(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】主ブームと主ブーム張出しとの間に可動アダプタを備える車両クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/70 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
B66C23/70 H
B66C23/70 G
(21)【出願番号】P 2020571829
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2019066130
(87)【国際公開番号】W WO2020002066
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】102018115519.0
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520417377
【氏名又は名称】タダノ デマグ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Tadano Demag GmbH
【住所又は居所原語表記】Europaallee 2, 66482 Zweibruecken, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ウルバン クリスティアン モリッツ
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-125986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0011850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両クレーン(1)、特に、移動式クレーンまたはクローラクレーンであって、
主ジブ(8)、主ジブ張出し(16)、ならびに、前記主ジブ(8)と前記主ジブ張出し(16)との間に配置され第1の接続面(I)および第2の接続面(II)を有するアダプタ(12)を備え、前記アダプタ(12)は、ダブルロッカーとして形成されており、前記第1の接続面(I)は、前記第2の接続面(II)に対して、横方向に変位するとともに、角度を付けて動くことができることを特徴とする、
車両クレーン(1)。
【請求項2】
前記アダプタ(12)が、その第1の接続面(I)で前記主ジブ(8)の主ジブヘッド(11)に間接的に固定され、その第2の接続面(II)で前記主ジブ張出し(16)の足片(16a)に間接的に固定されることを特徴とする、
請求項1に記載の車両クレーン(1)。
【請求項3】
前記アダプタ(12)が、その第1の接続面(I)で前記主ジブ(8)の主ジブヘッド(11)に直接固定され、かつ/または、その第2の接続面(II)で前記主ジブ張出し(16)の足片(16a)に直接固定されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の車両クレーン(1)。
【請求項4】
前記アダプタ(12)が、フレームワーク要素(13c)、ロッカー要素(13b)、カップリング要素(13d)、およびクランク要素(13a)から構成され、それらが、互いに平行に延在する第1、第2、第3、および第4の関節スピンドル(A、B、C、D)を介して回転方式で接続され、2つの対角線上に対向する関節スピンドル(A、CまたはB、D)の間に前記アダプタ(12)が固定される対角要素(14)が配置されていることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両クレーン(1)。
【請求項5】
前記第1および第4の関節スピンドル(A、D)が前記第1の接続面(I)内にあり、前記第2および第3の関節スピンドル(B、C)が前記第2の接続面(II)内にあることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両クレーン(1)。
【請求項6】
前記対角要素(14)が特に連続して調整することができるピストンシリンダユニットであることを特徴とする、
請求項
4に記載の車両クレーン(1)。
【請求項7】
