(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】酸素感受性材料のための積層フィルム、パッケージ、及び方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/28 20060101AFI20230710BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230710BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B32B27/28 102
B32B27/34
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020549652
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 US2019021159
(87)【国際公開番号】W WO2019177865
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-09-02
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,サイモン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ティン,ユアン-ピン・ロバート
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0154668(US,A1)
【文献】特開平02-299836(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101389709(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0017352(US,A1)
【文献】特開平05-031866(JP,A)
【文献】特開2011-098567(JP,A)
【文献】特開2011-131579(JP,A)
【文献】特開平05-038794(JP,A)
【文献】国際公開第2014/207948(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素感受性材料を保護するための積層フィルムであって、前記積層フィルムは、
エチレンビニルアルコールポリマー層、及び
酸素捕捉層、
を備え、前記酸素捕捉層は、
ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロンMXD6、ナイロン6I,6T、及びこれらのブレンド物から選択される第一のポリアミド、
第二のポリアミドであって、
m-キシリレンジアミン部分、
イソフタル酸部分、及び
ポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分、
を含む、第二のポリアミド、並びに
金属塩触媒、
のブレンド物を含み、
ここで、前記酸素捕捉層は、ポリブタジエンを含まず、
2.5μm乃至15μmの厚さを有する、
積層フィルム。
【請求項2】
前記第二のポリアミドが、
20mol%~70mol%の前記m-キシリレンジアミン部分、
1mol%~30mol%の前記イソフタル酸部分、及び
20mol%~60mol%の前記ポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分、
を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分が、アジピン酸部分を含み、前記アジピン酸部分の前記イソフタル酸部分に対するモル比は、98:1~88:12の範囲内である、請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記第一のポリアミドが、前記酸素捕捉層の2重量%~90重量%であり、前記第二のポリアミドが、前記酸素捕捉層の10重量%~98重量%である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記金属塩触媒が、コバルト、銅、又はルテニウムの酢酸塩、ステアリン酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、又は桂皮酸塩を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
さらに、前記エチレンビニルアルコール層の第一の側に配置されたポリアミド層を含み、前記ポリアミド層は、第三のポリアミドを含み、前記酸素捕捉層は、前記エチレンビニルアルコール層の前記第一の側とは反対側である前記エチレンビニルアルコール層の第二の側に配置されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記第三のポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロンMXD6、及びナイロン6I,6Tのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の積層フィルム。
【請求項8】
さらに、
前記ポリアミド層の、前記エチレンビニルアルコールポリマー層とは反対の側に第一の結合層によって結合された第一のポリオレフィン層、及び
前記酸素捕捉層の、前記エチレンビニルアルコールポリマー層とは反対の側に第二の結合層によって結合された第二のポリオレフィン層、
を含む、請求項6又は請求項7に記載の積層フィルム。
【請求項9】
酸素感受性材料を保存するためのパッケージであって、前記パッケージは、前記パッケージの内部と前記パッケージの外部とを分離する積層フィルムを備え、前記積層フィルムは、
エチレンビニルアルコールポリマー層、及び
酸素捕捉層、
を含み、前記酸素捕捉層は、
ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロンMXD6、ナイロン6I,6T、及びこれらのブレンド物から選択される第一のポリアミド、
第二のポリアミドであって、
m-キシリレンジアミン部分、
イソフタル酸部分、及び
ポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分、
を含む、第二のポリアミド;並びに
金属塩触媒、
のブレンド物を含み、
ここで、前記酸素捕捉層はポリブタジエンを含まず、
2.5μm乃至15μmの厚さを有する、
パッケージ。
【請求項10】
前記第二のポリアミドが、
20mol%~70mol%の前記m-キシリレンジアミン部分、
1mol%~30mol%の前記イソフタル酸部分、及び
20mol%~60mol%の前記ポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分、
を含む、請求項9に記載のパッケージ。
【請求項11】
前記積層フィルムが、さらに、前記エチレンビニルアルコール層の第一の側に配置されたポリアミド層を含み、前記ポリアミド層は、第三のポリアミドを含み、前記酸素捕捉層は、前記エチレンビニルアルコール層の前記第一の側とは反対側である前記エチレンビニルアルコール層の第二の側に配置されている、請求項9又は請求項10に記載のパッケージ。
【請求項12】
前記積層フィルムが、さらに、
前記ポリアミド層の、前記エチレンビニルアルコールポリマー層とは反対の側に第一の結合層によって結合された第一のポリオレフィン層、及び
前記酸素捕捉層の、前記エチレンビニルアルコールポリマー層とは反対の側に第二の結合層によって結合された第二のポリオレフィン層、
を含む、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項13】
前記パッケージが、レトルトパウチである、請求項9乃至12のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項14】
酸素感受性材料を含有する殺菌されたパッケージを製造する方法であって、
エチレンビニルアルコールポリマー層及び酸素捕捉層を含む積層フィルムを含むパッケージを提供することであって、前記酸素捕捉層は、
ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロンMXD6、ナイロン6I,6T、及びこれらのブレンド物から選択される第一のポリアミド、並びにm-キシリレンジアミン部分、イソフタル酸部分、及びポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分を含む第二のポリアミド、並びに金属塩触媒、のブレンド物を含む、パッケージを提供すること、ここで、前記酸素捕捉層はポリブタジエンを含まず、
2.5μm乃至15μmの厚さを有する、
前記パッケージ中に前記酸素感受性材料をシールすること、
前記パッケージ及び前記パッケージ中の前記酸素感受性材料を殺菌するために、前記シールされたパッケージを熱処理に掛けること、並びに
前記殺菌されたパッケージを冷却すること、
を含む、方法。
【請求項15】
