の個々の連絡部の面積の総和である。例えば、本発明のシステムが2つの連絡部を含み、第1のものが1.0mm2の面積y1を有し、第2のものが2.0の面積y2を有する場合、Σy=y1+y2=1.0+2.0=3.0mm2である。個々の連絡部の表面積yは、0.10~4.0mm2、好ましくは0.15~2.0mm2、より好ましくは0.20~1.5mm2、最も好ましくは0.20~0.50mm2から選択される値を有し得る。示された大きさの範囲内で、使用される連絡部の形状は、ダニ区画内に存在する動けるダニ個体の通過が、与えられたいくつかの連絡部の少なくとも1つを通して可能となるような形状である。与えられたより広い範囲内では、当業者は、選択された有益なダニに適したより狭い範囲を選択することができるであろう。示された大きさの円形の連絡部は、一般に大部分の有益なダニに適している。いろいろな非円形の形状の連絡部も適切となり得る。好ましくは、非円形の連絡部は、yの値として示した範囲内の表面積を有する円を囲むことができる形状および大きさを有する。
【0040】
本発明のある種の実施形態によると、複数の連絡部の使用が好ましい。複数の連絡部を使用する場合、連絡部の数は、ダニ区画の容積分率当たり1つでよい。例えば、3*103mm3当たり1つ、または、あるいはダニ区画の容積の5*103、10*103、15*103、20*103、25*103、30*103、35*103、40*103もしくは50*103mm3当たり1つである。例えば、200*103mm3の容積xを有するダニ区画の場合、20*103mm3当たり1つの連絡部が与えられるように複数の連絡部を備え得る。この場合、200/20=10の連絡部が与えられる。あるいは、70*103mm3の容積xを有するダニ区画の場合、25*103mm3当たり1つの連絡部が与えられるように複数の連絡部を備え得る。この場合、70/25=2.8であり、与えられ得る連絡部の総数が2であることを考慮して、2つの連絡部が与えられる。一般に、20*103mm3を超える容積xを有するダニ区画を使用する場合、複数の連絡部の使用が好ましい。
【0041】
ある種の実施形態によると、連絡部は、好ましくは、システムの上方部分である端部に設けられる。上方部分とする基準は、本発明のシステムの使用の状況を指す。本発明のシステムが、それを吊り下げるための手段を備えている場合、上方部分はその吊り下げ手段の端部である。
【0042】
本発明のシステムにおいて、ダニ区画の容積の値xおよび連絡部の面積の値yは、5*103mm≦x/Σy≦70*103mm、好ましくは6*103mm≦x/Σy≦60*103mm、より好ましくは7*103mm≦x/Σy≦50*103mmとなるように選択され、ここで、Σyは連絡部の面積yの総和である。これにより、開口が区画の大きさと比較して比較的小さいことが確実になり、したがってダニ区画からの水蒸気の漏れが制限される。低い酸素透過を有する材料により囲まれ、かかる比較的小さい大きさの連絡部のみで外部と連絡している閉じた区画内にダニの集団を効果的に維持することができるということは驚くべきことである。
【0043】
本発明によるシステムにおいて、(i)ダニ区画を囲む材料の水蒸気透過率(WVTR)、ダニ区画の容積x、連絡部の面積y、および分率x/Σy(ここで、Σyは連絡部の合計面積(個々の連絡部の面積yの総和)である)はある所定の範囲内でなければならない。示された範囲内の選択は、WVTR、x、yおよびx/Σyに対する基準が全て規定の範囲内になるようにしなければならない。下記表Iに、本発明の範囲内で考えられるWVTR、x、yおよびx/Σyの組合せを示す。WVTRに対するいろいろな値に関する様々な欄に、x、yおよびx/Σyのいろいろな組合せが示されている。WVTR、x、yおよびx/Σyの各々の組合せはその組合せに対する特定の参照番号I1-I338を有する。特に好ましい1つの実施形態は次の組合せを有する。WVTR=2.0~1.0g/m2*24時間、x=9*103~35*103mm3、y=0.20~0.50mm2、x/Σy=7*103~50*103mm。特に好ましいさらなる実施形態は次の組合せを有する。WVTR=3.5~0.5g/m2*24時間、x=9*103~35*103mm3、y=0.20~0.50mm2、x/Σy=7*103~50*103mm。
【0044】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
【0045】
当業者には理解されるように、物体の容積は、力が加わると変化し得る。これは特に、柔軟なフィルムなどの柔軟な材料で作製された物体の場合である。柔軟な材料を使用する場合、ダニ区画の容積は、ダニ区画内に存在する材料(例えば、ダニ集団の個体および多くの場合担体を含むダニ組成物)の容積と、ダニ区画を囲む材料、すなわちガスバリヤー性材料が、その寸法および/または幾何学的な制限に基づいて与え得る最大の容積との間で変化し得る。したがって柔軟なガスバリヤー性材料を使用するダニ放出システムの場合、値xは固定され得ず、変化し得る。かかるシステムの場合、x/Σy比を決定するのに考慮するべきダニ区画の適切な容積は、ダニ区画が少なくとも12時間、例えば少なくとも18時間などの、かなりの時間にわたって有する容積である。
【0046】
使用する封入材は、好ましくは不透明であり、ダニ区画に光が入るのを防ぐ。これは、ダニ区画内で可視光からの熱吸収を防ぐのに有益である。NatureFlexTM N932(InnoviaTM Films)フィルムおよびBUI43ホイル(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlandsから得ることができる)は不透明性を有する材料の例である。
【0047】
本発明のシステムの持続可能な使用を考慮して、本システムは、堆肥化可能な材料から作製されるのがさらに好ましい。この点において堆肥化可能な封入材の使用が好ましい。NatureFlexTM N932(InnoviaTM Films)フィルムおよびBUI43ホイル(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlandsから得ることができる)は適切な特性を有する堆肥化可能な材料の例である。
【0048】
本発明による有益なダニの放出システムは、封入材の外面が水膜維持材料を含むことを特徴とする。既に上で述べたように、ガスバリヤー性材料を含むダニ放出システムのダニ区画への水の浸入の問題、およびダニ放出システムの外面の紙の層により提供された解決策の慎重な分析の結果、本発明の発明者は、ダニ区画への水の流入の危険性がダニ放出システムの外面に水膜維持材料を使用することによって低減するという結論に至った。いかなる理論にも縛られることは望まないが、水が紙の表面と接触すると、その紙の(微小な)細孔内に吸収されると考えられる。全ての水分子が紙の層の内部に吸収されるわけではなく、ある量の水分子は(特に紙の層の多孔質構造の飽和の際)紙の層の表面に留まり、そこで紙の表面に提示されるさらなる水分子などの材料との接触に利用可能な親水性の接触点となると考えられる。この表面の水は、紙の(微小な)細孔の内部の水との連絡によりその動きが幾らか制限されると理論化し得る。したがって、さらなる量の水が表面に提示されたとき、この入ってくる水は紙の表面上の表面水により形成された(比較的高い表面エネルギーを有する)親水性の表面を体験する。この(表面水の存在に起因して比較的高い表面エネルギーを有する)表面に導入された水滴は小さい(またはゼロさえもの)ヤング接触角を有し、したがって拡がって水膜を形成する。この結果、ダニ放出システムの外面上の水の挙動は、水膜を維持することができない金属化されたポリマーフィルムホイルBUI43(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlandsより入手可能)で構築された最近開発されたダニ放出システムと比較して異なる。実験欄で示されるように、この異なる水の流れは、驚くべきことに、ダニ区画内への外部からの水の浸入の危険性を低減する。
【0049】
上に記載した理論的仮説に基づいて、水膜を維持することができるあらゆる材料が、ダニ区画への水の浸入の危険性を低減する上で効果を有すると期待し得る。また、水の吸収が可能な多孔質の表面を含むあらゆる材料を水膜維持材料として使用できるとも期待し得る。しかし、当業者にはまた、充分に高い表面自由エネルギーを有する(したがって水に対して比較的小さいヤング接触角を有する)非多孔質の表面も、水膜を維持することができ、本発明で水膜維持材料として適切に使用することができることも理解されよう。
【0050】