前記対角要素(14)が異なる長さで固定することができるスライディングプレートであることを特徴とする、
請求項
4に記載の車両クレーン(1)。
【請求項8】
前記対角要素(14)が事前に選択された長さを有する交換可能なベルトであることを特徴とする、
請求項
4に記載の車両クレーン(1)。
【請求項9】
前記対角要素(14)が歯付きラックおよび歯車駆動装置によって調整することができることを特徴とする、
請求項
4に記載の車両クレーン(1)。
【請求項10】
前記フレームワーク要素(13c)、前記ロッカー要素(13b)、前記カップリング要素(13d)、および前記クランク要素(13)の長さが異なることを特徴とする、
請求項
4に記載の車両クレーン(1)。
【請求項11】
前記アダプタ(12)が負荷がかかった状態で動くことができることを特徴とする、
請求項1から10の少なくとも一項に記載の車両クレーン(1)。
【請求項12】
前記主ジブ(8)および/または前記主ジブ張出し(16)に作用する外側張り綱要素が、前記アダプタ(12)の動きを介して能動的にプレテンションをかけられることを特徴とする、
請求項1から11の少なくとも一項に記載の車両クレーン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主ジブ、主ジブ張出し、ならびに主ジブと主ジブ張出しとの間に配置され、第1の接続面および第2の接続面を有するアダプタを備える車両クレーン、特に、移動式クレーンまたはクローラクレーンに関し、アダプタは、第1の接続面が第2の接続面に対して動くことができるように可動式である。
【背景技術】
【0002】
伸縮式主ジブおよび主ジブ張出しを備える車両クレーンは、ドイツの実用新案DE20107984U1から知られている。主ジブ張出しは、アダプタを介して主ジブのヘッドに固定されている。曲げ耐性アダプタは、その下端に、したがって主ジブのヘッドに固定されて第1の接続面に配置され、その上端に、主ジブ張出し、したがって第2の接続面が水平ラフ軸を中心にラフ可能なように取り付けられる。主ジブ張出しの下端の領域内およびアダプタの領域内に配置されているのは、後方のV字形方式で主ジブ張出しの長手方向に見られるように、各々の場合ペアで突出する合計4つのラフ支持体であり、ケーブルまたは張り綱ロッドがその端に配置されている。ラフ可能な主ジブ張出しを備えるそのような車両クレーンに関して、アダプタの端の前部またはアダプタの中央のいずれかにラフ軸を配置することが一般に知られている。
【0003】
ドイツの公開文書DE102016009038A1は、伸縮式主ジブおよび主ジブ張出しを備える同等の車両クレーンを開示している。しかしながら、その中のアダプタは曲げ耐性ではない。アダプタは片側だけジブヘッドにしっかりと固定されるが、反対側には、ラフ軸を中心に旋回することができる固定フレームが主ジブ張出しを固定するために設けられる。主ジブ張出しのラフ動作の目的で、この固定フレームは、調整シリンダを介してそのラフ軸の反対側の端で旋回することができ、それによって主ジブ張出しのラフを実現することができる。調整シリンダは、固定フレームとしてアダプタの外部で支持されている。
【0004】
主ジブ張出しをラフするための伸縮式ジブを備える移動式クレーン用のさらなるアダプタは、中国の公開文書CN101898728Aからも知られている。そこで使用されるアダプタは、調整シリンダの代わりに、ボルトによって段階的に長さを変えることができるコネクティングロッドを有する。
【0005】
主ジブと主ジブ張出しとの間の固定角度位置で、固定型主ジブ張出しを直接または曲げ耐性アダプタを介して主ジブにボルトで固定することも一般的に知られている。一変形形態では、主ジブ張出しは、他の固定角度位置で主ジブまたはアダプタに固定することもできる。この目的のために、主ジブ張出しは、2つのボルト接続を介して主ジブまたはアダプタに対して旋回することができる。この旋回動作およびそれに続く他の角度位置での固定は、プレートに接続された油圧シリンダまたは他の補助ドライブを介して行うことができる。この変形形態の場合、荷重伝達、特に横方向の力の伝達は、システム軸に対して横方向に作用する力を吸収する2つのボルト接続を介してのみ行われる。油圧シリンダまたはプレートが関節方式で接続されているので、ねじりモーメントも2つのボルト接続にのみ分散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】DE20107984U1
