(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】相互侵入ポリマー網目を備えた熱可塑性ポリマーフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230710BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230710BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230710BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230710BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230710BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20230710BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B27/18 Z
B32B27/30 A
B32B27/36 102
B32B27/40
C08F2/44 C
C08F283/00
(21)【出願番号】P 2020526919
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2018081651
(87)【国際公開番号】W WO2019097031
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-08
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521518057
【氏名又は名称】エスヴェーエム ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】コレット デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート レイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】ガリカ ジェイムズ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510650(JP,A)
【文献】特表2016-512273(JP,A)
【文献】特表2011-527377(JP,A)
【文献】特表2001-520127(JP,A)
【文献】特表2011-512271(JP,A)
【文献】特表2001-527222(JP,A)
【文献】国際公開第2010/017282(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08F 2/00-2/60、251/00-283/00、
283/02-289/00、291/00-297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の層:
第1の層および第2の層
を備える多層フィルムであって;
前記第1の層が相互侵入網目を備え、
この相互侵入網目が第1の熱可塑性ポリマーと架橋成分とを含み、この第1の熱可塑性ポリマーがポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
この架橋成分が
、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、およびジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、および三官能性メタクリレートからなる群から選ばれ、
第2の層が第2の熱可塑性ポリマーの1つ以上の層を備え、この第2の熱可塑性ポリマーがポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、前記多層フィルム。
【請求項2】
光開始剤をさらに含む、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記光開始剤が、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、オキシ-フェニル-酢酸2-[2オキソ-2フェニル]-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルおよびオキシ-フェニル-酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル
2-[2-(2-オキソ-2-フェニルアセチル)オキシエトキシ]エチル 2-オキソ-2-フェニルアセテートの混合物、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)
ホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、ベンゾイルギ酸メチル、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-l-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-エタノン、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート
、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィネート、2ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニルホスフィネートおよびオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]の混合物)、
オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパ
ノンのブレンド))、ピパラジノベースのアミノアルキルフェノンとPPTTAのブレンド