用語「維持する」の、「存続させる」または「規定の状態に保つ」という意味は、当業者に公知である。したがって、本発明において、水膜維持材料は、水が前記水膜維持材料の上に存在するとき、膜状の形態を維持することができる材料である。水は所与の表面上で常に自発的に膜を形成するわけではなく、したがって水を膜の形態にするにはある力を必要とすることがある。したがって、ある種の実施形態によると、水は、機械的に膜の形態にされた後、膜の形態を維持するのが好ましい。当業者は、その共通の一般的知識および本発明の説明に基づいて、本発明における「水膜」は表面濡れ理論に照らして考察するべきであることを知り、理解するであろう。当業者は、その濡れ理論の知識および本発明の説明に基づいて、本発明において、用語「水膜」は、一方では濡れ理論で公知のように表面との湿潤相互作用を有する水膜を意味する水の(部分的)湿潤膜に関し、他方では吸水性の(飽和した)多孔質表面上に形成された水膜に関することを知り、理解するであろう。本発明のこの説明から当業者には理解されるように、水の湿潤膜および吸水性の(飽和した)多孔質表面上に形成された水膜は、特に水膜と接触する追加の水(滴)との相互作用に関して類似の性質を有し得る。当業者は、また、その濡れ理論の知識および本発明の説明に基づいて、例えば実験欄に示される試験および/または「ウォーターブレイク試験」と同様に行われ、例えばASTM F22と同様に実施される試験を使用することによって、水膜がある表面上に維持されるかどうか評価し、決定することもできよう。当業者には知られ、理解されるように、水膜はあらゆる材料の上で有効に維持されることはできない。例えば、疎水性の表面が水膜を支持することができないということは公知である。そして、代わりに、水膜を維持するには表面のある程度の親水性が必要とされるか、あるいは、材料は、水が多孔質構造の表面上に留まる間に、例えば水による多孔質構造の飽和により、および/または細孔内の水の表面張力の力により水が吸収され得る(微小な)多孔質構造を含んでいなければならない。したがって、当業者は、吸水性多孔質材料から、または充分に高い表面自由エネルギーを有する(したがって水に対する比較的小さいヤング接触角を有する)材料から適切な水膜維持材料を選択することができる。このため、当業者はまた、実験欄に示される試験および/または「ウォーターブレイク試験」と同様に行われ、例えばASTM F22と同様に実施される試験に戻ってもよい。ここでいう水とは、純水、雨水、凝縮水、水道水、肥沃化された雨水もしくは肥沃化された水道水またはその他の灌漑水などの、ダニ放出システムの使用に関連するあらゆる水(溶液)であることができる。肥沃化された水は園芸でしばしば使用される水の鉱物溶液であり、植物に対する無機の(微量)栄養素として溶解した鉱物を含んでいる。当業者は肥沃化された水を製造することができよう。肥沃化された水の典型的な組成は
図8の表に示されている。理論的レベルでは特定の材料との異なる水溶液の接触角に小さい差があり得るが、やはり当業者には理解されるように、特に接触角が既に低い、例えば≦45°のとき、それらの差に実際上の関連性はほとんどない。好ましい実施形態によると水は超高純度の蒸留水である。異なる好ましい実施形態によると、水は肥沃化された雨水、特に
図8に示す組成を有する肥沃化された雨水である。水膜維持材料は好ましくはガスバリヤー性材料を含む積層体内の外面層である。
【0051】
好ましい実施形態によると、水膜維持材料は水を吸収することができる多孔質材料を含む。当業者は、多孔質材料とは何かを知っており、理解している。したがって、当業者は、多孔質材料が細孔を含む材料であることを知っており、理解している。細孔は微小な開口もしくは穴または微小な隙間である。いくつかの実施形態によると、多孔質材料の多孔度は0.5~0.9、好ましくは0.5~0.85である。さらに、吸水性多孔質材料は微細孔材料であるのが好ましい。本発明によると、微細孔材料は5~100μm、好ましくは5~60μmの範囲の平均細孔直径を有する材料である。
【0052】
水を吸収することができる多孔質材料は、好ましくは、ガスバリヤー性材料を含む積層体内に組み込まれた外面層である。当業者は、水を吸収することができる適切な多孔質材料を選択することができる。ある種の好ましい実施形態によると、水を吸収することができる多孔質材料は繊維材料の層であり得る。当業者には理解されるように、多孔質繊維材料は繊維間に形成された細孔を有する。繊維材料の層は好ましくは圧搾植物繊維の層である。植物繊維は好ましくはセルロース繊維である。最も好ましくは圧搾植物繊維の層は紙である。水の吸収に適したいかなる種類の紙も使用できる。クラフト紙は良好な機能性を有することが証明されており、類似の種類の紙が使用できる。使用する紙の重量は例えば15~50g/m2でよい。
【0053】
紙は好ましい多孔質吸水性材料であり、代わりの吸水性多孔質材料は、特に層の厚さ、多孔性および細孔径の点で、類似の特徴を有するのが好ましい。したがって、吸水性多孔質材料は20~500μm、より好ましくは50~200μmの平均の層厚さを有するシート材料であるのが好ましい。好ましい多孔質材料は50~200μmの層厚さ、および5~60μmの平均の細孔直径を有する。さらに好ましい多孔質材料は50~200μmの層厚さ、0.5~0.85の多孔度および5~60μmの平均細孔直径を有する。本発明により考えられるダニ放出システムのある種の好ましい実施形態は≦3、例えば≦2.5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有するガスバリヤー性材料、50~200μmの層厚さ、5~60μmの平均細孔直径、場合により0.5~0.85の多孔度、ならびに表Iの参照番号I1-I338、すなわちI1またはI2またはI3またはI4またはI5またはI6またはI7またはI8またはI9またはI10またはI11またはI12またはI13またはI14またはI15またはI16またはI17またはI18またはI19またはI20またはI21またはI22またはI23またはI24またはI25またはI26またはI27またはI28またはI29またはI30またはI31またはI32またはI33またはI34またはI35またはI36またはI37またはI38またはI39またはI40またはI41またはI42またはI43またはI44またはI45またはI46またはI47またはI48またはI49またはI50またはI51またはI52またはI53またはI54またはI55またはI56またはI57またはI58またはI59またはI60またはI61またはI62またはI63またはI64またはI65またはI66またはI67またはI68またはI69またはI70またはI71またはI72またはI73またはI74またはI75またはI76またはI77またはI78またはI79またはI80またはI81またはI82またはI83またはI84またはI85またはI86またはI87またはI88またはI89またはI90またはI91またはI92またはI93またはI94またはI95またはI96またはI97またはI98またはI99またはI100またはI101またはI102またはI103またはI104またはI105またはI106またはI107またはI108またはI109またはI110またはI111またはI112またはI113またはI114またはI115またはI116またはI117またはI118またはI119またはI120またはI121またはI122またはI123またはI124またはI125またはI126またはI127またはI128またはI129またはI130またはI131またはI132またはI133またはI134またはI135またはI136またはI137またはI138またはI139またはI140またはI141またはI142またはI143またはI144またはI145またはI146またはI147またはI148またはI149またはI150またはI151またはI152またはI153またはI154またはI155またはI156またはI157またはI158またはI159またはI160またはI161またはI162またはI163またはI164またはI165またはI166またはI167またはI168またはI169またはI170またはI171またはI172またはI173またはI174またはI175またはI176またはI177またはI178またはI179またはI180またはI181またはI182またはI183またはI184またはI185またはI186またはI187またはI188またはI189またはI190またはI191またはI192またはI193またはI194またはI195またはI196またはI197またはI198またはI199またはI200またはI201またはI202またはI203またはI204またはI205またはI206またはI207またはI208またはI209またはI210またはI211またはI212またはI213またはI214またはI215またはI216またはI217またはI218またはI219またはI220またはI221またはI222またはI223またはI224またはI225またはI226またはI227またはI228またはI229またはI230またはI231またはI232またはI233またはI234またはI235またはI236またはI237またはI238またはI239またはI240またはI241またはI242またはI243またはI244またはI245またはI246またはI247またはI248またはI249またはI250またはI251またはI252またはI253またはI254またはI255またはI256またはI257またはI258またはI259またはI260またはI261またはI262またはI263またはI264またはI265またはI266またはI267またはI268またはI269またはI270またはI271またはI272またはI273またはI274またはI275またはI276またはI277またはI278またはI279またはI280またはI281またはI282またはI283またはI284またはI285またはI286またはI287またはI288またはI289またはI290またはI291またはI292またはI293またはI294またはI295またはI296またはI297またはI298またはI299またはI300またはI301またはI302またはI303またはI304またはI305またはI306またはI307またはI308またはI309またはI310またはI311またはI312またはI313またはI314またはI315またはI316またはI317またはI318またはI319またはI320またはI321またはI322またはI323またはI324またはI325またはI326またはI327またはI328またはI329またはI330またはI331またはI332またはI333またはI334またはI335またはI336またはI337またはI338によるWVTR、x、yおよびx/Σyの組合せを有する吸水性多孔質材料から選択される水膜維持材料を含む封入材の外面を有する。これらの実施形態において水膜維持材料は好ましくはガスバリヤー性材料を含む積層体内にある。本発明のさらなる態様に対して、ダニ放出システムのこれらの実施形態の使用もある種の実施形態によると好ましい。
【0054】
多孔質材料の構造体は親水性または疎水性の材料により形成し得る。親水性の材料は水との相互作用をさらに増大するのでその使用が好ましい。
【0055】
当業者には認識されるように、上に提示した理論および当業者の共通の一般的知識に基づいて、代わりの水膜維持材料は非疎水性材料などの比較的良好な濡れ性を有する材料である。濡れとは、液体が固体の表面との接触を維持することができる能力である。当業者には分かるように、液体による表面の濡れ性はその表面上の水のヤング接触角θと相互に関連付けられる。ある種の実施形態によると、水膜維持材料は、水が水膜維持材料の表面上で最大でも60°、例えば≦60°、≦55°、≦50°、≦45°、≦40°、≦35°、≦30°、≦35°、≦30°、≦25°、≦20°、≦15°、≦10°、≦5°、例えば0°のヤング接触角θを有するように選択される。完全な濡れはヤング接触角θがゼロに等しいときに起こるという事実を考慮して、θの値が低いほど、濡れの程度は高くなる。水膜維持材料は水が≦50°、より好ましくは≦45°、さらにより好ましくは≦40°、なおさらにより好ましくは≦35°、最も好ましくは≦20°、例えば≦15°、≦10°、または≦5°のヤング接触角θを有するように選択するのが好ましい。当業者は処理もしくは非処理ポリマー材料または非ポリマー材料などのある種の材料の表面上の水のヤング接触角を決定する手順を知っている。例えばASTM-5946の方法または類似の方法を使用することができる。当業者には理解されるように、この規格の方法はコロナ処理されたポリマーに対する接触角を測定することを狙ったものであるが、この一般的な方法は異なる表面に対する水との接触角を測定するのに等しく適している。好ましい実施形態によるとヤング接触角はASTM 5946の標準試験条件下、すなわち大気圧、23℃および50%相対湿度で決定される。他の好ましい実施形態によるとヤング接触角は試験表面がコロナ処理したポリマーフィルムでもコロナ処理したポリマーフィルムと異なる表面でもよいように修正したASTM D-5946に従って決定される。水が≦50のヤング接触角θを有するように選択される材料は好ましい実施形態によると非多孔質の表面を有する。
【0056】
当業者は≦60°の水とのヤング接触角を有する適切な材料を選択することができるであろう。当技術分野で利用可能な標準的試験を用いてある材料と水との接触角を決定することができ、したがってその材料の適性を決定することができる。適切な材料は、例えば、金属、好ましくは金属膜、(変性)ポリマー、例えばコロナまたはプラズマ処理したポリマー(例えばJorda-Vilaplana et al., European Polymer Journal, Volume 58, September 2014, Pages 23-33参照)、好ましくは親水性材料で処理したポリマーフィルムまたは表面、例えば湿潤剤を具備した表面、例えば親水性コーティング、例えばTiO2またはいろいろな親水性化合物に基づく親水性コーティングを備えた表面から選択することができる。当業者は、親水性のコーティングがいかにある材料の表面の濡れ性を増大し得るか分かり、理解するであろう。好ましい実施形態によると封入材は、ガスバリヤー性材料が金属化されたポリマーフィルムを含み、水膜維持材料が表面エネルギーを増大させる表面処理、例えばコロナ処理、プラズマ処理から選択される処理または親水性のコーティング、例えば酸化チタンコーティングにより変性したポリマーである積層体である。
【0057】
本発明で考えられるダニ放出システムのある種の実施形態は、≦3、例えば≦2.5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有するガスバリヤー性材料、水膜維持材料の表面上に水が≦45°、より好ましくは≦40°、なおさらにより好ましくは≦35°、最も好ましくは≦20°、例えば≦15°、≦10°、または≦5°のヤング接触角θを有するように選択された水膜維持材料を有し、さらに表Iの参照番号I1またはI2またはI3またはI4またはI5またはI6またはI7またはI8またはI9またはI10またはI11またはI12またはI13またはI14またはI15またはI16またはI17またはI18またはI19またはI20またはI21またはI22またはI23またはI24またはI25またはI26またはI27またはI28またはI29またはI30またはI31またはI32またはI33またはI34またはI35またはI36またはI37またはI38またはI39またはI40またはI41またはI42またはI43またはI44またはI45またはI46またはI47またはI48またはI49またはI50またはI51またはI52またはI53またはI54またはI55またはI56またはI57またはI58またはI59またはI60またはI61またはI62またはI63またはI64またはI65またはI66またはI67またはI68またはI69またはI70またはI71またはI72またはI73またはI74またはI75またはI76またはI77またはI78またはI79またはI80またはI81またはI82またはI83またはI84またはI85またはI86またはI87またはI88またはI89またはI90またはI91またはI92またはI93またはI94またはI95またはI96またはI97またはI98またはI99またはI100またはI101またはI102またはI103またはI104またはI105またはI106またはI107またはI108またはI109またはI110またはI111またはI112またはI113またはI114またはI115またはI116またはI117またはI118またはI119またはI120またはI121またはI122またはI123またはI124またはI125またはI126またはI127またはI128またはI129またはI130またはI131またはI132またはI133またはI134またはI135またはI136またはI137またはI138またはI139またはI140またはI141またはI142またはI143またはI144またはI145またはI146またはI147またはI148またはI149またはI150またはI151またはI152またはI153またはI154またはI155またはI156またはI157またはI158またはI159またはI160またはI161またはI162またはI163またはI164またはI165またはI166またはI167またはI168またはI169またはI170またはI171またはI172またはI173またはI174またはI175またはI176またはI177またはI178またはI179またはI180またはI181またはI182またはI183またはI184またはI185またはI186またはI187またはI188またはI189またはI190またはI191またはI192またはI193またはI194またはI195またはI196またはI197またはI198またはI199またはI200またはI201またはI202またはI203またはI204またはI205またはI206またはI207またはI208またはI209またはI210またはI211またはI212またはI213またはI214またはI215またはI216またはI217またはI218またはI219またはI220またはI221またはI222またはI223またはI224またはI225またはI226またはI227またはI228またはI229またはI230またはI231またはI232またはI233またはI234またはI235またはI236またはI237またはI238またはI239またはI240またはI241またはI242またはI243またはI244またはI245またはI246またはI247またはI248またはI249またはI250またはI251またはI252またはI253またはI254またはI255またはI256またはI257またはI258またはI259またはI260またはI261またはI262またはI263またはI264またはI265またはI266またはI267またはI268またはI269またはI270またはI271またはI272またはI273またはI274またはI275またはI276またはI277またはI278またはI279またはI280またはI281またはI282またはI283またはI284またはI285またはI286またはI287またはI288またはI289またはI290またはI291またはI292またはI293またはI294またはI295またはI296またはI297またはI298またはI299またはI300またはI301またはI302またはI303またはI304またはI305またはI306またはI307またはI308またはI309またはI310またはI311またはI312またはI313またはI314またはI315またはI316またはI317またはI318またはI319またはI320またはI321またはI322またはI323またはI324またはI325またはI326またはI327またはI328またはI329またはI330またはI331またはI332またはI333またはI334またはI335またはI336またはI337またはI338によるWVTR、x、yおよびx/Σyの組合せを有する。これらの実施形態において水膜維持材料は好ましくはガスバリヤー性材料を含む積層体内にある。本発明のさらなる態様では、ダニ放出システムのこれらの実施形態の使用もいくつかの実施形態によると好ましい。
【0058】
当業者には分かるように、接触角と表面自由エネルギーとの間には相関関係があり、濡れエネルギーは表面自由エネルギーの導関数である。したがって、ある種の実施形態によると、水膜維持材料は少なくとも43ダイン/cm、例えば≧44、≧45、≧50、≧55、≧60、≧65、≧70、≧75ダイン/cmの表面自由エネルギーを有する材料である。当業者は表面自由エネルギー(あるいは表面エネルギーまたは界面エネルギー)という用語を知っており、理解している。また当業者には分かるように、水による濡れは、表面自由エネルギーが増大すると増大する。理論によれば、ある表面の表面自由エネルギーが液体の表面張力より大きい場合、液体によるその表面の濡れはこれらの状況の下でヤング接触角θがゼロであると最大になる。水は標準条件下で72ダイン/cm付近の表面張力を有する(例えばJorda-Vilaplana et al., European Polymer Journal, Volume 58, September 2014, Pages 23-33参照)。したがってそれより高い値の表面張力が好ましい。したがって、好ましくは、水膜維持材料の表面張力は≧42または≧45、より好ましくは≧50または≧55、さらにより好ましくは≧60または≧65、最も好ましくは≧70または≧75ダイン/cmである。実際上可能である限り、表面エネルギーの値に上限はない。ある種の好ましい実施形態によると水膜維持材料は最大でも1000ダイン/cm、例えば最大でも500ダイン/cm、例えば最大でも200ダイン/cm、例えば最大でも150ダイン/cm、例えば最大でも100ダイン/cmの表面エネルギーを有する。例えばガラスは300ダイン/cm付近の表面エネルギーを有し、金属は1000ダイン/cmを超える表面エネルギーを有し得る。当業者は1ダイン/cmが1mN/mまたは1mJ/m2と等価であることを知っており、したがって用語「ダイン/cm」は用語「mN/m」または用語「mJ/m2」で置き換えてもよい。
【0059】
特定の表面の表面自由エネルギーは当技術分野で公知のいずれかの方法で決定し得る。例えば当技術分野で公知の方法でヤング接触角θを決定することによる方法(例えばJorda-Vilaplana et al., European Polymer Journal, Volume 58, September 2014, Pages 23-33参照)を使用できる。
【0060】
作物中などの標的領域内に吊り下げるために、本発明による有益なダニを放出するシステムは吊り下げ手段を含み得る。当業者にはすぐに理解されるように、いくつかのフックまたはいくつかの糸などの吊り下げるのに適した任意の手段を使用できる。フックを形成する段ボールカードが、Koppert Biological Systgems(Berkel and Rodenrijs, The Netherlands)のSWIRSKI ULTI-MITEシステムを始めとするSWIRSKI-MITE製品群などの従来技術の有益なダニの放出システムに頻繁に用いられている。かかる段ボールフックおよび類似の吊り下げ手段は、本発明の有益なダニの放出システムで使用するのにも適している。したがって、ある種の好ましい実施形態によると、有益なダニを放出するシステムは封入材に取り付けられた平面状の材料を含む吊り下げ手段を含む。平面状の材料は好ましくはフックとして機能するのに適した開口を含む。吊り下げ手段の平面状の材料は、ダニ区画をダニ区画の外部の空間と連絡する連絡部に落水が直接落ちないようにその連絡部のカバーとして役立つのが好ましい。このため、平面状の材料は、封入材の連絡開口が位置する面の幅と一致する幅を有し、その平面状の材料の面が、前記封入材の連絡開口が位置する面と少なくとも本質的に平行になるように封入材に取り付けられ、一方で前記連絡開口をカバーするのが好ましい。
【0061】
当業者には理解されるように、有益なダニの放出システムは、吊り下げ手段なしに、例えばそのシステムを標的領域内に単に置くことによって標的領域内に導入してもよい。したがって吊り下げ手段の使用は全く必要とされない。加えて、吊り下げ手段のない有益なダニを放出するシステムは、吊り下げ手段を含むシステムに容易に変換することができる有益な中間製品である。また、この意味で、吊り下げ手段のないシステムは当技術に価値がある貢献である。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態によると、連絡部を取り囲む領域において、外面が選択された水膜維持材料より疎水性の材料、例えば≧61°、例えば≧65°、≧70°、≧75°、≧80°、≧85°、≧90°、≧100°、150°のヤング接触角を有する材料を含むのが好ましい。最も好ましくは、より疎水性の材料は疎水性の材料、すなわち≧90°のヤング接触角を有する材料である。当業者には分かるように接触角の理論的な最大値は180°である。したがって、本発明によれば、より疎水性の材料の接触角は好ましくは61~180°である。連絡部を取り囲むより疎水性の材料の存在はその連絡部内への外表面からの水の浸入の機会をさらに低減し得ると考えられる。言及した連絡部を取り囲む領域は連絡部から3cmまで、例えば2.5cmまで、例えば2.0cmまで、例えば1.5cmまで、例えば1.0cmまで、例えば0.5cmまでの距離の領域である。
【0063】