前記熱処理が、50℃~150℃の温度、90%~100%の相対湿度、及び600トル~3600トルの絶対圧力で、30~60分間の時間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シールされたパッケージを前記熱処理に掛けることが、前記エチレンビニルアルコールポリマー層の結晶性の喪失を引き起こし、前記酸素捕捉層が、少なくとも前記エチレンビニルアルコールポリマー層が再結晶化するまで、前記積層フィルムを通り抜ける酸素を捕捉する、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱処理が、前記酸素捕捉層を活性化する、請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第二のポリアミドが、20mol%~70mol%の前記m-キシリレンジアミン部分、1mol%~30mol%の前記イソフタル酸部分、及び20mol%~60mol%の前記ポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分を含む、請求項14乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記殺菌されたパッケージの冷却の24時間後、ASTM D3985に従って測定される前記積層フィルムを通る酸素透過速度が、1日あたり0.3cc/m
2未満である、請求項14乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月15日に出願され、「LAMINATE FILM,PACKAGE,AND METHODS FOR OXYGEN-SENSITIVE MATERIALS」と題する米国特許仮出願第62/643,220号の利益を主張するものであり、その開示内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、酸素感受性材料のための積層フィルムに関する。詳細には、本開示は、ポリアミドを含む積層フィルムに関する。積層フィルムは、殺菌熱処理用途に有用である。
【背景技術】
【0003】
レトルトプロセスなどの熱処理は、パッケージされた食品又は医薬を例とする酸素感受性材料を含むパッケージされた材料の殺菌に一般的に用いられている。典型的なプロセスでは、材料は、積層フィルムから形成されたパッケージの内部に配置され、次にシールされて、例えばレトルトパウチが形成される。シールされたレトルトパウチは、約121℃、2気圧のスチームで30分間、などの熱処理によって殺菌される。
【0004】
レトルトプロセスに用いられる典型的な積層フィルムは、ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール(EVOH)ポリマーの層を含む。EVOHポリマー層は、パウチ内部の材料の酸化を防止するための酸素バリア層として含まれ得る。
【発明の概要】
【0005】
しかし、レトルトプロセスの過程で、熱処理の高められた温度及び高い湿度が、EVOHポリマーの脱結晶化を引き起こし、EVOHポリマー層の酸素バリアとして作用する能力が損なわれる。「レトルトショック」として知られるこの現象は、EVOHポリマー層が乾燥して再結晶化するまで、酸素バリア特性を喪失させる結果をもたらし得る。EVOHポリマー層の酸素バリア特性の回復には、7日間から1ヶ月間掛かり得る。この回復の過程で、EVOHポリマー層を透過可能とされた酸素は、酸素感受性材料と反応して、酸素感受性材料の保存寿命を短縮し得る。
【0006】
上記に対する改善が望まれている。
本開示は、酸素感受性材料を保護するための積層フィルムを提供する。積層フィルムは、エチレンビニルアルコールポリマー層及び酸素捕捉層を含む。酸素捕捉層は、第一のポリアミド、第二のポリアミド、及び金属塩触媒を含む。第一のポリアミドは、結晶性ポリアミドホモポリマー、結晶性ポリアミドコポリマー、又はこれらのブレンド物を含む。第二のポリアミドは、m-キシリレンジアミン部分、イソフタル酸部分、及びポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分を含む。
【0007】
積層フィルムの第二のポリアミドは、20mol%~70mol%のm-キシリレンジアミン部分、1mol%~30mol%のイソフタル酸部分、及び20mol%~60mol%のポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分を含んでよい。積層フィルムの第一のポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロンMXD6、及びナイロン6I,6Tのうちの少なくとも1つを含んでよい。積層フィルムのポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分は、アジピン酸部分を含んでよく、アジピン酸部分のイソフタル酸部分に対するモル比は、98:1~88:12の範囲内である。積層フィルムの第一のポリアミドは、酸素捕捉層の2重量%~90重量%であってよく、第二のポリアミドは、酸素捕捉層の10重量%~98重量%であってよい。積層フィルムの金属塩触媒としては、コバルト、銅、又はルテニウムの酢酸塩、ステアリン酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、又は桂皮酸塩が挙げられ得る。
【0008】
積層フィルムは、さらに、エチレンビニルアルコール層の第一の側に配置されたポリアミド層を含んでよく、このポリアミド層は、第三のポリアミドを含み、酸素捕捉層は、エチレンビニルアルコール層の第一の側とは反対側であるエチレンビニルアルコール層の第二の側に配置される。積層フィルムの第三のポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロンMXD6、及びナイロン61,6Tのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0009】
積層フィルムは、さらに、ポリアミド層の、エチレンビニルアルコールポリマー層とは反対の側に第一の結合層によって結合された第一のポリオレフィン層、及び酸素捕捉層の、エチレンビニルアルコールポリマー層とは反対の側に第二の結合層によって結合された第二のポリオレフィン層を含んでよい。
【0010】
本開示は、酸素感受性材料を保存するためのパッケージを提供する。パッケージは、パッケージの内部とパッケージの外部とを分離する積層フィルムを含む。積層フィルムは、エチレンビニルアルコールポリマー層及び酸素捕捉層を含む。酸素捕捉層は、第一のポリアミド、第二のポリアミド、及び金属塩触媒のブレンド物を含む。第一のポリアミドは、結晶性ポリアミドホモポリマー、結晶性ポリアミドコポリマー、又はこれらのブレンド物を含む。第二のポリアミドは、m-キシリレンジアミン部分、イソフタル酸部分、及びポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分を含む。
【0011】
パッケージの第二のポリアミドは、20mol%~70mol%のm-キシリレンジアミン部分、1mol%~30mol%のイソフタル酸部分、及び20mol%~60mol%のポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分を含んでよい。パッケージの積層フィルムは、さらに、エチレンビニルアルコール層の第一の側に配置されたポリアミド層を含んでよく、このポリアミド層は、第三のポリアミドを含み、酸素捕捉層は、エチレンビニルアルコール層の第一の側とは反対側であるエチレンビニルアルコール層の第二の側に配置される。パッケージの積層フィルムは、さらに、ポリアミド層の、エチレンビニルアルコールポリマー層とは反対の側に第一の結合層によって結合された第一のポリオレフィン層、及び酸素捕捉層の、エチレンビニルアルコールポリマー層とは反対の側に第二の結合層によって結合された第二のポリオレフィン層を含んでよい。パッケージは、レトルトパウチであってよい。
【0012】
本開示は、酸素感受性材料を含有する殺菌されたパッケージを製造する方法を提供する。この方法は、パッケージを提供すること、パッケージ中に酸素感受性材料をシールすること、パッケージ及びパッケージ中の酸素感受性材料を殺菌するために、シールされたパッケージを熱処理に掛けること、並びに殺菌されたパッケージを冷却すること、を含む。パッケージは、エチレンビニルアルコールポリマー層及び酸素捕捉層を含む積層フィルムを含む。酸素捕捉層は、第一のポリアミド、第二のポリアミド、及び金属塩触媒のブレンド物を含む。第一のポリアミドは、結晶性ポリアミドホモポリマー、結晶性ポリアミドコポリマー、又はこれらのブレンド物を含む。第二のポリアミドは、m-キシリレンジアミン部分、イソフタル酸部分、及びポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分を含む。
【0013】
方法の熱処理は、50℃~150℃の温度、90%~100%の相対湿度、及び600トル~3600トルの絶対圧力で、30~60分間の時間であってよい。シールされたパッケージを熱処理に掛けることによって、エチレンビニルアルコールポリマー層の結晶性の喪失が引き起こされる場合があり、酸素捕捉層は、少なくともエチレンビニルアルコールポリマー層が再結晶化するまで、積層フィルムを通り抜ける酸素を捕捉し得る。方法の熱処理は、酸素捕捉層を活性化し得る。方法によって製造された殺菌されたパッケージの第二のポリアミドは、20mol%~70mol%のm-キシリレンジアミン部分、1mol%~30mol%のイソフタル酸部分、及び20mol%~60mol%のポリアミドモノマー二塩基酸前駆体部分を含んでよい。方法によって製造された殺菌されたパッケージの、ASTM D3985に従って測定される積層フィルムを通る酸素透過速度は、殺菌されたパッケージの冷却の24時間後で、1日あたり0.3cc/m2未満であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示に従う、酸素感受性材料を保存するためのパッケージの模式図である。
【
図2】
図2は、本開示に従う、
図1のパッケージに用いるための積層フィルムの断面模式図である。
【
図3】
図3は、本開示に従う、
図1のパッケージに用いるための別の積層フィルムの断面模式図である。
