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特許7309719電気通信ネットワークのための試験装置及び電気通信ネットワークを試験する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】電気通信ネットワークのための試験装置及び電気通信ネットワークを試験する方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20230710BHJP
   H04B 17/309 20150101ALI20230710BHJP
【FI】
H04B7/06 956
H04B17/309
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020534938
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2018060701
(87)【国際公開番号】W WO2019130267
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】102017000151175
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520030590
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ シンガポール(セールス) プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】マリーニ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ベンディネッリ,エンリコ
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0359739(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0279546(US,A1)
【文献】特開2015-162755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 17/309
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)に従った送信機能を備えるモバイル電気通信ネットワーク(1)のノード(3)に接続する通信インタフェース(6、51、76)であって、前記ノード(3)と、該ノード(3)に通信状態で結合されたモバイル端末(10、17、26)との間の通信トラフィックを受信するように構成される通信インタフェースと、
各通信ビーム(B1、B2、...、BN)に対応する通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)を受信するように構成されたビームフォーミング試験ユニット(15)であって、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)は、前記モバイル端末(10、17、26)によって受信された前記信号の品質を表すものである、ビームフォーミング試験ユニットと
を備えるモバイル電気通信ネットワークを試験する試験装置であって、
前記ビームフォーミング試験ユニット(15)は、前記複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する前記ノード(3)の通信設定が、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)に合致するか否かを検査するように構成されており、
前記通信インタフェース(6)は、光ファイバを介したベースバンド接続によって前記ノード(3)に結合するように構成されている、
験装置。
【請求項2】
前記ビームフォーミング試験ユニット(15)は、前記モバイル端末(10、17、26)との通信のために前記ノード(3)によって選択された前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)が、前記モバイル端末(10、17、26)において受信された最高の信号電力を示す前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)が関連付けられる前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)に対応しているか否かを検査するように構成される、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記ビームフォーミング試験ユニット(15)は、前記ノード(3)の制御信号(O&M)から前記複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する情報を抽出し、前記複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関して前記ノード(3)の前記通信設定と、前記モバイル端末(10、17、26)の通信設定とが合致するか否かを、前記ノード(3)の前記制御信号(O&M)に基づいて検査するように構成される、請求項に記載の試験装置。
【請求項4】
或る個体数のシミュレーションされたモバイル端末のためのシミュレーションされたトラフィックを生成するように構成されたマルチユーザトラフィック生成器(10)を備え、前記通信チャネル品質の信号は、前記マルチユーザトラフィック生成器(10)によって生成されるシミュレーションされた電力測定信号(RSRPS)を含む、請求項に記載の試験装置。
【請求項5】
前記通信インタフェース(51、76)は、無線周波数において前記ノード(3)と通信状態で結合するように構成され、周波数コンバータ(52)と、RF結合器(53)と、前記ビームフォーミング試験ユニット(15)によって制御されるそれぞれのスイッチ(60)を通じて前記RF結合器(53)に選択的に接続可能であるアンテナのアレイ(55、77)とを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項6】
或る個体数のシミュレーションされたモバイル端末に対応するシミュレーションされたトラフィックを生成するように構成されるとともに、さらに、周期的に、
前記ノード(3)によって生成され、前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信されたビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)の振幅及び位相を測定し、
ビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)ごとに、前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記信号の平均から前記それぞれの通信チャネル品質の信号(RSRPR)を計算する
ように構成されたマルチユーザトラフィック生成器(10)を更に備える、請求項に記載の試験装置。