本発明のさらなる態様は、本発明によるシステムの、標的領域に有益なダニを導入するための使用に関する。標的領域は、有益なダニの活性が望まれるあらゆる領域であり得る。有益なダニは、捕食性ダニ、または捕食性ダニもしくは他の捕食性の有益な節足動物のための食料源として適切なダニであり得る。本記載から明らかなように、有益なダニが捕食性ダニ種から選択される場合、その捕食性ダニのための食料源として適切なダニ種も、本発明によるシステムのダニ区画内に存在し得る。同様に本記載から明らかなように、有益なダニが捕食性ダニまたは他の捕食性の節足動物のための食料源として適したダニ種から選択される場合、捕食性ダニは、好ましくは本発明によるシステムのダニ区画内に存在しない。または異なる表現で記載するならば、かかる実施形態によると、有益なダニの集団は、好ましくは、捕食性ダニまたは他の捕食性の節足動物のための食料源として適したいくつかのダニ種からなる。例えば、有益なダニが作物の害虫を防除する機能を有する捕食性ダニである場合、標的領域は作物であってもよい。作物は、制限されることはないが、(温室)野菜作物、例えばトマト(Solanum lycopersicum)、コショウ(トウガラシ(Capsicum annuum))、ナス(Solanum melogena)、ウリ科(Cucurbitaceae)、例えばキュウリ(cucumis sativa)、メロン(cucumis melo)、スイカ(Citrullus lanatus);ソフトフルーツ(例えば、イチゴ(Fragaria x annanassa)、ラズベリー(ヨーロッパキイチゴ(Rubus ideaus)))、ブルーベリー、(温室)装飾作物(例えば、バラ、ガーベラ、キク)または樹木作物、例えばミカン属の種(Citrus spp.)から選択され得る。作物の害虫を防除するのに機能を有する捕食性ダニまたは他の捕食性の節足動物のための食料源として適したダニもまた、作物に存在する捕食性の種の集団の増殖を支えるために作物に放出され得る。捕食性ダニは上記したメソスティグマチドまたはプロスティグマチド種であり得る。他の捕食性の節足動物はメクラカメムムシ科(Miridae)、例えばマクロロファス属の種(Macrolophus spp.)、ハナカメムシ科(Anthocoridae)、例えばオリウス属の種(Orius spp.)、例えばハナカメムシ(Orius laevigatus)、テントウムシ科(Coccinellidae)、例えばアダリア属の種(Adalia spp.)またはツマアカオオヒメテントウ(Cryptolaemus montrouzieri)、クサカゲロウ科(Chrysopidae)、例えばクリソペルラ属の種(Chrysoperla spp.)、例えばニッポンクサカゲロウ(Chrysoperla carnea)から選択され得る。
【0064】
代わりの実施形態によると、有益なダニは、動物、すなわち宿主動物の害虫、特に飼育動物、例えば、家畜およびペット、例えば家禽、牛、馬、犬または猫の害虫を防除する機能を有し得る。かかる実施形態によると、標的領域は、宿主動物のための家畜小屋または就寝スペースであり得る。本発明によるシステムは、例えば、ヒポアスピス属、例えばヒポアスピス・アンギュスタ、ケイレツス属、例えばケイレツス・エルディティス、アンドロラエラプス属、例えばアンドロラエラプス・カザリス、トゲダニ科、例えば、ストラチオラエラプス属、例えばストラチオラエラプス・シミツス(ウォマースレイ)、ガエオラエラプス属、例えばガエオラエラプス・アキュレイファー(カネストリニ)、もしくはマクロケレス属、例えばマクロケレス・ロブスツルスから選択される捕食性ダニを有益なダニとして、またはこの選択された捕食性ダニのための餌として適切なアスティグマチドダニを含むことによって、ワクモ(poultry red mite)の防除を支援するために使用し得る。当業者には知られるように、これらの捕食性ダニはより広い宿主範囲を有し、したがって他の害虫を防除するのにも使用し得る。加えて、他の有益な捕食性の節足動物も動物宿主の害虫を防除するのに使用し得る。本発明のシステムは、かかる有益な捕食性の節足動物のための食料源として役立ち得、したがって生存および/またはその集団の増殖を支持し得るアスティグマチドダニを放出するのにも使用でき、こうして動物宿主の害虫の防除を支持し得る。
【0065】
さらに他の実施形態において、有益なダニは、コナダニ(stored product mite)などの、貯蔵食品の害虫に対する捕食動物である。かかる実施形態において標的領域は食品貯蔵場所である
【0066】
本発明の使用において、有益なダニは、本発明のシステムを標的領域または近接位置に供給することによって、標的領域に導入される。これは、本発明のシステムを標的領域に配置するか、またはそれを標的領域に吊り下げることによって行われ得る。
【0067】
以下の実験に示されるように、本発明によるダニ放出システムは、周囲の相対湿度(RH)が70%未満である環境で使用されたとき適当な機能を維持する。これによって、RHが70%未満の値に変動するか、または平均であっても70%未満である条件下で使用できる、より頑強なシステムが提供される。環境条件が常に調節可能であるとは限らないことを考慮して、本発明は、低過ぎる周囲湿度に起因する失敗の危険性を低減したシステムを提供する。したがって、ある種の好ましい実施形態によると、本発明のシステムは、周囲の相対湿度(RH)が65%未満、例えば、65%~10%、または60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、もしくは15%未満の値に達し得る環境で使用される。他の好ましい実施形態によると、本発明のシステムは、平均の周囲相対湿度(RH)が65%未満、例えば、65%~10%、または60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、もしくは15%未満である環境で使用される。
【0068】
本発明のさらなる態様は、害虫が防除されるべき標的領域に本発明によるシステムを提供するステップを含む、捕食性ダニ種または他の有益な捕食性の節足動物種により餌とされ得る害虫を防除する方法に関する。
【0069】
さらに、本発明の別の態様は、捕食性の有益な節足動物の餌となり得る害虫に寄生されやすいいくつかの非ヒト生物により農畜産物を生産する方法に関し、前記方法は、
前記いくつかの非ヒト生物を、ある領域、すなわち標的領域に供給するステップと;
標的領域に、またはそれに近接して、いくつかの本発明によるシステムを供給するステップと;
農畜産物を生産させるために、前記いくつかの非ヒト生物に適切な栄養物および環境条件を与えるステップと
を含む。
【0070】
前記いくつかの非ヒト生物は、(以前に定義した)作物種、鳥類種、好ましくは家禽種、例えばニワトリまたはシチメンチョウ、家畜哺乳類から選択することができる。
【0071】
捕食性ダニ種の餌となり得る害虫とは、ダニ放出システム内に存在する捕食性ダニ(有益なダニとして選択された捕食性ダニ)にとって適切な餌となる害虫を意味すると理解されたい。
【0072】
捕食性ダニ種の餌となり得る害虫が寄生しやすい非ヒト生物とは、ある害虫を引き付ける傾向がある非ヒト生物を意味すると理解されるべきであり、前記害虫は、ダニ放出システム内に存在する捕食性ダニ(有益なダニとして選択された捕食性ダニ)にとって適切な餌である。したがって、ある害虫が寄生する傾向がある非ヒト生物は、その害虫にとって適切な宿主であり、その害虫は、ダニ放出システム内に存在する捕食性ダニ(有益なダニとして選択された捕食性ダニ)にとって適切な餌である。
【0073】
農作物により生産され得る農畜産物としては、植物バイオマス、種子、果実、その他などの、農業的価値を有するあらゆる植物材料が挙げられる。家禽などの鳥類、特にニワトリまたはシチメンチョウにより生産され得る農畜産物としては、肉、卵、羽毛および肥料が挙げられる。牛、山羊、羊、豚などの哺乳類の家畜により生産され得る農畜産物としては、肉および革、乳、羊毛および肥料が挙げられる。
【0074】
本発明のこの態様の様々な実施形態およびそれに関連する技術的な詳細は有益なダニを標的領域に導入するシステムの使用のための上述したものと同様である。
【0075】
本発明のもう1つさらに別の態様は、≦5、好ましくは≦3.5、より好ましくは2.0g/m2*24時間の水蒸気透過率を有する金属化されたポリマーフィルム、および繊維材料の外層、好ましくは圧搾植物繊維、より好ましくは圧搾セルロース繊維、例えば紙の層を含む積層体に関する。既に上で説明したように、当業者は、無限に小さい水蒸気透過率を有する水蒸気バリヤー性材料が利用可能であることを知っている。したがって選択される金属化されたポリマーフィルムガスバリヤー性材料の水蒸気透過率は5.0g/m2*24時間から0.00g/m2*24時間の理論値までであり得る。したがって、好ましい実施形態によると、適切な金属化されたポリマーフィルムガスバリヤー性材料は5.0~0.01g/m2*24時間、例えば3.5~0.01g/m2*24時間、3.5~0.5g/m2*24時間、2.5~0.01g/m2*24時間、2.5~0.5g/m2*24時間、または2.0~0.5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有し得る。3.5~0.01g/m2*24時間、例えば2.0g/m2*24時間の値が最も好ましい。本発明の他の態様に関する上記記載から明らかなように、繊維材料は水を吸収することができるはずであり、すなわち吸水性材料であるはずである。金属化されたポリマーフィルムとかかる繊維材料の外層のかかる組合せを含む積層体は当技術分野で知られていない。加えて、本発明の本発明者の知見の知識がなければ、かかる積層体を製造することは自明ではないであろう。