【
図4】
図4は、本開示に従う積層フィルムに対する熱処理後の、時間の関数としての酸素透過速度のグラフである。
【
図5】
図5は、本開示に従う積層フィルムとコントロール積層フィルムとの、熱処理後の酸素透過速度を比較するグラフである。
【
図6】
図6は、本開示に従う積層フィルムに用いるための高濃度の金属塩触媒を含む酸素捕捉層に対する、熱処理前後での時間の関数としての酸素吸収のグラフである。
【
図7】
図7は、本開示に従う積層フィルムに用いるための低濃度の金属塩触媒を含む酸素捕捉層に対する、熱処理前後での時間の関数としての酸素吸収のグラフである。
【
図8】
図8は、本開示に従う、様々な濃度の酸化性ナイロン及び金属塩触媒を含み、ポリブタジエンは含まない酸素捕捉層に対する時間の関数としての酸素吸収を、ポリブタジエンを含む酸素捕捉層と比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面と共に本発明の以下の記述を参照することによって、本発明の上記で述べた及び他の特徴、並びにそれらを達成するための手段はより明らかとなり、本発明自体もより良く理解されるであろう。
【0016】
本開示は、エチレンビニルアルコール(EVOH)ポリマー層及び酸素捕捉層を含む積層フィルムを提供する。シールされると、積層フィルムから形成されたパッケージは、パッケージ及びその中にシールされているいずれの酸素感受性材料をも殺菌するために、熱処理に掛けられ得る。上で述べたように、熱処理からの熱及び湿気は、EVOHポリマー層を脱結晶化する場合があり、そのことによって、数日又は数週間後にそれが乾燥して再結晶化するまで、酸素バリアとしてのその効果がなくなってしまう。熱処理からの熱及び湿気は、酸素捕捉層を活性化することができ、それによって、酸素捕捉層は、積層フィルムを通り抜ける酸素を吸収することができる。酸素捕捉層は、少なくともEVOHポリマー層が再結晶化して、その酸素バリア特性が回復するまでは、酸素の吸収を継続するのに充分であり得る。その結果、パッケージ内に存在する、パッケージ中の酸素感受性材料と反応する酸素の量が少なくなり、そのことが、酸素感受性材料の保存寿命を延長し得る。酸素捕捉層は、さらに、EVOHポリマー層が再結晶化した充分に後まで酸素の吸収を継続するのに充分であってよく、その目的は、パッケージからヘッドスペースの酸素を除去することであり、そのことが、酸素感受性材料の保存寿命をさらに延長し得る。
【0017】
本開示に従う積層フィルム、及び積層フィルムから形成されたパッケージは、使用前に周囲温度で保存された場合に安定であることが見出された。すなわち、積層フィルムが長期間にわたって、例えばロールされた形態で保存された場合に、酸素捕捉能力が劣化することはない。いかなる理論にも束縛されるものではないが、酸素捕捉層中の酸素捕捉剤は、酸素捕捉反応を開始するために、良好な酸素浸透と高い湿度との両方を必要とするものと考えられる。使用前の保存状態では、EVOHポリマー層が、酸素浸透層への酸素の浸透を制限することができ、酸素捕捉剤が保持される。ロールされた形態では、ロールの第一の外層が、酸素バリアとして作用し得る。積層体ロールは、積層体ロールを水分から保護するために、金属化フィルム又はフィルム積層体で包まれて、酸素捕捉層の活性化に必要な湿気が排除されてよい。
【0018】
図1は、本開示に従う、酸素感受性材料を保存するためのパッケージの模式図である。
図1は、積層フィルム12、シールされる部分14、及び内部16を含むパッケージ10を示す。
図1に示されるパッケージ10では、2つの積層フィルム12(1つを示す)が、シールされる部分14で一緒に結合されて、パッケージ10を形成している。シールされる部分14は、内部16を取り囲み、これを定める。積層フィルム12は、例えば、熱溶着、超音波溶着、又は接着剤結合によって一緒に結合されてよい。パッケージ10の3つの辺部分などシールされる部分14の一部が形成されて、第四の辺部分は、酸素感受性材料18を内部16に挿入するために開いた状態のままとしてよく、第四の辺部分は、
図1に示されるように、酸素感受性材料18を挿入した後にシールされる。内部16の酸素感受性材料18によって占有されていない部分は、パッケージ10のヘッドスペースである。
【0019】
図2は、本開示に従う、
図1のパッケージ10に用いるための積層フィルム12の断面模式図である。
図2は、積層フィルム12が、エチレンビニルアルコール(EVOH)ポリマー層20、酸素捕捉層22、ポリアミド層24、第一のポリオレフィン層26、第一の結合層28、第二のポリオレフィン層30、及び第二の結合層32を含むことを示す。
【0020】
EVOHポリマー層20は、エチレンとビニルアルコールとのコポリマーの層である。EVOHポリマー層20のエチレン部分は、EVOHポリマー層20のモルパーセント(mol%)として、少なくは24mol%、26mol%、28mol%、30mol%、32mol%、若しくは34mol%、又は多くは37mol%、40mol%、43mol%、46mol%、若しくは50mol%であってよく、又は例えば24mol%~50mol%、26mol%~46mol%、28mol%~43mol%、30mol%~40mol%、32mol%~37mol%、若しくは28mol%~32mol%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0021】
EVOHポリマー層20の平均厚さは、小さくは2.5ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、6ミクロン、若しくは8ミクロン、又は大きくは10ミクロン、12ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、若しくは25ミクロンであってよく、又は例えば2.5ミクロン~25ミクロン、3ミクロン~20ミクロン、4ミクロン~15ミクロン、5ミクロン~12ミクロン、6ミクロン~10ミクロン、若しくは10ミクロン~15ミクロンなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0022】
エチレンとビニルアルコールとの適切なコポリマーは、米国特許第3,510,464号;同第3,560,461号;同第3,847,845号;及び同第3,585,177号に開示される方法によって製造することができる。
【0023】
酸素捕捉層22は、第一のポリアミド、第二のポリアミド、及び金属塩触媒を含んでよい。第一のポリアミドは、脂肪族ポリアミド、芳香族/脂肪族ポリアミド、及びこれらの混合物から選択される、結晶性ポリアミドホモポリマー、結晶性ポリアミドコポリマー、又はこれらのブレンド物を含んでよい。脂肪族ポリアミド及び脂肪族/芳香族ポリアミドは、約10000~約100000の分子量を有してよい。
【0024】
酸素捕捉層22の厚さは、小さくは2.5ミクロン、5ミクロン、7.5ミクロン、10ミクロン、12.5ミクロン、若しくは15ミクロン、又は大きくは20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、40ミクロン、若しくは50ミクロンであってよく、又は例えば2.5ミクロン~50ミクロン、5ミクロン~40ミクロン、7.5ミクロン~30ミクロン、10ミクロン~25ミクロン、12.5ミクロン~20ミクロン、5ミクロン~25ミクロン、若しくは7.5ミクロン~15ミクロンなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0025】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリ(4-アミノ酪酸)(ナイロン4)、ポリ(6-アミノヘキサン酸)(ナイロン6、ポリ(カプロラクタム)とも称される)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10-アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(12-アミノドデカン酸)(ナイロン12)、ナイロン4,6、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン6,10)、ポリ(ヘプタメチレンピメラミド)(ナイロン7,7)、ポリ(オクタメチレンスベラミド)(ナイロン8,8)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン6,9)、ポリ(ノナメチレンアゼラミド)(ナイロン9,9)、ポリ(デカメチレンアゼラミド)(ナイロン10,9)、ポリ(テトラメチレンジアミン-co-シュウ酸)(ナイロン4,2)、n-ドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンとのポリアミド(ナイロン6,12)、ドデカメチレンジアミンとn-ドデカン二酸とのポリアミド(ナイロン12,12)などのホモポリマーが挙げられ得る。
【0026】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6,6/6)、ヘキサメチレンアジパミド/カプロラクタムコポリマー(ナイロン6/6,6)、トリメチレンアジパミド/ヘキサメチレンアゼライアミドコポリマー(ナイロントリメチル6,2/6,2)、ヘキサメチレンアジパミド-ヘキサメチレン-アゼライアミドカプロラクタムコポリマー(ナイロン6,6/6,9/6)などのコポリマーが挙げられ得る。また、本明細書で特に記載されない他のナイロンも挙げられる。
【0027】