、ポリエチレングリコールジ(ベータ-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン)プロピオネート、(2,3-ジヒドロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデン;2,3-ジヒドロ-5-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデンおよび2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン
、70%のオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]と30%の2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物、(カルボキシメトキシ-ベンゾフェノンとポリテトラメチレングリコール250のジエステル)、ならびに(1-プロパノン、1,1'-(オキシジ-4,1-フェニレン)ビス[2-ヒドロキシ-2-メチル-および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項
2記載の多層フィルム。
【請求項4】
熱安定剤をさらに含む、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記第1の層の厚さが0.2ミル(5.08マイクロメートル)~3ミル(76.2マイクロメートル)であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記第2の層の厚さが3ミル(76.2マイクロメートル)~8ミル(203.2マイクロメートル)であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記第1の層が、65質量%~75質量%の前記第1の熱可塑性ポリマーと20質量%~30質量%の前記架橋成分とを含むことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか1項記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記第1の熱可塑性ポリマーが72質量%であり、前記架橋成分が第1の層の24質量%であることを特徴とする、請求項
7記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記第1の層が、90%よりも高い光透過率のSharpie(登録商標)汚れ除去値を示すことを特徴とする、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記第1の層が、4.5~22デルタYIの間のタール汚れ除去を示すことを特徴とする、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記第1の層が、85光沢単位よりも高い耐引掻性を示すことを特徴とする、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記第1の層が、90光沢単位よりも高い光沢を有することを特徴とする、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記第1の層が、前記第2の層の一方の主表面に結合されることを特徴とする、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記第2の層の反対側の主表面に結合された感圧接着剤(PSA)層をさらに含み、この第2の層が前記第1の層と前記PSA層との間に配置される、請求項
13記載の多層フィルム。
【請求項15】
第1の層と第2の層とを備える多層フィルムであって、
前記第1の層が相互侵入網目を備え、
この相互侵入網目が第1の熱可塑性ポリマーと架橋成分とを含み、
前記架橋成分が、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、およびジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、および三官能性メタクリレートからなる群から選ばれ、この第1の熱可塑性ポリマーが、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、この第1の層のフィルムのSharpie(登録商標)除去値が90%光透過率よりも高く、タール汚れ除去が4.5デルタYIと22デルタYIの間であり、耐引掻性が85光沢単位よりも高く、且つ光沢が90光沢単位よりも高く、
第2の層が第2の熱可塑性ポリマーの1つ以上の層を備え、この第2の熱可塑性ポリマーがポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、前記多層フィルム。
【請求項16】
多層フィルムを製造する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする前記方法:
(a)第1の熱可塑性ポリマーをモノマーと混ぜ合せて相互侵入網目前駆体を形成する工程であって、この第1の熱可塑性ポリマーがポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、このモノマーが
、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、およびジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、および三官能性メタクリレートからなる群から選ばれる、前記工程、
(b)前記相互侵入網目前駆体を第2の熱可塑性ポリマーと共押出して多層フィルムを形成する工程であって、この第2の熱可塑性ポリマーがポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、前記工程;および
(c)前記相互侵入網目前駆体を硬化させて相互侵入網目を形成する工程であって、前記多層フィルムが相互侵入網目層と第2の熱可塑性ポリマー
の1つ以上の層とを含む、前記工程。
【請求項17】
多層フィルムを製造する方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする前記方法:
(a)第1の熱可塑性ポリマーをモノマーと混ぜ合せて相互侵入網目前駆体を形成する工程であって、この第1の熱可塑性ポリマーがポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、このモノマーが