【文献】DE102016009038A
【文献】CN101898728A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、主ジブと主ジブ張出しとの間にアダプタを備え、その耐荷重能力が改善され、索具が簡素化された車両クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を備える車両クレーンによって達成される。従属請求項2から15は、本発明の有利な実施形態を記載する。
【0009】
主ジブ、主ジブ張出し、ならびに主ジブと主ジブ張出しとの間に配置され、第1の接続面および第2の接続面を有するアダプタを備え、アダプタが第1の接続面が第2の接続面に対して動くことができるように可動式である、車両クレーン、特に移動式クレーンまたはクローラクレーンの耐荷重能力ならびに索具の簡素化における改善は、アダプタがダブルロッカーの方式で形成されるという事実のおかげで実現される。有利なことに、これによりアダプタの領域における制御された可動性が可能になる。結果として、主ジブ張出しから主ジブへの力の導入を最適化することが可能であり、それは耐荷重能力の増加と関連付けられる。その上、主ジブに対する主ジブ張出しのラフ動作は、索具の過程で受動的に、または負荷がかかった状態での車両クレーンの操作中に能動的に実現することができる。実現された最適化は、アダプタの変形を受動的に低減するために、アダプタに対する追加のかつ/または優れた材料の使用を回避することが可能であることを意味する。追加のかつ/もしくは優れた材料または明らかに強力な油圧シリンダも、常に不利なことに、コストの増加を意味するが、それもこの場合回避される。関節点の位置または主ジブに対してラフ可能な主ジブ張出し用のラフ軸の位置を動かすことが今や可能なので、一方では、「前方」の位置にある関節点で簡略化された索具を行うことができ、関節点が「中央」の位置にあるアダプタの動きまたは調整の後、静力学、したがって耐荷重能力を向上させることができる。
【0010】
「前方」の関節点の位置は、地面に面するか、または車両クレーンの釣り合いおもりから離れた、すなわち、主ジブ張出しの方向の中心からオフセットされたアダプタの端の第2の接続面内の関節点またはラフ軸を意味する。関節点が「前面」にあるアダプタの位置では、主ジブ張出しの簡単な索具が可能になる。より良い静的位置のために、関節点が主ジブヘッド上の中央に、すなわち、側面外縁に対して間隔を置いて配置された主ジブを有することも知られている。関節点または関節点の構成部品は、追加のデバイスの設定角度に応じて、様々な大きさの負荷にさらされる。関節点を調整する新しいオプションでは、「中央の」関節点の位置を使用して、ラフ可能な主ジブ張出しから主ジブへの負荷の最適な導入を実現することが可能である。結果として、主ジブはそれに応じてより軽量になるか、またはより大きな耐荷重能力を実現する。道路上の操作のために車両クレーンの車軸荷重を12tに制限することにより、特に車両クレーンの場合、重量、したがって主ジブの重量も重要な基準である。
【0011】
基本的に、本発明の可動アダプタを使用して、ラフケーブルなどの典型的な張り綱配置を介してラフ可能な主ジブ張出しをラフダウンし、そうでない場合典型的なラフ軸の代わりに可動アダプタを使用することが可能になった。
【0012】
1つの有利な実施形態では、アダプタは、その第1の接続面で主ジブの主ジブヘッドに間接的に固定され、その第2の接続面で主ジブ張出しの足片に間接的に固定されるという対策が行われる。この実施形態では、したがって、追加の中間物は、好ましくは格子マスト要素として、第1の接続面と主ジブヘッドとの間、および/または第2の接続面と主ジブ張出しの足片との間に設けることができ、それは、たとえば、アダプタおよび/または延長部として機能することもできる。したがって、本発明によれば、異なる構造サイズの既存のアダプタは、主ジブと主ジブ張出しとの間で使用することもできる。
【0013】
好ましい実施形態では、アダプタは、その第1の接続面で主ジブの主ジブヘッドに直接固定され、かつ/または、好ましくはその第2の接続面で主ジブ張出しの足片に直接固定されるという対策が行われる。有利なことに、これにより、主ジブヘッドおよび/または足片の近くに配置されたアダプタの領域内の力および可動性の伝達が最適化される。