脂肪族/芳香族ポリアミドとしては、ポリ(テトラメチレンジアミン-co-イソフタル酸)(ナイロン4,I)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン6,I)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレン-イソフタラミド(ナイロン6,6/6I)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6,6/6T)、ポリ(2,2,2-トリメチルヘキサメチレンテレフタラミド)、ポリ(m-キシリレンアジパミド)(MXD6)、ポリ(p-キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド)、ポリアミド6I/6T、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6/MXDT/I、ポリアミドMXDIなどが挙げられ得る。2つ以上の脂肪族/芳香族ポリアミドのブレンド物も、用いられてよい。脂肪族/芳香族ポリアミドは、公知の製造技術によって製造されてよく、又は市販業者から入手されてもよい。他の適切なポリアミドは、参照により本明細書に援用される米国特許第4,826,955号及び同第5,541,267号に記載されている。
【0028】
第一のポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロンMXD6、若しくはナイロン6I,6T、又はこれらの混合物が挙げられ得る。第一のポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、又はナイロン66/6、及びこれらの混合物が挙げられ得る。
【0029】
本発明の実践において用いられるポリアミドは、市販業者から入手されてよく、又は公知の製造技術に従って製造されてもよい。例えば、ポリ(カプロラクタム)は、AdvanSix,Parsippany,N.J.から、商品名AEGIS(登録商標)で入手することができる。
【0030】
ポリアミドの製造に有用である一般的な手順は、本技術分野において周知である。そのような手順は、二塩基酸とジアミンとの反応を含み得る。ポリアミドを製造するための有用な二塩基酸としては、以下の一般式で表されるジカルボン酸が挙げられ:
HOOC-Z-COOH
式中、Zは、アジピン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、及びグルタル酸など、少なくとも2個の炭素原子を含有する二価の脂肪族ラジカルを表す。ジカルボン酸は、脂肪族酸、又はイソフタル酸及びテレフタル酸などの芳香族酸であってよい。
【0031】
ポリアミドの製造に有用であるジアミンとしては、以下の式を有するジアミンが挙げられ:
H2N(CH2)nNH2
式中、nは、1~16の整数であり、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、芳香族ジアミンでp-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタンなど、アルキル化ジアミンで2,2-ジメチルペンタメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び2,4,4-トリメチルペンタメチレンジアミンなど、さらにはジアミノジシクロヘキシルメタンなどの脂環式ジアミン、並びに他の化合物などの化合物が挙げられる。他の有用なジアミンとしては、ヘプタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0032】
第二のポリアミドは、m-キシリレンジアミン部分、イソフタル酸部分、及びポリアミドモノマー前駆体を含む少なくとも1つのさらなる部分を含んでよい。第二のポリアミドとしては、m-キシリレンジアミン部分(mXDA)、イソフタル酸(IPA)部分、及びポリアミドモノマー前駆体を含む少なくとも1つのさらなる部分を有する半結晶性ポリアミドコポリマーが挙げられ得る。mXDA-IPAコポリマーのさらなるポリアミドモノマー前駆体部分としては、上で述べたジカルボン酸(二塩基酸)が挙げられ得る。さらなるポリアミドモノマー前駆体部分としては、アジピン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、及びグルタル酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられ得る。さらなるポリアミドモノマー前駆体部分は、アジピン酸から成っていてよい。
【0033】
第二のポリアミドのm-キシリレンジアミン部分は、少なくは20mol%、25mol%、30mol%、35mol%、40mol%、若しくは45mol%、又は多くは50mol%、55mol%、60mol%、65mol%、若しくは70mol%であってよく、又は例えば20mol%~70mol%、25mol%~65mol%、30mol%~60mol%、35mol%~55mol%、40mol%~50mol%、40mol%~60mol%、若しくは45mol%~55mol%などの上記の値のいずれか2つによって定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0034】
第二のポリアミドのイソフタル酸部分は、少なくは1mol%、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%、若しくは6mol%、又は多くは12mol%、15mol%、18mol%、20mol%、25mol%、若しくは30mol%であってよく、又は例えば1mol%~30mol%、2mol%~25mol%、3mol%~20mol%、4mol%~18mol%、5mol%~15mol%、6mol%~12mol%、3mol%~15mol%、若しくは4mol%~12mol%などの上記の値のいずれか2つによって定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0035】
第二のポリアミドのポリアミドモノマー前駆体部分は、少なくは20mol%、22mol%、24mol%、26mol%、28mol%、30mol%、若しくは35mol%、又は多くは40mol%、45mol%、50mol%、55mol%、若しくは60mol%であってよく、又は例えば20mol%~60mol%、24mol%~55mol%、26mol%~50mol%、30mol%~45mol%、35mol%~40mol%、30mol%~50mol%、若しくは35mol%~45mol%などの上記の値のいずれか2つによって定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0036】
第二のポリアミドは、約20mol%~約70mol%のm-キシリレンジアミン部分、約1mol%~約30mol%のイソフタル酸部分、及び約20mol%~約60mol%のポリアミドモノマー前駆体部分を含んでよい。第二のポリアミドは、約40mol%~約60mol%のm-キシリレンジアミン部分、約3mol%~約15mol%のイソフタル酸部分、及び約30mol%~約50mol%のポリアミドモノマー前駆体部分を含んでよい。第二のポリアミドは、約45mol%~約55mol%のm-キシリレンジアミン部分、約4mol%~約12mol%のイソフタル酸部分、及び約35mol%~約45mol%のポリアミドモノマー前駆体部分を含んでよい。第一及び第二のポリアミドの各々は、本技術分野において公知である技術を用いて形成されてよい。
【0037】
二塩基酸部分のイソフタル酸部分に対するモル比は、大きくは99:1、98:1、98:2、95:5、小さくは92:8、90:10、88:12、85:15、又は例えば99:1~85:15若しくは98:1~88:12などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってよい。
【0038】
二塩基酸部分のイソフタル酸部分に対するモル比が大き過ぎる場合、得られるフィルムの結晶化が速過ぎることがあり、その結果、本開示のフィルムほど透明ではないフィルムとなるものと考えられる。また、二塩基酸部分のイソフタル酸部分に対するモル比が小さ過ぎる場合は、フィルムの重合が、積層フィルム12などの積層フィルムを効率よく製造するには遅くなり過ぎるものと考えられる。
【0039】
酸素捕捉層22中に存在する第一のポリアミドは、少なくは2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、若しくは35重量%、又は多くは40重量%、45重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、若しくは90重量%であってよく、又は例えば2重量%~90重量%、5重量%~80重量%、10重量%~70重量%、15重量%~60重量%、20重量%~50重量%、25重量%~45重量%、30重量%~40重量%、5重量%~45重量%、若しくは5重量%~15重量%などの上記の値のいずれか2つによって定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0040】
酸素捕捉層22中に存在する第二のポリアミドは、少なくは10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%、60重量%、若しくは65重量%、又は多くは70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、97重量%、若しくは98重量%であってよく、又は例えば10重量%~98重量%、20重量%~95重量%、30重量%~90重量%、40重量%~85重量%、50重量%~80重量%、55重量%~75重量%、60重量%~70重量%、10重量%~60重量%、若しくは85重量%~95重量%などの上記の値のいずれか2つによって定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0041】