、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、およびジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、および三官能性メタクリレートからなる群から選ばれる、前記工程、
(b)前記相互侵入網目前駆体を押出す工程、
(c)第2の熱可塑性ポリマーを押出す工程であって、この第2の熱可塑性ポリマーがポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、前記工程、
(d)前記相互侵入網目前駆体を第2の熱可塑性ポリマー上に堆積させる工程、および
(e)前記相互侵入網目前駆体を硬化させる工程。
【請求項18】
前記多層フィルムのSharpie(登録商標)汚れ除去値が90%よりも高く、タール汚れ除去が4.5~22デルタYIの間であり、耐引掻性が85光沢単位よりも高く、且つ光沢が90光沢単位よりも高いことを特徴とする、請求項
17記載の方法。
【請求項19】
前記第1の熱可塑性ポリマーと前記モノマーに光開始剤を添加する工程をさらに含む、請求項
17または請求項
18記載の方法。
【請求項20】
前記第1の熱可塑性ポリマーと前記モノマーに添加剤または安定剤を添加する工程をさらに含む、請求項
17~
19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記フィルムが電子ビーム、紫外線、
放射線、または熱により硬化されることを特徴とする、請求項
17記載の方法。
【請求項22】
前記モノマーを前記第1の熱可塑性
ポリマーと混合、配合または吸収により混ぜ合せることを特徴とする、請求項
17に記載の方法。
【請求項23】
前記相互侵入網目
前駆体の厚さが0.2ミル(5.08マイクロメートル)~3ミル(76.2マイクロメートル)であることを特徴とする、請求項
17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月16日に出願された米国仮出願第62/587,426号の利益を主張し、その全内容は本明細書に援用されている。
【0002】
技術分野
本開示内容は、多層保護ポリマーフィルムに関し、より詳細には、天候、溶剤、がれき、および/または汚れのような悪環境条件または要素に曝される表面を保護するための多層ポリマーフィルムに関する。さらに詳細には、本開示内容は、相互侵入ポリマー網目層を備える多層ポリマーフィルム、およびそのフィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ポリウレタンフィルムなどの保護ポリマーフィルムは、熱、太陽、湿気、風、がれき、汚れ、または例えば、雨、あられ、雪、みぞれなどの悪天候に起因するもの、および溶剤などの過酷なまたは腐食性の化学物質などの極端な環境条件または要素に曝される可能性があるむきだしのまたは塗装された金属、ガラスまたはプラスチック表面に強力で耐久性のあるシールドを設けるために使用される。これらの保護ポリウレタンフィルムは、摩耗、欠け、劣化または変色、およびこれらの状況下での表面の摩耗による損傷を防ぐのに有用である。そのようなフィルムは、例えば、自動車、トラック、電化製品、モバイルデバイス、コンピュータ、電子ディスプレイ画面などを保護するために使用されてもよい。これらの保護ポリウレタンフィルムは、熱硬化性でも熱可塑性でもよい。
熱硬化性ポリウレタンは、典型的には、熱可塑性ポリウレタンと比較して、より優れた耐摩耗性、耐熱性、および硬度を示す。熱硬化性ポリウレタンは、一般に、架橋ポリマー鎖の網目を含むので、熱硬化性ポリウレタンは、典型的には、高価なキャスティングプロセスを使用して形成される。対照的に、熱可塑性ポリウレタンは高温で流動することができる。熱可塑性ポリウレタンの流動性により、例えば、射出成形や押出しのようなより安価な技術による製造が可能になる。
【0004】
相互侵入ポリマー網目(IPN)は、互いの存在下で重合および/または架橋された2種以上のポリマーの組合せである。米国特許第8,168,260号に記載されている架橋熱可塑性ポリウレタンを製造するための1つの方法は、ポリマーと、熱可塑性ポリウレタン(TPU)の末端官能性ラジカル重合性基がそのTPUの両端に有するものとを架橋すると化学結合を形成することを含む。これらの相互侵入ポリマー網目またはIPNは、ポリマーアロイに類似していると見なすことができ、様々なポリマーの組合せがそのアロイを形成する個々のポリマーに由来する、しばしば特にそれに起因する特定の有利な利点をその複合体がまとめてもたらすことができる。これらの属性の例には、例えば、透明度または硬度も含まれ得る。
多層保護フィルムの層は、異なる特性を付与し、異なる利点を与えることができる。例えば、ある層は防汚染性を付与し、別の層はチップ抵抗を付与する場合がある。したがって、IPN層と、例えば防汚染性および耐引掻性ならびに高光沢の異なる利点を与えるポリマー層とを備える多層保護ポリマーフィルムを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
簡単な概要
本開示内容は、一般に、相互侵入ポリマー網目(IPN)層と、有害な環境条件または要素から表面を保護するのに有用な有益な特性を有するポリマー層とを有する多層フィルムを備える熱可塑性ポリマーフィルムに関する。
1つの実施態様によれば、上記多層保護フィルムは、相互侵入網目を備える第1の層と、熱可塑性ポリマーの1つ以上の層を備える第2の層とを備えることができる。この相互侵入網目は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる熱可塑性ポリマーと、アクリレート、メタクリレート、およびアリルイソシアヌレートからなる群から選ばれる架橋成分とを含むことができる。この第2の層は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる熱可塑性ポリマーを含むことができる。
1つの例示的な実施態様において、その熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族ポリカプロラクトンベースの熱可塑性ポリウレタンであってもよい。
