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特許7309689香味劣化が抑制されたビールテイスト飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】香味劣化が抑制されたビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/42 20060101AFI20230710BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20230710BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20230710BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20230710BHJP
   C12C 5/02 20060101ALN20230710BHJP
   C12G 3/04 20190101ALN20230710BHJP
【FI】
A23L2/00 N
A23L2/56
A23L2/60
A23L2/68
C12C5/02
C12G3/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020512151
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2018014395
(87)【国際公開番号】W WO2019193675
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠一
(72)【発明者】
【氏名】倉兼 敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和輝
(72)【発明者】
【氏名】水口 伊玖磨
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216892(JP,A)
【文献】国際公開第2015/132974(WO,A1)
【文献】特開2016-049071(JP,A)
【文献】特開2018-000104(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168717(WO,A1)
【文献】特開2014-140355(JP,A)
【文献】特開2012-080846(JP,A)
【文献】特開2015-208253(JP,A)
【文献】特開2016-049070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、C12C、C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸味料と、アスコルビン酸、エリソルビン酸およびカテキンからなる群から選択される一種以上の酸化防止剤とを含み、
pHが2~4であり、
苦味付与剤の含有量が0.10mg/L~50mg/Lであり、
総エキス量が0.11重量%~0.80重量%であり、かつ
甘味料を0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有する、ノンアルコールビールテイスト飲料(但し、ポリフェノールの総含有量が100ppm以上のもの、糖アルコールを含むもの、またはグルコシルヘスペリジンを含むものを除く)。
【請求項2】
前記酸味料が、リン酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸およびコハク酸からなる群から選択される一種以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
前記苦味付与剤が、ホップ由来の成分、ニガヨモギ、ナリンジンおよびクワシンからなる群から選択される一種以上である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
前記ホップ由来の成分が、イソα酸およびα酸からなる群から選択される一種以上の成分である、請求項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
前記甘味料が高甘味度甘味料である、請求項1~のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
前記高甘味度甘味料が、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームおよびステビアからなる群から選択される一種以上である、請求項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
pHが2~3である、請求項1~のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