酸素捕捉層22中に存在する第一のポリアミドは、約2重量パーセント(重量%)~約900重量%であってよく、酸素捕捉層22中に存在する第二のポリアミドは、約10重量%~約98重量%であってよい。酸素捕捉層22中に存在する第一のポリアミドは、約5重量%~約45重量%であってよく、酸素捕捉層22中に存在する第二のポリアミドは、約55重量%~約95重量%であってよい。酸素捕捉層22中に存在する第一のポリアミドは、約5重量%~約15重量%であってよく、酸素捕捉層22中に存在する第二のポリアミドは、約85重量%~約95重量%であってよい。上記の重量パーセントは、酸素捕捉層22全体に対する重量パーセントである。
【0042】
金属塩触媒は、酸化促進触媒であってよい。金属塩触媒は、低分子量酸化促進金属塩触媒であってよい。金属塩触媒は、コバルトイオン、銅イオン、又はルテニウムイオンを含んでよい。金属塩触媒は、アセテート、ステアレート、プロピオネート、ブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、オクタノエート、ノナノエート、ネオデカノエート、ウンデカノエート、ドデカノエート、リノレート、ベンゾエート、サリチレート、及びシンナメート、並びにこれらの組み合わせとして存在する対イオンを含んでよい。金属塩触媒は、カルボン酸コバルト、カルボン酸ルテニウム、及び/又はカルボン酸銅を含んでよい。金属塩触媒は、カルボン酸コバルトを含んでよい。金属塩触媒は、ステアリン酸コバルトを含んでよい。
【0043】
酸素捕捉層22中に存在する金属塩触媒は、少なくは0.001重量%、0.002重量%、0.005重量%、0.01重量%、若しくは0.015重量%、又は多くは0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、0.7重量%、若しくは1重量%であってよく、又は例えば0.001重量%~1重量%、0.002重量%~0.7重量%、0.005重量%~0.5重量%、0.01重量%~0.2重量%、若しくは0.015重量%~0.1重量%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。上記の重量パーセントは、酸素捕捉層22全体に対する重量パーセントである。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内」の句は、文字通り、いずれの範囲もそのような句の前に列挙された値のいずれか2つから選択されてよいことを意味し、その値が、リストの低い方の部分にあるか、又はリストの高い方の部分にあるかに関わらない。例えば、一対の値は、2つの低い方の値から、2つの高い方の値から、又は1つの低い方の値及び1つの高い方の値から選択されてよい。
【0045】
酸素捕捉層22は、さらに、さらなるポリマー成分を含んでよい。このさらなるポリマー成分としては、さらなるポリアミド及びポリアミドコポリマー、ポリエチレンテレフタレート及びPETコポリマー、ポリオレフィン、アクリロニトリルコポリマー、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが挙げられ得る。
【0046】
ポリアミド層24は、第三のポリアミドを含んでよい。第三のポリアミドは、酸素捕捉層22の第一のポリアミドについて上記で述べたように、脂肪族ポリアミド、脂肪族/芳香族ポリアミド、及びこれらの混合物から選択されるいずれのホモポリマー又はコポリマーを含んでもよい。第三のポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロンMXD6、若しくはナイロン6I,6T、又はこれらの混合物が挙げられ得る。第三のポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、又はナイロン66/6、及びこれらの混合物が挙げられ得る。いかなる理論にも束縛されるものではないが、ポリアミド層24は、EVOHポリマー層20を強化するだけではなく、熱処理プロセス後にEVOHポリマー層20から水分を吸収することによって、EVOHポリマー層20に対する保護層として作用し得るものと考えられる。EVOHポリマー層20から水分を吸収することは、EVOHポリマー層20がその酸素バリア特性をより素早く回復する補助となり得るものと考えられる。
【0047】
ポリアミド層24の厚さは、小さくは1ミクロン、1.5ミクロン、2ミクロン、2.5ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、若しくは6ミクロン、又は大きくは8ミクロン、10ミクロン、12ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、若しくは25ミクロンであってよく、又は例えば1ミクロン~25ミクロン、1.5ミクロン~20ミクロン、2ミクロン~15ミクロン、2.5ミクロン~12ミクロン、3ミクロン~10ミクロン、4ミクロン~8ミクロン、2ミクロン~20ミクロン、若しくは2.5ミクロン~15ミクロンなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0048】
第一のポリオレフィン層26及び第二のポリオレフィン層30は、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸、又はアイオノマーを含んでよい。第一のポリオレフィン層26及び第二のポリオレフィン層30は、ポリプロピレンを含んでよい。第一のポリオレフィン層26及び第二のポリオレフィン層30は、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレンを含んでよい。いくつかの実施形態では、第一のポリオレフィン層26及び第二のポリオレフィン層30は、同じポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第一のポリオレフィン層26及び第二のポリオレフィン層30は、異なるポリマーを含む。
【0049】
第一のポリオレフィン層26及び第二のポリオレフィン層のいずれかの厚さは、小さくは2.5ミクロン、3.5ミクロン、5ミクロン、7.5ミクロン、10ミクロン、若しくは15ミクロン、又は大きくは25ミクロン、35ミクロン、50ミクロン、70ミクロン、100ミクロン、若しくは150ミクロンであってよく、又は例えば2.5ミクロン~150ミクロン、3.5ミクロン~100ミクロン、5ミクロン~70ミクロン、7.5ミクロン~50ミクロン、10ミクロン~35ミクロン、15ミクロン~20ミクロン、10ミクロン~50ミクロン、若しくは25ミクロン~50ミクロンなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0050】
第一の結合層28及び第二の結合層32は、不飽和ポリカルボン酸及びその無水物から成る群より選択される少なくとも1つの官能基部分を有する変性ポリオレフィン組成物などの接着性ポリマーを含んでよい。そのような不飽和カルボン酸及び無水物としては、マレイン酸及び無水物、フマル酸及び無水物、クロトン酸及び無水物、シトラコン酸及び無水物、イタコン酸及び無水物などが挙げられ得る。変性ポリオレフィンとしては、参照により本明細書に援用される米国特許第3,481,910号;同第3,480,580号;同第4,612,155号、及び同第4,751,270号に記載の組成物が挙げられ得る。
【0051】
変性ポリオレフィン中に存在する官能基部分は、少なくは0.001重量%、0.002重量%、0.005重量%、0.01重量%、0.02重量%、若しくは0.05重量%、又は多くは0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、5重量%、若しくは10重量%であってよく、又は例えば0.001重量%~10重量%、0.002重量%~5重量%、0.005重量%~2重量%、0.01重量%~1重量%、0.02重量%~0.5重量%、0.05重量%~0.2重量%、0.005重量%~5重量%、若しくは0.01重量%~2重量%などの上記の値のいずれか2つによって定められるいずれかの範囲内であってもよい。上記の重量パーセントは、変性ポリオレフィンの総重量に対する重量パーセントである。
【0052】
第一の結合層28及び第二の結合層32は、米国特許第5,139,878号に記載のものなどのオレフィンとα,β-エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステルとのアルキルエステルコポリマーを含んでよい。
【0053】
第一の結合層28及び第二の結合層32のいずれかの厚さは、小さくは1ミクロン、1.5ミクロン、2ミクロン、2.5ミクロン、3ミクロン、若しくは4ミクロン、又は大きくは6ミクロン、8ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、若しくは25ミクロンであってよく、又は例えば1ミクロン~25ミクロン、1.5ミクロン~20ミクロン、2ミクロン~15ミクロン、2.5ミクロン~10ミクロン、3ミクロン~8ミクロン、4ミクロン~6ミクロン、2ミクロン~20ミクロン、若しくは2.5ミクロン~10ミクロンなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0054】