特定の実施態様において、その相互侵入網目層は、イソプロパノールワイプによる乾燥したSharpie(登録商標)インクの除去を有し、約90%よりも高い光透過率の値を得ることができる。いくつかの実施態様においては、この相互侵入網目層は、約4.5~約22デルタYI(黄色度指数の変化)の間のタール汚れ除去を有することができる。いくつかの実施態様においては、この相互侵入網目層は、約85光沢単位よりも高い耐引掻性を有することができる。いくつかの実施態様においては、この相互侵入網目層は、約90光沢単位よりも高い光沢を有することができる。
【0006】
本開示内容は、また、相互侵入網目層と熱可塑性ポリマー層を備える多層フィルムを製造する方法であって、最初に熱可塑性ポリマーをモノマーと混ぜ合せて相互侵入網目前駆体を形成し、引き続きこの相互侵入網目前駆体と第2の熱可塑性ポリマーを押出または共押出してその多層フィルムを形成し、この相互侵入網目前駆体を硬化させて相互侵入網目を形成することによる前記方法を提供する。この第1および第2の熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。このモノマーは、アクリレート、メタクリレート、およびアリルイソシアヌレートからなる群から選ばれる。
本発明の様々な実施態様により満たされる望ましい対象物の本明細書での列挙は、これらの対象物のいずれかまたはすべてが、本発明の最も一般的な実施態様において、またはそのより具体的な実施態様のいずれにおいても、個別にまたは集合的に、必須の特徴として存在することを包含または示唆することを意味しない。
本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示内容のいくつかの実施態様を示し、その説明とともに、本開示内容の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示内容の多層フィルムの例示的な実施態様の断面図である。
【
図2】
図1の多層フィルムの硬化速度に対する炭素-炭素二重結合変換およびSharpie(登録商標)汚染除去性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
特に明記しない限り、いずれの量的値も、「約」または「およそ」などの語が述べられているかどうかにかかわらず概算である。本明細書に記載されている材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。いずれの分子量または分子質量の値も概算であり、説明のためにのみ示されている。
本開示内容は、相互侵入ポリマー網目(IPN)層とポリマー層を有する多層フィルムを備える熱可塑性ポリマーフィルムを提供する。この多層熱可塑性ポリマーフィルムは、有害な環境条件または要素から表面を保護するのに有用な有益で望ましい特性、例えば、耐汚染性および耐引掻性ならびに高光沢を有し得る。
上記第1および/または第2の層における上記熱可塑性ポリマーは、市販の製品であり得る。いくつかの実施態様において、この熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、またはこれらの組合せであり得る。熱可塑性ポリウレタンポリマーは、典型的には、ポリオールとポリイソシアネートを反応させることにより形成される。このポリオールには、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびポリカプロラクトンポリオールが含まれ得る。1つの実施態様において、このポリオールは、ポリカプロラクトンベースであり得る。別の実施態様においては、この熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族ポリカプロラクトンベースの熱可塑性ポリウレタンであり得る。
【0009】
ポリイソシアネートには、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)などの2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を含めることができる。
架橋(すなわち、硬化)の前に、上記相互侵入網目前駆体は、熱可塑性ポリマーとモノマーとを含むことができる。架橋後、この相互侵入網目は、熱可塑性ポリマーと架橋成分、例えば架橋モノマーとを含むことができる。このモノマーと架橋成分には、アクリレート、メタクリレート、およびアリルイソシアヌレートを含めることができる。典型的なモノマーと架橋成分には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、および三官能性メタクリレート(Saret SR 517R)が含まれ得る。
【0010】
特定の実施態様において、上記相互侵入網目またはその前駆体には、1種以上の紫外線(UV)光開始剤を含めることができる。適切なUV光開始剤には下記の化合物を含めることができるがこれらに限定されない:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(例えば、Irgacure(登録商標)184)、オキシ-フェニル-酢酸2-[2オキソ-2フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルおよびオキシ-フェニル-酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル 2-[2-(2-オキソ-2-フェニルアセチル)オキシエトキシ]エチル 2-オキソ-2-フェニルアセテートの混合物(例えば:Irgacure(登録商標)754)、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(例えば:Irgacure(登録商標)819)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(例えばDarocure TPOまたはGenocure TPO)、ベンゾイルギ酸メチル(例えばOmnirad(登録商標)MBFまたはIrgacure(登録商標)MBF)、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン](例えばKIP 