前記苦味付与剤の含有量が4mg/L~40mg/Lである、請求項1~のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項9】
アルコール度数が0.05%未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料が再栓可能な容器に詰められた、容器詰飲料。
【請求項11】
前記再栓可能な容器が、ビン、ペットボトルまたはボトル缶である、請求項10に記載の容器詰飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味劣化が抑制されたビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールなどのビールテイスト飲料に求められる消費者の要求は多様化している。それに伴い、ビールテイスト飲料の供給方法も多様化している。
従来ビールテイスト飲料は、一般的に缶やビンに密封されて一度に飲みきることを前提として供給されていたが、近年では再栓可能な容器を用いた供給も求められている。しかしながら、このような容器で供給される場合、従来の容器で供給される場合よりも飲用終了まで長い時間がかかる傾向がある。そのため、開栓から飲用終了までの間に酸化やガスロスにより香味劣化がおこる虞がある。具体的には、酸化やガスロスによりビールテイスト飲料がもつ後味のスッキリさやキレ、刺激が損なわれる虞がある。そのような香味劣化を抑える一つの手段として、保存料を含むビールテイスト飲料が検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5249197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビールテイスト飲料の香味劣化を防止する方策としては、保存料の他に酸化防止剤の添加が挙げられるが、酸化防止剤では酸化による香味劣化を十分に抑制することができない可能性がある。さらに、再栓可能容器としてペットボトルへの需要が高まっているが、ペットボトルは開栓時はもちろん経時で容器内への酸素侵入やガスロスがビンよりも多く生じるため、香味が劣化しやすいという課題がある。したがって、ペットボトルのような再栓可能容器での使用にも耐えられるように、ビールテイスト飲料として優れた香味を有し、かつ、酸化および/またはガスロスによる香味劣化が抑制されたビールテイスト飲料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、本発明者らが鋭意検討した結果、酸味料を含み、かつpHを所定の範囲内とし、さらに苦味付与剤と甘味料の濃度を所定の濃度範囲とすることで、ビールテイスト飲料として優れた香味を有し、かつ、酸化および/またはガスロスによる香味劣化が抑制されたビールテイスト飲料を得ることができるとの知見を得た。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
本発明には以下の態様の発明が含まれる。
[1]
酸味料を含み、
pHが2~4であり、
苦味付与剤の含有量が0.10mg/L~50mg/Lであり、かつ
甘味料を0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有する、ビールテイスト飲料。
[2]
前記酸味料が、リン酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸およびコハク酸からなる群から選択される一種以上である、[1]に記載のビールテイスト飲料。
[3]
前記苦味付与剤が、ホップ由来の成分、ニガヨモギ、ナリンジンおよびクワシンからなる群から選択される一種以上である、[1]または[2]に記載のビールテイスト飲料。
[4]
前記ホップ由来の成分が、イソα酸およびα酸からなる群から選択される一種以上の成分である、[3]に記載のビールテイスト飲料。
[5]
前記甘味料が高甘味度甘味料である、[1]~[4]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[6]
前記高甘味度甘味料が、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームおよびステビアからなる群から選択される一種以上である、[5]に記載のビールテイスト飲料。
[7]
pHが2~3である、[1]~[6]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[8]
前記苦味付与剤の含有量が4mg/L~40mg/Lである、[1]~[7]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[9]
アルコール度数が0.05~40%である、[1]~[8]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[10]