図2において、ポリアミド層24は、EVOHポリマー層20の外部に向いた側に配置され、酸素捕捉層22は、EVOHポリマー層20の外部に向いた側とは反対側のEVOHポリマー層20の内部に向いた側に配置されている。第一のポリオレフィン層26は、酸素捕捉層22の内部に向いた側に、第一の結合層28によって結合されている。第二のポリオレフィン層30は、ポリアミド層24の外部に向いた側に、第二の結合層32によって結合されている。
図2では、第一のポリオレフィン層26の内部に向いた面は、積層フィルム12の内部面でもあり、第二のポリオレフィン層30の外部に向いた面は、積層フィルム12の外部面である。
【0055】
いくつかの実施形態では、ポリアミド層24は、省略されてよい。そのような実施形態では、第二のポリオレフィン層30は、EVOHポリマー層20の外部に向いた側に、第二の結合層32によって結合されてよい。
【0056】
図1及び
図2を合わせて考えると、使用時、パッケージ10は、パッケージ10の内部16に酸素感受性材料18を入れてシールされ、レトルトパウチが形成され得る。シールされたパッケージ10は、パッケージ10及びその中の酸素感受性材料18を殺菌するために、熱処理に掛けられ得る。殺菌されたパッケージ10は、冷却され得る。
【0057】
熱処理の温度は、低くは50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、若しくは119℃、又は高くは120℃、123℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、若しくは160℃であってよく、又は例えば50℃~150℃、80℃~150℃、80℃~130℃、90℃~150℃、100℃~140℃、若しくは119℃~123℃などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0058】
熱処理の相対湿度は、低くは90%、92%、若しくは94%、又は高くは96%、98%、若しくは100%であってよく、又は例えば90%~100%、92%~98%、94%~96%、若しくは98%~100%などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0059】
熱処理の絶対圧力は、低くは600トル、700トル、800トル、1000トル、1200トル、若しくは1400トル、又は高くは1600トル、1900トル、2200トル、2600トル、3000トル、若しくは3600トルであってよく、又は例えば600トル~3600トル、700トル~3000トル、800トル~2600トル、1000トル~2200トル、1200トル~1900トル、若しくは1400トル~1600トルなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0060】
パッケージ10を熱処理に掛けることは、EVOHポリマー層20の酸素バリア特性を実質的に喪失させ得る。上記で述べたように、熱処理に起因するEVOHポリマー層20の結晶性の喪失が、EVOHポリマー層20を酸素透過性とする結晶性の喪失を引き起こし得るものと考えられる。熱処理はまた、酸素捕捉層22を活性化し得るものでもあり、それによって、一時的に酸素透過性となったEVOHポリマー層20を酸素が通り抜けるのに応じて、酸素捕捉層22による酸素の捕捉が引き起こされる。酸素捕捉層22の厚さは、少なくともEVOHポリマー層20の酸素バリア特性が回復されるまでは酸素を捕捉するのに充分であり得る。
【0061】
したがって、本開示に従う積層フィルムは、非常に優れた酸素バリア特性を呈することができる。熱処理の24時間後における積層フィルム12を通る酸素透過速度は、低くは1日あたり0.05cc/m2(cc/m2-日)、0.1cc/m2-日、0.2cc/m2-日、0.3cc/m2-日、若しくは0.4cc/m2-日、又は高くは0.5cc/m2-日、0.6cc/m2-日、0.7cc/m2-日、0.8cc/m2-日、0.9cc/m2-日、若しくは1cc/m2-日であってよく、又は0.05cc/m2-日~1cc/m2-日、0.1cc/m2-日~0.9cc/m2-日、0.2cc/m2-日~0.8cc/m2-日、0.3cc/m2-日~0.7cc/m2-日、0.4cc/m2-日~0.6cc/m2-日などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。酸素透過速度は、ASTM D-3985の手順を用いて、23℃、相対湿度85%、及び大気圧下の100%酸素で測定され得る。
【0062】
酸素バリア特性が無傷である場合のEVOHポリマー層を通る酸素透過速度は、約0.5cc/m2-日であると考えられる。熱処理の24時間後における積層フィルム12を通る酸素透過は、0.5cc/m2-日未満、0.4cc/m2-日未満、0.3cc/m2-日未満、0.2cc/m2-日未満、0.1cc/m2-日未満、又は0.05cc/m2-日未満であってよい。
【0063】
図3は、本開示に従う、
図1のパッケージ10に用いるための別の積層フィルムの断面模式図である。
図3は、第一のEVOHポリマー層36、第二のEVOHポリマー層38、酸素捕捉層40、第一のポリオレフィン層42、第一の結合層44、第二のポリオレフィン層46、及び第二の結合層48を含む積層フィルム34を示す。第一のEVOHポリマー層36及び第二のEVOHポリマー層38は、
図2を参照してEVOHポリマー層20について上記で述べた通りであってよい。酸素捕捉層40、第一のポリオレフィン層42、第一の結合層44、第二のポリオレフィン層46、及び第二の結合層48は、
図2を参照して上記で述べたこれらの対応する層に従っていてよい。
【0064】
図3において、第一のEVOHポリマー層36は、酸素捕捉層40の内部に向いた側に配置され、第二のEVOHポリマー層38は、酸素捕捉層40の内部に向いた側とは反対側の酸素捕捉層40の外部に向いた側に配置されている。第一のポリオレフィン層42は、第一のEVOHポリマー層36の内部に向いた側に、第一の結合層44によって結合されている。第二のポリオレフィン層46は、第二のEVOHポリマー層38の外部に向いた側に、第二の結合層48によって結合されている。
図3では、第一のポリオレフィン層42の内部に向いた面は、積層フィルム34の内部面でもあり、第二のポリオレフィン層46の外部に向いた面は、積層フィルム34の外部面である。
【0065】
別の選択肢として、1又は複数の接着性ポリマーが、上記で述べた積層フィルムのいくつかの層に直接ブレンド又は共押出しされて、結合層が省略されてよく、こうして、フィルム中の層の数を最小限に抑えながら接着が提供される。
【0066】
酸素捕捉層に用いるための組成物は、第一のポリアミド及び第二のポリアミド、さらには金属塩触媒の溶融押出し配合を介して製造されてよい。組成物は、ポリアミド成分の各々の固体粒子又はペレットをドライブレンドし、続いて、押出機、ロールミキサーなどの適切な混合手段でこの混合物と何らかの他の成分とを溶融ブレンドすることによって形成されてよい。
【0067】
組成物のための典型的な溶融温度は、低くは230℃、235℃、若しくは240℃、又は高くは260℃、280℃、若しくは300℃であってよく、又は例えば230℃~300℃、235℃~280℃、若しくは240℃~260℃などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0068】
ブレンドは、好ましくは、実質的に均一なブレンド物を得るのに適する時間にわたって行われる。そのような時間は、当業者によって容易に決定され得る。所望される場合、組成物は、冷却されて、さらなる処理のためにペレットに切断されてよく、繊維、フィラメント、若しくは成形された要素に押出されてもよく、又はフィルムに成形され、所望に応じて、本技術分野で周知の手段によって一軸若しくは二軸延伸又は配向されてよもよい。
【0069】
本開示の積層フィルムは、押出し、ラミネーション、押出しラミネーション、共射出成形、延伸ブロー成形、共押出しブロー成形、射出延伸ブロー成形、共射出延伸ブロー成形、及び熱成形技術を介することを含む従来の加工技術を用いて、様々な物品、ボトル、容器などを製造するために用いられてよい。
【0070】
積層フィルム、シート、容器、及びボトルを製造するための加工技術は、本技術分野で周知である。例えば、酸素捕捉層の第一のポリアミド及び第二のポリアミドが予めブレンドされ、続いてそのブレンド物が押出機の1又は複数のインフィードホッパーにフィードされてよく、又は各成分が、押出機のインフィードホッパーにフィードされ、続いて押出機中でブレンドされてもよい。
図2~4を参照して上記で述べた他の個々の層のための材料は、同じ番号の押出機のインフィードホッパーにフィードされてよく、各押出機は、1又は複数の層のための材料を扱う。個々の押出機からの溶融されて可塑化された流れが、単一マニホールドの共押出し用ダイにフィードされてよい。ダイの中にある間に、層は並置されて組み合わされ、続いてポリマー材料の単一の多層フィルムとしてダイから排出される。ダイからの排出後、フィルムは、第一の温度制御キャスティングロール上にキャストされ、第一の温度制御キャスティングロールに沿って通され、続いて、通常は第一の温度制御キャスティングロールよりも低温である第二の温度制御ロールに送られてよい。温度制御ロールは、主として、ダイから排出された後のフィルムの冷却速度を制御する。冷却され、硬化されると、得られた積層フィルムは、実質的に透明であり得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、積層フィルムは、バブルインフレーション積層フィルム(bubble blown laminate film)のためのマルチマニホールド円形ダイヘッドを含むインフレーションフィルム装置によって製造されてよく、可塑化された材料が、そのダイを通して押出されて積層フィルムバブルを形成することができ、バブルが最終的に折り畳まれて、積層フィルムに成形することができる。共押出しによってフィルム及びシート積層体を形成するプロセスは、一般的に公知である。例えば、“Modern Plastics Encyclopedia”, Vol. 56, No. 10A, pp. 131-132, McGraw Hill, October 1979を参照されたい。別の選択肢として、個々の層がまずシートに成形され、続いて熱及び圧力下、中間接着層あり又はなしで、一緒に積層されてもよい。