150)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-エタノン(例えば:BDK)、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィネート(例えば、IGM Omnirad(登録商標)TPO-L)、2ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニルホスフィネートおよびオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]の混合物)(例えば、IGM Omnirad(登録商標)BL-723)、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン(例えば、IGM Esacure(登録商標)One)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノンのブレンド)(例えば、IGM Omnirad(登録商標)4265)、ピパラジノベースのアミノアルキルフェノンとPPTTAのブレンド、ポリエチレングリコールジ(ベータ-4-[4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン)プロピオネート(例えば、IGM Omnipol(登録商標)910)、(2,3-ジヒドロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ドロキシ-2-メチル1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデン;2,3-ジヒドロ-5-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデンおよび2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、70%のオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]と30%の2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物(例えば、IGM Esacure(登録商標)KIP 100F)、カルボキシメトキシベンゾフェノンとポリテトラメチレングリコール250のジエステル(例えば、IGM Omnipol(登録商標)BP)、ならびに(1-プロパノン、1,1'-(オキシジ-4,1-フェニレン)ビス[2-ヒドロキシ-2-メチル-および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン](例えば、PL Industries PL-704)。
【0011】
上記相互侵入網目層および/または上記熱可塑性ポリマー層は、添加剤、熱安定剤、UV吸収剤(Tinuvin(登録商標)234など)などを含有することができる。典型的な熱安定剤には、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(例えば、Irganox(登録商標)1010)が含まれる。
本開示内容の上記多層ポリマーフィルムは、第2の熱可塑性ポリマー層の主表面に結合された第1の相互侵入網目層を有し得る。これらの2つの層は、例えば、共押出し中に直接結合されてもよい。あるいは、一方の層を剥離ライナー上に押出してから、もう一方の層にラミネートしてもよい。特定の実施態様において、この第1の相互侵入網目層は、その第2の熱可塑性ポリマー層の主表面に結合してもよく、この第2の層の反対側の主表面に接着剤を結合して、その第2の層がその第1の層とその接着剤層の間にあるようにしてもよい。1つの実施態様においては、その接着剤は感圧接着剤(PSA)であってもよい。
本開示内容の一態様によれば、上記IPN層の厚さは、最大約3ミル(76.2マイクロメートル)であることができる。1つの実施態様において、このIPNフィルムの厚さは、約0.2ミル(5.08マイクロメートル)~約3ミル(76.2マイクロメートル)の範囲であってもよい。別の実施態様においては、このIPNフィルムの厚さは、約0.5ミル(12.7マイクロメートル)~約1.5ミル(38.1マイクロメートル)の範囲であってもよい。
【0012】
本開示内容の別の態様によれば、上記第2の熱可塑性ポリマー層の厚さは、最大約8ミル(203.2マイクロメートル)であることができる。1つの実施態様においては、上記熱可塑性ポリウレタンベース層の厚さは、約3ミル(76.2マイクロメートル)~約8ミル(203.2マイクロメートル)の範囲であってもよい。別の実施態様においては、この熱可塑性ポリウレタンベース層の厚さは、約4.5ミル(114.3マイクロメートル)~約6.5ミル(165.1マイクロメートル)の範囲であってもよい。
上記多層フィルムの厚さは、約5.5ミル(139.7マイクロメートル)~約9.0ミル(228.6マイクロメートル)の範囲であることができる。1つの実施態様において、このIPN表面層の厚さは約0.5ミル(12.7マイクロメートル)であってもよく、上記熱可塑性ポリウレタンベース層の厚さは約5.5ミル(139.7マイクロメートル)であってもよい。別の実施態様においては、このIPN表面層の厚さは約1ミル(25.4マイクロメートル)であってもよく、この熱可塑性ポリウレタンベース層の厚さは約5ミル(127マイクロメートル)であってもよい。
【0013】
上記第1の層は、様々な質量パーセントの上記第1の熱可塑性ポリマーと上記架橋成分を含むことができる。特定の実施態様において、この第1の層は、約65質量%~約75質量%の上記第1の熱可塑性ポリマーと、約20質量%~約30質量%の上記架橋成分を含み得る。別の実施態様においては、この第1の熱可塑性ポリマーは約72質量%であり、この架橋成分は上記第1の層の約28質量%である。