【請求項7】
前記ビームフォーミング試験ユニット(15)は、前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記信号の前記平均から取得された前記通信チャネル品質の信号(RSRPR)を連続した周期において相関させ、前記ノード(3)によって実際に用いられた前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)が、取得された前記通信チャネル品質の信号(RSRPR)に基づいて期待される前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)であるか否かを判定するように構成される、請求項に記載の試験装置。
【請求項8】
少なくとも1つのモバイル電気通信規格について固有のプロトコルスタックを実装するように構成されたプロトコルシミュレーションユニット(11)であって、前記プロトコルスタックは、それぞれのプロトコル層を実装する状態機械の集合によって規定される、プロトコルシミュレーションユニットと、
前記モバイル端末から生じるビットストリームを、変調方式に従ってシンボルに変換することを実行するとともに、送信される前記シンボルのシーケンスに基づいて前記モバイル端末に割り当てられたサブキャリアの振幅及び位相変調を実行する、複数のSDRモジュール(18)を規定するように構成された物理層シミュレーションユニット(12)と
を備える、請求項1~のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項9】
複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)に従った送信機能を備えるモバイル電気通信ネットワーク(1)のノード(3)と、該ノード(3)に通信状態で結合されたモバイル端末(10、17、26)との間の通信トラフィックを、通信インタフェース(6、51、76)を通じて受信することと、
各通信ビーム(B1、B2、...、BN)に対応する通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)を受信することであって、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)は、前記モバイル端末(10、17、26)によって受信された前記信号の品質を表すことと、
前記複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する前記ノード(3)の通信設定が、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)に合致するか否かを検査することと
前記ノード(3)との光ファイバを介したベースバンド接続を確立することと
を含むモバイル電気通信ネットワークを試験する方法。
【請求項10】
前記複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する前記ノード(3)の前記通信設定が、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)に合致するか否かを検査することは、前記モバイル端末(10、17、26)との通信のために前記ノード(3)によって選択された前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)が、前記モバイル端末(10、17、26)において受信された最高の信号電力を示す前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)が関連付けられる前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)に対応しているか否かを検査することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
記ノード(3)の制御信号(O&M)から前記複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する情報を抽出することと、
前記複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関して、前記ノード(3)の前記通信設定と、前記モバイル端末(10、17、26)の通信設定とが合致するか否かを、前記ノード(3)の前記制御信号(O&M)に基づいて検査することと
を含む、請求項又は10に記載の方法。
【請求項12】
或る個体数のモバイル端末をシミュレーションすることを含み、前記通信チャネル品質の信号はシミュレーションされた電力測定信号(RSRPS)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ノード(3)との無線周波数接続を確立することと、
前記ノード(3)によって生成されたビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)を、アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信することと
を含む、請求項又は10に記載の方法。
【請求項14】
或る個体数のモバイル端末をシミュレーションすることと、周期的に、
前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記ビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)の振幅及び位相を測定することと、
ビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)ごとに、前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記信号の平均から前記それぞれの通信チャネル品質の信号(RSRPR)を計算することと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記信号の前記平均から取得された前記通信チャネル品質の信号(RSRPR)を連続した周期において相関させることと、
前記ノード(3)によって有効に用いられた前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)が、取得された前記通信チャネル品質の信号(RSRPR)に基づいて期待される前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)であるか否かを判定することと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
記アンテナのアレイ(55)を、前記ノード(3)のアンテナ(7)とともに遮蔽室(62)内に、前記ノード(3)のアンテナ(7)と近距離にある状態で配置することを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