【0014】
本発明の1つの有利な実施形態では、アダプタはダブルロッカーとして構成される。ダブルロッカーとしての実施形態は、特にアダプタの定義された可動性を可能にし、アダプタは可動性を高レベルの静的安定性と組み合わせる。
【0015】
有利なことに、主ジブの長手方向に対して横方向かつ外側に見られるように、アダプタは、フレームワーク要素、ロッカー要素、カップリング要素、およびクランク要素から構成され、それらは、互いに平行に延在する第1、第2、第3、および第4の関節スピンドルを介して回転方式で接続され、2つの対角線上に対向する関節スピンドルの間に配置され、アダプタが固定される縦方向に調整可能な対角要素であるという対策が行われる。
【0016】
第1および第4の関節スピンドルが第1の接続面内にあり、第2および第3の関節スピンドルが第2の接続面内にある場合、それは有利である。アダプタは、好ましくは、第1の接続面が第2の接続面に対して横方向に動かされるように可動式である。したがって、特に、第1および第2の接続面は、好ましくは、互いに平行に動かない。反対に、有利なことに、第1の接続面が第2の接続面に対して横方向に動かされ、角度が付けられるようにアダプタが可動式であるという対策が行われる。
【0017】
対角要素は異なる方法で構成することができる。特に好ましいことに、対角要素は、特に、連続的に調整可能なピストンシリンダユニットである。
【0018】
あるいは、対角要素は、異なる長さで固定することができるスライディングプレートである。したがって、好ましいことに、主ジブに対する主ジブ張出しの0°位置、20°位置、または40°位置を設定することができる。設計に応じて、対角線としてスライディングプレートを有するアダプタは、主ジブと主ジブ張出しとの間のすべてのプリセット角度を実現することができる。
【0019】
代替の実施形態では、対角要素は、事前に選択された長さを有し、特に位置変更時に交換することができるベルトである。有利なことに、ベルトの事前に選択された長さは、主ジブに対する主ジブ張出しの0°位置、20°位置、または40°位置に対応する。
【0020】
さらなる代替の実施形態では、対角要素は、歯付きラックおよび歯車駆動装置によって、好ましくは連続的に調整することができるという対策が行われる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態では、フレームワーク要素、ロッカー要素、カップリング要素、およびクランク要素は、長さが異なる。同じ長さのクランク要素およびロッカー要素は、たとえば、主ジブ張出しが純粋に動かされるが、大きく回転しないことを望む場合に好ましい。
【0022】
基本的に、可動性自体を上げるため、または複数の平面で可動性を実現するために、複数のアダプタを前後に、向かい合って、かつ/または回転して配置することも実現可能である。
【0023】
可動アダプタの固定設計により、有利なことに、負荷がかかった状態でアダプタを動かせるように構成することが可能になる。この場合、アダプタの対角線に調整可能な対角要素を配置することは、負荷がかかった状態での対角要素の能動的な動きの間に、主要な力がクランク要素およびロッカー要素によって向けられるので特に有利であり、対角要素、特にピストンシリンダユニットは、システム軸を横切る力のみを伝達する必要がある。
【0024】
アダプタの動きを介して、主ジブおよび/または主ジブ張出しに作用する外側張り綱配置に能動的にプリテンションをかけることも実現可能である。
【0025】
本発明は、例示された実施形態の助けを借りて、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】主ジブおよび固定型主ジブ張出しを備える車両クレーンの概略側面図である。
【
図2a】様々な位置にある主ジブと主ジブ張出しとの間のアダプタの領域からの
図1に示された車両クレーンの詳細図である。
【
図2b】様々な位置にある主ジブと主ジブ張出しとの間のアダプタの領域からの
図1に示された車両クレーンの詳細図である。
【
図2c】様々な位置にある主ジブと主ジブ張出しとの間のアダプタの領域からの