本開示内容の一態様によれば、上記多層ポリマーフィルムは、高い光沢、ならびに耐引掻性および防汚染性を有し得る。光沢は60度(o)の角度で測定でき、100光沢単位(GU)の黒色ガラス標準(「GU、60o」または「60o光沢」)を使用して調整できる。防汚染性は、当該技術において既知の方法、例えば、イソプロピルアルコールまたはバグおよびタール除去剤でそれぞれ拭いた後の黒色の油性マーカーまたはタールのフィルムからの除去によって測定できる。特定の実施態様においては、上記第1のIPN層および/または上記多層フィルムは、約90%よりも高い光透過率または2以下の油性または防水マーカー(例えば、Sharpie(登録商標)マーカー)除去値(0―5の段階で、ここで0=保持されたマーカーの汚れなし)を有し得る。特定の実施態様においては、上記第1のIPN層および/または上記多層フィルムは、約5.0未満のデルタYI(黄色度指数の変化)または2以下(0―5の段階で、ここで0=保持されたタールの汚れなし)のタール汚れ除去を有する。
【0014】
特定の実施態様においては、上記第1のIPN層および/または上記多層フィルムは、約85光沢単位よりも高い耐引掻性を有し得る。特定の実施態様においては、この第1のIPN層および/またはこの多層フィルムは、約85光沢単位よりも高い光沢を有し得る。耐引掻性は、当該技術において既知の方法、例えば、(1)初期光沢を60度(入射光と垂線との間の角度)での入射光の鏡面反射として測定できる方法、(2)引掻いた光沢は引掻き時または引掻き直後(例えば、サンドペーパーによる研磨)に測定できる方法、(3)回復光沢は引掻き後の所定の時間、例えば引掻き後24時間で測定できる方法を使用して測定できる。
本開示内容の一態様によれば、上記多層ポリマーフィルムは、クリアまたは透明であってもよく、塗料保護などの特定の用途に適している場合がある。しかしながら、いくつかの実施態様においては、この多層ポリマーフィルムは、必要に応じて着色されてもよいことが理解される。例えば、上記熱可塑性ポリウレタンまたはその反応性混合物は、顔料または他の着色剤を含み得る。この多層ポリマーフィルムは、保護されるべき表面に一致するような形状およびサイズにされた後にその表面に適用され得る。例えば、この多層ポリマーフィルムは、車両の様々な部品を紫外線、天候から、土、岩などのがれきからの引掻き傷などから保護するために使用し得る。
【0015】
本開示内容の別の態様によれば、本明細書に開示され、IPN層と熱可塑性ポリマー層とを備える上記多層ポリマーフィルムを製造する方法が提供される。一般に、この方法は、第1の熱可塑性ポリマーをモノマーと混ぜ合せてIPN前駆体を形成する工程、このIPN前駆体を第2の熱可塑性ポリマーに結合する工程、およびこのIPN前駆体を硬化させる工程を含む。あるいは、このIPN前駆体層を、剥離ライナー上に付着させ、硬化させ、次いで、この第2の熱可塑性層にラミネートしてもよい。
上記第1の熱可塑性ポリウレタンをモノマーと混ぜ合せる工程は、例えば、バンバリー混合機、ファレル連続ミキサー(FCMTM)、ブラベンダー機器を使用する従来の方法を使用して、または二軸スクリュー押出機を使用して配合することにより行うことができる。吸収は、例えば、ペレットの形態の熱可塑性ポリウレタンポリマーをモノマーを含む溶液と混ぜ合せることにより行うことができ、この熱可塑性ポリウレタンポリマーペレットがこの溶液の成分を吸収する。
【0016】
上記多層ポリマーフィルムの層は、押出し、カレンダー加工、および溶媒キャスティングなどの当該技術で既知の従来の方法を使用して形成できる。例えば、この多層フィルムは、上記第1のIPN層と上記第2の熱可塑性ポリマー層を、マルチマニホールド共押出ダイまたは共押出フィードブロックアプローチを使用して共押出することによって形成できる。これらの層は、また、連続して押出されてもよい。この方法には、この第2の熱可塑性ポリマー層がそのIPN層とその接着剤層との間に「挟まれる」ようにこの多層フィルムを接着剤層にラミネートする工程が含まれてもよい。接着剤には、アクリル、ポリウレタン、シリコーン、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、エポキシ、シアノアクリレートなどが含まれ得る。1つの実施態様において、その接着剤は感圧接着剤(PSA)であってもよい。
上記IPN前駆体層は、電子ビーム、紫外線、放射線、または熱が含まれる任意の適切な手段によって、架橋または硬化され得る。硬化は、そのIPN前駆体層を上記第2の熱可塑性ポリマー層に結合する前または後に行われ得る。
【実施例】
【0017】
実施例1
TPU 93Aのペレット(脂肪族ポリカプロラクトンベースの熱可塑性ポリウレタン、Lubrizol Corp.、オハイオ州ウィクリフ)を70℃でテトラヒドロフランに溶解して、10%ポリマーの溶液を得た。この溶液を様々な量のTAIC(Sartomer Arkema)と一定量の光開始剤Irgacure(登録商標)184(1-ヒドロシクロヘキシルフェニルケトン)(BASF)を混ぜ合せてから、剥離ライナー上にキャストする。
室温、次いで60℃、最後に100℃で溶媒を蒸発させた後、50~100μmの厚さの透明なフィルムを得た。この乾燥フィルムのTAICの含有量は15%から50%を超えるまで変動し、Irgacure(登録商標)184の含有量は4%に維持した。3×15秒から15分まで(連続して)窒素でフラッシュしたチャンバ内でこのフィルムにUV光を照射した。
防汚染性の評価のために、上記フィルムをSharpie(登録商標)ペンとロードタールでマーキングし、80℃で1時間加熱し、染色強度が低下しなくなるまでイソプロパノールで洗浄した。添加剤とUV露光を含まないTPU 93Aのフィルムを対照として使用した。フィルムの柔軟性を評価するために、このフィルムを180度曲げて、亀裂による破損を観察した。この架橋フィルムのゲル含有量を測定した。このフィルムをSharpie(登録商標)ペンとロードタールでマーキングすることにより防汚染性を測定した。このフィルムを80℃で1時間加熱してから、染色強度がそれ以上低下しなくなるまでイソプロパノールで洗浄した。
未処理のポリウレタンフィルムの汚れ強度は「5」と評価され、目に見えない汚れは「0」と評価された。TAICを25%以上含むフィルムでは、5分間のUV露光後、Sharpie(登録商標)とタールの両方で汚れが残っていなかった(=0);これらのゲル含有量は少なくとも93%であった。対照フィルムは、Sharpie(登録商標)とタールの両方で強い汚れの保持を示した(=5)。TAICが50%未満のフィルムは、5分以上のUV露光後、柔軟性があり(180度折りたたんだときにひび割れが見られなかった)。1分間のUV照射後にTAICが25%含まれるフィルムでは、Sharpie(登録商標)汚れが保持されず、タール汚れの痕跡が残った(= 1);このフィルムは、ひび割れなしに180度に数回折りたたまれた。光沢は、入射光の60度での鏡面反射として測定した。すべてのUV架橋フィルムは透明で、無色で、高い光沢を示した。