記アンテナのアレイ(77)を、前記ノード(3)のアンテナ(7)とともに無響室(80)内に、前記ノード(3)のアンテナ(7)と遠距離にある状態で配置することを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気通信ネットワークを試験する試験装置及び電気通信ネットワークを試験する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2017年12月29日に提出された伊国特許出願第102017000151175号からの優先権を主張し、その開示全体は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
知られているように、ここ数年で、電気通信業界は、種々のフロント上で動作することによって、具体的には、スペクトル効率を向上すること、多数の無線基地局(BTS、ベース送受信機局)を設置すること、及び複数のキャリアの(キャリアが異なる帯域上にある場合でも)アグリゲーションを活用することによってデータ送信の容量を増大させるために、4G LTE(ロングタームエボリューション)ネットワークの実装を向上してきた。MIMO(多入力多出力)次元の増加、高次変調、ヘテロジニアスネットワーク(HetNet)、大規模キャリアアグリゲーション(CA)及び協調マルチポイント(CoMP)等、多くの改善が果たされてきたが、しかしながら、これらはいずれも、数年後に予見されている5Gシステムによって要求される性能を維持するのに十分な、補足的なトラフィック容量を提供するものではない。
【0004】
5G通信システムを構築するいくつかの革新的かつ有効な解決策は、ミリ単位波長(mmW、ミリ波)帯域等、通常は十分に利用されていない超短波の活用を視野に入れている。主に、こうした周波数は、直通路に沿った障害物の存在によって引き起こされる問題である高い伝播損失と、コンポーネントを低コストで利用可能ではないこととを理由に、高指向性及び高利得アンテナを用いた点間直接接続に活用される。
【0005】
しかしながら、現在最も有望な解決策は、空間分割接続手順を時分割接続手順と組み合わせて活用することによって送信容量を向上することを視野に入れる。このために、いわゆるビームフォーミング技法を用いることができる。ビームフォーミング技法は、同一の信号を異なる点から送信するアンテナのアレイの使用に基づくものである。各アンテナによって送信された信号の位相は、選択された方向においては強め合う干渉(constructive interferences)を生成し、その他の場所においては弱め合う干渉(destructive interferences)を生成するように制御される。実際、ビームフォーミング技法によって、ビームの指向性を向上するように送信されるビームを形成することが可能になり、無線基地局が、同じ周波数帯域上でありながら、サービングされるセルの異なるエリアにある異なる端末と同時に通信することが可能になる。
【0006】
しかしながら、一方では送信容量が原則として増大される場合、他方では、データトラフィックの管理及び接続が正しいか否かの検査に関する新たな問題が発生する。具体的には、動作の複雑度と、処理されるトラフィックが膨大な量になることが原因で受けなければならないレイテンシとを考慮すると、採用される方向の選択及び使用においてエラーが発生する可能性が明確に存在する。換言すれば、無線基地局とモバイル端末との間でのビームの使用(すなわち、基本的には方向)に関して合意する手順が失敗することが起こり得る。他の状況では、無線基地局の送信は、上記手順の結果に従わない場合がある。すなわち、合意されたビームとは異なるビームが用いられる場合があるか、又は、選択されたビームの使用のための時間窓が順守されない場合がある。全てのこうした場合において、無線基地局とモバイル端末との間の通信は、阻害されるか、又は、いずれの場合にせよ非効率になる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、試験段階において、無線基地局の制御及び管理を行うシステムによって送信ビームの割り当て及び使用におけるエラーの検出を可能にするツールを利用可能にすることが必要とされている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、説明した制限を克服又は少なくとも軽減することを可能にする、電気通信ネットワークを試験する試験装置及び電気通信ネットワークを試験する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、それぞれ請求項1及び請求項10に規定されるような、電気通信ネットワークを試験する試験装置及び電気通信ネットワークを試験する方法が提供される。
【0010】
ここで、本発明が、添付の図面を参照して説明される。添付の図面は、本発明の実施形態の非限定的な例をいくつか示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】モバイル電気通信ネットワークの簡略化されたブロック図である。
図2図1のモバイル電気通信ネットワークの制御装置の簡略化されたブロック図である。
図3】ビームフォーミング能力を有する図1のネットワークのノードを示す概略図である。
図4図1のモバイル電気通信ネットワークにおいて用いることができる、本発明の一実施形態による電気通信ネットワークのための試験装置の簡略化されたブロック図である。
図5図4の試験装置の動作を表すフローチャートである。
図6図1のモバイル電気通信ネットワークによって用いられる量を表すグラフである。
図7図1のモバイル電気通信ネットワークにおいて用いることができる、本発明の異なる実施形態による電気通信ネットワークのための試験装置の簡略化されたブロック図である。
図8図7の試験装置の動作を表すフローチャートである。
図9図1のモバイル電気通信ネットワークにおいて用いることができる、本発明の異なる実施形態による電気通信ネットワークのための試験装置の簡略化されたブロック図である。
図10図9の試験装置の動作を表すフローチャートである。
図11図1のモバイル電気通信ネットワークにおいて用いることができる、本発明の異なる実施形態による電気通信ネットワークのための試験装置の簡略化されたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による電気通信ネットワーク1を簡略化して示している。電気通信ネットワーク1は、FDMA(周波数分割多元接続)モバイル電気通信ネットワーク、又はTDMA(時分割多元接続)モバイル電気通信ネットワークである。1つの実施形態では、例えば、電気通信ネットワーク1は、OFDM(直交周波数分割多重)技術又はSC-FDMA(単一キャリア周波数分割多元接続)技術、特にLTE若しくは5G New Radioネットワーク又はその発展型に基づくネットワークである。電気通信ネットワーク1は、ネットワークサブシステム2、複数の無線基地局又はeNodeB 3、及び複数のモバイル端末4を含む。以降、「モバイル電気通信システム」とは、少なくともモバイル端末とネットワークインフラストラクチャとの間の結合が無線周波数接続によって提供される電気通信システムを意味する。