アルコール度数が0.05%未満である、[1]~[8]のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載のビールテイスト飲料が再栓可能な容器に詰められた、容器詰飲料。
[12]
前記再栓可能な容器が、ビン、ペットボトルまたはボトル缶である、[11]に記載の容器詰飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、酸味料を含み、かつpHを所定の範囲内とし、さらに苦味付与剤と甘味料の濃度を所定の濃度範囲とすることで、ビールテイスト飲料として優れた香味を有し、かつ、酸化および/またはガスロスによる香味劣化が抑制されたビールテイスト飲料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1 ビールテイスト飲料
本発明のビールテイスト飲料は、酸味料を含み、pHが2~4であり、苦味付与剤の含有量が0.10mg/L~50mg/Lであり、かつ甘味料を0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有する、ビールテイスト飲料である。
【0009】
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつアルコール含有またはノンアルコールの炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、酵母による発酵工程の有無に拘わらず、ビール風味を有するいずれの炭酸飲料をも包含する。本発明のビールテイスト飲料の種類としては、例えば、アルコール含有のビールテイスト飲料(アルコール度数が0.05~40%のビールテイスト飲料)、ノンアルコールのビールテイスト飲料(アルコール度数が0.05%未満のビールテイスト飲料)、ビールテイストの清涼飲料なども含まれる。
【0010】
本発明のビールテイスト飲料は酸味料を含み、pHが2~4である。酸味料の含有量はpHがこの範囲内であれば特に限定されない。pHは、好ましくは2~3である。pHを上記範囲内とすることで後味のスッキリさやキレ、刺激を担保しつつ飲料としての酸っぱさを抑えることができる。
【0011】
本発明のビールテイスト飲料は、苦味付与剤の含有量が0.10mg/L~50mg/Lであり、好ましくは1mg/L~45mg/Lであり、より好ましくは4mg/L~40mg/Lである。上記範囲内であれば、後味のスッキリさやキレ、刺激を担保しつつ、苦味の浮きを抑えることができる。
【0012】
本発明のビールテイスト飲料は、甘味料を0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有し、好ましくは、0.01重量%~0.48重量%、より好ましくは0.02重量%~0.43重量%、さらに好ましくは0.04重量%~0.38重量%のショ糖換算濃度で含有する。上記範囲内であれば、甘さを抑えつつ、飲料にコクを与えることができる。本明細書において、「ショ糖換算濃度」とは、飲料中の甘味料による甘味をショ糖濃度で換算した値であり、ショ糖の甘味1に対する各甘味料の甘味の相対比に基づいて、ショ糖の相当量に換算し、次いで当該飲料に含まれる全ての甘味料のショ糖甘味換算量を総計することによって求めることができる。なお、ショ糖の甘味1に対する各種甘味料の甘味の相対比は、公知の砂糖甘味換算表(例えば、ビバレッジジャパン社「飲料用語辞典」資料11頁)等から求めることができる。
【0013】
例えば、アセスルファムカリウムの甘味度は約200であり、スクラロースの甘味度は約600であり、ステビア(抽出物)の甘味度は約150~200倍であり、アスパルテームの甘味度は約180倍である。したがって、アセスルファムカリウムを0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有する場合、その濃度は、0.50ppm以上25ppm未満である。スクラロースを0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有する場合、その濃度は、0.17ppm以上8.3ppm未満である。ステビア(抽出物)を0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有する場合、その濃度は、0.50ppm以上33ppm未満である。アスパルテームを0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有する場合、その濃度は、0.56ppm以上28ppm未満である。本発明のビールテイスト飲料は、複数種の甘味料を合計で0.01重量%以上0.50重量%未満のショ糖換算濃度で含有していてもよい。
【0014】