【0076】
当業者は、その共通の一般的知識に基づいて、本発明の積層体を製造することができるであろう。特に、ポリマーフィルムを紙とどのように積層するかは当技術分野で公知である。
【0077】
本発明のさらなる態様は、本発明の積層体の有益なダニを放出するシステムのための構築材料としての使用および有益なダニを放出するシステムを製造する方法に関する。本発明の他の態様に関する上記記載から明らかなように、前記使用において、積層体は繊維材料の外層がシステムの外部になるように使用される。有益なダニを放出するシステムを製造する方法は以下のステップ:
-第1の表面、すなわち内面、および第2の表面、すなわち外面を有し、≦5、好ましくは≦3.5、より好ましくは2.0g/m2*24時間の水蒸気透過率を有するガスバリヤー性材料を含む材料、好ましくはシート材料、すなわち封入材を準備するステップであって、外面が水膜維持材料を含む、ステップと;
-封入材から、有益なダニを保持するのに適した区画であるダニ区画を含む小袋などの構造体を構築するステップであって、構造体は第1の表面がダニ区画に面するように構築される、ステップと;
-ダニ区画内にいくつかの有益なダニを配置するステップ
を含む。
【0078】
積層体の使用および有益なダニを放出するシステムを製造する方法の様々なステップは本発明の他の態様に関する記載に照らして理解されなければならない。これを考慮して、第1の表面がダニ区画に面するように構造体を構築するとき、第2の表面はダニ放出システムの外部に面すると理解されなければならない。さらに、ダニ区画は、ダニ区画の内部を外部と連絡するいくつかの開口を備えることが理解されるであろう。加えて、ダニ区画は気密な構築体を有する、すなわち≦5g/m2*24時間の水蒸気透過率を有すると理解されるべきである。当業者には理解されるように、外部への連絡開口は存在しない。封入材の異なる部分間のあらゆるシールまたは連絡部はこれに適応するべきである。
【0079】
当業者には理解されるように、いくつかの有益なダニをダニ区画内に配置するステップは、有益なダニを放出するシステムの製造の任意の適切な時点で、例えばダニ区画を閉じる前、閉じる際または閉じた後に実施することができる。ダニ放出小袋を製造する現在の慣行では、ダニ区画を閉じた後に出口開口を作製する。したがって、やはり本発明の方法によると、ダニ区画の内部を外部と連絡するいくつかの開口はダニ区画を閉じた後に導入する(作製する)のが好ましい。
【0080】
ここで、添付の図および以下に挙げる実施例を参照して本発明をさらに例示する。これらの図、それに関する記載および実施例は単に例示であり、いかなる意味でも特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を制限するものではないことを強調しておく。
【0081】
図1は、スティック状の小袋の形態を有する本発明の一実施形態によるダニ放出システム(1)を概略的に示す。
図1Aは、前面パネル(2)が位置するダニ放出システム(1)の前側の図を示す。
図1Bは、第1の背面パネル(3)および第2の背面パネル(4)ならびにシール面(5)の後部が位置するダニ放出システム(1)の後側の図を示す。
図1Cは、細長いダニ放出システム(1)の最長の軸の方向で見た図を示す。スティック状の小袋(1)は
図1Dにおいて外面を上にして示されている平面状ホイル(BUI 43, Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlands)から折り畳まれる。ダニ放出システム(1)の折り畳まれた構造の前面パネル(2)(35mm幅および85mm長)、第1の背面パネル(3)、第2の背面パネル(4)およびシールフィン(5)を形成する部分が示されている。加えて、
図1Dには、シール面5と接合する第2のシール面(6)および折り目(7)が示されている。折り畳まれシールされた構造では、シール面(5)により覆われた折り目(7)および第2のシール面(6)は目に見えない。
図1A、1Bおよび1Cに示されている折り畳まれた構造は、シュガースティックおよびコーヒークリーマースティックを製造する手順と同様な手順で類似の機械を使用して得られる。このためには、シール面(5)をシール面(6)と接合し、これらの部分を材料のシール温度を超える適切な温度でシールする。次いで、シールフィンを曲げてスティックの本体に戻らせることができるように、部分(6)と(7)の間の線に沿って折り目を作る。これにより、シールフィンは第2の背面パネル(4)上でスティックの本体に取り付けることができる。次に下部シール(8)を作製して密閉する。こうして、担体上にダニ集団を含むダニ組成物が満たされた開放容器が作られる。充填後、上部シール(9)を作製して密閉する。この上部シール(9)は下部シール(8)より広くなっていて、ボール紙フックなどの吊り下げ手段(図には示されていない)のための取付け点を与える。
図1Dで、平面状の折り畳まれていない状況ではシールが実際には存在しないことを考慮して、下部シール(8)および上部シール(9)の位置が括弧にくくられた参照番号で示されている。
【0082】
図2は、いかにして多数のダニ放出小袋をホイルのロールから形成することができるかを示す。単一の平面状ホイル片に、ダニ放出システムの折り畳まれた構造の前面パネル(2)、第1の背面パネル(3)、第2の背面パネル(4)およびシールフィン(5)を形成する部分が示されている。加えて、内部フィンフラップ(7)、フィンシールにより覆われた部分(6)ならびにヒートシール(8)および(9)が配置される部分が示されている。切断、折り畳み、シール、担体と結合したダニ集団を含むダニ組成物の充填、およびダニ区画をダニ区画の外部の空間と連絡する開口(10)の導入は、シュガースティックおよびコーヒークリーマースティックを製造するのに使用される技術および手順と同様な技術および手順で十分に自動化されて実行できる。
【0083】
[実験]
[実験1]
<ダニ培養>
湿らせたふすま(20%w/w含水量)担体材料上における餌ダニのサトウダニによるスワルスキーカブリダニのストック飼育。サトウダニへの栄養物は、ふすまのデンプン質物質およびふすまに加えた5%(w/w)酵母エキスにより与えられた。飼育混合物中のダニの数はvan Lenteren, J.C., Hale, A., Klapwijk. J.N., van Schelt, J. and S. Steinberg (2003) Guidelines for quality control of commercially produced natural enemies. In: van Lenteren, J.C. (ed) Quality control and production of biological control agents: Theory and testing procedures CABI Publishing, Wallingford UK, pp 293-294に開示されている標準的計数法を使用して評価した。
【0084】
<手順>
ダニ区画に以下の設計変更を有するダニ放出システム(小袋)を比較した。
1.ポリエチレン(PE)コート紙(押し出したPE 17g/m2(KBM 40+17gr)を積層したクラフト紙40g/m2 Burgo, Italy)、標準*形態のダニ区画、ダニ区画の外部空間と連絡する直径0.65±0.05mmの単一の開口あり。
2.PEコート紙(押し出したPE 17g/m2(KBM 40+17gr)を積層したクラフト紙40g/m2 Burgo, Italy)、標準*形態のダニ区画、ダニ区画の外部空間と連絡する直径1.3mmの単一の開口あり。
3.BUI43ホイル(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlands)、標準*形態のダニ区画、ダニ区画の外部空間と連絡する直径0.65±0.05mmの単一の開口あり。
4.BUI 43ホイル(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlands)、標準*形態のダニ区画、ダニ区画の外部空間と連絡する直径1.3mmの単一の開口あり。