【0013】
本明細書において説明される例では、モバイル端末4を接続することができるネットワークインフラストラクチャは、ネットワークサブシステム2と、ネットワークサブシステム2に永続的に接続されるeNodeB 3とによって規定される。具体的には、モバイル端末4は、実装される規格によって設定されるモダリティに従って信号送信及び受信を最適化するように選択されるeNodeB 3のうちの1つを通じて接続をアクティベートすることができる。図1は、電気通信ネットワークシステム1の機能又はその一部の機能の試験を実行するために、eNodeB 3のうちの少なくとも1つに接続される試験装置5を更に示している。
【0014】
eNodeB 3のうちの少なくともいくつかは、送信及び受信においてビームフォーミング技法を用いるように構成される。図2の例によって例示されているように、ビームフォーミングを用いるeNodeB 3は、アンテナ7のアレイと、それぞれの重みWを計算してアンテナ7に適用する制御装置8とを備える。重みWは、送信の際は、それぞれのアンテナ7が同一の信号を送信するのに伴う位相遅延を規定し、又は、受信の際は、それぞれのアンテナ7によって受信された信号のサンプリング時点の遅延を規定する。重みWは、所与の送信方向及び受信方向においては強め合う干渉を生成するとともに、その他の場所においては弱め合う干渉を生成するように選択される。重みWを変動させることによって、制御装置8は、アンテナ7のアレイの送信方向及び受信方向を恣意的に変更することができる。実際、ビームフォーミング技法によって、通信ビームの指向性を向上するために通信ビームB1、B2、...、BN(図3)を形成することが可能であり、したがって、eNodeB 3と、同じ周波数帯域上でありながら、サービングされるセルの異なるエリアにある異なる端末との間の同時通信が可能になる。各通信ビームBは、それぞれの送信方向D1、D2、...、DNによって識別される。
【0015】
図4は、ビームフォーミング技法を用いるための能力を有するeNodeB 3と通信状態で結合された試験装置5をより詳細に示している。図4の実施形態では、試験装置5とeNodeB 3との間の通信は、ベースバンドにおいて、例えば、光ファイバ6を介したベースバンド接続を有する通信インタフェースによって確立される。
【0016】
試験装置5は、試験対象のeNodeB 3と通信状態で結合された或る個体数のモバイル端末のシミュレーションを可能にする。一実施形態では、試験装置5は、マルチユーザトラフィック生成器10、プロトコルシミュレーションユニット11、物理層シミュレーションユニット12、シミュレーション制御ユニット13、及びビームフォーミング試験ユニット15を備える。マルチユーザトラフィック生成器10は、或る個体数のシミュレーションされたモバイル端末に対応する、シミュレーションされたトラフィックを生成する。生成されたトラフィックは、試験対象のeNodeB 3に接続された或る個体数の実際のモバイル端末によって送信及び受信される可能性がある音声、データ、及びビデオコンテンツの形態でのトラフィックをシミュレーションする。
【0017】
プロトコルシミュレーションユニット11は、プログラム可能であり、電気通信システム1において用いられる所与のモバイル電気通信規格、例えばLTE又は5G規格について特定のプロトコルスタックを実装する複数の状態機械(state machines)を作成するように構成される。より正確には、プロトコルスタックは、それぞれのプロトコル層を実装する状態機械の集合によって規定される。プロトコルシミュレーションユニット11は、試験装置5によってシミュレーションされたモバイル端末の数と同数の異なるプロトコルスタックインスタンス17を実装するように構成される。加えて、プロトコルシミュレーションユニット11は、異なる電気通信規格についてプロトコルスタックの1つ以上のインスタンス17を実装するように構成される。このようにして、プロトコルシミュレーションユニット11は、同一の規格又は異なる規格に基づくとともに、試験対象の電気通信システム1の或る部分に接続される異なるモバイル端末の挙動をシミュレーションすることができる。生成された各プロトコルスタックインスタンス17は、MAC(媒体接続制御)層、RLC(無線リンク制御)層、及びPDCP(パケットデータ制御プロトコル)層を含む。
【0018】
物理層シミュレーションユニット12は、
- 用いられる変調方式(例えば、BPSK、16QAM、64QAM)に従って、マルチユーザトラフィック生成器10によって生成されたビットストリームをシンボルに変換することを実行し、
- 送信されるシンボルのシーケンスに基づいて、シミュレーションされたモバイル端末に割り当てられるサブキャリアの振幅及び位相変調を実行する
複数のSDR(ソフトウェア定義無線)モジュール18を規定するように構成される。
【0019】
1つの実施形態では、物理層シミュレーションユニット12は、上記個体数のシミュレーションされたモバイル端末間の相互干渉をシミュレーションするように構成することができる。
【0020】
シミュレーション制御ユニット13は、特に無線リソースを使用する際の正確性及び適合性に関して、個々のシミュレーションされたモバイル端末に対する機能検査にシミュレーション制御ユニット13が用いる、O&M(運用及び保守)制御信号に対して直接のアクセスを有する。
【0021】
ビームフォーミング試験ユニット15は、通信ビームB1、B2、...、BNが正しく用いられていることを検査する。具体的には、ビームフォーミング試験ユニット15は、O&M制御信号による通信ビームB1、B2、...、BNの管理に関する情報を抽出し、シミュレーションされたモバイル端末に関連付けられたプロトコルスタックインスタンス17からの通信チャネル品質の信号(communication-channel-quality signals)を受信する。ビームフォーミング試験ユニット15によって受信された情報を用いて、シミュレーションされたモバイル端末の通信設定とeNodeB 3の通信設定との適合性を通信ビームB1、B2、...、BNに関して検査する。すなわち、有効に用いられた通信ビームB1、B2、...、BNが、ネゴシエートされる通信設定に対応しているか否かを検査する。
【0022】
1つの実施形態では、ビームフォーミング試験ユニット15は、図5に関して以降で説明する手順に従ってアクティブチェックを実行する。
【0023】