【0072】
本開示の積層フィルムは、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)及びPETコポリマー、ポリオレフィン、エチレンビニルアルコールコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、フルオロポリマーなどの別の熱可塑性ポリマーの1又は複数の層を含むパウチ、ボトル、又は容器として成形されてよい。本開示の積層フィルムは、PET又はポリオレフィン層が構造層として機能する多層ボトル及び熱成形容器の構築及び製造におけるバリア層として特に適している。そのようなPET/ポリアミド多層ボトルは、上記で述べた射出延伸ブロー成形プロセスに類似の共射出延伸ブロー成形プロセスによって製造することができる。同様に、そのような多層ボトルは、共押出しブロー成形によって製造することもできる。後者のプロセスは、通常、接着のために、所望に応じて存在してよい適切な接着結合層を用いる。
【0073】
共射出延伸ブロー成形プロセスのために有用なポリエステルとしては、約0.5~約1.2dl/gの固有粘度(I.V.)範囲、より好ましくは約0.6~約1.0dl/gのI.V.範囲、最も好ましくは約0.7~約0.9dl/gのI.V.範囲であるポリエチレンテレフタレート及びそのコポリマーが挙げられる。共押出しブロー成形に用いられるポリオレフィンは、好ましくは、約2~約6個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンモノマーのポリマーを含み、アルファ-オレフィンのホモポリマー、コポリマー(グラフトコポリマーを含む)、及びターポリマーなどが挙げられる。そのような例としては、限定されないが、超低密度ポリエチレン(ULDPE);低密度ポリエチレン(LDPE);直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE);メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE);中密度ポリエチレン(MDPE);高密度ポリエチレン(HDPE);ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリブテン-1;ポリ-3-メチルブテン-1;ポリ-ペンテン-1;ポリ-4-メチルペンテン-1;ポリイソブチレン;ポリヘキセンなどが挙げられる。そのようなポリオレフィンは、約1000~約1000000、好ましくは約10000~約500000の重量平均分子量を有し得る。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、並びにこれらのコポリマー及びブレンド物が挙げられ得る。
【0074】
本開示に従う積層フィルム及びパッケージは、所望に応じて、その使用が当業者に周知である1又は複数の従来の添加剤も含んでいてよい。そのような添加剤の使用は、加工性の向上、さらには製品又はそれから形成される物品の改善において望ましい場合がある。そのような例としては、酸化安定剤及び熱安定剤、潤滑剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤、染料、顔料、及び他の着色剤、紫外光安定剤、粒子状及び繊維状充填剤を含む有機又は無機充填剤、強化剤、核剤、可塑剤、さらには本技術分野において公知の他の従来の添加剤が挙げられる。そのような添加剤は、積層フィルム及び積層フィルムを含むパッケージに対して約10重量%までの量で用いられてよい。
【0075】
本開示に従って製造された積層フィルムは、約1.1:1~約10:1のドロー比で、好ましくは約2:1~約5:1のドロー比でのフィルムの延伸又はドローイングによって配向されてよい。「ドロー比」の用語は、本明細書で用いられる場合、ドローイングの方向の寸法が増加することを示す。したがって、2:1のドロー比を有するフィルムは、ドローイングプロセスの過程でその長さが2倍とされたものである。一般的に、フィルムのドローイングは、一連の予備加熱ロール及び加熱ロール上を通過させることによって行われる。加熱されたフィルムは、一式のニップロールを通され、フィルムが進入する上流側に位置するニップロールよりも下流側のニップロールの方が速度が速い。速度の変化は、フィルムの延伸によって相殺される。
【0076】
フィルムは、当業者に周知の方法を用いて、所望されるいずれの方向に延伸又は配向されてもよい。フィルムは、フィルム形成装置から引き出されるフィルムの移動方向と一致する、本技術分野において「縦方向」とも称される長手方向、若しくは縦方向に対して直角であり、本技術分野において「横方向」と称される方向のいずれかに一軸延伸されてよく、又は長手方向及び横方向の両方に二軸延伸されてもよい。フィルムは、そのバリア特性をさらに高めるために、アニーリング又は熱処理をさらに受けてもよい。アニーリング又は熱処理プロセスには、加熱流体又は赤外線ヒーターが用いられてよい。そのような技術は、本技術分野において周知である。
【0077】
本開示に従う積層フィルムの厚さは、小さくは5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、40μm、50μm、若しくは60μm、又は大きくは75μm、100μm、150μm、200μm、300μm、若しくは400μmであってよく、又は例えば5μm~400μm、10μm~200μm、15μm~100μm、60μm~300μm、75μm~150μm、若しくは100μm~200μmなどの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。このような厚さが、非常にフレキシブルなフィルムが得られるために好ましいが、他のフィルム厚さも、特定の必要性を満たし、それでも本発明の範囲内に包含されるように製造されてよいことは理解されたい。考慮されるそのような厚さとしては、室温(およそ20℃)ではそれほどフレキシブルではないプレート、厚フィルム、及びシートが挙げられる。
【0078】
ボトルなどの非フレキシブルな物品が所望される場合、示差走査熱量測定法によって特定される積層フィルムのポリマー層のガラス転移温度(Tg)は、低くは20℃、40℃、若しくは60℃、又は高くは90℃、100℃、若しくは110℃であってよく、又は例えば20℃~110℃、40℃~100℃、若しくは60℃~90℃などの上記の値のいずれか2つの間で定められるいずれかの範囲内であってもよい。
【0079】
120℃の温度が、一般的には、歪みのないボトルへの純PETの再加熱延伸ブロー成形性のための上限温度である。加えて、多層ボトルの製造のための共射出延伸ブロー成形プロセスでは、積層フィルムのポリマー層のTgが約110℃を超えると、酸素バリア特性を喪失させる可能性のある広範なボイド形成が発生する可能性がある。
【0080】
実施例
例1-積層フィルムの酸素透過速度
図2を参照して上記に示し、記載した7層の積層フィルムを、上記で述べたインフレーションフィルム装置を通した共押出しによって形成した。酸素捕捉層は、第一のポリアミドとしての68重量%のポリカプロラクタム(ナイロン6)、30重量%の第二のポリアミド、2重量%のポリブタジエン、及び230ppmのステアリン酸コバルト触媒から構成した。酸化性ナイロンとも称される第二のポリアミドは、50mol%のm-キシリレンジアミン部分、12mol%のイソフタル酸部分、及び38mol%のアジピン酸部分から構成した。ポリアミド層は、ナイロン6から構成した。第一のポリオレフィン層及び第二のポリオレフィン層は、各々、ポリプロピレンから構成した。第一の結合層及び第二の結合層は、各々、E.I.du Pont de Nemours and Company,Inc.製の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であるBYNEL(登録商標)41 E687から構成した。
【0081】
EVOHポリマー層は、9.6μmの厚さであった。酸素捕捉層は、12μmの厚さであった。ポリアミド層は、12μmの厚さであった。第一のポリオレフィン層は、21.6μmの厚さであり、第二のポリオレフィン層は、12μmの厚さであった。第一の結合層及び第二の結合層は、各々、1.6μmの厚さであった。積層フィルムの総厚さは、約80μmであった。
【0082】
積層フィルムを、90℃のウォーターバスに30分間浸漬することから成る熱処理に掛けた。熱処理の直後に、Mocon Oxy-Tran、モデル2/21で、ASTM D3985の酸素透過試験に従って、積層フィルムの酸素透過速度を測定した。試験条件は、23℃、相対湿度85%、大気圧下の100%酸素であった。結果を
図4に示す。
【0083】
図4は、熱処理後の積層フィルムを通る酸素透過速度の時間の関数としてのグラフである。ライン50は、約7.8日間にわたる酸素透過速度を示す。参照として、ライン52は、酸素捕捉層がなく同じ厚さのEVOHポリマー層であるが、熱処理に掛けていない(すなわち、その酸素バリア特性がまったく損なわれていない)積層フィルムの予測される酸素透過速度を示しており、それは、0.5cc/m