5.BUI 43ホイル(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlands)、スティック**形態(スティック形状)のダニ区画、ダニ区画の外部空間と連絡する直径0.65±0.05mmの単一の開口あり。
*標準形態は、現在SWIRSKI-MITE PLUS製品で使用されているKoppert Biological Systems(Berkel en Rodenrijs, the Netherlands)の標準的ダニ放出システム(小袋)で使用されている(シールストリップを除くダニ区画の大きさは50×50mm)。これらの寸法、充填された材料の容積(約11.5ccに相当する2.3グラムの担体材料)および維持されるヘッドスペースに基づいて、ダニ区画の内部の容積(x)は約14ccと決定された。
**スティック形態は、本発明のある種の実施形態による代替的な形状である(シールストリップを除くダニ区画の大きさは35×65mm)。これらの寸法、充填された材料の容積(約11.5ccに相当する2.3グラムの担体材料)および維持されるヘッドスペースに基づいて、ダニ区画の内部の容積(x)は約14ccと決定された。
【0085】
BUI小袋はハンドシール機を用いて手作業で作り、PE紙の小袋はKoppert B.V.の製造施設にて、SWIRSKI-MITE PLUS製品のための仕様に従って製造した。これらの小袋の頂部端付近に直径0.65±0.05mm(y=π*(0.65/2)2=0.33mm2)または直径1.3mm(y=π*(1.3/2)2=1.3mm2)の単一の開口を、示した大きさの直径のシャフトを有する2つの異なる種類の針で作製した。0.65および1.3mmの直径の開口はいずれも従来技術で使用されていたものに対して比較的小さい。
【0086】
湿らせたふすまの担体材料および栄養物に対して行った標準的方法(van Lenteren et al., 2003 supra)によるダニ計数において、実験の始まりの時点で、1グラムに付きおよそ112匹のスワルスキーカブリダニおよび277匹のサトウダニを収容していたことが明らかになった。2.3グラム(約11.5cc)の担体材料を小袋に充填した(結果として、1つの小袋当たりおよそ257匹のスワルスキーカブリダニおよびおよそ637匹のサトウダニとなった)。その後、小袋をシールした。こうして各種類の45の小袋を調製した。
【0087】
摂氏22度および相対湿度50%に調節された気候キャビネット内で、ペーパークリップを用いて各種類の36の小袋を木綿糸に交互に吊るした。週2回、各種類の3つの小袋から以下のようにしてサンプルを採った。小袋を開き、同一の種類の3つの小袋の中身を混合し、混合物中のダニの数を標準計数法(van Lenteren et al., 2003 supra)を用いて評価した。同時に、担体材料の水分活性(Rotronic HP23-AW-A with HC2-AW)および水分含量(Sartorius MA150)を測定した。この手順を、小袋内のダニの数が有意に減少するまで繰り返した。
【0088】
同時に他の小袋をウォーキングアウト試験に用いた。各種類から、3つの小袋を共にガラスジャーに入れた。各々のガラスジャーを別々にプラスチックバケツ(10リットル)の水の層(深さ2cm)に入れ、これに数滴の石けんを加えた。また、バケツも、摂氏22度および相対湿度50%に調節された別の気候キャビネットに入れた。ジャーを逃れたダニ(捕食性ダニおよび餌のダニ)を石けん水溶液中に捕獲した。週2回、全てのガラスジャーを、新しい石けん水溶液が入った新しいきれいなプラスチックバケツに移した。この手順を、ダニの漏出(生産)が有意に減少するまで繰り返した。石けん水溶液中のダニを数えた。
【0089】
<結果>
異なる設計変更を有するダニ放出システムの内部の捕食性ダニ(スワルスキーカブリダニ)および餌ダニ(サトウダニ)の計数結果を
図3Aおよび3Bに示す。
図4Aおよび4Bは、異なる設計変更を有するダニ放出システムの内部の水分活性(a
w)および水分含量の値を時間と共に示す。
図5Aおよび5Bは、ウォーキングアウト試験で使用した石けん水に集められた捕食性ダニ(スワルスキーカブリダニ)および餌ダニ(サトウダニ)の計数結果を示す。これらの数は、実験中ダニ放出システムから活発に分散されるダニの数を表す。
【0090】
<結論>
示されたデータに基づいて、驚くべきことに、低い水蒸気透過率(および関連して1種以上の代謝ガスに対する低い移動速度)を有し、一方、ガス交換のために小さい開口のみを有する材料から構築されたダニ放出システム内において、長期にわたってダニ集団を維持することができると結論することができる。より驚くべきことに、かかるシステム内部のダニの集団の増殖が、従来技術のダニ放出システムと比較して50%RHの条件下で改良される。かかる条件およびより低いRH条件は、多くの農業環境、特に成長している屋外の作物でしばしば遭遇する(少なくともこれらの条件が起こる危険性がある)。このように、本発明によるダニ放出システムは、従来技術のダニ放出システムより良好に湿度条件の変動に適応し、したがって低いRH条件(be低い 65%未満またはそれ以下、例えば55%未満)の危険性がある状況で故障の危険性がより少なく使用し得る。さらに、ダニ放出システムからのダニの散布が、ダニ区画とダニ区画の外部空間とを連絡する開口の大きさが小さくなると増大することも驚くべきことである。
【0091】
[実験2]
<材料>
200の小袋(34mm*84mm w*h)をこの実験のために作製した。全ての小袋にSwirski-mite plus小袋の標準的内容物(担体としてのふすま中のスワルスキーカブリダニとサトウダニ)を充填し、100の小袋は34g/m
2のBUI43ホイル(Euroflex B.V., Zwolle, The Netherlands)で作製し、100の小袋は小袋の外側に40g/m
2のクラフト紙を有する34g/m
2のBUI43ホイルで作製した。BUI43ホイル+クラフト紙はKoppert B.V.の特別注文でEuroflex B.Vにより40g/m
2重量のクラフト紙をBUI43ホイルの透明なセルロースフィルム層上に積層することによって作製された。紙シートをポリマーフィルム上に積層する標準的な手順をこの積層プロセスに使用した。小袋はULTI-MITE SWIRSKI小袋(Koppert B.V., Berkel and Rodenrijs, The Netherlands)の製造と同様に出口の穴および吊り下げカードなしで機械生産された。小袋の機械生産後、小袋の前側の(裏面は垂直のシールを含有する)小袋の頂部からおよそ2cm下で熱した針により0.6~0.7mmの直径の穴を焼成することによって出口の穴を手作業で作製した。シールを介した水の浸入を排除するために、各々の小袋の頂部および底部シールを熱した融けた膠に浸けた(約2mm)。最後にフックとして役立つ吊り下げカードを各々の小袋に接着した。BUIホイルを有する50の小袋およびBUIホイル+クラフト紙を有する50の小袋の頂部に吊り下げカードを配置し、シールストリップのみを覆った。各々の種類の小袋の他の50の小袋で、小袋を吊り下げカードより高く接着して吊り下げカードで小袋の出口の穴を覆った。表IIは処理の概要を示し、
図6および7は各々の処理の小袋を示す。
【0092】
【0093】
<方法>
2017年6月22日、200の小袋を作製した直後に小袋をKoppertの施設にて温室内に吊るした。小袋は、各々50*50cmの2ブロックで床上およそ15cmに水平に配置した竹の棒に吊るした。処理はランダムに割り振った。スプリンクラー(Revaho、タイプDAN-8991、グリーン、105l/h)を小袋の中央、床上およそ60cmに設置して、小袋に水の均一な噴霧を供給した。14日間、1日4回(8:10、9:40、13:45および15:40h)各々90秒ずつ水を散布した。90秒の期間内に散布した水の量は約1020g/m
2であった。施用した水は
図8に示す組成を有する灌漑水(EC2.0およびpH5.5)であった。温度および相対湿度は実験地から3メートル離れて測定し、実験中の平均温度は23.1℃、平均RHは63.0%であった。
【0094】
14日間、1日4回の短いにわか雨に曝露した後、全ての小袋を集め、各々の小袋の中味を評価し、次の4段階評価に従って等級付けした。1.)(ふすまが緩くて塊になっていないことに基づいて評価して)ふすまは乾燥している、2.)(ふすまがいくつかの塊を示すが、目に見える濡れはないことに基づいて評価して)ふすまは多少湿っている、3.)ふすまの一部が目に見えて濡れているが、濡れた部分は容積の20%未満である、4.)ふすまの容積の20%超が目に見えて濡れている。