試験装置5においてインスタンス化され、シミュレーションされたモバイル端末は、通信ビームB1、B2、...、BNごとにそれぞれの通信チャネル品質の信号、例えば、シミュレーションされた測定信号RSRPS(RSRPは「参照信号受信電力」を表し、Sは「シミュレーションされた」を表す)を生成及び送信する(ブロック100)。一般に、通信チャネル品質の信号は、各通信規格において規定された信号であり、モバイル端末とeNodeBとの間の接続品質の指標を提供する。以下、実際の又はシミュレーションされたRSRP(参照信号受信電力)信号を度々言及することになるが、これはいかなる限定も暗示するものではない。例えば、RSRP信号に代わるものとして、CSI(チャネル状態情報)等の指標を用いることができる。無線通信において、指標CSIは、信号が送信機から受信機に伝播する仕方を説明するとともに、例えば散乱、フェージング及び距離に応じた電力減衰の複合影響を表している。CSI指標を求める方法は、「チャネル推定」とも呼ばれる。CSIインデックスにより、送信を現在のチャネル条件に適合することが可能になり、これは、マルチアンテナシステムにおいて高いデータ送信レートを有する信頼できる通信を取得する上で基礎となることである。RSRP信号は、実際のモバイル端末によって生成され、モバイル端末によって受信された電力信号の指標、ひいては受信品質の指標を提供する。RSRP信号は、通信ビームB1、B2、...、BNごとに1つの、測定値のベクトルNとすることができる。受信電力の測定は参照信号に対して実行される。より詳細には、eNodeB 3がビームフォーミング能力を有する場合、時間周波数フレーム構造における割り当てられた固定の位置を用いて、すなわち、周期的に繰り返されるそれぞれの専用時間間隔と、それぞれの専用帯域とによって割り当てられるとともに規定されるそれぞれのリソースブロックにおいて、eNodeB 3によって周期的に送信される、それぞれのビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNが、各通信ビームB1、B2、...、BNに関連付けられる。換言すれば、図6を参照すると、ビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNは、周期的に送信され、意図的に予約される周期におけるそれぞれの時間間隔の組み合わせと、それぞれの周波数帯域とによって識別される。各ビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNが関連付けられる通信ビームB1、B2、...、BNの識別は、周期における時間間隔と、それぞれの周波数サブ帯域との組み合わせに基づくことができ、識別子を送信する必要はない(通信ビームB1、B2、...、BNの暗黙的識別)。一方、代替的な実施形態では、周期及びサブ帯域における時間間隔の組み合わせの代わりに又はそれに加えて、識別子を用いることができる(通信ビームB1、B2、...、BNの明示的識別)。
【0024】
信号RSRPの各測定値は、モバイル端末において検出可能なそれぞれのビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNの電力を表し、それぞれの通信ビームB1、B2、...、BNに対応する。説明する例では、シミュレーションされた測定信号RSRPSは、仮の値を有する信号であり、試験装置5によって生成された、シミュレーションされた測定値に対応する。
【0025】
シミュレーションされた測定信号RSRPSは、無線リソース管理メッセージによって符号化されてeNodeB 3に送信される。簡単にするため、以下、専らシミュレーションされた測定信号RSRPSに対して言及を続けることにする。しかしながら、各(実際の又はシミュレーションされた)モバイル端末によるeNodeBへの送信では、シミュレーションされた測定信号RSRPSに対応する情報は、無線リソース管理メッセージによって搬送され、eNodeBは、この情報を、受信した無線リソース管理メッセージから抽出することを理解されたい。eNodeB 3は、それぞれのシミュレーションされた測定信号RSRPSの測定値に基づいて、各シミュレーションされたモバイル端末にそれぞれの通信ビームB1、B2、...、BNを割り当てる(ブロック110)。より正確には、eNodeB 3は、シミュレーションされたモバイル端末によって送信された、シミュレーションされた測定信号RSRPSの中からのシミュレーションされた測定信号RSRPSごとに、用いられる通信規格の選択機構に基づいて測定値(例えば、受信した最大信号電力を示す測定値)を選択し、対応する通信ビームB1、B2、...、BNを送信側のシミュレーションされたモバイル端末に割り当てる。シミュレーションされたモバイル端末ごとの最も好ましい通信方向D1、D2、...、DNが、このように選択される。
【0026】
eNodeB 3は、種々のシミュレーションされたモバイル端末用に選択された通信ビームB1、B2、...、BNを用いることによって送信を開始する(ブロック120)。
【0027】
しかしながら、通信方向の選択は、eNodeB 3のソフトウェアにおける問題又はエラーに関連する種々の理由から失敗する場合があり、こうした失敗は、eNodeB 3によってサービングされるセル内の上記個体数のモバイル端末のサイズ、レイテンシ、送信チャネル上の擾乱、及びモバイル端末間の干渉等のイベント及び条件によってトリガされる可能性がある。こうした場合には、選択された通信ビームB1、B2、...、BNは、モバイル端末によって送信された最適なRSRP信号に対応しない場合がある。
【0028】
eNodeB 3が選択されたビーム上で送信を開始した後、試験装置5は、各シミュレーションされたモバイル端末のアクティブな通信ビームB1、B2、...、BNについてのシミュレーションされた測定信号RSRPSを提供し続け、eNodeB 3は、受信したシミュレーションされた測定信号RSRPSをビーム追跡に用いる(ブロック130)。
【0029】
シミュレーション制御ユニット13及びビームフォーミング試験ユニット15は、eNodeB 3から、eNodeB 3のBBU(ベースバンドユニット)とRRH(リモートラジオヘッド)との間のO&M制御信号を受信し、シミュレーションされたモバイル端末ごとに有効に用いられた通信ビームB1、B2、...、BNを識別する情報を抽出する(ブロック140)。
【0030】
ビームフォーミング試験ユニット15は、eNodeB 3のBBUとRRHとの間のO&M制御信号を用いて、通信ビームB1、B2、...、BNの選択に関するeNodeB 3の送信設定が、シミュレーションされたモバイル端末の現在の通信設定に合致するかを検査する(ブロック150)。実際、ビームフォーミング試験ユニット15は、eNodeB 3によって行われた選択が、用いられる通信規格の選択機構と、提供されたシミュレーションされた測定信号RSRPS(例えば、シミュレーションされた測定信号RSRPSにおいて、最良の受信品質を有する通信ビームB1、B2、...、BNを示す測定値)とに基づいて期待される結果に沿ったものかを検査する。
【0031】
本発明の異なる実施形態(図7に図示)では、ここでは番号25によって指定される試験装置は、既知の位置における実際のモバイル端末26との通信中に、ビームフォーミング機能に関するeNodeB 3の適切な動作を検査するように構成され、受信モードで動作する。
【0032】
試験装置25は、既に説明した試験装置5と類似の構造を有し、プロトコルシミュレーションユニット11、物理層シミュレーションユニット12、シミュレーション制御ユニット13、及びビームフォーミング試験ユニット15を備える。さらに、試験装置25は、マルチユーザトラフィック生成器10の代わりに又はそれに加えて、追跡ユニット30を備える。また、この事例では、試験装置25は、光ファイバ6を介したベースバンド接続を通じてeNodeB 3に結合される。しかしながら、シミュレーションされたトラフィックを用いるのではなく、この装置は、無線接続を介して通信するeNodeB 3と実際のモバイル端末26(又は2つ以上)との間で送信及び受信される実際のトラフィックを用いる。