図1に示された車両クレーンの詳細図である。
【
図3】主ジブおよびラフ可能な主ジブ張出しを備える車両クレーンの概略側面図である。
【
図4a】様々な位置にある主ジブと主ジブ張出しとの間のアダプタの領域からの
図3に示された車両クレーンの詳細図である。
【
図4b】様々な位置にある主ジブと主ジブ張出しとの間のアダプタの領域からの
図3に示された車両クレーンの詳細図である。
【
図4c】様々な位置にある主ジブと主ジブ張出しとの間のアダプタの領域からの
図3に示された車両クレーンの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、公道を走行することができ、実質的に下部キャリッジ2および上部構造3から構成される車両クレーン1、特に、移動式クレーンの概略側面図である。下部キャリッジ2は、運転室4と、各々が道路走行に適した2つのゴムタイヤ車輪6を有する4つの車軸5とを有する。当然、下部キャリッジ2は、4つより多いかまたは少ない車軸5を装備することもできる。さらに、下部キャリッジ2は、回転ベアリング7によって実質的に垂直に向けられた回転軸Dの周りを下部キャリッジ2に対して旋回することができる上部構造3を支持する。上部構造3および下部キャリッジ2は、当然、一方を他方の上にしっかりと取り付けることもできる。図示されていないラフシリンダを介してラフすることができる主ジブ8は、上部構造3に取り付けられ、道路を走行するために下部キャリッジ2に完全に格納し置くことができる。図示された実施形態では、主ジブ8は伸縮式ジブとして構成されている。当然、主ジブ8が格子マスト桁として構成されること、および/または車両クレーン1がクローラクレーンとして構成されることも可能である。伸縮ジブとして構成された主ジブ8は、ジブ基本ボックス10、および互いに内側に配置された複数の伸縮可能で格納できる伸縮式セクション10a~10dから構成される。最も内側にあり、したがってその直径に対して最も小さい伸縮セクション10dは、上端または外側端にあり、主ジブヘッド11を搬送する。可動アダプタ12は、図示されていない4つのボルトまたはヘッドスピンドルを介して、第1の接続面I内の主ジブヘッド11に固定されている。アダプタ12は、立方体の格子マスト要素として設計されている。いわゆる固定型主ジブ張出し16は、図示されていない4つのさらなるボルトを介して、第2の接続面II内の主ジブヘッド11の反対側のアダプタ12の端部に接続され、前記主ジブ張出しは、通常、アダプタ12を介して主ジブ8に対して一方向のみに向けられる。
【0028】
本発明によるアダプタ12は、主ジブ8の長手方向hに対して事前に選択された方向にその長手方向vを有する主ジブ張出し16がアダプタ12に接続することができるか、または接続された主ジブ張出し16を有するアダプタ12がそれに応じて方向付けることができるように、限られた範囲で移動可能およびロック可能である。
図1では、主ジブ張出し16は、主ジブ8に対して約20°の角度bだけ傾斜している。
【0029】
好ましい実施形態では、主ジブ8はまた、ジブ基本ボックス10のヘッド上に配置され、直角に後方を指す第1の張り綱支持体18を備え、第1の張り綱ケーブル18aは、第1の張り綱支持体18を介して基本ボックス10のベースから主ジブヘッド11に延在する。
【0030】
通常、主ジブ張出し16は、格子マストとして設計され、従来は格子細工管状構造である基本ジブ、およびそれに隣接し、ボックスジブまたは格子細工管状構造として設計された先端16bに分割される。そのような主ジブ張出し16は、基本的に、個々の主な要素からモジュラ設計システムとして構築され、その必要な長さまたは耐荷重能力に応じて一緒に取り付けることができる。個々の主な要素は輸送に適した寸法を有し、ほとんどの場合、車両クレーン1と一緒に搬送されるのではなく、別々に輸送される。車両クレーン1のスピンドル荷重および主ジブ張出し16の構造サイズが許すとき、主ジブ張出し16は、必要に応じて一緒に搬送することができる。
【0031】
図2a、
図2b、および
図2cは、3つの異なる位置における