本発明のビールテイスト飲料は、ビールや発泡酒のようなアルコール度数が0.05~40(v/v)%のビールテイスト飲料であってもよく、ノンアルコールビールのようなアルコール度数(含有量)が0.05(v/v)%未満のビールテイスト飲料であってもよい。本発明のビールテイスト飲料がアルコールを含む場合は、アルコール度数が0.5~20(v/v)%であることが好ましく、1.0~10(v/v)%であることがさらに好ましい。本発明のビールテイスト飲料がアルコールを含まない場合は、アルコール度数が0.05(v/v)%未満であり、さらに0.00(v/v)%であることが好ましい。なお本明細書において、アルコール度数は体積/体積基準の百分率(v/v%)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。
【0015】
本発明のビールテイスト飲料の色は、特に限定されないが、通常のビールのような琥珀色であってもよく、無色透明であってもよい。あるいは着色料などを添加して、所望の色を付けてもよい。ビールテイスト飲料の色は、肉眼でも判別することができるが、全光線透過率や色度等によって規定してもよい。
【0016】
本発明のビールテイスト飲料の総エキス量は特に限定されないが、ノンアルコールビールテイスト飲料の場合は、好ましくは1.50重量%以下、より好ましくは1.10重量%以下、さらに好ましくは0.80重量%以下である。アルコールを含むビールテイスト飲料の場合は、好ましくは11重量%以下、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは6重量%以下である。総エキス量を上記範囲内とすることで軽快な飲み口を付与することができる。本明細書における「総エキス量」は、飲料のアルコール度数が0.005%以上の場合、日本の酒税法におけるエキス分、すなわち、温度15度の時において原容量100立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいい、アルコール度数が0.005%未満の飲料においては、脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める「ビール分析法 7.2 エキス」に従い測定したエキス値(重量%)をいう。
【0017】
本発明のビールテイスト飲料は、酸化および/またはガスロスによる香味劣化が抑制されている。酸化および/またはガスロスによる香味劣化が抑制はペットボトル容器に中味を充填したサンプルを高温で所定期間静置する前後での香味変化を測定することで評価することができる。例えば、ビールテイスト飲料をペットボトル充填して45℃で3日間静置し、その前後での香味の変化を測定することで酸化および/またはガスロスによる香味劣化の程度を評価することができる。45℃、3日間の条件は常温1か月相当の劣化に該当する。温度が高いほど酸化やガスロスによる劣化は早まる。
【0018】
本発明のビールテイスト飲料は、容器詰の態様に適している。容器の例としては、ビン、ペットボトル、缶(ボトル缶)、または樽が挙げられるが、特に再栓可能な容器、例えば、ビン、ボトル缶およびペットボトルでの使用に適している。再栓可能な容器に充填する場合、従来の容器で供給される場合よりも飲用終了まで長い時間がかかる傾向がある。そのため、開栓から飲用終了までの間に酸化やガスロスにより香味劣化がおこる虞があるが、本発明のビールテイスト飲料は酸化および/またはガスロスによる香味劣化が抑制されているため、このような香味劣化を効果的に抑制することができる。したがって、本発明のビールテイスト飲料はビン、ペットボトルまたはボトル缶などの再栓可能な容器に好適に使用することができる。
【0019】
本発明のビールテイスト飲料に含まれる、酸味料、苦味付与剤および甘味料、並びに任意の添加原料については、「1.1原材料」において詳述する。
【0020】
1.1 原材料
本発明のビールテイスト飲料の原材料としては酸味料、苦味付与剤および甘味料が用いられる。その他に一般的なビールテイスト飲料の原材料として用いられる、水、香料、アルコール、酸化防止剤、穀物、食物繊維および各種添加物等を用いてもよい。
【0021】
酸味料としては、ビールテイスト飲料に通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、リン酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸およびコハク酸から選択される一種以上を用いることができる。
【0022】
苦味付与剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒の原料として用いられる苦味付与剤を用いることができる。例えば、ホップ由来の成分、クワシン、ナリンジン、ニガヨモギ(あるいはニガヨモギ抽出物やニガヨモギ香料)、柑橘抽出物、ニガキ抽出物、コーヒー抽出物、茶抽出物、ゴーヤ抽出物、ハス胚芽抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、レイシ抽出物、ローレル抽出物、セージ抽出物、キャラウェイ抽出物、イソフムロン類および還元型イソフムロン類等が挙げられる。好ましくは、苦味付与剤としてホップ由来の成分、ニガヨモギ、ナリンジンおよびクワシンからなる群から選択される一種以上を含有する。ホップとは、ビールなどの製造に使用される通常のペレットホップ、ベールホップ、ホップエキス、ホップ加工品(イソ化ホップ、ヘキサホップ、テトラホップ)などをいう。ホップ由来の成分としては、イソα酸およびα酸からなる群から選択される一種以上を含むことが好ましく、イソα酸を含むことがより好ましい。