2-日である。
図4に示されるように、EVOHポリマー層の損なわれた状態に起因する初期の高い酸素透過速度が、酸素捕捉層の活性化に従って素早く低下している。積層フィルムは、初期の高い酸素透過速度から、約16時間後には0.5cc/m
2-日未満まで素早く回復している。その後の7日間にわたって、積層フィルムは、0.3cc/m
2-日よりも充分に低い酸素透過速度を維持している。最終的には、積層フィルムの酸素透過速度は、酸素捕捉層の酸素吸収能力が枯渇するために、酸素バリア特性がまったく損なわれていないEVOHポリマー層の酸素透過速度まで上昇することになると考えられる。
【0084】
例2-積層フィルムの酸素透過速度の比較
図2を参照して上記に示し、記載した7層の積層フィルムを、上記で述べたインフレーションフィルム装置を通した共押出しによって形成した。酸素捕捉層は、第一のポリアミドとしての68重量%のナイロン6、30重量%の第二のポリアミド、2重量%のポリブタジエン、及び230ppmのステアリン酸コバルト触媒から構成した。酸化性ナイロンとも称される第二のポリアミドは、50mol%のm-キシリレンジアミン部分、12mol%のイソフタル酸部分、及び38mol%のアジピン酸部分から構成した。ポリアミド層は、ナイロン6/66から構成した。第一のポリオレフィン層及び第二のポリオレフィン層は、各々、ポリエチレンから構成した。第一の結合層及び第二の結合層は、各々、LLDPE(BYNEL(登録商標)41 E687)から構成した。
【0085】
EVOHポリマー層は、7μmの厚さであった。酸素捕捉層は、11μmの厚さであった。ポリアミド層は、11μmの厚さであった。第一のポリオレフィン層及び第二のポリオレフィン層は、各々、38μmの厚さであった。第一の結合層及び第二の結合層は、各々、2.5μmの厚さであった。積層フィルムの総厚さは、約110μmであった。
【0086】
第二の7層積層コントロールフィルムを、直前で述べた積層フィルムと同様にして形成したが、但し、酸素捕捉層の代わりに厚さ11μmのナイロン6/66層を含む。
積層フィルム及びコントロール積層フィルムを、90℃のウォーターバスに40分間浸漬することから成る熱処理に掛けた。熱処理の直後に、Mocon Oxy-Tran、モデル2/21で、ASTM D3985の酸素透過試験に従って、積層フィルム及びコントロール積層フィルムの酸素透過速度を測定した。試験条件は、23℃、相対湿度85%、大気圧下の100%酸素であった。結果を
図45に示す。
【0087】
図5は、熱処理後の積層フィルム及びコントロール積層フィルムを通る酸素透過速度の時間の関数としてのグラフである。ライン54は、約5日間にわたるコントロール積層フィルムの酸素透過速度を示す。ライン56は、約6.6日間にわたる積層フィルムの酸素透過速度を示す。
図5のライン56に示されるように、積層フィルムは、初期の高い酸素透過速度から、僅かに8時間後には0.5cc/m
2-日未満まで素早く回復している。その後の6日間にわたって、積層フィルムは、0.3cc/m
2-日よりも充分に低い酸素透過速度を維持している。対照的に、ライン54は、コントロール積層フィルムが受けたレトルトショックの証拠を明らかに示している。8時間後、コントロール積層フィルムは、依然として6cc/m
2-日を超える酸素透過速度を有している。これは、同じ長さの時間後における積層フィルムの酸素透過速度よりも約23倍大きい。レトルトショックの影響は、酸素透過速度が平らにならないことから、約1.5~2日間まで持続している。最終的には、積層フィルムの酸素透過速度は、酸素捕捉層の酸素吸収能力が枯渇するために、コントロール積層フィルムの酸素透過速度まで上昇することになると考えられる。
【0088】
例3-熱処理前後での酸素捕捉層の能力
酸素捕捉層として用いるための酸素捕捉組成物の第一のサンプル及び第二のサンプルを調製し、各サンプルは、異なる濃度の金属塩触媒を有するものとした。各サンプルにおいて、ナイロン6、酸化性ナイロン、及びコバルトマスターバッチのペレットを秤量し、次に数分間にわたって一緒にタンブル混合して、充分な混合を確保した。コバルトマスターバッチは、5重量%のステアリン酸コバルト溶融物を含み、二軸押出機を用いて95重量%のナイロン6と配合したものとした。重量パーセントは、40重量%のナイロン6及び60重量%の酸化性ナイロンであった。第一のサンプルでは、コバルトマスターバッチを、256ppmの触媒濃度が実現されるように添加した。第二のサンプルでは、コバルトマスターバッチを、71ppmの触媒濃度が実現されるように添加した。
【0089】
2つのサンプルの各々を、152.4mmのワイドスリットフィルムダイを備えたHaake 18mm一軸押出機を通して別々に押出した。押出機の温度プロファイルは、230℃~260℃の範囲に設定した。溶融押出し物をフィルムダイに通し、37.8℃の温度に水冷したKillionキャストロール上にフィルムをキャストした。キャストロールの速度及び押出機スクリューの速度は、単層フィルム厚さ0.0508mm~0.0635mmを実現するように調節した。
【0090】
2つのサンプルの各々から2つの試験フィルムを、合計で4つの試験フィルムを製造した。試験フィルムのうちの2つ、2つのサンプルの各々から1つの試験フィルムを、レトルトプロセスを模した熱処理に掛けた。熱処理のための2つの試験フィルムを、Instant Pot(登録商標)電気圧力クッカーの中に配置し、圧力クッカー中の水の上に吊るした。試験フィルムを、100%の相対湿度、1288トル~1360トルの範囲内の絶対圧力で30分間にわたって熱処理した。
【0091】
4つの試験フィルムの各々を秤量し、次に、容量240mlの4つの別々の透明ガラス製瓶詰め容器に0.1gの水を入れたものの中に配置し、その後金属製のフタで各容器をシールし、ホイルテープを巻いて相対湿度100%の環境を作り出した。シールする前に、OxySense(登録商標)からのOxyDot(O2xyDot(登録商標))を、各容器の内側のガラス面に貼り付けた。各容器内の酸素濃度を、OxySense(登録商標)モデル5250Iによってモニタリングした。測定した酸素濃度の変化を、試験フィルムによって吸収された酸素のグラム数に変換した。結果を
図6及び7に示す。
【0092】
図6は、256ppmのコバルト触媒を含む第一のサンプルからの試験フィルムの酸素吸収を示す。ライン58は、熱処理を行わなかった試験フィルムの酸素吸収を示す。ライン60は、熱処理を行った試験サンプルの酸素吸収を示す。
図6に示されるように、第一のサンプルは、熱処理の後であっても、試験フィルムの1グラムあたり28ccを超える酸素吸収を維持している。
【0093】
図7は、71ppmのコバルト触媒を含む第二のサンプルからの試験フィルムの酸素吸収を示す。ライン62は、熱処理を行わなかった試験フィルムの酸素吸収を示す。ライン64は、熱処理を行った試験サンプルの酸素吸収を示す。
図7に示されるように、第一のサンプルは、熱処理の後であっても、試験フィルムの1グラムあたり32ccを超える酸素吸収を維持している。
【0094】
例4-様々な割合の第一及び第二のポリアミド、触媒濃度、並びに所望に応じて存在してよいポリイソブチレンの場合の酸素捕捉層の能力
酸素捕捉層として用いるための酸素捕捉組成物の5つのサンプル(X1、X2、X3、X4、X5)を、例3で上述したように調製した。各サンプルは、異なる割合の第一のポリアミド、ナイロン6、及び第二のポリアミド、酸化性ナイロン、を有していた。金属塩触媒のステアリン酸コバルトを調製し、例3で述べたように添加した。触媒濃度は、触媒の酸化性ナイロンに対する比が5つのサンプルの各々で同じとなるように、酸化性ナイロンの割合と共に変化させた。5つのサンプルのいずれもポリブタジエンを含んでいなかった。酸素捕捉組成物の第六のサンプル(Y)も、2重量%のポリブタジエンを含めて、例1に記載の組成で調製した。6つのサンプルの各々の組成を、以下の表1に示す。
【0095】
【0096】
6つのサンプルの各々を別々に押出して、例3で上述したように0.0254mm~0.0508mmの6つのフィルムを製造した。フィルムの各々を切断して既知の質量を調製し、秤量し、次に、容量240mlの6つの別々の透明ガラス製瓶詰め容器に0.1gの水を入れたものの中に配置し、その後金属製のフタで各容器をシールし、ホイルテープを巻いて相対湿度100%の環境を作り出した。シールする前に、OxySense(登録商標)からのOxyDot(O2xyDot(登録商標))を、各容器の内側のガラス面に貼り付けた。各容器内の酸素濃度を、OxySense(登録商標)モデル5250Iによってモニタリングした。測定した酸素濃度の変化を、試験フィルムによって吸収された酸素のグラム数に変換した。結果を
図8に示す。
【0097】
図8は、2205時間の試験時間までの5つのサンプルX1、X2、X3、X4、及びX5の酸素吸収、並びに1913時間までの第六のサンプルYの酸素吸収を示す。
図8に示されるように、最初の10~20時間での酸素吸収は、5つのサンプルX1、X2、X3、X4、及びX5で非常に類似している。5つのサンプルはまた、ポリブタジエンを含む第六のサンプルYよりも測定可能に良好に機能した。したがって、ポリブタジエンは、有効な酸素捕捉組成物にとって必要ではなく、酸素捕捉組成物の性能を低下させるものと考えられる。
【0098】
本発明を例示的な設計に関連して記載してきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で、さらに改変され得る。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野における公知の又は慣習的な実践の範囲内に含まれるような本開示からの逸脱も包含することを意図している。