図1の車両クレーン1のアダプタ12の詳細図を示す。切り詰められたピラミッドまたは台形プリズムの形態で、好ましくは格子マスト要素として設計されたアダプタ12は、側面から見られるように、関節式四辺形に通常使用される指定に従って各側面に、右側に配置されたクランク要素13a、左側に配置されたロッカー要素13b、下部に配置されたフレームワーク要素13c、および上部に配置されたカップリング要素13dから構成され、それらは、回転可能な関節手段A、B、C、およびDを介したダブルロッカーの方式で、関節型四辺形の形態で互いに接続されている。空間的に見られるように、
図2a~
図2cが前部のみを示す2つの対向するクランク要素13aは、図示されていない上下の横梁を介して接続されてリアフレームを形成する。同じことが、同様に図示されていない横梁を介して接続されてフロントフレームを形成する2つのロッカー要素13bにも当てはまる。次いで、フロントフレームおよびリアフレームは、2つのフレームワーク要素13cおよび2つのカップリング要素13dを介して接続されてアダプタ12を形成する。
【0032】
幾何学的比率、特にクランク要素13a、ロッカー要素13b、フレームワーク要素13c、およびカップリング要素13dの互いに対する長さは、主ジブ8に対する主ジブ張出し16の0°位置または基本位置において、第1の接続面Iが第2の接続面IIと平行に延在するように選択される。2つの第1の関節スピンドルA、2つの第4の関節スピンドルD、および2つのフレームワーク要素13cも、第1の接続面I内のそれらの長手方向の延長にある。2つの第2の関節スピンドルB、2つの第3の関節スピンドルC、および2つのカップリング要素13dも、第2の接続面II内のそれらの長手方向の延長にある。関連する
図2aでは、相互に平行な接続面IおよびII、ならびに相互に異なる長さのクランク要素13aおよびロッカー要素13bという理由で、主ジブ張出し16の長手方向の延長vが、主ジブ8の長手方向の延長hと平行に延在することが明らかであり、この場合、前記延長は、互いに整列していないが、代わりに、主ジブ8の側面図に見られるように、互いに対して横方向にオフセットされている。特に、この場合、ロッカー要素13aおよびカップリング要素13dは、長さが等しくなく、互いに対して鋭角に配置されている。従来の関節式四辺形とは対照的に、クランク要素13aおよびロッカー要素13bも、回転方式で配置されておらず、代わりに、接続面Iに対する接続面IIの所望の変位をもたらすために、関連する関節スピンドルAおよびDの周りでのみ旋回する。
【0033】
アダプタ12の可動性を制限するか、または接続面Iに対する接続面IIの向きを確立するために、要素13a~13dによって形成される関節型四辺形の対角線に配置される少なくとも1つの対角要素14が設けられる。この目的のために、対角要素14は、一方では、ロッカー要素13bのプレート上の関節スピンドルAの領域内で関節式に作動し、他方では、クランク要素13aのプレート上の関節スピンドルCの領域内で関節式に作動する。本例示の実施形態では、前部および後部の対角要素14は、各々の場合において、アダプタ12の前部および後部の関節型四辺形に設けられる。基本的に、1つの対角要素14のみを使用することも可能であり、次いで、それは、好ましくはアダプタ12の中央に配置される。対角要素14を約90度回転させ、したがって、一方では、関節スピンドルDの領域内で関節方式でクランク要素13aのプレートにそれを接続し、他方では、関節スピンドルDの領域内で関節方式でロッカー要素13bのプレートにそれを接続することも可能である。
【0034】
対角要素14は、好ましくは、ボルトを介して異なる長さで固定することができるスライディングプレートとして設計される。各々が固定長を有する棒のセットとしての設計も実現可能である。同様に有利なことに、対角要素14を油圧駆動ピストンシリンダユニットとして設計することが可能であり、次いで、それは、対応するバルブを介して油圧方式で所望の長さにロックされる。対角要素14はまた、歯付きラックおよびそれと噛み合う歯車駆動装置により、その長さに関して調整可能かつ固定可能であり得る。加えて、対角要素14はまた、アダプタ12の補強に影響を与える。
【0035】
図2a~
図2cは、図示されていないプレート、および対応するボルトを介してアダプタ12、特にカップリング要素13dに接続されている主ジブ張出し16のベース領域からの格子片を概略的に示す。結果として、主ジブ張出し16の長手方向vは、次いで、カップリング要素13dに対して直角に向けられる。主ジブ張出し16の(長方形として概略的に示されている)格子片は、通常、主ジブ張出し16の格子マスト状の形成の一部である。