【0023】
甘味料としては、特に限定されず、天然甘味料や人工甘味料であってもよい。天然甘味料としては、スクロース、オリゴ糖、ブドウ糖、麦芽糖、ステビア(抽出物)、レバウディオシドA,レバウディオシドD、レバウディオシドM、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、ソーマチン等が挙げられ、人工甘味料としてはアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。天然甘味料や人工甘味料の中でも、ショ糖に対して甘味度の高い高甘味度甘味料が好ましく、例えば、ステビア(抽出物)、レバウディオシドA,レバウディオシドD、レバウディオシドM、アスパルテーム、アセスルファムカリウムおよびスクラロースから選択される一種以上が好ましい。
【0024】
香料としては、特に限定されず、一般的なビール香料を用いることができる。ビール香料は、ビール様の風味付けのために用いるものであり、発酵により発生する醸造成分等が含まれる。具体的にはビール香料にはエステルや高級アルコールなどが含まれる。そのようなエステルや高級アルコールとしては、酢酸イソアミル、酸酸エチル、n-プロパノール、イソブタノールおよびアセトアルデヒドなどから選択される1種以上の成分が含まれる。
【0025】
アルコールとしては、一般的なエタノール(エチルアルコール)を用いることができる。エタノールとしては、種々の原料を用いて製造したものを使用することができる。例えば、スピリッツ、ウイスキー、焼酎などの蒸留酒や、日本酒などの醸造酒を用いてもよい。
【0026】
穀物としては、例えば、麦、米(白米、玄米など)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんどう豆など)、そば、ソルガム、粟、ひえおよびこれらの抽出物(エキス)などがあげられる。
【0027】
麦としては、麦芽、ならびに、未発芽の大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦およびエン麦から選択される一種以上を使用することができる。また、食物繊維としては、水溶性食物繊維および不溶性食物繊維が挙げられる。水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジンおよびカラギーナンが挙げられる。
【0028】
酸化防止剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒の添加する酸化防止剤を用いることができる。例えばアスコルビン酸、エリソルビン酸およびカテキンから選択される一種以上を用いることができる。
【0029】
1.2 炭酸ガス
本発明のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスは、原材料に含まれる炭酸ガスを利用してもよく、また、炭酸水との混和または炭酸ガスの添加などで溶解させてもよい。
本発明のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスは、原材料に発酵液を用いた場合、発酵工程で炭酸ガスが発生するため、当該炭酸ガスをそのまま用いることができる。また、原材料に非発酵液を用いた場合、発酵工程で発生する炭酸ガスを利用できないため、非発酵液と炭酸水との混和、または非発酵液に炭酸ガスの添加によって、容器詰ノンアルコールビールテイスト飲料に炭酸ガスを溶解させることができる。
【0030】
本発明のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスの量は、飲料の炭酸ガス圧によって表され、これは、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されない。典型的には、飲料の炭酸ガス圧の上限は4.0kg/cm、3.4kg/cmまたは2.8kg/cmであり、下限は0.2kg/cm、0.9kg/cmまたは1.5kg/cmであり、これらの上限および下限のいずれを組み合わせてもよい。例えば、飲料の炭酸ガス圧は、0.2kg/cm以上4.0kg/cm以下、0.2kg/cm以上3.4kg/cm以下、0.9kg/cm以上2.8kg/cm以下または1.5kg/cm以上2.8kg/cm以下であってよい。本明細書におけるガス圧とは、特別な場合を除き、容器内におけるガス圧をいう。圧力の測定は、当業者によく知られた方法、例えば20℃にした試料をガス内圧計に固定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達したときの値を読み取る方法を用いて、または市販のガス圧測定装置を用いて測定することができる。