【0033】
プロトコルシミュレーションユニット11によって実行される復号に起因して、追跡ユニット30は、行われた測定、特に、実際のモバイル端末26によって送信された実際の測定信号RSRPRと、ビームフォーミング機能に関するeNodeB 3のO&M制御信号から導出される通信ビームB1、B2、...、BNを識別する情報とを記憶する。この事例では、実際の測定信号RSRPRは、実際のモバイル端末26によって有効に実行されるビーム取得手順の最中に生成される。eNodeB 3による通信ビームB1、B2、...、BNの割り当て及び使用が正しいか否かを検査することは、用いられる通信規格の選択機構と、実際の測定信号RSRPR(例えば、実際の測定信号RSRPRにおいて、最良の受信品質を有する通信ビームB1、B2、...、BNを示す測定値)とに基づいて、ビームフォーミング試験ユニット15によって行われる。
【0034】
詳細には(図8)、実際のモバイル端末26は、ビーム取得手順を実行し、受信したビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNに対応する実際の測定信号RSRPRを提供する(ブロック200)。このステップにおいて、追跡ユニット30は、受信した実際の測定信号RSRPRと、ビームフォーミング機能に関するeNodeB 3のO&M制御信号とを記憶する。
【0035】
次に(ブロック210)、eNodeB 3は、受信した実際の測定信号RSRPRの測定値に基づいて、実際のモバイル端末26にそれぞれの通信ビームB1、B2、...、BNを割り当てる。
【0036】
次に、eNodeB 3は、実際のモバイル端末26に割り当てられた通信ビームB1、B2、...、BNを用いて通信を開始する(ブロック220)。
【0037】
eNodeB 3が選択されたビームを介して送信を開始した後、追跡ユニット30は、実際のモバイル端末26が送信した実際の測定信号RSPRRを記憶し続け(ブロック230)、ビームフォーミング試験ユニット15は、eNodeB 3によって有効に用いられたビームが、実際のモバイル端末26の実際の測定信号RSRPSに合致するかを、O&M制御信号を通じて検査する(ブロック240)。
【0038】
図9及び図10において参照される本発明の異なる実施形態によれば、ここでは番号50によって指定される試験装置は、無線周波数においてeNodeB 3に結合され、特に、アンテナを通じて近距離測定を実行する。以降、「近距離(near field)」とは、0~2D/λまでの発信源からの距離の範囲を意味する。ただし、Dは最大アンテナ開口であり、λは放射波長である。2D/λを超える距離の範囲は、「遠距離」として規定される。
【0039】
試験装置50は、図1を参照して既に説明したのと実質的に同じように、マルチユーザトラフィック生成器10、プロトコルシミュレーションユニット11、物理層シミュレーションユニット12、シミュレーション制御ユニット13、及びビームフォーミング試験ユニット15を備える。さらに、試験装置50は、試験装置50自体がeNodeB 3のアンテナ7と通信状態で結合されるRF通信インタフェース51を備える。簡単にするため、図9は、RF通信インタフェース51を1つだけ示している。しかしながら、これは、MIMO(多入力多出力)システムにおいて、試験装置が、例えば、MIMOシステム自体の次元に従って互いに実質的に同一である複数のRF通信インタフェースを備えることができる限りにおいて、限定するものとみなされてはならない。
【0040】
1つの実施形態では、RF通信インタフェース51は、周波数コンバータ又はアップ/ダウンコンバータ52と、RF結合器53と、ビームフォーミング試験ユニット15によって制御されるそれぞれのスイッチ60を通じてRF結合器53に選択的に結合可能であるアンテナのアレイ55とを備える。
【0041】
アンテナのアレイ55は、eNodeB 3のアンテナ7とともに遮蔽室62内に封入された複数の、例えば4つのプローブアンテナ61を含む。プローブアンテナ61は、それぞれの位置に位置し、とりわけ、ビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNを受信するように回転させて選択的に用いられる。信頼度を増すために、アンテナを用いて取得された測定値は、通信ビームB1、B2、...、BNごとに対応する実際の測定信号RSRPRを規定するように平均化される。スイッチ60は、情報損失を防ぐために、用いられている規格(例えば、OFDM)のシンボル境界と同期して動作することができる。
【0042】
図10を参照すると、マルチユーザトラフィック生成器10が、少なくとも1つのシミュレーションされたモバイル端末をインスタンス化し、該シミュレーションされたモバイル端末が通信ビームB1、B2、...、BNの選択手順を開始し、以下の動作を実行する(ブロック300)、すなわち、
- プローブアンテナ61上で受信したビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNの振幅及び位相を測定し、
- ビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNごとに、実際の測定信号RSRPRを、プローブアンテナ61上で受信した信号の平均から計算する。
【0043】
実際の測定信号RSRPRは、マルチユーザトラフィック生成器10によってeNodeB 3に送信され(ブロック310)、eNodeB 3は、用いられる通信規格の選択機構に基づいて、インスタンス化されシミュレーションされたモバイル端末に通信ビームB1、B2、...、BN(例えば、実際の最大測定信号RSRPRが関連付けられた通信ビームB1、B2、...、BN)を割り当て、割り当てられた通信ビームB1、B2、...、BNを用いて通信を開始する(ブロック320)。
【0044】
シミュレーションされたモバイル端末は、eNodeB 3からダウンリンク通信フローを受信し、ビーム参照信号BRS1、BRS2、...、BRSNの測定を周期的に繰り返し(ブロック330)、ビームフォーミング試験ユニット15は、プローブアンテナ61上で受信した信号の平均から取得された実際の測定信号RSRPRを、最初に計算された実際の測定信号RSRPRと相関させる(ブロック340)。加えて、相関の結果に基づいて、ビームフォーミング試験ユニット15は、通信ビームB1、B2、...、BNがeNodeB 3によって正しく割り当てられたか否か、すなわち、eNodeB 3によって有効に用いられた通信ビームB1、B2、...、BNが、用いられる通信規格の選択機構と、取得された実際の測定信号RSRPRとに基づいて期待される通信ビームであるか否かを判定する(ブロック350)。
【0045】