【0018】
実施例2
UV硬化性配合物は、TAICと様々な添加剤をTPU 93Aのペレットに吸収させることによって調製した。全体の混合物は、表1に示す下記の組成を有した。吸収されたペレットの自己付着を防ぐために、Silmer ACR Di-10(Siltech Corp.)を含めた。
【0019】
【0020】
ワイヤーブレードと加熱ベースを備えたKitchenAid(登録商標)ミキサーに1134gのポリマーペレットを添加し、ミキサーチャンバを約40℃に加熱した。その他の成分を混ぜ合せて透明な液体を形成し、それを時間とともに少しずつ撹拌ペレットに加えた。この吸収されたペレットの質量の増加を測定することにより吸収プロセスを監視した;
9時間吸収させた後、この混合物をさらに3時間撹拌して、すべての成分の均一な分布を確保した。このペレットはゴム状でさらさらしていた。吸収されたペレットの1つのアリコートをテトラヒドロフランに溶解して10%の固体溶液を得、これを剥離ライナー上にキャストし、次に乾燥して厚さ約50μmのフィルムを得た。別のアリコートを140℃で2枚の剥離ライナーの間に圧縮成形して、厚さ約50μmのフィルムを得た。両方のフィルムに窒素下で1分間UVを照射した。架橋されたフィルムは、透明で無色で柔軟であった。この架橋されたフィルムをSharpie(登録商標)ペンとロードタールで汚した。Sharpie(登録商標)汚れは保持されず(=0)と痕跡のタール汚れが残った(=1)。
【0021】
実施例3
TPU 93A中の三官能性および四官能性のアクリレートモノマーを評価した。TMPTA(Sartomer Arkema)、TAIC、およびDTMPTA(Sartomer Arkema)は溶剤であり、TPU 93Aと溶融混合され、UVによる架橋速度と防汚染性を評価した。
すべてのモノマーは、TPU 93Aと分子的に適合性があり、透明なフィルムを生じ、空気中1時間150℃で熱的に安定であった。このモノマーはTPU 93ペレットを膨潤させた。吸収されたペレットは粘着性であった。0.1%未満の疎水性ヒュームドシリカを添加すると、自由流動性になった。TAICはTPU 93 Aも溶解した。すべてのモノマーは、適切な光開始剤(Irgacure(登録商標)184またはIrgacure(登録商標)184とGenocure TPO(Rahn)の混合物)とともに、窒素でのUV露光時にTPU 93Aを架橋して、充分な長さのUV露光後に防汚染性(Sharpie(登録商標)/タール)フィルムを得た。
35%までのTMPTAおよびTAICとTPU 93Aの溶媒または溶融配合は、窒素でのUV架橋後、Sharpie(登録商標)ペンマークとタールに対して柔軟で汚れにくい無色のフィルムを得た。TAICで架橋されたフィルムは、光開始剤Irgacure(登録商標)184/Genocure TPOで無色であったが、TMPTAとDTMPTAと同じ光開始剤で、UVで同様に架橋されたフィルムは、時間と光への暴露により退色したわずかに黄色がかった色合いであった。
25~35%のモノマーと光開始剤とのTPU 93A配合物の溶融混合および圧縮成形は、シグマブレードを使用して約50rpmのブラベンダー混合デバイスで約15分間評価することで示唆されるように、130℃と150℃の間で行うことができ、均一な混合物が得ることができる。
脂肪族ポリウレタンTPU 93Aのフィルムの光沢は、その屈折率(nD=1.4878)に関連していた。屈折率が高いほど光沢が高くなる。すべてのモノマーの屈折率はTPU 93Aの屈折率に近く、このポリマーに上記モノマーを混入してから架橋すると、新しいTPU 93Aフィルムで観察されたものと同じ光沢が得られた。
【0022】
実施例4
TPU 93AおよびTMPTAまたはTAICのブレンドに対するUV照射の時間の長さの影響を評価した。TPU 93 A(71%)25%TMPTAまたは35%TMPTAまたは35%TAICと3%Irgacure(登録商標)184および1%GenocureTPOを含有するブレンドを、添加剤を含むテトラヒドロフラン溶液から剥離ライナー上に溶剤キャストして、100℃で乾燥した後に厚さ130μmのコーティングを得た。このフィルムをいくつかの部分に切断し、窒素中のUVで15、30、60、120(および240)秒(sec)照射した後、Sharpie(登録商標)ペンとタールでマーキングした。照射時間を増加させることで、このフィルムはより固くなった。このフィルムをテトラヒドロフランで抽出して、ゲル含有量を決定した。結果を表2に示す。
【0023】
【0024】
140℃での圧縮成形により調製された35%のTMPTAまたは35%のTAIC組成物を含有するフィルムを用いた試験は、防汚染性についてほぼ同じ結果を得た。
【0025】
実施例5
TMPTAのTPU 93Aへの吸収を行った。15グラムのTPU 93A、8.608gのTMPTA、0.737gのIrgacure(登録商標)184および0.245gのGenorad TPOを、約8gのヘプタンと一緒にスクリューキャップチューブに入れた。この混合物を70℃で2日間(または110℃で約5時間)保持した。このヘプタンを室温で蒸発させ、100℃/1時間で加熱することによりこのヘプタンの痕跡を除去して、わずかに自己接着したペレット24.5gを得た。このペレットは、140℃で2.7g/10分のメルトインデックスおよび150℃で5.1g/10分のメルトインデックスを有した(負荷:3.8kg;ダイ:2.09mm)。このペレットを140℃で2~3ミル(50.8~76.2マイクロメートル)の厚さのスラブに圧縮成形し、溶媒キャスト法により得られた同じ組成のフィルムと同じ防汚染性挙動を示した。DTMPTAを同じ方法でTPU 93Aに吸収させた。吸収を完了するのに必要な時間は、TMPTAで観察された時間よりも長かった。このDTMPTAブレンドは、TMPTAブレンドと同じ防汚染性と柔軟性を備えていた。