【0036】
図2aは、主ジブ張出し16の長手方向vに対する主ジブ8の長手方向hの平行方向に対する主ジブ張出し16の0°位置に対応する基本位置にあるアダプタ12を示す。この場合、対角要素14の長さはその最短である。
図2aはまた、主ジブ張出し16の中央長手方向vが、主ジブ8の中央長手方向hに対して左に横方向にオフセットされた方式で配置されていることを示し、この場合、主ジブ張出し16の中央長手方向vは、ほぼ主ジブ8の上面の延長として存在する。この場合、アダプタ12自体は、特にそのクランク要素13aおよびそのロッカー要素13bに対して左に傾斜している。主ジブ張出し16を主ジブ6に、0°位置だけでなく他の方向にも固定できるようにするために、アダプタ12は、前述されたように横方向に旋回させることができる。結果として、第2の接続面IIは、第1の接続面Iに対して横方向に動かされ、この場合、平行な基本位置から、任意の角度、好ましくは典型的な20°位置または40°位置まで傾斜する。この場合、次いで、同じことが、主ジブ8の長手方向hに対する主ジブ張出し16の長手方向vの方向付けにも当てはまる。関節点BおよびC、ならびにクランク要素13a、ロッカー要素13b、およびカップリング要素13dは、ダブルロッカーの方式で動かされる。関節点AおよびDならびにフレームワーク要素13cは、主ジブ6または主ジブヘッド11上の位置を変更しない。
【0037】
図2bは、主ジブ張出し16の20°位置にあるアダプタ12を示す。この場合、対角要素14は、0°位置にあるよりも長さが長い。
図2bはまた、足片16a内の主ジブ張出し16の中央長手方向vが、ほぼ主ジブ8の中央長手方向hの延長であることを示す。この場合、アダプタ12自体は、各々の場合左または右に傾斜しているにもかかわらず、特にそのクランク要素13aおよびそのロッカー要素13bに対してほとんど右上に配置されている。
【0038】
図2cは、主ジブ張出し16の40°位置にあるアダプタ12を示す。この場合、対角要素14の長さはその最長である。
図2cはまた、主ジブ張出し16の中央長手方向vが、主ジブ8の中央長手方向hに対して右に横方向にオフセットされた方式で配置されていることを示し、この場合、主ジブ張出し16の中央長手方向vは、ほぼ主ジブ8の下側の延長として足片16aに対向している。この場合、アダプタ12自体は、特にそのクランク要素13aおよびそのロッカー要素13bに対して右に傾斜している。
【0039】
主ジブ8と主ジブ張出し16との間にアダプタ12を配置することにより、異なる長さの対角要素14の使用を介して主ジブ張出し16を主ジブ8に対して角度を付けることが可能である。
【0040】
図3は、
図1に示された主ジブ8を備える車両クレーン1の概略側面図を示し、車両クレーン1の上に、固定型主ジブ張出し16の代わりに、ラフ可能な主ジブ張出し16が配置される。したがって、車両クレーン1の対応する部分に関しては、
図1に関連する上記の説明に対して参照が行われる。以下では、相違点のみが説明される。
【0041】
主ジブ張出し16のラフ可能性を実現するために、格子マスト状の足片16は、通常、主ジブ8の方向に向けられた先端を有する平らな先端の形態のくさび形である。先端の領域では、ラフ軸wは、1つまたは複数のボルト接続から形成される足片16aの幅全体にわたって延在する。この場合、ラフ軸wは、主ジブ張出し16の長手方向hに対して横方向に、可能な限り水平方向に向けられている。また、ラフ軸wがアダプタ12の表側および裏側に対してほぼ中央にあることも明らかである。
【0042】
図1ですでに記載された第1の張り綱支持体18への主ジブ8の張り綱に加えて、
図3に示された実施形態は、主ジブ張出し16の第2の張り綱を備える。この目的のために、第2の張り綱支持体19aおよび第3の張り綱支持体19bが、ラフ軸wの領域内で接続されている。張り綱ケーブル19cは、上部構造3から張り綱支持体19bまで導かれ、主ジブ張出し16のほぼ中央の点までロッドを張っている。この張り綱ケーブル19cによって、主ジブ張出し16は、負荷がかかった状態でも能動的にラフされる。
【0043】
図4a、
図4b、および
図4cは、3つの異なる位置で