【0031】
1.3 その他の添加物
本発明では、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、様々な添加物を添加してもよい。例えば、保存料、着色料、泡形成剤、発酵促進剤、酵母エキス、ペプチド含有物などのタンパク質系物質、アミノ酸などの調味料、各種酸味料などを本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて添加することができる。着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素などを用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパクおよびペプチド含有物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質系物質、酵母エキスなどを適宜使用することができる。発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、例えば、酵母エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて使用することができる。
【0032】
1.4 容器詰飲料
本発明のビールテイスト飲料は、容器に詰められた容器詰飲料であってもよい。容器詰飲料にはいずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、ビン、ペットボトル、缶(ボトル缶)、または樽が挙げられるが、特に再栓可能な容器、例えば、ビン、ボトル缶およびペットボトルが好ましい。また、本発明のビールテイスト飲料は酸化および/またはガスロスによる香味劣化が抑制されているため、再栓可能な容器に好適に使用することができる。
【0033】
2 ビールテイスト飲料の製造方法
ビールテイスト飲料の製造工程として、以下にビールテイスト飲料の製造方法と容器詰め方法について説明する。
【0034】
2.1 ビールテイスト飲料の製造方法
ビールテイスト飲料の製造方法は、発酵を行う場合と発酵を行わない場合とに分けて以下に説明する。
【0035】
(1) 発酵を行う場合の製造工程
本発明のビールテイスト飲料の製造方法に用いられるビールテイスト飲料は、例えば、仕込み工程、発酵工程、貯酒工程およびろ過工程などの当業者に周知のビールテイスト飲料の製造工程によって得られる。
具体的には、原料を仕込釜または仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行わせ、ろ過して煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパクなどの固形分を取り除く。その後、さらに酵母を添加して発酵させ、ろ過機などで酵母を取り除き、必要に応じて水や香料、色素などの添加剤を加え、ビールテイスト飲料を得る。甘味料、苦味付与剤、香料、酸味料、色素などは、発酵工程後において所定量添加してもよいが、糊化・糖化工程を含む製造工程中の任意のタイミングで添加してもよく、添加タイミングは限定されない。
【0036】
発酵工程は、麦、麦芽、麦芽エキス、大豆ペプチドなどと水を含む原液に酵母を添加し、発酵を行う工程であればよく、発酵温度、および発酵期間などの諸条件は、自由に設定することができる。原液に用いられるのは麦汁に限られず、発酵に必要な栄養源をその他の穀物(大豆、コーン、えんどうなど)やアミノ酸、ペプチド、糖液などで供給してもよい。ビールテイスト発酵飲料を製造する場合、通常のビールや発泡酒の製造のための発酵条件である、8~25℃、5~10日間、の条件で発酵させてもよい。発酵期間は最大で14日間である。発酵工程の途中で発酵液の温度(昇温、または降温)または圧力を変化させてもよい。
【0037】
発酵工程で用いる酵母は、製造すべき発酵飲料の種類、目的とする香味や発酵条件などを考慮して選択することができる。例えばWeihenstephan-34株など、市販の酵母を用いることができる。酵母は、酵母懸濁液のまま原液に添加しても良いし、遠心分離あるいは沈降により酵母を濃縮したスラリーを原液に添加しても良い。また、遠心分離の後、完全に上澄みを取り除いたものを添加しても良い。酵母の原液への添加量は適宜設定できるが、例えば、5×106cells/ml~1×108cells/ml程度である。
【0038】
(2) 発酵を行わない場合の製造工程