近距離測定によって、有利には、遮蔽室内のeNodeB 3の発信器アンテナの直近に非常に小型のプローブアンテナを配置することが可能になり、無響室の複雑度、妨害、及びコストが回避される。
【0046】
図11及び図12において参照される更なる実施形態によれば、測定は遠距離条件における無線周波数において行われる。ここでは75によって指定される試験装置は、eNodeB 3に結合され、図9の試験装置50と実質的に同じ構造を有する。具体的には、試験装置75は、マルチユーザトラフィック生成器10、プロトコルシミュレーションユニット11、物理層シミュレーションユニット12、シミュレーション制御ユニット13、ビームフォーミング試験ユニット15、及び、試験装置50が、eNodeB 3のアンテナ7のシステムと通信状態で結合されるRF通信インタフェース76を備える。この事例では、RF通信インタフェース76は、アップ/ダウンコンバータ52、RF結合器53、及び、eNodeB 3のアンテナ7から遠距離に設置され、無響室80内にこれらのアンテナとともに密閉されるアンテナのアレイ77を備える。アンテナのアレイ77は、図8のアンテナのアレイ55のプローブアンテナの数より大きい数のN×M本のプローブアンテナ81(例えば、N=M=5であるとしてN×M=25)を含むことができる。プローブアンテナ81は、ビームフォーミング試験ユニット15によって制御されるそれぞれのスイッチ82を通じてRF結合器53に選択的に接続可能である。
【0047】
通信ビームB1、B2、...、BNが正しく用いられているか否かを検査する手順は、図10を参照して既に説明した手順と実質的に同じであるが、異なるのは、受信した信号の平均は、特定の需要に従って選択され、RF結合器53に接続されたプローブアンテナ81のサブセットに対して行うこともできる、ということである。
【0048】
説明した試験装置によって、有利には、モバイル端末とeNodeBとの間の接続中にネゴシエートされる通信ビームと、通信中にeNodeBによって有効に用いられる通信ビームとの間の対応を検査することが可能になる。具体的には、試験装置によって、プロジェクト開発中に及び設置中の試験段階において、並びに保守運営の場合において、eNodeBにおける必要不可欠な態様を識別することが可能になる。したがって、本発明は、ビームフォーミングの使用が、システム及び手順の複雑度が増すことによって引き起こされる接続問題によって相殺されることに関連付けられたデータ送信容量の増加のリスクを回避する。
【0049】
最後に、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書において説明した試験装置及び方法に対して変更及び変形を行うことができることが明白である。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)に」従った送信機能を備えるモバイル電気通信ネットワーク(1)のノード(3)に接続する通信インタフェース(6、51、76)であって、前記ノード(3)と、該ノード(3)に通信状態で結合されたモバイル端末(10、17、26)との間の通信トラフィックを受信するように構成される通信インタフェースと、
各通信ビーム(B1、B2、...、BN)に対応する通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)を受信するように構成されたビームフォーミング試験ユニット(15)であって、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)は、前記モバイル端末(10、17、26)によって受信された前記信号の品質を表すものである、ビームフォーミング試験ユニットと
を備えるモバイル電気通信ネットワークを試験する試験装置であって、
前記ビームフォーミング試験ユニット(15)は、前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する前記ノード(3)の通信設定が、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)に合致するか否かを検査するように構成されている、試験装置。
請求項2:
前記ビームフォーミング試験ユニット(15)は、前記モバイル端末(10、17、26)との通信のために前記ノード(3)によって選択された前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)が、前記モバイル端末(10、17、26)において受信された最高の信号電力を示す前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)が関連付けられる前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)に対応しているか否かを検査するように構成される、請求項1に記載の試験装置。
請求項3:
前記通信インタフェース(6)は、光ファイバを介したベースバンド接続によって前記ノード(3)に結合するように構成される、請求項1又は2に記載の試験装置。
請求項4:
前記ビームフォーミング試験ユニット(15)は、前記ノード(3)の制御信号(O&M)から前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する情報を抽出し、前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関して前記ノード(3)の前記通信設定と、前記モバイル端末(10、17、26)の前記通信設定とが合致するか否かを、前記ノード(3)の前記制御信号(O&M)に基づいて検査するように構成される、請求項3に記載の試験装置。
請求項5:
或る個体数のシミュレーションされたモバイル端末のためのシミュレーションされたトラフィックを生成するように構成されたマルチユーザトラフィック生成器(10)を備え、前記通信チャネル品質の信号は、前記マルチユーザトラフィック生成器(10)によって生成されるシミュレーションされた電力測定信号(RSRPS)を含む、請求項4に記載の試験装置。
請求項6:
前記通信インタフェース(51、76)は、無線周波数において前記ノード(3)と通信状態で結合するように構成され、周波数コンバータ(52)と、RF結合器(53)と、前記ビームフォーミング試験ユニット(15)によって制御されるそれぞれのスイッチ(60)を通じて前記RF結合器(53)に選択的に接続可能であるアンテナのアレイ(55、77)とを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の試験装置。
請求項7:
或る個体数のシミュレーションされたモバイル端末に対応するシミュレーションされたトラフィックを生成するように構成されるとともに、さらに、周期的に、
前記ノード(3)によって生成され、前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信されたビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)の振幅及び位相を測定し、
ビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)ごとに、前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記信号の平均から前記それぞれの通信チャネル品質の信号(RSRPR)を計算する
ように構成されたマルチユーザトラフィック生成器(10)を更に備える、請求項6に記載の試験装置。
請求項8:
前記ビームフォーミング試験ユニット(15)は、前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記信号の前記平均から取得された前記通信チャネル品質の信号(RSRPR)を連続した周期において相関させ、前記ノード(3)によって実際に用いられた前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)が、取得された前記通信チャネル品質の信号(RSRPR)に基づいて期待される前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)であるか否かを判定するように構成される、請求項7に記載の試験装置。
請求項9:
少なくとも1つのモバイル電気通信規格について固有のプロトコルスタックを実装するように構成されたプロトコルシミュレーションユニット(11)であって、プロトコルスタックは、それぞれのプロトコル層を実装する状態機械の集合によって規定される、プロトコルシミュレーションユニットと、
前記モバイル端末から生じるビットストリームを、変調方式に従ってシンボルに変換することを実行するとともに、送信される前記シンボルのシーケンスに基づいて前記モバイル端末に割り当てられたサブキャリアの振幅及び位相変調を実行する、複数のSDRモジュール(18)を規定するように構成された物理層シミュレーションユニット(12)と
を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の試験装置。
請求項10:
複数の指向性通信ビーム(B1、B2、...、BN)に従った送信機能を備えるモバイル電気通信ネットワーク(1)のノード(3)と、該ノード(3)に通信状態で結合されたモバイル端末(10、17、26)との間の通信トラフィックを、通信インタフェース(6、51、76)を通じて受信することと、
各通信ビーム(B1、B2、...、BN)に対応する通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)を受信することであって、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)は、前記モバイル端末(10、17、26)によって受信された前記信号の品質を表すことと、
前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する前記ノード(3)の通信設定が、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)に合致するか否かを検査することと
を含むモバイル電気通信ネットワークを試験する方法。
請求項11:
前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する前記ノード(3)の前記通信設定が、前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)に合致するか否かを検査することは、前記モバイル端末(10、17、26)との通信のために前記ノード(3)によって選択された前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)が、前記モバイル端末(10、17、26)において受信された最高の信号電力を示す前記通信チャネル品質の信号(RSRPS、RSRPR)が関連付けられる前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)に対応しているか否かを検査することを含む、請求項10に記載の方法。
請求項12:
前記ノード(3)とのベースバンド接続を確立することと、
前記ノード(3)の制御信号(O&M)から前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関する情報を抽出することと、
前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)の選択に関して、前記ノード(3)の前記通信設定と、前記モバイル端末(10、17、26)の前記通信設定とが合致するか否かを、前記ノード(3)の前記制御信号(O&M)に基づいて検査することと
を含む、請求項10又は11に記載の方法。
請求項13:
或る個体数のモバイル端末をシミュレーションすることを含み、前記通信チャネル品質の信号はシミュレーションされた電力測定信号(RSRPS)を含む、請求項12に記載の方法。
請求項14:
前記ノード(3)との無線周波数接続を確立することと、
前記ノード(3)によって生成されたビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)を、アンテナのアレイ(55、57)を通じて受信することと
を含む、請求項10又は11に記載の方法。
請求項15:
或る個体数のモバイル端末をシミュレーションすることと、周期的に、
前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記ビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)の振幅及び位相を測定することと、
ビーム参照信号(BRS1、BRS2、...、BRSN)ごとに、前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記信号の平均から前記それぞれの通信チャネル品質の信号(RSRPR)を計算することと
を含む、請求項14に記載の方法。
請求項16:
前記アンテナのアレイ(55、77)を通じて受信された前記信号の前記平均から取得された前記通信チャネル品質の信号(RSRPR)を連続した周期において相関させることと、
前記ノード(3)によって有効に用いられた前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)が、取得された前記通信チャネル品質の信号(RSRPR)に基づいて期待される前記通信ビーム(B1、B2、...、BN)であるか否かを判定することと
を含む、請求項15に記載の方法。
請求項17:
前記ノード(3)のアンテナ(7)が近距離にある状態で、前記アンテナのアレイ(55)を遮蔽室(62)内に配置することを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
請求項18:
前記ノード(3)のアンテナ(7)が遠距離にある状態で、前記アンテナのアレイ(77)を無響室(80)内に配置することを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11