メルトインデックス試験を、25%のTMPTAとTPU 93A中の3%のIrgacure(登録商標)184および1%のGenocure TPOのブレンドについて120℃から160℃まで繰り返した。データは、このようなブレンドが150~160℃で押出可能であることを示唆している。
【0026】
実施例6
24%のTAICおよび4%の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-エタノン(IGM)を吸収させた72%のCLC 93A-Vペレット(脂肪族ポリカプロラクトンTPU;Lubrizol Corp.)を含む配合物LR00736-04を、市販の保護フィルム(XPEL Ultimate(XPEL Tech. Corp.;テキサス州サンアントニオ);SunTek(Eastman Chem. Co.;バージニア州マーティンズビル)、PremiumShield Elite(PremiumShield, マサチューセッツ州ホリストン)、およびArgoGUARD 49510(Argotec, マサチューセッツ州グリーンフィールド)とSharpie(登録商標)とタールの汚れ除去、耐引掻性、および光沢について比較した。
Sharpie(登録商標)の汚れ除去は、黒色マーカーのコーティングをフィルムに適用し、このマーカーを2分間硬化させ、その後、70%イソプロピルアルコール(IPA)をIPAに浸した綿布を使用して、インクがこれ以上除去できなくなるまで激しく拭くことにより評価した。Sharpie(登録商標)の汚れ除去は、透明度/澄明度メーターを使用して、光透過率%(LT%)として測定した。
タール除去は、タールのしみをこのフィルムに適用し、このタール/フィルム試験片を80℃で60分間焼き付けることにより評価した。次に、GMバグ&タールリムーバーを使用して綿布でこのタールを取り除いた。タールの除去は、分光計を使用して黄色度の変化(デルタYI)として測定した。
光沢および耐引掻性は、時間ゼロ(初期光沢)、引掻き時間、および引掻きの24時間後に60度の光沢単位で測定した。引掻きは、一定の負荷の下で一定数の研磨用ワイプを200グラムのスレッドで200グリットのサンドペーパーを使用して研磨することで行った。LR00736-04は、Sharpie(登録商標)マークの除去が競合トップコート(XPEL Ultimate、SunTek、PremiumShield Elite)と同等であり、ArgoGUARD 49510よりもはるかに優れていることを示した。LR00736-04は、競合トップコート(XPEL Ultimate、SunTek、PremiumShield Elite)よりも良好なタール汚れ除去を示し、ArgoGUARD 49510よりもはるかに優れていた。LR00736-04は高い光沢を示した。引掻きの回復は最小限であった;しかし、このフィルムはほとんど傷がなかった。結果を表3に示す。
【0027】
【0028】
実施例7
72%のCLC 93A-Vペレット(脂肪族ポリカプロラクトンTPU;Lubrizol Corp.)を24%のTAICおよび4%の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-エタノン(BDK)または4%のIrgacure(登録商標)184と吸収させ、相互侵入網目前駆体ブレンドを形成した。このIPN前駆体ブレンドを約150℃で共押出し、ArgoGUARD 49510にラミネートした。共押出またはラミネートしたフィルムを酸素バリアとして使用されるPETとUV光で硬化させ、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム内に相互侵入ポリマー網目(IPN)を備える多層ポリマーフィルムを形成した。このIPN層の厚さは約0.5ミル(12.7マイクロメートル)であった。そのTPU層の厚さは約5.5ミル(139.7マイクロメートル)であった。この多層フィルムは、約90%を超える光透過率のSharpie(登録商標)汚れ除去値、約5.0デルタYI未満のタール汚れ除去、約85光沢単位よりも高い耐引掻性、および約90光沢単位よりも強い光沢を有した。
【0029】
実施例8
82.3%のSR355(DTMPTA(Sartomer Arkema))、14.3%のBDKおよび3.4%の熱安定剤を予め混合し、液体注入および水中ペレット化機能を備えた二軸スクリュー押出機を使用して30%の負荷で70%のCLC 93A-Vペレットに混入した。これらのペレットを使用して100%の負荷で約0.6ミル(15.24マイクロメートル)の厚さの層でこのIPN層を押出し、CLC 93A-VのみからなるTPU層は約5.5ミル(139.7マイクロメートル)の個々の厚さで同時に押出した。これらの2つの層の界面に層間不安定性は存在しなかった。完全な構造は、界面にこのIPN層があるPETにラミネートされた。押出しから12時間以内に水銀マイクロ波ランプを使用して、毎分20フィート(6メートル)で6回、PETを通してこのフィルムをUV硬化させた。このフィルムは後日感圧接着剤でコーティングした。
図1は、実施例8で製造されたフィルム10の断面図を示す。示される実施態様において、上記PET層
20は、約2.0ミル(5.08マイクロメートル)の厚さを有し得る。このIPN層
30は、約0.6ミル(15.24マイクロメートル)の厚さを有し得る。CLC 93A-V層
40は、約5.5ミル(139.7マイクロメートル)の厚さを有し得る。LR01267-1として識別されるこの材料のテスト結果を、下記の表4に示す。
【0030】
【0031】
図2のグラフで表されるように、より速いウェブ硬化速度により、炭素-炭素二重結合変換が減少し、Sharpie(登録商標)汚れ除去が低下した。ΔLT%は、マーキング前のフィルムの初期光透過率からマーカー除去後のフィルムの最終光透過率を差し引いて計算されることに留意されたい。したがって、数値が小さいほど、除去は良好になる。
本発明をその特定の好ましい実施態様に従って本明細書で詳細に説明してきたが、その中の多くの修正および変更は当業者により行われ得る。したがって、前述の開示内容は、それにより限定されると解釈されるべきではなく、そのような前述の明白な変形を含めると解釈するべきであり、以下の請求項の精神および範囲によってのみ限定される。