本発明のビールテイスト飲料の製造方法に用いられるビールテイスト飲料の製造工程は、発酵工程を含まず、麦、麦芽、麦芽エキス、大豆ペプチドなどと水を含む原液に、炭酸水または炭酸ガスを混和する混和工程によって得られる。その際、必要に応じてアルコール、香料、色素などの添加剤を加えてもよい。原液に用いられるのは麦汁に限られず、発酵に必要な栄養源をその他の穀物(大豆、コーン、えんどうなど)やアミノ酸、ペプチド、糖液などで供給してもよい。非発酵液は混和工程の他に、さらに、仕込み工程、糖化工程および貯酒工程などの当業者に周知のビールテイスト飲料の製造工程を含んでもよい。甘味料、苦味付与剤、香料、酸味料、色素などは、混和工程において所定量添加してもよいが、混和工程以外の他の任意の工程において添加してもよく、添加タイミングは限定されない。
【0039】
2.2 ビールテイスト飲料の容器詰め方法
本発明のビールテイスト飲料の容器詰め方法は特に限定されず、当業者に周知の容器詰め方法を用いることができる。容器詰め工程によって、本発明のビールテイスト飲料は容器に充填・密閉される。容器詰め工程には、いずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、「1.4 容器詰飲料」に記載の容器が挙げられる。
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【実施例
【0041】
[実施例A]pHおよび酸味料の違いによる効果の検討
各原料を後述の表1、2に記載の組成となるように水に添加し、炭酸ガスを添加し、ペットボトル容器に充填することで、実施例1~18のビールテイスト飲料を調製した。各ビールテイスト飲料のpH値はアスコルビン酸と酸味料の添加量によって調節した。イソα酸としてはISOHOP(Barth-Haas社製)を、アスコルビン酸としてはアスコルビン酸(DSM社製)を、ビール香料としてはビールの醸造成分が含まれているものを、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)としてはサネット(Celanese社製)をそれぞれ用いた。また、酸味料として、リン酸(日本化学工業製)、クエン酸(扶桑化学工業製)、グルコン酸(扶桑化学工業製)、酒石酸(扶桑化学工業製)、乳酸(扶桑化学工業製)、リンゴ酸(扶桑化学工業製)、フィチン酸(築野食品工業製)、酢酸(日本合成化学製)またはコハク酸(扶桑化学工業製)を使用した。
このようにして得られたビールテイスト飲料の酸化・ガスロス処理前後の香味を確認し、酸化・ガスロスに対する安定性を評価した。各工程の詳細は下記のとおりである。
【0042】
(酸化・ガスロス処理)
ビールテイスト飲料の酸化・ガスロスによる香味劣化を評価するために、ペットボトル容器に充填されたサンプルを、45℃で3日間静置し、その前後での香味の変化を測定した。
【0043】
(香味の評価)
本明細書において、ビールテイスト飲料の香味を、評点法による官能試験によって評価した。良く訓練された官能評価者6名が、パネラーとなって評価を行い、下記の基準に基づいて数値で評価した。いずれの評価も点数が高いほど良い評価である。

(酸化・ガスロス処理前の香味)
ビールテイスト飲料としての味質を以下の基準で評価した。評点1はビールテイスト飲料として不合格である。
1:不可
2:良
3:優

(酸化・ガスロス処理後の香味)
ビールテイスト飲料としての味質を以下の基準で評価した。評点1はビールテイスト飲料として不合格である。
1:(劣化が酷く)不可
2:(劣化が抑えられており)良
3:(劣化が抑えられており)優
【0044】
香味の評価は、酸化・ガスロス処理の前と後にそれぞれ行い、それぞれの段階での香味の評価値を記録した。それぞれの段階での香味の評価値の平均点を算出し、酸化・ガスロス処理の前と後の両方で香味の評価値の平均点が2以上のものを合格とした。結果を表1、2に示す。
【表1】
【表2】
【0045】
上記の結果から、苦味付与剤(イソα酸)の含有量を10mg/L、甘味料(アセスルファムK)の含有量をショ糖換算濃度で0.38重量%(w/w%)に固定したビールテイスト飲料において、種々の酸味料の含有量を調整してpHを2~3の範囲内に調整することで、酸化・ガスロス処理による香味の劣化を抑制することができることが分かった。具体的には、実施例1~18は十分な香味を有しており、酸化・ガスロス処理による香味の劣化が少なかった。
【0046】
[実施例B]pH(リン酸での調整)および苦味付与剤濃度の違いによる効果の検討
リン酸でpHを調整した場合の苦味付与剤濃度の違いによる効果を検討した。
実施例Aと同様に表3、4に記載の組成となるように各原料を水に添加し、炭酸ガスを添加し、ペットボトル容器に充填することで、実施例19~22および比較例1~4のビールテイスト飲料を調製し、実施例Aと同様に酸化・ガスロス処理および評価を行った。結果を表3、4に示す。
【表3】
【表4】
【0047】