図3に示された車両クレーン1のアダプタ12の詳細図を示し、対角要素14としてのアダプタ12は、固定長または設定長を有する対角要素14の代わりに油圧ピストンシリンダユニットを有する。したがって、アダプタ12の対応する部分に関しては、
図2a、
図2b、および
図2cに関連する上記の説明に対して参照が行われる。以下では、相違点のみが説明される。さらに、分かりやすくするために、第2および第3の張り綱支持体19a、19bは、
図4a~
図4cに示されていない。
【0044】
さらに、
図4a、
図4b、および
図4cでは、
図3に示された実施形態とは反対に、ラフ軸wは、第2の関節スピンドルBと第3の関節スピンドルCとの間の中心にあるのではなく、代わりに、前面の第3の関節スピンドルCの領域内にあり、好ましくは、第3の関節スピンドルC、したがって、アダプタ12の縁部およびその下に隣接する主ジブヘッド11を超えてわずかに前方に突出さえすることが明らかである。ラフ軸wの配置により、主ジブ張出し16用の索具手順が可能になり、その中で、主ジブ張出し16は、持ち上げられた主ジブ8から垂直に下向きに吊り下げられている、主ジブ張出し16のこの位置は
図4cに示されている。
【0045】
前述されたように、
図4a~
図4cに示されたアダプタ12は、能動的な動作中にラフ軸wの周りで主ジブ張出し16の連続ラフを可能にするためにピストンシリンダユニットとして設計された対角要素14を有する。
図2a~
図2cのように、
図4a~
図4cのアダプタ12は、0°位置、20°位置、および40°位置で示されている。それに応じて、対角要素14は異なる程度に伸ばされている。
図4bでは、対角要素14はわずかに伸ばされており、
図4cに示されたように、もはやほとんど完全に伸ばされた位置にはない。
【0046】
図4cに示された図は、主ジブ8、アダプタ12、および主ジブ張出し16の40°位置に対応している。この目的のために、対角要素14はさらなる距離を引っ込められている。
【0047】
本発明は、伸縮式主ジブ8および格子マスト状の主ジブ張出し16を備える移動式クレーンに関連して上記に記載されてきた。本発明の核心はアダプタ12の旋回可能な構成に関するので、概念は主ジブ8および主ジブ張出し16の他の構成および組合せにも移行することができ、これらは、たとえば、クローラクレーンなどの他の車両クレーン1に移行することができる。
【0048】
上記の例示的な実施形態では、フレームワーク要素13c、ロッカー要素13b、カップリング要素13d、およびクランク要素13aは、各々長さが異なるものとして記載されている。側面図に見られるように、少なくともクランク要素13aおよびロッカー要素13bが同じ長さである、アダプタ12の平行四辺形状の形成を有することも実現可能である。次いで、主ジブ張出し16は、このアダプタ12を介して、主ジブ8に対してラフすることなく、横方向に動かすことができる。この実施形態は、ラフ可能な主ジブ張出し16に関連して実用的であり得る。
【0049】
アダプタ12に関して、下部に配置されたフレームワーク要素13cが主ジブヘッド11によって置き換えられた場合も、その機能が保持されることに留意されたい。さらに、その機能は、カップリング要素13dが、たとえば、さらなるアダプタピースまたは足片16aなどの他の構成要素によって置き換えられた場合も保持される。
【符号の説明】
【0050】
1 車両クレーン
2 下部キャリッジ
3 上部構造
4 運転室
5 車軸
6 タイヤ
7 回転ベアリング
8 主ジブ
10 ジブ基本ボックス
10a 第1の伸縮セクション
10b 第2の伸縮セクション
10c 第3の伸縮セクション
10d 第4の伸縮セクション
11 主ジブヘッド
12 アダプタ
13a クランク要素
13b ロッカー要素
13c フレームワーク要素
13d カップリング要素
14 対角要素
15 足関節アダプタ
16 主ジブ張出し
16a 足片
16b 先端
17 地面
18 第1の張り綱支持体
18a 張り綱ケーブル
19a 第2の張り綱支持体
19b 第3の張り綱支持体
19c 張り綱ケーブル
A 第1の関節スピンドル
B 第2の関節スピンドル
C 第3の関節スピンドル
D 第4の関節スピンドル
b 角度
h 主ジブの長手方向
L 縦軸
v 主ジブ張出しの長手方向
w ラフ軸
I 第1の接続面
II 第2の接続面