【0095】
<結果>
図9は、異なる処理(A、B、C、D)に対して4点評価尺度に従って採点された小袋のパーセンテージを示す。結果は、乾燥したふすま内容物を有する(等級1)小袋の割合が、紙外層を有する小袋(処理C、D)で、外層がBUI34積層ホイルであった処理(処理A、B)と比較して、より高いことを明らかに示している。また、目に見えて濡れたふすまを有する(等級3および4)小袋の割合は、紙外層を有する小袋(処理C、D)で、外層がBUI34積層ホイルであった処理(処理A、B)と比較して、明らかに低下した。驚くべきことに、処理(B)において吊り下げカードで出口の穴を覆うと、乾燥したふすま内容物を有する(等級1)小袋の割合が処理(A)と比較して低下した。これは人為的結果ではなく、以前の試験でも観察された。これに反して、やはり覆われた出口の穴を有する処理(D)において、乾燥したふすま内容物(等級1)を有する小袋の割合は、同一レベルであり、処理(C)と比べて幾らか増大さえした。処理(D)では20%を超える濡れたふすま(等級4)を有する小袋が得られず、一方処理(A)に従って構築された小袋は濡れたふすまを有するかかる小袋をかなりの割合で有していた。
【0096】
<考察>
一方で処理群(A)および(B)と他方で(C)および(D)との間の、乾燥した内容物(等級1)を有する小袋の数の増大および目に見えて濡れた内容物(等級3および4)を有する小袋の低下の傾向は、ダニを分配するシステムの外面に多孔質吸水性層(紙の層)を設けると、システムの外部からダニ区画への望ましくない水流入の制御が改良されることを明確に示している。したがって、濡れた条件下に維持する機会を増大することはダニ区画内をダニ集団の増殖に適した条件にする。多孔質吸水性層と覆った出口の穴の組合せ(処理(D))は水流入の危険性を低減するのに最良の結果をもたらした。
【0097】
これらの結果に基づき、ダニ放出システムの外部の多孔質吸水性紙層の作用の仕方に関する上述した理論を考慮して、水に対して良好な濡れ性を有する表面がまた、ダニ区画内への水の浸入の危険性を低減するのに有益な効果を有すると期待することは理にかなっている。したがって、水に対して良好な濡れ性を有する他の表面が、濡れた条件下でダニ区画内にダニ集団の増殖に適した条件を維持する機会を増大させると期待できる。
【0098】
現在のダニ分配システムは、直接雨および/または灌漑水に曝露しないよう推奨されていることに留意されたい。したがって、本発明は、直接の雨および/または灌漑水への曝露下で良好な性能を有するダニ放出システムの開発において重要な進歩である。
【0099】
[実験3]
<背景>
この実験は、代わりの水膜維持材料の表面上の外部の水の流れパターンを、実験2で用いた紙を積層したBUI34材料と比較して研究するために行った。研究した材料は最初にその水に対するYour接触角の点で特徴付けた。水流出実験で紙を積層したBUI34材料と同様に機能する材料の水膜維持能力を水膜の維持実験で確かめた。
【0100】
<材料および方法>
包装材料として用いた様々な材料を試験した(表III参照)。親水性コーティングで処理した表面を準備するために、BUI34をCleanTechNoordの親水性のNanoPro Titaniumdioxide(TiO2)コーティングで処理した。これは、Nano-hydrosyntheticプロセスに従って製造された高性能の二酸化チタン光触媒ゾルである。このコーティングを供給業者の指示に従って使用した。
【0101】
<接触角測定>
材料をテープとして、材料が平坦な面を形成し、材料が少し張られるように、堅い板に付けた。これらの板を高いテーブルに載せた。実験2で用いた灌漑水の20μlの滴をP20 Gilsonピペットで材料上に慎重に付けた。各々の滴を、固定したCannon 5Dマーク4カメラおよび100mm F2.8接写レンズで写真に撮った。材料をセ氏20度および77%の相対湿度でプレインキュベートし、試験は同一の条件下で行った。各々の写真で焦点は滴端の左右の側であった。次いで、各々の写真をInkscape 0.91に取り込み、滴の底部が水平面を形成するように回転させた。その後、接触角測定理論に従って滴の底部から接線を引いた。水平面と接線との間の角度を内蔵の測定具で測定した。
【0102】
<水流出>
流出挙動を決定するために実験セットアップを作製した。このセットアップでは、選択した材料を堅い板に固定し、垂直に配置した。ミストスプレーを用いて、小さい水滴を30cmの距離から材料上に噴霧した。垂直に配置した材料の底部から最初の滴が流出するのに必要とされる噴霧滴の数を記録した。単一の噴霧滴は0.175グラムの平均重量を有していた(10の噴霧滴の合わせた重量を平均して決定した:n=11、0.194 std)。使用した水は実験2で用いた灌漑水であった。材料はセ氏20度および77%の相対湿度でプレインキュベートし、試験は同一の条件で行った。
【0103】
<水膜維持>
P2000 Gilsonピペットを用いることにより、1mlの水(実験2で用いた灌漑水)を水が単一の凝集水ビーズを形成するようにしていくつかの材料上に付けた。単一の拭取りで、ガラス掻き混ぜ棒で水塊を引き抜いた。各拭取りは長さが等しかった。拭取りの前後に水塊の写真を撮り、パターンの違いを評価した。
【0104】
<結果>
・接触角
試験した材料の接触角を表IIIに示す。PLAに対する測定値は報告された値に対応する(例えばJorda-Vilaplana et al., European Polymer Journal, Volume 58, September 2014, Pages 23-33参照)。使用した顕微鏡スライドガラスでは使用した試験片に対して決定された接触角値とガラスに対して報告された値との間に食い違いがある。使用した顕微鏡スライド試験片に対してこの試験で決定された値は、他の試験におけるこのガラス試験片の性能を考慮して正確と考えられる。使用した顕微鏡スライドガラスが濡れ性に影響する処理を受けたのかもしれない。
【0105】
【0106】
・水流出
水流出試験の結果を下記の表IVおよび
図10に示す。結果は、水に対して小さい接触角を有する材料が、滴を形成し、材料から流出するのに最小数の噴霧滴を必要としたことを明らかに示している。同一の影響を達成するのに必要とされる噴霧滴の数は接触角と共に増大した。90度より大きい接触角を有する疎水性の材料は最も多くの噴霧滴を必要とした。さらに、乾燥した34g/m
2BUIホイル+40g/m
2クラフト紙は最初の滴が垂直に配置した材料の底部から流出するのに平均して11.2の噴霧滴を必要とした(std.=0.8、n=6.0)ことが留意される。水で飽和した34g/m
2BUIホイル+40g/m
2クラフト紙、顕微鏡スライドガラス、および34g/m
2BUIホイル+TiO2ナノ-コーティングでは、滴の動きが水膜の跡と関連していることが観察された。
【0107】
【0108】
結果は、明らかに、水に対してより大きいヤング接触角を有する表面上にはより多くの水が留まり、水に対してより小さいヤング接触角を有する表面ではより容易に水が流出することを示している。また結果は、34g/m2BUIホイル+TiO2ナノ-コーティングおよび顕微鏡スライドガラスが水の流出の点で34g/m2BUIホイル+40g/m2クラフト紙に同等であることも示している。
【0109】
・水膜
34g/m
2BUIホイルはTiO2ナノ-コーティングを有する34g/m
2BUIホイルより大きい表面角を有する(接触角はそれぞれ75および33.9度)。TiO
2でコートされた34g/m
2BUIホイル上の水のビーズをガラス棒で拭取ったとき、水膜が後に残り、拭取りの経路を示した。コートされてない34g/m
2BUIホイル上では2つの離れた水のビーズが後に残り、拭取りの経路を示す目に見える水膜はなかった。顕微鏡スライドガラス上の滴の結果はTiO
2でコートされたBUIホイルと同等であったが、Ref 1214 Bio 01は未処理のBUIホイルとより良く一致した。また、乾燥した34g/m
2BUIホイル+40g/m
2クラフト紙はガラス棒による水のビーズの崩壊後水膜を維持することができた。写真を
図11A~11Cに示す。特に、TiO
2でコートされたBUIホイルおよび顕微鏡スライドガラスでは明白な水ビーズ/滴が目に見えない。これは、水膜が強く維持されたからである。
【0110】
結果は、水に対して小さいヤング接触角は、ある材料がその表面に水膜維持能力と相互に関連することを明白に裏付けている。試験した材料から、34g/m2BUIホイル+40g/m2クラフト紙、顕微鏡スライドガラスおよびTiO2でコートされたBUIホイルが水膜を維持することができる材料として分類することができる。