上記の結果から、甘味料(アセスルファムK)の含有量をショ糖換算濃度で0.38重量%(w/w%)に固定したビールテイスト飲料において、酸味料としてリン酸の含有量を調整してpHを2~3の範囲内に調整し、苦味付与剤(イソα酸)の含有量を所定の範囲内とすることで、酸化・ガスロス処理による香味の劣化を抑制することができることが分かった。具体的には、実施例1、10および19~22は、苦味付与剤(イソα酸)の含有量が所定の範囲外である比較例1~4に対して、十分な香味を有しており、酸化・ガスロス処理による香味の劣化が少なかった。
【0048】
[実施例C]酸味料および苦味付与剤濃度の違いによる効果の検討
酸味料としてクエン酸または乳酸を使用した場合の苦味付与剤濃度の違いによる効果を検討した。
実施例Aと同様に表5に記載の組成となるように各原料を水に添加し、炭酸ガスを添加し、ペットボトル容器に充填することで、実施例23~26のビールテイスト飲料を調製し、実施例Aと同様に酸化・ガスロス処理および評価を行った。結果を表5に示す。
【表5】
【0049】
上記の結果から、甘味料(アセスルファムK)の含有量をショ糖換算濃度で0.38重量%(w/w%)に固定したビールテイスト飲料において、酸味料としてクエン酸または乳酸の含有量を調整してpHを3に調整し、苦味付与剤(イソα酸)の含有量を所定の範囲内とすることで、酸化・ガスロス処理による香味の劣化を抑制することができることが分かった。具体的には、実施例2、5および23~26は、十分な香味を有しており、酸化・ガスロス処理による香味の劣化が少なかった。
【0050】
[実施例D]複数種の酸味料の使用による効果の検討
複数種の酸味料を使用した場合の効果を検討した。
実施例Aと同様に表6に記載の組成となるように各原料を水に添加し、炭酸ガスを添加し、ペットボトル容器に充填することで、実施例27~30のビールテイスト飲料を調製し、実施例Aと同様に酸化・ガスロス処理および評価を行った。結果を表6に示す。
【表6】
【0051】
上記の結果から、甘味料(アセスルファムK)の含有量をショ糖換算濃度で0.38重量%(w/w%)に固定したビールテイスト飲料において、酸味料として複数の酸味料の含有量を調整してpHを3に調整し、苦味付与剤(イソα酸)の含有量を所定の範囲内とすることで、酸化・ガスロス処理による香味の劣化を抑制することができることが分かった。具体的には、実施例27~30は、十分な香味を有しており、酸化・ガスロス処理による香味の劣化が少なかった。
【0052】
[実施例E]アルコールの有無による効果の検討
アルコールの有無による効果を検討した。
実施例Aと同様に表7に記載の組成となるように各原料を水に添加し、炭酸ガスを添加し、ペットボトル容器に充填することで、実施例31~33のビールテイスト飲料を調製し、実施例Aと同様に酸化・ガスロス処理および評価を行った。アルコール濃度は小麦スピリッツを添加して調節した。結果を表7に示す。
【表7】
【0053】
上記の結果から、甘味料(アセスルファムK)の含有量、酸味料、pHおよび苦味付与剤(イソα酸)の含有量を所定の範囲内とすることで、アルコール添加の有無に係わらず、十分な香味を有しており、酸化・ガスロス処理による香味の劣化が少なかった。
【0054】
[実施例F]苦味付与剤の違いによる効果の検討
苦味付与剤の違いによる効果を検討した。
実施例Aと同様に表8に記載の組成となるように各原料を水に添加し、炭酸ガスを添加し、ペットボトル容器に充填することで、実施例34のビールテイスト飲料を調製し、実施例Aと同様に酸化・ガスロス処理および評価を行った。実施例1と比較すると、実施例34では苦味付与剤として10mg/Lのイソα酸の代わりに250mg/Lのニガヨモギ香料(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加した。結果を表8に示す。
【表8】
【0055】
上記の結果から、甘味料(アセスルファムK)の含有量、酸味料、pHおよび苦味付与剤(イソα酸)の含有量を所定の範囲内とすることで、苦味付与剤の種類に係わらず、十分な香味を有しており、酸化・ガスロス処理による香味の劣化が少なかった。
【0056】
[実施例G]甘味料の含有量の違いによる効果の検討
甘味料の含有量の違いによる効果を検討した。
実施例Aと同様に表9に記載の組成となるように各原料を水に添加し、炭酸ガスを添加し、ペットボトル容器に充填することで、実施例35、36および比較例5、6のビールテイスト飲料を調製し、実施例Aと同様に酸化・ガスロス処理および評価を行った。結果を表9に示す。
【表9】
【0057】
上記の結果から、苦味付与剤(イソα酸)とpHを固定したビールテイスト飲料において、甘味料(アセスルファムK)の含有量を所定の範囲内とすることで、酸化・ガスロス処理による香味の劣化を抑制することができることが分かった。具体的には、比較例5、6に対して、実施例35、36は、十分な香味を有しており、酸化・ガスロス処理による香味の劣化が少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ビールテイスト飲料として優れた香味を有し、かつ、酸化および/またはガスロスによる香味劣化が抑制されたビールテイスト飲料を提供できる。